(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】高密度金属電極を有する熱電気化学コンバータ
(51)【国際特許分類】
H10N 10/13 20230101AFI20241212BHJP
H01M 4/92 20060101ALI20241212BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20241212BHJP
H01M 8/1067 20160101ALI20241212BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20241212BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20241212BHJP
H01M 8/04007 20160101ALI20241212BHJP
H01M 8/2475 20160101ALI20241212BHJP
H10N 10/01 20230101ALI20241212BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20241212BHJP
【FI】
H10N10/13
H01M4/92
H01M4/90 M
H01M8/1067
H01M4/86 B
H01M8/02
H01M8/04007
H01M8/2475
H10N10/01
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2023512481
(86)(22)【出願日】2021-08-24
(86)【国際出願番号】 US2021047245
(87)【国際公開番号】W WO2022046697
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-04-11
(32)【優先日】2020-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522453418
【氏名又は名称】ジェイテック エナジー,インク
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ロニー ジー ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】デビッド ケテマ ジョンソン
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-530410(JP,A)
【文献】特開2008-198412(JP,A)
【文献】特表2004-524649(JP,A)
【文献】特開2005-019041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 10/13
H01M 4/92
H01M 4/90
H01M 8/1067
H01M 4/86
H01M 8/02
H01M 8/04007
H01M 8/2475
H10N 10/01
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン化作動流体と、
相互に電気的に結合された第1の膜電極接合体及び第2の膜電極接合体と、
を備え、各膜電極接合体は、
電子を伝導しかつ前記イオン化作動流体に対して透過性である第1の電極と、
電子を伝導しかつ前記イオン化作動流体に対して透過性である第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極の間に挟まれた薄膜状電解質膜であって、前記イオン化作動流体のイオンの伝導性を有し、0.03μm~10μmの厚さを有する薄膜状電解質膜と、を備え、
各膜電極接合体の前記第1及び第2の電極の少なくとも一方が、非多孔質かつ高密度の金属を含み、
各膜電極接合体にかかる作動流体圧力差に起因して、各膜電極接合体の前記第1及び第2の電極の一方は第1の圧力で前記
イオン化作動流体と接し、各膜電極接合体の前記第1及び第2の電極の他方が、前記第1の圧力よりも低い第2の圧力で前記
イオン化作動流体と接し、
前記第1の膜電極接合体は、前記
イオン化作動流体を前記第2の圧力から前記第1の圧力まで圧縮するように構成され、
前記第2の膜電極接合体は、前記
イオン化作動流体を前記第1の圧力から前記第2の圧力まで膨張させるように構成された、熱-電気コンバータ。
【請求項2】
前記非多孔質かつ高密度の金属は、多孔質基板上に積層又は実装されている、請求項1に記載の熱-電気コンバータ。
【請求項3】
前記第1及び第2の膜電極接合体の少なくとも一方の前記第1及び第2の電極の少なくとも一方は、前記
イオン化作動流体がそれぞれの前記薄膜状電解質膜を通過するのに従って前記
イオン化作動流体の酸化及び還元を促進するように構成された触媒を含む、請求項1又は2に記載の熱-電気コンバータ。
【請求項4】
前記第1及び第2の膜電極接合体の少なくとも一方の前記第1及び第2の電極の少なくとも一方は、パラジウム又はその合金を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の熱-電気コンバータ。
【請求項5】
前記第1の膜電極接合体と前記第2の膜電極接合体の間で前記第1の圧力及び前記第2の圧力の前記
イオン化作動流体のフローを結合する伝熱式熱交換器をさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の熱-電気コンバータ。
【請求項6】
前記
熱-電気コンバータは、管状構成を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の熱-電気コンバータ。
【請求項7】
前記第1及び第2の膜電極接合体の各々は、管状構成を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の熱-電気コンバータ。
【請求項8】
前記第1及び第2の膜電極接合体の各々の内部が、前記第1の圧力の前記
イオン化作動流体のフローのための第1のコンジットを構成する、請求項1から7のいずれか一項に記載の熱-電気コンバータ。
【請求項9】
