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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】支持部材、および骨固定システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/70 20060101AFI20241212BHJP
   A61B 17/86 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
A61B17/70
A61B17/86
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023508860
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2022008496
(87)【国際公開番号】W WO2022202137
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-09-19
(31)【優先権主張番号】P 2021052415
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中田 文也
(72)【発明者】
【氏名】中村 明大
(72)【発明者】
【氏名】長井 一弘
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-126499(JP,A)
【文献】特表2003-508109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/70
A61B 17/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨に設置可能な設置部材の一端に配され球面の一部を含む形状の頭部を収容可能な開口部を備えるハウジング内で、円周方向に設けられた溝に嵌合することにより、前記頭部を支持可能であり、
Cリング形状であり、
前記Cリング形状の内径は、前記頭部の外径よりも小さく、
外周面に、
半径方向外側に突起した突起部であって、前記溝に設けられた孔部に嵌合する突起部、または、
半径方向内側にへこんだ凹部であって、前記溝に設けられた凸部と嵌合する凹部、を備え、
前記ハウジングは、前記開口部と前記ハウジングの外面による壁の厚さが厚い厚壁部、および薄い薄壁部を備え、
前記Cリング形状の開口部分は、前記突起部が前記孔部に嵌合したとき、または前記凹部が前記凸部に嵌合したとき、前記厚壁部に位置する、支持部材。
【請求項2】
前記溝が、前記ハウジングの前記開口部の内周面の開口端近傍に配されている、請求項1に記載の支持部材。
【請求項3】
平面視において、前記Cリング形状の中心と前記Cリング形状の開口部の中央とを通る直線である軸から離れた位置に前記突起部または前記凹部の少なくともその一部が配置され、前記軸に対して軸対称ではない、請求項1又は2に記載の支持部材。
【請求項4】
平面視において、前記突起部または前記凹部の中央部と、前記Cリング形状の中心を通る直線と前記軸とのなす角は、1°以上45°以下である、請求項3に記載の支持部材。
【請求項5】
前記突起部または前記凹部は、該突起部が前記孔部に嵌合したとき、または該凹部が前記凸部に嵌合したとき、前記厚壁部に位置する、請求項1~4の何れか1項に記載の支持部材。
【請求項6】
前記Cリング形状の前記頭部を支持する側の面と、当該面の反対面との内径が異なる、請求項1~のいずれか1項に記載の支持部材。
【請求項7】
前記設置部材は、前記頭部よりも直径が小さいネック部を備え、前記Cリング形状の内径は、前記ネック部よりも大きい、請求項1~のいずれか1項に記載の支持部材。
【請求項8】
前記Cリング形状の開口部が閉じた場合の内径は、前記ネック部よりも大きい、請求項に記載の支持部材。
【請求項9】
前記Cリング形状の外径は、収縮応力および拡張応力を負荷されていない場合、前記溝の直径よりも大きい、請求項1~のいずれか1項に記載の支持部材。
【請求項10】
前記Cリング形状の外径は、収縮応力および拡張応力を負荷されていない場合、前記ハウジングの開口部の直径よりも大きい、請求項1~のいずれか1項に記載の支持部材。
