(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】固体撮像素子、および、撮像装置
(51)【国際特許分類】
H04N 25/77 20230101AFI20241212BHJP
【FI】
H04N25/77
(21)【出願番号】P 2022509324
(86)(22)【出願日】2021-01-26
(86)【国際出願番号】 JP2021002567
(87)【国際公開番号】W WO2021192576
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2020050475
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112955
【氏名又は名称】丸島 敏一
(72)【発明者】
【氏名】小豆畑 智
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-231051(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0136955(US,A1)
【文献】特開2019-216379(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031594(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定数の画素と、
画素AD(Analog to Digital)変換部と
を具備し、
前記画素AD変換部は、前記画素ごとにADC(Analog to Digital Converter)を備え、
前記ADCのそれぞれは、
一対の入力ノードのそれぞれの電位の差分を増幅して出力ノードから出力する差動増幅回路
を備え、
前記画素のそれぞれは、
光電変換素子から浮遊拡散層へ電荷を転送する転送トランジスタと、
所定の期間内に前記浮遊拡散層と前記出力ノードとを短絡するオートゼロトランジスタと、
前記浮遊拡散層の電位に応じた電位を前記一対の入力ノードの一方に供給するソースフォロワ回路と
を
備え、
前記ソースフォロワ回路は、
所定の電流を供給する第1の電流源トランジスタと、
前記浮遊拡散層にゲートが接続され、前記第1の電流源トランジスタと前記一対の入力ノードの一方とに容量を介さずにソースが接続されたソースフォロワトランジスタと
を備える
固体撮像素子。
【請求項2】
前記差分に応じたデジタル信号に対して所定の信号処理を行う信号処理部をさらに具備する
請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記信号処理は、相関二重サンプリング処理を含む
請求項2記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記信号処理は、時間遅延積分処理をさらに含む
請求項3記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記差動増幅回路は、
一対の差動トランジスタと、
前記一対の差動トランジスタのソースに共通に接続され、所定の電流を供給する第2の電流源トランジスタと
を備え、
前記一対の差動トランジスタの一方のゲートには、所定の参照信号が入力され、
前記一対の差動トランジスタの他方のゲートは、前記ソースフォロワ回路からの前記電位が入力される
請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記転送トランジスタと前記オートゼロトランジスタと前記ソースフォロワ回路と前記差動増幅回路の一部とが所定の受光チップに設けられ、
前記差動増幅回路の残りは、所定の回路チップに設けられる
請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項7】
前記受光チップと前記回路チップとは、Cu-Cu接合により接続される
請求項
6記載の固体撮像素子。
【請求項8】
所定数の画素と、
画素AD(Analog to Digital)変換部と
を具備し、
前記画素AD変換部は、前記画素ごとにADC(Analog to Digital Converter)を備え、
前記ADCのそれぞれは
一対の入力ノードのそれぞれの電位の差分を増幅して出力ノードから出力する差動増幅回路
を備え、
前記画素のそれぞれは、
光電変換素子から浮遊拡散層へ電荷を転送する転送トランジスタと、
所定の期間内に前記浮遊拡散層と前記出力ノードとを短絡するオートゼロトランジスタと、
前記浮遊拡散層の電位に応じた電位を前記一対の入力ノードの一方に供給するソースフォロワ回路と、
前記差分に応じたデジタル信号を配列したフレームを記憶する記憶部と
を
備え、
前記ソースフォロワ回路は、
所定の電流を供給する第1の電流源トランジスタと、
前記浮遊拡散層にゲートが接続され、前記第1の電流源トランジスタと前記一対の入力ノードの一方とに容量を介さずにソースが接続されたソースフォロワトランジスタと
を備える
撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、固体撮像素子、および、撮像装置に関する。詳しくは、画素ごとにADC(Analog to Digital Converter)を設けた固体撮像素子、および、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像データの撮像を高速に行う目的で、画素ごとにADCを設けた固体撮像素子が用いられている。例えば、画素毎にADCを設けた回路を、積層した2つのチップに分散して配置した固体撮像素子が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。この固体撮像素子では、ADC内の差動増幅回路の2つの入力端子の一方に画素内の浮遊拡散層が接続され、それらの入力端子の他方に参照信号が入力される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Masaki Sakakibara, et al., A 6.9-μm Pixel-Pitch Back-Illuminated Global Shutter CMOS Image Sensor With Pixel-Parallel 14-Bit Subthreshold ADC, IEEE Journal of Solid-State Circuits 2018.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来技術では、積層した2つのチップに回路を分散して配置することにより、高機能化や画素の微細化を図っている。しかしながら、上述の従来技術では、差動増幅回路内の寄生容量を介して参照信号の変化が浮遊拡散層のノードに伝わり、そのノードの電位が変動することがある。この電位の変動により差動増幅回路の出力が反転するタイミングが遅延し、その遅延によってフレームレートが低下するおそれがある。
