(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】簡易保育器及びその簡易保育器を備える保育システム
(51)【国際特許分類】
A61G 11/00 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
A61G11/00 Z
(21)【出願番号】P 2021567609
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2020048433
(87)【国際公開番号】W WO2021132459
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2019236114
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390022541
【氏名又は名称】アトムメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】田邉 佳史
(72)【発明者】
【氏名】五島 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】小平 雄一
(72)【発明者】
【氏名】小堀 周作
(72)【発明者】
【氏名】平川 英司
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-513318(JP,A)
【文献】特表2014-528792(JP,A)
【文献】特開2016-198161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
児収容室を取り囲むように配置される壁部と、
前記壁部の上方に位置する天面部とを備え、
前記壁部は、前記壁部内に気体を注入することにより前記児収容室の高さ方向に沿って拡張可能で、かつ、前記壁部内から前記気体を排出することにより前記児収容室の高さ方向に沿って収縮可能に構成されて
おり、
前記壁部の一部には、外部から前記児収容室にアクセスできるように開口が形成され、該開口を覆う扉が開閉可能に設けられていることを特徴とする簡易保育器。
【請求項2】
前記壁部は、複数の小袋部が連結部を介して面状に連結されてなり、
前記複数の小袋部のそれぞれは、水平方向に伸びる筒形状をなし、前記児収容室の高さ方向に沿って積み重なるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の簡易保育器。
【請求項3】
前記扉の内側に保温カーテンが設けられていることを特徴とする請求項
1に記載の簡易保育器。
【請求項4】
前記開口は、前記天面部の一部及び該天面部に連続する前記壁部の一部を切り欠くように形成され、
前記扉は、切り欠かれた前記天面部の一部及び前記壁部の一部を覆うように構成されていることを特徴とする請求項
1又は3に記載の簡易保育器。
【請求項5】
前記壁部の下方に位置する底面部をさらに備え、
前記底面部は、複数の小袋部が連結部を介して面状に連結されてなることを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項に記載の簡易保育器。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の簡易保育器と、
前記簡易保育器の児収容室内に配置され、前記児収容室内の温度を調節する温度調節器と、
前記児収容室内に配置されるマットと、を備えることを特徴とする保育システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易保育器及びその簡易保育器を備える保育システムに関する。本願は、2019年12月26日に出願された特願2019-236114号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
内部空間に収容された新生児等(以下、児という)を保温する簡易保育器として、折り畳み式の簡易保育器が知られている。特許文献1に開示された簡易保育器(以下、従来の簡易保育器という)は、水平方向(左右方向)に沿って拡張及び収縮可能な可撓性ハウジングと、可撓性ハウジングの左右両端部にそれぞれ設けられた端部モジュールとを備える。従来の簡易保育器によれば、起立させた状態の各端部モジュールを左右方向に移動させ、可撓性ハウジングを拡張させることにより、可撓性ハウジングの内部空間に児を収容可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、簡易保育器を取り扱う現場においては、使用時は比較的簡易な操作によって児を収容可能とするとともに、不使用時は簡易保育器をコンパクトにして保管スペースに収納したいという要望がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、使用時は比較的簡易な操作によって児を収容可能とするとともに、不使用時は簡易保育器をコンパクトにして保管スペースに収納可能とする簡易保育器及びその簡易保育器を備える保育システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の簡易保育器は、児収容室を取り囲むように配置される壁部と、前記壁部の上方に位置する天面部とを備え、前記壁部は、前記壁部内に気体を注入することにより前記児収容室の高さ方向に沿って拡張可能で、かつ、前記壁部内から前記気体を排出することにより前記児収容室の高さ方向に沿って収縮可能に構成されている。
