(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】振動低減硝子体切除プローブ
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
A61F9/007 130F
A61F9/007 130A
(21)【出願番号】P 2022511313
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(86)【国際出願番号】 IB2020058376
(87)【国際公開番号】W WO2021053467
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-08-30
(32)【優先日】2019-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ナサニエル レイズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン アール.アンダーウッド
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/234906(WO,A1)
【文献】特表2017-509419(JP,A)
【文献】特表2009-525782(JP,A)
【文献】特表2019-520920(JP,A)
【文献】特表2015-507496(JP,A)
【文献】国際公開第2019/053466(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝子体切除プローブの針に向けて移動するようにダイアフラムを誘導するための第1空気流を収容するための後方ハウジング構成要素と、
前記
硝子体切除プローブの前記針から遠ざかる方に移動するように前記ダイアフラムを誘導するための第2空気流を収容するための前方ハウジング構成要素と、
を含み、
前記後方ハウジング
構成要素は、前記前方ハウジング
構成要素に達する
出口の間近に、前記第2空気流を収容するための段付きチャネルを有する、
硝子体切除プローブハウジング。
【請求項2】
前記後方ハウジング
構成要素は、前記後方ハウジング
構成要素内を通る前記
第2空気流の流量制限を最小限にするために、
流路面積が一定の均一チャネルがない、請求項1に記載の硝子体切除プローブハウジング。
【請求項3】
前記段付きチャネルは、容積が少なくとも約
45.06443立方ミリメートル(0.00275
立方インチ)の前記後方ハウジング
構成要素のチャンバにある、請求項1に記載の硝子体切除プローブハウジング。
【請求項4】
前記ダイアフラムは、前記針へと移動し且つ前記針から離れるために、前記
前方ハウジング構成要素と前記後方ハウジング構成要素との間の空間を占め、前記空間内における前記ダイアフラムの総移動距離は、約
0.635ミリメートル(0.025インチ
)未満である、請求項1に記載の硝子体切除プローブハウジング。
【請求項5】
前記ダイアフラムは、前記
前方ハウジング構成要素と前記後方ハウジング構成要素との間における往復運動中、前記
前方ハウジング構成要素及び前記後方ハウジング構成要素に衝突するための別個の停止部を含み、
前記ダイアフラムの上後部において前記別個の停止部の流路障害物がない場合、
前記前方ハウジング構成要素及び前記後方ハウジング構成要素の両方と前記前方ハウジング構成要素と前記後方ハウジング構成要素との間の中央位置にある前記ダイアフラムの
間における前記ダイアフラムの前記総移動距離は、減少する、請求項4に記載の硝子体切除プローブハウジング。
【請求項6】
前記
別個の停止部は、シリコーンゴムと硬度が約60ショアA未満の材料とからなる群から選択される材料を含む、
請求項5に記載の硝子体切除プローブハウジング。
【請求項7】
前方ハウジング構成要素と、
後方ハウジング構成要素と、
ダイアフラムであって、
前記前方ハウジング構成要素と前記後方ハウジング構成要素との間にあり、
前記前方ハウジング構成要素及び前記後方ハウジング構成要素によって画定される空間内に位置し、前記ダイアフラムの両側に交互に誘導される空気流に応じて
前記前方ハウジング構成要素と前記後方ハウジング構成要素との間で往復運動する、ダイアフラムと、
前記往復運動中に
前記前方ハウジング構成要素及び前記後方ハウジング構成要素に衝突するための複数の別個の停止部であって、前記衝突によって振動が生じ、前記
複数の別個の停止部は、前記振動を減衰させるために、硬度が約60ショアA未満の材料を含む、複数の別個の停止部と、