【請求項11】
前記Cリング形状の開口部は、収縮応力により閉じることが可能であり、前記Cリング形状の開口部が閉じた場合の外径は、前記ハウジングの開口部の直径よりも小さい、請求項1~10のいずれか1項に記載の支持部材。
【請求項12】
前記Cリング形状の内径は、拡張応力の負荷による弾性変形の状態において、前記頭部の最大直径より大きく変形可能である、請求項1~11のいずれか1項に記載の支持部材。
【請求項13】
Cリング形状の支持部材と、
一端に球面の一部を含む形状の頭部を備える、骨に設置可能な設置部材と、
前記頭部を収容可能な開口部を備えるハウジングを含み、
前記Cリング形状の内径は、前記頭部の外径よりも小さく、
前記支持部材は前記Cリング形状の外周面に、半径方向外側に突起した突起部、または、半径方向内側にへこんだ凹部を備え、
前記ハウジングは、円周方向に設けられた溝を備え、前記溝は、前記突起部に嵌合する孔部、または前記凹部に嵌合する凸部を備え、
前記ハウジングは、前記開口部と前記ハウジングの外面による壁の厚さが厚い厚壁部、および薄い薄壁部を備え、
前記Cリング形状の開口部分は、前記突起部が前記孔部に嵌合したとき、または前記凹部が前記凸部に嵌合したとき、前記厚壁部に位置する、骨固定システム。
【請求項14】
前記設置部材は、骨スクリューまたはフックである、
請求項13に記載の骨固定システム。
【請求項15】
前記骨スクリューまたは前記フックは、脊椎インプラント用である、
請求項14に記載の骨固定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、骨に設置可能な設置部材を支持する支持部材、および当該支持部材を含む骨固定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の脊椎を互いに固定する固定ロッドを保持するための脊椎インプラントが知られている。このような脊椎インプラントのヘッド部には、骨スクリューを支持するための支持部材が用いられている。また、骨を安定化させるための骨アンカー組立体が記載されている。
【発明の概要】
【0003】
本開示の一態様に係る支持部材は、骨に設置可能な設置部材を支持する支持部材であって、前記設置部材の一端に配され球面の一部を含む形状の頭部を収容可能な開口部を備えるハウジング内で、該ハウジングの前記開口部の内周面の開口端近傍で円周方向に設けられた溝に嵌合することにより、前記頭部を支持可能であり、Cリング形状であり、前記Cリング形状の内径は、前記頭部の外径よりも小さく、外周面に、半径方向外側に突起した突起部であって、前記溝に設けられた孔部に嵌合する突起部、または、半径方向内側にへこんだ凹部であって、前記溝に設けられた凸部と嵌合する凹部を備えている。
【0004】
本開示の一態様に係る骨固定システムは、Cリング形状の支持部材と、一端に球面の一部を含む形状の頭部を備える、骨に設置可能な設置部材と、前記頭部を収容可能な開口部を備えるハウジングを含み、前記Cリング形状の内径は、前記頭部の外径よりも小さく、前記支持部材は前記Cリング形状の外周面に、半径方向外側に突起した突起部、または、半径方向内側にへこんだ凹部を備え、前記ハウジングは、開口端近傍で円周方向に設けられた溝を備え、前記溝は、前記突起部に嵌合する孔部、または前記凹部に嵌合する凸部を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本開示の実施形態1に係る脊椎インプラントの斜視図である。
図2】上記脊椎インプラントの分解斜視図である。
図3】上記脊椎インプラントの正面図である。
図4】上記脊椎インプラントの断面図である。
図5】上記脊椎インプラントの断面の一部を拡大した図である。
図6】Cリングの上面図である。
図7】上記Cリングの断面図である。
図8】ハウジングの下面図である。
図9】ハウジングの断面図である。
図10】Cリングがハウジングに係合した状態を下方向から見た下面図である。
図11】本開示の実施形態2に係るCリングの上面図である。
図12】上記実施形態に係るハウジングの下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
〔実施形態1〕