【0007】
本発明の簡易保育器に児を収容する際は、壁部内に気体を注入して壁部の高さ方向に沿って拡張させることにより、壁部と天面部とで囲まれた児収容室を形成し、当該児収容室に児を収容することができる。また、本発明の簡易保育器を保管スペースに収納する際は、壁部内に注入された気体を排出することにより、簡易保育器全体の高さを気体注入前の高さにまで小さくすることができる。
【0008】
すなわち、本発明の簡易保育器によれば、使用時は、壁部内に気体を注入するという比較的簡易な操作によって児を収容することができ、かつ、不使用時は、簡易保育器をコンパクトにして保管スペースに収納することができる。
【0009】
ところで、従来の簡易保育器においては、児の身長方向(児を仰向けに寝かせたときの頭から足に向かう方向)に折り畳まれる構成であるため、可撓性ハウジングを折り畳んだとしても当該可撓性ハウジングの幅(簡易保育器の左右方向に沿った長さ)がある程度長くなってしまう。また、可撓性ハウジングの左右両端部に設けられた端部モジュールについて、起立状態を維持するにはある程度の幅が必要となる。このため、不使用時における簡易保育器全体のサイズを小さくするのは容易ではない。
【0010】
これに対し、本発明では、児の身長よりも短い、児の体高方向(児を仰向けに寝かせたときの背中から胸に向かう方向)に壁部が折り畳まれる構成であるため、収縮状態とした壁部の高さ(鉛直方向に沿った長さ)を比較的低く抑えることができる。また、従来の簡易保育器の場合に必要としていた端部モジュールを設けることなく、壁部自体で起立状態を維持することができる。このため、不使用時における簡易保育器全体のサイズを容易に小さくすることができ、簡易保育器をコンパクトにまとめて保管スペースに収納することができる。
【0011】
本発明の簡易保育器の好ましい態様としては、前記壁部は、複数の小袋部が連結部を介して面状に連結されてなり、前記複数の小袋部のそれぞれは、水平方向に伸びる筒形状をなし、前記児収容室の高さ方向に沿って積み重なるように配置されているとよい。
【0012】
上記態様では、複数の小袋部が連結部を介して面状に連結されているため、拡張状態としたときの壁部の強度を高めることができる。また、児収容室の高さ方向に沿って複数の小袋部が折り畳まれる構成となるため、収縮状態とした壁部の高さをより低く抑えることができる。
【0013】
本発明の簡易保育器の好ましい態様としては、前記壁部の一部には、外部から前記児収容室にアクセスできるように開口が形成され、該開口を覆う扉が開閉可能に設けられているとよい。
【0014】
上記態様では、開閉可能な扉を開くことによって、簡易保育器に収容された児に対する医療措置を施すことができ、通常時は扉を閉じておくことで、児収容室の温度変化も抑制することができる。
【0015】
本発明の簡易保育器の好ましい態様としては、前記扉の内側(扉を開けたときの開口部分)に保温カーテンが設けられているとよい。
【0016】
上記態様では、保温カーテンが扉の内側に設けられているので、扉を開いたとしても、児収容室の温度変化を極力抑えることができる。
【0017】
本発明の簡易保育器の別の態様としては、前記開口は、前記天面部の一部及び該天面部に連続する前記壁部の一部を切り欠くように形成され、前記扉は、切り欠かれた前記天面部の一部及び前記壁部の一部を覆うように構成されている。
【0018】
上記態様では、天面部の一部と壁部の一部を切り欠くように開口が形成されていることから、開口面積を比較的大きくできるとともに、児収容室に対して斜め上の方向から手を出し入れできるので、児を児収容室に収容しやすくできる。
【0019】
本発明の簡易保育器の好ましい態様としては、前記壁部の下方に位置する底面部をさらに備え、前記底面部は、複数の小袋部が連結部を介して面状に連結されてなるとよい。
【0020】
上記態様では、児収容室を温めた際に簡易保育器の底面側から熱が逃げてしまうのを抑制でき、児収容室の保温機能をより高めることができる。
【0021】
本発明の簡易保育器の好ましい態様としては、少なくとも前記天面部は、透明材料で形成されているとよい。
【0022】
上記態様では、簡易保育器に収容された児の様子を容易に観察することができる。
【0023】
さらに好ましくは、前記壁部又は前記扉も透明材料で形成されているとよい。
【0024】
本発明の保育システムは、上記簡易保育器と、前記簡易保育器の児収容室内に配置され、前記児収容室内の温度を調節する温度調節器と、前記児収容室内に配置されるマットと、を備える。
【0025】
本発明では、上記本発明の簡易保育器を備えているため、使用時は比較的簡易な操作によって児を収容することができ、不使用時は簡易保育器をコンパクトにして保管スペースに収納することができる、優れた保育システムとなる。また、児収容室内に温度調節器が配置されているので、児収容室内の温度を適切な温度に保つことができる。また、マットが児収容室内に配置されているので、児収容室内に収容された児を適切にマットで支持できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、使用時は比較的簡易な操作によって児を収容することができ、不使用時はコンパクトにして保管スペースに収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1実施形態に係る保育システムの概略構成を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す簡易保育器の前壁部及び保温カーテンを取り外した状態の斜視図である。
