(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】分解ユニットを用いた統合回収によるプラスチックのモノマーへの変換
(51)【国際特許分類】
C08J 11/12 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
C08J11/12
(21)【出願番号】P 2023501677
(86)(22)【出願日】2021-07-06
(86)【国際出願番号】 US2021070824
(87)【国際公開番号】W WO2022016172
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-02-15
(32)【優先日】2020-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598055242
【氏名又は名称】ユーオーピー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】アッレグロ 2世、マイケル エス.
(72)【発明者】
【氏名】ボッツァーノ、アンドレア ジー.
(72)【発明者】
【氏名】モンタルバーノ、ジョセフ
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/133875(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/133884(WO,A1)
【文献】特表2019-527758(JP,A)
【文献】特開2000-191825(JP,A)
【文献】特開2003-267896(JP,A)
【文献】特表2017-512246(JP,A)
【文献】特表平09-500412(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0047437(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/12
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックをモノマーに変換するためのプロセスであって、
プラスチック供給物流を300~1100℃の温度に加熱して、前記プラスチック供給物流を、モノマーを含む熱分解生成物流に熱分解することと、
前記熱分解生成物流をガス状熱分解生成物流と液体熱分解生成物流とに分離することと、
前記液体熱分解生成物流を分留して、分留されたオーバーヘッド流及び分留された底部流を提供することと、
前記
ガス状熱分解生成物流とともに前記分留されたオーバーヘッド流からモノマーを回収することと、
前記分留された底部流から分解ユニット供給物流を取り出すことと、
前記分解ユニット供給物流を分解ユニットに供給することと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記分解ユニットから分解流出物流を生成することと、前記分解流出物流及び前記ガス状熱分解生成物流から一緒にモノマーを回収することと、を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
プラスチックを熱分解するための装置であって、
プラスチック供給物を熱分解してモノマーを含む熱分解生成物流を生成するための熱分解反応器、
前記熱分解生成物流をガス状熱分解生成物流と液体熱分解生成物流とに分離するための、前記熱分解反応器と下流連通している分離器、
前記液体熱分解生成物流を分留して、分留されたオーバーヘッド流及び分留された底部流を生成するための、前記分離器と下流連通している留出物ストリッパー塔、
前記分留された底部流から分解流出物流を生成するための、前記留出物ストリッパー塔と下流連通している分解ユニット、及び
前記分留されたオーバーヘッド流、前記ガス状熱分解生成物流、及び/または前記分解流出物流からエチレン及び/またはプロピレンを回収するためのスプリッター塔、
を備える、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の記載)
本出願は、2020年7月11日に出願された、米国仮特許出願第63/050,791号の優先権を主張し、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
分野は、モノマーを生成するためのプラスチック材料のリサイクルである。
【背景技術】
【0003】
廃棄プラスチックの回収及びリサイクルは、数十年にわたってプロセスの最初の手順に参加してきた一般大衆によって深い関心を持たれている。過去のプラスチックリサイクルパラダイムは、機械的リサイクルとして説明することができる。機械的リサイクルは、リサイクル可能なプラスチック物品を選別し、洗浄し、溶融プラスチック材料に溶融して、新しくきれいな物品に再成形することを伴う。しかしながら、この機械的リサイクルプロセスは、経済的であることがまだ証明されていない。溶融及び再成形のパラダイムは、経済的及び質的なものを含むいくつかの制限に直面している。材料回収施設でのリサイクル可能なプラスチック物品の収集は、リサイクル可能なプラスチック物品から分離されなければならなかった非プラスチック物品を必然的に含む。同様に、収集された異なるプラスチックの物品は、溶融を受ける前に互いに分離されなければならず、これは、異なるプラスチックで成形された物品は、典型的には、同じプラスチックで成形された物品の品質を有しないであろうためである。収集されたプラスチック物品を非プラスチック物品から分離し、次いで、同じプラスチックに分離することは、プロセスに費用を追加し、そのためあまり経済的ではない。更に、リサイクル可能なプラスチック物品は、溶融及び再成形の前に非プラスチック残留物を除去するために適切に汚れ落としをしなければならず、これもプロセスの費用を増加させる。回収されたプラスチックはまた、バージングレード樹脂の品質を保有していない。プラスチックリサイクルプロセスの負担の重い経済性及び再生プラスチックのより低い品質が、この再生可能資源の広範な再生を妨げてきた。
【0004】
パラダイムシフトにより、化学産業は、廃棄プラスチックをリサイクルするための新しいケミカルリサイクルプロセスに急速に対応することが可能になった。新しいパラダイムは、350~600℃で動作される熱分解プロセスにおいてリサイクル可能なプラスチックを液体に化学的に変換することである。液体は、製油所で燃料、石油化学製品、更にはモノマーに精製することができ、これらを再重合して、バージンプラスチック樹脂を製造することができる。熱分解プロセスは、プロセスに供給されるプラスチック材料から収集された非プラスチック材料を分離することを依然として必要とするが、プラスチック材料の汚れ落とし及びおそらく選別は、ケミカルリサイクルにおいてそれほど重要ではない場合がある。
【0005】
より高温の熱分解が研究中であり、更なる精製なしにプラスチックを直接モノマーに変換するための経路と見られている。プラスチックをモノマーに戻す変換は、現在まだ完全には経済的に開発されていない再生可能資源をリサイクルする循環的な方法を提示する。必要とされているのは、プラスチック物品を直接モノマーに戻して変換する実行可能なプロセスである。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、軽質オレフィン生成物及び重質生成物を生成するプラスチック熱分解プロセスを記載する。軽質オレフィン生成物は、回収プロセスにおいて分離され、一方、重質生成物は、分解ユニットに送られて、所望の生成物に更に分解され得る。分解された流出物流は、軽質オレフィン生成物とともに回収プロセスに供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】本開示のための回収プロセス及び装置の概略図である。
【0008】
定義
「連通」という用語は、列挙された構成要素間で流体の流れが動作可能に許容されることを意味し、これは「流体連通」として特徴付けることができる。
【0009】
「下流連通」という用語は、下流連通している対象に流れる流体の少なくとも一部が、流体連通している物体から動作可能に流れることができることを意味する。
【0010】
「上流連通」という用語は、上流連通している対象から流れる流体の少なくとも一部が、流体連通している物体に動作可能に流れることができることを意味する。
【0011】
「直接連通」という用語は、上流構成要素からの流体の流れが、任意の他の介在容器を通過することなく下流構成要素に入ることを意味する。
【0012】
「間接連通」という用語は、上流構成要素からの流体の流れが、介在する容器を通過した後に下流構成要素に入ることを意味する。
【0013】
「バイパス」という用語は、物体が、少なくともバイパスする程度までバイパス対象との下流連通から外れていることを意味する。
【0014】
「優勢な(predominant)」、「優勢(predominance)」、「優勢である(predominate)」という用語は、50%超、好適には75%超、好ましくは90%超を意味する。
【0015】
