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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】鉄道車両用トラバーサ
(51)【国際特許分類】
   B61J 1/10 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B61J1/10 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021041117
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022141007
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2024-01-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年3月23日に大宮総合車両センターへ搬入
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】祖田 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】水落 雅貴
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-254737(JP,A)
【文献】特開2018-111399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61J 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両台車を搭載するための基台を備え、
前記基台は、前記車両台車が走行可能なレールと、前記レールに沿って複数設けられる台車停止部と、を備え、
前記台車停止部に停止された前記車両台車を、前記レールと直交する横行用レールに沿って移送する鉄道車両用トラバーサにおいて、
前記基台の上を前記レールに沿って移動可能であり、前記車両台車を前記レールに沿って走行させるための搬送装置を備えること、
前記搬送装置は、前記車両台車の車輪を保持するための車輪保持部材を備えること、
前記車輪保持部材は、前記車輪の保持を解除する第1位置と前記車輪を保持する第2位置との間を移動可能であること、
前記基台は、
前記搬送装置を前記レールに沿って移動させるための、前記基台に固定された第1駆動装置と
記台車停止部に位置した前記搬送装置の前記車輪保持部材を前記第1位置と前記第2位置との間で移動させるための、前記台車停止部に固定された第2駆動装置と、
を備えること、
を特徴とする鉄道車両用トラバーサ。
【請求項2】
車両台車を搭載するための基台を備え、
前記基台は、前記車両台車が走行可能なレールと、前記レールに沿って複数設けられる台車停止部と、を備え、
前記台車停止部に停止された前記車両台車を移送する鉄道車両用トラバーサにおいて、
前記レールに沿って移動可能であり、前記車両台車を前記レールに沿って走行させるための搬送装置を備えること、
前記搬送装置は、前記車両台車の車輪を保持するための車輪保持部材を備えること、
前記車輪保持部材は、前記車輪の保持を解除する第1位置と前記車輪を保持する第2位置との間を移動可能であること、
前記基台は、前記搬送装置を前記レールに沿って移動させるための第1駆動装置を備えること、
前記台車停止部は、前記台車停止部に位置した前記搬送装置の前記車輪保持部材を前記第1位置と前記第2位置との間で移動させるための第2駆動装置と、を備えること、
前記第2駆動装置は直動動作可能な動作軸を備えること、
前記車輪保持部材は前記動作軸と係合する係合部を備えること、
前記搬送装置が前記台車停止部に位置したときに、前記係合部が前記動作軸に係合し、該係合により、前記第2駆動装置が前記車輪保持部材を、前記第1位置と前記第2位置との間で移動させることが可能になること、
を特徴とする鉄道車両用トラバーサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鉄道車両用トラバーサにおいて、
前記台車停止部は、前記車両台車を位置決めするストッパ装置を備えること、
前記ストッパ装置は、前記レールと平行に対向して配設される一対の車輪止部材を備え
ること、
前記一対の車輪止部材のそれぞれは、前記レールの走行面の近傍に位置することで前記
車輪と接触可能となる車輪止め位置と、前記レールの走行面の近傍から退避することで、
前記車輪と接触不能となる退避位置と、の間で移動可能なこと、
前記ストッパ装置は、前記一対の車輪止部材のそれぞれを前記車輪止め位置に位置する
よう付勢する弾性部材を備えること、
前記台車停止部に向かって前記レールを走行する前記車両台車の車輪が、前記一対の車
輪止部材の内の一方の車輪止部材に、他方の車輪止部材に対向する側とは反対側から接触
すると、当該一方の車輪止部材は、前記台車停止部に向かう前記車両台車の前記車輪に押
圧されることで前記弾性部材の弾性力に抗して前記退避位置に向かって移動され、前記車
輪が、当該一方の車輪止部材を通過することが可能なこと、
前記車輪が当該一方の車輪止部材を通過すると、当該一方の車輪止部材は、前記弾性部
材の弾性力により前記車輪止め位置に復帰し、他方の車輪止部材ととともに前記車輪を挟
み、前記車両台車を前記台車停止部に位置決めすること、
を特徴とする鉄道車両用トラバーサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両台車を搭載するための基台を備え、基台は、車両台車が走行可能なレールと、レールに沿って複数設けられる台車停止部と、を備え、台車停止部に停止された車両台車を移送する鉄道車両用トラバーサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の点検、整備等(以下、単に検修と言う)を行う検修庫においては、検修庫の床面に複数の検修用レールが平行に敷設されており、複数の検修用レールの内の1つの検修用レールに載置された鉄道車両を、他の検修用レールにトラバースさせる場合がある。
【0003】
このトラバースを行うために、例えば特許文献1に開示されるような鉄道車両用トラバーサが用いられる。この鉄道車両用トラバーサは、鉄道車両を搭載するための基台を備え、基台には鉄道車両が走行可能なレールが設けられている。さらに、検修用レールに対して直交する方向に移動可能である。
【0004】
このような鉄道車両用トラバーサを用いたトラバースは、以下のようにして行われる。例えば、鉄道車両を、第1の検修用レールから、第1の検修用レールと平行に敷設される第2の検修用レールへのトラバースを行うとすれば、まず、鉄道車両用トラバーサのレールと第1の検修用レールとの枕木方向の位置を一致させた上で、鉄道車両を第1の検修用レールから基台に引き込む。基台に引き込まれた鉄道車両は、基台のレールに沿って走行させ、基台の所定の位置に停止させることで、基台への搭載が完了される。鉄道車両の基台への搭載が完了した後、鉄道車両用トラバーサを、レールに対して直交する方向(以下、横方向という)に、鉄道車両用トラバーサのレールと第2の検修用レールとの横方向の位置が一致する位置まで移動させる。最後に、鉄道車両を基台から第2の検修用レールに降ろすことで、トラバースが完了する。
【0005】
また、一般に、鉄道車両の検修を行う場合には、検修の対象となる鉄道車両の車体と車両台車とを分離した上で車体と車両台車それぞれの検修を行うため、車体から分離した車両台車のみを、鉄道車両用トラバーサに搭載し、トラバースを行う場合がある。この場合には、例えば、基台はレールに沿って複数設けられる台車停止部を備えており、検修用レールから基台に引き込まれた車両台車を、レールに沿って台車停止部まで搬送し、台車停止部に停止させた後、鉄道車両用トラバーサを、横方向に移動させ、トラバースを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-185905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術には次のような問題があった。