以下、本開示の一実施形態について、詳細に説明する。本実施形態では、骨固定システムとして脊椎インプラント1を例に挙げて説明する。本開示は脊椎インプラント1に限られるものではない。
【0007】
図1は、脊椎インプラント1の斜視図である。図1に示すように、脊椎インプラント1は、骨スクリュー10とハウジング30とを含む構成である。以下では、骨スクリュー10の軸方向をz方向、ハウジング30のタブが対向する方向をx方向、xおよびzに垂直な方向をy方向とする。また、脊椎インプラント1において、ハウジング30側を上側、骨スクリュー10側を下側とも呼ぶ。
【0008】
以下、図2図5を参照して、脊椎インプラント1について説明する。図2は、脊椎インプラント1の分解斜視図である。図3は、脊椎インプラント1の正面図である。図4は、脊椎インプラント1の断面図である。図5は、脊椎インプラント1の断面の一部を拡大した拡大図である。
【0009】
脊椎インプラント1は、脊椎固定術において用いられる器具である。脊椎インプラント1は、図2に示すように、骨スクリュー10、Cリング20、およびハウジング30を含む。脊椎インプラント1は、骨スクリュー10の頭部11がハウジング30内に収容され、Cリング20により、頭部11がハウジング30の内部から離脱しないように支持される。よって、Cリング20は支持部材ということができる。本実施形態では、脊椎インプラント1に骨スクリュー10が含まれている例を挙げて説明するが、骨スクリューではなくフックであってもよい。また、骨に設置される部材であればよく、骨スクリューおよびフックに限られるものではない。
【0010】
骨スクリュー10は、本体部分の外周に雄ネジが形成されており、頭部11が略球状に形成されている。また、頭部11と雄ネジとの間に頭部11よりも直径が小さいネック部12を有する。骨スクリュー10は、脊椎固定術において、雄ネジ部分が脊椎に挿入されることにより、脊椎に設置されるものである。よって、骨スクリュー10は、骨に設置可能な設置部材ということができる。
【0011】
Cリング20は、リング形状の一部が欠損したC字形状のリングである。Cリング20の詳細については後述する。
【0012】
ハウジング30は、骨スクリュー10の頭部11を収容するものである。ハウジング30の詳細については後述する。本実施形態において、骨スクリュー10、Cリング20、およびハウジング30は、生体適合性を持つ金属材料、例えば純チタン、チタン合金、コバルトクロム合金、ステンレス鋼等で構成されている。
【0013】
図4は、脊椎インプラント1を、図3に示すIII-III線で切った断面を示す。図4に示すように、脊椎インプラント1は、骨スクリュー10の頭部11がハウジング30に収容され、Cリング20によって頭部11がハウジング30から離脱できないように固定されている。具体的には、ハウジング30に収容された、骨スクリュー10の頭部11は、その後にハウジング30の開口部31から挿入されるCリング20により支持される。Cリング20は、ハウジング30の溝32に係合されるため、Cリング20はハウジング30に固定される。Cリング20の内径は、骨スクリュー10の頭部11の外径よりも小さいため、固定されたCリング20により、骨スクリュー10の頭部11はハウジング30から離脱することができなくなる。
【0014】
図5に、図4のIV部分を拡大した図を示す。図5に示すように、Cリング20はハウジング30の溝32に係合するとともに、内周面において骨スクリュー10の頭部11を支持している。
【0015】
〔Cリング20の詳細〕
次に、図6および図7を参照して、Cリング20について説明する。上述したように、Cリング20は、骨スクリュー10の頭部11がハウジング30から離脱してしまうおそれを低減するための部材である。Cリング20は、ハウジング30内において該ハウジング30の内周面に設けられた溝32と係合している。
【0016】
図6および図7に、Cリング20の詳細を示す。図6は、Cリング20を上方、すなわちz方向から見た上面図であり、図7図6に示すVI-VI線でCリング20を切断したときの断面を示す断面図である。
【0017】
