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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】撮像装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/695 20230101AFI20241212BHJP
   H04N 5/222 20060101ALI20241212BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20241212BHJP
   H04N 23/58 20230101ALI20241212BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20241212BHJP
   G03B 5/06 20210101ALI20241212BHJP
【FI】
H04N23/695
H04N5/222 100
H04N23/60
H04N23/58
G03B15/00 P
G03B15/00 Q
G03B5/06
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022184973
(22)【出願日】2022-11-18
(65)【公開番号】P2023134346
(43)【公開日】2023-09-27
【審査請求日】2023-09-04
(31)【優先権主張番号】P 2022039559
(32)【優先日】2022-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 夏子
(72)【発明者】
【氏名】川崎 諒
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-185902(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113994658(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/695
H04N 5/222
H04N 23/60
H04N 23/58
G03B 15/00
G03B 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系および撮像素子を有する撮像部と、
前記撮像部の向きをパン方向および/またはチルト方向に移動する姿勢制御手段と、
前記撮像光学系および前記撮像素子の少なくとも一方を撮像面に平行な面内で移動させるシフト制御手段と、
前記姿勢制御手段および前記シフト制御手段の一方を駆動する際に、該一方の駆動による前記撮像部の撮像範囲の変化が相殺されるように、該一方の駆動に同期して他方を駆動する同期制御手段と、
前記撮像部により得られる撮像画像における被写体の歪み量を逐次決定する決定手段と、
前記シフト制御手段に対するユーザー指示を受け付ける受付手段と、
を有し、
前記同期制御手段は、前記決定手段により決定された歪み量が所定の閾値以下となった場合に駆動を停止し、
前記受付手段は、前記シフト制御手段の駆動を停止させる駆動停止指示を受け付けるよう構成されており、
前記同期制御手段は、前記姿勢制御手段および前記シフト制御手段を駆動している間に前記受付手段により前記駆動停止指示を受け付けた場合、該駆動停止指示を受け付けたタイミングにおける前記撮像部の向きおよび前記撮像素子のシフト位置の一方に基づいて他方を調整する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記シフト制御手段は、前記撮像部により得られる撮像画像における被写体の歪みが補償されるように、前記撮像光学系および前記撮像素子の少なくとも一方を撮像面に平行な面内で移動させる
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記同期制御手段は、前記一方における第1の駆動量に基づいて前記他方における第2の駆動量を決定する
ことを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記同期制御手段は、更に、前記撮像素子のサイズ、前記撮像光学系から前記撮像素子までの結像距離に基づいて、前記第2の駆動量を決定する
ことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記受付手段は、前記シフト制御手段を所定量だけ駆動させる駆動指示を逐次受け付けるよう構成されており、
前記同期制御手段は、前記受付手段により前記駆動指示を受け付けた場合、該駆動指示に基づき前記シフト制御手段を所定量だけ駆動し、該所定量の駆動に応じた前記姿勢制御手段の駆動量を逐次決定し駆動する
ことを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記受付手段は、前記シフト制御手段を駆動させる駆動指示を受け付けるよう構成されており、
前記同期制御手段は、前記受付手段により前記駆動指示を受け付けた場合、前記姿勢制御手段および前記シフト制御手段の両方の駆動速度を決定し駆動開始する
ことを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記同期制御手段は、前記受付手段により前記駆動指示を受け付けた場合、前記姿勢制御手段および前記シフト制御手段の両方の駆動時間が同じになるように前記駆動速度を決定する
ことを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記駆動指示は、前記シフト制御手段による前記撮像素子のシフト方向の情報を含む
ことを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記シフト制御手段を所定量ずつ繰り返し駆動させる駆動開始指示を受け付ける受付手段を更に有し、
前記シフト制御手段は、前記受付手段により前記駆動開始指示を受け付けた場合に駆動を開始する
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記撮像部により得られる撮像画像に対応する深度情報を取得する深度取得手段を更に有し、
前記決定手段は、前記撮像画像に含まれる被写体領域内の深度の差に基づいて前記歪み量を決定する
ことを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記撮像部により得られる撮像画像に含まれる被写体のエッジを検出するエッジ検出手段を更に有し、
前記決定手段は、前記エッジ検出手段により前記被写体に対して検出された1対のエッジ間のエッジ間隔の差に基づいて前記歪み量を決定する
ことを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記撮像部により得られる撮像画像における被写体の歪み形状種別を決定する決定手段を更に有し、
前記姿勢制御手段および前記シフト制御手段それぞれにおける駆動方向は、前記決定手段により決定された歪み形状種別に基づいて決定される