車体から分離された車両台車は動力を有しないため、自走することが出来ない。このため、基台に引き込まれた車両台車を、レールに沿って台車停止部まで搬送する際には、作業者が車両台車を押してレールを走行させる必要がある。しかし、車両台車は重量物であるため、人手により車両台車を走行させることは安全面において望ましくない。よって、車両台車を、台車停止部まで自動で搬送することが可能な鉄道車両用トラバーサが望まれている。
【0008】
例えば、検修庫内においては、検修用レールの下に、動力を有するとともに、該動力により検修用レールに沿って移動することが可能な搬送装置が配設されている。該搬送装置が車両台車を保持した状態で、自己の動力により検修用レールに沿って移動することで、車両台車が自動で検修用レールの上を走行する。つまり、車両台車の搬送を自動で行うことが可能である。このような動力を有する搬送装置を鉄道車両用トラバーサに適用することで、鉄道車両用トラバーサにおいても、基台に引き込んだ車両台車を、台車停止部まで自動で搬送することが可能になると考えられる。
【0009】
しかし、ここで問題となるのが、搬送装置を設けるためのスペースである。上記した検修庫内で用いている搬送装置は、動力を有する分サイズが大きくなる。よって、そのような搬送装置がレールに沿って移動可能な分のスペース(以下、移動用スペースと言う)を設ける必要である。さらに、レールに沿って移動する搬送装置を電源や制御装置に接続しなければならず、配線を取り回すためのスペース(以下、配線用スペースと言う)が必要である。検修庫内においては、移動用スペースおよび配線用スペースを確保するために、検修用レールの下に500~600mmの深さのピットが設けられている。しかし、一般的に、鉄道車両用トラバーサの基台は厚みが200mm程度であるため、レールの下に500~600mmの深さのピットを設けるための十分なスペースが無い。また、搬送装置を設けるためにトラバーサを大型化し、検修施設のトラバーサ用のピットをさらに500~600mmほど深くすることは、設置費用の面および検修施設の安全性の面から好ましくない。よって、鉄道車両用トラバーサには、検修庫内と同様の動力を有する搬送装置を設けることが出来ない。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、省スペースな搬送装置を備えることで、車両台車をレールに沿って自動で走行させることが可能な鉄道車両用トラバーサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の鉄道車両用トラバーサは、次のような構成を有し
ている。
(1) 車両台車を搭載するための基台を備え、前記基台は、前記車両台車が走行可能なレールと、前記レールに沿って複数設けられる台車停止部と、を備え、前記台車停止部に停止された前記車両台車を、前記レールと直交する横行用レールに沿って移送する鉄道車両用トラバーサにおいて、前記基台の上を前記レールに沿って移動可能であり、前記車両台車を前記レールに沿って走行させるための搬送装置を備えること、前記搬送装置は、前記車両台車の車輪を保持するための車輪保持部材を備えること、前記車輪保持部材は、前記車輪の保持を解除する第1位置と前記車輪を保持する第2位置との間を移動可能であること、前記基台は、前記搬送装置を前記レールに沿って移動させるための、前記基台に固定された第1駆動装置と、前記台車停止部に位置した前記搬送装置の前記車輪保持部材を前記第1位置と前記第2位置との間で移動させるための、前記台車停止部に固定された第2駆動装置と、を備えること、を特徴とする。
【0012】
(2)車両台車を搭載するための基台を備え、前記基台は、前記車両台車が走行可能なレールと、前記レールに沿って複数設けられる台車停止部と、を備え、前記台車停止部に停止された前記車両台車を移送する鉄道車両用トラバーサにおいて、前記レールに沿って移動可能であり、前記車両台車を前記レールに沿って走行させるための搬送装置を備えること、前記搬送装置は、前記車両台車の車輪を保持するための車輪保持部材を備えること、前記車輪保持部材は、前記車輪の保持を解除する第1位置と前記車輪を保持する第2位置との間を移動可能であること、前記基台は、前記搬送装置を前記レールに沿って移動させるための第1駆動装置を備えること、前記台車停止部は、前記台車停止部に位置した前記搬送装置の前記車輪保持部材を前記第1位置と前記第2位置との間で移動させるための第2駆動装置と、を備えること、前記第2駆動装置は直動動作可能な動作軸を備えること、前記車輪保持部材は前記動作軸と係合する係合部を備えること、前記搬送装置が前記台車停止部に位置したときに、前記係合部が前記動作軸に係合し、該係合により、前記第2駆動装置が前記車輪保持部材を、前記第1位置と前記第2位置との間で移動させることが可能になること、を特徴とする。
【0013】
(3)(1)または(2)に記載の鉄道車両用トラバーサにおいて、前記台車停止部は、前記車両台車を位置決めするストッパ装置を備えること、前記ストッパ装置は、前記レールと平行に対向して配設される一対の車輪止部材を備えること、前記一対の車輪止部材のそれぞれは、前記レールの走行面の近傍に位置することで前記車輪と接触可能となる車輪止め位置と、前記レールの走行面の近傍から退避することで、前記車輪と接触不能となる退避位置と、の間で移動可能なこと、前記ストッパ装置は、前記一対の車輪止部材のそれぞれを前記車輪止め位置に位置するよう付勢する弾性部材を備えること、前記台車停止部に向かって前記レールを走行する前記車両台車の車輪が、前記一対の車輪止部材の内の一方の車輪止部材に、他方の車輪止部材に対向する側とは反対側から接触すると、当該一方の車輪止部材は、前記台車停止部に向かう前記車両台車の車輪に押圧されることで前記弾性部材の弾性力に抗して前記退避位置に向かって移動され、前記車輪が、当該一方の車輪止部材を通過することが可能なこと、前記車輪が当該一方の車輪止部材を通過すると、当該一方の車輪止部材は、前記弾性部材の弾性力により前記車輪止め位置に復帰し、他方の車輪止部材ととともに前記車輪を挟み、前記車両台車を前記台車停止部に位置決めすること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の鉄道車両用トラバーサによれば、搬送装置は、基台が備える第1駆動装置により、レールに沿って移動される。さらに、搬送装置は車両台車の車輪を保持するための車輪保持部材を備えており、該車輪保持部材は、台車停止部が備える第2駆動装置により、車輪の保持を解除する第1位置と車輪を保持する第2位置との間で移動される。
【0015】
つまり、搬送装置自身は何ら動力を有していない。搬送装置が動力を有さない分、搬送装置のサイズを小さくすることが出来る。よって、移動用スペースを最小限に抑えることが可能である。また、搬送装置が動力を有さないため、搬送装置を電源や制御装置に接続する必要がない。電源や制御装置は、基台が備える第1駆動装置や台車停止部が備える第2駆動装置に接続すれば良く、これらは搬送装置のように移動するものではないため、配線用スペースを最小限に抑えることが出来る。鉄道車両用トラバーサが、移動用スペースおよび配線用スペースを最小限に抑えた省スペースな搬送装置を備えることで、車両台車をレールに沿って自動で走行させることが可能となる。
【0016】
例えば、基台が、4つの台車停止部を備えることとして、車両台車を引き込む側から、レールに沿って、第1台車停止部、第2台車停止部、第3台車停止部、第4台車停止部の順で並んでいることとした場合、以下のように、鉄道車両用トラバーサに引き込んだ車両台車の搬送を自動で行うことが出来る。
【0017】
まず、車輪保持部材を第1位置に位置させた状態の搬送装置を第1台車停止部に待機させておく。そして、車両台車を検修用レールから基台に引き込み、まず第1台車停止部に一旦停止させる。この状態で、搬送装置の車輪保持部材を、第1台車停止部が備える第2駆動装置によって第1位置から第2位置に移動させる。これにより、車輪保持部材が車両台車の車輪を保持する。つまり搬送装置が車両台車を保持した状態となる。搬送装置が車両台車を保持した状態で、搬送装置を基台が備える第1駆動装置によりレールに沿って、第4台車停止部まで移動させると、搬送装置の移動に伴い、車両台車がレールに沿って走行し、第4台車停止部まで搬送される。搬送装置が第4台車停止部に停止した後には、第4台車停止部が備える第2駆動装置により、搬送装置の車輪保持部材を第2位置から第1位置に移動させると、車輪の保持が解除され、車両台車の搬送完了となる。搬送を完了した搬送装置は、第1駆動装置により第1台車停止部に戻せば、2台目の車両台車を、第3台車停止部まで搬送することができ、さらに、2台目の車両台車の搬送を完了した後は、同様に3台目の車両台車を第2台車停止部まで搬送することが出来る。