【0005】
本技術はこのような状況に鑑みて生み出されたものであり、参照信号と画素信号とを比較する固体撮像素子において、フレームレートを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術は、上述の問題点を解消するためになされたものであり、その第1の側面は、一対の入力ノードのそれぞれの電位の差分を増幅して出力ノードから出力する差動増幅回路と、光電変換素子から浮遊拡散層へ電荷を転送する転送トランジスタと、所定の期間内に上記浮遊拡散層と上記出力ノードとを短絡するオートゼロトランジスタと、上記浮遊拡散層の電位に応じた電位を上記一対の入力ノードの一方に供給するソースフォロワ回路とを具備する固体撮像素子である。これにより、浮遊拡散層の電位変動が抑制されるという作用をもたらす。
【0007】
また、この第1の側面において、上記差分に応じたデジタル信号に対して所定の信号処理を行う信号処理部をさらに具備してもよい。これにより、信号処理後の信号を配列したフレームが生成される作用をもたらす。
【0008】
また、この第1の側面において、上記信号処理は、相関二重サンプリング処理を含むものであってもよい。これにより、デジタル信号のノイズが低減されるという作用をもたらす。
【0009】
また、この第1の側面において、上記信号処理は、時間遅延積分処理をさらに含むものであってもよい。これにより、高画質のフレームが生成されるという作用をもたらす。
【0010】
また、この第1の側面において、上記ソースフォロワ回路は、所定の電流を供給する第1の電流源トランジスタと、上記浮遊拡散層にゲートが接続され、上記第1の電流源トランジスタと上記一対の入力ノードの一方とにソースが接続されたソースフォロワトランジスタとを備えてもよい。これにより、浮遊拡散層の電位に追従した電位が差動増幅回路に入力されるという作用をもたらす。
【0011】
また、この第1の側面において、上記差動増幅回路は、一対の差動トランジスタと、上記一対の差動トランジスタのソースに共通に接続され、所定の電流を供給する第2の電流源トランジスタとを備え、上記一対の差動トランジスタの一方のゲートには、所定の参照信号が入力され、上記一対の差動トランジスタの他方のゲートは、上記ソースフォロワ回路からの上記電位が入力されてもよい。これにより、入力ノード間の差分が増幅されるという作用をもたらす。
【0012】
また、この第1の側面において、上記転送トランジスタと上記ソースフォロワ回路と上記差動増幅回路の一部とが所定の受光チップに設けられ、上記差動増幅回路の残りは、所定の回路チップに設けられてもよい。これにより、複数のチップに回路が分散して配置されるという作用をもたらす。
【0013】
また、この第1の側面において、上記受光チップと上記回路チップとは、Cu-Cu接合により接続されてもよい。これにより、チップ間が電気的に接続されるという作用をもたらす。
【0014】
また、本技術の第2の側面は、一対の入力ノードのそれぞれの電位の差分を増幅して出力ノードから出力する差動増幅回路と、光電変換素子から浮遊拡散層へ電荷を転送する転送トランジスタと、所定の期間内に上記浮遊拡散層と上記出力ノードとを短絡するオートゼロトランジスタと、上記浮遊拡散層の電位に応じた電位を上記一対の入力ノードの一方に供給するソースフォロワ回路と、上記差分に応じたデジタル信号を配列したフレームを記憶する記憶部とを具備する撮像装置である。これにより、フレームレートが向上するという作用をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本技術の第1の実施の形態における撮像装置の一構成例を示すブロック図である。
【
図2】本技術の第1の実施の形態における撮像システムの利用例を説明するための図である。
【
図3】本技術の第1の実施の形態における固体撮像素子の積層構造の一例を示す図である。
【
図4】本技術の第1の実施の形態における受光チップの一構成例を示すブロック図である。
【
図5】本技術の第1の実施の形態における回路チップの一構成例を示すブロック図である。
【
図6】本技術の第1の実施の形態における画素AD(Analog to Digital)変換部の一構成例を示す図である。
【
図7】本技術の第1の実施の形態におけるADCの一構成例を示すブロック図である。
【
図8】本技術の第1の実施の形態における差動増幅器および正帰還回路の一構成例を示す回路図である。
【
図9】本技術の第1の実施の形態におけるソースフォロワ回路および画素回路の一構成例を示す回路図である。
【
図10】本技術の第1の実施の形態における画素内のトランジスタの制御方法を説明するための図である。
【
図11】本技術の第1の実施の形態における信号処理回路の一構成例を示すブロック図である。
【
図12】本技術の第1の実施の形態における電位変動の一例を示すタイミングチャートである。
【
図13】本技術の第1の実施の形態と第1の比較例とにおける差動増幅回路の出力の反転タイミングの一例を示す図である。
【
図14】本技術の第2の実施の形態における信号処理回路の一構成例を示すブロック図である。
【
図15】車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【
図16】撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(ソースフォロワ回路を追加する例)
2.第2の実施の形態(ソースフォロワ回路を追加し、時間遅延積分処理を実行しない例)
3.移動体への応用例
【0017】
<1.第1の実施の形態>
[撮像装置の構成例]
図1は、本技術の第1の実施の形態における撮像装置100の一構成例を示すブロック図である。この撮像装置100は、画像データを撮像する装置であり、光学部110、固体撮像素子200、記憶部120、制御部130および通信部140を備える。
【0018】
光学部110は、入射光を集光して固体撮像素子200に導くものである。固体撮像素子200は、画像データを撮像するものである。この固体撮像素子200は、画像データを記憶部120に信号線209を介して供給する。
【0019】