「炭素対ガスモル比」という用語は、プラスチック供給物流中の炭素原子のモル比と希釈剤ガス流中のガスのモル比との比を意味する。バッチプロセスの場合、炭素対ガスモル比は、反応器内のプラスチック中の炭素原子のモル数と反応器に添加されるガスのモル数との比である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、軽質オレフィン生成物を含むガス状熱分解生成物流と、重質生成物を含む液体流とに分離することができる熱分解生成物を生成する高温プラスチック熱分解プロセスを発見した。軽質オレフィン生成物は、軽質オレフィンモノマーを回収するために分離することができ、一方、液体重質生成物は、更に分解されるために送られる。軽質オレフィン生成物を早期に回収することによって、それらは、更なる分解工程における望ましくない生成物への更なる分解から保護される。追加的に、分解された流出物流は、軽質オレフィン生成物とともに回収プロセスに供され得る。
【0017】
プラスチック供給物は、ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィンを含むことができる。任意の種類のポリオレフィンプラスチックが、他のモノマーとランダムに又はブロックコポリマーとして混合された場合であっても許容される。したがって、このプロセスによれば、より広い範囲のプラスチックがリサイクルされ得る。また、本発明者らは、プラスチック供給物が混合ポリオレフィンであり得ることも見出した。ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリブチレンは、一緒に混合することができる。追加的に、他のポリマーをポリオレフィンプラスチックと混合することができるか、又はそれ自体で供給物として提供することができる。単独で又は他のポリマーとともに使用することができる他のポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリウレタン、及びポリスルホンが挙げられる。このプロセスはプラスチック供給物を、軽質オレフィンを含むより小さい分子に熱分解するので、多くの異なるプラスチックを供給物中に使用することができる。プラスチック供給物流は、紙、木材、アルミニウム箔、いくつかの金属導電性充填剤、又はハロゲン化若しくは非ハロゲン化難燃剤などの非プラスチック不純物を含有してもよい。
【0018】
一実施形態では、プラスチック供給物流は、材料リサイクル施設(materials recycling facility、MRF)から得ることができ、そうでなければ埋立て地に送られる。プラスチック供給物流は、低温熱分解反応器(low-temperature pyrolysis reactor、LTPR)1のための供給原料として使用される。
図1では、プラスチック供給物流は、MRFサイトにおける最小限の選別及び汚れ落としで受容される。プラスチック供給物は、コンパクト化されたプラスチック物品の分離されたベイルからの圧縮されたプラスチック物品であり得る。プラスチック物品は、LTPR1に供給され得るプラスチックチップ又は粒子に細断することができる。オーガ又は高架ホッパーを使用して、プラスチック供給物を完全な物品又はチップとして反応器内に輸送することができる。プラスチック物品又はチップは、プラスチックの融点より高く加熱して溶融物にし、LTPR1に注入又はオーガで送ることができる。オーガは、プラスチック物品全体をLTPR1内に移動させ、同時にオーガ内のプラスチック物品を摩擦又は間接熱交換によって溶融して、溶融状態で反応器に入る溶融物にするように動作することができる。プラスチック供給物流は、供給ライン3からLTPR1に供給される。
【0019】
LTPR1は、連続撹拌槽反応器(continuous stirred tank reactor、CSTR)、回転炉、オーガ反応器、又は流動化床であり得る。一実施形態では、LTPR1はCSTRである。LTPR1は攪拌機を用いてもよい。LTPR1において、プラスチック供給物流は、プラスチック供給物流を熱分解生成物流に熱分解する温度に加熱される。LTPR1は、プラスチック供給物流中の全てのプラスチックが低温熱分解生成物に変換するのに十分な滞留時間を提供する。LTPR1は、300℃(572°F)~600℃(1112°F)、又は好ましくは380℃(716°F)~450℃(842°F)の温度、0.069MPa(ゲージ)(10psig)~1.38MPa(ゲージ)(200psig)、又は好ましくは0.138MPa(ゲージ)(20psig)~0.55MPa(ゲージ)(80psig)の圧力、0.1hr-1~2hr-1、又はより好ましくは0.2hr-1~0.5hr-1のプラスチック供給物の液空間速度で、動作され得る。ライン4内の窒素ブランケット又は専用の窒素掃引流は、任意選択的に、17Nm3/m3(100scf/bbl)~850Nm3/m3プラスチック供給物(5,000scf/bbl)、又はより好ましくは170Nm3/m3(1000scf/bbl)~340Nm3/m3プラスチック供給物(2000scf/bbl)の速度でLTPR1に添加され得る。ライン4内の窒素掃引流は、全蒸気生成物中の不純ガス分圧を減少させるための希釈ガスとして役立つ。
【0020】
LTPR1は、蒸気生成物流と相平衡にある液体を含有する。液体流の一部分は、循環ポンプ9によって循環ライン8内の液体レベルより下のLTPR1から取り出され得る。ポンプ流は、ライン8で加熱器6に輸送されてもよく、加熱器6は、軽質炭化水素を燃焼させて燃焼熱から熱を発生させる焼却炉であってもよい。ライン8内のポンプ流は、加熱器6内で加熱され、LTPR1に質量流量及び熱伝達率(ライン5を介してLTPR1に戻るときに加熱器6を介してエンタルピー要件の全てを提供する)で戻される。必要な熱伝達は、加熱器6からのライン5内の加熱された液体流と、LTPR1内のプラスチック供給物流3とを混合することによって達成される。
【0021】
低温熱分解生成物流は、ライン11の蒸気状低温生成物流としてLTPR1の頂部付近から抜き出されてもよい。固形分リッチ生成物流は、ライン7においてLTPR1の底部から抜き出されてもよい。固形分リッチ生成物流は、チャー及び非有機物を含み得る。ポンプアラウンド流11からの混合とともに、LTPR1内部の対流熱伝達は、均一な加熱を提供し、これは、オーガ又は回転炉反応器において一般的に見られる、外部間接加熱を介して加熱される熱分解反応方法に対する利点である。
【0022】
ライン11内の蒸気状低温生成物流は、任意選択的に窒素流によって運ばれるある範囲の炭化水素を含む。高温熱分解供給物流は、ライン11内の低温熱分解生成物流から取り出され、高温熱分解反応器(high-temperature pyrolysis reactor、HTPR)12内に供給される。LTPR1及びHTPR12が、同じ位置にある場合、すなわち、互いに50マイル以下、好適には10マイル以下、好ましくは1マイル以下離れている場合、ライン11内の低温生成物流は、高温熱分解供給物流として、冷却を受けずにHTPR12に直接供給することができる。その場合、高温熱分解供給物流は、ライン11内の低温熱分解生成物流から、ライン11をライン120と接続するライン118上の制御弁を通して、ライン120内に取り出される。LTPR1及びHTPR12が、各々互いに50マイル超、好適には10マイル超、好ましくは1マイル超離れて位置するような同じ位置にない場合、蒸気状低温熱分解生成物流を冷却して、水素移動反応及び過分解反応(長時間の輸送中に回収される生成物スレートの価値を低下させることになる)を停止させることができる。この場合、LTPR1はMRFに位置してもよい。一方、HTPR12は、例えば、精製所に位置してもよい。
【0023】
後者の場合の急冷は、ライン11内の蒸気状低温熱分解生成物流を、ライン111を通して、その上の制御弁を介して、冷却器114に分岐させることによって行うことができ、この冷却器を使用して、間接熱交換による蒸気、及びライン128内の冷却された低温熱分解生成物流を生成することができる。ライン128内の冷却された低温熱分解流は、第1の分離器130内で分離されて、ライン132内の第1の蒸気状低温熱分解生成物流及びライン134内の第1の液体低温熱分解生成物流を得ることができる。ライン132内の第1の蒸気状低温熱分解生成物流は、メタン及び乾燥ガスを含むことができ、そのため、燃料流をライン136内の第1の蒸気状低温熱分解生成物流から取り出し、加熱器6内で燃料として燃焼させて、その中で熱を発生させることができる。第1の分離器130は、40~70℃の温度及び350~410kPa(g)の圧力で動作され得る。
【0024】
ライン134内の第1の液体低温熱分解生成物流は、ライン120内の高温熱分解供給物流として取り出すことができる。しかしながら、ライン120内の高温熱分解供給物流として取り出される低温熱分解生成物流の残りから、有用なC2~C4オレフィンを含有する液化石油ガス流を分離するために、第2の分離が得策である場合がある。その場合、ライン134内の第1の液体低温熱分解生成物流は、加熱及び/又は減圧され、第2の分離器140内で分離されて、ライン142内の第2の蒸気状低温熱分解生成物流及びライン144内の第2の液体低温熱分解生成物流を得ることができる。ライン142内の第2の蒸気状低温熱分解生成物流は、LPGを含むことができ、そのため、軽質オレフィンは、重合プロセス又は他の使用のためのモノマーとしてそこから回収することができる。C5+又はC6+炭化水素を有するライン144内の冷液体低温熱分解生成物流は、ライン120内の高温熱分解供給物流として取り出すことができる。第2の分離器140は、45~80℃の温度及び150~250kPa(g)の圧力で動作され得る。
【0025】
