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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】データ取得装置および該方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/02 20060101AFI20241212BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20241212BHJP
   B64C 13/18 20060101ALI20241212BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20241212BHJP
   B64D 45/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G01C15/02
G01B11/00 H
B64C13/18 Z
B64C39/02
B64D45/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021060953
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156984
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】角田 恵
(72)【発明者】
【氏名】石黒 晃子
(72)【発明者】
【氏名】森井 祐介
(72)【発明者】
【氏名】ニクラス べリストロム
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/139172(WO,A1)
【文献】特開2019-191134(JP,A)
【文献】特許第6505927(JP,B1)
【文献】国際公開第2016/002236(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00-15/06
G01B 11/00-11/30
B64C 13/18
B64C 39/02
B64D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空な柱状の部材である中空柱状構造体における内部のありさまを表す所定のデータを取得するデータ取得部と、
所定のマークに基づいて前記中空柱状構造体の内部における前記データ取得部のデータ取得方向を求める方向検出部と、
前記データ取得部および前記方向検出部を持ち、飛行する航空部と
前記中空柱状構造体の内部における前記航空部の位置を測定する位置測定部と
前記位置測定部で測定した前記航空部の位置に基づいて、前記中空柱状構造体の延長方向に直交する直交面における前記中空柱状構造体の中央位置に位置するように、前記航空部を制御する位置制御部とを備え、
前記所定のマークは、前記中空柱状構造体の内面に、一方向に延びる線状な第1マークと、前記第1マークに対する一方側の一方領域および他方側の他方領域のうちの一方に所定の形状の第2マークとを備え
前記航空部は、前記位置測定部および前記位置制御部をさらに持ち
前記中空柱状構造体における前記直交面での断面の形状は、円形、楕円形、長方形または正多角形であり
前記位置測定部は、前記直交面内における前記航空部から前記中空柱状構造体までの距離を測定する測距部を備え
前記位置制御部は、前記測距部で測定した距離の最大値または最小値に基づいて前記航空部を制御する、
データ取得装置。
【請求項2】
回転運動を検出することによって前記データ取得部のデータ取得方向を求める第2方向検出部をさらに備え、
前記方向検出部が誤検出したと判定した場合に、前記方向検出部の検出結果に代え前記第2方向検出部の第2検出結果を用いる、
請求項1記載のデータ取得装置。
【請求項3】
前記第1および第2マークを形成した前記中空柱状構造体の内面に向かって前記航空部が移動する方向とは反対の方向を測定方向とする第2測距部をさらに備える、
請求項1または請求項に記載のデータ取得装置。
【請求項4】
飛行する航空部で実行されるデータ取得方法であって
中空な柱状の部材である中空柱状構造体における内部のありさまを表す所定のデータを取得するデータ取得工程と、
所定のマークに基づいて前記中空柱状構造体の内部における前記データ取得工程のデータ取得方向を求める方向検出工程と、
前記中空柱状構造体の内部における前記航空部の位置を測定する位置測定工程と
前記位置測定工程で測定した前記航空部の位置に基づいて、前記中空柱状構造体の延長方向に直交する直交面における前記中空柱状構造体の中央位置に位置するように、前記航空部を制御する位置制御工程とを備え、
前記所定のマークは、前記中空柱状構造体の内面に、一方向に延びる線状な第1マークと、前記第1マークに対する一方側の一方領域および他方側の他方領域のうちの一方に所定の形状の第2マークとを備え
前記中空柱状構造体における前記直交面での断面の形状は、円形、楕円形、長方形または正多角形であり
前記位置測定工程は、前記直交面内における前記航空部から前記中空柱状構造体までの距離を測定する測距工程を備え
前記位置制御工程は、前記測距工程で測定した距離の最大値または最小値に基づいて前記航空部を制御する、
データ取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空柱状構造体における内部のありさま(状況、状態)を表す所定のデータを取得するデータ取得装置およびデータ取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、煙突や管等に代表される、中空な柱状体である中空柱状構造体に対し、保守や管理等のために、通常、その内部が点検(検査、測定)される。このような中空柱状構造体の内部の点検では、例えば足場やゴンドラ等の比較的大規模な仮設が設置され、前記仮設が利用される。前記仮設には、その設置や解体等に費用や時間を要することから、その低減が望まれている。このような要望に対し、例えば、特許文献1に開示された点検方法が提案されている。
【0003】
この特許文献1に開示された、無人小型飛行体を用いた点検方法は、構造物の内部空間に無人小型飛行体を飛行させて、構造物の内部の点検を行う無人小型飛行体を用いた点検方法であって、前記無人小型飛行体に、線状体に沿って機体を案内させるためのガイドを設け、前記内部空間内に前記線状体を伸びた状態で設置し、前記ガイドにより前記線状体に沿って前記無人小型飛行体を飛行させながら、前記構造物の内部の点検を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6505927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、中空柱状構造体における内部のありさまを表す所定のデータ(内部データ、例えば内部の画像等)を取得して得られた前記内部データに基づいて点検する場合、中空柱状構造体の内部に特徴点があまり無い場合、特に特徴点のほとんど無い円筒構造体である場合、前記内部データが何れの方向のデータであるか分かり難くなってしまう。前記特許文献1に開示された点検方法でも、ガイドに沿って移動する際に無人小型飛行体が周方向にずれてしまったり、無人小型飛行体の移動によってガイドが捻れてしまったりすると、無人小型飛行体で撮像した画像が何れの方向の画像であるか分かり難くなってしまう。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、中空柱状構造体における内部のありさまを表す所定の内部データを取得する場合に、データ取得方向の分かる内部データを取得できるデータ取得装置およびデータ取得方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかるデータ取得装置は、中空な柱状の部材である中空柱状構造体の内面に、一方向に延びる線状な第1マーク、および、前記第1マークに対する一方側の一方領域および他方側の他方領域のうちの一方に所定の形状の第2マーク、を形成するマーク形成部と、前記中空柱状構造体における内部のありさまを表す所定のデータを取得するデータ取得部と、前記第1および第2マークに基づいて前記中空柱状構造体の内部における前記データ取得部のデータ取得方向を求める方向検出部とを備える。好ましくは、上述のデータ取得装置において、前記中空柱状構造体は、延長方向に直交する断面が円形、楕円形、多角形または正多角形(例えば、三角形、正三角形、四角形、正方形、六角形、正六角形、八角形、正八角形等)である構造体である。好ましくは、上述のデータ取得装置において、前記中空柱状構造体は、煙突または管である。好ましくは、上述のデータ取得装置において、前記中空柱状構造体は、火力発電所の煙突または水力発電所の水管である。好ましくは、上述のデータ取得装置において、前記第2マークは、前記第1マークの所定の位置であって所定の角度で前記第1マークから線状に延びている。好ましくは、前記所定の角度は、略90度である。好ましくは、上述のデータ取得装置において、前記第2マークは、前記第1マークから離間した所定の位置に形成されている。