前記第1及び第2の膜電極接合体を少なくとも部分的に囲むハウジングをさらに備え、前記第1及び第2の膜電極接合体と前記ハウジングとの間の空間が、前記第2の圧力の前記
イオン化作動流体のフローのための第2のコンジットを構成する、請求項1から8のいずれか一項に記載の熱-電気コンバータ。
【請求項10】
前記第1及び第2の電極の一方が、前記第1及び第2の膜電極接合体の両方に電気的に共通である、請求項1から9のいずれか一項に記載の熱-電気コンバータ。
【請求項11】
前記第1及び第2の膜電極接合体を電気的に結合するための外部回路をさらに備える請求項1から10のいずれか一項に記載の熱-電気コンバータ。
【請求項12】
第1の温度における前記
イオン化作動流体の第1のストリームと前記第1の温度よりも低い第2の温度における前記
イオン化作動流体の第2のストリームとの間に結合された請求項6に記載の
熱-電気コンバータを複数備える熱-電気コンバータシステム。
【請求項13】
請求項1に記載の熱-電気コンバータをヒートポンプとして用いて発電する方法であって、
前記第1の膜電極接合体を第1の温度のヒートシンクに結合するとともに、前記第2の膜電極接合体を第2の温度の熱源に結合するステップであって、前記第1の温度は前記第2の温度よりも高い、ステップと、
前記第1の膜電極接合体に電力を印加して、熱が前記第1の温度及び第1の電圧において除去されている状態で、前記
イオン化作動流体を前記第2の圧力から前記第1の圧力に圧送するステップと、
前記
イオン化作動流体が前記第1の圧力から前記第2の圧力に膨張するのに従って、前記第2の温度及び第2の電圧において熱がそこに供給されている状態で、前記第2の膜電極接合体から電力を取り出すステップであって、前記第1の電圧は前記第2の電圧よりも高い、ステップと、
を備える方法。
【請求項14】
外部電源を前記第2の膜電極接合体に直列接続するステップをさらに備える請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の熱-電気コンバータを熱機関として用いて発電する方法であって、
前記第1の膜電極接合体を第1の温度のヒートシンクに結合するとともに、前記第2の膜電極接合体を第2の温度の熱源に結合するステップであって、前記第1の温度は前記第2の温度よりも低い、ステップと、
前記第1の膜電極接合体に電力を印加して、熱が前記第1の温度及び第1の電圧において除去されている状態で、前記
イオン化作動流体を前記第2の圧力から前記第1の圧力に圧送するステップと、
前記
イオン化作動流体が前記第1の圧力から前記第2の圧力に膨張するのに従って、前記第2の温度及び第2の電圧において熱がそこに供給されている状態で、前記第2の膜電極接合体から電力を取り出すステップであって、前記第2の電圧は前記第1の電圧よりも高い、ステップと、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年8月24日出願の米国仮特許出願第63/069380号の優先権を主張し、その開示全体が参照によりここに取り込まれる。
【背景技術】
【0002】
2つの電極間に挟まれたイオン伝導膜を有する膜電極接合体(MEA)が、多数の電気化学用途で採用されている。多くの一般的な用途は、バッテリ、燃料電池、及び水素又は酸素分離などのガス分離プロセスとなる。一般に、イオン化作動流体は流入側で酸化されることによってMEAを通過し、それにより電子は原子から分離される。結果として得られるイオンは、流出側ともいわれる反対側の電極に膜を通じて伝導される。一方、電子は、反対側の電極に外部回路を通じて伝導される。イオンは、それらが流出側の電極で電子と再結合するにつれて減少する。
【0003】
イオン化作動流体を可能な限り効率的にMEAに通過させることが一般に望ましい。イオン化作動流体の膜の通過に対する抵抗は、対象となる用途のほぼ全てにおいて問題となる。例えば、水素又は酸素ガス分離用途では、作動流体が膜を通過するのに従って膜にかかる圧力の低下が大きくなることは、より多くのエネルギー量及び結果としてより高いコストが、上昇した圧力において原料ガスを供給するのに必要となることを意味する。
【0004】
同様の状況が燃料電池でも起こる。多くの一般的な種類の燃料電池は、プロトン伝導膜(PCM)を有するMEAを採用するプロトン交換膜燃料電池である。この分類の燃料電池は、電極の一方に水素を、他方に酸素を供給する。水素イオンは、水素及び酸素の化学反応電位の下でPCMを通じて燃料電池の酸素側に伝導される。化学反応に伴う電子は、水素電極から酸素電極に外部負荷を通じて伝導される。電子及び水素イオンは、水素を再構成し、電池の酸素側で酸素との反応を完了し、燃料電池システムから排出される水の生成をもたらす。連続電流は、燃料電池への水素及び酸素の連続供給によって維持される。
【0005】
アルカリ金属熱電気化学変換(AMTEC)電池は、熱電気化学熱機関として設計されてきた。AMTEC熱機関は、ナトリウムなどのイオン化作動流体を高温で電気化学電池に通過させることによって電位及び電流を生成するのに圧力を利用する。電極は、電流を外部負荷に結合する。電解質セパレータにかかる圧力差が融解ナトリウム原子を電解質に通過させるのに従って電気的作用が実行される。ナトリウムは、電解質に流入するとイオン化され、それにより電子を外部回路に放出する。電解質の他方側では、ナトリウムイオンは、バッテリ及び燃料電池タイプの電気化学電池で起こるプロセスとほぼ同様に、電解質を離れると電子と再結合してナトリウムを再構成する。低圧かつ高温の再構成されたナトリウムは、膨張ガスとして電気化学電池を離れる。
【0006】
ジョンソン熱電気化学コンバータ(JTEC)システム(2003年4月28日に出願の特許文献1に開示)も、MEAを用いて熱を電気エネルギーに変換する熱電気化学熱機関である。JTECは、背中合わせ構成で接続された一対のMEAスタック、より具体的には水素濃淡電池を、一方を相対的に高温で他方を相対的に低温で用いる。水素は、向流型伝熱式熱交換器を介して2つのMEAスタック間で機関内を循環する。ヒートシンクに結合された低温MEAスタックは機関の「電気化学圧縮機」段として機能する一方で、熱源に結合された高温MEAは機関の「電気化学膨張」段として機能する。いずれの熱力学機関とも同様に、高温で起こる膨張プロセスは、低温で起こる圧縮プロセスを進行させるのに充分な電力を生成し、外部負荷への正味の出力電力を供給する。
