(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】レーザ加工機
(51)【国際特許分類】
B23K 26/70 20140101AFI20241212BHJP
B23K 26/08 20140101ALI20241212BHJP
【FI】
B23K26/70
B23K26/08 Z
(21)【出願番号】P 2021158195
(22)【出願日】2021-09-28
【審査請求日】2024-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 立
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2017/006606(JP,A1)
【文献】特開2004-154850(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016105374(DE,A1)
【文献】特開昭56-152557(JP,A)
【文献】特開昭62-157754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/70
B23K 26/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが載置されるパレットと、
前記パレットに載置される前記ワークの上方からレーザビームを照射して、前記ワークに対してレーザ加工を行う加工ヘッドと、
前記ワークの面内方向と平行な第1方向に沿って前記パレットを移動自在に支持する加工機本体と、を備え、
前記パレットは、
前記パレットの移動を停止させるブレーキ機構を含むレーザ加工機。
【請求項2】
前記パレットは、
前記加工ヘッドが移動して前記ワークに前記レーザ加工が行われる加工範囲に前記ワークが位置する正規位置と、前記正規位置より前記第1方向に沿って引き出された引出位置と、の間で移動し、
前記ブレーキ機構は、
前記正規位置と前記引出位置との間に位置する中間位置において前記パレットの移動を停止させる
請求項1記載のレーザ加工機。
【請求項3】
前記加工機本体は、
前記正規位置及び前記引出位置のそれぞれで前記パレットの固定を行うロック機構を備え、
前記パレットは、
前記ロック機構による前記パレットの固定が解錠されることで、前記正規位置と前記引出位置との間で移動する
請求項2記載のレーザ加工機。
【請求項4】
前記パレットは、
作業者が前記パレットを移動させるために把持する把手部を備え、
前記作業者が前記把手部を把持して前記パレットを動かすことで、前記正規位置と前記引出位置との間で移動する
請求項2又は3記載のレーザ加工機。
【請求項5】
前記ブレーキ機構は、
前記把手部に設けられ、前記作業者が把持することで操作力が入力される操作ハンドルと、
前記パレットの移動を停止させる制動力を発生するブレーキパッド部と、
前記操作ハンドルと前記ブレーキパッド部との間に接続されて、前記操作ハンドルに入力される前記操作力を伝達することにより前記ブレーキパッド部を動作させるケーブル部と、を有している
請求項4記載のレーザ加工機。
【請求項6】
前記ブレーキパッド部は、
前記操作ハンドルに前記操作力が入力されていない間において前記制動力を発生する
請求項5記載のレーザ加工機。
【請求項7】
前記ブレーキパッド部は、
前記加工機本体のフレーム部に対して接触した接触状態と前記加工機本体のフレーム部から離間した離間状態とが切り替え可能に構成され、
前記接触状態において前記制動力を発生する
請求項6記載のレーザ加工機。
【請求項8】
前記パレットは、
前記加工範囲において前記ワークを支持する加工領域と、
前記加工領域から前記第1方向に沿って拡張された拡張領域と、を含む
請求項2から7いずれか一項記載のレーザ加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