記憶部120は、画像データを記憶するものである。制御部130は、固体撮像素子200を制御して画像データを撮像させるものである。この制御部130は、例えば、信号線208を介して、撮像タイミングを示す垂直同期信号VSYNCを固体撮像素子200に供給する。
【0020】
通信部140は、画像データを記憶部120から読み出して外部に送信するものである。
【0021】
図2は、本技術の第1の実施の形態における撮像装置100の利用例を説明するための図である。同図に例示するように、撮像装置100は、ベルトコンベア510が設けられた工場などで用いられる。
【0022】
ベルトコンベア510は、一定の速度で、被写体511を所定の方向に移動させるものである。撮像装置100は、ベルトコンベア510の近傍に固定され、この被写体511を撮像して画像データを生成する。画像データは、例えば、欠陥の有無などの検査に用いられる。これにより、FA(Factory Automation)が実現される。
【0023】
なお、撮像装置100は、一定速度で移動する被写体511を撮像しているが、この構成に限定されない。空撮など、被写体に対して撮像装置100が一定速度で移動して撮像する構成であってもよい。
【0024】
[固体撮像素子の構成例]
図3は、本技術の第1の実施の形態における固体撮像素子200の積層構造の一例を示す図である。この固体撮像素子200は、回路チップ202と、その回路チップ202に積層された受光チップ201とを備える。これらのチップは、ビアなどの接続部を介して電気的に接続される。なお、ビアの他、Cu-Cu接合やバンプにより接続することもできる。
【0025】
図4は、本技術の第1の実施の形態における受光チップ201の一構成例を示すブロック図である。受光チップ201には、画素アレイ部210および周辺回路212が設けられる。
【0026】
画素アレイ部210には、複数の画素回路220が二次元格子状に配列される。また、画素アレイ部210は、複数の画素ブロック211に分割される。これらの画素ブロック211のそれぞれには、例えば、4行×2列の画素回路220が配列される。また、画素回路220ごとに、その画素回路220の外部に複数のトランジスタがさらに配置されているが、それらのトランジスタは、記載の便宜上、同図において省略されている。
【0027】
周辺回路212には、例えば、DC(Direct Current:直流)電圧を供給する回路などが配置される。
【0028】
図5は、本技術の第1の実施の形態における回路チップ202の一構成例を示すブロック図である。この回路チップ202には、DAC(Digital to Analog Converter)251、画素駆動回路252、時刻コード生成部253、画素AD変換部254および垂直走査回路255が配置される。さらに回路チップ202には、制御回路256、信号処理回路400、画像処理回路260、出力回路257が配置される。
【0029】
DAC251は、所定のAD変換期間内に亘って参照信号をDA(Digital to Analog)変換により生成するものである。例えば、のこぎり刃状のランプ信号が参照信号として用いられる。DAC251は、参照信号を画素AD変換部254に供給する。
【0030】
時刻コード生成部253は、AD変換期間内の時刻を示す時刻コードを生成するものである。時刻コード生成部253は、例えば、カウンタにより実現される。カウンタとして、例えば、グレイコードカウンタが用いられる。時刻コード生成部253は、時刻コードを画素AD変換部254へ供給する。
【0031】
画素駆動回路252は、画素回路220のそれぞれを駆動してアナログの画素信号を生成させるものである。
【0032】
画素AD変換部254は、画素回路220のそれぞれのアナログ信号(すなわち、画素信号)をデジタル信号に変換するAD変換を行うものである。この画素AD変換部254は、複数のクラスタ300により分割される。クラスタ300は、画素ブロック211ごとに設けられ、対応する画素ブロック211内のアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0033】
画素AD変換部254は、AD変換によりデジタル信号を配列した画像データをフレームとして生成し、信号処理回路400に供給する。
【0034】
垂直走査回路255は、画素AD変換部254を駆動してAD変換を実行させるものである。
【0035】
信号処理回路400は、フレームに対して所定の信号処理を行うものである。信号処理として、CDS(Correlated Double Sampling)処理を含む各種の処理が実行される。この信号処理回路400は、処理後のフレームを画像処理回路260に供給する。
【0036】
画像処理回路260は、信号処理回路400からのフレームに対して、所定の画像処理を実行するものである。画像処理として、画像認識処理、黒レベル補正処理、画像補正処理やデモザイク処理などが実行される。この画像処理回路260は、処理後のフレームを出力回路257に供給する。
【0037】
出力回路257は、画像処理後のフレームを外部に出力するものである。
【0038】
制御回路256は、DAC251、画素駆動回路252、垂直走査回路255、信号処理回路400、画像処理回路260および出力回路257のそれぞれの動作タイミングを垂直同期信号VSYNCに同期して制御するものである。
【0039】
[画素AD変換部の構成例]
【0040】
図6は、本技術の第1の実施の形態における画素AD変換部254の一構成例を示す図である。この画素AD変換部254には、複数のADC310が二次元格子状に配列される。ADC310は、画素回路220ごとに配置される。画素回路220の行数および列数がN行(Nは、整数)およびM列(Mは、整数)である場合、N×M個のADC310が配置される。
【0041】
クラスタ300のそれぞれには、画素ブロック211内の画素回路220の個数と同じ個数のADC310が配置される。画素ブロック211内に4行×2列の画素回路220が配列される場合、クラスタ300内にも4行×2列のADC310が配列される。
【0042】
ADC310は、対応する画素回路220により生成されたアナログの画素信号に対してAD変換を行うものである。このADC310は、AD変換において、画素信号と参照信号とを比較し、その比較結果が反転したときの時刻コードを保持する。そして、ADC310は、保持した時刻コードをAD変換後のデジタル信号として出力する。
【0043】
また、クラスタ300の列ごとにリピータ部370が配置される。クラスタ300の列数がM/2である場合、M/2個のリピータ部370が配置される。リピータ部370は、時刻コードを転送するものである。リピータ部370は、時刻コード生成部253からADC310へ時刻コードを転送する。また、リピータ部370は、ADC310から信号処理回路400へデジタル信号を転送する。このデジタル信号の転送は、デジタル信号の「読出し」とも呼ばれる。