【
図6】
図1に示す簡易保育器における保温カーテンの正面図である。
【
図7】
図1に示す簡易保育器の前壁部を取り外した状態を示す図である。
【
図8】第2実施形態に係る保育システムの概略構成を示す斜視図である。
【
図10】
図8に示す簡易保育器のカバー部を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図11】
図8に示す簡易保育器のカバー部及び天面部を取り外した状態を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の簡易保育器及び当該簡易保育器を備える保育システムについて、図面を用いて説明する。
【0029】
[第1実施形態に係る保育システムの構成]
第1実施形態に係る保育システム1は、
図1~
図4に示すように、児収容室S1を取り囲むように配置される壁部12~15及び壁部12~15の上方に位置する天面部11を備える簡易保育器10と、児収容室S1内の温度を調節するための2つの温度調節器30と、児50及び2つの温度調節器30が載置されるマット40と、を備えている。これら温度調節器30及びマット40は、
図3に示すように、児収容室S1内に配置される。簡易保育器10の構成については、詳細に後述する。
【0030】
温度調節器30は、温水や冷水等を充填可能な容器31と、容器31を覆う外装部32とを有する。容器31は、例えば、プラスチック製のボトルや金属製の容器である。外装部32は、例えば保温シートであり、容器31の外周面に巻き付けられている。温度調節器30として、例えばヒーターやクーラー等の電力を必要とする器具を使用してもよいが、本実施形態のように、温水や冷水等が充填された容器31を有する温度調節器30を用いることにより、電気が通じていない地域や電気の使用が制限された被災地等であっても、簡易保育器10内の温度を調節することができる。なお、温度調節器30に代えて、例えば、保管に容易な小型の発熱材(鉄粉の酸化発熱を利用するもの、カイロ等)、蓄熱材(保冷剤等)、放熱材等を用いてもよい。
【0031】
マット40は、児50が横たわる第1マット部41と、第1マット部41の下方に位置し、第1マット部41及び温度調節器30が載置される第2マット部42とを有する。2つの温度調節器30は、
図1~
図4に示すように、第1マット部41の両端(児50の頭側の位置と足側の位置)に配置される。第1マット部41は、平面視で例えば340mm~380mm×500mm~600mmの略矩形状に形成され、厚さが30mm~60mmである。第2マット部42は、平面視で例えば410mm~450mm×830mm~930mm、厚さが10mm~30mmである。
【0032】
第1マット部41及び第2マット部42は、互いに貼り合わせることにより一体に形成されている。第1マット部41は、例えばウレタン樹脂により形成されており、第2マット部42は、例えばウレタン樹脂よりも硬い硬質樹脂により形成されている。なお、第1マット部41及び第2マット部42は、別体ではなく一体形成されてもよい。また、第1マット部41及び第2マット部42として、同一の材料を用いてもよい。
【0033】
[簡易保育器の構成]
簡易保育器10は、
図1~
図5に示すように、4枚の壁部12~15と、壁部12~15で囲まれた児収容室S1の上方に位置する天面部11と、壁部12~15及び天面部11の辺に設けられた係合部18とを備えている。簡易保育器10の全体形状は、略直方体であり、簡易保育器10の底面16(児収容室S1の下方)は長方形状に開口している。なお、以下の説明では、
図1の矢印X方向を前方、X方向とは反対方向を後方、X方向に直交するY方向に沿う方向を幅方向、X方向及びY方向のそれぞれに直交するZ方向を高さ方向とし、X方向に向けた壁部を前壁部15、X方向とは反対方向に向けた壁部を後壁部14、Y方向に向けた壁部を側壁部13、Y方向とは反対方向に向けた壁部を側壁部12として説明する。
【0034】
側壁部12,13、後壁部14、前壁部15及び天面部11は、例えばポリ塩化ビニル樹脂からなる透明の樹脂シート(透明材料)により形成されている。ここでいう「透明」には、完全な透明だけではなく、半透明(簡易保育器10内を視認可能な程度の透明度)も含まれるのは言うまでもない。
【0035】
側壁部12,13、後壁部14、前壁部15及び天面部11のそれぞれは、内部に空気等の気体を注入したときに拡張可能となるよう、周縁部が閉じられている。側壁部12,13、後壁部14、前壁部15及び天面部11は、複数の小袋部111,121,131,141,151が連結部112,122,132,142,152を介して面状に(平面をなすように)連結されてなる。具体的には、側壁部12,13、後壁部14、前壁部15及び天面部11は、対向して配置した2枚の透明樹脂シートが溶着されるとともに、その内側の領域が、相互に平行な複数の直線状の連結部112,122,132,142,152で結合されることにより、各連結部112,122,132,142,152の間に筒状の小袋部111,121,131,141,151がそれぞれ形成された構成である。
【0036】
