(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】タイヤ摩耗予測システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20230101AFI20241212BHJP
【FI】
G06Q10/04
(21)【出願番号】P 2021106161
(22)【出願日】2021-06-25
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】スクールス、ゲート
(72)【発明者】
【氏名】ヘンシャー、デビッド
【審査官】清山 昂平
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-227141(JP,A)
【文献】国際公開第2016/071993(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0334922(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0255891(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フリートを構成する車両に装着されているタイヤの摩耗を予測するタイヤ摩耗予測システムであって、
前記車両を運転するドライバーの属性に関連する複数のドライバー関連説明変数を取得するドライバー関連変数取得部と、
前記車両の属性に関連する複数の車両関連説明変数を取得する車両関連変数取得部と、
前記ドライバー関連説明変数及び前記車両関連説明変数の実績値に基づいて、前記ドライバー関連説明変数に適用されるドライバー関連係数、及び前記車両関連説明変数に適用される車両関連係数を設定する係数設定部と、
前記ドライバー関連説明変数及び前記車両関連説明変数を用いて、前記摩耗を目的変数として計算する目的変数計算部と
を備え、
前記目的変数計算部は、前記ドライバー関連係数及び前記車両関連係数を用いて、前記ドライバーの属性及び前記車両の属性の少なくとも何れかを変更した場合における前記摩耗の予測値を再計算するタイヤ摩耗予測システム。
【請求項2】
前記ドライバー関連変数取得部は、前記ドライバー関連説明変数として、前記ドライバーの平均年齢、性別割合、平均経験年数、所定走行距離毎の人数の少なくとも何れかを取得する請求項1に記載のタイヤ摩耗予測システム。
【請求項3】
前記車両関連変数取得部は、前記車両関連説明変数として、前記車両の平均速度を取得する請求項1または2に記載のタイヤ摩耗予測システム。
【請求項4】
前記車両関連変数取得部は、前記車両関連説明変数として、前記車両に装着されているタイヤの平均温度を取得する請求項1乃至3の何れか一項に記載のタイヤ摩耗予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フリートを構成する車両に装着されているタイヤの摩耗を予測するタイヤ摩耗予測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、輸送会社などが所有する複数の車両(例えば、バス及びトラックなど)によって構成されるフリートを対象とした消耗品(例えば、タイヤ)の需要予測システムが知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載されている需要予測システムは、消耗品の劣化度を集計し、車両整備工場において必要となる消耗品の種類及び数量を予測する。これにより、フリートのメンテナンスコストの抑制に貢献し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の車両によって構成されるフリートの場合、効率的な運用の実現には、車両に装着されているタイヤの摩耗を正確に予測することが重要である。
【0006】
そこで、以下の開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、フリートを構成する車両に装着されているタイヤの摩耗をより正確に予測し得るタイヤ摩耗予測システム及びタイヤ摩耗予測方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、フリートを構成する車両の燃費を予測する燃費予測システム(フリート管理システム10)であって、前記車両を運転するドライバーの属性に関連する複数のドライバー関連説明変数を取得するドライバー関連変数取得部(ドライバー関連変数取得部110)と、前記車両の属性に関連する複数の車両関連説明変数を取得する車両関連変数取得部(車両関連変数取得部120)と、前記ドライバー関連説明変数及び前記車両関連説明変数の実績値に基づいて、前記ドライバー関連説明変数に適用されるドライバー関連係数、及び前記車両関連説明変数に適用される車両関連係数を設定する係数設定部(係数設定部140)と、前記ドライバー関連説明変数及び前記車両関連説明変数を用いて、前記燃費を目的変数として計算する目的変数計算部(目的変数計算部150)とを備え、前記目的変数計算部は、前記ドライバー関連係数及び前記車両関連係数を用いて、前記ドライバーの属性及び前記車両の属性の少なくとも何れかを変更した場合における前記燃費の予測値を再計算する。
【0008】
本開示の一態様は、フリートを構成する車両の燃費を予測する燃費予測方法であって、前記車両を運転するドライバーの属性に関連する複数のドライバー関連説明変数を取得するステップと、前記車両の属性に関連する複数の車両関連説明変数を取得するステップと、前記ドライバー関連説明変数及び前記車両関連説明変数の実績値に基づいて、前記ドライバー関連説明変数に適用されるドライバー関連係数、及び前記車両関連説明変数に適用される車両関連係数を設定するステップと、前記ドライバー関連説明変数及び前記車両関連説明変数を用いて、前記燃費を目的変数として計算するステップとを含み、前記目的変数を計算するステップでは、前記ドライバー関連係数及び前記車両関連係数を用いて、前記ドライバーの属性及び前記車両の属性の少なくとも何れかを変更した場合における前記燃費の予測値を再計算する。
【0009】
本開示の一態様は、フリートを構成する車両に装着されているタイヤの摩耗を予測するタイヤ摩耗予測システム(フリート管理システム10)であって、前記車両を運転するドライバーの属性に関連する複数のドライバー関連説明変数を取得するドライバー関連変数取得部(ドライバー関連変数取得部110)と、前記車両の属性に関連する複数の車両関連説明変数を取得する車両関連変数取得部(車両関連変数取得部120)と、前記ドライバー関連説明変数及び前記車両関連説明変数の実績値に基づいて、前記ドライバー関連説明変数に適用されるドライバー関連係数、及び前記車両関連説明変数に適用される車両関連係数を設定する係数設定部(係数設定部140)と、前記ドライバー関連説明変数及び前記車両関連説明変数を用いて、前記摩耗を目的変数として計算する目的変数計算部(目的変数計算部150)とを備え、前記目的変数計算部は、前記ドライバー関連係数及び前記車両関連係数を用いて、前記ドライバーの属性及び前記車両の属性の少なくとも何れかを変更した場合における前記摩耗の予測値を再計算する。