【0018】
以上のように、車両台車をレールに沿って自動で走行させることが可能となれば、鉄道車両用トラバーサにおける車両台車の搬送に人手を用いる必要がなくなるため、作業者の安全確保が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係る鉄道車両用トラバーサの正面図である。
図2】本実施形態に係る鉄道車両用トラバーサの側面図である。
図3図1のA‐A断面図であり、基台を屋根部側から見た図である。
図4図3中の第4台車停止部の部分拡大図であり、車輪保持部材が第1位置にある状態を示す図である。
図5図4のC-C断面図である。
図6図3中の第4台車停止部の部分拡大図であり、車輪保持部材が第2位置にある状態を示す図である。
図7図6のD-D断面図である。
図8図3のB-B断面図であり、第1駆動装置の構成を表す図である。
図9図4のE-E断面図であり、ストッパ装置の構成を表す図である。
図10】地上の車両台車に対して引き込み機構の引き込みアームの先端を挿入した様子を示す。
図11】基台の上に車両台車を引き込んだ様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る鉄道車両用トラバーサの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る鉄道車両用トラバーサ100の正面図である。図2は、本実施形態に係る鉄道車両用トラバーサ100の側面図である。図3は、図1のA‐A断面図であり、基台101を屋根部103側から見た図である。図4は、図3中の第4台車停止部115Dの部分拡大図であり、車輪保持部材32が第1位置にある状態を示す図である。図5は、図4のC-C断面図である。図6は、図3中の第4台車停止部115Dの部分拡大図であり、車輪保持部材32が第2位置にある状態を示す図である。図7は、図6のD-D断面図である。図8は、図3のB-B断面図であり、第1駆動装置の構成を表す図である。
【0021】
鉄道車両用トラバーサ100は、図1および図2に示すように、基台101、側壁部102、および屋根部103よりなる。長手方向(図1中の左右方向)の両端部には、端部開口105が設けられており、該端部開口105から、鉄道車両用トラバーサ100に、鉄道車両10または車両台車20を搬入することが出来る。
【0022】
基台101は、略矩形状に形成された枠体に床板が接合された台車本体であって、横行用車輪109が下部に複数備えられている。横行用車輪109は検修庫の敷地内に敷設された横行用レール150の上を走行するために設けられ、図示しないモータに接続されることで鉄道車両用トラバーサ100を自走させることが出来る。横行用レール150は施設内に複数設けられた検修用レール(不図示)に直交する方向に設けられており、鉄道車両用トラバーサ100に搭載した鉄道車両10または車両台車20を、複数の検修用レールの内の1つの検修用レールから、他の検修用レールにトラバースさせることが出来る。
【0023】
基台101には、図3に示すように、鉄道車両10または車両台車20が走行可能な一対のレール107A,107Bが配置されている。また、レール107A,107Bの上面は、鉄道車両10または車両台車20が走行するための走行面1071(図5図7参照)となっている。この走行面1071は、基台101の床面101aと略同一高さとなっている。一方で、基台101のレール107A,107Bに挟まれた面は、床面101aおよび走行面1071よりも高さが低くされた段差面101bとなっている。この高低差は約50mmである。
【0024】
鉄道車両10または車両台車20の鉄道車両用トラバーサ100への搭載は、鉄道車両10または車両台車20を端部開口105から基台101に引き込み、基台101に引き込んだ鉄道車両10または車両台車20をレール107A,107B(走行面1071)を走行させ、所定の停止位置に停止させることで行われる。この搭載させる際、鉄道車両10は動力を有する仮台車を装着しているため自走することが出来るが、車両台車20は自走手段を備えていない。
【0025】
レール107A,107Bの延長線上には、トングレール108が配置される。トングレール108は、高さ方向の厚みが先端に向かって漸減する先細り状に形成されており、図示しない検修用レールに重なるように配置される。したがって、トングレール108が、検修用レールからレール107A,107Bに向かう上り斜面を形成する形となり、鉄道車両10または車両台車20を、検修用レールからレール107A,107Bに滑らかに引き込むことが出来る。
【0026】
さらに、基台101は、レール107A,107Bと平行な一対の搬送用レール110A,110Bと、レール107A,107Bと平行な搬送用ガイドレール111と、搬送用ガイドレール111にガイドされながら搬送用レール110A,110Bを走行する搬送装置30と、モータ113および第1ループチェーン114からなる搬送装置30を走行させるための第1駆動装置と、レール107A,107Bに沿って等間隔に並ぶ4つの台車停止部115と、を備える。なお、台車停止部115は、モータ113側から順に、第1台車停止部115A、第2台車停止部115B、第3台車停止部115C、第4台車停止部115Dとする。また、以下において、第1台車停止部115A、第2台車停止部115B、第3台車停止部115C、第4台車停止部115Dに共通する事項を説明するときには、単に台車停止部115と言う。
【0027】
搬送用レール110A,110Bは、段差面101bにボルト等により固定されることで敷設されており、第1台車停止部115Aのモータ113側の端部から第4台車停止部115Dの端部開口105側の端部までの長さを有する。搬送用レール110A,110Bの上面は、搬送装置30が走行するための走行面1101(図5図7参照)となっており、この走行面1101の段差面101bからの高さは、レール107A,107Bの走行面1071に比べて半分程度の高さである。
【0028】
搬送用ガイドレール111は、段差面101bにおいて、レール107Aと搬送用レール110Aとに挟まれる位置に、第1台車停止部115Aの軌道方向の中央部から第4台車停止部115Dの軌道方向の中央部まで敷設されている。
【0029】
搬送用ガイドレール111は、3本の固定ガイドレール1111と、4本の可動ガイドレール1112と、からなる。4本の可動ガイドレール1112のそれぞれは、台車停止部115の軌道方向の中央部に配置され、3本の固定ガイドレール1111のそれぞれは、可動ガイドレール1112に挟まれるように敷設されている。
【0030】
固定ガイドレール1111は段差面101bにボルト等により固定されている。また、その上面には、搬送装置30をガイドするための第1ガイド溝1111a(図4図6参照)が穿設されている。この第1ガイド溝1111aは、固定ガイドレール1111の長手方向の一方の端面から他方の端面まで貫通されているため、固定ガイドレール1111は枕木方向の断面が凹字状になっている。
【0031】
可動ガイドレール1112は、後述する第1エアシリンダ116のロッド1161に結合部材1162(図4乃至図7参照)を介して接続されており、この第1エアシリンダ116の動作により、レール107A,107Bの枕木方向にスライド移動が可能とされている。このスライド移動は、図4および図5に示す第1位置と、図6および図7に示す第2位置の間で行われる。また、可動ガイドレール1112の上面には、第2ガイド溝1112aが穿設されている。第2ガイド溝1112aは、可動ガイドレール1112を軌道方向に貫通しており、可動ガイドレール1112は枕木方向の断面が凹字状になっている。
【0032】