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記撮像部により得られる撮像画像に対応する深度情報を取得する深度取得手段を更に有し、
前記決定手段は、前記撮像画像に含まれる被写体領域内の深度の変化方向に基づいて前記歪み形状種別を決定する
ことを特徴とする請求項12に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記撮像部により得られる撮像画像に含まれる被写体のエッジを検出するエッジ検出手段を更に有し、
前記決定手段は、前記エッジ検出手段により前記被写体に対して検出された1対のエッジ間のエッジ間隔の変化方向に基づいて前記歪み形状種別を決定する
ことを特徴とする請求項12に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記撮像画像に歪みが生じている複数の被写体が存在する場合、前記決定手段による決定の対象となる1つの被写体の選択を受け付ける受付手段を更に有する
ことを特徴とする請求項12に記載の撮像装置。
【請求項16】
撮像装置の制御方法であって、
前記撮像装置は、
撮像光学系および撮像素子を有する撮像部と、
前記撮像部の向きをパン方向および/またはチルト方向に移動する姿勢制御手段と、
前記撮像光学系および前記撮像素子の少なくとも一方を撮像面に平行な面内で移動させるシフト制御手段と、
前記シフト制御手段に対するユーザー指示を受け付ける受付手段と、
を有し、
前記制御方法は、
前記撮像部により得られる撮像画像における被写体の歪み量を逐次決定する決定工程と、
前記姿勢制御手段および前記シフト制御手段の一方を駆動する際に、該一方の駆動による前記撮像部の撮像範囲の変化が相殺されるように、該一方の駆動に同期して他方を駆動する同期制御工程と、
を含み、
前記同期制御工程では、前記決定工程により決定された歪み量が所定の閾値以下となった場合に前記姿勢制御手段および前記シフト制御手段の駆動を停止し、
前記同期制御工程では、前記姿勢制御手段および前記シフト制御手段を駆動している間に前記受付手段により前記シフト制御手段の駆動を停止させる駆動停止指示を受け付けた場合、該駆動停止指示を受け付けたタイミングにおける前記撮像部の向きおよび前記撮像素子のシフト位置の一方に基づいて他方を調整する
ことを特徴とする制御方法。
【請求項17】
撮像装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記撮像装置は、
撮像光学系および撮像素子を有する撮像部と、
前記撮像部の向きをパン方向および/またはチルト方向に移動する姿勢制御手段と、
前記撮像光学系および前記撮像素子の少なくとも一方を撮像面に平行な面内で移動させるシフト制御手段と、
前記シフト制御手段に対するユーザー指示を受け付ける受付手段と、
を有し、
前記制御方法は、
前記撮像部により得られる撮像画像における被写体の歪み量を逐次決定する決定工程と、
前記姿勢制御手段および前記シフト制御手段の一方を駆動する際に、該一方の駆動による前記撮像部の撮像範囲の変化が相殺されるように、該一方の駆動に同期して他方を駆動する同期制御工程と、
を含み、
前記同期制御工程では、前記決定工程により決定された歪み量が所定の閾値以下となった場合に前記姿勢制御手段および前記シフト制御手段の駆動を停止し、
前記同期制御工程では、前記姿勢制御手段および前記シフト制御手段を駆動している間に前記受付手段により前記シフト制御手段の駆動を停止させる駆動停止指示を受け付けた場合、該駆動停止指示を受け付けたタイミングにおける前記撮像部の向きおよび前記撮像素子のシフト位置の一方に基づいて他方を調整する
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像制御に関するものであり、特に被写体歪みを低減するための撮像制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高いビルを地表から撮影しようとする場合など、被写体がカメラに対して正対していないとき、撮像画像における被写体に歪みが生じる。これを解消するための技術として、カメラと被写体を正対させ、撮像素子(または光学系)を撮像面に対して平行移動(シフト)して撮影する技術(以降では「シフト制御」と呼ぶ)が知られている。
【0003】
特許文献1には、撮像に基づいて得られる測距データを用いてカメラに対する被写体の傾きを検出し、正対補正を行う技術が開示されている。また、正対補正を、レンズユニットの回転制御と撮像素子のシフト制御とにより行うことが開示されている。また、特許文献2には、鉛直方向に対する被写体のエッジの歪み(角度)を検出し、検出された歪みが相殺されるように光学系をシフト制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-185902号公報
【文献】特開2011-059283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、撮像素子における異なる像高位置で取得した複数の測距データの差分に基づいて被写体の傾きを検出している。そのため、測距精度が低い場合には被写体の歪みに対する補正が適切になされない場合がある。また、特許文献2においては、エッジの歪みを相殺するための光学系のシフト制御を行っているが、シフト制御による撮像範囲の変動を考慮していない。そのため、シフト制御を行っている期間において撮像画像における被写体の位置が変化し品位が悪化する場合がある。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、撮像画像の品位を向上させつつより適切な歪み補正を可能とする技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の問題点を解決するため、本発明に係る撮像装置は以下の構成を備える。すなわち、撮像装置は、
撮像光学系および撮像素子を有する撮像部と、
前記撮像部の向きをパン方向および/またはチルト方向に移動する姿勢制御手段と、
前記撮像光学系および前記撮像素子の少なくとも一方を撮像面に平行な面内で移動させるシフト制御手段と、
前記姿勢制御手段および前記シフト制御手段の一方を駆動する際に、該一方の駆動による前記撮像部の撮像範囲の変化が相殺されるように、該一方の駆動に同期して他方を駆動する同期制御手段と、
前記撮像部により得られる撮像画像における被写体の歪み量を逐次決定する決定手段と、
前記シフト制御手段に対するユーザー指示を受け付ける受付手段と、
を有し、
前記同期制御手段は、前記決定手段により決定された歪み量が所定の閾値以下となった場合に駆動を停止し、
前記受付手段は、前記シフト制御手段の駆動を停止させる駆動停止指示を受け付けるよう構成されており、
前記同期制御手段は、前記姿勢制御手段および前記シフト制御手段を駆動している間に前記受付手段により前記駆動停止指示を受け付けた場合、該駆動停止指示を受け付けたタイミングにおける前記撮像部の向きおよび前記撮像素子のシフト位置の一方に基づいて他方を調整する
