(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】圧力検出装置
(51)【国際特許分類】
G01L 23/22 20060101AFI20241212BHJP
G01L 23/10 20060101ALI20241212BHJP
G01L 19/14 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G01L23/22
G01L23/10
G01L19/14
(21)【出願番号】P 2021041800
(22)【出願日】2021-03-15
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】岩下 貴司
(72)【発明者】
【氏名】上野 和久
(72)【発明者】
【氏名】小畑 元樹
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-173122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のハウジングと、
前記ハウジング内に設けられ、圧力の変化を検知する圧電素子と、
前記ハウジング内で前記圧電素子に接して配置され、圧力を当該圧電素子に伝達する圧力伝達部と、
前記圧力伝達部を前記ハウジングの軸方向に向けて加圧するように当該ハウジングに固定され、前記圧電素子に荷重を作用させる加圧部材と、
前記ハウジングに対して溶接されることにより当該ハウジング内で前記加圧部材を固定する固定部材と、を備え、
前記加圧部材は、前記固定部材により固定された状態で前記ハウジングと当該固定部材との溶接箇所を避ける退避部を有
し、
前記加圧部材の前記退避部として、前記溶接箇所に対向する部位に、当該溶接箇所に沿う方向に延びる溝が形成されていることを特徴とする、圧力検出装置。
【請求項2】
前記加圧部材は、導電性を有し、前記圧電素子と電気的に接続され、
前記ハウジングおよび前記固定部材は、導電性を有し、前記加圧部材および前記圧電素子と電気的に絶縁されていることを特徴とする、
請求項1に記載の圧力検出装置。
【請求項3】
前記加圧部材は、筒状であって、外周面に外方へ突出する突出部を備え、
前記ハウジングの内周面と前記固定部材とが絶縁部材を介して前記加圧部材の前記突出部を挟んだ状態で、当該ハウジングと当該固定部材とが溶接されることにより、前記加圧部材が固定され、
前記突出部とは異なる前記加圧部材の外周面において、前記ハウジングの内部で固定された状態で前記絶縁部材と対向する部位が、前記溶接箇所に対向する部位よりも高く形成され、当該絶縁部材に当たることを特徴とする、
請求項1または請求項2に記載の圧力検出装置。
【請求項4】
筒状のハウジングと、
前記ハウジング内に設けられ、圧力の変化を検知する圧電素子と、
前記ハウジング内で前記圧電素子に接して配置され、圧力を当該圧電素子に伝達する圧力伝達部と、
前記圧力伝達部を前記ハウジングの軸方向に向けて加圧するように当該ハウジングに固定され、前記圧電素子に荷重を作用させる加圧部材と、
前記ハウジングに対して溶接されることにより当該ハウジング内で前記加圧部材を固定する固定部材と、を備え、
前記加圧部材は、前記固定部材により固定された状態で前記ハウジングと当該固定部材との溶接箇所を避ける退避部を有し、
前記加圧部材は、筒状であって、外周面に外方へ突出する突出部を備え、
前記ハウジングの内周面と前記固定部材とが絶縁部材を介して前記加圧部材の前記突出部を挟んだ状態で、当該ハウジングと当該固定部材とが溶接されることにより、前記加圧部材が固定され、
前記突出部とは異なる前記加圧部材の外周面において、前記ハウジングの内部で固定された状態で前記絶縁部材と対向する部位が、前記溶接箇所に対向する部位よりも高く形成され、当該絶縁部材に当たることを特徴とする、圧力検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出素子を用いて圧力を検出する圧力検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関等の燃焼室内の圧力を検出する装置として、圧電素子等の検出素子を使用したものが提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、筒状のハウジングと、ハウジングの先端側に取り付けられるダイアフラムと、ハウジング内においてダイアフラムの後端側に配置され、ダイアフラムを介して作用する圧力を検知する圧電素子と、ハウジング内においてダイアフラムと圧電素子との間でこれら両者に当接して設けられ、ダイアフラムを介して作用する圧力を圧電素子に伝達する圧力伝達部と、圧力伝達部をハウジングの軸方向に向けて加圧するようにハウジングに固定されることで圧電素子に荷重を作用させる加圧部材と、を備え、レーザ溶接によりハウジングと加圧部材とが固定された圧力検出装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧力検出装置において、ハウジングを構成する複数の部材どうしの取り付けや、ハウジングとダイアフラムヘッドや支持部材等の部材との取り付けの方法として、レーザ溶接が行われる場合がある。レーザ溶接が行われると、部材の溶接箇所が盛り上がる溶接ビードが生じる。ここで、溶接ビードが生じると、溶接箇所の近傍で溶接箇所から離隔させて配置されている部品に対し、溶接ビードで盛り上がった部位が接触することが起こり得る。すると、溶接ビードが接触した部品に障害の発生等の影響が起こるおそれがある。
本発明は、圧力検出装置の溶接箇所において、溶接ビードが接触することによる他の部位への影響を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成する本発明の圧力検出装置は、筒状のハウジングと、このハウジング内に設けられ、圧力の変化を検知する圧電素子と、このハウジング内で圧電素子に接して配置され、圧力を圧電素子に伝達する圧力伝達部と、この圧力伝達部をハウジングの軸方向に向けて加圧するようにハウジングに固定され、圧電素子に荷重を作用させる加圧部材と、ハウジングに対して溶接されることによりハウジング内で加圧部材を固定する固定部材と、を備える。そして、加圧部材は、固定部材により固定された状態でハウジングと固定部材との溶接箇所を避ける退避部を有する。
ここで、加圧部材の退避部は、少なくとも加圧部材におけるハウジングと固定部材との溶接箇所に対向する部位であって、隣接する部位よりも低く形成されている構成としても良い。
より好ましくは、加圧部材の退避部として、溶接箇所に対向する部位に、この溶接箇所に沿う方向に延びる溝が形成されている構成としても良い。
また、加圧部材の退避部は、少なくとも加圧部材におけるハウジングと固定部材との溶接箇所に対向する部位に設けられ、加圧部材の退避部に隣接する部位が、退避部よりも高く形成されている構成としても良い。
また、好ましくは、加圧部材は、導電性を有し、圧電素子と電気的に接続され、ハウジングおよび固定部材は、導電性を有し、加圧部材および圧電素子と電気的に絶縁されている構成としても良い。
また、上記の圧力検出装置において、加圧部材は、筒状であって、外周面に外方へ突出する突出部を備え、ハウジングの内周面と固定部材とが絶縁部材を介して加圧部材の突出部を挟んだ状態で、ハウジングと固定部材とが溶接されることにより、加圧部材が固定され、突出部とは異なる加圧部材の外周面において、ハウジングの内部で固定された状態で絶縁部材と対向する部位が、溶接箇所に対向する部位よりも高く形成され、絶縁部材に当たる構成としても良い。
また、上記の目的を達成する他の本発明の圧力検出装置は、圧力の変化を検出する検出素子と、導電性を有し、検出素子を内部に収容すると共に、検出素子と電気的に接続される第1筐体と、導電性を有し、第1筐体を内部に収容すると共に、検出素子と電気的に絶縁される第2筐体と、第2筐体に対して溶接されることにより第1筐体を固定する固定部材と、を備える。そして、第1筐体は、第2筐体に対する溶接により部材の盛り上がりが生じる箇所に対向する部位に、この部材の盛り上がりとの接触を避ける凹部を有する。
ここで、第1筐体は、溶接により部材の盛り上がりが生じる箇所に対向する部位に、第2筐体の溶接箇所に沿う方向に延びる溝が形成されている構成としても良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、圧力検出装置の溶接箇所において、溶接ビードが接触することによる他の部位への影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係る圧力検出システムの概略構成図である。
【
図3】圧力検出装置の断面図(
図2のIII-III断面図)である。
【
図7】
図4に示した断面における第1溶接部および退避部の近傍の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[圧力検出システムの構成]
図1は、実施の形態に係る圧力検出システム1の概略構成図である。
この圧力検出システム1は、内燃機関10における燃焼室C内の圧力(燃焼圧)を検出する圧力検出装置20と、圧力検出装置20に対する給電を行うとともに圧力検出装置20が検出した圧力に基づいて内燃機関10の動作を制御する制御装置80と、圧力検出装置20と制御装置80とを電気的に接続する接続ケーブル90とを備えている。
【0010】
ここで、圧力の検出対象となる内燃機関10は、内部にシリンダが形成されたシリンダブロック11と、シリンダ内を往復運動するピストン12と、シリンダブロック11に締結されてピストン12等とともに燃焼室Cを構成するシリンダヘッド13とを有している。また、シリンダヘッド13には、燃焼室Cと外部とを連通する連通孔13aが設けられている。そして、この連通孔13aに、圧力検出装置20の先端側を挿入するとともに、圧力検出装置20に設けられたリブ部312b(後述する
図2参照)をシリンダヘッド13に固定することで、内燃機関10に対して圧力検出装置20を取り付けている。ここで、内燃機関10を構成するシリンダブロック11、ピストン12およびシリンダヘッド13は、鋳鉄やアルミニウム等、導電性を有する金属材料で構成されている。
【0011】
[圧力検出装置の構成]