【0010】
本開示の一態様は、フリートを構成する車両に装着されているタイヤの摩耗を予測するタイヤ摩耗予測方法であって、前記車両を運転するドライバーの属性に関連する複数のドライバー関連説明変数を取得するステップと、前記車両の属性に関連する複数の車両関連説明変数を取得する車両関連変数取得部と、前記ドライバー関連説明変数及び前記車両関連説明変数の実績値に基づいて、前記ドライバー関連説明変数に適用されるドライバー関連係数、及び前記車両関連説明変数に適用される車両関連係数を設定するステップと、前記ドライバー関連説明変数及び前記車両関連説明変数を用いて、前記摩耗を目的変数として計算するステップとを含み、前記目的変数を計算するステップでは、前記ドライバー関連係数及び前記車両関連係数を用いて、前記ドライバーの属性及び前記車両の属性の少なくとも何れかを変更した場合における前記摩耗の予測値を再計算する。
【発明の効果】
【0011】
上述した燃費予測システム及び燃費予測方法によれば、フリートを構成する車両の燃費の抑制に貢献し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、フリート及びフリート管理システム10の全体概略構成図である。
【
図2】
図2は、サーバコンピュータ100の機能ブロック構成図である。
【
図3】
図3は、フリート管理システム10の全体概略動作フローを示す図である。
【
図4】
図4は、バスの種類毎のタイヤ位置を示す図である。
【
図5】
図5は、フリートのオペレーション、タイヤ及びドライバーの特性の集約例を示す図である。
【
図7】
図7は、代表的な変数(データ)の記述プロファイルの例である。
【
図8】
図8は、代表的な変数(データ)の記述プロファイルの例である。
【
図9】
図9は、3SLSモデルの結果を示す図である。
【
図10】
図10は、シミュレーションされたシナリオの例を示す図である。
【
図11】
図11は、メンテナンスコスト・データセットの記述プロファイルを示す図である。
【
図12】
図12は、メンテナンスコストモデルの結果を示す図である。
【
図13】
図13は、3SLSモデルのDSSツールを使用したシミュレートシナリオの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0014】
(1)フリート及びフリート管理システムの全体概略構成
図1は、フリート及びフリート管理システム10の全体概略構成図である。フリート管理システム10は、フリート、具体的には、複数の車両を管理する。
【0015】
本実施形態では、フリート管理システム10は、フリートを構成する複数のバスを管理する。
図1に示すように、フリートは、複数種類のバス(車両)によって構成される。
【0016】
具体的には、フリートには、通常バス20、2階建てバス30及び連節バス40が含まれてよい。
【0017】
通常バス20は、低床(low floor)または高床(high floor)を備えた1フロアのリジッドな車両である。本実施形態では、通常バス20は、1つの前輪車軸及び1つの後輪車軸を有する。
【0018】
2階建てバス30は、1階部分及び2階部分を有する2階建て構造を有する。2階建てバス30は、ダブルデッカーなどとも呼ばれる。本実施形態では、2階建てバス30は、2つの前輪車軸及び1つの後輪車軸を有する。
【0019】
連節バス40は、2つの車体が関節によって連結された構造を有する。連節バス40は、アーティキュレート(Articulated)あるいはベンディ(Bendy)バスなどとも呼ばれる。本実施形態では、連節バス40は、先頭車両の1つの前輪車軸及び1つの後輪車軸に加え、後部車両の1つの車軸を有する。
【0020】
なお、通常バス20、2階建てバス30及び連節バス40は、路線バスとして提供されてもよいし、チャーターバス(貸し切りバス)として提供されてもよい。
【0021】
通常バス20、2階建てバス30及び連節バス40は、フリートを管理するバス運行会社のドライバーによって運転される。具体的には、当該バスは、男性ドライバー50A及び女性ドライバー50Bによって運転される。バス運行会社には、複数の男性ドライバー50Aと複数の女性ドライバー50Bが属する。また、ドライバーの年齢構成及び運転経験年数は、多様であってよい。
【0022】
フリート管理システム10は、フリート管理に関する複数の機能を提供できる。本実施形態では、フリートを構成する車両(バス)の燃費を予測する燃費予測システム、及びフリートを構成する車両(バス)に装着されているタイヤの摩耗を予測するタイヤ摩耗予測システムを構成できる。
【0023】
このような燃費予測システム及びタイヤ摩耗予測システムは、フリートを運行する事業体(バス運行会社など)における意思決定を支援する意思決定支援システム(DSS)として提供されてもよい。このようなDSSは、フリートの燃料消費とメンテナンスコストとに及ぼすタイヤ関連の影響に関して、幾つかのガイダンスを提供することができる。DSSの詳細については、後述する。
【0024】
フリート管理システム10は、サーバコンピュータ100、携帯端末200及びデスクトップ端末300を含んでよい。
【0025】
サーバコンピュータ100は、燃費予測システム及びタイヤ摩耗予測システムを実現するコンピュータプログラムを実行することができる。サーバコンピュータ100は、通信ネットワークに接続されたサーバコンピュータ単体によって構成されてもよいし、ネットワーククラウド上において仮想的に構成されてもよい。
【0026】
ネットワーククラウドは、典型的にはインターネットを含み、インターネット上において提供される各種の情報提供サービス(気象情報など)、ストレージサービス、及びアプリケーションサービスなどを含む。
【0027】
携帯端末200及びデスクトップ端末300は、通信ネットワークを介してサーバコンピュータ100にアクセスすることができる。
【0028】
携帯端末200は、典型的にはスマートフォン及びタブレット型端末などであるが、ラップトップ型のパーソナルコンピュータ(PC)であってもよい。デスクトップ端末300は、フリートを運行する事業体のオフィスなどに設定される比較的大型のPC(モニタを含む)などである。
【0029】
携帯端末200及びデスクトップ端末300は、サーバコンピュータ100(燃費予測システム及びタイヤ摩耗予測システム)に対するデータの入力、サーバコンピュータ100での処理結果の表示、出力などに用いられる。
【0030】
燃費予測システム及びタイヤ摩耗予測システムが取り扱うデータは広範囲に及ぶが、大別すると、車両(バス種類など)、タイヤ関連測定(トレッド残溝量、温度、内圧など)、天候(気温など)、走行(距離、燃料消費量など)、ドライバー(性別、年齢、運転経験年数など)、道路(運行ルート、信号機数、停留所数など)関連のデータを対象としてよい。
