(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】音響設備
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20241212BHJP
H04R 25/00 20060101ALI20241212BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H04R3/00 320
H04R25/00 D
H04R1/10 104Z
(21)【出願番号】P 2022521448
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 CN2019110430
(87)【国際公開番号】W WO2021068167
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】521080118
【氏名又は名称】シェンツェン・ショックス・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ビンヤン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】フェンユン・リャオ
(72)【発明者】
【氏名】シン・チ
【審査官】山下 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-82197(JP,A)
【文献】特開平4-90298(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0146307(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10、3/00,25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声伝達を目的とする音響設備であって、
音波を受信し、前記音波に基いて第一信号を出力する第一音波センサと、
前記音波を受信し、前記音波に基づいて第二信号を出力する第二音波センサと、
前記第一音波センサと前記第二音波センサに接合され、前記第一信号と前記第二信号に基いて出力信号を生成する信号処理回路と、
を含み、
前記音響設備の目標近接場音源が発する目標近接場音波に対する目標近接場感度は、前記音響設備の目標遠距離場音源が発する目標遠距離場音波に対する目標遠距離場感度より低く、
かつ、
前記目標近接場音源から前記第一音波センサまでの第二距離は、前記目標遠距離場音源から前記第一音波センサまでの第一距離より短く、
前記第一音波センサの前記目標近接場音源からの距離は第一距離であり、前記第二音波センサの前記目標近接場音源からの距離は第二距離であり、
前記第一音波センサの感度は第一感度であり、前記第二音波センサの感度は第二感度であり、かつ、
前記第一感度と前記第二感度は、前記第一距離と前記第二距離との比率によって決められることを特徴とする音響設備。
【請求項2】
前記目標近接場感度は前記遠距離場感度より著しく低いとは、前記目標近接場感度と前記遠距離場感度の比率は低いことを特徴とする請求項1記載の音響設備。
【請求項3】
前記第一音波センサは、前記音響設備の台座に設置される第一のマイクを含み、
前記第二音波センサは、前記台座に設置される第二のマイクを含み、
前記音響設備が前記目標近接場音波に応答する時、前記第一信号の振幅と前記第二信号の振幅の第一の差はゼロと同等もしくはそれに近い、
前記音響設備が目標遠距離場音波に応答する時、前記第一信号の前記振幅と前記第二信号の前記振幅の第二の差は前記第一の差より大きいことを特徴する請求項1或いは2記載の音響設備。
【請求項4】
前記目標近接場音源は、前記目標近接場音波が前記第一のマイクと前記第二のマイクの間においての音圧振幅勾配の絶対値は、第一音圧しきい値より大きくなるように位置され、
前記目標遠距離場音源は、前記目標遠距離場音波が前記第一のマイクと前記第二のマイクの間においての音圧振幅勾配の絶対値は、第二音圧しきい値より小さくなるように位置されることを特徴とする請求項3記載の音響設備。
【請求項5】
前記音響設備はさらに電子デバイスを含み、
前記第一音波センサと前記第二音波センサは、前記電子デバイスに設置され、かつ、
前記電子デバイスが稼働中において、前記目標近接場音源の位置と、前記電子デバイスの空間的姿勢は固定された関係を持つことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の音響設備。
【請求項6】
前記第一音波センサの感度は第一感度であり、前記第二音波センサの感度は第二感度であり、かつ、
前記第一感度と前記第二感度は同一であることを特徴とする請求項1記載の音響設備。
【請求項7】
前記第二音波センサはさらに、前記第一距離と前記第二距離の比率によって、
前記第二音波センサに出力された初期第二信号を、前記第二信号を生成するように振幅調整する振幅調整回路を含むことを特徴とする請求項1記載の音響設備。
【請求項8】
前記
音響設備は、押されると前記振幅調整回路を起動させるように配置される適用ボタンを含み、かつ、
前記音響設備が稼働中において、前記振幅調整回路の振幅調整の値は、前記第一距離と前記第二距離の動的変動によって、リアルタイムに変化することを特徴とする請求項7記載の音響設備。
【請求項9】
前記第一音波センサは、前記第一距離と前記第二距離の差によって、
前記第一音波センサに出力された初期第一信号を、前記第一信号を生成するように位相調整する位相調整回路を含むことを特徴とする請求項1記載の音響設備。
【請求項10】
前記信号処理回路は差動回路を含み、かつ、
前記音響設備は、好ましくさらに前記音響設備の出力信号を生成するように、前記差動回路の出力信号を増幅するための信号増幅回路を含むことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の音響設備。
【請求項11】
前記第二音波センサと前記第一音波センサとの予めセットされた距離は、調整可能であることを特徴とする請求項1記載の音響設備。
【請求項12】
前記
音響設備はヘッドマウント式電子デバイスを含み、
前記ヘッドマウント式電子デバイスは補聴器を含み、
前記補聴器は少なくとも一つのイアホンを含み、
前記第一音波センサの少なくとも一部と、前記第二音波センサの少なくとも一部は前記イアホンの内部に位置し、
前記少なくとも一つのイアホンは毎に少なくとも一つの信号変換機を含み、
前記少なくとも一つの信号変換機は、毎に前記信号処理回路から前記出力信号を受信し、および、空気経由で伝達する音声信号を出力するように配置されることを特徴とする請求項1記載の音響設備。
【請求項13】
前記
音響設備はヘッドマウント式電子デバイスを含み、
前記ヘッドマウント式電子デバイスは補聴器を含み、
前記補聴器は少なくとも一つのイアホンを含み、
前記第一音波センサの少なくとも一部と、前記第二音波センサの少なくとも一部は前記イアホンの内部に位置し、
前記少なくとも一つのイアホンは毎に少なくとも一つの信号変換機を含み、
前記少なくとも一つの信号変換機は、毎に前記信号処理回路から前記出力信号を受信し、かつ、骨伝導音声信号を出力するように配置されることを特徴とする請求項1記載の音響設備。
【請求項14】
前記第一信号は、n個の第一副信号を含み、前記第二信号は、n個の第二副信号を含み、
i番目の前記第一副信号とi番目の前記第二副信号は同じ周波数帯域に対応し、そのうち、
前記nは1より大きい正の整数であり、前記iは1からnの任意の整数であり、
前記信号処理回路は、各対の同じ番号を持つ前記第一副信号と前記第二副信号を処理し、かつ、前記出力信号を合成することを特徴とする請求項1記載の音響設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声収集設備に関し、特に音声伝達機能を備える音響設備に関する。
【背景技術】
【0002】
一部の音声伝達機能を備える音響設備として、例えばマイクモジューラの場合、近接場音源と遠距離場音源に対する音声伝達効果への需要は様々である。例えば電話をする時、多くの場合では携帯のより近くに居るユーザーの肉声が拡大されると同時に、周りの音が抑制されることが好ましく、こういった状況において、通話相手にとって携帯使用者の声がより簡単に聞き取れる。一方、一部の応用場面において、音響設備は近接場における音源に対する感度を下げながら、遠距離場における音源に対する感度を上げることが好ましい。
【0003】