図2は、圧力検出装置20の側面図である。
図3は、圧力検出装置20の断面図(
図2のIII-III断面図)である。
図4は、圧力検出装置20の先端側の拡大断面図である。
【0012】
本実施の形態の圧力検出装置20は、外部に露出する筐体部30と、圧力を検出するための各種機構を含み、ほぼ全体が筐体部30に収容されるとともに一部(後述する接続部材54)が外部に露出するように設けられる検出機構部40と、筐体部30の外周面に取り付けられるシール部70とを有している。そして、この圧力検出装置20は、
図1に示す内燃機関10に対し、
図2における左側(筐体部30が露出する部位)が燃焼室C(
図1において下側)を向くとともに、
図2における右側(検出機構部40が露出する部位)が外部(
図1において上方)を向くように取り付けられる。また、この状態において、シール部70は、シリンダヘッド13に設けられた連通孔13aの内部に位置する。なお、以下の説明では、
図2において、図中左に向かう側を圧力検出装置20の「先端側」と称し、図中右に向かう側を圧力検出装置20の「後端側」と称する。また、以下の説明では、
図2に一点鎖線で示す圧力検出装置20の中心線方向を、単に中心線方向と称する。
【0013】
[筐体部の構成]
筐体部30は、先端側筐体31と、先端側筐体31の先端側に取り付けられたダイアフラムヘッド32と、先端側筐体31の後端側に取り付けられた後端側筐体33とを備えている。
【0014】
(先端側筐体)
先端側筐体31は、中空構造を有し且つ全体として筒状を呈する部材である。この先端側筐体31は、導電性を有するとともに耐熱性および耐酸性が高いステンレス等の金属材料によって構成されている。筒状の先端側筐体31の軸方向は、上記の中心線方向に一致する。先端側筐体31は、ハウジングの一例であり、第2筐体の一例である。
【0015】
この先端側筐体31は、相対的に先端側に位置する第1先端側筐体311と、相対的に後端側に位置する第2先端側筐体312とを有している。ここで、先端側筐体31は、第1先端側筐体311の後端側の外周面と、第2先端側筐体312の先端側の内周面とをレーザ溶接することで、両者を一体化させる構成となっている。そして、第1先端側筐体311の先端側には、レーザ溶接によってダイアフラムヘッド32が取り付けられるとともに、第2先端側筐体312の後端側には、はめ合いによって後端側筐体33が取り付けられる。
【0016】
ここで、第1先端側筐体311の外周面には、シール部70を構成する第1シール部材71(詳細は後述する)を装着するための凹部311aが設けられている。また、第1先端側筐体311の内部には、先端側において第1の直径に設定された部位と、後端側において第1の直径よりも大きい第2の直径に設定された部位とが存在しており、これら2つの部位の境界には、両者を接続する内側段差部311bが設けられている。
【0017】
一方、第2先端側筐体312の外周面には、第1シール部材71とともにシール部70を構成する第2シール部材72(詳細は後述する)を装着するための凹部312aが設けられている。また、第2先端側筐体312の外周面のうち、上記凹部312aよりも後端側には、外側に突出するリング状のリブ部312bが設けられている。このリブ部312bは、上述したように、圧力検出装置20を内燃機関10(より具体的にはシリンダヘッド13)に固定するために用いられる。
【0018】
(ダイアフラムヘッド)
ダイアフラムヘッド32は、全体として円板状を呈する部材である。このダイアフラムヘッド32は、導電性を有するとともに耐熱性および耐酸性が高いステンレス等の金属材料によって構成されている。特に、この例では、ダイアフラムヘッド32および上記先端側筐体31を、同じ材料で構成している。
【0019】
このダイアフラムヘッド32は、先端側における中央部に凹部32bが形成されるとともに、外部(燃焼室C側)に露出することで圧力を受ける圧力受面(表面)32aと、圧力受面32aの裏側となる裏面を環状に切り欠くことによって設けられた凹部32cと、凹部32cの存在により、結果として圧力受面32aの中央部(凹部32bの形成部位)から後端側に突出する凸部32dとを有している。このダイアフラムヘッド32は、第1先端側筐体311における先端側の開口部を塞ぐように設けられている。そして、ダイアフラムヘッド32と第1先端側筐体311との境界部には、外周面の一周にわたってレーザ溶接が施されている。
【0020】
(後端側筐体)
後端側筐体33は、中空構造を有し且つ全体として筒状を呈する部材である。この後端側筐体33は、導電性を有するとともに耐熱性および耐酸性が高いステンレス等の金属材料によって構成されている。ただし、内燃機関10に圧力検出装置20を装着した状態において、後端側筐体33は、内燃機関10の外部に位置することから、上述した先端側筐体31よりも耐熱性および耐酸性が低い材料を用いることができる。筒状の後端側筐体33の軸方向は、上記の中心線方向に一致する。
【0021】
この後端側筐体33は、相対的に先端側に位置する第1後端側筐体331と、相対的に後端側に位置する第2後端側筐体332とを有する。ここで、後端側筐体33は、第1後端側筐体331の後端側の内周面に、第2後端側筐体332の先端側の外周面をはめ込むことで、両者を一体化させる構成となっている。そして、第1後端側筐体331の先端側には、はめ合いによって先端側筐体31(より具体的には第2先端側筐体312)が取り付けられるとともに、第2後端側筐体332の後端側には、はめ込みによって接続部材54(詳細は後述する)が取り付けられる。
【0022】
[検出機構部の構成]
検出機構部40は、圧電素子41と、先端電極部材42と、後端電極部材43とを備えている。また、検出機構部40は、絶縁リング45と、第1コイルバネ46と、伝導部材47と、保持部材48とを備えている。さらに、検出機構部40は、加圧部材49と、支持部材50と、第2コイルバネ51と、収容部材52とを備えている。さらにまた、検出機構部40は、回路基板53と、接続部材54と、接地板55と、Oリング56とを備えている。また、検出機構部40は、突き当てパイプ57を備えている。そして、検出機構部40は、絶縁パイプ60と、第1絶縁部材61と、第2絶縁部材62と、第3絶縁部材63と、第4絶縁部材64と、第5絶縁部材65とを備えている。
【0023】
(圧電素子)
圧電素子41は、全体として円柱状を呈する部材である。圧電素子41は、圧力の変化を検出する検出素子の一例である。この圧電素子41は、圧電縦効果の圧電作用を示す圧電体を備えている。圧電縦効果とは、圧電体の電荷発生軸と同一方向の応力印加軸に外力を加えると、電荷発生軸方向の圧電体の表面に電荷が発生することをいう。この圧電素子41は、先端側筐体31の内側であって、ダイアフラムヘッド32の後端側に配置されている。この圧電素子41は、中心線方向が応力印加軸の方向となるように、先端側筐体31内に収容されている。ここで、圧電素子41は、先端側筐体31の内部に設けられた加圧部材49の内側であって、この加圧部材49の内部に設けられた絶縁パイプ60の内側に配置されている。また、圧電素子41の外径は、この圧電素子41を内部に収容する絶縁パイプ60の内径よりもわずかに小さい。そして、圧電素子41の先端側の面は、先端電極部材42の後端側の面と接触している。一方、圧電素子41の後端側の面は、後端電極部材43の先端側の面と接触している。また、圧電素子41の外周面は、絶縁パイプ60の内周面と対峙している。このように、加圧部材49の内周面と圧電素子41の外周面との間に、絶縁パイプ60を設けることにより、加圧部材49および圧電素子41は、直接には接触しない。
【0024】
次に、圧電素子41に圧電横効果を利用した場合を例示する。圧電横効果とは、圧電体の電荷発生軸に対して直交する位置にある応力印加軸に外力を加えると、電荷発生軸方向の圧電体の表面に電荷が発生することをいう。薄板状に薄く形成した圧電体を複数枚積層して構成しても良く、このように積層することで、圧電体に発生する電荷を効率的に集めてセンサの感度を上げることができる。圧電素子41で使用可能な圧電体としては、圧電縦効果及び圧電横効果を有するランガサイト系結晶(ランガサイト、ランガテイト、ランガナイト、LTGA)や水晶、ガリウムリン酸塩などを使用することを例示することができる。なお、本実施の形態の圧電素子41では、圧電体としてLTGA単結晶を用いている。
【0025】
(先端電極部材)
先端電極部材42は、全体として円柱状を呈する部材である。先端電極部材42は、圧力伝達部の一例である。この先端電極部材42は、導電性を有するとともに耐熱性が高いステンレス等の金属材料によって構成されている。また、先端電極部材42の先端側の面における中央部には、アルミナやジルコニア等を含む、絶縁性を呈するセラミックス材料をコートしてなる絶縁皮膜42aが形成されている。ここで、絶縁皮膜42aは、例えば円形状を呈しており、その直径は、ダイアフラムヘッド32の裏面に設けられた凸部32dの直径よりも大きく、加圧部材49の先端側に設けられた開口部の直径よりも小さい。
【0026】
この先端電極部材42は、先端側筐体31の内部に設けられた加圧部材49の内側に配置されている。そして、先端電極部材42は、ダイアフラムヘッド32の後端側であって、圧電素子41の先端側に配置されている。ただし、先端電極部材42は、上述した圧電素子41とは異なり、絶縁パイプ60内に収容されていない。また、先端電極部材42の外径は、この先端電極部材42を内部に収容する加圧部材49の内径よりもわずかに小さい。そして、先端電極部材42の先端側の面のうち、絶縁皮膜42aが設けられている中央部の領域は、ダイアフラムヘッド32の裏面に設けられた凸部32dの後端側の面と接触している。また、先端電極部材42の先端側の面のうち、絶縁皮膜42aが設けられていない周縁部の領域は、加圧部材49の先端側に設けられた開口部の裏側の面に接触している。一方、先端電極部材42の後端側の面は、圧電素子41の先端側の面に接触している。また、先端電極部材42の外周面は、加圧部材49の内周面と対峙している。
【0027】
(第1後端電極部材)
後端電極部材43は、全体として円板状を呈する部材である。この後端電極部材43は、導電性を有するとともに耐熱性が高く、圧電素子41との熱膨張差が小さいステンレス等の金属材料によって構成されている。
