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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20241212BHJP
   B60H 1/34 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B60H1/00 102Z
B60H1/00 101D
B60H1/00 101F
B60H1/00 102H
B60H1/00 102P
B60H1/34 631
B60H1/00 102K
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022580591
(86)(22)【出願日】2022-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2022004179
(87)【国際公開番号】W WO2022172845
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2024-02-29
(31)【優先権主張番号】P 2021020006
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸央
(72)【発明者】
【氏名】林 直人
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-117018(JP,A)
【文献】特開昭58-218420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
B60H 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に配置される車両用空調装置(10;10A)であって、
内部に空気の流路(50)が形成されているケース(40)と、
前記流路(50)に配置され空気を冷却するエバポレータ(23)と、
前記エバポレータ(23)を通過した空気を加熱するヒータ(24;84)と、
前記流路(50)を仕切って前記ヒータ(24;84)を通過した空気を第1流路(51)と第2流路(52)とに分流可能な仕切壁(25)と、
前記第1流路(51)に設けられ、この第1流路(51)内を流れる空気の温度を調節するための第1温度調節手段(26)と、
前記第2流路(52)に設けられ、この第2流路(52)内を流れる空気の温度を調節するための第2温度調節手段(27)と、
前記ケース(40)に形成されて前記第1流路(51)を流れた空気を吹き出す第1吹出口(42,43,47;49)と、
前記第1吹出口(42,43,47;49)から吹き出る空気の量を調整可能な第1開閉ドア(32,33,37;39)と、
前記ケース(40)に形成されて前記第2流路(52)を流れた空気を吹き出す第2吹出口(44~46,48)と、
前記第2吹出口(44~46,48)から吹き出る空気の量を調整可能な第2開閉ドア(34~36,38)と、を有し、
前記第1開閉ドア(32,33,37;39)は、前記第1吹出口(42,43,47;49)を閉塞可能であり、
前記第2開閉ドア(34~36,38)は、前記第2吹出口(44~46,48)を閉塞可能であり、
前記ケース(40)には、前記第1流路(51)及び前記第2流路(52)の両方に臨む部位にケース穴部(41)が設けられ、
このケース穴部(41)には、当該ケース穴部(41)から流出する流出空気を用いて車室内の空気を吸引するとともに前記流出空気と吸引された車室内の空気を流出するアスピレータ(60)が設置されている車両用空調装置。
【請求項2】
前記ケース穴部(41)は、前記ケース(40)の上面(40b)に設けられている、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記第1流路(51)は、車室の前席に送風するための空気が流れる第1前席用流路(50)と、車室の後席に送風するための空気が流れる第1後席用流路(50)と、を有し、
前記第2流路(52)は、車室の前席に送風するための空気が流れる第2前席用流路(50)と、車室の後席に送風するための空気が流れる第2後席用流路(50)と、を有し、
