(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ウインドシールド
(51)【国際特許分類】
H05B 3/86 20060101AFI20241212BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20241212BHJP
B60J 1/02 20060101ALI20241212BHJP
H05B 3/12 20060101ALI20241212BHJP
B60S 1/02 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H05B3/86
B60J1/00 H
B60J1/02 Z
H05B3/12 A
B60S1/02 400Z
(21)【出願番号】P 2021543102
(86)(22)【出願日】2020-09-01
(86)【国際出願番号】 JP2020033132
(87)【国際公開番号】W WO2021040055
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2019159197
(32)【優先日】2019-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】千葉 和喜
(72)【発明者】
【氏名】小川 永史
(72)【発明者】
【氏名】朝岡 尚志
(72)【発明者】
【氏名】大野 和久
(72)【発明者】
【氏名】矢野 陽太
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-114484(JP,A)
【文献】特開2016-078807(JP,A)
【文献】特開2017-216193(JP,A)
【文献】特開平04-014790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/86
B60J 1/00
B60J 1/02
H05B 3/12
B60S 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の照射及び/または受光を行うことで車外からの情報を取得する情報取得装置が配置可能なウインドシールドであって、
ガラス板と、
前記ガラス板に設けられ、電流が印加される電熱線と、
を備え、
前記ガラス板は、前記情報取得装置と対向し前記光が通過する情報取得領域を少なくとも1つ有しており、
前記電熱線は、少なくとも前記情報取得領域の内部を通過する線状の複数の本体部と、複数の前記本体部の間を連結する線状の連結部と、を備え、
前記連結部は、前記情報取得領域の縁に沿って配置される直線部と、前記直線部と本体部とを連結する屈曲部を有し、
前記屈曲部は、頂部と、前記頂部から延びる2本の電熱線を有し、
少なくとも1つの前記屈曲部を構成する前記電熱線のなす角度が、15~60度であり、
前記連結部の少なくとも1つは、電流が印加されたときの発熱を抑える発熱抑制手段を有
し、
前記発熱抑制手段として、前記屈曲部を構成する2本の前記電熱線の間に、前記電熱線と一体的に三角形状の導電部が形成されている、
ウインドシールド。
【請求項2】
光の照射及び/または受光を行うことで車外からの情報を取得する情報取得装置が配置可能なウインドシールドであって、
ガラス板と、
前記ガラス板に設けられ、電流が印加される電熱線と、
を備え、
前記ガラス板は、前記情報取得装置と対向し前記光が通過する情報取得領域を少なくとも1つ有しており、
前記電熱線は、少なくとも前記情報取得領域の内部を通過する線状の複数の本体部と、複数の前記本体部の間を連結する線状の連結部と、を備え、
前記連結部は、前記情報取得領域の縁に沿って配置される直線部と、前記直線部と本体部とを連結する屈曲部を有し、
前記屈曲部は、頂部と、前記頂部から延びる2本の電熱線を有し、
少なくとも1つの前記屈曲部を構成する前記電熱線のなす角度が、15~60度であり、
前記連結部の少なくとも1つは、電流が印加されたときの発熱を抑える発熱抑制手段を有し、
前記発熱抑制手段として、前記連結部の少なくとも1つは、
前記屈曲部を構成する2本の前記電熱線を連結する、少なくとも1つのバイパス電熱線を有してい
る、ウインドシールド。
【請求項3】
光の照射及び/または受光を行うことで車外からの情報を取得する情報取得装置が配置可能なウインドシールドであって、
ガラス板と、
前記ガラス板に設けられ、電流が印加される電熱線と、
を備え、
前記ガラス板は、前記情報取得装置と対向し前記光が通過する情報取得領域を少なくとも1つ有しており、
前記電熱線は、少なくとも前記情報取得領域の内部を通過する線状の複数の本体部と、複数の前記本体部の間を連結する線状の連結部と、を備え、
前記連結部は、前記情報取得領域の縁に沿って配置される直線部と、前記直線部と本体部とを連結する屈曲部を有し、
前記屈曲部は、頂部と、前記頂部から延びる2本の電熱線を有し、
少なくとも1つの前記屈曲部を構成する前記電熱線のなす角度が、15~60度であり、
前記連結部の少なくとも1つは、電流が印加されたときの発熱を抑える発熱抑制手段を有し、
前記屈曲部の少なくとも一部の厚みが、前記連結部における前記屈曲部以外の部分の厚みよりも厚
い、ウインドシールド。
【請求項4】
光の照射及び/または受光を行うことで車外からの情報を取得する情報取得装置が配置可能なウインドシールドであって、
ガラス板と、
前記ガラス板に設けられ、電流が印加される電熱線と、
を備え、
前記ガラス板は、前記情報取得装置と対向し前記光が通過する情報取得領域を少なくとも1つ有しており、
前記電熱線は、少なくとも前記情報取得領域の内部を通過する線状の複数の本体部と、複数の前記本体部の間を連結する線状の連結部と、を備え、
前記連結部は、前記情報取得領域の縁に沿って配置される直線部と、前記直線部と本体部とを連結する屈曲部を有し、
前記屈曲部は、頂部と、前記頂部から延びる2本の電熱線を有し、
少なくとも1つの前記屈曲部を構成する前記電熱線のなす角度が、15~60度であり、
前記連結部の少なくとも1つは、電流が印加されたときの発熱を抑える発熱抑制手段を有し、
前記屈曲部の厚みが、前記連結部における前記屈曲部以外の部分の厚みの1.2倍以上であ
る、ウインドシールド。
【請求項5】
単位長さ当たりの前記屈曲部の抵抗値が、単位長さ当たりの前記本体部の抵抗値よりも小さい、請求項1
から4のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項6】
前記発熱抑制手段として、前記連結部の単位長さ当たりの抵抗値が、前記本体部の単位長さ当たりの抵抗値よりも小さい、請求項1
から5のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項7】
前記連結部の少なくとも1つは、2つの前記バイパス電熱線を有している、請求項
2に記載のウインドシールド。
【請求項8】
すべての前記連結部は、2つの前記バイパス電熱線を有している、請求項
2に記載のウインドシールド。
【請求項9】
前記屈曲部の少なくとも一部の線幅が、前記連結部における前記屈曲部以外の部分の線幅よりも広い、請求項1から
8のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項10】
前記屈曲部の長さが、1~20mmである、請求項1から
9のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項11】
前記屈曲部の線幅が、前記連結部における屈曲部以外の部分の線幅の1.2倍以上である、請求項1から
10のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項12】
前記屈曲部の少なくとも一部の線幅が、0.3~1.0mmである、請求項1から
11のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項13】
前記屈曲部は、円弧状に形成されている、請求項1から12のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項14】
