(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】フィラメント3次元結合体の製造装置
(51)【国際特許分類】
D04H 3/07 20120101AFI20241212BHJP
D01D 5/08 20060101ALI20241212BHJP
D01D 5/088 20060101ALI20241212BHJP
D04H 3/02 20060101ALI20241212BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
D04H3/07
D01D5/08 A
D01D5/088
D04H3/02
D04H3/16
(21)【出願番号】P 2023122282
(22)【出願日】2023-07-27
【審査請求日】2024-04-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505290531
【氏名又は名称】株式会社エアウィーヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110004082
【氏名又は名称】弁理士法人北大阪特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 隆文
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-218116(JP,A)
【文献】特開2016-194190(JP,A)
【文献】特開2018-028161(JP,A)
【文献】特開平01-207462(JP,A)
【文献】特開2012-127046(JP,A)
【文献】特開平08-099093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H1/00-18/04
D01D1/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の溶融フィラメントを下方へ並進させてなる溶融フィラメント群を排出する溶融フィラメント供給部と、
水槽内で前記溶融フィラメントどうしが融着結合されるようにして、フィラメント3次元結合体を形成する融着結合形成部と、
を有するフィラメント3次元結合体の製造装置であって、
前記融着結合形成部は、
傾斜面を有する基板と、少なくとも一部が当該傾斜面の上に配置される透水シートとを有し、前記溶融フィラメント群の少なくとも一部を受け、これを前記傾斜面上の前記透水シートを滑らせて前記水槽内へ導くシュートと、
前記透水シートを固定して、前記透水シートにおける幅方向の全域で前記溶融フィラメント群を滑らせることに伴う当該透水シートの位置ずれが抑制されるようにする固定機構と、を有し、
前記固定機構は、
前記幅方向の全域で前記透水シートを固定するもの、または、0cmを超えて2cm以下の隙間を設けて前記幅方向へ並べられる前記幅方向の長さがそれぞれ10cm以上の複数の部材を設けたもの、であることを特徴とする製造装置。
【請求項2】
前記固定機構は、
前記幅方向の全域で前記透水シートを固定するものであることを特徴とする請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記透水シートの表面上の方向であって、上方視で前記傾斜面の傾斜方向と同じ方向を特定方向とし、
前記固定機構は、
前記溶融フィラメント群を受ける位置よりも前記特定方向の上流側において、前記透水シートを前記基板との間に挟んで固定する、シート固定部材を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の製造装置。
【請求項4】
前記シート固定部材は、
前記透水シートと接触する面に滑り止め加工が施されていることを特徴とする請求項3に記載の製造装置。
【請求項5】
前記透水シートの表面上の方向であって、上方視で前記傾斜面の傾斜方向と同じ方向を特定方向とし、
前記固定機構は、
前記透水シートにおける前記特定方向の両端部を固定し、前記傾斜面に接した状態に前記透水シートを維持することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の製造装置。
【請求項6】
前記透水シートの表面上の方向であって、上方視で前記傾斜面の傾斜方向と同じ方向を特定方向とし、
前記透水シートは、前記特定方向に延びる無端ベルト状に形成されており、
前記固定機構は、幅方向に延びており、前記無端ベルト状の内側に配置された棒状固定部材を有し、
前記棒状固定部材は、前記無端ベルト状の内側に配置された前記基板とともに、前記透水シートを張架し、
棒状固定部材を回転させることにより、前記透水シートを回転させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の製造装置。
【請求項7】
複数の溶融フィラメントを下方へ並進させてなる溶融フィラメント群を排出する溶融フィラメント供給部と、
水槽内で前記溶融フィラメントどうしが融着結合されるようにして、フィラメント3次元結合体を形成する融着結合形成部と、
固定機構と、
を有するフィラメント3次元結合体の製造装置であって、
前記融着結合形成部は、
上方視中央寄りの領域に設けられる貫通孔を有するとともに当該貫通孔へ近づくにつれて下方へ向かうように傾斜した傾斜面を有する基板と、少なくとも一部が当該傾斜面の上に配置される透水シートとを有し、前記溶融フィラメント群の少なくとも一部を受け、これを前記傾斜面上の前記透水シートの上を滑らせて前記水槽内へ導くシュートと、
前記透水シートを固定して、前記透水シートにおける幅方向の全域で前記滑らせることに伴う当該透水シートの位置ずれが抑制されるようにする固定機構と、を有し、
前記透水シートの表面上の方向であって、上方視で前記傾斜面の傾斜方向と同じ方向を特定方向とし、
前記固定機構は、
前記溶融フィラメント群を受ける位置よりも前記特定方向の上流側において、前記透水シートを前記基板との間に挟んで固定する、上方視リング状のシート固定部材を有することを特徴とする製造装置。
【請求項8】