好ましくは、上述のデータ取得装置において、前記マーク形成部は、前記中空柱状構造体の内面に形成される前記第1および第2マークとなるように、光を照射する光源部である。好ましくは、前記光源部は、レーザ光源装置や発光ダイオード等である。好ましくは、上述のデータ取得装置において、前記マーク形成部は、前記中空柱状構造体の内面に形成される前記第1および第2マークとなるように、燐光を放射する燐光部材(蓄光部材)である。好ましくは、上述のデータ取得装置において、前記中空柱状構造体の内面に形成される前記第1および第2マークとなるように、反射光を放射する反射部材と、前記反射部材に光を照射する光源部とを備える。好ましくは、前記データ取得装置において、前記方向検出部は、前記第1および第2マークに基づいて前記中空柱状構造体の延長方向に直交する直交面内での前記データ取得方向を求める。好ましくは、上述のデータ取得装置において、前記方向検出部は、前記第1および第2マークを撮像するカメラ(撮像部)と、前記カメラで撮像した画像に基づいて前記データ取得部のデータ取得方向を求める方向処理部とを備える。好ましくは、上述のデータ取得装置において、前記所定のデータは、前記中空柱状構造体の内部の画像であり、前記データ取得部は、画像を生成するカメラであり、前記データ取得部のデータ取得方向は、前記カメラの撮像方向である。好ましくは、上述のデータ取得装置において、前記所定のデータは、前記中空柱状構造体の内部の熱分布であり、前記データ取得部は、熱分布を測定するサーモグラフィーであり、前記データ取得部のデータ取得方向は、前記サーモグラフィーの測定方向である。好ましくは、上述のデータ取得装置において、前記所定のデータは、前記中空柱状構造体の内壁面における表面凹凸分布(径方向の高さ分布)であり、前記データ取得部は、当該データ取得装置から前記中空柱状構造体の内壁面までの距離を測定する測距装置(例えばレーザ測距装置等)であり、前記データ取得部のデータ取得方向は、前記測距装置の測定方向である。
【0008】
このようなデータ取得装置は、マーク形成部を備えるので、前記マーク形成部で形成された第1および第2マークを目印にデータ取得方向を求めることができる。このため、上記データ取得装置は、中空柱状構造体における内部のありさまを表す所定の内部データを取得する場合に、データ取得方向の分かる内部データを取得できる。
【0009】
他の一態様では、上述のデータ取得装置において、前記データ取得部および前記方向検出部を持ち、飛行する航空部をさらに備える。好ましくは、上述のデータ取得装置において、前記航空部は、自律的に飛行する。
【0010】
このようなデータ取得装置は、航空部を備えるので、例えば足場やゴンドラ等の比較的大規模な仮設を用いること無く、中空柱状構造体の内部における複数の箇所(位置)で中空柱状構造体の前記内部データを取得できる。
【0011】
他の一態様では、これら上述のデータ取得装置において、前記中空柱状構造体の内部における前記航空部の位置を測定する位置測定部と、前記位置測定部で測定した前記航空部の位置に基づいて、前記中空柱状構造体の延長方向に直交する直交面における前記中空柱状構造体の中央位置に位置するように、前記航空部を制御する位置制御部とをさらに備え、前記航空部は、前記位置測定部および前記位置制御部を持つ。好ましくは、上述のデータ取得装置において、前記中空柱状構造体の中央位置は、前記中空柱状構造体における前記直交面の断面形状に対する外接円の中心である。
【0012】
特許文献1に開示された点検方法では、線状体がワイヤや糸やロープである場合(特許文献1の[0022]段落)、無人小型飛行体が線状体に沿って移動すると、この移動により、線状体の延長方向に交差する交差面内における線状体の位置がずれてしまう結果、無人小型飛行体の位置もずれてしまう虞がある。無人小型飛行体の位置がずれると、無人小型飛行体に搭載されたカメラと構造物との距離がずれるため、画角が固定されている場合、構造物の内部を想定の領域サイズで撮像できなくなってしまう。このため、1画素当たりに写り込む被写体のサイズが想定からずれてしまい、想定の精度で画像が得られなくなってしまう。一方、前記線状体が棒状体で構成される場合、このような位置ずれを低減できる可能性があるが、棒状体が比較的長くなると、棒状体の一方端で固定される場合、棒状体の他方端では、棒状体の位置がずれてしまう虞があり、その両端で固定される場合でも、その中央位置の付近では、棒状体の位置がずれてしまう虞がある。また、棒状体の設置に、仮設が必要になってしまう虞もある。
【0013】
上記データ取得装置は、その測定した航空部の位置に基づいて、直交面での中空柱状構造体の中央位置に位置するように、航空部を制御するので、想定の精度で中空柱状構造体の内部データを取得できる。
【0014】
他の一態様では、上述のデータ取得装置において、前記中空柱状構造体における前記直交面での断面の形状は、円形、楕円形、長方形または正多角形であり、前記位置測定部は、前記直交面内における前記航空部から前記中空柱状構造体までの距離を測定する測距部を備え、前記位置制御部は、前記測距部で測定した距離の最大値または最小値に基づいて前記航空部を制御する。好ましくは、上述のデータ取得装置において、前記位置制御部は、さらに、前記方向検出部で求めた前記データ取得部のデータ取得方向に基づいて、前記データ取得部が所定の方向を向くように、前記航空部を制御する。好ましくは、上述のデータ取得装置において、前記航空部の高度を測定する高度測定部をさらに備え、前記航空部は、前記高度測定部を持ち、前記位置制御部は、さらに、前記高度測定部で求めた高度に基づいて、前記航空部が所定の高度となるように、前記航空部を制御する。
【0015】
中空柱状構造体の構造が既知である場合、中央位置から中空柱状構造体までの最大値または最小値も予め求めることができる。上記データ取得装置は、測距部で測定した距離が最大値または最小値となるように航空部を制御することで、前記中央位置に位置するように航空部を制御できる。
【0016】
他の一態様では、これら上述のデータ取得装置において、前記中空柱状構造体からの前記航空部の距離を測定する測距部と、前記方向検出部で求めた前記データ取得部のデータ取得方向および前記測距部で測定した前記航空部の距離に基づいて、前記中空柱状構造体の延長方向に直交する直交面において、所定の方向で前記中空柱状構造体から所定の距離に位置するように、前記航空部を制御する位置制御部とをさらに備え、前記航空部は、前記測距部および前記位置制御部を持つ。
【0017】
このようなデータ取得装置は、直交面において、所定の方向で中空柱状構造体から所定の距離に位置するように、航空部を制御するので、想定の精度で中空柱状構造体の内部データを取得できる。
【0018】
他の一態様では、これら上述のデータ取得装置において、回転運動を検出することによって前記データ取得部のデータ取得方向を求める第2方向検出部をさらに備え、前記方向検出部が誤検出したと判定した場合に、前記方向検出部の検出結果に代え前記第2方向検出部の第2検出結果を用いる。好ましくは、上述のデータ取得装置において、前記第2方向検出部は、少なくとも1軸の回転運動を検出するジャイロを備える。好ましくは、上述のデータ取得装置において、前記第2方向検出部は、3軸のジャイロと3方向の加速度計によって3次元の角速度および加速度を求める慣性計測装置(IMU、Inertial Measurement Unit)を備える。
【0019】
このようなデータ取得装置は、第2方向検出部をさらに備えるので、方向検出部をバックアップできる。
【0020】
他の一態様では、これら上述のデータ取得装置において、前記第1および第2マークを形成した前記中空柱状構造体の内面に向かう方向とは反対の方向を測定方向とする第2測距部をさらに備える。
【0021】
このようなデータ取得装置は、第2測距部をさらに備えるので、前記中空柱状構造体の内面に向かう方向とは反対の方向に障害がある場合に、前記障害を避けることが可能となる。
【0022】
本発明の他の一態様にかかるデータ取得方法は、中空な柱状の部材である中空柱状構造体の内面に、一方向に延びる線状な第1マーク、および、前記第1マークに対する一方側の一方領域および他方側の他方領域のうちの一方に所定の形状の第2マーク、を形成するマーク形成工程と、前記中空柱状構造体における内部のありさまを表す所定のデータを取得するデータ取得工程と、前記第1および第2マークに基づいて前記中空柱状構造体の内部における前記データ取得工程でのデータ取得方向を求める方向検出工程とを備える、
このようなデータ取得方法は、マーク形成工程を備えるので、前記マーク形成工程で形成された第1および第2マークを目印にデータ取得方向を求めることができる。このため、上記データ取得方法は、中空柱状構造体における内部のありさまを表す所定の内部データを取得する場合に、データ取得方向の分かる内部データを取得できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかるデータ取得装置およびデータ取得方法は、中空柱状構造体における内部のありさまを表す所定の内部データを取得する場合に、データ取得方向の分かる内部データを取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態におけるデータ取得装置の構成を示すブロック図である。