例えば補聴器の場合、ユーザーが補聴器の機能に求めるのは単なる「音声を拾う」ことだけではなく、周りの人の会話をより聞き取りやすいこととか、さらに会話の内容まで分かりやすく聞き入れることが求められるようになった。このような音声識別度を影響する決定的な要因の一つは、音声信号においての目標音声と妨害音声の比率であり、音声信号に含まれる妨害音声の比率は低ければ低いほど、目標音声がより理解されやすい。
【0004】
しかしながら、普通の補聴器の拡大効果は選択的ではなく、つまり、目標音声信号(遠距離場音源)が拡大されると同時に、ユーザー自身の音声信号(近接場音源)も拡大されるからである。概して、ユーザー音源が会話相手より補聴器の近くに居る場合、補聴器が使用される際には、ユーザーの音声強度は会話相手の音声強度より高い。従って、ユーザー自身の音声信号は騒音になり、目標会話相手の音声の識別度を下げ、コミュニケーションや補聴器の使用体験に悪い影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、近接場音源信号を抑制すると同時に、遠距離場音源信号を拡大できる音声伝達機能を備える新しい音響設備が期待される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、本発明の一部の態様についての基本的理解を提供するために、本発明に関する簡略された概要を提示する。前記の記載は、本発明のキーパーツや重要的な部分を特定することも意図しなければ、本発明の請求範囲を制限することも意図しないことを理解されたい。前記の記載は、ただ簡略された形で本発明に関する一部の概念を提示するものにすぎない。本発明に関するさらなる詳細は、本開示の他なる部分で詳しく説明する。
【0007】
本発明は、音声伝達機能を備える音響設備を提供する。前記音響設備は、音波を受信して前記音波に基いて第一信号を出力する第一音波センサと、前記音波を受信して前記音波に基いて第二信号を出力する第二音波センサと、前記第一音波センサと第二音波センサとを接続し、前記第一信号と前記第二信号に基いて出力信号を発生する信号処理回路を含む。前記音響設備が目標近接場音源に対して発する前記音波(目標近接場音波)の目標近接場感度は、遠距離場に対して発する前記音波(遠距離場音波)の遠距離場感度より著しく低いことと、前記目標近接場音源と前記第一音波センサとの距離である第二目標距離は、前記遠距離場音源と前記第一音波センサとの距離である第一目標距離より短いことを特徴する音響設備。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記近接場感度は前記遠距離場感度より著しく低いこととは、前記目標近接場感度と前記遠距離場感度との比率は予定値より低いであることを意味する。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記第一音波センサは第一のマイクを含み、前記第二音波センサは第二のマイクを含み、前記第一のマイクから前記第二のマイクまでの距離は、予定距離である。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記目標近接場音源の位置によって、前記目標近接場音波が前記第一のマイクと前記第二のマイクとの間の音圧振幅勾配の絶対値が第一音圧しきい値より上回り、前記目標遠距離場音源の位置によって、前記目標遠距離場音波が前記第一のマイクと前記第二のマイクとの間の音圧振幅勾配の絶対値が第二音圧しきい値より下回る。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記音響設備はさらに電子デバイスを含み、前記第一音波センサと前記第二音波センサは前記電子デバイスに取り付けられており、前記電子デバイスが稼働中において、前記目標近接場音源の位置と前記電子デバイスの空間的姿勢関係は固定されており、前記第一音波センサは前記目標近接場音源の位置から第一距離を持ち、前記第二音波センサは前記目標近接場音源の位置から第二距離を持つ。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記第一音波センサの感度は第一感度であり、前記第二音波センサの感度は第二感度であり、前記第一感度と前記第二感度は、前記第一距離と前記第二距離との比率によって決められる。
いくつかの実施形態において、前記第一音波センサの感度は第一感度であり、前記第二音波センサの感度は第二感度であって、前記第一感度と前記第二感度は同じである。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記第二音波センサはさらに振幅調整回路を含み、前記振幅調整回路は、前記第一距離と前記第二距離との比率に基いて、前記第二信号を出力するよう前記第二音波センサに出力された初期第二信号を振幅調整するように配置される。
いくつかの実施形態において、前記電子デバイスはさらに適用ボタンを含み、前記適用ボタンは押されると前記振幅調整回路を起動するよう配置される。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記音響設備が稼働中において、前記振幅調整回路の振幅調整幅は前記第一距離と前記第二距離の動的変化に基いて、リアルタイムで変化するように調整される。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記第一音波センサは位相調整回路を含み、前記位相調整回路は、前記第一距離と前記第二距離との値の差に基いて、前記第一信号を発生するように前記第一音波センサに出力された初期第一信号を位相調整するよう配置される。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記信号処理回路は差動回路を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記音響設備はさらに前記差動回路の出力信号を増幅させてから前記音響設備の出力信号を発生する信号増幅回路を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記第二音波センサと前記第一音波センサとの間で予めセットされた距離は、調整可能である。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記電子デバイスはヘッドマウント式電子デバイスを含む。
いくつかの実施形態において、前記ヘッドマウント式電子デバイスは少なくとも一つの補聴器を含み、前記少なくとも一つの補聴器は少なくとも一つのイアホンを含み、前記第一音波センサの少なくとも一部と前記第二音波センサの少なく一部は前記少なくとも一つのイアホンの中に位置する。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記少なくとも一つのイアホンは毎に少なくとも一つの信号変換機が含まれ、前記少なくとも一つの信号変換機は毎に前記信号処理回路から前記出力信号を受信し、空気経由で伝達する音声信号を出力するように配置される。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記少なくとも一つのイアホンは毎に少なくとも一つの信号変換機が含まれ、前記少なくとも一つの信号変換機は毎に前記信号処理回路から前記出力信号を受信し、骨伝導音声信号を出力するように配置される。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記電子デバイスはスピーカを含み、前記スピーカの取り付け位置は、前記目標近接場音源の位置である。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記第一信号はn個の第一副信号を含み、前記第二信号はn個の第二副信号を含み、前記第i番目の第一副信号と前記第i番目の第二副信号は同じ周波数帯域に対応しており、nは1より大きい正の整数であり、iは1からnの任意の一つの整数であって、前記信号調整回路は、番号が同じである第一副信号と第二副信号を処理してから前記出力信号に合成するように配置される。
【0024】
以下の図面は、本発明に関する例示的な実施形態を詳しく説明する為のものである。これらの実施形態は制限的ではなく例示的なものであることと、図面は本発明が開示しようとするものを限定することを意図せず、ただ例示および説明の目的で提示されることと、本発明が意図するものは他の実施形態によりも完成されることが、当業者に理解される。図面は、必ずしも縮尺通りに描かれてはいないことが理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に関するいくつかの実施形態における音声伝達機能を備える音響設備の応用場面を示す図である。