【0044】
また、同図において、かっこ内の数字は、ADC310のデジタル信号の読出し順序の一例を示す。例えば、1行目の奇数列のデジタル信号が1番目に読み出され、1行目の偶数列のデジタル信号が2番目に読み出される。2行目の奇数列のデジタル信号が3番目に読み出され、2行目の偶数列のデジタル信号が3番目に読み出される。以下、同様に、各行の奇数列、偶数列のデジタル信号が順に読み出される。
【0045】
なお、画素回路220ごとに、ADC310を配置しているが、この構成に限定されない。複数の画素回路220が1つのADC310を共有する構成であってもよい。
【0046】
[ADCの構成例]
図7は、本技術の第1の実施の形態におけるADC310の一構成例を示すブロック図である。このADC310は、差動増幅器320と、正帰還回路340と、ラッチ制御回路350と、複数のラッチ回路360とを備える。
【0047】
また、画素回路220とADC310との間には、ソースフォロワ回路230が配置される。このソースフォロワ回路230は、画素回路220からの画素信号の電位VSINに応じて電位VSOUTの信号をADC310に供給するものである。これらの画素回路220およびソースフォロワ回路230からなる回路は、1つの画素として機能する。
【0048】
また、画素回路220およびソースフォロワ回路230と差動増幅器320の一部とは、受光チップ201に配置され、差動増幅器320の残りと、その後段の回路とは、回路チップ202に配置される。
【0049】
差動増幅器320は、ソースフォロワ回路230からの画素信号と、DAC251からの参照信号とを比較するものである。この差動増幅器320は、比較結果を示す比較結果信号を正帰還回路340に供給する。
【0050】
正帰還回路340は、出力の一部を入力(比較結果信号)に加算し、出力信号VCOとしてラッチ制御回路350に供給するものである。
【0051】
ラッチ制御回路350は、垂直走査回路255からの制御信号xWORDに従って、出力信号VCOが反転したときの時刻コードを複数のラッチ回路360に保持させるものである。
【0052】
ラッチ回路360は、ラッチ制御回路350の制御に従って、リピータ部370からの時刻コードを保持するものである。ラッチ回路360は、時刻コードのビット数の分、設けられる。例えば、時刻コードが15ビットの場合、ADC310内に、15個のラッチ回路360が配置される。また、保持された時刻コードは、AD変換後のデジタル信号としてリピータ部370により読み出される。
【0053】
同図に例示した構成により、ADC310は、ソースフォロワ回路230からの画素信号をデジタル信号に変換する。
【0054】
[差動増幅器および正帰還回路の構成例]
図8は、本技術の第1の実施の形態における画素回路220、差動増幅器320および正帰還回路340の一構成例を示す回路図である。
【0055】
差動増幅器320は、pMOS(p-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ331、334および321を備える。また、差動増幅器320はnMOS(n-channel MOS)トランジスタ322およびオートゼロトランジスタ323と、差動トランジスタ332および335と、電流源トランジスタ333とを備える。これらのうちオートゼロトランジスタ323と、差動トランジスタ332および335と、電流源トランジスタ333とは、受光チップ201に配置され、残りは回路チップ202に配置される。差動トランジスタ332および335として、例えば、nMOSトランジスタが用いられる。また、オートゼロトランジスタ323および電流源トランジスタ333として例えば、nMOSトランジスタが用いられる。
【0056】
差動トランジスタ332および335は、差動対を構成し、これらのトランジスタのソースは、電流源トランジスタ333のドレインに共通に接続される。また、差動トランジスタ332のドレインは、pMOSトランジスタ331のドレインとpMOSトランジスタ331および334のゲートとに接続される。差動トランジスタ335のドレインは、pMOSトランジスタ334のドレインとpMOSトランジスタ321のゲートとに接続される。また、差動トランジスタ332のゲートには、DAC251からの参照信号が入力される。この参照信号の電位をVREFとする。
【0057】
電流源トランジスタ333のゲートには、所定のバイアス電圧BIAS1が印加され、電流源トランジスタ333のソースには、所定の接地電圧が印加される。この電流源トランジスタ333は、バイアス電圧BIAS1に応じた電流を供給する。
【0058】
差動トランジスタ335のゲートには、ソースフォロワ回路230からの画素信号が入力される。この画素信号の電位をVSOUTとする。
【0059】
pMOSトランジスタ331、334および321は、カレントミラー回路を構成する。pMOSトランジスタ331、334および321のソースには、電源電圧VDDが印加される。
【0060】
nMOSトランジスタ322のドレインは、pMOSトランジスタ321のドレインに接続され、ソースは、正帰還回路340に接続される。
【0061】
オートゼロトランジスタ323は、画素駆動回路252からのオートゼロ信号AZに従って、差動トランジスタ335のドレインとソースフォロワ回路230の入力ノードとを短絡するものである。
【0062】
正帰還回路340はpMOSトランジスタ341、342、344および345と、nMOSトランジスタ343、346および347とを備える。pMOSトランジスタ341および342とnMOSトランジスタ343とは、nMOSトランジスタ322のゲートに直列に接続される。また、pMOSトランジスタ341のゲートには、垂直走査回路255からの駆動信号INI2が入力される。pMOSトランジスタ342およびnMOSトランジスタ343の接続点は、nMOSトランジスタ322のソースに接続される。
【0063】
nMOSトランジスタ343のソースには接地電圧が印加され、ゲートには、垂直走査回路255からの駆動信号INI1が入力される。
【0064】
pMOSトランジスタ344および345は、nMOSトランジスタ322のゲートに直列に接続される。また、pMOSトランジスタ345のドレインは、pMOSトランジスタ342のゲートと、nMOSトランジスタ346および347のドレインとに接続される。pMOSトランジスタ345およびnMOSトランジスタ347のゲートには、垂直走査回路255からの制御信号TESTVCOが入力される。また、pMOSトランジスタ344およびnMOSトランジスタ346のゲートは、pMOSトランジスタ342およびnMOSトランジスタ343の接続点に接続される。