前記シート固定部材は、上方視で、前記傾斜面の全体を囲むリング状であることを特徴とする請求項7に記載の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメント3次元結合体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂からなるフィラメントを3次元的に融着結合させて得られる結合体(フィラメント3次元結合体)が、各種用途のクッション体として利用されている。このようなフィラメント3次元結合体の製造方法として、例えば特許文献1に開示された方法が知られている。
【0003】
特許文献1の方法によれば、複数のノズルから溶融状態の熱可塑性樹脂を下向きに押し出した後、溶融フィラメント群(線条集合体)を水中に落下させ、水の浮力でループを形成させると同時に、ループ形成した複数の溶融フィラメントどうしを3次元的に融着結合させてフィラメント3次元結合体を製造する。またこのとき、溶融フィラメント群の厚さ方向の両側(前後方向両端)に位置する端部溶融フィラメント群を傾斜した受け板(シュート)で受けた後、受け板表面上を傾斜方向へ滑らせて水槽内へ落下させる。
【0004】
水槽内へ落下したフィラメントは、水中コンベア(引取機)を用いて下方へ搬送され、水中で完全に冷却されるようにする。また特許文献1で開示された製造装置においては、シュートの上面を覆うように透水シートが配置されている。この透水シートは、クリップ(留具)を用いてシュート上に固定されている。
【0005】
図12は、特許文献1で開示された製造装置におけるシュートの構成を概略的に示している。本図に示すシュート831p,831qは、傾斜するように配置された左右の基板851p,851qそれぞれの上面に透水シート852p,852qが配置されており、落下する溶融フィラメント群を受けて透水シート852p,852qを滑らせ、下方へ導くように構成されている。透水シート852p,852qは、上方端部がクリップ853p,853qで基板851p,851qに固定され、下方端部がネジ854p,854qで基板851p,851qに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した水中コンベアによってフィラメントが搬送されることに伴い、透水シートの上に位置する溶融フィラメントも下方へ引っ張られる。またこれにより、シュート上に固定された透水シートも、当該溶融フィラメントとの摩擦によって、絶えず下方向に引っ張られる。
【0008】
そのため、透水シートを上述したようにクリップ853p,853qで固定している場合には、固定されていない部分が引っ張られる方向へ動いて透水シートに歪みが生じ、しわが発生し易くなる虞がある。
図13は、このような理由により先述した透水シート852pにしわが生じた状態を模式的に示している。その結果、透水シートの上面側の摩擦抵抗が不均一になり、透水シート上での溶融フィラメントの滑りが悪くなることや、フィラメントループの形状が安定化しないこと等の問題が生じる。
【0009】
本発明は上記課題に鑑み、シュート上の透水シートにしわが生じることによる不具合を抑えることが可能となるフィラメント3次元結合体の製造装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る製造装置は、複数の溶融フィラメントを下方へ並進させてなる溶融フィラメント群を排出する溶融フィラメント供給部と、水槽内で前記溶融フィラメントどうしが融着結合されるようにして、フィラメント3次元結合体を形成する融着結合形成部と、を有するフィラメント3次元結合体の製造装置であって、前記融着結合形成部は、傾斜面を有する基板と、少なくとも一部が当該傾斜面の上に配置される透水シートとを有し、前記溶融フィラメント群の少なくとも一部を受け、これを前記傾斜面上の前記透水シートを滑らせて前記水槽内へ導くシュートと、前記透水シートにおける幅方向の全域で、前記滑らせることに伴う位置ずれが抑制されるように前記透水シートを固定する固定機構と、を有する構成とする。
【0011】
本構成によれば、シュート上の透水シートにしわが生じることによる不具合を抑えることが可能となる。なお「幅方向」は、透水シートの表面上の方向(透水シートの厚み方向と直交する方向)であって、上方視で当該傾斜面の傾斜方向(重力により溶融フィラメント群が滑り落ちる方向とその逆方向)と直交する方向を指す。また、本発明の固定機構としては、透水シートの幅方向の全域、すなわち幅方向の長さに対して100%の長さを有する1つの固定機構を使用することが好ましいが、透水シートの幅方向の長さに対して50%以下の長さを有する複数の固定機構を、当該幅方向へ並ぶように配置して使用してもよい。複数の固定機構を使用する場合は、各固定機構を隙間なく設置することが望ましいが、本願発明の効果が損なわれない範囲で、固定機構の幅方向の長さに対して0%以上20%以下の隙間を設けてもよい。その場合、固定機構の幅方向の長さを10cm以上とし、隙間を2cm以下にして設置するのが好ましく、固定機構の幅方向の長さを15cm以上とし、隙間を1cm以下にして設置するのがさらに好ましい。
【0012】
上記構成としてより具体的には、前記固定機構は、前記溶融フィラメント群を受ける位置よりも特定方向上流側において、前記透水シートにおける幅方向の全域を前記基板との間に挟んで固定する、シート固定部材を有する構成としても良い。なお「特定方向」は、透水シートの表面上の方向(透水シートの厚み方向と直交する方向)であって、上方視で当該傾斜面の傾斜方向(重力により溶融フィラメント群が滑り落ちる方向とその逆方向)と同じ方向を指す。また「上流側」は、特定方向の両側のうち、当該傾斜面で溶融フィラメント群が滑り落ちる方向の逆側を指す。
【0013】
上記構成としてより具体的には、前記シート固定部材は、前記透水シートと接触する面に滑り止め加工が施されている構成としても良い。また上記構成としてより具体的には、前記固定機構は、前記透水シートにおける特定方向の両端部を固定し、前記傾斜面に接した状態に前記透水シートを維持する構成としても良い。
【0014】
