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特許7603015極板、非水電解質二次電池、及び極板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】極板、非水電解質二次電池、及び極板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20241212BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20241212BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20241212BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20241212BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20241212BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20241212BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20241212BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/02 Z
H01M10/0587
H01M10/0585
H01M4/139
H01M4/04 Z
H01M50/533
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021553414
(86)(22)【出願日】2020-10-19
(86)【国際出願番号】 JP2020039214
(87)【国際公開番号】W WO2021085202
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2019199732
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】曲 佳文
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-098022(JP,A)
【文献】特開2018-037309(JP,A)
【文献】特開2010-034009(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021214(WO,A1)
【文献】特開2013-218819(JP,A)
【文献】特開2016-033912(JP,A)
【文献】国際公開第2019/167559(WO,A1)
【文献】特開2011-096575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/66
H01M 10/052
H01M 10/0587
H01M 10/0585
H01M 50/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回形又は積層形の電極体に含まれる極板であって、
帯状の極板芯体と、
前記極板芯体の両面に形成された合剤層と、
前記極板芯体の短手方向の一方の端部から延出したタブと、を備え、
前記タブが延出する側の端部において、前記極板芯体が露出した部分と前記極板芯体の表面に前記合剤層が形成された部分との界面が存在しないように、前記極板芯体の先端部の全体が前記合剤層に被覆されており、
前記先端部を被覆する前記合剤層の厚みは、前記極板芯体の前記先端部よりも内部側に形成された前記合剤層の片面の厚みよりも薄く、
前記極板芯体の短手方向の前記先端部の幅は、一方の面における幅aが、他方の面における幅bよりも大きい、極板。
【請求項2】
前記先端部は、前記極板芯体の厚み方向に沿って切断した断面視で鉤爪形状を有する、請求項1に記載の極板。
【請求項3】
極板は負極板である、請求項1又は2に記載の極板。
【請求項4】
請求項1に記載の極板を含む巻回形又は積層形の電極体と、
前記電極体を収容する開口を有する外装体と、
前記開口を封口し、前記タブと接続する封口板と、を備える非水電解質二次電池であって、
前記タブは根元が傾倒しており、前記タブの前記先端部の幅がaである側の面と前記電極体の上面とのなす角は鈍角である、非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記電極体は巻回形であり、
前記電極体において、前記先端部の幅がaである側の面は、巻内側に向いている、請求項4に記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
巻回形又は積層形の電極体に含まれる極板の製造方法であって、
帯状の極板芯体用基材の長手方向に沿って前記極板芯体用基材の両面に帯状の合剤層を形成する合剤層形成ステップと、
