(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】がい管ユニット、ケーブル終端接続部及び機器用ブッシング
(51)【国際特許分類】
H02G 15/064 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
H02G15/064
(21)【出願番号】P 2023013369
(22)【出願日】2023-01-31
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002255
【氏名又は名称】SWCC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 一輝
(72)【発明者】
【氏名】今西 晋
(72)【発明者】
【氏名】阿部 成将
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-080338(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0182878(US,A1)
【文献】特開2011-101582(JP,A)
【文献】特開2012-050187(JP,A)
【文献】特開2015-171170(JP,A)
【文献】特開2021-128934(JP,A)
【文献】米国特許第09048652(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/064
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に笠部が形成されているがい管と、
前記がい管内に配置される絶縁ユニットと、
前記絶縁ユニットを取り囲むように前記がい管内に配置されるゲル状又は固体の絶縁性媒体と、を備え、
前記がい管内における前記絶縁性媒体の先端側の内部空間によって、前記絶縁性媒体と前記内部空間との界面が形成されており、
前記界面の内周縁は、前記絶縁ユニットから引き出された中心導体と接触し、
前記絶縁性媒体は、前記中心導体から径方向の外側に向かうにつれて、前記界面の界面高さが低くなるように形成されている、
がい管ユニット。
【請求項2】
前記界面高さは、前記中心導体から前記径方向の外側に向かうにつれて、単調減少する、
請求項1に記載のがい管ユニット。
【請求項3】
前記界面は、後端側に向かって直線的に拡径するテーパー形状を有する、
請求項2に記載のがい管ユニット。
【請求項4】
前記界面と前記中心導体との前記絶縁性媒体側のなす角は、10°以上80°以下である、
請求項3に記載のがい管ユニット。
【請求項5】
前記がい管は、少なくとも、外周面に前記笠部が形成されているがい管本体を有し、
前記絶縁性媒体の高さは、前記がい管本体の後端側の端部を基準として、絶縁有効長の60%以上80%以下である、
請求項4に記載のがい管ユニット。
【請求項6】
前記絶縁性媒体は、シリコーンゲル又はシリコーンゴムである、
請求項1に記載のがい管ユニット。
【請求項7】
請求項1に記載のがい管ユニットを備えるケーブル終端接続部であって、
前記絶縁ユニットは、少なくとも、内部導体と、前記内部導体の外周に一体的に設けられる絶縁套管本体とを有し、
前記絶縁ユニットの後端側には、前記がい管ユニットに取り付けられるケーブルのケーブル端末部が接続され、
前記内部導体の後端側と前記ケーブルのケーブル導体とが電気的に接続される、
ケーブル終端接続部。
【請求項8】
請求項1に記載のがい管ユニットを備える機器用貫通ブッシングであって、
前記絶縁ユニットは、少なくとも、内部導体と、前記内部導体の外周に一体的に設けられる絶縁套管本体とを有し、
前記絶縁ユニットの後端側には、後端側に向かって縮径する形状を有し、機器内に配置されるヘッド部が配置されており、
前記内部導体は、前記ヘッド部から貫通して突出する構造を有する、