上記構成としてより具体的には、前記透水シートは、特定方向に延びる無端ベルト状に形成されており、前記固定機構は、幅方向に延びており、前記無端ベルト状の内側に配置された棒状固定部材を有し、前記棒状固定部材は、前記無端ベルト状の内側に配置された前記基板とともに、前記透水シートを張架し、棒状固定部材を回転させることにより、前記透水シートを回転させる構成としても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る製造装置によれば、シュート上の透水シートにしわが生じることによる不具合を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係るフィラメント3次元結合体の製造装置の構成図である。
【
図2】当該製造装置についての
図1に示すA-A’断面の矢視図である。
【
図3】下方視点によるノズル部の概略的な構成図である。
【
図4A】第1実施形態のシュートの右方視による概略的な構成図である。
【
図4B】第1実施形態のシュートの上方視による概略的な構成図である。
【
図5】第1実施形態のシュート近傍の様子を示す説明図である。
【
図6】第2実施形態のシュートの右方視による概略的な構成図である。
【
図7】第3実施形態のシュートの右方視による概略的な構成図である。
【
図8】第4実施形態のシュートの右方視による概略的な構成図である。
【
図9】第5実施形態のシュートの右方視による概略的な構成図である。
【
図10】第6実施形態に係るシュートの上方視による概略的な構成図である。
【
図11】当該シュートについての断面の概略的な構成を示す説明図である。
【
図12】従来技術に関するシュートの構成を示す説明図である。
【
図13】透水シートにしわが生じた状態を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の例示的な各実施形態について各図面を参照しながら説明する。なお後述するシュート、冷却水供給部、およびコンベアは、
図1等に示す仮想平面VPを対称面として前後対称の構成となっている。このように前後対称の構成である構成要素の符号について、末尾に「p」を付した符号は後側の要素を示し、末尾に「q」を付した符号は前側の要素を示す。
【0018】
1.第1実施形態
まず第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るフィラメント3次元結合体の製造装置1の概略的な構成図であり、左右に二分する平面で切断した場合の断面図の視点で製造装置1が示されている。また
図2は、製造装置1についての
図1に示すA-A’断面の矢視図である。なお製造装置1の説明における上下、左右、および前後の各方向(互いに直交する方向)は、
図1および
図2等に示すとおりである。上下方向は、鉛直方向である。
【0019】
フィラメント3次元結合体の製造装置1は、直径が0.3~3.0mm程度の複数の溶融フィラメントMFからなる溶融フィラメント群MFzを鉛直方向下向きへ排出する溶融フィラメント供給部10と、溶融フィラメントMFどうしを3次元的に絡め合わせて接触点を融着結合させた後、冷却固化させてフィラメント3次元結合体3DFを形成する融着結合形成部20を備える。
【0020】
溶融フィラメント供給部10は、加圧溶融部11(押出機)とフィラメント排出部12(ダイ)を含む。加圧溶融部11は、材料投入部13(ホッパー)、スクリュー14、スクリュー14を駆動するスクリューモーター15、スクリューヒータ16、および不図示の複数の温度センサーを含む。加圧溶融部11の内部には、材料投入部13から供給された熱可塑性樹脂をスクリューヒータ16により加熱溶融しながら搬送するためのシリンダー11aが形成されている。
【0021】
シリンダー11a内には、スクリュー14が回転可能に収容されている。シリンダー11aの下流側端部には、熱可塑性樹脂をフィラメント排出部12に向けて排出するためのシリンダー排出口11bが形成されている。スクリューヒータ16の加熱温度は、例えば溶融フィラメント供給部10に設けた温度センサーの検知信号に基づいて制御される。
【0022】
フィラメント排出部12は、ノズル部17、ダイヒータ18、および図示しない複数の温度センサーを含み、内部にはシリンダー排出口11bから排出された溶融熱可塑性樹脂をノズル部17に導く導流路12aが形成されている。
【0023】
ノズル部17は、複数の開口部が形成された略直方体の金属製の厚板であり、導流路12aの最下流部にあたるフィラメント排出部12の下部に設けられている。
【0024】
図3は、下方視点によるノズル部17の概略的な構成図である。ノズル部17には、溶融フィラメントMFを排出する複数のノズル開口部17aが形成されている。
図3に示す例では、開口部17aは前後左右方向に千鳥状に配置されており、隣接する開口部17どうしの距離(ピッチ)は、10mm程度である。但し、開口部17の具体的形態は特に限定されない。
【0025】
ダイヒータ18は、左右方向に複数個(
図2に示す例では18a~18fの6個)が設けられており、フィラメント排出部12を加熱する。ダイヒータ18の加熱温度は、例えばフィラメント排出部12に設けた温度センサーの検知信号に基づいて制御される。
【0026】
フィラメント3次元結合体の材料として用いることのできる熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂およびポリスチレン樹脂等や、スチレン系エラストマー、塩ビ系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー等の熱可塑性エラストマーなどを用いることができる。
【0027】
材料投入部13から供給された熱可塑性樹脂は、シリンダー11a内で加熱溶融され、例えばスクリュー14により押し出されるようにして、溶融熱可塑性樹脂としてシリンダー排出口11bからフィラメント排出部12の導流路12aに供給される。その後、ノズル部17の複数のノズル開口部17aそれぞれから下方へ並進するように、溶融フィラメント群MFzが排出される。
【0028】
融着結合形成部20は、冷却水槽21、前後一対のコンベア24(24p,24q)、複数の搬送ローラ25a~25h、シュート31、および前後一対の冷却水供給部41(41p,41q)を含む。