【0007】
しかし、この従来の機関設計は、大きな膜対電極表面積比が必要であるために、及び実用的な出力電圧レベルを実現するために大量の電池が電気的に直列接続される必要があるために、複雑となることが多い。具体的には、開回路電圧が1Vよりも高くなり得る従来の燃料電池とは異なり、熱電気化学熱機関では、水素圧力比によって高温MEAと低温MEAの間のネルンスト電圧の差によって生成される正味の出力電圧は、適度な高圧及び低圧動作条件において約0.1ボルトの範囲にしかならない。このように、一般的には、多数の電池が、有用な出力電圧レベルを実現するのに直列接続される必要がある。さらに、MEA対の内部インピーダンスは、出力電力容量に大きな影響を有する。
【0008】
MEAに関連する主な効率損失は、多孔質電極に出入するガス圧力フローの損失、電極/膜界面における作動流体を酸化及び還元するのに必要な活性化エネルギー、並びに膜を介したイオン伝導に対するインピーダンスである。ガスフローに関連する圧力損失は、電極の厚さ、細孔サイズ及び細孔分布を最適化することによって対処される。活性化損失は、一般的に、固定的な材料特性である。活性化エネルギー損失を最小化する取組みは、通常は、触媒負荷及び分布並びに使用される触媒の種類を最適化することに着目する。
【0009】
用途に応じて、膜を通じるイオン伝導に対するインピーダンスは、材料特性である。膜にわたる圧力差の下で作動流体(例えば、水素ガス)の拡散は電気的出力及び効率の低下をもたらすため、効率的なエネルギー変換を実現するためには、膜が高いガス拡散障壁特性を有することが望ましい。利用される膜は、良好なイオン伝導性も有していなければならない。しかし、DuPont Corp.によって製造されるNafionなど、良好なイオン伝導性を有する周知かつ入手可能な膜材料の多くは、一般に非常に悪い分子拡散障壁特性を有する。低い分子拡散障壁特性は、拡散を抑制するために、より厚い膜を必要とすることになり、それは同様に、より高い伝導抵抗をもたらし、したがって自己破壊的なものとなる。逆に、高い分子拡散障壁特性を有する周知かつ入手可能な膜材料は、一般に比較的低いイオン伝導性を有し、そのような材料の使用は高いシステムインピーダンス及び関連して高い分極損失をもたらすことになる。このように、内部抵抗性分極損失を最小化しつつ、実用的な電力密度を実現するためには薄い膜が必要であり、実用的な電力レベルを実現するには大きな膜面積が必要となる。
【0010】
したがって、入手可能な高い障壁、低い伝導性の膜材料を用いて、カルノー等価サイクルに近似することができ、広範囲な熱源温度にわたって動作することができ、かつ機械的機関に関連する信頼性及び非効率性の問題を解消する熱電気化学熱機関を提供する実用的な態様に対するニーズがある。本発明の固体熱機関は、このニーズに応えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【0012】
一実施態様では、本発明は、イオン化作動流体と、相互に電気的に結合された第1の膜電極接合体及び第2の膜電極接合体とを備える熱-電気コンバータに関する。各膜電極接合体は、電子を伝導しかつイオン化作動流体に対して透過性である第1の電極、電子を伝導性しかつイオン化作動流体に対して透過性である第2の電極、及び第1の電極と第2の電極の間に挟まれた薄膜状電解質膜を含む。薄膜状電解質膜は、イオン化作動流体のイオンの伝導性を有し、0.03μm~10μmの厚さを有する。各膜電極接合体の第1及び第2の電極の少なくとも一方は、非多孔質かつ高密度の金属を備える。各膜電極接合体にかかる作動流体圧力差に起因して、各膜電極接合体の第1及び第2の電極の一方は第1の圧力で作動流体に接し、各膜電極接合体の第1及び第2の電極の他方は、第1の圧力よりも低い第2の圧力で作動流体に接する。第1の膜電極接合体は作動流体を第1の圧力から第2の圧力まで膨張させるように構成され、第2の膜電極接合体は作動流体を第2の圧力から第1の圧力まで圧縮するように構成される。
【0013】
前述の実施態様によると、第1及び第2の膜電極接合体は相互に異なる温度で動作する。電力が第2の膜電極接合体に印加されて第2の膜電極接合体を通じて作動流体を高圧側に圧送し、熱がそこから除去されるので圧力差を維持し、結果として第2の膜電極接合体は第1の電圧で動作する。第1の膜電極接合体も圧力差を受け、熱がそこに供給されるので作動流体は第1の膜電極接合体を通じて低圧側に膨張し、それにより、第1の電圧とは異なる第2の電圧で動作する。
【0014】
前述の実施態様のいずれかと組み合わされ得る一実施態様では、非多孔質かつ高密度の金属が多孔質基板上に積層又は実装される。
【0015】
前述の実施態様のいずれかと組み合わされ得る一実施態様では、第1及び第2のMEAの少なくとも一方の第1及び第2の電極の少なくとも一方は、作動流体がそれぞれの薄膜状電解質膜を通過するのに従って作動流体の酸化及び還元を促進するように構成された触媒を含む。
【0016】
前述の実施態様のいずれかと組み合わされ得る一実施態様では、第1及び第2のMEAの少なくとも一方の第1及び第2の電極の少なくとも一方は、パラジウム又はその合金を含む。
【0017】
前述の実施態様のいずれかと組み合わされ得る一実施態様では、熱-電気コンバータは、第1のMEAと第2のMEAの間で第1の圧力及び第2の圧力の作動流体のフローを結合する伝熱式熱交換器をさらに備える。
【0018】
前述の実施態様のいずれかと組み合わされ得る一実施態様では、熱-電気コンバータは、管状構成を有する。
【0019】
前述の実施態様のいずれかと組み合わされ得る一実施態様では、第1及び第2のMEAの各々は、管状構成を有する。
【0020】
前述の実施態様のいずれかと組み合わされ得る一実施態様では、第1及び第2のMEAの各々の内部は、第1の圧力の作動流体のフローのための第1のコンジットを構成する。
【0021】
前述の実施態様のいずれかと組み合わされ得る一実施態様では、熱-電気コンバータは、第1及び第2のMEAを少なくとも部分的に囲むハウジングをさらに備え、第1及び第2のMEAとハウジングとの間の空間が、第2の圧力の作動流体のフローのための第2のコンジットを構成する。