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、撮像画像の品位を向上させつつより適切な歪み補正を行う技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】撮像システムの構成を説明するブロック図である。
図2】被写体歪みを説明する図である。
図3】シフト制御を説明する図である。
図4】撮像範囲を維持しつつ被写体歪みを低減するための制御を説明する図である。
図5】回転制御およびシフト制御の駆動量計算を説明する図である。
図6】歪み補正における撮像画像の時間変化を示す図である。
図7】歪み補正のユーザーインターフェースを例示する図である。
図8】第1の同期制御における制御方法を説明する図である。
図9】第1の同期制御における処理のフローチャートである。
図10】第2の同期制御における制御方法を説明する図である。
図11】第2の同期制御における処理のフローチャートである。
図12】変形例に係る撮像装置が実行する処理のフローチャートである。
図13】深度情報に基づいた歪み形状判定を説明する図である。
図14】エッジ検出に基づいた歪み形状判定を説明する図である。
図15】複数の被写体が存在する場合の歪み形状判定を説明する図である。
図16】複数の被写体が存在する場合の補正対象決定を説明する図である。
図17】各歪み形状に対する回転制御およびシフト制御の関係を示す図である。
図18】深度情報に基づいた歪み量算出を説明する図である。
図19】エッジ検出に基づいた歪み量算出を説明する図である。
図20】撮像装置のハードウェア構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
(第1実施形態)
本発明に係る撮像装置の第1実施形態として、撮像システムを例に挙げて以下に説明する。
【0012】
<システム構成>
図1は、撮像システムの構成を説明するブロック図である。撮像システムは、撮像装置と監視装置111とを含んでいる。撮像装置は、撮像部であるカメラユニット100、オートゲインコントローラ(AGC)107、アナログデジタル(AD)変換器108、カメラ信号処理部109、通信部110を有する。また、撮像装置は、駆動量決定部112、シフト制御部113、回転制御部114、シフト駆動部115、回転駆動部116を更に有している。
【0013】
カメラユニット100は、撮像光学系、バンドパスフィルタ(BPF)104、カラーフィルタ105、撮像素子106を含んでいる。ここで、撮像光学系は、光軸方向に移動して焦点距離を変更するズームレンズ101、光軸方向に移動して焦点調節を行うフォーカスレンズ102、光量を調整する絞りユニット103を有する。なお、撮像光学系は、撮像装置と一体の構成であってもよいし、撮像装置に対して着脱可能な構成であってもよい。
【0014】
撮像光学系を通過した光は、BPF104及びカラーフィルタ105を介して撮像素子106上に光学像としての被写体像を形成する。BPF104は撮像光学系の光路に対し挿抜可能なものでも良い。被写体像は、撮像素子106により光電変換される。
【0015】
撮像素子106から出力されたアナログ電気信号(撮像信号)は、AGC107によりゲイン調整され、AD変換器108によりデジタル信号に変換された後、カメラ信号処理部109に入力される。カメラ信号処理部109では、デジタル撮像信号に対して各種画像処理を行って映像信号を生成する。
【0016】
映像信号は、通信部110を介して撮像装置に有線または無線通信により接続された監視装置111に出力される。また、監視装置111からは、ユーザーによる指示を受けて、通信部110を介して、シフト制御部113および回転制御部114にそれぞれコマンドなどの制御信号を出す。
【0017】
駆動量決定部112は、カメラユニット100を回転制御する場合の回転駆動量と、撮像素子106をシフト制御する場合のシフト駆動量と、のどちらか一方に基づいて、他方の駆動量を決定する。回転制御は、パン方向および/またはチルト方向の回転移動にかかる姿勢制御である。このとき、決定される駆動量は、一方(回転制御またはシフト制御)により生じる撮像範囲の変化を相殺するような補正動作を行う他方の駆動量である。すなわち、撮像画像における被写体の位置の変化を抑制するように他方の駆動量を決定する。駆動量決定部112における駆動量決定の詳細については、図2図5を参照して後述する。
【0018】
シフト制御部113は、駆動量決定部112で決定されたあるいは通信部110を介して受付けた駆動指示(シフト駆動量)に基づいて、撮像素子106に対してシフト駆動を指示する。回転制御部114は、駆動量決定部112で決定されたあるいは通信部110を介して指示された回転駆動量に基づいて、カメラユニット100に対して回転駆動を指示する。
【0019】
シフト駆動部115は、シフト制御部113から指示されたシフト駆動に基づいて、撮像素子106を駆動する。回転駆動部116は、回転制御部114から指示された回転駆動に基づいて、カメラユニット100を駆動する。ここで、シフト制御部113およびシフト駆動部115は、撮像素子106に対してシフト駆動の指示および駆動を行っているが、光学系に対しシフト駆動の指示および駆動を行っても良い。
【0020】
<被写体歪みを補償するためのシフト制御>
図2は、被写体歪みを説明する図である。ここでは、建物を地表から見上げて撮影する場合の模式図と、そのときの撮像画像を例示的に示している。被写体201に対してカメラユニットが正対していない場合(すなわち、被写体201(建物の壁面)と光軸204が垂直ではない場合)、撮像画像200に示されるように建物が台形状に歪んだ状態(被写体歪み)になる。
【0021】
図3は、シフト制御を説明する図である。ここでは、図2と同じ被写体201(建物)に正対しシフト制御により撮影する場合の模式図と、そのときの撮像画像を例示的に示している。具体的には、被写体201(建物の壁面)に対して光軸204が垂直になるようにし、被写体201が撮像範囲に収まるように、撮像面203を(光学系202に対して相対的に)下にシフトしている。このシフト制御により、撮像画像300に示されるように、被写体歪みが補償された状態になる。
【0022】
ただし、撮像画像300のような被写体歪みが補償された撮像を行うためには、カメラユニット100および撮像素子106を適切に制御することが必要であり、これには、仰角205および被写体距離206の情報が必要である。
【0023】
図4は、撮像範囲を維持しつつ被写体歪みを低減するための制御を説明する図である。具体的には、図2の撮影状態に対して、被写体201(建物の壁面)に対して光軸204が垂直に近づくようにカメラユニットの回転制御(回転量α)を行いつつ、撮像範囲を維持するためのシフト制御(シフト量x)を行う状態を示している。
【0024】
