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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】走行装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 49/08 20060101AFI20241212BHJP
   B61B 13/00 20060101ALI20241212BHJP
   B62D 61/10 20060101ALI20241212BHJP
   B62D 65/18 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B62D49/08 A
B61B13/00 A
B62D61/10
B62D65/18 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021145924
(22)【出願日】2021-09-08
(65)【公開番号】P2023039005
(43)【公開日】2023-03-20
【審査請求日】2024-03-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第30条第2項適用、令和2年12月24日 株式会社福井村田製作所に走行装置を販売
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】藤原 紀人
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-504290(JP,A)
【文献】特開2018-69948(JP,A)
【文献】特開昭56-90778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 49/08
B61B 13/00
B62D 61/10
B62D 65/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に配置され、水平方向の面内に開口部を有するフレームと、
前記フレームの下方において、前記フレームに取り付けられた回転軸に回転可能に支持され、前記回転軸から水平方向である第1方向に向けて延在するトレーリングアームと、
前記トレーリングアームによって支持された第1車輪と、
前記トレーリングアームに設けられた少なくとも1つのバラストと、
を備え、
前記少なくとも1つのバラストは、前記トレーリングアームにおける前記回転軸よりも前記第1方向側の位置である第1固定位置に固定され、前記第1固定位置から上方に向けて延在し、前記フレームの下方から前記フレームの上方に向けて前記開口部を貫通する、第1バラストを含む、
走行装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのバラストは、さらに、前記第1バラストにおける前記フレームの上方の位置である第2固定位置に固定され、前記第2固定位置から前記第1方向とは反対の第2方向に向けて延在する、第2バラストを含む、
請求項1に記載の走行装置。
【請求項3】
前記第2バラストは、前記第2方向側の上下方向の厚みが前記第1方向側の上下方向の厚みよりも大きい、
請求項2に記載の走行装置。
【請求項4】
前記第1バラストのうち前記開口部を貫通する部分の水平方向の幅は、前記第2バラストの水平方向の幅よりも狭い、
請求項2又は請求項3に記載の走行装置。
【請求項5】
前記走行装置の上部を覆う天面部をさらに備え、
前記トレーリングアームが上方に回転して前記フレームの下面に当接する第1姿勢状態において前記バラストの上面と前記天面部の下面との間に所定の間隙が形成されるように、前記バラストの高さが設定される、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の走行装置。
【請求項6】
前記第1姿勢状態において、前記バラストの上面と前記天面部とが平行になる、
請求項5に記載の走行装置。
【請求項7】
前記トレーリングアームの回転可動域は、前記第1姿勢状態と、前記トレーリングアームが下方に回転して前記バラストが前記フレームの上面に当接する第2姿勢状態との間である、
請求項5又は請求項6に記載の走行装置。
【請求項8】
前記走行装置の前部及び後部に前後一対の第2車輪が設けられており、
前記第1車輪、前記トレーリングアーム、及び前記少なくとも1つのバラストは、前記前後一対の第2車輪の間の領域に設けられている、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の走行装置。
【請求項9】