機器用ブッシング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がい管ユニット、ケーブル終端接続部及び機器用ブッシングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力ケーブルの終端に設けられるケーブル終端接続部として、がい管により気中絶縁を行う気中終端接続部が知られている(例えば、特許文献1~3参照)。気中終端接続部では、一般に、がい管内に絶縁油(例えば、シリコーンオイル)等の絶縁性媒体が封入される。特に、特許文献1~3等に開示の気中終端接続部では、絶縁性媒体として、ゲル状(ジェル状とも呼ばれる)に硬化した固体絶縁物が適用されている。本明細書では、がい管内に絶縁ユニットを配置し、絶縁性媒体を封入したユニットを「がい管ユニット」と称する。
【0003】
絶縁性媒体として固体絶縁物を適用する場合、絶縁性媒体が漏出する虞は少ないので、工場にてがい管ユニットを組み立てた上で施工現場まで輸送するのに、構造面では適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5804948号公報
【文献】特開2010-016986号公報
【文献】特許第5804684号公報
【文献】特許第5606252号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】昭和電線レビュー「66/77kVダイレクトモールド貫通ブッシングの開発・実用化」Vol.56、No.1(2006)15~19頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、固体絶縁物を適用したがい管ユニットは、輸送する際に重量面では不利となる。また、一定の絶縁性能を確保するためには、一定の高さで固体絶縁物を形成する必要があり、固体絶縁物とがい管内空間との界面の位置(固体絶縁物の高さ)を単純に低くすると、絶縁性能の低下を招く虞がある。
【0007】
本発明の目的は、絶縁性能を確保しつつ、軽量化を図ることができるがい管ユニット、ケーブル終端接続部及び機器用ブッシングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るがい管ユニットは、
外周面に笠部が形成されているがい管と、
前記がい管内に配置される絶縁ユニットと、
前記絶縁ユニットを取り囲むように前記がい管内に配置されるゲル状又は固体の絶縁性媒体と、を備え、
前記がい管内における前記絶縁性媒体の先端側の内部空間によって、前記絶縁性媒体と前記内部空間との界面が形成されており、
前記界面の内周縁は、前記絶縁ユニットから引き出された中心導体と接触し、
前記絶縁性媒体は、前記中心導体から径方向の外側に向かうにつれて、前記界面の界面高さが低くなるように形成されている。
【0009】
本発明に係るケーブル終端接続部は、
上記のがい管ユニットを備えるケーブル終端接続部であって、
前記絶縁ユニットは、少なくとも、内部導体と、前記内部導体の外周に一体的に設けられる絶縁套管本体とを有し、
前記絶縁ユニットの後端側には、前記がい管ユニットに取り付けられるケーブルのケーブル端末部が接続され、
前記内部導体の後端側と前記ケーブルのケーブル導体とが電気的に接続される。
【0010】
本発明に係る機器用ブッシングは、
上記のがい管ユニットを備える機器用貫通ブッシングであって、
前記絶縁ユニットは、少なくとも、内部導体と、前記内部導体の外周に一体的に設けられる絶縁套管本体とを有し、
前記絶縁ユニットの後端側には、後端側に向かって縮径する形状を有し、機器内に配置されるヘッド部が配置されており、
前記内部導体は、前記ヘッド部から貫通して突出する構造を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、がい管ユニットの絶縁性能を確保しつつ、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係るケーブル接続部を示す断面図である。
【
図2】
図2は、絶縁性媒体の先端面近傍を拡大して示す模式図である。
【
図3】
図3は、界面角度と界面内周縁(トリプルジャンクション)における電界強度の関係の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、絶縁性媒体の高さと界面内周縁における電界強度の関係の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、絶縁性媒体の高さと界面中点における電界強度の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、実施の形態に係るがい管ユニット1を適用したケーブル終端接続部Aを示す断面図である。