板金などの板状のワークに対して切断加工を行う加工機として、レーザビームを用いて加工を行うレーザ加工機が知られている。レーザ加工機は、ワークにレーザビームを照射することで、熱エネルギーによってワークを切断する。レーザ加工機は、加工対象となるワークが載置されるパレットを備えている。熱エネルギーの影響を受けたワークの溶融物が溶着することを防止するために、パレットには、複数の山形の突出部を備える板状のワーク支持部材が一定の間隔を空けて配列されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワークの段取りなどを考慮してパレットが加工機本体から移動自在に構成された場合には、パレットが不意に動き、パレットが作業者に対して接触するなどの可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様のレーザ加工機は、ワークが載置されるパレットと、パレットに載置されるワークの上方からレーザビームを照射して、ワークに対してレーザ加工を行う加工ヘッドと、ワークの面内方向と平行な第1方向に沿ってパレットを移動自在に支持する加工機本体と、を備え、パレットは、パレットの移動を停止させるブレーキ機構を含む。
【0006】
本発明の一態様のレーザ加工機によれば、ワークが載置されるパレットが移動可能に構成されている。加工機本体がブレーキ機構を備えているので、ブレーキ機構によってパレットの移動を停止させることができる。これにより、パレットが不意に移動することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、パレットと作業者とが接触するといった事態を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るレーザ加工機の要部を模式的に示す側面図である。
【
図2】
図2は、レーザ加工機の要部を模式的に示す上面図である。
【
図3】
図3は、パレットを引出位置まで引き出した状態のレーザ加工機の要部を示す側面図である。
【
図4A】
図4Aは、ブレーキ機構のブレーキパッド部の構成を示す説明図である。
【
図4B】
図4Bは、ブレーキ機構の操作ハンドルの構成を示す説明図である。
【
図5A】
図5Aは、ブレーキ機構のブレーキパッド部の構成を示す説明図である。
【
図5B】
図5Bは、ブレーキ機構の操作ハンドルの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、本実施形態に係るレーザ加工機について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係るレーザ加工機の要部を模式的に示す側面図である。本実施形態に係るレーザ加工機1は、ワークWが載置されるパレット50と、パレット50に載置されるWワークの上方からレーザビームを照射して、ワークWに対してレーザ加工を行う加工ヘッド30と、ワークWの面内方向と平行な第1方向に沿ってパレット50を移動自在に支持する加工機本体10と、を備え、パレット50は、パレット50の移動を停止させるブレーキ機構5を含んでいる。
【0011】
以下、本実施形態に係るレーザ加工機について詳細に説明する。本明細書では、水平方向において直交する左右方向及び前後方向と、左右方向及び前後方向それぞれに直交する上下方向とを方向の定義として用いる。左右方向は、ワークWの面内方向と平行な方向であり、第1方向に対応する。
【0012】
レーザ加工機1は、加工機本体10と、加工ヘッド30と、パレット50とを備えている。
【0013】
加工機本体10は、基台11と、サイドフレーム12と、ヘッド駆動機構15と、を備えている。
【0014】
基台11は、概ね直方体状に構成されており、床面などの設置面に設置される。
【0015】
サイドフレーム12は、基台11の前縁部及び後縁部にそれぞれ配置されている。
図1では、説明の便宜上、前縁部のサイドフレーム12の記載が省略されている。前縁部及び後縁部のサイドフレーム12は、互いに平行に配置されている。
【0016】
ヘッド駆動機構15は、加工ヘッド30をワークWの面内方向に沿って移動する機構であり、X軸キャリッジ16と、Y軸キャリッジ19とを備えている。X軸キャリッジ16は、一対の支柱17と、一対の支柱17の間に跨がるように前後方向に延在するビーム18とで構成された門型形状を有している。
図1では、前縁部のサイドフレーム12と同様、前側の支柱17の記載が省略されている。
【0017】
X軸キャリッジ16は、一対のサイドフレーム12によって支持されており、サイドフレーム12に沿って移動可能に構成されている。X軸キャリッジ16は、サイドフレーム12に設けられたX軸キャリッジ駆動部(図示せず)によって駆動され、左右方向に移動する。
【0018】
Y軸キャリッジ19は、X軸キャリッジ16に配置されている。Y軸キャリッジ19は、は、X軸キャリッジ16のビーム18によって支持されており、ビーム18に沿って移動可能に構成されている。Y軸キャリッジ19は、ビーム18に設けられたY軸キャリッジ駆動部(図示せず)によって駆動され、前後方向に移動する。