【
図2】本発明に関するいくつかの実施形態における音声伝達機能を備える音響設備を示す図である。
【
図3】本発明に関するいくつかの実施形態における音声伝達機能を備える音響設備が近接場音源を抑制する原理を示す図である。
【
図4】本発明に関するいくつかの実施形態における振幅調整回路を備える音響設備を示す図である。
【
図5】本発明に関するいくつかの実施形態における信号増幅回路を備える音響設備を示す図である。
【
図6】本発明に関するいくつかの実施形態における位相調整回路を備える音響設備を示す図である。
【
図7】本発明に関するいくつかの実施形態における副帯域分解モジュールを備える音響設備を示す図である。
【
図8A】本発明に関するいくつかの実施形態における音響設備が目標近接場音源と目標遠距離場音源の方向に対する応答を示す図である。
【
図8B】本発明に関するいくつかの実施形態における音響設備が目標近接場音源と目標遠距離場音源の方向に対する応答を示す図である。、
【
図9A】異なる実施形態における音響設備の0°方向での周波数応答を示す図である。
【
図9B】異なる実施形態における音響設備の0°方向での周波数応答を示す図である。
【
図9C】異なる実施形態における音響設備の0°方向での周波数応答を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は音声伝達機能を備える音響設備を開示し、前記音響設備は、指定範囲内における近接場音源が発する音波に抑制効果を持ち、指定された近接場音源以外の遠距離場音源が発する音波に増幅効果を持つ。
【0027】
以下の記載では、本発明に関する特定な応用場面や要望が提示され、当業者が本発明に関する内容を製造や使用できるための内容になる。以下の記載を配慮することによって、本開示によるそれらの特徴や他なる特徴、及び構造に関する部品の操作性や機能、及び部品の組み合わせや製造の経済性の顕著的な向上が期待される。図面に参照されるすべての内容は、本開示の一部だと認識される。しかし、図面は単に説明や記述することを目的とし、本開示の範疇を制限するものではないことを明確に理解されたい。当業者には、開示する実施形態に対する様々な修正が明らかになり得るし、また当業者は本発明の範囲または精神から逸脱することなく、本開示における一般的な原理を他の実施形態に適用することもできる。従って、本発明は、例示された実施形態に限定されるものではなく、請求項と一致する最も広い範囲を許容すべきものである。
【0028】
図1は、本発明の音響設備100に関するいくつかの実施形態に例示された応用シナリオを示す。音響設備100は、音波センサ110、信号処理回路120、信号変換機130のうちの一つ又は複数のを含んでも良い。例えば、前記音波センサ110は、一つ又は複数のマイクグループから成るものでも良い。前記信号変換機130は、特定機能を有するスピーカであっても良い。信号処理回路120は、一つ又は複数の電気素子、電子回路、および/またはハードウェアモジュールを含んでも良い。前記一つ又は複数の電気素子、電子回路、および/またはハードウェアモジュールは、前記音波センサ100が発生した信号を処理し、さらに処理された信号を信号変換機130に送信して音声に変換されることが可能である。
【0029】
前記音響設備100は、前記音波センサ110だけを含んでも良い。例えば、前記音響設備100は、単なる一つ又は複数のマイクグループであっても良い。前記音響設備100は、音波センサ110、信号処理回路120、信号変換機130を同時に含んでも良い。例えば、音響設備100は前記マイクグループを搭載した電子デバイスであっても良い。例えば、前記電子デバイスは限定されないが、補聴器100-1、スマートテレビ100-2、スマートオーディオ100-3および他のスマート音響設備を含んでも良い。これらのスマート音響設備100は、周囲環境の音を収集し、さらに環境音声の中から特定の音声を識別することによって、特定の操作を行うことができる。例えば、スマートテレビ100-2、スマートオーディオ100-3は、人間の肉声を収集して識別し、さらにその中から指令を認識することによって、その内部にあるプログラムを実行することができる。例えば、スマートオーディオ100-3は、人声を収集しその中から曲の予約登録リクエストを認識し、さらに対応する曲を再生させることができる。
【0030】
さらに、例えば、前記スマート音響設備100は、特定の位置からの音声に対し特定の感度を有することができ、すなわち、当該特定の位置から発する音に対する感度が極めて高い或いは極めて低い。いくつかの実施形態では、設備100に搭載される音波センサ110は、違う距離からの音源信号に対して感度の違う応答をすることができる。
図1中、近接場音源140は遠距離場音源150より設備100に近い。近接場音源140から発する音声信号と遠距離場音源150から発する音声信号のいずれも音響設備100に収集され、および/または電気信号に変換されることはできる。音響設備100が音声信号に対する感度は、出力された電気信号のパワーと受信した音声信号のパワーとの比率を意味することができる。感度が大きければ大きいほど、単位出力の音源信号が音響設備100に変換された電気信号の出力数値が高い。本発明の実施形態において、近接場音源140と遠距離場音源150から同時に発した音は、音響設備100に届く時のパワーが同じである場合、音響設備100の遠距離場音源150に対する感度は近接場音源140に対する感度より著しく高い。それは、近接場音源140と遠距離場音源150から同時に発した音は、音響設備100に届く時のパワーが同じである場合、音響設備100が出力する電気信号の中で、遠距離場音源150に関する一部の信号パワーは近接場音源140に関する一部の信号パワーより著しく高いことも意味する。近接場音源140と遠距離場音源150それぞれの感度に対して適切な設定を行うことによって、音響設備100は近接場信号を抑制しながら遠距離場信号を増幅するという目的を達成することができる。
【0031】
音響設備100が補聴器100-1に搭載される時、近接場音源140は補聴器100-1を装着する人間の声帯であっても良いし、近接場音源140の位置は前記声帯の位置であっても良い。遠距離場音源150は周囲の環境における音源であっても良いし、例えば装着者の周りの人の声帯であっても良い。その場合、補聴器装着者自身の声が抑制され、他の人の声を含む周囲環境の音源が増幅されることによって、補聴器装着者は周囲環境音と他人の声をより認識し易いことができる。
【0032】
図2は本発明における音響設備の一つの実施形態を示す。音響設備は台座200を含むことができる。台座200の上には、音響設備100の各部品を乗せ、さらに配置することができる。台座200は音響設備100に設けられ、一つ又は複数のインターフェイス(図示せず)を通して設備100の他の部品と接続されることができる。前記一つ又は複数のインターフェイスは、電力供給、データ交換、信号の入力/出力に用いても良いし、その類似的な用途に用いても良い。例えば、音響設備100は外部からの電源に接続され給電されても良いし、自身に給電電源を備えてもいい。さらに例えば、音響設備100が音声信号を収集してから出力された電気信号は、一つ又は複数のインターフェイスを通して設備100の前記他の部品に送られて後続のプロセスにされることもできる。
【0033】
台座200の上には、第一音波センサモジュール210と第二音波センサモジュール220を固定して取り付けることができる。第一音波センサモジュール210は第一音波センサ(一つ又は複数の音波センサから成るアレイ)211を含むことができる。いくつかの実施形態において、第一音波センサモジュール210はさらに第一音波モジュール210と電気接続される、例えば電力増幅回路を一例とする他の電気素子を含んでもいい。第一音波センサ211は、音波を受信して第一初期信号を発生するように配置されてもいい。前記他の電気素子は、前記第一初期信号が第一信号になるように、前記第一初期信号を受信して処理する。前記第一初期信号と前記第一信号はいずれも電気信号である。第一音波センサモジュール210は第一音波センサ211以外他の電気素子を含まない場合、前記第一信号は前記第一初期信号である。第一音波センサモジュール210は他の電気素子も含む場合、前記第一信号は、前記第一初期信号が他の電気素子によって処理され、出力された信号でありうる。
【0034】
