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特許7603002アルミニウム合金ブレージングシート及びその製造方法
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  • 特許-アルミニウム合金ブレージングシート及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】アルミニウム合金ブレージングシート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/28 20060101AFI20241212BHJP
   B23K 35/22 20060101ALI20241212BHJP
   B23K 35/40 20060101ALI20241212BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20241212BHJP
   C22F 1/04 20060101ALN20241212BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20241212BHJP
【FI】
B23K35/28 310B
B23K35/22 310E
B23K35/40 340J
C22C21/00 D
C22C21/00 E
C22F1/04 Z
C22F1/00 614
C22F1/00 623
C22F1/00 627
C22F1/00 630M
C22F1/00 631A
C22F1/00 640A
C22F1/00 651A
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 685Z
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 691Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021512323
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(86)【国際出願番号】 JP2020015339
(87)【国際公開番号】W WO2020204167
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2019071932
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山吉 知樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 太一
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏和
【審査官】鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/065190(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/100793(WO,A1)
【文献】特開平10-180489(JP,A)
【文献】特開2015-058466(JP,A)
【文献】特開2013-220461(JP,A)
【文献】国際公開第2013/168669(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/00 - 35/40
C22C 21/00 - 21/18
C22F 1/04 - 1/057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付に用いられるアルミニウム合金ブレージングシートであって、
心材の少なくとも片面にろう材がクラッドされており、
前記心材は、アルミニウム、又は1.50質量%以下のFe、1.50質量%以下のSi、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn及び0.10質量%以下のSnのうちのいずれか1種又は2種以上を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金心材であり、
前記ろう材は、4.00~13.00質量%のSiと、0.03質量%を超え3.00質量%以下のMg、0.03質量%を超え3.00質量%以下のLi及び0.03質量%を超え3.00質量%以下のCaのうちのいずれか1種又は2種以上と、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金ろう材であり、
ろう付加熱により、ろう付加熱前のろう材側の表面の表面酸化膜に対する体積変化率が0.990以下であるMg、Li及びCaのうちのいずれか1種又は2種以上を含有する酸化物がろう材側の表面に形成されるアルミニウム合金ブレージングシートであり、
ろう付加熱前の該アルミニウム合金ブレージングシートの前記ろう材の表面に形成されている酸化物中の、Alに対するMg、Li及びCaの原子モル比が0.5以下であること、
を特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項2】
前記アルミニウム合金ブレージングシートが、前記心材の片面に前記ろう材がクラッドされている2層材であることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項3】
前記アルミニウム合金ブレージングシートが、前記心材の両面に前記ろう材がクラッドされている3層材であることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項4】
前記アルミニウム合金ブレージングシートが、前記心材の一方の面に前記ろう材がクラッドされており、且つ、前記心材の他方の面に皮材がクラッドされている3層材であり、
該皮材は、アルミニウム、又は6.00質量%以下のZnを含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金皮材であること、
を特徴とする請求項1記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項5】
前記心材が、更に、3.00質量%以下のMg、3.00質量%以下のLi及び3.00質量%以下のCaのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1~4いずれか1項記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項6】
前記心材が、更に、1.00質量%以下のBiを含有することを特徴とする請求項1~5いずれか1項記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項7】
前記ろう材が、更に、1.00質量%以下のBiを含有することを特徴とする請求項1~6いずれか1項記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項8】
前記ろう材が、更に、0.05質量%以下のNa、0.05質量%以下のSr、0.05質量%以下のSb、8.00質量%以下のZn、4.00質量%以下のCu、1.00質量%以下のFe、1.00質量%以下のMn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn及び0.10質量%以下のSnのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1~7いずれか1項記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項9】
前記皮材が、更に、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のMg、5.00質量%以下のSi、1.50質量%以下のFe、1.00質量%以下のCu、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.30質量%以下のCr、0.10質量%以下のIn及び0.10質量%以下のSnのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項4記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項10】
前記アルミニウム合金ブレージングシートのろう材表面に形成されている酸化物の厚さが50nm以下であることを特徴とする請求項1~9いずれか1項記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項11】
(1)ろう材用鋳塊/心材用鋳塊の順に積層した積層物、(2)ろう材用鋳塊/心材用鋳塊/ろう材用鋳塊の順に積層した積層物又は(3)ろう材用鋳塊/心材用鋳塊/皮材用鋳塊の順に積層した積層物に、少なくとも熱間加工と、冷間加工と、を行い、アルミニウム合金ブレージングシートを得るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法であって、
前記心材用鋳塊は、アルミニウム、又は1.50質量%以下のFe、1.50質量%以下のSi、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn及び0.10質量%以下のSnのうちのいずれか1種又は2種以上を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金であり、
前記ろう材用鋳塊は、4.00~13.00質量%のSiと、0.03質量%を超え3.00質量%以下のMg、0.03質量%を超え3.00質量%以下のLi及び0.03質量%を超え3.00質量%以下のCaのうちのいずれか1種又は2種以上と、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金であり、
該皮材用鋳塊は、アルミニウム、又は6.00質量%以下のZnを含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金であり、