前記ダイアフラムに結合し、
硝子体切除プローブの針内に位置し、外科医によって実施される硝子体切除処置中に硝子体液を切断するカッターと、
把持用構成要素であって、前記針が前記把持用構成要素から出現し、前記硝子体切除処置中に前記外科医が手で保持するためのものであり、前記
把持用構成要素は、前記振動を減弱化するために硬度が約60ショアA未満のエラストマーを含む、把持用構成要素と、
を含
み、
前記後方ハウジング構成要素は、前記前方ハウジング構成要素に達する出口の間近に、そこを通る空気流を収容するための段付きチャネルを有する、硝子体切除プローブ。
【請求項8】
前記把持用構成要素は、外径が約
12.7ミリメータ(0.5インチ
)未満である、請求項7に記載の硝子体切除プローブ。
【請求項9】
前記
複数の別個の停止部は、シリコーンゴムを含む、請求項7に記載の硝子体切除プローブ。
【請求項10】
前記ダイアフラムへの前記カッターの結合を容易にするための伸長管を更に含み、前記伸長管は、前記硝子体切除
処置中、前記空気流に応じて前記ダイアフラム及び前記カッターと共に往復運動するように構成されている、請求項7に記載の硝子体切除プローブ。
【請求項11】
前記空気流を密封するために
前記前方ハウジング構成要素及び前記後方ハウジング構成要素内の前記伸長管の周囲に取り付けられた静的シールを更に含む、請求項10に記載の硝子体切除プローブ。
【請求項12】
前記前方ハウジング構成要素から遠ざかる方に前記ダイアフラムを誘導する空気流を密封しない前記
静的シールは、前記前方ハウジング構成要素から遠ざかる方に前記ダイアフラムを誘導する前記空気流を密封する任意のシールに比べて、前記伸長管に対してより小さい圧縮力を呈する、請求項11に記載の硝子体切除プローブ。
【請求項13】
前記
静的シールは、パリレンポリマー及びポリテトラフルオロエチレンのうちの1つでコーティングされている、請求項11に記載の硝子体切除プローブ。
【請求項14】
前記伸長管は電解研磨される、請求項11に記載の硝子体切除プローブ。
【請求項15】
前記伸長管と前記
静的シールとの間の境界面にシリコーン潤滑剤を更に含む、請求項11に記載の硝子体切除プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、発明者がNathaniel Reyes及びJohn R.Underwoodである、2019年9月16日に出願された「REDUCED VIBRATION VITRECTOMY PROBE」という名称の米国仮特許出願第62/900,756号明細書の優先権の利益を主張するものであり、あたかも本明細書に十分且つ完全に記載されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
長年にわたって、網膜眼科手術の分野において多くの劇的な進歩が起こってきた。しかし、特定の網膜処置に関わらず、処置の少なくとも一部には硝子体切除術が含まれることが一般的である。硝子体切除術は、患者の眼から硝子体液の一部又は全部を除去することである。濁った硝子体液の除去に限定された手術の場合、場合によっては、硝子体切除術が処置の大半を占める可能性がある。しかし、硝子体切除術はまた、白内障手術、網膜修復手術、黄斑ひだ形成症又は多くの他の課題に対処する手術を伴う可能性がある。
【0003】
硝子体液自体は透明なゲルであり、細長いプローブが眼に予め配置されたカニューレを通して挿入されると、細長いプローブによって除去され得る。より具体的には、プローブは、硝子体液を除去するための中央チャネルを含む。更に、カニューレは、毛様体扁平部等の眼の前部のオフセットされた位置に戦略的に位置する構造的支持用の導管を提供する。このようにして、プローブは、患者の水晶体又は角膜への損傷を回避するやり方で、眼内に案内されるようにして挿入されてもよい。
【0004】
あいにく、硝子体液の除去は、プローブのチャネルを通して単に真空を印加するよりも細心の注意を必要とする。これは、硝子体液がコラーゲン原線維の線維性マトリックスを含むためである。したがって、単にゲルに真空を印加するだけでは、周囲の眼の構造を危険に曝す。即ち、ゲルの線維的性質は、プローブ内へのゲルの真空引きが、網膜、視神経、又は他の繊細な眼構造の牽引に変換される可能性があるようなものである。
【0005】