第二音波センサモジュール220は、第一音波センサモジュール210と同じ或いは類似的な構造を持つことができる。例えば、第二音波センサモジュール220は第二音波センサ(一つ又は複数の音波センサから成るアレイ)221を含み、それによって第二初期信号を受信して出力することができる。第一音波センサモジュール210と同様に、第二音波センサモジュール220は、第二初期信号を受信しさらに第二信号に成るまで処理するための他の回路コンポーネントを含んでも良い。前記他の回路コンポーネントは、限定されないが電力増幅回路を含んでも良い。
いくつかの実施形態において、第一音波センサ211は第一のマイクと称される少なくとも一つのマイクを含むことができる。第二音波センサ221は第二のマイクと称される少なくとも一つのマイクを含むことができる。第一のマイクと第二のマイクは、音波を受信、探知および/または収集するように配置される。
【0035】
第一音波センサ211と第二音波センサ221は一定の距離を保ちながら、台座200に固定されても良い。いくつかの実施形態において、二つのアレイの間の距離は一定値であって、第一予定値であって、つまり予定距離であっても良い。別のシナリオでは、第一音波センサ211と第二音波センサ221との距離は調整可能である。
【0036】
音響設備100はさらに信号処理回路250を含んでも良い。信号処理回路250は台座200に固定されても良い。本発明の実施形態において、信号処理回路250は第一音波センサモジュール210が出力された第一信号と、第二音波センサモジュール220が出力された第二信号を受信し、第一信号と第二信号を利用して音響設備100の出力信号を発生することができる。信号処理回路250は前記出力信号を出力することもできる。第一音波センサモジュール210が出力された第一信号は回路230を通して信号処理回路250に送信されても良いし、第二音波センサモジュール220が出力された第二信号は回路230を通して信号処理回路250に送信されても良い。信号処理回路250は回路260を利用して出力信号を外部へ送信することができ、例えばインターフェイスを通じて設備100の他の電子部品に送信する。
【0037】
音響設備100が置かれる周囲環境は複数の音を発生する音源を持つ場合、第一音波センサ211と第二音波センサ221はいずれもそれらの音を受信することができる。例えば、複数の音源は目標近接場音源が発生する目標近接場音波と目標遠距離場音源が発生する目標遠距離場音波を含んでも良い。例えば、目標近接場音源は補聴器装着者の声帯、つまり近接場音源であっても良い。目標近接場音波は補聴器装着者自身が発した声であっても良い。目標遠距離場音源は補聴器装着者以外の一人又は複数の第三者発言者、つまり遠距離場音源であっても良い。目標遠距離場音波は第三者発言者が発する声であっても良い。相対的に、一つ又は複数の音源から発した音を受信した後、第一音波センサモジュール210と第二音波センサモジュール220はそれぞれ第一信号と第二信号を出力しても良い。本発明が披露する音響設備100は便宜上、下記説明においては一つの仮説に基づくものであって、つまり目標近接場音源が発された目標近接場音波と目標遠距離場音源が発された目標遠距離場音波はスペクトル的に完全一致であって、第一音波センサ211までに伝達された音の強度も同じである。
【0038】
第一信号と第二信号は一つ又は複数の音源の情報を含んでも良い。信号処理回路250に処理され、音響設備100の出力信号において、目標近接場音波に対応する信号の強度は目標遠距離場音波に対応する信号の強度より著しく低い。例えば、音響設備100は補聴器100-1の場合、それを付けるユーザーの声帯は目標近接場音源であって良いし、周りの他の人間の声帯は目標遠距離場音源であって良い。補聴器100-1は、それを付けるユーザーの声に対する増幅は、例えば第三者発言者の声を例にそれを付けるユーザー周辺音源が発する音に対する増幅より著しく低い。目標遠距離場音源と比して、目標近接場音源は音響設備100により近い。従って、目標近接場音源は近接場音源と称されても良いし、目標遠距離場音源は遠距離場音源と称されても良い。いくつかの実施形態において、第一音波センサ211の周りの予定範囲内にある音源は皆目標近接場音源と認識されても良いし、その予定範囲外にある音源は皆目標遠距離場音源と認識されても良い。補聴器を例に、前記予定範囲は使用者の声帯から補聴器までの距離範囲であっても良いし、使用者両側の耳の間の範囲であっても良い。例えば、前記予定範囲は補聴器が耳に向かう側の10センチ、11センチ、12センチ、13センチ、14センチ、15センチ、16センチ、17センチ、18センチ、19センチ、20センチ、21センチ、22センチ、23センチ、24センチ、25センチのうちいずれかを半径とするヘミスフィアの範囲だと認識されても良い。前記予定範囲は使用者両側の耳の間の距離であっても良い。つまり、補聴器を例にする場合、前記近接場距離は概ね使用者の頭部或いは声帯が補聴器に対する所在の位置だと認識されることができる。
【0039】
従って、前記目標近接場音源は予定範囲内であって、前記目標遠距離場音源は予定範囲外である。前記目標遠距離場音源から音響設備100までの距離(第一目標距離)は、前記目標近接場から音響設備100までの距離(第二目標距離)より大きい。例えば、前記第一目標距離は前記目標遠距離場音源と前記第一音波センサとの間の距離を指すことができる。前記第二目標距離は前記目標近接場音源と前記第一音波センサとの間の距離を指すことができる。
【0040】
いくつかの実施形態において、信号処理回路250は差動回路を含むことができる。第一信号と第二信号は差動回路を通して出力信号に変換される。差動回路は、音響設備100が目標近接場音源からの目標近接場音波に対する感度を目標遠距離場音源からの目標遠距離場音波に対する感度より著しく低くなることを実現することができる。例えば、音響設備100が前記目標遠距離場音波に対する感度と前記目標近接場音波に対する感度の比率はしきい値より大きい。前記しきい値の値は、2、3、4、5、6、7、8、9、10などであって良い。具体的な取り得る値は、実験的な応用場面の需要や経験に基いて選択することができる。音響設備100に関する詳細的かつ原理的な説明は、
図3及びそれに関する説明を参照する。
【0041】
図3は本発明において音響設備の近接場音源信号抑制原理を示す。
図3において、第一音波センサ211と第二音波センサ221との間の距離はdである。同じ音源から発された音波は、第一音波センサ211に到達する時の振幅や位相は、第二音波センサ221に到達する時の振幅や位相と相違が存在する。
【0042】
前記目標遠距離音源は予定範囲外であることは、つまり、目標遠距離場150と二つのアレイのいずれかとの距離も十分遠い、すなわち、R>>d。そのうち、Rは目標遠距離場150から音響設備100までの距離を示す。その時、目標近接場音源140から発した目標近接場音波より、目標遠距離場音源150の目標遠距離場音波が音響設備100に到達する時の波面はより平面状に近い。従って、目標遠距離場音波は第一音波センサ211での音圧振幅と第二音波センサ221での音圧振幅は略同一である。
【0043】
いくつかの実施形態において、目標近接場音源140の位置は第一制約条件を満たす必要があって、目標遠距離場150の位置は第二制約条件を満たす必要がある。第一制約条件は、目標近接場音源140が発した目標近接音波が第一音波センサ211と第二音波センサ221との間の音圧振幅勾配の絶対値は、第一音圧しきい値より大きいであることを指す。第二制約条件は、目標遠距離場音源150が発した目標遠距離音波が第一音波センサ211と第二音波センサ221との間の音圧振幅勾配の絶対値は、第二音圧しきい値より小さいであることを指す。
音圧振幅勾配と、音源と測量地点の距離には正の相関関係があること、加えて、近接場音源の位置は具体的な応用場面および期待される結果を参考しながらの経験によって決められる必要があることから、前記音圧しきい値は距離の定義によって、前記近接場音源と遠距離場音源と一対一に対応することができる。
【0044】
目標近接場音源の位置は前記予定範囲内で、音響設備100より近い。目標遠距離場音源120が発する目標遠距離場音波と比較すると、目標近接場140が発する目標近接場音波が音響設備100に到達する時の波面はより球面状に近い。従って、その音圧振幅値は目標近接場音波の伝達距離の増加につれ、その減衰する具合は次第に明らかになる。目標遠距離場音源150或いは目標近接場音源140における音圧をPSとし、第一音波センサ211で形成された音圧をP1とし、第二音波センサ221で形成された音圧をP2としよう。目標近接場音源140と第一音波センサ211との角度をθとしよう。角度θを第二センサアレイから第一センサアレイに指向する軸と、参考音源120から第一センサアレイ211に指向するヘクターとの角度と定義する。類似的に、目標遠距離場音源150と第一音波センサ211との角度をαとしよう。目標近接場音源140から第一音波センサ211までの距離をr1とし、第二音波センサ221までの距離をr2としよう。
