(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】水膨張性組成物、止水施工方法
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20241212BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20241212BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20241212BHJP
C08K 13/04 20060101ALI20241212BHJP
C08K 7/02 20060101ALN20241212BHJP
C08K 3/013 20180101ALN20241212BHJP
C08K 3/36 20060101ALN20241212BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L101/12
C09K3/10 J
C08K13/04
C08K7/02
C08K3/013
C08K3/36
(21)【出願番号】P 2023102035
(22)【出願日】2023-06-21
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】高津 知道
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-180031(JP,A)
【文献】特開平06-157839(JP,A)
【文献】特開2003-028361(JP,A)
【文献】特開平04-178485(JP,A)
【文献】特開2023-059628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C09K 3/10-3/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクスポリマー100質量部に対し、吸水性樹脂5~100質量部と、繊維状有機化合物5~100質量部と、を含み、
前記マトリクスポリマーが液状ゴム及び固形エラストマーを含み、液状ゴムと固形エラストマーの合計100質量%中に液状ゴムを10~90質量%含
み、
前記液状ゴムは、25℃において流動性のあるゴムである、水膨張性組成物。
【請求項2】
無機化合物100~800質量部をさらに含む、請求項1に記載の水膨張性組成物。
【請求項3】
軟化剤50~300質量部をさらに含む、請求項1に記載の水膨張性組成物。
【請求項4】
前記固形エラストマーがブチル系ゴムを含む、請求項1に記載の水膨張性組成物。
【請求項5】
前記無機化合物が、シリカ及び/または粘土鉱物を3質量%以上含む、請求項2に記載の水膨張性組成物。
【請求項6】
前記吸水性樹脂が、アルキレンオキサイド系重合体を含む、請求項1に記載の水膨張性組成物。
【請求項7】
前記繊維状有機化合物の平均繊維長が、0.5~10mmである、請求項1に記載の水膨張性組成物。
【請求項8】
パテ状である請求項1~請求項7の何れか一つに記載の水膨張性組成物。
【請求項9】
シール材として用いられる、請求項1~請求項7の何れか一つに記載の水膨張性組成物。
【請求項10】
請求項1~請求項7の何れか一つに記載の水膨張性組成物を止水対象箇所に塗布する工程を含む、止水施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水膨張性組成物、止水施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木・建築分野では、トンネル内セグメントや地下ヒューム管あるいは上下水道用U字溝など様々な管の接続部に、漏水防止や止水の目的でテープ状やフィルム状等に成形された水膨張性止水材が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、水、および海水等のイオン水に対して良好な膨張性を示し、かつ、水中への溶出量が少なく、軽量で施工作業が容易な水膨張性発泡シール材を提供することを目的として、加硫可能なゴムにポリアクリル酸ソーダ架橋体を含む高吸水性樹脂、シリカ、ノニオン系界面活性剤、加硫剤および加硫促進剤、熱分解性発泡剤を含有させ、加硫および発泡処理して得られる水膨張性発泡シール材が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、水膨潤性粘土と有機粘着剤とを含有する組成物を成型加工した止水材本体部と、前記止水材本体部に内蔵されたコイル状に巻癖を付けた金属もしくは樹脂製の芯材部とからなる管廻り用止水材であって、前記止水材本体部の一方の外面にアルカリ分解性樹脂膜もしくは水溶性樹脂膜からなる保護層が設けられ、他方の外面に剥離層が設けられたことを特徴とする管廻り用止水材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-063450号公報
