(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】車両用ドア制御システム
(51)【国際特許分類】
E05F 15/611 20150101AFI20241212BHJP
E05F 15/622 20150101ALI20241212BHJP
E05F 15/40 20150101ALI20241212BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
E05F15/611
E05F15/622
E05F15/40
B60J5/00 K
(21)【出願番号】P 2023027663
(22)【出願日】2023-02-24
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 淳
(72)【発明者】
【氏名】西野 光典
(72)【発明者】
【氏名】金田 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】上倉 明
(72)【発明者】
【氏名】豊岡 凜樹
(72)【発明者】
【氏名】小野 誠
(72)【発明者】
【氏名】岸田 司
(72)【発明者】
【氏名】益田 晃次
(72)【発明者】
【氏名】片山 洋一
(72)【発明者】
【氏名】野村 晃司
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-235842(JP,A)
【文献】特開2004-156431(JP,A)
【文献】特開平11-170867(JP,A)
【文献】登録実用新案第3213911(JP,U)
【文献】特開2018-172014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00-15/79
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に対してスイング動作によって開閉可能なドアと、
前記ドアの開閉方向への移動を許容する開閉可能状態と、前記ドアの開方向への移動を禁止するとともに閉方向への移動を許容するホールド状態と、を切替可能なホールド部と、
前記ホールド部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記ドアが開いた状態で停止した場合に、前記ホールド部を前記ホールド状態にする
ことを特徴とする車両用ドア制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記ドアが開方向への移動中に停止した場合に、前記ホールド部を前記ホールド状態とし、
前記ドアが閉方向への移動中に停止した場合に、前記ホールド部を前記ホールド状態としない
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア制御システム。
【請求項3】
利用者によって操作可能な解除部を備え、
前記制御部は、前記解除部が操作された場合に、前記ホールド状態の前記ホールド部を前記開閉可能状態とする
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記解除部の操作によって前記ホールド部が前記開閉可能状態となった前記ドアが開方向への移動中に停止した場合に、前記ホールド部を前記ホールド状態とする
ことを特徴とする請求項3に記載の車両用ドア制御システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記ドアの開閉角度が所定角度以下の場合には、前記ホールド状態を禁止する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア制御システム。
【請求項6】
前記ドアを開閉駆動する駆動部を備え、
前記制御部は、前記駆動部を前記ホールド部として制御する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の車両用ドア制御システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記駆動部が前記ホールド状態の前記ドアに所定値以上の開方向への荷重が作用した場合に、前記駆動部の前記ホールド状態を解除する
ことを特徴とする請求項6に記載の車両用ドア制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも高齢者や障がい者や子供といった脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて車両の乗降性に関する開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。