更なる実施形態では、高温熱分解供給物流を選択的水素化に供して、ライン120内の供給物流からのジオレフィン及びアセチレンをモノオレフィンに変換することができる。高温熱分解供給物流は、ライン121内の選択的水素化反応器150に迂回させることができる。水素は、ライン152によって高温熱分解供給物流に添加される。選択的水素化反応器150は、通常、比較的穏やかな水素化条件で動作される。これらの条件は、通常、炭化水素が液相材料として存在することをもたらすことになり、そのため、反応器150は、典型的には、高温熱分解反応器(HTPR)12のサイトにある。反応物は、通常、反応物を液相炭化水素として維持するのに十分な最小圧力下に維持される。したがって、広範囲の好適な動作圧力は、276kPa(g)~5516kPa(g)(40psig~800psig)、又は345kPa(g)~2069kPa(g)(50及び300psig)に及ぶ。25℃~350℃(77°F~662°F)、又は50℃~200℃(122°F~392°F)の比較的穏やかな温度が典型的に用いられる。選択的水素化触媒を通過する反応物の液空間速度は、1.0hr-1超~35.0hr-1であるべきである。かなりの量のモノオレフィン系炭化水素の望ましくない飽和を避けるために、選択的水素化触媒床に入る物質中の水素対ジオレフィン系炭化水素のモル比は、0.75:1~1.8:1に維持される。
【0026】
ナフサ流中のジオレフィンを選択的に水素化することができる任意の好適な触媒を使用することができる。好適な触媒としては、銅と、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛、モリブデン、及びカドミウムなどの少なくとも1種の他の金属又はそれらの混合物とを含む触媒が挙げられるが、これらに限定されない。金属は、好ましくは、例えば、シリカ及びアルミナなどの無機酸化物担体上に担持されている。ライン160内の選択的に水素化された高温熱分解供給物流は、ライン120内のHTPR12に輸送される。水素化された流出物は、ライン154で反応器から出て、水素化分離器156に入り、ライン158で水素に富むオーバーヘッド流を提供することができ、これは、塩化水素又は他の化合物を除去するために洗浄され(図示せず)、圧縮され、おそらく補給水素流で補充された後に水素流152として戻され得る。分離器156の底部からのライン160内の水素化高温熱分解供給物流は、ライン120内のHTPR12に輸送することができる。
【0027】
ライン120内の高温熱分解供給物流は、プラスチック用の軽質オレフィンへの更なる変換に依然として好適であるC5+又はC6+材料を含み得る。その結果、高温熱分解供給物流を高温熱分解に供して、回収のための追加量の軽質オレフィンモノマーを生成することができる。ライン120内の高温熱分解供給物流は、離れたMRFなどの離れた位置から液体として輸送されるか、又は近くの位置からガスとして輸送され、HTPR12に供給される。ライン120内の高温熱分解供給物流は、供給ライン14に輸送され、供給ライン14は、おそらく分配器を介してHTPR12の側部16内の供給物入口15を通して、HTPR12内に供給物を注入し得る。高温熱分解プロセスにおいて、ライン14内の高温熱分解供給物流は、その起源を考慮して、プラスチック供給物流として認識される。HTPR12において、高温熱分解供給物流は、600~1100℃の高温に加熱されて、高温熱分解供給物流を、モノマーを含む高温熱分解生成物流に更に熱分解する。
【0028】
代替的に、例示的なプラスチック熱分解プロセス10が
図1に示されており、これは、おそらく材料回収設備からプロセスへの新しいプラスチック供給物を利用し、これは供給物入口15を通して供給物ライン14内のHTPR12に供給される。プラスチック供給物は、コンパクト化プラスチック物品の分離されたベイルからの圧縮されたプラスチック物品であり得る。プラスチック物品は、HTPR12に供給され得るプラスチックチップ又は粒子に細断することができる。オーガ又は高架ホッパーを使用して、プラスチック供給物を完全な物品又はチップとして反応器内に輸送することができる。プラスチック物品又はチップは、プラスチックの融点より高く加熱して溶融物にし、HTPR12に注入又はオーガで送ることができる。オーガは、プラスチック物品全体をHTPR12内に移動させ、同時にオーガ内のプラスチック物品を摩擦又は間接熱交換によって溶融して、溶融状態で反応器に入る溶融物にするように動作することができる。
【0029】
新しいプラスチック供給物は、ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィンを含むことができる。任意の種類のポリオレフィンプラスチックが、他のモノマーとランダムに又はブロックコポリマーとして混合された場合であっても許容される。したがって、このプロセスによれば、より広い範囲のプラスチックがリサイクルされ得る。また、本発明者らは、プラスチック供給物が混合ポリオレフィンであり得ることも見出した。ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリブチレンは、一緒に混合することができる。追加的に、他のポリマーをポリオレフィンプラスチックと混合することができるか、又はそれ自体で供給物として提供することができる。単独で又は他のポリマーとともに使用することができる他のポリマーとしては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミドなどが挙げられる。このプロセスはプラスチック供給物を軽質オレフィンに熱分解するので、多くの異なるプラスチックを供給物中に使用することができる。
【0030】
HTPR12内に注入される供給物は、希釈剤ガス流と接触させてもよい。希釈剤ガス流は、好ましくは不活性であるが、炭化水素ガスであってもよい。蒸気は、好ましい希釈剤ガス流である。希釈剤ガス流は、反応性オレフィン生成物を互いに分離して、軽質オレフィンへの選択性を保持し、したがって、軽質オレフィンの高級オレフィンへのオリゴマー化又は軽質ガスへの過分解を回避する。希釈剤ガス流は、希釈剤ライン18から分配器を通して提供されてもよく、希釈剤入口19を通して分配されてもよい。希釈剤ガス流は、希釈剤入口19を通してHTPR12内に吹き込まれてもよい。希釈剤入口19は、HTPR12の底部にあってもよい。希釈剤ガス流は、HTPR12の供給物入口15から反応器の出口20へのプラスチック供給物流又は高温熱分解供給物流を送り込むために使用されてもよい。一態様では、供給物入口15は、HTPR12の下端にあってもよく、出口20は、反応器の上端にあってもよい。HTPR12の壁16の内部は、反応器を絶縁し、その熱を保存するために、耐火ライニングで被覆されてもよい。
【0031】
プラスチック供給物又は高温熱分解供給物流は、600~1100℃、好適には少なくとも800℃、好ましくは850~950℃の熱分解温度に加熱されるべきである。高温熱分解温度は、プラスチックがHTPR12に供給され得るプラスチックの溶融温度よりもはるかに高くなるだろう。プラスチック供給物は、HTPR12に供給される前に高温熱分解温度に予熱することができるが、好ましくは、HTPR12に入った後に高温熱分解温度に加熱される。一実施形態では、新しいプラスチック供給物は、高温熱担体粒子流と接触させることによって高温熱分解温度まで加熱される。高温熱担体粒子流は、担体ライン22において粒子入口23を通って反応器に供給され得る。一態様では、粒子入口23は、希釈剤入口19とプラスチック供給物入口15との間に位置してもよい。次いで、希釈剤ガス流は、高温熱担体粒子流と接触してそれを移動させ、供給ライン14から供給物入口15を通るプラスチック供給物流又は高温熱分解供給物流と接触させる。
【0032】
熱担体粒子流及び供給物流は、HTPR12に入る前に互いに接触することが企図され、この場合、プラスチック供給物流及び熱担体粒子流は、同じ入口を通ってHTPR12に入り得る。また、希釈剤ガス流の一部又は全部が熱担体粒子を反応器内に送り込むことができることも企図され、この場合、希釈剤ガス流及び熱担体粒子流が同じ入口を通ってHTPR12に入ることができる。追加的に、希釈剤ガス流は、新しいプラスチック供給物流又は高温熱分解供給物流を反応器内に送り込むことができ、この場合、希釈剤ガス流及びプラスチック供給物流は、同じ入口を通ってHTPR12に入ることができる。供給物流及び熱担体粒子流は、希釈剤ガス流の一部又は全部によってHTPR12内に送り込まれてもよいことも企図され、その場合、希釈剤流、供給物流、及び熱担体粒子流の少なくとも一部が全て同じ入口を通ってHTPR12に入ることができる。
【0033】
別の実施形態では、供給物入口15及び粒子入口23は、反応器の上端に位置してもよく、そこからダウナー反応器配置(図示せず)内に一緒に落下することができる。希釈剤ガス流は、この実施形態では、供給物及び熱担体粒子を上方に流動化するようには機能しない。
【0034】
供給物を熱分解温度に加熱すると、プラスチック供給物又は高温熱分解供給物流は、気化し、熱分解して、軽質オレフィンを含むより小さい分子になる。蒸発及びより大きなモル数への変換は、両方とも体積を増加させ、反応器出口20に向かう供給物及び熱分解生成物の急速な移動を引き起こす。プラスチック供給物の体積膨張により、供給物及び生成物を出口に急速に移動させるために希釈剤ガス流は必要ではない。しかし、希釈剤ガスはまた、生成物オレフィンを互いに分離し、かつ熱担体粒子から分離して、オリゴマー化及び過分解(これらは両方とも軽質オレフィン選択性を低下させる)を防止する働きをする。したがって、希釈剤ガス流を用いて、供給物流を、熱分解を受けながら、高温熱担体粒子流と接触させ、反応器出口20に向かって移動させることができる。一態様では、本発明者らは、希釈剤ガス流を0.6~20の高い炭素対ガスモル比で導入することができることを見出した。炭素対ガスモル比は、少なくとも0.7、好適には少なくとも0.8、より好適には少なくとも0.9、最も好適には少なくとも1.0であり得る。一態様では、炭素対ガスモル比は15を超えなくてもよく、好適には12を超えなくてもよく、より好適には9を超えなくてもよく、最も好適には7を超えなくてもよく、好ましくは5を超えない。高い炭素対ガスモル比は、重要なことに、生成ガスを含む他のガスから分離されなければならない希釈剤ガスの量を減少させる。