【0022】
前述の実施態様のいずれかと組み合わされ得る一実施態様では、第1及び第2の電極の一方が、第1及び第2のMEAの両方に電気的に共通である。
【0023】
前述の実施態様のいずれかと組み合わされ得る一実施態様では、熱-電気コンバータは、第1及び第2のMEAを電気的に結合するための外部回路をさらに備える。
【0024】
前述の実施態様のいずれかと組み合わされ得る一実施態様では、本発明は複数の上述のコンバータを備える熱-電気コンバータシステムに関し、複数のコンバータは、第1の温度における作動流体の第1のストリームと第1の温度よりも低い第2の温度における作動流体の第2のストリームとの間に結合される。
【0025】
前述の実施態様のいずれかと組み合わされ得る一実施態様では、本発明は、上述の熱-電気コンバータをヒートポンプとして用いて発電する方法に関する。方法は、第1の膜電極接合体を第1の温度の熱源に結合するとともに、第2の膜電極接合体を第2の温度のヒートシンクに結合するステップであって、第1の温度は第2の温度よりも低い、ステップと、第2の膜電極接合体に電力を印加して、熱が第2の温度及び第1の電圧において除去されている状態で、作動流体を第2の圧力から第1の圧力に圧送するステップと、作動流体が第1の圧力から第2の圧力に膨張するのに従って、第1の温度及び第2の電圧において熱がそこに供給されている状態で、第1の膜電極接合体から電力を取り出すステップであって、第1の電圧は第2の電圧よりも高い、ステップと、を備える。
【0026】
前述の実施態様と組み合わされ得る一実施態様では、方法は、外部電源を第1の膜電極接合体に直列接続するステップをさらに備える。
【0027】
前述の実施態様のいずれかと組み合わされ得る一実施態様では、本発明は、上述の熱-電気コンバータを熱機関として用いて発電する方法に関する。方法は、第1の膜電極接合体を第1の温度の熱源に結合するとともに、第2の膜電極接合体を第2の温度のヒートシンクに結合するステップであって、第1の温度は第2の温度よりも高い、ステップと、第2の膜電極接合体に電力を印加して、熱が第2の温度及び第1の電圧において除去されている状態で、作動流体を第2の圧力から第1の圧力に圧送するステップと、作動流体が第1の圧力から第2の圧力に膨張するのに従って、第1の温度及び第2の電圧において熱がそこに供給されている状態で、第1の膜電極接合体から電力を取り出すステップであって、第2の電圧は第1の電圧よりも高い、ステップと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態に係る、2つの薄膜状膜電極接合体を含む熱電気化学コンバータの断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る、コンバータの薄膜状膜電極接合体の電極としての使用に適した幾つかの金属の水素透過率のグラフ表示である。
【
図3】幾つかの市販の水素透過性金属合金を特定する表である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係る、2つの薄膜状膜電極接合体を含む熱電気化学コンバータの断面図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る、高温作動流体フローストリームと低温作動流体フローストリームの間で動作する複数の熱-電気コンバータ管を示す。
【
図7】本発明の実施形態に係る、イオン伝導膜を形成する電解質材料としての使用に適した幾つかの例示のプロトン伝導材料のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の好適な実施形態の以下の詳細な説明は、添付図面との関連で読まれると、より深く理解されることになる。本発明を説明する目的のため、現在好適な実施形態が図面に示される。ただし、本発明は、図示する厳密な構成及び手段に限定されないことが理解される。
【0030】
以下の説明において、特定の専門用語が、説明の便宜のみで使用され、これは限定ではない。文言「近位」、「遠位」、「上向き/上方」、「下向き/下方」、「底」及び「上」は、参照される図面における方向を指定する。文言「内向き/内側」及び「外向き/外側」は、それぞれ、本発明によると、デバイス及びその指定部分の幾何中心に向かう方向及びそこから離れる方向をいう。ここに特に断りがない限り、用語「a」、「an」及び「the」は1つの要素に限定されず、「少なくとも1つ」を意味するものとして読まれるべきである。用語は、上記文言、その派生語及び類義語を含む。「第1」、「第2」などのような用語は明瞭化の目的のみで与えられることも理解されるはずである。これらの用語によって特定される要素又は構成要素及びその動作は、容易に入れ替えられ得る。
【0031】
本発明は、概略として、特に熱電気化学コンバータでの使用のための改良された薄膜状膜電極接合体に関する。より具体的には、本発明は、イオン化作動流体と、薄膜状電解質層及び少なくとも1つの電極、より好ましくは薄膜状電解質層を挟む一対の電極からなるMEAを含む少なくとも1つの電気化学濃淡電池と、を有する熱電気化学コンバータに関する。
【0032】
図1を参照すると、本発明の一実施形態に係るコンバータ100が示される。コンバータ100は、第1の電気化学電池9及び第2の電気化学電池11を含む。各電池9、11は、2つの電極間に挟まれたイオン伝導膜を備えるイオン伝導性MEAを含む。より具体的には、第1の電気化学電池9は第1のMEA40を備え、第2の電気化学電池11は第2のMEA42を備える。第1及び第2のMEA40、42はいずれも、略管状構造を有し、さらに詳細に後述する電極及びその膜が管状構成を有することを意味する。当業者には、各電池が2以上のMEAを備えてもよく、MEAは管状構成を有さなくてもよいことが理解されるはずである。
図1のコンバータ100では、第1の電気化学電池9はヒートシンクQ
Lに結合され、第2の電気化学電池11は熱源Q
Hに結合される。ヒートシンクQ
L及び熱源Q
Hは、より詳細に後述するように、異なる温度にある。
【0033】