【0029】
冷却水槽21は、溶融フィラメントMFの冷却に用いる水Wが収容される槽であり、
図1に示すように十分な量の水Wを溜めておくことが可能である。水Wは、溶融フィラメントMFに浮力を与えて撓ませ、撓みにより生じた溶融フィラメントどうしの接触点が融着された後に冷却固化させる冷媒としての役割を果たす。冷却水槽21の内部には、一対のコンベア24p,24qと、複数の搬送ローラ25a~25hが配設されている。一対のコンベア24p,24qおよび複数の搬送ローラ25a~25hは、不図示の駆動モータにより駆動される。
【0030】
ノズル部17から排出された溶融フィラメント群MFzは、シュート31によって厚み(前後方向寸法)が整えられ、その中の各溶融フィラメントMFは、冷却水槽21内の水Wの浮力作用によって撓み、ランダムなループを形成する。ランダムなループは隣接するランダムなループと3次元的に溶融状態で絡み合い、接触点が融着結合して3次元的なフィラメントの結合体(フィラメント3次元結合体3DF)が形成される。
【0031】
フィラメント3次元結合体3DFは、一対のコンベア24p,24qに挟まれて下方へ搬送され、さらに複数の搬送ローラ25a~25hによって冷却水槽21内の水Wで冷却されながら搬送され、最終的には冷却水槽21の外部へ排出される。このようにして、製造装置1によってフィラメント3次元結合体3DFが製造される。
【0032】
次に、シュート31の構成等について、より詳細に説明する。
図4Aは、シュート31の右方視による概略的な構成図である。
図4Bは、シュート31の上方視による概略的な構成図である。
図5は、フィラメント3次元結合体3DFの製造中におけるシュート31近傍の様子を概略的に示している。
図5に示すように、シュート31は、傾斜面を有する基板51p,51qと、少なくとも一部が当該傾斜面の上に配置される透水シート52p,52qとを有し、領域αにおいて溶融フィラメント群MFzの少なくとも一部(本実施形態では、前後の両端側寄りの部分)を受け、これを当該傾斜面上の透水シート52p,52qを滑らせて冷却水槽21内へ導くように構成されている。
【0033】
後側のシュート31pと前側のシュート31qは、仮想平面VPを対称面として前後対称である。以下のシュート31の構成等に関する説明では、後側のシュート31pについて説明し、前側のシュート31qについての説明を省略することがある。
【0034】
シュート31pは、左右対称の形状に構成されており、基板51p、一部が基板51pの傾斜面に配置される透水シート52p、およびシート固定部材53pを有する。基板51pは、例えば金属板材(ステンレス等の板材)に折り曲げ加工等を施して形成することが可能であり、傾斜部511pと鉛直部512pが連接するように形成されている。傾斜部511pは、前方へ進むにつれて下側へ向かうように傾斜した傾斜面を有する平板状となっている。鉛直部512pは、鉛直面を有する平板状となっており、上端が傾斜部511pの下端に連接している。
【0035】
透水シート52pは、例えば、さらし生地のシート、或いは綿ジーンズのデニム生地のシート等が適用可能である。なお各実施形態の説明では、一部が基板の傾斜面上に配置されている透水シートの表面上の方向(透水シートの厚み方向と直交する方向)について、上方視で当該傾斜面の傾斜方向(重力により溶融フィラメント群MFzが滑り落ちる方向とその逆方向)と直交する方向を「幅方向Dx」と称し、当該傾斜方向と同じ方向(幅方向Dxとは直交する方向)を「特定方向Dy」と称することがある。また特定方向Dyのうち、傾斜面で溶融フィラメント群MFが滑り落ちる方向の側を下流側と称し、その逆を上流側と称することがある。
【0036】
透水シート52pは、外縁が矩形状のシートを基板51pの上面に敷いたものとなっている。この矩形状における二組の対辺のうち、一組の対辺は左右方向に一致する幅方向Dxに延びており、他の一組の対辺は特定方向Dyに延びている。透水シート52pの幅方向Dxのサイズは、基板51pおよびシート固定部材53pの左右方向サイズよりもやや小さい。
【0037】
シート固定部材53pは、左右方向を長手方向とする平板状に形成されており、左右方向のサイズは透水シート52pの左右方向サイズよりも大きい。本実施形態の例では、シート固定部材53pの左右方向サイズは1m以上となっている。シート固定部材53pは、溶融フィラメント群MFzを受ける領域(
図5に示す領域α)よりも特定方向Dyの上流側において、透水シート52pの幅方向Dxの全域を傾斜部511pとの間に挟むように配置されている。なお、シート固定部材53pの左端近傍部は透水シート52pの左端よりも左側に延出しており、シート固定部材53pの右端近傍部は透水シート52pの右端よりも右側に延出している。これらの延出した部分それぞれは、ネジ54pを用いて傾斜部511pに固定されている。
【0038】
これによりシート固定部材53pは、透水シート52pの幅方向Dxの全域を傾斜部511pとの間に挟んで固定する役割を果たす。透水シート52pは、その左端から右端まで連続する領域で、シート固定部材53pによって傾斜部511pに押さえ付けられた状態が維持される。
【0039】
なお、シート固定部材53pの下面(透水シート52pと接触する面)には、透水シート52pの滑りをより確実に防止するための滑り止め加工が施されていても良い。この滑り止め加工としては、例えば、シート固定部材53pの下面に1mm程度の多数の針状突起を設ける加工等が挙げられる。
【0040】
シュート31の近傍においては、
図4Bに示す領域β内に、上方のノズル部17から溶融フィラメント群MFzが供給される。領域β内のうち、上方視で傾斜部511pが配置されている領域(つまり、
図5に示す領域α)では、溶融フィラメント群MFzは傾斜部511p上の透水シート52pに当たり、その傾斜により、透水シート52pを特定方向Dyの下流側へ滑って冷却水槽21内へ導かれる。領域β内のうち、上方視で傾斜部511pが配置されていない領域では、溶融フィラメント群MFzは、前後のシュート31どうしの間を通って直接的に冷却水槽21内へ導かれる。なお傾斜部511pの傾斜角は、例えば、溶融フィラメントMFの滑り易さと、先述したループ形成の進行状況のバランスを考慮して決定すればよい。