支持部材であるCリング20は、設置部材の頭部11を支持可能であり、リング形状の一部が欠損した部位である開口部分22を有する略C字形状であり、金属等の弾性体で構成されている。また、円周方向外側に突起した突起部21を備える。より詳細には、図6に示すように、突起部21は、平面視、すなわち、+z側から見た状態において、Cリング20の中心UとCリング20の開口部分22の中央部とを通る直線である軸Vから離れた位置に、少なくともその一部が配置されている。そして、突起部21は、軸Vに対して軸対称ではない。
【0018】
また、突起部21は、平面視において、突起部21の先端(突起部21の中央部)および中心Uを通る直線と、軸Vとのなす角θが、1°以上45°以下である位置に配置されている。突起部21の先端とは、突起方向に中心Uから最も遠い位置のことである。これにより、突起部21は、Cリング20の中心Uを挟んで、Cリング20の開口部分22の略対面となり、後述するハウジング30の厚壁部33に位置することができる。
【0019】
突起部21は、ハウジング30の溝32に設けられた孔部35に嵌合するものである。そして、脊椎インプラント1の組立工程における作業者は、Cリング20の突起部21がハウジング30の孔部35に嵌まるように、組み立てを行う。
【0020】
Cリング20は、金属等の弾性体で構成されているため、開口部分22は、Cリング20を圧縮して直径を小さくした状態にすることを可能にする。本実施形態では、Cリング20は、無負荷外径(以下、DO1とする)および無負荷内径(以下、DI1とする)を有する無負荷状態と、圧縮時外径(以下、DO2とする)および圧縮時内径(以下、DI2とする)を有する、圧縮状態をとりうる。
【0021】
無負荷外径(DO1)および無負荷内径(DI1)は、Cリング20が収縮応力または拡張応力を負荷されていないときに測定される各直径を表す。収縮応力とは、開口部分22を小さくする応力、拡張応力とは、開口部分22を大きくする応力である。
【0022】
圧縮時外径(DO2)および圧縮時内径(DI2)は、Cリング20が収縮応力下にあって、開口部分22が閉じられた状態にあるときに測定される各直径を表す。
【0023】
無負荷外径(DO1)は、ハウジング30の開口部31の直径よりも大きく、更に、溝32の直径よりも大きい。また、無負荷内径(DI1)は、頭部11の最大直径よりも小さい。
【0024】
圧縮時外径(DO2)は、ハウジング30の開口部31の直径よりも小さい。また、圧縮時内径(DI2)は、ネック部12の直径よりも大きい。
【0025】
Cリング20は、拡張応力により変形するが、塑性変形に至る前の弾性変形の状態において、その内径を頭部11の最大直径よりも大きくすることが可能である。
【0026】
図7に示すように、Cリング20の内周面は、上側内周面23および下側内周面24を含む。上側内周面23は、Cリング20の内周の上側(+z側)において、+z方向に進むにしたがってCリング20の内径が大きくなるようなテーパ形状が形成されている。上側内周面23は、骨スクリュー10の頭部11を下側(-z側)から支持する。上側内周面23において、骨スクリュー10の頭部11を支持できるように、上側内周面23におけるCリング20の内径は、最も大きい箇所であっても、骨スクリュー10の頭部11の外径よりも小さい。よって、骨スクリュー10の頭部11をハウジング30に収容後、Cリング20をハウジング30の内周面の溝32に係合させて固定することにより、骨スクリュー10の頭部11がハウジング30から離脱してしまうおそれを低減できる。
【0027】
下側内周面24は、ハウジング30に対する骨スクリュー10の可動域を大きくするために、Cリング20の内周の下側(-z側)において、-z方向に進むにしたがってCリング20の内径が大きくなるようなテーパ形状が形成されている。
【0028】
上側内周面23は、頭部11の球面形状に合わせたテーパ角度を持ったテーパ形状、または、頭部11の球面形状に合わせた凹球面形状に形成されている。換言すれば、Cリング20の上側内周面23の上端と下側内周面24の下端とでは、内径が異なる。これにより、上側内周面23において頭部11を支持しつつ、ハウジング30に対する骨スクリュー10の可動域を大きくすることができる。頭部11の球面形状に合わせた、とは、完全に同一の形状を指すのではなく、略適合する形状とした、という意味である。
【0029】
このようなCリング20を用い、作業者がCリング20の上面と下面を識別し、突起部21の位置をハウジング30の孔部35に合わせて適切に組立てることにより、脊椎インプラント1は所定の機能、強度を実現できる。
