(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】掘削機の使用方法
(51)【国際特許分類】
E02D 23/08 20060101AFI20241212BHJP
E02F 3/36 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
E02D23/08 C
E02F3/36 A
(21)【出願番号】P 2022028873
(22)【出願日】2022-02-28
【審査請求日】2024-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000207780
【氏名又は名称】大豊建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001793
【氏名又は名称】弁理士法人パテントボックス
(72)【発明者】
【氏名】橋本 喜祐
(72)【発明者】
【氏名】内田 哲男
(72)【発明者】
【氏名】大久保 健治
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 春生
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-226387(JP,A)
【文献】特開平10-306453(JP,A)
【文献】特開昭57-089025(JP,A)
【文献】特開2018-145685(JP,A)
【文献】特開平08-296237(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0223499(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 23/08
E02F 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニューマチックケーソン工法で使用される掘削機であって、
作業室の天井に設置されたレールに沿って移動する走行体と、
前記走行体に対して旋回する旋回体と、
前記旋回体に対して起伏するブームと、
前記ブームの先端に着脱可能に取り付けられる掘削アタッチメントとしてのリッパ又はリッパバケットと、を備え、
前記ブームの先端は、前記ブームの軸線回りに回転できるように構成されている、掘削機の使用方法であって、
掘削機を刃先近傍まで移動させる工程と、
前記ブームの先端を回転させて、掘削アタッチメントとしての前記リッパ又は前記リッパバケットを寝かせる工程と、
掘削アタッチメントとしての前記リッパ又は前記リッパバケットによって、刃先下の地盤を掻き出す工程と、を備える、掘削機の使用方法。
【請求項2】
掘削アタッチメントとしての前記リッパ又は前記リッパバケットによって、刃先下の地盤を掻き出す工程を、複数回繰り返すようになっている、
請求項1に記載された、掘削機の使用方法。
【請求項3】
ニューマチックケーソン工法で使用される掘削機であって、
作業室の天井に設置されたレールに沿って移動する走行体と、
前記走行体に対して旋回する旋回体と、
前記旋回体に対して起伏するブームと、
前記ブームの先端に着脱可能に取り付けられる掘削アタッチメントとしてのリッパ又はリッパバケットと、を備え、
前記ブームの先端は、前記ブームの軸線回りに回転できるように構成されている、掘削機の使用方法であって、
前記ブームの先端に、掘削アタッチメントとして前記リッパバケットを装着する工程と、
前記リッパバケットによって地盤を掘削する工程と、
前記リッパバケットによって掘削土砂を掬う工程と、
前記リッパバケットが排土バケツの上方に位置するように、前記掘削機を移動させる工程と、
前記リッパバケットを前記ブームの軸線回りに回転させて、前記排土バケツに掘削土砂を投入する工程と、を備える、掘削機の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニューマチックケーソン工法で使用される掘削機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ニューマチックケーソン工法において、ケーソン最下部の作業室内で地盤を掘削するための、天井走行式の掘削機が知られている。この天井走行式の掘削機には、軟弱度から岩盤まで、様々な地盤に対応した掘削アタッチメントが開発されている。