前記極板芯体用基材の一方の面にレーザ光を照射することで、両面に前記合剤層が形成された帯状の極板芯体と、前記極板芯体の短手方向の一方の端部から延出したタブと、を有する極板を切り出す切断ステップと、を含み、
前記切断ステップで切り出された極板では、
前記タブが延出する側の端部において、前記極板芯体が露出した部分と前記極板芯体の表面に前記合剤層が形成された部分との界面が存在しないように、前記極板芯体の先端部の全体が前記合剤層に被覆されており、
前記先端部を被覆する前記合剤層の厚みは、前記極板芯体の前記先端部よりも内部側に形成された前記合剤層の片面の厚みよりも薄く、
前記極板芯体の短手方向の前記先端部の幅は、一方の面における幅aが、他方の面における幅bよりも大きい、極板の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の巻回形又は積層形の電極体に含まれる極板の製造方法であって、前記レーザ光の照射条件は、波長が1.06μm、繰り返し周波数が10~150kHz、極板厚み当たりのエネルギーが0.33mJ/mm・μm~2.00mJ/mm・μm、パルス幅が30ns~300nsである、極板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、極板、非水電解質二次電池、及び極板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池を構成する正極又は負極の極板は、各々の芯体の表面に合剤層を有している。合剤層に含まれる活物質が電池内部で脱落すると内部短絡が発生する可能性があり、活物質の脱落を抑制することで電池の信頼性を向上させることができる。活物質の脱落は特に極板の端部で発生しやすいので、例えば特許文献1には、極板の端部から合剤層を除去した二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-34009号公報
【発明の概要】
【0004】
特許文献1に開示された方法では、芯体が露出した部分と芯体の表面に合剤層が形成された部分との界面で活物質の脱落が生じる可能性があり、未だに改良の余地がある。
【0005】
本開示の一形態である極板は、巻回形又は積層形の電極体に含まれる極板であって、帯状の極板芯体と、極板芯体の両面に形成された合剤層と、極板芯体の短手方向の一方の端部から延出したタブと、を備え、タブが延出する側の端部において、極板芯体の先端部は合剤層に被覆されていることを特徴とする。
【0006】
本開示の一態様である非水電解質二次電池は、上記の極板を含む巻回形又は積層形の電極体と、電極体を収容する開口を有する外装体と、開口を封口し、タブと接続する封口板と、を備える非水電解質二次電池であって、極板芯体の短手方向の先端部の幅は、一方の面における幅aが、他方の面における幅bよりも大きく、タブは根元が傾倒しており、タブの先端部の幅がaである側の面と電極体の上面とのなす角は鈍角であることを特徴とする。
【0007】
本開示の一形態である極板の製造方法は、巻回形又は積層形の電極体に含まれる極板の製造方法であって、帯状の極板芯体用基材の長手方向に沿って極板芯体用基材の両面に帯状の合剤層を形成する合剤層形成ステップと、極板芯体用基材の一方の面にレーザ光を照射することで、両面に合剤層が形成された帯状の極板芯体と、極板芯体の短手方向の一方の端部から延出したタブと、を有する極板を切り出す切断ステップと、を含み、切断ステップで切り出された極板は、タブが延出する側の端部において、極板芯体の先端部が合剤層に被覆されていることを特徴とする。
【0008】
本開示の一態様によれば、極板からの活物質の脱落を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態の一例である角形非水電解質二次電池を示す斜視図である。
図2図2は、図1のA-A方向に見た正面縦断面図である。
図3図3は、図2に示した非水電解質二次電池の電極群の斜視図であり、手前側の電極体の巻外端を展開した図である。
図4図4は、実施形態の一例における負極板を展開状態で示した正面図である。
図5図5は、図4のC-C線に沿った断面図である。
図6図6は、実施形態の一例における負極板を厚み方向に沿って切断した断面において、先端部近傍を走査型電子顕微鏡で撮影した写真である。
図7図7は、図2のB-B線に沿った断面において、負極タブ周辺を拡大した断面図である。
図8図8は、実施形態の一例における負極板の切断方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の一例について詳細に説明する。なお、本明細書において、図1図3の紙面縦方向を「上、下」、横方向を「左、右」、奥行方向を「手前、奥」で表すことがある。
【0011】
