(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】有機発光ダイオードおよびそれを含む有機発光装置
(51)【国際特許分類】
H10K 50/12 20230101AFI20241212BHJP
H10K 85/30 20230101ALI20241212BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20241212BHJP
H10K 50/13 20230101ALI20241212BHJP
H10K 50/19 20230101ALI20241212BHJP
H10K 77/10 20230101ALI20241212BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20241212BHJP
H10K 101/30 20230101ALN20241212BHJP
H10K 101/40 20230101ALN20241212BHJP
【FI】
H10K50/12
H10K85/30
H10K85/60
H10K50/13
H10K50/19
H10K77/10
C09K11/06 660
C09K11/06 690
H10K101:30
H10K101:40
(21)【出願番号】P 2023515084
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 KR2022008930
(87)【国際公開番号】W WO2023113124
(87)【国際公開日】2023-06-22
【審査請求日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0180229
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【氏名又は名称】岡部 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100209808
【氏名又は名称】三宅 高志
(72)【発明者】
【氏名】キム チョンウク
(72)【発明者】
【氏名】ペ スクヤン
(72)【発明者】
【氏名】イ ドンリュン
(72)【発明者】
【氏名】アン ハンジン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュンユン
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-091644(JP,A)
【文献】特開2021-182459(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0384444(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0058874(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/12
H10K 85/30
H10K 85/60
H10K 50/13
H10K 50/19
H10K 77/10
C09K 11/06
H10K 101/30
H10K 101/40
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極と対向する第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極の間に位置し、少なくとも1つの発光物質層を含む発光層とを含み、
前記少なくとも1つの発光物質層は、第1化合物および第2化合物を含み、
前記第1化合物は、下記化学式(1)の構造を有する有機化合物を含み、
前記第2化合物は、下記化学式(8A)
、(8B)の構造を有する有機化合物を含み、
前記第1化合物の最高被占軌道(Highest Occupied Molecular Orbital、HOMO)エネルギー準位(HOMO
DF)と、前記第2化合物のHOMOエネルギー準位(HOMO
FD)は、下記式(I)を満たす、有機発光ダイオード。
│HOMO
FD-HOMO
DF│<0.3eV…(I)
【化1】
(化学式(1)中、R
1とR
2は、それぞれ独立して、水素原子、重水素、三重水素、ハロゲン原子、置換もしくは非置換C
1~C
20のアルキル基、置換もしくは非置換C
1~C
20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換C
1~C
20のアルキルシリル基、置換もしくは非置換C
6~C
30の芳香族基、または置換もしくは非置換C
3~C
30のヘテロ芳香族基であり、aが複数である場合、各々のR
1は同じであってもよく、相違してもよく、bが複数である場合、各々のR
2は同じであってもよく、相違してもよい。任意選択で、aとbがそれぞれ複数である場合、隣接する2つのR