【0003】
掘削アタッチメントとしては、例えば、(通常)バケット、ブレーカ、ドリフターが知られている。このうち、ブレーカは、チゼルによって岩盤を連続的に打撃することで、岩盤を破砕・掘削するようになっている(掘削機について、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来使用されていたブレーカは、繰り返しの振動によって掘削機への負担が大きくなるうえ、節理の方向によっては岩盤をうまく破砕できないこともあった。
【0006】
そこで、本発明は、振動を用いることなく静的に破砕することのできる掘削アタッチメントを備える掘削機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の掘削機は、ニューマチックケーソン工法で使用される掘削機であって、作業室の天井に設置されたレールに沿って移動する走行体と、前記走行体に対して旋回する旋回体と、前記旋回体に対して起伏するブームと、前記ブームの先端に着脱可能に取り付けられる掘削アタッチメントとしてのリッパ又はリッパバケットと、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明の掘削機は、走行体と、旋回体と、ブームと、掘削アタッチメントとしてのリッパ又はリッパバケットと、を備えている。このため、振動を用いることなく静的に破砕することのできる掘削アタッチメントを備える掘削機となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1のリッパが装着された掘削機の側面図である。
【
図2】リッパの説明図である。(a)は側面図であり、(b)は正面図である。
【
図3】実施例2のリッパバケットが装着された掘削機の側面図である。
【
図4】リッパバケットの説明図である。(a)は側面図であり、(b)は正面図である。
【
図5】リッパを用いた刃先下を掘削している状態の掘削機の側面図である。
【
図6】従来型の掘削機を使用して排土バケットへ土砂を投入している側面図である。
【
図7】実施例の掘削機を使用して排土バケットへ土砂を投入している側面図である。
【
図8】実施例3の実験の概要を説明する説明図である。(a)は側面図であり、(b)は正面図である。
【
図9】実施例3の実験の写真である。(a)は実験で用いた掘削機であり、(b)はバケットによる掘削の様子であり、(c)はリッパバケットによる掘削の様子であり、(d)はリッパによる掘削の様子である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、以下の実施例に記載されている構成要素は例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。以下では、実施例1でリッパを有する掘削機について説明し、実施例2でリッパバケットを有する掘削機について説明する。さらに、実施例3では、掘削機の掘削性能の実証実験について説明する。
【実施例1】
【0011】
(構成)
まず、
図1を用いて本実施例の掘削アタッチメントとしてリッパ2を有する掘削機1の全体構成を説明する。本実施例の掘削機1は、
図1に示すように、ニューマチックケーソン工法で使用される天井走行式の掘削機1である。図示しないが、ニューマチックケーソンは、主として、側壁部、作業室天井スラブ、刃口(92)等から構成されている。また、ニューマチックケーソンは、設備としてマテリアルシャフト、マテリアルロック、マンロック等を備えている。
【0012】
そして、本実施例の掘削機1は、
図1に示すように、作業室90の天井に設置されたレール91に沿って移動する走行体10と、走行体10に対して旋回する旋回体11と、旋回体11に対して起伏するブーム12と、ブーム12の先端121に着脱可能に取り付けられる掘削アタッチメントとしてのリッパ2と、を備えている。このように、本実施例の掘削機1は天井走行式の掘削機であり、天井スラブ(ニューマチックケーソン自体)に反力をとって、下方にある地盤を掘削するようになっている。