図1及び図2を参照しつつ、実施形態の一例である非水電解質二次電池100の構成を説明する。図1は、実施形態の一例である非水電解質二次電池100の外観を示す斜視図であり、図2は、図1におけるA-A方向に見た正面縦断面図である。図1及び図2に示すように、非水電解質二次電池100は、上部に開口を有する外装体1と、当該開口を封口する封口板2とを有する電池ケース16を備える。外装体1及び封口板2は、それぞれ金属製であることが好ましく、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金製とすることができる。外装体1は、底部と側壁を有し、底部と対向する位置に開口を有する角形の有底筒状の外装体である。図1に示す非水電解質二次電池100は、角形の電池ケース16を有する角形非水電解質二次電池の例であるが、本実施形態の非水電解質二次電池は、これに限定されない。例えば、開口部の形状が円形、長円形、楕円形の電池ケースでもよいし、金属箔を樹脂シートでラミネートして形成されたラミネートシート製電池ケースを有するラミネート非水電解質二次電池等でもよい。封口板2は、角形の外装体1の開口縁部にレーザ溶接等により接続される。
【0012】
封口板2は電解液注入孔13を有する。電解液注入孔13は、後述する電解液を注入した後、封止栓14により封止される。また、封口板2は、ガス排出弁15を有する。このガス排出弁15は電池内部の圧力が所定値以上となった場合に作動し、電池内部のガスを電池外部に排出する。
【0013】
封口板2には、電池ケース16外に突出するように正極端子4が取り付けられている。具体的には、正極端子4は、封口板2に形成された正極端子取り付け孔に挿入されており、正極端子取り付け孔の電池外側に配置された外部側絶縁部材9、電池内側に配置された内部側絶縁部材8により封口板2と電気的に絶縁された状態で封口板2に取り付けられている。正極端子4は、電池ケース16内で正極集電体5と電気的に接続している。正極集電体5は、内部側絶縁部材8を挟んで封口板2に設けられている。内部側絶縁部材8及び外部側絶縁部材9はそれぞれ樹脂製であることが好ましい。
【0014】
また、封口板2には、電池ケース16外に突出するように負極端子6が取り付けられている。具体的には、負極端子6は、封口板2に形成された負極端子取り付け孔に挿入されており、負極端子取り付け孔の電池外側に配置された外部側絶縁部材11、電池内側に配置された内部側絶縁部材10により封口板2と電気的に絶縁された状態で封口板2に取り付けられている。負極端子6は、電池ケース16内で負極集電体7と電気的に接続している。負極集電体7は、内部側絶縁部材10を挟んで封口板2に設けられている。内部側絶縁部材10及び外部側絶縁部材11はそれぞれ樹脂製であることが好ましい。
【0015】
非水電解質二次電池100は電極群3と電解液を備え、外装体1は巻回形の電極群3と電解液を収容する。後述するように、電極群3は、正極板20と負極板30とがセパレータ40を介して巻回された巻回構造を有する電極体を2つ含んでいる。電極群3の上部において、正極板20及び負極板30から各々正極タブ28及び負極タブ38が突出している。正極タブ28及び負極タブ38は、奥行方向に屈曲しており、それぞれ正極集電体5及び負極集電体7に溶接等により接続されている。電極体は、巻回形に限定されず、積層形でもよい。
【0016】
非水電解質二次電池100は、図2に示すように、電極群3と外装体1との間に配置される絶縁シート12を備えることができる。絶縁シート12は、例えば、外装体1と同様に、上部に開口を有する有底箱状又は袋状の形状を有している。絶縁シート12が上部に開口を有する有底箱状又は袋状の形状を有することで、電極群3を絶縁シート12の開口から挿入し、絶縁シート12によって電極群3を覆うことができる。絶縁シート12の素材は、電気的な絶縁性、電解液に侵されない化学的安定性、及び非水電解質二次電池100の電圧に対して電気分解しない電気的安定性を有する素材であれば、特に限定されない。絶縁シート12の素材としては、例えば、工業的な汎用性、製造コスト及び品質安定性の観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化エチレン等の樹脂材料を用いることができる。
【0017】
電解液は、溶媒と、溶媒に溶解した電解質塩とを含む。溶媒は、非水溶媒を使用できる。非水溶媒には、例えばカーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、およびこれらの2種以上の混合溶媒等を用いてもよい。カーボネート類としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート類が挙げられる。非水溶媒は、上記の溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。なお、電解液は液体電解質に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。電解質塩は、リチウム塩を含む。リチウム塩には、従来の非水電解質二次電池100において支持塩として一般に使用されているLiPF等を用いることができる。また、適宜ビニレンカーボネート(VC)等の添加剤を添加することもできる。