【0028】
この後端電極部材43は、先端側筐体31の内部に設けられた加圧部材49の内側に配置されている。そして、後端電極部材43は、圧電素子41の後端側に配置されている。ここで、後端電極部材43は、加圧部材49の内部に設けられた絶縁パイプ60の内側に配置されている。また、後端電極部材43の外径は、圧電素子41の外径とほぼ同じであって、絶縁パイプ60の内径よりもわずかに小さい。そして、後端電極部材43の先端側の面は、圧電素子41の後端側の面と接触している。一方、後端電極部材43の後端側の面は、絶縁リング45の先端側の面と接触している。また、後端電極部材43の外周面は、絶縁パイプ60の内周面と対峙している。このように、加圧部材49の内周面と後端電極部材43の外周面との間に、絶縁パイプ60を設けることにより、加圧部材49および後端電極部材43は、直接には接触しない。
【0029】
(絶縁リング)
絶縁リング45は、全体として環状を呈する部材である。この絶縁リング45は、絶縁性を有するとともに耐熱性が高いアルミナ等のセラミックス材料によって構成されている。
【0030】
この絶縁リング45は、先端側筐体31の内部に設けられた加圧部材49の内側に配置されている。そして、絶縁リング45は、後端電極部材43の後端側であって、支持部材50の先端側に位置している。ここで、絶縁リング45に設けられた貫通孔の内部には、伝導部材47の先端の第2凸部47bおよび第2凸部47bに装着された第1コイルバネ46が配置されている。また、絶縁リング45の外径は、加圧部材49の内径よりもわずかに小さい。さらに、絶縁リング45の貫通孔の内径は、第1コイルバネ46の外径よりもわずかに大きい。そして、絶縁リング45の先端側の面は、後端電極部材43の後端側の面と接触している。一方、絶縁リング45の後端側の面は、支持部材50の先端側の面と接触している。また、絶縁リング45の外周面は、加圧部材49の内周面と対峙している。さらに、絶縁リング45の内周面は、第1コイルバネ46と対峙している。
【0031】
(第1コイルバネ)
第1コイルバネ46は、全体として螺旋状を呈する部材であって、中心線方向に伸縮する。この第1コイルバネ46は、導電性を有するとともに先端側筐体31よりも導電性が高い真ちゅう等の金属材料によって構成されており、その表面には金めっきが施されている。
【0032】
この第1コイルバネ46は、先端側筐体31の内部に設けられており、加圧部材49の内側であって支持部材50の内側に配置されている。そして、第1コイルバネ46は、後端電極部材43の後端側であって、伝導部材47の先端側に配置されている。すなわち、第1コイルバネ46は、後端電極部材43と伝導部材47とに跨って配置されている。ここで、第1コイルバネ46の先端側は、絶縁リング45の貫通孔内で後端電極部材43の後端側の面と接触しており、第1コイルバネ46の後端側は、伝導部材47の先端側に設けられた第2凸部47bに巻き回されている。そして、第1コイルバネ46の内径は、伝導部材47の先端側に設けられた第2凸部47bの外径よりも大きく且つ第1凸部47aの内径よりも小さい。一方、第1コイルバネ46の外径は、絶縁リング45の貫通孔の内径よりも小さい。その結果、第1コイルバネ46の先端は、絶縁リング45の貫通孔内で後端電極部材43の後端側の面と突き当たっている。これに対し、第1コイルバネ46の後端は、伝導部材47における第1凸部47aと第2凸部47bとの境界部(段差部)に突き当たっている。また、第1コイルバネ46の絶縁リング45から露出した部分の外周は、エアギャップを介して支持部材50の内周面と対峙している。このように、支持部材50の内周面と第1コイルバネ46との間に、エアギャップを設けることで、支持部材50と第1コイルバネ46とは、直接には接触しない。
【0033】
(伝導部材)
伝導部材47は、全体として棒状を呈する部材である。この伝導部材47は、導電性を有する真ちゅう等の金属材料によって構成されており、その表面には金めっきが施されている。この伝導部材47には、その先端に、上述した第1凸部47aおよび第2凸部47bが設けられており、その後端に、中心線方向の中央部よりも直径が小さく且つ後端側に向かって突出する後端側凸部47cが設けられている。
【0034】
この伝導部材47は、先端側筐体31の内部に設けられており、先端部および後端部(後端側凸部47c)を除くほぼすべての部位が、保持部材48の内部に配置されている。また、伝導部材47の先端側は加圧部材49の内側に、伝導部材47の後端側は収容部材52の内側に、先端側と後端側との間に位置する中間部は第2コイルバネ51の内側に、それぞれ位置している。そして、伝導部材47は、第1コイルバネ46の後端側であって、回路基板53の先端側に配置されている。この伝導部材47は、保持部材48に中心線方向に沿って設けられた貫通孔を貫通するように配置されている。そして、伝導部材47の先端部(保持部材48に覆われていない部位)の外径は、支持部材50の内径よりも小さい。さらに、伝導部材47の後端部(後端側凸部47c)の外径は、保持部材48に設けられた保持部の内幅とほぼ同じである。さらにまた、伝導部材47の中心線方向中央部の外径は、保持部材48の内径とほぼ同じである。そして、伝導部材47の第2凸部47bには、第1コイルバネ46の後端側が装着されることで、第1コイルバネ46と接触している。一方、伝導部材47の後端側凸部47cは、保持部材48に設けられた保持部にはめ込まれている。また、伝導部材47の先端部の外周面は、エアギャップを介して支持部材50の内周面と対峙している。さらに、伝導部材47の中心線方向中央部の外周面は、保持部材48およびエアギャップを介して第2コイルバネ51と対峙している。さらにまた、伝導部材47の後端部の外周面は、エアギャップおよび保持部材48を介して収容部材52の外周面と対峙している。このように、支持部材50の内周面と伝導部材47の外周面との間に、エアギャップおよび保持部材48を設けることにより、支持部材50および伝導部材47は、直接には接触しない。また、第2コイルバネ51の内周面と伝導部材47の外周面との間に、エアギャップおよび保持部材48を設けることにより、第2コイルバネ51および伝導部材47は、直接には接触しない。さらに、収容部材52の内周面と伝導部材47の外周面との間に、エアギャップを設けることにより、収容部材52および伝導部材47は、直接には接触しない。
【0035】
(保持部材)
保持部材48は、先端側に位置し筒状を呈する部位と、後端側に位置し板状を呈する部位とを、一体化してなる部材である。この保持部材48は、絶縁性を有するPPT(Polypropylene Terephthalate:ポリプロピレンテレフタレート)等の合成樹脂材料によって構成された基材と、導電性を有する銅等の金属材料で構成された配線および端子等とを含んでいる。この保持部材48の先端側に位置する筒状の部位には、伝導部材47が収容され、この保持部材48の後端側に位置する板状の部位には、回路基板53が装着される。このように、保持部材48は、伝導部材47および回路基板53を保持する機能を有している。
【0036】
保持部材48のうち、支持部材50、第2コイルバネ51および収容部材52と対向する部位(外周面)は、合成樹脂材料で構成されており、この部位に金属材料を露出させないようになっている。また、保持部材48のうち、伝導部材47の先端部と後端部との間に位置する中間部と対向する部位(内周面)も、合成樹脂材料で構成されており、この部位に金属材料を露出させないようになっている。また、保持部材48における筒状部の後端側には、金属材料で構成され、伝導部材47の後端側凸部47cをはめ込んで保持する保持部が設けられている。この保持部には、回路基板53の信号入力端子(図示せず)と電気的に接続するための配線が取り付けられている。
【0037】
この保持部材48は、先端側筐体31の内部と後端側筐体33の内部とに跨って設けられている。また、保持部材48の先端側は加圧部材49の内側に、伝導部材47の後端側は収容部材52の内側に、先端側と後端側との間に位置する中間部は第2コイルバネ51の内側に、それぞれ位置している。そして、保持部材48は、絶縁リング45の後端側であって、接続部材54の先端側に配置されている。
【0038】
保持部材48の先端側に位置する筒状の部位の外径は、支持部材50の内径よりも小さく、この被覆部材の後端側に位置する板状の部位の外径は、この部位における収容部材52の内径よりも小さい。また、保持部材48の筒状の部位の先端側の外周面は、エアギャップを介して支持部材50の内周面および第2コイルバネ51の内周面に対峙している。さらに、保持部材48の筒状の部位の後端側の外周面および板状部の部位の外周面は、収容部材52の内周面に接触しあるいはエアギャップを介して収容部材52の内周面に対峙している。
【0039】
(加圧部材)
加圧部材49は、全体として筒状を呈する部材である。この加圧部材49は、導電性を有するとともに耐熱性が高いステンレス等の金属材料によって構成されている。加圧部材49は、第1筐体の一例である。
【0040】
図5は、加圧部材49の斜視図である。以下では、
図5も参照しつつ、加圧部材49の構成について説明を行う。なお、
図5においては、図中左下側が先端側となり、図中右上側が後端側となる。
【0041】
本実施の形態の加圧部材49は、最も先端側に位置するとともに先端には開口部が設けられる先端筒状部491と、先端筒状部491の後端側に配置される後端筒状部493と、後端筒状部493に設けられた円環状の突出部492とを備える。この加圧部材49では、先端筒状部491および後端筒状部493よりも突出部492の外径が大きくなっており、先端筒状部491よりも後端筒状部493の外径が大きくなっている。加圧部材49において、先端筒状部491と後端筒状部493との境界部には、段差部49aが形成される。より詳しくは、段差部49aは、後端筒状部493における突出部492よりも先端側の部位のうち最も先端側に位置し、外径が異なる先端筒状部491と後端筒状部493との間の段差をなす、先端側を向いた面である。また、突出部492の先端側に第1押さえ面49bが設けられ、突出部492の後端側に第2押さえ面49cが設けられている。なお、加圧部材49の内径は、先端に設けられた開口部を除き、同じ大きさである。このため、この加圧部材49においては、後端筒状部493の肉厚が先端筒状部491の肉厚よりも大きくなっている。したがって、加圧部材49では、先端筒状部491が後端筒状部493よりも撓みやすく(バネとして機能しやすく)なっている。また、後端筒状部493において、突出部492の肉厚は、突出部492以外の部位の肉厚よりも大きい。さらに、詳しくは後述するが、後端筒状部493における突出部492の後端側には、肉厚の薄い部位である退避部494が形成される。