前記屈曲部の曲率半径が、1~10mmである、請求項13に記載のウインドシールド。
【請求項15】
前記屈曲部には、当該屈曲部を構成する電熱線の線幅よりも大きい外径を有する導電部が設けられている、請求項1から14のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項16】
前記導電部の最大外径が、10mm以下である、請求項15に記載のウインドシールド。
【請求項17】
複数の前記本体部が略平行に配置されており、
前記本体部の間隔は、前記電熱線の幅の1.2倍以上である、請求項1から16のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項18】
前記本体部の数が、3~50本である、請求項1から17のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項19】
複数の前記本体部の合計面積は、2500mm
2以上である、請求項1から18のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項20】
前記本体部は、水平方向に対して30度以下の角度αで傾いている、請求項1から19のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項21】
前記屈曲部において規定される温度差dTが15℃未満である、請求項1から20のいずれかに記載のウインドシールド。
但し、dTは|b-s|、sは前記屈曲部の頂部から35mm離れた2つの箇所の前記電熱線の平均温度、bは前記頂部における前記電熱線の温度とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の照射及び/または受光を行うことで車外からの情報を取得する情報取得装置が配置可能なウインドシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の安全性能は飛躍的に向上しつつあり、その1つとして前方車両との衝突を回避するため、前方車両との距離及び前方車両の速度を感知し、異常接近時には、自動的にブレーキが作動する安全システムが提案されている。このようなシステムは、前方車両との距離などをレーザーレーダーやカメラを用いて計測している。レーザーレーダーやカメラは、一般的に、ウインドシールドの内側に配置され、赤外線等の光を前方に向けて照射することで、計測を行う(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、レーザーレーダーやカメラなどの測定装置は、ウインドシールドを構成するガラス板の内面側に配置され、ガラス板を介して光の照射や受光を行っている。ところが、気温の低い日や寒冷地では、ガラス板が曇ることがある。しかしながら、ガラス板が曇ると、測定装置から正確に光を照射できなかったり、あるいは受光できないおそれがある。これにより、車間距離などが正確に算出されない可能性もある。
【0005】
このような問題は、車間距離の測定装置に限られず、例えば、カメラ、ETCなどの光の受光によって車外からの情報を取得する情報取得装置全般に生じうる問題である。本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ガラス板を介して光の照射及び/または受光を行う情報取得装置が取り付け可能なウインドシールドにおいて、光の照射及び/または受光を正確に行うことができ、情報の処理を正確に行うことができる、ウインドシールドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
項1.光の照射及び/または受光を行うことで車外からの情報を取得する情報取得装置が配置可能なウインドシールドであって、
ガラス板と、
前記ガラス板に設けられ、電流が印加される電熱線と、
を備え、
前記ガラス板は、前記情報取得装置と対向し前記光が通過する情報取得領域を少なくとも1つ有しており、
前記電熱線は、少なくとも前記情報取得領域の内部を通過する線状の複数の本体部と、複数の前記本体部の間を連結する線状の連結部と、を備え、
前記連結部の少なくとも1つは、電流が印加されたときの発熱を抑える発熱抑制手段を有する、ウインドシールド。
【0007】
項2.前記発熱抑制手段として、前記連結部の少なくとも1つは、少なくとも1つの屈曲部を有し、
単位長さ当たりの前記屈曲部の抵抗値が、単位長さ当たりの前記本体部の抵抗値よりも小さい、項1に記載のウインドシールド。
【0008】
項3.前記発熱抑制手段として、
前記連結部の単位長さ当たりの抵抗値が、前記本体部の単位長さ当たりの抵抗値よりも小さい、項1または2に記載のウインドシールド。
【0009】
項4.前記連結部の少なくとも1つは、少なくとも1つの屈曲部を有し、
前記連結部の少なくとも1つは、少なくとも1つのバイパス電熱線を有している、項1から3のいずれかに記載のウインドシールド。
【0010】
項5.前記連結部の少なくとも1つは、2つの前記バイパス電熱線を有している、項4に記載のウインドシールド。
【0011】
項6.すべての前記連結部は、2つの前記バイパス電熱線を有している、項4に記載のウインドシールド。
【0012】
項7.前記屈曲部の少なくとも一部の線幅が、前記連結部における前記屈曲部以外の部分の線幅よりも広い、項2から6のいずれかに記載のウインドシールド。
【0013】
項8.前記屈曲部の少なくとも一部の厚みが、前記連結部における前記屈曲部以外の部分の厚みよりも厚い、項2から7のいずれかに記載のウインドシールド。
【0014】
項9.前記屈曲部を構成する前記電熱線のなす角度が、15~60度である、項2から8のいずれかに記載のウインドシールド。
【0015】
項10.前記屈曲部の長さが、1~20mmである、項2から9のいずれかに記載のウインドシールド。
【0016】
項11.前記屈曲部の線幅が、前記連結部における屈曲部以外の部分の線幅の1.2倍以上である、項2から10のいずれかに記載のウインドシールド。
【0017】
項12.前記屈曲部の少なくとも一部の線幅が、0.3~1.0mmである、項2から11のいずれかに記載のウインドシールド。
【0018】
項13.前記屈曲部の厚みが、前記連結部における屈曲部以外の部分の厚みの1.2倍以上である、項2から12のいずれかに記載のウインドシールド。
【0019】
項14.前記屈曲部は、円弧状に形成されている、項2から13のいずれかに記載のウインドシールド。
【0020】
項15.前記屈曲部の曲率半径が、1~10mmである、項14に記載のウインドシールド。
【0021】
項16.前記屈曲部は、当該屈曲部を構成する電熱線の線幅よりも大きい外径を有する導電部が設けられている、項2から15のいずれかに記載のウインドシールド。
【0022】
項17.前記導電部の最大外径が、10mm以下である、項16に記載のウインドシールド。
【0023】
項18.複数の前記本体部が略平行に配置されており、
前記本体部の間隔は、前記電熱線の幅の1.2倍以上である、項1から17のいずれかに記載のウインドシールド。
【0024】
項19.前記本体部数が、3~50本である、項1から18のいずれかに記載のウインドシールド。
【0025】
項20.複数の前記本体部の合計面積は、2500mm2以上である、項1から19のいずれかに記載のウインドシールド。
【0026】
項21.前記本体部は、水平方向に対して30度以下の角度αで傾いている、項1から20のいずれかに記載のウインドシールド。
【0027】
項22.前記発熱抑制手段として、前記連結部の少なくとも1つは、少なくとも1つの屈曲部を有し、
前記屈曲部において規定される温度差dTが15℃未満である、項1から21のいずれかに記載のウインドシールド。
但し、dTは|b-s|、sは前記屈曲部の頂部から35mm離れた2つの箇所の前記電熱線の平均温度、bは前記頂部における前記電熱線の温度とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ガラス板を介して光の照射及び/または受光を行う情報取得装置が取り付け可能なウインドシールドにおいて、光の照射及び/または受光を正確に行うことができ、情報の処理を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明に係るウインドシールドの一実施形態を示す平面図である。