【0015】
図1に示すように、ケーブル終端接続部Aは、がい管10、絶縁ユニット20、電界緩和部30、固定金具41、端末取付金具42、絶縁性媒体43及び導体引出棒44等を含むがい管ユニット1と、ケーブル端末部50を備える。以下において、導体引出棒44が引き出される側を「先端側」、ケーブル端末部50が装着される側を「後端側」として説明する。
【0016】
がい管10は、外周面に笠部11a(
図2A参照)が形成されているがい管本体11と、がい管本体11の先端側を密閉する上部金具12と、がい管本体11の後端側に一体的に設けられる下部金具13と、を有する。上部金具12の先端側は、上部保護金具14で覆われる。
【0017】
がい管本体11は、例えば、
図1のように、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)からなる筒体の外側に、シリコーンゴム等の高分子絶縁材料からなるポリマー被覆体を一体的に形成したポリマーがい管(複合がい管とも呼ばれる)であってもよいし、磁器がい管であってもよい。ケーブル終端接続部Aに要求される雷インパルス耐電圧を満たすように、がい管本体11の長さ、すなわち、絶縁有効長が設定される。
【0018】
絶縁ユニット20は、軸方向に延在する内部導体21と、内部導体21の外周面に配置される絶縁套管本体22と、絶縁套管本体22の外周面に形成される遮へい部23と、を有し、ケーブル終端接続部Aの補強絶縁部として機能する。内部導体21及び絶縁套管本体22は、モールド成型により一体的に形成される。遮へい部23は、例えば、絶縁套管本体22の外周面に、導電性塗料を塗布することにより形成される。
【0019】
内部導体21は、例えば銅、アルミニウム、銅合金又はアルミニウム合金等からなる通電に適した導電性材料で形成される。内部導体21の後端側の内周面は、絶縁套管本体22から露出しており、ケーブル導体511を電気的に接続するための導体挿入部21aが設けられている。内部導体21の先端側の端部は、絶縁套管本体22を貫通して、導体引出棒44に接続されている。
【0020】
絶縁套管本体22は、機械的強度の高い硬質プラスチック樹脂材料(例えば、エポキシ樹脂やFRP)で形成される。絶縁套管本体22の後端側には、ケーブル端末部50を受け入れるコーン状の端末挿入部22aが設けられている。端末挿入部22aは、内部導体21の導体挿入部21aに連通する。導体挿入部21a及び端末挿入部22aにより、ケーブル端末部50が装着されるケーブル受容部24が形成される。
【0021】
遮へい部23は、例えば、絶縁套管本体22の外周面に、絶縁ユニット20の後端側の大径部から先端側小径部の中間位置にわたって形成される。遮へい部23を設けることにより、内部導体21と遮へい部23との間で電界が集中することなく、絶縁套管本体22の内部電界が均一化され、電気特性の安定化が図られる。
【0022】
電界緩和部30は、先端側の絶縁部31と、後端側の導電部32と、を有する円筒状の弾性体にて形成される。絶縁部31は、後端側が導電部32と同心状に連設され、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPゴム)等の絶縁性ゴム材料で円筒状に形成される。
【0023】
導電部32は、先端側の端部に、先端側端部近傍の内周部から先端側に向かって緩やかに拡径ベルマウス形状に湾曲した形状を有する。また、導電部32は、例えば、半導電性のEPゴム等の半導電性ゴム材料で円筒状に形成されており、内周部の先端側の部分と、外周部の先端側から後端側近傍にかけての部分とで絶縁部31と連設されている。導電部32の内周部は、絶縁部31と一体化した先端側の部分以外は電界緩和部30の内周面として露出し、絶縁部31の内周面と連通している。絶縁部31と導電部32は、モールド成型により一体的に形成される。
【0024】
図1の実施の形態では、電界緩和部30の外形は、導電部32の後端側が露出した円筒形状であるが、外形形状は特に限定されない。なお、電界緩和部30は、絶縁ユニット20の先端側の小径部分の外周面に、導電部32の内周面と遮へい部23が導通するように重なり、かつ、遮へい部23の先端が導電部32の内周面から先端側にはみ出ないように配置される。電界緩和部30は、遮へい部23の先端における電界集中を抑制し、絶縁套管本体22にかかる電気的なストレスを緩和する。
