(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】クランプ具
(51)【国際特許分類】
F16L 41/06 20060101AFI20241212BHJP
F16L 41/12 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
F16L41/06
F16L41/12
(21)【出願番号】P 2021087906
(22)【出願日】2021-05-25
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼村 知広
(72)【発明者】
【氏名】今野 実
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-224991(JP,A)
【文献】特開平08-155842(JP,A)
【文献】特開2020-051614(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0206252(US,A1)
【文献】特開2002-205279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/00-2/26
F16L 41/00-49/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サドル本体と前記サドル本体に設けられた枝管とを有する上サドルと下サドルを、配管の外周に沿って互いに対向するように配置した状態で保持するクランプ具であって、
前記上サドルの前記枝管を挟んで一方側に設けられた一方側上フランジに鉛直方向上側から当接される第1上支持部と、
前記下サドルの前記枝管を挟んで一方側に設けられた一方側下フランジに鉛直方向下側から当接される第1下支持部と、
前記第1上支持部と前記第1下支持部との間隔を狭めることにより前記上サドルと前記下サドルを前記配管の外周面へ押圧させる第1締結機構と、
を有する第1クランプ本体と、
前記上サドルの前記枝管を挟んで前記一方側上フランジと反対側に設けられた他方側上フランジに鉛直方向上側から当接される第2上支持部と、
前記下サドルの前記枝管を挟んで前記一方側下フランジと反対側に設けられた他方側下フランジに鉛直方向下側から当接される第2下支持部と、
前記第2上支持部と前記第2下支持部との間隔を狭めることにより前記上サドルと前記下サドルを前記配管の外周面へ押圧させる第2締結機構と、
を有する第2クランプ本体と、
前記第1締結機構と前記第2締結機構に連結され、共通動作により前記第1締結機構及び前記第2締結機構の両方を作動させる共通締結部材と、
を備え、
前記第1締結機構は、
前記第1下支持部に固定されて前記第1下支持部の延在方向と直交する方向に延在する第1下固定部と、
前記第1下固定部から前記第1上支持部側へ延出され、前記第1下固定部と直交する方向に延在する第1中間部と、
前記第1中間部に固定され、前記第1下固定部と同方向に延在され、前記第1上支持部を挟んで前記第1下支持部と反対側に配置され、前記第1中間部の延在方向と同方向の第1貫通孔が形成された第1上固定部と、
を有する第1本体部材と、
前記第1貫通孔に挿通されると共に前記第1上支持部に当接され、前記第1上支持部と前記第1上固定部との間隔を広げる第1締結部材と、
を有し、
前記第2締結機構は、
前記第2下支持部に固定されて前記第2下支持部の延在方向と直交する方向に延在する第2下固定部と、
前記第2下固定部から前記第2上支持部側へ延出され、前記第2下固定部と直交する方向に延在する第2中間部と、
前記第2中間部に固定され、前記第2下固定部と同方向に延在され、前記第2上支持部を挟んで前記第2下支持部と反対側に配置され、前記第2中間部の延在方向と同方向の第2貫通孔が形成された第2上固定部と、
を有する第2本体部材と、
前記第2貫通孔に挿通されると共に前記第2上支持部に当接され、前記第2上支持部と前記第2上固定部との間隔を広げる第2締結部材と、
を有し、
前記共通締結部材は、第1締結部材に固定された第1ギア、第2締結部材に固定された第2ギア、及び、前記第1ギア及び前記第2ギアと噛み合う共通ギアを含んで構成されている、