【0018】
図3は、巻回された2つの電極体3a、3bから成る電極群3の斜視図であり、手前側の電極体3aの巻外端を展開した図である。電極体3a、3bは、いずれも正極板20と負極板30とがセパレータ40を介して巻回された巻回構造を有している。電極体3a、3bは、各々、巻回した後にプレスされて成形されるため、手前側と奥側の面が略平行で、左右端が湾曲した扁平な形状をしている。電極群3を構成する電極体の数は2つに限定されず、1つまたは3つ以上であってもよい。また、正極タブ28の束(以下、「正極タブ群」という場合がある)が電極体3a、3bの各々から上方に突出している。負極タブ38の束(以下、「負極タブ群」という場合がある)も正極タブ群と同様に、電極体3a、3bの各々から上方に突出している。正極タブ群及び負極タブ群の数や、これを構成する各電極タブの枚数は特に限定されない。
【0019】
セパレータ40には、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータ40の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、セルロース等が好適である。セパレータ40は、セルロース繊維層及びオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂繊維層を有する積層体であってもよい。また、ポリエチレン層及びポリプロピレン層を含む多層セパレータであってもよく、セパレータ40の表面にアラミド系樹脂等の樹脂、又はアルミナ、チタニア等の無機微粒子が塗布されたものを用いることもできる。
【0020】
以下、図3図5を参照しつつ、電極群3を構成する正極板20及び負極板30について詳説する。
【0021】
まず、正極板20について説明する。図3に示すように、正極板20は、帯状の正極芯体22、正極芯体22の両面に形成された正極合剤層24、及び正極芯体22の短手方向の一方の端部から上方に延出した正極タブ28を有する。
【0022】
正極芯体22には、アルミニウムなどの正極板20の電位範囲で安定な金属の箔が用いられる。正極芯体22の厚みは、例えば10~20μmである。
【0023】
正極合剤層24は、正極芯体22の長手方向に沿って、正極芯体22の表面の少なくとも一部に帯状に形成されている。正極合剤層24は、正極芯体22の両面の対応する位置に設けられることが好ましい。正極合剤層24は、正極活物質、結着材、及び導電材を含み、正極芯体22の両面に正極活物質、結着材、及び導電材等を含む正極活物質スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、ローラ等により圧縮することにより作製できる。
【0024】
正極活物質としては、一般式Li1+x2+b(式中、x、a、及びbはx+a=1、-0.2<x≦0.2、-0.1≦b≦0.1の条件を満たし、MはNiとCoを含み、MnとAlからなる群より選択された少なくとも一種の元素を含む)で表されるリチウム金属複合酸化物を含有する。正極活物質として、他のリチウム金属複合酸化物等が少量含まれていてもよいが、上記一般式で表されるリチウム金属複合酸化物を主成分とすることが好ましい。
【0025】
リチウム金属複合酸化物は、Ni、Co、Mn、及びAl以外の他の元素を含んでいてもよい。他の元素としては、Li以外のアルカリ金属元素、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素、アルカリ土類金属元素、第12族元素、Al以外の第13族元素、並びに第14族元素が挙げられる。具体的には、Zr、B、Mg、Ti、Fe、Cu、Zn、Sn、Na、K、Ba、Sr、Ca、W、Mo、Nb、Si等が例示できる。なお、リチウム金属複合酸化物の粒子表面には、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化アルミニウム、ランタノイド含有化合物等の無機化合物粒子などが固着していてもよい。
【0026】
リチウム金属複合酸化物の粒径は、特に限定されないが、例えば平均粒径が2μm以上30μm未満であることが好ましい。平均粒径が2μm未満である場合、正極合剤層24内の導電材による通電を阻害して抵抗増加する場合がある。一方、平均粒径が30μm以上である場合、反応面積の低下により、負荷特性が低下する場合がある。平均粒径とは、レーザ回折法によって測定される体積平均粒径であって、粒子径分布において体積積算値が50%となるメジアン径を意味する。平均粒径は、例えば、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製)を用いて測定できる。
【0027】