1、および/または隣接する2つのR
2は、それぞれ互いに結合し、置換もしくは非置換C
6~C
20の芳香族環、または置換もしくは非置換C
3~C
20のヘテロ芳香族環を形成することができる。Dは、下記化学式(5)の構造を有する部分(moiety)を含む。)
【化2】
(化学式(5)中、R
13は、置換もしくは非置換C
6~C
30のアリール基、置換もしくは非置換C
3~C
30のヘテロアリール基である。R
14とR
15は、それぞれ独立して、水素原子、重水素、三重水素、ハロゲン原子、置換もしくは非置換C
1~C
20のアルキル基、置換もしくは非置換C
1~C
20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換C
6~C
30のアリール基、または置換もしくは非置換C
3~C
30のヘテロアリール基であり、mが複数である場合、各々のR
14は同じであってもよく、相違してもよく、nが複数である場合、各々のR
15は同じであってもよく、相違してもよい。任意選択で、mとnがそれぞれ複数である場合、隣接する2つのR
14、および/または隣接する少なくとも2つのR
15は、それぞれ互いに結合し、置換もしくは非置換C
6~C
20の芳香族環、または置換もしくは非置換C
3~C
20のヘテロ芳香族環を形成することができる。mは0~3の整数であり、nは0~4の整数であり、星印は結合部位を示す。)
【化3】
【化4】
(化学式(8A)
、(8B)中、R
21、R
25~R
28、R
31~R
34は、それぞれ独立して、水素原子、重水素、三重水素、ハロゲン原子、置換もしくは非置換C
1~C
20のアルキル基、置換もしくは非置換C
1~C
20のアルキルシリル基、置換もしくは非置換C
1~C
20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換C
6~C
30のアリール基、置換もしくは非置換C
3~C
30のヘテロアリール基である。)
【請求項2】
第1電極と、
前記第1電極と対向する第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極の間に位置し、少なくとも1つの発光物質層を含む発光層とを含み、
前記少なくとも1つの発光物質層は、第1化合物および第2化合物を含み、
前記第1化合物は、下記化学式(1)の構造を有する有機化合物を含み、
前記第2化合物は、下記化学式(8A)
、(8B)の構造を有する有機化合物を含み、
前記第1化合物の最低空軌道(Lowest Unoccupied Molecular Orbital、LUMO)エネルギー準位は、前記第2化合物のLUMOエネルギー準位より浅い、または同じである、有機発光ダイオード。
【化5】
(化学式(1)中、R
1とR
2は、それぞれ独立して、水素原子、重水素、三重水素、ハロゲン原子、置換もしくは非置換C
1~C
20のアルキル基、置換もしくは非置換C
1~C
20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換C
1~C
20のアルキルシリル基、置換もしくは非置換C
6~C
30の芳香族基、または置換もしくは非置換C
3~C
30のヘテロ芳香族基であり、aが複数である場合、各々のR
1は同じであってもよく、相違してもよく、bが複数である場合、各々のR
2は同じであってもよく、相違してもよい。任意選択で、aとbがそれぞれ複数である場合、隣接する2つのR
1、および/または隣接する2つのR
2は、それぞれ互いに結合し、置換もしくは非置換C
6~C
20の芳香族環、または置換もしくは非置換C
3~C
20のヘテロ芳香族環を形成することができる。Dは、下記化学式(5)の構造を有する部分(moiety)を含む。)
【化6】
(化学式(5)中、R
13は、置換もしくは非置換C
6~C
30のアリール基、置換もしくは非置換C
3~C
30のヘテロアリール基である。R
14とR
15は、それぞれ独立して、水素原子、重水素、三重水素、ハロゲン原子、置換もしくは非置換C
1~C
20のアルキル基、置換もしくは非置換C
1~C
20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換C
6~C
30のアリール基、または置換もしくは非置換C
3~C
30のヘテロアリール基であり、mが複数である場合、各々のR
14は同じであってもよく、相違してもよく、nが複数である場合、各々のR
15は同じであってもよく、相違してもよい。任意選択で、mとnがそれぞれ複数である場合、隣接する2つのR
14、および/または隣接する少なくとも2つのR
15は、それぞれ互いに結合し、置換もしくは非置換C
6~C
20の芳香族環、または置換もしくは非置換C
3~C
20のヘテロ芳香族環を形成することができる。mは0~3の整数であり、nは0~4の整数であり、星印は結合部位を示す。)