【0019】
加工機本体10は、制御盤100、レーザ発振器110などをさらに有している。制御盤100は、レーザ加工機1の動作を制御する。制御盤100は、箱形の筐体、この筐体の内部に収容される回路基板などで構成されている。レーザ発振器110は、レーザビームを生成し、加工ヘッド30に対してレーザビームを供給する。レーザ発振器110は、箱形の筐体、この筐体の内部に収容される電子部品及び電機部品などで構成されている。
【0020】
制御盤100及びレーザ発振器110は、加工機本体10の基台11に配置されている。具体的には、制御盤100は、基台11の右端下方に配置され、基台11に固定されている。レーザ発振器110は、基台11の右端上方に配置され、基台11に固定されている。レーザ発振器110は、制御盤100の上方に配置されており、レーザ発振器110と制御盤100との間には隙間となる空間部Sが形成されている。
【0021】
加工ヘッド30は、ワークWの上方からレーザビームを照射して、ワークWに対してレーザ加工を行う。加工ヘッド30には、図示しないプロセスファイバを介して、レーザ発振器110から射出されたレーザビームが伝送されている。加工ヘッド30へと伝送されたレーザビームは、加工ヘッド30の内部に設けられた光学系を経て、加工ヘッド30の先端部の開口からワークWに照射される。
【0022】
加工ヘッド30は、ヘッド駆動機構15のY軸キャリッジ19に固定されている。X軸キャリッジ駆動部及びY軸キャリッジ駆動部を駆動して、X軸キャリッジ16及びY軸キャリッジ19を移動させることにより、加工ヘッド30をワークWの面内方向と平行な左右方向及び前後方向にそれぞれ移動させることができる。
【0023】
加工ヘッド30は、ヘッド駆動機構15による移動を通じて、予め定められた加工範囲Rの中で、レーザ加工を行うことができる。本実施形態のレーザ加工機1は、小さいサイズのワークWを想定した装置であり、加工範囲Rは、最大で4'×4'(1219mm×1219mm)サイズのワークWを加工することができる範囲に設定されている。
【0024】
図2は、レーザ加工機の要部を模式的に示す上面図である。
図3は、パレットを引出位置まで引き出した状態のレーザ加工機の要部を示す側面図である。
【0025】
パレット50は、加工機本体10によって水平に支持されている。パレット50には、ワークWが載置される。パレット50は、ワークWを支持するための枠体51を備えている。
【0026】
枠体51は、上面視において左右方向に横長となる略矩形のフレーム部材である。枠体51の左右方向の長さは、基台11の左端から、基台11に連結された制御盤100及びレーザ発振器110までを含む加工機本体10の左右方向の長さとほほ同じである。
【0027】
パレット50は、加工領域A1と、拡張領域A2とを含んでいる。加工領域A1は、加工範囲RにおいてワークWを支持する領域である。一方、拡張領域A2は、加工領域A1から右方向に向かって拡張された領域である。
【0028】
パレット50の加工領域A1は、複数のスキッド52、及び複数のクランプ部53を備えている。
【0029】
複数のスキッド52は、加工領域A1においてワークWを支持する板状部材である。複数のスキッド52は、左右方向にかけて間隔を空けて配置されている。個々のスキッド52は、前後方向に延在する板状の部材であり、鋼などの金属材料、例えば軟鋼から構成されている。スキッド52は、枠体51を構成する一対のフレーム部材51a、51bの間に跨がるように配置され、スキッド52の両端は、一対のフレーム部材51a、51bそれぞれに対して固定されている。枠体51に固定されたスキッドは、例えば鉛直に起立している。しかしながら、スキッド52は、上下方向に起立していればよく、必ずしも鉛直である必要はない。
【0030】
個々のスキッド52は、それぞれが上方に向かって突出する複数の突出部を備えている。複数の突出部は、スキッド52の上端部に設けられている。複数の突出部は、前後方向にかけて間隔を空けて設けられている。個々の突出部は、上下方向に沿って縦長となる板体であり、上端部に向かう程に幅が狭くなるような山形の形状を有している。ワークWは、スキッド52の頂部、すなわち個々の突出部の頂点において支持される。
【0031】
複数のクランプ部53は、スキッド52によって支持されたワークWを固定する。複数のクランプ部53は、枠体51を構成するフレーム部材51aに固定されている。
