(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】保持装置および静電チャック
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
H01L21/68 R
(21)【出願番号】P 2023102267
(22)【出願日】2023-06-22
【審査請求日】2024-04-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100195659
【氏名又は名称】木村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】稲吉 輝
(72)【発明者】
【氏名】上松 秀樹
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-094466(JP,A)
【文献】特開2022-158147(JP,A)
【文献】国際公開第2023/286812(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/107701(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持装置であって、
対象物を保持する保持面を有する保持部材と、
前記保持部材のうち前記保持面の側とは反対側に配置されたベース部材と、
前記保持部材と前記ベース部材とを接合し、複数のフィラーを含む接合層と、を備え、
以下の条件(A)~(C)の
うち少なくとも前記条件(A)および前記条件(C)を満たしており、
条件(A):前記フィラーには、前記保持部材に接触している第1フィラーと前記ベース部材に接触している第2フィラーとのうち少なくとも一方が含まれていること。
条件(B):前記接合層のうち前記保持部材との界面から1μm以下の範囲に占める前記フィラーの断面積の総和の割合を第1割合とし、前記接合層のうち前記ベース部材との界面から1μm以下の範囲に占める前記フィラーの断面積の総和の割合を第2割合とし、前記接合層のうち前記接合層の厚み方向における中央から前記保持部材の側へ前記接合層の厚みの30%以下の範囲および前記中央から前記ベース部材の側へ前記接合層の厚みの30%以下の範囲に占める前記フィラーの断面積の総和の割合を第3割合としたとき、前記第1割合を前記第3割合で除した値と、前記第2割合を前記第3割合で除した値と、のうち少なくとも一方は、0.5以上であること。
条件(C):前記フィラーのうちアスペクト比が1.4以上の前記フィラーは、アスペクト比が1.4未満の前記フィラーよりも多いこと。
前記第1フィラーと前記第2フィラーとのうち前記接合層に含まれている少なくとも一方には、アスペクト比が1.4未満の前記フィラーが含まれていることを特徴とする、保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の保持装置であって、
前記保持装置は、少なくとも前記条件(A)を満たしており、
前記第1フィラーと前記第2フィラーとのうち前記接合層に含まれている少なくとも一方には、前記フィラーの平均粒径よりも粒径が大きい大径フィラーが含まれていることを特徴とする、保持装置。
【請求項3】
請求項2に記載の保持装置であって、
前記保持装置は、少なくとも前記条件(A)を満たしており、
前記第1フィラーと前記第2フィラーとのうち前記接合層に含まれている少なくとも一方には、前記平均粒径よりも粒径が小さい小径フィラーが含まれていることを特徴とする、保持装置。
【請求項4】
請求項3に記載の保持装置であって、
前記保持装置は、少なくとも前記条件(A)を満たしており、
前記第1フィラーと前記第2フィラーとのうち前記接合層に含まれている少なくとも一方において、前記大径フィラーの断面積の総和は、前記小径フィラーの断面積の総和よりも大きいことを特徴とする、保持装置。
【請求項5】
請求項1に記載の保持装置であって、
前記保持装置は、少なくとも前記条件(A)を満たしており、
前記第1フィラーと前記第2フィラーとのうち前記接合層に含まれている少なくとも一方には、アスペクト比が1.4以上の前記フィラーが含まれていることを特徴とする、保持装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の保持装置であって、
前記保持装置は、少なくとも前記条件(A)を満たしており、
前記第1フィラーと前記第2フィラーとのうち前記接合層に含まれている少なくとも一方において、アスペクト比が1.4以上の前記フィラーの断面積の総和は、アスペクト比が1.4未満の前記フィラーの断面積の総和よりも大きいことを特徴とする、保持装置。
【請求項7】
請求項1に記載の保持装置であって、
前記保持装置は、少なくとも前記条件(A)を満たしており、
前記保持部材のうち前記接合層に接合された部分と前記ベース部材のうち前記接合層に接合された部分とのうち少なくとも一方には、前記フィラーの平均粒径よりも深く窪んだ窪み部が形成され、
前記窪み部の深さは前記平均粒径よりも大きく、かつ、前記窪み部は前記接合層で埋められており、
前記窪み部を画定している面には、前記フィラーの平均粒径よりも粒径が大きい大径フィラーが接触していることを特徴とする、保持装置。
【請求項8】
請求項1に記載の保持装置であって、
前記保持装置は、少なくとも前記条件(A)を満たしており、
前記保持部材のうち前記接合層に接合された部分と前記ベース部材のうち前記接合層に接合された部分とのうち少なくとも一方には、前記フィラーの平均粒径よりも深く窪んだ窪み部が形成され、
前記窪み部の深さは前記平均粒径よりも大きく、かつ、前記窪み部は前記接合層で埋められており、
前記窪み部を画定している面には、アスペクト比が1.4以上の前記フィラーが接触していることを特徴とする、保持装置。
【請求項9】
保持装置であって、
対象物を保持する保持面を有する保持部材と、
前記保持部材のうち前記保持面の側とは反対側に配置されたベース部材と、
前記保持部材と前記ベース部材とを接合し、複数のフィラーを含む接合層と、を備え、
以下の条件(A)~(C)の
うち少なくとも前記条件(A)を満たしており、
条件(A):前記フィラーには、前記保持部材に接触している第1フィラーと前記ベース部材に接触している第2フィラーとのうち少なくとも一方が含まれていること。
条件(B):前記接合層のうち前記保持部材との界面から1μm以下の範囲に占める前記フィラーの断面積の総和の割合を第1割合とし、前記接合層のうち前記ベース部材との界面から1μm以下の範囲に占める前記フィラーの断面積の総和の割合を第2割合とし、前記接合層のうち前記接合層の厚み方向における中央から前記保持部材の側へ前記接合層の厚みの30%以下の範囲および前記中央から前記ベース部材の側へ前記接合層の厚みの30%以下の範囲に占める前記フィラーの断面積の総和の割合を第3割合としたとき、前記第1割合を前記第3割合で除した値と、前記第2割合を前記第3割合で除した値と、のうち少なくとも一方は、0.5以上であること。