【
図3】車載システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図9A】実施例1~11に係る連結部の基本構造を示す概略図である。
【
図9B】比較例に係る連結部の構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
まず、
図1及び
図2を用いて、本実施形態に係るウインドシールドの構成について説明する。
図1はウインドシールドの平面図、
図2は
図1の断面図である。なお、説明の便宜のため、
図1の上下方向を「上下」、「垂直」、「縦」と、
図1の左右方向を「左右」と称することとする。
図1は、車内側から見たウインドシールドを例示している。すなわち、
図1の紙面奥側が車外側であり、
図1の紙面手前側が車内側である。
【0031】
このウインドシールドは、台形状の合わせガラス10を備えており、傾斜状態で車体に設置されている。合わせガラス10は、外側ガラス板11、内側ガラス板12、及びこれらの間に配置される中間膜13を有している。そして、内側ガラス板12の車内側の面には、遮蔽層4が積層されており、この遮蔽層4によって、車外からの視野を遮蔽するようになっている。また、この遮蔽層4には開口43が形成されており、この開口43を介して、車内に配置された撮影装置2により、車外の状況を撮影可能となっている。すなわち、この開口43が、撮影窓を構成している。さらに、内側ガラス板12の遮蔽層4上には、枠型のブラケット6が固定されており、このブラケット6に、撮影装置2が取り付けられる。ブラケット6は枠型上に形成され遮蔽層4上に固定されているため、車外からはブラケット6が見えないようになっている。さらに、内側ガラス板12には、開口43を通過するように電熱線8が配置されている。以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0032】
<1.合わせガラス>
図3は合わせガラスの断面図である。同図に示すように、この合わせガラス10は、外側ガラス板11及び内側ガラス板12を備え、これらガラス板11、12の間に樹脂製の中間膜13が配置されている。以下、これらの構成について説明する。
【0033】
<1-1.ガラス板>
まず、外側ガラス板11及び内側ガラス板12から説明する。外側ガラス板11及び内側ガラス板12は、公知のガラス板を用いることができ、熱線吸収ガラス、一般的なクリアガラスやグリーンガラス、またはUVグリーンガラスで形成することもできる。但し、これらのガラス板11、12は、自動車が使用される国の安全規格に沿った可視光線透過率を実現する必要がある。例えば、外側ガラス板11により必要な日射吸収率を確保し、内側ガラス板12により可視光線透過率が安全規格を満たすように調整することができる。以下に、クリアガラス、熱線吸収ガラス、及びソーダ石灰系ガラスの一例を示す。
【0034】
(クリアガラス)
SiO2:70~73質量%
Al2O3:0.6~2.4質量%
CaO:7~12質量%
MgO:1.0~4.5質量%
R2O:13~15質量%(Rはアルカリ金属)
Fe2O3に換算した全酸化鉄(T-Fe2O3):0.08~0.14質量%
【0035】
(熱線吸収ガラス)
熱線吸収ガラスの組成は、例えば、クリアガラスの組成を基準として、Fe2O3に換算した全酸化鉄(T-Fe2O3)の比率を0.4~1.3質量%とし、CeO2の比率を0~2質量%とし、TiO2の比率を0~0.5質量%とし、ガラスの骨格成分(主に、SiO2やAl2O3)をT-Fe2O3、CeO2およびTiO2の増加分だけ減じた組成とすることができる。
【0036】
(ソーダ石灰系ガラス)
SiO2:65~80質量%
Al2O3:0~5質量%
CaO:5~15質量%
MgO:2質量%以上
NaO:10~18質量%
K2O:0~5質量%
MgO+CaO:5~15質量%
Na2O+K2O:10~20質量%
SO3:0.05~0.3質量%
B2O3:0~5質量%
Fe2O3に換算した全酸化鉄(T-Fe2O3):0.02~0.03質量%
【0037】
本実施形態に係る合わせガラス10の厚みは特には限定されないが、外側ガラス板11と内側ガラス板12の厚みの合計を、例として2.1~6mmとすることができ、軽量化の観点からは、外側ガラス板11と内側ガラス板12の厚みの合計を、2.4~3.8mmとすることが好ましく、2.6~3.4mmとすることがさらに好ましく、2.7~3.2mmとすることが特に好ましい。このように、軽量化のためには、外側ガラス板11と内側ガラス板12との合計の厚みを小さくすることが必要であるので、各ガラス板のそれぞれの厚みは、特には限定されないが、例えば、以下のように、外側ガラス板11と内側ガラス板12の厚みを決定することができる。
【0038】
外側ガラス板11は、主として、外部からの障害に対する耐久性、耐衝撃性が必要であり、自動車のウインドシールドとしては、小石などの飛来物に対する耐衝撃性能が必要である。他方、厚みが大きいほど重量が増し好ましくない。この観点から、外側ガラス板11の厚みは1.8~2.3mmとすることが好ましく、1.9~2.1mmとすることがさらに好ましい。何れの厚みを採用するかは、ガラスの用途に応じて決定することができる。
【0039】
内側ガラス板12の厚みは、外側ガラス板11と同等にすることができるが、例えば、合わせガラス10の軽量化のため、外側ガラス板11よりも厚みを小さくすることができる。具体的には、ガラスの強度を考慮すると、0.6~2.0mmであることが好ましく、0.8~1.6mmであることが好ましく、1.0~1.4mmであることが特に好ましい。更には、0.8~1.3mmであることが好ましい。内側ガラス板12についても、何れの厚みを採用するかは、ガラスの用途に応じて決定することができる。
【0040】
ここで、ガラス板(合わせガラス)1が湾曲している場合の厚みの測定方法の一例について説明する。まず、測定位置については、ガラス板の左右方向の中央を上下方向に延びる中央線S上の上下2箇所である。測定機器は、特には限定されないが、例えば、株式会社テクロック製のSM-112のようなシックネスゲージを用いることができる。測定時には、平らな面にガラス板の湾曲面が載るように配置し、上記シックネスゲージでガラス板の端部を挟持して測定する。なお、ガラス板が平坦な場合でも、湾曲している場合と同様に測定することができる。
【0041】
<1-2.中間膜>
中間膜13は、少なくとも一層で形成されており、一例として、
図3に示すように、軟質のコア層131を、これよりも硬質のアウター層132で挟持した3層で構成することができる。但し、この構成に限定されるものではなく、コア層131と、外側ガラス板11側に配置される少なくとも1つのアウター層132とを有する複数層で形成されていればよい。例えば、コア層131と、外側ガラス板11側に配置される1つのアウター層132を含む2層の中間膜13、またはコア層131を中心に両側にそれぞれ2層以上の偶数のアウター層132を配置した中間膜13、あるいはコア層131を挟んで一方に奇数のアウター層132、他方の側に偶数のアウター層132を配置した中間膜13とすることもできる。なお、アウター層132を1つだけ設ける場合には、上記のように外側ガラス板11側に設けているが、これは、車外や屋外からの外力に対する耐破損性能を向上するためである。また、アウター層132の数が多いと、遮音性能も高くなる。
【0042】