クランプ具。
【請求項2】
前記第1ギア、前記第2ギア、及び前記共通ギアの回転中心を保持する保持プレート、
を備えた、
請求項1に記載のクランプ具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクランプ具に係り、配管に枝管を取り付ける際に用いるクランプ具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス管に樹脂製の分岐継手を取り付ける場合に、クランプが用いられている。特許文献1では、分岐継手のサドル部を上部クランプで支持すると共に、ガス管を下部クランプで支持し、上部クランプと下部クランプを連結して、分岐継手をガス管に支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガス管から水を抜くためにガス管に水取り用の枝管を付ける場合がある。ガス管の径が比較的大きい場合には、既存の水取り用の枝管を取り付けるのが困難な場合があり、水取り構造を工夫すると共に、水取り用の枝管を取り付けるための治具についても従来と異なる工夫が必要である。
【0005】
特許文献1には、枝管の設けられたサドル部を1個のみ取り付けるためのクランプが開示されているが、同時にガス管の上下に一対のサドルを保持することができない。2個のサドルを取り付けるためには、一方を取り付けた後、他方を取り付けることになり、作業を2回実施する必要がある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮して成されたものであり、簡易な作業で配管に2個の枝管を設置することが可能なクランプ具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係るクランプ具は、サドル本体と前記サドル本体に設けられた枝管とを有する上サドルと下サドルを、配管の外周に沿って互いに対向するように配置した状態で保持するクランプ具であって、前記上サドルの前記枝管を挟んで一方側に設けられた一方側上フランジに鉛直方向上側から当接される第1上支持部と、前記下サドルの前記枝管を挟んで一方側に設けられた一方側下フランジに鉛直方向下側から当接される第1下支持部と、前記第1上支持部と前記第1下支持部との間隔を狭めることにより前記上サドルと前記下サドルを前記配管の外周面へ押圧させる第1締結機構と、を有する第1クランプ本体と、前記上サドルの前記枝管を挟んで前記一方側上フランジと反対側に設けられた他方側上フランジに鉛直方向上側から当接される第2上支持部と、前記下サドルの前記枝管を挟んで前記一方側下フランジと反対側に設けられた他方側下フランジに鉛直方向下側から当接される第2下支持部と、前記第2上支持部と前記第2下支持部との間隔を狭めることにより前記上サドルと前記下サドルを前記配管の外周面へ押圧させる第2締結機構と、を有する第2クランプ本体と、前記第1締結機構と前記第2締結機構に連結され、共通動作により前記第1締結機構及び前記第2締結機構の両方を作動させる共通締結部材と、を備えている。
【0008】
請求項1に係るクランプ具は、サドル本体とサドル本体に設けられた枝管とを有する上サドルと下サドルを、配管の外周に沿って互いに対向するように配置した状態で保持するものであり、第1クランプ本体と第2クランプ本体を備えている。
【0009】
第1クランプ本体は、第1上支持部と、第1下支持部と、第1締結機構と、を有している。第1上支持部は、上サドルの一方側上フランジに鉛直方向上側から当接され、第1下支持部は、下サドルの一方側下フランジに鉛直方向下側から当接される。第1締結機構は、第1上支持部と第1下支持部との間隔を狭めることにより上サドルと下サドルを配管の外周面へ押圧させる。
【0010】
一方、第2クランプ本体は、第2上支持部と、第2下支持部と、第2締結機構と、を有している。第2上支持部は、他方側上フランジに鉛直方向上側から当接される。他方側上フランジは、上サドルの枝管を挟んで一方側上フランジと反対側に配置されている。第2下支持部は、下サドルの他方側下フランジに鉛直方向下側から当接される。他方側下フランジは、下サドルの枝管を挟んで一方側下フランジと反対側に配置されている。第2締結機構は、第2上支持部と第2下支持部との間隔を狭めて上サドルと下サドルを前記配管の外周面へ押圧させる。