前記走行装置の全体を覆う筐体をさらに備え、
前記筐体の内部空間は、前記フレームによって前記フレームの下方の第1収容空間と前記フレームの上方の第2収容空間とに区切られており、
前記第1収容空間に、前記第1車輪、前記トレーリングアーム、及び前記少なくとも1つのバラストのうち前記フレームの下方の部位が収容され、
前記第2収容空間に、前記少なくとも1つのバラストの前記フレームの上方の部位が収容される、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行車輪を備え、荷物を積載して走行したり、荷物を積載する台車を牽引して走行したりする走行装置が知られている。例えば特許文献1には、走行車輪が取り付けられたトレーリングアームにスプリングを設け、走行装置の走行を安定化させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-224654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の技術では、例えば床面の段差が大きい場合や、積載荷重が大きい場合に、床面に対する車輪の荷重が十分でなく、走行車輪が空転(スリップ)してしまう問題が生じる。このように、従来の技術では、走行装置の走行安定性が十分とは言えない。
【0005】
本発明の目的は、走行装置の走行安定性を向上させることが可能な走行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様に係る走行装置は、水平方向に配置され、水平方向の面内に開口部を有するフレームと、前記フレームの下方において、前記フレームに取り付けられた回転軸に回転可能に支持され、前記回転軸から水平方向である第1方向に向けて延在するトレーリングアームと、前記トレーリングアームによって支持された第1車輪と、前記トレーリングアームに設けられた少なくとも1つのバラストと、を備え、前記少なくとも1つのバラストは、前記トレーリングアームにおける前記回転軸よりも前記第1方向側の位置である第1固定位置に固定され、前記第1固定位置から上方に向けて延在し、前記フレームの下方から前記フレームの上方に向けて前記開口部を貫通する、第1バラストを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、走行装置の走行安定性を向上させることが可能な走行装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る走行装置の全体構成を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る走行装置の全体構成を示す側面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る走行装置及び台車の全体構成を示す側面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る走行装置の内部構造を示す斜視図である。
図5A図5Aは、本発明の実施形態に係る走行装置のフレームの全体構成を示す斜視図である。
図5B図5Bは、本発明の実施形態に係る走行装置のフレームの全体構成を示す平面図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る走行装置の左側駆動部及び右側駆動部の全体構成を示す斜視図である。
図7A図7Aは、本発明の実施形態に係る走行装置の左側駆動部の全体構成を示す斜視図である。
図7B図7Bは、本発明の実施形態に係る走行装置の左側駆動部の全体構成を示す斜視図である。
図7C図7Cは、本発明の実施形態に係る走行装置の左側駆動部の全体構成を示す側面図である。
図8A図8Aは、本発明の実施形態に係る走行装置の左側駆動部の全体構成を示す側面図である。
図8B図8Bは、本発明の実施形態に係る走行装置の左側駆動部の全体構成を示す側面図である。
図8C図8Cは、本発明の実施形態に係る走行装置の左側駆動部の全体構成を示す側面図である。
図9A図9Aは、本発明の実施形態に係る走行装置の走行状態の一例を示す側面図である。
図9B図9Bは、本発明の実施形態に係る走行装置の走行状態の一例を示す側面図である。
図9C図9Cは、本発明の実施形態に係る走行装置の走行状態の一例を示す側面図である。
図10A図10Aは、本発明の他の実施形態に係る走行装置の左側駆動部の全体構成を示す斜視図である。
図10B図10Bは、本発明の他の実施形態に係る走行装置の左側駆動部の全体構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る走行装置100の全体構成を示す斜視図である。図2は、走行装置100の全体構成を示す側面図である。