条件(C):前記フィラーのうちアスペクト比が1.4以上の前記フィラーは、アスペクト比が1.4未満の前記フィラーよりも多いこと。
前記第1フィラーと前記第2フィラーとのうち前記接合層に含まれている少なくとも一方には、前記フィラーの平均粒径よりも粒径が大きい大径フィラーが含まれており、
前記第1フィラーと前記第2フィラーとのうち前記接合層に含まれている少なくとも一方には、前記平均粒径よりも粒径が小さい小径フィラーが含まれており、
前記第1フィラーと前記第2フィラーとのうち前記接合層に含まれている少なくとも一方において、前記大径フィラーの断面積の総和は、前記小径フィラーの断面積の総和よりも大きいことを特徴とする、保持装置。
【請求項10】
保持装置であって、
対象物を保持する保持面を有する保持部材と、
前記保持部材のうち前記保持面の側とは反対側に配置されたベース部材と、
前記保持部材と前記ベース部材とを接合し、複数のフィラーを含む接合層と、を備え、
以下の条件(A)~(C)の
うち少なくとも前記条件(A)を満たしており、
条件(A):前記フィラーには、前記保持部材に接触している第1フィラーと前記ベース部材に接触している第2フィラーとのうち少なくとも一方が含まれていること。
条件(B):前記接合層のうち前記保持部材との界面から1μm以下の範囲に占める前記フィラーの断面積の総和の割合を第1割合とし、前記接合層のうち前記ベース部材との界面から1μm以下の範囲に占める前記フィラーの断面積の総和の割合を第2割合とし、前記接合層のうち前記接合層の厚み方向における中央から前記保持部材の側へ前記接合層の厚みの30%以下の範囲および前記中央から前記ベース部材の側へ前記接合層の厚みの30%以下の範囲に占める前記フィラーの断面積の総和の割合を第3割合としたとき、前記第1割合を前記第3割合で除した値と、前記第2割合を前記第3割合で除した値と、のうち少なくとも一方は、0.5以上であること。
条件(C):前記フィラーのうちアスペクト比が1.4以上の前記フィラーは、アスペクト比が1.4未満の前記フィラーよりも多いこと。
前記第1フィラーと前記第2フィラーとのうち前記接合層に含まれている少なくとも一方には、アスペクト比が1.4以上の前記フィラーが含まれており、
前記第1フィラーと前記第2フィラーとのうち前記接合層に含まれている少なくとも一方には、アスペクト比が1.4未満の前記フィラーが含まれており、
前記第1フィラーと前記第2フィラーとのうち前記接合層に含まれている少なくとも一方において、アスペクト比が1.4以上の前記フィラーの断面積の総和は、アスペクト比が1.4未満の前記フィラーの断面積の総和よりも大きいことを特徴とする、保持装置。
【請求項11】
保持装置であって、
対象物を保持する保持面を有する保持部材と、
前記保持部材のうち前記保持面の側とは反対側に配置されたベース部材と、
前記保持部材と前記ベース部材とを接合し、複数のフィラーを含む接合層と、を備え、
以下の条件(A)~(C)の
うち少なくとも前記条件(A)を満たしており、
条件(A):前記フィラーには、前記保持部材に接触している第1フィラーと前記ベース部材に接触している第2フィラーとのうち少なくとも一方が含まれていること。
条件(B):前記接合層のうち前記保持部材との界面から1μm以下の範囲に占める前記フィラーの断面積の総和の割合を第1割合とし、前記接合層のうち前記ベース部材との界面から1μm以下の範囲に占める前記フィラーの断面積の総和の割合を第2割合とし、前記接合層のうち前記接合層の厚み方向における中央から前記保持部材の側へ前記接合層の厚みの30%以下の範囲および前記中央から前記ベース部材の側へ前記接合層の厚みの30%以下の範囲に占める前記フィラーの断面積の総和の割合を第3割合としたとき、前記第1割合を前記第3割合で除した値と、前記第2割合を前記第3割合で除した値と、のうち少なくとも一方は、0.5以上であること。
条件(C):前記フィラーのうちアスペクト比が1.4以上の前記フィラーは、アスペクト比が1.4未満の前記フィラーよりも多いこと。
前記保持部材のうち前記接合層に接合された部分と前記ベース部材のうち前記接合層に接合された部分とのうち少なくとも一方には、前記フィラーの平均粒径よりも深く窪んだ窪み部が形成され、
前記窪み部の深さは前記平均粒径よりも大きく、かつ、前記窪み部は前記接合層で埋められており、
前記窪み部を画定している面には、前記フィラーの平均粒径よりも粒径が大きい大径フィラーが接触していることを特徴とする、保持装置。
【請求項12】
保持装置であって、
対象物を保持する保持面を有する保持部材と、
前記保持部材のうち前記保持面の側とは反対側に配置されたベース部材と、
前記保持部材と前記ベース部材とを接合し、複数のフィラーを含む接合層と、を備え、
以下の条件(A)~(C)の
うち少なくとも前記条件(A)を満たしており、
条件(A):前記フィラーには、前記保持部材に接触している第1フィラーと前記ベース部材に接触している第2フィラーとのうち少なくとも一方が含まれていること。
条件(B):前記接合層のうち前記保持部材との界面から1μm以下の範囲に占める前記フィラーの断面積の総和の割合を第1割合とし、前記接合層のうち前記ベース部材との界面から1μm以下の範囲に占める前記フィラーの断面積の総和の割合を第2割合とし、前記接合層のうち前記接合層の厚み方向における中央から前記保持部材の側へ前記接合層の厚みの30%以下の範囲および前記中央から前記ベース部材の側へ前記接合層の厚みの30%以下の範囲に占める前記フィラーの断面積の総和の割合を第3割合としたとき、前記第1割合を前記第3割合で除した値と、前記第2割合を前記第3割合で除した値と、のうち少なくとも一方は、0.5以上であること。
条件(C):前記フィラーのうちアスペクト比が1.4以上の前記フィラーは、アスペクト比が1.4未満の前記フィラーよりも多いこと。
前記保持部材のうち前記接合層に接合された部分と前記ベース部材のうち前記接合層に接合された部分とのうち少なくとも一方には、前記フィラーの平均粒径よりも深く窪んだ窪み部が形成され、
前記窪み部の深さは前記平均粒径よりも大きく、かつ、前記窪み部は前記接合層で埋められており、
前記窪み部を画定している面には、アスペクト比が1.4以上の前記フィラーが接触していることを特徴とする、保持装置。
【請求項13】
静電チャックであって、
請求項1から請求項
12までのいずれか一項に記載の保持装置と、
前記保持面に静電引力を発生させる静電電極と、を備えることを特徴とする、静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持装置および静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