【0011】
このように、第1クランプ本体と第2クランプ本体を枝管の一方側と他方側に配置し、上サドルと下サドルを配管の外周面へ押圧させることにより、同時に2個のサドルを配管に保持することができる。これにより、簡易な作業で配管に2個の枝管を設置することができる。
【0012】
また、共通締結部材を動作させることで、第1締結機構と第2締結機構の両方を作動させて、第1上支持部と第2下支持部の間隔、及び第2上支持部と第2下支持部の間隔を狭めるので、各々について別々に作動させる場合と比較して、簡易にバランスよく2個のサドルを配管に押圧させることができる。
【0013】
請求項1に係るクランプ具は、前記第1締結機構は、前記第1下支持部に固定されて前記第1下支持部の延在方向と直交する方向に延在する第1下固定部と、前記第1下固定部から前記第1上支持部側へ延出され、前記第1下固定部と直交する方向に延在する第1中間部と、前記第1中間部に固定され、前記第1下固定部と同方向に延在され、前記第1上支持部を挟んで前記第1下支持部と反対側に配置され、前記第1中間部の延在方向と同方向の第1貫通孔が形成された第1上固定部と、を有する第1本体部材と、前記第1貫通孔に挿通されると共に前記第1上支持部に当接され、前記第1上支持部と前記第1上固定部との間隔を広げる第1締結部材と、を有し、前記第2締結機構は、前記第2下支持部に固定されて前記第2下支持部の延在方向と直交する方向に延在する第2下固定部と、前記第2下固定部から前記第2上支持部側へ延出され、前記第2下固定部と直交する方向に延在する第2中間部と、前記第2中間部に固定され、前記第2下固定部と同方向に延在され、前記第2上支持部を挟んで前記第2下支持部と反対側に配置され、前記第2中間部の延在方向と同方向の第2貫通孔が形成された第2上固定部と、を有する第2本体部材と、前記第2貫通孔に挿通されると共に前記第2上支持部に当接され、前記第2上支持部と前記第2上固定部との間隔を広げる第2締結部材と、を有し、前記共通締結部材は、第1締結部材に固定された第1ギア、第2締結部材に固定された第2ギア、及び、前記第1ギア及び前記第2ギアと噛み合う共通ギアを含んで構成されている。
【0014】
請求項1に係るクランプ具によれば、ギアを用いて、簡易に共通締結部材を構成することができる。
【0015】
請求項2に係るクランプ具は、前記第1ギア、前記第2ギア、及び前記共通ギアの回転中心を保持する保持プレート、を備えている。
【0016】
請求項2に係るクランプ具によれば、保持プレートにより、第1ギア、第2ギア、及び共通ギアの回転中心を保持することにより、共通締結部材を一体化して、ギア回転の操作を行いやすくすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るクランプ具によれば、簡易な作業で配管に2個の枝管を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態のクランプ具の正面図(軸方向から見た図)であり、上サドルと下サドルを保持する前の状態の図である。
【
図2】本実施形態のクランプ具の正面図(軸方向から見た図)であり、上サドル上にクランプ具を載置した状態の図である。
【
図3】本実施形態のクランプ具の正面図(軸方向から見た図)であり、上サドルと下サドル保持した状態の図である。
【
図4】本実施形態のクランプ具の第1クランプ本体側からみた側面図であり、上サドルと下サドル保持した状態の図である。
【
図5】本実施形態のクランプ具の第2クランプ本体側からみた側面図であり、上サドルと下サドル保持した状態の図である。
【
図6】本実施形態のクランプ具で上サドルと下サドル保持した状態を示す斜視図である。
【
図8】本実施形態の共通締結部材の正面図であり、(A)は小径ギアと共通ギアとが噛み合った状態、(B)は中径ギアと共通ギアとが噛み合った状態、(C)は大径ギアと共通ギアとが噛み合った状態を示す。
【