【0045】
従って、目標遠距離場150が二つのアレイで形成する音圧振幅値は、式で表すと以下のようになる:
【数1】
【0046】
目標近接場140が二つのアレイで形成する音圧振幅値は、式で表すと以下のようになる:
【数2】
【0047】
目標遠距離場150と目標近接場140が発する音波は、二つのアレイに到達する時それぞれの位相差は、音源信号の角周波数ωと二つのアレイの間の距離dに関係するものである。音速をcとし、従って:
目標遠距離場音波は二つのアレイでの位相差は:
【数3】
目標近接場音波は二つのアレイでの位相差は:
【数4】
【0048】
従って、目標近接場音源140或いは目標遠距離場音源150の周波数は比較的に小さい場合、それらに対応する目標近接場音波或いは目標遠距離場音波が二つのアレイに到達する時の位相差は低くなり、完全に無視できることも考えられる。音響設備100が補聴器100-1に設けられる場合、目標近接場音源140は補聴器を付けるユーザーの声帯である。典型的な成人男性の場合、基本周波数は85-180Hzになり、典型的な成人女性の場合、基本周波数は165-255Hzになる。人間の声の周波数は相対的に低いため、人声の音波が二つのアレイでの位相差も低くなり、完全に無視できることも考えられる。
【0049】
いくつかの実施形態において、第一音波センサ211と第二音波センサ221の感度は同じである(アレイの感度とは、出力した電気信号のエネルギー振幅と受信した音波信号のエネルギー振幅との比率である)。第一音波センサ211と第二音波センサ221はそれぞれ、前記目標近接場音波を電気信号に変換する。位相差を考慮しない場合、第一音波センサ211と第二音波センサ221で受信された音波信号の振幅が違うため、前記二つの電気信号の振幅も異なる。
【0050】
図3に示された実施形態において、目標近接場音源140は第一音波センサ211により近いため、目標近接場音源は第一音波センサ211と第二音波センサ221との間において球形波により近い形を有する。従って、第一音波センサ211が目標近接場音源140の音波を応答し変換した第一初期信号の振幅は(強度とも呼べる)、第二音波センサ221が出力した第二初期信号の振幅より大きくなる。第一音波センサモジュール210と第二音波センサモジュール220は他の電気素子を含まない場合、第一初期信号は第一信号であり、第二初期信号は第二信号であり、さらに信号処理回路250に送信される。信号処理回路250は差動回路を含む場合、第一信号と第二信号との差異は計算される。第一信号と第二信号の差異は出力信号として目標近接場音波に対応する。
【0051】
目標近接場音源140に比べると、目標遠距離場音源150は第一音波センサ211により遠いであるため、目標遠距離場音波は第一音波センサ211と第二音波センサ221の間においてより平面波に近い形を有する。音声伝導装置100が目標遠距離場音波を受信および/または感知および/または収集した後、音圧の振幅は第一音波センサ211と第二音波センサ221において、互い近いあるいは同じ値を持つ。従って、第一信号と第二信号は差動回路によって差し引かれるとほぼ消されることになる。
【0052】
本発明の目的の一つは、出力信号における目標近接場140に対応する信号の強度を抑制し、その上目標遠距離場150に対応する信号の強度を増幅するである。従って、第一音波センサモジュール210および/または第二音波センサモジュール220にいくらかの調整を行うことによって、音響設備100が目標近接場音源140に応答する時、第一信号と第二信号の振幅は十分近似した値を有し、それによって出力信号は差動回路の処理によって著しく低減され或いは完全に消去されることができる。音響設備100が目標遠距離場音源150を応答する時、第一信号と第二信号の振幅の差は増加し、それによって差動回路を通過した後対応する出力信号の強度を増加することができる。以下のいくつかの実施形態は、前記趣旨の内容について音響設備100の電子回路構造を調整することができる。
いくつかの実施形態において、音響設備100の電子回路構造への調整は、第一音波センサモジュール210および/または第二音波センサモジュール220の感度を調整することを含むことができる。例えば、
図3で示された実施形態において、第二音波センサモジュール220の感度を増加することによって、音響設備100が目標近接場音源140を応答する時の第一信号と第二信号の振幅を同一或いは近似値にすることができ、それによって前記差動回路において相殺され出力信号を低減する或いは消去することができる。
【0053】
認識されるように、第二音波センサモジュール220の感度を増やすことは、音響設備100の電子回路構造を調整する手段の一つに過ぎず、目標近接場音源140が
図3において音響設備100の左側に位置する場合、第二音波センサモジュール220の感度を下げることによって同様の目的を達成することができる。それで、第一音波センサモジュール210と第二音波センサモジュール220の感度を同時に調整することによって、同じ目的を達成することもでき、例えば、第一音波センサモジュール210の感度を増加しながら第二音波センサモジュール220の感度を減少する。
【0054】
第二音波モジュール220の感度を増加する場合、音響設備100は目標遠距離場音波を応答する時、対応する第二信号は増幅されて第一信号との差異が増大され、差動回路の処理を経て出力信号は増幅される。
【0055】
係数Bを用いて第二音波センサモジュール220の感度調整幅を表すことができる。
図3が示すシナリオにおいて、係数Bは第二音波センサモジュール220の感度に対する増幅度を表すことができる。第一音波センサ211と第二音波センサ221の感度が同一である場合、音響設備100は目標近接場音源140を応答し、Bが
【数5】
である場合、第一信号と第二信号の幅は同一であり、差動回路を経て出力信号はほぼゼロであるため、近接場信号への抑制効果は比較的良い。補聴器100-1の使用環境に類する場合において、音響設備100が設備110に取り付けられた後、目標近接場140と設備110との空間姿勢関係は相対的に固定される(例えば、人の声帯の位置と、補聴器においての第一音波センサと第二音波センサとの相対位置関係は固定である)。従って、r
1とr
2は予め確定され、と共に係数Bも確定される。Bが
【数6】
である場合、目標近接場音波に対応する信号は音響設備100の出力信号によって完全消去され、つまり、補聴器100-1はユーザー自身の音声に対しては無応答と無出力である。しかしながら、好適に補聴器を付けるユーザー自身の声を保留することによって、自分の声を聞き取ることを容易にする場合もある。この場合、
【数7】
の付近でBの値を調整することによって、補聴器100-1が目標近接場に対する応答出力をコントロールすることができる。
【0056】
以下は、目標近接場信号が完全消去されることを例として音響設備100の動作原理を説明する。目標近接場音源140或いは目標遠距離場150をS(ω)とし、周波数をk=ω/cとする場合、音響設備100が二つの音源を応答する出力信号J
OUTPUT、Y
OUTPUTを推定する過程は以下となる:
a) 音響設備100は目標近接場音波を応答する場合、第一音波センサ211の第一初期信号は
【数8】
であり、第一信号は第一初期信号に等しく、その内kは前記周波数である。第二音波センサ221の第二初期信号は
【数9】
であり、第二信号は第二初期信号掛けるBである:
【数10】
第一信号と第二信号は差動回路を経て以下のようになる:
【数11】
b) 音響設備100は目標遠距離場音波を応答する場合、第一音波センサ211の第一初期信号は
【数12】
であり、第一信号は第一初期信号に等しく、その内kは前記周波数である。第二音波センサ221の第二初期信号は
【数13】
であり、第二信号は第二初期信号掛けるBである:
【数14】
第一信号と第二信号は差動回路を経て以下のようになる:
【数15】
【0057】
以上から分かったこととして、音源信号の周波数が低い場合、係数Bを調整することによって、第一音波センサモジュール210が目標近接場音波を応答する時の第一信号と第二音波センサモジュール220が目標遠距離場音波を応答する時の第二信号と同一或いは近似的な値にすることができる。従って、音響設備100の出力信号は0或いは限りなく0に近い。第一音波センサモジュール210が目標遠距離場音波を応答する第一信号の振幅は、第二音波センサモジュール220が目標近接場音波を応答する第二信号の振幅と相対的に大きい差異を持っている。従って、音響設備100の出力信号は0ではない。それに対して、音響設備100が目標近接場音源140から発生した目標近接場音波に対する感度は、目標遠距離場音源150から発生した目標遠距離場音波に対する感度より著しく低い。