前記ケース穴部(41)は、前記第1前席用流路(50)及び前記第2前席用流路(5に臨んで設けられている、請求項1又は請求項2に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の温度等を調節するための車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの車両には、車室内の温度等を調節するために車両用空調装置が搭載されている。車両用空調装置に関する従来技術として、特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に開示された車両用空調装置は、ケースの内部に形成されている流路に仕切壁を設けることによって第1流路と第2流路とに分け、これらの流路にそれぞれ温度を調節するための温度調節手段を設けている。また、それぞれの流路の吹出口に、吹出口からの空気の吹出量を調節するための開閉ドアを設けている。これらにより、吹出口から吹き出される空気の温度及び吹出量を、座席ごとに調節可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-296717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された車両用空調装置において、例えば、第2流路の吹出口のみを開放し、第1流路の吹出口を閉じることがある。この場合には、第1流路にほとんど空気が流れないため、ヒータ周辺に熱が篭ることとなる。篭った熱によって、ケース等が劣化する虞がある。熱による影響を軽減することができれば、車両用空調装置の製品寿命を長くすることができる。
【0006】
本発明は、製品寿命の長い車両用空調装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の説明では、本発明の理解を容易にするために添付図面中の参照符号を括弧書きで付記するが、それによって本発明は図示の形態に限定されるものではない。
【0008】
本発明によれば、車室内に配置される車両用空調装置(10;10A)であって、
内部に空気の流路(50)が形成されているケース(40)と、
前記流路(50)に配置され空気を冷却するエバポレータ(23)と、
前記エバポレータ(23)を通過した空気を加熱するヒータ(24;84)と、
前記流路(50)を仕切って前記ヒータ(24;84)を通過した空気を第1流路(51)と第2流路(52)とに分流可能な仕切壁(25)と、
前記第1流路(51)に設けられ、この第1流路(51)内を流れる空気の温度を調節するための第1温度調節手段(26)と、
前記第2流路(52)に設けられ、この第2流路(52)内を流れる空気の温度を調節するための第2温度調節手段(27)と、
前記ケース(40)に形成されて前記第1流路(51)を流れた空気を吹き出す第1吹出口(42,43,47;49)と、
前記第1吹出口(42,43,47;49)から吹き出る空気の量を調整可能な第1開閉ドア(32,33,37;39)と、
前記ケース(40)に形成されて前記第2流路(52)を流れた空気を吹き出す第2吹出口(44~46,48)と、
前記第2吹出口(44~46,48)から吹き出る空気の量を調整可能な第2開閉ドア(34~36,38)と、を有し、
前記第1開閉ドア(32,33,37;39)は、前記第1吹出口(42,43,47;49)を閉塞可能であり、
前記第2開閉ドア(34~36,38)は、前記第2吹出口(44~46,48)を閉塞可能であり、
前記ケース(40)には、前記第1流路(51)及び前記第2流路(52)の両方に臨む部位にケース穴部(41)が設けられ、
このケース穴部(41)には、当該ケース穴部(41)から流出する流出空気を用いて車室内の空気を吸引するとともに前記流出空気と吸引された車室内の空気を流出するアスピレータ(60)が設置されている車両用空調装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、製品寿命の長い車両用空調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1による車両用空調装置の斜視図である。
図2図1に示された車両用空調装置の模式図である。
図3図1に示されたアスピレータの斜視図である。
図4図4Aは、図3に示されたアスピレータの断面図、図4Bは、図4Aの4B-4B線断面図である。
図5】実施例2による車両用空調装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。図中Frは前、Rrは後、Leは左、Riは右、Upは上、Dnは下を示している。
【0012】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、説明中、左右とは車両用空調装置の搭載される車両の乗員を基準として左右、前後とは車両の進行方向を基準として前後を指す。図中Frは前、Rrは後、Leは左、Riは右、Upは上、Dnは下を示している。
【0013】
<実施例1>