冷間加工での圧延のパス間に、酸素濃度が10000ppm以下且つ露点が20℃以下に管理された雰囲気中で、250~450℃で1時間以上加熱する中間焼鈍を行うか、あるいは、最後の冷間加工のパス後に、酸素濃度が10000ppm以下且つ露点が20℃以下に管理された雰囲気中で、250~450℃で1時間以上加熱する最終焼鈍を行うか、あるいは、冷間加工での圧延のパス間と最後の冷間加工のパス後の両方において、酸素濃度が10000ppm以下且つ露点が20℃以下に管理された雰囲気中で、250~450℃で1時間以上加熱する焼鈍を行うこと、
により、
ろう付加熱により、ろう付加熱前のろう材側の表面の表面酸化膜に対する体積変化率が0.990以下であるMg、Li及びCaのうちのいずれか1種又は2種以上を含有する酸化物がろう材側の表面に形成されるアルミニウム合金ブレージングシートであり、
ろう付加熱前の該アルミニウム合金ブレージングシートの前記ろう材の表面に形成されている酸化物中の、Alに対するMg、Li及びCaの原子モル比が0.5以下である
アルミニウム合金ブレージングシートを得ることを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法
【請求項12】
前記心材用鋳塊が、更に、3.00質量%以下のMg、3.00質量%以下のLi及び3.00質量%以下のCaのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項11記載のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法。
【請求項13】
前記心材用鋳塊及び前記ろう材用鋳塊のうちのいずれかが、更に、1.00質量%以下のBiを含有することを特徴とする請求項11又は12記載のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法。
【請求項14】
前記ろう材用鋳塊が、更に、0.05質量%以下のNa、0.05質量%以下のSr、0.05質量%以下のSb、8.00質量%以下のZn、4.00質量%以下のCu、1.00質量%以下のFe、1.00質量%以下のMn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn及び0.10質量%以下のSnのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項11~13いずれか1項記載のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法。
【請求項15】
前記皮材用鋳塊が、更に、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のMg、5.00質量%以下のSi、1.50質量%以下のFe、1.00質量%以下のCu、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.30質量%以下のCr、0.10質量%以下のIn及び0.10質量以下のSnのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項11~14いずれか1項記載のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法。
【請求項16】
中間焼鈍を行う場合には前記中間焼鈍を行った後、最終焼鈍を行う場合には最終焼鈍を行った後、中間焼鈍及び最終焼鈍の両方を行う場合には、前記中間焼鈍を行った後と前記最終焼鈍を行った後のいずれか一方又は両方において、酸性水溶液及びアルカリ性水溶液のうちのいずれか一方又は両方において、酸性水溶液及びアルカリ性水溶液のうちのいずれか一方又は酸性水溶液とアルカリ性水溶液の両方を用いてクラッド材のろう材表面をエッチングすることを特徴とする請求項11~15いずれか1項記載のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのアルミニウム又はアルミニウム合金のろう付に用いられるアルミニウム合金ブレージングシート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム製の熱交換器や機械用部品など、細かな接合部を多数有するアルミニウム製品の接合方法としてろう付接合が広く用いられている。アルミニウム又はアルミニウム合金をろう付接合するには、表面を覆っている酸化皮膜を破壊して、溶融したろう材を露出させ、母材あるいは同じく溶融したろう材に濡れを生じさせることが必須であり、酸化皮膜を破壊するためには、大別して窒素ガス炉中でフラックスを使用する方法と真空加熱炉中でフラックスを使用しない方法とがあり、いずれも実用化されている。
【0003】
窒素ガス炉中でフラックスを使用する方法では、ろう付加熱中にフラックスが酸化皮膜と反応し、酸化皮膜を破壊する。しかしながら、フラックスの費用およびフラックスを塗布する工程の費用が嵩む問題がある。また、フラックスが不均一に塗布された場合、ろう付不良が発生するリスクがある。一方、真空加熱炉中でフラックスを使用しない方法は、Al―Si-Mg系合金からなるろう材が用いられ、真空中での加熱によりろう材中のMg蒸発し、材料表面の酸化皮膜を破壊する。しかしながら、高価な真空加熱設備が必要であるという欠点がある。また、蒸発したMgが炉内に付着するため、付着したMgを除去するメンテナンス費も高いという問題がある。そこで、窒素ガス炉中でフラックスを使用しないで接合するニーズが高まっている。
【0004】
こうしたニーズに応えるため、例えば、特許文献1では、ろう材中にMgを含有させることで、面接合が可能になると提案している。また、特許文献2では、心材中にMgを含有させ、ろう付加熱中にろう材中へMgを拡散させることで、単純なフィン/チューブ継手でフィレット形成が可能になると提案している。さらに、特許文献2には、ろう材に含まれるSi粒子の円相当径と数を制限するとともに、ろう材とろう付対象部材とを接触密着させることにより良好なフラックスフリーろう付性を得られることが開示されている。しかしながら、これらの手法では隙間を有する継手において、フラックス塗布なしでは十分なフィレットを形成することができない。すなわち、これらの手法は、酸化皮膜をMgによって粒子状にバラバラにした後、溶融したろう材と酸化皮膜の熱膨張差あるいはろうの流動などの外力によって、溶融したろう材の新生面を露出させ、濡れを生じさせる。このため、これらの手法では、フィレット切れをともなう歪なフィレットを形成してしまう。
【0005】
また、特許文献3では、ろう付加熱前の酸化皮膜上に存在するMgO皮膜の厚さを抑制することが有効であると提案している。しかしながら、ろう材に0.1質量%以上のMgを含有する特許文献3では、実践的な継手においては、ろう付加熱中にMgO系皮膜が部分的に形成し、フィレットの形成を阻害することで、フィレット切れが生じてしまう。一方、特許文献4では、ろう材に0.05質量%以上のMgを含有した材料において、ろう付加熱前に酸洗処理を施すことで、MgO系皮膜を除去し、フラックスレスでろう付可能にする手法を提案している。しかしながら、特許文献1と同じく、ろう付加熱中のMgO系皮膜の形成を十分には抑制できない。
【0006】
そこで、特許文献5では、ろう付加熱前の酸化皮膜に対する体積変化率が0.99以下であるX元素(Xは、Mg、Li、Be、Ca、Ce、La、Y及びZrである。)を含有する酸化物粒子が、表面に形成されるブレージングシートが提案され、すき間のあるより実践的な継手に対してろう付性を高めているが、実際の熱交換器のすき間はより大きいために、ろう付性として十分でない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-215797号公報
【文献】特許4547032号公報
【文献】特開2004-358519号公報
【文献】特開平11-285817号公報
【文献】特開2017-074609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付において、熱交換器の各部材間の接触密着部だけでなく、すき間が大きい場合においても優れたろう付性を有するアルミニウム合金ブレージングシート及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下に示す本発明により解決される。
すなわち、本発明(1)は、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付に用いられるアルミニウム合金ブレージングシートであって、
心材の少なくとも片面にろう材がクラッドされており、
前記心材は、アルミニウム、又は1.50質量%以下のFe、1.50質量%以下のSi、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn及び0.10質量%以下のSnのうちのいずれか1種又は2種以上を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金心材であり、
前記ろう材は、4.00~13.00質量%のSiと、0.03質量%を超え3.00質量%以下のMg、0.03質量%を超え3.00質量%以下のLi及び0.03質量%を超え3.00質量%以下のCaのうちのいずれか1種又は2種以上と、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金ろう材であり、
ろう付加熱により、ろう付加熱前のろう材側の表面の表面酸化膜に対する体積変化率が0.990以下であるMg、Li及びCaのうちのいずれか1種又は2種以上を含有する酸化物がろう材側の表面に形成されるアルミニウム合金ブレージングシートであり、
ろう付加熱前の該アルミニウム合金ブレージングシートの前記ろう材の表面に形成されている酸化物中の、Alに対するMg、Li及びCaの原子モル比が0.5以下であること、
を特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【0010】
また、本発明(2)は、前記アルミニウム合金ブレージングシートが、前記心材の片面に前記ろう材がクラッドされている2層材であることを特徴とする(1)のアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【0011】