第1の電気化学電池9の第1のMEA40は、第1の電極5と第2の電極10の間に位置する膜6を備える。第2の電気化学電池11の第2のMEA42は、第1の電極5と第2の電極14の間に位置する膜8を備える。膜6、8及び電極5、10、14は全て、管状構成を有する(断面図が
図1に示される)。
【0034】
各膜6、8は、イオン伝導膜である。より好ましくは、各膜6、8は、薄膜状電解質層の形態、最も好ましくは高密度の薄膜状電解質層の形態である。好ましくは、各薄膜状電解質膜6、8は、10μm未満、より好ましくは0.03μm~10μmの厚さを有する。好ましくは、各薄膜状電解質膜6、8は、作動流体のイオンの伝導性を有する。より具体的には、高密度の薄膜状電解質層(膜)6、8は、好ましくは非多孔質であり、作動流体のイオンの伝導性を有するが、作動流体の非イオン化成分に対しては実質的に非透過性である。したがって、イオン伝導性の膜6、8は、イオン化されていない作動流体の、それを介する拡散を制限する。比較的低いイオン伝導性を有する電解質材料を用いる場合でも、各MEA40、42の薄膜状電解質構造によって、熱電気化学コンバータ100が高い電力密度を実現することが可能となる。
【0035】
図7を参照すると、本発明においてイオン伝導膜を形成する電解質材料としての使用に適した種々の例示のプロトン伝導材料が示される。
図7に示すこれらの材料は、水素が作動流体として利用される使用に特に適する。
図7に与えられるデータに基づいて、最適な材料が、膜の目標動作温度に対して伝導性を最大化することに主に基づいて所与の用途のために選択され得る。
図7の好適な膜/電解質材料の幾つかは酸化物である。
図7の好適な膜/電解質材料は、スパッタリング又は他の物理的堆積法による用途に適する。ポリベンゾイミダゾール(PBI)は、好適なポリマーであり、したがって射出又は他のポリマーコーティング技術によって塗布され得る。
【0036】
第1の電極5及び第2の電極10、14は、好ましくは電子の伝導性を有し、イオン化作動流体に対して透過性がある。電極5、10、14の透過性は非多孔質電極材料を通じた原子若しくは分子拡散によるものであってもよいし、又は電極5、10、14が多孔性に起因して透過性であってもよい。一実施形態では、電極5、10、14の少なくとも1つは、電子の伝導性を促進する1以上の添加物及び/又は所望の電気化学反応を促進する1以上の触媒を含み得る。
【0037】
好ましくは、MEA40の第1の電極5及び第2の電極10の少なくとも一方並びにMEA42の第1の電極5及び第2の電極14の少なくとも一方は、非多孔質金属を含み、より好ましくは非多孔質かつ高密度の金属を含む。より好ましくは、両MEA40、42の両電極5、10及び5、14は、非多孔質金属を含み、より好ましくは非多孔質かつ高密度の金属を含む。好適な実施形態では、電極5、10、14の少なくとも1つ、より好ましくは電極5、10、14の全てが、薄膜状電解質層6、8のための支持材として固体非多孔質金属又はナノ多孔質材料を含む。
【0038】
より具体的には、一実施形態では、電極5、10、14の少なくとも1つが、薄膜状電解質がナノ多孔質材料に直接支持された状態で、ナノ多孔質材料に機械的支持を与える基板上に実装又はコーティングされたナノ多孔質材料を含み、それによりナノ多孔質電極を形成する。一実施形態では、基板は多孔質基板である。ナノ多孔質電極は、好ましくは0.03μm~10μmの厚さを有する薄膜状電解質コーティングのための基板として機能するのに充分な表面平滑度を有する。このような電極は、例えば、マイクロ多孔質カーボン又はナノ多孔質カーボンで構成され得る。このマイクロ多孔質又はナノ多孔質カーボン電極及びこれらがどのようにして形成されるのかの例は、Wang他の米国特許第9046784号、Yao他の米国特許第6632849号、及びKondyurin他による刊行物、タイトル「Nanostructured Carbonized Thin Films Produced by Plasma Immersion Ion Implantation of Block-Copolymer Assemblies」(155~160頁)、Version of Record online:2007年10月29日|DOI:10.1002/ppap.200700111に開示されている。基板は、例えば、シリコンシート、ガラスシート又は金属シートであり得る。
【0039】
他の実施形態では、電極5、10、14の少なくとも1つは、非多孔質材料に機械的支持を与える基板上に実装された非多孔質材料を含み、それにより、薄膜状電解質が非多孔質材料に支持された非多孔質電極を形成する。一実施形態では、基板は、多孔質基板である。好ましくは、電極5、10、14の少なくとも1つは、多孔質電極基板上に実装された非多孔質金属材料を含み、それにより、薄膜状電解質が非多孔質金属材料に支持された非多孔質金属電極を形成する。より具体的には、電極5、10、14の少なくとも1つは、多孔質基板上に支持された、作動流体に対して透過性の、薄い非多孔質金属膜を備え得る。
【0040】
あるいは、電極5、10、14の少なくとも1つは、作動流体に対して透過性の高密度の自己支持金属シート又は箔を備える。
【0041】
一実施形態では、各多孔質電極5、10、14は、任意選択的に、電解質膜6、8との界面において金属基板の表面上に作動流体透過性高密度金属コーティングを含んでいてもよい。高密度金属コーティングは、作動流体が電解質膜6、8に流入及び流出するのに従って酸化及び還元を促進する触媒を含んでいてもよい。また、金属コーティングは、多孔質陽極酸化アルミニウム(SigmaAldrich、米国、で入手可能なWhatman Anodisc(登録商標))などの導電性若しくは非導電性の多孔質基板又はニッケルフォームなどの導電性材料によって支持されてもよい。
【0042】
特に作動流体に対して透過性の金属合金及び積層体は、電極5、10、14を形成するのに好適である。
図2を参照すると、本発明の電極5、10、14としての使用に適し得る幾つかの様々な金属が示される。より具体的には、