【0032】
パレット50の拡張領域A2は、枠体51を構成する一対のフレーム部材51a、51bが右方向に延出して構成されている。
【0033】
このような構成のパレット50は、サイドフレーム12に固定されたガイド部材13を介して、左右方向へ移動自在に支持されている。ガイド部材13は、パレット50の枠体51に設けられたレールを摺動自在に保持することで、パレット50の直線運動をガイドする。
【0034】
パレット50が正規位置P1にある場合、具体的にはパレット50が最も右奥に位置する場合、パレット50の加工領域A1は加工範囲Rに位置している(
図1参照)。また、パレット50の拡張領域A2は、制御盤100とレーザ発振器110との間に形成される隙間である空間部Sに進入している。
【0035】
パレット50を左方向へと引き出すと、パレット50は正規位置P1から引出位置P2まで移動する。引出位置P2は、パレット50の加工領域A1が加工範囲Rよりも左方向に引き出された位置である(
図3参照)。パレット50は、引出位置P2と正規位置P1との間で移動することができる。
【0036】
枠体51を構成する左側のフレーム部材51cには、作業者がパレット50を移動させるために把持する把手部55、56が設けられている。作業者は、把手部55、56を把持してパレット50を動かすことで、正規位置P1と引出位置P2との間でパレット50を移動させることができる。
【0037】
本実施形態に係るパレット50は、ロック機構57と、ブレーキ機構5とをさらに備えている。
【0038】
ロック機構57は、正規位置P1及び引出位置P2のそれぞれでパレット50の固定を行う。ロック機構57は、サイドフレーム12に配置されて、上下方向に進退自在に構成されたロッド部材などで構成されている。パレット50の前側のフレーム部材51aには、正規位置P1及び引出位置P2のそれぞれに対応する係合部51a1、51a2が設けられている。ロック機構57は、係合部51a1、51a2に設けられた係合穴又はスリット(図示せず)と係合することで、パレット50の固定を行う。
【0039】
ブレーキ機構5は、パレット50の移動を停止させる。上述したように、ロック機構57によるパレット50の固定が解錠されることで、パレット50は移動可能となる。このブレーキ機構5は、ロック機構57によってパレット50が固定されてない位置、すなわち、正規位置P1と引出位置P2と間に位置する任意の中間位置においてパレット50の移動を停止させる。
【0040】
図4A及び
図5Aは、ブレーキ機構のブレーキパッド部の構成を示す説明図である。
図4B及び
図5Bは、ブレーキ機構の操作ハンドルの構成を示す説明図である。ブレーキ機構5は、操作ハンドル60と、ブレーキパッド部65と、ケーブル部70とで構成されている。
【0041】
操作ハンドル60は、把手部56に設けられ、作業者が把持することで操作力が入力される。操作ハンドル60は、略L字状に屈曲した形状を有しており、屈曲部位を境に操作部60aと接続部60bとが連結されている。操作ハンドル60の屈曲部位には、把手部56に設けられたピン61が挿通されており、操作ハンドル60は、ピン61を中心として回動自在となっている。操作ハンドル60の接続部60bには、ケーブル部70の端部が連結されている。
【0042】
ブレーキパッド部65は、サイドフレーム12と対向する、パレット50のフレーム部材51aに設けられており、パレット50の移動を停止させる制動力を発生する。ブレーキパッド部65は、リンク機構66と、ロッド部67と、パッド本体68と、スプリング69とで構成されている。
【0043】
リンク機構66は、略L字状に形成されており、屈曲部位を境に一対のアームが連結されている。リンク機構66の屈曲部位には、フレーム部材51aに設けられたピンが挿通されており、リンク機構66は、ピンを中心として回動自在となっている。リンク機構66の一方のアームには、ケーブル部70の端部が連結され、リンク機構66の他方のアームには、ロッド部67の端部が連結されている。
【0044】
ロッド部67は、フレーム部材51aに保持されており、リンク機構66の回転動作に応じて、前後方向に進退する。ロッド部67の一方の端部には、リンク機構66のアームが連結され、ロッド部67の他方の端部には、パッド本体68が取り付けられている。
【0045】