また、本発明(3)は、前記アルミニウム合金ブレージングシートが、前記心材の両面に前記ろう材がクラッドされている3層材であることを特徴とする(1)のアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【0012】
また、本発明(4)は、前記アルミニウム合金ブレージングシートが、前記心材の一方の面に前記ろう材がクラッドされており、且つ、前記心材の他方の面に皮材がクラッドされている3層材であり、
該皮材は、アルミニウム、又は6.00質量%以下のZnを含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなるアルミニウム合金皮材であること、
を特徴とする(1)のアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【0013】
また、本発明(5)は、前記心材が、更に、3.00質量%以下のMg、3.00質量%以下のLi及び3.00質量%以下のCaのうち、いずれか1種又は2種以上を含有する(1)~(4)いずれかのアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【0014】
また、本発明(6)は、前記心材が、更に、1.00質量%以下のBiを含有することを特徴とする(1)~(5)いずれかのアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【0015】
また、本発明(7)は、前記ろう材が、更に、1.00質量%以下のBiを含有することを特徴とする(1)~(6)いずれかのアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【0016】
また、本発明(8)は、前記ろう材が、更に、0.05質量%以下のNa、0.05質量%以下のSr、0.05質量%以下のSb、8.00質量%以下のZn、4.00質量%以下のCu、1.00質量%以下のFe、1.00質量%以下のMn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn及び0.10質量%以下のSnのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴とする(1)~(7)いずれかのアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【0017】
また、本発明(9)は、前記皮材が、更に、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のMg、5.00質量%以下のSi、1.50質量%以下のFe、1.00質量%以下のCu、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.30質量%以下のCr、0.10質量%以下のIn及び0.10質量%以下のSnのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴とする(4)~(8)いずれかのアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【0018】
また、本発明(10)は、前記アルミニウム合金ブレージングシートのろう材表面に形成されている酸化物の厚さが50nm以下であることを特徴とする(1)~(9)いずれかのアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【0019】
また、本発明(11)は、(1)ろう材用鋳塊/心材用鋳塊の順に積層した積層物、(2)ろう材用鋳塊/心材用鋳塊/ろう材用鋳塊の順に積層した積層物又は(3)ろう材用鋳塊/心材用鋳塊/皮材用鋳塊の順に積層した積層物に、少なくとも熱間加工と、冷間加工と、を行い、アルミニウム合金ブレージングシートを得るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法であって、
前記心材用鋳塊は、アルミニウム、又は1.50質量%以下のFe、1.50質量%以下のSi、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn及び0.10質量%以下のSnのうちのいずれか1種又は2種以上を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金であり、
前記ろう材用鋳塊は、4.00~13.00質量%のSiと、0.03質量%を超え3.00質量%以下のMg、0.03質量%を超え3.00質量%以下のLi及び0.03質量%を超え3.00質量%以下のCaのうちのいずれか1種又は2種以上と、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金であり、
該皮材用鋳塊は、アルミニウム、又は6.00質量%以下のZnを含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金あり、
冷間加工での圧延のパス間に、酸素濃度が10000ppm以下且つ露点が20℃以下に管理された雰囲気中で、250~450℃で1時間以上加熱する中間焼鈍を行うか、あるいは、最後の冷間加工のパス後に、酸素濃度が10000ppm以下且つ露点が20℃以下に管理された雰囲気中で、250~450℃で1時間以上加熱する最終焼鈍を行うか、あるいは、冷間加工での圧延のパス間と最後の冷間加工のパス後の両方において、酸素濃度が10000ppm以下且つ露点が20℃以下に管理された雰囲気中で、250~450℃で1時間以上加熱する焼鈍を行うこと、
により、
ろう付加熱により、ろう付加熱前のろう材側の表面の表面酸化膜に対する体積変化率が0.990以下であるMg、Li及びCaのうちのいずれか1種又は2種以上を含有する酸化物がろう材側の表面に形成されるアルミニウム合金ブレージングシートであり、
ろう付加熱前の該アルミニウム合金ブレージングシートの前記ろう材の表面に形成されている酸化物中の、Alに対するMg、Li及びCaの原子モル比が0.5以下である
アルミニウム合金ブレージングシートを得ることを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法を提供するものである。
【0020】
また、本発明(12)は、前記心材用鋳塊が、更に、3.00質量%以下のMg、3.00質量%以下のLi及び3.00質量%以下のCaのうち、いずれか1種又は2種以上を含有する(11)のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法を提供するものである。
【0021】
また、本発明(13)は、前記心材用鋳塊及び前記ろう材用鋳塊のうちのいずれかが、更に、1.00質量%以下のBiを含有することを特徴とする(11)又は(12)のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法を提供するものである。
【0022】
また、本発明(14)は、前記ろう材用鋳塊が、更に、0.05質量%以下のNa、0.05質量%以下のSr、0.05質量%以下のSb、8.00質量%以下のZn、4.00質量%以下のCu、1.00質量%以下のFe、1.00質量%以下のMn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn及び0.10質量%以下のSnのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴とする(11)~(13)いずれかのアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法を提供するものである。
【0023】
また、本発明(15)は、前記皮材用鋳塊が、更に、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のMg、5.00質量%以下のSi、1.50質量%以下のFe、1.00質量%以下のCu、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.30質量%以下のCr、0.10質量%以下のIn及び0.10質量%以下のSnのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴とする(11)~(14)いずれかのアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法を提供するものである。
【0024】
また、本発明(16)は、中間焼鈍を行う場合には前記中間焼鈍を行った後、最終焼鈍を行う場合には最終焼鈍を行った後、中間焼鈍及び最終焼鈍の両方を行う場合には、前記中間焼鈍を行った後と前記最終焼鈍を行った後のいずれか一方か両方において、酸性水溶液及びアルカリ性水溶液のうちのいずれか一方又は酸性水溶液とアルカリ性水溶液の両方を用いてクラッド材のろう材表面をエッチングすることを特徴とする(11)~(15)いずれかのアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付において、優れたろう付性を有するアルミニウム合金ブレージングシート及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施例及び比較例におけるすき間充填試験片の組付けを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
Mg、Li及びCaは、ろう付加熱中に、ろう材の表面に形成されている皮膜状の酸化物を破壊し、効果的に溶融ろう材の新生面を露出させる。そして、Mg、Li及びCaは、酸化物生成エネルギーがAlより小さいため、ろう付加熱中に、Alを主成分とする皮膜状の酸化物を還元し、粒子状のMg、Li及びCaを含有する酸化物を形成させる。特に、ブレージングシートのろう材がMg、Li及びCaのうちのいずれか1種又は2種以上を0.03質量%を超えて含有することにより、ブレージングシートが接合される相手材(例えば3003材)へ、Mg、Li及びCaが十分に表層拡散し、相手材の3003材にもMg、Li及びCaのうちのいずれか1種又は2種以上を含有する酸化物粒子が形成される。そのことにより、相手材表面の酸化物の体積変化が生じ、隙間の大きい継手においても、良好なろう付性が得られる。
【0028】
