(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】クーリング機能を有した心室中隔施術用RF電極切除カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
A61B18/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021087040
(22)【出願日】2021-05-24
【審査請求日】2023-12-18
(31)【優先権主張番号】10-2020-0061941
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0071558
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522329744
【氏名又は名称】タウ メディカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TAU MEDICAL INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジュン‐ホン
(72)【発明者】
【氏名】パク, キョネ ピーター
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0155229(US,A1)
【文献】特開2019-103561(JP,A)
【文献】特開2004-188182(JP,A)
【文献】特開2017-217477(JP,A)
【文献】特開2010-233810(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0073515(US,A1)
【文献】国際公開第2019/036653(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12 - 18/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心室中隔施術のためのRFカテーテルにおいて、
心室中隔を突き抜けて挿入されるように、遠位部の終端
部に
チップ終端に行くほど細くなるテーパー状のチップと、前記チップから隣接した位置に外周面に1個以上の電極が形成された中隔挿入部;および
前記チップ終端の中心で前記中隔挿入部の内部を貫通してガイドワイヤーを挿入できるガイドワイヤールーメンと、外部からクーラントを注入できるように近位部から前記中隔挿入部の内部まで連結されて終端が開放されたクーラント引込ルーメンと、前記クーラント引込ルーメンと連通し側面に排出口が形成されたクーラント排出ルーメンを有するやわらかい軟質材質の胴体部;を含むものの、
前記中隔挿入部は前記ガイドワイヤーの案内に沿って心筋を突き抜けて挿入され、
前記ガイドワイヤールーメンと前記クーラント引込ルーメンは互いに連通せずに互いに区画されて
おり、
前記ガイドワイヤールーメンは、前記ガイドワイヤーを挿入するためのガイドワイヤー出口を前記胴体部の前記側面に有することを特徴とする、心室中隔施術用RFカテーテル。
【請求項2】
前記クーラント引込ルーメンを通じて近位部から中隔挿入部の内部まで流入したクーラントは、前記クーラント排出ルーメンに抜け出た後、前記胴体部の側面に形成された排出口に冠状静脈洞、右心房または静脈内から排出されることを特徴とする、請求項1に記載の心室中隔施術用RFカテーテル。
【請求項3】
前記クーラント排出ルーメンは前記クーラント引込ルーメンを囲む構造を有し、
前記クーラント引込ルーメンに沿って注入されたクーラントは前記クーラント引込ルーメンを囲む前記クーラント排出ルーメンに沿って反対方向に流れて前記クーラント排出ルーメンと連通した排出口を通じて冠状静脈洞、右心房または静脈内から排出されることを特徴とする、請求項1に記載の心室中隔施術用RFカテーテル。
【請求項4】
前記クーラント排出ルーメンは前記ガイドワイヤールーメンを囲む構造を有し、
前記ガイドワイヤールーメンは前記クーラント排出ルーメンを通過することを特徴とする、請求項1に記載の心室中隔施術用RFカテーテル。
【請求項5】
前記ガイドワイヤールーメンは前記クーラント排出ルーメンの内部を通過せず隣接して位置することを特徴とする、請求項1に記載の心室中隔施術用RFカテーテル。
【請求項6】
前記電極はRFジェネレータと連結されてRFエネルギーの伝達を受けてRFエネルギーを発散する役割をし、また、心筋の電気信号をセンシングしたり電気刺激を加える役割を遂行することを特徴とする、請求項1に記載の心室中隔施術用RFカテーテル。
【請求項7】
前記ガイドワイヤールーメンは内部を貫通するガイドワイヤーと互いに密着して離隔空間がないことを特徴とする、請求項1に記載の心室中隔施術用RFカテーテル。
【請求項8】
前記中隔挿入部は螺旋状タイプのコイルワイヤーまたはブレードタイプのワイヤーが内部に形成され、前記ワイヤーは前記電極とは絶縁されていることを特徴とする、請求項1に記載の心室中隔施術用RFカテーテル。
【請求項9】
前記中隔挿入部は電極の表面を除いた表面部分に親水性高分子コーティング層が形成されることを特徴とする、請求項1に記載の心室中隔施術用RFカテーテル。
【請求項10】
前記ガイドワイヤールーメンの一端は前記チップ終端の中心に形成され、他端はカテーテルの側面またはカテーテルの近位部終端に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の心室中隔施術用RFカテーテル。
【請求項11】
前記テーパー状のチップは長さが5~20mmであり、尖部は1.2~1.4Frの厚さ、尖部の反対側は3~6Frの厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の心室中隔施術用RFカテーテル。
【請求項12】
前記電極にRFエネルギーを伝達する電極線は被覆されてカテーテルの表面に放射状に巻かれており(spiral wrapped)、前記電極の個数に対応する電極線が連結されることを特徴とする、請求項1に記載の心室中隔施術用RFカテーテル。
【請求項13】
前記電極線はシルバーワイヤー(silver wire)であることを特徴とする、請求項12に記載の心室中隔施術用RFカテーテル。
【請求項14】
前記電極の温度を測定するために、近位部から遠位部まで2本の熱電対ワイヤーが互いに巻かれた状態でカテーテルの表面に放射状に巻かれていることを特徴とする、請求項1に記載の心室中隔施術用RFカテーテル。
【請求項15】
前記熱電対ワイヤーの1本は人体に無害なニッケル-クロム(Nickel-Chromium)ワイヤーであり、他の1本は人体に無害なニッケル-アルメル(Nickel-Alumel)ワイヤーであることを特徴とする、請求項14に記載の心室中隔施術用RFカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクーリング機能を有した心室中隔施術用RF電極切除カテーテル(RF ablation catheter)に関し、心室中隔施術(septal reduction theraphy)、例えば、動物や人体の心臓の左心室の心室中隔が厚くなる疾患である肥大型心筋症施術、心室中隔を減少させる必要がある施術、または心室頻脈(Ventricular tachycardia)などの心室中隔施術のために、心室中隔にRFエネルギーを印加するRF電極切除術を施行するための、心室中隔施術用RF電極切除カテーテルに関する。