【0031】
また、これらのデータの一部は、携帯端末200またはデスクトップ端末300を介してではなく、例えば、タイヤ関連測定データについては、タイヤ空気圧監視システム(TPMS)などを利用したテレメトリーシステムを介して取得されてもよいし、天候データなどについては、サーバコンピュータ100が通信ネットワークを介して直接取得してもよい。
【0032】
(2)フリート管理システムの機能ブロック構成
次に、フリート管理システム10の機能ブロック構成について説明する。具体的には、サーバコンピュータ100によって実現される燃費予測システム及びタイヤ摩耗予測システムの機能ブロック構成について説明する。
【0033】
図2は、サーバコンピュータ100の機能ブロック構成図である。
図2に示すように、サーバコンピュータ100は、ドライバー関連変数取得部110、車両関連変数取得部120、データ格納部130、係数設定部140、目的変数計算部150及び出力部160を備える。
【0034】
これらの機能ブロックは、サーバコンピュータ100のハードウェア上においてコンピュータプログラム(ソフトウェア)を実行することによって実現される。
具体的には、サーバコンピュータ100は、ハードウェア要素として、プロセッサ、メモリ、入力デバイス、ディスプレイ、外部インターフェースなどを備えてよい。但し、上述したように、サーバコンピュータ100(燃費予測システム及びタイヤ摩耗予測システム)は、ネットワーククラウド上において仮想的に構成されてもよい。
【0035】
燃費予測システムは、フリートを構成する車両(バス)の燃費を予測する。また、タイヤ摩耗予測システムは、フリートを構成する車両(バス)に装着されているタイヤの摩耗を予測する。
【0036】
ドライバー関連変数取得部110は、複数のドライバー関連説明変数を取得できる。ドライバー関連説明変数とは、車両(バス)を運転するドライバーの属性に関連する変数(variables)と定義されてよい。
【0037】
本実施形態では、ドライバー関連説明変数とは、通常バス20、2階建てバス30または連節バス40を運転する複数の男性ドライバー50A及び女性ドライバー50Bの属性に関する変数である。
【0038】
当該変数は、説明変数(explanatory variables)と解釈されてよい。説明変数は、目的変数を説明する変数と定義されてよく、独立変数と呼ばれてもよい。説明変数は、上述したデータの中から選択されてよい。
【0039】
目的変数は、予測したい変数と定義されてよく、従属変数(dependent variables)と呼ばれてもよい。
【0040】
ドライバー関連変数取得部110は、ドライバー関連説明変数として、ドライバーの平均年齢、性別割合、平均経験年数、所定走行距離毎の人数の少なくとも何れかを取得できる。性別割合とは、男性(または女性)ドライバーの全体に占める割合を意味してよい。また、所定走行距離毎の人数(Number of drivers per 1,000 kms)とは、所定距離(例えば、1,000km)毎の担当ドライバーの人数を意味する。
【0041】
ドライバー関連説明変数は、このような変数に限られず、ドライバーの属性に関連する統計的なデータ(例えば、事故歴、血液型など)がさらに追加されてもよい。
【0042】
車両関連変数取得部120は、車両(バス)の属性に関連する複数の車両関連説明変数を取得できる。車両関連説明変数とは、車両(バス)の属性に関連する変数(variables)と定義されてよい。
【0043】
本実施形態では、車両関連説明変数とは、通常バス20、2階建てバス30または連節バス40の属性に関する変数である。
【0044】
当該変数は、ドライバー関連説明変数と同様に、説明変数(explanatory variables)と解釈されてよい。
【0045】
車両関連変数取得部120は、車両関連説明変数として、車両(バス)に装着されているタイヤの摩耗速度を取得できる。摩耗速度とは、各バスに装着されているタイヤの単位走行距離当たりのトレッドの摩耗量と定義されてよい。或いは、摩耗速度は、バスの単位運行時間当たりのトレッドの摩耗量と定義されてもよい。また、摩耗速度は、トレッドの残溝量(RTD:Remaining Tread Depth)として定義されてもよい。
【0046】
また、車両関連変数取得部120は、車両関連説明変数として、車両(バス)の平均速度を取得できる。平均速度とは、走行ルート毎のバスの走行速度の平均と定義されてよい。或いは、平均速度とは、バスの単位運行時間当たりの走行速度の平均と定義されてもよい。
【0047】
さらに、車両関連変数取得部120は、車両関連説明変数として、車両(バス)に装着されているタイヤの平均温度(平均タイヤ温度)を取得できる。平均温度とは、各バスに装着されているタイヤについて複数回測定された温度の平均と定義されてよい。当該温度は、上述したように、タイヤ内面などに装着されたTPMSのセンサーによって測定されてよい。また、当該温度の取得タイミングは、バスの運行開始、運行終了または運行途中のタイミングでもよいが、バスが運行していない駐車中は除外されることが望ましい。
【0048】
データ格納部130は、ドライバー関連変数取得部110及び車両関連変数取得部120によって取得されたデータ(変数)を格納する。また、データ格納部130は、携帯端末200またはデスクトップ端末300を介して入力され、燃費予測システム及びタイヤ摩耗予測システムが取り扱うデータを格納する。
【0049】
係数設定部140は、ドライバー関連変数取得部110によって取得されたドライバー関連説明変数に適用される係数(Coefficient)を設定する。また、係数設定部140は、車両関連変数取得部120によって取得された車両関連説明変数に適用される係数(Coefficient)を設定する。
【0050】
具体的には、係数設定部140は、ドライバー関連説明変数に適用されるドライバー関連係数を設定する。また、係数設定部140は、車両関連説明変数に適用される車両関連係数を設定する。
【0051】
より具体的には、係数設定部140は、ドライバー関連説明変数及び車両関連説明変数の実績値に基づいて、ドライバー関連係数及び車両関連係数を設定できる。
【0052】
ドライバー関連説明変数及び車両関連説明変数の実績値とは、ドライバー関連変数取得部110によって取得されたドライバー関連説明変数の過去の数値、及び車両関連変数取得部120によって取得された車両関連説明変数の過去の数値に基づいて決定された数値である。
【0053】
ドライバー関連係数は、それぞれのドライバー関連説明変数に対して設定できる。また、車両関連係数は、それぞれの車両関連説明変数に対して設定できる。なお、全ての説明変数のうちの一部に対して共通(同一)の係数が設定されてもよい。また、このような係数は、重み付け或いはパラメータなどの用語で置き換えられてもよい。
【0054】