【0035】
高温熱担体粒子流は、砂などの不活性固体微粒子であり得る。追加的に、球状粒子は、希釈剤ガス流によって最も容易に持ち上げられ又は流動化され得る。球状αアルミナは、熱担体粒子にとって好ましい材料であり得る。球状αアルミナは、アルミナ溶液を噴霧乾燥し、続いてアルミナをα-アルミナ結晶相に変換する温度でそれをか焼することによって形成され得る。一実施形態では、熱担体粒子は、反応器に供給されるプラスチック物品、チップ、又は溶融物よりも小さい平均直径を有するべきである。熱担体粒子の平均直径は、粒子の最大平均直径を指す。新しいプラスチック供給物溶融物は、典型的には、熱担体粒子よりも大きい平均直径を有するモルテングロビュールで反応器に入ることができる。
【0036】
供給物流は、高速熱分解及び他の熱分解方法(真空熱分解、低速熱分解など)を含む様々な熱分解方法を使用して熱分解することができる。高速熱分解は、非常に短い滞留時間、典型的には0.5秒~0.5分、比較的高い温度を供給原料に急速に付与することと、次いで、化学平衡が起こり得る前に熱分解生成物の温度を急速に低下させることと、を含む。このアプローチによって、ポリマーの構造は、解重合及び揮発反応によって最初に形成されるが、いかなる有意な長さの時間も持続しない、反応性化学フラグメントに分解される。高速熱分解は、様々な熱分解反応器(固定床熱分解反応器、流動化床熱分解反応器、循環流動化床反応器、又は高速熱分解が可能な他の熱分解反応器など)におい実施することができる、強力で短時間のプロセスである。
【0037】
熱分解プロセスは、チャーと呼ばれる炭素含有固体、熱担体粒子上に蓄積するコークス、並びにオレフィン及び水素ガスを含む炭化水素を含む熱分解ガスを生成する。
【0038】
熱担体粒子及びプラスチック供給物流は、希釈剤ガス流によって反応器内で流動化され得る。プラスチック供給物流及び熱担体粒子流は、希釈剤入口19を通ってHTPR12に連続的に入る希釈剤ガス流によって流動化され得る。熱担体粒子及びプラスチック供給物流は、高密度起泡床で流動化することができる。新しいプラスチック供給物流の溶融プラスチック及び熱担体粒子は、塊中のプラスチックが完全に熱分解してガスになるまで、一緒に凝固して塊になり得る。起泡床では、希釈剤ガス流及び気化したプラスチックが気泡を形成し、この気泡は、高密度微粒子床の識別可能な上面を通って上昇する。ガス中に同伴された熱担体粒子のみが蒸気とともに反応器から出る。高温熱分解供給物流のみがHTPR12に供給される場合、起泡床におけるガスの空塔速度は、典型的には、3.4m/s(11.2ft/s)未満となり、高密度床の密度は、典型的には、475kg/m3(49.6lb/ft3)超となる。固体プラスチック供給物が固体粒子として供給されるか、又は溶融物としてHTPR12に供給されて、これによって、プラスチック供給物及び熱担体粒子が塊に凝固する場合、固体プラスチック供給物の空塔速度は2.7m/s(9ft/s)未満となり、床の密度は274kg/m3(17.1lb/ft3)超となる。熱担体粒子とガスとの混合物は不均一であり、浸透性の蒸気が触媒をバイパスする。高密度起泡床において、ガスは反応器出口20から出る。一方、固体熱担体粒子及びチャーは、HTPR12の底部出口(図示せず)から出ることができる。
【0039】
一態様では、HTPR12は、熱担体粒子の希釈相を用いて、高速流動化流れレジーム又は輸送若しくは空気搬送流れレジームで動作することができる。HTPR12は、ライザ反応器として動作する。先に示したように、低温熱分解プロセスから生じる高温熱分解供給物流とともに塊が形成されることは予想されない。高温熱分解供給物流は、HTPR12内で加熱されると急速に蒸発し、熱分解し、希釈剤ガス流とともに流れる。
【0040】
新しいプラスチック供給物を用いて、高速流動化流れ及び輸送流れレジームにおいて、熱分解を受ける熱担体粒子及び溶融プラスチックの塊の流、ガス状熱分解プラスチック、並びに希釈剤ガス流は、一緒に上方に流れる。プラスチック及び熱担体粒子塊の準高密度床は、HTPR12の底部で熱分解を受ける。プラスチック及び熱担体粒子の塊は、熱分解による十分なサイズ減少の際に上方に輸送される。
【0041】
希釈剤ガス流は、プラスチック供給物流及び熱担体粒子流を持ち上げることができる。分離器30がHTPR12の外側に位置する場合、ガスと熱担体粒子との混合物は、反応器出口20から一緒に排出されてもよい。分離器30がHTPR12内に位置する場合、ガスは反応器出口20から排出され、熱担体粒子及びチャーは追加の熱担体粒子出口から出る。典型的には、熱担体粒子を排出する反応器出口20は、熱担体粒子入口23の上方にある。更に、ガス状生成物からの熱担体粒子の分離は、熱担体粒子入口23及び/又は供給物入口15の上方で、輸送及び高速流動化流れレジームで行われる。
【0042】
高速流動化流れレジームにおける流体供給物の密度は、少なくとも274kg/m3(17.1lb/ft3)~475kg/m3(49.6lb/ft3)であり、輸送流れレジームでは274kg/m3(17.1lb/ft3)以下となる。高速流動化流れレジームにおいて塊に凝固するプラスチック供給物の密度は、少なくとも120kg/m3(7.5lb/ft3)~274kg/m3(17.1lb/ft3)であり、輸送流れレジームでは120kg/m3(7.5lb/ft3)以下となる。空塔ガス速度は、典型的には、プラスチックで凝固された熱担体粒子の塊のための高速流動化流れレジームにおいて、少なくとも2.7m/s(9ft/s)~8.8m/s(28.9ft/s)となる。輸送流れレジームにおいて、空塔ガス速度は、プラスチックで凝固された熱担体粒子の塊に対して少なくとも8.8m/s(28.9ft/s)となる。空塔ガス速度は、典型的には、流体プラスチック供給物のための高速流動化流れレジームにおいて少なくとも3.4m/s(11.2ft/s)~7.3m/s(15.8ft/s)となる。輸送流れレジームにおいて、空塔ガス速度は、流体プラスチック供給物に対して少なくとも7.3m/s(15.8ft/s)となる。希釈剤ガス流及び生成ガスは、高速流動化流れレジームで上昇するが、高温固形物はガスに対してスリップする場合があり、ガスは間接的な上向きの軌道を取ることができる。輸送流れレジームでは、より少ない固形物がスリップするだろう。反応器中のプラスチック及び生成ガスの滞留時間は1~20秒となり、典型的には10秒以下となる。
【0043】
熱担体粒子、希釈剤ガス流、及び高温熱分解生成ガスを含む反応器流出物は、反応器流出物ライン28内の反応器出口20を通ってHTPR12から出て、分離器30に輸送され得る。一態様では、分離器30は、HTPR12内に位置してもよい。分離器30がHTPR12内に位置する場合、熱担体粒子、希釈剤ガス流、及び熱分解生成ガスは、分離器30内に入る。ライン28内の反応器流出物は、600~1100℃の温度及び1.5~2.0バール(ゲージ)の圧力となる。
【0044】
分離器30は、求心加速度を利用して熱担体粒子を熱分解されたガス状生成物から分離する、サイクロン分離器であってもよい。反応器流出物ライン28は、反応器流出物を、典型的には水平方向に角度の付いた軌道でサイクロン分離器30に接線方向に流し込み、反応器流出物を求心的に加速させることができる。求心加速度は、より高密度の熱担体粒子を外向きに重力落下させる。粒子は角運動量を失い、サイクロン分離器30内を下降して下部触媒床に入り、熱担体浸漬ライン32を通って出る。より低密度のガス状生成物はサイクロン30内を上昇し、移送ライン34を通って排出される。一態様では、熱分解ガス生成物は、ストリッピングガスを浸漬ライン32の下端に添加することによって、ライン32内の熱担体粒子からストリッピングされ得る。この実施形態では、ストリッピングガス及びストリッピングされた熱分解ガスは、移送ライン34において分離器30から出る。
【0045】
一実施形態では、移送ライン34内の高温熱分解生成物流を直ちに急冷して、高温熱分解生成物流中の軽質オレフィン選択性を低下させるために起こり得る水素移動反応及び過分解を防止かつ停止させることができる。急冷は以下の方法で行うことができるが、他の急冷プロセスも企図される。高温熱分解生成物流は、おそらく水との間接熱交換によって冷却されて、移送ライン交換器36において希釈剤ガス流のための蒸気を作製することができる。ライン38内の交換された高温熱分解生成物流は、300~400℃の温度であってもよい。一態様では、交換された高温熱分解生成物流は、水との間接熱交換によって完全に急冷されて、移送ライン交換器36において蒸気を生成し得る。交換された高温熱分解生成物流が間接熱交換によって完全に急冷される場合、完全に冷却された高温熱分解生成物流は、30~60℃及び約1~1.3バール(ゲージ)の大気圧で移送ライン交換器36から出ることができ、そのため、蒸気状高温熱分解生成物流のより軽質な成分が凝縮することができる。
【0046】
