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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】磁気吸着装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B25J15/06 S
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023105856
(22)【出願日】2023-06-28
【審査請求日】2024-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】五艘 大貴
(72)【発明者】
【氏名】高野 寛史
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-186325(JP,A)
【文献】特開2022-041872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面がワークを吸着する吸着面であり、内部に圧力室を備えたシリンダチューブと、
永久磁石を備えて前記圧力室内を上下に移動するピストンと、
前記ワークを吸着するときに、前記ピストンを前記圧力室の下端へ移動させて前記永久磁石の磁力で前記ワークを前記吸着面に吸着させる制御部と、
前記ピストンの位置を検出するセンサと、を備え、
前記制御部は、前記ピストンを前記圧力室の下端へ移動させた後に、前記ワークが前記吸着面に吸着していない場合に、前記ピストンを上方へ移動させ、前記ピストンが上方へ移動したことを前記センサが検出したか否かによって、前記ワークが前記吸着面に吸着しているか否かを判定し、
前記ピストンは、前記圧力室を上部空間と下部空間とに隔て、
前記制御部は、前記ピストンを前記圧力室の下端へ移動させた後に、所定の判定圧力のエアを前記下部空間へ供給し、前記ワークが前記吸着面に吸着していない場合に、前記ピストンを上方へ移動させ、
前記判定圧力は、前記ワークと吸着している前記ピストンを前記ワークから引き離す圧力よりも小さく、前記ワークと吸着していない前記ピストンを上方へ移動させる最低上昇圧力よりも大きく設定されている
磁気吸着装置。
【請求項2】
底面がワークを吸着する吸着面であり、内部に圧力室を備えたシリンダチューブと、
永久磁石を備えて前記圧力室内を上下に移動するピストンと、
前記ワークを吸着するときに、前記ピストンを前記圧力室の下端へ移動させて前記永久磁石の磁力で前記ワークを前記吸着面に吸着させる制御部と、
前記ピストンの位置を検出するセンサと、を備え、
前記制御部は、前記ピストンを前記圧力室の下端へ移動させた後に、前記ワークが前記吸着面に吸着していない場合に、前記ピストンを上方へ移動させ、前記ピストンが上方へ移動したことを前記センサが検出したか否かによって、前記ワークが前記吸着面に吸着しているか否かを判定し、
前記ワークと吸着していない前記ピストンを上方へ移動させる弾性力を有する弾性部材をさらに備え、
前記弾性力は、前記ワークと吸着している前記ピストンを前記ワークから引き離す力よりも小さく設定され、
前記制御部が前記ピストンを前記圧力室の下端へ移動させた後に、前記ワークが前記吸着面に吸着していない場合に、前記弾性部材は、前記弾性力によって前記ピストンを上方へ移動させ
気吸着装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ピストンを前記圧力室の下端へ移動させた後に、前記ピストンが上方へ移動しない場合には前記ワークが前記吸着面に吸着していると判定し、前記ピストンが上方へ移動した場合には前記ワークが前記吸着面に吸着していないと判定する
請求項1または2に記載の磁気吸着装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の磁気吸着装置を備えた搬出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気吸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、永久磁石の力でワークを吸引保持するマグネットチャックが記載されている。特許文献1のマグネットチャックでは、ピストンが下死点にあるときに、シリンダチューブの下端の吸着面でワークを吸着する。吸着されたワークは、シリンダチューブの側面に設けられた光電センサや近接センサで検出されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-41872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のマグネットチャックでは、シリンダチューブの側面に光電センサを設けていたので、センサ直下の光が当たる部分のワークに穴が開いている場合には、光が反射されずにワークの有無を検出することができないという問題点があった。また、ワークがシリンダチューブの底面よりも小さい場合や光電センサの代わりに近接センサを設けた場合も同様の問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、底面がワークを吸着する吸着面であり、内部に圧力室を備えたシリンダチューブと、永久磁石を備えて前記圧力室内を上下に移動するピストンと、前記ワークを吸着するときに、前記ピストンを前記圧力室の下端へ移動させて前記永久磁石の磁力で前記ワークを前記吸着面に吸着させる制御部と、前記ピストンの位置を検出するセンサと、を備え、前記制御部は、前記ピストンを前記圧力室の下端へ移動させた後に、前記ワークが前記吸着面に吸着していない場合に、前記ピストンを上方へ移動させ、前記ピストンが上方へ移動したことを前記センサが検出したか否かによって、前記ワークが前記吸着面に吸着しているか否かを判定する磁気吸着装置である。