この問題に対処するために、硝子体切除プローブは、プローブのチャネル内に引き込まれる際に硝子体液を切断するよう構成されている。このようにして、ゲル状物質を連続的に線維的に引くことは、繊細な眼の構造の牽引に変換されない。その代わりに、硝子体液は、極めて小さな切り刻まれたセグメントでプローブのチャネル内に引き込まれる。硝子体液のこのチッピング又は切断は、プローブのチャネル内部でのカッターの往復運動によって生じる。より具体的には、カッターは、硝子体液がチャネル内に引き込まれている際に物質を切断する手法で、硝子体液を取り込むためのポートにおいて前後に往復運動する。硝子体液が除去される際に硝子体液によって眼が牽引されないよう保護するために、おそらく毎分5,000~10,000サイクルの切断をこの手法で行ってもよい。実際、カッターの往復運動が速いほど、硝子体液の切断がより少ない牽引を伴って行われる程度が大きくなる。したがって、記載されるように、患者の繊細な眼の特徴に対してより大きな保護の程度が提供される。
【0006】
それに伴い、カッターの往復運動はここ数年で速くなってきている。したがって、硝子体切除処置中における硝子体液の「牽引」に対する懸念はほとんど排除されている。しかしながら、このようにカッターを往復運動させることは、硝子体切除中に、振動が硝子体切除プローブを通して自然に伝わることを意味する。したがって、処置を手作業で行っている外科医は、狭い繊細な空間においてプローブを操作しながら、振動に関連する注意力低下の可能性に直面する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
硝子体切除プローブが開示されている。一実施形態では、プローブは、構成要素ハウジングを含む。ハウジングのチャンバ内のダイアフラムは、硝子体切除処置中に少なくとも約2,500毎分切断数(cpm)の速度で往復運動するように構成され、往復運動は、ダイアフラムがチャンバを画定する壁に繰り返し衝突することを含む。空気の第1のチャネル及び第2のチャネルは、その第1の側及び第2の側でダイアフラムを往復運動させるために使用され、チャネルは、衝突を減衰するために流量制限を最小限にし、約50ポンド毎平方インチ(PSI)未満の空気圧を促進するために、少なくとも約0.00275in2の容積を有する。
【0008】
別の実施形態では、プローブは、構成要素ハウジングを含み、構成要素ハウジングは、そのチャネル内に配置された、硝子体切除処置中における空気圧の交互の供給に応じた往復運動のための伸長管を有する。これにより、硝子体液の切断を容易にする。伸長チュービングの周りの第1のシールリングは、管に対し第1の圧縮荷重を作用して、往復運動を誘導する空気圧からチャネルを密封する。同時に、伸長管の周りの第2のシールリングは管に対し第2の圧縮荷重を作用して、チャネルを真空から密封する。往復運動に用いられる空気圧の量を低減するために、第2の圧縮荷重は、第1の圧縮荷重よりも大幅に小さい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、振動低減硝子体切除プローブの一実施形態の分解斜視図である。
【
図2】
図2は、組み立てられた形態の振動低減硝子体切除プローブの斜視図である。
【
図3A-3B】
図3Aは、段付きチャネリングを有する
図2の硝子体切除プローブの内部後部ハウジング構成要素の一実施形態の側断面図であり、
図3Bは、従来の均一チャネリングを用いた硝子体切除プローブの従来技術の内部後部ハウジング構成要素の側断面図である。
【
図4】
図4は、内部前方ハウジングに固定され、伸長管を摩擦低減状態で収容している、
図3A及び
図3Bの内部後部ハウジングの側断面図である。
【
図5】
図5は、
図2の硝子体切除プローブによって実施される硝子体切除手術の一実施形態の概要である。
【
図6】
図6は、外科的処置において振動低減硝子体切除プローブを用いる一実施形態を要約したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明において、本開示の理解を提供するために、多数の詳細を記載する。しかし、記述する実施形態が、これらの特定の詳細なしで実施され得ることは、当業者であれば理解するであろう。更に、具体的に記述する実施形態において依然として企図される多数の変形又は修正が採用されてもよい。
【0011】
実施形態を、ある特定の種類の硝子体切除プローブ外科的処置を参照して説明する。特に、硝子体出血に対処するために硝子体液を除去する処置を示す。しかし、本明細書中に詳述する器具及び技法は、他の様々な手法で用いられ得る。例えば、本明細書中に詳述する硝子体切除プローブの実施形態は、網膜剥離、黄斑ひだ形成症、黄斑円孔、硝子体浮遊物、糖尿病性網膜症、又は様々な他の眼の状態に対処するために用いられてもよい。いずれにせよ、硝子体切除プローブが本明細書に詳述する振動低減特徴を組み込む限り、相当の利益を実現する可能性がある。