【0011】
走行装置100は、例えば、無人走行可能な搬送車(Automatic Guided Vehicle)である。走行装置100は、例えば図3に示すように、走行車輪を備える台車200の下に潜り込んで台車200に接続される。具体的には、走行装置100は、天面部101から上方に突出可能な牽引部110を備えている。図2は、牽引部110が天面部101から上方に突出した状態を示している。牽引部110は、上方に突出すると台車200の下面(裏面)の嵌合部に嵌合することにより、走行装置100及び台車200が接続される(図3参照)。
【0012】
走行装置100が台車200に接続されると、走行装置100は、駆動車輪123を駆動させることにより、台車200を牽引しながら移動することが可能となる。走行装置100は、例えば管理サーバーの命令に従って、所定の走行ルートを走行し、台車200に積載された荷物を目的地まで搬送する。
【0013】
図4には、走行装置100を覆う筐体(外装カバー)を外した内部構造を示している。走行装置100は、装置本体の底面に設けられた駆動車輪123、駆動車輪123を含む駆動部120、装置本体の底面に回転自在に設けられた従動車輪102、走行装置100の周囲の障害物を検出する距離測定装置(例えばライダーセンサー)、装置本体に電源を供給するバッテリー103、牽引部110などを備える。
【0014】
具体的には、従動車輪102は、走行装置100の四隅に設けられており、左側の前後一対の従動車輪102の間の領域に左側駆動部120Lが設けられており、右側の前後一対の従動車輪102の間の領域に右側駆動部120Rが設けられている。また、走行装置100には、水平方向に配置され、水平方向の面内に開口部131(左側開口部131L、右側開口部131R)を有するフレーム130が設けられている(図5A及び図5B参照)。左側駆動部120L及び右側駆動部120Rは、バッテリー103から供給される電力によりモーターを駆動させて各駆動車輪123L,123Rを回転させる。
【0015】
図5A及び図5Bに示すように、フレーム130は、走行装置100の前後方向及び左右方向の端部まで延在する面状のプレートである。フレーム130の中央の前方側には、左右方向に平行に並ぶ左側開口部131L及び右側開口部131Rが形成されている。フレーム130の前後方向の端部及び左右方向の端部のそれぞれは、上下方向に延在する側板を備え、各側板には走行装置100の筐体(外装カバー)が取り付けられている。また、フレーム130は、走行装置100の上下方向(高さ方向)の中間付近に配置されている(図4参照)。
【0016】
ここで、走行装置100の全体を覆う筐体の内部空間は、フレーム130の下方の第1収容空間(本発明の第1収容空間)と、フレーム130の上方の第2収容空間(本発明の第2収容空間)とに区切られている。前記第1収容空間は、フレーム130と床面との間の領域であり、前記第2収容空間は、フレーム130と天面部101との間の領域である。前記第1収容空間には、従動車輪102、バッテリー103、左側駆動部120Lの一部(下部)、右側駆動部120Rの一部(下部)などが配置されている。前記第2収容空間には、牽引部110、左側駆動部120Lの一部(上部)、右側駆動部120Rの一部(上部)などが配置されている。すなわち、左側駆動部120L及び右側駆動部120Rのそれぞれは、フレーム130を介して前記第1収容空間及び前記第2収容空間に亘って延在している。
【0017】
左側駆動部120L及び右側駆動部120Rは、左右方向に並んで配置されており、互いに独立してフレーム130に回転可能に固定されている。図6には、左側駆動部120L及び右側駆動部120Rの外観斜視図を示している。左側駆動部120L及び右側駆動部120Rは、左右対称の構造を有している。以下では、左側駆動部120Lを例に挙げて具体的構成を説明する。
【0018】
図7A図7Cには、左側駆動部120Lの全体構成を示している。左側駆動部120Lは、フレーム130の下方(第1収容空間)において、フレーム130に取り付けられた回転軸126Lに回転可能に支持され、回転軸126Lから水平方向である前方(本発明の第1方向)に向けて延在するトレーリングアーム124Lと、トレーリングアーム124Lによって支持された駆動車輪123L(本発明の第1車輪)と、トレーリングアーム124Lに設けられた第1バラスト121L(本発明の第1バラスト)及び第2バラスト122L(本発明の第2バラスト)と、を備えている。また、左側駆動部120Lは、モーター125L、ギヤなどを備える。駆動車輪123L、トレーリングアーム124L、及び第1バラスト121Lは、前後一対の従動車輪102の間の領域に設けられている。