【0006】
本発明の一態様に係る磁気吸着装置によれば、ピストンが上方へ移動したことをセンサが検出したか否かによって、ワークが吸着面に吸着しているか否かを判定する。したがって、ワークに穴が開いている場合やワークがシリンダチューブの底面より小さい場合でも、ワークの有無を検出することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、ワークに穴が開いている場合やワークがシリンダチューブの底面よりも小さい場合でも、ワークの有無を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る磁気吸着装置の構造を示す斜視図である。
図2図2は、第1実施形態に係る磁気吸着装置の構造を示す断面図である。
図3A図3Aは、第1実施形態に係る磁気吸着装置を備えた搬出装置の構造を示す斜視図である。
図3B図3Bは、第1実施形態に係る磁気吸着装置を備えた搬出装置の底面の構造を示す平面図である。
図4図4は、第1実施形態に係る磁気吸着装置を備えた搬出装置によるワーク搬出処理の処理手順を示すフローチャートである。
図5図5は、第1実施形態に係る磁気吸着装置におけるピストンが下降する動作を説明するための図である。
図6図6は、第1実施形態に係る磁気吸着装置におけるワーク吸着時の動作を説明するための図である。
図7図7は、第1実施形態に係る磁気吸着装置におけるピストンが上昇する動作を説明するための図である。
図8図8は、第1実施形態に係る磁気吸着装置におけるワーク集積時の動作を説明するための図である。
図9図9は、第2実施形態に係る磁気吸着装置の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
[磁気吸着装置]
以下、図面を参照し、本実施形態に係る磁気吸着装置について説明する。図1は、磁気吸着装置の構造を示す斜視図であり、図2は断面図である。図1、2に示すように、本実施形態に係る磁気吸着装置1は、底面がワークWを吸着する吸着面3であり、内部に圧力室5を備えたシリンダチューブ7と、永久磁石9を備えて圧力室5内を上下に移動するピストン11と、ワークWを吸着するときに、ピストン11を圧力室5の下端へ移動させて永久磁石9の磁力でワークWを吸着面3に吸着させる制御部13と、ピストン11の位置を検出する磁気センサ15と、を備える。制御部13は、ピストン11を圧力室5の下端へ移動させた後に、ワークWが吸着面3に吸着していない場合に、ピストン11を上方へ移動させ、ピストン11が上方へ移動したことを磁気センサ15が検出したか否かによって、ワークWが吸着面3に吸着しているか否かを判定する。
【0010】
シリンダチューブ7は、アルミニウム合金等の常磁性体金属からなり、図1に示すように直方体の形状をしている。また、図2に示すように、シリンダチューブ7の底面はワークWを吸着する吸着面3となっており、内部には圧力室5を備えている。圧力室5は、円筒状の形状をしており、内部に設けられたピストン11によって、上部空間17と下部空間19に隔てられている。
【0011】
シリンダチューブ7の1つの側面には、上部空間17に連通してエアを給排気する上部給排気孔21と、下部空間19に連通してエアを給排気する下部給排気孔23とが形成されている。上部給排気孔21は、ピストン11を上昇させるときには開放され、ピストン11を下降させるときにはエアが供給される。下部給排気孔23は、ピストン11を上昇させるときにはエアが供給され、ピストン11を下降させるときには開放される。
【0012】
また、上部給排気孔21と下部給排気孔23が形成された側面と対向する側面には、2本の取付溝25(図1)が形成され、取付溝25に磁気センサ15が取り付けられている。取付溝25が上下方向に形成されているので、磁気センサ15は、シリンダチューブ7の側面における上下方向の所望の位置に取り付けられる。
【0013】
ピストン11は、円柱状の形状をしており、永久磁石9の他に強磁性体のコアヨーク等を備え、圧力室5の内部において上下方向に移動可能に設けられている。また、ピストン11は、圧力室5の内面に接するシール部材27を備えており、圧力室5を上部空間17と下部空間19に隔てている。
【0014】