【0012】
ここで
図1を参照すると、振動低減硝子体切除プローブ100の一実施形態の分解斜視図が示される。前述のような振動低減の目的で、プローブ100に様々な特徴が組み込まれる。例えば、人間工学を強化した把持用構成要素150が提供される。特に、この構成要素150が硝子体切除処置中に外科医の手に直接触れることを前提とすると、柔らかい手触りの特徴を提供することは、外科医に到達する振動の量を減弱化し且つ最小限にするのに役立つ可能性がある。例えば、図示の実施形態では、把持用構成要素は、約60ショアA未満の硬度を有する従来のエラストマーで作製され得る。これは、一般的に硬質ポリカーボネートオーバーモールドである従来の把持用構成要素とは非常に対照的である。
【0013】
従来の把持用構成要素とは別の変更形態では、図示の構成要素150は、約0.5インチ未満の縮径のものであってもよい。小さな直径は、柔らかい手触りの把持用構成要素150と併せて、手での複雑な操作のためのより多くの余地を伴った、より微細な指先制御を可能にし得る。
【0014】
把持用構成要素150に加えて、他の様々な振動低減特徴がプローブ100に組み込まれる。例えば、より柔らかい材料を選択するという考えを継続すると、図示されるダイアフラム130は、プローブハウジング140のハウジング構成要素160とハウジング構成要素165との間で往復運動し、針175内のカッター173の運動を最終的に駆動する。このダイアフラム130の往復運動中、ダイアフラム130は各ハウジング構成要素160、165に繰り返し衝突する。より具体的には、ダイアフラム130の別個の停止部450がハウジング構成要素160、165に繰り返し当たり、前述の振動をもたらし得る(
図4を参照)。それにもかかわらず、一実施形態では、停止部450は、軟質シリコーンゴム又は約60ショアA未満の硬度を有する他の好適な材料でできている。したがって、振動は、減弱化されるだけでなく、最初から小さな程度までしか発生しない可能性がある。
【0015】
図1を引き続き参照すると、プローブ100の一端に、硝子体切除処置中に外科医の手に載ることができる人間工学的なシェル125が示されている。プローブ100の他端の近辺に、前方ハウジング構成要素165の前部にあるカッター173を覆って固定されたカップリング170が示される。しかしながら、前方ハウジング構成要素165の後方は、硝子体切除処置中にカッター173を収容する伸長管110である。以下に更に詳述するように、伸長管110は、往復運動中に摩擦を低減するように一意的に構成されている。その結果、ダイアフラム130及び管110を往復運動させるために必要な力の量が、ダイアフラム130が各ハウジング構成要素160、165に繰り返し衝突する衝撃を一層減衰するように、減少する。
【0016】
ここで
図2を参照すると、組み立てられた形態の振動低減硝子体切除プローブ100の斜視図が示されている。この図では、プローブ100の針175に硝子体液を引き込むポート277が、柔らかい手触りの把持用構成要素150の前方に示されている。この構成要素150は、ハウジング140上に同じく取り付けられたシェル125によってハウジング140に固定されている。したがって、外科医の観点では、振動による注意力低下を低減する一体式のハンドヘルド型手術器具が提供される。
【0017】
外科医の振動による注意力低下を低減する観点から、プローブ100の外形図からは容易に分からない別の特徴が提供される。具体的には、
図3Aは、段付きチャネリング315を有する
図2の硝子体切除プローブの内部後部ハウジング構成要素160の一実施形態の側断面図である。即ち、
図1のダイアフラム130の往復運動は、ダイアフラム130の両側に交互に誘導される空気圧によって実現される。より具体的には、
図1を更に参照すると、下部チャンバ330を通る空気は、ダイアフラム130の背側に誘導され、伸長管110を前方に押し、カッター173を前進させる可能性がある。或いは、上部チャンバ325を通る空気は、ダイアフラム130の前側に最終的に経路を定められ、最終的には、カッター173を針175の端部から遠ざかる方に強制的に引き込む可能性がある。
【0018】
上部チャンバ325に関与する更なる経路、ダイアフラム130の反対側の前側に到達する空気のために、従来の構造は、後部ハウジング160内に均一のチャネル327を提供するというものであった(
図3Bを参照)。しかしながら、