第2ガイド溝1112aの幅および深さは、固定ガイドレール1111の第1ガイド溝1111aと同一である。可動ガイドレール1112が第1位置にあるときは、第2ガイド溝1112aの両側壁の内、搬送装置30側の側壁1112bが、固定ガイドレール1111の搬送装置30側とは反対側の側面1111bと横方向で一致し、第1ガイド溝1111aと第2ガイド溝1112aとが互い違いに位置することとなる。また、可動ガイドレール1112が第2位置にあるときは、第1ガイド溝1111aと第2ガイド溝1112aとが、幅方向で一致するため、第1ガイド溝1111aと第2ガイド溝1112aとにより一連の溝が形成される。
【0033】
台車停止部115は、車両台車20をトラバースする際の、基台101上における停止位置となる。台車停止部115は、図4乃至図7に示すように、第1エアシリンダ116(第2駆動装置の一例)と、搬送装置30の位置を検出するための位置検出センサ117A,117B,117Cと、車両台車20が台車停止部115に停止されているか否かを検出する台車検出センサ118と、を備える。
【0034】
第1エアシリンダ116は、レール107Aと搬送用ガイドレール111との間、かつ台車停止部115の軌道方向の中央部において、段差面101bに支持部材1163によって固定されている。第1エアシリンダ116は、レール107A,107Bの横方向に直動動作するロッド1161(動作軸の一例)を有しており、該ロッド1161の先端には、結合部材1162を介して可動ガイドレール1112が結合されている。よって、ロッド1161が直動動作を行うに伴い、可動ガイドレール1112が先述した第1位置と第2位置との間でスライド移動される。
【0035】
位置検出センサ117A,117B,117Cは、段差面101bの、レール107Aと搬送用ガイドレール111との間において、軌道方向に並んで固定されている。位置検出センサ117A,117B,117Cは、例えばリミットスイッチであり、それぞれ、アクチュエータ1171を有している。このアクチュエータ1171が動作されたとき、位置検出センサ117A,117B,117Cが搬送装置30の位置を検知する。
【0036】
位置検出センサ117A,117B,117Cの、それぞれの役割を説明する。第1台車停止部115Aの側から走行してくる搬送装置30を、第2台車停止部115Bまたは第3台車停止部115Cまたは第4台車停止部115Dに停止させようとした場合には、位置検出センサ117Aが搬送装置30を検知すると、例えば側壁部102等に設けられた制御装置(不図示)によりモータ113の制御がなされ、搬送装置30の減速が行われる。さらに位置検出センサ117Bが搬送装置30を検知すると、制御装置によりモータ113が停止されて搬送装置30が第2台車停止部115Bまたは第3台車停止部115Cまたは第4台車停止部115Dに停止される。そして、第4台車停止部115Dに関しては、搬送装置30が停止位置から行き過ぎてしまったときには、位置検出センサ117Cが搬送装置30を検知するようになっている。つまり、位置検出センサ117Cは行き過ぎ防止のためのセンサである。
【0037】
逆に、第4台車停止部115Dの側から走行してくる搬送装置30を第1台車停止部115Aまたは第2台車停止部115Bまたは第3台車停止部115Cに停止させようとした場合には、位置検出センサ117Cが搬送装置30を検知すると、搬送装置30の減速が行われ、位置検出センサ117Bが搬送装置30を検知すると、搬送装置30の停止が行われる。そして、第1台車停止部115Aに関しては、搬送装置30が停止位置から行き過ぎてしまったときには、位置検出センサ117Aが搬送装置30を検知するようになっている。
【0038】
台車検出センサ118は、基台101の外方からは視認することが出来ない段差面101bの裏側に配設されている。段差面101bの裏側には、土台部1011が設けられており、台車検出センサ118は、土台部1011に立設された支持部材1012に、固定金具1013を介して固定されている。
【0039】
台車検出センサ118は、例えばリミットスイッチであり、アクチュエータ1181を有している。このアクチュエータ1181が動作されたとき、台車検出センサ118は、車両台車20が台車停止部115に停止されたことを検知する。
【0040】
より詳しく説明すると、この検知は、台車検出センサ118とレール107Aとの間に位置しているレバー部材119により行われる。このレバー部材119は、支持部材1012に、回転軸1014により回動可能に保持されている。レバー部材119のレール107A側の端部は車輪接触部119aであり、他方の端部はアクチュエータ動作部119bとなっており、以下のようにして車両台車20の検知を行う。車両台車20が台車停止部115に停止すると、車両台車20の車輪21によって、レバー部材119の車輪接触部119aが上方から押圧される。車輪接触部119aが押圧されると、回転軸1014を中心にレバー部材119が図5中または図7中の時計回りに回転し、レバー部材119のアクチュエータ動作部119bが台車検出センサ118のアクチュエータ1181を押し上げる。アクチュエータ1181が押し上げられることでアクチュエータ1181が動作され、台車検出センサ118は、車両台車20が台車停止部115に停止されたことを検知するのである。
【0041】
台車停止部115は、さらに、車両台車20を位置決めするためのストッパ装置40を備えている。図9は、図4のE-E断面図であり、ストッパ装置40の構成を表す図である。なお、図9中の二点鎖線で示す車輪21は、車両台車20が台車停止部115に停止されたときの車輪21の位置を表している。
【0042】
ストッパ装置40は、一対の車輪止部材41A,41Bと、一対のスプリング42A,42B(弾性部材の一例)と、一対の第2エアシリンダ43A,43Bと、からなる。なお、以下において、車輪止部材41A,41Bに共通する事項を説明するときには、単に車輪止部材41と言い、スプリング42A,42Bに共通する事項を説明するときには、単にスプリング42と言い、第2エアシリンダ43A,43Bに共通する事項を説明するときには、単に第2エアシリンダ43と言う。
【0043】
一対の車輪止部材41は、図9に示すように、レール107Aと平行に、レバー部材119を挟むように配設されており、互いに対向している。車輪止部材41は、土台部1011に立設された支持部材1015に、回転軸1016により回転可能に保持されており、車両台車20の位置決めを行うための車輪止め位置と、車両台車20の車輪21が走行可能な退避位置との間で回動可能となっている。図9中の実線で示す車輪止部材41A,41Bが位置決め位置にある状態であり、二点鎖線で示す車輪止部材41A,41Bが退避位置にある状態である。
【0044】
車輪止部材41は、車輪当接部411を有しており、この車輪当接部411は、車輪止部材41が車輪止め位置にある時、レール107Aの走行面1071の近傍に位置されるとともに、車輪21のフランジ部21aの外周面に対向するように位置される。これにより、台車停止部115から車両台車20が動こうとすると、車輪21のフランジ部21aの外周面が、車輪当接部411と当接し、車両台車20の位置ずれが防止される。一方、車輪止部材41が退避位置にあるとき、車輪当接部411は、レール107Aの走行面1071の近傍から退避しており、車輪21と当接しない。
【0045】
車輪止部材41は、スプリング42と係合するとともに、第2エアシリンダ43のロッド431と係合する係合ピン412を有している。
【0046】
スプリング42は、一端が係合ピン412に係合され、他端は、土台部1011の支持部材1015よりもレバー部材119寄りに固定されたブラケット1017に固定されている。車輪止部材41が、車輪止め位置から退避位置に回転されると、スプリング42の一端が係合している係合ピン412がブラケット1017側とは反対側に移動されるため、スプリング42は引き延ばされる。これにより、スプリング42は、係合ピン412に弾性力を作用させ、車輪止部材41が車輪止め位置に復帰するよう付勢する。なお、一対の車輪止部材41A,41Bは、一方の車輪当接部411が、他方の車輪当接部411に近づく方向にのみ回転可能とされており、逆方向への回転は不能とされている。
【0047】