すなわち、カメラユニット100を微小の回転量αだけ回転(チルト)制御した場合、撮像範囲は元の撮像範囲400からカメラユニットをα回転したときの撮像範囲401に変化する。例えば、撮像範囲401による撮像画像では、下から1/3は地表が写っており、建物の最上部が欠けた(見切れた)状態になっている。このような撮像範囲の変化を無くす(撮像範囲400を維持する)ためには、撮像素子106をシフト量xだけ撮像面内で下方向にシフトすれば良い。
【0025】
図5は、回転制御およびシフト制御の駆動量計算を説明する図である。具体的には、図4に示すような撮像範囲を維持するための、カメラユニット100の回転量αに応じた撮像素子106のシフト量xの算出方法を説明している。
【0026】
図5に示す三角形OABは、図4に示す三角形OABを拡大した図である。ここで、αはカメラユニット100の回転量、αは垂直画角/2、xは撮像素子106のシフト量、xはセンサ垂直サイズ/2、lは結像位置である。このとき、カメラユニット100をα回転させたときの撮像素子のシフト量xは、数式(1)で表される。
【0027】
【数1】
【0028】
ここで、数式(2)の関係が成り立つ。
【0029】
【数2】
【0030】
数式(1)および数式(2)より、カメラユニット100をα回転させたとき、撮像範囲の変化を無くすための撮像素子のシフト量xは、センサ垂直サイズ、結像位置を用いて、数式(3)で表すことができる。
【0031】
【数3】
【0032】
すなわち、数式(3)の関係を用いて回転制御およびシフト制御を行うことにより、被写体歪みを低減することが可能となる。また、補正制御(回転制御およびシフト制御)中における撮像範囲の変化を抑止(すなわち撮像範囲の維持)することが可能となる。
【0033】
図6は、歪み補正における撮像画像の時間変化を示す図である。例えば、監視装置111の表示部に表示される撮像画像における、補正制御(回転制御およびシフト制御)の開始時点から完了時点までの変化を示している。
【0034】
撮像開始時(補正制御開始前)では、被写体である建物の上部が下部に対して短くなる歪み(以下では「上部歪み」と呼ぶ)が生じている。この状態に対し、数式(3)の関係を用いて、カメラユニット100の回転制御に同期させた撮像素子106のシフト制御を開始する。これにより、撮像画像における被写体の相対位置が維持されたままの状態で、被写体に生じた歪みが時間と共に徐々に補正されることになる。この上部歪みに対する補正を、以下では「上部補正」と呼ぶ。同様に、下部歪み、右部歪み、左部歪みに対する補正を、それぞれ、下部補正、右部補正、左部補正と呼ぶ。
【0035】
図7は、歪み補正のユーザーインターフェース(UI)を例示する図である。例えば、このUIは、監視装置111において、物理的なボタンあるいは表示部上のGUIとして提供され得る。ユーザーは、監視装置111の表示部に表示される撮像画像における被写体の歪みの状態に合わせて、どの歪み補正(上部補正、下部補正、右部補正、左部補正)を実施するか決定し、UI上の対応するボタンを押下する。これにより、対応するシフト方向の情報を含むユーザー指示(駆動指示、駆動開始指示、駆動停止指示)が送信される。
【0036】
図6に示すような撮像画像であれば、「上部補正」を実施する。ユーザーのボタン押下が始まったタイミングで、数式(3)に基づきカメラユニット100および撮像素子106の制御が開始され、ユーザーによるボタン押下が終わったタイミングで、それらの制御を停止する。
【0037】
ユーザーは、図6のように時間的に変化する撮像画像を確認しながら、ボタンの押下を行うことで、被写体の歪み補正を精度良く行うことが出来る。例えば、「上部補正」ボタンの押下時間が長すぎ過補正となった場合は「下部補正」ボタンを押下するとよい。
【0038】
<効果>
上述の数式(3)で表されるシフト量の算出は、撮像装置の仰角や被写体距離といった情報が不要である。具体的には、数式(3)によるシフト量の算出に必要な情報は、カメラユニット100の回転量、センサ垂直サイズ、結像位置である。これらの情報は撮像装置ごとに既知の情報または制御情報から取得される情報である。このように、上述のシフト制御は仰角や被写体距離といった情報の検出精度の影響を受けないという点で有用である。
【0039】
また、図6を参照して説明したように、レンズユニット100の回転制御と撮像素子106のシフト制御を同期して行うことにより、補正制御中における撮像範囲の変化を抑止することが可能となる。すなわち、補正制御中におおて撮像範囲に対する被写体位置が変動せず、被写体の歪みのみが補正されるため品位が良い。
【0040】
<撮像装置の動作>
以下では、上述したカメラユニット100の回転制御と撮像素子106のシフト制御との同期制御についてさらに説明する。特に、異なる2つの同期制御方式について説明する。
【0041】
<第1の同期制御>
図8は、第1の同期制御における制御方法を説明する図である。第1の同期制御では、カメラユニット100の1ステップ(所定量)分の回転制御指示を逐次受け付け、撮像素子106のシフト量を逐次決定し同期制御する方式である。すなわち、カメラユニット100と撮像素子106の制御目標位置を細かく指定しながら、両者の駆動を同期させる。
【0042】
図8は、ある撮像条件におけるカメラユニット100の回転量と撮像素子106のシフト量との関係を示している。ここでは、カメラユニット100の1ステップの回転量をα’とし、基準位置からの回転量に応じた撮像素子106のシフト量xを算出して、算出結果に基づいて制御を行う。
【0043】
図9は、第1の同期制御における処理のフローチャートである。以下の動作は、撮像装置の各部が行う。
【0044】
ステップS900では、撮像装置は、数式(3)に基づいて撮像素子106のシフト量を算出するために必要となる、x(センサ垂直サイズ/2)を取得する。
【0045】
ステップS901では、撮像装置は、歪み補正ボタン(図7)がユーザー操作により押下されているか否かを判定する。例えば、監視装置111から送信され通信部110を介して入力された制御信号が歪み補正ボタンの押下を示しているか否かにより判定する。押下されている場合はS902に進み、押下されていない場合は判定を継続する。
【0046】
図7に示す4種類のボタンは、ユーザー操作により、補正したい歪みの形状に適したものが選択的に押下される。カメラユニット100および撮像素子106の駆動方向(シフト方向)は、ここで選択された補正のタイプにより一意に決定される。例えば、上部補正が押下された場合は、回転制御をチルト下方向、シフト制御を下方向に制御する。また、下部補正が押下された場合は、上部補正の場合のそれぞれ逆方向に制御する。さらに、左部補正が押下された場合は、回転制御をパン右方向、シフト制御を右方向に制御する。右部補正が押下された場合は、左部補正の場合のそれぞれ逆方向に制御する。
【0047】
ステップS902では、撮像装置は、結像位置lを取得する。結像位置lは、図5に示すOB間の結像距離であり、これは光学系202と撮像面203との間の結像距離を示している。結像位置lは、フォーカスレンズの制御に用いるフォーカスレンズ位置により取得することができる。歪み補正ボタンがユーザーにより押下されてから、押下停止まで、結像位置lの取得は一度のみ行えば良い。
【0048】