【0042】
この加圧部材49は、先端側筐体31の内部に、先端筒状部491が先端側となるように設けられている。加圧部材49の内部には、圧電素子41、先端電極部材42、後端電極部材43、絶縁リング45、支持部材50の先端側、絶縁パイプ60、第1コイルバネ46、伝導部材47の先端側および保持部材48の先端側が収容されている。そして、加圧部材49は、ダイアフラムヘッド32の後端側であって、収容部材52の先端側に配置されている。また、加圧部材49の外径は、先端筒状部491と突出部492と後端筒状部493とで異なるが、すべての位置において先端側筐体31の内径よりも小さい。さらに、加圧部材49の内径は、先端電極部材42、絶縁パイプ60(圧電素子41、後端電極部材43、絶縁リング45)と対峙する部位では、これらの外径よりもわずかに大きく、支持部材50と対峙する部位では、支持部材50の外径とほぼ同じである。
【0043】
ここで、加圧部材49の後端側に設けられた後端筒状部493の外周面と第1先端側筐体311の後端側の内周面との間には、突き当てパイプ57が配置されている。突き当てパイプ57は、固定部材の一例である。詳しくは後述するが、加圧部材49の突出部492が、第4絶縁部材64および第5絶縁部材65を介して、第1先端側筐体311の内側段差部311bと突き当てパイプ57とに挟まれることにより、加圧部材49が先端側筐体31の内部に固定される。
【0044】
そして、加圧部材49における先端筒状部491の先端側の面(開口部の表側の面)は、エアギャップを介してダイアフラムヘッド32の凹部32cと対峙している。一方、後端筒状部493の後端側は、エアギャップを介して第1絶縁部材61と対峙している。また、先端筒状部491の外周面は、エアギャップを介して第1先端側筐体311の内周面と対峙し、段差部49aは、エアギャップを介して第1先端側筐体311の内側段差部311bと対峙している。また、加圧部材49における突出部492の第1押さえ面49bおよび第1押さえ面49bの先端側に位置する後端筒状部493の外周面は、先端筒状部491の内側段差部311bに接して配置される第4絶縁部材64と対峙している。また、突出部492の外周面は、エアギャップを介して第1先端側筐体311の内周面と対峙している。また、突出部492の第2押さえ面49cおよび第2押さえ面49cの後端側に隣接する部位における後端筒状部493の外周面は、第5絶縁部材65と対峙している。また、後端筒状部493の外周面は、エアギャップを介して突き当てパイプ57の内周面と対峙している。このように、加圧部材49の外周面と第1先端側筐体311の内周面および突き当てパイプ57の内周面との間に、エアギャップ、第4絶縁部材64および第5絶縁部材65を設けることにより、加圧部材49と、第1先端側筐体311および突き当てパイプ57とは、直接には接触しない。
【0045】
(支持部材)
支持部材50は、全体として筒状を呈する部材である。この支持部材50は、導電性を有するとともに耐熱性が高いステンレス等の金属材料によって構成されている。
【0046】
この支持部材50は、先端側筐体31の内部に設けられており、その先端側は加圧部材49の内側に位置し、その後端側は加圧部材49の外側に突出している。また、支持部材50は、その内部に、第1コイルバネ46、伝導部材47の先端側および保持部材48の先端側を収容している。そして、支持部材50は、絶縁リング45の後端側であって、収容部材52の先端側に配置されている。また、支持部材50の外径は、加圧部材49の内径とほぼ同じである。さらに、支持部材50の内径は、中心線方向の位置によって異なるが、第1コイルバネ46と対峙する部位においては第1コイルバネ46の外径よりも大きく、伝導部材47と対峙する部位においては伝導部材47の外径よりも大きく、保持部材48と対峙する部位においては保持部材48の外径よりも大きい。そして、支持部材50の先端側の面(開口部の表側の面)は、絶縁リング45の後端側の面と接触している。一方、支持部材50の後端側の面は、エアギャップを介して収容部材52と対峙している。また、支持部材50の外周面の先端側は、加圧部材49の内周面と接触しており、支持部材50の外周面の後端側は、第2コイルバネ51の先端側と接触している。ここで、加圧部材49における後端側の内周面と、この部位と対峙する支持部材50の外周面とを、一周にわたってレーザ溶接することで得た第2溶接部59によって、加圧部材49と支持部材50とを接合し固定している。これに対し、支持部材50の内周面は、エアギャップを介して第1コイルバネ46、伝導部材47および保持部材48と対峙している。このように、支持部材50の内周面と、第1コイルバネ46、伝導部材47および保持部材48との間に、エアギャップを設けることにより、支持部材50と、第1コイルバネ46、伝導部材47および保持部材48とは、直接には接触しない。
【0047】
(第2コイルバネ)
第2コイルバネ51は、全体として螺旋状を呈する部材であって、中心線方向に伸縮する。この第2コイルバネ51は、導電性を有するとともに耐熱性が高いステンレス等の金属材料によって構成されており、その表面には金めっきが施されている。このように、本実施の形態では、第1コイルバネ46と第2コイルバネ51とで、材質を異ならせている。
【0048】
この第2コイルバネ51は、先端側筐体31の内部に設けられており、その先端側は支持部材50における後端側且つ外側に、その後端側は収容部材52における先端側且つ外側に、それぞれ位置している。すなわち、第2コイルバネ51は、支持部材50と収容部材52とに跨って配置されている。また、第2コイルバネ51の外径は、先端側筐体31(より具体的には第2先端側筐体312)の内径よりも小さい。さらに、第2コイルバネ51の内径は、支持部材50の後端側の外径および収容部材52の先端側の外径よりもわずかに小さい。そして、第2コイルバネ51の外周は、エアギャップを介して先端側筐体31の内周面と対峙している。このように、第2コイルバネ51の外周と先端側筐体31の内周面との間に、エアギャップを設けることで、第2コイルバネ51と先端側筐体31とは、直接には接触しない。
【0049】
(収容部材)
収容部材52は、全体として筒状を呈する部材である。この収容部材52は、導電性を有するとともに先端側筐体31よりも導電性が高い真ちゅうやステンレス等の金属材料によって構成されており、その表面には金めっきが施されている。
【0050】
図6は、収容部材52の斜視図である。以下では、
図6も参照しつつ、収容部材52の構成について説明を行う。なお、
図6においても、図中左下側が先端側となり、図中右上側が後端側となる。
【0051】
本実施の形態の収容部材52は、最も先端側に位置するとともに先端には開口部が設けられる第1筒状部521と、第1筒状部521の後端側に配置される第2筒状部522と、第2筒状部522の後端側に配置される第3筒状部523と、第3筒状部523の後端側に配置される第4筒状部524とを備えている。この収容部材52では、第1筒状部521、第2筒状部522、第3筒状部523および第4筒状部524の順で、外径が大きくなっている。すなわち、この収容部材52では、先端側から後端側に向かって、階段状(4段)に直径が大きくなっている。そして、収容部材52は、第1筒状部521と第2筒状部522との境界部において両者を接続する第1段差部52aと、第2筒状部522と第3筒状部523との境界部において両者を接続する第2段差部52bと、第3筒状部523と第4筒状部524との境界部において両者を接続する第3段差部52cとをさらに備えている。なお、この収容部材52は、上述した加圧部材49とは異なり、その肉厚が、中心線方向の位置によらず一定の大きさに設定されている。このため、加圧部材49では、第1筒状部521、第2筒状部522、第3筒状部523および第4筒状部524の順で、内径が大きくなっている。
【0052】
この収容部材52は、先端側筐体31の内部と後端側筐体33の内部とに跨って、第1筒状部521が先端側となるように設けられている。収容部材52の内部には、伝導部材47の後端側、保持部材48の後端側、回路基板53および接地板55が収容されている。そして、収容部材52は、支持部材50の後端側であって、接続部材54の先端側に配置されている。また、収容部材52の外径は、第1筒状部521と第2筒状部522と第3筒状部523と第4筒状部524とで異なるが、すべての位置において先端側筐体31および後端側筐体33の内径よりも小さい。さらに、収容部材52の内径も、第1筒状部521と第2筒状部522と第3筒状部523と第4筒状部524とで異なるが、内部に収容される各部材の外径よりも大きい。
【0053】
ここで、収容部材52における第2筒状部522の後端側および第2段差部52bと、第2先端側筐体312の内周面との間には、第1絶縁部材61が配置されている。また、収容部材52における第3筒状部523の後端側および第3段差部52cと、第2先端側筐体312の内周面との間には、第2絶縁部材62が配置されている。さらに、収容部材52における第4筒状部524と第1後端側筐体331との間には、第3絶縁部材63が配置されている。
【0054】