代替的に、ライン38内の交換された高温熱分解生成物流は、油急冷チャンバ42内で、ライン40からの燃料油などの油流で直ちに急冷されて、交換された高温熱分解生成物流を更に急冷することができる。油流は、流れている交換された高温熱分解生成物流中に横方向に噴霧することができる。交換された高温熱分解生成物流は蒸気相中に残るが、油流は油急冷チャンバ42の底部から出る。油急冷チャンバ42から出た後の油流は、冷却され、油急冷チャンバに再循環されてもよい。油急冷されたガス状生成物流は、ライン44で油急冷チャンバから出て、更なる急冷のために水急冷チャンバ46に送達され得る。ライン44内の油急冷されたガス状生成物流は、水急冷チャンバ46内でライン48からの水流で直ちに急冷されて、油急冷されたガス状生成物流を更に急冷することができる。水流は、流れている油急冷ガス状生成物流中に横方向に噴霧することができる。水急冷されたガス状生成物流は、30~60℃及び約1~1.3バール(ゲージ)の大気圧に冷却され、そのため、ガス状生成物流のより軟質な成分が凝縮する。
【0047】
移送ライン交換器36が、油又は水で直接急冷することなく移送ライン34内のガス状熱分解生成物流を間接的に冷却する1つ又は一連の熱交換器を含むことができる実施形態では、移送ライン38は、移送ライン交換器36を高温熱分解分離器55に直接接続する。
【0048】
ライン54内の高温熱分解生成物流は、移送ライン熱交換器36内で間接的にのみ急冷されるか、又は追加的に急冷チャンバ42及び46内で直接的に急冷されるかにかかわらず、急速冷却により部分的に凝縮される。高温熱分解生成物流は、高温熱分解分離器55内で分離されて、分離器の頂部から延在するオーバーヘッドライン52内のガス状高温熱分解生成物流を、分離器の底部から延在する底部ライン57内の液体高温熱分解生成物流から分離する。分離器55は、HTPR12と下流連通していてもよい。一実施形態では、水急冷チャンバ46から生じるような水性流が存在する場合、ライン50内の水性流を高温熱分解分離器55内のブートから除去することができる。C5+炭化水素を含む液体高温熱分解生成物流は、ライン57においてブートより上の水急冷チャンバから除去することができる。
【0049】
水ライン50内の水性流は、おそらく移送ライン交換器36及び/又は水ライン交換器56における熱交換によって気化され、希釈剤ガス流として使用されてもよい。ブロワー58は、希釈剤ライン19を通して希釈剤入口19を介してHTPR12内に蒸気を吹き込む。
【0050】
オーバーヘッドライン52内のガス状熱分解生成物流は、圧縮機80内で2~3MPa(ゲージ)に圧縮することができる。次いで、100~150℃の圧縮されたガス状熱分解生成物流を、苛性ライン82内の苛性洗浄容器90に供給することができる。苛性洗浄容器90において、圧縮されたガス状生成物流は、ライン92を通って苛性洗浄容器90に供給される水酸化ナトリウム水溶液と接触して、二酸化炭素などの酸性ガスを水酸化ナトリウムに吸収する。二酸化炭素及び水酸化ナトリウムは炭酸ナトリウムを生成し、炭酸ナトリウムは水相に入り、再生かつ再循環される苛性底部ライン96を通って酸性ガスリッチ流として出る。洗浄されたガス状高温熱分解生成物流は、分解ガスライン94において排出され、乾燥機100に供給されて、残留水分を除去する。
【0051】
乾燥機100では、洗浄されたガス状高温熱分解生成物流を、シリカゲルなどの吸着剤と接触させて水を吸着させるか、又は加熱して水を蒸発させて、ガス状高温熱分解生成物流から除去することによって、洗浄されたガス状高温熱分解生成物流から水が除去される。水流は、水ライン104において乾燥機100から除去される。乾燥ガス状高温熱分解生成物流は、乾燥分解ガスライン102において回収される。
【0052】
乾燥ガス状高温熱分解生成物流は、C2、C3、及びC4オレフィンを含み、これらは回収され、重合によってプラスチックを生成するために使用され得る。本発明者らは、ガス状生成物から回収される生成物の少なくとも50重量%、典型的には少なくとも60重量%、好適には少なくとも70重量%が、有用なエチレン、プロピレン、及びブチレン生成物であることを見出した。より低く、より経済的な炭素対希釈剤ガスモル比では、回収された生成物の少なくとも40重量%が有用な軽質オレフィンであることが見出された。これらの軽質オレフィンの回収は、プラスチックをリサイクルするための循環経済を表す。重合プラントは現場にあってもよく、又は回収されたオレフィンは重合プラントに輸送されてもよい。
【0053】
分離器30に戻ると、熱担体浸漬ライン32内の熱担体粒子は、熱分解プロセスからの蓄積したコークスを有し得る。また、熱分解プロセスからのチャー残留物はまた、最終的に熱担体浸漬ライン32内の固形物となる場合がある。熱担体粒子はまた、HTPR12においてそれらの熱の多くを放出しており、再加熱される必要がある。したがって、熱担体浸漬ライン32は、熱担体粒子及びチャーを再加熱器60に送達する。
【0054】
態様では、再加熱器60に入る熱担体粒子の大部分は、分離器30を通過する。一実施形態では、再加熱器60に入る熱担体粒子の全てが分離器30を通過する。
【0055】
熱担体粒子及びチャーは、再加熱器60に供給され、ライン62内の空気などの酸素供給ガスと接触して、冷たい熱担体粒子上のチャー及びコークスを燃焼させる。再加熱器60は、HTPR12とは別個の容器である。コークスは、燃焼条件で酸素供給ガスと接触させることによって使用済み触媒から燃焼除去される。燃焼熱は、熱担体粒子を再加熱する働きをする。10~15kgの空気が、熱担体粒子の燃焼除去されたコークス1kg当たり必要である。HTPR12内の熱分解反応を駆動するのに十分な熱を生成するために、必要であれば、ライン64内の燃料ガス流を再加熱器60に加えてもよい。燃料ガスは、ライン102のガス状高温熱分解生成物流から回収されたパラフィンから得ることができる。例示的な再加熱条件は、再加熱器60において700℃~1000℃の温度及び1~5バール(絶対値)の圧力を含む。
【0056】
再加熱された熱担体粒子流は、再加熱器60の温度で熱担体粒子入口23を通ってライン22内の高温熱分解反応器12に再循環される。煙道ガス及び同伴されたチャーは、ライン66で再加熱器から出て、サイクロン70に送達され、サイクロン70は、オーバーヘッドライン72内の排気ガスをライン74内の固体灰生成物から分離する。
【0057】
図2は、本開示のための回収プロセス及び装置200を示す。ガス状熱分解生成物を含むライン102内の乾燥ガス状熱分解生成物流は、軽質オレフィン回収プロセス(light olefin recovery process、LORP)区分210に供給されてもよく、このLORP区分は、既に存在してもしなくてもよく、かつ/又は分解ユニット220にサービス提供してもしなくてもよい。ライン102内のガス状熱分解生成物流はまた、
図1からのライン142内の低温熱分解生成物流を含んでもよく、かつ/又はそれから取り出されてもよい。分解ユニット220は、水蒸気分解ユニット、流動接触分解ユニット、水素化分解ユニット、又はより大きな分子をより小さな分子に分解する他の分解ユニットであってもよい。一実施形態では、分解ユニット220は、水蒸気分解ユニットであり、本明細書ではそのように例示的に説明する。ライン52内のガス状熱分解生成物流から取り出されたライン102内の乾燥ガス状高温熱分解生成物流は、LORP区分210に供給されて、ガス状熱分解生成物流から軽質オレフィンモノマーを回収することができる。分解ユニット220からのライン226内の分解流出物流及び留出物ストリッパー正味オーバーヘッドライン228内の留出物ストリッパーオーバーヘッド流もまた、ライン102内の乾燥ガス状高温熱分解生成物流とともにLORP区分210に供給され得る。一実施形態では、ライン102内の乾燥ガス状高温熱分解生成物流、ライン226内の分解流出物流、及びライン228内の留出物ストリッパー正味オーバーヘッド流は、組み合わされてもよく、又はLORP区分210内の分留塔に別々に供給されてもよい。分留塔は、脱エタン装置塔224であってもよい。具体的には、ガス状熱分解生成物流を含むライン102内の乾燥分解ガス流は、分解ユニット220からのライン226内の分解流出物流及び/若しくは留出物ストリッパーオーバーヘッド流とは別個に又は一緒に、LORP区分210内の脱エタン装置分留塔224に供給されてもよい。LORP区分210は、高温熱分解分離器55と下流連通していてもよい。LORP区分210はまた、留出物ストリッパー正味オーバーヘッドライン228と下流連通している。
【0058】
図1からのライン57内の高温熱分解液体流は、ストリッパーオーバーヘッド流中のC
4-炭化水素をストリッパー底部流中のC
5+炭化水素から大まかに分離するための脱ブタン装置として機能する任意の留出物ストリッパー塔350に供給することができる。代替的に、
図1からのライン52内の高温熱分解液体流は、ストリッパーオーバーヘッド流中のC
5-炭化水素をC
6+ストリッパー底部流からそれぞれ大まかに分離するための脱ペンタン装置として機能する任意の留出物ストリッパー塔350に供給することができる。留出物ストリッパー正味オーバーヘッドライン228内の留出物ストリッパーオーバーヘッド流は、C
4-及び/又はC
5-炭化水素に富む。留出物ストリッパーオーバーヘッド流は、留出物ストリッパー塔350からオーバーヘッドライン352において抜き出され、冷却器を通って分離器内に入る。凝縮された留出物ストリッパーオーバーヘッド流は、還流ラインを通して還流として留出物ストリッパー塔350に再循環され、蒸気状留出物ストリッパー正味オーバーヘッド流は、ライン226内の分解ユニット流出物流及びライン102内のガス状高温熱分解生成物流とともに、LORP区分210に供給されてもよい。ライン142内のガス状低温熱分解生成物流もまた、ライン102内のLORP区分210に供給され得ることも企図される。留出物ストリッパー塔350は、100~180℃、好ましくは125~150℃の底部温度範囲、及び2000~2250kPa(ゲージ)のオーバーヘッド圧力範囲で動作する。留出物ストリッパー塔350は、高温熱分解分離器55の底部ライン52と下流連通していてもよい。