図2は、幾つかの金属の水素透過性を示す。パラジウム及びパラジウム合金は、特に水素が作動流体である場合に好適である。パラジウムよりも高い透過性を有する多数の金属が存在するが、それらの他の材料は、水素環境に置かれる場合に脆化に起因して作用しなくなる傾向にある。一方、パラジウムは、安定したままであり、水素反応を促進するための触媒特性を有する。パラジウムはまた、薄い電解質コーティングに適した触媒支持基板として確立されている。ただし、陰極を備えて流入水素分子を触媒することに加えて、パラジウムは、電解質界面において電解質の還元反応も触媒する。したがって、パラジウムと電解質の間の低反応性界面層を含むことが有益であることが分かっている。
【0043】
例えば、600nmの厚さのNi層を有するNi/Pd箔は、400℃において、約5×10-9mol s-1m-1Pa-0.5の水素透過率を示し、それは純粋Pd箔の透過性の半分である。この値は、燃料電池における少なくとも2Acm2の外部電流を与えるのに充分である。「Thin Film Fuel Cell Based on Nanometer-Thick Membrane of Amorphous Zirconium Phosphate Electrolyte」(Journal of The Electrochemical Society、158(8)B866-B870(2011)0013-4651/2011/158(8)/B866/5、The Electrochemical Society)が参照される。
【0044】
燃料電池用途のための固体金属電極の使用に向けた取組みは、水素分離/生成用途のための膜の開発に向けて行われる広範な研究と比較して非常に制限されてきた。
図3は、Yin他「A Review on the Production and Purification of Biomass-Derived Hydrogen Using Emerging Membrane Technologies」、Catalyst(2017年10月6日)を出典として、幾つかの市販の水素透過性金属合金を列挙する。銀及び/又は他の合金化金属の添加は、パラジウムベースの膜の機械的強度及び安定性を向上する。例えば、銀をパラジウムに合金化することによって、膜の透過性が純粋なPd膜と比較して5倍まで高まり得る。田中他「Preparation And Characterization Of Ceramic Supported Ultra-Thin(approximately 1μm)Pd-Ag Membranes」(D.A.P.J.Membr.Sci.2017、528、12-23)によって行われた一研究は、同時ELP法によって生成された超薄型(約1μm)のPd-Ag膜を分析し、その膜は400℃において9.0~9.4×10
-6mol.m
-2s
-1Pa
-1のH
2浸透率及び3300~2000のH
2/N
2選択率を有することが分かった。
【0045】
各MEA40、42は、電解質材料の薄膜状コーティングを、作動流体に対して透過性の電極上に塗布することによって構成され得る。例えば、薄膜状電解質層、すなわち、膜6、8は、スパッタ蒸着、レーザアブレーション、化学気相蒸着又は任意の他の周知の薄膜状堆積技術によって第1の電極上にコーティングされてもよい。薄膜状電解質層、すなわち、膜6、8はまた、電解質材料のナノ粒子スラリーを用いたスピンコーティングによって、ゾルゲルによって又は原子層堆積技術によっても第1の電極上に塗布され得る。ポリマーベースの電解質膜について、インクジェット印刷、溶媒キャスティング又はスピンコーティングは、薄膜状電解質膜6、8を形成するのに使用され得る周知の塗布技術の一部である。電極5、10、14の1つに対する薄膜状電解質膜6、8の形成後に、他方の電極5、10、14が、MEA40、42を完成するために薄膜状電解質膜6、8の上部に塗布される。一実施形態では、MEA40、42の電極5、10、14の一方又は両方は、電極-電解質界面における作動流体の酸化及び還元を促進するために触媒材料を含んでいてもよく、あるいは、電極自体の材料がこれらの反応を促進するように触媒的であってもよい。
【0046】
一実施形態では、第2の電極が薄膜状電解質膜6、8の上部に塗布された後に、接合構造体は管状構成のMEA40、42を形成するように折り曲げられ又は巻かれてもよい。
【0047】
好適な一実施形態では、作動流体は、気体の形態である。好適な一実施形態では、作動流体は水素である。このように、各濃淡電池9、11は、電子の伝導性がありかつ水素に対して透過性の2つの電極間に挟まれたプロトン伝導性の電解質材料からなるMEA40、42を含む。水素が作動流体であるコンバータについて、各MEAの電極のための適切な高い透過性の金属は、これらに限定されないが、パラジウム、ニオビウム、イットリウム、タンタル並びに銀及び/又は銅との合金を含むこれらの合金を含む。各MEAのプロトン伝導性の電解質材料は、2つの水素透過性電極間に挟まれた0.03μm~10μmの厚さを有する薄膜状の膜の形態である。
【0048】
ここに与えられる開示は、作動流体の例として水素を主に用いる。ただし、当業者には、本発明は作動流体として水素に限定されるものではないことが理解されるはずである。実際に、ここに記載する原理は、他のイオン化作動流体に同様に当てはまる。
【0049】
図1の実施形態では、コンバータ100は、コンバータ100のMEAも略管状構造を有するように、管状構造を有する。ただし、当業者には、本発明は、MEAがそのように構成されなくてもよいことが理解されるはずである。例えば、MEAは、平坦な層状構造を有し及び/又は積層構造で配置されてもよい。ただし、ここに与えられる説明は、管状構成のコンバータに着目する。
【0050】
図1の実施形態では、第1の電極5は、第1の電気化学電池9のMEA40から第2の電気化学電池11のMEA42に延在する。このように、
図1の実施形態では、第1の電極5は、第1及び第2の電気化学電池9、11の双方のMEA40、42に対して共通であり、より具体的には電気的に共通である。上記のように、MEA40、42の第1の電極5は、通路、すなわち、コンジット50が管状電極5の内部に形成され、第1の電気化学電池9と第2の電気化学電池11の間に延在するように、管状形態を有する。このコンジット50の遠位端は、プラグ7によって閉じられている。より具体的には、MEA40、42の第1の電極5及びプラグ7はともに、第1の電気化学電池9と第2の電気化学電池11の間で作動流体フローを結合する閉コンジット50を画定する。