【0058】
いくつかの実施形態において、係数Bは予め設定された範囲内で調整することができ、この範囲内で係数Bを調整すると、音響設備100は目標近接場音源140が発生する目標近接場音源に対する感度は目標遠距離場150が発生する目標遠距離音波に対する感度より著しく低いということは、以下のように表示される:目標近接場音源140における電力はA0である目標近接場音波に対して、対応する第一信号電力はB1であり、対応する第二信号電力はB2である。目標遠距離場音源150における電力はA0’である目標遠距離場音波に対して、対応する第一信号電力はB1’であり、対応する第二信号電力はB2’である。係数Bが許容範囲内で調整される場合、(A0’|B1-B2|)/(A0|B1’-B2’|)は信号しきい値より小さい。信号しきい値は、予め設定されてもよく、その値は音響設備100が目標近接場音波の抑制程度を表す。
【0059】
係数Bの調整方式は複数である。一形態の調整方式として、第一音波センサ211および/または第二音波センサ221の感度を調整することである(ここでは、元々二つのアレイの感度は同一であるとする)。第一音波センサモジュール210と第二音波センサモジュール220において第一音波センサ211と第二音波センサ221以外の他の電子素子を含まない場合、第一初期信号は第一信号であり、第二初期信号は第二信号である。
図3を例として、第二音波センサ221の感度を増幅すると第二信号の振幅を増大することができる。第二音波センサ221の感度を増幅する範囲は、係数Bの許容範囲を根拠することができる。例えば、音響設備100の目的は目標近接場音源140の信号を完全抑制することである場合、係数Bの値は
【数16】
であって良い。第二音波センサ221の感度を調整することによって、第二音波センサモジュール220が出力する第二信号の振幅を調整される前の振幅値掛ける係数Bにすることができる。こういう係数Bの調整方法は、補聴器100-1のアダプテーションフィールドに応用されることができる。装着者は補聴器100-1を校正する時、その声帯の位置と第一音波センサ211との距離、及び第二音波センサ221との距離は測定でき、それによって第二音波センサ221の感度を調整および/または配置することができる。
【0060】
図3に示される音響設備100において、第二音波センサ221の感度への調整は、音響設備100と目標近接場音源140との位置関係によって、第二音波センサ221の感度を上げる或いは下げることが決定される。
図3における目標近接場音源140は音響設備100の左側におる場合、音響設備100が目標近接場音源140を抑制する目的を果たすため、第二音波センサ221の感度を下げることが適用する。
図3における目標近接場音源140は音響設備100の右側におる場合、音響設備100が目標近接場音源140を抑制する目的を果たすため、第二音波センサ221の感度を下げることが適用する。第二音波センサ221の感度を調整することは本質上、第一音波センサ211と第二音波センサ221がそれぞれ目標音波を応答する時の出力信号幅の相互関係を調整することであることを、当業者に理解されたい。例えば、片方で第二音波センサ221の感度を増加するためには、第一音波センサ211の感度を減少し、或いは第一音波センサ211の感度を減少しながら第二音波センサ221の感度を増加することから、同じ効果は得られる。
【0061】
図4は本発明における振幅調整回路を含む音響設備の一つの実施形態を示す。
図4は係数Bを調整するための別方法を示す。第一音波センサ211と第二音波センサ221の感度は同一である場合、係数Bの調整方法は第一音波センサモジュール210および/または第二音波センサモジュール220に振幅調整回路を加わることも含まれる。
図4に示される実施形態を例に、第二音波センサモジュール220は、第二音波センサ221の後ろに接続される振幅調整回路222を含んでも良い。第二音波センサ221が出力する第二初期信号は、振幅調整回路222を通してその信号振幅が調整されてから第二信号として出力することができる。振幅調整回路222は第二初期信号への調整幅(即ち、係数Bである)は目標近接場音源140がそれぞれ二つのアレイとの距離によって配置されることができる。例えば、音響設備100が目標近接場音波への応答を消去するように配置される時、調整幅Bは
【数17】
であって良い。目標近接場音波への応答を部分的に保留する場合、調整幅Bは
【数18】
の値の付近で上下調整することができる。
【0062】
振幅調整回路222が第二初期信号への調整は、信号幅ゲインおよび信号幅抑制を含む或いは導入することができる。
図4において、目標近接場音源140が音響設備100の左側におる時、振幅調整回路222は第二信号の幅を、生成された第二信号と第一信号がマッチングできるように削減する必要がある。
【0063】
いくつかの実施形態において、振幅調整回路222の調整幅Bはダイナミック的に変更/調整されることができる。例えば、補聴器ではない使用場面において、目標近接場音源140の位置はダイナミック的に変更できるものであり、二つのアレイとの距離もダイナミック的に変更できるものである。目標近接場音波の完全消去が目的である場合、調整幅Bの値は
【数19】
であれば、Bの値はリアルタイムでr
1とr
2の変更に適応しなければ、音響設備100が始終目標近接場音源140を抑制する効果を確保できない。具体的に、目標近接場140の位置が変更すると、r
1と
r2の値もそれに合わせて変更し、対応する第一初期信号の幅と第二初期信号の幅も合わせて変更する。振幅調整回路222は第一初期信号の幅と第二初期信号の幅の変更傾向に基いてその振幅調整幅Bを調整することができる。
【0064】
いくつかの実施形態において、振幅調整回路222は、第一音波センサモジュール210の内部に設置することもでき、或いは第一音波センサモジュール210と第二音波センサモジュール220の内部両方同時に設置することもできる。その幅調整原理は、
図4に示される実施形態と同じである。いくつかの実施形態において、振幅調整回路222は第一音波センサモジュール210および/または第二音波センサモジュール220から独立して存在することができる。
【0065】
図5は本発明における信号増幅回路を含む音響設備の一つの実施形態を示す。近接場信号音源を抑制する音響設備において、第一信号と第二信号に対して信号の差動処理が施されたため、目標近接場音波を応答する出力信号と目標遠距離場音波を応答する出力信号を含む信号振幅の全体的な減少が生じる。信号の損失を補うため、音響設備100はさらに信号増幅回路270を含む。信号増幅回路270は信号処理回路250が生成する信号を増幅するため信号処理回路250(例えば、差動回路を含む)の後ろに接続することができる。また、差動回路の後ろに信号増幅回路270を接続することで、音響設備100が目標遠距離場音源150に対する感度を増大することができる。音響設備100が補聴器100-1に適用する時、装着者はより遠い場所からの音を聞き取れる。いくつかの実施形態において、信号増幅回路270は信号処理回路250と集積されても良いし、或いはその一部として設置されても良い。いくつかの実施形態において、信号増幅回路270は信号処理回路250から独立して存在する。いくつかの実施形態において、信号増幅回路は信号処理回路250の前に接続されてもよく、回路230と240のそれぞれの中に配置される。
【0066】
図6は本発明において位相調整回路を含む音響設備の一つの実施形態を示す。前記分析によると、音源の周波数が低いである場合、例えば肉声の場合でなければ、位相差の影響を無視することができない。しかしながら、音響設備100が適用できる場面を増やすために、第一音波センサモジュール210および/または第二音波センサモジュール220に位相調整回路を加わることによって、目標近接場音波が第一音波センサ211と第二音波センサ221に到達する時の位相差を削減または消去することができる。
図6を例に、第一音波センサモジュール210は位相調整回路212を含み、第一音波センサ211と信号処理回路250との間で接続される。
【0067】
目標近接場音源140の目標近接場音波が第一音波センサ211に到達する時間は、第二音波センサ221に到達する時間より
【数20】
秒早い。音響設備100が目標近接場音波を完全消去するように配置される場合、位相調整回路212は第一初期信号をT秒遅延して、第一信号として出力するように配置されることができる。これによって、目標近接場音波が第二音波センサ221に到達する時間と第一音波センサ211も到達する時間の差で生じた位相差は完全に補償される。