本実施形態では、ドライバー関連係数及び車両関連係数は、3段階の最小二乗(3SLS)モデルを用いて推定できる。但し、必ずしも3SLSモデルを用いなくてもよく、他のSLSモデルなどが用いられてもよい。
【0055】
なお、ドライバー関連説明変数、車両関連説明変数、ドライバー関連係数及び車両関連係数の具体例については、後述する。
【0056】
目的変数計算部150は、ドライバー関連説明変数及び車両関連説明変数を用いて目的変数を計算する。
【0057】
具体的には、目的変数計算部150は、ドライバー関連説明変数及び車両関連説明変数を用いて、燃費を目的変数として計算できる。燃費とは、車両、具体的には、通常バス20、2階建てバス30または連節バス40が所定の走行ルートを所定の条件に従って走行した場合に消費すると想定される燃料の消費率(または消費量)である。
【0058】
より具体的には、目的変数計算部150は、燃費に影響するドライバー関連説明変数及び車両関連説明変数の少なくとも何れかの係数(ドライバー関連係数または車両関連係数)を調整することによって、当該係数を変更した場合に変化する燃費を推定できる。
【0059】
つまり、目的変数計算部150は、目的変数としての燃費と、燃費に影響を与える説明変数としてのドライバー属性(平均年齢、性別割合、平均経験年数など)、及び車両情報(使用年数、車両タイプ)との過去実績に基づいて、各説明変数の重み付け(パラメータ)を設定できる。さらに、目的変数計算部150は、ドライバー属性及び/または車両情報を変更した場合における目的変数の予測値を再計算できる。
【0060】
また、目的変数計算部150は、ドライバー関連説明変数及び車両関連説明変数を用いて、タイヤの摩耗を目的変数として計算できる。タイヤの摩耗とは、通常バス20、2階建てバス30または連節バス40に装着されているタイヤのトレッドの摩耗量(またはRTD)である。或いは、ここで言うタイヤの摩耗とは、上述したように、摩耗速度であってもよい。
【0061】
具体的には、目的変数計算部150は、摩耗に影響するドライバー関連説明変数及び車両関連説明変数の少なくとも何れかの係数(ドライバー関連係数または車両関連係数)を調整することによって、当該係数を変更した場合に変化する摩耗を推定できる。
【0062】
つまり、目的変数計算部150は、目的変数としての摩耗速度(一定走行距離毎の摩耗量)と、摩耗速度に影響を与える説明変数としてのドライバー属性(平均年齢、性別割合、平均経験年数など)、及び車両情報(使用年数、車両タイプ)との過去実績に基づいて、各説明変数の重み付け(パラメータ)を設定できる。さらに、目的変数計算部150は、ドライバー属性及び/または車両情報を変更した場合における目的変数の予測値を再計算できる。
【0063】
このように、目的変数計算部150は、ドライバー関連係数及び車両関連係数を用いて、ドライバーの属性及び車両の属性の少なくとも何れかを変更した場合における燃費の予測値を再計算できる。
【0064】
また、目的変数計算部150は、ドライバー関連係数及び車両関連係数を用いて、ドライバーの属性及び車両の属性の少なくとも何れかを変更した場合におけるタイヤの摩耗の予測値を再計算できる。
【0065】
出力部160は、ドライバー関連変数取得部110及び車両関連変数取得部120によって取得されたデータ(説明変数)を出力できる。
【0066】
また、出力部160は、係数設定部140によって設定されたドライバー関連係数及び車両関連係数を出力できる。
【0067】
さらに、出力部160は、目的変数計算部150によって計算された燃費及びタイヤの摩耗の予測値を出力できる。
【0068】
具体的には、出力部160は、ディスプレイなどへの画像データ出力、及び携帯端末200またはデスクトップ端末300へのデータ送信の機能を提供する。
【0069】
なお、出力部160は、意思決定支援システム(DSS)のプラットフォームを介して上述したデータの表示、送信または出力を実現してもよい。
【0070】
(3)フリート管理システムの動作
次に、フリート管理システム10の動作について説明する。具体的には、フリート管理システム10(燃費予測システム)によるフリートを構成する車両(バス)の燃費の予測動作、及びフリート管理システム10(タイヤ摩耗予測システム)によるフリートを構成する車両(バス)に装着されているタイヤの摩耗を予測動作について主に説明する。
【0071】
(3.1)全体概略動作
図3は、フリート管理システム10の全体概略動作フローを示す。具体的には、
図3に示す動作フローは、燃費予測システム及びタイヤ摩耗予測システムにおいて共通である。
【0072】
図3に示すように、フリート管理システム10は、ドライバー関連説明変数及び車両関連説明変数を取得する(S10)。
【0073】
具体的には、フリート管理システム10は、車両(バス)を運転するドライバーの属性に関連する説明変数を取得するとともに、車両(バス)の属性に関連する説明変数を取得する。
【0074】
フリート管理システム10は、取得したドライバー関連説明変数及び車両関連説明変数に適用される係数を算出する(S20)。具体的には、フリート管理システム10は、ドライバー関連説明変数に適用されるドライバー関連係数、及び車両関連説明変数に適用される車両関連係数を算出する。
【0075】
より具体的には、フリート管理システム10は、上述したように、3段階の最小二乗(3SLS)モデルを用いてドライバー関連係数及び車両関連係数を算出(推定)する。
【0076】
フリート管理システム10は、ドライバー関連説明変数及び車両関連説明変数を用いて目的変数を算出する(S30)。
【0077】
具体的には、フリート管理システム10は、ドライバー関連説明変数及び車両関連説明変数を用いて、燃費を目的変数として計算できる。同様に、フリート管理システム10は、ドライバー関連説明変数及び車両関連説明変数を用いて、タイヤの摩耗を目的変数として計算できる。
【0078】
さらに、フリート管理システム10は、ドライバー関連係数及び車両関連係数を用いて、ドライバーの属性及び車両の属性の少なくとも何れかを変更した場合における燃費の予測値を再計算できる。同様に、フリート管理システム10は、ドライバー関連係数及び車両関連係数を用いて、ドライバーの属性及び車両の属性の少なくとも何れかを変更した場合におけるタイヤの摩耗の予測値を再計算できる。
【0079】
フリート管理システム10は、燃費の予測値の再計算の結果、及び/またはタイヤの摩耗の予測値を再計算の結果を出力する(S40)。具体的には、フリート管理システム10は、当該結果をディスプレイに表示したり、携帯端末200またはデスクトップ端末300に送信したりすることができる。
【0080】
(3.2)収集データ
フリート管理システム10(燃費予測システム及びタイヤ摩耗予測システム)では、燃費及びタイヤの摩耗の予測値を計算するために、次に示すデータがドライバー関連説明変数及び車両関連説明変数として収集される。
【0081】
(3.2.1)車両(バス)