【0065】
pMOSトランジスタ345およびnMOSトランジスタ347の接続点からは、出力信号VCOが出力される。また、nMOSトランジスタ346および347のソースには、接地電圧が印加される。
【0066】
なお、差動増幅器320および正帰還回路340のそれぞれは、
図7で説明した機能を持つのであれば、
図8に例示した回路に限定されない。
【0067】
図9は、本技術の第1の実施の形態におけるソースフォロワ回路230および画素回路220の一構成例を示す回路図である。画素回路220は、排出トランジスタ221、光電変換素子222、転送トランジスタ223および浮遊拡散層224を備える。ソースフォロワ回路230は、ソースフォロワトランジスタ231および電流源トランジスタ232を備える。排出トランジスタ221、転送トランジスタ223、ソースフォロワトランジスタ231および電流源トランジスタ232として、例えば、nMOSトランジスタが用いられる。
【0068】
排出トランジスタ221は、画素駆動回路252からの駆動信号OFGに従って光電変換素子222に蓄積された電荷を排出させるものである。光電変換素子222は、光電変換により電荷を生成するものである。
【0069】
転送トランジスタ223は、画素駆動回路252からの転送信号TRGに従って、光電変換素子222から浮遊拡散層224へ電荷を転送するものである。
【0070】
浮遊拡散層224は、転送された電荷を蓄積して、電荷量に応じた電圧を生成するものである。この浮遊拡散層224の転送トランジスタ223側のノードを浮遊拡散層ノード225とし、その電位をVSINとする。
【0071】
ソースフォロワトランジスタ231のゲートは、浮遊拡散層224の浮遊拡散層ノード225に接続される。また、ソースフォロワトランジスタ231のソースは、電流源トランジスタ232のドレインに接続される。
【0072】
電流源トランジスタ232のゲートには、所定のバイアス電圧BIAS2が印加され、ソースには、所定の接地電圧が印加される。この電流源トランジスタ232は、バイアス電圧BIAS2に応じた電流を供給する。
【0073】
また、ソースフォロワトランジスタ231および電流源トランジスタ232の接続ノード(すなわち、ソースフォロワトランジスタ231のソース)は、差動トランジスタ335のゲートに接続される。
【0074】
ソースフォロワトランジスタ231のゲート-ソース間電圧をVGSとすると、ソースフォロワトランジスタ231のゲートの電位VSINと、ソースの電位VSOUTとの間には、次の式が成立する。
VSIN=VSOUT+VGS ・・・式1
【0075】
式1より、ソースフォロワトランジスタ231のソースの電位VSOUTは、ゲートの電位VSINに追従して変動する。
【0076】
また、差動増幅器320内のpMOSトランジスタ331および334と、差動トランジスタ332および335と、電流源トランジスタ333とからなる回路は、差動増幅回路330として機能する。
【0077】
電位VREFの差動トランジスタ332のゲートは、差動増幅回路330の入力ノード337に該当する。電位VSOUTの差動トランジスタ335のゲートは、差動増幅回路330の入力ノード338に該当する。差動トランジスタ335のドレインは、差動増幅回路330の出力ノード339に該当する。この出力ノードの電位をVCOUTとする。また、差動トランジスタ335のゲート-ソース間には、寄生容量336が生じるものとする。
【0078】
差動増幅回路330は、入力ノード337の電位VREFと、入力ノード338の電位VSOUTとの差分を増幅して出力ノード339から出力する。
【0079】
オートゼロトランジスタ323は、オートゼロ信号AZに従って、差動増幅回路330の出力ノード339と浮遊拡散層ノード225(言い換えれば、ソースフォロワ回路230の入力ノード)とを短絡する。
【0080】
ここで、ソースフォロワ回路230を設けず、浮遊拡散層ノード225を差動トランジスタ335のゲート(すなわち、入力ノード338)に直接接続した構成の第1の比較例を想定する。この第1の比較例では、ハイインピーダンスの浮遊拡散層ノード225が差動増幅回路330の入力ノード338に直接つながっているため、差動トランジスタ335の寄生容量336を介して、参照信号の変化が浮遊拡散層ノード225に伝搬する。例えば、参照信号がスロープ状に低下するとき、浮遊拡散層ノード225の電位VSINも連動して低下する。このため、電位VSINに一致するときの電位VREFの値に誤差が生じるとともに、差動増幅回路330の伝搬遅延時間が大きく増大する。伝搬遅延時間が増大する要因としては、電位VSINの低下により電位VSINと電位VREFが一致するタイミングが本来のタイミングから遅れることと、電位VSINと電位VREFが一致した後も差動増幅回路330の入力ノード間の差分の増加速度が小さくなることとが挙げられる。。
【0081】
電位の誤差と伝搬遅延時間の増大とのうち、誤差は、CDS処理により取り除くことができるが、伝搬遅延時間の増大は、CDS処理では解消できない。伝搬遅延時間が増大すると、ADC310のAD変換時間が長くなり、フレームレートが低下してしまう。
【0082】
浮遊拡散層224の容量を大きくすれば、電位VSINの変動を抑制することができるが、浮遊拡散層224の容量を大きくすると、浮遊拡散層224の電荷電圧変換効率が低下するため、好ましくない。
【0083】
このように、浮遊拡散層ノード225を差動トランジスタ335のゲートに直接接続した場合、フレームレートが低下してしまうおそれがある。
【0084】
これに対して、ソースフォロワ回路230を設けた同図の回路では、式1に例示したように、電位VSOUTが電位VSINに追従して変動する。また、オートゼロトランジスタ323がオフ状態のときは、ソースフォロワ回路230により、電位VSINのインピーダンスは低くなるため、参照信号がスロープ状に低下しても電位VSINは変動しない。このため、電位VREFの変動による電位VSINの変動を防止することができる。これにより、AD変換時間を短縮し、フレームレートを向上させることができる。特に、TDI(Time Delayed Integration)処理を行う場合には、非常に高いフレームレート(例えば、200乃至300キロヘルツなど)が要求されるため、ソースフォロワ回路230の追加により、そのような要求に対応することが容易となる。
【0085】