パッド本体68は、サイドフレーム12と向かい合う位置に配置されている。パッド本体68は、ロッド部67の進退動作に応じて、サイドフレーム12に対して接触した接触状態と、サイドフレーム12から離間した離間状態とが切り替えられる。パッド本体68がサイドフレーム12に対して接触状態となると、パッド本体68とサイドフレーム12との間に摩擦力が発生する。この摩擦力により、パッド本体68は、パレット50の移動を停止させる制動力を発生する。
【0046】
スプリング69は、ロッド部67を囲むように取り付けられており、パッド本体68とフレーム部材51aとの間に配置されている。スプリング69は、圧縮ばねであり、サイドフレーム12に対してパッド本体68が接触状態となるように、パッド本体68を押圧する押圧力を付与する。
【0047】
ケーブル部70は、アウターケーブル71と、インナーケーブル72とで構成されている。アウターケーブル71は、内部が中空に形成された筒状の部材である。アウターケーブル71の一方の端部は、操作ハンドル60の近傍に固定され、アウターケーブル71の他方の端部は、ブレーキパッド部65の近傍に設けられたブラケット73に固定されている。インナーケーブル72は、アウターケーブル71の中空部に挿通されており、アウターケーブル71の内部を移動することができる。インナーケーブル72の一方の端部は、操作ハンドル60の接続部60bに連結されており、インナーケーブル72の他方の端部は、ブレーキパッド部65のリンク機構66に連結されている。操作ハンドル60の接続部60bと、ブレーキパッド部65のリンク機構66との間で弛みが生じないように、インナーケーブル72は、所定のテンションが生じた状態で掛け渡されている。
【0048】
以下、本実施形態に係るレーザ加工機1におけるパレット50の動作について説明する。
図1及び
図2に示されるように、加工作業を行う前、すなわち、レーザ加工機1の初期状態では、パレット50は正規位置P1に存在する。パレット50はロック機構57によって正規位置P1に固定されている。したがって、把手部55、56を把持して、パレット50を左方向に引っ張ったとしても、パレット50を移動させることはできない。
【0049】
パレット50にワークWをセットする段取り作業を行うときには、まず、作業者は、ロック機構57を解除して、パレット50を移動可能な状態へと切り替える。一方、ブレーキ機構5のブレーキパッド部65では、スプリング69によってパッド本体68が押圧されているので、サイドフレーム12に対してパッド本体68が接触した状態となっている(
図4A参照)。パッド本体68が接触状態となっているため、ブレーキパッド部65によって制動力が発生している。そのため、ロック機構57を解除したとしても、パレット50が勝手に動き出してしまうことはない。
【0050】
作業者は、一方の把手部55を把持するとともに、他方の把手部56を把持する。作業者は、他方の把手部56と一緒に、操作ハンドル60の操作部60aを把持することで、操作ハンドル60に操作力を入力する。操作ハンドル60に操作力が入力されると、
図5Bに示すように、操作ハンドル60は、ピン61を中心として反時計回りに回動する。操作ハンドル60が回動すると、操作ハンドル60の接続部60bに連結されたインナーケーブル72が操作ハンドル60側へと引っ張られる。
【0051】
インナーケーブル72が引っ張られると、インナーケーブル72の他端に連結された、ブレーキパッド部65のリンク機構66がピンを中心として反時計回りに回動する。リンク機構66が回動すると、リンク機構66のアームと連結されたロッド部67が後方向へと引っ張られる。ロッド部67を引っ張る力がスプリング69の押圧力を上回ると、パッド本体68がサイドフレーム12から離間した離間状態となる(
図5A参照)。このように、ケーブル部70が操作ハンドル60に入力される操作力を伝達することにより、ブレーキパッド部65が離間状態へと動作する。操作ハンドル60に操作力が入力されている間、ブレーキパッド部65は制動力を発生しない。
【0052】
作業者は、操作ハンドル60の操作部60aを把手部56と一緒に把持したまま、パレット50を左方向に引っ張ることで、パレット50を動かすことができる。これにより、ユーザはパレット50を引出位置P2まで引き出すことができる(
図3参照)。
【0053】
なお、パレット50を引出位置P2へと引き出している過程でパレット50を停止させたい場合、作業者は、操作ハンドル60へ入力している操作力を解放する。すなわち、作業者は、操作ハンドル60から手を離せばよい。操作力が解放されると、操作ハンドル60は、インナーケーブル72のテンションによって引っ張られ、ピン61を中心として時計回りに回動する。操作ハンドル60が回動すると、インナーケーブル72もブレーキパッド部65側へと移動する。