【0041】
冷却水供給部41pは、
図5に示す領域αよりも特定方向Dyの上流側の位置において、透水シート52pの幅方向Dxの全体に冷却水を供給する役割を果たす。透水シート52pに冷却水を供給することにより、当該冷却水が透水シート52pに満遍なく行き渡り、溶融フィラメントMFの滑りを良くするとともに、溶融フィラメントMFを冷却することが可能である。
【0042】
2.第2実施形態
次に第2実施形態について説明する。なお第2実施形態は、シュートおよびこれに関する点を除き、基本的には第1実施形態と同様である。以下の説明では、第1実施形態と異なる事項の説明に重点をおき、第1実施形態と共通する事項については説明を省略することがある。
【0043】
図6は、第2実施形態に係るシュート131(第1実施形態でのシュート31に相当する)の右方視による概略的な構成図である。本実施形態においても、シュート131は後側のシュート131pと前側のシュート131qは、仮想平面VPを対称面として前後対称である。以下のシュート131の構成等に関する説明では、後側のシュート131pについて説明し、前側のシュート131qについての説明を省略することがある。
【0044】
シュート131pは、基板151p、一部が基板151pの傾斜面に配置される透水シート152p、およびシート固定部材153pを有する。基板151pは、左右方向と直交する方向に、第1鉛直部1512p、傾斜部1511p、および第2鉛直部1513pが順に連接するように形成されている。傾斜部1511pは、前方へ進むにつれて下側へ向かうように傾斜した傾斜面を上側に有する平板状となっている。第1鉛直部1512pは、左側に鉛直面を有する平板状となっており、上端が傾斜部1511pの後端に連接している。第2鉛直部1513pは、右側に鉛直面を有する平板状となっており、上端が傾斜部1511pの前端に連接している。
【0045】
透水シート152pは、外縁が矩形状のシートであり、基板151pの表面(傾斜部1511pの傾斜面および各鉛直部1512p,1513pの鉛直面)に敷いたものとなっている。この矩形状における二組の対辺のうち、一組の対辺は幅方向Dx(本実施形態では左右方向に一致する)に延びており、他の一組の対辺は特定方向Dyに延びている。
【0046】
シート固定部材153pは、透水シート152pの幅方向Dxの全域を第1鉛直部1513pとの間に挟むように配置されている。なお、シート固定部材153pの左端近傍部は透水シート152pの左端よりも左側に延出しており、シート固定部材153pの右端近傍部は透水シート152pの右端よりも右側に延出している。これらの延出した部分それぞれは、ネジ154pを用いて第1鉛直部1512pに固定されている。
【0047】
これによりシート固定部材153pは、透水シート152pの幅方向Dxの全域を第1鉛直部1512pとの間に挟んで固定する役割を果たす。透水シート152pは、その左端から右端まで連続する領域で、シート固定部材153pによって第1鉛直部1512pに押さえ付けられた状態が維持される。シート固定部材153pにおいても、第1実施形態の場合と同様の滑り止め加工が施されていても良い。
【0048】
なお、
図6に示すように、透水シート152pにおける特定方向Dyの両端近傍それぞれは、冷却水槽21内の水Wの水面位置よりも下側に配置される。これにより、透水シート152pは冷却水槽21内の水Wを吸収し易くなっており、第1実施形態の冷却水供給部41に相当するものを設けなくても、透水シート152pの全体に冷却水を適切に供給することが可能である。
【0049】
3.第3実施形態
次に第3実施形態について説明する。なお第3実施形態は、シュートおよびこれに関する点を除き、基本的には第1実施形態と同様である。以下の説明では、第1実施形態と異なる事項の説明に重点をおき、第1実施形態と共通する事項については説明を省略することがある。
【0050】
図7は、第3実施形態に係るシュート231(第1実施形態でのシュート31に相当する)の右方視による概略的な構成図である。本実施形態においても、シュート231は後側のシュート231pと前側のシュート231qは、仮想平面VPを対称面として前後対称である。以下のシュート231の構成等に関する説明では、後側のシュート231pについて説明し、前側のシュート231qについての説明を省略することがある。
【0051】
シュート231pは、基板251p、一部が基板251の傾斜面に配置される透水シート252p、上側シート固定部材253p、および下側シート固定部材254pを有する。基板251pは、前方へ進むにつれて下側へ向かうように傾斜した傾斜面を有する板状となっている。なお基板251pの前側端部は、
図7に示すように、丸みが形成されるように下方へ緩やかに曲げられている。
【0052】
透水シート252pは、外縁が矩形状のシートの一部を基板251pの上面に敷いたものとなっている。この矩形状における二組の対辺のうち、一組の対辺は幅方向Dx(本実施形態では左右方向に一致する)に延びており、他の一組の対辺は特定方向Dyに延びている。
【0053】
上側シート固定部材255pは、基板251pの上端の後側に設置されており、前方から透水シート252pの端部を挿入することが可能な隙間が設けられている。この隙間の大きさは、ネジ256pを用いて調節可能である。これにより上側シート固定部材255pは、前方から挿入された透水シート252pの特定方向Dyの一端を、ネジ257pを用いて把持固定することが可能である。上側シート固定部材255pは、左右方向サイズが透水シート252pの左右方向サイズよりも大きく設定されており、透水シート252pの幅方向Dxの全域を上下に挟み込むように構成されている。
【0054】
これにより上側シート固定部材255pは、透水シート252pの特定方向Dyの上流側端部における幅方向Dxの全域を固定する役割を果たす。透水シート252pは、特定方向Dyの上流側端部におけるその左端から右端まで連続する領域で、上側シート固定部材255pによって固定された状態が維持される。
【0055】