ステップS903では、駆動量決定部112は、カメラユニット100の1ステップの回転量α’を設定する。1ステップの回転量α’が小さい程、撮像範囲を維持する効果が高くなる。
【0049】
ステップS904では、駆動量決定部112は、回転制御部114にカメラユニット100の回転目標位置αを設定する。回転目標位置αは、S903で設定した1ステップ回転量α’に基づいて設定される。歪み補正開始時のカメラユニット100の回転位置を基準として、1ステップ回転する度に1ステップの回転量α’だけ加算した量が、カメラユニット100の回転目標位置αである。
【0050】
ステップS905では、駆動量決定部112は、S904で設定したカメラユニット100の回転目標位置αに基づいて、撮像素子106のシフト目標位置xを決定する。この決定は、数式(3)に基づいて行い、必要となるx、l、αは、それぞれ、S900、S902、S904で取得または設定した値を用いる。
【0051】
ステップS906では、駆動量決定部112は、シフト制御部113にS905で算出した撮像素子106のシフト目標位置xを設定する。
【0052】
ステップS907では、回転制御部114およびシフト制御部113は、それぞれ、回転駆動部116およびシフト駆動部115を制御して、カメラユニット100および撮像素子106を駆動する。すなわち、S904で設定されたカメラユニット100の回転目標位置αおよびS906で設定された撮像素子106のシフト目標位置xに基づいて、駆動する。
【0053】
ステップS908では、回転制御部114およびシフト制御部113は、それぞれ、カメラユニット100の回転駆動または、撮像素子106のシフト駆動のいずれかの制御位置がメカ駆動端に達しているか否かを判定する。いずれかが駆動端に達していると判定された場合は、歪み補正制御を終了する。いずれも駆動端に達していない場合はS909に進む。
【0054】
ステップS909では、撮像装置は、歪み補正ボタンの押下が終了しているか否かを判定する。例えば、S901と同様に、監視装置111から送信され通信部110を介して入力された制御信号が歪み補正ボタンの押下を示しているか否かにより判定する。終了している場合は歪み補正制御を終了し、押下されていない場合はS904に戻り歪み補正制御を継続する。
【0055】
歪み補正ボタンが押下され続けている場合は、S904~908の処理を繰り返し行うことで、撮像範囲に対する被写体の相対位置を維持したまま歪み補正を行うことができる。ここでは、カメラユニット100を1ステップ回転制御させるのに応じて、撮像素子106のシフト駆動量を算出しているが、撮像素子106の1ステップのシフト駆動量を設定しておき、シフト駆動量に応じて回転駆動量を算出しても良い。また、シフト制御は撮像素子106でなく、光学系203を制御しても良い。
【0056】
以上のように、第1の同期制御においては、カメラユニット100と撮像素子106の制御目標位置を細かく指定しながら、両者の駆動を同期させることが出来る。
【0057】
<第2の同期制御>
図10は、第2の同期制御における制御方法を説明する図である。第2の同期制御では、カメラユニット100の回転制御と撮像素子106のシフト制御の駆動速度を、制御開始時に指定することにより、両者の制御を同期させる。
【0058】
図11は、第2の同期制御における処理のフローチャートである。以下の動作は、撮像装置の各部が行う。なお、S900~S902、S907、S909は、第1の同期制御と同様の処理であるため説明を省略する。
【0059】
ステップS1100では、撮像装置は、撮像素子106のシフト可動量xlimを取得する。シフト可動量xlimは、撮像素子106の現在位置からメカ駆動端までの距離である。
【0060】
ステップS1101では、撮像装置は、カメラユニット100の回転可動量αlimを取得する。回転可動量αlimは、カメラユニット100の現在位置からメカ駆動端までの角度である。
【0061】
ステップS1102では、駆動量決定部112は、撮像素子106のシフト最大駆動量xmaxを算出する。シフト最大駆動量xmaxは、カメラユニット100をS1101で取得した回転可動量αlimだけ回転駆動する場合に、撮像範囲に対して被写体の相対位置を維持するために必要な撮像素子106のシフト駆動量である。シフト最大駆動量xmaxは、数式(3)に基づいて算出される。
【0062】
ステップS1103では、駆動量決定部112は、S1100で算出したシフト可動量xlimと、S1102で算出したシフト最大駆動量xmaxとの大小比較をする。xlim>xmaxの場合はS1104に進む。xlim>xmaxの場合は、カメラユニット100をメカ駆動端まで制御したときに、被写体の相対位置を維持するために必要な撮像素子106のシフト制御をしても、撮像素子106がメカ駆動端に突き当たらない場合である。一方、xlim≦xmaxの場合はS1106に進む。xlim≦xmaxの場合は、カメラユニット100をメカ駆動端まで制御したときに、撮像素子106がメカ駆動端に突き当たってしまい、被写体の相対位置を維持しきれない場合である。
【0063】
ステップS1104では、駆動量決定部112は、撮像素子106のシフト目標位置を、撮像素子106の現在位置xnowに対してS1102で算出したシフト最大駆動量xmaxだけ加算した位置に設定する。
【0064】
ステップS1105では、駆動量決定部112は、カメラユニット100の回転目標位置を、カメラユニット100の現在位置αnowに対してS1101で取得した回転可動量αlimだけ加算した位置に設定する。
【0065】
ステップS1106では、駆動量決定部112は、カメラユニット100の回転最大駆動量αmaxを算出する。回転最大駆動量αmaxは、撮像素子106をS1100で取得したシフト可動量xlimだけシフト制御する場合に、撮像範囲に対して被写体の相対位置を維持するために必要なカメラユニット100の回転駆動量である。回転最大駆動量αmaxは、数式(3)に基づいて算出される。
【0066】
ステップS1107では、駆動量決定部112は、撮像素子106のシフト目標位置を、撮像素子106の現在位置xnowに対してS1100で取得したシフト可動量xlimだけ加算した位置に設定する。
【0067】
ステップS1108では、駆動量決定部112は、カメラユニット100の回転目標位置を、カメラユニット100の現在位置αnowに対してS1106で算出した回転最大駆動量αmaxだけ加算した位置に設定する。
【0068】
ステップS1109では、駆動量決定部112は、カメラユニット100の回転速度vを回転制御部114に設定する。なお、回転制御速度vを遅くする程、ユーザーは、歪み補正の開始と終了を指示する際の微調整がしやすくなる。
【0069】
ステップS1110では、駆動量決定部112は、撮像素子106のシフト速度vをシフト制御部113に設定する。このとき、カメラユニット100と撮像素子106が同時に目標位置に到達する(すなわち、駆動時間が同じになる)ようにシフト速度vを設定する。
【0070】