【0059】
留出物ストリッパー底部流は、留出物ストリッパー塔350から底部ラインを通って抜き出され、そこから留出物ストリッパー底部の一部分がリボイラーライン、リボイラー加熱器を通って流れ、留出物ストリッパー塔350に戻る。留出物ストリッパー底部流の残りの部分は、正味ストリッパー底部ライン354を通って流れる。C5+炭化水素を含む留出物ストリッパー正味底部流は、ライン300内の分解ユニット供給物流として取り出すことができる。分解ユニット220は、ライン300内の分解ユニット供給物流によって既に供給されていてもよいが、ライン354内の留出物ストリッパー底部流及びライン344の脱ブタン化底部流は、ライン300内の分解供給物流を補充するために使用されてもよく、そのため、分解ユニット供給物流は、ライン354内の留出物ストリッパー底部流及び/又はライン344内の脱ブタン化装置底部流から取り出されてもよい。しかしながら、留出物ストリッパー塔がC6+炭化水素留分を生成する場合、留出物ストリッパー正味底部流をヘキセン塔360に供給して、有用なヘキセン-1流を回収することができる。
【0060】
任意選択のヘキセン塔360を
図3に示す。
図2からのライン354内の留出物ストリッパー正味底部流を任意のヘキセン塔360に供給して、オーバーヘッドライン内のヘキセン-1流を標準C
6+ヘキセン塔底部流から分離することができる。ヘキセン-1流は、本発明者らが熱分解プラスチック流中に存在することを見出した有用な石油化学製品である。ヘキセン塔オーバーヘッド流は、オーバーヘッドラインにおいてヘキセン塔360から抜き出され、冷却器において冷却され、分離器内に供給される。凝縮されたヘキセン塔オーバーヘッド流は、還流ラインを通して還流として留出物ストリッパー塔350に再循環され、凝縮されたヘキセン-1生成物は正味オーバーヘッド液体ライン362に収集される。不凝縮オフガスは、正味ヘキセン塔ベントライン364に収集され、
図2の留出物ストリッパー正味オーバーヘッドライン228に供給されて、ライン226内の分解ユニット流出物流及びライン102内のガス状熱分解生成物流とともにLORP210において分離されてもよい。ヘキセン塔360は、150~200℃、好ましくは160~190℃の底部温度範囲、及び1800~2100kPa(ゲージ)のオーバーヘッド圧力範囲で動作する。
【0061】
ヘキセン塔底部流は、底部ラインを通してヘキセン塔350から抜き出され、そこから、ヘキセン塔底部流の一部分は、リボイラーライン、リボイラー加熱器を通って流れ、ヘキセン塔360に戻る。ヘキセン塔底部流の残りの部分は、正味ヘキセン塔底部ライン366を通って流れる。標準-C6沸点範囲より上で沸騰する炭化水素を含むヘキセン塔正味底部流は、留出物ストリッパー正味底部ライン354に戻されてもよく、ライン300において分解ユニット供給物として取り出されてもよい。したがって、ライン300内の分解ユニット供給物流は、ヘキセン塔底部生成物から取り出すことができる。
【0062】
図2に戻ると、脱エタン装置塔224は、乾燥分解ガスライン102内のガス状熱分解生成物流、ライン226内の分解流出物流、及びライン228内の蒸留ストリッパー正味オーバーヘッド流を、脱エタン装置オーバーヘッドライン230内のC
2-炭化水素に富む脱エタン装置オーバーヘッド流と、脱エタン装置底部ライン232内のC
3+炭化水素に富む脱エタン化された底部流とに分離する。脱エタン化された底部流は、底部ラインを通して脱エタン装置塔224から抜き出され、そこから脱エタン化された底部流の一部分がリボイラーライン、リボイラー加熱器を通って流れ、脱エタン装置塔224に戻る。脱エタン化された底部流の残りの部分は、C
3+炭化水素を含む正味脱エタン化された底部ライン232を通って流れ、脱プロパン装置塔240に供給される。脱エタン装置塔224は、100~130℃の底部温度範囲及び210~300kPa(ゲージ)のオーバーヘッド圧力範囲で動作する。
【0063】
脱エタン装置オーバーヘッド流は、脱エタン装置オーバーヘッドライン230において脱エタン装置塔224から抜き出すことができる。脱エタン装置オーバーヘッド流は、圧縮機234において1500~3500kPa(ゲージ)の圧力まで圧縮されて、エチレン回収のためにそれを調製することができる。更に、脱エタン装置オーバーヘッド流は、それを重合プラントのための好適なエチレン供給物にするために選択的水素化を必要とするアセチレン類を含み得る。圧縮された脱エタン装置オーバーヘッド流は、C2選択的水素化反応器250における選択的水素化に適切な圧力であってもよい。
【0064】
水素は、C2選択的水素化反応器250に供給される前に、ライン230内の圧縮された脱エタン装置オーバーヘッド流に添加されてもよい。C2選択的水素化反応器250は、通常、液相条件で比較的穏やかな水素化条件で動作されるので、圧縮機234の後に適切に続く。したがって、広範囲の好適な動作圧力は、276kPa(g)~5516kPa(g)(40psig~800psig)、又は345kPa(g)~2069kPa(g)(50及び300psig)に及ぶ。25℃~350℃(77°F~662°F)、又は50℃~200℃(122°F~392°F)の比較的穏やかな温度が典型的に用いられる。選択的水素化触媒を通過する反応物の液空間速度は、1.0hr-1超又は35.0hr-1超であるべきである。かなりの量のモノオレフィン系炭化水素の望ましくない飽和を避けるために、選択的水素化触媒床に入る物質中の水素対マルチオレフィン系炭化水素のモル比は、0.75:1~1.8:1に維持される。水素化された流出物は、ライン254で反応器から出て、水素化分離器256に入り、ライン258で水素に富むオーバーヘッド流を提供することができ、これは、圧縮され、おそらく補給水素流で補充された後に水素流252として戻され得る。
【0065】
分離器256の底部からのライン260内の水素化脱エタン装置オーバーヘッド流は、脱エタン装置還流分離器262内で更に冷却され分離されてもよい。還流分離器262からの蒸気流は、ライン266内でコールドボックス264に送ることができ、一方、還流分離器262からの液体流は、ライン268内で脱エタン装置塔224に還流して戻すことができる。過剰の還流が脱エタン装置還流分離器262から提供される場合、還流分離器262からの液体流の一部分を脱メタン装置塔270に送ることができる。
【0066】
コールドボックス264は、典型的には、ライン266内のプロセス流及び/又は冷媒流と水素化圧縮脱エタン装置オーバーヘッド流との間に一連の極低温熱交換器を有し、その後に、液体流から蒸気流を除去する分離器を有する。水素の大部分は、コールドボックス264からコールドボックスガスライン274内のコールドボックスガス流として回収される。コールドボックスガス流は、精製された水素を回収するために圧力スイング吸着(pressure swing adsorption、PSA)ユニット280に供給することができる。メタン及びC2+炭化水素に富むコールドボックス液体流は、コールドボックス液体ライン276においてコールドボックスから除去される。
【0067】
圧力スイング吸着ユニット280において、コールドボックスガス流は、水素リッチ流とメタンリッチ流とに分離することができ、メタンリッチ流は、ライン282内の燃料ガス流を補充するために使用することができる。コールドボックスガス流は、PSAユニット280に供給されてもよく、そこでは、メタン及びC2+炭化水素などのより大きな分子が床内の吸着剤を通過することを可能にしながら、水素が直列の複数の床内の吸着剤上に吸着される。吸着圧力は、水素を吸着するために1MPa(150psia)~1.7MPa(250psia)であってもよい。メタン及びC2+炭化水素に富むテールガス流は、テールガスライン284においてPSAユニット280から出る。吸着床は、圧力間で循環するように直列に接続されてもよい。各吸着剤床への流れは周期的に停止され、停止された床内の圧力は段階的に減少されて、空隙空間ガスを放出し、次いでブローダウンして、停止された床内の吸着剤から水素を脱着し、水素生成物ライン286内の水素生成物流へと通過する。34.5kPa(5psia)~172kPa(25psia)のブローダウン圧力を使用して、吸着剤から水素を脱着させることができる。好適な吸着剤は、活性化カルシウムゼオライトAであってもよい。テールガスライン284内のテールガス流は、60~85モル%の水素、15~35モル%のメタン、及び1~10モル%のC2+炭化水素を含んでもよい。テールガス流は、ライン282内の燃料ガスに加えられ、燃料ガスヘッダに送られてもよい。
【0068】
ライン276内のコールドボックス液体流及びライン272内の脱エタン装置還流分離器262からの過剰還流液は、脱メタン装置分留塔270内で分留されて、メタン及びより軽質のガスを含む脱メタン装置オーバーヘッドライン282内の脱メタン装置オーバーヘッド流と、C2炭化水素を含む脱メタン装置底部ライン内の脱メタン化された底部流とを提供することができる。ライン282内の脱メタン装置オーバーヘッド流は、ライン284内のPSAテールガスと組み合わせて、燃料ガスヘッダを供給することができる。脱メタン化された底部流は、底部ラインを通して脱メタン装置塔270から抜き出され、そこから脱メタン化された底部流の一部分がリボイラーライン、リボイラー加熱器を通って流れ、脱メタン装置塔270に戻る。脱メタン化された底部の残りの部分は、C2炭化水素を含む正味脱エタン化された底部ライン288を通って流れ、エチレンモノマーを回収するためにC2スプリッター塔290に供給される。脱メタン装置塔270は、-40~100℃、好ましくは20~0℃の底部温度範囲、及び3100~3400kPa(ゲージ)のオーバーヘッド圧力範囲で動作する。