【0025】
固定金具41は、絶縁ユニット20を貫通させるための開口を有するフランジ状の部材である。固定金具41は、がい管本体11の後端側に配置され、例えば、ボルト止めにより、がい管10の下部金具13と締結される。また、固定金具41の後端側には、支持がいし45が配置され、例えば、ボルト止めにより締結される。
【0026】
端末取付金具42は、絶縁ユニット20の後端部(大径部)の外周面に配置される有底円筒状の部材である。端末取付金具42の底部42aには、ケーブル端末部50を挿入するための開口42bが設けられている。端末取付金具42は、固定金具41の後端側に配置され、例えば、ボルト止めにより、固定金具41及び絶縁ユニット20と締結される。
【0027】
固定金具41及び端末取付金具42の内径は、絶縁ユニット20の後端部の外径と略同径である。固定金具41と絶縁ユニット20との間には、Oリング等のシール部材46が配置されている。固定金具41と絶縁ユニット20の間にシール部材46を介在させることにより、がい管本体11の内部を気密または液密に保持して絶縁性媒体43が漏出するのを防止できるとともに、がい管本体11に発生する曲げ応力を緩和することができる。シール部材46は、軸方向において所定間隔で複数設けられるのが好ましい。
【0028】
絶縁性媒体43は、がい管10(がい管本体11)内部の空間に封入される。具体的には、少なくともがい管10(がい管本体11)と絶縁ユニット20との間の空間に封入され、ケーブル終端接続部Aの主絶縁部の一部として機能する。絶縁性媒体43は、絶縁ユニット20を取り囲むようにがい管本体11内に配置されるゲル状又は固体の絶縁物である。絶縁性媒体43は、例えば、がい管10の内部(がい管本体11の内部)に流動性を有する絶縁材料を注入した後、硬化させることにより形成される。絶縁性媒体43は、例えば、シリコーンゲル又はシリコーンゴムである。「絶縁ユニット20を取り囲むように」とは、がい管10内において、少なくとも絶縁性媒体43を絶縁ユニット20の高さ以上に封入することを意味する。
【0029】
絶縁性媒体43は、がい管10内に、所定の高さhで封入される。本実施の形態では、がい管10(がい管本体11)と絶縁ユニット20との間の空間のほか、その上部のがい管10(がい管本体11)と導体引出棒44との間の空間の一部に、絶縁性媒体43が封入される。がい管10(がい管本体11)と導体引出棒44との間の空間に絶縁性媒体43が封入されることにより、絶縁性媒体43の先端側に、がい管10(がい管本体11)内の内部空間45が形成される。本実施の形態では、絶縁性媒体43と内部空間45との界面431(絶縁性媒体43の先端面)は、水平界面ではなく、テーパー形状などの所定の形状を有している。また、本実施の形態では、内部空間45は空気層で形成される。
【0030】
以下において、がい管本体11の後端側の端部(下部金具13の先端側の端部)を基準とする界面431の高さを「界面高さ」と称する。絶縁性媒体43と内部空間45との界面が水平界面の場合においては、絶縁性媒体43の界面高さは一定であるので、界面高さと絶縁性媒体43の高さhは同じである。一方、本実施の形態のように、絶縁性媒体43と内部空間45との界面が水平界面でない場合は、界面431上の位置によって界面高さが異なる。本実施の形態では、便宜上、絶縁性媒体43の界面内周縁P1(
図2参照)の界面高さを、絶縁性媒体43の高さhとして扱う。絶縁性媒体43の界面431の形状については、後述する。
【0031】
導体引出棒44は、一様な電界が生じる中心導体の一例であり、導体引出棒44の後端側の端部は、絶縁ユニット20の内部導体21に接続され、先端側の端部は、がい管10の上部金具12及び上部保護金具14を貫通して外部に引き出されている。導体引出棒44は、例えば、適切な導体接続部材を介して、絶縁ユニット20の内部導体21と連結される。
【0032】
また、導体引出棒44のがい管本体11内に配置される部分は、ケーブルの様な可とう性を有した導体で構成されてもよい。この場合、上部金具12及び上部保護金具14を貫通して外部に引き出される導体棒の後端側にケーブルの先端側が接続され、がい管本体11内に配置されている導体棒とケーブルを含む複数の部材で導体引出棒44が形成される。導体引出棒44のがい管10内に配置される部分をケーブルで構成することにより、がい管本体11に発生する曲げ応力を可とう性のあるケーブルが吸収し、内部の絶縁ユニット20に過剰な応力を生じさせないようにすることができる。また、絶縁被覆を被ったケーブルを適用することで、導体引出棒44の表面に生じる電界を抑制することができる。