【0019】
第1バラスト121Lは、図7Cに示すように、トレーリングアーム124Lにおける回転軸126Lよりも前方側の位置である第1固定位置P1に固定され、第1固定位置P1から上方に向けて延在し、フレーム130の下方からフレーム130の上方に向けて左側開口部131L(図5A参照)を貫通している。また、第1バラスト121Lは、駆動車輪123Lよりもトレーリングアーム124Lの先端側に配置されている。また、第1バラスト121Lの下方の部位は、フレーム130の下方(第1収容空間)に配置され、第1バラスト121Lの上方の部位は、フレーム130の表面(上面)と走行装置100の天面部101との間の空間(第2収容空間)に配置されている。
【0020】
第2バラスト122Lは、図7Cに示すように、第1バラスト121Lにおけるフレーム130の上方の位置である第2固定位置P2に固定され、第2固定位置P2から後方(回転軸126L側)に向けて延在している。第2バラスト122Lは、フレーム130の表面(上面)と走行装置100の天面部101との間の空間(第2収容空間)に配置されている。第2バラスト122Lと駆動車輪123Lとの間には、フレーム130が延在している。このように、左側駆動部120Lは、フレーム130を挟み込むように、全体的に側面視でコの字状に形成されている。
【0021】
また、図7Cに示すように、第2バラスト122Lは、後方側(回転軸126L側)の上下方向の厚みD2が前方側(トレーリングアーム124Lの先端側)の上下方向の厚みD1よりも大きくなっている。第2バラスト122Lの厚みD1,D2は、複数枚のプレート状の鋼材を積み重ねることにより設定されてもよいし、単一の鋼材により設定されてもよい。このように、第2バラスト122Lは、回転軸126Lを中心として回転する際の回転距離が大きい先端側の厚みD1が、回転距離が小さい回転軸126L側の厚みD2よりも小さくなっている。
【0022】
第1バラスト121L及び第2バラスト122Lのそれぞれは鋼材で形成されている。また、第1バラスト121L及び第2バラスト122Lのそれぞれは、複数枚のプレート状の鋼材を積載して形成されている。第1バラスト121L及び第2バラスト122Lを組み合わせた構造(重し)により、駆動車輪123Lに床面方向への十分な荷重を掛けることが可能となる。なお、第1バラスト121L及び第2バラスト122Lのそれぞれは、単一の部材で一体に構成されてもよいし、複数の部材で構成されてもよい。
【0023】
また、図6に示すように、第1バラスト121Lのうち左側開口部131Lを貫通する部分の水平方向(左右方向)の幅は、第2バラスト122Lの水平方向(左右方向)の幅よりも狭くなっている。同様に、第1バラスト121Rのうち右側開口部131Rを貫通する部分の水平方向(左右方向)の幅は、第2バラスト122Rの水平方向(左右方向)の幅よりも狭くなっている。これにより、フレーム130の左側開口部131L及び右側開口部131Rの大きさを最小限に抑えることができるため、フレーム130の強度を確保することができる。
【0024】
左側駆動部120Lは、トレーリングアーム124Lの機能により、フレーム130に固定された回転軸126Lを中心として、回転軸126Lの前方に設けられた駆動車輪123Lが上下方向に回転可能となる。また、左側駆動部120Lの前方には上下方向に延びてフレーム130の左側開口部131Lを貫通する第1バラスト121Lが設けられており、左側駆動部120Lの前方から後方に向けて延びる第2バラスト122Lが設けられており、駆動車輪123Lと床面との接地面には、第1バラスト121L及び第2バラスト122Lの重量に応じた荷重が掛けられている。
【0025】
同様に、右側駆動部120R(図6参照)は、トレーリングアーム124Rの機能により、フレーム130に固定された回転軸を中心として、回転軸の前方に設けられた駆動車輪123Rが上下方向に回転可能となる。また、右側駆動部120Rの前方には上下方向に延びてフレーム130の右側開口部131Rを貫通する第1バラスト121Rが設けられており、右側駆動部120Rの前方から後方に向けて延びる第2バラスト122Rが設けられており、駆動車輪123Rと床面との接地面には、第1バラスト121R及び第2バラスト122Rの重量に応じた荷重が掛けられている。
【0026】
左側駆動部120L及び右側駆動部120Rのそれぞれは、各バラストの荷重を床面に付勢した状態で、床面の段差、傾斜などに応じて回転軸を中心として上下方向に回転することが可能となっている。
【0027】