図1及び図2を参照する。車室Vi内の温度等を調節する車両用空調装置10(以下、「空調装置10」と略記する。)は、例えば、乗用車に搭載される。空調装置10は、車室Vi内の前方で、概ね左右方向に延びるよう配置されている。
【0014】
車室Vi内には、空調装置10の他に、乗員が着座するシートS1~S4が設けられている。シートS1~S4は、それぞれ、前列左側に配置されている前左部シートS1(前席S1)、前列右側に配置されている前右部シートS2、前左部シートS1の後方に配置されている後左部シートS3、前右部シートS2の後方に配置されている後右部シートS4、である。
【0015】
空調装置10は、それぞれのシートS1~S4に向かって送風を行うことができる。また、空調装置10は、左側のシートS1、S3と、右側のシートS2、S4とで異なる温度の空気を送ることができる。空調装置10の詳細について、以下説明する。
【0016】
図2を参照する。空調装置10は、吸い込んだ空気を送風する送風部11と、この送風部11から送風された空気の温度調節を行い車室内に吐出する温調部20と、を有する。
【0017】
送風部11には、インペラ11a及び図示しないモータが収納されている。モータの駆動によってインペラ11aが回転し、車室内及び/又は車室外の空気が、送風部11内に吸い込まれる。送風部11に吸い込まれた空気は、空気の流れ方向を基準として、下流側に配置されている温調部20の前部に供給される。以下、単に「上流」、「下流」といった場合には、空気の流れ方向を基準とする。
【0018】
図2を参照する。温調部20は、送風部11(図1参照)に接続され内部に空気の流路50が形成されているケース40と、流路50上に配置され空気を冷却するエバポレータ23と、このエバポレータ23の下流に設けられエバポレータ23を通過した空気を加熱するヒータ24と、このヒータ24を通過した空気を第1流路51と第2流路52とに分流可能な仕切壁25と、第1流路51に設けられ、この第1流路51内を流れる空気の温度を調節するための第1温度調節手段26と、第2流路52に設けられ、この第2流路52内を流れる空気の温度を調節するための第2温度調節手段27と、ケース40に開けられているケース穴部41に臨みケース穴部41から流出する流出空気を用いて車室Vi内の空気を吸引するアスピレータ60と、を有する。
【0019】
ケース40は、ポリプロピレンなどの樹脂材を射出成型して製造され、第1流路51の下流に形成され前左部シートS1に着座する乗員の上半身に送風する第1ベント吹出口42と、第1流路51の下流に形成され前左部シートS1に着座する乗員の足に送風する第1フット吹出口43、第2流路52の下流に形成され前右部シートS2に着座する乗員の上半身に送風する第2ベント吹出口44と、第2流路52の下流に形成され前右部シートS2に着座する乗員の足に送風する第2フット吹出口45と、第2流路52からフロントガラスに向かって送風を行いフロントガラスの曇りを抑制するためのデフロスタ吹出口46と、第1流路51の下流に形成され後左部シートS3に着座する乗員に送風する第1後部吹出口47と、第2流路52の下流に形成され後右部シートS4に着座する乗員に送風する第2後部吹出口48と、を有する。
【0020】
第1ベント吹出口42、第1フット吹出口43、及び、第1後部吹出口47は、共に第1流路51に臨んでいる点で共通している。以下、第1ベント吹出口42、第1フット吹出口43、及び、第1後部吹出口47を、まとめて第1吹出口42、43、47ということがある。
【0021】
第2ベント吹出口44、第2フット吹出口45、デフロスタ吹出口46、及び、第2後部吹出口48は、共に第2流路52に臨んでいる点で共通している。以下、第2ベント吹出口44、第2フット吹出口45、デフロスタ吹出口46、及び、第2後部吹出口48を、まとめて第2吹出口44~46、48ということがある。
【0022】
なお、デフロスタ吹出口46は、第1流路51に臨むよう形成することも可能である。この場合、デフロスタ吹出口46は、第1吹出口に含まれる。
【0023】
第1ベント吹出口42に臨む部位には、第1ベント吹出口42から吹き出る空気の量を調整可能な第1ベント開閉ドア32(第1開閉ドア32)が設けられている。第1フット吹出口43に臨む部位には、第1フット吹出口43から吹き出る空気の量を調整可能な第1フット開閉ドア33(第1開閉ドア33)が設けられている。
【0024】
第2ベント吹出口44に臨む部位には、第2ベント吹出口44から吹き出る空気の量を調整可能な第2ベント開閉ドア34(第2開閉ドア34)が設けられている。第2フット吹出口45に臨む部位には、第2フット吹出口45から吹き出る空気の量を調整可能な第2フット開閉ドア35が設けられている。デフロスタ吹出口46に臨む部位には、デフロスタ吹出口46から吹き出る空気の量を調整可能なデフロスタ開閉ドア36(第2開閉ドア36)が設けられている。