【0013】
また、本実施例の掘削機1では、ブーム12の先端121が、ブーム12の軸線回りに360度自在に回転できるように構成されている。すなわち、通常の地上走行の掘削機(バックホウ等)と異なり、ブーム12の先端121が回転することで、先端121に装着された掘削アタッチメントも360度自在に回転できるようになっている。
【0014】
掘削アタッチメントとしてのリッパ2は、岩盤や玉石を、節理の方向・角度に応じて切り裂くことができるものであり、効果的な静的破砕(振動を利用しない破砕)が可能となる。具体的には、リッパ2は、固結した硬質地盤や軟岩Iなどを破砕して、バケットでの掘削を可能とするための掘削アタッチメントである。リッパ2は、ブレーカと比べて衝撃や振動が少なく、地盤条件によってはブレーカよりも破砕効率が高くなることが知られている。
【0015】
そして、本実施例のリッパ2は、
図2(a)、(b)に示すように、例えば鋼板を加工(切削・溶接等)して製作されるものであり、ヘの字状(浅いJ字状;円弧状)に湾曲した本体部20と;ヘの字状の本体部20の一方の端部に連結される、本体部20と一体の取付ブラケット部21と;から構成されている。
【0016】
本体部20は、所定の厚みの鋼板によって丸みを帯びたヘの字状(円弧状)に形成されており、尖った形状の最先端には取替式のチップ20aが取り付けられている。そして、リッパ2は、この湾曲する本体部20の曲率中心が前寄りに位置する向きに(すなわち、前方に凹部を向けて開くように)ブーム12の先端121に、取付ブラケット部21を介して取り付けられている。つまり、本実施例のリッパ2は、バックホウと異なり、パワーショベルのような動作をする向き(手前側から向こう側に揺動する向き)になっている。
【0017】
取付ブラケット部21は、1枚の底板と2枚の側板によってコ字状に形成されている。1枚の底板には本体部20が接続されるとともに、2枚の側板にはそれぞれ2つの取付孔21a、21bが設けられている。そして、取付孔21a、21bに挿通されるボルトを介して、ブーム12の先端121に装着(連結)されるようになっている。このブーム12の先端121は、シリンダ122を伸縮することで揺動するように構成されているため、リッパ2も揺動(回動;首振動作)するようになっている。
【0018】
(使用方法)
次に、本実施例のリッパ2を備える掘削機1の使用方法について、
図5を用いて、説明する。以下では、刃先下を掘削する場合について説明するが、通常の刃先下以外の位置を掘削することももちろん可能である。
【0019】
本実施例の掘削機1の使用方法は、
1)掘削機1を刃先近傍まで移動させる工程と、
2)ブーム12の先端121を回転させて、掘削アタッチメントとしてのリッパ2を寝かせる工程と、
3)掘削アタッチメントとしてのリッパ2によって、
図5に示すように、刃先下の地盤を横から薄く掻き出す工程と、
4)通常バケットが取り付けられた別の掘削機(1)によって、掻き出された掘削土を移動・積込(排土)する工程と、
を備えている。
【0020】
このうち、3)掻き出す工程では、リッパ2を横に寝かせた状態で土を掻き出すことで、掘削される地盤の厚みはリッパ2の本体部20の厚みとなるため、地盤を薄く掘削できる。つまり、刃先下を大きく下からシャクる動作は、法的にも深さを制限(50cm以下)されているところ、リッパ2の厚み分だけ横からシャクることで、深さ方向にほとんど掘削しない掘削が可能となる。
【0021】
さらに言えば、この「3)掻き出す工程」は、複数回繰り返すことで、少しずつ地盤を掘削することも好ましい。つまり、リッパ2によって1回に掻き出す動作では、リッパ2の厚み分だけ掘削するが、沈下の様子を確認しながら、掻き出す動作を繰り返すことで、より安全で精度の高い沈下制御が可能となる
【0022】
(効果)
次に、本実施例の掘削機1の奏する効果を列挙して説明する
【0023】