正極合剤層24に含まれる結着材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。これらの結着材は、1種類を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0028】
正極合剤層24に含まれる導電材としては、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料などが挙げられる。これらの導電材は、1種類を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0029】
正極合剤層24の充填密度は2.0g/cm~4.0g/cmとしてもよい。正極合剤層24の充填密度が高い方が電池の容量は大きくなる。
【0030】
図3に示すように、正極合剤層未塗布部26は、正極芯体22の表面において、正極合剤層24が形成されておらず、正極芯体22が露出した領域である。また、正極板20には、後述する負極板30と同様に、正極合剤層未塗布部26が存在せず、正極合剤層24が正極芯体22の表面の全体に形成されていてもよい。また、正極芯体22の短手方向において、正極タブ28が延出する側の端部の先端部が正極合剤層24で被覆されていてもよい。
【0031】
正極タブ28は、正極芯体22の短手方向の一方の端部から延出している。正極板20は、正極芯体22の長手方向に複数の正極タブ28を有しており、正極芯体22の長手方向における正極タブ28の間の距離は巻回された際に整列するように調整されている。
【0032】
正極タブ28の根元を含めて正極合剤層未塗布部26の一部または全てを覆うように、正極芯体22よりも電気抵抗が高い保護層を設けてもよい。保護層は、正極合剤層未塗布部26の意図しない部分で通電が起こるのを抑制するために設けられる。保護層の厚さは、例えば、20μm~120μmであり、50μm~100μmであってもよい。保護層は、アルミナ、ジルコニア、チタニア及びシリカ等のセラミック粒子、及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)等の結着材を含んでもよい。
【0033】
正極タブ28の形状は、特に限定されないが、例えば、左右対称の形状であってもよい。また、正極タブ28は各々の形状が異なっていてもよいが、束ねるためには同じ形状であることが好ましい。
【0034】
次に、負極板30について説明する。図3に示すように、負極板30は、帯状の負極芯体32、負極芯体32の両面に形成された負極合剤層34、及び負極芯体32の短手方向の一方の端部から上方に延出した負極タブ38を有する。
【0035】
負極芯体32には、銅などの負極板30の電位範囲で安定な金属の箔を用いることができる。負極芯体32の厚みは、例えば5~15μmである。
【0036】
負極合剤層34は、負極芯体32の長手方向に沿って、負極芯体32の表面に帯状に形成されており、負極芯体32の表面の全体に形成されていてもよい。また、負極合剤層34は、負極芯体32の両面の対応する位置に設けられることが好ましい。負極板30は、負極活物質及び結着材を含む。負極板30は、負極芯体32上に負極活物質、及び結着材等を含む負極活物質スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、ローラ等により圧縮して負極合剤層34を負極芯体32の両面に形成することにより作製できる。
【0037】
負極活物質は、例えば黒鉛の表面に低結晶性炭素の被膜を形成してなる低結晶性炭素被覆黒鉛が挙げられる。低結晶性炭素は、グラファイト結晶構造が発達していない、アモルファス若しくは微結晶で乱層構造な状態の炭素材料であるか、または、球形や鱗片形状でなく非常に微細な粒子径をもつ炭素材料である。例えば、X線回折によるd(002)面間隔が0.340nmより大きい炭素材料は低結晶性炭素である。また、走査型電子顕微鏡(SEM)等により観察され、測定される一次粒子の平均粒径が1μm以下である炭素材料も低結晶性炭素である。低結晶性炭素の具体例としては、例えば、ハードカーボン(難黒鉛化炭素)、ソフトカーボン(易黒鉛化炭素)、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラック、カーボンファイバー、活性炭等が挙げられる。負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できるものであれば特に限定されず、例えば天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料、ケイ素(Si)、錫(Sn)等のLiと合金化する金属、又はSi、Sn等の金属元素を含む酸化物などを用いることができる。また、負極合剤層34は、リチウムチタン複合酸化物を含んでいてもよい。
【0038】