【0068】
いくつかの実施形態において、位相調整回路212は、音響設備100は目標近接場音波が出力する応答への不完全抑制を実現し、目標近接場音波への応答を部分的に保留するため、第一初期信号への遅延をT秒付近で調整することができる。いくつかの実施形態において、位相調整回路212は第一音波センサモジュール210の内部に設置することができ、或いは同時に第一音波センサモジュール210と第二音波センサモジュール220の内部に設置することができる。いくつかの実施形態において、位相調整回路212は第一音波センサモジュール210および/または第二音波センサモジュール220から独立して存在することができる。
【0069】
図7は本発明の副帯域分解モジュールを含む音響設備の一つの実施形態を示す。
図6において、位相調整回路212を加わって第一初期信号をT秒遅延してから出力する場合、目標近接場音波を応答する出力信号は完全消去される。いくつか目標近接場音源140信号を完全消去する必要がない場合において、位相調整回路212は第一初期信号への遅延を若干T秒より長い或いは短いにすることができる。この場合、位相調整回路212は異なる周波数を持つ目標近接場音波に異なる遅延時間を提供することができる。音声が空気においての伝達速度が一定であり、周波数に関係がないため、目標近接場音波の高い、低い周波数を持つ信号が二つのアレイまでに到達する時間差Δtは一定である。位相差はΔΦ=ω*Δtから、信号周波数の増大につれ、第一音波センサ211と第二音波センサ221が目標近接場音波に応答する位相差は次第に増加し、さらに対応する第一信号と第二信号の値の差も次第に増加し、目標近接場音源140への抑制効果は影響されることが分かる。従って、バランスが取れた周波数応答を手に入れるため、第一音波センサモジュール210と第二音波センサモジュール220に第一初期信号と第二初期信号をいくつかの副帯域に分解し、さらに独立する位相調整回路をそれぞれに適用する副帯域分解モジュールを加わることができ、それによって各帯域に対する二つのアレイの出力信号の位相差は同一であることが確保される。
【0070】
図7に示される実施形態において、第一音波センサモジュール210には、第一音波センサ211が出力した第一初期信号をいくつかの帯域に分解する副帯域モジュール213は加わった。同じことに、第二音波センサモジュール220に加わった副帯域モジュール223は第二初期信号を、副帯域モジュール213が分解すると同じ方法でいくつかの帯域に分解することができる。第一音波センサモジュール210において、位相調整回路212は各帯域にそれぞれの位相調整副回路を持ち、複数の位相調整副回路はお互い独立する形で各帯域の信号に対して異なる程度の遅延Tnを設立することができる。そのうち、nは帯域の番号を表す。前記振幅調整回路222は各帯域に対してそれぞれに幅調整副回路を設立し、各帯域の出力信号に幅調整を行い、調整される幅の値を同一にすることができる。前記信号処理回路250には各帯域に対する単独の差動回路を設置することができ、各差動回路は一組のある帯域における第一音波センサモジュール210から出力された信号と第二音波センサモジュール220から出力された信号を対応する。前記信号処理回路250はさらに信号合成回路251を含むことができ、各差動回路の出力信号を合成して音響設備100の出力信号として出力する。
【0071】
第一音波センサ211を例に、n番目帯域の位相差を
【数21】
とし、従って第一音波センサ211と第二音波センサ221がそれぞれ目標近接場音源140のn番目出力信号x1n、x2nを応答する位相は以下のようになる:
【数22】
位相差は以下のようになる:
【数23】
上式から、異なる帯域nが対応する遅延設置は以下のようになる:
【数24】
【0072】
ΔΦnは[0,π]の範囲内で変化し、位相差ΔΦは小さければ小さいほど、音響設備100が目標近接場音源140信号への抑制効果は高い。各帯域に対して、ΔΦnはそれぞれ違い値を取ることができ、従って、異なる帯域が対応する周波数が異なるため、対応する位相調整副回路が信号に対する遅延時間Tnも異なる。こういった異なる帯域の信号遅延を別々に調整する方法は、出力信号において目標近接場音源信号に対する抑制効果を各帯域に対して均一性化することができる。
【0073】
図1が示す設備の応用場面に戻り、音響設備100は補聴器100-1に応用する他、類似的なヘッドマウント式電子設備に応用することもでき、例えば骨伝導イアホンおよび他なる集音機能を有するイアホンに適用することができる。
【0074】
設備110には、第一音波センサ211と第二音波センサ221との間の距離を調整することによって、音響設備が異なる帯域音源への適応性を向上させるための距離調整装置を設置することができる。
【0075】
前記ヘッドマウント式電子設備は耳を入れるタイプ補聴器を含んでも良く、耳を入れるタイプ補聴器は少なくとも一つのイアホンを含んでも良い。前記少なくとも一つのイアホンの中に音響設備100が設置されても良く、第一音波センサ211と第二音波センサ221は少なくとも一つのイアホンの中に位置する。
【0076】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのイアホンのうち、少なくとも一つの信号変換機を含むことができる。信号変換機は音響設備100の出力信号(例えば回路260および台座200に設置されるインターフェイスを通じる)を受信し、人間の渦巻管が察知できる信号を出力する。いくつかの実施形態において、人間の渦巻管が察知できる信号は音声信号である場合、信号変換機はスピーカであって良い。いくつかの実施形態において、人間の渦巻管が察知できる信号は骨伝導信号である場合、信号変換機は音響設備100が出力した電気信号を振動信号に変換して、装着者の顔面の骨を通して渦巻管まで伝達することができる。
【0077】
いくつかの実施形態において、設備110には適用ボタンが配置されることができる。適用ボタンが押されると、振幅調整回路222は現時点での第一音波センサ211が出力された第一初期信号と第二音波センサ221が出力された第二初期信号を基いて振幅調整幅を調整することができる(
図3および関する説明を参照)。補聴器を例に、異なる装着者の声帯と耳の距離は異なって、耳は通常補聴器をつける位置である。振幅調整回路222の振幅調整幅はユーザーによって調整できるものでない場合、装着者は専門業者が調整してもらうしか自分の声帯位置で振幅調整回路222の振幅調整幅を調整できないため、補聴器の量産性は阻まれる。適用ボタンを配置することによって、メーカーは補聴器を量産でき、ユーザーは製品を手に入れてから適用操作をすることもできる。例えば、補聴器をつけて、適用ボタンを押してから比較的静かな環境で声を出す。そしてその時の音源位置は装着者の声帯位置である。振幅調整回路222がこの時で確定した振幅調整幅は当該装着者のためのものである。当該補聴器は他の装着者につけられる時、同じ方法で適用操作をすることができ、よって補聴器をシェアすることができる。耳に入れるタイプの補聴器に比べると、この適用方法は特に骨伝導技術が補聴器に適応される場合に適応する。それは耳に入れるタイプの補聴器は人の耳道の構造によってカスタマイズする必要があるので、シェアすることは難しい。相対的に、骨伝導タイプは耳道の構造によってカスタマイズする必要がないので、誰にでも付けられる。
【0078】
音響設備100がスマートテレビ112およびスマートオーディオ113などに適用される場合、これらのスマート設備は通常スピーカを含む。ユーザーが音声命令を通してこれらのスマート設備に制御命令を加える場合、設備にとって、ユーザーの音源位置は相対的に遠く、自身のスピーカの位置は相対的に近いため、ユーザーが出した命令への識別は妨害される。従って、音響設備100を装着することによって、スマート設備はよりよく遠い場所からの人声を識別することができ、よって音声命令への識別能力は向上される。
【0079】
図8Aと
図8Bは、本発明における音響設備100が目標近接場音源(近接場)方向と目標遠距離場(遠距離場)方向への応答を示す。補聴器を例に、装着者の発声部位と二つのアレイとの距離r
1、r
2は予め確定されることによって、係数Bは確定される。
図3に示す実施形態によると、r
2は音源と第一音波センサ211との距離と、異なるアレイの間の距離dおよび音源と第一音波センサとの角度θによって表される:
【数25】
【0080】
図8Aと
図8Bにおける目標近接場音源信号への抑制効果は以下の条件で行う:音源信号は周波数範囲が0~20000Hzの純音で、目標近接場140と目標遠距離場150が第一音波センサ211における音圧はP1=1Paであり、R=1m,d=0.01m,r