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付に用いられるアルミニウム合金ブレージングシートであって、
心材の少なくとも片面にろう材がクラッドされており、
前記心材は、アルミニウム、又は1.50質量%以下のFe、1.50質量%以下のSi、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn及び0.10質量%以下のSnのうちのいずれか1種又は2種以上を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金心材であり、
前記ろう材は、4.00~13.00質量%のSiと、0.03質量%を超え3.00質量%以下のMg、0.03質量%を超え3.00質量%以下のLi及び0.03質量%を超え3.00質量%以下のCaのうちのいずれか1種又は2種以上と、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金ろう材であり、
ろう付加熱により、ろう付加熱前の表面酸化膜に対する体積変化率が0.990以下であるMg、Li及びCaのうちのいずれか1種又は2種以上を含有する酸化物が表面に形成されるアルミニウム合金ブレージングシートであり、
ろう付加熱前の該アルミニウム合金ブレージングシートの表面に形成されている酸化物中の、Alに対するMg、Li及びCaの原子モル比が0.5以下であること、
を特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートである。
【0029】
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付に用いられるアルミニウム合金ブレージングシートである。本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、以下に示す化学組成を有する心材の少なくとも片面に、以下に示す化学組成のろう材がクラッドされいるクラッド材である。本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、(1)心材の片面にろう材がクラッドされている2層材、(2)心材の両面にろう材がクラッドされている3層材、又は(3)心材の一方の面にろう材がクラッドされており且つ心材の他方の面に皮材がクラッドされている3層材である。
【0030】
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートに係る心材は、アルミニウム、又は1.50質量%以下のFe、1.50質量%以下のSi、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn及び0.10質量%以下のSnのうちのいずれか1種又は2種以上を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金心材である。
【0031】
心材がアルミニウムにより形成されている場合、アルミニウムの純度は、特に制限されないが、好ましくは99.0質量%以上、特に好ましくは99.5質量%以上である。
【0032】
心材を形成するアルミニウム合金において、Feは強度向上に寄与する。心材がFeを含有する場合、心材中のFe含有量は、1.50質量%以下、好ましくは0.10~0.70質量%、特に好ましくは0.20~0.60質量%である。心材中のFe含有量が上記範囲にあることにより、心材の強度が高くなる。一方、心材中のFe含有量が、上記範囲を超えると、耐食性が低くなるとともに巨大析出物が発生し易くなる。
【0033】
心材を形成するアルミニウム合金において、Siは強度向上に寄与する。心材がSiを含有する場合、心材中のSi含有量は、1.50質量%以下、好ましくは0.10~1.00質量%、特に好ましくは0.30~0.75質量%である。心材中のSi含有量が上記範囲にあることにより、心材の強度が高くなる。一方、心材中のSi含有量が上記範囲を超えると、融点が低くなり過ぎてしまい、ろう付時に局部溶融が生じ、心材に変形を生ぜしめ耐食性が低くなる。
【0034】
心材を形成するアルミニウム合金において、Cuは強度向上と電位調整に寄与する。心材がCuを含有する場合、心材中のCu含有量は、2.00質量%以下、好ましくは0.10~1.00質量%、特に好ましくは0.15~0.80質量%である。心材中のCu含有量が上記範囲にあることにより、心材の強度が高くなる。一方、心材中のCu含有量が上記範囲を超えると、粒界腐食が発生し易くなり、融点が低くなり過ぎる。
【0035】
心材を形成するアルミニウム合金において、Mnは強度向上と電位調整に寄与する。心材がMnを含有する場合、心材中のMn含有量は、2.00質量%以下、好ましくは0.30~1.80質量%、特に好ましくは0.30~1.50質量%である。心材中のMn含有量が上記範囲にあることにより、心材の強度が高くなり、電位調整効果が得られる。心材中のMn含有量が上記範囲を超えると、材料圧延時に割れが生じ易くなる。
【0036】
心材を形成するアルミニウム合金において、Znは電位調整に寄与する。心材がZnを含有する場合、心材中のZn含有量は、3.00質量%以下、好ましくは0.50~3.00質量%、特に好ましくは1.50~3.00質量%である。心材中のZn含有量が上記範囲にあることにより、電位調整効果が得られる。一方、心材中のZn含有量が上記範囲を超えると、自然電極電位が低くなり過ぎてしまい耐食性が低下する。
【0037】
心材を形成するアルミニウム合金において、Crは固溶強化により強度を向上させ、また、Al-Cr系の微細化合物を析出させ、ろう付後の結晶粒粗大化に作用する。心材中のCr含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%である。心材中のCr含有量が上記範囲にあることにより、心材の強度が高くなる。一方、心材中のCr含有量が上記範囲を超えると鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり、塑性加工性が低くなる。
【0038】
心材を形成するアルミニウム合金において、Tiは固溶強化により強度を向上させ、また、層状に分布して心材中に電位の高い層と低い層を形成することで、腐食形態が孔食から層状になり耐食性を向上させる効果を発揮する。心材中のTi含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%、特に好ましくは0.12~0.18質量%である。心材中のTi含有量が上記範囲にあることにより、心材の強度が高くなり、耐食性が高くなる。一方、心材中のTi含有量が上記範囲を超えると鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり、塑性加工性が低くなる。
【0039】
心材を形成するアルミニウム合金において、Zrは固溶強化により強度を向上させ、また、Al-Zr系の微細化合物を析出させ、ろう付後の結晶粒粗大化に作用する。心材中のZr含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%である。心材中のZr含有量が上記範囲にあることにより、心材の強度が高くなり、ろう付後の結晶粒粗大化の効果が得られる。一方、心材中のZr含有量が上記範囲を超えると鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり、塑性加工性が低くなる。
【0040】
心材を形成するアルミニウム合金において、Inは電位調整に寄与する。心材がInを含有する場合、心材中のIn含有量は0.10質量%以下、好ましくは0.01~0.03質量%である。心材中のIn含有量が上記範囲にあることにより、電位調整効果が得られる。一方、心材中のIn含有量が上記範囲を超えると、自然電極電位が低くなり過ぎてしまい耐食性が低下する。
【0041】
心材を形成するアルミニウム合金において、Snは電位調整に寄与する。心材がSnを含有する場合、心材中のSn含有量は0.10質量%以下、好ましくは0.01~0.10質量%である。心材中のSn含有量が上記範囲にあることにより、電位調整効果が得られる。一方、心材中のSn含有量が上記範囲を超えると、自然電極電位が低くなり過ぎてしまい耐食性が低くなる。
【0042】
心材は、Biを含有することができる。心材を形成するアルミニウム合金において、Biは、ろう付加熱中にろう材が溶融し心材の一部を溶融せしめた場合に、ろう材のBi濃度の低下を抑制するように作用し、Al-Si溶融ろうの表面張力を低下させる効果を発揮する。心材がBiを含有する場合、心材中のBi含有量は、1.00質量%以下、好ましくは0.10~1.00質量%である。心材中のBi含有量が上記範囲にあることにより、ろう材中に溶融して表面張力を低下させる効果が得られる。一方、心材中のBi含有量が上記範囲を超えると、材料の圧延が困難となる。
【0043】
心材は、Mg、Li及びCaのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することができる。心材がMgを含有する場合、心材中のMg含有量は、3.00質量%以下、好ましくは0.10~1.80質量%である。心材がLiを含有する場合、心材中のLi含有量は、3.00質量%以下、好ましくは0.10~1.80質量%である。心材がCaを含有する場合、心材中のCa含有量は、3.00質量%以下、好ましくは0.10~1.80質量%である。心材中のMg、Li又はCaの含有量が上記範囲にあることにより、ろう付加熱中にろう材が溶融し心材の一部を溶融せしめた場合に、ろう材のMg、Li、又はCaの濃度の低下を抑制するように作用し、ろう材表面でMg、Li又はCaが酸化されて形成される酸化物の体積変化率が0.990以下になり、Mg、Li又はCaによるブレージングシート及び相手材の酸化皮膜の破壊効果が高まり、優れたろう付性が得られる。一方、心材中のMg、Li又はCaの含有量が上記範囲を超えると、心材の融点が下がり過ぎるため、ろう付加熱時に心材に局所溶融が生じてしまい、心材が変形し、溶融ろうによる心材への浸食が発生して、ろう付接合性や耐腐食性が低下する。
【0044】
心材は、不可避的不純物として、0.05質量%以下のAg、B、Be、Cd、Co,Ga、Ge、Mo、Na、Ni、P、Pb、Sr、V、Hg、Yを含んでいてもよい。