側壁部12,13、後壁部14、前壁部15の内部は、直線状に連続する複数の連結部112,122,132,142,152によってそれぞれ7つの小袋部111,121,131,141,151に区画されている(
図5参照)。各小袋部111,121,131,141,151は、拡張状態において、水平方向に沿って伸びる筒形状をなし、その断面形状は例えば円形である。これら小袋部111,121,131,141,151はそれぞれ等間隔に並んで配置されており、各小袋部111,121,131,141,151の間に相互に平行な複数の直線状の連結部112,122,132,142,152が配置される構成である。
【0037】
小袋部111,121,131,141,151はそれぞれ、隣り合う小袋部111,121,131,141,151同士が連通しており、小袋部111,121,131,141,151の一部に、空気を注入するためのバルブ19が設けられている。バルブ19から空気を注入すると、小袋部111,121,131,141,151のそれぞれが膨張して、各小袋部111,121,131,141,151が面状に並列された状態となる(
図1及び
図4参照)。この面状に配置される小袋部111,121,131,141,151が、児収容室S1からの放熱を抑制するための空気層となる。小袋部111,121,131,141,151に空気を注入した状態における天面部11、側壁部12,13、後壁部14及び前壁部15の厚みは、例えば30mm~60mmである。
【0038】
つまり、側壁部12,13、後壁部14、前壁部15は、これらの内部に気体を注入することにより児収容室S1の高さ方向に沿って拡張可能で、かつ、側壁部12,13、後壁部14、前壁部15内から気体を排出することにより児収容室S1の高さ方向に沿って収縮可能に構成されている。
【0039】
簡易保育器10全体のサイズは、側壁部12,13、後壁部14、前壁部15及び天面部11内に空気を注入した状態(
図1~
図4に示す状態)において、平面視で例えばX方向に沿う短辺の長さ(前壁部15から見たときの奥行)が340mm~380mm、Y方向に沿う長辺の長さ(前壁部15から見たときの幅)が780mm~880mmであり、高さが300mm~350mmである。
【0040】
側壁部12,13、前壁部15及び天面部11の縁部分には、互いに係合及び分離可能な係合部18が設けられている。係合部18は、例えば面ファスナーからなる。係合部18を重ね合わせるようにして各縁部分を接続させると、
図1に示す立体的な形状として組み立てることができる。一方、係合部18同士を引き剥がし、側壁部12,13、前壁部15及び天面部11の各縁部分の接続状態を解除すると、
図5に示す平面的な形状へと変形することができる。なお、側壁部12と後壁部14との接続部分、側壁部13と後壁部14との接続部分、及び後壁部14と天面部11との接続部分には係合部18が設けられておらず、側壁部12,13、後壁部14及び天面部11が一体に連結されている。
【0041】
また、
図5に示すように、天面部11及び側壁部12,13、後壁部14のそれぞれは一体化されており、前壁部15のみが別体とされている。この天面部11及び側壁部12,13、後壁部14のみを組み立てた状態の簡易保育器10には、
図3に示すように、外部から児収容室S1にアクセスできるように前方に向けて開口80が形成される。そして、この開口80を覆う扉としての前壁部15が、係合部18を介して開閉可能に固定され、簡易保育器10が形成される。つまり、側壁部12,13、後壁部14及び前壁部15のうち、前壁部15が開口を覆う扉として機能する。
【0042】
医師等が簡易保育器10の外部から児収容室S1にアクセスする(医師等が簡易保育器10の中に自身の手を挿入する)際は、簡易保育器10の正面側に位置する前壁部15の下縁に設けられた把持部153を把持し、前壁部15と側壁部12との接続状態及び前壁部15と側壁部13との接続状態を解除する(係合部18同士を引き剥がす)ことにより、前壁部15を開放することができる。このとき、前壁部15と天面部11とは接続されたままであってもよいし、
図3に示すように天面部11の係合部18から前壁部15の係合部を引き剥がして、前壁部15を取り外してもよい。
【0043】
また、
図7に示すように、前壁部15により覆われている開口に、前壁部15の内側に垂れ下がるように保温カーテン17が設けられている。具体的には、天面部11における前壁部15に対応する位置(前壁部15と天面部11との接続部分であって、前壁部15の内側)に保温カーテン17が設けられ、この保温カーテン17は、児収容室S1を保温する機能を有している。保温カーテン17は、
図6に示すように、例えば1枚のシート状部材の一方端縁に複数の切り込みが設けられた暖簾状の部材であり、他方端縁部が一枚に連なっているが、一方端縁部は切り込みによって複数の短冊片に分離されている。保温カーテン17は、例えばポリ塩化ビニル樹脂等からなる透明の樹脂シートにより形成されている。
【0044】
保温カーテン17の全体形状は略長方形であり、前壁部15よりもひと回り小さなサイズに設定されている。保温カーテン17の他方端部(切れ込みが設けられた側とは反対側の端部)には、シート両面に係合部18がそれぞれ設けられている。保温カーテン17の一方面に設けられた係合部18を天面部11の係合部18に係合させ、保温カーテン17の他方面に設けられた係合部18を前壁部15の係合部18に係合させることにより、天面部11における前壁部15に対応する位置(前壁部15の内側)に保温カーテン17を配置することができる。