1=0.1mとし、よってr
2=0.11m,B=1.1になる。
【0081】
図8Aと
図8Bが対応する実施形態は
図4に示す実施形態であり、振幅調整回路222は振幅ゲインの機能しか含まず、また、第一音波センサモジュール210は位相調整機能を含まない。
図8Aと
図8Bにおいて、同心円は信号の幅を表し、外側へ行くにつれて、出力信号の幅は増大する。
図8Aにおいて、周波数が比較的に低い場合(f=400Hz以下)、音響設備100はθが-90°~90°においての全ての目標近接場音源信号に対して顕著な抑制効果を持つ。前記振幅調整回路が信号に対して削減する場合、90°~-90°においても類似的な効果は持ち得るが認識される。
図8Bにおいて、音響設備100は目標遠距離場150に対して目標近接場140より抑制効果を発揮しない。
【0082】
図9A、
図9Bおよび
図9Cは本発明の音響設備が異なる実施形態における0°方向の周波数応答を示す。そのうち、
図9Aは
図3が示す実施形態を対応し、
図9Bは
図6が示す実施形態を対応する。
図8Aと
図8Bにおいて、横軸は音源信号の周波数を表し、縦軸は音響設備100の出力信号の強度を表す。
【0083】
図9Aにおいて、周波数がやや低いである場合(例えば400Hz以下)、音響設備100が目標近接場140(即ち、図における近接場音源)に対する応答は目標遠距離場150(即ち、図における遠距離場音源)に対する応答より著しく小さい。即ち、音源周波数は低ければ低いほど、音響設備100が目標近接場音源信号に対する抑制効果は高い。
【0084】
図9Bにおいて、位相調整副回路は各帯域に対して異なる遅延を適用することができるため、二つのアレイモジュールにおいて各帯域出力信号の位相差を安定されることができ、それによって周波数の変化に応じて変動することはなくなる。ゆえに
図9Bにおいて、音響設備100はより広い周波数区間において目標近接場音源信号への抑制効果を保つことができる。
【0085】
図9Cは、実際的な需要に応じて音響設備が異なる帯域に対する出力信号の幅を調整することを示す。特定の帯域の遅延Tnを調整することによって、二つのアレイが異なる帯域の信号に対する位相差ΔФ
1nを変更することができ、よって異なる帯域の出力信号の幅を変更することが実現される。
図9Cにおいて、帯域が0Hz~1700Hzおよび2300Hz以上においての各帯域の位相差をΔФ
1n=π/1000とし、帯域が2000Hzにおいての位相差をΔФ
2n=π/200とし、対応する帯域遅延は式T
n=r
2/c-r
1/c+(ΔФ
n)/ω
nで求められる。需要に基いて遅延を変更することによって、必要な周波数応答曲線を取得できることが分かる。
【0086】
要約すれば、本開示を詳しく解読した当業者は、前記詳しく公開された内容は単なる例示的に呈されるものに過ぎず、制限的なものではないことを認識するであろう。ここでは明白に言及されないが、本出願は意図的に実施形態への各種たる合理的な変更、改造および修正を含むものであることを当業者に理解されたい。これらの変更、改造および修正は、本開示に提示されおよび本開示の例示的な実施形態の趣旨および範囲内にあるものとされる。
【0087】
ここで使用される専門用語はただ特定の例示的な実施形態を説明するのを目的とし、制限するためのものではない。例えば、文脈において別段の説明がない限り、ここで使用される単数形の「一」、「一個」、「前記」および「当該」は複数であるというニュアンスを含むこともできる。本説明書において使用される際には、専門用語「含む」、「含まれる」および/または「含有する」は関連する整数、ステップ、要素および/または部品は存在するが、一つ又は複数の他なる特徴、整数、ステップ、要素、部品および/またはグループも存在することもあり得るし、又は当該システムおよび/または方法において他の特徴、整数、ステップ、要素、部品および/またはグループを添加することもできる。本説明書において、専門用語「AはBの上」はAとBが直接隣接する(上でも良いし下でもいい)ことを意味することもできるし、AとBが間接的に隣接する(即ちAとBの間でいくつかの物質が仕切られる)ことを意味することもできる。専門用語「AはBの中に」はAの全部がBの中にあることを意味することもできるし、Aが部分的にBの中にあることを意味することもできる。
【0088】
また、本発明においてのいくつかの専門用語はすでに本開示の実施形態を説明するために適用されている。例えば、「一つの実施形態」、「実施形態」および/または「いくつかの実施形態」は、当該実施形態が説明する特定な特徴、構造または特性は本開示の少なくとも一つの実施形態に含まれることができることを意味する。従って、本発明の各部において、「実施形態」または「一つの実施形態」または「代替の実施形態」の二つ或いはそれ以上への引用することは同じ実施形態への引用では限らないことを強調又は理解されたい。さらに、特定な特徴、構造または特性は本開示の一つ又は複数の実施形態において適切に組み合わせることができる。
【0089】
無論、前記本発明に関する実施形態への説明において、一つの特徴の理解を促進するために、本開示を簡潔化することを目的とし、時々、各種の特徴を単独の実施形態、図面或いはその説明の中で組み合わせる場合がある。また、本発明は各種の特徴を本発明の複数の実施形態に分散する場合もある。しかし、これらの特徴の組み合わせが必須であることを証明ものではない。当業者は本発明を解読する時、その一部の特徴を抽出して単独の実施形態として理解することができる。つまり、本発明の実施形態は、複数の二次実施形態のまとめであることとして理解しうる。その上、各二次実施形態の内容は前記単独の実施形態の全ての特徴より少ない場合においても成立し得る。
【0090】
いくつかの実施形態において、本発明のいくつかの実施案において数量或いは性質を説明又は請求するための数値は、いくつかの状況において「約」、「近似的」又は「基本的」などの専門用語に修飾されるものであると理解されたい。
【0091】
例えば、別段の説明がない限り、「約」、「近似的」又は「基本的」は説明される値の±20%変動を表すことができる。従って、いくつかの実施形態において、記述された説明および送付される請求項に例記される数値やパラメーターはであっても良く、特定なる実施案が求めようとする需要や性質によって変更されることはできる。いくつかの実施形態において、数値やパラメーターは報告される有効数字の数量によってさらに普通の丸め技術に適用されてから解釈するべきものである。本発明のいくつかの実施形態を説明するため、近似値である広い数値範囲およびパラメーターが羅列されるにも関わらず、具体的な実施例においてできるだけ精確な数値は提供された。
【0092】
本文が引用した各特許、特許出願、特許出願に関する出版物や他の資料、例えば文章、書籍、取説、出版物、ファイル、部品など、引用としてここで組み合わせることができる。この目的のための全ての内容は、それらに関するいかなる起訴履歴ファイルや、本発明に一致しない或いは食い違い内容を持ついかなる同一の起訴履歴ファイルや、或いは請求項の最大保護範囲に制限する影響を持ついかなる同一の起訴履歴ファイルなどを含まないこと。現在或いは今後の時点では、また本発明と関連しうると認識される。例えば、いかなる含まれる資料に関する専門用語への説明、定義および/または使用することは、本発明に関する専門用語への説明、定義および/または使用することにいかなる不一致や食い違いが存在する場合、本発明の専門用語を基準にする。
【0093】
最後として、本開示の実施形態は本発明に関する実施形態の原理的な説明に過ぎないことは理解されたい。他の変更された実施形態も本発明の請求範囲に含まれる。従って、本発明が開示した実施形態は制限するものではなく例示するものに過ぎない。当業者は本発明における実施形態を基いて代替構成を取って本発明を実現することはできる。従って、本発明の実施形態は本発明において精確に説明された実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0094】
100 音響設備
110 音波センサ
112 スマートテレビ
113 スマートオーディオ
120 信号処理回路
130 信号変換機
140 近接場音源、目標近接場音源
150 遠距離場音源、目標遠距離場音源
200 台座
210 第一音波モジュール
210 第一音波センサモジュール
211 第一音波センサ
212 位相調整回路
213 副帯域モジュール
220 第二音波モジュール
221 第二音波センサ
222 振幅調整回路
223 副帯域モジュール
230 回路
250 信号処理回路
251 信号合成回路
260 回路
270 信号増幅回路