対象物を静電引力により保持する保持部材が知られている。例えば、特許文献1には、そのような保持部材と、ベース部材と、保持部材とベース部材とを接合する接合層と、を備えた静電チャックが開示されている。この接合層は、充填材を含有する第1樹脂層と、充填材を含有しない第2樹脂層と、を含むとともに、第2樹脂層は、第1樹脂層と保持部材との間および第1樹脂層とベース部材との間に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の静電チャックでは、充填材を含有しないことで第1樹脂層よりも熱伝導率が低くなっている第2樹脂層が、接合層のうち保持部材との界面およびベース部材との界面に存在していることで、接合層の熱抵抗を大きくしていた。このため、接合層の熱抵抗を低減することについては、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、接合層の熱抵抗を低減することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。
(1)本発明の一形態によれば、保持装置が提供される。この保持装置は、対象物を保持する保持面を有する保持部材と、前記保持部材のうち前記保持面の側とは反対側に配置されたベース部材と、前記保持部材と前記ベース部材とを接合し、複数のフィラーを含む接合層と、を備え、以下の条件(A)~(C)の少なくとも1つを満たすことを特徴とする、保持装置。
条件(A):前記フィラーには、前記保持部材に接触している第1フィラーと前記ベース部材に接触している第2フィラーとのうち少なくとも一方が含まれていること。
条件(B):前記接合層のうち前記保持部材との界面から1μm以下の範囲に占める前記フィラーの断面積の総和の割合を第1割合とし、前記接合層のうち前記ベース部材との界面から1μm以下の範囲に占める前記フィラーの断面積の総和の割合を第2割合とし、前記接合層のうち前記接合層の厚み方向における中央から前記保持部材の側へ前記接合層の厚みの30%以下の範囲および前記中央から前記ベース部材の側へ前記接合層の厚みの30%以下の範囲に占める前記フィラーの断面積の総和の割合を第3割合としたとき、前記第1割合を前記第3割合で除した値と、前記第2割合を前記第3割合で除した値と、のうち少なくとも一方は、0.5以上であること。
条件(C):前記フィラーのうちアスペクト比が1.4以上の前記フィラーは、アスペクト比が1.4未満の前記フィラーよりも多いこと。
【0007】
この構成によれば、保持装置は、条件(A)~(C)の少なくとも1つを満たしている。条件(A)を満たす場合、熱伝導率が比較的高いフィラーが保持部材とベース部材とのうち少なくとも一方に接触していることから、接合層と保持部材との界面と、接合層とベース部材との界面と、のうち少なくとも一方の界面における熱抵抗を低減することができる。条件(B)を満たす場合、接合層のうち保持部材との界面から1μm以下の範囲と、接合層のうちベース部材との界面から1μm以下の範囲と、のうち少なくとも一方に比較的多くのフィラーが含まれていることから、接合層のうち保持部材との界面近傍と、接合層のうちベース部材との界面近傍と、のうち少なくとも一方の界面近傍における熱抵抗を低減することができる。条件(C)を満たす場合、接合層に含まれているフィラーのうちアスペクト比が1.4以上のフィラーはアスペクト比が1.4未満のフィラーよりも多いため、少ないフィラーで熱を接合層の厚み方向に伝えやすくすることができることから、柔軟性を保ちつつ接合層の熱抵抗を低減することができる。このように、条件(A)~(C)の少なくとも1つを満たすことによって、接合層の熱抵抗を低減することができる。
【0008】
(2)上記形態の保持装置において、前記保持装置は、少なくとも前記条件(A)を満たしており、前記第1フィラーと前記第2フィラーとのうち前記接合層に含まれている少なくとも一方には、前記フィラーの平均粒径よりも粒径が大きい大径フィラーが含まれていてもよい。
この構成によれば、第1フィラーと第2フィラーとのうち接合層に含まれている少なくとも一方には、大径フィラーが含まれていることから、界面から熱を接合層の厚み方向に伝えやすくすることができる。その結果、界面の熱抵抗をより一層低減することができる。
【0009】
(3)上記形態の保持装置において、前記保持装置は、少なくとも前記条件(A)を満たしており、前記第1フィラーと前記第2フィラーとのうち前記接合層に含まれている少なくとも一方には、前記平均粒径よりも粒径が小さい小径フィラーが含まれていてもよい。
この構成によれば、第1フィラーと第2フィラーとのうち接合層に含まれている少なくとも一方には、大径フィラーに加えて小径フィラーも含まれているため、保持部材もしくはベース部材に接触しているフィラーの数が多いことから、界面から熱を接合層の厚み方向により一層伝えやすくすることができる。
【0010】
(4)上記形態の保持装置において、前記保持装置は、少なくとも前記条件(A)を満たしており、前記第1フィラーと前記第2フィラーとのうち前記接合層に含まれている少なくとも一方において、前記大径フィラーの断面積の総和は、前記小径フィラーの断面積の総和よりも大きくてもよい。
この構成によれば、第1フィラーと第2フィラーとのうち接合層に含まれている少なくとも一方において、小径フィラーの量に対し、大径フィラーの量がある程度保証されていることから、大径フィラーによる界面の熱抵抗の低減作用を保証することができる。
【0011】
(5)上記形態の保持装置において、前記保持装置は、少なくとも前記条件(A)を満たしており、前記第1フィラーと前記第2フィラーとのうち前記接合層に含まれている少なくとも一方には、アスペクト比が1.4以上の前記フィラーが含まれていてもよい。
この構成によれば、第1フィラーと第2フィラーとのうち接合層に含まれている少なくとも一方には、アスペクト比が1.4以上のフィラーが含まれていることから、界面から熱を接合層の厚み方向に伝えやすくすることができる。その結果、界面の熱抵抗をより一層低減することができる。
【0012】
(6)上記形態の保持装置において、前記保持装置は、少なくとも前記条件(A)を満たしており、前記第1フィラーと前記第2フィラーとのうち前記接合層に含まれている少なくとも一方には、アスペクト比が1.4未満の前記フィラーが含まれていてもよい。
この構成によれば、第1フィラーと第2フィラーとのうち接合層に含まれている少なくとも一方には、アスペクト比が1.4以上のフィラーに加えてアスペクト比が1.4未満のフィラーも含まれているため、保持部材もしくはベース部材に接触しているフィラーの数が多いことから、界面から熱を接合層の厚み方向により一層伝えやすくすることができる。
【0013】