【文献】特開2006-037642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水膨張性組成物を用いて製造されたシール材は、水に接すると水を吸収して体積が膨張することによって止水性を発揮する。このようなシール材には、水膨張性と、吸水して膨張した際でも崩壊しない形状保持性が求められている。なお、特許文献1、2の水膨張性組成物の形状は、テープ状やシート状であるため、止水対象箇所の形状が複雑であった場合、その形状に合わせて水膨張性組成物を自由に変形させ、施工することは困難であった。なお、液状化合物を配合することで水膨張性組成物の変形性を向上させることは可能になるが、一方で手袋等の取り付けに用いる用具に付着してしまい作業性が悪くなる課題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、水膨張性、水膨張後の形状保持性、非付着性、及び変形性に優れた水膨張性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、特定の配合の組成物を用いることにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]マトリクスポリマー100質量部に対し、吸水性樹脂5~100質量部と、繊維状有機化合物5~100質量部と、を含み、前記マトリクスポリマーが液状ゴム及び固形エラストマーを含み、液状ゴムと固形エラストマーの合計100質量%中に液状ゴムを10~90質量%含む、水膨張性組成物。
[2]無機化合物100~800質量部をさらに含む、[1]に記載の水膨張性組成物。
[3]軟化剤50~300質量部をさらに含む、[1]又は[2]に記載の水膨張性組成物。
[4]前記固形エラストマーがブチル系ゴムを含む、[1]~[3]の何れか一つに記載の水膨張性組成物。
[5]前記無機化合物が、シリカ及び/または粘土鉱物を3質量%以上含む、[2]に記載の水膨張性組成物。
[6]前記吸水性樹脂が、アルキレンオキサイド系重合体を含む、[1]~[5]の何れか一つに記載の水膨張性組成物。
[7]前記繊維状有機化合物の平均繊維長が、0.5~10mmである、[1]~[6]の何れか一つに記載の水膨張性組成物。
[8]パテ状である[1]~[7]の何れか一つに記載の水膨張性組成物。
[9]シール材として用いられる、[1]~[8]の何れか一つに記載の水膨張性組成物。
[10][1]~[9]の何れか一つに記載の水膨張性組成物を止水対象箇所に塗布する工程を含む、止水施工方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水膨張性、水膨張後の形状保持性、非付着性、及び変形性に優れた水膨張性組成物を提供することができる。
【0011】
本発明の水膨張性組成物は、変形性等に優れているため、パテ状の組成物として用いることができ、止水対象箇所(例えば、種々の管の接続部等)の形状に併せて使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[水膨張性組成物]
本発明の水膨張性組成物は、マトリクスポリマーと、吸水性樹脂と、繊維状有機化合物とを含む。水膨張性組成物は、マトリクスポリマー100質量部に対し、吸水性樹脂5~100質量部と、繊維状有機化合物5~100質量部と、を含む。このような水膨張性組成物は、変形性に優れる組成物であって、形状に合わせて使用しやすいパテとして用いることができる。すなわち、当該組成物はパテ状水膨張性組成物として提供されうる。
【0013】
<マトリクスポリマー>
マトリクスポリマーは液状ゴム及び固形エラストマーを含む。
【0014】
本発明において固形エラストマーとは、25℃において固形のエラストマーであれば何れのものでもよい。固形エラストマーとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2-ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、エチレン・酢ビゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、再生ゴムなどの架橋可能なゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ブチル系ゴム等が挙げられる。これらから選択される1種又は2種以上の固形エラストマーを含むことができる。
【0015】