【0003】
車両用のドアとして、特許文献1には、周辺検知センサが周囲の障害物を検知した場合に、電磁ブレーキ装置を作動させ、電磁ブレーキ装置がMAXになった場合に、強制ブレーキ装置を作動させるシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は、障害物の検知時にドアが開方向及び閉方向の両方に対してブレーキがかけられて停止するものであり、乗員の乗降性に貢献するものではない。
【0006】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、乗員の乗降性を向上することを可能とし、ひいては持続可能な輸送システムの発展に寄与することが可能な車両用ドア制御システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するために、本発明の車両用ドア制御システムは、車体に対してスイング動作によって開閉可能なドアと、前記ドアの開閉方向への移動を許容する開閉可能状態と、前記ドアの開方向への移動を禁止するとともに閉方向への移動を許容するホールド状態と、を切替可能なホールド部と、前記ホールド部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記ドアが開いた状態で停止した場合に、前記ホールド部を前記ホールド状態にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、ホールド状態のドアを支えとした乗降とドアの閉動作を両立することによって、乗員の乗降性を向上することができ、ひいては持続可能な輸送システムの発展に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る車両用ドア制御システムが適用された車両を模式的に示す平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る車両用ドア制御システムを模式的に示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る車両用ドア制御システムが適用されたドアを模式的に示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る車両用ドア制御システムの開方向の動作例(第一の開動作例)を説明するためのフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態に係る車両用ドア制御システムの開方向の動作例(第二の開動作例)を説明するためのフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態に係る車両用ドア制御システムの閉方向の動作例を説明するためのフローチャートである。
【
図7】本発明の実施形態に係る車両用ドア制御システムの動作例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態について、本発明の車両用ドア制御システムを車両の右側の前席(日本における運転席)用のサイドドアに適用した場合を例にとり、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、参照図面において、「前後」は、車両の進行方向における前後方向すなわち車体前後方向を示し、「左右」は、運転席から見た左右方向(車幅方向)をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る車両用ドア制御システム1が適用された車両は、車体2と、車体2に設けられるドア(サイドドア)3と、を備える。
【0012】
<ドア>
ドア3は、車体2の車幅方向側面(本実施形態では、右側面)の開口部2a(
図3参照)を開閉可能に設けられている。ドア3は、当該ドア3の前端部を上下方向に延びる回動軸X1として、車体2に対して平面視でスイング動作可能に取り付けられている。
【0013】
図2に示すように、車両用ドア制御システム1は、ロック部10と、駆動部20と、操作部30と、角度検出部41と、開閉検知部42と、荷重検出部43と、周辺検知部44と、制御部50と、を備える。
【0014】
<ロック部>