ステップS1111では、回転制御部114およびシフト制御部113は、それぞれ、カメラユニット100および撮像素子106が目標位置に到達したか否かを判定する。両方とも到達した場合は、歪み補正制御を終了する。少なくとも一方が到達していない場合は、S909に進む。
【0071】
ステップS1112では、撮像装置は、歪み補正の停止処理を行う。停止処理は、歪み補正終了指示を受け付けたタイミングにおけるカメラユニット100の向きに対して、撮像範囲が維持されるようなシフト位置まで撮像素子106をシフトした後、制御を終了する処理である。
【0072】
カメラユニット100の回転量と撮像素子106のシフト量との間の線形性が低い場合、目標位置に到達する途中の地点では、撮像範囲に対する被写体の相対位置が完全には維持されない場合がある。そのため、ユーザー操作により制御目標位置より手前で歪み補正が終了した場合には、S1112による停止処理により撮像範囲を調整するのである。
【0073】
以上のように、第1の同期制御においては、カメラユニット100と撮像素子106の制御の駆動速度を制御開始時に指定することで、両者の駆動を同期させることができる。
【0074】
上述の第1の同期制御および第2の同期制御は、どちらもカメラユニット100と撮像素子106を同期させることが出来る。ただし、第1の同期制御では、第2の同期制御に比較して、歪み補正制御中の被写体の相対位置の維持効果が高い点で優位である。一方、第2の同期制御は、第1の同期制御に対して、計算回数や駆動回数が少ない(1回)ため高速制御を必要とする撮影条件において優位である。
【0075】
<撮像装置のハードウェア構成>
次に、撮像装置のハードウェア構成例について、図20のブロック図を用いて説明する。なお、図20に示した構成は、撮像装置に適用可能な構成の一例に過ぎず、適宜変形/変更が可能である。
【0076】
CPU211は、主記憶装置212に格納されているコンピュータプログラムやデータを用いて処理を実行する。これによりCPU211は、撮像装置全体の動作制御を行うと共に、撮像装置が行うものとして前述した各処理を実行若しくは制御する。例えばCPU211は、主記憶装置212に格納されているコンピュータプログラムやデータを用いて処理を実行することで、図1に示したカメラ信号処理部109、駆動量決定部112、シフト制御部113、回転制御部114の各機能部の機能を実現する。
【0077】
主記憶装置212は、Random Access Memory(RAM)等の記憶装置である。主記憶装置212は、補助記憶装置213からロードされたコンピュータプログラムやデータ、撮像部215による撮像画像、通信部110を介して監視装置111から受信した各種のデータ、を格納するためのエリアを有する。さらに主記憶装置212は、CPU211が各種の処理を実行する際に用いるワークエリアを有する。このように主記憶装置212は、各種のエリアを適宜提供することができる。
【0078】
補助記憶装置213は、ハードディスクドライブ(HDD)、Read Only Memory(ROM)、ソリッドステートドライブ(SSD)等の大容量情報記憶装置である。補助記憶装置213には、OS(オペレーティングシステム)や、撮像装置が行うものとして前述した各処理をCPU211に実行若しくは制御させるためのコンピュータプログラムやデータが保存されている。また補助記憶装置213には、通信部110を介して監視装置111から受信したデータも保存される。補助記憶装置213に保存されているコンピュータプログラムやデータは、CPU211による制御に従って適宜主記憶装置212にロードされ、CPU211による処理対象となる。
【0079】
駆動部214は、監視装置111から受信した撮像パラメータに基づいてカメラユニット100を駆動する。例えば、撮像素子106をシフト制御するシフト駆動部115や、カメラユニット100を回転制御する回転駆動部116に対応する。なお、駆動部214による制御対象は特定の対象に限らず、その他の対象(例えばカメラユニット100の位置)であっても良い。
【0080】
カメラユニット100は、撮像素子と光学系とを有し、光学系の光軸と撮像素子との交点を撮像中心として被写体の像を撮像素子上に結像する。撮像素子には、CMOS(ComplementaryMetal-Oxide Semiconductor)、CCD(Charged Coupled Device)等がある。通信部110は、監視装置111との間のデータ通信を行う。
【0081】
以上説明したとおり第1実施形態によれば、撮像素子のシフト制御を行う際に、撮像素子のシフト制御に同期させてカメラユニットの回転制御(チルトまたはパン)を行う。より具体的には、シフト制御により生じる撮像範囲の変化を相殺するように同期して回転制御を行う。この同期制御により、補正制御中における撮像範囲の変化を抑止することが出来、高い品位の映像を提供することが可能となる。
【0082】
(変形例)
変形例では、撮像装置が、撮像画像に基づいて被写体に生じている歪み形状を判定し、歪み形状が補正されるようにカメラユニット100の回転制御および撮像素子106のシフト制御を行う例について説明する。
【0083】
図12は、変形例に係る撮像装置が実行する処理のフローチャートである。
【0084】
ステップS1200では、撮像装置は、ユーザーからの歪み補正実行指示の有無を判定する。ユーザーからの歪み補正指示が有ると判定された場合はS1201に進む。一方、指示が無いと判定された場合は引き続き歪み補正指示を待ち受ける。
【0085】
ステップS1201では、撮像装置は、撮像画像内に歪みが生じている被写体(以下、歪み被写体)が存在するか否かを判定する。歪み被写体が存在すると判定した場合はS1202に進み、歪み被写体が存在しないと判定した場合はS1203に進む。歪み被写体の有無の判定方法として、以下では、深度情報に基づく方法とエッジ検出に基づく方法を説明するが、それ以外の方法により歪み被写体の有無を判定しても良い。
【0086】
図13は、深度情報に基づいた歪み形状判定を説明する図である。深度情報(各画素がその位置での深度値を有する深度画像など)に基づく歪み被写体有無の判定方法では、ある被写体領域において被写体距離が単調に変化している場合に、当該被写体は撮像装置と正対しておらず歪み被写体となっていると判定する。
【0087】
図14は、エッジ検出に基づいた歪み形状判定を説明する図である。エッジ検出に基づく歪み被写体有無の判定方法では、ある被写体領域に対して検出した1対のエッジに関して上下方向(または左右方向)に沿ったエッジ間隔が一定で無い場合に歪み被写体であると判定する。
【0088】
ステップS1202では、撮像装置は、S1201で歪み被写体であると判定された被写体を歪み補正対象として設定する。なお、シーンによっては、撮像画像内に複数の歪み被写体が存在する場合もある。この場合には、ユーザーから補正対象の被写体の選択を受け付けることにより、補正対象の被写体を設定するとよい。
【0089】
図15は、複数の被写体が存在する場合の歪み形状判定を説明する図である。また、図16は、複数の被写体が存在する場合の補正対象決定を説明する図である。具体的には、図16は、補正対象の被写体の選択をユーザーから受け付ける画面を示している。図16では、S1201において歪み被写体と判定された物体毎に領域分割した複数の多角形領域を撮像画像に重畳して表示し、ユーザーから1つの多角形領域の選択を受け付ける形態の表示画面である。