【0054】
インナーケーブル72が移動すると、インナーケーブル72の他端に連結された、ブレーキパッド部65のリンク機構66がピンを中心として時計回りに回動する。リンク機構66が回動すると、リンク機構66のアームと連結されたロッド部67が前方向へと押し出される。ロッド部67が押し出されると、スプリング69によって押圧されたパッド本体68がサイドフレーム12に対して接触した接触状態となる(
図4A参照)。これにより、ブレーキパッド部65によって制動力が発生することで、パレット50の移動が規制される。
【0055】
図2及び
図3に示されるように、パレット50が引出位置まで引き出されると、作業者は、ロック機構57を操作して、パレット50を引出位置P2で固定する。パレット50が引出位置にある状態では、パレット50の拡張領域A2が空間部Sから引き出される。これにより、加工機本体10の右奥側にある部品及び構造物からワークWを離間させることができる。そのため、ワークWと加工機本体10との干渉を抑制することができるので、パレット50にワークWをセットするときのワークWの取り扱いが容易となる。
【0056】
パレット50に対するワークWのセットが完了すると、ユーザはパレット50を正規位置P1まで移動させる。パレット50を引出位置P2から正規位置P1へと移動させる動作は、パレット50を正規位置P1から引出位置P2へと移動させる動作と同じである。よって、パレット50を引出位置P2から正規位置P1へと移動させる動作の説明は省略する。
【0057】
パレット50が正規位置P1まで押し込まれると、パレット50の加工領域A1は、加工範囲Rに位置する(
図1参照)。制御盤100は、ヘッド駆動機構15を制御することで、加工ヘッド30を移動しながら加工範囲Rの中でレーザ加工を行うことができる。これにより、加工領域A1に位置するワークWに対してレーザ加工を行うことができる。
【0058】
このように本実施形態に係るレーザ加工機1によれば、ワークWが載置されるパレット50が移動可能に構成されている。加工機本体10がブレーキ機構5を備えているので、パレット50の移動をブレーキ機構5によって停止させることができる。そのため、パレット50が不意に移動することを抑制することができる。これにより、パレット50と作業者とが接触するといった事態を抑制することができる。
【0059】
本実施形態において、パレット50は、加工ヘッド30が移動してワークWにレーザ加工が行われる加工範囲RにワークWが位置する正規位置P1と、正規位置P1より左方向に沿って引き出された引出位置P2との間で移動する。ブレーキ機構5は、正規位置P1と引出位置P2と間に位置する中間位置においてパレット50の移動を停止させる。
【0060】
この構成によれば、パレット50が自由に移動することができる中間位置において、パレット50の移動をブレーキ機構5によって停止させることができる。これにより、パレット50が不意に移動することを抑制することができる。したがって、パレット50と作業者とが接触するといった事態を抑制することができる。
【0061】
本実施形態において、加工機本体10は、正規位置P1及び引出位置P2のそれぞれでパレット50の固定を行うロック機構57を備えている。パレット50は、ロック機構57によるパレット50の固定が解錠されることで、正規位置P1と引出位置P2との間で移動する。
【0062】
この構成によれば、ロック機構57によるパレット50の固定が解錠されることで、パレット50が自由に移動可能となる。パレット50の自由な移動をブレーキ機構5によって規制することで、パレット50が不意に移動することを抑制することができる。したがって、パレット50と作業者とが接触してしまうといった事態を抑制することができる。
【0063】
本実施形態において、パレット50は、作業者がパレット50を移動させるために把持する把手部55、56を備えている。パレット50は、作業者が把手部55、56を把持してパレット50を動かすことで、正規位置P1と引出位置P2との間で移動する。
【0064】
この構成によれば、作業者の人力によってパレット50を移動させることができる。そのため、ロック機構57によるパレット50の固定が解錠されることで、パレット50が自由に移動可能となってしまう。その点、パレット50の移動をブレーキ機構によって停止させることで、パレット50が不意に移動することを抑制することができる。したがって、パレット50と作業者とが接触するといった事態を抑制することができる。