図3Aの実施形態に関しては、このタイプのチャネリングは、流量制限部を呈することを実質的に回避するために、段付きチャネリング315と置換されている。このため、
図1のダイアフラム130は、往復運動の全体的な速度を損なうことなく、より低い空気圧によって後方に往復運動することができる。例えば、一実施形態では、図示のような段付きチャネリング315は、2,500cpmの往復運動速度をなお達成しながらも50PSI未満を印加することを可能にする。一実施形態では、2,500cpm超の速度を達成するためには15PSI未満で十分であり得る。往復運動を駆動する空気圧のこの大幅な減少によって、対応する、ハウジング壁におけるダイアフラム130の衝突の減少ももたらされる。したがって、硝子体切除中の注意力低下を生じさせる振動の最小化の程度が増す。
【0019】
ここに及び
図4に示されるように、段付きチャネリング315は、容積が少なくとも約0.00275in
2の上部チャンバ325を含むダイアフラム前側流路の一部である。しかしながら、
図3Bの従来技術とは対照的に、主な違いは、出口300に達する均一チャネル327の大幅な排除である。即ち、入口(d)と出口300は、
図3Bの従来技術と
図3Aの実施形態とでほぼ同じサイズのものであり得るが、
図3Aの実施形態は、出口300に達する流量制限均一チャネル327を有しない。その代わりに、段付きチャネル315が設けられている。
【0020】
ここで特に
図4を参照すると、内部前方ハウジング165に固定され、伸長管110を摩擦低減状態で収容している、
図3A及び
図3Bの内部後部ハウジング160の側断面図が示される。即ち、上述のように、ダイアフラム130は、1つのチャンバ325又は別のチャンバ330内の空気圧に応じて交互に往復運動する。この往復運動は、伸長管110を前後に移動させ、最終的に、硝子体液の切断機能を提供する(例えば、
図5の手術描写を参照)。いずれにせよ、このような空気圧の使用は、シール400、425、475が、ハウジング140内の管110の周りの様々な位置に配置され得ることを意味する。例えば、これにより、
図5に示されるような手術中に高圧空気を患者の眼550内に誤って誘導するという潜在的に破滅的な事象を阻止することができる。
【0021】
このようなシール400、425、475の使用は、管110の往復運動に対する摩擦抵抗が導入され得ることを意味する。最終的には、これは、往復運動を駆動するためにより高い圧力を用いる必要性に換言でき、更には、停止部450によるより高い衝突力、ゆえに、より大きな程度の振動が生じることを意味する。しかしながら、
図4に示される実施形態に関しては、この摩擦抵抗は効果的に低減されている。より具体的には、
図4の実施形態では、
図5に示すような手術中に患者の眼550を保護する役割を実際に果たすのは最前方シール475のみであると認識されている。これは、前方シール475によって封止されていない場合、上部チャネル325を通して誘導される戻り行程のみが患者の眼550に達する可能性があるからである(
図5を参照)。もう一方の空気通路は、ダイアフラム130自体の前部によって封止されている(例えば、チャネル330を参照)又は管110の中心の、硝子体液を除去する真空を伴う。これらのシール400、425のいずれかが動作し損なった場合、患者の眼550は危険にさらされない(
図5を参照)。
【0022】
このことを勘案し、伸長管110、シール400、425、475及び周囲構造の実施形態は、患者の安全を犠牲にすることなく、シールと管との境界面における全体的な摩擦を低減するように構成され得る。例えば、一実施形態では、管の外径は、後方シール400、425の内径の寸法を変えることなく、約0.05インチ未満まで低減され、電解研磨され得る。同様に、約70ショアA未満の硬度のシール400、425、475を用いると摩擦を最小限にする可能性がある。より重要な前方シール475は、患者の安全のために内径が低減され得る。しかしながら、全体的な摩擦抵抗は、上で詳述したような振動生成停止部450の空気圧及び衝突力を低減するように、依然として大幅に低減される。
【0023】
上述の実施形態において、管110の外径の変化に内径の格段の変化が伴わない可能性がある。例えば、伸長管の従来の内径が約0.035インチである可能性がある場合、管110はこの同じ内径を保持する可能性がある。この結果は、管110が硝子体液を取り込む機能的な性能を保持するためのみならず、より細い(例えば、直径約0.0010インチ)の管110を提供するためでもある。その結果、より軽量の管が提供され、必要な空気圧往復運動力及び本明細書に記載される停止部450によって生じる振動衝突が更に低減される。