負極合剤層34に含まれる結着材には、公知の結着材を用いることができ、正極合剤層24の場合と同様に、PTFE、PVdF等のフッ素系樹脂、PAN、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、並びに、ポリオレフィン系樹脂等を用いることができる。また、水系溶媒を用いて負極活物質スラリーを調製する場合に用いられる結着材としては、CMC又はその塩、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩、ポリビニルアルコール(PVA)等が例示できる。
【0039】
負極合剤層34の充填密度は1.0g/cm~2.0g/cmとしてもよい。負極合剤層34の充填密度が高い方が電池の容量は大きくなる。
【0040】
次に、図4及び図5を参照しつつ、負極板30について説明する。図4は負極板30を展開状態で示した正面図であり、図5図4のC-C線に沿った断面図である。図4に示すように、負極板30は、負極芯体32の長手方向に複数の負極タブ38を有しており、負極芯体32の長手方向における各負極タブ38の間の距離は巻回された際に整列するように調整されている。
【0041】
負極タブ38の形状は、特に限定されないが、例えば、左右対称の形状であってもよい。また、負極タブ38は各々の形状が異なっていてもよいが、束ねるためには同じ形状であることが好ましい。
【0042】
図5に示すように、負極タブ38が延出する側の端部において、負極芯体32の先端部36は、負極合剤層34に被覆されている。これにより、先端部36において、負極芯体32が露出した部分と負極芯体32の表面に負極合剤層34が形成された部分との界面が存在しないので、負極板30からの負極活物質の脱落を抑制することができる。ここで、先端部36とは、負極芯体32の負極タブ38が延出する側の端部において、負極芯体32の端面、及び、負極芯体32の表面において負極芯体32の端面に隣接した部分とをいう。
【0043】
先端部36を被覆する負極合剤層34の厚みは、負極芯体32の先端部36よりも内部側に形成された負極合剤層34の片面の厚みよりも薄くてもよい。
【0044】
また、負極芯体32の短手方向の先端部36の幅は、一方の面における幅aが、他方の面における幅bよりも大きくてもよい。図5において、先端部36は、負極芯体32の端面、並びに、負極芯体32の表面において負極芯体32の端面に隣接した幅a及び幅bの部分からなる。また、図5において先端部36を被覆する負極合剤層34の厚みは、略同じであるが、不均一でもよい。
【0045】
一方の面における先端部36の幅aは、例えば、30μm~100μmである。また、他方の面における先端部36の幅bは、例えば、5μm~50μmである。
【0046】
図6は、負極板30を厚み方向に沿って切断した断面において、先端部36近傍を走査型電子顕微鏡で撮影した写真である。負極板30の厚みは169μmであり、負極芯体32は厚み8μmの銅板である。負極合剤層34は、98.3質量%の黒鉛、0.7質量%のCMC、1.0質量%のSBRからなり、充填密度は1.6g/cmである。負極板30の製造方法について詳細は後述するが、先端部36近傍はレーザ光によって切断される。波長1.06μm、ピーク出力37.5kW、繰り返し周波数20kHz、パルス幅100nsのレーザ光を、焦点距離100mmのレンズで集光しつつ30m/minの走査速度で上記の負極板30に照射した。極板厚み当たりのエネルギーは0.89mJ/mm・μmであった。極板厚み当たりのエネルギーは、「極板厚み当たりのエネルギー=パルスエネルギー(mJ)×1mm当たりの照射回数/極板厚み(μm)」で表される。ここで、1mm当たりの照射回数は、極板が1mm進む間に照射されるレーザ光の回数である。負極板30がレーザ光の略ビームウエストの位置になるようにしてレーザ光を照射した。図6においては、図5に示した負極板30の断面図のように、先端部36が負極合剤層34で被覆されている。また、先端部36を被覆する負極合剤層34の厚みは、先端部36よりも内部側に形成された負極合剤層34の片面の厚みよりも薄い。
【0047】
図6に示すように、先端部36は、負極芯体32の厚み方向に沿って切断した断面視で鉤爪形状を有してもよい。これにより、先端部36と負極合剤層34との結着力が向上するので活物質の脱落をさらに抑制できる。また、鉤爪形状は負極合剤層34に被覆されているので、鉤爪形状がセパレータ40に接触して傷つけることを抑制できる。
【0048】
次に、図7を参照しつつ、非水電解質二次電池100内部での負極タブ38について説明する。図7は、図2のB-B線に沿った断面において、負極タブ38周辺を拡大した断面図である。電極体3aから延伸する負極タブ38aは、根元が奥行方向の手前側に傾倒しており、屈曲した後に封口板2に取り付けられた負極集電体7に接続している。ここで、図7に図示しない先端部36の幅がaである側の面は、奥行き方向の奥側を向いていて、負極タブ38aの先端部36の幅がaである側の面と電極体3aの上面50aとのなす角α1は鈍角になっていてもよい。また、電極体3bから延伸する負極タブ38bは、根元が奥行方向の奥側に傾倒しており、屈曲した後に封口板2に取り付けられた負極集電体7に接続している。ここで、図7に図示しない先端部36の幅がaである側の面は、奥行き方向の手前側を向いていて、負極タブ38bの先端部36の幅がaである側の面と電極体3bの上面50bとのなす角α2は鈍角になっていてもよい。α1とα2とは同じ角度であってもよいし、異なっていてもよい。