(7)上記形態の保持装置において、前記保持装置は、少なくとも前記条件(A)を満たしており、前記第1フィラーと前記第2フィラーとのうち前記接合層に含まれている少なくとも一方において、アスペクト比が1.4以上の前記フィラーの断面積の総和は、アスペクト比が1.4未満の前記フィラーの断面積の総和よりも大きくてもよい。
この構成によれば、第1フィラーと第2フィラーとのうち接合層に含まれている少なくとも一方において、アスペクト比が1.4未満のフィラーの量に対し、アスペクト比が1.4以上のフィラーの量がある程度保証されていることから、アスペクト比が1.4以上のフィラーによる界面の熱抵抗の低減を保証することができる。
【0014】
(8)上記形態の保持装置において、前記保持装置は、少なくとも前記条件(A)を満たしており、前記保持部材のうち前記接合層に接合された部分と前記ベース部材のうち前記接合層に接合された部分とのうち少なくとも一方には、前記平均粒径よりも深く窪んだ窪み部が形成され、前記窪み部の深さは前記フィラーの平均粒径よりも大きく、かつ、前記窪み部は前記接合層で埋められており、前記窪み部を画定している面には、前記フィラーの平均粒径よりも粒径が大きい大径フィラーが接触していてもよい。
この構成によれば、窪み部の形成は表面積の拡大につながることから、保持部材のうち接合層との界面とベース部材のうち接合層との界面とのうち少なくとも一方の界面の熱抵抗を低減することができる。また、窪み部を画定している面にはフィラーの平均粒径よりも粒径が大きい大径フィラーが接触していることから、さらに当該界面の熱抵抗を低減することができる。
【0015】
(9)上記形態の保持装置において、前記保持装置は、少なくとも前記条件(A)を満たしており、前記保持部材のうち前記接合層に接合された部分と前記ベース部材のうち前記接合層に接合された部分とのうち少なくとも一方には、前記平均粒径よりも深く窪んだ窪み部が形成され、前記窪み部の深さは前記フィラーの平均粒径よりも大きく、かつ、前記窪み部は前記接合層で埋められており、前記窪み部を画定している面には、アスペクト比が1.4以上の前記フィラーが接触していてもよい。
この構成によれば、窪み部の形成は表面積の拡大につながることから、保持部材のうち接合層との界面とベース部材のうち接合層との界面とのうち少なくとも一方の界面の熱抵抗を低減することができる。また、窪み部を画定している面にはアスペクト比が1.4以上のフィラーが接触していることから、さらに当該界面の熱抵抗を低減することができる。
【0016】
(10)本発明の別の一形態によれば、静電チャックが提供される。この静電チャックは、請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の保持装置と、前記保持面に静電引力を発生させる静電電極と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、静電電極に対して電力が供給されることによって、静電引力(吸着力)が発生し、この静電引力により対象物を保持面の側に保持することができる。また、条件(A)~(C)の少なくとも1つを満たす保持装置を備えることから、接合層の熱抵抗が低減された静電チャックを提供することができる。
【0017】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、保持部材、保持部材および保持部材の保持面に静電引力を発生させる静電電極を備える静電チャック、真空チャック、セラミックスヒータ、半導体製造装置、およびこれらを備える部品、およびこれらの製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態の静電チャックの断面構成を模式的に示す説明図である。
【
図3】フィラーの各々の一部にハッチングを施した説明図である。
【
図4】接合層の断面構成における各範囲を示した説明図である。
【
図5】第2実施形態の保持装置の断面構成を拡大した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の静電チャック1の断面構成を模式的に示す説明図である。静電チャック1は、対象物である半導体ウエハWを静電引力により吸着して保持する装置である。
図1に示した矢印は、静電チャック1に対して、半導体ウエハWが吸着される方向を示している。静電チャック1は、例えば、半導体製造装置の真空チャンバー内で半導体ウエハWを固定するために使用される。静電チャック1は、保持部材10と、ベース部材20と、接合層30と、を備える。静電チャック1を構成する部材のうち、保持部材10、ベース部材20および接合層30を併せて保持装置Hとも呼ぶ。
【0020】
保持部材10は、対象物である半導体ウエハWを保持する円盤状の部材であり、アルミナや窒化アルミニウム等により形成されている。保持部材10は、保持面10fを有する。保持面10fは、半導体ウエハWを保持する側の円形状の面である。
【0021】
静電電極12は、保持部材10の内部に配置されている。静電電極12は、円盤状の部材であり、タングステンやモリブデン等の導電性材料によって形成されている。ビア14は、保持部材10の内部において、静電電極12に接続されている。ビア14は、棒状の部材であり、静電電極12と同様の材料によって形成されている。
【0022】
ベース部材20は、保持部材10のうち保持面10fとは反対側に配置された円盤状の部材であり、アルミニウム又はアルミニウム合金等により形成されている。ベース部材20の内部には、冷媒流路22が配置されている。冷媒流路22は、冷却媒体(例えば、フッ素化液、純水等)を流通させる流路である。
【0023】
接合層30は、保持部材10とベース部材20との間に配置され、保持部材10とベース部材20とを接合する樹脂層R(
図2以降で図示)であり、複数のフィラーF(
図2以降で図示)を含む。詳細は後述する。
【0024】
静電チャック1の内部には、ベース部材20および接合層30を貫通して保持部材10の内部まで至った貫通穴40が形成されている。貫通穴40には、筒状の絶縁部材42が嵌められている。また、貫通穴40のうち保持部材10の内部に位置している底面には、ビア14に接続されたメタライズ層44が配置されている。メタライズ層44は、板状の部材であり、静電電極12やビア14と同様の材料によって形成されている。接続端子46は、メタライズ層44に接続されているとともに端子金具48に接続されている。端子金具48には、図示しない外部電源が接続されている。すなわち、静電電極12は、ビア14、メタライズ層44、接続端子46、端子金具48を介して、図示しない外部電源から電力が供給されることによって、保持面10fに静電引力を発生させる。半導体ウエハWは、この静電引力で保持面10fに向けて吸着されることによって、保持面10fに保持される。
【0025】
図2は、接合層30の断面構成を拡大した拡大図である。上述したように、接合層30は、複数のフィラーFを含む樹脂層Rである。