また、車輪止部材41の側端面413は、車輪止部材41が車輪止め位置に位置するときレール107Aの走行面1071に対して、角度を持って位置される。つまり、第2エアシリンダ43側からレバー部材119側に向かって、上り坂が形成されるように位置される。この側端面413は、台車停止部115に向かってレール107Aを走行してくる車両台車20の車輪21と接触する部分である。より、詳しく説明すると、例えば、第2台車停止部115Bまたは第3台車停止部115Cまたは第4台車停止部115Dに、第1台車停止部115Aの側から走行してくる車両台車20を停止させる場合、走行してくる車両台車20の車輪21は、まず、一対の車輪止部材41A,41Bの内の車輪止部材41Aに、車輪止部材41Bと対向する側とは反対側から接触する。つまり、車輪21のフランジ部21aが、車輪止部材41Aの側端面413に接触する。側端面413に接触した後も車両台車20が走行を続けることで、側端面413がフランジ部21aに押圧されるため、車輪止部材41Aはスプリング42Aの弾性力に抗して退避位置に向かって回転される。車輪止部材41Aが退避位置に向かって回転されることで、車輪21は、車輪止部材41Aを通過することが可能となる。車輪21が車輪止部材41Aを通過すると、車輪止部材41Aは、スプリング42Aの弾性力により車輪止め位置に復帰し、他方の車輪止部材41Bととともに車輪21を挟み込む。これにより、車両台車20を第2台車停止部115Bまたは第3台車停止部115Cまたは第4台車停止部115Dに位置決めすることが可能となる。逆に、第4台車停止部115Dの側から走行してくる車両台車20を、第1台車停止部115Aまたは第2台車停止部115Bまたは第3台車停止部115Cに停止させる際には、車輪21は、車輪止部材41Bの側端面413に接触するため、車輪止部材41Bが、車輪21によって退避位置に向かって回転され、車輪21が通過した後に車輪止め位置に復帰する動作が行われる。
【0048】
次に、第2エアシリンダ43は、車輪止部材41の、スプリング42側とは反対の側に配置されており、そのロッド431は、レール107A,107Bの軌道方向と平行な方向に伸縮可能となっている。ロッド431は、係合部材432を介して、車輪止部材41の係合ピン412に係合されている。車輪止部材41が車輪止め位置にあるとき、ロッド431の突出量が最大とされた状態であり、この状態からロッド431を収縮させると、車輪止部材41の係合ピン412が係合部材432を介してロッド431に引っ張られるため、車輪止部材41を退避位置に回転させることが可能である。なお、係合部材432は、レール107A,107Bの軌道方向と平行な方向に伸びるスリット432aを有しているため、上記したように車輪21によって側端面413を押圧されて回転する車輪止部材41の係合ピン412は、スリット432a内で第2エアシリンダ43方向に移動することが出来る。よって、車輪21によって回転される車輪止部材41が第2エアシリンダ43のロッド431に負荷を与えることがない。
【0049】
車両台車20が台車停止部115を通過する場合、当該通過する台車停止部115の車輪止部材41は、第2エアシリンダ43によって退避位置に位置された状態となる。例えば、車両台車20が第1台車停止部115Aから第4台車停止部115Dに向かう場合、車両台車20は、第2台車停止部115Bと第3台車停止部115Cとを通過する。この場合、第2台車停止部115Bと第3台車停止部115Cとの車輪止部材41は、車両台車20の走行の邪魔とならないよう、第2エアシリンダ43によって退避位置に回動される。
【0050】
搬送装置30は、図4乃至図7に示すように、搬送用レール110A,110Bを走行するための搬送台車31と、車両台車20の車輪21を保持するための車輪保持部材32と、からなる。
【0051】
搬送台車31は、略四角形状の平板状に形成されており、四隅には、それぞれ、走行用車輪311およびガイド用ローラ312を1つずつ備える。走行用車輪311は、踏面311aが搬送用レール110A,110Bの走行面1101に接地しており、搬送装置30が搬送用レール110A,110B上を走行する用に供される。ガイド用ローラ312は、回転軸が段差面101bと垂直となるように位置されており、踏面312aが、搬送用レール110A,110Bの互いに対向する側壁1102に接触可能となっている。これにより、搬送装置30が搬送用レール110A,110Bを走行する際に、搬送台車31の長手方向が搬送用レール110A,110Bの軌道方向と略一致するよう、姿勢が保たれる。
【0052】
また、搬送台車31は、段差面101bと対向する裏面で、モータ113により回転される第1ループチェーン114と係合している。第1ループチェーン114は、搬送用レール110A,110Bと平行に設けられており、図8に示すように、両端がスプロケット112A,112Bに巻き掛けられている。モータ113側のスプロケット112Aは、モータ113によって回転される第2ループチェーン160によって回転される。スプロケット112Aが回転されることで、第1ループチェーン114が回転される。そして、第1ループチェーン114が回転されることで、第1ループチェーン114と係合されている搬送台車31が、搬送用レール110A,110B上を走行する。これにより、搬送装置30(搬送台車31)が、搬送用レール110A,110Bに平行なレール107A,107Bに沿って走行可能となる。
【0053】
このように、基台101に設けられたモータ113や第1ループチェーン114により、搬送装置30自体は動力を有さずとも走行することが可能となる。搬送装置30が動力を有さない分、搬送装置30のサイズを小さくすることが出来、搬送装置30の移動用スペースを最小限に抑えることが可能である。よって、床面101a(走行面1071)と段差面101bとの高低差が約50mmと小さくても、搬送装置30の移動用スペースを十分に確保することが可能である。また、搬送装置30が動力を有さないため、搬送装置30を電源や制御装置に接続する必要がない。電源や制御装置は、基台101が備えるモータ113に接続すれば良く、これらは搬送装置30のように移動するものではないため、配線用スペースを最小限に抑えることが出来る。
【0054】
また、搬送台車31は、図4および図6に示すように、位置検出センサ117A,117B,117Cを作動させるためのセンサ作動部313を有している。センサ作動部313は、枕木方向と平行な方向に、レール107A側に向かって突設されており、搬送用ガイドレール111を跨いで、その先端が位置検出センサ117A,117B,117Cのアクチュエータ1171と接触可能にされている。センサ作動部313は、搬送用ガイドレール111を跨いでいるため、搬送装置30が搬送用レール110A,110B上を走行する際には、搬送用ガイドレール111の上方を通過する。
【0055】
さらに、搬送台車31は、表面(段差面101bに対向する裏面の反対側の面)に、車輪保持部材32をスライド移動可能に保持するブッシュ部材314を備えている。
【0056】
車輪保持部材32は、軌道方向に長手方向を有する平板状のベース部材321を備えており、該ベース部材321の長手方向中央部には、枕木方向と平行な方向に、係合部材322がレール107A側に向かって突設されている。係合部材322の先端には円柱状の係合部323が設けられている。該係合部323の直径は、固定ガイドレール1111の第1ガイド溝1111a幅寸法および可動ガイドレール1112の第2ガイド溝1112aの幅寸法よりも小さくされており、搬送装置30が搬送用レール110A,110B上を走行する際には、係合部323が、固定ガイドレール1111の第1ガイド溝1111a内または可動ガイドレール1112の第2ガイド溝1112a内を通ることが出来る。
【0057】
そして、搬送装置30が台車停止部115に停止したとき、係合部323が可動ガイドレール1112の第2ガイド溝1112aに位置した状態となる。すなわち、係合部323が、可動ガイドレール1112を介して、第1エアシリンダ116のロッド1161と係合した状態となる。この係合がなされた状態で、可動ガイドレール1112が第1位置から第2位置に移動されると、第2ガイド溝1112aの第1エアシリンダ116側の側壁1112cが係合部323を押圧し、車輪保持部材32を第1位置から第2位置に移動させる。一方で、可動ガイドレール1112が第2位置から第1位置に移動する場合には、第2ガイド溝1112aの他方の側壁1112bが係合部323を押圧し、車輪保持部材32を第2位置から第1位置に移動させる。つまり、可動ガイドレール1112が、第1エアシリンダ116によってスライド移動されると、可動ガイドレール1112がスライド移動されるに伴って、車輪保持部材32も第1位置と第2位置との間でスライド移動されるのである。