【0002】
また、本発明は電極周囲の身体(心室中隔)組織の炭化を防止するためのクーリング機能を有する心室中隔施術用RF電極切除カテーテルに関する。
【背景技術】
【0003】
心室中隔施術(septal reduction theraphy)には肥大型心筋症施術、心室中隔を減少させる必要がある施術、または心室頻脈(Ventricular tachycardia)等がある。
【0004】
心室中隔施術のうち代表的な肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy)とは、左心室肥大を誘発するような大動脈弁狭窄症や高血圧のような他の症状なしに左心室壁が厚くなる心臓疾患である。全体の人口500人当り1人の割合で発見され、多様な形態の左心室肥大所見が観察される。最も多くて代表的な特徴は、非対称的な心室中隔肥大(asymmetrical septal hypertrophy)と変動性の左心室流出路の閉塞である。
【0005】
図1は、肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy)の症状を示す図面および現在一般的に施行している手術方法を図示する。
【0006】
図1を参照すると、肥大型心筋症手術の一般的な方法は、ナイフを大動脈弁膜を通じて左心室に挿入した後、肥大した左心室の心室中隔を図示された通り、えぐり取る方法である。すなわち、ナイフを利用して専門医の感覚で肥大した心室中隔をえぐり取る方法を使う。
【0007】
一方、他の方法として、RFエネルギーを利用する方法が最近発表されている。RF電極切除術(RF ablation)を通じての中隔肥大(septal hypertrophy)の治療は従来からたびたび発表されてきたが、これはいずれも左心室内にカテーテルを位置させて左心室の表面でRF電極切除術(RF ablation)を行う方法であった。
【0008】
最近ニードル(needle)を使って中隔肥大(sepal hypertrophy)の表面ではなく内部に入り込んで治療する技法が報告されたが、驚くほど優秀な効果を見せたという報告があった。すなわち、最近心室中隔内(intra-septum)に接近してRF電極切除術を施行した時、治療効果が非常に良い結果が発表された。
【0009】
(Percutaneous Intramyocardial Septal Radiofrequency Ablation for Hypertrophic Obstructive Cardiomyopathy.Journal of the American College of Cardiology Volume 72、Issue 16、October 2018)
【0010】
しかし、上記論文では硬いニードルを利用して心室中隔内(intra-septum)に接近するため、施術時に非常に危険であるという短所があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】(特許文献0001)韓国登録特許公報第10-1626958号(2016.05.27登録)(多重電極を具備した高周波カテーテル)
【非特許文献】
【0012】
【文献】(非特許文献0001)Percutaneous Intramyocardial Septal Radiofrequency Ablation for Hypertrophic Obstructive Cardiomyopathy.Journal of the American College of Cardiology Volume 72(16、October 2018.発表)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、クーリング用生理食塩水(クーラント)をカテーテルの近位部で注入して遠位部の電極の温度を下げて電極周囲の炭化を防止することによって、高周波の伝達を容易にし操作範囲をより広くさせる、心室中隔施術用RF電極切除カテーテルを提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、RFカテーテルの外径を減らすことができ、心臓の狭い血管を円滑に容易に通り過ぎることができ、高周波電源線と温度センサ線などとの接触可能性を最小化することによってカテーテルで発生し得る絶縁的な問題を減らすことができ、クーラントが伝達される管の長さを短くしてクーラントをより低い圧力のポンプで注入できる、心室中隔施術用RF電極切除カテーテルを提供することである。
【0015】
本発明の目的は以上で言及した目的に制限されず、言及されていないさらに他の目的は以下の記載から本発明の技術分野で通常の知識を有する者に明確に理解され得るであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は前記目的を達成するためのものであって、本発明の好ましい実施例に係る心室中隔施術のためのRFカテーテルは、心室中隔を突き抜けて挿入されるように、遠位部の終端に終端に行くほど細くなるテーパー状のチップと、前記チップから隣接した位置に外周面に1個以上の電極が形成された中隔挿入部;および前記チップ終端の中心で前記中隔挿入部の内部を貫通してガイドワイヤーを挿入できるガイドワイヤールーメンと、外部からクーラントを注入できるように近位部から前記中隔挿入部の内部まで連結されて終端が開放されたクーラント引込ルーメンと、前記クーラント引込ルーメンと連通し側面に排出口が形成されたクーラント排出ルーメンを有するやわらかい軟質材質の胴体部;を含むものの、
【0017】
前記中隔挿入部は前記ガイドワイヤーの案内に沿って心筋を突き抜けて挿入され、前記ガイドワイヤールーメンと前記クーラント引込ルーメンは互いに連通せずに互いに区画されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の好ましい実施例によると、前記クーラント引込ルーメンを通じて近位部から中隔挿入部の内部まで流入したクーラントは前記クーラント排出ルーメンから抜け出た後、前記胴体部の側面に形成された排出口により冠状静脈洞または静脈内に排出される。
【0019】
本発明の好ましい実施例によると、前記クーラント排出ルーメンは前記クーラント引込ルーメンを囲む構造を有し、前記クーラント引込ルーメンに沿って注入されたクーラントは、前記クーラント引込ルーメンを囲む前記クーラント排出ルーメンに沿って反対方向に流れて前記クーラント排出ルーメンと連通した排出口を通じて冠状静脈洞または静脈内から排出される。
【0020】
本発明の好ましい実施例によると、前記クーラント排出ルーメンは前記ガイドワイヤールーメンを囲む構造を有し、前記ガイドワイヤールーメンは前記クーラント排出ルーメンを通過する。
【0021】
本発明の好ましい他の実施例によると、前記ガイドワイヤールーメンは前記クーラント排出ルーメンの内部を通過せずに隣接して位置する。