【0025】
第1後部吹出口47に臨む部位には、第1後部吹出口47から吹き出る空気の量を調整可能な第1後部開閉ドア37(第1開閉ドア37)が設けられている。第2後部吹出口48に臨む部位には、第2後部吹出口48から吹き出る空気の量を調整可能な第2後部開閉ドア38(第2開閉ドア38)が設けられている。
【0026】
第1ベント開閉ドア32、第1フット開閉ドア33、及び、第1後部開閉ドア37は、共に第1吹出口42、43、47に臨む開閉ドアである点で共通している。以下、第1ベント開閉ドア32、第1フット開閉ドア33、及び、第1後部開閉ドア37を、まとめて第1開閉ドア32、33、37ということがある。
【0027】
第2ベント開閉ドア34、第2フット開閉ドア35、デフロスタ開閉ドア36、及び、第2後部開閉ドア38は、共に第2吹出口44~46、48に臨む開閉ドアである点で共通している。以下、第2ベント開閉ドア34、第2フット開閉ドア35、デフロスタ開閉ドア36、及び、第2後部開閉ドア38を、まとめて第2開閉ドア34~36、38ということがある。
【0028】
なお、前述のとおりデフロスタ吹出口46は、第1流路51に臨むよう形成することも可能である。このとき、デフロスタ開閉ドア36は、第1吹出口を開閉する第1開閉ドアに含まれる。
【0029】
第1後部吹出口47から後左部シートS3に向かって、後左部シートS3に着座する乗員に送風するための第1ダクトD1が延びている。また、第2後部吹出口48から後右部シートS4に向かって、後右部シートS4に着座する乗員に送風するための第2ダクトD2が延びている。
【0030】
なお、ダクトD1、D2の先端が臨む位置は、Bピラーやセンターコンソールの後端等、適宜設定することができる。また、ダクトD1、D2をさらに分岐させ、空調装置10の運転モードによって通過する部位を切り替えることもできる。また、分岐させたダクトをそれぞれ異なる位置に臨ませることもできる。
【0031】
ケース40は、複数の樹脂成形品が組み合わされてなる。ケース40のうち、第1流路51に臨んでいると共に、仕切壁25に対向している部位を対向壁部40aという。
【0032】
ケース40の内部に形成されている第1流路51は、前左部シートS1に送風するための空気が流れる第1前席用流路51aと、この第1前席用流路51aから分岐し後左部シートS3に送風するための空気が流れる第1後席用流路51bと、を有する。
【0033】
第2流路52は、前右部シートS2に送風するための空気が流れる第2前席用流路52aと、この第2前席用流路52aから分岐し後右部シートS4に送風するための空気が流れる第2後席用流路52bと、を有する。
【0034】
ケース40の上面40b(図1参照)に形成されているケース穴部41は、仕切壁25を跨いで第1流路51と第2流路52の両方に臨むよう形成されている。より詳細には、ケース穴部41は、第1前席用流路51a及び第2前席用流路52aに臨んで設けられている。
【0035】
エバポレータ23は、第1流路51の上流側の端部、及び、第2流路52の上流側の端部を覆うように1つ設けられている。エバポレータ23には、冷媒が流され、エバポレータ23を通過する空気は、冷媒との熱交換によって冷却される。
【0036】
ヒータ24は、温水が流される温水ヒータ24aと、通電することにより発熱する電気ヒータ24bと、からなる。温水ヒータ24a、及び、電気ヒータ24bは、共に仕切壁25を貫通するようにして設けられ、第1流路51、及び、第2流路52の両方に臨んでいる。
【0037】
電気ヒータ24bには、通電されることで高温(例えば、180℃程度)になる発熱素子が装着されている。発熱素子は、電力が印加されたとき、第1流路51や第2流路52の空気の通流状態に関わらず、発熱する。
【0038】
仕切壁25は、エバポレータ23の後面に隣接する部位から後方に向かって延びている。なお、仕切壁25の上流側の端部と、エバポレータ23との間に隙間があっても良い。
【0039】
第1温度調節手段26は、第1流路51内にスイング可能に設けられた、片持ち式のエアミックスドアである。乗員が温度を設定すると図示しないモータが作動し、第1温度調節手段26をスイングさせる。第1温度調節手段26がスイングすることにより、ヒータ24に向かう空気とヒータ24を迂回する空気の割合を調整し、これにより温度を調整する。図に示される状態において、エバポレータ23を通過した空気は、全てヒータ24を通過する。なお、図示しないが、第1温度調節手段26は、片持ち式ドアに代えて、周知のスライド式ドアであっても良い。