【0045】
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートに係るろう材は、
(i)4.0~13.0質量%のSiと、
(ii)0.03質量%を超え3.00質量%以下のMg、0.03質量%を超え3.00質量%以下のLi及び0.03質量%を超え3.00質量%以下のCaのうちのいずれか1種又は2種以上と、
を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金ろう材である。
【0046】
ろう材は、必須の元素としてSiを含有する。ろう材中のSi含有量は、4.00~13.00質量%、特に好ましくは4.50~12.00質量%である。ろう材中のSi含有量が、上記範囲にあることにより、ろう付接合に必要な十分な液相が得られる。一方、心材中のSi含有量が、上記範囲未満だと液相量が不足し、また、上記範囲を超えると、材料製造時に割れが発生し易くなり、ブレージングシートの製造が困難となる。
【0047】
ろう材は、Mg、Li及びCaのうちのいずれか1種又は2種以上を含有する。
【0048】
ろう材がMgを含有する場合、ろう材中のMg含有量は、0.03質量%を超え3.00質量%以下、好ましくは0.10~1.80質量%、特に好ましくは0.60~1.20質量%である。ろう材がLiを含有する場合、ろう材中のLi含有量は、0.03質量%を超え3.00質量%以下、好ましくは0.04~1.80質量%、特に好ましくは0.10~1.80質量%である。ろう材がCaを含有する場合、ろう材中のCa含有量は、0.03質量%を超え3.00質量%以下、好ましくは0.05~1.80質量%、特に好ましくは0.10~1.80質量%である。ろう材中のMg、Li又はCaの含有量が上記範囲にあることにより、ろう付加熱中にMg、Li又はCaが酸化されて形成される酸化物の体積変化率が0.990以下になり、Mg、Li又はCaによるブレージングシート及び相手材の酸化皮膜の破壊効果が高まり、優れたろう付性が得られる。一方、心材中のMg、Li及びCaの含有量が、上記範囲未満だと、Mg、Li及びCaによる当該ブレージングシート及び相手材の酸化皮膜の破壊効果が乏しくなり、また、上記範囲を超えると、ろう付加熱中にMg、Li及びCaの酸化が進み、体積変化率が0.990を超える酸化物が形成される。
【0049】
ろう材は、Biを含有することができる。ろう材を形成するアルミニウム合金において、Biは、Al-Si溶融ろうの表面張力を低下させる効果を発揮する。ろう材がBiを含有する場合、ろう材中のBi含有量は、1.00質量%以下、好ましくは0.50質量%以下、より好ましくは0.05~0.40質量%、特に好ましくは0.10~0.30質量%である。ろう材中のBi含有量が上記範囲にあることにより、表面張力を低下させる効果が得られ易くなる。一方、ろう材中のBi含有量が、上記範囲を超えると、ろう付後のろう材表面が黒変し、ろう付性が低くなる。
【0050】
ろう材は、Na、Sr及びSbのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することができる。ろう材を形成するアルミニウム合金において、Na、Sr、Sbは、ろう材中のSi粒子を微細化させ、ろうの流動性を高める効果を発揮する。ろう材がNaを含有する場合、ろう材中のNa含有量は、0.05質量%以下、好ましくは0.005~0.04質量%、特に好ましくは0.007~0.04質量%である。ろう材がSrを含有する場合、ろう材中のSr含有量は、0.05質量%以下、好ましくは0.005~0.04質量%、特に好ましくは0.005~0.02質量%である。ろう材がSbを含有する場合、ろう材中のSb含有量は、0.05質量%以下、好ましくは0.005~0.04質量%である。
【0051】
ろう材は、Zn及びCuのうちのいずれか1種又は2種を含有することができる。ろう材を形成するアルミニウム合金において、ZnとCuは、ろう材の融点を低下し、一般的なろう付温度である600℃よりも低い温度でのろう付を可能とする。ろう材がZnを含有する場合、ろう材中のZn含有量は、ろう材の融点を低下させる効果が得られ易くなる点で、8.00質量%以下が好ましく、1.00~8.00質量%がより好ましく、2.00~8.00質量%が特に好ましく、3.00~5.00質量%が更に好ましい。一方、ろう材中のZn含有量が8.00質量%を超えると、冷間圧延途中にろう材に割れが生じ、健全な板材が得られない。また、ろう材がZnを含有する場合、ろう材の電位を卑にして、心材に対して優先的に腐食することで心材を防食する効果が得られ易くなる点で、ろう材中のZn含有量が3.00質量%以下であることが好ましい。また、ろう材がCuを含有する場合、ろう材中のCu含有量は、4.00質量%以下、好ましくは0.50~4.00質量%、特に好ましくは1.00~2.50質量%である。ろう材中のCu含有量が上記範囲にあることにより、ろう材の融点を低下させる効果が高まる。一方、ろう材中のCu含有量が上記範囲を超えると、冷間圧延途中にろう材に割れが生じ、健全な板材が得られない。
【0052】
ろう材はFeを含有することができる。ろう材を形成するアルミニウム合金において、FeはAl-Fe系の比較的粗な化合物を晶出させ、ろう付後のろう材の結晶粒微細化に作用する。ろう材がFeを含有する場合、ろう材中のFe含有量は、1.00質量%以下、好ましくは0.10~0.50質量%、特に好ましくは0.20~0.50質量%である。ろう材中のFe含有量が上記範囲にあることにより、結晶粒微細化の効果が得られ易くなる。一方、ろう材中のFe含有量が上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり塑性加工性が低くなる。
【0053】
ろう材は、Mn、Cr、Ti及びZrのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することができる。ろう材を形成するアルミニウム合金において、Mn、Cr、Ti、Zrは、それぞれ、Al-Mn系、Al-Cr系、Al-Ti系、Al-Zr系の微細化合物を析出させ、ろう付後の結晶粒粗大化に作用する。ろう材がMnを含有する場合、ろう材中のMnの含有量は、1.00質量%以下、好ましくは0.10~0.60質量%である。ろう材中のMn含有量が上記範囲にあることにより、結晶粒粗大化の効果が得られ易くなる。一方、ろう材中のMn含有量が上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり、塑性加工性が低くなる。ろう材がCrを含有する場合、ろう材中のCrの含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.01~0.03質量%である。ろう材中のCr含有量が上記範囲にあることにより、結晶粒粗大化の効果が得られ易くなる。一方、ろう材中のCr含有量が上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり、塑性加工性が低くなる。ろう材がTiを含有する場合、ろう材中のTiの含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10質量%以下、特に好ましくは0.01~0.03質量%である。ろう材中のTi含有量が上記範囲にあることにより、結晶粒粗大化の効果が得られ易くなる。一方、ろう材中のTi含有量が上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり、塑性加工性が低くなる。ろう材がZrを含有する場合、ろう材中のZrの含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.01~0.03質量%である。ろう材中のZr含有量が上記範囲にあることにより、結晶粒粗大化の効果が得られ易くなる。一方、ろう材中のZr含有量が上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり、塑性加工性が低くなる。上記作用を利用して、ろう付後の結晶粒径を調整するが、上記範囲であれば、本発明の効果を十分得ることができる。
【0054】
ろう材は、Inを含有することができる。ろう材を形成するアルミニウム合金において、Inはろう材の電位を卑にして、心材に対して優先的に腐食することで心材を防食する効果を発揮する。ろう材がInを含有する場合、ろう材中のIn含有量は、0.10質量%以下、好ましくは0.01~0.03質量%、特に好ましくは0.02~0.03質量%である。ろう材中のIn含有量が上記範囲にあることにより、電位調整の効果が得られ易くなる。一方、ろう材中のIn含有量が上記範囲を超えると、自然電極電位が低くなり過ぎてしまい耐食性が低下する。
【0055】
ろう材はSnを含有することができる。ろう材を形成するアルミニウム合金において、Snはろう材の電位を卑にして、心材に対して優先的に腐食することで心材を防食する効果を発揮する。ろう材がSnを含有する場合、ろう材中のSn含有量は、0.10質量%以下、好ましくは0.01~0.05質量%である。ろう材中のSn含有量が上記範囲にあることにより、電位調整の効果が得られ易くなる。一方、ろう材中のSn含有量が上記範囲を超えると、自然電極電位が低くなり過ぎてしまい耐食性が低下する。
【0056】
ろう材は、不可避的不純物として、0.05質量%以下のAg、B、Be、Cd、Co、Ga、Ge、Mo、Ni、P、Pb、V、Hg、Yを含んでいてもよい。
【0057】
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートに係る皮材は、アルミニウム、又は6.00質量%以下のZnを含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなアルミニウム合金皮材である。本発明のアルミニウム合金ブレージングシートおいて、皮材がクラッドされていることにより、皮材の犠牲防食効果によって、ろう付後のアルミニウム製品の耐食性をより向上させることができる。本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、ろう材側の表面において、ろう付加熱中に、ろう付加熱前の表面酸化膜に対するろう付加熱後の体積変化率が0.990以下、好ましくは0.700~0.970、より好ましくは0.700~0.950、特に好ましくは0.800~0.900であるMg、Li及びCaのうち1種又は2種以上を含有する酸化物を形成することにより、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付加熱において、ろう材の新生面が露出するので、優れたろう付性を有する。そのため、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、心材のろう材とは反対側の面に皮材がクラッドされていても、皮材がクラッドされていなくても、上記本発明の効果を奏する。