そして、収容部材52における第1筒状部521の先端側の面(開口部の表側の面)は、エアギャップを介して支持部材50の後端側の面と対峙している。また、第1筒状部521は、第2コイルバネ51と接触している。一方、第4筒状部524の後端側は、保持部材48と対峙している。また、第1筒状部521および第1段差部52aの外周面は、エアギャップを介して第2先端側筐体312の内周面と対峙している。さらに、第2筒状部522の外周面は、エアギャップおよび第1絶縁部材61を介して第2先端側筐体312の内周面と対峙している。さらにまた、第2段差部52bは、第1絶縁部材61を介して第2先端側筐体312の内周面と対峙している。また、第3筒状部523の外周面は、エアギャップおよび第2絶縁部材62を介して第2先端側筐体312の内周面と対峙している。さらに、第3段差部52cの外周面は、第2絶縁部材62を介して第2先端側筐体312の内周面と対峙している。そして、第4筒状部524の外周面は、エアギャップを介して第2先端側筐体312の内周面と対峙し、且つ、エアギャップおよび第3絶縁部材63を介して第1後端側筐体331の内周面と対峙している。このように、収容部材52の外周面と、第2先端側筐体312および第1後端側筐体331との間に、エアギャップ、第1絶縁部材61、第2絶縁部材62および第3絶縁部材63を設けることで、収容部材52と、第2先端側筐体312および第1後端側筐体331とは、直接には接触しない。
【0055】
(回路基板)
回路基板53は、全体として矩形板状を呈する部材である。この回路基板53は、受けた圧力に応じて圧電素子41が出力する微弱な電荷による電気信号に、電気回路を用いた各種処理を施すものであって、所謂プリント配線板によって構成されている。この回路基板53は、先端側筐体31の内部と後端側筐体33の内部とに跨って設けられている。また、回路基板53は、伝導部材47の後端側であって、接続部材54の先端側に配置されている。さらに、この回路基板53は、保持部材48に搭載されるとともにその全体が収容部材52の内側に配置されている。
【0056】
この回路基板53には、圧電素子41から入力される入力信号(電荷信号)を積分して電圧信号に変換する積分回路と、積分回路から入力される電圧信号を増幅して出力信号とする増幅回路と、これら積分回路および増幅回路を構成するオペアンプ等の素子の電源となる電源回路とが搭載されている(すべて図示せず)。
【0057】
(接続部材)
接続部材54は、全体として柱状を呈する部材である。この接続部材54は、絶縁性を有するPPT等の合成樹脂材料によって構成された基材と、導電性を有する銅等の金属材料で構成された配線および端子等とを含んでいる。ただし、接続部材54のうち、第2後端側筐体332と接触あるいは対峙する部位(外周面)は、合成樹脂材料で構成されており、この部位に金属材料を露出させないようになっている。また、接続部材54の後端側には、凹んだ形状を有するとともに後端側に向かって開口する開口部が設けられている。そして、この接続部材54の先端側には、先端側に向かって突出するとともに回路基板53と電気的に接続される基板側コネクタ54aが設けられている。一方、この接続部材54の後端側であって、上記開口部の内側には、後端側に向かって突出するとともに、
図1に示す接続ケーブル90の接続対象となるケーブル側コネクタ54bが設けられている。また、接続部材54における先端側の外周面には、一周にわたって凹部が設けられており、この凹部には、Oリング56が取り付けられている。
【0058】
この接続部材54は、その先端側が第2後端側筐体332の内側に、その後端側が第2後端側筐体332の外側に、それぞれ位置している。そして、接続部材54の外周面に取り付けられたOリング56は、第2後端側筐体332の内側において、第2後端側筐体332の内周面と接触している。
【0059】
接続部材54の先端側に位置する筒状の部位の外径は、第2後端側筐体332の内径よりも小さい。これに対し、接続部材54の後端側に位置する筒状の部位の外径は、第2後端側筐体332の外径とほぼ同じである。また、接続部材54の先端側は、エアギャップあるいはOリング56を介して第2後端側筐体332の内周面と対峙している。
【0060】
(接地板)
接地板55は、全体として帯状を呈する部材である。この接地板55は、導電性を有するリン青銅等の金属材料によって構成されており、その表面には金めっきが施されている。
【0061】
この接地板55は、先端側筐体31の内部と後端側筐体33の内部とに跨って設けられており、その先端は収容部材52の内部であって回路基板53の上方に位置し、その後端は収容部材52の後端よりも後端側に突出している。そして、接地板55の先端側は、回路基板53の接地端子(図示せず)と電気的に接続され、接地板55の後端側は、収容部材52における第4筒状部524の内周面と電気的に接続されている。
【0062】
(Oリング)
Oリング56は、全体として環状を呈する部材である。このOリング56は、絶縁性を有するとともに耐熱性、耐透湿性および耐酸性が高いPTFE(Poly tetra fluoro ethylene:ポリテトラフルオロエチレン)等の合成樹脂材料によって構成されている。
【0063】
このOリング56は、接続部材54の外周面に取り付けられており、第2後端側筐体332に接続部材54を取り付けた際に、接続部材54の外周面と第2後端側筐体332の内周面とに挟まれるようになっている。
【0064】
(突き当てパイプ)
突き当てパイプ57は、全体として筒状を呈する部材である。この突き当てパイプ57は、導電性を有するとともに耐熱性が高いステンレス等の金属材料によって構成されている。
【0065】
この突き当てパイプ57は、先端側筐体31において第1先端側筐体311と第2先端側筐体312とが重なる領域の内部であって、第1先端側筐体311の内側に配置されている。そして、突き当てパイプ57は、加圧部材49における突出部492の後端側であって、第1絶縁部材61の先端側に位置している。また、突き当てパイプ57の外径は、この突き当てパイプ57を収容する第1先端側筐体311における後端側の内径とほぼ同じである。一方、突き当てパイプ57の内径は、加圧部材49における後端筒状部493の外径よりも大きい。そして、突き当てパイプ57の先端側の面は、加圧部材49における突出部492の後端側に配置される第5絶縁部材65と接触している。一方、突き当てパイプ57の後端側の面は、エアギャップを介して第1絶縁部材61の先端側の面と対峙している。また、突き当てパイプ57の外周面は、第1先端側筐体311における後端側の内周面と接触している。ここで、第1先端側筐体311における後端側の内周面と、この部位と対峙する突き当てパイプ57の外周面とを、一周にわたってレーザ溶接することで得た第1溶接部58によって、第1先端側筐体311と突き当てパイプ57とを接合し固定している。これに対し、突き当てパイプ57の内周面は、エアギャップを介して加圧部材49における後端筒状部493の外周面と対峙している。このように、加圧部材49における突出部492および後端筒状部493と、突き当てパイプ57との間に、第5絶縁部材65およびエアギャップを設けることにより、突き当てパイプ57と加圧部材49とは、直接には接触しない。
【0066】
(第1溶接部)
第1溶接部58は、第1先端側筐体311における後端側の内周面と、突き当てパイプ57の外周面とを、一周にわたってレーザ溶接することで形成される部位である。第1溶接部58およびその近傍には、レーザ溶接により溶接ビード(溶接によって生じる部材の盛り上がり)が形成される場合がある。溶接ビードの形成場所や形状は、溶接部位の構造、形状、溶接の仕方等によって異なる。そして、加圧部材49を固定する第1先端側筐体311および突き当てパイプ57の構造や突き当てパイプ57の肉厚によっては、突き当てパイプ57の内周面側に溶接ビードが形成されることが起こり得る。例えば、レーザ光を照射して母材を溶融し、凝固させる溶接方法の場合、肉厚の薄い突き当てパイプ57の内周面側に溶接ビードが形成される場合がある。
【0067】
(第2溶接部)
第2溶接部59は、加圧部材49における後端側の内周面と、支持部材50の外周面とを、一周にわたってレーザ溶接することで形成される部位である。第2溶接部59の近傍にはレーザ溶接により溶接ビードが形成される場合がある。
【0068】
(絶縁パイプ)
絶縁パイプ60は、全体として円筒状を呈する部材である。この絶縁パイプ60は、絶縁性を有するLCP(Liquid Crystal Polymer:液晶ポリマ)等の合成樹脂材料によって構成されている。この絶縁パイプ60は、先端側筐体31の内部に設けられた加圧部材49の内側に配置されている。この絶縁パイプ60の内部には、圧電素子41、後端電極部材43の先端側が収容されている。そして、絶縁パイプ60は、先端電極部材42の後端側であって絶縁リング45の先端側に位置している。また、絶縁パイプ60の外径は、加圧部材49の内径よりもわずかに小さい。さらに、絶縁パイプ60の内径は、圧電素子41および後端電極部材43の外径よりもわずかに大きい。そして、絶縁パイプ60の先端側は、先端電極部材42の後端側の面に対峙している。一方、絶縁パイプ60の後端側は、絶縁リング45の先端側の面に対峙している。また、絶縁パイプ60の外周面は、加圧部材49の内周面と対峙している。さらに、絶縁パイプ60の内周面は、圧電素子41、後端電極部材43の外周面と対峙している。このように、加圧部材49と、圧電素子41、後端電極部材43との間に、絶縁パイプ60を設けることにより、加圧部材49と、後端電極部材43とは、直接には接触しない。
【0069】
(第1絶縁部材)
第1絶縁部材61は、先端側が筒状を呈し、後端側が環状を呈する部材である。この第1絶縁部材61は、絶縁性を有するとともに耐熱性が高いアルミナ等のセラミックス材料によって構成されている。
【0070】
この第1絶縁部材61は、先端側筐体31の内部に配置されている。そして、第1絶縁部材61は、収容部材52における第2筒状部522および第2段差部52b(
図6参照)の外側に配置されている。また、第1絶縁部材61の外径は、対応する部位の第2先端側筐体312の内径よりもわずかに小さく、第1絶縁部材61の内径は対応する部位の収容部材52の外径よりもわずかに大きい。そして、第1絶縁部材61の外周面は、第2先端側筐体312と接触しており、第1絶縁部材61の内周面は、収容部材52と接触している。
【0071】
(第2絶縁部材)
第2絶縁部材62は、全体として環状を呈する部材である。この第2絶縁部材62は、絶縁性を有するとともに耐熱性が高いアルミナ等のセラミックス材料によって構成されている。
【0072】
この第2絶縁部材62は、先端側筐体31の内部であって第1絶縁部材61よりも後端側となる位置に配置されている。そして、第2絶縁部材62は、収容部材52における第3筒状部523および第3段差部52c(