【0022】
本発明の好ましい実施例によると、前記電極はRFジェネレータと連結されてRFエネルギーの伝達を受けてRFエネルギーを発散する役割をし、また、心筋の電気信号をセンシングしたり電気刺激を加える役割を遂行する。
【0023】
本発明の好ましい実施例によると、前記ガイドワイヤールーメンは内部を貫通するガイドワイヤーと互いに密着して離隔空間がない。
【0024】
本発明の好ましい実施例によると、前記中隔挿入部は螺旋状タイプのコイルワイヤーまたはブレードタイプのワイヤーが内部に形成され、前記ワイヤーは前記電極とは絶縁される。
【0025】
本発明の好ましい実施例によると、前記中隔挿入部は電極の表面を除いた表面部分に親水性高分子コーティング層が形成される。
【0026】
本発明の好ましい実施例によると、前記テーパー状のチップは長さが5~20mmであり、尖部は1.2~1.4Frの厚さ、尖部の反対側は3~6Frの厚さを有する。
【0027】
本発明の好ましい実施例によると、前記電極にRFエネルギーを伝達する電極線は被覆されてカテーテルの表面に放射状に巻かれており(spiral wrapped)、前記電極の個数に対応する電極線が連結される。好ましくは、前記電極線はsilver wireである。
【0028】
本発明の好ましい実施例によると、前記電極の温度を測定するために、近位部から電極まで2本の熱電対ワイヤーが互いに巻かれたままカテーテルの表面に放射状に巻かれており、より好ましくは、前記熱電対ワイヤーの1本は人体に無害なニッケル-クロム(Nickel-Chromium)ワイヤーであり、他の1本は人体に無害なニッケル-アルメル(Nickel-Alumel)ワイヤーである。
【0029】
【発明の効果】
【0030】
本発明によると次のような効果がある。
【0031】
1.硬いニードルを使う方式ではなく、やわらかいRF電極切除カテーテルを利用してRF電極切除術を施行するため、屈曲のある心室中隔静脈(septal vein)に沿って円滑に進入することができ、安全に施術を施行することができる。
【0032】
2.RF電極切除カテーテルを冠状静脈洞および中隔静脈を通過させるため、冠状動脈、大動脈弁膜(aortic valve)あるいは僧帽弁膜(mitral valve)を通る左心室内膜(LV endocarium)接近、あるいは直接穿刺(direct needle puncture)等によって接近する方法などで惹き起こされる施術の合併症を遮断することができる。
【0033】
3.好ましくは、RF電極切除術施行時にクーリング(cooling)を実施するが、クーリングを通じて心臓内膜(endocarium)にchar(黒い点)が発生したり、組織の損傷(tissue defect)が発生する危険を減らすことができる。
【0034】
4.心室中隔内RFエネルギーを伝達することになると、(1)周辺の組織とコンタクト(contact)がよく、(2)RFエネルギーの長所である均質病変(homogenous lesion)を作ることができ、3)RFの程度を滴定(titration)して組織損傷の程度を段階的に制御できるため、心室の中を貫通できる小さい直径(約2~6Fr)の構造でも十分な治療効果を期待できる長所がある。
【0035】
5.これとともに、左心室内膜の組織損傷を避けることができるため、完全房室ブロックを予防することができ、組織損傷が均一に起きるため不整脈誘発性(arrhythmogenecity)を最小化することができる。
【0036】
6.RF電極切除カテーテルの表面に形成されるelectrode(電極)はRFエネルギーを印加する役割だけでなく、センシングまたは電気刺激の役割をする。
【0037】
RF電極切除術の施行前に、電極を通じて心筋の電気的信号を直接センシングするかまたは電極を通じて電気刺激を加えた後、これにより発生する拍動リズムの心電図を通じて電極が心筋のヒス(His bundle)に近接して位置するかどうかをあらかじめ判断することによって、RF電極切除術の安全性を高めることができ、これに伴い、本発明の施術の信頼性を高めることができるという長所がある。
【0038】
7.クーラント排出ルーメンはクーラント引込ルーメンを囲む構造を有することでRF電極切除カテーテルの外径を減らすことができ、心臓の狭い血管をすぎて心室中隔を目標とする心室中隔施術用RF電極切除カテーテルの場合にはより一層カテーテルの外径を減らすことが大変重要である。
【0039】
8.クーラント排出ルーメンはクーラント引込ルーメンを囲む構造を有しており、カテーテルの外径を減らすことができるため、高周波電源線と温度センサ線などとの接触可能性を最小化することによってカテーテルで発生し得る絶縁的な問題を減らすことができ、生理食塩水(クーラント)が伝達される管の長さが短くなることによって生理食塩水をより低い圧力のポンプで生理食塩水を注入できるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】肥大型心筋症(hypertrophic cariomypathy)の症状および手術方法を図示する。
【
図2】本発明の心室中隔施術用RF電極切除カテーテルおよびこれを利用した施術方法を示す概略図である。
【
図3】本発明の一実施例に係る心室中隔施術用RF電極切除カテーテルの全体斜視図、部分拡大図および部分断面図である。
【
図4】本発明の一実施例に係る心室中隔施術用RF電極切除カテーテルの断面図および部分拡大図である。
【
図5】本発明の一実施例に係る心室中隔施術用RF電極切除カテーテルの表面に形成される電極線の形状およびカテーテルを図示する。
【
図6】本発明の他の実施例に係る心室中隔施術用RF電極切除カテーテルの表面に形成される電極線の形状およびカテーテルを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は添付される図面と共に詳細に後述されている実施例を参照すると明確となるであろう。しかし、本発明は以下で開示される実施例に限定されるものではなく互いに異なる多様な形態で具現され得、ただし、本実施例は本発明の開示を完全なものとし、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範疇によって定義されるのみである。
【0042】
本発明の主な要旨は、硬いニードルではなくやわらかいカテーテルタイプのRF電極切除カテーテルを提供し、これを利用して心室中隔内の(intra-myocardial or intraseptal)、心室中隔施術治療効果を得る施術方法である。すなわち、硬いニードル(needle)ではなくやわらかいカテーテル(catheter)を利用して組織内に入るための方法を提示する。
【0043】
図2は、本発明の心室中隔施術用RF電極切除カテーテルおよびこれを利用した施術方法を示す概略図である。
【0044】