【0090】
ステップS1203では、撮像装置は、撮像画像において歪み被写体(補正対象となる被写体)が存在しないことをユーザーに通知する。
【0091】
ステップS1204では、撮像装置は、補正対象となる被写体の歪み形状種別(上部歪み、下部歪み、右部歪み、左部歪み)を判定する。歪み形状判定の場合にも、深度情報に基づく判定や、エッジ検出に基づく判定が可能である。
【0092】
例えば、図13の撮像画像1300に対応する深度情報において、撮像画像1300の建物領域に対する深度(被写体距離)が画像下端から上端の方向にかけて近くから遠くへ変化していることを示している。遠近法により、距離が近い程大きく見え、遠い程小さく見える。そのため、撮像画像1300の建物に生じる歪み形状は「上部歪み」(画像下方向が大きく上方向が小さい)であると判定できる。
【0093】
同様に、撮像画像1301に対応する深度情報において、撮像画像1301の建物領域に対する深度(被写体距離)が画像左端から右端の方向にかけて近くから遠くへ変化していることを示している。そのため、撮像画像1301の建物に生じる歪み形状は「右部歪み」(画像左方向が大きく右方向が小さい)であると判定できる。このように、深度情報を活用し、撮像画像内の被写体(建物)における深度が変化している方向に基づいて歪み形状を判定することが可能である。
【0094】
また、図14の撮像画像1400においては、撮像画像内の被写体に対して検出した1対のエッジに関して、1対のエッジ間の間隔が画像下端から上端の方向にかけて狭くなっていることを示している。この場合、被写体に生じる歪み形状は「上部歪み」であると判定できる。さらに、撮像画像1401においては、撮像画像内の被写体に対して検出した1対のエッジに関して、1対のエッジ間の間隔が画像左端から右端の方向にかけて狭くなっていることを示している。この場合、被写体に生じる歪み形状は「右部歪み」であると判定できる。このように、被写体に対して検出した1対のエッジ間のエッジ間隔が変化している方向に基づいて当該被写体の歪み形状を判定することが可能である。
【0095】
ステップS1205では、撮像装置は、S1204で判定した歪み形状に基づいて、各歪み形状に適したカメラユニット100の回転制御および撮像素子106のシフト制御の駆動方向を設定する。
【0096】
図17は、各歪み形状に対する回転制御およびシフト制御の関係を示す図である。図17に示されるように、各歪み形状に対し、それを補正するためのカメラユニット100および撮像素子106の駆動方向は一意に決定可能である。
【0097】
ステップS1206では、撮像装置は、歪み補正駆動を行う。ここでは所定量ずつ歪み補正駆動(ステップ駆動)を行いS1206~S1208を繰り返すことを想定する。なお、この処理は、図9を参照して上述した処理(S902~S907)と同様であるため説明は割愛する。
【0098】
ステップS1207では、撮像装置は、補正対象となる被写体に生じている現在の歪み量を算出する。歪み量算出の場合にも、深度情報に基づく算出や、エッジ検出に基づく算出が可能である。
【0099】
図18は、深度情報に基づいた歪み量算出を説明する図である。図18は、S1206の歪み補正駆動中における撮像画像の変化を例示的に示している。撮像画像1800は、補正対象の被写体の上部と下部で深度(被写体距離)の差が大きいことを示している。この場合、歪み量は大きい値で算出される。1ステップ以上の歪み補正駆動を行った後に得られる撮像画像1801は、撮像画像1800に比べて補正対象の被写体の上部と下部での深度の差が小さくなっている。そのため、歪み量は、撮像画像1800と比較して小さい値で算出される。更に歪み補正駆動を行った後に得られる撮像画像1802は、補正対象の被写体の上部と下部での深度が略同一となっている。そのため、歪み量は0に近い値で算出される。このように深度情報に基づいて歪み量の算出を行う場合、補正対象の被写体における複数領域(例えば上部と下部)の深度差を歪み量として評価することが可能である。
【0100】
図19は、エッジ検出に基づいた歪み量算出を説明する図である。図19は、S1206の歪み補正駆動中における撮像画像の変化を例示的に示している。撮像画像1900は、補正対象の被写体の上部と下部で1対のエッジ間のエッジ間隔の差が大きいことを示している。この場合、歪み量は大きい値で算出される。1ステップ以上の歪み補正駆動を行った後に得られる撮像画像1901は、撮像画像1900に比べて補正対象の被写体の上部と下部でのエッジ間隔の差が小さくなっている。そのため、歪み量は、撮像画像1900と比較して小さい値で算出される。更に歪み補正駆動を行った後に得られる撮像画像1902は、補正対象の被写体の上部と下部でのエッジ間隔が略同一となっている。そのため、歪み量は0に近い値で算出される。このようにエッジ検出に基づいて歪み量の算出を行う場合、補正対象の被写体における複数領域(例えば上部と下部)のエッジ間隔の差を歪み量として評価することが可能である。
【0101】
ステップS1208では、撮像装置は、S1207で算出された歪み量が所定の閾値以下であるか否かを判定する。歪み量が所定の閾値以下で無い場合は、歪み補正が十分でないためS1206へ戻る。一方、歪み量が所定の閾値以下となった場合はS1209に進む。
【0102】
ステップS1209では、撮像装置は、歪み形状判定(S1204)が2回行われているか否かを判定する。これは、被写体によっては、撮像画像の上下方向の歪み(上部歪みまたは下部歪み)と左右方向の歪み(右部歪みまたは左部歪み)の両方が存在する場合があるためである。一度の歪み形状判定に基づく補正(S1204~S1208)では、上下方向または左右方向の何れか一方の歪みしか補正されないため、歪み形状判定が2回行われているか否かを判定するのである。
【0103】
以上説明したように、撮像装置は、撮像画像に対応する深度情報や撮像画像に対するエッジ検出の結果に基づいて、撮像画像の被写体に生じている歪みを補正することが可能である。
【0104】
本明細書の開示は、以下の撮像装置、制御方法およびプログラムを含む。
(項目1)
撮像光学系および撮像素子を有する撮像部と、
前記撮像部の向きをパン方向および/またはチルト方向に移動する姿勢制御手段と、
前記撮像光学系および前記撮像素子の少なくとも一方を撮像面に平行な面内で移動させるシフト制御手段と、
前記姿勢制御手段および前記シフト制御手段の一方を駆動する際に、該一方の駆動による前記撮像部の撮像範囲の変化が相殺されるように、該一方の駆動に同期して他方を駆動する同期制御手段と、
前記撮像部により得られる撮像画像における被写体の歪み量を逐次決定する決定手段と、
を有し、
前記同期制御手段は、前記決定手段により決定された歪み量が所定の閾値以下となった場合に駆動を停止する
ことを特徴とする撮像装置。
(項目2)