上述したように、バスの種類は、通常バス20、2階建てバス30または連節バス40の何れかでよい。各バスの比率も特に制限されないが、一般的には、通常バス20の比率が高くてよい。
【0082】
図4は、バスの種類毎のタイヤ位置を示す。
図4に示すように、通常バス20は、1つの前輪車軸及び1つの後輪車軸を有する。通常バス20の後輪には、2本のタイヤを並列に組み付けた、いわゆるダブルタイヤが採用され、1~6の6本のタイヤが装着される。
【0083】
2階建てバス30は、2つの前輪車軸及び1つの後輪車軸を有する。2階建てバス30も後輪には、ダブルタイヤが採用され、1~8の8本のタイヤが装着される。
【0084】
連節バス40は、先頭車両の1つの前輪車軸及び1つの後輪車軸に加え、後部車両の1つの車軸を有する。連節バス40もダブルタイヤが採用され、1~10の10本のタイヤが装着される。
【0085】
バスの台数及びタイヤの本数も特に制限されないが、燃費及びタイヤの摩耗の予測精度を高めるためには、一定程度以上の母数が存在することが好ましく、バスの合計台数は概ね30台以上、タイヤ本数は概ね200本以上であることが好ましい。
【0086】
また、フリート管理システム10は、通信ネットワークを介して接続される外部システム(サービス)から、各バスの詳細な走行記録(一意の車両IDによる)のデータを取得できる。
【0087】
当該データには、バスの座席数/乗車定員、日毎の旅行(運行)数、各旅行の乗客数、時刻毎の方向と対応付けられた運行ルートが含まれてよい。車両毎の各旅行には、ドライバーの経験プロファイルと対応付けられた一意のドライバーIDが与えられてよい。
【0088】
当該データは、車両IDレベル毎に変数を提供でき、走行(旅行)回数、旅行あたりの平均乗客数、バスの座席定員、旅行毎の平均速度、及び時間区分(times of day、例えば、1日6回)が含まれてよい。
【0089】
また、当該データには、車両毎のサービス(メンテナンス)履歴が含まれてもよい。サービス履歴には、以下の項目が含まれてもよい。
【0090】
・サービスグループ
・サービスが行われた日付
・労働時間数
・各サービスのコスト
・サービスタイプ
・車両がサービスを受けたときの走行距離計の表示
・サービスの各レコードの説明
なお、サービスタイプ及びコストは、各車両のRTDによってカウント及び集計されてよい。
【0091】
サービスグループには、例えば、次のようなサービスが含まれてよい。
【0092】
・タイヤ関連サービス: タイヤのパンク、タイヤの摩耗、リトレッド、内圧の監視、タイヤ保持ホイールナット、回路保護バルブなどの機械的作業
・シャーシ関連のサービス: ブレーキ、故障、電気、エンジン、冷却/加熱、ステアリング、尿素水(AdBlue(登録商標))フィルターなど
・車体関連サービス: 空調、車体損傷、メンテナンス、修理、券売機など
・インテリア関連サービス: ミラー、ガラス、窓、フロントガラス、CCTV、スチームクリーンなど
・定期サービス: 定期点検、車検(RMS)前検査、車検(RMS)
【0093】
(3.2.2)トレッドの残溝量(RTD)
タイヤトレッドの残溝量(RTD)については、タイヤ(トレッド)表面の異なる位置に異なるトレッド深さが存在し、タイヤの円周に沿って異なる測定値が存在し得る。
【0094】
但し、当該測定値の差異は大きな影響を与えないため、RTDは、タイヤ円周に沿って1点のみ測定されればよい。一方、タイヤ幅方向については、外側のエッジが摩耗し易く、内側のエッジも時々偏摩耗することを考慮すると、複数点(例えば、3~4点)を対象として測定されることが望ましい。測定は自動工具が用いられてもよいし、手動でもよい。
【0095】
また、タイヤのトレッドの摩耗量(残溝量)は、以下のように定義されてよい。
【0096】
・TreadLoss=(現在の日付のトレッド深さ)-(前回の日付のトレッド深さ)
トレッド深さとは、トレッドに形成された主溝の深さと解釈されてよい。
【0097】
タイヤ温度及び空気圧(内圧)は、バスの車両ID及びタイヤ位置(
図4参照)に関連付けられている各タイヤに取り付けられたセンサーによって測定できる。平均温度及び平均内圧は、2つの連続するRTD測定タイミングにおいて収集された測定値に基づいてよい。
【0098】
(3.2.3)燃料消費
燃料消費(燃費)は、走行距離による加重平均(wL 100 km)が使用されてよい。具体的には、RTDの測定間隔毎に「サービスキロメートル」(営業距離)を使用してwL 100 kmが計算されてよい。
【0099】
なお、燃料消費データは、例えば、月ベースで取得され、トレッドの摩耗量(TreadLoss)及び他の主要変数は、特定のTreadLossが発生した期間で集計されてもよい。
【0100】
重み付けのためのサービスキロメートルは、毎月の燃料消費データをRTDの測定間隔で分割して得られる各サブ期間について計算されてもよい。
【0101】
(3.2.4)道路及びルート
運行ルートに従った各バスが走行する道路に関しては、信号機及び主要なロータリーの数のデータが含まれてよい。信号機の数には、信号機及びミニロータリーの数が含まれてもよい。また、交差点には、道路の中心線の直径が15メートルを超える大きなラウンドアバウトが含まれてもよい。
【0102】
また、道路状況は、道路のセグメントデータセットに基づいて、各タイプの道路機能の長さ、路面、及び車線数などによって定量化されてもよい。
【0103】
(3.2.5)タイヤ関連
上述したRTD以外に、タイヤの取り外しまたは取り付け後における追跡データ(レコード)が含まれてもよい。例えば、タイヤを取り外し時または交換時などに、当該タイヤに関するデータが記録されてもよい。当該データには、(タイヤを交換するバスの)車両ID、交換されたタイヤの位置、タイヤのブランド名、タイヤ交換の日付、リトレッド深さ、タイヤID(日付+車両ID+タイヤ位置)、装着された各タイヤの状態(新品またはリトレッド(更生))、タイヤ更生の回数などが含まれてもよい。
【0104】
(3.2.6)ドライバー情報プロファイル
ドライバー情報プロファイルに関しては、従業員ID(ドライバーID)、性別、生年月日、雇用日などのデータが含まれてよい。当該データを顧客データと組み合わせ、タイヤトレッドの摩耗(深さ損失)の発生期間におけるドライバーの経験を得ることによって、各車両及び各タイヤと関連付けることができる。
【0105】
また、この段階から計算される運転経験と運転プロファイルとは、RTD(各タイヤのトレッド深さ損失が発生する時間)毎に集計された旅行数、サービスキロメートル、平均速度及び乗客数を含んでもよい。
【0106】
(3.2.7)気象データ
気象(天候)に関しては、フリートを運行する事業体(バス運行会社)の基地(バス駐車場)が存在するエリアの気象データが含まれてよい。例えば、各月の最高気温が含まれてもよいし、RTDの測定間隔に一致した期間における平均気温が含まれてもよい。また、当該データには、天候(晴、曇、雨、雪)が含まれてよい。
【0107】
(3.3)データ集約