コア層131はアウター層132よりも軟質であるかぎり、その硬さは特には限定されない。各層131,132を構成する材料は、特には限定されないが、例えば、ヤング率を基準として材料を選択することができる。具体的には、周波数100Hz,温度20度において、1~20MPaであることが好ましく、1~18MPaであることがさらに好ましく、1~14MPaであることが特に好ましい。このような範囲にすると、概ね3500Hz以下の低周波数域で、音響透過損失(STL)が低下するのを防止することができる。一方、アウター層132のヤング率は、後述するように、高周波域における遮音性能の向上のために、大きいことが好ましく、周波数100Hz,温度20度において560MPa以上、600MPa以上、650MPa以上、700MPa以上、750MPa以上、880MPa以上、または1300MPa以上とすることができる。アウター層132のヤング率の上限は特には限定されないが、例えば、加工性の観点から設定することができる。例えば、1750MPa以上となると、加工性、特に切断が困難になることが経験的に知られている。
【0043】
また、具体的な材料としては、アウター層132は、例えば、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)によって構成することができる。ポリビニルブチラール樹脂は、各ガラス板との接着性や耐貫通性に優れるので好ましい。一方、コア層131は、例えば、エチレンビニルアセテート樹脂(EVA)、またはアウター層を構成するポリビニルブチラール樹脂よりも軟質なポリビニルアセタール樹脂によって構成することができる。軟質なコア層を間に挟むことにより、単層の樹脂中間膜と同等の接着性や耐貫通性を保持しながら、遮音性能を大きく向上させることができる。
【0044】
一般に、ポリビニルアセタール樹脂の硬度は、(a)出発物質であるポリビニルアルコールの重合度、(b)アセタール化度、(c)可塑剤の種類、(d)可塑剤の添加割合などにより制御することができる。したがって、それらの条件から選ばれる少なくとも1つを適切に調整することにより、同じポリビニルブチラール樹脂であっても、アウター層132に用いる硬質なポリビニルブチラール樹脂と、コア層131に用いる軟質なポリビニルブチラール樹脂との作り分けが可能である。さらに、アセタール化に用いるアルデヒドの種類、複数種類のアルデヒドによる共アセタール化か単種のアルデヒドによる純アセタール化によっても、ポリビニルアセタール樹脂の硬度を制御することができる。一概には言えないが、炭素数の多いアルデヒドを用いて得られるポリビニルアセタール樹脂ほど、軟質となる傾向がある。したがって、例えば、アウター層132がポリビニルブチラール樹脂で構成されている場合、コア層131には、炭素数が5以上のアルデヒド(例えばn-ヘキシルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-へプチルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド)、をポリビニルアルコールでアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂を用いることができる。なお、所定のヤング率が得られる場合は、上記樹脂等に限定されることはい。
【0045】
また、中間膜13の総厚は、特に規定されないが、0.3~6.0mmであることが好ましく、0.5~4.0mmであることがさらに好ましく、0.6~2.0mmであることが特に好ましい。また、コア層131の厚みは、0.1~2.0mmであることが好ましく、0.1~0.6mmであることがさらに好ましい。一方、各アウター層132の厚みは、0.1~2.0mmであることが好ましく、0.1~1.0mmであることがさらに好ましい。その他、中間膜13の総厚を一定とし、この中でコア層131の厚みを調整することもできる。
【0046】
コア層131及びアウター層132の厚みは、例えば、以下のように測定することができる。まず、マイクロスコープ(例えば、キーエンス社製VH-5500)によって合わせガラスの断面を175倍に拡大して表示する。そして、コア層131及びアウター層132の厚みを目視により特定し、これを測定する。このとき、目視によるばらつきを排除するため、測定回数を5回とし、その平均値をコア層131、アウター層132の厚みとする。例えば、合わせガラスの断面の拡大写真を撮影し、このなかでコア層やアウター層132を特定して厚みを測定する。
【0047】
なお、中間膜13のコア層131、アウター層132の厚みは全面に亘って一定である必要はなく、例えば、ヘッドアップディスプレイに用いられる合わせガラス用に楔形にすることもできる。この場合、中間膜13のコア層131やアウター層132の厚みは、最も厚みの小さい箇所、つまり合わせガラスの最下辺部を測定する。中間膜13が楔形の場合、外側ガラス板及び内側ガラス板は、平行に配置されないが、このような配置も本発明におけるガラス板に含まれる物とする。すなわち、本発明においては、例えば、1m当たり3mm以下の変化率で厚みが大きくなるコア層131やアウター層132を用いた中間膜13を使用した時の外側ガラス板と内側ガラス板の配置を含む。
【0048】
中間膜13の製造方法は特には限定されないが、例えば、上述したポリビニルアセタール樹脂等の樹脂成分、可塑剤及び必要に応じて他の添加剤を配合し、均一に混練りした後、各層を一括で押出し成型する方法、この方法により作成した2つ以上の樹脂膜をプレス法、ラミネート法等により積層する方法が挙げられる。プレス法、ラミネート法等により積層する方法に用いる積層前の樹脂膜は単層構造でも多層構造でもよい。また、中間膜13は、上記のような複数の層で形成する以外に、1層で形成することもできる。
【0049】
<2.遮蔽層の概要>
次に、遮蔽層4について説明する。
図1に示すように、遮蔽層4は、内側ガラス板12の周縁の全周に沿って積層される周縁部41と、この周縁部41に連結され、内側ガラス板12の上辺の中央付近から下方に延びる矩形状の延在部42と、を備えている。延在部42の下端部には、台形状の開口43が形成されており、車内側に取り付けられた撮影装置2は、この開口43及び合わせガラス10を介して車外を撮影できるようになっている。
【0050】
図2に示すように、上述したブラケット6は、遮蔽層4上に固定される。具体的には、ブラケット6は、開口を囲むような枠型状に形成され、両面テープ、接着剤などで遮蔽層4に固定される。そして、このブラケット6に、撮影装置2が支持され、開口43を通じて車外を撮影するように構成されている。また、図示を省略するが、ブラケット6には、撮影装置2が車内側から見えないようにカバーが取り付けられる。
【0051】
次に、遮蔽層4の材料について説明する。遮蔽層4の材料は、車外からの視野を遮蔽可能であれば、実施の形態に応じて適宜選択されても良く、例えば、黒色、茶色、灰色、濃紺等の濃色のセラミックを用いてもよい。
【0052】
遮蔽層4の材料に黒色のセラミックが選択された場合、例えば、内側ガラス板12の内面及び外側ガラス板11の内面に、それぞれスクリーン印刷等で黒色のセラミックを積層し、各ガラス板11,12とともに積層したセラミックを加熱する。そしてセラミックが硬化すると、遮蔽層4が完成する。なお、各遮蔽層4に利用するセラミックは、種々の材料を利用することができる。例えば、以下の表1に示す組成のセラミックを遮蔽層4に利用することができる。
【0053】
【表1】
*1,主成分:酸化銅、酸化クロム、酸化鉄及び酸化マンガン
*2,主成分:ホウケイ酸ビスマス、ホウケイ酸亜鉛
【0054】
<3.車載システム>
次に、
図2及び
図3を用いて、撮影装置2及び画像処理装置3を備える車載システムについて説明する。
図3は、車載システムの構成を例示する。
図3に例示されるように、本実施形態に係る車載システムは、上記撮影装置2と、当該撮影装置2に接続される画像処理装置3と、を備えている。
【0055】
画像処理装置3は、撮影装置2により取得された撮影画像を処理する装置である。この画像処理装置3は、例えば、ハードウェア構成として、バスで接続される、記憶部31、制御部32、入出力部33等の一般的なハードウェアを有している。ただし、画像処理装置3のハードウェア構成はこのような例に限定されなくてよく、画像処理装置3の具体的なハードウェア構成に関して、実施の形態に応じて、適宜、構成要素の追加、省略及び追加が可能である。
【0056】