【0040】
第2温度調節手段27も、第1温度調節手段26と同様である。つまり、第2温度調節手段27は、第2流路52内にスイング可能に設けられた、片持ち式のエアミックスドアである。乗員が温度を設定すると図示しないモータが作動し、第2温度調節手段27をスイングさせる。第2温度調節手段27がスイングすることにより、ヒータ24に向かう空気とヒータ24を迂回する空気の割合を調整し、これにより温度を調整する。図に示される状態において、エバポレータ23を通過した空気は、全てヒータ24を通過する。なお、図示しないが、第2温度調節手段27は、片持ち式ドアに代えて、周知のスライド式ドアであっても良い。
【0041】
第1ベント開閉ドア32は、乗員が運転モードを切り替えることにより、図示しないモータが作動し、第1ベント開閉ドア32を回転させる。第1ベント開閉ドア32が回転することにより第1ベント吹出口42からの空気の吹き出しが許容され、又は、規制される。図に示す状態において、第1ベント開閉ドア32は、第1ベント吹出口42を閉じている。前左部シートS1の運転モードが冷房モードとなることにより、第1ベント開閉ドア32は、略90°回転し、第1ベント吹出口42を開放する。
【0042】
その他の開閉ドア33~38についても、運転モードによって所定の位置に回転される構成とされている。例えば、第1フット開閉ドア33は、前左部シートS1の運転モードが暖房モードとなることにより、第1フット吹出口43を開放する。また、デフロスタ開閉ドア36は、フロントガラスの曇りを除去するためのデフロスタモードとなることにより、デフロスタ吹出口46を開放する。
【0043】
図に示す状態において、第2フット吹出口45とデフロスタ吹出口46は、開放されている。第1フット吹出口43、第2ベント吹出口44、第1後部吹出口47、第2後部吹出口48は、閉じられている。
【0044】
図1に示されるように、アスピレータ60は、ケース40の上面40bに設けられている。図3及び図4Aを参照する。アスピレータ60は、ケース穴部41に差し込まれケース40内の空気が流れ込むアスピレータ本体部61と、このアスピレータ本体部61の先端からケース40の上面40bに沿って延びアスピレータ本体部61を通過した空気を吐出するディフューザ62と、アスピレータ本体部61に差し込まれている略筒状のノズル63と、を有する。
【0045】
ノズル63の末端には、チューブ71の先端が接続されており、このチューブ71の末端は、車室Viに臨んでいる。チューブ71の内部には、車室Vi内の温度を検知するための温度センサ72が設けられている。
【0046】
図4A、及び、図4Bを参照する。アスピレータ本体部61(ケース穴部41)を上方から覗き込むと、仕切壁25によって、流路50が第1前席用流路51aと第2前席用流路52aとに仕切られていることを視認できる。第1流路51及び第2流路52の両方に臨む部位にケース穴部41が設けられている、ということもできる。
【0047】
ケース40内の空気の一部は、ケース穴部41からアスピレータ本体部61に流れ、ディフューザ62から外部へ流出する。このとき、ケース40内から流出した流出空気の流れによって、ノズル63の先端に負圧が発生する。発生した負圧によって車室Vi内の空気を吸引する。吸引された空気は、チューブ71、及び、ノズル63を通過して、ディフューザ62から外部に流出する。チューブ71の内部には、温度センサ72が設けられており、チューブ71を通過する空気の温度から車室Vi内の温度を検知することができる。
【0048】
温度センサ72により検知された車室Viの温度(車室内空気の温度)は、図示しない制御装置に入力され、他の温度センサや装置から入力された物理量とともに演算されて、空調装置10の温度制御に反映される。
【0049】
以上に説明した空調装置10は、以下の効果を奏する。
【0050】
図2及び図4を参照する。送風部11によって流路50に送風された空気は、エバポレータ23を通過し、第1流路51と第2流路52に流入する。暖房モードのとき、温水ヒータ24aには温水が通流され、電気ヒータ24bには電力が印加される。例えば、第1開閉ドア32、33、37によって第1吹出口42、43、47が閉塞され、第2開閉ドア34~36、38によって第2吹出口44~46、48のいずれかが解放される吹出モードが選択されることがある。このとき、第2流路52に流入した空気は、ヒータ24(温水ヒータ24aと電気ヒータ24b)により加熱されて温風となり、第2吹出口44~46、48のいずれかから車室Viへと吹き出される。また、第1流路51に流入した空気はヒータ24(温水ヒータ24aと電気ヒータ24b)により加熱されて温風となるが、第1吹出口42、43、47から車室Viに吹き出されることが阻止され、第1流路51に篭る。特に、第1流路51に篭った空気は、電気ヒータ24bの発熱素子によって過剰に加熱されるおそれがある。第2開閉ドア34~36、38によって第2吹出口44~46、48が閉塞され、第1開閉ドア32、33、37によって第1吹出口42、43、47のいずれかが解放される吹出モードが選択された場合には、第2流路52に熱が篭る。