ロック部10は、利用者(乗員)によるドアハンドル又はキーシリンダの操作、制御部50からの制御信号等に基づいて、ドア3を閉状態に維持可能なラッチ機構、及び、ラッチ機構を解錠状態及び施錠状態に切替可能なロック機構を作動させる。ロック部10は、ラッチ作動部11と、ロック作動部12と、を備える。
≪ラッチ作動部≫
ラッチ作動部11は、利用者によるドアハンドルの操作、制御部50からの制御信号等に基づいて、閉状態のドア3におけるラッチ機構を作動させ、ドア3を開動作可能にする。
【0015】
≪ロック作動部≫
ロック作動部12は、利用者によるキーシリンダの操作、制御部50からの制御信号等に基づいて、閉状態のドア3におけるロック機構を作動させ、ドア3を開動作可能な解錠状態にしたり、開動作不能な施錠状態にしたりする。
【0016】
<駆動部>
駆動部20は、制御部50からの制御信号等に基づいて、ドア3を開閉駆動する(スイング動作させる)。
【0017】
図3に示すように、駆動部20は、車体2にスイング動作可能に支持されるスピンドルスクリュ21と、ドア3側に設けられており、スピンドルスクリュ21と螺合可能なスピンドルナット22と、ドア3側に設けられており、スピンドルナット22に減速機構を介して連結されるモータ23と、ブレーキ部24と、を備える。
【0018】
スピンドルスクリュ21の基端部は、車体2の開口部2aの前縁部に対して、上下方向に延びる軸を回動軸X2として軸支されている。かかる回動軸X2は、ドア3の回動軸X1よりも車幅方向内側に設けられている。
【0019】
駆動部20は、モータ23の回転駆動によって、スピンドルナット22のスピンドルスクリュ21への螺合位置を変更する。これにより、ドア3の車体2に対する開閉角度を変更することができる。
【0020】
ブレーキ部24は、モータ23又は減速機構に組み込まれた電磁ブレーキであり、制御部50からの制御信号に基づいて、スピンドルナット22のスピンドルスクリュ21に対するドア3が開く方向への相対移動を許容する状態(開閉可能状態)と禁止する状態(ホールド状態)とを切り替える。ブレーキ部24は、電磁ブレーキに限定されず、物理的なブレーキ(クラッチ等)であってもよい。
【0021】
ブレーキ部24によるブレーキ力は、利用者がドア3に寄り掛かったときの荷重を支持することができるように設定されている。駆動部20は、ホールド状態においてブレーキ力よりも十分に大きい荷重がドア3に作用した場合には、ドア3を開くことができるように構成されている。
【0022】
<操作部>
図2に示すように、操作部30は、インテリジェントキー、車両に設けられたスイッチ等によって構成されており、利用者による操作結果を制御部50へ出力する。操作部30は、後記するホールド状態を解除するための解除部31を備える。
【0023】
≪角度検出部≫
角度検出部41は、ドア3の車体2に対する開閉角度(開閉角度に相関するパラメータを含む)を検出し、検出結果を制御部50へ出力するセンサである。角度検出部31は、駆動部20に設けられており、開閉角度に相関するパラメータとして、例えば駆動部20のモータ23のパルスをカウントし、カウント結果を制御部50へ出力するセンサであってもよい。制御部50は、かかるカウント結果に基づいてドア3の開閉角度を算出することができる。
【0024】
≪開閉検知部≫
開閉検知部42は、ドア3が閉状態(全閉状態)であるか開状態であるかを検知し、検知結果を制御部50へ出力するセンサである。本実施形態において、開閉検知部42は、ドア3の開閉状態として、ドア3を車体2へ固定可能なラッチ機構(図示せず)の状態を検知する。
【0025】
<荷重検出部>
荷重検出部43は、ドア3に作用する外部荷重を検出し、検出結果を制御部50へ出力するセンサである。本実施形態において、荷重検出部43は、ドア3の面方向に直交する方向(開方向及び閉方向)の荷重を検出する。
【0026】
<周辺検知部>
周辺検知部44は、ドア3の周辺に存在する物体を検知し、検知結果を制御部50へ出力するセンサである。かかる周辺検知部44は、カメラ、赤外線カメラ、超音波センサ等によって実現可能である。
【0027】
≪制御部≫
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力回路等によって構成される、いわゆるECU(Electronic Control Unit)である。制御部50は、操作部30の操作結果が自動開閉を示すものである場合に、駆動部20を制御することによって、ドア3を自動で開閉させる。制御部50は、操作部30の操作結果が手動開閉を示すものである場合に、荷重検出部43の検出結果に基づいて駆動部20を制御することによって、利用者によるドア3の手動開閉を支援するアシスト力を発生させる(アシストモード)。