図2を参照すると、本発明は冠状静脈洞(coronary sinus)と中隔静脈(septal vein)を通じてガイドワイヤー(guidewire)を肥大した心室中隔に位置させた後、あらかじめ位置されたガイドワイヤー(guidewire)に沿ってRF電極切除カテーテルを治療目標部位(すなわち、肥大した心室中隔)に伝達させる。その後、外部ではクーラント(coolant)を継続して注入する状態で、RFジェネレータを利用してRF電極切除カテーテルの終端に形成された電極(electrode)にRFエネルギーを印加してRF電極切除術を実施する。
【0045】
好ましくは、RF電極切除術を実施する前に、電極を利用して心筋の電気的信号をセンシングするかまたは電気刺激を加えた後に発生する拍動リズムの心電図を確認して、電極が心筋のヒス(His bundle)に近接(近くに位置)するかどうかを判断することができる。
【0046】
まず、ガイドワイヤー(guidewire、10)を治療目標部位(肥大した心室中隔)内に位置させる方法を説明する。
【0047】
非常に細いガイドワイヤー(約0.014″内外)を使って冠状静脈洞(coronary sinus)と中隔静脈(septal vein)を通過して目標とする地点である肥大した心室中隔(hypertrophied septum)内に位置させる。
【0048】
本発明では中隔静脈(septal vein)を通じて心室中隔施術の治療対象である心室中隔に接近するために、右心房(right atrium)に入口(opening)を有している冠状静脈洞(coronary sinus)を利用する。冠状静脈洞(coronary sinus)への接近は首の静脈(neck vein)あるいは大腿静脈(femoral vein)を利用して、上大静脈(superior vena cava)または下大静脈(inferor vena cava)を通じてガイドカテーテル(guiding catheter)を利用して接近する。
【0049】
ガイドカテーテルは風船が終端に形成されたガイドカテーテルおよび/またはデュアルルーメンマイクロカテーテルを利用する。ガイドカテーテルはガイドワイヤーを望む位置に案内するためのカテーテルである。
【0050】
冠状静脈洞(coronary sinus)に接近すると冠状静脈洞(coronary sinus)の遠位部(distal part)までガイドカテーテル(guiding catheter)を位置させ、ガイドカテーテル(guiding catheter)を通じて圧力が加えられた静脈造影(pressurized venogram)を実施する。圧力が加えられた静脈造影(pressurized venogram)のためには終端に風船が形成されたガイドカテーテル(balloon tipped guiding catheter)が理想的である。
【0051】
圧力が加えられた静脈造影(pressurized venogram)を通じて冠状静脈(septal vein)を造影すると、ターゲット部位と最も近い冠状静脈(septal vein)の中に約0.014″のPTCAガイドワイヤー(PTCA guidewire)を挿入する。PTCAガイドワイヤー(PTCA guidewire)は、超音波(echocardiogram)等のリアルタイム映像装備を活用してワイヤーがターゲット部位を探して行くかどうかを知らせるイメージ(imaging guidance)がさらに精密な施術を可能にする。PTCAガイドワイヤー(PTCA guidewire)の方向性をもう少し精密に誘導するために、デュアルルーメンマイクロカテーテル(dual lumen microcatheter)を利用してターゲット部位にワイヤーを精密に誘導することができる。
【0052】
すなわち、ガイドワイヤーを中隔静脈(septal vein)を通じて心室中隔(interventricular septum)に位置させるためには、(1)終端に風船が形成されたガイドカテーテルを利用した圧力が加えられた静脈造影(pressurized venogram with balloon guiding cathether)および/または(2)デュアルルーメンマイクロカテーテル(dual lumen microcathehter)等が使われ得る。
【0053】
中隔静脈(septal vein)をさらによく見えるようにするために、圧力が加えられた静脈造影(pressurized venogram)を利用する。このために終端に風船が形成されたガイドカテーテル(balloon tipped guiding catheter)が補助手段として使われ得る。
【0054】
また、心室中隔内でガイドワイヤー(guidewire)を望む方向に位置させるために、デュアルルーメンマイクロカテーテル(dual lumen microcatheter)等が補助手段として使われ得る。デュアルルーメンマイクロカテーテル(dual lumen microcatheter)は、ガイドワイヤーを挿入するために2個のルーメンが形成されたカテーテルである。デュアルルーメンマイクロカテーテルの1番目のルーメンを通じて心室中隔静脈(septal vein)に1番目のガイドワイヤーを位置させた後、デュアルルーメンマイクロカテーテルの2番目のルーメンを通じて2番目のガイドワイヤーを挿入させる。2番目のガイドワイヤーは1番目のガイドワイヤーとは異なる方向に移動させることができる。このように、デュアルルーメンマイクロカテーテルは心室中隔内に望むガイドワイヤーを目標地点を探して行く時に非常に有用な施術補助カテーテルである。
【0055】
心室中隔の表面ではない心室中隔組織内に位置する中隔静脈(septal vein)内では、出血などの問題なくガイドワイヤー(guidewire)の自由な移動が可能である。中隔静脈(septal vein)が心室中隔内に存在するため、中隔静脈(septal vein)を利用して肥大した心筋中隔の中に(intra-septum)ガイドワイヤーを位置させる。中隔静脈(septal vein)利用時、ガイドワイヤーは必要に応じて中隔静脈(septal vein)を突き抜けて望む所に移動することも可能である。この時、前述したデュアルルーメンカテーテルを利用することができる。
【0056】
冠状動脈(septal artery)を使っても同様の接近が理論的に可能であるが、解剖学的位置が多様であるためターゲットに到達するのが難しい場合が多い。この場合、ガイドワイヤーが中隔動脈(septal artery)を突き抜けていくと、心筋内出血などの深刻な問題が引き起こされ得る。また、冠状動脈に施術をしていると、冠状動脈内血栓(thrombus)や剥離(dissection)が発生する場合がおおく、これは致命的であり得る。したがって、本発明でのように、中隔静脈(septal vein)を利用してガイドワイヤーを挿入する。
【0057】
本発明での中隔静脈(septal vein)を通じての接近方法は、既存の接近方法である冠状動脈、大動脈弁膜(aortic valve)あるいは僧帽弁膜(mitral valve)を通っての左心室内膜(LV endocarium)接近、あるいは直接穿刺(direct needle puncture)等によって接近する方法などで引き起こされる施術の合併症を遮断することができる。
【0058】