【0045】
天面部11には、
図1~
図5に示すように、簡易保育器10の外部から児収容室S1に向けて貫通する孔部113が、平面視において左右に2つずつ、計4か所形成されている。孔部113の開口形状は、例えば略円形であり、孔部113にシリンジを挿入したときに当該シリンジを保持可能に構成されている。
【0046】
本実施形態では、簡易保育器10に児50を収容する際は、側壁部12,13、後壁部14及び前壁部15内に空気を注入して側壁部12,13、後壁部14、前壁部15の高さ方向(すなわち児収容室S1の高さ方向であるZ方向)に沿って拡張させ、側壁部12,13、後壁部14及び前壁部15と天面部11とで囲まれた児収容室S1を形成した後、児50が横たわるマット40の上方から、簡易保育器10を被せる(簡易保育器10を
図1の矢印方向に移動させる)ことにより、簡易保育器10の児収容室S1に児50を収容することができる。また、簡易保育器10を保管スペースに収納する際は、側壁部12,13、後壁部14、前壁部15及び天面部11内に注入された空気を排出することにより、簡易保育器10全体の高さを空気注入前の高さにまで小さくすることができる。
【0047】
すなわち、本実施形態の簡易保育器10は、使用時は比較的簡易な操作によって児50を収容可能とするとともに、不使用時は簡易保育器10をコンパクトにして保管スペースに収納可能とする簡易保育器となる。
【0048】
本実施形態では、児の身長よりも短い、児の体高方向(児50をマット40に仰向けに寝かせたときの背中から胸に向かう方向)に側壁部12,13、後壁部14、前壁部15が折り畳まれる構成であるため、収縮状態とした側壁部12,13、後壁部14、前壁部15の高さ(鉛直方向に沿った長さ)を、従来よりも低く抑えることができる。また、側壁部12,13、後壁部14、前壁部15自体で起立状態を維持することができるため、不使用時における簡易保育器10全体のサイズを容易に小さくすることができ、簡易保育器10をコンパクトにまとめて保管スペースに収納することができる。
【0049】
本実施形態では、側壁部12,13、後壁部14、前壁部15が、複数の小袋部121~151が連結部122~152を介して面状に連結されているため、拡張状態としたときの側壁部12,13、後壁部14、前壁部15の強度を高めることができる。また、児収容室S1の高さ方向に沿って複数の小袋部121~151が折り畳まれる構成となるため、収縮状態とした側壁部12,13、後壁部14、前壁部15の高さをより低く抑えることができる。
【0050】
本実施形態では、上述した係合部18を備えているため、使用時は簡易保育器10として容易に組み立てることができる。また、係合部18による側壁部12,13、後壁部14、前壁部15及び天面部11同士の接続を解除すれば、簡易保育器10全体を水平に展開することができるため、収縮状態とした側壁部12,13、後壁部14、前壁部15の高さをより低く抑えることができる。その結果、簡易保育器10を適宜折り畳むことでよりコンパクトにした状態で保管することもできるし、簡易保育器10を複数重ねて保管することもできる。
【0051】
本実施形態では、開口を覆う扉として機能する前壁部15を開くことによって、簡易保育器10に収容された児50に対する医療措置を比較的容易に施すことができ、通常時は前壁部15を閉じておくことで、児収容室S1の温度変化も抑制することができる。
【0052】
本実施形態では、保温カーテン17が前壁部15の内側に垂れ下がるように設けられているので、前壁部15を開いたとしても、児収容室S1の温度変化を極力抑えることができる。
【0053】
本実施形態では、側壁部12,13、後壁部14、前壁部15及び天面部11が透明の樹脂シートにより形成されているため、簡易保育器10に収容された児50の様子を外部から容易に観察することができる。また、ポリ塩化ビニル樹脂を用いることにより、軽量かつ安価な簡易保育器10を提供できる。
【0054】
本実施形態では、異なる壁部12~15同士の小袋部121,131,141,151は、互いに連通していないので、側壁部12,13、後壁部14及び前壁部15のうち1つの壁部を構成する小袋部が破れて内部の空気が抜けた場合でも、他の壁部の小袋部が破れていなければ、簡易保育器10の全体形状を維持することができ、児収容室S1を構成する空間を維持することができる。
【0055】
本実施形態では、天面部11に孔部113が形成されているので、この孔部113を換気口として用いることができるほか、この孔部113にチューブと接続したシリンジ等を挿入して児50に母乳等を供給できる。また、孔部113が左右に2つずつ形成されているため、児50の頭が簡易保育器10の左右どちら側(Y方向又はY方向とは反対方向)を向いていたとしても、児50に母乳等を容易に供給できる。
【0056】
本実施形態の保育システム1は、上述した簡易保育器10を備えているため、使用時は比較的簡易な操作によって児50を収容することができ、不使用時は簡易保育器10をコンパクトにして保管スペースに収納することができる、優れた保育システムとなる。また、児収容室S1内に温度調節器30が配置されているので、児収容室S1内の温度を適切な温度に保つことができる。この温度調節器30も温水や冷水が充填された容器等によって構成されているので、簡易であり、その取り扱いも容易である。さらに、マット40が児収容室S1内に配置されているので、児収容室S1内に収容された児50を適切にマット40で支持できる。