図2において、接合層30のうちフィラーF以外の部分は樹脂層Rを示している。フィラーFの熱伝導率は、樹脂層Rの熱伝導率よりも高くなっている。保持装置H(保持部材10、ベース部材20および接合層30)は、以下の条件(A)を満たしている。
条件(A):複数のフィラーFには、保持部材10に接触している第1フィラーF1とベース部材20に接触している第2フィラーF2とのうち少なくとも一方が含まれていること。
なお、走査型電子顕微鏡(SEM)で接合層30の各箇所を撮影した際、条件(A)を満たしている箇所を1箇所でも撮影できれば、接合層30は条件(A)を満たすとする。
【0026】
条件(A)について、本実施形態では、接合層30に含まれている複数のフィラーFには、保持部材10に接触している第1フィラーF1およびベース部材20に接触している第2フィラーF2のいずれもが含まれている。ここで、保持部材10と接合層30との界面BD1から0.5μm以下の範囲R1内、もしくは、ベース部材20と接合層30との界面BD2から0.5μm以下の範囲R2内に一部でもフィラーFが含まれている場合、そのようなフィラーFを、第1フィラーF1もしくは第2フィラーF2とする。
【0027】
第1フィラーF1には、フィラーFの平均粒径よりも粒径が大きい大径フィラーである第1フィラーF1a、F1b、F1cが含まれている。第2フィラーF2にも、フィラーFの平均粒径よりも粒径が大きい大径フィラーである第2フィラーF2a、F2c、F2e、F2gが含まれている。さらに、本実施形態では、第1フィラーF1および第2フィラーF2の各々には、フィラーFの平均粒径よりも粒径が小さい小径フィラーである第1フィラーF1dや第2フィラーF2b、F2d、F2fも含まれている。ここで、平均粒径とは、SEMで撮影した接合層30の断面画像を2値化してから、各フィラーFの面積を真円(πr2)近似したのち、その直径(2r)を各フィラーFの粒径とみなした際の、それら粒径のメジアン径に相当する。より詳細には、少なくとも500個以上のフィラーFが含まれるように接合層30が撮像された断面画像を用い、断面画像に写った全てのフィラーFの粒径のメジアン径が、平均粒径に相当する。
【0028】
図3は、
図2に示した第1フィラーF1および第2フィラーF2の各々の一部にハッチングを施した説明図である。第1フィラーF1のうち大径フィラーの断面積の総和は、小径フィラーの断面積の総和よりも大きい。換言すれば、平均粒径よりも粒径が大きい第1フィラーF1の断面積の総和は、平均粒径よりも粒径が小さい第1フィラーF1の断面積の総和よりも大きい。ここで、第1フィラーF1のうち大径フィラー(平均粒径よりも粒径が大きい第1フィラーF1)の断面積の総和とは、
図3を用いて説明すると、第1フィラーF1a、F1b、F1cのうち、範囲R1に含まれた部分の断面積の合計ではなく、全体の断面積(
図3の第1フィラーF1a、F1b、F1cにおいてハッチングで図示)の合計のことである。同様に、第1フィラーF1のうち小径フィラー(平均粒径よりも粒径が大きい第1フィラーF1)の断面積の総和とは、
図3を用いて説明すると、第1フィラーF1dのうち、範囲R2に含まれた部分の断面積の合計ではなく、全体の断面積(
図3の第1フィラーF1dにおいてハッチングで図示)のことである。
【0029】
また、第1フィラーF1と同様に、第2フィラーF2のうち大径フィラーの断面積の総和は、小径フィラーの断面積の総和よりも大きい。
図3を用いて説明すると、第2フィラーF2a、F2c、F2e、F2gの全体の断面積(
図3の第2フィラーF2a、F2c、F2e、F2gにおいてハッチングで図示)の合計は、第2フィラーF2b、F2d、F2fの全体の断面積(
図3の第2フィラーF2b、F2d、F2fにおいてハッチングで図示)の合計よりも大きいということである。
【0030】
保持装置Hは、上記の条件(A)に加えて、以下の条件(B)も満たしている。なお、以下の条件(B)における範囲Rg1、範囲Rg2、中央O、範囲Ro1、範囲Ro2については、
図4に示されている。
条件(B):接合層30のうち保持部材10との界面BD1から1μm以下の範囲Rg1に占めるフィラーFの断面積の総和の割合を第1割合とし、接合層30のうちベース部材20との界面BD2から1μm以下の範囲Rg2に占めるフィラーFの断面積の総和の割合を第2割合とし、接合層30のうち接合層30の厚み方向における中央Oから保持部材10の側へ接合層30の厚みの30%以下の範囲Ro1および中央Oからベース部材20の側へ接合層30の厚みの30%以下の範囲Ro2に占めるフィラーFの断面積の総和の割合を第3割合としたとき、第1割合を第3割合で除した値と、第2割合を第3割合で除した値と、のうち少なくとも一方は、0.5以上であること。
なお、SEMで接合層30の各箇所を撮影した際、条件(B)を満たしている箇所を1箇所でも撮影できれば、接合層30は条件(B)を満たすとする。このとき、条件(B)を満たすか否かの判断基準となる第1割合を第3割合で除した値および第2割合を第3割合で除した値は、同一の断面画像内にて算出された第1~3割合を用いて計算された値とする。
【0031】
条件(B)において、本実施形態では、第1割合を第3割合で除した値と、第2割合を第3割合で除した値と、のいずれもが0.5以上である。ここで、範囲Rg1に占めるフィラーFの断面積の総和の割合(第1割合)とは、
図4を用いて説明すると、範囲Rg1の断面積に対する、第1フィラーF1a~F1dのうちの範囲Rg1に含まれた部分の断面積(
図4の第1フィラーF1a~F1dにおいてハッチングで図示)の合計の割合のことである。同様に、範囲Rg2に占めるフィラーFの断面積の総和の割合とは、
図4を用いて説明すると、範囲Rg2の断面積に対する、第2フィラーF2a~F2gのうちの範囲Rg2に含まれた部分の面積(
図4の第2フィラーF2a~F2gにおいてハッチングで図示)の合計のことである。
【0032】
範囲Ro1および範囲Ro2に占めるフィラーFの断面積の総和の割合(第3割合)とは、範囲Ro1の断面積と範囲Ro2の断面積との合計に対する、各フィラーFのうちの範囲Ro1および範囲Ro2に含まれた部分の断面積(
図4の範囲Ro1内および範囲Ro2内のフィラーFにおいてハッチングで図示)の合計の割合のことである。
【0033】
保持装置Hは、上記の条件(A)(B)に加えて、以下の条件(C)も満たしている。なお、各フィラーFのアスペクト比は、SEMで撮影した接合層30の断面画像を2値化してから、最小二乗法によるフィッティングで各フィラーFを楕円近似したのち、その楕円の長径を短径で除することにより求められる。
条件(C):フィラーFのうちアスペクト比が1.4以上のフィラーFはアスペクト比が1.4未満のフィラーFよりも多いこと。