一方、従来には中隔動脈(septal artery)にアルコール(alcohol)を注入する治療が行われてきた。これも同様にアルコール(alcohol)の分布を統制することが難しく、望んでいない部位にアルコールが伝達されて不要な心筋梗塞などの問題を引き起こし得、伝導系(condution system)障害もよく誘発する。
【0059】
次に、肥大した心室中隔に位置させたガイドワイヤー(guidewire)に沿ってRF電極切除カテーテル(RF ablation catheter)を目標部位(肥大した心室中隔内)まで位置させる。すなわち、目標部位にガイドワイヤーを1本または2本以上位置させた後、ガイドワイヤーに沿ってRF電極切除カテーテル(RF ablation catheter)を挿入して電極が目標部位に到達するように位置させる。
【0060】
RF電極切除カテーテルの電極を目標部位(肥大した心室中隔内)に位置させた状態で、RF電極切除カテーテル内のクーラント排出ルーメンを通じて外部からクーラント(coolant、生理食塩水)を注入しながら、RFジェネレータを利用してRF電極切除カテーテルの終端に形成された電極(RF electrode)にRFエネルギーを印加してRF電極切除術を実施する。
【0061】
好ましくは、RF電極切除術を実施する前に、前記電極が心筋のヒス近くに位置するかどうかを判断する段階を経る。電極が心筋のヒス近くに位置するかどうかは、心筋の電気信号を直接感知したり、または電気刺激時に発生する拍動リズムの心電図を確認することによって可能である。
【0062】
図2を参照すると、本発明のRF電極切除カテーテル(RF ablation catheter)は、上大静脈(SVC、superior vena cava)または下大静脈(IVC、inferor vena cava)を通じて右心房(RA、right atrium)を通過した後、冠状静脈洞(CS、coronary sinus)を通過した後に心室中隔を突き抜けて挿入される。この状態で電極にRFエネルギーが供給されてablationが実施される。本発明のRF電極切除カテーテルは近位部から注入されたクーラントがクーラント排出ルーメンから出てきて胴体部の側面に形成されたクーラント排出ルーメンの排出口に排出される。排出口の位置は冠状静脈洞、右心房、または上大静脈(または下大静脈)内に位置するため、クーラントは冠状静脈洞、右心房または静脈に流れることになる。
【0063】
図2を参照すると、クーラントが排出されるクーラント排出ルーメンの排出口の位置は、赤色の矢印で表示されたCS1、CS2、CS3、RA、またはSVCに位置することになる。ここで、CS1、CS2、CS3、RA、SVCは概略的に排出口が位置できる位置のみを意味し、必ずしもこれに限定される正確な位置を意味するものではない。すなわち、クーラントが排出される排出口の位置はCS、RA、SVC(またはIVC)の間のいずれの地点に位置してもよい。
【0064】
図3は本発明の一実施例に係る心室中隔施術用RF電極切除カテーテルの全体斜視図、部分拡大図および部分断面図であり、
図4はRF電極切除カテーテルの断面図および部分拡大図である。
【0065】
図3および
図4を参照すると、RF電極切除カテーテル100は、大きく胴体部(body part、130)と中隔挿入部(intra-septal part、120)に区分される。
【0066】
中隔挿入部(intra-septal part、120)は胴体部130の遠位部(distal part)に形成される部分であって、心室中隔に挿入される部分である。略3~6Fr内外の太さ(好ましくは約4Fr)であって、心室中隔に挿入時に心室中隔の損傷を少なく与える大きさである。
【0067】
中隔挿入部(intra-septal part、110)は、表面には1個以上の電極が形成された電極(electrode、124)と、ガイドワイヤー(guidewire)に沿って心室中隔を突き抜けて入ることができるように終端に行くほど細くなるテーパー状のチップ(tapered tip、tissue penetrating tip、122)を含む。
【0068】
好ましくは、テーパー状のチップ122の長さは略5~20mm(好ましくは約10mm)であり、尖部は略1.2~1.4Frの太さを有する。尖部の反対側は中隔挿入部の外形と同一の厚さ(好ましくは3~6Fr、より好ましくは4~5Fr)を有する。テーパー状のチップ122は尖部の反対側の厚さ(すなわち、中隔挿入部の外形の厚さ)より長さが5~20倍さらに長い、非常に長くて細いチップの形状である。
【0069】
RF電極切除カテーテル(RF ablation catheter、100)は心室中隔に位置するガイドワイヤーに沿って心室中隔に挿入されるように、内部にガイドワイヤーが挿入されるガイドワイヤールーメン(guidewire lumen)を有する。中隔挿入部の尖部(end)にはガイドワイヤールーメン110の入口112が形成される。
【0070】
好ましくは、ガイドワイヤーとガイドワイヤールーメンの入口112の間は互いに密着して離隔空間があってはならない。すなわち、ガイドワイヤーとチップの終端の間は、mismatchがないhigh precision structure構造を有さなければならない。
【0071】
ガイドワイヤールーメンの入口とガイドワイヤーの間に離隔空間があってはならない理由は、チップが心室中隔の内部に入る時に心室中隔の組織に損傷を加えず、抵抗が最小化されなければならないためである。これは本発明で、テーパー状のチップ122がニードル(needle)のような機能をしながら心室中隔組織を突き抜けて入らなければならないためである。もし、ガイドワイヤールーメンの入口とガイドワイヤーの間に離隔空間が形成された場合には、テーパー状のチップが心室中隔に挿入時にチップが心室中隔組織によって抵抗を受けることになり、これに伴い、心室中隔組織を損傷させ得るという問題が発生することになる。
【0072】
RF電極切除カテーテルはガイドワイヤーに沿って心室中隔内に挿入されなければならないため、ガイドワイヤールーメンの入口とガイドワイヤーが密着はするものの、RF電極切除カテーテルはガイドワイヤールーメンを通じてガイドワイヤーに沿って動くことができなければならないことは言うまでもない。
【0073】
中隔挿入部(intra-septal part)の電極(electrode)は1個以上が形成される。前記電極は心筋の電気信号をセンシングしたり電気刺激を与える役割をするだけでなく、またRFジェネレータ(generator)のRFエネルギーを伝達する役割をする。
【0074】
電極は電極線(
図5、6に図示される)に連結されており、電極線はカテーテルの内部または外面に沿って近位部まで連結されてカテーテルの外部に抜け出て外部コネクタと連結される。外部コネクタをいずれに連結するかにより、電極はRF高周波の発散だけでなく、電気信号のセンシング、電気刺激などの多様な機能を遂行するようにすることができる。
【0075】
心筋のヒス(His bundle)近くに位置するかどうかを判断するために(すなわち、伝導系の位置を把握するために)、電極は心筋の電気信号を直接センシングするかまたは電気刺激(pacing)を加える用途で使われる。また、RF電極切除を遂行するために、電極はRFジェネレータのRFエネルギーを伝達する用途で使われる。すなわち、前記電極は電極が心筋のヒス(His bundle)近くに位置するかどうかを判断するための用途およびRFエネルギーを伝達するための用途などの多様な用途で使われ得る。