また、ソースフォロワ回路230を設ける構成では、浮遊拡散層224の容量を削減してインピーダンスが大きくなっても、伝搬遅延時間が増加することはない。このため、フレームレートを維持したままで、浮遊拡散層224の容量を削減し、電荷電圧変換効率を上昇させることができる。
【0086】
次に、ソースフォロワ回路230を設け、そのソースフォロワ回路230と差動トランジスタ335のゲートとの間にオートゼロ容量を挿入し、オートゼロトランジスタが、差動トランジスタ335のゲート-ドレイン間を短絡する第2の比較例を想定する。この第2の比較例は、例えば、特願2016-545441に記載されている。この第2の比較例では、参照信号に、浮遊拡散層ノード225の電位VSINが連動することを防止することができる。ただし、ソースフォロワトランジスタ231および電流源トランジスタ232の接続ノード(ソースフォロワの出力)から、差動トランジスタ335のゲートへのゲインは、オートゼロ容量と寄生容量336とにより決定され、次の式により表される。
CAZ/(CAZ+Cgs)
上式において、CAZは、オートゼロ容量の容量値を示し、Cgsは、寄生容量336の容量値を示す。
【0087】
CAZおよびCgsが一定値であれば、減衰するだけでゲインは一定となるが、Cgsは、一定値でなくバイアス依存性を持つため、差動トランジスタ335のゲートの電圧が変化すると、ゲインも変化し、リニアリティが悪化する。
【0088】
CAZが、Cgsに対して非常に大きければ、リニアリティの悪化を抑制することができるが、オートゼロ容量は、画素内に配置する必要があるため、小さな容量値(数フェムトファラッド程度)のものしか置けない。これは、Cgsの数倍から10倍程度の値に過ぎない。一方、Cgsは、数パーセントのバイアス依存性を持つので、ゲインの変動も数パーセント程度発生する。この変動は許容できない値となる。
【0089】
また、CAZとCgsとの比率が小さいため、ゲインの絶対値も小さくなり、浮遊拡散層224の入力に換算した雑音が悪化する。
【0090】
このように、第2の比較例では、第1の比較例の課題は解決できるが、リニアリティ悪化、雑音増加といった弊害がある。
【0091】
これに対して、オートゼロトランジスタ323が、差動トランジスタ335のドレインとソースフォロワ回路230の入力ノードとを短絡する構成では、オートゼロ容量が不要となる。これにより、リニアリティ悪化や雑音を抑制することができる。
【0092】
図10は、本技術の第1の実施の形態における画素内のトランジスタの制御方法を説明するための図である。同図におけるaは、オートゼロの際のトランジスタの制御方法を示し、同図におけるbは、オートゼロの後のトランジスタの制御方法を示す。
【0093】
また、同図においては、差動増幅回路330をコンパレータの図記号で表し、ソースフォロワ回路230を電圧バッファの図記号で表している。オートゼロトランジスタ323および転送トランジスタ223をスイッチの図記号で表している。
【0094】
同図におけるaに例示するように、コンパレータ(差動増幅回路330)の比較動作に先立って、画素駆動回路252は、オートゼロトランジスタ323をオン状態にし、転送トランジスタ223をオフ状態にする。これにより、コンパレータ(差動増幅回路330)の出力ノードと、ソースフォロワ回路230の入力ノードとを短絡し、フィードバックをかけて、参照信号のゼロと画素信号のゼロとを合わせること(すなわち、オートゼロ)ができる。このときの電位VSINが、画素信号のゼロとして設定される。また、式1により、ソースフォロワ回路230からは、電位VSINに応じた電位VSOUTが出力される。
【0095】
同図におけるbに例示するように、オートゼロの後に画素駆動回路252はオートゼロトランジスタ323をオフ状態にする。DAC251は、参照信号をスロープ状に変化させ、ADC310は、初期化された浮遊拡散層224の電位に応じたアナログの画素信号をデジタル信号に変換する。このときの画素信号のレベルは、P相またはリセットレベルと呼ばれる。
【0096】
P相の変換後に、画素駆動回路252は転送トランジスタ223をオン状態にして、光電変換素子222から浮遊拡散層224へ電荷を転送させる。DAC251は、参照信号をスロープ状に変化させ、ADC310は、転送後の浮遊拡散層224の電位に応じたアナログの画素信号をデジタル信号に変換する。このときの画素信号のレベルは、D相または信号レベルと呼ばれる。
【0097】
同図におけるbでは、ソースフォロワ回路230により電位VSOUTのインピーダンスは低くなるため、P相およびD相の変換時において参照信号がスロープ状に低下しても電位VSINは変動しない。
【0098】
図11は、本技術の第1の実施の形態における信号処理回路400の一構成例を示すブロック図である。この信号処理回路400は、複数のセレクタ405と、複数のCDS処理部410と、複数のTDI処理部420とを備える。
【0099】
セレクタ405は、クラスタ300の列ごと、言い換えれば、リピータ部370ごとに配置される。クラスタ300に2列のADC310が配列される場合、2列ごとにセレクタ405が配置される。また、CDS処理部410およびTDI処理部420は、ADC310の列ごとに配置される。ADC310がM列である場合、M/2個のセレクタ405と、M個のCDS処理部410と、M個のTDI処理部420とが配置される。
【0100】
前述したようにリピータ部370は、奇数列のデジタル信号と偶数列のデジタル信号とを順に出力する。
【0101】
セレクタ405は、制御回路256の制御に従って、デジタル信号の出力先を選択するものである。リピータ部370により奇数列が出力された場合にセレクタ405は、その奇数列に対応するCDS処理部410にデジタル信号を出力する。一方、偶数列が出力された場合にセレクタ405は、その偶数列に対応するCDS処理部410にデジタル信号を出力する。
【0102】
CDS処理部410は、セレクタ405からのデジタル信号に対して、P相とD相との差分を求めるCDS処理を行うものである。CDS処理部410は、差分のデジタル信号をTDI処理部420に供給する。
【0103】
TDI処理部420は、TDI処理後のデジタル信号に対して、被写体の移動速度に合わせて時間をずらしながら、デジタル信号を積算するTDI処理を行うものである。このTDI処理部420はTDI処理後のデジタル信号を画像処理回路260へ供給する。
【0104】
図12は、本技術の第1の実施の形態における電位変動の一例を示すタイミングチャートである。同図におけるaは、ソースフォロワ回路230の入力ノードの電位V
SINと、出力ノードの電位V