フリート管理システム10(燃費予測システム及びタイヤ摩耗予測システム)において最も重要な変数の1つは、時間軸上の2つの測定タイミングの期間におけるトレッド深さの変化として測定されるトレッド深さ損失である。当該期間は、トレッド深さの測定周期(間隔)と呼ばれてもよい。当該測定周期は、特に制限されないが、通常、10日~130日程度である。
【0108】
当該周期において、バスの年齢、バスの種類、タイヤのブランド、バスの燃料消費量など、問題を引き起こさない(またはほぼ一定の)変数がある。
【0109】
一方、平均速度、運行ルート、バス乗客(patronage)、天候温度、タイヤ温度、空気圧(内圧)などの変数は、トレッド深さの測定周期中に変化し得る。
【0110】
全ての変数は、1つのトレッド測定周期を表すために集約(集計)されることが好ましい。
図5は、フリートのオペレーション、タイヤ及びドライバーの特性の集約例を示す。
【0111】
図5に示すように、オペレーション/ルート特性には、平均速度、走行距離(2週間毎)、平均最高気温などが含まれる。また、当該データは、加重平均など、それぞれ適切な方法によって集約される。
【0112】
タイヤ特性には、平均温度及び平均内圧が含まれる。また、ドライバー特性には、平均年齢、平均運転経験年数及び女性ドライバーの比率が含まれる。
【0113】
なお、運行ルートが長い場合、その特性は、短い運行ルートよりも高く重み付けされてよい。トレッドの測定周期中に走行した距離(kms)は、2週間(14日間)を単位としてよい。例えば、ある測定周期が15日間、別の測定周期が50日間である場合、バスが走行した距離を直接比較するのは意味がないためである。
【0114】
(3.4)速度、温度、トレッド深さ及び燃料消費モデル
次に、速度、温度、トレッド深さ及び燃料消費のモデルに関する内容について説明する。
【0115】
(3.4.1)連立方程式モデルシステム
本実施形態に係る統計的手法は、共同で推定された3段階の最小二乗(3SLS)モデル(左辺(LHS)及び右辺(RHS)の内生変数(endogenous variables)を含む方程式系)を用いることができる。
【0116】
上述したように、2つの測定タイミング(ポイント)間におけるトレッド深さ損失が重要であるが、測定数は、同一のタイヤから収集できる一貫したデータポイントの数に依存する。
【0117】
4つのモデルは、平均速度、平均タイヤ温度、トレッド深さ損失、及び燃料消費に関連している。トレッド深さ損失自体は、測定周期中に車両が走行した距離に大きく依存し、またミリメートルの変更はトレッド深さが異なるタイヤに同じ効果を及ぼさないため、あまり有益ではない。
【0118】
そこで、前回のトレッド深さに対する1キロメートルあたりのトレッド深さ損失(km当たりのトレッド摩耗)の割合を表すトレッドの深さの変換された変数が用いられる。この変換は、(式1)に示されているとおりである。
【0119】
【0120】
ここで、当該変数の単位は、次のとおりである。
【0121】
【0122】
次の式に含まれる全ての属性は、トレッド測定周期に基づいて計算される。例えば、走行距離は、各バスが前回の測定から現時点までに走行したサービス走行距離を意味する。方程式系は、(式2)~(式5)に示されているとおりである。
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
図6は、各変数間の関係を示す。燃料消費(Fuel consumption)は、部分的にはタイヤのトレッド深さ損失(Tread depth loss per km)によって説明され、部分的にはタイヤ温度(Tyre temperature)によって説明され、部分的には平均速度によって説明される。タイヤ温度の一部は、平均速度で説明される。
【0128】
これらの内生変数のそれぞれは、
図6において円形で示される多くの外生的要因(exogenous factors)の影響を受ける。
図6に示されている各モデルに含まれる外生的要因は、例示的に列挙したものであるが、上述した方程式によって示されるように、変数と関連する相互作用の組み合わせは多様である。
【0129】
図6に示すように、外乱(誤差項)が同時に相関している場合、2段階最小二乗推定の実行可能な一般化最小二乗(FGLS)バージョンは、一貫性があり、漸近的に効率的な推定に繋がる(Zellner and Theil 1962)。このような推定手順は、3段階最小二乗(3SLS)と呼ばれる。
【0130】
Zellnerの3 SLS推定器は、まず(外因)計器のリストにある全ての変数について、各方程式の右辺にある全ての変数を回帰し、当てはめられた値を保持することによって得られる。
【0131】
当該イベントでは、この最初の段階の回帰は、当該変数上の1つのパラメータと全ての他のための零で完全なフィットを生成するため、契機変数リストに同様に現れる方程式リスト内の任意の変数は正確に再現される。
【0132】
当該推定後、外乱共分散行列は、適合変数ではなく元の変数を用いて推定される。非反復3SLSを使用するのは、反復が効率の向上をもたらさず、最尤推定結果を生成しないためである。
【0133】
(3.4.2)収集されたデータの記述プロファイル
図7及び
図8は、代表的な変数(データ)の記述プロファイルの例である。
図7及び
図8に示すように、3SLSモデルの統計及び記述分析の最終データの例では、1,749の観測値があり、それぞれが1つのタイヤを表している。
【0134】
図7及び
図8に示されている数値は、平均(標準偏差)であり、バス種類(全て、高床バス、低床バス、連節バス、2階建てバス)毎に区分して数値が示されている。
【0135】
また、変数は、バス特性、オペレーション/ルート特性、タイヤ特性及ドライバー特性に区分して示されている。
【0136】
(3.4.3)3SLSモデルの結果と解釈
上述したように、本実施形態では、3SLSモデルが用いられるが、内生変数のそれぞれに統計的に有意な影響を与える可能性を有する、すなわち、平均速度、トレッド深さ損失、平均タイヤ温度、燃料消費が存在する。
【0137】
(式2)の従属(または左側)変数は、平均速度であり、幾つかの運行ルート、オペレーション及びバスの特性によって統計的に説明される。
【0138】
(式3)の従属変数は、平均タイヤ温度であり、平均速度、ピーク時のキロメートルの割合、乗客(patronage)、気温及びタイヤ位置によって統計的に説明される。
【0139】
(式4)の従属変数は、トレッド深さ損失であり、平均速度、平均タイヤ温度、フロントタイヤのタイヤ空気圧、走行距離(km)、ルート特性、乗客及びタイヤ位置によって統計的に説明される。
【0140】
(式5)の従属変数は、燃料消費であり、トレッド深さ損失、バスの年齢、走行距離、バスの種類によって統計的に有意な方法で影響を受ける。
【0141】
図9は、3SLSモデルの結果を示す。
図9には、各従属変数の係数パラメータ(Coefficient)及びt値(t-test)が示されている。
【0142】