記憶部31は、制御部32で実行される処理で利用される各種データ及びプログラムを記憶する(不図示)。記憶部31は、例えば、ハードディスクによって実現されてもよいし、USBメモリ等の記録媒体により実現されてもよい。また、記憶部31が格納する当該各種データ及びプログラムは、CD(Compact Disc)又はDVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体から取得されてもよい。更に、記憶部31は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。
【0057】
上記のとおり、合わせガラス10は、垂直方向に対して傾斜姿勢で配置され、かつ、湾曲している。そして、撮影装置2は、そのような合わせガラス10を介して車外の状況を撮影する。そのため、撮影装置2により取得される撮影画像は、合わせガラス10の姿勢、形状、屈折率、光学的欠陥等に応じて、変形している。また、撮影装置2のカメラレンズに固有の収差も加わる。そこで、記憶部31には、このような合わせガラス10およびカメラレンズの収差によって変形した画像を補正するための補正データが記憶されていてもよい。
【0058】
制御部32は、マイクロプロセッサ又はCPU(Central Processing Unit)等の1又は複数のプロセッサと、このプロセッサの処理に利用される周辺回路(ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、インタフェース回路等)と、を有する。ROM、RAM等は、制御部32内のプロセッサが取り扱うアドレス空間に配置されているという意味で主記憶装置と呼ばれてもよい。制御部32は、記憶部31に格納されている各種データ及びプログラムを実行することにより、画像処理部321として機能する。
【0059】
画像処理部321は、撮影装置2により取得される撮影画像を処理する。撮影画像の処理は、実施の形態に応じて適宜選択可能である。例えば、画像処理部321は、パターンマッチング等によって当該撮影画像を解析することで、撮影画像に写る被写体の認識を行ってもよい。本実施形態では、撮影装置2は車両前方の状況を撮影するため、画像処理部321は、更に、当該被写体認識に基づいて、車両前方に人間等の生物が写っていないかどうかを判定してもよい。そして、車両前方に人物が写っている場合には、画像処理部321は、所定の方法で警告メッセージを出力してもよい。また、例えば、画像処理部321は、所定の加工処理を撮影画像に施してもよい。そして、画像処理部321は、画像処理装置3に接続されるディスプレイ等の表示装置(不図示)に当該加工した撮影画像を出力してもよい。
【0060】
入出力部33は、画像処理装置3の外部に存在する装置とデータの送受信を行うための1又は複数のインタフェースである。入出力部33は、例えば、ユーザインタフェースと接続するためのインタフェース、又はUSB(Universal Serial Bus)等のインタフェースである。なお、本実施形態では、画像処理装置3は、当該入出力部33を介して、撮影装置2と接続し、当該撮影装置2により撮影された撮影画像を取得する。
【0061】
このような画像処理装置3は、提供されるサービス専用に設計された装置の他、PC(Personal Computer)、タブレット端末等の汎用の装置が用いられてもよい。
【0062】
また、撮影装置2は、上述したように、ブラケット6に取り付けられる。したがって、この状態で、撮影装置2のカメラレンズの光軸が開口43を通過するように、撮影装置2のブラケット6への取付、及びブラケットの第1遮蔽層4への取付を調整する。また、ブラケット6には撮影装置2を覆うように、図示を省略するカバーが取り付けられる。したがって、撮影装置2は、合わせガラス10、ブラケット、及びカバーで囲まれた空間内に配置され、車内側から見えないようなるとともに、車外側からも、遮蔽層4によって開口43を通して撮影装置2の一部しか見えないようになっている。そして、撮影装置2と上述した入出力部33とは、図示を省略するケーブルで接続され、このケーブルはカバーから引き出され、車内の所定の位置に配置された画像処理装置3に接続されている。
【0063】
<4.電熱線>
上述したように、本実施形態では、撮影装置2が遮蔽層4の開口43を通じて光を照射したり、光を受光することで情報を取得しているが、内側ガラス板12において開口43と対応する部分、つまり情報取得領域が曇ると、正確な情報を取得することができない。したがって、本実施形態では、情報取得領域に、導線で構成された電熱線8を設け、これに電流を印加することで加熱し、曇りを防止している。このような電熱線8は、撮影装置2の構成及び遮蔽層4の形態に合わせて種々の配線方法があるため、以下では複数の態様について説明する。
【0064】
図4は、内側ガラス板に配置された電熱線8を示している。同図では遮蔽層4を省略し、開口43のみ記載しているが、電熱線8は、開口43を通過する部分以外は、遮蔽層4上に配置されている。この電熱線8は、内側ガラス板12の上縁付近に配置され、電源の正極及び負極が接続される一対の矩形状の端子部81,82を備えている。以下、正極に接続される端子部を第1端子部81、負極に接続される端子部を第2端子部82と称することとする。第1端子部81からは、下方に延び、さらに遮蔽層4の開口43の一方(同図の左側)の側縁に沿って延びる第1配線部83が形成されている。この第1配線部83は、開口43の下端付近まで延びている。一方、第2端子部82からは、下方に延び、さらに開口43の他方(同図の右側)の側縁の上端付近まで延びる第2配線部84が形成されている。
【0065】
そして、第1配線部83の下端と第2配線部84の下端との間には、第3配線部85が配置されている。第3配線部85は5つの直線状のパーツを連結したS字状に形成されている。ここでは、第1配線部83側から順に、第1,第2,第3,第4,及び第5パーツ85a~85eと称することとする。このうち、第1、第3,及び第5パーツ85a,85c,85eが開口43を横切るように配置されており、これらが本発明の本体部を構成する。また、これら第1、第3,及び第5パーツ85a,85c,85eは、開口43の内部に配置されている部分を指している。また、これら3つのパーツ85a,85c,85eは、水平方向に対して30度以下の角度αで傾いている。これは、例えば、カメラで車外の撮影を行って画像処理を行う場合、水平方向に電熱線8が延びていると、電熱線8によって、水平方向の走査線上のすべての画素が遮られるからである。また、ウインドシールドは傾いて設置されていることから、電熱線が水平方向に対して30度より大きい角度で配置されていると、電熱線の傾きがより大きくなるように強調され、情報取得能力を阻害してしまうおそれがある。
【0066】
また、第2パーツ85bは、第1及び第3パーツ85a,85cを連結し、第4パーツ85dは、第3及び第5パーツ85c,85eを連結するように構成されている。これら第2及び第4パーツは、第3配線部85のうち、開口43の外側に配置されている部分を指しており、本発明の連結部を構成する。また、これら第2及び第4パーツ85b,85dは、開口43の縁部に沿って延びる直線部と、この直線部の両端に連結され、開口43の内部に向かって屈曲する屈曲部と、を備えている。また、上述した第1配線部83の下端部において、第5パーツ85eと連結される部分、及び第2配線部84の下端部において、第1パーツ85aと連結される部分にも、開口43の内部に向かって屈曲する屈曲部が形成されている。なお、
図4の拡大図に示すように、屈曲部は、頂部S1と、この頂部S1から延びる2本の電熱線8で構成されるが、頂部S1から一方の電熱線8における開口43までの距離をDとし(その位置をS2とする)、この頂部S1から他方の電熱線8において距離Dだけ離れた位置をS3とすると、S2からS3までの領域を屈曲部と定義することとする。
【0067】
以上のように、電熱線8は、電源(電圧は一定)に対して直列に接続される第1端子部81、第1配線部83、第2配線部84、第3配線部85、及び第2端子部82により構成されている。そして、電流が印加されることで、熱が発生するため、開口43において曇りが発生するのを防止することができ、また発生した曇りを除去することができる。