図2】中空柱状構造体の内部を前記データ取得装置が飛行する様子を説明するための図である。
図3】前記中空柱状構造体の内面に形成されるマークを説明するための図である。
図4】前記データ取得装置において、方向検出部の画像とデータ取得方向との関係を説明するための図である。
図5】前記データ取得装置の位置制御を説明するための図である。
図6】前記中空柱状構造体の内部データの取得に関する、前記データ取得装置の動作を示すフローチャートである。
図7】前記中空柱状構造体の内部データを前記データ取得装置で取得する様子を説明するための図である。
図8】前記データ取得装置において、データ取得方向の制御を説明するための図である。
図9】第1変形形態におけるデータ取得装置を説明するための図である。
図10】第2変形形態におけるデータ取得装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0026】
本実施形態におけるデータ取得装置は、中空な柱状の部材である中空柱状構造体の内面に、一方向に延びる線状な第1マーク、および、前記第1マークに対する一方側の一方領域および他方側の他方領域のうちの一方に所定の形状の第2マーク、を形成するマーク形成部と、前記中空柱状構造体における内部のありさまを表す所定のデータを取得するデータ取得部と、前記第1および第2マークに基づいて前記中空柱状構造体の内部における前記データ取得部のデータ取得方向を求める方向検出部とを備える。このようなデータ取得装置について、以下、より具体的に説明する。
【0027】
図1は、実施形態におけるデータ取得装置の構成を示すブロック図である。図2は、中空柱状構造体の内部を前記データ取得装置が飛行する様子を説明するための図である。図3は、前記中空柱状構造体の内面に形成されるマークを説明するための図である。図4は、前記データ取得装置において、方向検出部の画像とデータ取得方向との関係を説明するための図である。図4Aは、方向検出部の画像に対するデータ取得方向の定義を説明するための図であり、図4Bおよび図4Cは、それぞれ、マーク画像に基づいて求められるデータ取得方向を説明するための図である。図5は、前記データ取得装置の位置制御を説明するための図である。図5Aは、中空柱状構造体における延長方向に直交する断面が正方形である場合を示し、図5Bは、中空柱状構造体における延長方向に直交する断面が円形である場合を示す。
【0028】
実施形態におけるデータ取得装置Sは、例えば、図1に示すように、マーク形成部1と、データ取得部2と、方向検出部3とを備える。図1に示す例では、データ取得装置Sは、さらに、第1位置測定部4と、第2位置測定部5と、高度測定部6と、航空部7と、制御処理部8と、記憶部9と、インターフェース部(IF部)10と、通信部11と、慣性計測部12と、緊急操作部13とを備える。
【0029】
マーク形成部1は、中空な柱状の部材である中空柱状構造体の内面に、一方向に延びる線状な第1マーク、および、前記第1マークに対する一方側の一方領域および他方側の他方領域のうちの一方に所定の形状の第2マーク、を形成する装置である。
【0030】
前記中空柱状構造体は、中空な柱状の部材であれば、任意の構造体であってよく、例えば、その延長方向に直交する断面が円形、楕円形、多角形または正多角形(例えば、三角形、正三角形、四角形(例えば長方形等)、正方形、六角形、正六角形、八角形、正八角形等)である構造体である。好適には、例えば、前記中空柱状構造体は、高さ方向(垂直方向)に長尺な円筒の構造体や、水平方向や垂直方向等に長尺であって人が侵入し難いあるいは危険が伴うような円筒の構造体である。このような円筒状の部材である円筒構造体は、代表的には、例えば、焼却施設の煙突、発電所(例えば火力発電所等)の煙突、製鉄所の煙突、化学プラントの煙突や配管、水力発電所の水管(例えばタービンへの導水管等)、および、トンネルの通気筒等である。図2に示す例では、中空柱状構造体CBは、前記断面が正方形であり、マーク形成部1は、この中空柱状構造体CBの底面にマークMKを形成する。
【0031】
より具体的には、マーク形成部1は、図2に示す例では、前記底面の中央位置CPを通り、前記中央位置CPから1つの辺に平行な一方向に延びる線状な第1マークMK1、および、第1マークMK1に対する一方側の一方領域および他方側の他方領域のうちの一方に所定の形状の第2マークMK2を形成する。これにより第1および第2マークMK1、MK2からな成るマークMKが形成される。なお、第1マークMK1は、必ずしも前記底面の中央位置CPを通る必要は無く、また、線状であれば、前記辺と交差する方向に沿って延びてもよい。このようなマークMKは、様々な適宜な形状で形成され、例えば、図3Aないし図3Eに示す形状のマークMKa~MKeであってよい。図3Aないし図3Cに示すマークMKa~MKcでは、第2マークMK2a~MK2cは、前記第1マークMK1a~MK1cでの所定の位置であって所定の角度で前記第1マークMK1a~MK1cから線状に延びている。より詳しくは、図3Aに示すマークMKaは、一方向に延びる線状な第1マークMK1a、および、第1マークMK1aにおける延長方向の中央位置であって略90度で前記第1マークMK1aから線状に延びる第2マークMK2aから成る。図3Bに示すマークMKbは、一方向に延びる線状な第1マークMK1b、および、第1マークMK1bにおける、延長方向の中央位置より一方端に寄った所定の位置であって90度より鋭角な(小さい)所定の角度θで前記第1マークMK1bから線状に延びる第2マークMK2bから成る。図3Cに示すマークMKcは、一方向に延びる線状な第1マークMK1c、および、第1マークMK1cにおける他方端であって略90度で前記第1マークMK1cから線状に延びる第2マークMK2cから成る。すなわち、マークMKcは、第1および第2マークMK1c、MK2cによって平面視にて略L字形状を呈している。図3Dおよび図3Eに示すマークMKc、MKdでは、第2マークMK2c、MK2dは、第1マークMK1c、MK1dから離間した所定の位置に形成されている。より詳しくは、図3Dに示すマークMKdは、一方向に延びる線状な第1マークMK1d、および、第1マークMK1dから離間した所定の位置であって第1マークMK1dの延長方向と直交する方向に延びる線状な第2マークMK2dから成る。図3Eに示すマークMKeは、一方向に延びる線状な第1マークMK1e、および、第1マークMK1eから離間した所定の位置に位置する円形な第2マークMK2eから成る。要は、マークMKは、一方向に延びる線状な第1マークMK1と、第1マークMK1に対し当該マークMKを非対称にする第2マークMK2とから成る。以下では、図3Aに示すマークMKaの場合について、説明するが、マークMKが他の態様である場合でも同様に説明できる。
【0032】
このようなマーク形成部1は、例えば、中空柱状構造体CBの内面に形成される第1および第2マークMK1、MK2となるように、光を照射する光源部である。前記光源部は、例えばレーザ光源装置や発光ダイオード等である。第1および第2マークMK1a~MK1e、MK2a~MK2dを形成する場合、例えば、シート状(スリット状)のレーザ光を照射するレーザ光源装置や、線状に配置された複数の発光ダイオード(例えばLEDテープライト等)等である。第2マークMK2eを形成する場合、例えば、円形なスポット状でレーザ光を照射するレーザ光源装置や、円形なスポット状に配置された1または複数の発光ダイオード等である。あるいは、例えば、マーク形成部1は、中空柱状構造体CBの内面に形成される第1および第2マークMK1、MK2となるように、燐光を放射する燐光部材(蓄光部材)である。あるいは、例えば、マーク形成部1は、中空柱状構造体CBの内面に形成される第1および第2マークMK1、MK2となるように、反射光を放射する反射部材と、前記反射部材に光を照射する光源部とを備える。
【0033】
データ取得部2は、制御処理部8に接続され、制御処理部8の制御に従って、中空柱状構造体における内部のありさま(状況、状態)を表す所定のデータ(内部データ)を取得する装置である。前記内部データは、例えば、中空柱状構造体CBの内部の画像であり、この場合、データ取得部2は、画像を生成するカメラ(第1カメラ)2である。あるいは、例えば、前記内部データは、中空柱状構造体CBの内部の熱分布であり、この場合、データ取得部2は、熱分布を測定するサーモグラフィー2である。あるいは、例えば、前記内部データは、中空柱状構造体CBの内壁面(内側面)の表面凹凸分布(径方向の高さ分布)であり、この場合、データ取得部2は、当該データ取得装置Sから中空柱状構造体CBの内壁面までの距離を測定する測距装置(例えばレーザ測距計等)2である。以下では、前記内部データが中空柱状構造体CBの内部、例えばその内壁面(内側面)の画像である場合について説明するが、前記内部データが他の種類のデータである場合でも同様に説明できる。データ取得部2の一例としての第1カメラ2は、モノクロカメラ、カラーカメラ、あるいは、赤外線カメラ等であってよく、中空柱状構造体CBの内部の画像を取得する目的に応じて適宜に選択される。第1カメラ2の解像度は、中空柱状構造体CBの内部の画像を取得する目的に応じて適宜に選択され、例えば、中空柱状構造体CBの内部点検を目的とする場合、第1カメラ2には、例えば一辺5mの内壁面や直径5mの内壁面等におけるサブミリメートルオーダーのひび割れ等の異常を撮像するために適した画素数のエリアイメージセンサを持つデジタルカメラが利用される。データ取得部2は、この取得した内部データ、本実施形態では中空柱状構造体CBの内部の画像(構造体内部画像)を、制御処理部8へ出力する。