【0028】
制御部50は、駆動部(ホールド部)20を制御することによって、当該駆動部20を開閉可能状態とホールド状態とに切り替える。開閉可能状態は、ドア3が自動又は手動によって開方向及び閉方向の両方向への移動することが可能な(許容された)状態である。ホールド状態は、ドア3が自動又は手動によって閉方向へ移動することが可能である(許容されている)とともに、自動又は手動によって開方向へ移動することができない(禁止された)状態である。駆動部20がホールド状態のドア3は、車両に乗降しようとする利用者がドア3の内側から手をかけても開方向に移動せずに乗員の体重を支えることができるため、乗員の車両への乗降を好適に支援することができる。
【0029】
制御部50は、ドア3が開いた状態で停止した場合に、駆動部(ホールド部)20をホールド状態とする。制御部50は、角度検出部41の検出結果に基づいて、ドア3が開いた状態であることを認識することができる。また、制御部50は、角度検出部41の検出結果又は駆動部20の制御状態に基づいて、ドア3が停止していることを認識することができる。
【0030】
本実施形態において、制御部50は、ドア3が開方向への移動中に停止した場合に、駆動部(ホールド部)20をホールド状態とし、ドア3が閉方向への移動中に停止した場合に、駆動部(ホールド部)20を開閉可能状態とする。制御部50は、角度検出部41の検出結果又は駆動部20の制御状態に基づいて、ドア3の移動方向を認識することができる。
【0031】
また、制御部50は、角度検出部41の検出結果が第一の所定角度(例えば、15度)以上である場合に、ホールド状態を許可可能とし、角度検出部41の検出結果が第一の所定角度(例えば、15度)未満である場合に、ホールド状態を禁止する。すなわち、ドア3の開閉角度が第一の所定角度以上である場合には、駆動部(ホールド部)20は、開閉可能状態とホールド状態とを切替可能である。また、ドア3の開閉角度が第一の所定角度未満である場合には、駆動部(ホールド部)20は、開閉可能状態のみをとることができる。したがって、ドア3の開閉角度が第一の所定角度未満である場合には、ホールド状態の駆動部(ホールド部)20は、開閉可能状態に切り替わる。
【0032】
<動作例>
続いて、本発明の実施形態に係る車両用ドア制御システム1の動作例、すなわち、駆動部(ホールド部)20を開閉可能状態及びホールド状態で切り替える動作例について、
図4及び
図5のフローチャートを参照し、開方向、閉方向の順に説明する(適宜
図1~
図3参照)。制御部50は、操作部30の操作結果がドア3の開動作を示すものである場合、及び/又は、利用者が手動によるドア3の開動作を実行している場合(角度検出部41及び荷重検出部43の検出結果に基づいて判定可能)には、
図4又は
図5のフローチャートに従ってロック部10及び駆動部20を制御する。また、制御部50は、操作部30の操作結果がドア3の閉動作を示すものである場合、及び/又は、利用者が手動によるドア3の閉動作を実行している場合(角度検出部41及び荷重検出部43の検出結果に基づいて判定可能)には、
図6のフローチャートに従って動作する。
【0033】
≪開方向の動作例/第一の開動作例≫
まず、
図4のフローチャートを参照して、車両用ドア制御システム1の開動作の動作例(第一の開動作例)について説明する。初期状態として、ドア3は閉じた状態から制御部50の制御によるロック部10の動作によって若干開いており、駆動部(ホールド部)20は開閉可能状態に設定されている。
【0034】
操作部30の操作結果がドア3の自動的な開動作を示す場合(ステップS1で自動)には、制御部50は、駆動部20を制御することによって、ドア3を開方向に移動させる(ステップS2A)。一方、操作部30の操作結果がドア3の手動による開動作を示す場合(ステップS1で手動)には、制御部50は、駆動部20を制御することによって、ドア3の開方向への移動をアシストする(ステップS2B)。
【0035】
ステップS2Aの実行後(開駆動中)、操作部30の操作(ドア3の停止を要求する操作)がある場合(ステップS3でYes)には、制御部50は、駆動部20を制御することによって、ドア3を停止させる(ステップS7)。
【0036】
また、ステップS2Aの実行後(開駆動中)、荷重検出部43が第一の所定値以上の荷重を検出した場合(ステップS4でYes)には、制御部50は、駆動部20を制御することによって、ドア3を停止させる(ステップS7)。制御部50は、例えば、ドア3が人に当たった場合、ドア3が風、利用者等によって開方向又は閉方向に押された場合等に、ドア3を停止させる。