図6参照)の外側に配置されている。また、第2絶縁部材62の外径は、対応する部位の第2先端側筐体312の内径よりもわずかに小さく、第2絶縁部材62の内径は対応する部位の収容部材52の外径よりもわずかに大きい。そして、第2絶縁部材62の外周面は、第2先端側筐体312と接触しており、第2絶縁部材62の内周面は、収容部材52と接触している。
【0073】
このように、先端側筐体31(第2先端側筐体312)と収容部材52との間に、エアギャップ、第1絶縁部材61および第2絶縁部材62を設けることで、先端側筐体31と収容部材52とは、直接には接触しない。
【0074】
(第3絶縁部材)
第3絶縁部材63は、全体として筒状を呈する部材である。この第3絶縁部材63は、絶縁性を有するとともに耐熱性が高いアルミナ等のセラミックス材料によって構成されている。
【0075】
この第3絶縁部材63は、後端側筐体33の内部であって第2絶縁部材62よりも後端側となる位置に配置されている。そして、第3絶縁部材63は、収容部材52における第4筒状部524の外側に位置している。また、第3絶縁部材63の外径は、第1後端側筐体331の内径とほぼ同じであり、第3絶縁部材63の内径は、収容部材52における第4筒状部524の外径よりも大きい。そして、第3絶縁部材63の外周面は、第1後端側筐体331の内周面と接触しており、第3絶縁部材63の内周面は、先端側の一部が収容部材52と接触し、その他はエアギャップを介して収容部材52と対峙する。
【0076】
(第4絶縁部材)
第4絶縁部材64は、全体として環状を呈する部材である。この第4絶縁部材64は、絶縁性を有するとともに耐熱性が高いジルコニア等のセラミックス材料によって構成されている。
【0077】
この第4絶縁部材64は、先端側の面が、第1先端側筐体311の内側段差部311bと接し、後端側の面が加圧部材49の突出部492の第1押さえ面49bと接するように配置されている。また、第4絶縁部材64は、外径が、第1先端側筐体311の内径のうち大きい方の第2の直径とほぼ同じであり、第4絶縁部材64の外周面は、第1先端側筐体311の内周面と接している。また、第4絶縁部材64は、内径が、加圧部材49の後端筒状部493の外径とほぼ同じであり、第4絶縁部材64の内周面は、加圧部材49の突出部492よりも先端側における後端筒状部493の外周面と接している。そして、第4絶縁部材64の厚さは、加圧部材49の後端筒状部493の外径と突出部492の外径との差分、言い換えれば、後端筒状部493の外周面に対する突出部492の外周面の高さよりも大きい。
【0078】
(第5絶縁部材)
第5絶縁部材65は、全体として環状を呈する部材である。この第5絶縁部材65は、絶縁性を有するとともに耐熱性が高いジルコニア等のセラミックス材料によって構成されている。
【0079】
この第5絶縁部材65は、先端側の面が、加圧部材49の突出部492の第2押さえ面49cと接し、後端側の面が突き当てパイプ57の先端側の面と接するように配置されている。また、第5絶縁部材65は、外径が、第1先端側筐体311の内径のうち大きい方の第2の直径とほぼ同じであり、第5絶縁部材65の外周面は、第1先端側筐体311の内周面と接している。また、第5絶縁部材65は、内径が、加圧部材49の後端筒状部493の外径とほぼ同じであり、第5絶縁部材65の内周面は、加圧部材49の後端筒状部493の外周面と接している。そして、第5絶縁部材65の厚さは、加圧部材49の後端筒状部493の外径と突出部492の外径との差分、言い換えれば、後端筒状部493の外周面に対する突出部492の外周面の高さよりも大きい。
【0080】
第4絶縁部材64および第5絶縁部材65の厚さを上記のようにしたことにより、加圧部材49の外周面は、第4絶縁部材64および第5絶縁部材65と接触するか、または、エアギャップを介して第1先端側筐体311および突き当てパイプ57の内周面と対峙する。したがって、加圧部材49と第1先端側筐体311および突き当てパイプ57とは、直接には接触しない。
【0081】
[シール部の構成]
シール部70は、相対的に先端側に位置する第1シール部材71と、相対的に後端側に位置する第2シール部材72とを有する。なお、内燃機関10に圧力検出装置20を取り付けた状態において、第1シール部材71および第2シール部材72は、シリンダヘッド13に設けられた連通孔13a(
図1参照)の内周面に突き当たる。
【0082】
(第1シール部材)
第1シール部材71は、中空構造を有し全体として筒状を呈する部材である。この第1シール部材71は、絶縁性を有するとともに耐熱性および耐酸性が高いPTFE等の合成樹脂材料によって構成されている。
【0083】
この第1シール部材71は、第1先端側筐体311の外周面に設けられた凹部311aにはめ込まれている。そして、その内径は、凹部311aの外径よりもわずかに小さくなっており、その外径は、連通孔13aの内径よりもわずかに大きくなっている。
【0084】
(第2シール部材)
第2シール部材72は、全体として環状を呈する部材であり、ここではOリングを用いている。この第2シール部材72も、絶縁性を有するとともに耐熱性および耐酸性が高いPTFE等の合成樹脂材料によって構成されている。
【0085】
この第2シール部材72は、第2先端側筐体312の外周面に設けられた凹部312aにはめ込まれている。そして、その内径は、凹部312aの外径よりもわずかに小さくなっており、その外径は、連通孔13aの内径よりもわずかに大きくなっている。
【0086】
[圧力検出装置における電気的な接続構造]
ここで、圧力検出装置20における電気的な接続構造について説明を行う。
【0087】
(正の経路)
圧力検出装置20において、圧電素子41の後端側の端面(正極)は、金属製の後端電極部材43と、金属製の第1コイルバネ46とを介して、金属製の伝導部材47と電気的に接続されている。そして、金属製の伝導部材47は、保持部材48に設けられた金属製の保持部、配線および端子を介して、回路基板53に設けられた入力端子(図示せず)と電気的に接続される。以下では、圧電素子41の後端側の面から、後端電極部材43、第1コイルバネ46、伝導部材47および保持部材48を介して、回路基板53に至る電気的な経路を、『正の経路』と称する。
【0088】
(負の経路)
一方、圧力検出装置20において、圧電素子41の先端側の端面(負極)は、金属製の先端電極部材42と、金属製の加圧部材49と、金属製の支持部材50(第2溶接部59)と、金属製の第2コイルバネ51と、金属製の収容部材52と、金属製の接地板55とを介して、回路基板53に設けられた接地端子(図示せず)と電気的に接続されている。以下では、圧電素子41の先端側の面から、先端電極部材42、加圧部材49、支持部材50、第2コイルバネ51、収容部材52および接地板55を介して、回路基板53に至る電気的な経路を『負の経路』と称する。
【0089】
(筐体経路)
他方、圧力検出装置20において、金属製のダイアフラムヘッド32は、金属製の先端側筐体31(第1先端側筐体311および第2先端側筐体312)を介して、金属製の後端側筐体33(第1後端側筐体331および第2後端側筐体332)と電気的に接続されている。また、この圧力検出装置20では、金属製の第1先端側筐体311が、金属製の突き当てパイプ57(第1溶接部58)と電気的に接続されている。以下では、ダイアフラムヘッド32から先端側筐体31を介して後端側筐体33および突き当てパイプ57に至る電気的な経路を『筐体経路』と称する。
【0090】
(正の経路と負の経路との関係)
ここで、本実施の形態の圧力検出装置20では、正の経路の外側に負の経路が存在している。換言すれば、負の経路の内部に正の経路が収容されている。そして、正の経路と負の経路とは、絶縁パイプ60、絶縁リング45、保持部材48および両経路の間に形成されるエアギャップによって、電気的に絶縁されている。ここで、本実施の形態では、負の経路が第1電気経路の一例となっており、正の経路が第2電気経路の一例となっている。
【0091】
(負の経路と筐体経路との関係)
また、この圧力検出装置20では、負の経路の外側に筐体経路が存在している。換言すれば、筐体経路の内部に負の経路が収容されている。そして、負の経路と筐体経路とは、先端電極部材42に設けられた絶縁皮膜42a、加圧部材49の突出部492を挟む第4絶縁部材64と第5絶縁部材65、第1絶縁部材61、第2絶縁部材62、第3絶縁部材63および両経路の間に形成されるエアギャップによって、電気的に絶縁されている。
【0092】
(筐体経路と正の経路との関係)
そして、この圧力検出装置20では、結果として、正の経路の外側に筐体経路が存在している。換言すれば、筐体経路の内部に正の経路が収容されている。そして、上述したように、正の経路と負の経路とが電気的に絶縁され、且つ、負の経路と筐体経路とが電気的に絶縁されていることにより、筐体経路と正の経路とが、電気的に絶縁されていることになる。
【0093】
(加圧部材の外周面に設けられた退避部)
ここで、加圧部材49の外周面に設けられた退避部494について説明する。第1先端側筐体311と突き当てパイプ57とをレーザ溶接することにより第1溶接部58に溶接ビードが形成される場合があることを述べた。突き当てパイプ57の内周面と加圧部材49の外周面とは、エアギャップを介して対峙しており、電気的に絶縁されている。しかし、第1溶接部58において突き当てパイプ57の内周面に溶接ビードが形成され、溶接ビードが加圧部材49に接触すると、突き当てパイプ57が含まれる筐体経路と加圧部材49が含まれる負の経路とが短絡してしまう。第1溶接部58において第1先端側筐体311の外周面に形成される溶接ビードは、研削して除去することも可能である。しかし、突き当てパイプ57の内周面に形成される溶接ビードを研削することは、突き当てパイプ57の内周面と加圧部材49の外周面との間にわずかな隙間しかないため、容易ではない。また、たとえ研削できたとしても、かかる部位の機械的強度が低下する懸念がある。そこで、本実施の形態では、加圧部材49の外周面の第1溶接部58(溶接が行われる箇所)と対向する位置に、溶接ビードから退避するための退避部494を設けた。
【0094】
図7は、
図4に示した断面における第1溶接部58および退避部494の近傍の拡大図である。退避部494は、後端筒状部493における突出部492の後端側の外周面で、少なくとも第1溶接部58に対向する位置に形成されている。退避部494は、後端筒状部493における隣接する部位よりも肉厚が薄く形成されている。そして、退避部494は、隣接する後端筒状部493の外周面よりも低く形成された凹部となっている(