磁気センサ15は、永久磁石9の磁気を検出することによってピストン11の位置を検出するセンサであり、シリンダチューブ7の内部を移動するピストン11が近づいて、永久磁石9の磁気を検出すると、制御部13へ検出信号を出力する。図2に示すように、磁気センサ15は、シリンダチューブ7の側面の上部に取り付けられているので、ピストン11が上昇すると、永久磁石9の磁気を検出して、制御部13へ検出信号を出力する。ただし、磁気センサ15は、シリンダチューブ7の側面の上部に取り付けられている必要はなく、下側に取り付けられていてもよい。
【0015】
制御部13は、ワークWを吸着するときに、ピストン11を圧力室5の下端へ移動させて永久磁石9の磁力でワークWを吸着面3に吸着させる制御を実行する。そして、制御部13は、ピストン11を圧力室5の下端へ移動させた後に、ピストン11が上方へ移動して永久磁石9の磁気を磁気センサ15が検出したか否かによって、ワークWが吸着面3に吸着しているか否かを判定する。
【0016】
具体的に、制御部13は、上部給排気孔21から上部空間17へ圧力P1のエアを供給し、下部給排気孔23から下部空間19のエアを排出してピストン11を圧力室5の下端へ移動させた後に、下部給排気孔23から所定の判定圧力Pのエアを下部空間19へ供給し、ワークWが吸着面3に吸着していない場合に、ピストン11を上方へ移動させる。このとき、判定圧力Pは、ワークWと吸着しているピストン11をワークWから引き離す圧力よりも小さく、ワークWと吸着していないピストン11を上方へ移動させる最低上昇圧力よりも大きくなるように設定されている。
【0017】
すなわち、ワークWが吸着している場合には、判定圧力Pのエアを供給してもピストン11が上方へ移動することはなく、ワークWが吸着していない場合には、判定圧力Pのエアを供給することによって上部給排気孔21から上部空間17のエアを排出してピストン11は上方へ移動する。したがって、ピストン11が上方へ移動せずに磁気センサ15で永久磁石9の磁気が検出されなければ、ワークWが吸着していると判定することができる。一方、ピストン11が上方へ移動して磁気センサ15で永久磁石9の磁気が検出されれば、ワークWが吸着していないと判定することができる。
【0018】
このように、制御部13は、ピストン11を圧力室5の下端へ移動させた後に、判定圧力Pのエアを供給してピストン11が上方へ移動しない場合にはワークWが吸着面3に吸着していると判定し、ピストン11が上方へ移動した場合にはワークWが吸着面3に吸着していないと判定する。
【0019】
制御部13は、メモリと、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、各種のインターフェースとを有するコンピュータによって構成されている。メモリと各種のインターフェースは、バスを介してプロセッサに接続されている。プロセッサによってメモリに格納されたプログラムを実行することにより、制御部13は、ワークWが吸着面3に吸着しているか否かを判定する制御を実行する。また、制御部13は、図示していないコンプレッサ等を制御して、圧力室5へ供給されるエアの圧力を制御する。
【0020】
[搬出装置]
図3Aは、本実施形態に係る磁気吸着装置を備えた搬出装置の構造を示す斜視図であり、図3Bは、搬出装置の底面の構造を示す平面図である。図3A、3Bに示すように、搬出装置31は、搬出アーム33と、磁気吸着装置1と、複数の吸着パッド35を備えている。搬出装置31は、図示していない駆動部が動作することによって、左右方向X、前後方向Y、及び上下方向Zへそれぞれ移動することができる。また、搬出装置31は、駆動部が動作することによって、上下方向に延びる中心軸を中心に水平回転することができる。尚、図3Bでは、1つの磁気吸着装置1のみを備えているが、複数備えていてもよい。ワークが大きい場合やワークが非磁性体である場合には、吸着パッド35と磁気吸着装置1を併用してワークを吸着させている。
【0021】
[ワーク搬出処理]
次に、本実施形態に係る磁気吸着装置1を備えた搬出装置31によるワーク搬出処理を説明する。図4は、ワーク搬出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0022】
図4に示すように、ステップS101において、搬出装置31は、搬出するワークWの位置へ移動して位置決めを行う。すなわち、搬出装置31は、ワークWの位置を示すX座標とY座標の位置へ移動して、ワークWの直上の位置で停止する。
【0023】
ステップS103において、搬出装置31は、ワークWの直上の位置から、搬出装置31に設けられた磁気吸着装置1の吸着面3がワークWに接する位置まで下降する。
【0024】
ステップS105において、磁気吸着装置1は、ワークWを吸着する。ステップS103で搬出装置31が下降した時点では、ピストン11は圧力室5の上端(上死点)に位置している。そこで、制御部13は、図5に示すように、上部給排気孔21から上部空間17へ圧力P1のエアを供給し、下部給排気孔23から下部空間19のエアを排出してピストン11を下降させる。圧力P1は、ピストン11を下降させるために必要な圧力である。ピストン11が圧力室5の下端(下死点)へ移動すると、永久磁石9の磁力によってワークWが吸着面3に吸着される。
【0025】