本発明において、ブチル系ゴムとは、イソブチレンに由来する単量体単位を含むブチル系重合体を含むゴムを意味する。すなわち、ブチル系ゴムは、イソブチレン単量体単位を含む。また、本発明の一実施形態に係るブチル系ゴムは、イソブチレン単量体単位及びイソプレン単量体単位を含むものとでき、すなわち、イソブチレン及びイソプレンを含む原料単量体を共重合して得られる共重合体を含むことができる。ブチル系ゴムとしては、例えば、ブチルゴム、部分架橋ブチルゴム、再生ブチルゴム、ポリイソブチレン、塩素化ブチルゴムや臭素化ブチルゴム等が挙げられる。これらから選択される1種又は2種以上のブチル系ゴムを含むことができる。なお、再生ゴムとは、加硫ゴムに熱、圧力及び物理的に処理を加え、再び粘着性、可塑性を与えて原料ゴムと同様の目的で利用できるようにしたものである。また、部分架橋ゴムとは、未架橋のゴムを架橋剤および架橋助剤によって部分的に架橋したものである。
【0016】
固形エラストマーは、ブチル系ゴムを含むことが好ましい。ブチル系ゴムを含有することにより、柔軟性や耐水性が良好である、といった効果を奏する。固形エラストマー中のブチル系ゴムの割合は、具体的には例えば、50,55,60,65,70,75,80,85,90,95,100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってよい。
【0017】
本発明において、液状ゴムとは、25℃において流動性のあるゴムであれば何れのものでもよい。液状ゴムとしては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらから選択される1種又は2種以上の液状ゴムを含むことができる。
【0018】
これらのゴム及び/又はエラストマーは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0019】
マトリクスポリマーは、液状ゴム及び固形エラストマーを含み、液状ゴムと固形エラストマーの合計100質量%中に液状ゴムを10~90質量%含む。液状ゴムの比率は、好ましくは25~75質量%であり、さらに好ましくは35~65質量%である。液状ゴムの割合が90質量%を超えると、非付着性が悪くなり、液状ゴムの割合が10質量%未満だと、変形性が悪くなる。液状ゴムの比率は、具体的には例えば、液状ゴムと固形エラストマーの合計100質量%中に10,15,20,25,30,35,40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってよい。
【0020】
<吸水性樹脂>
吸水性樹脂とは、SAP(Super Absorbent Polymer)とも呼ばれ、例えば自重の300倍から2000倍の水を吸収する吸水性能と、その水を非常に安定した状態で保持する保水性能とを持った高分子重合体である。吸水性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリアクリル酸部分中和物(例:アクリル酸重合体部分ナトリウム塩、アクリル酸グラフト重合体部分ナトリウム塩)やその架橋体、澱粉-アクリル酸グラフト重合体塩やその架橋体、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体のケン化物やその架橋体、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸-アクリル酸共重合体塩やその架橋体などのアクリル系重合体;カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースアンモニウムなどのセルロース系化合物;ポリアルキレンオキサイドや、変性ポリアルキレンオキサイド等のアルキレンオキサイド系重合体;澱粉-アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、カチオン性モノマーの架橋体、架橋イソブチレンーマレイン酸共重合体等が挙げられる。吸水性樹脂は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、粉体状でも繊維状でもよい。
【0021】
この中でも、アルキレンオキサイド系重合体がより好ましい。このような吸水性樹脂を用いることにより、水膨張後の形状安定性がより向上する傾向にある。
【0022】
吸水性樹脂の含有量は、マトリクスポリマー100質量部に対して、5~100質量部であり、好ましくは14~80質量部であり、より好ましくは22~55質量部である。吸水性樹脂の含有量が5質量部未満であると、水膨張性が悪い。また、吸水性樹脂の含有量が100質量部を超えると、水膨張後形状保持性が悪い。吸水性樹脂の含有量は、具体的には例えば、マトリクスポリマー100質量部に対して、5,10,15,20,25,30,35,40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90,95,100質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0023】
<繊維状有機化合物>