【0057】
[第2実施形態に係る保育システムの構成]
第2実施形態に係る保育システム2は、
図8及び
図9に示すように、簡易保育器20が底面部26をさらに有する点、カバー部60を備えている点及び前壁部25が開閉可能に構成されていない点で、上記第1実施形態と異なる。以下の説明では、第1実施形態と同じ又は略同じ構成については同じ番号を付して、説明を省略又は簡略化して説明する。
【0058】
保育システム2は、
図8及び
図9に示すように、児収容室S2を取り囲むように配置される壁部22~25、壁部22~25の上方に位置する天面部21及び壁部22~25の下方に位置する底面部26を備える簡易保育器20と、2つの温度調節器30と、児50が載置されるマット43と、を備えている。これら温度調節器30及びマット43は、児収容室S2内に配置される。
【0059】
[簡易保育器の構成]
簡易保育器20は、
図8~
図11に示すように、4枚の壁部22~25と、壁部22~25で囲まれた児収容室S2の上方に位置する天面部21と、児収容室S2の下方に位置する底面部26と、を備えている。なお、以下の説明では、
図8の矢印X方向を前方、X方向とは反対方向を後方、X方向に直交するY方向を幅方向、X方向及びY方向のそれぞれに直交するZ方向を高さ方向とし、X方向に向けた壁部を前壁部25、X方向とは反対方向に向けた壁部を後壁部24、Y方向に向けた壁部を側壁部23、Y方向とは反対方向に向けた壁部を側壁部22として説明する。
【0060】
この簡易保育器20の全体形状は、略直方体であり、前壁部25及び天面部21の一部が
図10に示すように開口している。つまり、開口70は、天面部21の一部及び天面部21に連続する前壁部25の一部を切り欠くように形成されている。この開口70は、簡易保育器20の外部から児収容室S2にアクセス可能とするものであり、本発明の扉に相当するカバー部60により覆われている。
【0061】
これら天面部21、側壁部22,23、後壁部24、前壁部25及び底面部26の構造は、上記第1実施形態の天面部11、側壁部12,13、後壁部14、前壁部15と同様に、例えばポリ塩化ビニル樹脂からなる透明の樹脂シート(透明材料)により形成されており、内部に空気等の気体を注入したときに拡張可能となるよう、周縁部が閉じられている他、複数の小袋部が連結部を介して面状に連結されている。このため、本実施形態においても各部21~26を拡張状態とすることで児収容空間S2を容易に形成できるとともに、収縮状態とすることで簡易保育器20の高さを小さくすることが可能となっている。
【0062】
簡易保育器20全体のサイズは、各部21~26内に空気を注入し、カバー部60を被せた状態(
図8及び
図9に示す状態)において、平面視で例えばX方向に沿う辺の長さ(前壁部25から見たときの簡易保育器20全体としての奥行)が400mm~800mm、Y方向に沿う辺の長さ(前壁部25から見たときの簡易保育器20全体としての幅)が400mm~800mmであり、Z方向に沿う辺の長さ(簡易保育器20の全体高さ)が300mm~600mmである。また、前壁部25の高さ(開口70を除いた前壁部25のみの高さ)は、簡易保育器20の全体高さの10%~90%に設定されており、例えば30mm~540mmである。また、天面部21のX方向に沿う辺の長さ(開口70を除いた天面部21のみの奥行)は、簡易保育器20全体としての奥行の10%~90%に設定されており、例えば40mm~720mmである。
【0063】
また、各部21~26の縁部分は、それぞれ溶着されており、一体化されている。このため、上記縁部分が面ファスナー等により接続されている場合に比べて密閉性が高く、児収容室S2の保温効果を高めることが可能となっている。
【0064】
また、天面部21には、
図8及び
図10に示すように、簡易保育器20の外部から児収容室S2に向けて貫通する孔部211が、側壁部22側の位置に、奥行方向に並んで3か所形成されている。孔部211の開口形状は、例えば略円形であり、孔部211にシリンジを挿入したときに当該シリンジを保持可能に構成されている。
【0065】
底面部26には、
図11に示すように、2つの温度調節器30と、児50が載置されるマット43が載置されている。温度調節器30は、底面部26における後壁部24側(X方向とは反対側)に配置され、温度調節器30の手前側(X方向側)にマット43が配置される。マット43の底面(児50が載置される面とは反対側の面)には、例えば面ファスナー等からなる4つの係合部431が設けられており、底面部26の上面には、マット43の係合部431に対応する位置に例えば面ファスナー等からなる係合部(図示省略)が設けられている。つまり、マット43は、底面部26に着脱自在に構成されている。
【0066】
また、マット43は、例えばウレタン樹脂により形成されており、簡易保育器20の児収容室S2に応じたサイズで構成されている。なお、
図11では、孔部211の近くに児50の口部がくるように児50が載置されているが、これに限らず、簡易保育器20の全体形状や温度調節器30の配置等に応じて、児50の向きを変更してもよい。
【0067】
カバー部60は、
図8及び