【0030】
〔ハウジング30の詳細〕
ハウジング30は、略円筒状に形成されている。そして、側壁の一部がz方向に互いに対向して延伸した1組のタブと、当該タブの間に形成され、ロッド(図示せず)が配置されるスリットが設けられている。また、タブの内周面にはセットスクリュー(図示せず)が螺合するための雌ネジが形成されている。
【0031】
また、ハウジング30は、内部に骨スクリュー10の頭部11を収容することにより、ハウジング30に対して骨スクリュー10が回転自在となるように取付けられている。更に、ハウジング30内において骨スクリュー10の頭部11の上方に配置され、ハウジング30に螺合するセットスクリューによって押圧されるロッドの押圧力を受けて骨スクリュー10の頭部11を下方へ押さえつけることにより、ハウジング30と頭部11を固定するインサート(図示せず)を備えていても良い。
【0032】
図8、9にハウジング30の詳細を示す。図8は、ハウジング30を下側(-z側)から見た下面図である。図9は、図8のIX-IX線における断面図である。
【0033】
図9に示すように、ハウジング30の内周面には、開口部31の近傍で円周方向に溝32が形成されている。溝32は、Cリング20が係合可能である。また、図8図9に示すように、溝32に孔部35が設けられている。孔部35は、ハウジング30の下面から溝32に繋がっており、上述したCリング20の突起部21が挿通可能である。
【0034】
また、図8に示すように、ハウジング30は、ハウジング30の内面と外面とで形成される側壁の厚さが厚い部分である厚壁部33、および薄い部分である薄壁部34を備える。本実施形態では、薄壁部34は、ロッド(図示せず)を受けるスリットの開口部の方向に2か所に位置し、厚壁部33はスリットの開口部の方向に対して垂直な方向2カ所に位置している。
【0035】
図10に、ハウジング30にCリング20が係合した状態を示す。図10は、ハウジング30にCリング20が係合した状態を、下側(-z側)から見た下面図である。脊椎インプラント1においては、図4に示すように、骨スクリュー10の頭部11がハウジング30に収容された後、Cリング20が、ハウジング30の溝32に係合されるが、図10においては、骨スクリュー10は図示していない。
【0036】
図10に示すように、Cリング20がハウジング30に係合したとき、Cリング20の開口部分22は、ハウジング30の厚壁部33に位置する。これにより、Cリング20の他の部分よりも強度が弱い開口部分22であっても、充分に強度を保つことができる。即ち、もし開口部分22が薄壁部34に位置していると、過度の荷重が脊椎インプラント1に加わった際、強度が比較的弱い薄壁部34を起点としてハウジング30が破損する虞が生じるが、これを抑えることができる。
【0037】
また、Cリング20がハウジング30に係合したとき、Cリング20の突起部21もハウジング30の厚壁部33に位置する。これにより、突起部21が当たる部分の強度を保つことができる。即ち、もし突起部21に対応する孔部35が薄壁部34に位置していると、過度の荷重が脊椎インプラント1に加わった際、強度が比較的弱い薄壁部34を起点としてハウジング30が破損する虞が生じるが、これを抑えることができる。
【0038】
〔組み立て方法〕
脊椎インプラント1の組み立て方法について説明する。上述したように、Cリング20の無負荷内径(DI1)は、骨スクリュー10の頭部11の外径よりも小さいので、ハウジング30にCリング20を先に挿入すると、骨スクリュー10の頭部11を収容することができなくなる。脊椎インプラント1の組立工程の作業者は、まず、Cリング20に拡張応力を加えて内径を拡大し、頭部11の先端から骨スクリュー10をCリング20に挿通し、ネック部12の位置にCリング20が位置するようにする。そして、ハウジング30に骨スクリュー10の頭部11を収容する。次に、作業者は、Cリング20をハウジング30の開口部31方向に移動させる。
【0039】