【0069】
脱メタン化されたC2炭化水素流は、C2スプリッター塔290において更に処理されて、C2スプリッター正味オーバーヘッドライン292においてエチレンリッチ生成物モノマー流を回収し、C2スプリッター底部ライン294においてエタンリッチ流を回収することができる。C2スプリッターオーバーヘッド流は、オーバーヘッドライン292においてC2スプリッター塔290のオーバーヘッドから抜き出され、冷却器において凝縮され、分離器に供給される。凝縮されたC2スプリッターオーバーヘッド流は、還流ラインを通して還流としてC2スプリッター塔290に再循環され、残りの凝縮されていないC2スプリッターオーバーヘッド流は、正味C2スプリッターオーバーヘッドライン76を通して抜き出され、エチレン生成物として回収される。C2スプリッターオーバーヘッド流は、重合プラントに十分なエチレンに高度に濃縮される。エタンリッチ流は、C2スプリッター底部ラインを通してC2スプリッター塔290から抜き出され、そこから底部の一部分がリボイラーライン及びリボイラー加熱器を通って流れ、加熱されて、C2スプリッター塔290に戻る。エタンリッチ底部流の残りの部分は、正味C2スプリッター底部ライン294を通って流れ、燃料ガスとして取り出すことができるか、又は加熱器6などの上流で燃焼させることができるか、又はライン300内の分解供給物をエタンリッチ底部流から取り出すことができる。C2スプリッター塔290は、400~2500kPa(ゲージ)、好ましくは500~800kPa(ゲージ)のオーバーヘッド圧力、及び-30℃~-10℃の底部温度で動作することができる。
【0070】
C3+炭化水素に富む正味脱エタン装置底部ライン232内の正味脱エタン化された底部流は、回収を必要とするプロピレンモノマー中で濃縮される。したがって、正味脱エタン化された底部流は、脱プロパン装置塔240において、C3炭化水素に富む脱プロパン装置オーバーヘッド流と、C4+炭化水素リッチ脱プロパン化された底部流とに分留される。脱プロパン装置オーバーヘッド流は、オーバーヘッドラインにおいて脱プロパン装置塔240のオーバーヘッドから抜き出され、冷却器において凝縮され、受け器に供給される。凝縮された脱プロパン装置オーバーヘッド流は、還流ラインを通して還流として脱プロパン装置塔240に還流され、残りの凝縮された脱プロパン装置オーバーヘッド流は、脱プロパン装置正味オーバーヘッドライン310を通して抜き出される。脱プロパン装置正味オーバーヘッドライン310内の脱プロパン装置オーバーヘッド流は、飽和を必要とするジオレフィン及びアセチレンを含み、そのため、C3選択的水素化反応器320に輸送される。C4+炭化水素リッチ流は、脱プロパン装置底部ラインを通して脱プロパン装置塔240から抜き出され、そこから、底部の一部分は、リボイラーライン及びリボイラー加熱器を通って流れ、加熱されて、脱プロパン装置塔240に戻る。脱プロパン装置正味底部ライン312内のC4+炭化水素リッチ流の残りの部分は、C4+炭化水素に富む。脱プロパン装置塔240は、1000~2000kPa(ゲージ)のオーバーヘッド圧力、及び70℃、好ましくは少なくとも80℃~150℃の底部温度で動作することができる。
【0071】
水素は、C3選択的水素化反応器320に供給される前に、ライン310内の脱プロパン装置正味オーバーヘッド流に添加されてもよい。C3選択的水素化反応器320は、通常、液相条件において比較的穏やかな水素化条件で動作されるので、脱プロパン装置正味オーバーヘッド流は、完全に凝縮されて、選択的水素化のためにそれを調製する。したがって、広範囲の好適な動作圧力は、276kPa(g)~5516kPa(g)(40psig~800psig)、又は345kPa(g)~2069kPa(g)(50及び300psig)に及ぶ。25℃~350℃(77°F~662°F)、又は50℃~200℃(122°F~392°F)の比較的穏やかな温度が典型的に用いられる。選択的水素化触媒を通過する反応物の液空間速度は、1.0hr-1超、又は5.0hr-1超、又は5.01hr-1~35.0hr-1であるべきである。かなりの量のモノオレフィン系炭化水素の望ましくない飽和を避けるために、選択的水素化触媒床に入る物質中の水素対マルチオレフィン系炭化水素のモル比は、0.75:1~1.8:1に維持される。水素化された流出物は、ライン324で反応器320から出て、水素化分離器326に入り、ライン328で水素に富むオーバーヘッド流を提供することができ、これは、圧縮され、おそらく補給水素流で補充された後に水素流322として戻され得る。選択的に水素化されたC3ライン330内の選択的に水素化されたC3炭化水素流は、C3スプリッター塔332中で分留することができる。
【0072】
選択的に水素化されたC3炭化水素流は、C3スプリッター塔332において更に処理されて、C3スプリッター正味オーバーヘッドライン334においてプロピレンリッチ生成物流を回収し、C3スプリッター底部ライン336においてプロパンリッチ流を回収することができる。C3スプリッターオーバーヘッド流は、オーバーヘッドライン334においてC3スプリッター塔332のオーバーヘッドから抜き出され、冷却器において凝縮され、分離器に供給される。凝縮されたC3スプリッターオーバーヘッド流は、還流ラインを通して還流としてC3スプリッター塔332に再循環され、残りの凝縮されていないC3スプリッターオーバーヘッド流は、正味C3スプリッターオーバーヘッドライン334を通して抜き出され、プロピレンモノマー生成物として回収される。C3スプリッターオーバーヘッド流は、重合プラントに十分なプロピレンモノマーに高度に濃縮される。プロパンリッチ流は、C3スプリッター底部ラインを通してC3スプリッター塔332から抜き出され、そこから底部の一部分がリボイラーライン及びリボイラー加熱器を通って流れ、加熱されて、C3スプリッター塔332に戻る。プロパンリッチ底部流の残りの部分は、正味C3スプリッター底部ライン336を通って流れ、燃料ガスとして取り出すことができるか、又は加熱器6などの上流で燃焼させることができるか、又はライン300内の分解供給物をプロパンリッチ底部流から取り出すことができる。C3スプリッター塔332は、400~2500kPa(ゲージ)、好ましくは1600~1900kPa(ゲージ)のオーバーヘッド圧力、及び40℃~60℃の底部温度で動作することができる。
【0073】
脱プロパン装置塔240に戻ると、脱プロパン装置正味底部ライン312内の脱プロパン装置底部流中のC4+炭化水素は、ライン300内の分解ユニット供給物として全部を取り出すことができる。しかしながら、混合されたC4’流は、脱ブタン装置塔340において回収されて、更なる処理において安定化され得る。
【0074】
脱ブタン装置塔340は、脱プロパン装置正味底部ライン312内の脱プロパン化された底部流を、C4-炭化水素を含む脱ブタン装置オーバーヘッド流と、C5+炭化水素を含む脱ブタン化された底部流とに分離する。脱ブタン装置オーバーヘッド流は、脱ブタン装置オーバーヘッドラインにおいて脱ブタン装置塔340から抜き出され、冷却器において凝縮され、分離器内に送られる。凝縮された脱ブタン装置オーバーヘッド流の一部分は還流ラインを通して還流として脱ブタン装置塔340に再循環され、凝縮された脱ブタン装置オーバーヘッド流の残りの部分は、脱ブタン装置正味オーバーヘッド流としてライン342において抜き出される。脱ブタン装置正味オーバーヘッド流は、混合されたC4炭化水素中で濃縮され、これは様々な方法で更に処理され、アップグレードされてもよい。
【0075】
脱ブタン化された底部流は、底部ラインを通して脱ブタン装置塔340から抜き出され、そこから脱ブタン化された底部流の一部分がリボイラーライン、リボイラー加熱器を通って流れ、脱ブタン装置塔340に戻る。脱ブタン化された底部の残りの部分は、正味脱ブタン化された底部ライン344を通って流れる。正味脱ブタン化された底部流は、C5+炭化水素に富むものであり、留出物ストリッパー塔228からの留出物ストリッパー正味底部ライン354内のC5+炭化水素と組み合わされて、ライン300内の分解ユニット供給物流を補充するために使用することができる。したがって、ライン300内の分解ユニット供給物流は、ライン52内の液体熱分解生成物流から少なくとも部分的に取り出される。脱ブタン塔340は、140~190℃、好ましくは140~170℃の底部温度範囲及び1.5~1.9MPaのオーバーヘッド圧力範囲で動作する。
【0076】
分解可能な炭化水素を含むライン300内の分解ユニット供給物流は、分解ユニット220に供給される。分解ユニット220は、留出物ストリッパー塔350の留出物ストリッパー正味底部ライン354と下流連通している。分解ユニット220において、C2+炭化水素は、水蒸気、水素、又は接触分解に供されて、より小さい分子を生成する。水蒸気分解では、C2+炭化水素が水蒸気と混合され、高温に供されて、高級炭化水素をより小さなエチレン及びプロピレンに熱分解する。水蒸気を水蒸気分解反応器への供給物流と混合して、炭化水素分圧を低下させ、オレフィン収率を向上させ、分解反応器における炭素質材料の形成及び堆積を減少させることができる。分解ユニット220は、高温熱分解分離器55、おそらく低温熱分解分離器140、及びLORP区分210と下流連通している。ライン226内の分解流出物流は、分解ユニット220において生成される。ライン226内の分解流出物流は、ライン102内のガス状熱分解生成物流及びライン228内の留出物ストリッパーオーバーヘッド流とともに軽質オレフィンモノマーの回収のためにLORP210に戻される。LORP区分210は、分解ユニット220と下流連通している。