【0076】
まず、電極が心筋のヒス近くに位置するかどうかを判断するための用途で使われる場合には、心筋の電気信号を直接センシングするかまたは心筋に電気刺激を加える用途で使われる。心筋に電気刺激を加える場合には、電気刺激によって発生する拍動リズムの心電図を確認することによって、ヒスなどの伝導系(conduction system)の位置を間接的に把握することができる。
【0077】
RF電極切除カテーテルは心室中隔に容易に接近することができるが、心筋内のヒス(his bundle)に近く位置する危険がある。もし、RF電極切除カテーテルの電極が心筋内のヒスに近接した状態でRF電極切除術(RF ablation)を実施することになると、心臓の伝導系をRF電極切除(RF ablation)して心臓の伝導系を破壊させる危険がある。
【0078】
これを防止するために、本発明ではRF電極切除を実施する前に、電極を通じてヒスなどの伝導系の位置を把握しなければならない。このために、電極はセンシング(sensing)または電気刺激(pacing)の役割を遂行する。電極を利用して心筋の電気的信号を直接センシングして伝導系の位置を把握したり、または電極を利用して心筋に電気刺激を加えて、これに伴い発生する拍動リズムの心電図を通じてヒスなどの伝導系位置を間接的に把握することができる。
【0079】
電極がヒス近くに位置する場合にはRF電極切除カテーテルの位置を他の位置に変更しなければならない。
【0080】
電極の位置がヒス(His bundle)から十分に外れた場合に限って、電極と連結される外部コネクタをRFジェネレータと連結してRFエネルギーを印加してRF電極切除術を施行することになる。
【0081】
RF電極切除術(RF ablation)施行時には、電極と連結されたコネクタはRFジェネレータに接続される。RFジェネレータのRFエネルギーは電極に伝達されてRF電極切除(RF ablation)が施行される。
【0082】
電極が1つ以上多数個が形成される場合に、一部の電極をRF電極切除用途で使用し、残りの電極をセンシング(sensing)または電気刺激(pacing)用途で使うことができる。すなわち、多数個の電極を用途に応じて区分して、RF電極切除用途で使われる電極と、センシングまたは電気刺激用途で使われる電極に分離して使うことができる。
【0083】
他の場合として、電極を二つの用途に区分せず、センシングまたは電気刺激用途にも使用し、またRF電極切除用途にも使うことができる。すなわち、電極をセンシングまたは電気刺激用途で先に使った後、電極に連結されたコネクタをRFジェネレータに連結してRFエネルギーを印加する電極として使うことができる。
【0084】
本発明ではカテーテルの近位部(proximal part)はカテーテルの一側終端であって、カテーテルが人体の外部に抜け出る終端を意味し、カテーテルの遠位部(distal part)はカテーテルの他側終端であって、人体内に挿入される終端を意味する。
【0085】
図示されてはいないが、好ましくは中隔挿入部120は絶縁された螺旋状タイプのコイルワイヤー(spiral coil wire)またはブレードタイプのワイヤー(braided wire)が内部に形成される。これは中隔挿入部が心室中隔に挿入時に曲がる現象(kinking現象)を防止し、プッシュ能力(pushability)とトラック能力(tackability)を向上させるためである。プッシュ能力(pushability)は曲がる現象を減らしながら近位部から遠位部まで力を伝達する能力であり、trackabilityは複雑な血管に沿ってカテーテルを注入する能力である(Pushability is often understood as the ability to transmit force from the proximal end of the catheter to the distal end of the catheter while minimizing or eliminating kinking.Trackability is often understood as the ability to navigate the catheter through tortuous vasculature)。螺旋状タイプのコイルワイヤーとブレードタイプのワイヤーはいずれも電極または電極線とは絶縁されなければならないことは言うまでもない。
【0086】
好ましくは、中隔挿入部は表面に親水性高分子コーティング層(hydrophilic polymer coating)が形成され得る。これは中隔挿入部が心室中隔組織内により容易に移動できるようにするためである。親水性高分子コーティング層は軟質のカテーテルよりは硬いため、中隔挿入部が心室中隔組織内に挿入時により容易に挿入され得る。電極は表面に表出されていなければならないため、電極が形成された部分には親水性高分子コーティング層が形成されない。
【0087】
胴体部(body part、130)はカテーテルの胴体をなす部分である。胴体部130の外径は中隔挿入部(intraseptal part、120)の外径と同一であるかさらに大きい構造を有する。胴体部120は心室中隔内に中隔挿入部を押し入れる時にカテーテルが曲がる現象(kinking現象)が発生しないように、効率的に押し入れるために十分な強度(stiffness)を有さなければならない。
【0088】
好ましくは、中隔挿入部と同一に、胴体部は絶縁された螺旋状タイプのコイルワイヤー(spiral coil wire)またはブレードタイプのワイヤー(braided wire)が内部を形成することができる。これはカテーテルが曲がる現象を防止し、プッシュ能力(pushability)とトラック能力(trackability)を向上させることができる。
【0089】
一方、RF電極切除カテーテルを利用してRFエネルギーの印加時、温度が過度に高く上がると、心室中隔にchar(黒い点)ができるだけでなく、心筋(myocardium)に組織損傷(tissue defect)が発生し得る。また、組織が急に焼けながら出てきた気体によって組織内の圧力が急に上がって気圧の低下(barotrauma)が発生し、これによって心臓に穿孔が発生する危険がある。
【0090】
RF電極切除時にクーラント(coolant、生理食塩水)を利用してRF電極切除部位をクーリングしなければならない。クーリングをするためにはRF電極切除カテーテル内にクーラントを注入しなければならない。
【0091】
近位部から注入されたクーラントは中隔挿入部の電極の温度をクーリングさせた後、再び近位部に戻ってくるか、胴体部の側面から排出され得る。
【0092】
図3は本発明の一実施例に係る心室中隔施術用RF電極切除カテーテルの全体斜視図、部分拡大図および部分断面図である。
図4は発明の一実施例に係る心室中隔施術用RF電極切除カテーテルの断面図および部分拡大図である。
【0093】
図3および
図4を参照すると、
図3および