図9】本実施形態のクランプ具で配管に取り付けた上サドルと下サドルと枝管を貫通させる治具を示す図である。
【
図10】本実施形態のクランプ具で配管に取り付けた上サドルと下サドルとを用いて水取器を取り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1~
図6には、本発明の実施形態に係るクランプ具18、及び、クランプ具18が用いられて取り付けられる枝管取り付け構造10が示されている。クランプ具18は、樹脂製の配管12に上サドル14と下サドル16を保持する用途に用いられる。上サドル14及び下サドル16は、所謂EFサドルであり、配管12の外周面に押圧されつつ不図示の電気配線に通電されることにより、融着される。
【0020】
上サドル14は、サドル本体14A、枝管14B、及び一対の上フランジ14C、14Dを備えている。サドル本体14Aは、内側(凹側)14inが配管12の外周に沿った形状とされ、外側(凸側)14outの面から突出する筒状の枝管14Bが設けられている。枝管14Bの外周には雄ねじが形成されている。
【0021】
枝管14Bを挟んで一方側端部に上フランジ14Cが設けられ、他方側端部に上フランジ14Dが設けられている。上フランジ14C及び上フランジ14Dは、サドル本体14Aを配管12の外周面に沿って配置したときに、配管12の軸方向S(
図5、6参照)に沿って延在するように配置される。なお、「軸方向Sに沿って延在」は、軸方向Sに連続している必要はなく、分割形成されている場合を含んでいる。上フランジ14C及び上フランジ14Dは、軸方向Sから見て、配管12の外周から突出するように形成されている。上フランジ14C及び上フランジ14Dの外側14out側には、後述する上支持面22A、32Aが当接されるフランジ面14Eが各々形成されている。
【0022】
下サドル16は、サドル本体16A、枝管16B、及び一対の下フランジ16C、16Dを備えている。サドル本体16Aは、内側(凹側)16inが配管12の外周に沿った形状とされ、外側(凸側)16outから突出する筒状の枝管16Bが設けられている。枝管16Bを挟んで一方側端部に下フランジ16Cが設けられ、他方側端部に下フランジ16Dが設けられている。下フランジ16C及び下フランジ16Dは、サドル本体16Aを配管12の外周面に沿って配置したときに、配管12の軸方向Sに沿って延在するように配置される。下フランジ16C及び下フランジ16Dは、軸方向Sから見て、配管12の外周から突出するように形成されている。下フランジ16C及び下フランジ16Dの外側16out側には、後述する下支持面24A、34Aが当接されるフランジ面16Eが各々形成されている。
【0023】
クランプ具18は、略同一形状の第1クランプ本体20、第2クランプ本体30、及び、共通締結部材40を備えている。
【0024】
第1クランプ本体20は、第1上支持部22、第1下支持部24、第1本体部材26、及び、第1締結部材28を有している。第1本体部材26はコ字状とされており、第1中間部26A、第1下固定部26B、及び第1上固定部26Cを有している。第1中間部26Aは、コ字の中間部分を構成している。第1下固定部26Bは、第1中間部26Aの一端側から直角に屈曲されてコ字の一端部を構成している。第1上固定部26Cは、第1中間部26Aの他端側から直角に屈曲されてコ字の他端部を構成している。第1上固定部26Cには、第1中間部26Aの延出方向(長手方向)と平行な方向に第1貫通孔26Hが形成され、第1貫通孔26Hの内壁には雌ねじが形成されている。
【0025】
第1本体部材26のコ字の内側の第1下固定部26B側には、第1下支持部24が配置されている。第1下支持部24は、第1中間部26A及び第1下固定部26Bと直交するように延在され、中央部が第1下固定部26B上に固定されている。第1下支持部24は、下フランジ16Cよりも長尺とされている。
【0026】
第1本体部材26のコ字の内側の第1下支持部24と対向する位置には、第1上支持部22が配置されている。第1上支持部22は、第1中間部26A及び第1上固定部26Cと直交するように延在され、中央部が第1上固定部26Cと交差するように配置されている。第1上支持部22は、上フランジ14Cよりも長尺とされている。第1上支持部22には、第1貫通孔26Hに対応する位置に、第1締結部材28の先端が回転可能に取り付けられている。