SOUTとのそれぞれの変動の一例を示すタイミングチャートである。同図におけるbは、参照信号の電位V
REFと、電位V
SOUTとのそれぞれの変動の一例を示すタイミングチャートである。
【0105】
同図におけるaに例示するように、タイミングT0乃至T1のオートゼロ期間において、ソースフォロワ回路230は、入力ノードの電位VSINに応じた電位VSOUTを出力ノードから出力する。これらの電位の関係は、式1により表される。そして、タイミングT5において電荷が転送されると、電位VSINは、電荷量に応じて低下する。
【0106】
また、同図におけるbに例示するように、タイミングT0乃至T1のオートゼロ期間において、画素信号の電位VSOUTが参照信号の電位VREFと一致した状態となる。このオートゼロの後のタイミングT2乃至T4の期間内にDAC251は、参照信号の電位VREFをスロープ状に変化させる。ADC310は、電位VREFが電位VSOUTと一致するタイミングT3で時刻コードを保持し、その時刻コードをP相を変換したデジタル信号として出力する。
【0107】
そして、P相変換後のタイミングT5において電荷が転送されると、電位VSINは、電荷量に応じて低下する。転送後のタイミングT6乃至T8の期間内にDAC251は、参照信号の電位VREFをスロープ状に変化させる。ADC310は、電位VREFが電位VSOUTと一致するタイミングT7で時刻コードを保持し、その時刻コードをD相を変換したデジタル信号として出力する。
【0108】
図13は、本技術の第1の実施の形態と第1の比較例とにおける差動増幅回路330の出力の反転タイミングの一例を示す図である。同図におけるaは、第1の実施の形態における差動増幅回路330の出力の反転タイミングの一例を示す図である。同図におけるbは、第1の比較例における差動増幅回路330の出力の反転タイミングの一例を示す図である。
【0109】
同図におけるaに例示するように、ソースフォロワ回路230を追加した第1の実施の形態では、参照信号の電位VREFが、ソースフォロワ回路230の出力の電位VSOUTと一致するタイミングT3で、差動増幅回路330の出力ノードの電位VCOUTが反転する。
【0110】
一方、同図におけるbに例示するように、ソースフォロワ回路230の無い第1の比較例では、タイミングT3から遅延したタイミングT3'で出力ノードの電位VCOUTが反転する。これは、前述したように、電位VSINに一致するときの電位VREFの値に誤差が生じるとともに、差動増幅回路330の伝搬遅延時間が大きく増大するためである。第1の比較例では、参照信号をスロープに変化させるタイミングT3乃至T4の期間(すなわち、AD変換期間)について、この遅延を考慮して長めに設定する必要があり、AD変換期間の長期化により、フレームレートが低下するおそれがある。
【0111】
これに対して、ソースフォロワ回路230を追加した構成では、遅延が生じないため、AD変換期間を第1の比較例よりも短くすることができ、フレームレートを向上させることができる。
【0112】
このように、本技術の第1の実施の形態によれば、ソースフォロワ回路230が、浮遊拡散層の電位に応じた電位を差動増幅回路330の入力ノード338に供給するため、参照信号の変動に起因する入力ノード338の電位変動を抑制することができる。これにより、入力ノード338の電位変動に起因して生じるAD変換期間の長期化を抑制し、フレームレートを向上させることができる。
【0113】
<2.第2の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、TDI処理を実行する固体撮像素子200内にソースフォロワ回路230を配置していたが、TDI処理を実行しない固体撮像素子200においても、フレームレートの向上が要求されることがある。この第2の実施の形態の固体撮像素子200は、TDI処理を実行しない固体撮像素子200内にソースフォロワ回路230を配置した点において第1の実施の形態と異なる。
【0114】
図14は、本技術の第2の実施の形態における信号処理回路400の一構成例を示すブロック図である。この第2の実施の形態の信号処理回路400は、TDI処理部420が配置されない点において第1の実施の形態と異なる。
【0115】
CDS処理部410は、CDS処理後の信号を画像処理回路260に供給し、画像処理回路260は、CDS処理後のフレームに対して画像処理を行う。このような固体撮像素子200は、デジタルカメラや、撮像機能を持つ電子装置(スマートフォンやパーソナルコンピュータなど)などに用いられる。
【0116】
このように、本技術の第2の実施の形態によれば、固体撮像素子200は、CDS処理後のフレームに対してTDI処理を行わずに画像処理を行うため、TDI処理が不要である場合にもフレームレートを向上させることができる。
【0117】
<3.移動体への応用例>
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0118】
図15は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0119】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。
図15に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(interface)12053が図示されている。
【0120】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0121】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0122】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0123】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0124】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0125】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0126】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0127】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0128】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。