【0051】
MEA40、42は、外側ハウジングに、好ましくは管状の外側ハウジング24に少なくとも部分的に内包され又は囲まれる。封止リング12が、MEA40、42と外側ハウジング24の間を気密又はほぼ気密な封止を確保するように任意選択的に設けられてもよい。コンジット50は、外側エンクロージャ(外側ハウジング)24の長さの範囲内に位置し、又はそれを横断する。このように、外側ハウジング24は、コンジット50内の第1の、すなわち、内側チャンバ、及びコンジット50を囲む第2の、すなわち、外側チャンバといった独立したチャンバに分割される。このように、外側チャンバは、実質的に第2のコンジット52となる。第1のコンジット50は第1の電極5と直接に接し、一方で第2のコンジット52は第1の電池9のMEA40の第2の電極10及び第2の電池11のMEA42の第2の電極14と直接に接している。
【0052】
一実施形態では、第1及び第2のコンジット50、52は、第1のコンジット50が第2のコンジット52に内包された同心配置を有する。第2のコンジット52はまた、第1の電気化学電池9と第2の電気化学電池11の間で作動流体フローを結合する。
図1及び4に示すように、第1及び第2の電気化学電池9、11並びに実際にはコンバータ100の全体は、特に同心管状のコンジット50、52との同心管状構造体として構成され得る。同心管状構造体は、閉込め圧力応力が主に引張り及び圧縮であることによって最小の壁厚の使用が可能となることで有利である。
【0053】
コンバータ100は、各MEA40、42の一方の電極が相対的に低圧状態に維持され、各MEA40、42の他方の電極が相対的に高圧状態に維持されるように構成される。当業者には、用語「高圧」及び「高濃度」は、作動流体に関してここでは互換可能に使用されることが理解されるはずである。当業者には、用語「低圧」及び「低濃度」も、作動流体に関してここでは互換可能に使用されることも理解されるはずである。好ましくは、2つの電気化学濃淡電池9、11の高濃度(すなわち、高圧)側は、高圧コンジット(すなわち、相対的に高圧に維持されたコンジット)によって相互に接続され、2つの電気化学濃淡電池9、11の低濃度(すなわち、低圧)側は、低圧コンジット(すなわち、相対的に低圧に維持されたコンジット)によって相互に結合される。
【0054】
より具体的には、
図1のコンバータ100では、MEA40、42の第1の電極5は相対的に高圧状態に維持されるので、コンバータ100の高圧側を構成する。したがって、第1のコンジット50は、第1の電気化学電池9と第2の電気化学電池11の間で高圧状態の作動流体フローを結合する。MEA40、42の第2の電極10、14は相対的に低圧状態に維持されるので、コンバータ100の低圧側を構成する。したがって、第2のコンジット52は、第1の電気化学電池9と第2の電気化学電池11の間で低圧状態の作動流体フローを結合する。
【0055】
図1を参照すると、コンバータ100の中央部分28は、2つの電気化学電池9、11間で作動流体フローを接続する伝熱式熱交換器として機能する。
図1の実施形態のコンバータ100の中央部分28では、障壁層、すなわち、コーティング26が、中央部分28に及ぶ電極5の外部長(すなわち、第1の電池9と第2の電池11の間の領域)にわたって設けられる。障壁コーティング26は、中央部分28領域における電極5の水素透過性材料を通じた水素透過を防止する。
【0056】
あるいは、
図4に示すように、電池9、11は、電気的に共通の電極5を有していなくてもよい。
図4のコンバータ100´及びその動作は、以下の態様を除いて、
図1のコンバータ100のものと同一である。各MEA40、42は、別個の電極を含む。したがって、第1の電気化学電池9のMEA40は第1の電極55と第2の電極10の間に挟まれた膜6を備え、第2の電気化学電池11のMEA42は第1の電極65と第2の電極14の間に挟まれた膜8を備え、第1の電極55及び65は相互に別個独立である。中央部分28´では、管状部材27が、第1の電極55、65間に設けられて延在する。管状部材27は、好ましくは、作動流体に対して透過性ではない材料からなる。より具体的には、管状部材27は、好ましくは、伝熱を適応させる一方で、電気化学反応を受けることなく、高圧状態から低圧状態への作動流体の受動拡散を防止する。したがって、
図4の実施形態では、コンジット50は、管状部材27、第1の電池9のMEA40の第1の電極55、及び第2の電池11のMEA42の第1の電極65の全体内部に形成される。
【0057】
図1を参照すると、電気化学濃淡電池9、11の一方は、例えば、熱源Q
Hへの接続によって昇温時に入力される熱を受け、イオン化作動流体を高濃度又は高圧から低濃度又は低圧まで膨張させることによって熱を電力に変換するように動作し、膨張は電池のネルンスト電位の下で行われる。この電池をここでは「高温電池」又は「高温MEA」という。他方の電気化学濃淡電池9、11は、好ましくはヒートシンクQ
Lに接続され、電力入力に対してイオン化作動流体を圧送及び圧縮して低濃度又は低圧から高濃度又は高圧に戻すように動作し、圧縮は電池のネルンスト電位を超える印加電圧下で行われる。電力は、圧縮プロセスによって消費され、圧縮の熱は排除される。この電池をここでは「低温電池」又は「低温MEA」という。
【0058】
より具体的には、一実施形態では、MEA40、42は熱機関の一部として動作し、第2の電池11のMEA42が結合される熱源QHは、好ましくは、第1の電池9のMEA40が結合されるヒートシンクQLの温度に対して昇温している。このように、高温MEA42は、低温MEA40よりも高いネルンスト電圧を有する。機関(コンバータ)100の動作は、作動流体が低温濃淡電池9においてMEA40の低圧電極10から高圧電極5に圧縮されるというものである。そして、圧縮された作動流体は、高圧コンジット50によって、高温濃淡電池11のMEA42の高圧電極5に供給される。作動流体は、それが薄膜状電解質膜8を高圧電極5から低圧電極14に通過するのに従って、高温電池11のMEA42を通じて膨張される。続いて、作動流体は、低圧コンジット52によって供給されて低温濃淡電池9の低圧電極10に戻される。高温MEA42によって生成された電圧は、低温MEA40のネルンスト電圧を上回り、直列接続された外部負荷34に給電するのに充分な電圧が残されるほどに高い。