【0034】
方向検出部3は、マーク形成部1によって形成された、第1および第2マークMK1、MK2から成るマークMKに基づいて、前記中空柱状構造体の内部におけるデータ取得部2のデータ取得方向(航空部7の向き)を求める装置である。前記データ取得方向は、本実施形態では、中空柱状構造体CBの延長方向に直交する直交面内での方向である。マークMKにおける一方向に延びる線状な第1マークMK1は、データ取得部2のデータ取得方向の基準となる。本実施形態では、前記データ取得方向は、第1カメラ2の撮像方向(第1撮像方向)である。なお、データ取得部2がサーモグラフィー2である場合、前記データ取得方向は、サーモグラフィー2の測定方向であり、データ取得部2が測距装置2である場合、前記データ取得方向は、測距装置2の測定方向である。
【0035】
本実施形態では、一例として、方向検出部3は、マークMKを撮像した画像(マーク画像)に基づいて線状な第1マークMK1の延長方向に対するデータ取得方向、この例では第1カメラ2の第1撮像方向(航空部7の向き)を求める。より詳しくは、方向検出部3は、第1および第2マークMK1、MK2から成るマークMKを撮像するカメラ(撮像部、第2カメラ)と、前記第2カメラで撮像した画像に基づいてデータ取得部2のデータ取得方向(第1カメラの撮像方向)を求める、例えばマイクロコンピュータ等の情報処理回路(方向検出用情報処理回路)とを備える。前記第2カメラは、例えば、第1カメラ2と同様なデジタルカメラである。前記方向検出用情報処理回路は、前記第2カメラで取得したマーク画像からマークMKを検出し、この検出したマークMKに基づいてデータ取得方向を求めるものである。
【0036】
より具体的には、前記方向検出用情報処理回路は、マーク画像からマークMKを抽出する。例えば、前記方向検出用情報処理回路は、マーク画像を所定の閾値で2値化することによって輝度の高い線状領域を第1および第2マークMK1、MK2として検出する。そして、前記方向検出用情報処理回路は、マークMKの形状から、図3Aに示すマークMKaの場合では、相対的に長い線状領域を第1マークMK1として検出し、相対的に短い線状領域を第2マークMK2として検出する。あるいは、前記方向検出用情報処理回路は、マークMKの形状から、図3Aに示すマークMKaの場合では、一方の線状領域の途中から延びる線状領域を第2マークMK2として検出し、前記一方の線状領域を第1マークMK1として検出する。なお、前記方向検出用情報処理回路は、さらに、2値化したマーク画像からエッジフィルタによってエッジを検出することで輝度の高い線状領域における両辺の各エッジを検出し、これら検出した各エッジ(各辺)の中央線を線状な第1および第2マークMK1、2それぞれとして検出してもよい。前記方向検出用情報処理回路は、さらに、これら検出した各エッジそれぞれに直線のハフ変換によって2本の直線を求め、これら求めた各直線の中央線を線状な第1および第2マークMK1、NK2それぞれとして検出してもよい。そして、前記方向検出用情報処理回路は、この抽出した第1および第2マークMK1、MK2から、予め記憶した向き対応関係データを用いてデータ取得方向を求める。前記向き対応関係データは、前記第2カメラで取得された画像の方向と航空部7の向き(データ取得方向、この例では第1カメラ2の第1撮像方向)との対応関係を表すデータであり、例えば、図4Aに示すように、マーク画像の横方向(x軸、水平方向、エリアイメージセンサの横方向)に平行であって、前記マーク画像の内側から、y軸を設定した辺(図4Aに示す例で平面視にて左辺)に対向する辺(図4Aに示す例で平面視にて右辺)へ向かう有向線分HLが航空部7の向きと定義され、前記有向線分HLと航空部7の向きとを対応付けたデータ等である。図4Aないし図4Cにおいて、データ取得部2の一例としての第1カメラ2で生成されるマーク画像において、平面視にて左上角の画素を原点とし、左右方向をx軸とし、上下方向をy軸とするxy直交座標系が設定される。このxy直交座標系は、マーク画像(第1カメラの撮像素子)に設定されるローカルな座標系であり、データ取得方向は、例えば中空柱状部材に設定されるワールド座標系での方向となる。後述の図8Aないし図8Dも同様にxy直交座標系が設定される。より詳しくは、前記方向検出用情報処理回路は、第1マークMK1に対する第2マークMK2の位置をxy直交座標系に照らして参照し、例えば、第1マークMK1がx軸に平行に延びるとともに、第2マークMK1が-y方向でy軸に平行に延びる場合におけるデータ取得方向を0度とした場合に、前記抽出した第1マークMK1と前記有向線分HLとの成す角度を求めることで、前記航空部7の向きをデータ取得方向として求める。例えば、図4Bに示すように、第1マークMK1に対する第2マークMK2の位置をxy直交座標系に照らして参照し、第2マークMK2が平面視にて第1マークMK1から大略-y方向に延びる場合において、前記抽出した第1マークMK1と有向線分HLとの成す角度がα°である場合では、航空部7(データ取得部2)は、α°の方向に向いていることになる。また例えば、図4Cに示すように、第1マークMK1に対する第2マークMK2の位置をxy直交座標系に照らして参照し、第2マークMK2が平面視にて第1マークMK1から大略+y方向に延びる場合において、前記抽出した第1マークMK1と有向線分HLとの成す角度がβ°である場合では、航空部7(データ取得部2)は、β°の方向に向いていることになる。図4Bに示す場合の航空部7の向き(データ取得方向)と、図4Cに示す場合の航空部7の向き(データ取得方向)とは、180度異なり、真逆の方向であるが、第1マークMK1に対しマークMKを非対称にする第2マークMK2の、第1マークMK1に対する位置をxy直交座標系に照らして参照することで、前記方向検出用情報処理回路は、図4Bに示す場合の航空部7の向き(データ取得方向)と、図4Cに示す場合の航空部7の向き(データ取得方向)とを区別でき、適切に、航空部7の向き(データ取得方向)を求めることができる。前記方向検出用情報処理回路は、この求めた航空部7の向き(データ取得部2のデータ取得方向)を制御処理部8に出力する。
【0037】
第1位置測定部4は、制御処理部8に接続され、制御処理部8の制御に従って、中空柱状構造体の内部における航空部7の位置(データ取得部2の位置(この例では第1カメラ2の位置))を測定する装置である。本実施形態では、第1位置測定部4によって求める航空部7の位置は、中空柱状構造体CBの延長方向に直交する直交面(本実施形態では水平面)での位置であって、前記直交面内で、航空部7から中空柱状構造体CBの内壁面までの距離(水平距離)を、前記中空柱状構造体CBの周方向で互いに異なる複数の測定方向で測定することで航空部7の位置が求められる。このため、第1位置測定部4は、前記複数の測定方向で測定可能に構成された、前記直交面内における航空部7から中空柱状構造体CBの内壁面までの距離を測定する測距装置を備えて構成される。より具体的には、第1位置測定部4は、前記直交面内で測定方向を前記周方向に回転させながら所定のサンプリング間隔で前記距離(水平距離)を1周の間に複数測定する、例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging)等の、光や超音波等の測定パルス波を送受信することによって、いわゆるTOF(Time of Flight)方式で距離を求める測距計を備えて構成される。第1位置測定部4は、例えば前記測距計自体を回転するように構成される。あるいは、例えば、第1位置測定部4は、前記送受信の際に測定パルス波を例えばポリゴンミラー等で回転させるように構成される。第1位置測定部4は、前記複数の測定方向で測定した各前記距離を制御処理部8へ出力する。
【0038】
第2位置測定部5は、第1位置測定部4と同様に、制御処理部8に接続され、制御処理部8の制御に従って、中空柱状構造体の内部における航空部7の位置を測定する装置である。第2位置測定部5は、第1位置測定部4では前記距離の測定が不調であった場合に、第1位置測定部4をバックアップし、いわゆるフェイルセーフの機能を果たす。例えば、中空柱状構造体CBが分岐していたり、内壁面に貫通孔が形成されていたり等の場合、前記TOF方式の測距計では、前記距離の測定が不調となり得る。このため、第2位置測定部5は、第1位置測定部4の測距方式とは異なる測距方式で、航空部7から中空柱状構造体CBの内壁面までの前記距離を測定する装置である。より具体的には、第2位置測定部5は、前記測定方向を前記周方向に回転させながら第1位置測定部4と同じ測定方向で前記距離を測定する、例えば、ステレオカメラ方式で距離を求める測距計を備えて構成される。前記ステレオカメラ方式では、互いに光軸が平行となるように基線長だけ離間して配置された左右1対のステレオカメラで撮像した左右1対の各画像に基づいて視差が求められ、この求めた視差に基づいていわゆる三角測量の原理に基づき前記距離が求められる。第2位置測定部5は、第1位置測定部4と同じ測定方向で測定した前記距離を制御処理部8へ出力する。