【0037】
また、ステップS2Aの実行後(開駆動中)、周辺検知部44がドア3の軌道上に物体を検知した場合(ステップS5でYes)には、制御部50は、駆動部20を制御することによって、ドア3を停止させる(ステップS7)。制御部50は、例えば、ドア3の開方向の軌道上に物体(人、障害物等)が位置する場合(動的検知を含む)、ドア3の開方向の軌道上に移動体(自動車、自転車等)が近づいてくる場合等に、ドア3を停止させる。
【0038】
ステップS2Aの実行後(開駆動中)にドア3を途中で停止させなかった場合(ステップS3,S4,S5でNo)において、角度検出部41の検出結果が第二の所定角度(第一の所定角度よりも大きく、ドア3の構造的に最大に開いた角度(例えば、約65度~約75度の任意の角度)よりも小さい。例えば、45度)未満である場合(ステップS6でNo)には、本フローは、ステップS1に戻る。
【0039】
ステップS2Aの実行後(開駆動中)にドア3を途中で停止させなかった場合(ステップS3,S4,S5でNo)において、角度検出部41の検出結果が第二の所定角度以上である場合(ステップS6でYes)には、制御部50は、駆動部20を制御することによって、ドア3を停止させる(ステップS7)。同様に、ステップS2Bの実行後において、角度検出部41の検出結果が第二の所定角度以上である場合(ステップS6でYes)には、制御部50は、駆動部20を制御することによって、ドア3を停止させる(ステップS7)。
【0040】
一方、ステップS2Bの実行後、利用者が手動によるドア3の開動作をやめると、制御部50は、駆動部20を制御することによって、ドア3の開方向へのアシストを停止する(ステップS7)。
【0041】
ステップS7の実行後、角度検出部41の検出結果が第一の所定角度以上である場合(ステップS8でYes)には、制御部50は、駆動部(ホールド部)20を制御することによって、駆動部20をホールド状態とし、ドア3の開方向への移動を禁止する(ステップS9)。
【0042】
乗車時の利用者は、駆動部20がホールド状態のドア3に内側から手をかけて、ドア3に体重を支えられた状態で乗車することができる。同様に、降車時の利用者は、駆動部20がホールド状態のドア3に内側から手をかけて、ドア3に体重を支えられた状態で降車することができる。また、乗車時又は降車時の利用者が意図せずにドア3に触れた場合において、車両用ドア制御システム1は、ドア3が開くことを防止することができる。
【0043】
一方、ステップS7の実行後、角度検出部41の検出結果が第一の所定角度未満である場合(ステップS8でNo)には、本フローはステップS1へ戻る。
【0044】
ステップS9の実行後、解除部31が利用者によって操作された場合(ステップS10でYes)には、制御部50は、駆動部(ホールド部)20を制御することによって、駆動部20を開閉可能状態とし(ステップS11)、本フローはステップS1へ戻る。これにより、自動又は手動によるドア3の増し開けを可能とすることができる。
【0045】
なお、ステップS6でYes、かつ、ステップS10でYesの場合には、制御部50は、第二の所定角度(例えば、45度)を所定追加角度(例えば、5度)だけ大きくなるように設定し直す。これにより、ドア3が第二の所定角度(再設定前)まで開いた状態においても、自動又は手動によるドア3の増し開けを可能とすることができる。
【0046】
≪開方向の動作例/第二の開動作例≫
続いて、
図5のフローチャートを参照して、車両用ドア制御システム1の開動作の動作例(第二の開動作例)について、第一の動作例との相違点を中心に説明する。
【0047】
図5に示すように、ステップS11の実行後、本フローはステップS2Bへ移行する。すなわち、ドア3の停止後に制御部50が駆動部(ホールド部)20のホールド状態を解除して開閉可能状態とした場合には、制御部50は、駆動部(ホールド部)20によるドア3の自動的な開動作(及び閉動作)を禁止し、駆動部(ホールド部)30を制御することによって、ドア3の開方向(及び閉方向)への移動をアシストする。
【0048】
≪閉方向の動作例≫
続いて、
図6のフローチャートを参照して、車両用ドア制御システム1の閉動作の動作例について説明する。初期状態として、ドア3は開いており、駆動部(ホールド部)20はホールド状態に設定されている(ステップS9の実行後を想定)。
【0049】