【0027】
第1締結部材28は、棒状とされ、外周に雄ねじ28Nが形成されている。また、第1締結部材28の第1貫通孔26Hに挿通されていない基端側には、取付角部28Aが形成されている。取付角部28Aは、四角柱状とされている。第1締結部材28は第1貫通孔26Hの雌ねじと螺合されており、一方向に回転させることにより、第1上支持部22が第1中間部26Aにガイドされつつ第1下支持部24へ近づく方向へ移動し、逆方向に回転させることにより、第1中間部26Aにガイドされつつ第1下支持部24から離れる方向へ移動する。第1本体部材26と第1締結部材28により、第1締結機構が構成されている。
【0028】
第1上支持部22には、上フランジ14Cのフランジ面14Eに当接する上支持面22Aが形成されている。上支持面22Aは、上フランジ14Cの延在方向と同方向に延在している。
【0029】
第1下支持部24には、下フランジ16Cのフランジ面16Eに当接する下支持面24Aが形成されている。下支持面24Aは、下フランジ16Cの延在方向と同方向に延在している。
【0030】
第1中間部26Aのコ字が見える側面には、位置合わせマーク27が設けられている。位置合わせマーク27は、配管12の径に応じた上サドル14及び下サドル16を使用して、上フランジ14Cと下フランジ16Cを第1上支持部22と第1下支持部24で挟持した場合の、上支持面22Aが配置される位置をマークしたものである。位置合わせマーク27は、3種類の配管径に対応した位置に設けられている。
【0031】
第1中間部26Aの幅は、第1上支持部22及び第1下支持部24の軸方向Sの長さよりも短く、第1上支持部22、第1下支持部24は、第1中間部26Aの外側から見たときに視認可能とされている。
【0032】
第2クランプ本体30は、第1クランプ本体20と同様の構成とされ、第1上支持部22、第1下支持部24、第1本体部材26、第1締結部材28に対応する、第2上支持部32、第2下支持部34、第2本体部材36、第2締結部材38を有している。
【0033】
第2本体部材36はコ字状とされており、第3中間部36A、第2下固定部36B、及び第2上固定部36Cを有している。第2中間部36Aは、コ字の中間部分を構成している。第2下固定部36Bは、第2中間部36Aの一端側から直角に屈曲されてコ字の一端部を構成している。第2上固定部36Cは、第2中間部36Aの他端側から直角に屈曲されてコ字の他端部を構成している。第2上固定部36Cには、第2中間部36Aと平行な方向に第2貫通孔36Hが形成され、第2貫通孔36Hの内壁には雌ねじが形成されている。
【0034】
第2本体部材36のコ字の内側の第2下固定部36B側には、第2下支持部34が配置されている。第2下支持部34は、第2中間部36A及び第2下固定部36Bと直交するように延在され、中央部が第2下固定部36B上に固定されている。第2下支持部34は、下フランジ16Dよりも長尺とされている。
【0035】
第2本体部材36のコ字の内側の第2下支持部34と対向する位置には、第2上支持部32が配置されている。第2上支持部32は、第2中間部36A及び第2上固定部36Cと直交するように延在され、中央部が第2上固定部36Cと交差するように配置されている。第2上支持部32には、第2貫通孔36Hに対応する位置に、第2締結部材38の先端が回転可能に取り付けられている。第2締結部材38は、棒状とされ、外周に雄ねじ38Nが形成されている。また、第2締結部材38の第2貫通孔36Hに挿通されていない基端側には、取付角部38Aが形成されている。取付角部38Aは、四角柱状とされている。第2締結部材38は、第2貫通孔36Hの雌ねじと螺合されており、一方向に回転させることにより、第2上支持部32が第2中間部36Aにガイドされつつ第2下支持部34へ近づく方向へ移動し、逆方向に回転させることにより、第2中間部36Aにガイドされつつ第2下支持部34から離れる方向へ移動する。第2本体部材36と第2締結部材38により、第2締結機構が構成されている。
【0036】