図9に示すように、開口70を覆う扉として機能する部材であり、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂からなる透明の樹脂シートが複数層(例えば3層)重ねられて形成されている。このカバー部60は、開口70のうち切り欠かれた天面部21を覆う上面部61と、開口70のうち切り欠かれた前壁部25を覆う前面部64と、を備えている。上面部61及び前面部64は、ともに平面視矩形状である。前面部64は、上面部61の前壁部25側の端部から底面部26側に向けて垂下する形状であり、上面部61が接続部611を介して天面部21に接続されている(
図9参照。)。
【0068】
また、カバー部60には、上面部61と前面部64とを接続し、開口70を閉じたときに2つの側壁部22,23の外面に当接する2つの側面部62,63が形成されている。一方の側面部62は、上面部61の側壁部22側の端部から底面部26側に向けて垂下する平面視三角形状に形成され、他方の側面部63は、上面部61の側壁部23側の端部から底面部26側に向けて垂下する平面視三角形状に形成されている。
【0069】
上面部61の後壁部24側の端部(前面部64とは反対側の端部)は、天面部21の上面に溶着されており、この溶着部分がカバー部60と天面部21との接続部611となる。この接続部611は、
図9に示すように、カバー部60を開閉する際の回転中心として機能する部位である。つまり、接続部611は、カバー部60のヒンジとして機能し、カバー部60を開閉できる。
【0070】
また、前面部64の先端部(底面部26側の端部)には、
図8に示すように、底面部26に向けて延びる平面視矩形状の延出部641が2つ形成されている。各延出部641の裏面(前壁部25に対向する面)には、例えば面ファスナー等からなる係合部642が固定されている。一方、前壁部25の上方には、
図9に示すように、例えば面ファスナー等からなる係合部252が固定されている。カバー部60の係合部642は、前壁部25の係合部252に着脱可能とされている。これにより、開口70をカバー部60により覆った際に、カバー部60が意図せず外れたり捲れあがったりすることを抑制でき、かつ、前壁部25の係合部252からカバー部60の係合部642を外すだけで容易に開口70を露出可能となる。
【0071】
医師等が簡易保育器20の外部から児収容室S2にアクセスする(医師等が簡易保育器20の中に自身の手を挿入する)際は、まず、カバー部60の延出部641を把持し、手前側(X方向側)に引っ張ることにより係合部642と前壁部25の係合部252との係合を解除し、前壁部25とカバー部60の前面部64との接続状態を解除する。そして、延出部641を把持したまま上方(Z方向)に持ち上げることにより、カバー部60が
図9の矢印に沿うように接続部611を回転中心として回転して、
図9に二点鎖線で示す位置に移動させる。これにより、開口70が解放され、この開口70から児収容室S2へのアクセスが可能となる。
【0072】
本実施形態では、簡易保育器20を構成する各部21~26が溶着され、底面も含めた児収容室21の全面が覆われているため、底面が開口している簡易保育器に比べて、児収容室S2の保温機能を高めることができる。
【0073】
また、開口70がカバー部60で覆われているため、児収容室S2の温度変化を極力抑えつつ、簡易保育器20に収容された児50に対する医療措置を施すことができる。さらに、カバー部60が透明の樹脂シートを複数層重ねて形成されたものであるので、児収容室S2の視認性を損なうことなく保温性を確保することができる。
【0074】
また、天面部21の一部と前壁部25の一部を切り欠くように開口70が形成されていることから、開口面積を比較的大きくできるとともに、児収容室S2に対して斜め上の方向から手を出し入れできるので、児50を児収容室S2に収容しやすくできる。さらに、カバー部60の2つの側面部62,63が、各側壁部22,23の外面に当接する構成であるので、カバー部60が意図せず外れたり捲れあがったりすることを抑制できる。また、カバー部60が接続部611を介して天面部21に接続されているので、カバー部60を簡易保育器20から取り外すことなく児収容室S2にアクセスできる。
【0075】
さらに、複数の小袋部が連結部を介して面状に連結された底面部26を備えていることから、児収容室S2を温めた際に簡易保育器20の底面側から熱が逃げてしまうのを抑制でき、児収容室S2の保温機能を高めることができる。また、マット43自体のクッション性に加えて、底面部26のクッション性も活かすことができる。
【0076】
また、マット43の底面に係合部431が設けられ、底面部26の上面に係合部431に対応する係合部が設けられているので、マット43を確実に底面部26に固定できる。さらに、マット43が底面部26に着脱自在に構成されているので、マット43が汚れた際などに容易に取り外しができる。
【0077】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能であり、例えば次のような変更も可能である。
【0078】