【実施例】
【0077】
高温でHDPEプラスチック供給物の熱分解反応を行った。プラスチックペレットを、水冷ジャケット付きの管を通して、流動化α-アルミナ粒子の加熱床中に落下させて、高温熱分解プロセスをシミュレートした。窒素ガスを使用して、プラスチックペレットをその冷えた管を通して流動化床に送達し、熱担体粒子の床を流動化した。窒素掃引ガスを使用して、水冷ジャケットの周りの床の上に放出された熱分解プラスチックガスを掃引して、熱分解反応を急冷した。窒素掃引ガスは、プラスチックペレットの熱分解中に流動化床中のプラスチックとともに存在しなかったので、炭素対ガスモル比の計算には考慮しなかった。ガスクロマトグラフィーを使用して、熱分解の生成物を測定した。様々な熱分解条件及び生成物組成を表に示す。
【0078】
【0079】
生成物の40重量%が、高い価値を有するC2~C4オレフィンを含む。有用な芳香族の生成もまた重要である。
【0080】
特定の実施形態
以下は、を特定の実施形態と併せて説明するが、本明細書は、前述の説明及び添付の特許請求の範囲の範囲を例解するものであり、限定することを意図するものではないことが理解されよう。
【0081】
本発明の第1の実施形態は、プラスチックをモノマーに変換するためのプロセスであって、プラスチック供給物流を300~1100℃の温度に加熱して、プラスチック供給物流を、モノマーを含む熱分解生成物流に熱分解することと、熱分解生成物流をガス状熱分解生成物流と液体熱分解生成物流とに分離することと、ガス状熱分解生成物流からモノマーを回収することと、液体熱分解生成物流から分解ユニット供給物流を取り出すことと、分解ユニット供給物流を分解ユニットに供給することと、を含む、プロセスである。本発明の一実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、分解ユニットから分解流出物流を生成することと、分解流出物流及びガス状熱分解流から一緒にモノマーを回収することと、を更に含む。本発明の一実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、液体熱分解生成物流を分留して、分留されたオーバーヘッド及び分留された底部流を提供することと、分留された底部流から分解ユニット供給物流を取り出すことと、を更に含む。本発明の一実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、ガス状流熱分解生成物流とともに分留されたオーバーヘッド流からモノマーを回収することを更に含む。本発明の一実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、分留は、脱ペンタン装置塔内で実行され、分留された底部流をヘキセン塔内で分留して、1-ヘキセンを含むヘキセン塔オーバーヘッド生成物、及びnC6+炭化水素を含むヘキセン塔底部生成物を提供することと、ヘキセン塔底部生成物から分解ユニット供給物流を取り出すことと、を更に含む。本発明の一実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、加熱工程は、600~1100℃の温度で行われて、高温熱分解生成物流を生成し、高温熱分解生成物流を急冷して、ガス状熱分解生成物流及び液体熱分解生成物流を提供することを更に含む。本発明の一実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、ガス状熱分解生成物流からモノマーを回収する前にガス状熱分解生成物流を圧縮することを更に含む。本発明の一実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、ガス状熱分解生成物流、分解流出物流、及びガス状熱分解生成物流を一緒に分留することを更に含む。本発明の一実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、ガス状熱分解生成物流、分解流出物流、及びガス状熱分解生成物流を脱エタン装置塔内で分留して、脱エタン装置オーバーヘッド流及び脱エタン化された底部流を提供することを更に含む。本発明の一実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、脱メタン装置塔内で脱エタン装置オーバーヘッド流を分留することと、C2スプリッター塔内でエチレンを回収するために脱メタン化された底部流を分割することと、を更に含む。本発明の一実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、脱エタン化された底部流を脱プロパン装置塔内で分留することと、脱プロパン装置オーバーヘッド流を分割して、C3スプリッター塔内でプロピレンを回収することと、を更に含む。本発明の一実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、脱ブタン装置塔内で脱プロパン化された底部流を分留することと、分解ユニット供給物流とともに分解ユニットに脱ブタン化された底部流を供給することと、を更に含む。本発明の一実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、分解ユニット供給物流を既存の分解ユニット供給物流で分解することを更に含む。
【0082】
本発明の第2の実施形態は、プラスチックを熱分解するための装置であって、熱分解反応器と、熱分解反応器と下流連通している分離器と、分離器と下流連通している回収区分と、分解ユニットと下流連通している分離器及び回収区分と下流連通している分解ユニットと、を備える、装置である。本発明の一実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第2の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、分離器の底部ラインと下流連通している留出物ストリッパー塔と、留出物ストリッパー塔の底部ラインと下流連通している分解ユニットと、を更に備える。本発明の一実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第2の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、留出物ストリッパー塔のオーバーヘッドラインと下流連通している回収区分を更に備える。
【0083】
本発明の第3の実施形態は、プラスチックをモノマーに変換するためのプロセスであって、プラスチック供給物流を600~1100℃の温度に加熱して、プラスチック供給物流を、モノマーを含む熱分解生成物流に熱分解することと、熱分解生成物流をガス状熱分解生成物流と液体熱分解生成物流とに分離することと、ガス状熱分解生成物流からモノマーを回収することと、液体熱分解生成物流から分解ユニット供給物流を取り出すことと、分解ユニット供給物流を分解ユニットに供給して、分解流出物流を生成することと、分解流出物流及び蒸気熱分解流から一緒にモノマーを回収することと、を含む、プロセスである。本発明の一実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第3の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、液体熱分解生成物流を分留して、分留されたオーバーヘッド流及び分留された底部流を提供することと、分留された底部流から分解ユニット供給物流を取り出すことと、を更に含む。本発明の一実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第3の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、ガス状熱分解生成物流とともに分留されたオーバーヘッド流からモノマーを回収することを更に含む。本発明の一実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第3の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、分留されたオーバーヘッド流から脱ブタン化された底部流を回収することと、脱ブタン化された底部流を分解ユニットに供給することと、を更に含む。
【0084】
更に詳述することなく、前述の説明を使用して、当業者が、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく本開示を最大限まで利用し、かつ本開示の本質的な特性を容易に確認することができ、本開示の様々な変更及び修正を行い、様々な使用及び条件に適合させることができると考えられる。したがって、先行する好ましい特定の実施形態は、単なる例示として解釈されるべきであり、いかなるようにも本開示の残りを限定するものではなく、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれる様々な修正及び同等の構成を網羅することを意図するものである。
【0085】
上記では、全ての温度は摂氏度で記載され、全ての部及び百分率は、別途記載のない限り、重量基準である。