第2上支持部32には、上フランジ14Dのフランジ面14Eに当接する上支持面32Aが形成されている。上支持面32Aは、上フランジ14Dの延在方向と同方向に延在している。
【0037】
第2下支持部34には、下フランジ16Dのフランジ面16Eに当接する下支持面34Aが形成されている。下支持面34Aは、下フランジ16Dの延在方向と同方向に延在している。
【0038】
第2中間部36Aのコ字が見える側面には、位置合わせマーク37が設けられている。位置合わせマーク37は、配管12の径に応じた上サドル14及び下サドル16を使用して、上フランジ14Dと下フランジ16Dを第2上支持部32と第2下支持部34で挟持した場合の、上支持面32Aが配置される位置をマークしたものである。位置合わせマーク37は、3種類の配管径に対応した位置に設けられている。
【0039】
第2中間部36Aの幅は、第2上支持部32及び第2下支持部34の軸方向Sの長さよりも短く、第2上支持部32及び第2下支持部34は、第2中間部36Aの外側から見たときに視認可能に配置されている。
【0040】
共通締結部材40は、
図7にも示すように、第1ギア部42、第2ギア部52、共通ギア60、保持プレート50を備えている。保持プレート50は、長尺板状とされ、中央部に板を貫通する中央孔50Cが形成されている。また、中央孔50Cを挟んで長手方向の両側に、長孔50A、50Bが形成されている。長孔50A、50Bは、保持プレート50の長手方向と同方向に長く延在されている。
【0041】
第1ギア部42は、小径ギア42A、中径ギア42B、及び大径ギア42Cを備えている。小径ギア42A、中径ギア42B、及び大径ギア42Cは、この順で上から配置されると共に、この順で径が大きく設定されており、各々の外周に共通ギア60と噛み合う歯が形成されている。小径ギア42A、中径ギア42B、及び大径ギア42Cは、同軸に配置され、一体的に回転する。
【0042】
第1ギア部42の大径ギア42Cの下には、第1取付部44が固定されている。第1取付部44は、大径ギア42Cの下面を保持する円板プレート44A及び、円板プレート44の中心から下へ突出された凸部44Bを有している。凸部44Bには、取付角部28Aと係合する四角孔44Cが形成されている。
【0043】
第1ギア部42には、第1軸46が軸受(不図示)を介して取り付けられている。第1軸46は、保持プレート50の長孔50Aに挿通され、ナット48により保持プレート50に締結固定されている。第1ギア部42は、第1取付部44と共に、第1軸46周りに回転するように構成されている。
【0044】
第2ギア部52は、小径ギア52A、中径ギア52B、及び大径ギア52Cを備えている。小径ギア52A、中径ギア52B、及び大径ギア52Cは、この順で上から配置され、各々、第1ギア部42の小径ギア42A、中径ギア42B、及び大径ギア42Cと同径とされ、各々の外周に後述する共通ギア60と噛み合う歯が形成されている。小径ギア52A、中径ギア52B、及び大径ギア52Cは、同軸に配置され、一体的に回転する。
【0045】
第2ギア部52の大径ギア52Cの下には、第2取付部54が固定されている。第2取付部54は、大径ギア52Cの下面を保持する円板プレート54A及び、円板プレート54Aの中心から下へ突出された凸部54Bを有している。凸部54Bには、取付角部38Aと係合する四角孔54Cが形成されている。
【0046】
第2ギア部52には、第2軸56が軸受(不図示)を介して取り付けられている。第2軸56は、保持プレート50の長孔50Bに挿通され、ナット58により保持プレート50に締結固定されている。第2ギア部52は、第2取付部54と共に、第2軸56周りに回転するように構成されている。
【0047】
共通ギア60は、第1ギア部42と第2ギア部52の間に配置され、回転中心に軸部71が固定されている。軸部71は、中央孔50Cに挿通され、上端部に円板状のハンドル72が取り付けられている。保持プレート50の中央孔50Cに対応する上側には、軸受部73が設けられている。軸部71は、軸受部73に回転可能に支持されている。また、軸部71は、軸受部73に対して軸方向に相対移動可能とされている。共通ギア60の外周には、第1ギア部42、第2ギア部52の各々のギアと噛み合う歯が形成されている。