【0033】
なお、絶縁ユニット20の内部導体21を長尺に形成して、内部導体21が上部金具12から引き出されるように構成されてもよい。この場合、内部導体21と導体引出棒44とが同一部材で形成され、内部導体21とは別部材の導体引出棒44は不要となり、内部導体が導体引出棒としても機能する。
【0034】
すなわち、本発明における「中心導体」は、導体引出棒44に限定されず、絶縁ユニット20を構成する内部導体21や導体引出棒44をケーブルで構成した場合のケーブル導体であってもよい。上述の内部導体21と導体引出棒44とが同一部材で形成される場合、当該同一部材は「中心導体」である。
【0035】
ケーブル端末部50は、電力ケーブル51の先端部に、導体接続端子52、ストレスコーン53、及び圧縮装置54等の接続材料が取り付けられて構成される。
【0036】
電力ケーブル51は、例えば、ゴム又はプラスチックで絶縁された275kV級の超高圧の電力ケーブルである。電力ケーブル51は、中心から順に、ケーブル導体511、ケーブル絶縁体512、ケーブル外部半導電層513、ケーブル遮へい層514及びケーブルシース515等を有する。ケーブル端末部50においては、電力ケーブル51の先端部から所定長で段剥ぎすることにより各層が露出される。
【0037】
ケーブル導体511の先端部には、圧縮により導体接続端子52が接続される。導体接続端子52は、例えば、銅、アルミニウム、銅合金又はアルミニウム合金等からなる通電に適した導電性材料で形成される。ケーブル絶縁体512からケーブル外部半導電層513の先端部にわたる外周面にはストレスコーン53が装着される。
【0038】
ストレスコーン53は、紡錘状に形成され、電界緩和部30と同様に、先端側の絶縁部(符号略)と、後端側の導電部(符号略)と、を有する。絶縁部は、例えば、EPゴム等の絶縁性ゴム材料で筒状に形成され、導電部は、例えば、半導電性のEPゴム等の半導電性ゴム材料で筒状に形成される。絶縁部と導電部は、モールド成型により一体的に形成される。
【0039】
ストレスコーン53の後端部(半導電部)は、電力ケーブル51のケーブル外部半導電層513に接続される。ストレスコーン53の後端部は、ケーブル終端接続部として所定の性能を有する限りにおいて、ケーブル外部半導電層513に直接接続されてもよいし、ケーブル外部半導電層513の端部にモールドや導電塗料で再生した外部半導電層の端部を介して接続されてもよい。ストレスコーン53の先端部(絶縁部)は、絶縁ユニット20のケーブル受容部24に対応する形状を有する。ストレスコーン53の後端側には、圧縮装置54及びケーブル保護金具55が装着される。
【0040】
圧縮装置54は、例えば、ストレスコーン53に当接する押し金具(符号略)と、ストレスコーン53に向けて押し金具を付勢するコイルスプリング(符号略)と、押し金具及びコイルスプリングを支持する押し金具フランジ(符号略)と、を有する。
【0041】
電力ケーブル51の先端部を段剥ぎした後、ケーブル保護金具55、圧縮装置54、ストレスコーン53が電力ケーブル51に挿通され、ケーブル導体511に導体接続端子52が取り付けられる。そして、ケーブル端末部50の先端部を絶縁ユニット20のケーブル受容部24に挿入し、圧縮装置54のコイルスプリングを圧縮させながら、押し金具フランジを端末取付金具42の底部42aにボルト止めし、ケーブル保護金具55を押し金具フランジにボルト止めすることにより、ケーブル受容部24にケーブル端末部50が装着される。
【0042】
ストレスコーン53の先端部は絶縁套管本体22の内面に押し付けられ、導体接続端子52は内部導体21の導体挿入部21aと電気的に接続される。また、ケーブル保護金具55の後端部には、防水のための防食層(符号略)が配置される。このように、ケーブル終端接続部Aは、プラグイン接続により、比較的簡単な作業で組み立てることができる。
【0043】