下側シート固定部材256pは、上側シート固定部材255pの下方に設置されており、前方から透水シート252pの端部を挿入することが可能な隙間が設けられている。この隙間の大きさは、ネジ258pを用いて調節可能である。これにより下側シート固定部材256pは、前方から挿入された透水シート252pの特定方向Dyの他端を、ネジ258pを用いて把持固定することが可能である。下側シート固定部材256pは、左右方向サイズが透水シート252pの左右方向サイズよりも大きく設定されており、透水シート252pの幅方向Dxの全域を上下に挟み込むように構成されている。
【0056】
これにより下側シート固定部材256pは、透水シート252pの特定方向Dyの下流側端部における幅方向Dxの全域を固定する役割を果たす。透水シート252pは、特定方向Dyの下流側端部における左端から右端まで連続する領域で、下側シート固定部材256pによって固定された状態が維持される。なお各固定部材255p,256pにおいても、第1実施形態の場合と同様の滑り止め加工が施されていても良い。
【0057】
図7に示すように、透水シート252pは、上側シート固定部材255pから基板251pの上端まで水平に延びた領域、基板251pの表面に沿って延びた領域、および、基板251pの下端から下側シート固定部材256pまで水平に延びた領域が、順に連接した格好となっている。なお
図7に示す透水シート252pは、特定方向Dyの弛みが生じないように、適度な力で特定方向Dyに引っ張られた状態で特定方向Dyの両端が各固定部材255p,256pに固定されている。
【0058】
4.第4実施形態
次に第4実施形態について説明する。なお第4実施形態は、シュートおよびこれに関する点を除き、基本的には第1実施形態と同様である。以下の説明では、第1実施形態と異なる事項の説明に重点をおき、第1実施形態と共通する事項については説明を省略することがある。
【0059】
図8は、第4実施形態に係るシュート331(第1実施形態でのシュート31に相当する)の右方視による概略的な構成図である。本実施形態においても、シュート331は後側のシュート331pと前側のシュート331qは、仮想平面VPを対称面として前後対称である。以下のシュート331の構成等に関する説明では、後側のシュート331pについて説明し、前側のシュート331qについての説明を省略することがある。
【0060】
シュート331pは、基板351p、一部が基板351pの傾斜面に配置される透水シート352p、シート固定部材353p、上側円柱部材359p、および下側円柱部材360pを有する。基板351pは、前方へ進むにつれて下側へ向かうように傾斜した傾斜面を有する板状となっている。なお基板351pの前側端部は、
図8に示すように、丸みが形成されるように下方へ緩やかに曲げられている。
【0061】
透水シート352pは、外縁が矩形状のシートであり、一部を基板351pの上面に敷いたものとなっている。この矩形状における二組の対辺のうち、一組の対辺は幅方向Dx(本実施形態では左右方向に一致する)に延びており、他の一組の対辺は特定方向Dyに延びている。
【0062】
上側円柱部材359pは、左右方向に延びる円柱状に構成されており、基板351pの後端の後側の位置に設置されている。上側円柱部材354pの左右方向サイズは透水シート352pの左右方向サイズよりも大きく、上側円柱部材354pの左端は透水シート352pの左端よりも左側に位置し、上側円柱部材354pの右端は透水シート352pの右端よりも右側に位置する。
【0063】
下側円柱部材360pは、上側円柱部材354pと形状およびサイズが同じであり、上側円柱部材359pの下側に設置されている。下側円柱部材360pの左端は透水シート352pの左端よりも左側に位置し、下側円柱部材360pの右端は透水シート352pの右端よりも右側に位置する。
【0064】
シート固定部材353pは、下側円柱部材360pの下方に設置されており、重ねた状態の透水シート352pの両端部を上方から挿入することが可能な隙間が設けられている。この隙間の大きさは、ネジ354pを用いて調節可能である。これによりシート固定部材353pは、上方から挿入された透水シート352pの特定方向Dyの両端を、ネジ354pを用いて把持固定することが可能である。シート固定部材353pは、左右方向サイズが透水シート352pの左右方向サイズよりも大きく設定されており、透水シート352pの幅方向Dxの全域を上下に挟み込むように構成されている。
【0065】
これによりシート固定部材353pは、透水シート352pの特定方向Dyの両端部における幅方向Dxの全域を固定する役割を果たす。透水シート352pは、特定方向Dyの両端部における左端から右端まで連続する領域で、シート固定部材353pによって固定された状態が維持される。なおシート固定部材353pにおいても、第1実施形態の場合と同様の滑り止め加工が施されていても良い。
【0066】
図8に示す透水シート352pにおいては、シート固定部材353pに固定された特定方向Dyの一端から順に、上側円柱部材359pの外周面の一部に接する部分、基板351の上面に接する部分、下側円柱部材360pの外周面の一部に接する部分、および、シート固定部材353pに固定された特定方向Dyの他端が存在している。なお
図8に示す透水シート352pは、特定方向Dyの弛みが生じないように、適度な力で特定方向Dyに引っ張られた状態で特定方向Dyの両端がシート固定部材353pに固定されている。
【0067】
なお、
図8に示すように、透水シート352pにおける特定方向Dyの両端近傍それぞれは、冷却水槽21内の水Wの水面位置よりも下側に配置される。これにより、透水シート352pは冷却水槽21内の水Wを吸収し易くなっており、第1実施形態の冷却水供給部41に相当するものを設けなくても、透水シート352pの全体に冷却水を適切に供給することが可能である。
【0068】
5.第5実施形態
次に第5実施形態について説明する。なお第5実施形態は、シュートおよびこれに関する点を除き、基本的には第1実施形態と同様である。以下の説明では、第1実施形態と異なる事項の説明に重点をおき、第1実施形態と共通する事項については説明を省略することがある。
【0069】