【0024】
別の実施形態では、記載の衝突の力及び生じる振動の低減は、停止部450が移動する距離の量を低減することにより達成され得る。例えば、図示のように、ダイアフラム130が中央にある状態で、停止部450とその両側の隣接するハウジング構造体との間の距離は約0.015インチであり得、総移動距離は0.030インチである。しかしながら、ダイアフラム130の上後部に停止部450の流路障害物がないことにより、この距離は、総移動距離が0.020インチに限定されるように、例えば0.005インチに低減され得る。したがって、衝突力及びこの停止位置から生じる振動は低減され得る。同様に、ダイアフラム130の下部にある停止部についてはこの逆が当てはまる場合があり、裏側停止部は、流路が存在するためにより大きな移動距離(例えば、0.015インチ)を有するが、前側停止部はより小さな移動距離(例えば、0.005インチ)を有する。換言すると、停止部の移動距離は、各非流路停止部と隣接するハウジング構造体との間が、各流路停止部と隣接するハウジング構造体との間に比べて短い距離を有することによって低減され得る。
【0025】
管110の摩擦を低減するための更なる対策としては、シール400、425、475の内径にシリコーン潤滑剤を配置することが挙げられ得る。これには、
図1に示されるように、入口内又はその近傍のカッター173と針175とを接続するシールにそのような潤滑剤を配置することが含まれ得る。そのような実施形態では、シール400、425、475もまた、パリレンコーティングポリマー又はポリテトラフルオロエチレンコーティングのものであってもよい。
【0026】
ここで
図5を参照すると、
図2の硝子体切除プローブ100によって実施される硝子体切除手術の一実施形態の概要が示される。この図では、
図1のカッター173を有する
図2の硝子体切除プローブ100が用いられている。この外科的処置中、針175は、予め配置されたカニューレ530を通して挿入され、硝子体液を除去すべき領域510に向けられる。具体的には、上述のように、吸引が適用され、ポート177は、硝子体液又はその他の物質の取り込みのために用いられる。例えば、図示する処置において、領域510内で出血が起こる可能性があり、血液は硝子体液と共にポート177に引き込まれる。
【0027】
図1及び
図4を更に参照すると、同じく上述したように、カッター173は、この繊細な処置の間、針175内で往復運動する。これは、ハウジング140内のダイアフラム130が、おそらく毎分10,000回を超えて、カッター173を繰り返し往復運動させることを意味する。ハウジング構造体におけるダイアフラム130の停止部450によるこの往復運動及び多大な衝突数にもかかわらず、振動は、本明細書に詳述するプローブ100の様々な特徴によって最小限に維持される。外科医の観点から、及び患者の利益のために、手術中、注意力低下を生じさせる可能性のある騒音は緩和される。
【0028】
引き続き
図5を参照すると、図示する手術は、強膜570に位置のずれた状態で配置されたカニューレ515、530を通して眼550内に達するプローブ101及び照明器具525を含む。このようにして、より繊細な角膜590及び水晶体580を回避することができる。同様に、視神経560及び網膜575も極めて繊細である。したがって、針175がこれらの繊細な特徴に到達可能であることを前提として、照明器具525を使用し、外科医のために、眼550の後部及び針175の端部の両方を照明することができる。
【0029】
ここで
図6を参照すると、外科的処置において振動低減硝子体切除プローブを用いる一実施形態を要約したフローチャートが示されている。
図5に示され且つ参照番号620に記載されるように挿入されたプローブによって、参照番号660に示されるように、患者の眼から硝子体液が抜かれ得る。これは、プローブの針内のカッターの往復運動によって実現される(参照番号640を参照)。参照番号680に示されるように、この往復運動は、往復運動による振動を減弱化することにより実施される。柔らかいグリップ、段付きチャネルによる空気圧、伸長管における摩擦の低下、移動距離が短縮したシリコーンゴム停止部、又は様々な追加の対策を問わず、かなりの利益が実現される可能性がある。
【0030】
本明細書で上に説明した実施形態は、外科医の観点から潜在的に注意力低下を生じさせる振動を減弱化するように調整された様々な特徴及び強化点を有する硝子体切除プローブを含む。いずれの場合においても、振動の低減は、硝子体切除プローブのカッターの往復運動速度を犠牲にすることなく達成される。したがって、振動低減は、手元の外科的処置におけるプローブの有効性を損なわない状態で達成される。