前記シフト制御手段は、前記撮像部により得られる撮像画像における被写体の歪みが補償されるように、前記撮像光学系および前記撮像素子の少なくとも一方を撮像面に平行な面内で移動させる
ことを特徴とする項目1に記載の撮像装置。
(項目3)
前記同期制御手段は、前記一方における第1の駆動量に基づいて前記他方における第2の駆動量を決定する
ことを特徴とする項目1または2に記載の撮像装置。
(項目4)
前記同期制御手段は、更に、前記撮像素子のサイズ、前記撮像光学系から前記撮像素子までの結像距離に基づいて、前記第2の駆動量を決定する
ことを特徴とする項目3に記載の撮像装置。
(項目5)
前記シフト制御手段に対するユーザー指示を受け付ける受付手段を更に有する
ことを特徴とする項目1乃至4の何れか1項目に記載の撮像装置。
(項目6)
前記受付手段は、前記シフト制御手段を所定量だけ駆動させる駆動指示を逐次受け付けるよう構成されており、
前記同期制御手段は、前記受付手段により前記駆動指示を受け付けた場合、該駆動指示に基づき前記シフト制御手段を所定量だけ駆動し、該所定量の駆動に応じた前記姿勢制御手段の駆動量を逐次決定し駆動する
ことを特徴とする項目5に記載の撮像装置。
(項目7)
前記受付手段は、前記シフト制御手段を駆動させる駆動指示を受け付けるよう構成されており、
前記同期制御手段は、前記受付手段により前記駆動指示を受け付けた場合、前記姿勢制御手段および前記シフト制御手段の両方の駆動速度を決定し駆動開始する
ことを特徴とする項目5に記載の撮像装置。
(項目8)
前記同期制御手段は、前記受付手段により前記駆動指示を受け付けた場合、前記姿勢制御手段および前記シフト制御手段の両方の駆動時間が同じになるように前記駆動速度を決定する
ことを特徴とする項目7に記載の撮像装置。
(項目9)
前記受付手段は、前記シフト制御手段の駆動を停止させる駆動停止指示を更に受け付けるよう構成されており、
前記同期制御手段は、前記姿勢制御手段および前記シフト制御手段を駆動している間に前記受付手段により前記駆動停止指示を受け付けた場合、該駆動停止指示を受け付けたタイミングにおける前記撮像部の向きおよび前記撮像素子のシフト位置の一方に基づいて他方を調整する
ことを特徴とする項目7または8に記載の撮像装置。
(項目10)
前記駆動指示は、前記シフト制御手段による前記撮像素子のシフト方向の情報を含む
ことを特徴とする項目6乃至9の何れか1項目に記載の撮像装置。
(項目11)
前記シフト制御手段を所定量ずつ繰り返し駆動させる駆動開始指示を受け付ける受付手段を更に有し、
前記シフト制御手段は、前記受付手段により前記駆動開始指示を受け付けた場合に駆動を開始する
ことを特徴とする項目1乃至4の何れか1項目に記載の撮像装置。
(項目12)
前記撮像部により得られる撮像画像に対応する深度情報を取得する深度取得手段を更に有し、
前記決定手段は、前記撮像画像に含まれる被写体領域内の深度の差に基づいて前記歪み量を決定する
ことを特徴とする項目11に記載の撮像装置。
(項目13)
前記撮像部により得られる撮像画像に含まれる被写体のエッジを検出するエッジ検出手段を更に有し、
前記決定手段は、前記エッジ検出手段により前記被写体に対して検出された1対のエッジ間のエッジ間隔の差に基づいて前記歪み量を決定する
ことを特徴とする項目11に記載の撮像装置。
(項目14)
前記撮像部により得られる撮像画像における被写体の歪み形状種別を決定する決定手段を更に有し、
前記姿勢制御手段および前記シフト制御手段それぞれにおける駆動方向は、前記決定手段により決定された歪み形状種別に基づいて決定される
ことを特徴とする項目1乃至4の何れか1項目に記載の撮像装置。
(項目15)
前記撮像部により得られる撮像画像に対応する深度情報を取得する深度取得手段を更に有し、
前記決定手段は、前記撮像画像に含まれる被写体領域内の深度の変化方向に基づいて前記歪み形状種別を決定する
ことを特徴とする項目14に記載の撮像装置。
(項目16)
前記撮像部により得られる撮像画像に含まれる被写体のエッジを検出するエッジ検出手段を更に有し、
前記決定手段は、前記エッジ検出手段により前記被写体に対して検出された1対のエッジ間のエッジ間隔の変化方向に基づいて前記歪み形状種別を決定する
ことを特徴とする項目14に記載の撮像装置。
(項目17)
前記撮像画像に歪みが生じている複数の被写体が存在する場合、前記決定手段による決定の対象となる1つの被写体の選択を受け付ける受付手段を更に有する
ことを特徴とする項目14乃至16の何れか1項目に記載の撮像装置。
(項目18)
撮像装置の制御方法であって、
前記撮像装置は、
撮像光学系および撮像素子を有する撮像部と、
前記撮像部の向きをパン方向および/またはチルト方向に移動する姿勢制御手段と、
前記撮像光学系および前記撮像素子の少なくとも一方を撮像面に平行な面内で移動させるシフト制御手段と、
を有し、
前記制御方法は、
前記撮像部により得られる撮像画像における被写体の歪み量を逐次決定する決定工程と、
前記姿勢制御手段および前記シフト制御手段の一方を駆動する際に、該一方の駆動による前記撮像部の撮像範囲の変化が相殺されるように、該一方の駆動に同期して他方を駆動する同期制御工程と、
を含み、
前記同期制御工程では、前記決定工程により決定された歪み量が所定の閾値以下となった場合に前記姿勢制御手段および前記シフト制御手段の駆動を停止する
ことを特徴とする制御方法。
(項目19)
撮像装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記撮像装置は、
撮像光学系および撮像素子を有する撮像部と、
前記撮像部の向きをパン方向および/またはチルト方向に移動する姿勢制御手段と、
前記撮像光学系および前記撮像素子の少なくとも一方を撮像面に平行な面内で移動させるシフト制御手段と、
を有し、
前記制御方法は、
前記撮像部により得られる撮像画像における被写体の歪み量を逐次決定する決定工程と、
前記姿勢制御手段および前記シフト制御手段の一方を駆動する際に、該一方の駆動による前記撮像部の撮像範囲の変化が相殺されるように、該一方の駆動に同期して他方を駆動する同期制御工程と、
を含み、
前記同期制御工程では、前記決定工程により決定された歪み量が所定の閾値以下となった場合に前記姿勢制御手段および前記シフト制御手段の駆動を停止する
ことを特徴とするプログラム。
【0105】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0106】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0107】
100 カメラユニット; 101 ズームレンズ; 102 フォーカスレンズ; 103 絞りユニット; 104 バンドパスフィルタ; 105 カラーフィルタ; 106 撮像素子; 107 AGC; 108 AD変換機; 109 カメラ信号処理部; 110 通信部; 111 監視装置; 112 駆動量決定部; 113 シフト制御部; 114 回転制御部; 115 シフト駆動部; 116 回転駆動部
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