【0058】
ベース部材321の長手方向の両端部のそれぞれには、枕木方向と平行な方向に、円柱状のアーム部材324がレール107B側に向かって突設されている。このアーム部材324は、先述のブッシュ部材314に設けられた貫通孔314aに挿通されており、これにより、車輪保持部材32のスライド移動がガイドされる。アーム部材324のレール107B側の先端には、車両台車20の車輪21を保持するための保持部材325が結合されている。この保持部材325は、枕木方向と平行な方向に回転軸を有するローラである。
【0059】
この一対の保持部材325は、車輪保持部材32が第2位置にあるとき、車輪21の下端部において、フランジ部21aを軌道方向の両側から挟み込むように位置される(図6および図7に示す位置)。この位置が、車両台車20の車輪21を保持するための位置である。一対の保持部材325がフランジ部21aを軌道方向の両側から挟み込んだ状態で、搬送装置30(搬送台車31)が走行されると、保持部材325が車輪21のフランジ部21aに当接し、搬送装置30(搬送台車31)が走行する方向に、車輪21を押していく。より詳しく説明すると、例えば、搬送装置30(搬送台車31)が、第1台車停止部115Aから第4台車停止部115Dの方向に向かって走行される場合には、第1台車停止部115A側(図中左側)の保持部材325がフランジ部21aに当接し、搬送装置30が、その逆方向に走行される場合には、第4台車停止部115D側(図中右側)の保持部材325がフランジ部21aに当接する。これにより、車両台車20を、レール107A,107B上を走行させて搬送することが出来る。なお、保持部材325はローラであるため、車輪21の回転に伴って回転可能であり、保持部材325がフランジ部21aに当接することによる車輪21の損傷を防止することが出来る。
【0060】
また、保持部材325は、車輪保持部材32が第1位置にあるときには、車輪21の下方から退避した位置、すなわち車輪21の保持を解除する位置に位置される。この状態で、搬送装置30が走行された場合には、保持部材325は車輪21のフランジ部21aに当接することはないため、車両台車20の搬送は行われず、搬送装置30が単独で走行することになる。
【0061】
以上のように、台車停止部115に設けられた第1エアシリンダ116により、搬送装置30自体は動力を有さずとも、車両台車20(車輪21)の保持および保持の解除を行うことが可能となる。搬送装置30が動力を有さない分、搬送装置30のサイズを小さくすることが出来、搬送装置30の移動用スペースを最小限に抑えることが可能である。よって、床面101a(走行面1071)と段差面101bとの高低差が約50mmと小さくても、搬送装置30の移動用スペースを十分に確保することが可能である。また、搬送装置30が動力を有さないため、搬送装置30を電源や制御装置に接続する必要がない。電源や制御装置は、台車停止部115に設けられた第1エアシリンダ116に接続すれば良く、これらは搬送装置30のように移動するものではないため、配線用スペースを最小限に抑えることが出来る。
【0062】
次に、鉄道車両用トラバーサ100は、基台101の短手方向(図2の左右方向)の両端部から垂直に立ち上げられた側壁部102を有する。鉄道車両10または車両台車20が基台101に載せられた場合には、その両脇に側壁部102が配置される形となる。つまり、レール107と側壁部102は平行に配置される位置関係になる。また、一対の側壁部102の上部端には屋根部103が横架されている。この屋根部103は、図2に示すように、基台101に引き込まれた鉄道車両10を覆うことが出来るような高さに設けられている。
【0063】
側壁部102の、端部開口105側の両端部のそれぞれには、車両台車20を基台101に引き込むための引き込み機構120が一対ずつ取り付けられている。なお、本実施形態では、引き込み機構120が、端部開口105側の両端部のそれぞれに一対ずつ設けられているが、どちらか一対だけ設けるものとしても良い。
【0064】
引き込み機構120は引き込みアーム121と直動機構122よりなる。直動機構122は、側壁部102に設けられたリニアガイドレール123と、リニアガイドレール123の上部に配置されるループチェーン127と、リニアガイドレール123に沿って直動動作をする直動ベース126と、を有している。ループチェーン127はスプロケット127aに巻き掛けられており、スプロケット127aが不図示の駆動装置(例えばモータ)によって回転されることで、ループチェーン127が回転する構成となっている。直動ベース126は、ループチェーン127に結合されており、ループチェーン127の回転により、直動ベース126が、リニアガイドレール123に沿って直動動作することが可能となっている。
【0065】
直動ベース126には、支持部125により、引き込みアーム121が回転可能に支持されている。また、引き込みアーム121の一方の端部(鉄道車両用トラバーサ100の外方に突出する側の端部)には、車両台車20を保持するための保持機構121aが設けられている。また、引き込みアーム121の他方の端部には、保持機構121aとの重量バランスを取るためカウンターウェイト121bが設けられている。支持部125により引き込みアーム121が回転可能に支持されているため、引き込みアーム121は、直動ベース126の直動動作に伴って、鉄道車両用トラバーサ100の両側に設けられる端部開口105から突出・収納可能に進退することが出来る。また、支持部125を中心に引き込みアーム121を回転させることで、保持機構121aの上下位置を任意の高さに手動で調整することが可能となっている。
【0066】
以上のような構成を有する鉄道車両用トラバーサ100は、以下のようにして車両台車20のトラバースを行う。例えば、4台の車両台車20を、第1の検修用レールから、第1の検修用レールと平行に敷設される第2の検修用レールへトラバースを行う場合を想定して説明する。
【0067】
まず、鉄道車両用トラバーサ100のレール107A,107Bと第1の検修用レールとの枕木方向の位置を一致させた上で、第1台車停止部115A側の引き込み機構120により、車両台車20を第1の検修用レールから基台101に引き込む。実際に車両台車20をどのように引き込み機構120により引き込むかについて図10および図11を用いて説明する。図10は、地上(例えば検修用レール上)の車両台車20に対して引き込み機構120の引き込みアーム121の先端を挿入した様子を示す。図11は、基台101の上に車両台車20を引き込んだ様子を示す。
【0068】
まず、直動ベース126を移動端まで移動させた状態で、引き込みアーム121を、支持部125を中心に回動させ、保持機構121aの高さを調整する。この調整は手動で行われる。保持機構121aの高さを、車両台車20と連結可能な高さに調整した後、車両台車20と保持機構121aの先端部分を連結する。連結する手法は車両台車20の側梁に設けられている図示しない穴を用いることを想定しており、保持機構121aの先端を側梁の穴に挿入することで、車両台車20を引き込みアーム121によって牽引可能な状態とする。
【0069】
保持機構121aの高さは、前述したように支持部125によって引き込みアーム121の角度変更を行うことで変更が可能であるので、車両台車20の側梁に設けられた穴に対して、微調整をしながら挿入することが出来る。なお、車両台車20に適切な穴が無い場合には、車両台車20側に治具を取り付けて保持機構121aで保持可能にすることが好ましい。
【0070】
保持機構121aと車両台車20を連結した後、駆動装置によってループチェーン127を回転させて直動ベース126を、鉄道車両用トラバーサ100の内方に向かって移動させる。すると、図11に示すように引き込みアーム121に牽引されて車両台車20がトングレール108の上に乗る。そして、直動ベース126を鉄道車両用トラバーサ100の内方に向かってさらに移動させ、車両台車20が第1台車停止部115Aに到達するまで牽引していく。このとき、第1台車停止部115Aには、車輪保持部材32が第1位置に位置された状態の搬送装置30を待機させておく。なお、必ずしも搬送装置30を第1台車停止部115Aに待機させておく必要はなく、車両台車20を第1台車停止部115Aに停止させた後に、車輪保持部材32が第1位置に位置された状態の搬送装置30を、第1台車停止部115Aまで走行させるものとしても良い。