図8(A)~(C)に示されるように、共通ギア60は、第1ギア部42と第2ギア部52の距離に応じて、小径ギア42A、52Aと噛み合う位置(
図8(A))、中径ギア42B、52Bと噛み合う位置(
図8(B))、大径ギア42C、52Cと噛み合う位置(
図8(C))、に配置される。
【0048】
次に、本実施形態のクランプ具18を用いて、配管12に上サドル14と下サドル16を保持する手順について説明する。
【0049】
図2に示すように、まず、配管12の上側に上サドル14を配置し、上サドル14の第1上フランジ14Cの上に第1クランプ本体20の第1上支持部22を載せ、上サドル14の第1上フランジ14Dの上に第2クランプ本体30の第2上支持部32を載せる。これにより、上サドル14を介して、配管12上に第1クランプ本体20及び第2クランプ本体30が仮置きされる。
【0050】
また、上サドル14に対向させて下側に下サドル16を配置し、第1クランプ本体20の下支持面24Aに下サドル16の下フランジ16Cを載せると共に、第2クランプ本体30の下支持面34Aに下サドル16の下フランジ16Dを載せる。
【0051】
このとき、上サドル14の位置を、第1中間部26Aが上フランジ14Cの軸方向Sの中央に配置されるように調整し、第2中間部36Aが上フランジ14Dの軸方向Sの中央に配置されるように調整する。
【0052】
また、下サドル16の位置を、第1中間部26Aが下フランジ16Cの軸方向Sの中央に配置されるように調整し、第2中間部36Aが下フランジ16Dの軸方向Sの中央に配置されるように調整する。また、配管12の軸方向Sから見える位置合わせ用目盛り27、37を確認し、対応する配管12の径に応じたマーク位置に対して、第1上支持部22と第2上支持部32がある程度同じ位置に配置されるようにする。
【0053】
次に、共通締結部材40のナット48とナット58を緩めた状態で、四角孔44Cに取付角部28Aを係合させ、四角孔54Cに取付角部38Aを係合させる。そして、ナット48及びナット58を締結して、第1ギア部42、第2ギア部52を保持プレート50に取り付ける。これにより、第1ギア部42と第2ギア部52の間の距離が決まり、この距離に応じた軸方向位置に、共通ギア60が配置される。
図2では、中径ギア42Bと中径ギア52Bの間に共通ギア60が配置され、共通ギア60と中径ギア42B、52Bとが噛み合わされている。
【0054】
次に、共通締結部材40のハンドル72を回して共通ギア60を回転させ、この回転運動を中径ギア42B、52Bを介して、第1締結部材28と第2締結部材38へ伝達する。これにより、第1締結部材28は第1貫通孔26Hの雌ねじに螺合しつつ回転して、第1上支持部22と第1下支持部24とが近づくと共に、第2締結部材38は第2貫通孔36Hの雌ねじに螺合しつつ回転して、第2上支持部32と第2下支持部34とが近づく。これにより、上サドル14と下サドル16が配管12に仮保持される。
【0055】
この状態で、上サドル14の上フランジ14Cと下サドル16の下フランジ16C、上サドル14の上フランジ14Dと下サドル16の下フランジ16Dが平行に配置されているか否かを側方から確認し、両者が平行に配置されるように、上サドル14、下サドル16の位置を調整する。
【0056】
調整した状態で、さらにハンドル72を同方向に回して共通ギア60を回転させることにより第1締結部材28及び第2締結部材38を回転させて、第1上支持部22と第1下支持部24とを近づけると共に、第2上支持部32と第2下支持部34とを近づけて、上サドル14と下サドル16を配管12に押圧された状態で保持する。このときに、位置合わせ用目盛り27、37を確認し、対応する配管12の径に応じたマーク位置に対して、第1上支持部22と第2上支持部32が所定の配管径の位置に配置されるようにする(
図3参照)。
【0057】
そして、上サドル14と下サドル16に通電して加熱し、上サドル14と下サドル16を配管12に融着する。これにより、上サドル14と下サドル16とを、枝管14Bと枝管16Bの軸が同軸となるように位置合わせした状態で、配管12に固定することができる。