(1)上述してきたように、掘削機1は、作業室90の天井に設置されたレール91に沿って移動する走行体10と、走行体10に対して旋回する旋回体11と、旋回体11に対して起伏するブーム12と、ブーム12の先端121に着脱可能に取り付けられる掘削アタッチメントとしてのリッパ2と、を備えている。このため、振動を用いることなく静的に破砕することのできる掘削アタッチメントを備える掘削機1となる
【0024】
(2)また、掘削アタッチメントとしてのリッパ2は、湾曲する本体部20を有し、本体部20の曲率中心が前寄りに位置する向きに、ブーム12の先端121に着脱可能に取り付けられている。このため、天井スラブに反力をとって、岩盤や玉石の節理にリッパ2を引っ掛けるようにして切り裂きやすくなる
【0025】
(3)さらに、ブーム12の先端121は、ブーム12の軸線回りに回転できるように構成されているため、岩盤や玉石の節理にリッパ2の向きを合わせやすくなり、岩盤や玉石を切り裂きやすくなる。また、ニューマチックケーソンの刃先下を横から掻き出す動作が可能となる。回転角度は、対象に合わせて自由に変えることができる。
【0026】
(4)そして、上述した掘削機1の使用方法は、掘削機1を刃先近傍まで移動させる工程と、ブーム12の先端121を回転させて、掘削アタッチメントとしてのリッパ2を寝かせる工程と、掘削アタッチメントとしてのリッパ2によって、刃先下の地盤を掻き出す工程と、を備えている。このように掘削機1を使用すれば、リッパ2を寝かせて、刃先下の地盤を薄く掻き出すことができる
【0027】
(5)そして、掘削アタッチメントとしてのリッパ2によって、刃先下の地盤を掻き出す工程を、複数回繰り返すことで、沈下の様子を確認しながら、刃先下を少しずつ掘削することで、繊細な沈下制御が可能となる。
【実施例2】
【0028】
以下、
図3、4、5を用いて、掘削アタッチメントとしてリッパバケット3を有する掘削機1について説明する。なお、実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する
【0029】
(構成)
本実施例の掘削機1は、
図3に示すように、走行体10と、旋回体11と、ブーム12と、ブーム12の先端121に着脱可能に取り付けられる掘削アタッチメントとしてのリッパバケット3と、を備えている。そして、本実施例の掘削機1では、ブーム12の先端121が、ブーム12の軸線回りに360度自在に回転できるように構成されている。
【0030】
そして、本実施例の掘削アタッチメントとしてのリッパバケット3は、リッパ2と同様に、岩盤や玉石を、節理の方向・角度に応じて切り裂くことができるため、効果的な静的破砕(振動を利用しない破砕)が可能となる。このリッパバケット3は、リッパ(実施例1で説明した)と通常バケットの両方の機能を有する掘削アタッチメントである。つまり、リッパ2と同様に、固結した硬質地盤や軟岩Iなどをリッパ部(31)で破砕し、その後、バケット部(32)で移動・搬出できる。このように、掘削アタッチメントを交換することなく、破砕と掘削を実施できる。
【0031】
リッパバケット3は、
図4(a)、(b)に示すように、例えば鋼板を加工(切削・溶接等)して製作されるものであり、リッパ部31とバケット部32から構成される本体部30と;バケット部32に取付けられる、バケット部32(本体部30)と一体の、取付ブラケット部33と;から構成されている。
【0032】
リッパ部31は、所定の厚みの鋼板によって丸みを帯びたヘの字状(C字状;円弧状)に形成されており、尖った形状の最先端には取替式のチップ31aが取り付けられている。そして、リッパバケット3は、この湾曲するリッパ部31の曲率中心が前寄りに位置する向きに(すなわち、前方に開くように)ブーム12の先端121に、取付ブラケット部33を介して取り付けられている。
【0033】
バケット部32は、鋼板によって開口した箱状に形成されており、左右の中央にリッパ部31が取付けられている。すなわち、バケット部32は、リッパ部31によって体積が1/2ずつに分割されている。したがって、バケット部32には、リッパ部31の体積を除いて、その内容積分だけの掘削土砂を収容できるようになっている。さらに、バケット部32の開口部の左右両端には、リッパ部31と同様の爪が取付けられており、地盤を掘削できるようになっている。ただし、バケット部32の両端の爪よりも、リッパ部31の先端のチップ31aの方が長く突出しており、リッパ部31の切り裂き作用を発揮しやすくなっている。