【0068】
電熱線8の線幅は、特には限定されないが、開口43の内部に配置される第1、第3,及び第5パーツ85a,85c,85eの線幅は、50~1000μmであることが好ましく、200~500μmであることがさらに好ましい。なお、開口43の内部に配置される部分は、車外から見える部分である。すなわち、例えば、遮蔽層4が内側ガラス板12の車内側の面と外側ガラス板11の車内側の面の2面に積層されている場合、電熱線8が、いずれか一方の面の遮蔽層4と対応する部分に配置されていたとしても、車外から見えるに部分については、上記のような線幅にすることが好ましい。以下、この部分を露出部分と称することがある。
【0069】
一方、開口43の外部に配置される第2及び第4パーツ85b,85d、第1配線部83、及び第2配線部84は、遮蔽層4に隠れるため、50~5000μmであることが好ましく、200~100μmであることがさらに好ましい。以下、この部分を非露出部分と称することがある。
【0070】
開口43の内部に配置される第1、第3,及び第5パーツ85a,85c,85eは、概ね平行に配置されているが、これらの間隔は、第1、第3,及び第5パーツ85a,85c,85eの幅の1.2倍以上であることが好ましい。この点は、例えば、開口43の内部に配置される電熱線8が並列である場合も同じであり、開口43の内部に平行な部分が設けられている場合には、上記のような間隔にすることが好ましい。
【0071】
また、電熱線8の厚みは、例えば、1~40μmとすることが好ましく、3~20μmとすることがさらに好ましい。但し、上述した屈曲部は、単位長さ当たりの抵抗値が、第1、第3,及び第5パーツ85a,85c,85eの単位長さ当たりの抵抗値よりも小さくされており、これによって、発熱を抑えるようにしている。そのための方策として、電熱線8の線幅や厚みは、屈曲部においては、他の部分と相違させることができる。以下では、線幅や厚みの調整を含む、屈曲部の発熱を抑えるための方策について、
図5を参照しつつ説明する。
図5は、電熱線の第1~第3パーツ85a~85cを抽出した例であり、第2パーツ85bの下側の屈曲部を例にして説明する。但し、この屈曲部の例については、他の屈曲部の少なくとも1つに適用可能である。
【0072】
<4-1.屈曲部の態様1>
図5(a)に示す態様では、屈曲部85b2に、電熱線8の他の部分よりも線幅の広い幅広部85b3を設けている。広幅部85b3は、屈曲部85b2の頂部から2方向に延びる電熱線において、所定の長さLに亘って形成されている。より詳細には、屈曲部85b2の内側の縁部は直線状に形成されているが、外側の縁部に段差が形成され、これによって幅広部85b3が形成されている。このように屈曲部85b2に幅の広い箇所を設けることで、電熱線8の他の部分と比べて抵抗が小さくなるようにし、これによって、屈曲部85b2において、局所的な高い発熱が生じるのを抑制することができる。幅広部85b3の幅は、電熱線8の他の部分の幅よりも広く、例えば、0.05~5.0mmにすることが好ましく、0.3~1.0mmにすることがさらに好ましく、0.3~0.7mmにすることがさらに好ましく、0.4~0.5mmにすることが特に好ましい。また、幅広部の幅85b3は、その他の部分の幅の1.2倍以上が好ましく、1.5倍以上がさらに好ましく、2.0陪以上が特に好ましい。一方、幅広部の幅85b3は、その他の部分の幅の3倍以下であることが好ましい。
【0073】
上記長さLは、特には限定されないが、例えば、1~20mmとすることが好ましく、5~15mmにすることがさらに好ましく、5~10mmにすることが特に好ましい。但し、幅広部85b3の幅や長さLは要求される抵抗によって適宜変更することができる。なお、幅広部85b3は、屈曲部85b2の内側の縁部に段差を設けたり、あるいは外側と内側の縁部の両方に段差を設けることで、他の箇所よりも線幅を広くすることができる。
【0074】
<4-2.屈曲部の態様2>
図5(b)に示す態様では、屈曲部85b2の頂部に近づくにつれて、屈曲部の線幅が広くなるようにしている。この構成によっても、屈曲部85b2の抵抗が、電熱線8の他の部分と比べて抵抗が小さくなるようにし、これによって、局所的な高い発熱を抑制することができる。なお、この場合の屈曲部の線幅は、最も線幅が大きい部分の線幅や、幅が変化する部分の長さLを、<4-1>で規定したものにすることができる。
【0075】
<4-3.屈曲部の態様3>
図5(c)に示す態様では、屈曲部85b2を構成する2つの電熱線8の内側の縁部同士を連結するバイパス電熱線85b4を設けている。これによって、屈曲部に流れる電流が、バイパス電熱線85b4に分散され、屈曲部85b2の頂部において、局所的な高い発熱が生じるのを抑制することができる。なお、バイパス電熱線の数は、特には限定されず、例えば、
図5(d)に示すように、2本のバイパス電熱線85b4,85b5を設けることもできる。
【0076】
<4-4.屈曲部の態様4>
図5(e)に示す態様では、屈曲部85b2の線幅は一定であるが、頂部を含む所定の長さの部分85b6において、厚みを大きくし、この部分85b6の抵抗が、電熱線8の他の部分と比べて抵抗が小さくなるようにしている。これによって、屈曲部85b2の頂部付近の局所的な高い発熱を抑制することができる。この部分の厚みは、例えば、1.2~40μmとすることが好ましく、4.5~30μmにすることがさらに好ましい。また、この部分の厚みは、他の部分の厚みの1.2倍以上が好ましく、1.5倍以上がさらに好ましく、2.0倍以上が特に好ましい。但し、厚みを大きくしすぎると、印刷のためのインクの量が多すぎてにじみが出たり、発熱抑制効果が低減するため、この部分の厚みは、他の部分の厚みの3倍以下であることが好ましい。なお、厚みが大きい部分の長さLは、上記<4-1>で示したものと同じにすることができる。
【0077】
<4-5.屈曲部の態様5>
図5(f)に示す態様では、屈曲部85b2の頂部に、電熱線8の幅よりも大きい外径の導電部85b7を設けている。この例では、円形の導電部が形成されている。これにより、屈曲部85b2の頂部における抵抗を小さくすることができる。その結果、屈曲部85b2の頂部付近の局所的な高い発熱を抑制することができる。同様に、屈曲部85b2を構成する2本の電熱線の間に、これら電熱線と一体的に三角形状の導電部85b8を形成することもできる。なお、導電部の形状は、特には限定されず、楕円状、多角形状、異形状など、種々の形状にすることができる。また、導電部の最大外径は、特には限定されないが、例えば、10mm以下とすることが好ましい。
【0078】
<4-6.屈曲部のその他の態様>
屈曲部において発熱を低減するには、上記のような構成に加え、次のように構成することもできる。例えば、屈曲部を形成する場所にもよるが、屈曲部の頂部から延びる2本の電熱線のなす角θは大きいことが好ましく、例えば、15度以上にすることができる。これにより2本の電熱線8の間の距離を大きくすることができ、発熱を抑制することができる。また、2本の電熱線8のなす角θの上限は特には限定されないが、電熱線8が配線される領域をコンパクトにするため、60度以下であることが好ましく、45度以下であることがさらに好ましい。
【0079】
また、屈曲部から鋭利な部分を無くすように、円弧状に形成することができる。この場合、例えば、屈曲部の曲率半径を1~10mmにすることができる。これは、屈曲部の曲率半径が1mmより小さいと、上記のような局所的な発熱が生じるおそれがある一方、曲率半径が、10mmより大きいと、円弧状の部分が、開口43内に入り込んでしまい、開口43を横断する部分が直線のみで形成できないおそれがあり、見映えが悪化するおそれがある。なお、曲率半径は、電熱線8の幅方向の中央を通過する線において測定する。
【0080】
以上、屈曲部の態様を説明したが、上述した態様は、少なくとも1つ以上を適宜組み合わせることができる。
【0081】