なお、SEMで接合層30の各箇所を撮影した際、条件(C)を満たしている箇所を1箇所でも撮影できれば、接合層30は条件(C)を満たすとする。より詳細には、少なくとも500個以上のフィラーFが含まれるように接合層30が撮像された断面画像のうち、条件(C)を満たす断面画像が1枚でも確認されれば、接合層30は条件(C)を満たすとする。
【0034】
条件(C)について、本実施形態では、第1フィラーF1(保持部材10に接触しているフィラーF)および第2フィラーF2(ベース部材20に接触しているフィラーF)の各々には、アスペクト比が1.4以上のフィラーFが含まれている。また、第1フィラーF1および第2フィラーF2の各々には、アスペクト比が1.4未満のフィラーFも含まれている。また、第1フィラーF1のうち、アスペクト比が1.4以上のフィラーFの断面積の総和は、アスペクト比が1.4未満のフィラーFの断面積の総和よりも大きい。同様に、第2フィラーF2のうち、アスペクト比が1.4以上のフィラーFの断面積の総和は、アスペクト比が1.4未満のフィラーFの断面積の総和よりも大きい。ここでいう断面積の総和とは、上述した大径フィラーおよび小径フィラーの場合と同様に、各フィラーFのうち範囲R1、R2に含まれた部分の断面積の合計ではなく、各フィラーFの全体の断面積の合計のことである。
【0035】
静電チャック1においては、アスペクト比が1.4以上のフィラーFがアスペクト比が1.4未満のフィラーFよりも多く含まれるように樹脂材料(接合層30の基となる材料)にフィラーFを含有させることで、保持装置Hが条件(C)を満たせるようにしている。静電チャック1は、製造時において、このような樹脂材料がベース部材20の表面上に塗布されたのち熱硬化で接合層30となってから、その接合層30のうちベース部材20とは反対側の表面に保持部材10が載せられることによって製造される。この製造工程において、フィラーFが樹脂材料(接合層30)の厚み方向の端側(保持部材10との界面近傍やベース部材20との界面近傍)に配置されやすいよう、樹脂材料は、完全に硬化して接合層30となる前の半硬化の状態の際に、厚み方向に荷重をかけられる。そして、荷重がかけられた状態で完全に硬化することによって、樹脂材料は接合層30となる。このように半硬化時に荷重をかけることで、特に、大径フィラーやアスペクト比が1.4以上のフィラーFが樹脂材料(接合層30)の厚み方向の端側に配置されやすくなる。すなわち、半硬化時に荷重をかけられることによって、保持装置Hは、条件(A)(B)を満たしやすくなっている。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の静電チャック1に含まれている保持装置H(保持部材10、ベース部材20および接合層30)は、条件(A)~(C)のいずれも満たしている。条件(A)を満たす場合、(樹脂層Rと比べて)熱伝導率が比較的高いフィラーFのうち第1フィラーF1および第2フィラーF2が保持部材10およびベース部材20に接触していることから、接合層30と保持部材10との界面BD1(
図2~4参照)と、接合層30とベース部材20との界面BD2(
図2~4参照)と、のいずれの界面における熱抵抗も低減することができる。条件(B)を満たす場合、界面BD1から1μm以下の範囲Rg1と、界面BD2から1μm以下の範囲Rg2と、のいずれにも比較的多くのフィラーFが含まれている(第1割合/第3割合≧0.5、かつ、第2割合/第3割合≧0.5)ことから、界面BD1近傍と界面BD2近傍と、のいずれの界面近傍における熱抵抗も低減することができる。条件(C)を満たす場合、接合層30に含まれているフィラーFのうちアスペクト比が1.4以上のフィラーFはアスペクト比が1.4未満のフィラーFよりも多いため、少ないフィラーFで熱を接合層30の厚み方向に伝えやすくすることができることから、柔軟性を保ちつつ接合層30の熱抵抗を低減することができる。このように、保持装置Hが条件(A)~(C)のいずれも満たすことによって、接合層30の熱抵抗を低減することができる。
【0037】
また、本実施形態に含まれている保持装置Hにおいて、第1フィラーF1および第2フィラーF2には、フィラーFの平均粒径よりも粒径が大きい大径フィラーである第1フィラーF1a、F1b、F1cおよび第2フィラーF2a、F2c、F2e、F2gが含まれている。このため、界面BD1、BD2から熱を接合層30の厚み方向に伝えやすくすることができる。その結果、界面BD1、BD2の熱抵抗をより一層低減することができる。
【0038】
また、本実施形態に含まれている保持装置Hにおいて、第1フィラーF1と第2フィラーF2には、大径フィラーに加えて、フィラーFの平均粒径よりも粒径が小さい小径フィラーである第1フィラーF1dおよび第2フィラーF2b、F2d、F2fが含まれている。このため、保持部材10およびベース部材20に接触しているフィラーFの数が多いことから、界面BD1、BD2から熱を接合層30の厚み方向により一層伝えやすくすることができる。
【0039】
また、本実施形態に含まれている保持装置Hにおいて、第1フィラーF1において、大径フィラー(
図2ではF1a、F1b、F1cに相当)の断面積の総和は、小径フィラー(
図2ではF1dに相当)の断面積の総和よりも大きい。また、第2フィラーF2において、大径フィラー(
図2ではF2a、F2c、F2e、F2gに相当)の断面積の総和は、小径フィラー(
図2ではF2b、F2d、F2fに相当)の断面積の総和よりも大きい。このため、第1フィラーF1および第2フィラーF2のいずれにおいても、小径フィラーの量に対する大径フィラーの量がある程度保証されていることから、大径フィラーによる界面BD1、BD2の熱抵抗の低減作用を保証することができる。
【0040】
また、本実施形態に含まれている保持装置Hにおいて、第1フィラーF1および第2フィラーF2には、アスペクト比が1.4以上のフィラーFが含まれている。このため、界面BD1、BD2から熱を接合層30の厚み方向に伝えやすくすることができる。その結果、界面BD1、BD2の熱抵抗をより一層低減することができる。
【0041】
また、本実施形態に含まれている保持装置Hにおいて、第1フィラーF1と第2フィラーF2には、アスペクト比が1.4以上のフィラーFに加えて、アスペクト比が1.4未満のフィラーFが含まれている。このため、保持部材10およびベース部材20に接触しているフィラーFの数が多いことから、界面BD1、BD2から熱を接合層30の厚み方向により一層伝えやすくすることができる。
【0042】
また、本実施形態に含まれている保持装置Hにおいて、第1フィラーF1および第2フィラーF2のいずれにおいても、アスペクト比が1.4以上のフィラーFの断面積の総和は、アスペクト比が1.4未満のフィラーFの断面積の総和よりも大きい。このため、第1フィラーF1および第2フィラーF2のいずれにおいても、アスペクト比が1.4未満のフィラーの量に対するアスペクト比が1.4以上のフィラーの量がある程度保証されていることから、アスペクト比が1.4以上のフィラーによる界面BD1、BD2の熱抵抗の低減作用を保証することができる。