【0065】
本実施形態において、ブレーキ機構5は、把手部56に設けられ、作業者が把持することで操作力が入力される操作ハンドル60と、パレット50の移動を停止させる制動力を発生するブレーキパッド部65と、操作ハンドル60とブレーキパッド部65との間に接続されて、操作ハンドル60に入力される操作力を伝達することによりブレーキパッド部65を動作させるケーブル部70と、を有している。
【0066】
この構成によれば、操作ハンドル60によってブレーキパッド部65を操作することで、パレット50の移動を停止させることができる。これにより、作業者がパレット50の移動及び停止を任意に切り替えることができるので、ワークWの段取りなどにおいてパレット50が不意に移動することを抑制することができる。また、操作ハンドル60が、パレット50を移動させるための把手部56に取り付けられているため、パレットを50移動させるために把手部56に手をかけた際に、操作ハンドル60を一緒に操作することができる。これにより、作業者は、パレット50を移動する動作の中で、パレット50の停止操作及び解除操作を簡単に行うことができる。
【0067】
本実施形態において、ブレーキパッド部65は、操作ハンドル60に操作力が入力されていない間(期間)において制動力を発生する。
【0068】
この構成によれば、作業者が操作ハンドル60を操作して、操作ハンドル60に操作力を入力しない限り、ブレーキパッド部65が制動力を発生させている。したがって、作業者が操作ハンドル60を操作しない限り、パレット50の移動が規制されたままとなる。作業者が操作ハンドル60を操作した場合にのみ、パレット50が移動可能となるので、パレット50が不意に移動することを抑制することができる。
【0069】
本実施形態において、ブレーキパッド部65は、加工機本体10のサイドフレーム12(フレーム部)に対して接触した接触状態と加工機本体10のサイドフレーム12から離間した離間状態とが切り替え可能に構成される。ブレーキパッド部65は、接触状態において制動力を発生する。
【0070】
この構成によれば、ブレーキパッド部65とサイドフレーム12との摩擦力によって制動力が得られるので、中間位置の中でパレット50の移動を無段階で規制することができる。これにより、作業者が希望する位置でパレット50を停止させることができる。
【0071】
パレット50は、加工範囲RにおいてワークWを支持する加工領域A1と、加工領域A1から左右方向に沿って拡張された拡張領域A2と、を含んでいる。
【0072】
この構成によれば、パレット50のサイズが拡張領域A2まで拡張されている。これより、加工範囲Rに対応するサイズのワーク以外にも、加工範囲Rよりも大きなサイズのワークWをパレット50上に載置することができる。これにより、レーザ加工機1が取り扱うことのできるワークWの自由度を向上させることができる。また、パレット50を引き出すことで、大きいサイズのワークWの段取りを容易に行うことができる。
【0073】
なお、上述した実施形態では、パレット50の拡張領域A2は、開放された領域となっている。しかしながら、加工領域A1と同様に、複数のスキッド52を配列してもよい。また、レーザ光に対する遮光、スパッタの飛散防止の役割を考慮して、拡張領域A2を板状のカバーで覆ってもよい。
【0074】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0075】
1 レーザ加工機
5 ブレーキ機構
10 加工機本体
11 基台
12 サイドフレーム
13 ガイド部材
15 ヘッド駆動機構
16 X軸キャリッジ
17 支柱
18 ビーム
19 Y軸キャリッジ
30 加工ヘッド
50 パレット
51 枠体
51a~51c フレーム部材
51a1、51a2 係合部
52 スキッド
53 クランプ部
55、56 把手部
57 ロック機構
60 操作ハンドル
60a 操作部
60b 接続部
61 ピン
65 ブレーキパッド部
66 リンク機構
67 ロッド部
68 パッド本体
69 スプリング
70 ケーブル部
71 アウターケーブル
72 インナーケーブル
73 ブラケット
100 制御盤
110 レーザ発振器
A1 加工領域
A2 拡張領域
R 加工範囲
S 空間部
W ワーク
P1 正規位置
P2 引出位置