従来のがい管ユニット(例えば、特許文献1参照)では、がい管内に封入された絶縁性媒体とがい管内部空間との界面は、軸方向に対して直交する水平界面である。これに対して、本実施の形態では、絶縁性媒体43の界面431が、軸方向に沿って配置される導体引出棒44に対して傾斜して形成されている。
【0044】
図2は、絶縁性媒体43の先端面(絶縁性媒体43と内部空間45との界面431)近傍を拡大して示す模式図である。
【0045】
図2に示すように、絶縁性媒体43と内部空間45との界面431において、導体引出棒44と接する界面内周縁P1の界面高さは、がい管本体11と接する界面外周縁P2の界面高さよりも高い。つまり、絶縁性媒体43は、径方向の外側に向かうにつれて、界面高さが低くなるように形成されている。界面内周縁P1は、絶縁性媒体43、導体引出棒44及び内部空間45が接することから、「トリプルジャンクション」と呼ばれる。
【0046】
例えば、がい管10の内部(がい管本体11の内部)に流動性を有する絶縁材料を注入した後、当該絶縁材料の先端面に押し型を当接させ、加圧しながら硬化させることにより、絶縁性媒体43の先端面、すなわち絶縁性媒体43と内部空間45との界面431を、押し型の当接面に応じた所定形状に形成することができる。
【0047】
径方向の外側に向かうにつれて、界面高さが低くなるように絶縁性媒体43を形成することにより、絶縁性媒体43と内部空間45との界面431が水平界面の場合(
図2の破線参照)に比較して、界面431における電界強度(特に、トリプルジャンクションの電界強度)が低減する。したがって、所望の絶縁強度を実現するための絶縁性媒体43の封入量を水平界面の場合に比較して低減することができ、がい管ユニット1の軽量化を図ることができる。
【0048】
好ましくは、絶縁性媒体43の界面高さは、導体引出棒44から径方向の外側に向かうにつれて、単調減少する。「界面高さが単調減少する」とは、典型的には、界面431の形状が、
図2に示すように、界面内周縁P1を最大値として導体引出棒44から径方向の外側に向かうにつれて直線的に減少する関数を、導体引出棒44の周りに回転させた回転体の表面で形成され、界面431が後端側に向かって直線的に拡径するテーパー形状であることを意味する。また、界面431の形状は、界面内周縁P1を最大値として導体引出棒44から径方向の外側に向かうにつれて曲線的に減少する上に凸又は下に凸の関数を、導体引出棒44の周りに回転させた回転体の表面で形成され、界面431が先端側に曲面状に膨らむ形状又は後端側に曲面状に凹む形状であってもよい。
図2に示すように、界面431がテーパー形状を有する場合の導体引出棒44と界面431のなす角θを「界面角度θ」と称する。導体引出棒44と界面431のなす角は、先端側(内部空間45側)と後端側(絶縁性媒体43側)があるが、界面角度θは、絶縁性媒体43側(後端側)の角度を指す。
【0049】
以下に、径方向の外側に向かうにつれて、界面高さが低くなるように絶縁性媒体43を形成することによる有効性について説明する。
【0050】
図3は、界面角度θと界面内周縁P1(トリプルジャンクション)における電界強度の関係の一例を示す図である。
図3は、界面431をテーパー形状に形成した場合について示している。また、
図3では、界面角度θが90°の水平界面の場合の電界強度を100%として、界面角度θに対する電界強度を百分率で示している。
【0051】
図3に示すように、界面角度θを90°より小さくすることにより、電界が最も集中する界面内周縁P1の電界強度を低減することができる。具体的には、界面角度θを10~60°とした場合に、電界強度を70%以下にすることができ、特に、界面強度θを45°とした場合に、電界強度を低減させる効果は最も高くなる。なお、
図3に示す傾向は、絶縁性媒体43の高さh(界面内周縁P1の界面高さ)に依存しないことが確認されている(例えば、
図4参照)。
【0052】
図4は、絶縁性媒体43の高さh(
図1参照)と界面内周縁P1における電界強度の関係の一例を示す図である。
図4では、界面角度45°で界面431をテーパー形状に形成した場合を“●”、界面角度が90°の水平界面の場合を“○”で示している。また、
図4では、絶縁性媒体43の高さhが絶縁有効長(がい管本体11の長さ)の75%である水平界面における界面内周縁P1の電界強度を100%として、絶縁性媒体43の高さhに対する電界強度を百分率で示している。
【0053】