図8A図8Cには、左側駆動部120Lの回転動作の一例を示している。図8Aは、左側駆動部120Lが通常姿勢の状態を示している。前記通常姿勢は、左側駆動部120Lが回転軸126Lを中心として上下方向に回転可能な状態である。
【0028】
図8Bは、左側駆動部120Lが最下姿勢の状態(本発明の第2姿勢状態)を示している。前記最下姿勢では、左側駆動部120Lの第2バラスト122Lの先端部の下面がフレーム130の上面に当接している。トレーリングアーム124Lは、回転軸126Lを中心として下方向に回転した場合に、第2バラスト122Lの先端部の下面がフレーム130の上面に当接することにより下方向への回転が停止する。
【0029】
図8Cは、左側駆動部120Lが最上姿勢の状態(本発明の第1姿勢状態)を示している。前記最上姿勢では、駆動車輪123Lを覆うカバーの上面がフレーム130の下面(裏面)に当接している。トレーリングアーム124Lは、回転軸126Lを中心として上方向に回転した場合に、カバーの上面がフレーム130の下面(裏面)に当接することにより上方向への回転が停止する。また、図8Cに示すように、前記最上姿勢では、第2バラスト122Lの上面と天面部101の下面との間に所定の間隙S1が形成されるように、第2バラスト122Lの高さが設定されている。
【0030】
また、第2バラスト122Lは、前記最上姿勢において、第2バラスト122Lの上面と天面部101とが平行になるように形成されている。具体的には、第2バラスト122Lは、トレーリングアーム124Lの上方への回転により第2バラスト122Lの上面と天面部101とが平行になるように、先端側の厚みD1が回転軸126L側の厚みD2よりも小さくなっており(図7C参照)、また前記通常姿勢(図8A参照)において第2バラスト122Lの上面が前方(トレーリングアーム124Lの先端側)に向かって下方向に傾斜している。なお、第2バラスト122Lの傾斜面は、複数枚のプレートを積み重ねることにより形成されてもよいし、単一の鋼材により形成されてもよい。
【0031】
このように、トレーリングアーム124Lの回転可動域は、前記最下姿勢の状態(本発明の第2姿勢状態)と、前記最上姿勢の状態(本発明の第1姿勢状態)との間に設定されている。
【0032】
上述した駆動部(左側駆動部120L、右側駆動部120R)の構成により、走行装置100は、床面の段差が大きい場合や、積載荷重が大きい場合であっても、床面に対する駆動車輪の荷重を十分に確保することができるため、走行装置100の走行安定性を向上させることができる。図9A図9Cには、走行装置100の走行状態の一例を示している。
【0033】
図9Aは、走行装置100が平坦な床面を走行する場合の走行状態を示している。この場合、駆動車輪123L及び従動車輪102は、平坦面上を走行し、左側駆動部120Lは前記通常姿勢の状態(図8A参照)となる。
【0034】
図9Bは、走行装置100が凹状部分を有する床面を走行する場合の走行状態を示している。この場合、駆動車輪123Lは、凹状部分においてトレーリングアーム124Lの下方向への回転に従って下方向に移動する。なお、図9Bでは、左側駆動部120Lは、前記最下状態(図8B参照)の手前の前記通常姿勢の状態(図8A参照)である。
【0035】
図9Cは、走行装置100が凸状部分を有する床面を走行する場合の走行状態を示している。この場合、駆動車輪123Lは、凸状部分においてトレーリングアーム124Lの上方向への回転に従って上方向に移動する。なお、図9Cでは、左側駆動部120Lは、前記最上状態(図8C参照)の手前の前記通常姿勢の状態(図8A参照)である。
【0036】
本実施形態に係る構成によれば、図9A図9Cのいずれの走行状態においても、駆動車輪123Lと床面との接地面に、第1バラスト121L及び第2バラスト122Lの重量に応じた十分な荷重を掛けることができる。
【0037】
また、本実施形態に係る構成によれば、走行装置100の内部空間を利用して第1バラスト121L及び第2バラスト122Lを効率良く配置することができる。特に、フレーム130に開口部(左側開口部131L)を設けることにより、当該開口部を上下方向に貫通させてフレーム130の下方(第1収容空間)及び上方(第2収容空間)に第1バラスト121Lを配置することができる。
【0038】
さらに、フレーム130の上方(第2収容空間)において、第1バラスト121Lに固定されるとともに後方側に延在する第2バラスト122Lを配置することができる。これにより、駆動車輪123Lに十分な荷重を掛けることができる。
【0039】
このように、本実施形態に係る走行装置100は、内部空間を有効利用してバラスト(重し)を配置することにより駆動車輪123Lに荷重を与える構造を有する。
【0040】