【0071】
第1台車停止部115Aに到達した車両台車20は、ストッパ装置40により位置決めがなされる。この位置決めがされると、第1台車停止部115Aの台車検出センサ118が、車両台車20が第1台車停止部115Aに停止されたことを検知し、第1台車停止部115Aの第1エアシリンダ116が駆動可能となる。第1エアシリンダ116が駆動されると、車輪保持部材32が第1位置から第2位置に移動される。車輪保持部材32が第2位置に位置されると、保持部材325によって車両台車20の車輪21が保持された状態となる。
【0072】
車両台車20の車輪21が保持された状態で、モータ113を駆動し、搬送装置30を、第4台車停止部115Dに向かって走行させる。車輪保持部材32(保持部材325)が車輪21を保持しているため、搬送装置30が走行するに伴い、車両台車20がレール107A,107B上を走行する。なお、車両台車20を搬送する際の搬送装置30の走行速度は最大で約15m/minである。
【0073】
第4台車停止部115Dに向かって走行する搬送装置30のセンサ作動部313が、第4台車停止部115Dの位置検出センサ117Aを動作させると、モータ113の回転数を低下させる制御がなされ、搬送装置30の走行速度が約3m/minに減速される。減速された搬送装置30のセンサ作動部313が、さらに第4台車停止部115Dの位置検出センサ117Bを動作させると、モータ113が停止されて搬送装置30が第4台車停止部115Dに停止される。
【0074】
搬送装置30が第4台車停止部115Dに停止すると同時に、車両台車20が第4台車停止部115Dに到達する。第4台車停止部115Dに到達した車両台車20はストッパ装置40により、位置決めがなされる。なお、車両台車20は、第4台車停止部115Dに到達するまでに、第2台車停止部115Bおよび第3台車停止部115Cを通過するため、この通過の際には、第2台車停止部115Bおよび第3台車停止部115Cのストッパ装置40は、車輪止部材41が退避位置に位置された状態とされる。
【0075】
また、搬送装置30が第4台車停止部115Dに向かって走行する際、全ての可動ガイドレール1112は第2位置に位置させ、固定ガイドレール1111の第1ガイド溝1111aと可動ガイドレール1112の第2ガイド溝1112aとにより一連の溝が形成された状態としておく。これにより、搬送装置30の走行中、搬送装置30の係合部323は当該一連の溝を通る。そして、搬送装置30が第4台車停止部115Dに達すると、係合部323は、第4台車停止部115Dに位置する可動ガイドレール1112の第2ガイド溝1112aに係合されることとなる。
【0076】
車両台車20が第4台車停止部115Dに位置決めがされると、第4台車停止部115Dの台車検出センサ118が、車両台車20が第4台車停止部115Dに停止されたことを検知し、第1エアシリンダ116のロッド1161が駆動される。これにより、係合部323が係合している可動ガイドレール1112が第2位置から第1位置に移動されるため、車輪保持部材32が第2位置から第1位置に移動される。車輪保持部材32が第1位置に位置すると、保持部材325による車両台車20の車輪21の保持が解除され、車両台車20の搬送完了となる。
【0077】
さらに2台目の車両台車20の搬送を行うには、2台目の車両台車20を、引き込み機構120を用いて第1台車停止部115Aに停止させ、搬送装置30を、第1駆動装置により第1台車停止部115Aに戻す。なお、2台目の車両台車20を第1台車停止部115Aに停止させるのと、搬送装置30を第1台車停止部115Aに戻すのは、どちらを先に行っても良い。
【0078】
搬送装置30を第1台車停止部115Aに戻す際、第1台車停止部115Aに位置する可動ガイドレール1112は、1台目の車両台車20の保持を行った際に第2位置に位置された状態となっているため、第1位置に移動させた状態としておく。そして、第4台車停止部115Dに位置する可動ガイドレール1112は、1台目の車両台車20の保持解除を行った際に、第1位置に位置された状態となっているため、この状態で、搬送装置30を第1台車停止部115Aに向かって走行させると、搬送装置30の係合部323は、第1ガイド溝1111aを通らずに、固定ガイドレール1111のレール107A側の側面1111b付近を通過していく。また、第2台車停止部115Bおよび第3台車停止部115Cに位置する可動ガイドレール1112のそれぞれは、第2位置に位置しているため、係合部323は、第2ガイド溝1112aを通らず、該可動ガイドレール1112のレール107A側の側面付近を通過していく。そして、搬送装置30が第1台車停止部115Aに達すると、先述の通り第1台車停止部115Aに位置する可動ガイドレール1112は第1位置にされているため、係合部323が第1台車停止部115Aに位置する可動ガイドレール1112の第2ガイド溝1112aに係合される。これにより、第1台車停止部115Aの第1エアシリンダ116を駆動させることで、車輪保持部材32を第1位置から第2位置に移動させ、2台目の車両台車20の車輪21の保持を行うことが出来る。
【0079】
そして、搬送装置30を第3台車停止部115Cまで移動させれば、2台目の車両台車20は、第3台車停止部115Cのストッパ装置40により第3台車停止部115Cに位置決めされる。さらに、搬送装置30の係合部323は、第3台車停止部115Cに位置している可動ガイドレール1112の第2ガイド溝1112aに係合される。よって、第3台車停止部115Cの第1エアシリンダ116を駆動させると、車輪保持部材32を第2位置から第1位置に移動させることが出来、車輪21の保持が解除される。これにより、2台目の車両台車20の搬送が完了される。
【0080】
さらに、3台目の車両台車20の搬送を行うには、3台目の車両台車20を、引き込み機構120を用いて第1台車停止部115Aに停止させ、搬送装置30を、第1駆動装置により第1台車停止部115Aに戻す。なお、3台目の車両台車20を第1台車停止部115Aに停止させるのと、搬送装置30を第1台車停止部115Aに戻すのは、どちらを先に行っても良い。
【0081】
搬送装置30を第1台車停止部115Aに戻す際、2台目の車両台車20の搬送を行うときと同様に、第1台車停止部115Aに位置する可動ガイドレール1112は、第1位置に移動させた状態としておく。そして、第3台車停止部115Cに位置する可動ガイドレール1112は、2台目の車両台車20の保持解除を行った際に、第1位置に位置された状態となっているため、この状態で、搬送装置30を第1台車停止部115Aに向かって走行させると、搬送装置30の係合部323は、第1ガイド溝1111aを通らずに、固定ガイドレール1111のレール107A側の側面付近を通過していく。また、第2台車停止部115Bに位置する可動ガイドレール1112は、第2位置に位置しているため、係合部323は、第2ガイド溝1112aを通らず、該可動ガイドレール1112のレール107A側の側面付近を通過していく。そして、搬送装置30が第1台車停止部115Aに達すると、第1台車停止部115Aに位置する可動ガイドレール1112は第1位置にされているため、係合部323が第1台車停止部115Aに位置する可動ガイドレール1112の第2ガイド溝1112aに係合される。これにより、第1台車停止部115Aの第1エアシリンダ116を駆動させることで、車輪保持部材32を第1位置から第2位置に移動させ、3台目の車両台車20の車輪21の保持を行うことが出来る。
【0082】
そして、搬送装置30を第2台車停止部115Bまで移動させれば、3台目の車両台車20は、第2台車停止部115Bのストッパ装置40により第2台車停止部115Bに位置決めされる。さらに、搬送装置30の係合部323は、第2台車停止部115Bに位置している可動ガイドレール1112の第2ガイド溝1112aに係合される。よって、第2台車停止部115Bの第1エアシリンダ116を駆動させると、車輪保持部材32を第2位置から第1位置に移動させることが出来、車輪21の保持が解除される。これにより、3台目の車両台車20の搬送が完了される。そして、最後の4台目の車両台車20は、引き込み機構120を用いて第1台車停止部115Aに停止させれば、積み込み完了となる。