図4より、界面431の界面角度を45°とした場合(“●”参照)、水平界面の場合(“○”参照)に比較して、絶縁性媒体43の高さhに関わらず、界面内周縁P1における電界強度を30~40%低減できることがわかる。
【0054】
図5は、絶縁性媒体43の高さh(
図1参照)と界面中点P3(
図2参照)における電界強度の一例を示す図である。
図5では、界面角度45°で界面431をテーパー形状に形成した場合を示している。また、
図5では、絶縁性媒体43の高さhが絶縁有効長の50%である場合の界面中点P3における電界強度を100%として、絶縁性媒体43の高さhに対する電界強度を百分率で示している。
【0055】
図5に示すように、絶縁性媒体43の高さhを高くすることで、電界強度を低減させる効果は高まる。一方で、絶縁性媒体43の高さhを高くすることは、絶縁性媒体43の封入量が増加することを意味し、がい管ユニット1の重量増を招く。所望の絶縁強度を確保しつつ、がい管ユニット1の軽量化を図るためには、絶縁性媒体43の高さhは、絶縁有効長の60%以上80%以下であることが好ましいといえる。なお、
図3、
図4及び
図5いずれの場合も、がい管10(がい管本体11)内の内部空間45は空気層である。
【0056】
上述したように、本実施の形態に係るケーブル終端接続部Aに適用したがい管10は、以下の特徴事項を単独で、又は、適宜組み合わせて備えている。
【0057】
すなわち、実施の形態に係るがい管ユニット1は、外周面に笠部11aが形成されているがい管10と、がい管10内に配置される絶縁ユニット20と、絶縁ユニット20を取り囲むようにがい管10内に配置されるゲル状又は固体の絶縁性媒体43と、を備える。がい管10内における絶縁性媒体43の先端側の内部空間45によって、絶縁性媒体43と内部空間45との界面431が形成されており、界面431の界面内周縁P1は、絶縁ユニット20から引き出された導体引出棒44(中心導体)と接触する。絶縁性媒体43は、導体引出棒44(中心導体)から径方向の外側に向かうにつれて、界面431の界面高さが低くなるように形成されている。
【0058】
がい管ユニット1によれば、界面431が水平に形成されている場合に比較して、界面431における電界強度(特に、トリプルジャンクションにおける電界強度)が低減するので、所望の絶縁強度を実現するための絶縁性媒体43の封入量を低減することができる。したがって、がい管ユニット1の軽量化を図ることができ、施工現場までの輸送に有利となる。また、がい管ユニット1の重量増加を抑制しつつ、高電圧に対応することができる。
【0059】
さらに、がい管ユニット1によれば、予め工場で絶縁性媒体43を封入してから施工現場に輸送することができるので、施工現場にてがい管ユニット1に絶縁性媒体43を封入する作業が不要となり、ケーブル終端接続部Aの工期を短縮することができる。また、絶縁性媒体43がゲル状又は固体であることにより、万が一がい管10が破損しても絶縁性媒体43の漏出を防止できるので、安全性が向上する。
【0060】
また、万が一、絶縁性媒体43が漏出した場合でも、絶縁性媒体43がゲル状又は固体であることにより、絶縁油を使用した場合に比較して土壌を汚染しないため、環境に配慮したクリーンエネルギー技術である。また、実施の形態のように、がい管ユニット1としてポリマーがい管を適用した場合は、磁器製のがい管に比較して耐震性に優れ災害に強い。したがって、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標である持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」、目標9「強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る」及び目標11「包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」に貢献することが可能となる。
【0061】
がい管ユニット1において、界面高さは、導体引出棒44(中心導体)から径方向の外側に向かうにつれて、単調減少する。これにより、がい管10内の電界分布が安定し、絶縁性能を高めることができる。
【0062】
がい管ユニット1において、界面431は、後端側に向かって直線的に拡径するテーパー形状を有する。これにより、界面431の形状が単純になるので、界面形状の品質が安定し、絶縁性能をさらに高めることができる。