【0039】
高度測定部6は、制御処理部8に接続され、制御処理部8の制御に従って、航空部7の高度(高さ)(データ取得部2の高度(この例では第1カメラ2の高度))を測定する装置である。高度測定部6は、この測定した高度を制御処理部8へ出力する。高度測定部6は、例えば、気圧計、あるいは、中空柱状構造体の底面からの距離を測る測距計等を備えて構成される。
【0040】
IF部10は、制御処理部8に接続され、制御処理部8の制御に従って、外部機器との間でデータの入出力を行う回路である。前記データは、例えば、構造体内部データ等であり、前記構造体内部データは、後述のように記憶部9に記憶された、データ取得部2で取得した内部データ(この例では構造体内部画像)、前記内部データを取得した際に方向検出部3で検出したデータ取得部2のデータ取得方向、および、前記内部データを取得した際に高度測定部6で測定したデータ取得部2の高度を含む。IF部10は、例えば、Bluetooth(登録商標)規格を用いたインターフェース回路、IrDA(Infrared Data Asscoiation)規格等の赤外線通信を行うインターフェース回路、または、USB(Universal Serial Bus)規格を用いたインターフェース回路等を備えて構成される。
【0041】
通信部11は、制御処理部8に接続され、制御処理部8の制御に従って、無線によって外部機器との間で通信を行う装置であり、本実施形態では、緊急操作部13との間で通信を行う。通信部11は、例えば、Bluetooth(登録商標)規格を用いたインターフェース回路、または、IrDA規格等の赤外線通信を行うインターフェース回路等を備えて構成され、IF部10と兼用されてもよい。
【0042】
慣性計測部12は、制御処理部8に接続され、制御処理部8の制御に従って、3軸のジャイロと3方向の加速度計によって3次元の角速度および加速度を求める装置である。慣性計測部12は、この測定した3次元の角速度および加速度を制御処理部8へ出力する。これら3次元の角速度および加速度は、自律的に飛行する際に、航空部7の姿勢制御に利用される。
【0043】
航空部7は、自律的に、大気中を飛行する装置である。本実施形態では、中空柱状構造体CBの内部を飛行するので、例えば、ヘリコプタまたはマルチコプタ等の、いわゆる無人機(ドローン)を備えて構成される。より具体的には、航空部7は、本体と、前記本体から四方に延びる4個のアームと、各アームの各先端部それぞれに設けられた4個のロータとを備えるマルチコプタを備えて構成される。航空部7は、データ取得部2、方向検出部3、第1および第2位置測定部4、5、高度測定部6、制御処理部8、記憶部9、IF部10、通信部11および慣性計測部12を搭載して持つ。データ取得部2は、そのデータ取得方向(第1カメラ2の第1撮像方向)が水平方向に沿って外側方向を向くように航空部7の前記本体に配設され、同様に、第1および第2位置測定部4、5それぞれは、その各測定方向が水平方向に沿って外側方向を向くように航空部7の前記本体に配設される。方向検出部3は、第1および第2マークMK1、MK2から成るマークMKを撮像できるように、図2に示す例では中空柱状構造体CBの底面を撮像できるように、その前記第2カメラの撮像方向(第2撮像方向)が垂直方向に沿って下方向を向くように航空部7の前記本体に配設される。前記第2カメラの第2撮像方向は、航空部7の中央位置を通る垂線(垂直方向に沿った線)と一致することが好ましい。高度測定部6は、測定可能に航空部7の前記本体に収容され、制御処理部8および記憶部9は、航空部7の前記本体に収容され、IF部10は、入出力可能に航空部7の前記本体に収容され、通信部11は、通信可能に航空部7の前記本体に収容され、そして、慣性計測部12は、測定可能に航空部7の前記本体に収容される。慣性計測部12は、データ取得装置Sの重心位置に位置するように航空部7の前記本体に収容されることが好ましい。
【0044】
航空部7は、公知の常套手法によって、自律的に飛行するために必要な、例えば慣性計測部12等の各種センサの測定結果に基づき姿勢制御等を行って自律的に飛行を制御するマイクロコンピュータ等を備える。この航空部7の自律的な飛行の際に、本実施形態では、制御処理部8は、水平面内での位置、高度および向きを指示し、航空部7がこの指示に従って飛行することで航空部7を制御する。なお、航空部7の前記マイクロコンピュータは、制御処理部8および記憶部9と兼用されてもよい。
【0045】
記憶部9は、制御処理部8に接続され、制御処理部8の制御に従って、各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。前記各種の所定のプログラムには、例えば、制御処理プログラムが含まれ、前記制御処理プログラムには、データ取得装置Sの各部2~7、9~12を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御する制御プログラムや、第1および第2位置測定部4、5で測定した航空部7の位置に基づいて、中空柱状構造体の延長方向に直交する直交面(本実施形態では水平面)における前記中空柱状構造体の中央位置に位置するように、航空部7を制御する位置制御プログラムや、衝突回避等の緊急処理を行う緊急処理プログラム等が含まれる。前記各種の所定のデータには、例えば、これら各プログラムを実行する上で必要なデータや、前記構造体内部データ等が含まれる。このような記憶部9は、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。そして、記憶部9は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部8のワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。
【0046】
なお、方向検出部3の前記方向検出用情報処理回路は、制御処理部8および記憶部9と兼用されてもよく、記憶部9は、前記向き対応関係データを前記各種の所定のデータの1つとして記憶してもよい。
【0047】
制御処理部8は、データ取得装置Sの各部2~7、9~12を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、航空部7の位置、高度および向きを制御しながらデータ取得部2によって中空柱状構造体の内部データを取得するための回路である。制御処理部8は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部8には、前記制御処理プログラムが実行されることによって、制御部81、位置制御部82および緊急処理部83が機能的に構成される。
【0048】
制御部81は、データ取得装置Sの各部2~7、9~12を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、データ取得装置S全体の制御を司るものである。そして、本実施形態では、制御部81は、位置制御部82から、データ取得部2のデータ取得方向、航空部7の高度およびデータ取得の指示が通知されると、このデータ取得の指示に従ってデータ取得部2に内部データを取得させ、内部データをデータ取得部2から取得し、この取得した内部データに、位置制御部82から通知されたデータ取得部2のデータ取得方向および航空部7の高度を互いに対応付けて構造体内部データの1つとして記憶部9に記憶する。
【0049】
位置制御部82は、第1および第2位置測定部4、5で求めた航空部7の位置に基づいて、中空柱状構造体の延長方向に直交する直交面(本実施形態では水平面)における前記中空柱状構造体の中央位置に位置するように、航空部7を制御するものである。前記中空柱状構造体の中央位置は、前記中空柱状構造体における前記直交面の断面形状に対する外接円の中心である。より具体的には、位置制御部82は、中空柱状構造体CBの直交面における中央位置に位置するために、所定の移動量だけ移動するように航空部7に指示することで、第1および第2位置測定部4、5で求めた航空部7の位置に基づいて、前記中空柱状構造体の直交面における中央位置に位置するように、航空部7を制御する。
【0050】
より詳しくは、第2位置測定部5が第1位置測定部4のバックアップであるので、位置制御部82は、互いに異なる複数の測定方向で第1位置測定部4の測距計で測定した各距離に基づいて前記所定の移動量を求め、この求めた前記所定の移動量だけ移動するように航空部7を制御する。
【0051】