【0049】
また、図3に示すように、負極タブ38a、38bを各々の電極体3a、3bの巻芯に対して一方の側のみに寄せることで先端部36の面を揃えることができる。図3においては、負極タブ38a、38bが奥行方向の外装体1に近い側に寄っているので、図7のように非水電解質二次電池100に電極群3を収容した時には、負極タブ38の先端部36の幅がaである側の面は、巻内側に向いている。
【0050】
次に、負極板30の製造方法について説明する。負極板30の製造方法は、合剤層形成ステップと切断ステップとを含む。合剤層形成ステップでは、帯状の負極芯体32用基材の長手方向に沿って負極芯体32用基材の両面に帯状の負極合剤層34を形成する。負極合剤層34は、負極芯体32用基材の表面に負極活物質、及び結着材等を含む負極活物質スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、ローラ等により圧縮して負極合剤層34を負極芯体32の両面に形成することにより作製できる。切断ステップでは、負極芯体32用基材の一方の面にレーザ光を照射することで、両面に負極合剤層34が形成された帯状の負極芯体32と、負極芯体32の短手方向の一方の端部から延出した負極タブ38と、を有する負極板30を切り出す。切断ステップで切り出された負極板30は、タブが延出する側の端部において、負極芯体32の先端部36が負極合剤層34に被覆されている。
【0051】
以下、負極板30の切断方法について説明するが、正極板20についても同様に切断してもよい。図8は、負極板30の切断方法の一例を説明する図である。図8の点線は、レーザ光の走査跡を示す。帯状の負極芯体32用基材の長手方向に沿って負極芯体32用基材の両面に帯状の負極合剤層34が形成されており、負極合剤層34が形成されていない部分には負極芯体32が露出している。切断ステップにおいて、レーザ光は、先端部36及び負極タブ38の形状に合わせて走査される。先端部36は、負極芯体32が露出した部分と負極合剤層34が形成された部分の境界よりも内部側の、負極合剤層34が形成された部分をレーザ光が走査することで切り出される。負極タブ38は、先端部36から外部側に突出しており、根元部分に負極合剤層34が形成された部分を含みつつ、負極芯体32が露出した部分を切断することで切り出される。
【0052】
レーザ光の特性及びレーザ照射光学系は、特に限定されないが、例えば表1の条件の範囲で、負極芯体32及び負極合剤層34の厚み、組成等に合わせて適宜調整することで、所望の負極板30を製造することができる。
【0053】
【表1】
【0054】
繰り返し周波数が小さいと、パルスエネルギーが大きくなって極板切断面が粗くなるため10kHz以上が好ましく、繰り返し周波数が大きいと、パルスエネルギーが小さくなって加工性が悪くなりラインスピードが遅くなるため150kHz以下が好ましい。
【0055】
極板厚み当たりのエネルギーが小さいと合剤が芯体表面から剥離するため、0.33mJ/mm・μm以上が好ましく、極板厚み当たりのエネルギーが大きいと先端部36の幅aが大きくなりすぎるため4.13mJ/mm・μm以下が好ましい。
【0056】
パルス幅は、10~300nsが好ましく、50~200nsがさらに好ましい。
【0057】
レーザ光を走査するには、負極芯体32用基材を移動させてもよいし、レーザ光を例えばガルバノスキャナシステムを使用して移動させてもよい。また、負極タブ38が延出する側とは反対側の端部、巻始端、及び巻終端は、上述のようにレーザ光を使用して切断してもよいし、スリット刃を用いて切断してもよい。
【0058】
上述したように、本実施形態の極板によれば、活物質の脱落を抑制することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 外装体
2 封口板
3 電極群
4 正極端子
5 正極集電体
6 負極端子
7 負極集電体
8,10 内部側絶縁部材
9,11 外部側絶縁部材
12 絶縁シート
13 電解液注入孔
14 封止栓
15 ガス排出弁
16 電池ケース
20 正極板
22 正極芯体
24 正極合剤層
28 正極タブ
30 負極板
32 負極芯体
34 負極合剤層
36 先端部
38 負極タブ
40 セパレータ
50 (電極体の)上面
100 非水電解質二次電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8