図9は、第5実施形態に係るシュート431(第1実施形態でのシュート31に相当する)の右方視による概略的な構成図である。本実施形態においても、シュート431は後側のシュート431pと前側のシュート431qは、仮想平面VPを対称面として前後対称である。以下のシュート431の構成等に関する説明では、後側のシュート431pについて説明し、前側のシュート431qについての説明を省略することがある。
【0070】
シュート431pは、基板451p、一部が基板451pの傾斜面に配置される透水シート452p、および棒状固定部材461pを有する。基板451pは、前方へ進むにつれて下方へ向かうように傾斜した傾斜面を有する板状となっている。なお基板451pの前側端部は、
図9に示すように、丸みが形成されるように下方へ緩やかに曲げられている。
【0071】
棒状固定部材461pは、左右方向(幅方向Dxと同じ方向)に延びる円柱状に構成されており、基板451pの後側に設置されている。棒状固定部材461pの左右方向サイズは透水シート452pの左右方向サイズよりも大きく、棒状固定部材461pの左端は透水シート452pの左端よりも左側に位置し、棒状固定部材461pの右端は透水シート452pの右端よりも右側に位置する。
【0072】
透水シート452pは、特定方向Dy(幅方向Dxと直交する方向)に延びる無端ベルト(エンドレスベルト)状に形成されている。なお、基板451pおよび棒状固定部材461pは、この無端ベルト状の内側に配置されている。
【0073】
棒状固定部材461pは、基板451pとともに、無端ベルト状の透水シート452pを張架するように配置されている。これにより
図9に示すように、透水シート452pの内側の面は、基板451pの傾斜面に接する部分と、棒状固定部材461の外周面に接する部分とを有する。また、棒状固定部材461pは、透水シート452pにおける幅方向Dxの全域で、基板451pの傾斜面で溶融フィラメント群MFzを滑らせることに伴う位置ずれが抑制されるように透水シート452pを固定する役割を果たしている。
【0074】
更に、棒状固定部材461pは、左右に延びる中心軸Dpを回転軸として、
図9の矢印Ypで示す方向に回転可能となっている。このように棒状固定部材461pを回転させることにより、透水シート452pを同じ方向に回転させることが可能である。なお、棒状固定部材461の回転は、例えばモータの駆動力を利用して実現可能であり、本実施形態では一例として、透水シート452pを1日に2~3cm回転させるように棒状固定部材461を回転させるように設定される。
【0075】
このようにして、透水シート452pの回転方向の位置を例えば1日ごとに変えることにより、透水シート452pにおける溶融フィラメントMFを滑らせる領域を分散させることが可能である。その結果、透水シート452pが摩耗して孔が生じること等を極力抑え、透水シート452pの交換頻度を極力少なくすることが可能となる。
【0076】
なお、本実施形態では透水シート452pは無端ベルト状に形成されており、その一部が冷却水槽21内の水Wの水面位置よりも下側に配置される。これにより、第1実施形態の冷却水供給部41に相当するものを設けなくても、透水シート452pの全体に冷却水を適切に供給することが可能である。
【0077】
6.第6実施形態
次に第6実施形態について説明する。なお第6実施形態は、シュートおよびこれに関する点を除き、基本的には第1実施形態と同様である。以下の説明では、第1実施形態と異なる事項の説明に重点をおき、第1実施形態と共通する事項については説明を省略することがある。
【0078】
図10は、第6実施形態に係るシュート531(第1実施形態でのシュート31に相当する)の上方視による概略的な構成図である。また
図11は、シュート531についての
図10に示すB-B’平面で切断した場合の断面の概略的な構成を示している。
【0079】
シュート531は、基板551、一部が基板551の傾斜面に配置される透水シート552、シート固定部材553を有する。基板551は、水平面部5511、上方視で水平面部5511の内側に設けられた傾斜部5512、および、上方視で傾斜部5512の内側に設けられた鉛直面部5513を有する。鉛直面5513の上方視内側は、基板551の上方視中央寄りの領域に設けられた貫通孔552aとなっている。
【0080】
透水シート552は、
図11に示すように、基板551の外面全体を覆うように配置される。またシート固定部材553は、上方視リング状となっており、水平面部5511の上に位置する透水シート552pを、上方視で全周に亘って水平面部5511との間に挟むように配置されている。シート固定部材553は、自重またはネジ止め等により、透水シート52pを挟んだ状態で水平面部5511に固定可能となっている。なおシート固定部材553においても、第1実施形態の場合と同様の滑り止め加工が施されていても良い。
【0081】
図10に示す枠Rは、基板551における水平面部5511と傾斜部5512の境界を示している。また
図10に示す破線矢印は、傾斜部5512の傾斜面(上面)の下方への傾斜方向を概略的に示している。このように当該傾斜面の各部は、貫通孔552aへ近づくにつれて下方へ向かうように傾斜している。本実施形態では、特定方向Dyは上方視で当該破線矢印の方向およびその逆方向に一致し、幅方向Dxは上方視で当該破線矢印と直交する方向に一致する。シート固定部材553は、溶融フィラメント群MFzを受ける位置よりも特定方向Dyの上流側において、透水シート552pの幅方向Dxの全域を水平面部5511との間に挟んで固定する役割を果たすことになる。
【0082】
シュート531の近傍においては、
図10に示す領域β内に、上方のノズル部17から溶融フィラメント群MFzが供給される。上方視で、貫通孔552aの縁は領域βに収まっており、領域βは上述した点線枠Rの内側に収まっている。領域β内のうち、上方視で傾斜部5512が配置されている領域では、溶融フィラメント群MFzは傾斜部5512上の透水シート52に当たり、その傾斜によって透水シート552を滑って貫通孔552aに落ち、冷却水槽21内へ導かれる。領域β内のうち、上方視で傾斜部5512が配置されていない領域では、溶融フィラメント群MFzは貫通孔552aを通って直接的に冷却水槽21内へ導かれる。