【0034】
取付ブラケット部33は、平行な2枚の側板によって形成されている。2枚の側板にはそれぞれ2つの取付孔33a、33bが設けられている。そして、取付孔33a、33bに挿通されるボルトを介して、ブーム12の先端121に装着(連結)されるようになっている。このブーム12の先端121は、シリンダ122を伸縮することで揺動するように構成されているため、リッパバケット3も揺動(回動;首振動作)するようになっている。
【0035】
(使用方法)
次に、本実施例のリッパバケット3を備える掘削機1の使用方法について
図5を参照しながら説明する。以下では、まず、刃先下を掘削する場合について説明するが、通常の刃先下以外の位置を掘削することももちろん可能である。
【0036】
本実施例の刃先下を掘削する際の掘削機1の使用方法は、
1)掘削機1を刃先近傍まで移動させる工程と、
2)ブーム12の先端121を回転させて、掘削アタッチメントとしてのリッパバケット3を寝かせる工程と、
3)掘削アタッチメントとしてのリッパバケット3によって、
図5に示すように、刃先下の地盤を横から薄く掻き出す工程と、
4)同じリッパバケット3によって、掻き出された掘削土を移動・積込(排土)する工程と、
を備えている。
【0037】
このように、リッパバケット3を用いることで、リッパと通常バケットの両方の作業を同一の掘削機1によって実行できる。
【0038】
次に、実施例のリッパバケット3を搭載し、かつ、ブーム12が軸線回りに回転するようになっている掘削機1を使用して、排土バケツ80へ土砂を投入する際の、掘削機の使用方法について説明する。
【0039】
はじめに、比較のため、
図6を用いて、ブーム12が軸線回りに回転しない、従来型の掘削機1を使用して排土バケツ80へ土砂を投入する方法について説明する。この従来側の掘削機1は、ブーム12が走行体10に対して起伏するが、軸線回りに回転できない構成となっている。
【0040】
したがって、
図6に示すように、バケット4から排土バケツ80へ土砂を投入する際には、ブーム12の起伏とバケット4の開方向への回動によって、投入を実行する必要がある。この場合、排土バケツ80が置かれた高さと掘削機1の高さの関係から、ブーム12の先端を上げつつ、バケットシリンダを縮めてバケット4を開くように動作させる必要がある。
【0041】
これらの動作を実施しようとしても、排土バケツ80と掘削機1のバケット4が互いに干渉するおそれがあるため、掘削土砂をうまく投入することが難しい。特に、高さの限定された作業室90の空間内で、このような投入動作を実行することは困難となる。
【0042】
これに対して、本実施例の掘削機の使用方法は、
図7に示すように、
1)ブーム12の先端121に、掘削アタッチメントとしてリッパバケット3を装着する工程と、
2)リッパバケット3によって地盤を掘削する工程と、
3)リッパバケット3によって掘削土砂を掬う工程と、
4)リッパバケット3が排土バケツ80の上方に位置するように、掘削機1を移動させる工程と、
5)リッパバケット3をブーム12の軸線回りに回転させて、排土バケツ80に掘削土砂を投入する工程と、
を備えている。
【0043】
特に、上述した工程 2)及び工程 3) において、リッパバケット3によって地盤を掘削し、そのまま掘削土砂を掬い、さらに続けて、工程 5) において、リッパバケット3をブーム12の軸線回りに回転させて、排土バケツ80に掘削土砂を投入する点が、この使用方法において重要である。
【0044】
すなわち、本実施例の掘削機1は、リッパバケット3を搭載し、かつ、ブーム12が軸線回りに回転するようになっているため、高さのない狭い作業室90内においても、排土バケツ80への土砂の投入を迅速・容易に実行することができるのである。このように、従来型と比較すると、必要以上にブーム12を起伏させる必要がないうえ、バケットシリンダを縮めてリッパバケット3を開く必要もない。
【0045】