図9に示されている結果によれば、2階建てバス30及び低床の通常バス20(Rigid)の平均速度が、他の種類のバス(連節バス40及び高床の通常バス20)よりも高いことを示唆している。
【0143】
後輪(バック)タイヤは、予想されていた前輪(フロント)タイヤよりもトレッド深さ損失が大きい。また、内側後輪(インナーバック)タイヤは、外側後輪(アウターバック)のタイヤよりも1,000 kmあたりのトレッド深さ損失の割合が大きかった(3.7%対1.3%)。
【0144】
連節バス40は、他の種類のバスよりも燃料消費が大幅に高く、2階建てバス30がそれに続く。
【0145】
重要なことに、統計的に重要な説明変数の多くはコンテキストに依存し、動作環境を表しているため、オペレーター(バス運行会社)の制御下にはない。相互に関連する4つの方程式(式2~式5)の全てにおいて、オペレーターの制御下にある変数(つまり、値を変更する能力がある変数)は、ドライバー(経験年数、年齢、ドライバー数)、タイヤの空気圧、タイヤ温度、バスの年齢及びバスの種類である。
【0146】
また、平均速度の方程式(式2)では、他の全ての条件が同じであるため、2週間あたりの走行距離が長いほど、平均速度が高くなる傾向があることが分かる。1kmあたりの停止回数が多いほど、平均速度は低くなる。
【0147】
さらに、走行(運行)毎の最大積載量が高くなると、速度が低下する(積み込みと降車の期間が長くなる)。走行毎の最大負荷は、バスの種類によって異なる影響を及ぼす。低床の通常バス20は最大負荷の影響が大きく、2階建てバス30、連節バス40がそれに続く。
【0148】
バス運行会社において長期間働いているドライバーは、より高い平均速度を提供する傾向がある。また、年上のドライバーは平均速度が低い傾向があり、男性ドライバーは平均速度が高い傾向がある。これは主に、運転するルートに関連している。
【0149】
興味深いことに、多くのドライバーが1台の車両(1,000kmあたり)を長く運転すると、平均速度が低下する傾向があることを示されている。これは、車両とルートに精通していることに関連している可能性があり、慣れていない場合は平均速度が低下する。
【0150】
また、ピーク時の走行中にタイヤ温度が上昇する可能性がある(混雑の影響、及びブレーキングの増加)、乗客が多い時間帯、及び予想される気温が高い時間帯も同様である。
【0151】
最大荷重は、連節バス40のタイヤ温度に大きな影響を与え、次に高床の通常バス20、2階建てバス30が続くが、低床の通常バス20では統計的に有意な影響が示されていない。
【0152】
また、平均タイヤ温度が高くなると、トレッド深さ損失が大きくなり、平均速度が高くなると、トレッド深さ損失が大きくなる。興味深いことに、最適な空気圧レベル(105~115psiに減らす)は、フロントタイヤのトレッド深さ損失に対する統計的に有意な影響であると見受けられる。これは、最適レベルの空気圧がバックタイヤのトレッド深さ損失に統計的に有意な影響を与えないことを示唆してる。これは他の変数の影響による可能性がある。
【0153】
明らかに、トレッド深さ損失の改善は、燃料消費の改善により燃料の節約に大きく貢献し得る。トレッド深さ損失を改善する機会はあり得るが、通常、平均速度などの他の変数は、ドライバーの経験と年齢によって異なる運転能力を除いて、バス運行会社の制御下にはない。
【0154】
(3.5)メンテナンスコストの関係
車両(バス)のメンテナンスコストは、タイヤサービス、シャーシサービス、ボディサービス、インテリアサービス及び日常サービスを考慮し、全ての在庫(タイヤのコストを含む)及び労働作業が含まれる。
【0155】
図11は、メンテナンスコスト・データセットの記述プロファイルを示す。キロメートルあたりの総メンテナンス費用には、各アイテムの人件費及び在庫費用が含まれれる。なお、単位は、オーストラリアドル(AUD)である。
【0156】
当該モデルで使用されるトレッド深さ損失は、全ての車両のタイヤの平均を示す。
図11に示すように、総メンテナンスコストの様々なコストコンポーネントにおいて発生する。
【0157】
従って、全てのコストを集計し、それらを従属変数として使用するキロメートルあたりのメンテナンスコストとして表し、メンテナンスコストモデルは、他の候補操作、運行ルート、及び他の変数によって説明される。線形回帰方程式は次のとおりである。
【0158】
【0159】
図12は、当該メンテナンスコストモデルの結果を示す。総メンテナンスコストの変動の原因を説明するタイヤパフォーマンスへの影響に関連する主な変数は、次のとおりである。
【0160】
・車両に装着されている全てのタイヤのトレッド深さ損失の平均
・平均タイヤ温度
・バスの年齢
・車両のルート毎のドライバー数
・高床の通常バス20を表すダミー変数
タイヤのトレッド深さ損失と総メンテナンス費用とには関係性があることが確認できる。
【0161】
(3.6)意思決定支援システム(DSS)
意思決定支援システム(DSS)は、特に、タイヤに関連する影響、燃料消費及びメンテナンスコストに関して、幾つかの重要な影響についてガイダンスを提供できる。DSSを利用すると、ユーザーは、説明変数のレベルを(許容範囲内において動作的に現実的な範囲内で)変更でき、DSSは、影響を受ける他のすべての変数への影響を自動的に計算する。
【0162】
DSSには、
図6に示されている全ての関係が含まれているため、例えば、ドライバーの平均年齢に変化がある場合、平均速度に影響し、タイヤ温度とトレッド深さ損失との割合に影響する。また、トレッド深さ損失は燃料消費に影響する。
【0163】
従って、1つの説明変数(平均速度など)の変化は、4つの方程式全てに含まれていないにもかかわらず、4つの内生従属変数全てに影響を与える可能性がある(例えば、平均速度は燃料消費モデルの直接的な説明変数ではないが、トレッド深さ損失による影響がある)。
【0164】
さらに、DSSは、他の全ての説明変数が変更されないことを前提として、定数係数(
図9参照)を調整することによって、従属変数(つまり、平均速度、平均タイヤ温度、トレッド深さ損失の割合及び燃料消費)の変更を可能にする。
【0165】
つまり、ドライバー関連係数及び車両関連係数は、他の全ての説明変数が変更されないことを前提として、数値が調整されてよい。
【0166】
上述したように、幾つかの説明変数が3SLSモデルに含まれているが、それらの全てがオペレーターによって制御できるわけではない。様々なシナリオをシミュレートし、これらの変数が燃料消費と保守コストの節約に与える影響を明らかにしている。
【0167】
当該シナリオは、オペレーターが制御できると考えられる5つの説明変数を変更することによってシミュレートできる。具体的には、最適内圧レベル(105~115psi)のタイヤの割合、バスの年齢、ドライバーの平均年齢、ドライバーの平均運転経験年数、男性ドライバー50Aの割合、ドライバーの数及び運行ルート毎のドライバーの数である。
【0168】
図10は、シミュレーションされたシナリオの例を示す。具体的には、