次に、電熱線8の材料や製造方法について説明する。上記のような電熱線8は、導電性材料であれば、種々の材料で形成することができるが、例えば、銀、銅などを用いることができる。また、銀や銅を単独で用いるほか、電熱線8に少なくとも一層の被覆材を被覆した積層構造を採用することもできる。例えば、遮蔽層4上ではなく、内側ガラス板12に電熱線8を直接積層する場合、遮蔽層4と同様の濃色のセラミックの層を被覆材としてガラス板1上に配置し、その上に銀で形成された電熱線8を形成することもできる。このようにすると、車外から銀の電熱線8が見えなくなるため、見栄えがよくなる。特に、このセラミック層と遮蔽層4とが同じ色であれば、車外から見たときに違和感がない。さらに、電熱線8を被覆材で挟むこともできる。すなわち、ガラス板12に被覆材を配置し、その上に電熱線8を配置し、さらに電熱線8を覆うように被覆材を配置した三層構造とすることもできる。これにより、車内側からも電熱線8が見えなくなる。特に、光が通過する開口43に銀の層が露出すると、光が反射するなど、光の通過を妨げる可能性があるため、好ましくない。したがって、銀の層の上に、被覆材として濃色のセラミックの層を形成すると、車内側から銀層が見えなくなる。また、電熱線8はガラス板1の車内側の面に配置されるため、電熱線8の上に接着剤を介してブラケットが取り付けられる可能性もある。この場合、接着剤の成分が銀を腐食させるおそれがある。したがって、この観点からも、銀をセラミックの層で被覆しておけば、銀が接着剤から影響を受けることを防止できる。
【0082】
このような電熱線8を含む層構造は、種々の態様が可能である。例えば、上述した端子部81,82を2層(ガラス板側からセラミック層、銀層をこの順で積層)、配線部83,84、85を3層(ガラス板側からセラミック層、銀層、セラミック層をこの順で積層)とし、遮蔽層4の開口43を通過する第3配線部85のみ銀層だけで形成することができる。なお、被覆材の線幅は、電熱線よりも大きいことが好ましい。また、銀層や銅層を被覆する被覆材は、セラミック以外でもよい。
【0083】
上記電熱線8を配置するに当たっては、上記のように、遮蔽層4を合わせガラスの異なる面に配置することができる。例えば、外側ガラス板11の内面側に遮蔽層4を形成し、内側ガラス板12の内面に電熱線を形成することができる。あるいは、外側ガラス板11と内側ガラス板12との間、例えば、中間膜13内、またはいずれか一方のガラス板11,12と接するように、電熱線8を配置することもできる。
【0084】
上記のような電熱線8は、種々の方法でガラス板上に配置することができる。例えば、内側ガラス板12(または、外側ガラス板11、以下同じ)が成形された後、内側ガラス板12上にスクリーン印刷などで形成し、遮蔽層4と同様に焼成することで、電熱線8を形成することができる。遮蔽層4を内側ガラス板12の同じ面に形成する場合には、遮蔽層4とともに印刷を行い、同時に焼成することもできる。その他、転写により、内側ガラス板12上に形成することもできる。
【0085】
<5.ウインドシールドの製造方法>
次に、ウインドシールドの製造方法について説明する。まず、所定の形状に形成された内側ガラス板12に、遮蔽層4を積層する。続いて、これらのガラス板11,12が湾曲するように成形する。この方法は、特には限定されないが、例えば、公知のプレス成形により行うことができる。あるいは、成形型上に外側ガラス板11及び内側ガラス板12を重ねて配置した後、この成形型を加熱炉を通過させて加熱する。これによって、これらのガラス板11,12を自重により湾曲させることができる。
【0086】
こうして、外側ガラス板11及び内側ガラス板12が成形されると、これに続いて、中間膜13を外側ガラス板11及び内側ガラス板12の間に挟んだ積層体を形成する。なお、中間膜13は、ガラス板11,12よりも大きい形状とする。
【0087】
次に、この積層体を、ゴムバッグに入れ、減圧吸引しながら約70~110℃で予備接着する。予備接着の方法は、これ以外でも可能であり、次の方法を採ることもできる。例えば、上記積層体をオーブンにより45~65℃で加熱する。次に、この積層体を0.45~0.55MPaでロールにより押圧する。続いて、この積層体を、再度オーブンにより80~105℃で加熱した後、0.45~0.55MPaでロールにより再度押圧する。こうして、予備接着が完了する。
【0088】
次に、本接着を行う。予備接着がなされた積層体を、オートクレーブにより、例えば、8~15気圧で、100~150℃によって、本接着を行う。具体的には、例えば、14気圧で135℃の条件で本接着を行うことができる。以上の予備接着及び本接着を通して、中間膜13が各ガラス板11,12に接着される。続いて、外側ガラス板11及び内側ガラス板12からはみ出した中間膜13を切断する。
【0089】
その後、上述した方法で、内側ガラス板12の内面に、電熱線8を形成する。
【0090】
<6.特徴>
<6-1>
以上説明したウインドシールドによれば、次のような効果を得ることができる。まず、遮蔽層4の開口43に電熱線8を積層することで、開口43の曇りを防止することができる。そのため、撮影装置2により、開口43を介して車外の撮影を行う際に、開口43における内側ガラス板12の曇りによって、撮影に支障を来たすのを防止することができる。
【0091】
特に、遮蔽層4の開口43が設けられる車内の上部は、暖房がONになっていても冷えやすく、曇りが生じやすい。したがって、このような位置に電熱線8が積層されていることは有利である。また、電熱線8が積層されている遮蔽層4の開口43は、撮影装置2が対向配置されたり、あるいはブラケット6により囲まれている。そのため、暖房やデフロスターからの暖気が届きにくいという問題がある。したがって、上記のように、暖気が届きにくい領域に防曇膜等を用いて防曇・解氷機能を設けることには大きい意義がある。
【0092】
<6-2>
また、屈曲部のように局所的な発熱が生じやすいと、その部分を加熱温度の上限値(例えば、70~80℃)として電流値の制御を行う必要がある。これは、加熱温度の上限値を超えて加熱を行うとガラス板が割れるおそれがあり、結果として生産歩留まりも低下するためである。しかしながら、局所的な発熱が生じる部分を加熱温度の上限値で加熱するように制御すると、その他の部分の加熱温度が低下するおそれがある。その結果、電熱線8が全体的に十分に発熱するように制御できないという問題がある。そこで、本実施形態では、屈曲部において、局所的な発熱が生じないように、上記態様1~5のように構成している。これにより、局所的な発熱を防止できるため、電熱線8も全体的に十分に発熱できるよう制御することができる。例えば、屈曲部の構成を調整することで、後述する実施例に示すように、屈曲部の頂部の温度と、屈曲部の頂部から35mm離れた2つの箇所の平均温度との差を15度未満にすることができる。
【0093】
なお、屈曲部の頂部を円弧状に形成すると、ガラス板の単位面積当たりの放熱量を抑制できると考えられるが、このようにすると、屈曲部の形状が円弧状に制限されてしまう。そこで、本実施形態では、上記のように、屈曲部を円弧状に形成しなくても、例えば、上記態様1~5に示すように構成することで、ガラス板の単位面積当たりの放熱量を抑制することができる。但し、態様1~5において、さらに屈曲部を円弧状に形成すると、より放熱量を抑制することができる。
【0094】
<6-3>
特に、上記実施形態における屈曲部は、単位長さ当たりの抵抗値が、第1、第3,及び第5パーツ85a,85c,85eの単位長さ当たりの抵抗値よりも小さくされており、これによって、発熱を抑えるようにしている。したがって、例えば、発熱を抑えるために、屈曲部を円弧状に形成しなくてもよく、屈曲部が鋭利な角部であっても、発熱を抑えることができる。但し、屈曲部を円弧状に形成すれば、さらに発熱を抑えることができる。
【0095】
<7.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は適宜組み合わせることができる。
【0096】
<7-1>
上記実施形態における電熱線の構成は、あくまで例示であり、種々の態様とすることができる。すなわち、電熱線の配線形状、長さは、適宜、設定することができ、また遮蔽層4の開口43との関係も適宜設定可能であり、上記実施形態で示した遮蔽層4の開口形状と、電熱線8の構成を適宜組み合わせることができる。