【0058】
上サドル14と下サドル16を配管12に融着した後、共通締結部材40のハンドル72を逆方向に回転させて、第1締結部材28及び第2締結部材38の各々の締結を緩め、四角孔44Cと取付角部28Aとの係合を解除すると共に、四角孔54Cと取付角部38Aとの係合を解除する。そして、クランプ具18を上サドル14及び下サドル16から取り外す。
【0059】
その後、治具60を用いて配管12の穿孔を行う。
図9に示されるように、治具60は、軸部66、カッター部62、及び保持部64を有している。軸部66は円筒棒状とされ、先端に円筒状のカッター部62が取り付けられている。保持部64は、枝管14Bの外周と係合可能とされた螺合部64A及び、軸部66を挿通する挿通部64Bを有している。軸部66は、挿通部64Bに挿通されており、カッター部62は保持部64の螺合部64A側に配置されている。
【0060】
治具60を用いて穿孔する際には、保持部64を、枝管14Bの外周と螺合させ、軸部66を回転させつつカッター部62を下へ移動させて、配管12の上部を穿孔し孔H1を形成する。この穿孔後に治具60の軸部66内から穿孔時の切片を取り除く。その後、再度軸部66を回転させつつカッター部62を下へ移動させて、配管12の下壁における枝管16Bに対応する部分を穿孔し孔H2を形成する(
図10参照)。
【0061】
本実施形態では、上サドル14の枝管14Bの軸と下サドル16の枝管16Bの軸とが、同軸となるように軸合わせされているので、治具60を用いて、枝管14Bと枝管16Bに対応する配管12の壁に、適切に穿孔を行うことができる。
【0062】
穿孔後に、枝管14Bに蓋15を取り付けて開口を塞ぐと共に、枝管16Bに
図10に示す水抜き管70を連結させる。なお、水抜き管70は、下サドル16を配管12に取り付ける前に、予め枝管16Bに連結させておいてもよい。
【0063】
本実施形態のクランプ具18を用いることにより、簡易な作業で配管に上サドル14及び下サドル16の両方を同時に保持することができる。これにより、簡易に2個の枝管14B、16Bを配管12に設置することができる。
【0064】
また、クランプ具18の取り付け作業時に、共通締結部材40を用いて、第1締結部材28及び第2締結部材38を共通の動作で同時に回転させるので、各々について別々に回転させる場合と比較して、簡易にバランスよく2個のサドルを配管に押圧させることができる。
【0065】
また、本実施形態のクランプ具18は、第1ギア部42と第2ギア部52の距離を調整した位置で、第1クランプ本体20、第2クランプ本体30と連結でき、複数サイズの外径のギアを有しているので、径の異なる配管にも用いることができる。
【0066】
また、本実施形態の共通締結部材40は、保持プレート50に第1ギア部42、第2ギア部52、及び共通ギア60の回転中心が保持されるので、ギア回転の操作を行いやすくすることができる。
【0067】
なお、本実施形態の共通締結部材40は、第1ギア部42、第2ギア部52、及び共通ギア60を用いて構成したが、他の機構、例えばチェーンとスプロケットの組み合わせで構成してもよいし、タイミングベルトとプーリーの組み合わせにより構成して、第1締結部材28と第2締結部材38を共通動作で作動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
14 上サドル
14A サドル本体
14B 枝管
14C 上フランジ
14D 上フランジ
16 下サドル
16A サドル本体
16B 枝管
16C 下フランジ
16D 下フランジ
18 クランプ具
20 第1クランプ本体
22 第1上支持部
24 第1下支持部
26 第1本体部材
26A 第1中間部
26B 第1下固定部
26C 第1上固定部
26H 第1貫通孔
28 第1締結部材
30 第2クランプ本体
32 第2上支持部
32A 第2上支持面
34 第2下支持部
36 第2本体部材
36A 第2中間部
36B 第2下固定部
36C 第2上固定部
36H 第2貫通孔
38 第2締結部材
40 共通締結部材
42 第1ギア部
50 保持プレート
52 第2ギア部
60 共通ギア