上記各実施形態では、壁部は、複数の円筒形の小袋部が直線状に連続する連結部を介して面状に連結されるように形成されていたが、これに限らず、曲線等、直線以外の形状からなる連結部を介して面状に連結されていてもよいし、円筒形以外の形状からなる小袋部となるように連結部を介して面状に連結されていてもよい。また、小袋部の断面形状についても、円形に限定されず、四角形等の他の断面形状であってもよい。さらに、直線状に連続する連結部に代えて、例えば2枚のシートを点状に結合させたものであってもよい。また、複数の小袋部が面状に(平面をなすように)連結されている場合を例示して説明したが、これに限らず、例えば、複数の小袋部として厚みの異なるものを用意し、壁部の上方から下方にかけて壁部の厚みが徐々に厚くなる等、壁部の厚みが変化するものや、同一形状からなる複数の円筒形の小袋部を用意し、円筒形の小袋部の中心位置を前後にずらして配置することで、壁部を波状に構成したものも、本発明に含まれる。
【0079】
上記各実施形態では、簡易保育器の全体形状が略直方体である場合を例示したが、これに限らず、例えば立方体でもあってもよいし、天面部が平面視円形状で壁部が円筒状であってもよい。壁部の枚数については、簡易保育器の全体形状に合わせた枚数とすればよい。なお、壁部の枚数を比較的多くした場合は、壁部の内部に連結部を設けなくても、壁部全体としての強度を確保することができる。
【0080】
上記各実施形態では、係合部が面ファスナーである場合を例示したが、これに限らず、ファスナー(線ファスナー)、凹凸嵌合するボタン、被係合部と係合可能なフック等、公知の係合手段を用いることができる。
【0081】
上記第1実施形態では、壁部12,13,15及び天面部11の縁部分に係合部18が設けられている場合を例示して説明したが、これに限定されない。例えば、壁部12と天面部11を接続するための係合部18と、壁部13と天面部11を接続するための係合部18とを取り除き、壁部12と天面部11及び壁部13と天面部11がそれぞれ連結されるように構成されていてもよい。この場合、壁部12,13を折り畳むことによって、簡易保育器10全体をよりコンパクトにまとめることができ、さらには係合部18の個数を減らせる分、製造コストの低廉化を図ることができる。
【0082】
上記第1実施形態では、簡易保育器10の底面が開口されていることとしたが、これに限らず、上記第2実施形態のように底面部を有していてもよい。
【0083】
上記第1実施形態では、壁部14と天面部11が連結されている場合を例示して説明したが、これに限定されない。例えば、後壁部14と天面部11との接続部分にも係合部18が設けられており、側壁部12,13及び前壁部15だけではなく後壁部14からも、天面部11を取り外せるように構成してもよい。この場合、児収容室S1の上方から児を収容又は取り上げることができる。また、第2実施形態では、簡易保育器20は、各部21~26が溶着されて一体化していることとしたが、これに限らず、第1実施形態のようにこれらが係合部を介して着脱自在に構成されていてもよい。
【0084】
上記各実施形態では、天面部は、壁部と略同じ構成であることとしたが、これに限らず、例えば、1又は複数枚の透明樹脂シート等により形成されてもよい。この場合でも、壁部及び天面部により児収容室S1を構成でき、内部に児を収容できる。また、天面部に気体を供給する必要がないので、より短い時間で簡易保育器を組み立てることができるとともに、簡易保育器全体をさらにコンパクトにまとめることができる。
【0085】
上記第1実施形態では、保温カーテン17として、1枚のシート状部材の一方端縁に複数の切れ込みが設けられた暖簾状の部材である場合を例示したが、これに限らず、例えば、複数の紐状部材を隙間がない程度に相互に近接させて吊り下げてもよいし、1枚のシート状部材における周縁部を除いた領域に、医師等が自身の手を挿入可能なサイズの孔又はスリットが形成されたものを吊り下げてもよい。なお、開閉可能に構成された壁部の内側に配置されるのであれば、設置方法は特に限定されない。
【0086】
上記第2実施形態では、開口70が、天面部21の一部及び前壁部25の一部を切り欠くように形成されていたが、これに限らない。例えば、天面部21の一部を切り欠かず、前壁部25の一部のみを切り欠くように形成されてもよい。また、天面部21の一部と前壁部25以外の他の壁部(例えば側壁部22)の一部とを切り欠くように形成されてもよい。また、開口は1つに限らず、複数設けられていてもよく、複数の開口のそれぞれにカバー部が設けられていてもよい。
【0087】
上記各実施形態では、天面部21,21A、壁部22~24,22A~24A、底面部26は透明材料により形成されていることとしたが、これに限らず、透明材料により形成されていなくてもよいし、一部のみが透明であってもよい。
【0088】
上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0089】
使用時は比較的簡易な操作によって児を収容可能とするとともに、不使用時は簡易保育器をコンパクトにして保管スペースに収納できる。
【符号の説明】
【0090】
1,2…保育システム
10,20…簡易保育器
11,21…天面部
12,13,22,23…側壁部(壁部)
14,24…後壁部(壁部)
15…前壁部(壁部・扉)
25…前壁部(壁部)
26…底面部
111,121,131,141,151…小袋部
112,122,132,142,152…連結部
113,211…孔部
153…把持部
252…係合部
16…底面
17…保温カーテン
18…係合部
19…バルブ
30…温度調節器
31…容器
32…外装部
40,43…マット
41…第1マット部
42…第2マット部
431…係合部
50…児
60…カバー部(扉)
61…上面部
62,63…側面部
64…前面部
611…接続部
641…延出部
642…係合部
70,80…開口
S1,S2…児収容室