繊維状有機化合物の形状は繊維状であればよく、繊維の断面形状として例えば円形、楕円形、多角形などが挙げられる。繊維状有機化合物の平均繊維長をLとし、平均直径をDとすると、繊維のL/Dは、例えば10超であり、50以上が好ましく、100以上がさらに好ましい。上限は、特に規定されないが、例えば10000である。繊維状有機化合物の平均直径は、例えば1~100μmであり、2~50μmが好ましく、5~20μmがさらに好ましい。繊維状有機化合物の平均繊維長は、例えば、0.1~15mmであり、1~10mmが好ましい。繊維状有機化合物の平均繊維長は、具体的には例えば、具体的には例えば、0.1,0.5,1.0,1.5,2.0,2.5,3.0,3.5,4.0,4.5,5.0,5.5,6.0,6.5,7.0,7.5,8.0,8.5,9.0,9.5,10.0,10.5,11.0,11.5,12.0,12.5,13.0,13.5,14.0,14.5,15.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0024】
繊維状有機化合物としては、例えば、メタ系アラミド繊維、パラ系アラミド繊維、アミド系繊維、パルプ繊維、セルロース繊維(パルプ繊維)、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維、ポリアリレート繊維等を挙げることができる。なお、繊維状有機化合物は、繊維が組成物中に分散して含有されることが好ましい。
【0025】
繊維状有機化合物の平均繊維長及び平均直径は、十分大きな数、すなわち20本以上の繊維状有機化合物につき長さを測定し、その平均値を平均繊維長及び平均直径とする。
【0026】
繊維状有機化合物の繊維長及び直径は、例えば電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて測定することができる。
【0027】
繊維状有機化合物の含有量は、マトリクスポリマー100質量部に対して5~100質量部であり、10~80質量部が好ましく、20~55質量部がさらに好ましい。繊維状有機化合物の含有量が5質量部未満であると、水膨張後の形状保持性が悪く水膨張時に崩壊してしまう。一方で、繊維状有機化合物の含有量が100質量部を超えると、変形性が悪くなる。繊維状有機化合物の含有量は、具体的には例えば、マトリクスポリマー100質量部に対して、5,10,15,20,25,30,35,40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90,95,100質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0028】
<無機化合物>
本発明の水膨張性組成物は、無機化合物を含有してもよい。無機化合物としては、例えば、アルミナ、アルミノシリケート、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、フェライト類等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩;硫酸カルシウム、けい酸カルシウム等のカルシウム塩、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化けい素、カーボンブラック、グラファイト、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化けい素、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、フライアッシュ、無機中空フィラー、パーライト、黒曜岩、真珠岩、松脂岩、珪藻土、脱水汚泥、ホウ素、四ホウ酸ナトリウム水和物(ホウ砂)、無機リン系化合物、ガラス繊維、シリカ、粘土鉱物などが挙げられる。
【0029】
この中でも、シリカ及び/又は粘土鉱物が含まれることが好ましい。粘土鉱物としては、天然もしくは合成の無機系粘土鉱物から選ばれた少なくとも1種が用いられる。粘土鉱物としては、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト等のスメクタイト系粘土、セピオライト、パリゴルスカイト等の繊維状粘土、絹雲母(セリサイト)、イライト、海緑石(グローコナイト)、緑泥石(クロライト)、滑石(タルク)、沸石(ゼオライト)、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、クリストパライト、スメクタイト、カオリン、クレイ(含水珪酸アルミニウム)などが挙げられる。これら無機化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0030】
無機化合物の含有量は、エラストマー、ゴム、またはこれらの組み合わせであるマトリクスポリマー100質量部に対して、好ましくは100~800質量部であり、より好ましくは200~700質量部であり、さらに好ましくは300~550質量部である。無機化合物の含有量が100~800質量部であることより、良好な非付着性や変形性が得られる。無機化合物の含有量は、具体的には例えば、マトリクスポリマー100質量部に対して、100,150,200,250,300,350,400,450,500,550,600,650,700,750,800質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0031】