【0043】
また、本実施形態の静電チャック1においては、静電電極12に対して電力が供給されることによって、静電引力(吸着力)が発生し、この静電引力により半導体ウエハWを保持面10fの側に保持することができる。また、条件(A)~(C)のいずれも満たす保持装置Hを備えることから、接合層30の熱抵抗が低減された静電チャック1を提供することができる。
【0044】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態の保持装置Haのうちベース部材20aおよび接合層30を示した説明図である。第2実施形態の保持装置Haは、第1実施形態の保持装置Hと比べて、ベース部材20とは異なるベース部材20aを備える点を除いて、第1実施形態の保持装置Hと同じである。すなわち、第2実施形態の保持装置Haも、第1実施形態の保持装置Hと同様に、静電チャック1に備わっている構成であるものとする。第2実施形態の説明において、第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、先行する説明を参照する。なお、
図1~
図4では、ベース部材20にハッチングが施されていたが、
図5では、図示の便宜上、ベース部材20にハッチングが施されていない。また、
図5では、図示の便宜上、フィラーFを円形で示している。
【0045】
ベース部材20aのうち接合層30に接合された部分には、フィラーFの平均粒径よりも深く窪んだ窪み部20Dが形成されている。窪み部20Dは、レーザー加工等によって形成される。また、窪み部20Dの深さDPはフィラーFの平均粒径よりも大きく、かつ、窪み部20Dは接合層30で埋められている。さらに、窪み部20Dを画定している面20DSには、フィラーFの平均粒径よりも粒径が大きい大径フィラーFLが接触している。ここで、面20DSから0.5μm以下の範囲Ra内に一部でもフィラーFが含まれている場合、そのようなフィラーFは面20DSに接触しているものとみなす。なお、窪み部20Dにおいては、面20DSが界面BD2とみなせることから、範囲Rg2(
図4参照)は、面20DSから1μm以下の範囲と特定される。
【0046】
以上説明した第2実施形態の保持装置Haによれば、第1実施形態と同様に、接合層30の熱抵抗を低減することができる。また、第2実施形態の保持装置Haでは、窪み部20Dの形成は表面積の拡大につながることから、ベース部材20aのうち接合層30との界面BD2の熱抵抗を低減することができる。また、窪み部20Dを画定している面20DSにはフィラーFの平均粒径よりも粒径が大きい大径フィラーFLが接触していることから、さらに界面BD2の熱抵抗を低減することができる。
【0047】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0048】
上記実施形態において、さらに、保持部材10の内部に、タングステンやモリブデン等の導電性材料によって形成された複数のヒータ電極を備えていてもよい。このような形態の場合、保持部材10に対象物が保持されている際、外部電源から供給される電力でヒータ電極が発熱することによって、対象物を温めることができる。
【0049】
上記実施形態では、保持装置H、Haは、条件(A)~(C)のいずれも満たしていたが、これに限られない。保持装置H、Haは、条件(A)~(C)の少なくとも1つを満たしていればよい。
【0050】
上記実施形態では、接合層30に含まれている複数のフィラーFには、第1フィラーF1(保持部材10に接触しているフィラーF)および第2フィラーF2(ベース部材20に接触しているフィラーF)のいずれもが含まれていることで、条件(A)を満たしていたが、これに限られない。接合層30に含まれている複数のフィラーFには、第1フィラーF1と第2フィラーF2とのうち一方だけが含まれていることで、条件(A)を満たしていてもよい。
【0051】
上記実施形態では、第1フィラーF1および第2フィラーF2のいずれにも、大径フィラーおよび小径フィラーが含まれていたが、これに限られない。第1フィラーF1および第2フィラーF2の各々には、大径フィラーと小径フィラーとのうち一方のみが含まれていてもよい。
【0052】
上記実施形態では、第1フィラーF1および第2フィラーF2のいずれにおいても、大径フィラーの断面積の総和が、小径フィラーの断面積の総和よりも大きかったが、これに限られない。第1フィラーF1と第2フィラーF2とのうち一方のみにおいて、大径フィラーの断面積の総和が、小径フィラーの断面積の総和より大きくてもよい。または、第1フィラーF1および第2フィラーF2のいずれにおいても、大径フィラーの断面積の総和が、小径フィラーの断面積の総和より小さくてもよい。
【0053】
上記実施形態では、第1割合を第3割合で除した値と、第2割合を第3割合で除した値と、のいずれもが0.5以上であることで、条件(B)を満たしていたが、これに限られない。第1割合を第3割合で除した値と、第2割合を第3割合で除した値と、のうち一方のみが0.5以上であることで、条件(B)を満たしていてもよい。
【0054】
上記実施形態では、第1フィラーF1および第2フィラーF2のいずれにも、アスペクト比が1.4以上のフィラーFおよびアスペクト比が1.4未満のフィラーFが含まれていたが、これに限られない。第1フィラーF1および第2フィラーF2の各々には、1.4以上のフィラーFとアスペクト比が1.4未満のフィラーFとのうち一方のみが含まれていてもよい。
【0055】
上記実施形態では、第1フィラーF1および第2フィラーF2のいずれにおいても、アスペクト比が1.4以上のフィラーFの断面積の総和が、アスペクト比が1.4未満のフィラーFの断面積の総和よりも大きかったが、これに限られない。第1フィラーF1と第2フィラーF2とのうち一方のみにおいて、アスペクト比が1.4以上のフィラーFの断面積の総和が、アスペクト比が1.4未満のフィラーFの断面積の総和より大きくてもよい。または、第1フィラーF1および第2フィラーF2のいずれにおいても、アスペクト比が1.4以上のフィラーFの断面積の総和が、アスペクト比が1.4未満のフィラーFの断面積の総和より小さくてもよい。
【0056】
第2実施形態では、ベース部材20aのうち接合層30に接合された部分に窪み部20Dが形成されていたが、これに限られない。保持部材10のうち接合層30に接合された部分に同様の窪み部が形成されていてもよい。このような形態においても、フィラーFの平均粒径よりも粒径が大きい大径フィラーFLが当該窪み部を画定している面に接触している場合には、さらに界面BD1(