図6に示すように、操作部30の操作結果がドア3の自動的な閉動作を示す場合(ステップS21で自動)には、制御部50は、駆動部20を制御することによって、当該駆動部(ホールド部)20を開閉可能状態とし(ステップS22A)、ドア3を閉方向に移動させる(ステップS23A)。一方、操作部30の操作結果がドア3の手動による閉動作を示す場合(ステップS21で手動)には、制御部50は、駆動部20を制御することによって、当該駆動部(ホールド部)20を開閉可能状態とし(ステップS22B)、ドア3の閉方向への移動をアシストする(ステップS23B)。
【0050】
乗車時の利用者は、ステップS24Bの実行中に座席に着座した状態で、ドア3に内側から手をかけて、ドア3を閉める。同様に、降車時の利用者は、ステップS24Bの実行中に、ドア3に外側から手をかけて、ドア3を閉める。
【0051】
ステップS23Aの実行後(閉駆動の実行中)、操作部30の操作(ドア3の停止を要求する操作)がある場合(ステップS24でYes)には、制御部50は、駆動部20を制御することによって、ドア3を停止させ(ステップS28)、本フローは、ステップS21に戻る。
【0052】
また、ステップS23Aの実行後(閉駆動の実行中)、荷重検出部43が第一の所定値以上の荷重を検出した場合(ステップS25でYes)には、制御部50は、駆動部20を制御することによって、ドア3を停止させ(ステップS28)、本フローは、ステップS21に戻る。制御部50は、例えば、ドア3が人に当たった場合、ドア3が風、利用者等によって開方向又は閉方向に押された場合等に、ドア3を停止させる。
【0053】
また、ステップS23Aの実行後(閉駆動の実行中)、周辺検知部44がドア3の軌道上に物体を検知した場合(ステップS26でYes)には、制御部50は、駆動部20を制御することによって、ドア3を停止させ(ステップS28)、本フローは、ステップS22Bに戻る。制御部50は、例えば、ドア3の閉方向の軌道上に物体(人、障害物等)が位置する場合(動的検知を含む)、ドア3の閉方向の軌道上に移動体(自動車、自転車等)が近づいてくる場合等に、ドア3を停止させる。
【0054】
すなわち、制御部50は、閉動作のドア3が途中で停止した場合には、駆動部(ホールド部)20をホールド状態にはせず、ドア3の開方向への移動を許容する。より詳細には、制御部50は、開閉可能状態で閉動作しているドア3が途中で停止した場合には、駆動部(ホールド部)20の開閉可能状態を維持する。また、制御部50は、ホールド状態で閉動作しているドア3が途中で停止した場合には、駆動部(ホールド部)20を開閉可能状態に切り替える(例えば、ホールド状態を禁止する)。
【0055】
ステップS23Aの実行後(閉駆動の実行中)にドア3を途中で停止させなかった場合(ステップS24,S25,S26でNo)において、角度検出部41の検出結果がドア3の全閉状態(ほぼ全閉状態を含む)を示すものではない場合(ステップS27AでNo)には、本フローは、ステップS21に戻る。一方、角度検出部41の検出結果がドア3の全閉状態(ほぼ全閉状態を含む)を示すものである場合(ステップS27AでYes)には、本フローは終了する。例えば、制御部50は、角度検出部41の検出結果がドア3のほぼ全閉状態を示すものである場合に、駆動部20を停止させ、続いてラッチ作動部11を制御してハーフラッチ状態(半ドア状態)からフルラッチ状態にすることによって、ドア3を全閉状態にする。すなわち、「ドア3がほぼ全閉状態である」とは、ドア3の角度が、ラッチ作動部11の動作によって当該ドア3を半ドア状態から全閉状態に切替可能な角度であることをいう。
【0056】
同様に、ステップS23Bの実行後において、利用者が手動によるドア3の閉動作をやめて、閉動作のドア3が途中で停止した場合(ステップS27BでNoの後のステップS28)には、本フローは、ステップS21に戻る。一方、ステップS23Bの実行後において、角度検出部41の検出結果がドア3の全閉状態(ほぼ全閉状態を含む)を示すものである場合(ステップS27BでYes)には、本フローは終了する。例えば、制御部50は、角度検出部41の検出結果がドア3のほぼ全閉状態を示すものである場合に、駆動部20を停止させ、続いてラッチ作動部11を制御してハーフラッチ状態からフルラッチ状態にすることによって、ドア3を全閉状態にする。
【0057】
≪ホールド状態を解除する動作例≫
なお、
図7に示すように、前記した
図4~