【化7】
【化8】
(化学式(8A)
、(8B)中、R
21、R
25~R
28、R
31~R
34は、それぞれ独立して、水素原子、重水素、三重水素、ハロゲン原子、置換もしくは非置換C
1~C
20のアルキル基、置換もしくは非置換C
1~C
20のアルキルシリル基、置換もしくは非置換C
1~C
20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換C
6~C
30のアリール基、置換もしくは非置換C
3~C
30のヘテロアリール基である。)
【請求項3】
前記第1化合物の最低空軌道(Lowest Unoccupied Molecular Orbital、LUMO)エネルギー準位は、前記第2化合物のLUMOエネルギー準位より浅い、または同じである、請求項1に記載の有機発光ダイオード。
【請求項4】
前記第1化合物の最高被占軌道(HOMO)エネルギー準位と、最低空軌道(LUMO)エネルギー準位との間のエネルギーバンドギャップは、2.6eV以上、3.1eV以下である、請求項1に記載の有機発光ダイオード。
【請求項5】
前記化学式(1)の前記R
1と前記R
2は、それぞれ水素原子である、請求項1に記載の有機発光ダイオード。
【請求項6】
前記第1化合物は、下記有機化合物から選択される、請求項1に記載の有機発光ダイオード。
【化9】
【化10】
【請求項7】
前記第2化合物は、下記有機化合物から選択される、請求項1に記載の有機発光ダイオード。
【化11】
【化12】
【化13】
【請求項8】
前記少なくとも1つの発光物質層は、単層構造の発光物質層を含む、請求項1に記載の有機発光ダイオード。
【請求項9】
前記単層構造の発光物質層は、第3化合物をさらに含む、請求項8に記載の有機発光ダイオード。
【請求項10】
前記第3化合物の励起三重項エネルギー準位は、前記第1化合物の励起三重項エネルギー準位より高く、前記第1化合物の励起三重項エネルギー準位は、前記第2化合物の励起三重項エネルギー準位より高い、請求項9に記載の有機発光ダイオード。
【請求項11】
前記第3化合物の励起一重項エネルギー準位は、前記第1化合物の励起一重項エネルギー準位より高く、前記第1化合物の励起一重項エネルギー準位は、前記第2化合物の励起一重項エネルギー準位より高い、請求項9に記載の有機発光ダイオード。
【請求項12】
前記少なくとも1つの発光物質層は、前記第1電極と前記第2電極の間に位置する第1発光物質層と、前記第1電極と前記第1発光物質層の間、または前記第2電極と前記第1発光物質層の間に位置する第2発光物質層とを含み、
前記第1発光物質層は前記第1化合物を含み、
前記第2発光物質層は前記第2化合物を含む、請求項1に記載の有機発光ダイオード。
【請求項13】
前記第1発光物質層は第3化合物をさらに含み、前記第2発光物質層は第4化合物をさらに含む、請求項12に記載の有機発光ダイオード。
【請求項14】
前記第3化合物の励起三重項エネルギー準位は、前記第1化合物の励起三重項エネルギー準位より高く、前記第1化合物の励起三重項エネルギー準位は、前記第2化合物の励起三重項エネルギー準位より高い、請求項13に記載の有機発光ダイオード。
【請求項15】
前記第3化合物の励起一重項エネルギー準位は、前記第1化合物の励起一重項エネルギー準位より高く、前記第1化合物の励起一重項エネルギー準位は、前記第2化合物の励起一重項エネルギー準位より高い、請求項13に記載の有機発光ダイオード。
【請求項16】
前記第4化合物の励起一重項エネルギー準位は、前記第2化合物の励起一重項エネルギー準位より高い、請求項13に記載の有機発光ダイオード。
【請求項17】
前記少なくとも1つの発光物質層は、前記第1発光物質層を介在し、前記第2発光物質層の反対側に位置する第3発光物質層をさらに含む、請求項12に記載の有機発光ダイオード。
【請求項18】
前記第3発光物質層は、第5化合物および第6化合物を含む、請求項17に記載の有機発光ダイオード。
【請求項19】
前記発光層は、前記第1電極と前記第2電極の間に位置する第1発光部と、前記第1発光部と前記第2電極の間に位置する第2発光部と、前記第1発光部と前記第2発光部の間に位置する電荷発生層とを含み、
前記第1発光部と前記第2発光部のうち、少なくとも1つは、前記少なくとも1つの発光物質層を含む、請求項1に記載の有機発光ダイオード。
【請求項20】
前記第1発光部は、前記少なくとも1つの発光物質層を含み、
前記第2発光部は、赤色と緑色のうち、少なくとも1色の光を出射する、請求項19に記載の有機発光ダイオード。
【請求項21】
基板と、