図10は、6つの異なるシミュレーションシナリオとベース(現在の状況)とを示し、4つの内因性(つまり)従属変数(平均速度、平均タイヤ温度、1,000kmあたりのトレッド深さ損失の割合、及び燃料消費量)に与えると予測される影響を示している。
【0169】
シナリオ1では、最適内圧レベル(105~115psi)でのタイヤの割合が、54.17%から90.00%に増加する。DSSは、当該シナリオにおける燃料消費の節約量(金額)を示すことができる(シナリオ2~7も同様)。
【0170】
シナリオ2では、バスの年齢が6.73年から5年に低下する。
【0171】
シナリオ3では、シナリオ2でのバスの改善された年齢を維持し、ドライバーの平均年齢を55歳に引き上げる。
【0172】
シナリオ4では、シナリオ3の改善された説明変数を維持し、ドライバーの経験を3年に短縮する。
【0173】
シナリオ5では、シナリオ4のレベルを維持するが、50%が女性ドライバー50Bによって運転される。
【0174】
シナリオ6では、シナリオ5のレベルに追加され、各車両の1,000kmあたりのドライバー数を6人(基本シナリオは8.61人)に削減する。
【0175】
また、メンテナンスコストの観点では、全ての変更は、トレッド深さ損失と平均タイヤ温度の割合の変更を通じて、直接的または間接的にメンテナンスコストに影響を与え得る。
【0176】
シナリオ2で説明されているように、説明変数であるバス年齢は、メンテナンスコストに大きな影響を与える。シナリオ2のように、バスの年齢を6.73年から5年に減らすと、年間メンテナンスコストを節約できる。シミュレートされた全てのシナリオは、3SLSモデルとメンテナンスコストモデルとで同様の効果が確認できる。
【0177】
シナリオ7は、燃料コストとメンテナンスコストとの両方が大幅に節約されたモデルである。
【0178】
図13は、3SLSモデルのDSSツールを用いたシミュレートシナリオの例を示す。具体的には、
図13は、3SLSモデル及びメンテナンスコストのDSSツールのシミュレーションシナリオのスクリーンショットの例を示している。
【0179】
燃料消費の節約は、燃料消費の金銭的節約に変換されてよい。例えば、燃料の価格が1リットルあたり平均1.61ドル(AUD)であり、1リットルあたり0.12003ドルの燃料クレジットを考慮すると、年間節約量は、1リットルあたり1.49ドルになる。
【0180】
また、例えば、対象のフリートが提供する年間運行総距離数は、所定値に想定されるが、DSSツールを使用すると、対象のフリートが提供する年間運行総距離数を変更することもできる。
【0181】
(4)作用・効果
上述した実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。具体的には、フリート管理システム10(燃費予測システム)は、ドライバー関連説明変数及び車両関連説明変数の実績値に基づいて、ドライバー関連係数及び車両関連係数を設定できる。また、燃費予測システム(具体的には、DSS)は、ドライバー関連係数及び車両関連係数を用いて、ドライバーの属性及び車両の属性の少なくとも何れかを変更した場合における燃費の予測値を再計算できる。
【0182】
つまり、オペレーター(バス運行会社)がコントロールできる変数である「ドライバー属性」及び「車両属性」に着目し、これらの変数を変更した際の燃費を再計算することによって、フリート管理のための手法の提示が可能となる。
【0183】
また、燃費の説明変数として、タイヤの摩耗速度、車両の平均速度、平均タイヤ温度を使用することによって、予測精度を向上し得る。
【0184】
また、フリート管理システム10(タイヤ摩耗予測システム)は、ドライバー関連係数及び車両関連係数を用いて、ドライバーの属性及び車両(バス)の属性の少なくとも何れかを変更した場合におけるタイヤの摩耗の予測値を再計算できる。
【0185】
つまり、オペレーター(バス運行会社)がコントロールできる変数である「ドライバー属性」及び「車両属性」に着目し、これらの変数を変更した際の摩耗速度(トレッド深さ損失)を再計算することによって、フリート管理のための手法の提示が可能となる。
【0186】
また、摩耗速度の説明変数として、車両の平均速度、平均タイヤ温度を使用することによって、予測精度を向上し得る。
【0187】
すなわち、燃費予測システムは、フリートを構成するバスの燃費の抑制に貢献し得る。また、タイヤ摩耗予測システムは、フリートを構成するバスに装着されているタイヤの摩耗をより正確に予測し得る。
【0188】
本実施形態では、フリート管理システム10は、ドライバー関連説明変数として、ドライバーの平均年齢、性別割合、平均経験年数、所定走行距離毎の人数の少なくとも何れかを取得できる。このため、燃費または摩耗速度への影響が大きいドライバー関連説明変数を用いて燃費及びタイヤの摩耗をより高い精度で予測できる。
【0189】
本実施形態では、フリート管理システム10は、車両関連説明変数として、バスの平均速度、バスに装着されているタイヤの摩耗速度(燃費予測システムの場合)、及びバスに装着されているタイヤの平均温度を取得できる。このため、燃費または摩耗速度への影響が大きい車両関連説明変数を用いて燃費及びタイヤの摩耗をより高い精度で予測できる。
【0190】
(5)その他の実施形態
以上、実施形態について説明したが、当該実施形態の記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0191】
例えば、上述した実施形態では、ドライバー関連説明変数として、主にドライバーの平均年齢、性別割合、平均経験年数、所定走行距離毎の人数が用いられていたが、ドライバー関連説明変数は、これらの説明変数に限定されず、
図7及び
図8に示されている他の説明変数が用いられてよい。
【0192】
また、上述した実施形態では、車両関連説明変数として、タイヤの摩耗速度、車両の平均速度、タイヤの平均温度が用いられていたが、車両関連説明変数もこれらの説明変数に限定されず、
図7及び
図8に示されている他の説明変数が用いられてよい。
【0193】
以上、本開示について詳細に説明したが、当業者にとっては、本開示が本開示中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本開示は、請求の範囲の記載により定まる本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本開示の記載は、例示説明を目的とするものであり、本開示に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0194】
10 フリート管理システム
20 通常バス
30 2階建てバス
40 連節バス
50A 男性ドライバー
50B 女性ドライバー
100 サーバコンピュータ
110 ドライバー関連変数取得部
120 車両関連変数取得部
130 データ格納部
140 係数設定部
150 目的変数計算部
160 出力部
200 携帯端末
300 デスクトップ端末