図4で図示されたRF電極切除カテーテルは、クーラント(生理食塩水)がクーラント引込ルーメン140を通じて近位部から注入されて電極124が位置する中隔挿入部120の内部まで入った後、クーラント排出ルーメン150から出てきてクーラント排出ルーメンに沿って再び反対方向に流れて胴体部130の側面に形成されたクーラント排出ルーメン150の排出口152を通じて排出される。
【0094】
本発明のRF電極切除カテーテルを利用して心室中隔施術する場合に、ガイドワイヤーに沿ってRFカテーテルを挿入すると、遠位部の終端はチップ122が心室中隔(心筋)を突き抜けて入って心室中隔に挿入される。この時、胴体部130の側面に形成されたクーラント排出ルーメン150の排出口152は冠状静脈洞、右心房または静脈内に位置するため、排出されるクーラントは冠状静脈洞、右心房または静脈内から排出されるようになるのである。
【0095】
ガイドワイヤールーメン110はガイドワイヤーを挿入するルーメンであって、RFカテーテルをガイドワイヤーに沿って目標物(心室中隔)に挿入するために必須の要素である。ガイドワイヤールーメン110はチップ終端の中心に形成された入口112から中隔挿入部120の内部を貫通して胴体部の側面に出口114が形成される。
【0096】
ガイドワイヤールーメン110の出口114は多様な位置に形成され得るが、胴体部の近位部または中間部分、または遠位部に形成され得る。好ましくは、
図3および
図4に図示された通り、ガイドワイヤールーメンの出口114は胴体部の近位部に形成されることが好ましい。これはガイドワイヤーとカテーテルができるだけ互いに分離されず、RFカテーテルの内部にガイドワイヤーが位置するようにしてガイドワイヤーに沿ってRFカテーテルが容易に挿入されるようにするためである。
【0097】
ガイドワイヤールーメン110はクーラント排出ルーメン150と連通せずに互いに区画されている。すなわち、互いに分離されて分けられている。これはガイドワイヤールーメンに沿って動くガイドワイヤーがクーラント排出ルーメンを通じて流れるクーラントによって妨害されないようにするためである。
【0098】
好ましくは、クーラント排出ルーメンがガイドワイヤールーメンを囲む構造すなわち、クーラント排出ルーメンの内部にガイドワイヤールーメンが位置する構造を有する。
【0099】
クーラント引込ルーメン150はクーラントをRFカテーテルの内部に挿入するための通路であって、外部からクーラントを注入できるように近位部から前記中隔挿入部の内部まで連結されており、その終端が開放されている。したがって、外部から流入したクーラントは中隔挿入部の内部まで注入されることになる。
【0100】
クーラント引込ルーメンとクーラント排出ルーメンは互いに連通しており、より好ましくは中隔挿入部付近(遠位部)でクーラント排出ルーメンがクーラント引込ルーメンを囲む構造すなわち、クーラント排出ルーメンの内部にクーラント引込ルーメンが位置する構造を有する。
【0101】
クーラント引込ルーメン140を通じて近位部から注入されたクーラントはクーラント引込ルーメンに流れた後、クーラント引込ルーメンの終端が開放されているため、クーラント引込ルーメンを抜け出てクーラント引込ルーメンを囲むクーラント排出ルーメンの内部に沿って流れる。
【0102】
RF電極は中隔挿入部の外面に位置し、クーラント引込ルーメンの終端が中隔挿入部の内部まで連結されているため、クーラントは中隔挿入部まで注入されて電極およびカテーテルをクーリングさせることができるようになる。一方、クーラント排出ルーメンの終端は閉塞されているため、クーラントはクーラント排出ルーメンに沿って反対方向に流れた後の胴体部の側面に形成された排出口152を通じて外部に排出されることになる。
【0103】
従来の一般的なカテーテルはクーラント(生理食塩水)でクーリングするカテーテルでは、カテーテルの内部にクーラント引込ルーメンとクーラント排出ルーメンがカテーテルの近位部から遠位部まで連結された構造を有していた。
【0104】
しかし、本発明ではクーラント排出ルーメンがカテーテルの近位部まで連結されるものではなく、胴体部の側面に排出口が形成され、冠状静脈洞や右心房や上大静脈(または下大静脈)内でクーラントを排出することになる構造を有し、クーラント排出ルーメンはクーラント引込ルーメンを囲む構造を有する。
【0105】
これに伴い、本発明のカテーテルは別途にクーラント排出チューブを近位部まで形成する必要がないため、カテーテルの外径を減らすことができるという長所がある。特に、心臓の狭い血管を通って心室中隔を目標とする心室中隔施術用RF電極切除カテーテルの場合には、より一層カテーテルの外径を減らすことが非常に重要である。
【0106】
また、高周波電源線と温度センサ線などとの接触可能性を最小化することによってカテーテルで発生し得る絶縁的な問題を減らすことができ、生理食塩水(クーラント)が伝達される管の長さが短くなることによって生理食塩水をより低い圧力のポンプで生理食塩水を注入することができるという長所がある。
【0107】
一方、RF電極切除時に電位を印加する方式により、大きく単一極性モードRF電極切除カテーテル(monopolar mode RF ablation catheter)を使う方法と、二重極性モードRF電極切除カテーテル(bipolar mode RF ablation catheter)を使う方法がある。
【0108】
単一極性モードRF電極切除カテーテル(monopolar mode RF ablation catheter)はRF電極切除カテーテルの電極にすべて同一の一つの極性のみを印加するカテーテルであり、二重極性モードRF電極切除カテーテル(bipolar mode RF ablation catheter)はカテーテルの電極に互いに異なる極性を印加するカテーテルである。
【0109】
二重極性モードRF電極切除カテーテルを使う場合には別途の接地デバイスが不要であるが、単一極性モードRF電極切除カテーテルを使う場合には別途の接地デバイスが必要である。
【0110】
単一極性モードRF電極切除カテーテルを使う場合は、接地デバイスを人体の異なる部位に位置させる場合と、心室中隔内に位置させる場合がある。
【0111】
接地デバイスを人体の異なる部位に位置させる場合は、RF電極切除カテーテルを心室中隔に位置させ、人体の異なる部位(背中、お尻、ふくらはぎなどの人体部位)に接地板(接地デバイス)を接地させた後、RF電極切除カテーテルの電極にRFエネルギーを印加してRF電極切除を実施する方法である。
【0112】
接地デバイスを心室中隔内に位置させる場合は、RF電極切除カテーテルを心室中隔に位置させ、接地(ground)役割をする接地デバイスの前記RF電極切除カテーテルの電極周囲に位置させた後、RF電極切除カテーテルの電極にRFエネルギーを印加してRF電極切除を実施する方法である。
【0113】
図3および
図4では電極が多数個形成された様子を図示したが、RF ablationのために電極が一つのみ形成されてもよく、この場合には単一極性モードに該当するであろう。中隔挿入部に一つの電極が形成される場合、
図3に図示された3~4個の電極の大きさ程度の広い幅を有した電極が形成されるであろう。