前記基板上に位置し、請求項1に記載の有機発光ダイオードとを含む有機発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、本明細書にその全体の内容が組み込まれた、2021年12月16日付にて韓国で出願された特許出願番号第10‐2021-0180229号に基づく優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、有機発光ダイオードに関するものであって、さらに詳細には優れた発光特性を有する有機発光ダイオード、およびそれを含む有機発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
平面表示素子の1つである有機発光ダイオードは、液晶表示装置(Liquid Crystal Display Device)に代わる発光素子として注目を集めている。有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diodes、OLED)は、2000Å以内の有機薄膜で形成され、用いられる電極の構成によって単方向、または両方向で画像を実現することができる。また、有機発光ダイオードは、プラスチックといったフレキシブルな透明基板上に素子を形成することもできるため、フレキシブル、またはフォルダブルな表示装置の実現が容易である。さらに、有機発光ダイオード表示装置は、低電圧駆動が可能であり、色純度が優れているなど、液晶表示装置に比べて長所が多い。
【0004】
有機発光ダイオードは、陽極からの正孔(hole)と陰極からの電子(electron)が発光物質層で結合して励起子を形成し、不安定なエネルギー状態(excited state)から安定した基底状態(ground state)へ戻る際に光を放出する。従来の一般的な蛍光物質は、一重項励起子だけが発光に寄与するため、発光効率が低い。三重項励起子も発光に寄与する燐光物質は蛍光物質に比べ、発光効率が高い。しかしながら、燐光物質の代表例である金属錯化合物は、発光寿命が短いため、使用するには限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、駆動電圧を低下させながらも発光効率、色純度および発光寿命を向上させることができる有機発光ダイオード、および有機発光ダイオードを含む有機発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、第1電極と、前記第1電極と対向する第2電極と、前記第1電極と前記第2電極の間に位置し、少なくとも1つの発光物質層を含む発光層とを含み、前記少なくとも1つの発光物質層は、第1化合物および第2化合物を含み、前記第1化合物は、下記化学式(1)の構造を有する有機化合物を含み、前記第2化合物は、下記化学式(7)の構造を有する有機化合物を含む有機発光ダイオードが提供される。
【0007】
【0008】
化学式(1)中、R1とR2は、それぞれ独立して、水素原子、重水素、三重水素、ハロゲン原子、置換もしくは非置換C1~C20のアルキル基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルシリル基、置換もしくは非置換C6~C30の芳香族基、または置換もしくは非置換C3~C30のヘテロ芳香族基であり、aが複数である場合、各々のR1は同じであってもよく、相違してもよく、bが複数である場合、各々のR2は同じであってもよく、相違してもよい。任意選択で、aとbがそれぞれ複数である場合、隣接する2つのR1、および/または隣接する2つのR2は、それぞれ互いに結合し、置換もしくは非置換C6~C20の芳香族環、または置換もしくは非置換C3~C20のヘテロ芳香族環を形成することができる。Dは、下記化学式(2)または下記化学式(3)の構造を有する部分(moiety)である。R1とR2がそれぞれ水素原子である場合、aとbはそれぞれ4であり、R1とR2がそれぞれ水素原子でない場合、aとbは、それぞれ独立して、0~4の整数である。
【0009】
【0010】
化学式(2)中、R3は、置換もしくは非置換C6~C30の芳香族基、または置換もしくは非置換C3~C30のヘテロ芳香族基である。R4とR5は、それぞれ独立して、水素原子、重水素、三重水素、ハロゲン原子、置換もしくは非置換C1~C20のアルキル基、置換もしくは非置換C1~C20のヘテロアルキル基、置換もしくは非置換C2~C20のアルケニル基、置換もしくは非置換C2~C20のヘテロアルケニル基、置換もしくは非置換C2~C20のアルキニル基、置換もしくは非置換C2~C20のヘテロアルキニル基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルシリル基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換C1~C20のアルコキシ基、カルボキシル基、シアノ基、スルファニル基、ホスフィン基、置換もしくは非置換C3~C20の脂環族基、置換もしくは非置換C3~C20のヘテロ脂環族基、置換もしくは非置換C6~C30の芳香族基、または置換もしくは非置換C3~C30のヘテロ芳香族基であり、mが複数である場合、各々のR4は同じであってもよく、相違してもよく、nが複数である場合、各々のR5は同じであってもよく、相違してもよい。任意選択で、mとnがそれぞれ複数である場合、隣接する2つのR4、および/または隣接する少なくとも2つのR5は、それぞれ互いに結合し、置換もしくは非置換C6~C20の芳香族環、または置換もしくは非置換C3~C20のヘテロ芳香族環を形成することができる。X1~X4のうち、1つは化学式(1)のホウ素原子および酸素原子を含むヘテロ環に結合する炭素原子であり、残りはそれぞれ独立して、CR4もしくは窒素原子である。Y1は単結合をする。mは0~3の整数であり、nは0~4の整数であり、星印は結合部位を示す。