ステップS107において、搬出装置31は、ワークWが吸着面3に吸着しているか否かを確認するために微小な上昇を行う。例えば、搬出装置31は、30mm上昇する。
【0026】
ステップS109において、制御部13は、微小に上昇している状態で、ワークWが吸着面3に吸着しているか否かを判定するための判定圧力Pのエアを、図6に示すように下部給排気孔23から下部空間19へ供給する。判定圧力Pは、ワークWと吸着しているピストン11をワークWから引き離す圧力よりも小さく、ワークWと吸着していないピストン11を上方へ移動させる最低上昇圧力よりも大きく設定されている。すなわち、ワークWが吸着していればピストン11が動くことはなく、ワークWが吸着していなければピストン11が上方へ移動するような圧力が、判定圧力Pである。この判定圧力Pは、永久磁石9による磁力やピストン11及び永久磁石9の重さ、ピストン11が移動するときの摺動抵抗などを考慮して設定されている。
【0027】
ステップS111において、制御部13は、微小時間、例えば0.4sの間だけ待機して、判定圧力Pのエアを供給したことによるピストン11の移動を監視する。
【0028】
ステップS113において、制御部13は、ピストン11が上昇したか否かを判定し、ピストン11が上昇した場合にはステップS115へ進み、ピストン11が上昇していない場合にはステップS121へ進む。ワークWが吸着していない場合に、ピストン11は、図7に示すように判定圧力Pのエアによって上昇するので、上昇したピストン11に設けられている永久磁石9の磁力を磁気センサ15が検出して検出信号を出力する。したがって、制御部13は、ステップS111の微小時間が経過した後に、磁気センサ15から検出信号を受信すると、ピストン11が上昇したと判定する。一方、制御部13は、ステップS111の微小時間が経過した後に、磁気センサ15から検出信号を受信しなければ、ピストン11が上昇していないと判定する。
【0029】
ステップS115において、搬出装置31は、ワークWが吸着していないので、ワークWの吸着をやり直すために上昇する。
【0030】
ステップS117において、制御部13は、ワークWを吸着できずにやり直す回数が所定回数の4回目か否かを判定する。そして、やり直す回数が4回目ではない場合、すなわち3回目以下の場合にはステップS101へ戻ってワークWの吸着をやり直し、やり直す回数が4回目の場合には、ステップS119へ進む。尚、やり直す回数については、4回である必要はなく、4回以外の回数であってもよい。
【0031】
ステップS119において、制御部13は、3回やり直してもワークWを吸着できなかったので、アラームを発生して、本実施形態に係るワーク搬出処理を終了する。
【0032】
ステップS121において、搬出装置31は、ワークWを吸着しているので、吸着したワークWを搬送して集積位置まで移動させる。
【0033】
ステップS123において、制御部13は、ワークWの搬送中に、ピストン11が上昇したか否かを判定して、ワークWの搬送中もピストン11の状態を監視する。そして、ピストン11が上昇した場合にはステップS125へ進み、ピストン11が上昇しない場合にはステップS127へ進む。
【0034】
ステップS125において、制御部13は、搬送中にワークWが離脱したと判断してアラームを発生し、本実施形態に係るワーク搬出処理を終了する。
【0035】
ステップS127において、制御部13は、移動した集積位置においてワークWを集積させる。具体的に、制御部13は、図8に示すように、ワークWと吸着しているピストン11をワークWから引き離すための圧力P2のエアを、下部給排気孔23から下部空間19へ供給し、上部給排気孔21から上部空間17のエアを排出する。これにより、ピストン11が上昇して、ワークWは吸着面3から離脱して集積される。
【0036】
ステップS129において、制御部13は、微小時間、例えば0.2sの間だけ待機して、ワークWが確実に離脱したことを確認する。ただし、微小時間の0.2sは変更してもよい。
【0037】
ステップS131において、搬出装置31は、ワークWの集積が完了すると、上昇して本実施形態に係るワーク搬出処理を終了する。
【0038】
[第1実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る磁気吸着装置1は、ピストン11を圧力室5の下端へ移動させた後に、ワークWが吸着面3に吸着していない場合に、ピストン11を上方へ移動させ、ピストン11が上方へ移動したことを磁気センサ15が検出したか否かによって、ワークWが吸着面3に吸着しているか否かを判定する。これにより、ワークWに穴が開いている場合やワークWがシリンダチューブの底面よりも小さい場合でも、ワークWの有無を検出することができる。
【0039】
また、本実施形態に係る磁気吸着装置1は、ピストン11を圧力室5の下端へ移動させた後に、所定の判定圧力Pのエアを下部空間19へ供給し、ワークWが吸着面3に吸着していない場合に、ピストン11を上方へ移動させる。そして、判定圧力Pは、ワークWと吸着しているピストン11をワークWから引き離す圧力よりも小さく、ワークWと吸着していないピストン11を上方へ移動させる最低上昇圧力よりも大きく設定されている。これにより、ワークWが吸着していればピストン11が動くことはなく、ワークWが吸着していなければピストン11が上方へ移動する。したがって、判定圧力Pのエアを供給することによって、ワークWが吸着しているか否かを判定することができる。