【0058】
皮材がアルミニウムにより形成されている場合、アルミニウムの純度は、特に制限されないが、好ましくは99.0質量%以上、特に好ましくは99.5質量%以上である。
【0059】
皮材がZnを含有するアルミニウム合金により形成されている場合、皮材中のZn含有量は、6.00質量%以下、好ましくは3.00質量%以下である。皮材中のZn含有量が上記範囲にあることにより、犠牲防食効果が高くなる。一方、皮材中のZn含有量が上記範囲を超えると、皮材の電位が過度に低下し、腐食の進行が早まるおそれがある。
【0060】
皮材はMnを含有することができる。皮材を形成するアルミニウム合金において、Mnは強度向上に寄与する。皮材がMnを含有する場合、皮材中のMn含有量は、2.00質量%以下、好ましくは0.30~1.80質量%である。皮材中のMn含有量が上記範囲にあることにより、強度向上の効果が得られ易くなる。一方、皮材中のMn含有量が上記範囲を超えると、材料圧延時に割れが生じ易くなる。
【0061】
皮材はMgを含有することができる。皮材を形成するアルミニウム合金において、Mgは強度向上に寄与する。皮材がMgを含有する場合、皮材中のMg含有量は、3.00質量%以下、好ましくは0.30~1.80質量%、特に好ましくは0.40~1.80質量%である。皮材中のMg含有量が上記範囲にあることにより、強度向上の効果が得られ易くなる。一方、皮材中のMg含有量が上記範囲を超えると、材料圧延時に割れが生じ易くなる。
【0062】
皮材はSiを含有することができる。皮材を形成するアルミニウム合金において、Siは強度向上に寄与する。皮材がSiを含有する場合、皮材中のSi含有量は、5.00質量%以下、好ましくは0.10~1.50質量%、より好ましくは0.10~1.00質量%、特に好ましくは0.20~1.00質量%である。皮材中のSi含有量が上記範囲にあることにより、皮材の強度が高くなる。また、皮材中のSi含有量は、1.50~5.00質量%、特に好ましくは2.50~4.50質量%であり、Si含有量が1.50~5.00%の範囲ではろう付加熱中に半溶融状態となり、微量の液相ろうを供給して、皮材面がろう付面となった場合にろう付性を高める。皮材中のSi含有量が上記範囲を超えると、融点が低くなり過ぎてしまい、ろう付時に溶融が生じ、皮材に変形を生じる。
【0063】
皮材はFeを含有することができる。皮材を形成するアルミニウム合金において、Feは強度向上に寄与する。皮材がFeを含有する場合、皮材中のFe含有量は、1.50質量%以下、好ましくは0.10~0.70質量%、特に好ましくは0.10~0.50質量%である。皮材中のFe含有量が上記範囲にあることにより、強度向上の効果が得られ易くなる。一方、皮材中のFe含有量が上記範囲を超えると、耐食性が低くなるとともに巨大析出物が発生し易くなる。
【0064】
皮材はCuを含有することができる。皮材を形成するアルミニウム合金において、Cuは強度向上に寄与する。皮材がCuを含有する場合、皮材中のCu含有量は、1.00質量%以下、好ましくは0.10~1.00質量%である。皮材中のCu含有量が上記範囲にあることにより、強度向上の効果が得られ易くなる。一方、皮材中のCu含有量が上記範囲を超えると、粒界腐食が発生し易くなる。
【0065】
皮材はTi、Zr及びCrのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することができる。皮材を形成するアルミニウム合金において、Ti、ZrとCrは、固溶強化により強度を向上させる効果を発揮する。皮材がTiを含有する場合、皮材中のTi含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%である。皮材がZrを含有する場合、皮材中のZr含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%である。皮材がCrを含有する場合、皮材中のCr含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%である。皮材中のTi、Zr又はCrが上記範囲にあることにより、強度向上の効果が得られ易くなる。一方、皮材中のTi、Zr又はCrが上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり、塑性加工性が低くなる。
【0066】
皮材はInを含有することができる。皮材を形成するアルミニウム合金において、Inは皮材の電位を卑にして、心材に対して優先的に腐食することで心材を防食する効果を有する。皮材がInを含有する場合、皮材中のIn含有量は、0.10質量%以下、好ましくは0.01~0.03質量%である。皮材中のIn含有量が上記範囲にあることにより、電位調整の効果が得られ易くなる。一方、皮材中のIn含有量が上記範囲を超えると、自然電極電位が低くなり過ぎてしまい耐食性が低下する。
【0067】
皮材はSnを含有することができる。皮材を形成するアルミニウム合金において、Snは皮材の電位を卑にして、心材に対して優先的に腐食することで心材を防食する効果を有する。皮材がSnを含有する場合、皮材中のSn含有量は、0.10質量%以下、好ましくは0.01~0.05質量%である。皮材中のSn含有量が上記範囲にあることにより、電位調整の効果が得られ易くなる。一方、皮材中のSn含有量が上記範囲を超えると、自然電極電位が低くなり過ぎてしまい耐食性が低下する。
【0068】
皮材は、不可避的不純物として、0.05質量%以下のAg、B、Be、Bi、Ca、Cd、Co、Ga、Ge、Li、Mo、Na、Ni、P、Pb、Sr、V、Hgを含んでいてもよい。
【0069】
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付加熱により、ろう付加熱前の表面酸化膜に対する体積変化率が0.990以下、好ましくは0.700~0.970、より好ましくは0.700~0.950、特に好ましくは0.800~0.900であるMg、Li及びCaのうちのいずれか1種又は2種以上を含有する酸化物粒子が表面に形成されるアルミニウム合金ブレージングシートである。フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付加熱において、ろう付加熱前の表面酸化物に対するろう付加熱後のMg、Li及びCaを含有する酸化物の体積変化率が上記範囲内であり、且つ、粒子状であるMg、Li及びCaを含有する酸化物が形成されることにより、ろう付加熱のときに、ろう材の新生面が効果的に露出されるので、アルミニウム合金ブレージングシートが優れたろう付性を有する。
【0070】
一方、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付加熱において、ろう付加熱前の表面酸化膜に対するろう付加熱後のMg、Li及びCaのうち1種又は2種以上を含有する酸化物の体積変化率が上記範囲内より大きくなると、ろう付加熱のときに、ろう材の新生面が露出し難くなる。なお、本発明において、ろう付加熱により形成されるMg、Li及びCaのうち1種又は2種以上を含有する酸化物の体積変化率とは、ろう付前のろう材表面に形成されている酸化皮膜に対する体積変化率であり、「ろう付加熱により形成されるMg、Li及びCaのうち1種又は2種以上を含有する酸化物粒子の酸素原子1つ当たりの体積/ろう付前のろう材表面に形成されている酸化皮膜の酸素原子1つ当たりの体積」の式で求められる値である。式中、酸素原子1つ当たりの体積は、酸化物の分子量を酸化物の密度で除することにより計算される。
【0071】
Mg、Li及びCaは、酸化物生成自由エネルギーがAlより小さく、酸化皮膜を還元することができるだけでなく、体積変化率が0.990以下の酸化物を形成することができるため、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付加熱において、ろう付加熱のときに、ろう材の新生面が露出するために有効な含有元素である。例えば、MgOの体積変化率は0.994であるが、MgAlの体積変化率は0.863と、0.990より小さい。一方、Ba、Th、Ndなどは、酸化物生成自由エネルギーがAlより小さい元素ではあるものの、体積変化率が0.990以下となる酸化物が存在しないため、有効な含有元素ではない。例えば、Baを含有する酸化物であるBaO、BaAlの体積変化率は、それぞれ2.366、1.377であり、Baには体積変化率が0.990以下となる酸化物が存在しない。
【0072】
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートのろう材の表面には、酸化皮膜が形成されている。そして、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートのろう材の表面に形成されている酸化皮膜のAlに対するMg、Li及びCaそれぞれの原子換算のモル比は、0.50以下である。ろう材の表面に形成されている酸化皮膜のAlに対するMg、Li及びCaそれぞれの原子換算のモル比(例えばMg/Al)が、上記範囲内にあることにより、ろう付前のろう材表面に形成されている酸化皮膜に対するろう付加熱により形成されるMg、Li及びCaを含有する酸化物の体積変化率が0.990以下になる。なお、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートのろう材の表面に形成されている酸化皮膜が、Mg、Li及びCaのうちの2種以上の元素を含有する場合、Alに対するMg、Li及びCaそれぞれの原子換算のモル比が0.50以下であるとは、いずれのMg、Li及びCaについても、Alに対するMg、Li及びCaの原子換算のモル比が0.5以下であることを指す。