【0059】
より具体的には、
図1及び4のコンバータ100、100´は、以下のように熱機関として動作する。低圧低温状態1から開始し、電気エネルギーが低温MEA40に供給されて、MEA40にわたる作動流体フロー16を低圧低温状態1から高圧低温状態2まで圧送する。作動流体の温度は、圧縮プロセス中に熱Q
Lをプロトン伝導膜6から除去することによってほぼ一定に維持される。好ましくは10μm未満の厚さの薄い膜6は、大きな温度勾配に対応しないため、充分な熱が膜6及びその基板に伝達されることを条件として、プロセスについてのほぼ等温の前提は有効である。高圧低温状態2から、作動流体は、フロー18として伝熱式向流型熱交換器(すなわち、中央部分28)を通過し、ここでそれが略一定圧力下で加熱されて高圧高温状態3となり、そして高温MEA42に流れる。作動流体の温度を高圧低温状態2から高圧高温状態3まで上昇させるのに必要な熱30は、熱交換器において反対方向に流れる作動流体フロー20から伝達される。より具体的には、中央部分28は、高温MEA42を離れてコンジット52内を流れる作動流体フロー20からの熱30を、コンジット50内で高温MEA42に移動する作動流体フロー18に結合するように作用する。高温MEA42において、作動流体フロー22がMEA42にわたって移動して高圧高温状態3から低圧高温状態4に膨張するのに従って電力が生成される。作動流体が膨張するのに従って、ほぼ一定温度を維持するようにMEA42に熱Q
Hが供給される。低圧高温状態4から低圧低温状態1に切り換わるために、作動流体フロー20は伝熱式熱交換器(すなわち、中央部分28)を通じて流れ、ここでその温度は高圧低温状態2から高圧高温状態3を通る作動流体フロー18への伝熱によって定圧プロセスにおいて低減される。このサイクルは、作動流体が低圧から高圧に低温MEA40によって圧送されるのに従って継続する。
【0060】
コンバータ100、100´の動作時に、作動流体は、そのネルンスト電位を上回るのに充分な電圧において電流を供給することによって低温電気化学電池9内で圧縮され、それにより、作動流体を膜6の低圧側から高圧側に移動させる。一方、作動流体は、電流(電力)がそのネルンスト電位下で取り出されるのに従って高温電気化学電池11内で膨張する。高温電気化学電池11では、電流のフローは、作動流体が膜8の高圧側から低圧側に膨張するのに従って生成される。作動流体を採用して圧縮性ガスの性質に従ういずれの熱力学機関とも同様に、コンバータ100では、低温圧縮に必要な仕事(電気)入力よりも多くの仕事量(電気)が、高温膨張時に引き出される。コンバータ100が高温膨張時に一定温度を維持するのに入力される熱エネルギーと、低温圧縮時に一定温度を維持するために除去される熱エネルギーとの差は、高温膨張プロセスによって出力される電気エネルギーと、低温圧縮プロセスによって消費される電気エネルギーの差として与えられる。
【0061】
ネルンストの式に従うと、高温電気化学電池11は、低温電気化学電池9よりも高い電圧を有することになる。電流(I)は両電池を通じて同じであるので、電圧差は、高温電気化学電池11における作動流体の膨張を通じて生成される電力が低温電気化学電池9のものよりも高いことを意味する。高温電気化学電池11によって出力される電力(VHT*I)は、低温電気化学電池9における圧縮プロセス(VLT*I)を進行させ、正味の電力出力((VHT*I)-(VLT*I))を外部負荷34に供給するのに充分である。この電圧差は、コンバータ100の動作の基礎を与える。
【0062】
MEA40、42がヒートポンプ用途の一部として動作する他の実施形態では、第2の電池11のMEA42が結合される熱源QHは、第1の電池9のMEA40が結合されるヒートシンクQLに対して低温となる。したがって、作動流体は、膨張熱が低温の熱源QHから引き出されるのに従って熱源QHに結合されたMEA42において低温で膨張される。作動流体は、ヒートシンクQLに結合されたMEA40において高温で圧縮され、圧縮熱は昇温時に排除される。その低い動作温度のために、低温膨張MEA42は、高温圧縮MEA40のネルンスト電圧未満のネルンスト電圧を生成する。したがって、外部電源は、高温MEA40のネルンスト電位を上回るほどに高い合成電圧を与え、それにより圧縮プロセスをそこで進行させるために、低温MEA42に直列接続される。
【0063】
図5A~5Bは、管状構造体として構成されたコンバータ100の端面図を示す。管状構造のコンバータ100は、発電機として又はヒートポンプとして熱輸送のための能動ヒートパイプとして機能することを訴求している。このように、コンバータ100は、比較的小径の管状構造体を有して構成され、それにより、複数の管が、
図6に示すように、熱源とヒートシンクの間の熱を伝達するのに使用される「ヒートパイプ」のバンクに類似する構造体を形成するように配置され得る。
【0064】
より具体的には、
図6を参照すると、高温作動流体フローストリーム32(すなわち、熱源)と低温作動流体フローストリーム30(熱、すなわち、ヒートシンク)の間に結合された熱-電気コンバータ管のバンクが示される。作動流体の膨張のための高温MEA42が高温作動流体フローストリーム32に露出されてそれによって加熱され、作動流体の圧縮のための低温MEA40が低温作動流体フローストリーム30に露出されてそれによって冷却される。高温及び低温作動流体フローストリーム32、30は、それぞれの低温MEA40とそれぞれの高温MEA42との間でその同心管内の各コンバータ管結合フローの個々の熱交換器(中央部分28)内の作動流体フローとして、伝熱式熱交換器部分38によって相互に隔離される。
【0065】
上述の実施形態に対してその広範な発明の概念から逸脱することなく変更がなされ得ることが、当業者であれば分かるはずである。したがって、本発明は開示した特定の実施形態に限定されず、後続の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の主旨及び範囲内の変形例を包含するものであることが理解される。