Cリング20を、ハウジング30の開口部31近傍まで移動させると、作業者は、Cリング20の外側から内側に力(収縮応力)を加える。Cリング20は文字通りC字形状なので、外側から内側に力を加えることで容易に外径を小さくすることができる。開口部分22が閉じられた圧縮時外径(DO2)は、ハウジング30の開口部31の直径よりも小さいので、作業者は、Cリング20の外径を小さくし、突起部21を孔部35の位置に合わせて、Cリング20をハウジング30に挿入する。
【0040】
Cリング20をハウジング30内に挿入後、溝32の位置まで移動させ、溝32に係合させることにより、Cリング20をハウジング30に固定する。突起部21が孔部35に係合しているため、Cリング20の周方向への回転移動も規制される。
【0041】
これにより、骨スクリュー10の頭部11は、ハウジング30から離脱できなくなるとともに、Cリング20により支持される。
【0042】
〔実施形態2〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0043】
上述した実施形態では、Cリング20に突起部21を設け、ハウジング30に孔部35を設けていた。本実施形態では、これとは逆に、Cリング20’に凹部26を設け、ハウジング30’に凸部36を設ける。
【0044】
図11および図12を参照して説明する。図11は、Cリング20’を上側(+z側)から見た状態を示す上面図である。図12は、ハウジング30’を下側(-z側)から見た状態を示す下面図である。
【0045】
図11に示すように、Cリング20’には、凹部26が設けられている。凹部26は、実施形態1におけるCリング20の突起部21に対応する位置に設けられている。また、図12に示すように、ハウジング30’には、凸部36が設けられている。凸部36は、実施形態1におけるハウジング30の孔部35に対応する位置に設けられている。
【0046】
よって、Cリング20’がハウジング30’に係合したとき、凸部36は凹部26に嵌合することになる。
【0047】
このように、本実施形態では、実施形態1における突起部21および孔部35と同じ効果を、凹部26および凸部36により奏することができる。
【0048】
以上のように本開示に係るCリング20(20’)は、骨に設置可能な骨スクリュー10を支持するものであり、骨スクリュー10の一端に配され球面の一部を含む形状の頭部11を収容可能な開口部31を備えるハウジング30(30’)内で、該ハウジング30(30’)の開口部31の内周面の開口端近傍で円周方向に設けられた溝32に嵌合することにより、頭部11を支持可能である。そして、Cリング20は、Cリング形状であり、Cリング20の内径は、頭部11の外径よりも小さく、外周面に、半径方向外側に突起し、溝32に設けられた孔部35に嵌合する突起部21を備える。または、Cリング20は、半径方向内側にへこみ、溝32に設けられた凸部36と嵌合する凹部26を備える。
【0049】
この構成によれば、ハウジング30の孔部35と嵌合する突起部21、またはハウジング30’の凸部36と嵌合する凹部26により、Cリング20とハウジング30との取り付け位置を一意に決めることができ、取り付けられた後に、Cリング20が回転してしまう等のおそれを低減できる。
【0050】
また、本開示に係る脊椎インプラント1は、Cリング形状のCリング20(20’)と、一端に球面の一部を含む形状の頭部11を備える、骨に設置可能な骨スクリュー10と、頭部11を収容可能な開口部31を備えるハウジング30(31’)を含み、Cリング20(20’)の内径は、頭部11の外径よりも小さく、Cリング20(20’)は外周面に、半径方向外側に突起した突起部21、または、半径方向内側にへこんだ凹部26を備え、ハウジング30(30’)は、開口端近傍で円周方向に設けられた溝32を備え、溝32は、突起部21に嵌合する孔部35、または凹部26に嵌合する凸部36を備える。
【0051】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 脊椎インプラント(骨固定システム)
10 骨スクリュー(設置部材)
11 頭部
12 ネック部
20 Cリング(支持部材)
21 突起部
22 開口部分
23 上側内周面
24 下側内周面
26 凹部
30 ハウジング
31 開口部
32 溝
33 厚壁部
34 薄壁部
35 孔部
36 凸部
図1
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