【0083】
なお上方視による貫通孔552aの縁の形状およびサイズは、寝具である枕の側方視の形状およびサイズに合うように設定されている。そのため本実施形態のシュート531を有する製造装置1により製造されたフィラメント3次元結合体3DFを、枕の幅方向のサイズに合わせた間隔で切断すれば、枕を容易に製造することが可能である。
【0084】
7.その他
以上に説明したとおり各実施形態の製造装置1は、複数の溶融フィラメントMFを下方へ並進させてなる溶融フィラメント群MFzを排出する溶融フィラメント供給部10と、冷却水槽21内で溶融フィラメントMFどうしが融着結合されるようにして、フィラメント3次元結合体3DFを形成する融着結合形成部20と、を有するフィラメント3次元結合体の製造装置である。
【0085】
更に融着結合形成部20は、シュートと固定機構を有する。当該シュートは、傾斜面を有する基板と、少なくとも一部が当該傾斜面の上に配置される透水シートとを有し、溶融フィラメント群MFzの少なくとも一部を受け、これを当該傾斜面上の透水シートを滑らせて冷却水槽21内へ導く。また当該固定機構は、透水シートにおける幅方向Dxの全域で、溶融フィラメント群MFzを滑らせることに伴う位置ずれが抑制されるように透水シートを固定する。
【0086】
このように各実施形態の製造装置1によれば、幅方向Dxの一端から他端まで連続する全領域で、溶融フィラメント群MFzを滑らせることに伴う位置ずれが抑制されるように透水シートが固定され、シュート上の透水シートにしわが生じることによる不具合を抑えることが可能となっている。その結果、透水シート上の摩擦抵抗が均一となり、透水シート上での溶融フィラメントの滑りをスムーズにし、長時間にわたって均一なフィラメントループの形状を維持することが可能である。
【0087】
なお第1、第2、および第6実施形態において、上記の固定機構は、溶融フィラメント群MFzを受ける位置よりも特定方向Dyの上流側において、透水シートにおける幅方向Dxの全域を基板との間に挟んで固定するシート固定部材53,153,553を有する。そのため、基板を利用して比較的簡易な構成で透水シートの固定を実現することが可能である。
【0088】
また第3および第4実施形態において、上記の固定機構は、透水シートにおける特定方向Dyの両端部を固定し、基板の傾斜面に接した状態に透水シートを維持するようになっている。そのため特定方向Dyの両端部を固定して、透水シートにしわが生じること等をより確実に抑えることが可能である。
【0089】
また第5実施形態の製造装置1において、透水シートは、幅方向Dxと直交する方向(特定方向Dy)に延びる無端ベルト状に形成されており、上記の固定機構は、幅方向Dxに延びており、当該無端ベルト状の内側に配置された棒状固定部材を有する。更に、当該棒状固定部材は、当該無端ベルト状の内側に配置された基板とともに透水シートを張架し、当該棒状固定部材を回転させることにより、透水シートを回転させるようになっている。
【0090】
なお各実施形態の透水性シートとして、水を吸収したり水を吸い上げたりする力が比較的強い吸水性シートを採用しても良い。当該吸水性シートとしては、例えば厚さが1mmの木綿生地の他、水酸基を有するセルロース系繊維やカルボン酸塩を有するアクリレート系繊維を含む布や、スポンジ状の多孔質親水性樹脂などが使用できる。
【0091】
吸水性シートにおける水を吸い上げる能力を高める方法としては、繊維の素材の接触角を小さくして濡れ性を高める方法や、繊維径を小さくして表面積を大きく(毛細管現象を高める)する方法等が挙げられる。吸水性シートは、厚みが0.5mm以上かつ5mm以下であることが好ましく、1枚の生地として用いたり、複数の布地を重ねて用いたりしてもよい。吸水性シートが薄過ぎる場合、形成される冷却水膜の水量が少なくなり、乾燥しやすくなる。一方、吸水性シートが厚過ぎる場合、表面に凹凸が生じやすくなり、溶融フィラメントMFがスムーズに滑り難くなる。
【0092】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態に限られず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、フィラメント3次元結合体の製造装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 製造装置
10 溶融フィラメント供給部
11 加圧溶融部
11a シリンダー
11b シリンダー排出口
12 フィラメント排出部
12a 導流路
13 材料投入部
14 スクリュー
15 スクリューモーター
16 スクリューヒータ
17 ノズル部
17a ノズル開口部
18 ダイヒータ
20 融着結合形成部
21 冷却水槽
24 コンベア
25a~25h 搬送ローラ
31、131、231、331、431、531 シュート
51、151、251、351、451、551 基板
52、152、252、352、452、552 透水シート
53、153、353、553 シート固定部材
255 上側シート固定部材
256 下側シート固定部材
461 棒状固定部材
3DF フィラメント3次元結合体
MF 溶融フィラメント
MFz 溶融フィラメント群
【要約】
【課題】シュート上の透水シートにしわが生じることによる不具合を抑えることが可能となるフィラメント3次元結合体の製造装置を提供する。
【解決手段】複数の溶融フィラメントを下方へ並進させてなる溶融フィラメント群を排出する溶融フィラメント供給部と、水槽内で溶融フィラメントどうしが融着結合されるようにして、フィラメント3次元結合体を形成する融着結合形成部と、を有するフィラメント3次元結合体の製造装置であって、融着結合形成部は、傾斜面を有する基板と、少なくとも一部が当該傾斜面の上に配置される透水シートとを有し、溶融フィラメント群の少なくとも一部を受け、これを前記傾斜面上の前記透水シートを滑らせて水槽内へ導くシュートと、透水シートにおける幅方向の全域で、前記滑らせることに伴う位置ずれが抑制されるように透水シートを固定する固定機構と、を有する製造装置とする。
【選択図】
図4B