さらに言えば、本実施例の掘削機1であれば、掘削-掬い-投入の一連の3工程を同一の掘削機1を用いて実行できる点はきわめて重要である。すなわち、作業室90内の掘削機1の台数は限定されているところ、3工程を1台の掘削機1を用いて実行することで、役割の異なる複数台の掘削機を使用する場合と比較して、工期の短縮に大きく寄与することができる。
【0046】
(作用・効果)
次に、本実施例の掘削機1の奏する効果を列挙して説明する
【0047】
(1)上述してきたように、掘削機1は、作業室90の天井に設置されたレール91に沿って移動する走行体10と、走行体10に対して旋回する旋回体11と、旋回体11に対して起伏するブーム12と、ブーム12の先端121に着脱可能に取り付けられる掘削アタッチメントとしてのリッパバケット3と、を備えている。このため、振動を用いることなく静的に破砕することのできる掘削アタッチメントを備える掘削機1となる
【0048】
したがって、ブレーカやロードヘッダのような、様々な繰り返し振動による本体機への負担が削減されるため、故障を防止できる。さらに、高気圧作業を削減することもできる。加えて、ブレーカなど振動破砕機等と比べると発生する騒音がない。これは、ニューマチックケーソンの作業室内は高気圧かつ閉塞空間であり、特に耳や三半規管への負担を最大限防止する必要があるためである。さらに言うと、アタッチメントとして、ドリフターを使用する場合は、削孔箇所に装薬し発破をかけるため振動が生じるが、本実施例のようにリッパバケット3を使用すれば振動が生じることもない。
【0049】
(2)さらに、ブーム12の先端121は、ブーム12の軸線回りに回転できるように構成されているため、岩盤や玉石の節理にリッパバケット3の向きを合わせやすくなり、岩盤や玉石を切り裂きやすくなる。また、ニューマチックケーソンの刃先下を横から掻き出す動作が可能となる。
【0050】
掘削機1は、レール91に沿って移動するため、その位置が規定されるところ、従来のブレーカでは岩盤の『節理』の方向に合わせることが難しかった。一方で、本発明であれば、回転させることで、節理の方向に合わせることができる。
【0051】
通常のバケットは、縦と横の寸法が略同一なので、寝かせてシャクっても掘削される高さは変わらない。一方、本実施例のリッパ2やリッパバケット3であれば、横幅が狭いので、寝かせてシャクると、掘削高さを低くできる。
【0052】
さらに、リッパバケット3が回転することによって、排土バケツへの土砂投入が容易となる。これは、リッパバケット3の中央のリッパ部31は大きく突起しているところ、排土バケツに土砂を投入する際に、全旋回バケットであれば、これを反転することによりリッパ部31と排土バケツの上部が干渉することなく土砂を投入できるようになる。
【0053】
(3)そして、上述した掘削機1の使用方法は、掘削機1を刃先近傍まで移動させる工程と、ブーム12の先端121を回転させて、掘削アタッチメントとしてのリッパバケット3を寝かせる工程と、掘削アタッチメントとしてのリッパバケット3によって、刃先下の地盤を掻き出す工程と、を備えている。このように掘削機1を使用すれば、リッパバケット3を寝かせて、刃先下の地盤を薄く掻き出すことができる。さらに、固結した硬質地盤や軟岩Iなどをリッパ部31で破砕し、その後、バケット部32で掘削できる。このように、掘削アタッチメントを交換することなく、破砕と掘削を実施できる。
【0054】
このように、特に刃口近傍(刃先下)の掘削では、リッパバケット3のリッパ部31を用いた寝かせた状態での刃口下のシャクリ動作と、リッパバケット3のバケット部32を用いた掘削土の掻き寄せ動作によって、きわめて繊細で、かつ効率のよい、沈下作業が可能となる。
【0055】
さらに、ニューマチックケーソン工法による掘削では、掘削機1が少ない台数に限定されるため、リッパバケット3が一台で二役こなせる意味は大きい。加えて、高気圧作業となる、掘削アタッチメントの交換作業も少なくできるという効果もある。
【0056】
(4)さらに、本実施例の掘削機の使用方法は、
・ブームの先端に、掘削アタッチメントとしてリッパバケット3を装着する工程と、
・リッパバケット3によって地盤を掘削する工程と、
・リッパバケット3によって掘削土砂を掬う工程と、