【0114】
一方、ガイドワイヤールーメンは
図3および
図4に図示された通り、前記クーラント排出ルーメンの内部に形成されてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0115】
クーラント排出ルーメンの内部を通過せずに隣接して位置してもよい。すなわち、ガイドワイヤールーメンがクーラント排出ルーメンの内部を通過せずに分離されて形成され得る。この場合、クーラント排出ルーメンの直径は小さくなるであろうが、クーラント排出ルーメン内でガイドワイヤールーメンの左右動きがないため、より安定した構造を有すると言える。
【0116】
図5は、本発明の一実施例に係る心室中隔施術用RF電極切除カテーテルの表面に形成される電極線の形状およびカテーテルを図示する。
【0117】
図5に図示された心室中隔施術用RF ablationカテーテルは4個の電極を有する構造を図示する。好ましくは、電極の幅は約1mm~10mmである。4個の電極それぞれはそれぞれの電極線と連結され、カテーテル遠位部の温度を測定するための熱電対ワイヤーが連結される。電極線(electrode wire)と熱電対ワイヤー(thermocouple wire)はカテーテルの近位部で連結される。4個の電極それぞれは約1mmの幅を有するが、必ずしもこれに限定されるものではなく、電極の個数により適切に調節され得ることは言うまでもない。電極の個数が少ない場合にはより幅が大きい電極が使われ、電極の個数が多い場合には電極の幅が小さくなり得る。また、一つのカテーテルで幅が互いに異なる電極が使われ得る。
【0118】
前記電極に供給されるRF energyはカテーテルの表面に螺旋状に巻かれたsilver wireを通じて形成される。すなわち、RF ablationを実施するためのRF energyは、軟質のプラスチック材質のカテーテルの表面に螺旋状に巻かれた電極線(wire)を通じて電極(electrode、124)に供給されるのである。
【0119】
電極線はRF energyを供給するワイヤーであって、好ましくはsilver wireが使われる。silver wireは人体に無害なプラスチック材質で絶縁(被覆)されている。本発明のRF ablationカテーテルは人体(冠状静脈洞、右心房、静脈)内に挿入される。電極線(wire)がカテーテルの表面を囲む構造であるため、カテーテルが冠状静脈洞、右心房または静脈内に挿入時、電極線の被覆が剥がれる場合に組織と接することになるため、人体に有害な銅などの材質は使われ得ない。したがって、本発明では人体に無害なsilver wireを電極線として使うことになる。
【0120】
本発明ではsilver wireをRF energyを伝達する電極線として使用することによって、カテーテルの表面に螺旋状に形成することによってカテーテルの直進性を向上させ、pushabilityを向上させ得るという長所を得ることができる。
【0121】
一方、
図5に図示された通り、カテーテルの表面には電極線のsilver wire以外に熱電対ワイヤー(themocouple wire)が電極線と離隔して放射状に巻かれて(spiral wrapped)いる。熱電対ワイヤーも無害なプラスチック材質で被覆されている。
【0122】
熱電対ワイヤー(themocouple wire)は電極周囲の温度を測定するためのものである。すなわち、熱電対ワイヤーは熱電温度計として使われるワイヤーである。熱電対ワイヤー(thermocouple wire)は被覆された2個の線が互いに巻かれた形態であって、カテーテルの表面に電極線(silver wire)と離隔して放射状に巻かれている。熱電対ワイヤーは全体的に被覆されているが、その終端は被覆が剥がれて連結されて熱電温度計として使われる。
【0123】
現在多様な熱電対ワイヤーが使われているが、本発明では好ましくは、人体に挿入されるカテーテルの表面に巻かれた形態であるため、熱電対ワイヤーは被覆が剥がれても人体に無害なニッケル-クロム(Nickel-Chromium)/ニッケル-アルメル(Nickel-Alumel)が使われる。すなわち、前記熱電対ワイヤーの1本は人体に無害なニッケル-クロム(Nickel-Chromium)ワイヤーであり、他の1本は人体に無害なニッケル-アルメル(Nickel-Alumel)ワイヤーである
【0124】
本発明の熱電対ワイヤーもカテーテルの表面に螺旋状に巻かれているため、カテーテルの直進性を向上させ、pushabilityを向上させることができるという長所を得ることができる。
【0125】
前述した通り、電極の個数は変更可能であり、電極の個数により電極に電源を供給する電極線の個数も変更されることは言うまでもない。
【0126】
図6は本発明の他の実施例に係る心室中隔施術用RF電極切除カテーテルの表面に形成される電極線の形状およびカテーテルを図示する。
図6は一つの電極が使われた場合を図示する。
【0127】
図6を参照すると、電極は一つの広い電極(electrode、124)がコイルで巻かれた形態で形成される。電極が一つであるため、電極にRF energyを供給する電極線も1つ形成される。電極線は被覆されており、カテーテルの表面に螺旋状に巻かれて形成される。材質は被覆が剥がれても人体に安全なシルバーワイヤー(silver wire)が使われ得る。
【0128】
電極線の他にカテーテルの遠位部の温度を測定するための熱電対ワイヤーがカテーテルの表面に螺旋状に巻かれている。熱電対ワイヤーも被覆されており、2本の線が互いに撚れて巻かれたまま、カテーテルの表面に螺旋状に巻かれている構造を有する。熱電対ワイヤーの構造および材質は前述の通りである。
【0129】
以上で詳述した通り、RF電極切除カテーテルの電極を心室中隔内に位置させた状態で、RF電極切除カテーテル内にクーラントを挿入させてRF電極切除術を実施することになる。RF電極切除術を施行して十分に目標とする治療効果が得られた後にはすべての装置を除去することによって、心室中隔施術用RF電極切除術を完了することになる。
【0130】
以上、添付された図面を参照して本発明の実施例を説明したが、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施され得ることが理解できるであろう。したがって、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的ではないものと理解されるべきである。
【符号の説明】
【0131】
10:ガイドワイヤー(guide wire)
100:RF電極切除カテーテル(RF ablation catheter)
110:ガイドワイヤールーメン(guidewire lumen)
112:入口
114:出口
120:中隔挿入部(intra-septal part)
122:チップ(tapered tip)
124:電極(electrode)
130:胴体部(body part)
140:クーラント引込ルーメン(inlet lumen)
150:クーラント排出ルーメン(outlet lumen)
152:排出口(exit)
160:取っ手(handle)
162:クーラント挿入口
164:電源ケーブル