【0073】
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートのろう材の表面に形成されている酸化皮膜の厚さは、酸化皮膜が破壊され易い点で、50nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましい。ろう材の表面に形成されている酸化皮膜の厚さが50nmを超えると、酸化皮膜の破壊が進み難くなる。
【0074】
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、以下に述べる本発明のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法により好適に製造される。
【0075】
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法は、(1)ろう材用鋳塊/心材用鋳塊の順に積層した積層物、(2)ろう材用鋳塊/心材用鋳塊/ろう材用鋳塊の順に積層した積層物又は(3)ろう材用鋳塊/心材用鋳塊/皮材用鋳塊の順に積層した積層物に、少なくとも熱間加工と、冷間加工と、を行い、アルミニウム合金ブレージングシートを得るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法であって、
前記心材用鋳塊は、アルミニウム、又は1.50質量%以下のFe、1.50質量%以下のSi、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn及び0.10質量%以下のSnのうちのいずれか1種又は2種以上を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金であり、
前記ろう材用鋳塊は、4.00~13.00質量%のSiと、0.03質量%を超え3.00質量%以下のMg、0.03質量%を超え3.00質量%以下のLi及び0.03質量%を超え3.00質量%以下のCaのうちのいずれか1種又は2種以上と、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金ろう材であり、
該皮材用鋳塊は、アルミニウム、又は6.00質量%以下のZnを含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金あり、
冷間加工での圧延のパス間に、酸素濃度が10000ppm以下且つ露点が20℃以下に管理された雰囲気中で、250~450℃で1時間以上加熱する中間焼鈍を行うか、あるいは、最後の冷間加工のパス後に、酸素濃度が10000ppm以下且つ露点が20℃以下に管理された雰囲気中で、250~450℃で1時間以上加熱する最終焼鈍を行うこと、あるいは、冷間加工での圧延のパス間と最後の冷間加工のパス後の両方において、酸素濃度が10000ppm以下且つ露点が20℃以下に管理された雰囲気中で、250~450℃で1時間以上加熱する焼鈍を行うこと、
を特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法である。
【0076】
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法は、(1)ろう材用鋳塊と心材用鋳塊とを重ね合わせた積層物、あるいは、(2)心材用鋳塊の両面にろう材用鋳塊を重ね合わせた積層物、あるいは、心材用鋳塊の一方の面にろう材用鋳塊を重ね合わせ、且つ、心材用鋳塊の他方の面に皮材用鋳塊を重ね合わせた積層物、すなわち、(1)ろう材用鋳塊/心材用鋳塊の順に積層した積層物、(2)ろう材用鋳塊/心材用鋳塊/ろう材用鋳塊の順に積層した積層物又は(3)ろう材用鋳塊/心材用鋳塊/皮材用鋳塊の順に積層した積層物に、少なくとも熱間加工と、冷間加工と、を行い、アルミニウム合金ブレージングシートを得るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法である。
【0077】
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法において、心材用鋳塊、ろう材用鋳塊及び皮材用鋳塊の添加成分の種類及びそれらの含有量は、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートに係る心材、ろう材及び皮材中の成分及びそれらの含有量と同様である。
【0078】
つまり、心材用鋳塊は、アルミニウム又は、1.50質量%以下、好ましくは0.10~0.70質量%、特に好ましくは0.20~0.60質量%のFe、1.50質量%以下、好ましくは0.10~1.00質量%、特に好ましくは0.30~0.75質量%のSi、2.00質量%以下、好ましくは0.10~1.00質量%、特に好ましくは0.15~0.80質量%のCu、2.00質量%以下、好ましくは0.30~1.80質量%、特に好ましくは0.30~1.50質量%のMn、3.00質量%以下、好ましくは0.50~3.00質量%、特に好ましくは1.50~3.00質量%のZn、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%のCr、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%、特に好ましくは0.12~0.18質量%のTi、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%のZr、0.10質量%以下、好ましくは0.01~0.03質量%のIn及び0.10質量%以下、好ましくは0.01~0.10質量%のSnのうちのいずれか1種又は2種以上と、必要に応じて、1.00質量%以下、好ましくは0.10~1.00質量%のBiと、必要に応じて、3.00質量%以下、好ましくは0.10~1.80質量%のMg、3.00質量%以下、好ましくは0.10~1.80質量%のLi及び3.00質量%以下、好ましくは0.10~1.80質量%のCaのうちのいずれか1種又は2種以上と、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる。心材用鋳塊は、不可避的不純物として、0.05質量%以下のAg、B、Be、Cd、Co、Ga、Ge、Mo、Na、Ni、P、Pb、Sr、V、Hg、Yを含んでいてもよい。
【0079】
ろう材用鋳塊は、4.00~13.00質量%、特に好ましくは4.50~12.00質量%のSiと、0.03質量%を超え3.00質量%以下、好ましくは0.10~1.80質量%、特に好ましくは0.60~1.20質量%のMg、0.03質量%を超え3.00質量%以下、好ましくは0.04~1.80質量%、特に好ましくは0.10~1.80質量%のLi及び0.03質量%を超え3.00質量%以下、好ましくは0.05~1.80質量%、特に好ましくは0.10~1.80質量%のCaのうちのいずれか1種又は2種以上と、必要に応じて、1.00質量%以下、好ましくは0.50質量%以下、より好ましくは0.05~0.40質量%、特に好ましくは0.10~0.30質量%のBiと、必要に応じて、0.05質量%以下、好ましくは0.005~0.04質量%、特に好ましくは0.007~0.04質量%のNa、0.05質量%以下、好ましくは0.005~0.04質量%、特に好ましくは0.005~0.02質量%のSr、0.05質量%以下、好ましくは0.005~0.04質量%のSb、8.00質量%以下、好ましくは1.00~8.00質量%、より好ましく、2.00~8.00質量%、特に好ましくは3.00~5.00質量%のZn、4.00質量%以下、好ましくは0.50~4.00質量%、特に好ましくは1.00~2.50質量%のCu、1.00質量%以下、好ましくは0.10~0.50質量%、特に好ましくは0.20~0.50質量%のFe、1.00質量%以下、好ましくは0.10~0.60質量%のMn、0.30質量%以下、好ましくは0.01~0.03質量%のCr、0.30質量%以下、好ましくは0.10質量%以下、特に好ましくは0.01~0.03質量%のTi、0.30質量%以下、好ましくは0.01~0.03質量%のZr、0.10質量%以下、好ましくは0.01~0.03質量%、特に好ましくは0.02~0.03質量%のIn及び0.10質量%以下、好ましくは0.01~0.05質量%のSnのうちのいずれか1種又は2種以上と、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる。ろう材鋳塊は、不可避的不純物として、0.05質量%以下のAg、B、Be、Cd、Co、Ga、Ge、Mo、Ni、P、Pb、V、Hg、Yの1種または2種以上を含んでいてもよい。
【0080】
皮材用鋳塊は、アルミニウム、又は6.00質量%以下、好ましくは3.00質量%以下のZnと、必要に応じて、2.00質量%以下、0.30~1.80質量%のMn、3.00質量%以下、好ましくは0.30~1.80質量%、特に好ましくは0.40~1.80質量%のMg、5.00質量%以下、好ましくは0.10~1.50質量%、より好ましくは0.10~1.00質量%、特に好ましくは0.20~1.00質量%のSi又は5.00質量%以下、好ましくは2.50~4.50質量%のSi、1.50質量%以下、好ましくは0.10~0.70質量%、特に好ましくは0.10~0.50質量%のFe、1.00質量%以下、好ましくは0.10~1.00質量%のCu、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%のTi、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%のZr、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%のCr、0.10質量%以下、好ましくは0.01~0.03質量%のIn及び0.10質量%以下、好ましくは0.01~0.05質量%でのSnのうちのいずれか1種又は2種以上と、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる。皮材用鋳塊は、不可避的不純物として、0.05質量%以下のAg、B、Be、Bi、Ca、Cd、Co、Ga、Ge、Li、Mo、Na、Ni、P、Pb、Sr、V、Hg、Yを含んでいてもよい。