例えば、位置制御部82は、互いに異なる複数の測定方向で第1位置測定部4の測距計で測定した各距離の最大値に基づいて前記所定の移動量を求め、この求めた前記所定の移動量だけ移動するように航空部7を制御する。本実施形態では、上述のように、中空柱状構造体CBにおける直交面の断面形状が正方形であるので、図5Aに示すように、2個の対角線の交点が中空柱状構造体CBの中央位置であり、前記中央位置から見た対角線の長さは、最大(=(対角線の半分の長さ))であって、設計図または実測等により既知である。このため、まず、前記対角線の半分の長さが位置制御用準拠値として前記各種データの1つとして記憶部9に記憶され、位置制御部82は、互いに異なる複数の測定方向で第1位置測定部4の測距計で測定した各距離の中から最大値を抽出し、この抽出した距離の最大値を測定した測定方向(第1測定方向、例えばラインDS1の方向)での距離(第1距離)を前記位置制御用準拠値に近づけつつ、前記第1測定方向と反対の測定方向(第2測定方向、例えばラインDS9の方向)での距離(第2距離)、前記第1測定方向に時計回りに90度で直交する測定方向(第3測定方向、例えばラインDS5の方向)での距離(第3距離)、および、前記第1測定方向に反時計回りに90度で直交する測定方向(第4測定方向、例えばラインDS13の方向)での距離(第4距離)それぞれが前記位置制御用準拠値となるように、前記所定の移動量を求め、この求めた前記所定の移動量だけ移動するように航空部7を制御する。例えば、図5Aに示すラインDS9付近に航空部7(データ取得装置S)が位置しているとすると、ラインDS1の測定方向で距離が最大値となり、ラインDS1の測定方向を第1測定方向としてその距離を前記位置制御用準拠値に近づけつつ、第2ないし第4測定方向それぞれでの第2ないし第4距離それぞれが前記位置制御用準拠値となるように、航空部7が制御され、これによって、航空部7(データ取得装置S)は、中空柱状構造体CBの中央位置に位置するようになる。正方形以上の正多角形でも同様である。
【0052】
ここで、このような最大値を用いる場合、上述のように、中空柱状構造体CBが分岐していたり、内壁面に貫通孔が形成されていたり等の場合、対角線に略沿う測定方向での距離が最大値とならない場合が生じ得る。このため、最大値を抽出する際に、予め設定した所定の限界値(上限値)が設定され、互いに異なる複数の測定方向で第1位置測定部4の測距計で測定した各距離の中から前記限界値を超える距離を除去し、残余の各距離の中から最大値が抽出されることが好ましい。
【0053】
あるいは、例えば、位置制御部82は、互いに異なる複数の測定方向で第1位置測定部4の測距計で測定した各距離の最小値に基づいて前記所定の移動量を求め、この求めた前記所定の移動量だけ移動するように航空部7を制御する。本実施形態では、上述のように、中空柱状構造体CBにおける直交面の断面形状が正方形であるので、図5Aに示すように、2個の対角線の交点が中空柱状構造体CBの中央位置であり、2個の対角線それぞれに直交する方向での、前記中央位置から見た長さは、最小(=(一辺の半分の長さ))であって、設計図または実測等により既知である。このため、まず、一辺の半分の長さが位置制御用準拠値として前記各種データの1つとして記憶部9に記憶され、位置制御部82は、互いに異なる複数の測定方向で第1位置測定部4の測距計で測定した各距離の中から最小値を抽出し、この抽出した距離の最小値を測定した測定方向(第1測定方向、例えばラインDS3の方向)での距離(第1距離)を前記位置制御用準拠値に近づけつつ、前記第1測定方向と反対の測定方向(第2測定方向、例えばラインDS11の方向)での距離(第2距離)、前記第1測定方向に時計回りに90度で直交する測定方向(第3測定方向、例えばラインDS7の方向)での距離(第3距離)、および、前記第1測定方向に反時計回りに90度で直交する測定方向(第4測定方向、例えばラインDS15の方向)での距離(第4距離)それぞれが前記位置制御用準拠値となるように、前記所定の移動量を求め、この求めた前記所定の移動量だけ移動するように航空部7を制御する。正三角形や正方形以上の正多角形でも同様である。
【0054】
一方、前記中空柱状構造体CBが円筒構造体である場合には、図5Bに示すように、周方向の互いに異なる複数の測定方向における中央位置から内壁面までの各距離は、互いに等しい。このため、位置制御部82は、周方向の互いに異なる複数の測定方向で第1位置測定部4で測定した各距離に基づいて、これら測定した前記各距離が互いに等しくなるように、前記所定の移動量を求め、この求めた前記所定の移動量だけ移動するように航空部7を制御する。例えば、位置制御部82は、周方向に120度の間隔で第1位置測定部4で測定した3個の各距離に基づいて、これら測定した3個の各距離が互いに等しくなるように、前記所定の移動量を求め、この求めた前記所定の移動量だけ移動するように航空部7を制御する。
【0055】
そして、これら上述のような第1位置測定部4で測定した各距離に基づいて航空部7を制御している際に、例えば、前記測定パルス波の不受信等により第1位置測定部4で測定不能になった場合には、第1位置測定部4が不調であると判定され、位置制御部82は、第1位置測定部4の測定結果の代わりに、第2位置測定部5の測定結果を用いて上述のように航空部7を制御する。あるいは、例えば、航空部7が前記中央位置に制御されているので、前回の測定結果と今回の測定結果との差分は、小さいと予測されるため、前回の測定結果と今回の測定結果との差分が予め設定された閾値を超えた場合に、第1位置測定部4が不調であると判定され、位置制御部82は、第1位置測定部4の測定結果の代わりに、第2位置測定部5の測定結果を用いて上述のように航空部7を制御する。
【0056】
本実施形態では、位置制御部82は、さらに、方向検出部3で求めたデータ取得部2のデータ取得方向(航空部7の向き)に基づいて、前記データ取得方向が所定の方向を向くように、航空部7を制御する。例えば、位置制御部82は、中空柱状構造体CBの内壁面を全周に亘って内部データを取得するように、航空部7を中空柱状構造体CBの中央位置に位置するようにホバリングさせながら、周方向に所定の角度ずつ回転させ前記データ取得方向が各方向に順次に向くように、航空部7を制御する。前記所定の角度は、例えば、数度や10度や20度等の、データ取得部2のデータの取得範囲および中空柱状構造体CBの内壁面における周方向の長さ等に応じて適宜に設定される。
【0057】
さらに、本実施形態では、位置制御部82は、高度測定部6で求めた高度に基づいて、航空部7が所定の高度となるように、航空部7を制御する。より具体的には、位置制御部82は、所定の高度にするために、所定の高さだけ上昇するように航空部7に指示することで、位置制御部82は、高度測定部6で求めた高度に基づいて、航空部7が所定の高度となるように、航空部7を制御する。
【0058】
緊急処理部83は、航空部7と中空柱状構造体の内面との衝突を回避する緊急処理を行うものである。より具体的には、本実施形態では、例えば、緊急処理部83は、第1および第2位置測定部4、5で測定した航空部7から中空柱状構造体CBの内壁面までの水平距離が予め設定された所定の閾値以下となった場合に、緊急処理部83は、オペレータに衝突の警告を行うための信号(警告信号)を、通信部11を介して緊急操作部13へ送信する。これに応じて緊急操作部13から、通信部11を介して、衝突の回避を指示する信号(回避指示信号)を受信した場合に、緊急処理部83は、中空柱状構造体CBの内面から、予め設定された距離だけ離間するために、所定の移動量だけ位置制御部82の指示に優先して移動するように航空部7に指示する。
【0059】
緊急操作部13は、航空部7の衝突の回避を指示する装置である。より具体的には、緊急操作部13は、通信部11と通信する通信インターフェース回路と、データ取得装置Sから前記通信インターフェース回路を介して前記警告信号を受信した場合に、衝突の警告を出力する、例えばスピーカ、表示灯および表示装置等の出力部と、回避指示信号の送信の指示を受け付ける、例えば押しボタンスイッチ等の入力部と、これら前記通信インターフェース回路、前記出力部および前記入力部それぞれを各機能に応じて制御する、例えばマイクロコンピュータ等の制御回路等を備えて構成される。
【0060】
次に、本実施形態の動作について説明する。図6は、前記中空柱状構造体の内部データの取得に関する、前記データ取得装置の動作を示すフローチャートである。図7は、前記中空柱状構造体の内部データを前記データ取得装置で取得する様子を説明するための図である。図8は、前記データ取得装置において、データ取得方向の制御を説明するための図である。図8Aは、データ取得方向(第1撮像方向)0°の場合を示し、図8Bは、データ取得方向90°の場合を示し、図8Cは、データ取得方向180°の場合を示し、図8Dは、データ取得方向270°の場合を示す。
【0061】
このような構成のデータ取得装置Sは、その電源が投入されると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。制御処理部8では、その制御処理プログラムの実行によって、制御処理部8には、制御部81、位置制御部82および緊急処理部83が機能的に構成される。
【0062】
中空柱状構造体CBの内部データの取得に関し、データ取得装置Sは、次にように動作し、この動作中において、緊急処理部83は、上述のように、データ取得装置Sと中空柱状構造体CBの内壁面との衝突を回避する緊急処理を行う。なお、周方向における、データ取得部2による内部データの取得間隔は、上述したように、適宜に設定されるが、ここでは、説明の簡単化のため、90度とする。なお、他の角度でも同様に説明できる。