図6のフローの実行中において、荷重検出部43が第二の所定値(第一の所定値よりも大きい)以上の開方向への荷重を検出した場合(ステップS31でYes)には、制御部50は、駆動部(ホールド部)20を開閉可能状態とする(ステップS32)構成であってもよい。これにより、かかる荷重によるドア3の開方向への移動を許容し、駆動部(ホールド部)20を保護することができる。なお、制御部50は、駆動部20のホールド状態から開閉可能状態への切替を徐々に行う構成であってもよい。
【0058】
本発明の実施形態に係る車両用ドア制御システム1は、車体2に対してスイング動作によって開閉可能なドア3と、前記ドア3の開閉方向への移動を許容する開閉可能状態と、前記ドア3の開方向への移動を禁止するとともに閉方向への移動を許容するホールド状態と、を切替可能なホールド部(駆動部20)と、前記ホールド部を制御する制御部50と、を備え、前記制御部50は、前記ドア3が開いた状態で停止した場合に、前記ホールド部を前記ホールド状態にする。
したがって、車両用ドア制御システム1は、ホールド状態のドア3を支えとした乗降とドア3の閉動作を両立することによって、乗員の乗降性を向上することができ、ひいては持続可能な輸送システムの発展に寄与することができる。
【0059】
車両用ドア制御システム1において、前記制御部50は、前記ドア3が開方向への移動中に停止した場合に、前記ホールド部を前記ホールド状態とし、前記ドア3が閉方向への移動中に停止した場合に、前記ホールド部を前記ホールド状態としない。
したがって、車両用ドア制御システム1は、ホールド状態のドア3を支えとした乗降とドア3の閉動作を両立することによって、ドア3の開動作後の乗員の乗降性を向上することができる。また、車両用ドア制御システム1は、ドア3の閉動作後にドア3の開動作を許容することによって、ドア3の操作性を向上することができる。
【0060】
車両用ドア制御システム1は、利用者によって操作可能な解除部31を備え、前記制御部50は、前記解除部31が操作された場合に、前記ホールド状態の前記ホールド部を前記開閉可能状態とする。
したがって、車両用ドア制御システム1は、ドア3の開閉角度が乗員の乗降等に対して不足している場合に、ドア3の増し開けを可能とすることができる。
【0061】
車両用ドア制御システム1において、前記制御部50は、前記解除部31の操作によって前記ホールド部が前記開閉可能状態となった前記ドア3が開方向への移動中に停止した場合に、前記ホールド部を前記ホールド状態とする。
したがって、車両用ドア制御システム1は、増し開け後のドア3のホールド部を再度ホールド状態とすることによって、乗員による操作を増やすことなく、乗員の乗降を好適に支援することができる。
【0062】
車両用ドア制御システム1において、前記制御部50は、前記ドア3の開閉角度が所定角度(第一の所定角度)以下の場合には、前記ホールド状態を禁止する。
したがって、車両用ドア制御システム1は、ドア3の開閉角度が乗降に適さない程度に小さい場合に、不要なホールド状態を回避してドア3の開閉を許容することができる。
【0063】
車両用ドア制御システム1は、前記ドア3を開閉駆動する駆動部20を備え、前記制御部50は、前記駆動部20を前記ホールド部として制御する。
したがって、車両用ドア制御システム1は、駆動部20とホールド部とを共通化することによって、システムを簡略化することができる。
【0064】
車両用ドア制御システム1において、前記制御部50は、前記駆動部20が前記ホールド状態の前記ドア3に所定値(第二の所定値)以上の開方向への荷重が作用した場合に、前記駆動部20の前記ホールド状態を解除する。
したがって、車両用ドア制御システム1は、大きな荷重による駆動部20の破損を防止することができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、ホールド部としての駆動部20は、ドア3の自動開閉及び手動開閉のアシストの少なくとも一方を行うものであってもよい。また、ホールド部は、駆動部20とは別体に設けられてもよく、この場合には、車両用ドア制御システム1は、駆動部20を有していない構成であってもよい。また、制御部50は、ステップS1,S23において、ドア3の自動的な開閉動作を示す操作部30の操作結果が入力されていない場合には、手動であると判定する構成であってもよい。また、制御部30は、ドア3の手動による開動作時及び/又は閉動作時に、駆動部20によるアシストを実行しない(人力100%)構成であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 車両用ドア制御システム
2 車体
3 ドア
20 駆動部(ホールド部)
31 解除部
50 制御部