図5参照)。退避部494の具体的な形状の例を挙げると、退避部494は、第1溶接部58に沿う方向に延びる溝として、言い換えれば、後端筒状部493の外周面を一周にわたって連続する溝として形成される。
【0095】
加圧部材49の外周面において、上記のような退避部494を形成することにより、加圧部材49の外周面と突き当てパイプ57の内周面との間の距離が、退避部494が形成されていない部位よりも広くなる。このため、第1溶接部58に溶接ビードが形成された場合であっても、溶接ビードと加圧部材49とが接触して負の経路と筐体経路とが短絡することを防止できる。
【0096】
退避部494は、第1溶接部58に溶接ビードが形成されても接触しない程度に加圧部材49と突き当てパイプ57との間の距離を確保できればよく、退避部494の具体的な形状は、上述した溝に限定しない。例えば、加圧部材49の後端筒状部493の外周面において、第4絶縁部材64および第5絶縁部材65に接する部位を、退避部494を含む他の部位よりも高く形成しても良い。ただし、加圧部材49は、圧電素子41に対して予荷重を付与する部材であるため、先端筒状部491および後端筒状部493の各々において、ある程度の剛性を有することが要求される。そのため、加圧部材49のサイズや材料によっては、後端筒状部493における第4絶縁部材64および第5絶縁部材65に接する部位以外の全体の肉厚を薄くするのではなく、退避部494のみが隣接する部位に対して窪んだ形状とすることが望ましい。
【0097】
なお、本実施の形態では、第1溶接部58に対峙する加圧部材49の外周面において、第1溶接部58の溶接ビードから退避するための退避部494を設ける構成を説明した。これに対し、加圧部材49の内周面と支持部材50の外周面とを溶接して形成される第2溶接部59にも溶接ビードは発生し得る。しかし、支持部材50が十分に厚さを有するため、本実施の形態では、第1溶接部58とは異なり、第2溶接部59において支持部材50の内周面側に溶接ビードが形成されることは考慮しない。また、支持部材50の内部であって第2溶接部59と対向する位置には、合成樹脂材料で形成された保持部材48が存在するため、溶接ビードが接触することによる電気的な短絡は発生しない。したがって、第2溶接部59における溶接ビードから退避する構成は設けていない。
【0098】
(その他)
ここで、筐体経路を構成する筐体部30は、圧力検出装置20において外部に露出する部位であり、特に、ダイアフラムヘッド32は、燃焼に伴って酸性度が高くなる燃焼室Cに対峙する部位となっている。これに対し、正の経路および負の経路を構成する各部材は、圧力検出装置20において筐体部30内に収容される部位である。このため、正の経路および負の経路を構成する各部材は、筐体経路(筐体部30)を構成する各部材よりも導電性が高い材料とすることが好ましく、また、筐体経路(筐体部30)を構成する各部材は、正の経路および負の経路を構成する各部材よりも耐酸性が高い材料とすることが好ましい。
【0099】
[圧力検出装置の組立手順]
次に、本実施の形態で用いた圧力検出装置20の組立手順について説明を行う。
【0100】
まず、第1先端側筐体311の先端側とダイアフラムヘッド32の裏面側(凸部32d側)とを対向させて両者を突き当てる。そして、この状態で、第1先端側筐体311とダイアフラムヘッド32との境界部に、一周にわたってレーザ溶接を行う。
【0101】
次に、第1先端側筐体311とダイアフラムヘッド32とを含む構造体における第1先端側筐体311内に、後端側から、第4絶縁部材64を挿入し、次いで、先端筒状部491を先端側として加圧部材49を挿入する。このとき、加圧部材49の突出部492の第1押さえ面49bが、第4絶縁部材64を介して第1先端側筐体311の内周面に設けられた内側段差部311bに突き当たるまで、加圧部材49の挿入を行う。これにより、加圧部材49における先端筒状部491の先端側に設けられた開口部に、ダイアフラムヘッド32の凸部32dが挿入される。
【0102】
次に、第1先端側筐体311の内周面と加圧部材49における後端筒状部493の外周面との間に、後端側から、第5絶縁部材65を挿入し、次いで、突き当てパイプ57を挿入する。このとき、突き当てパイプ57の先端側が、第5絶縁部材65に突き当たるまで、突き当てパイプ57の挿入を行う。
【0103】
この状態で、第1先端側筐体311の後端側と突き当てパイプ57とを、一周にわたってレーザ溶接し、第1溶接部58を形成する。このとき、第1先端側筐体311の内側段差部311bと突き当てパイプ57の先端側との間に、第4絶縁部材64、第5絶縁部材65を介在させて加圧部材49の突出部492が挟み込まれることによって、加圧部材49は、第1先端側筐体311に対し固定される。これにより、第1先端側筐体311およびダイアフラムヘッド32に対する、加圧部材49の位置決めがなされる。なお、溶接により突き当てパイプ57の内周面に溶接ビードが形成されても、加圧部材49の外周面に退避部494が設けられているため、電気的に短絡することはない。
【0104】
次に、第1先端側筐体311、ダイアフラムヘッド32、加圧部材49および突き当てパイプ57を含む構造体における加圧部材49内に、後端側から、先端電極部材42、絶縁パイプ60、圧電素子41、後端電極部材43、絶縁リング45および支持部材50を、この順に挿入する。なお、加圧部材49内に先端電極部材42を挿入する際、絶縁皮膜42aが形成されている面を先端側とする。このとき、加圧部材49内に収容される先端電極部材42の先端側に設けられた絶縁皮膜42aが、ダイアフラムヘッド32の後端側に設けられた凸部32dと接触する。また、絶縁パイプ60の内側に、圧電素子41、後端電極部材43が配置される。
【0105】
この状態で、加圧部材49に対する、支持部材50の中心線方向の位置調整を行い、加圧部材49および支持部材50を介して圧電素子41にかかる荷重(予荷重)を調整する。
【0106】
そして、加圧部材49に対する支持部材50の中心線方向の位置調整が完了した後、加圧部材49の後端側と支持部材50とを、一周にわたってレーザ溶接し、第2溶接部59を形成する。このとき、圧電素子41は、その先端側が先端電極部材42を介して、その後端側が後端電極部材43、絶縁リング45および支持部材50を介して、加圧部材49に対して固定される。また、この状態では、既に、第1先端側筐体311およびダイアフラムヘッド32に対して、加圧部材49が固定されている。このため、加圧部材49内に収容される圧電素子41は、予め決められた予荷重が付与された状態で、ダイアフラムヘッド32に対して固定されることになる。これにより、第1先端側筐体311およびダイアフラムヘッド32に対する、加圧部材49、支持部材50および圧電素子41の位置決めがなされる。
【0107】
続いて、支持部材50までが取り付けられた構造体における支持部材50内に、後端側から、伝導部材47の先端側に設けられた第2凸部47bおよび第2凸部47bに装着された第1コイルバネ46を挿入する。また、上記構造体における支持部材50の後端側に、後端側から第2コイルバネ51を挿入して装着する。さらに、上記構造体における第1先端側筐体311に、後端側から、第2先端側筐体312をねじ込んで取り付ける。さらにまた、第2先端側筐体312内に、後端側から第1絶縁部材61および第2絶縁部材62を、この順に挿入する。これに伴い、第1絶縁部材61は、第2先端側筐体312内の先端側に設けられた段差部に突き当たって位置決めされ、第2絶縁部材62は、第2先端側筐体312内の後端側に設けられた段差部に突き当たって位置決めされる。
【0108】
一方、上記構造体の組立とは別工程にて、保持部材48の先端側に、先端側から伝導部材47を挿入する。また、この保持部材48の後端側に、接地板55を含む回路基板53を取り付ける。このとき、保持部材48に取り付けられた伝導部材47の後端側凸部47cと回路基板53とが、電気的に接続される。そして、収容部材52内に、後端側から、伝導部材47および回路基板53(接地板55)を装着した保持部材48を、伝導部材47を先端側として挿入する。このとき、保持部材48における筒状部と板状部との境界(板状部の先端側)が、収容部材52に設けられた第2段差部52bの内周面に突き当てるまで、保持部材48の挿入を行う。これに伴い、保持部材48の筒状部の先端側および保持部材48の筒状部から露出する伝導部材47の先端側が、第1筒状部521よりも先端側に突出する。また、収容部材52の内周面と、接地板55の後端側とが接触する。
【0109】
そして、第2絶縁部材62までが取り付けられた構造体における第2先端側筐体312内に、後端側から、伝導部材47、回路基板53(接地板55)および保持部材48を含む収容部材52を、第1筒状部521を先端側として挿入する。このとき、収容部材52に設けられた第2段差部52bが、第2先端側筐体312内に取り付けられた第1絶縁部材61に突き当たるまで(収容部材52に設けられた第3段差部52cが、第2先端側筐体312内に取り付けられた第2絶縁部材62に突き当たるまで)、収容部材52の挿入を行う。これに伴い、収容部材52における第2筒状部522の後端側および第2段差部52bの外周面が、第1絶縁部材61の内周面および後端側の面と接触する。また、収容部材52における第3筒状部523の後端側および第3段差部52cの外周面が、第2絶縁部材62の内周面および後端側の面と接触する。また、収容部材52の第1筒状部521が第2コイルバネ51の後端側に挿入されるとともに、この第2コイルバネ51の後端が、収容部材52の第1段差部52aに突き当たる。その結果、第1コイルバネ46および第2コイルバネ51は、上記構造体に対して収容部材52を挿入する前と比べて、中心線方向に圧縮された状態となる。
【0110】
続いて、収容部材52までが取り付けられた構造体における第2先端側筐体312に、後端側から、第1後端側筐体331および第3絶縁部材63を挿入して取り付ける。これにより、収容部材52における第4筒状部524の外周面が、第3絶縁部材63の内周面に接触する。また、第1後端側筐体331に、後端側から、第2後端側筐体332を挿入する。