【0063】
中空柱状構造体CBの内部データの取得に関し、図6において、まず、第1および第2マークMK1、MK2から成るマークMKが形成される(S1)。より具体的には、マーク形成部1が稼働され、図7に示すように、マーク形成部1によって、中空柱状構造体CBの底面に、マークMKが形成される。例えば、LEDテープライトが、一直線状に延びるように第1マークMK1として中空柱状構造体CBの底面に布設され、他のLEDテープライトが、第1マークMK1における長尺方向の中央位置CPで前記第1マークMK1から、一直線状に延びるように第2マークMK2として中空柱状構造体CBの底面に布設される。
【0064】
次に、所定の初期設定が実行される(S2)。例えば、航空部7の中央位置への制御がし易いように、航空部7の中央位置と中空柱状構造体CBの底面の中央位置CPとが一致するように、航空部7が中空柱状構造体CBの底面に配置される。
【0065】
次に、航空部7は、高さ方向へ所定の距離hだけ移動する(S3)。より具体的には、制御処理部8の位置制御部82は、高度測定部6で求めた高度に基づいて、航空部7が所定の高度となるように、航空部7を制御する。例えば、最初(1回目)の上昇では、航空部7は、高度hの高さ位置HP1の直交面内に位置する。また例えば、2回目の上昇では、航空部7は、高度2h(=h+h)の高さ位置HP2の直交面内に位置する。前記所定の距離hは、例えば、0.5mや1mや1.5m等で、データ取得部2のデータの取得範囲等に応じて適宜に設定される。前記所定の距離hは、隣接する高さ位置での各内部データが各端部で一部重畳するように設定されることが好ましい。このような設定では、最初(1回目)の上昇で航空部7が高さ方向へ前記所定の距離hだけ移動すると、底面から距離h/2までの内面の内部データがデータ取得部2によって取得されないので、最初の上昇では、前記所定の距離hの半分(h/2)だけ移動するように、航空部7は、制御されてもよい。
【0066】
次に、航空部7は、その航空部7の位置を測定し、前記航空部7の位置が中空柱状構造体CBの直交面における中央位置に位置するように移動し、その航空部7の向き(データ取得部2のデータ取得方向)を検出し、前記航空部7の向きが所定の方向を向くように回転する(S4)。より具体的には、位置制御部82は、第1および第2位置測定部4、5で求めた航空部7の位置に基づいて、中空柱状構造体CBの直交面における中央位置に位置するように所定の移動量だけ移動するように航空部7を制御し、この制御に従って航空部7は、移動し、位置制御部82は、方向検出部3で求めたデータ取得部2のデータ取得方向(航空部7の向き)に基づいて、前記データ取得方向が所定の方向を向くように、航空部7を制御し、この制御に従って航空部7は、回転する。
【0067】
例えば、当該高度hの高さ位置HPにおける直交面内において、最初の制御では、航空部7は、その航空部7の位置が前記中央位置に位置するように制御され、図8Aに示すように、航空部7の向き(データ取得部2のデータ取得方向)を0°に調整するために、第2マークMK2が平面視にて第1マークMK1から-y方向でy軸に平行に延び、航空部7の向きが第1マークMK1の延長方向に沿うように制御される。2回目の制御では、航空部7は、その前記位置が前記中央位置に位置するように制御され、反時計回りの旋回によって(または時計回りの旋回によって)、図8Bに示すように、航空部7の向きを90°に調整するために、第2マークMK2が平面視にて第1マークMK1から+x方向でx軸に平行に延び、航空部7の向きが第1マークMK1の延長方向と直交するように制御される(すなわち、航空部7の向きが第2マークMK2の延長方向に沿うように制御される)。3回目の制御では、航空部7は、その前記位置が前記中央位置に位置するように制御され、反時計回りの旋回によって(または時計回りの旋回によって)、図8Cに示すように、航空部7の向きを180°に調整するために、第2マークMK2が平面視にて第1マークMK1から+y方向でy軸に平行に延び、航空部7の向きが第1マークMK1の延長方向に沿うように制御される。4回目の制御では、航空部7は、その前記位置が前記中央位置に位置するように制御され、反時計回りの旋回によって(または時計回りの旋回によって)、図8Dに示すように、航空部7の向きを270°に調整するために、第2マークMK2が平面視にて第1マークMK1から-x方向でx軸に平行に延び、航空部7の向きが第1マークMK1の延長方向と直交するように制御される(すなわち、航空部7の向きが第2マークMK2の延長方向に沿うように制御される)。このように一方向に旋回することで、第1および第2マークから成る非対称なマークMKでデータ取得部2のデータ取得方向(航空部7の向き)が設定できる。
【0068】
次に、航空部7は、データ取得部2によって内部データを取得し、記憶部9に記憶する(S5)。より具体的には、位置制御部82は、処理S4で航空部7の位置およびその向きを制御すると、データ取得部2のデータ取得方向、航空部7の高度およびデータ取得の指示を制御部81に通知する。この通知を受けると、制御部81は、データ取得部2に内部データを取得させ、内部データをデータ取得部2から取得し、この取得した内部データに、この通知されたデータ取得部2のデータ取得方向および航空部7の高度(データ取得部2の高度)を互いに対応付けて構造体内部データの1つとして記憶部9に記憶する。例えば、最初(1回目)の指示では、高度hの高さ位置HP1における0°方向の内部データが取得され、この内部データ、データ取得方向0°および高度hが、互いに対応付けられて構造体内部データの1つとして記憶部9に記憶される。また例えば、2番目の指示では、高度hの高さ位置HP1における90°方向の内部データが取得され、この内部データ、データ取得方向90°および高度hが、互いに対応付けられて構造体内部データの他の1つとして記憶部9に記憶される。また例えば、8番目の指示では、高度2hの高さ位置HP2における270°方向の内部データが取得され、この内部データ、データ取得方向270°および高度2hが、互いに対応付けられて構造体内部データの他の1つとして記憶部9に記憶される。
【0069】
次に、航空部7は、制御部81によって、各方向の内部データを取得したか否かを判定する(S6)。この判定の結果、各方向の内部データを取得していない場合(No)には、制御部81は、処理を処理S4に戻す。これによって、処理S4ないし処理S6の各処理が順次に実行され、当該高度hの高さ位置HPにおける直交面内において、次のデータ取得方向の内部データが取得され、その構造体内部データが記憶される。一方、前記判定の結果、各方向の内部データを取得している場合(Yes)には、位置制御部82は、反時計回りの旋回によって(または時計回りの旋回によって)、前記向きが0°となるように航空部7を制御し、次に、処理S7を実行する。
【0070】
この処理S7では、航空部7は、制御部81によって、予め設定された所定の高度、例えば中空柱状構造体CBにおける最も高い撮像位置の高度に到達したか否かを判定する。この判定の結果、前記所定の高度に到達していない場合(No)には、制御部81は、処理を処理S3に戻す。これによって、処理S3ないし処理S7の各処理が順次に実行され、次の高度hの高さ位置HPにおける直交面内において、各方向それぞれでの各内部データが取得され、各構造体内部データが記憶される。一方、前記判定の結果、前記所定の高度に到達している場合(Yes)には、制御部81は、次に、処理S8を実行する。
【0071】
この処理S8では、航空部7は、制御部81によって、中空柱状構造体CBの底面まで降下し、前記底面に着地し、本処理を終了する。
【0072】
航空部7が着地すると、オペレータ(ユーザ)は、IF部10を介して記憶部9に記憶された構造体内部データを取り出し、取得する。この取得した構造体内部データの内部データ(本実施形態では構造体内部画像)を参照することで、オペレータは、中空柱状構造体CBの内面を点検できる。構造体内部画像に異常を認めた場合には、オペレータは、異常を認めた構造体内部画像に対応付けられたデータ取得方向および高度を参照することで、前記異常の位置を求めることができる。前記異常は、例えば、ひび割れ、内面被覆部材(ライニング材)の欠損、および、汚損等である。
【0073】
以上説明したように、本実施形態におけるデータ取得装置Sおよびこれに実装されたデータ取得方法は、マーク形成部1を備えるので、前記マーク形成部1で形成された第1および第2マークMK1、MK2を目印にデータ取得方向を求めることができる。このため、上記データ取得装置Sおよびデータ取得方法は、中空柱状構造体の内部データを取得する場合に、データ取得方向の分かる内部データを取得できる。
【0074】
上記データ取得装置Sおよびデータ取得方法は、航空部7を備えるので、例えば足場やゴンドラ等の比較的大規模な仮設を用いること無く、中空柱状構造体の内部における複数の箇所(位置)で内部データを取得できる。
【0075】