なお、シリカ及び/又は粘土鉱物の無機化合物中の含有量は、好ましくは3質量%以上であり、このような範囲において良好な水膨張性が得られる。シリカ及び/又は粘土鉱物の無機化合物中の含有量は、具体的には例えば、0,1,3,5,10,15,20,25,30,35,40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90,95,100であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0032】
<軟化剤>
本発明の水膨張性組成物は、軟化剤を含有してもよい。軟化剤は、水膨張性組成物に柔軟性を付与させるために用いられ、室温で流動性のあるものが好ましい。軟化剤としては、特に限定されず、公知の軟化剤を1種または2種以上自由に選択して用いることができる。軟化剤としては、パラフィン系又はナフテン系のプロセスオイル、鉱油、植物油、流動パラフィン等のパラフィン類、ワックス類、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸系又はリン酸系のエステル系可塑剤、ステアリン酸又はそのエステル類、等が挙げられる。
【0033】
軟化剤の含有量は、マトリクスポリマー100質量部に対して好ましくは50~300質量部であり、より好ましくは50~250質量部であり、さらに好ましくは50~190質量部である。軟化剤の含有量が50~300質量部であることより、良好な変形性と非付着性が得られる。軟化剤の含有量は、具体的には例えば、マトリクスポリマー100質量部に対して、0,25,48,50,75,100,125,150,175,200,225,250,275,300質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0034】
<その他添加剤>
本発明の水膨張性組成物は、上記成分の他に必要に応じて、通常のゴムに使用される架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、滑剤、分散剤、粘着付与剤等の添加剤も併用することができる。
架橋剤や架橋助剤を使用する場合は、合計で0.05質量部以下、或いは0.01質量部以下とすることが好ましい。
【0035】
<態様>
本発明の水膨張性組成物は、シール材として用いられることが好ましい。本実施形態の水膨張性組成物を用いて製造されたシール材は、シールド工法セグメント、ボックスカルバート、フリューム(鉄骨・ベンチ)、ヒューム管、マンホールの継手、貯水池、水路、プール等の目地、コンクリート打ち継ぎの止水板などの土木関係の止水部材としての用途;各種水槽、H鋼廻り、各種打ち継ぎなどの建築関係の止水部材としての用途;浄水槽、受水槽、ユニットバスなどの住宅機器関係の止水部材としての用途に好適に用いることができる。また、本実施形態の水膨張性組成物を用いて製造されたシール材は、淡水のみならず海水などの通水路に使用されるコンクリート製品等の接続部分に使用される場合においても、十分な止水効果を発揮することができる。
【0036】
<水膨張性組成物の製造方法及び用途>
本発明の水膨張性組成物は、必要な成分を混練することにより製造することができる。
【0037】
配合物を混練する装置としては、従来公知のミキサー、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、二本ロール等の混練装置がある。
【0038】
[止水施工方法]
上述の水膨張性組成物は、種々の管の接続部やその他の止水処理を必要とする止水対象箇所に取り付ける(供給する)ことによって用いることができる。本発明の一実施形態に係る止水施工方法は、上述の水膨張性組成物を止水対象箇所に塗布する工程(塗布工程)を含む。また、止水施工方法は、接続される2つの部材の一方又は両方の止水対象箇所に水膨張性組成物を塗布する塗布工程と、塗布工程後に当該2つの部材を接続する工程(接続工程)を含んでいてもよい。
【0039】
水膨張性組成物の止水対象箇所への塗布は、その方法は特に制限されないが、例えば、手(例えば、素手又は手袋を装着)、コテ、ヘラ、ハケによる取り付け、チューブ等の容器からの押し出し、或いはこれらの組み合わせによって行うことができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、以下、各物質の使用量の単位は質量部である。
【0041】
1.水膨張性組成物の調整