【0111】
それから、第2後端側筐体332までが取り付けられた構造体における第2後端側筐体332に対し、後端側から、外周面にOリング56を装着した接続部材54を、基板側コネクタ54aを先端側として挿入する。このとき、接続部材54に装着されたOリング56は、第2後端側筐体332の内部に入り込み、第2後端側筐体332と接触する。また、回路基板53と接続部材54に設けられた基板側コネクタ54aとが、電気的に接続される。
【0112】
最後に、接続部材54までが取り付けられた構造体における第1先端側筐体311の凹部311aに、第1シール部材71を取り付けるとともに、第2先端側筐体312の凹部312aに、第2シール部材72を取り付ける。
以上により、圧力検出装置20の組立が完了する。
【0113】
[圧力検出装置による圧力検出動作]
では、圧力検出装置20による圧力検出動作について説明を行う。
内燃機関10が動作しているとき、ダイアフラムヘッド32の圧力受面32aに、燃焼室C内で発生した圧力(燃焼圧)が付与される。ダイアフラムヘッド32では、圧力受面32aが受けた圧力が裏側の凸部32dに伝達され、さらに凸部32dから絶縁皮膜42aを介して先端電極部材42へと伝達される。そして、先端電極部材42に伝達された圧力は、先端電極部材42と後端電極部材43とに挟まれた圧電素子41に作用し、圧電素子41では、受けた圧力に応じた電荷が生じる。圧電素子41に生じた電荷は、正の経路を介して、回路基板53の入力信号端子(図示せず)電荷信号として供給される。回路基板53に供給された電荷信号は、回路基板53に実装された回路にて各種処理が施されることで出力信号とされる。そして、回路基板53から出力された出力信号は、接続部材54を介して、外部(ここでは接続ケーブル90および制御装置80)に送信される。
【0114】
[本実施の形態の効果]
本実施の形態の圧力検出装置20では、加圧部材49と支持部材50との中心線方向の位置関係を固定することで、加圧部材49と支持部材50との間に圧電素子41を挟み込み、圧電素子41に予め決められた荷重を付与するようにした。そして、圧電素子41を内部に収容する加圧部材49の突出部492を、第4絶縁部材64と第5絶縁部材65とを介在させて、先端側筐体31の内周面と突き当てパイプ57とで挟むことにより、加圧部材49を先端側筐体31に対して固定した。これにより、加圧部材49と先端側筐体31とを電気的に絶縁するとともに、加圧部材49および支持部材50を介して筐体部30(先端側筐体31)に、荷重の変動を抑制した状態で圧電素子41を固定することができる。
【0115】
本実施の形態の圧力検出装置20では、加圧部材49の外周面のうち、第1先端側筐体311と突き当てパイプ57とを溶接することにより形成される第1溶接部58と対向する位置に、退避部494を設けた。これにより、第1溶接部58における突き当てパイプ57の内周面側に溶接ビードが形成されても、突き当てパイプ57が含まれる筐体経路と加圧部材49が含まれる負の経路とが短絡することを防止することができる。
【0116】
また、本実施の形態の圧力検出装置20では、圧電素子41とダイアフラムヘッド32との間に存在する先端電極部材42の先端側に絶縁皮膜42aを設けた。これにより、先端電極部材42とダイアフラムヘッド32とを電気的に絶縁することができる。
【0117】
ここで、本実施の形態では、上述した先端電極部材42や加圧部材49が、圧電素子41の負の経路を兼ねる構成となっているが、上述した構成を採用することにより、この負の経路を、先端側筐体31およびダイアフラムヘッド32を含む筐体経路と電気的に絶縁することができる。
【0118】
本実施の形態の圧力検出装置20は内燃機関10に取り付けられており、この内燃機関10が自動車に搭載されている場合、クラクション、ヘッドライトおよびワイパー等で発生したkHzオーダーの周波数のノイズ(以下では低周波ノイズと称する)が、内燃機関10のシリンダヘッド13に侵入してくる。そして、本実施の形態では、金属で構成されたシリンダヘッド13に、圧力検出装置20のうち金属で構成された筐体部30を取り付けているため、シリンダヘッド13に侵入してきた低周波ノイズは、圧力検出装置20の筐体部30にも伝播する。
【0119】
ここで、本実施の形態の圧力検出装置20では、筐体部30を含む筐体経路と、圧電素子41から回路基板53に至る正の経路および負の経路とを、電気的に絶縁している。このため、シリンダヘッド13から圧力検出装置20の筐体部30に伝播した低周波ノイズは、加圧部材49および支持部材50や伝導部材47等を介して、回路基板53に伝達されにくくなる。その結果、低周波ノイズに起因する、回路基板53における電位の揺れ(変動)が抑制されることになり、回路基板53から外部(制御装置80等)に出力される出力信号の揺れ(変動)を低減させることが可能になる。
【0120】
また、内燃機関10が自動車に搭載されている場合、自動車の周囲には、通常、携帯電話、ラジオおよびテレビ等で使用されるMHzオーダーの周波数の電波が飛び交う。この電波が、圧力検出装置20に設けられた伝導部材47に照射されると、MHzオーダーの周波数のノイズ(以下では高周波ノイズと称する)が、回路基板53に伝達されることになってしまう。
【0121】
ここで、本実施の形態の圧力検出装置20では、加圧部材49および支持部材50を用いて、伝導部材47を覆っている。このため、外部から圧力検出装置20に照射される電波は、加圧部材49および支持部材50によって遮られることになり、伝導部材47に伝達されにくくなる。その結果、高周波ノイズに起因する、回路基板53における電位の揺れ(変動)が抑制されることになり、回路基板53から外部に出力される出力信号の揺れ(変動)を低減させることが可能になる。
【0122】
また、本実施の形態では、金属製の収容部材52を用いて、回路基板53を覆っている。このため、外部から圧力検出装置20に照射される電波は、収容部材52によって遮られることになり、回路基板53に到達しにくくなる。その結果、高周波ノイズに起因する、回路基板53における電位の揺れ(変動)が抑制されることになり、回路基板53から外部に出力される出力信号の揺れ(変動)を、さらに低減させることが可能になる。
【0123】
[その他]
本実施の形態では、加圧部材49の外周面のうち、第1先端側筐体311と突き当てパイプ57とを溶接することにより形成される第1溶接部58と対向する位置に、退避部494を設けた。一方、加圧部材49と支持部材50とを溶接することにより形成される第2溶接部59に関しては、この第2溶接部59に対向する位置にある保持部材48に溶接ビードから退避する構成は設けていない。しかし、保持部材48のこの部位に関しても、溶接ビードから退避する構成を設けても良い。
【0124】
本実施の形態の圧力検出装置20では、第1溶接部58および第2溶接部59以外にも、先端側筐体31を構成する第1先端側筐体311と第2先端側筐体312との接合部分や、ダイアフラムヘッド32と第1先端側筐体311との境界部に対してレーザ溶接を施している。これらの部位においても、溶接箇所の近傍の部材であって、溶接ビードが形成されることが想定される位置に対向する部位に、凹部等の溶接ビードから退避する構成を設けても良い。溶接時における溶接ビードが形成されている時点では、溶接ビードは高温である。そのため、溶接箇所の近傍の部材に高温の溶接ビードが接触することで、部材の特性が変化する等の影響が生じる可能性もある。そこで、溶接ビードから退避する構成を設けることで、そのような影響の発生を回避することができる。
【0125】
なお、本実施の形態では、先端電極部材42の先端側に絶縁皮膜42aを設けることにより、負の経路を構成する先端電極部材42と筐体経路を構成するダイアフラムヘッド32とを電気的に絶縁するようにしていたが、これに限られない。例えば、先端電極部材42とダイアフラムヘッド32との間に、絶縁性を有するとともに耐熱性が高いアルミナ等のセラミックス材料からなる絶縁プレートを配置するようにしてもかまわない。
【0126】
また、本実施の形態では、収容部材52における第2筒状部522の後端側および第2段差部52bと第2先端側筐体312の内周面との間、収容部材52における第3筒状部523の後端側および第3段差部52cと第2先端側筐体312の内周面との間、収容部材52における第4筒状部524と第1後端側筐体331との間に、それぞれ、第1絶縁部材61、第2絶縁部材62、第3絶縁部材63を配置することにより、負の経路を構成する収容部材52と筐体経路を構成する先端側筐体31および後端側筐体33とを電気的に絶縁するようにしていたが、これに限られない。例えば、収容部材52の外周面の一部にアルミナやジルコニア等を含む、絶縁性を呈するセラミックス材料をコートしてなる絶縁皮膜を形成したり、収容部材52と先端側筐体31、後端側筐体33との間にエアギャップを形成したりしてもかまわない。
【0127】
さらに、本実施の形態では、先端電極部材42を絶縁パイプ60内に収容しないようにしていたが、これに限られるものではなく、先端電極部材42を絶縁パイプ60内に収容するようにしてもかまわない。
【0128】
さらにまた、本実施の形態では、圧力検出装置20における圧力の検出素子として、圧電素子41を用いた場合を例として説明を行ったが、これに限られるものではなく、例えばひずみゲージや離間した電極等を用いてもかまわない。
【符号の説明】
【0129】
1…圧力検出システム、10…内燃機関、20…圧力検出装置、30…筐体部、31…先端側筐体、32…ダイアフラムヘッド、33…後端側筐体、40…検出機構部、41…圧電素子、42…先端電極部材、42a…絶縁皮膜、43…後端電極部材、45…絶縁リング、46…第1コイルバネ、47…伝導部材、48…保持部材、49…加圧部材、492…突出部、493…後端筒状部、494…退避部、50…支持部材、51…第2コイルバネ、52…収容部材、53…回路基板、54…接続部材、55…接地板、56…Oリング、57…突き当てパイプ、58…第1溶接部、59…第2溶接部、60…絶縁パイプ、61…第1絶縁部材、62…第2絶縁部材、63…第3絶縁部材、64…第4絶縁部材、65…第5絶縁部材、70…シール部、71…第1シール部材、72…第2シール部材、80…制御装置、90…接続ケーブル