【0063】
がい管ユニット1において、界面角度θ(界面431と導体引出棒44(中心導体)との絶縁性媒体43側のなす角)は、10°以上80°以下である。これにより、絶縁性媒体43の高さhに関わらず、電界強度を効果的に低減させることができる。
【0064】
より好ましくは、界面角度θは、30°以上60°以下である。これにより、より電界強度を効果的に低減させることができる。なお、これらの界面角度θは、界面431が後端側に向かって直線的に拡径するテーパー形状の場合を想定しているが、絶縁性媒体43の膨張・収縮等により、界面431の形状が、当該界面角度θをベースに、先端側に曲面状に膨らんだ場合、又は、後端側に曲面状に凹んだ場合も同様の効果を有すると考えられる。
【0065】
がい管ユニット1において、がい管10は、少なくとも、外周面に笠部11aが形成されているがい管本体11を有し、絶縁性媒体43の高さhは、がい管本体11の後端側の端部を基準として、絶縁有効長の60%以上80%以下である。これにより、所望の絶縁性能を確保しつつ、がい管ユニット1の軽量化を図ることができる。
【0066】
がい管ユニット1において、絶縁性媒体43は、シリコーンゲル又はシリコーンゴムである。これにより、既存の絶縁材料を用いて、絶縁性媒体43の界面431を容易に所定の形状に形成することができる。
【0067】
また、実施の形態に係るケーブル終端接続部Aは、がい管ユニット1を備えるケーブル終端接続部であって、絶縁ユニット20は、少なくとも、内部導体21と、内部導体21の外周に一体的に設けられる絶縁套管本体22とを有し、絶縁ユニット20の後端側には、がい管ユニット1に取り付けられる電力ケーブル51のケーブル端末部50が接続され、内部導体21の後端側と電力ケーブル51のケーブル導体511とが電気的に接続される。
【0068】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0069】
例えば、本実施の形態では、ケーブル端末部をストレスコーン及び圧縮装置等を有するインナーコーンタイプでプラグイン接続する場合について説明したが、ケーブル端末部と絶縁ユニットをゴムブロックで接続するアウターコーンタイプで接続してもよい。
【0070】
また、実施の形態では、本発明に係るがい管ユニットをケーブル終端接続部に適用した例について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、機器用ブッシング(「機器用貫通ブッシング」とも呼ばれる)などの気中部分等に適用してもよい。機器用ブッシングの機器側は油絶縁及び又はガス絶縁に対応可能な既知の形状を有し、変圧器用又はGIS(ガス絶縁開閉装置)用として使用することができる。
【0071】
機器用ブッシングに適用する場合は、がい管本体11内に配置される絶縁ユニットの絶縁套管本体の後端側が、受容部24のようなケーブル受容口の構造ではなく、機器内の油絶縁及び又はガス絶縁に耐え得るヘッド部を有する。ヘッド部は、先端側から後端側に向かって縮径する(言い換えれば、取り付ける機器の内部方向に向かって縮径する)部分を含む既知の形状で形成される(例えば、非特許文献1の
図1の貫通ブッシングの機器側形状や、特許文献4の
図1のフランジ部より下側の構造参照)。
【0072】
すなわち、本発明のがい管ユニットを機器用ブッシングに適用した場合、内部導体の後端側にはケーブル導体を接続するための導体挿入部を有さず、棒状の内部導体が絶縁套管本体の後端側のヘッド部から貫通して突出する構造となる。突出した内部導体の後端部は、棒状のままでもよいし、部分放電対策のためのシールド形状を有していてもよい。また、ヘッド部を電界緩和するための遮へい金具は適宜設けてもよい。
【0073】
また、実施の形態では、がい管10(がい管本体11)内の内部空間45は空気層として説明したが、本発明の効果を奏する限りは、絶縁ガスを封入してもよい。また、内部空間45内の圧力を調整してもよい。
【0074】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0075】
1 がい管ユニット
10 がい管
11 がい管本体
20 絶縁ユニット
21 内部導体
22 絶縁套管本体
43 絶縁性媒体
431 界面
A ケーブル終端接続部