表1に記載の各成分を、3L加圧ニーダー(モリヤマ社製、型式:DS3-10MWB-S)を用いて、100℃で10分間混練することによって、実施例及び比較例の水膨張性組成物を得た。なお、表1~表6に記載する各物質の使用量の単位は特に断りがない限り質量部である。
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
表1~表6中の各成分の詳細は、以下のとおりである。
<マトリクスポリマー>
[液状ゴム]
・ポリイソプレンゴム:株式会社クラレ製「LIR-30」、分子量28000、Tg-63℃、粘度70Pa.s(38℃)
・ポリブタジエンゴム:株式会社クラレ製「LBR-302」、分子量5500、Tg-85℃、粘度0.6Pa.s(38℃)
・ポリブテン:JXエネルギー株式会社製、「HV-100」、分子量980、動粘度9,500mm2/s(40℃)
[固形エラストマー]
・ブチルゴム:JSR株式会社製「ブチル268」、ゴム状(40℃)
・部分架橋ブチルゴム:Royal Elastomers社製、「KALAR5280」
<吸水性樹脂>
・アクリル酸重合体ナトリウム(Na)塩架橋物:株式会社日本触媒製、「アクアリックCS―6S」
・変性ポリアルキレンオキサイド:住友精化株式会社製、「アクアコークTWB」
<無機化合物>
・シリカ:東ソー・シリカ株式会社製、「Nipsil VN3」
・セピオライト(粘土鉱物):近江鉱業株式会社製、「ミラクレーP150」
・ベントナイト(粘土鉱物):株式会社ホージュン製、「赤城」
・炭酸カルシウム(Ca):秩父石灰工業株式会社製、「TA-044」
<軟化剤>
・プロセスオイル:出光興産(株)製、「ダイアナプロセスオイルNP-24」、動粘度23.25mm2/s(40 ℃)
<繊維状有機化合物>
・パルプ繊維、平均繊維長1.2mm:王子製袋株式会社製「ネオファイバーNS-10」
・アラミド繊維、0.25、0.5、3、10、12mm:帝人株式会社製「トワロンショートカットファイバー」
【0049】
2.評価
実施例及び比較例により得られた水膨張性組成物について以下に示す各種評価を行った。
【0050】
<変形性(軟度)>
水膨張性組成物をプレス機(温度:80℃、時間:1分)で厚さ2mmのシート状の成形体に加工し、得られた成形体(試験体1)を用いて、試験体1をJIS A5752に準拠し荷重150g、温度21℃において軟度の測定を行った。規定の円錐を試験体1に垂直に貫入させ、その貫入深さを0.1mm単位で測定した。そして、貫入深さに基づいて、変形性を以下の基準で判定した。
◎:60[1/10mm]以上
○:50[1/10mm]以上60[1/10mm]未満
△:40[1/10mm]以上50[1/10mm]未満
×:40[1/10mm]未満
【0051】
<非付着性>
ラテックスゴム手袋を装着し、100gの水膨張性組成物を10回握った後の手袋の付着物の質量を測定し、以下の式に基づいて付着物質量を算出した。そして、付着物質量に基づいて、非付着性を以下の基準で判定した。なお、非付着性が低いほど加工しやすいことを示す。
付着物質量(g)=(100gの水膨張性組成物を10回握った後の手袋の質量)-(元の手袋の質量)
◎:0.02[g]未満
○:0.02[g]以上0.05[g]未満
△:0.05[g]以上0.10[g]未満
×:0.10[g]以上
【0052】
<水膨張性>
JIS K-6258に準じ、10gの水膨張性組成物を球状の成形体(試験体2)に成形し、23℃にて水に7日間浸漬後、以下の式にて浸漬前後における体積変化率を算出した。浸漬前後における体積変化率が、試験体2の給水量、すなわち体積変化量を示しているものとして、水膨張性を以下の評価基準で評価した。なお、比較例4,5は試験体2が崩壊してしまったため×としている。
体積変化率(%)=((c-d)-(a-b))/(a-b)×100
a:水浸漬前の空中質量、b:水浸漬前の水中質量
c:水浸漬後の空中質量、d:水浸漬後の水中質量
(評価基準)
◎:体積変化率が100%以上
○:体積変化率が80%以上100%未満
△:体積変化率が60%以上80%未満
×:体積変化率が60%未満
【0053】
<水膨張後形状保持性>
5gの水膨張性組成物を球状の成形体(試験体3)に成形し、23℃にて水に7日間浸漬後、試験体3の形状保持性を目視にて観察し、以下の評価基準で評価した。
(評価基準)
◎:水膨張後の試験体3に亀裂の発生は認められない
○:水膨張後の試験体3に亀裂の発生は認められるが水中から取り出しても崩れない
×:水膨張後の試験体3を水中から取り出すと崩れる
【要約】
【課題】水膨張性、水膨張後の形状保持性、非付着性、及び変形性に優れた水膨張性組成物を提供する。
【解決手段】本発明によれば、マトリクスポリマー100質量部に対し、吸水性樹脂5~100質量部と、繊維状有機化合物5~100質量部と、を含み、前記マトリクスポリマーが液状ゴム及び固形エラストマーを含み、液状ゴムと固形エラストマーの合計100質量%中に液状ゴムを10~90質量%含む、水膨張性組成物が提供される。
【選択図】 なし