また、本実施形態に係る走行装置100は、左側駆動部120L及び右側駆動部120Rのそれぞれが、独立してバラスト構造を備えている。このため、左側駆動部120L及び右側駆動部120Rのそれぞれが、床面の状態に応じて独立して回転することができるため、走行装置100及び台車200が傾いたり、一方の駆動車輪123のみ空転したりすることを防ぐことができる。よって、走行装置100の走行安定性を向上させることが可能となる。また、走行装置100には、駆動車輪123Lの荷重を確保するためにスプリングなどを設ける必要がないため、構造を簡素化することができる。なお、他の実施形態として、走行装置100は、上述の構造に加えて、駆動車輪123Lに下方の付勢力を与えるスプリングを備えてもよい。
【0041】
本発明の走行装置は、上述の実施形態に限定されない。本発明の他の実施形態として、走行装置100は、第2バラスト122L,122Rが省略されてもよい。具体的には、図10A及び図10Bに示すように、走行装置100は、開口部131(左側開口部131L、右側開口部131R)を有するフレーム130と、フレーム130の下方において、フレーム130に取り付けられた回転軸126(回転軸126L,126R)に回転可能に支持され、回転軸から水平方向である前方向に向けて延在するトレーリングアーム124(124L,124R)と、トレーリングアーム124によって支持された駆動車輪(123L,123R)と、トレーリングアーム124に設けられた第1バラスト121(121L,121R)と、を備える。また、第1バラスト121は、トレーリングアーム124における回転軸126よりも前方向側の位置である第1固定位置P1に固定され、第1固定位置P1から上方に向けて延在し、フレーム130の下方からフレーム130の上方に向けて開口部131を貫通する。図10A及び図10Bに示す走行装置100では、第2バラスト122L,122Rが省略されている。
【0042】
図10A及び図10Bに示す上述の構成においても、第1バラスト121Lにより、駆動車輪123Lに下方向への十分な荷重を掛けることができる。よって、走行装置100の走行安定性を向上させることができる。
【0043】
このように、本発明の走行装置100では、フレーム130の下方の第1収容空間に、駆動車輪123、トレーリングアーム124、及び少なくとも1つのバラスト(例えば第1バラスト121L)のうち下方の部位が収容される。また、フレーム130の上方の第2収容空間に、少なくとも1つのバラスト(例えば第1バラスト121L)の上方の部位が収容される。
【0044】
また、上述の実施形態では、駆動車輪123L,123Rが前後の従動車輪102の間の領域に配置されているが、他の実施形態として、駆動車輪123L,123Rは、走行装置100の前端側又は後端側に配置されてもよい。すなわち、走行装置100は、例えば四隅のうち前側2か所に駆動車輪123L,123Rが設けられ、後側2か所に従動車輪102が設けられてもよい。この場合、フレーム130において、開口部131(左側開口部131L、右側開口部131R)は前端側に形成される。
【0045】
また、本発明の他の実施形態として、前記バラスト構造は、従動車輪102に適用されてもよい。これにより、例えば第1バラスト121及び第2バラスト122により、従動車輪102に下方向への十分な荷重を掛けることができる。
【0046】
また、本発明の他の実施形態として、第1バラスト121及び第2バラスト122の少なくともいずれか一方が、トレーリングアーム124Lの一構成要素であってもよい。例えば、第1バラスト121及び第2バラスト122の少なくともいずれか一方が、トレーリングアーム124Lと一体に形成されてもよい。
【0047】
また、本発明の他の実施形態として、フレーム130は、前後方向に延在する複数のバーと、左右方向に延在する複数のバーとにより格子状に形成されてもよい。この場合、格子状のフレーム130に形成される複数の開口部に、左側開口部131L及び右側開口部131Rが含まれる。
【0048】
本発明に係る走行装置は、各請求項に記載された発明の範囲において、以上に示された各実施形態を自由に組み合わせること、或いは各実施形態を適宜、変形又は一部を省略することによって構成されることも可能である。
【符号の説明】
【0049】
100 :走行装置
101 :天面部
102 :従動車輪
110 :牽引部
120 :駆動部
121 :第1バラスト
122 :第2バラスト
123 :駆動車輪
124 :トレーリングアーム
126 :回転軸
130 :フレーム
131 :開口部
200 :台車
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B