【0083】
なお、上の説明においては、第1台車停止部115A側の引き込み機構120を用いて車両台車20を基台101に引き込み、第4台車停止部115D、
第3台車停止部115C、第2台車停止部115B、第1台車停止部115Aの順に車両台車20を停止させていくこととしているが、第4台車停止部115D側の引き込み機構120を用いて車両台車20を基台101に引き込み、第1台車停止部115A、第2台車停止部115B、第3台車停止部115C、第4台車停止部115Dの順に車両台車20を停止させることとしても良い。
【0084】
第1台車停止部115A、第2台車停止部115B、第3台車停止部115C、第4台車停止部115Dのそれぞれに車両台車20を停止させた後、鉄道車両用トラバーサ100を横行用レール150の上を走行させる。そして、鉄道車両用トラバーサ100を、鉄道車両用トラバーサ100のレール107A,107Bと第2の検修用レールとが横方向で一致する位置で停止させ、車両台車20を鉄道車両用トラバーサ100から第2の検修用レールに降ろしていく。
【0085】
車両台車20を鉄道車両用トラバーサ100から降ろすには、例えば、まず、第4台車停止部115D側の引き込み機構120を用いて、第4台車停止部115Dに停止されている車両台車20を、鉄道車両用トラバーサ100の端部開口105まで牽引し、鉄道車両用トラバーサ100から降ろす。そして、第3台車停止部115Cに停止されている車両台車20は、搬送装置30を用いて第4台車停止部115Dまで搬送した後、引き込み機構120を用いて、端部開口105まで牽引し、鉄道車両用トラバーサ100から降ろす。第2台車停止部115Bに停止されている車両台車20および第1台車停止部115Aに停止されている車両台車20も、順に、搬送装置30を用いて第4台車停止部115Dまで搬送した後、引き込み機構120を用いて、端部開口105まで牽引し、鉄道車両用トラバーサ100から降ろす。以上のように、4台の車両台車20を鉄道車両用トラバーサ100から降ろすことで、トラバースが完了する。なお、第4台車停止部115Dに停止されている車両台車20から降ろしていくのではなく、第1台車停止部115Aに停止されている車両台車20から順に降ろしていくことも可能である。
【0086】
以上説明したように、本実施形態の鉄道車両用トラバーサ100によれば、
(1)車両台車20を搭載するための基台101を備え、基台101は、車両台車20が走行可能なレール107A,107Bと、レール107A,107Bに沿って複数設けられる台車停止部115と、を備え、台車停止部115に停止された車両台車20を移送する鉄道車両用トラバーサ100において、レール107A,107Bに沿って移動可能であり、車両台車20をレール107A,107Bに沿って走行させるための搬送装置30を備えること、搬送装置30は、車両台車20の車輪21を保持するための車輪保持部材32を備えること、車輪保持部材32は、車輪21の保持を解除する第1位置と車輪21を保持する第2位置との間を移動可能であること、基台101は、搬送装置30をレール107A,107Bに沿って移動させるための第1駆動装置(例えば、モータ113および第1ループチェーン114)を備えること、台車停止部115は、台車停止部115に位置した搬送装置30の車輪保持部材32を第1位置と第2位置との間で移動させるための第2駆動装置(例えば、第1エアシリンダ116)と、を備えること、を特徴とする。
【0087】
(2)(1)に記載の鉄道車両用トラバーサ100において、第2駆動装置(例えば、第1エアシリンダ116)は直動動作可能な動作軸(例えばロッド1161)を備えること、車輪保持部材32は動作軸(ロッド1161)と係合する係合部323を備えること、搬送装置30が台車停止部115に位置したときに、係合部323が動作軸(ロッド1161)に係合し、該係合により、第2駆動装置(例えば、第1エアシリンダ116)が車輪保持部材32を、第1位置と第2位置との間で移動させることが可能になること、を特徴とする。
【0088】
(3)(1)または(2)に記載の鉄道車両用トラバーサ100において、台車停止部115は、車両台車20を位置決めするストッパ装置40を備えること、ストッパ装置40は、レール107A,107Bと平行に対向して配設される一対の車輪止部材41を備えること、一対の車輪止部材41のそれぞれは、レール107A,107Bの走行面1071の近傍に位置することで車輪21と接触可能となる車輪止め位置と、レール107A,107Bの走行面1071の近傍から退避することで、車輪21と接触不能となる退避位置と、の間で移動可能なこと、ストッパ装置40は、一対の車輪止部材41のそれぞれを車輪止め位置に位置するよう付勢する弾性部材(例えば、スプリング42)を備えること、台車停止部115に向かってレール107A,107Bを走行する車両台車20の車輪21が、一対の車輪止部材41の内の一方の車輪止部材41に、他方の車輪止部材41に対向する側とは反対側(側端面413)から接触すると、当該一方の車輪止部材41は、台車停止部115に向かう車両台車20の車輪21に押圧されることで弾性部材(例えば、スプリング42)の弾性力に抗して退避位置に向かって移動され、車輪21が、当該一方の車輪止部材41を通過することが可能なこと、車輪21が当該一方の車輪止部材41を通過すると、当該一方の車輪止部材41は、弾性部材(例えば、スプリング42)の弾性力により車輪止め位置に復帰し、他方の車輪止部材41ととともに車輪21を挟み、車両台車20を台車停止部115に位置決めすること、を特徴とする。
【0089】
以上の特徴を有する鉄道車両用トラバーサ100によれば、搬送装置30は、基台101が備える第1駆動装置(例えば、モータ113および第1ループチェーン114)により、レール107A,107Bに沿って移動される。さらに、搬送装置30は車両台車20の車輪21を保持するための車輪保持部材32を備えており、該車輪保持部材32は、台車停止部115が備える第2駆動装置(例えば、第1エアシリンダ116)により、車輪21の保持を解除する第1位置と車輪21を保持する第2位置との間で移動される。
【0090】
つまり、搬送装置30自身は何ら動力を有していない。搬送装置30が動力を有さない分、搬送装置30のサイズを小さくすることが出来る。よって、移動用スペースを最小限に抑えることが可能である。また、搬送装置30が動力を有さないため、搬送装置30を電源や制御装置に接続する必要がない。電源や制御装置は、基台101が備える第1駆動装置(例えば、モータ113)や台車停止部115が備える第2駆動装置(例えば、第1エアシリンダ116)に接続すれば良く、これらは搬送装置30のように移動するものではないため、配線用スペースを最小限に抑えることが出来る。鉄道車両用トラバーサ100が、移動用スペースおよび配線用スペースを最小限に抑えた省スペースな搬送装置30を備えることで、車両台車20をレール107A,107Bに沿って自動で走行させることが可能となる。車両台車20をレール107A,107Bに沿って自動で走行させることが可能となれば、鉄道車両用トラバーサ100における車両台車20の搬送に人手を用いる必要がなくなるため、作業者の安全確保が可能となる。
【0091】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、第1駆動装置として、モータ113および第1ループチェーン114を例示しているが、他の直動機構を用いることを妨げない。また、基台101に設けられた台車停止部115は4つとしているが、この数に限定されるものではなく、増減が可能である。
【符号の説明】
【0092】
20 車両台車
21 車輪
30 搬送装置
32 車輪保持部材
100 鉄道車両用トラバーサ
101 基台
107A レール
107B レール
113 モータ(第1駆動装置の一例)
114 ループチェーン(第1駆動装置の一例)
115 台車停止部
116 エアシリンダ(第2駆動装置の一例)
図1
図2
図3
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図5
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図11