【0097】
例えば、開口43を通過する電熱線(本発明の本体部に相当)の数は、特には限定されないが、開口部分の曇りを防止するためには、例えば、3~50本にすることが好ましい。これは、例えば、開口43を通過する電熱線8が1本であると、曇りを十分に除去できないことによる。また、1本の電熱線8を用いて曇りを十分に除去しようとすると、電熱線8の温度を高くする必要があるが、そのようにすると、ガラス板が割れるおそれがある。したがって、開口43を通過する電熱線の数を上記のように設定することが好ましい。は、また、同様の観点から、開口43を通過する電熱線の合計面積は、2500mm2以上であることが好ましい。
【0098】
<7-2>
すべての屈曲部が発熱を低減するよう構成されていなくてもよく、一部の屈曲部で上記実施形態のように構成されていてもよい。また、開口43と対応するガラス板の曇り防止に直接的に貢献しない、第1配線部83、第2配線部84、及び第3配線部85の第2パーツ85b、第4パーツ85dの少なくとも1つの単位長さ当たりの抵抗を、第1パーツ85a及び第3パーツ85cの単位長さ当たりの抵抗よりも小さくすることができる。この場合、屈曲部以外の箇所においても、線幅を広くしたり、厚みを大きくするなどによって、抵抗値を小さくすることができる。あるいは、
図6に示すように、例えば、第2パーツ85bの直線部と並列に延びるバイパス電熱線85b9を1以上設けることで、第2パーツ85b全体、つまり第2パーツ85bの単位長さ当たりの抵抗を小さくすることができる。このようなバイパス電熱線85b9は、第2パーツ85b以外にも設けることができる。
【0099】
<7-3>
遮蔽層4に2以上の開口を形成することもできる。この場合、例えば、
図7に示すように、2つの開口43に亘って直列の電熱線8を配置することができる。
図7の例では、電熱線8において2つの開口43の間の部分89の線幅を広くし、抵抗を小さくすることで、発熱を低減している。同様に、
図8の例では、電熱線において2つの開口43の間の部分89に、並列な電熱線を設け、これによって、この部分の抵抗を小さくし、発熱を低減している。このように、複数の開口43を設ける場合に、その間に掛け渡される電熱線8の抵抗値を下げるようにすることができ、例えば、厚みを大きくするなど、上述した種々の方法を適用することができる。
【0100】
<7-4>
また、上記実施形態では、電熱線8を直列に形成しているが、並列回路においても同様に構成することができる。すなわち、並列回路においても、開口を通過する部分が本発明の本体部を構成し、開口の外側の部分において、本体部同士を連結する部分連結部を構成する。そして、連結部に形成される屈曲部を、上記のように構成すればよい。
【0101】
<7-5>
遮蔽層4の一部または全部を、ガラス板へ貼り付け可能な遮蔽フィルムで構成し、これによって車外からの視野を遮蔽することもできる。なお、遮蔽フィルムを内側ガラス板12の車外側の面に貼り付ける場合には、予備接着の前、または本接着の後に貼付を行うことができる。
【0102】
また、ガラス板において、撮影時の光(撮影対象の像など)の通路の曇りを防止するという観点からすれば、必ずしも遮蔽層は必要ではなく、光が通過する領域(情報取得領域)に電熱線8が形成されていればよい。
【0103】
<7-6>
上記実施形態では、本発明の情報取得装置として、撮影装置を用いたが、これに限定されるものではなく、種々の情報取得装置を用いることができる。すなわち、車外からの情報を取得するために、光の照射及び/または受光を行うものであれば、特には限定されない。例えば、車間距離を測定するセンサ、車間距離を測定するための可視光線及び/又は赤外線カメラ、光ビーコンなどの車外からの信号を受信する受光装置、道路の白線等を画像にて読み取る可視光線及び/又は赤外線を使用したカメラなど、種々の装置に適用することができる。また、遮蔽層4の開口の数は、情報取得装置の種類に応じて、適宜変更することができる。例えば、光の照射、及び受光をそれぞれ専用の開口を通して行うことできる。なお、情報取得装置はガラス板に接触していても接触していなくても良い。いずれにしても、ガラス板において、情報取得装置の光が通過する領域(情報取得領域)に電熱線が形成される。
【実施例】
【0104】
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されない。
以下では、本発明の連結部の構造が異なる実施例1~11を作製した。
図9Aが実施例1~11の基本構造、
図9Bが比較例の構造であり、全長は140mmである。
図9Aに示す実施例1~11の基本構造では、上述した態様1~5のいずれかと対応する屈曲部が設けられているが、
図9Bに示す比較例の構造では、実施例のような屈曲部は設けられてない。これら実施例1~11の連結部は、屈曲部の線幅、屈曲部以外の部分(以下、線端部という)の線幅、屈曲部の厚み、屈曲部の長さ、バイパス電熱線の有無、導電部の有無が相違している。また、実施例1~11及び比較例の屈曲部の頂部は、いずれも鋭角(角度θ=45度)であり、円弧状には形成されていない(曲率半径は0)。また、線端部の厚みは、いずれも6μmである。
【0105】
実施例1~11及び比較例に係る連結部は、すべて、厚さが2mm、1辺が125mmの正方形状のグリーンガラス上に銀プリントによって形成した。また、各連結部の両端には、一辺が10mmの正方形状の銀プリントの印加部を設けた。
【0106】
実施例1~11及び比較例に係る連結部に対しては、両印加部において測定した抵抗値から、発熱量が一定となるように、印加部に印加する電圧を調整した。ここでは、目標とする発熱量を25W/mとした。連結部全体の発熱量は、3.5W(25W/m*0.14m)となる。また、電圧の印加時間は、5分間とした。実施例1~11及び比較例における、抵抗値、印可前のガラス板の温度、印加電圧は、以下の表2の通りである。
【表2】
【0107】
実施例1~11及び比較例に係る連結部の仕様は、以下の通りである。実施例1~6は、屈曲部の長さと線端部の幅が相違している(例えば、
図5(a)参照)。実施例7,8は、屈曲部の厚みと線端部の厚みが相違している(例えば、
図5(e)参照)。実施例9,10はバイパス電熱線が設けられている(例えば、
図5(c)(d)参照)。実施例11は、1mmの円形の導電部が設けられている(例えば、
図5(f)参照)。一方、比較例は,実施例のような屈曲部が設けられておらず、屈曲部及び線端部が一体となっており、これらの幅及び厚さは同じである。
【表3】
【0108】
以上のように構成された実施例1~11及び比較例に対し、
図9A及び
図9Bに示すa,b,cにおいて電熱線の温度を測定した。bは屈曲部の頂部であり、a,cはそれぞれbから35mm離れた連結部上の点である。そして、実施例1~18において、a,cの平均温度sと、bの温度と、の温度差dTを、それぞれ、算出した。結果は、以下の通りである。
【表4】
【0109】
以上の結果によれば、全ての実施例において、温度差dTが15℃未満となっている。したがって、実施例1~11では、連結部全体において局所的に高温となる箇所が発生しておらず、高温を発生しやすい屈曲部の頂部であるbから離れた位置(例えば、a,c)であっても、適切な加熱温度が確保できていることが分かった。したがって、例えば、加熱温度の上限値が、例えば、70~80℃となるように制御を行った場合でも、局所的な発熱を抑制でき、連結部全体を十分に発熱できることが分かった。一方、比較例では、dT温度差が15℃を超えており、全体的に不均一な傾向であることが分かった。
【0110】
実施例6の結果に示すように、屈曲部の幅を線端部の幅よりも広くし、且つ屈曲部の長さを長くすると、bの温度が低減できている。また、実施例8の結果に示すように、屈曲部の厚みを線端部の厚みよりも大きくすると、bの温度が低減できている。さらに、実施例9及び10のように、バイパス電熱線を設けることで、bの温度の低減効果が得られている。
【符号の説明】
【0111】
1 ガラス板
2 撮影装置(情報取得装置)
4 遮蔽層
43 開口(情報取得領域)
8 電熱線