【0081】
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法では、(1)ろう材用鋳塊/心材用鋳塊の順に積層した積層物、(2)ろう材用鋳塊/心材用鋳塊/ろう材用鋳塊の順に積層した積層物又は(3)ろう材用鋳塊/心材用鋳塊/皮材用鋳塊の順に積層した積層物に、熱間圧延及び冷間圧延を行う。熱間圧延では、400~550℃で、合わせ板とし、次いで、熱間のまま板厚2~3mmまで加工する。冷間圧延では、冷間で、複数回のパスで圧延を行って、所定のアルミニウム合金ブレージングシートの厚さまで加工する。
【0082】
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法では、冷間加工で行う複数回の圧延のパス間に、酸素濃度が10000ppm以下且つ露点が20℃以下に管理された雰囲気中で、250~450℃で1時間以上加熱する中間焼鈍を行うか、あるいは、最後の冷間加工のパス後に、酸素濃度が10000ppm以下且つ露点が20℃以下に管理された雰囲気中で、250~450℃で1時間以上加熱する最終焼鈍を行うか、または、冷間加工での圧延のパス間と最後の冷間加工のパス後の両方において、酸素濃度が10000ppm以下且つ露点が20℃以下に管理された雰囲気中で、250~450℃で1時間以上加熱する焼鈍を行う。中間焼鈍又は最終焼鈍は、高温工程であるため、酸化皮膜の状態に大きな影響を与える。中間焼鈍又は最終焼鈍の雰囲気は、窒素ガス、アルゴンガス、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気である。酸素濃度が10000ppm以下且つ露点が20℃以下に管理された雰囲気中で、中間焼鈍又は最終焼鈍を行うことにより、ろう付加熱により、ろう付加熱前の酸化皮膜に対する体積変化率が0.990以下であるMg、Li及びCaを含有する酸化物粒子が、表面に形成されるアルミニウム合金ブレージングシートが得られ易くなる。中間焼鈍又は最終焼鈍における雰囲気中の酸素濃度が10000ppmを超えると、酸化皮膜の成長が助長されたり、酸化皮膜中のMg、Li及びCaの濃度が高められ易くなる。また、中間焼鈍又は最終焼鈍における雰囲気の露点が20℃を超えると、水酸化皮膜が形成され易くなり、酸化皮膜が厚くなり易くなる。
【0083】
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法では、必要に応じて、中間焼鈍を行った後又は最終焼鈍を行った後に、酸性水溶液やアルカリ性水溶液を用いてブレージングシートのろう材表面をエッチングしてもよい。エッチングを行うことにより、中間焼鈍又は最終焼鈍の加熱によって形成された酸化皮膜を脆弱化又は除去することができる。その結果、ブレージングシートのろう付性をより向上させることができる。ろう材表面をエッチングする場合、心材の片面にろう材がクラッドされている場合には、ろう材面だけをエッチングしても良いし、ろう材面と反対面の両方をエッチングしてもよい。心材の両面にろう材がクラッドされている場合には、両面をエッチングする。
【0084】
ブレージングシートのエッチングに用いる酸性溶液としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、フッ酸等の水溶液が挙げられる。これらの酸は1種単独であってもよいし、2種以上の併用であってもよい。酸化皮膜をより効率よく除去する観点からは、酸として、フッ酸と、フッ酸以外の酸とを含む混合水溶液を使用することが好ましく、フッ酸と硫酸との混合水溶液またはフッ酸と硝酸との混合水溶液を使用することがより好ましい。また、ブレージングシートのエッチングに用いるアルカリ性溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水溶液が挙げられる。これらのアルカリ性溶液は1種単独であってもよいし、2種以上の併用であってもよい。アルカリ性溶液を用いてエッチングした場合には、エッチング後に硫酸水溶液や硝酸水溶液を用いてデスマットするのが好ましい。
【0085】
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法においては、製造工程中における、酸化皮膜の成長及びMg、Li及びCaの酸化皮膜への濃縮を抑制することが好ましい。
【0086】
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付に用いられる。そして、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でろう付加熱されることにより、ろう付加熱前の酸化皮膜に対する体積変化率が0.990以下であるMg、Li及びCaを含有する酸化物粒子が、表面に形成されるので、ろう材の新生面が露出し易くなり、優れたろう付性を発揮する。
【0087】
本発明のアルミニウム合金シート(A)は、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートを、フラックスを使用しないで、不活性ガス雰囲気中で、ろう付加熱することにより得られるアルミニウム合金シートであり、アルミニウム合金シートの表面に、ろう付加熱前のアルミニウム合金ブレージングシートの酸化物に対する体積変化率が0.990以下であるMg、Li及びCaを含有する酸化物粒子が形成されているアルミニウム合金シートである。本発明のアルミニウム合金シート(A)の表面に形成されているMg、Li及びCaを含有する酸化物は、粒子状であり、且つ、ろう付加熱前のアルミニウム合金ブレージングシートの酸化物に対する体積変化率が0.990以下であるので、ろう付加熱中のブレージングシート表面の一部にアルミニウム合金の新生面が現れている。不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス等である。昇温中、ブレージングシートの温度が400℃以上における炉内の酸素濃度は100ppm以下、ブレージングシートの温度が570℃以上の酸素濃度は20ppm以下、好ましくは10ppm以下である。
【0088】
本発明のアルミニウム合金シート(A)は、アルミニウム合金ブレージングシートがろう付された後のアルミニウム合金シートである。
【実施例
【0089】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明し、本発明の効果を実証する。なお、これらの実施例は、本発明の一実施態様を示すもので、本発明はこれらに限定されない。
【0090】
表1及び表2に示す組成を有する心材用鋳塊及びろう材用鋳塊を、それぞれ連続鋳造により造塊し、心材用鋳塊については、得られた鋳塊を縦163mm、横163mmに面削し、片面にろう材のみクラッドする心材用鋳塊は厚さ27mmのサイズに、両面にろう材をクラッドする心材用鋳塊は厚さ24mmのサイズに面削した。ろう材用鋳塊については、得られた鋳塊を厚さ3mmまで500℃で熱間圧延し、冷却後、縦163mm、横163mmの寸法に切断した。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
準備したろう材用鋳塊及び心材用鋳塊を表3に示す組合わせで重ね合わせ、次いで、熱間圧延及び冷間圧延を行い、表4に示す条件で最終焼鈍を行って軟質クラッド材を得、あるいは、熱間圧延及び冷間圧延を行った後、表4に示す条件で中間焼鈍を行い、次いで冷間圧延を行って軟質クラッド材を得、あるいは、熱間圧延及び冷間圧延を行った後、表4に示す条件で中間焼鈍を行い、次いで冷間圧延を行い、次いで、表4に示す条件で最終焼鈍を行って軟質クラッド材を得た。また、表4に示す場合に、焼鈍後に洗浄を行った。最終的な板厚を0.3~1.0mmとした。得られたクラッド板材を試験材とした。
試験材のろう材面の酸化皮膜の厚さを、XPS(X線光電子分光法)により測定した。XPSによって材料表面から深さ方向に酸素を分析し、測定した酸素のピーク半値幅の位置を酸化皮膜厚さとした。また、該酸化皮膜厚さ内の、アルミニウム(金属アルミニウムと酸化アルミニウム中のアルミニウム成分の総和)に対するMg、Li及びCaのそれぞれの原子換算のモル比(例えばMg量/Al量)を算出した。
【0094】
酸化皮膜厚さとして10nm以下が最も好ましくA、10nmを超え50nm以下をB、50nmを超える場合をCとして、表4の「酸化皮膜厚さ」の欄に記載した。「モル比」の欄には、0.1以下をA、0.1を超え0.5以下をB、0.5を超える場合をCとする。
【0095】
すき間充填試験を行うことにより、各試験材のろう付性を評価することができる。すき間充填試験において使用する試験体は、図1と同様に、垂直板に3003ベア材、水平板に試験材を配してSUS治具で組み付け、フラックスを使用しないで、窒素ガス雰囲気中で炉中ろう付した。ろう付条件は、昇温中試験片温度が400℃以上のときにおける炉内の酸素濃度を50ppm以下に管理し、試験片温度が570℃以上のときにおける酸素濃度を10ppm以下に管理し、試験体の到達温度を600℃とした。なお、一般的なすき間充填試験(LWS T8801)の垂直板の長さは55mmであるが、本試験体の垂直板の長さは25mmとし、水平板と垂直板の間に形成されるすき間の勾配を大きくして、すき間が大きい熱交換器を模擬した評価方法を採用している。
【0096】
すき間充填試験においては、ろう付後に形成されるフィレットの長さFLに基づいてろう付性を評価することができる。表3中の「ろう付性」欄には、FLとフィレットの健全性が記載され、5mm以上でかつ部分的なフィレット切れがない場合をA、5mm以上でかつ部分的なフィレット切れがある場合をB、5mm未満である場合をCの3段階で評価し、これらの中でAを合格レベルと判定した。
【0097】
ろう付加熱前の酸化皮膜に対するろう付後の形成されているMg、Li及びCaを含有する酸化物粒子の体積変化率は、酸化物の分子量を公知文献に記載の密度で除することで酸素原子1つ当たりの体積を求め、これをろう付加熱前の酸化皮膜の酸素原子一つ当たりの体積で除することで求めた。ろう付加熱前の酸化皮膜の酸素原子一つ当たりの体積は、皮膜成分はAlであり、その密度は3.0g/cmとして求められる。得られたクラッド板材の分析及びろう付性の性能試験結果を表3に示す。
【0098】
【表3】
【0099】
【表4】
図1