【0040】
さらに、本実施形態に係る磁気吸着装置1は、ピストン11を圧力室5の下端へ移動させた後に、ピストン11が上方へ移動しない場合にはワークWが吸着面3に吸着していると判定し、ピストン11が上方へ移動した場合にはワークWが吸着面3に吸着していないと判定する。これにより、ピストン11の動きでワークWが吸着しているか否かを判定することができるので、ワークWに穴が開いている場合やワークWがシリンダチューブの底面よりも小さい場合でも、ワークWの有無を検出することができる。
【0041】
また、搬出装置31は、本実施形態に係る磁気吸着装置1を備えている。これにより、搬出装置31は、ワークWの有無を正確に検出できる磁気吸着装置1を備えているので、ワークWの搬出を確実に実行することができる。
【0042】
[第2実施形態]
以下、本発明を適用した第2実施形態について図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。図9に示すように、本実施形態に係る磁気吸着装置50は、弾性部材52をさらに備えたことが第1実施形態と相違している。弾性部材52は、ワークWと吸着していないピストン11を上方へ移動させる弾性力を有するばねで構成され、その弾性力は、ワークWと吸着しているピストン11をワークWから引き離す力よりも小さく設定されている。すなわち、ワークWが吸着している場合にはピストン11が動くことはなく、ワークWが吸着していない場合には、弾性部材52の弾性力によってピストン11は上方へ移動する。ピストン11が上方へ移動すると、第1実施形態と同様に磁気センサ15でピストン11を検出する。
【0043】
本実施形態に係る磁気吸着装置50では、図4のステップS105において、ワークWを吸着するときには、第1実施形態と同様に上部給排気孔21から圧力P1のエアを供給し、下部給排気孔23からエアを排出してピストン11を下降させる。その後、第1実施形態では、ステップS109において、判定圧力Pのエアを供給しているが、本実施形態では、弾性部材52を備えているので、判定圧力Pのエアを供給する必要はない。すなわち、本実施形態では、制御部13が圧力P1のエアの供給を止めると、ワークWが吸着面3に吸着していなければ、弾性部材52の弾性力によってピストン11は上方へ移動する。したがって、本実施形態の磁気吸着装置50では、図4のステップS109を削除すれば、ワーク搬出処理を実行することができる。
【0044】
[第2実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る磁気吸着装置50は、ワークWと吸着していないピストン11を上方へ移動させる弾性力を有する弾性部材52をさらに備えている。そして、その弾性力は、ワークWと吸着しているピストン11をワークWから引き離す力よりも小さく設定されている。制御部13ピストン11を圧力室5の下端へ移動させた後に、ワークWが吸着面3に吸着していない場合に、弾性部材52は、弾性力によってピストン11を上方へ移動させる。これにより、ワークWが吸着していればピストン11が動くことはなく、ワークWが吸着していなければピストン11が上方へ移動する。したがって、弾性部材52によるピストン11の動きによって、ワークWが吸着しているか否かを判定することができる。
【0045】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0046】
1、50 磁気吸着装置
3 吸着面
5 圧力室
7 シリンダチューブ
9 永久磁石
11 ピストン
13 制御部
15 磁気センサ
17 上部空間
19 下部空間
21 上部給排気孔
23 下部給排気孔
25 取付溝
27 シール部材
31 搬出装置
33 搬出アーム
35 吸着パッド
52 弾性部材
P、P1、P2 圧力
W ワーク
【要約】
【課題】ワークに穴が開いている場合やワークがシリンダチューブの底面よりも小さい場合でも、ワークの有無を検出することのできる磁気吸着装置を提供する。
【解決手段】磁気吸着装置1は、底面がワークを吸着する吸着面3であり、内部に圧力室5を備えたシリンダチューブ7と、永久磁石9を備えて圧力室5内を上下に移動するピストン11と、ワークWを吸着するときに、ピストン11を圧力室5の下端へ移動させて永久磁石9の磁力でワークWを吸着面3に吸着させる制御部13と、ピストン11の位置を検出する磁気センサ15とを備え、制御部13は、ピストン11を圧力室5の下端へ移動させた後に、ワークWが吸着面3に吸着していない場合に、ピストン11を上方へ移動させ、ピストン11が上方へ移動したことを磁気センサ15が検出したか否かによって、ワークWが吸着面3に吸着しているか否かを判定する。
【選択図】図2
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9