・リッパバケット3が排土バケツの上方に位置するように、掘削機1を移動させる工程と、
・リッパバケット3をブーム12の軸線回りに回転させて、排土バケツに掘削土砂を投入する工程と、を備えている。このように掘削機1を使用すれば、排土バケツに掘削土砂を積み込む際に、排土バケツ上でリッパバケット3を回転させることで積込動作を実行できる。
【0057】
なお、この他の構成および作用効果については、実施例1と略同様であるため説明を省略する。
【実施例3】
【0058】
以下、
図8~
図9を用いて、実施例1、2で説明した掘削機1の掘削性能の実証実験について説明する。なお、実施例1、2で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
1.1 実験実施場所
性能実験は、茨城県にある大豊建設株式会社の中央機材センター敷地北東部の技術研究所建設予定地の北側用地を利用して実施した。
1.2 実施時期
2019 年 6 月 24 日~9 月 13 日
1.3 掘削性能検証方法
岩掘削装置の性能実験は、実際の DREAM IIを利用して試験地盤を掘削することで検証した。性能実験結果より装置の形状、取り付け方法、操作運用方法を検討し必要に応じて改良を行う(
図8参照)。
2. 試験地盤
試験地盤は対象岩盤と近似したものとするため、割栗石を主体としてエアモルタルにより固結させて作成する。
・目標強度の設定
土質調査結果より礫岩の一軸圧縮強さは、0.08MN/m
2~3.6MN/m
2
平均値 0.78 MN/m
2(No.3)、0.82 MN/m
2(No.8)
最大値は 3.6 MN/m
2。そこで、目標強度は、3.6 MN/m
2(3.6N/mm
2)を基本とした。
3. 掘削装置
掘削装置は、DREAM IIのアタッチメントとしてバケットの代わりに装着する形式のものとする。装置の種類は岩の性質、掘削効率や DREAM 本体への負荷等を考慮してリッパ及びリッパバケットを用いた。
4. 計測
(1) 破砕状況確認1
バケット、リッパバケット、リッパで各試験地盤の同位置を掘削し、掘削形状(幅、深さ、長さ、面積)を測定する。掘削は 1 動作とし、位置をずらして 2 回実施する。
掘削形状を写真撮影し、3 次元写真応用計測システムで 3 次元化する。
(2) 破砕状況確認2
バケット、リッパバケット、リッパで各試験地盤における所定の範囲を連続的(5 分×2)に掘削し、掘削状況を確認する。
掘削形状を写真撮影し、3 次元写真応用計測システムで 3 次元化する。
(3) 掘削性能確認
リッパバケット、リッパを用いて試験地盤全体を破砕する。破砕後、リッパバケット、バケットを用いて破砕した試験地盤ガラの積み込み動作を行う。両作業にかかる時間を計測する(
図9参照)。
5. 結果
結果は、以下に示す通りである。
【0059】
破砕状況は、(通常)バケットよりも、リッパやリッパバケットを使用した場合の掘削体積の方が大きくなった。リッパとリッパバケットの掘削体積は、略同様であるが、リッパバケットの方がやや大きくなった。
【0060】
1時間当りの破砕量は、(通常)バケットよりもリッパやリッパバケットの方が約7倍大きくなった。リッパとリッパバケットの破砕量(破砕効率)は、略同様であるが、リッパの方がやや大きくなった。
【0061】
一方、1時間当りの積込み量は、(通常)バケットの方がリッパバケットよりも大きくなった。(通常)バケットの積込み量(積込み効率)は、リッパバケットの積込み量の約1.5倍となった。
【0062】
なお、この他の構成および作用効果については、前述した実施例と略同様であるため説明を省略する。
【0063】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 掘削機
10 走行体
11 旋回体
12 ブーム
121 先端
2 リッパ
20 本体部
20a チップ
21 取付ブラケット部
21a 取付孔
21b 取付孔
3 リッパバケット
30 本体部
31 リッパ部
31a チップ
32 バケット部
33 取付ブラケット部
4 バケット(従来)
80 排土バケツ
90 作業室
91 レール
92 刃口