図15の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0129】
図16は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0130】
図16では、撮像部12031として、撮像部12101,12102,12103,12104,12105を有する。
【0131】
撮像部12101,12102,12103,12104,12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102,12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0132】
なお、
図16には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0133】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0134】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0135】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0136】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0137】
以上、本開示に係る技術が適用され得る車両制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部12031に適用され得る。具体的には、例えば、
図1の撮像装置100は、撮像部12031に適用することができる。撮像部12031に本開示に係る技術を適用することにより、フレームレートを向上させてより高画質の動画を生成することができる。
【0138】
なお、上述の実施の形態は本技術を具現化するための一例を示したものであり、実施の形態における事項と、特許請求の範囲における発明特定事項とはそれぞれ対応関係を有する。同様に、特許請求の範囲における発明特定事項と、これと同一名称を付した本技術の実施の形態における事項とはそれぞれ対応関係を有する。ただし、本技術は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施の形態に種々の変形を施すことにより具現化することができる。
【0139】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって、限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0140】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)一対の入力ノードのそれぞれの電位の差分を増幅して出力ノードから出力する差動増幅回路と、
光電変換素子から浮遊拡散層へ電荷を転送する転送トランジスタと、
所定の期間内に前記浮遊拡散層と前記出力ノードとを短絡するオートゼロトランジスタと、
前記浮遊拡散層の電位に応じた電位を前記一対の入力ノードの一方に供給するソースフォロワ回路と
を具備する固体撮像素子。
(2)前記差分に応じたデジタル信号に対して所定の信号処理を行う信号処理部をさらに具備する
前記(1)に記載の固体撮像素子。
(3)前記信号処理は、相関二重サンプリング処理を含む
前記(2)記載の固体撮像素子。
(4)前記信号処理は、時間遅延積分処理をさらに含む
前記(5)記載の固体撮像素子。
(5)前記ソースフォロワ回路は、
所定の電流を供給する第1の電流源トランジスタと、
前記浮遊拡散層にゲートが接続され、前記第1の電流源トランジスタと前記一対の入力ノードの一方とにソースが接続されたソースフォロワトランジスタと
を備える前記(1)から(4)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(6)前記差動増幅回路は、
一対の差動トランジスタと、
前記一対の差動トランジスタのソースに共通に接続され、所定の電流を供給する第2の電流源トランジスタと
を備え、
前記一対の差動トランジスタの一方のゲートには、所定の参照信号が入力され、
前記一対の差動トランジスタの他方のゲートは、前記ソースフォロワ回路からの前記電位が入力される
前記(1)から(5)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(7)前記転送トランジスタと前記ソースフォロワ回路と前記差動増幅回路の一部とが所定の受光チップに設けられ、
前記差動増幅回路の残りは、所定の回路チップに設けられる
前記(1)から(6)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(8)前記受光チップと前記回路チップとは、Cu-Cu接合により接続される
前記(8)記載の固体撮像素子。
(9)一対の入力ノードのそれぞれの電位の差分を増幅して出力ノードから出力する差動増幅回路と、
光電変換素子から浮遊拡散層へ電荷を転送する転送トランジスタと、
所定の期間内に前記浮遊拡散層と前記出力ノードとを短絡するオートゼロトランジスタと、
前記浮遊拡散層の電位に応じた電位を前記一対の入力ノードの一方に供給するソースフォロワ回路と、
前記差分に応じたデジタル信号を配列したフレームを記憶する記憶部と
を具備する撮像装置。
【符号の説明】
【0141】
100 撮像装置
110 光学部
120 記憶部
130 制御部
140 通信部
200 固体撮像素子
201 受光チップ
202 回路チップ
210 画素アレイ部
211 画素ブロック
212 周辺回路
220 画素回路
221 排出トランジスタ
222 光電変換素子
223 転送トランジスタ
224 浮遊拡散層
230 ソースフォロワ回路
231 ソースフォロワトランジスタ
232、333 電流源トランジスタ
251 DAC
252 画素駆動回路
253 時刻コード生成部
254 画素AD変換部
255 垂直走査回路
256 制御回路
257 出力回路
260 画像処理回路
300 クラスタ
310 ADC
320 差動増幅器
321、331、334、341、342、344、345 pMOSトランジスタ
322、343、346、347 nMOSトランジスタ
323 オートゼロトランジスタ
330 差動増幅回路
332、335 差動トランジスタ
340 正帰還回路
350 ラッチ制御回路
360 ラッチ回路
370 リピータ部
400 信号処理回路
405 セレクタ
410 CDS処理部
420 TDI処理部
510 ベルトコンベア
511 被写体
12031 撮像部