図2等参照)の熱抵抗を低減することができる。また、窪み部20Dを画定している面や保持部材10に形成された窪み部を画定している面には、大径フィラーFLに代えて、もしくは、当該フィラーFLに加えて、アスペクト比が1.4以上のフィラーFが接触していてもよい。このような形態においても、さらに界面BD1、BD2(
図2等参照)の熱抵抗を低減することができる。
【0057】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0058】
本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
保持装置であって、
対象物を保持する保持面を有する保持部材と、
前記保持部材のうち前記保持面の側とは反対側に配置されたベース部材と、
前記保持部材と前記ベース部材とを接合し、複数のフィラーを含む接合層と、を備え、
以下の条件(A)~(C)の少なくとも1つを満たすことを特徴とする、保持装置。
条件(A):前記フィラーには、前記保持部材に接触している第1フィラーと前記ベース部材に接触している第2フィラーとのうち少なくとも一方が含まれていること。
条件(B):前記接合層のうち前記保持部材との界面から1μm以下の範囲に占める前記フィラーの断面積の総和の割合を第1割合とし、前記接合層のうち前記ベース部材との界面から1μm以下の範囲に占める前記フィラーの断面積の総和の割合を第2割合とし、前記接合層のうち前記接合層の厚み方向における中央から前記保持部材の側へ前記接合層の厚みの30%以下の範囲および前記中央から前記ベース部材の側へ前記接合層の厚みの30%以下の範囲に占める前記フィラーの断面積の総和の割合を第3割合としたとき、前記第1割合を前記第3割合で除した値と、前記第2割合を前記第3割合で除した値と、のうち少なくとも一方は、0.5以上であること。
条件(C):前記フィラーのうちアスペクト比が1.4以上の前記フィラーは、アスペクト比が1.4未満の前記フィラーよりも多いこと。
[適用例2]
適用例1に記載の保持装置であって、
前記保持装置は、少なくとも前記条件(A)を満たしており、
前記第1フィラーと前記第2フィラーとのうち前記接合層に含まれている少なくとも一方には、前記フィラーの平均粒径よりも粒径が大きい大径フィラーが含まれていることを特徴とする、保持装置。
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の保持装置であって、
前記保持装置は、少なくとも前記条件(A)を満たしており、
前記第1フィラーと前記第2フィラーとのうち前記接合層に含まれている少なくとも一方には、前記平均粒径よりも粒径が小さい小径フィラーが含まれていることを特徴とする、保持装置。
[適用例4]
適用例1から適用例3までのいずれかに記載の保持装置であって、
前記保持装置は、少なくとも前記条件(A)を満たしており、
前記第1フィラーと前記第2フィラーとのうち前記接合層に含まれている少なくとも一方において、前記大径フィラーの断面積の総和は、前記小径フィラーの断面積の総和よりも大きいことを特徴とする、保持装置。
[適用例5]
適用例1から適用例4までのいずれかに記載の保持装置であって、
前記保持装置は、少なくとも前記条件(A)を満たしており、
前記第1フィラーと前記第2フィラーとのうち前記接合層に含まれている少なくとも一方には、アスペクト比が1.4以上の前記フィラーが含まれていることを特徴とする、保持装置。
[適用例6]
適用例1から適用例5までのいずれかに記載の保持装置であって、
前記保持装置は、少なくとも前記条件(A)を満たしており、
前記第1フィラーと前記第2フィラーとのうち前記接合層に含まれている少なくとも一方には、アスペクト比が1.4未満の前記フィラーが含まれていることを特徴とする、保持装置。
[適用例7]
適用例1から適用例6までのいずれかに記載の保持装置であって、
前記保持装置は、少なくとも前記条件(A)を満たしており、
前記第1フィラーと前記第2フィラーとのうち前記接合層に含まれている少なくとも一方において、アスペクト比が1.4以上の前記フィラーの断面積の総和は、アスペクト比が1.4未満の前記フィラーの断面積の総和よりも大きいことを特徴とする、保持装置。
[適用例8]
適用例1から適用例7までのいずれかに記載の保持装置であって、
前記保持装置は、少なくとも前記条件(A)を満たしており、
前記保持部材のうち前記接合層に接合された部分と前記ベース部材のうち前記接合層に接合された部分とのうち少なくとも一方には、前記フィラーの平均粒径よりも深く窪んだ窪み部が形成され、
前記窪み部の深さは前記平均粒径よりも大きく、かつ、前記窪み部は前記接合層で埋められており、
前記窪み部を画定している面には、前記フィラーの平均粒径よりも粒径が大きい大径フィラーが接触していることを特徴とする、保持装置。
[適用例9]
適用例1から適用例8までのいずれかに記載の保持装置であって、
前記保持装置は、少なくとも前記条件(A)を満たしており、
前記保持部材のうち前記接合層に接合された部分と前記ベース部材のうち前記接合層に接合された部分とのうち少なくとも一方には、前記フィラーの平均粒径よりも深く窪んだ窪み部が形成され、
前記窪み部の深さは前記平均粒径よりも大きく、かつ、前記窪み部は前記接合層で埋められており、
前記窪み部を画定している面には、アスペクト比が1.4以上の前記フィラーが接触していることを特徴とする、保持装置。
[適用例10]
静電チャックであって、
適用例1から適用例9までのいずれかに記載の保持装置と、
前記保持面に静電引力を発生させる静電電極と、を備えることを特徴とする、静電チャック。
【符号の説明】
【0059】
1…静電チャック
10…保持部材
10f…保持面
12…静電電極
14…ビア
20,20a…ベース部材
20D…窪み部
20DS…面
22…冷媒流路
30…接合層
40…貫通穴
42…絶縁部材
44…メタライズ層
46…接続端子
48…端子金具
F…フィラー
F1…第1フィラー
F2…第2フィラー
H,Ha…保持装置
【要約】
【課題】接合層の熱抵抗を低減することができる技術を提供する。
【解決手段】保持装置は、以下の条件(A)~(C)の少なくとも1つを満たすことを特徴とする。条件(A):保持部材もしくはベース部材に接触しているフィラーを含むこと。条件(B):接合層のうち保持部材との界面およびベース部材との界面から1μm以下の範囲に占めるフィラーの断面積の総和の割合を第1割合および第2割合とし、接合層のうち接合層の厚み方向における中央から保持部材の側およびベース部材の側へ接合層の厚みの30%以下の範囲に占めるフィラーの断面積の総和の割合を第3割合としたとき、第1割合を第3割合で除した値と、第2割合を第3割合で除した値と、のうち少なくとも一方は、0.5以上であること。条件(C):フィラーのうちアスペクト比が1.4以上のフィラーは、アスペクト比が1.4未満のフィラーよりも多いこと。
【選択図】
図1