【0031】
前述の説明は、様々な実施形態を参照して提示されている。しかし、開示されているが上で詳述されていない他の実施形態及び/又は実施形態の特徴が採用されてもよい。更に、これらの実施形態が属する技術の当業者は、説明された構造及び動作方法における更に他の改変及び変更が、これらの実施形態の原理及び適用範囲から有意に逸脱することなく実施されてもよいことを正しく理解するであろう。加えて、前述の説明は、説明し、添付の図面に示す正確な構造にのみ関係するものとして読み取るべきではなく、むしろ、それらの最大限且つ最も適正な範囲を有することになる以下の特許請求の範囲と整合し、それらを支持するものとして読み取るべきである。
態様(1)によれば、硝子体切除プローブの針に向けて移動するようにダイアフラムを誘導するための第1空気流を収容するための後方ハウジング構成要素と、
前記プローブの前記針から遠ざかる方に移動するように前記ダイアフラムを誘導するための第2空気流を収容するための前方ハウジング構成要素と、
を含み、
前記後方ハウジングは、前記前方ハウジングに達する前に前記第2空気流を収容するための段付きチャネルを有する、
硝子体切除プローブハウジングである。
態様(2)によれば、前記後方ハウジングは、前記後方ハウジング内を通る前記空気流の流量制限を最小限にするために、均一チャネルがない。
態様(3)によれば、前記段付きチャネルは、容積が少なくとも約0.00275in2の前記後方ハウジングのチャンバにある。
態様(4)によれば、前記ダイアフラムは、前記針へと移動し且つ前記針から離れるために、前記ハウジング構成要素の間の空間を占め、前記空間内における前記ダイアフラムの総移動距離は、約0.025インチ未満である。
態様(5)によれば、前記ダイアフラムは、前記ハウジング構成要素間における往復運動中、前記ハウジング構成要素に衝突するための別個の停止部を含み、介在する流路がない場合、ハウジング構成要素と中央位置にある前記ダイアフラムとの間の停止部の前記移動距離は減少する。
態様(6)によれば、前記停止部は、シリコーンゴムと硬度が約60ショアA未満の材料とからなる群から選択される材料を含む。
態様(7)によれば、前方ハウジング構成要素と、
後方ハウジング構成要素と、
ダイアフラムであって、前記ハウジング構成要素間にあり、前記ハウジング構成要素によって画定される空間内に位置し、前記ダイアフラムの両側に交互に誘導される空気流に応じて前記ハウジング構成要素の間で往復運動する、ダイアフラムと、
前記往復運動中に前記ハウジング構成要素に衝突するための複数の別個の停止部であって、前記衝突によって振動が生じ、前記停止部は、前記振動を減衰させるために、硬度が約60ショアA未満の材料を含む、複数の別個の停止部と、
前記ダイアフラムに結合し、プローブの針内に位置し、外科医によって実施される硝子体切除処置中に硝子体液を切断するカッターと、
把持用構成要素であって、前記針が前記把持用構成要素から出現し、前記硝子体切除処置中に前記外科医が手で保持するためのものであり、前記ジッピング構成要素は、前記振動を減弱化するために硬度が約60ショアA未満のエラストマーを含む、把持用構成要素と、
を含む、硝子体切除プローブである。
態様(8)によれば、前記把持用構成要素は、外径が約0.5インチ未満である。
態様(9)によれば、前記別個の停止部は、シリコーンゴムを含む。
態様(10)によれば、前記ダイアフラムへの前記カッターの結合を容易にするための伸長管を更に含み、前記伸長管は、前記硝子体切除中、前記空気流に応じて前記ダイアフラム及び前記カッターと共に往復運動するように構成されている。
態様(11)によれば、前記空気流を密封するために前記ハウジング構成要素内の前記伸長管の周囲に取り付けられた静的シールを更に含む。
態様(12)によれば、前記前方ハウジング構成要素から遠ざかる方に前記ダイアフラムを誘導する空気流を密封しない前記シールは、前記前方ハウジング構成要素から遠ざかる方に前記ダイアフラムを誘導する前記空気流を密封する任意のシールに比べて、前記伸長管に対してより小さい圧縮力を呈する。
態様(13)によれば、前記シールは、パリレンポリマー及びポリテトラフルオロエチレンのうちの1つでコーティングされている。
態様(14)によれば、前記伸長管は電解研磨される。
態様(15)によれば、前記伸長管と前記シールとの間の境界面にシリコーン潤滑剤を更に含む。