【0051】
しかしながら、この実施例では、第1流路51及び第2流路52の両方に臨む部位に設けられたケース穴部41およびアスピレータ60を介して第1流路51及び第2流路52の空気が車室Vi内に流出することで、ヒータ24周縁の熱が第1流路51及び第2流路52に滞留することを抑制することができる。熱が篭ることにより生じるケース40等への熱による影響を軽減することができ、製品寿命の長い空調装置10を提供することができる。
特に、本発明によれば、どちらの流路51、52が閉じられている場合にも熱の滞留を抑制することができ、特に好ましい。
【0052】
高温の空気は周囲の空気よりも相対質量が低く上昇するところ、第1流路51の上方に集合する傾向がある。ここで、ケース40の上面40bにケース穴部41が形成されることにより、特に高温の空気を外部へ放出しやすくなる。効率的に熱の滞留を抑制することができる。
【0053】
また、空調装置10は空気の吹出量について、一般に、後席S3、S4よりも前席S1、S2の方に多く吹き出すよう設定され、前席用流路51a、52aの方が後席流路51b、52bよりも空間容積も大きい。ケース穴部41を前席用流路51a、52aに臨むように設けることで、大きな容積の空間に高温の空気が滞留することを防止し、空調装置10全体として熱の滞留を効果的に抑制することができる。
【0054】
<実施例2>
次に、実施例2による空調装置10Aを図面に基づいて説明する。
【0055】
図5には、実施例2による空調装置10Aが模式的に示されている。実施例2による空調装置10Aの温調部20Aは、第1流路51が右側に配置され、第2流路52が左側に配置されている。さらに、空調装置10Aは、後部座席への吹出口を有しない。また、デフロスタ吹出口49(第1吹出口49)、及び、デフロスタ開閉ドア39(第1開閉ドア39)は、第1流路51に設けられている。また、ヒータ84は、温水ヒータのみによって構成され、電気ヒータを有しない。
【0056】
その他の基本的な構成については、実施例1による空調装置10(図2参照)と共通する。実施例1と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0057】
以上に説明した空調装置10Aも本発明所定の効果を奏する。
【0058】
なお、本発明による空調装置は、各実施例に示したものに限られるものではない。例えば、各実施例を組み合わせることも可能である。図2に示した空調装置のヒータを、温水式のヒータのみによって構成することや、図5に示した空調装置に後席への吹出口を設けることも可能である。
【0059】
本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の空調装置は、乗用車両に搭載するのに好適である。
【符号の説明】
【0061】
10、10A…車両用空調装置
23…エバポレータ
24、84…ヒータ
25…仕切壁
26…第1温度調節手段
27…第2温度調節手段
32…第1ベント開閉ドア(第1開閉ドア)
33…第1フット開閉ドア(第1開閉ドア)
34…第2ベント開閉ドア(第2開閉ドア)
35…第2フット開閉ドア(第2開閉ドア)
36…デフロスタ開閉ドア(第2開閉ドア)
37…第1後部開閉ドア(第1開閉ドア)
38…第2後部開閉ドア(第2開閉ドア)
39…デフロスタ開閉ドア(第1開閉ドア)
40…ケース、40b…上面
41…ケース穴部
42…第1ベント吹出口(第1吹出口)
43…第1フット吹出口(第1吹出口)
44…第2ベント吹出口(第2吹出口)
45…第2フット吹出口(第2吹出口)
46…デフロスタ吹出口(第2吹出口)
47…第1後部吹出口(第1吹出口)
48…第2後部吹出口(第2吹出口)
49…デフロスタ吹出口(第1吹出口)
50…流路
51…第1流路、51a…第1前席用流路、51b…第1後席用流路
52…第2流路、52a…第2前席用流路、52b…第2後席用流路
60…アスピレータ
Vi…車室
S1…前左部シート(前席)
S2…前右部シート(前席)
S3…後左部シート(後席)
S4…後右部シート(後席)
図1
図2
図3
図4
図5