上記データ取得装置Sおよびデータ取得方法は、その測定した航空部7の位置に基づいて、直交面での中空柱状構造体の中央位置に位置するように、航空部7を制御するので、想定の精度で中空柱状構造体の前記内部データを取得できる。
【0076】
中空柱状構造体の構造が既知である場合、中央位置から中空柱状構造体までの最大値または最小値も予め求めることができる。上記データ取得装置Sおよびデータ取得方法は、第1および第2位置測定部4、5で測定した距離が最大値または最小値となるように航空部7を制御することで、前記中央位置に位置するように航空部7を制御できる。
【0077】
上記データ取得装置Sおよびデータ取得方法は、位置制御部82によって、データ取得方向が所定の方向を向くように航空部7を制御するので、所定の方向で中空柱状構造体の内部データを取得できる。
【0078】
なお、上述の実施形態において、データ取得装置Sは、回転運動を検出することによって前記データ取得部2のデータ取得方向を求める第2方向検出部をさらに備え、前記方向検出部3が誤検出したと判定した場合に、前記方向検出部3の検出結果に代え前記第2方向検出部の第2検出結果を用いてもよい。このようなデータ取得装置Sは、第2方向検出部をさらに備えるので、方向検出部3をバックアップできる。図9は、第1変形形態におけるデータ取得装置を説明するための図である。図9Aは、中空柱状構造体の内部に差し込んだ太陽光が届かない高度で第1マークMK1を撮像した画像を示し、図9Bは、中空柱状構造体の内部に差し込んだ太陽光が届く高度で第1マークMK1を撮像した画像を示し、図9Cは、中空柱状構造体の内部に太陽光が差し込む様子を示す模式図である。なお、図9Aおよび図9Bでは、説明の都合上、第2マークMK2が省略されている。例えば、中空柱状構造体の頂部が開口していると、図9Cに示すように、中空柱状構造体の内部に太陽光が差し込む場合がある。このような場合、図9Aに示すように、この差し込んだ太陽光が届かない高度で第1マークMK1を撮像した画像では、第1マークMK1が明瞭に写り込み、第1マークMK1を誤検出しないが、図9Bに示すように、この差し込んだ太陽光が届く高度で第1マークMK1を撮像した画像では、第1マークMK1だけでなく、太陽光に照らされた明るい領域も写り込むため、光学式の方向検出部3では、第1マークMK1を誤検出する虞がある。このようなマークMKを誤検出する虞がある場合でも、光学式の方向検出部3をバックアップする第2方向検出部をさらに備えることで、データ取得装置Sは、データ取得方向を検出できる。
【0079】
このような第2方向検出部は、少なくとも1軸の回転運動を検出するジャイロを備えて構成されてもよいが、上述のように、データ取得装置Sは、自律的に飛行する際の姿勢制御のために、慣性計測部12を備えるので、この慣性計測部12が前記第2方向検出部として利用される。慣性計測部12は、自律的に飛行する際の姿勢制御に用いられているので、常時、方向を検出している。方向検出部3が誤検出したか否かは、例えば、今回のデータ取得方向、前回のデータ取得方向および今回の第1マークMK1の延長方向から求めた前回の第1マークMK1の延長方向と、前回の第1マークMK1そのものの延長方向と、の差の絶対値が、予め設定した閾値(誤検出判定閾値)以上である場合には、制御処理部8は、方向検出部3が誤検出したと判定し、前記差の絶対値が前記誤検出判定閾値未満である場合には、制御処理部8は、方向検出部3が誤検出していないと判定する。前記第2方向検出部は、飛行開始後、データ取得装置S(航空部7)の姿勢が安定した場合に、方向検出部3で検出したデータ取得方向と対応付けを行い(同期され)、制御処理部8は、前記方向検出部3が誤検出したと判定した場合に、前記方向検出部3の検出結果から前記第2方向検出部の第2検出結果へ切り換える。なお、前記対応付け(同期)は、所定の時間間隔や所定の高度間隔で定期的に実行されてもよい。また、上述のように前記方向検出部3の検出結果から前記第2方向検出部の第2検出結果に切り換えた後、予め設定した所定の時間間隔ごとに、前記方向検出部3で求めたデータ取得方向と前記第2方向検出部で求めたデータ取得方向との差の絶対値が、前記誤検出判定閾値未満となった場合に、データ取得装置Sは、元に戻し、前記第2方向検出部の第2検出結果に代え前記方向検出部3の検出結果を用いる。
【0080】
また、上述の実施形態において、データ取得装置Sは、図1に破線で示すように、前記第1および第2マークを形成した前記中空柱状構造体の内面に向かう方向とは反対の方向を測定方向とする第2測距部14をさらに備えてもよい。このようなデータ取得装置Sは、第2測距部14をさらに備えるので、前記中空柱状構造体の内面に向かう方向とは反対の方向に障害がある場合に、前記障害を避けることが可能となる。図10は、第2変形形態におけるデータ取得装置を説明するための図である。例えば、図10に示すように、中空柱状構造体CBcは、第1中空柱状構造体CBc1と、第2中空柱状構造体CBc2と、これら第1および第2中空柱状構造体CBc1、CBc2を合流する合流構造体CBc3とを備える場合がある。合流構造体CBc3は、2個の第1および第2流入部それぞれから流入された流体を合流して1個の流出部から流出させる構造体であり、前記第1流入部が第1中空柱状構造体CBc1の頂部に連結され、前記第2流入部が第2中空柱状構造体CBc2に連結されている。このような中空柱状構造体CBcの第1中空柱状構造体CBc1における構造体内部データを収集するために、データ取得装置Sが第1中空柱状構造体CBc1の内部を上昇していくと、第1中空柱状構造体CBc1の頂部に合流構造体CBc3の斜面があるため、データ取得装置Sは、合流構造体CBc3の内面に衝突してしまう虞がある。このため、第2測距部14をさらに備えることで、マークMKの形成される中空柱状構造体CBcの底面に向かう方向とは反対の方向(図10に示す例では上方)の障害を検出できるから、前記障害を避けることが可能となる。
【0081】
このような第2測距部14は、第1および第2位置測定部4、5と同様に、例えば、いわゆるTOF方式で距離を求める測距計を備えて構成され、制御処理部8に接続され、制御処理部8の制御に従って測距し、その測定結果を制御処理部8に出力する。第2測距部14は、図2に示す例では、垂直方向に沿って上方向を向くように航空部7の前記本体に配設される。制御処理部8は、第2測距部14の測定結果が予め設定された所定の閾値(障害判定閾値)以下となった場合に、例えば、その位置でホバリングする等の、予め設定された適宜な障害回避処理を実行する。前記障害回避処理には、緊急処理部83と同様に、オペレータに障害の警告を行うための警告信号を、通信部11を介して緊急操作部13へ送信する処理が含まれてもよい。
【0082】
また、上述の実施形態では、データ取得装置Sは、位置制御部82によって、第1および第2位置測定部4、5で求めた航空部7の位置に基づいて、前記直交面における中空柱状構造体の中央位置に位置するように、航空部7を制御したが、データ取得装置Sは、中空柱状構造体CBからの航空部7の距離を測定し、位置制御部82によって、方向検出部3で求めたデータ取得部2のデータ取得方向および前記測定した航空部7の距離に基づいて、中空柱状構造体CBの延長方向に直交する直交面において、所定の方向で前記中空柱状構造体CBから所定の距離に位置するように、前記航空部7を制御してもよい。上述のように、第1位置測定部4は、測距装置を備えて構成されているので、第1位置測定部4によって、前記直交面において、中空柱状構造体CBの内面(例えば内側面)からの航空部7の距離が測定できる。前記所定の方向は、例えば第1マークMK1の延長方向を0°方向として反時計回りに360°の各方向を定義した場合に0°方向や90°方向等に予め適宜に設定される。前記所定の距離は、例えば中空柱状構造体CBの前記直交面での断面サイズや前記想定の領域サイズ等に応じて予め適宜に設定される。このようなデータ取得装置Sでは、前記処理S4において、データ取得部2のデータ取得方向が検出され、航空部7の距離が測定され、これらに基づいて所定の方向で中空柱状構造体CBから所定の距離に位置するように、航空部7が制御される。そして、次の前記処理S5で内部データが取得できるように、前記データ取得方向が所定の方向を向くように、航空部7が制御され、この制御に従って航空部7は、回転する。
【0083】
このようなデータ取得装置Sは、前記直交面において、所定の方向で中空柱状構造体CBから所定の距離に位置するように、航空部7を制御するので、想定の精度で中空柱状構造体CBの内部データを取得できる。方向と距離で航空部7の位置を制御するので、前記直交面での、任意の断面形状を持つ中空柱状構造体CBに、上記データ取得装置Sは、適用可能である。
【0084】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0085】
S データ取得装置
1 マーク形成部
2 データ取得部
3 方向検出部
4 第1位置測定部
5 第2位置測定部
6 高度測定部
7 航空部
8 制御処理部
81 制御部
82 位置制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10