【0011】
【0012】
化学式(3)中、Y2はCR6もしくはNであり、R6は、水素原子、重水素、三重水素、置換もしくは非置換C1~C20のアルキル基である。A環とB環は、それぞれ独立して、下記化学式(4)の構造を有する。星印は、結合部位を示す。
【0013】
【0014】
化学式(4)中、R7は、重水素、三重水素、置換もしくは非置換C1~C20のアルキル基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換C6~C30の芳香族基、または置換もしくは非置換C3~C30のヘテロ芳香族基であり、pが複数である場合、各々のR7は同じであってもよく、相違してもよい。任意選択で、pが複数である場合、隣接する2つのR7は、それぞれ互いに結合し、置換もしくは非置換C6~C20の芳香族環、または置換もしくは非置換C3~C20のヘテロ芳香族環を形成することができる。R8とR9は、それぞれ独立して、水素原子、重水素、三重水素、置換もしくは非置換C1~C20のアルキル基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換C6~C30の芳香族基、または置換もしくは非置換C3~C30のヘテロ芳香族基であり、あるいは、任意選択で、R8とR9は、それぞれ互いに結合し、置換もしくは非置換C6~C20の芳香族環、または置換もしくは非置換C3~C20のヘテロ芳香族環を形成することができる。pは、0~3の整数である。
【0015】
【0016】
化学式(7)中、R21~R24は、それぞれ独立して、水素原子、重水素、三重水素、ハロゲン原子、置換もしくは非置換C1~C20のアルキル基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルシリル基、置換もしくは非置換C6~C30の芳香族基、または置換もしくは非置換C3~C30のヘテロ芳香族基であり、任意選択で、R21~R24のうち、隣接する2つが互いに結合し、ホウ素原子および窒素原子を有する置換もしくは非置換の縮合環を形成することができる。R25~R28は、それぞれ独立して、水素原子、重水素、三重水素、ハロゲン原子、置換もしくは非置換C1~C20のアルキル基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルシリル基、置換もしくは非置換C6~C30の芳香族基、または置換もしくは非置換C3~C30のヘテロ芳香族基であり、qが複数である場合、各々のR25は同じであってもよく、相違してもよく、rが複数である場合、各々のR26は同じであってもよく、相違してもよい。また、sが複数である場合、R27は同じであってもよく、相違してもよく、tが複数である場合、R28は同じであってもよく、相違してもよい。qとsは、それぞれ独立して、0~5の整数であり、rは0~3の整数であり、tは0~4の整数である。
【0017】
例えば、前記第1化合物の最高被占軌道(Highest Occupied Molecular Orbital、HOMO)エネルギー準位(HOMODF)と、前記第2化合物のHOMOエネルギー準位(HOMOFD)は、下記式(I)を満たすことができる。
│HOMOFD-HOMODF│<0.3eV…(I)
【0018】
任意選択で、前記第1化合物の最低空軌道(Lowest Unoccupied Molecular Orbital、LUMO)エネルギー準位は、前記第2化合物のLUMOエネルギー準位より浅くてもよく、同一であってもよい。
【0019】
例えば、前記第1化合物の最高被占軌道(HOMO)エネルギー準位と、最低空軌道(LUMO)エネルギー準位との間のエネルギーバンドギャップは、約-2.6eV以上、約-3.1eV以下であり得る。
【0020】
例えば、前記第1化合物の最高被占軌道(HOMO)エネルギー準位と、最低空軌道(LUMO)エネルギー準位との間のエネルギーバンドギャップは、約2.6eV以上、約3.1eV以下であり得る。
【0021】
例えば、前記化学式(1)のR1とR2は、それぞれ水素原子であり、前記化学式(1)のDは、下記化学式(5)の構造を有する部分(moiety)であり得る。
【0022】
【0023】
化学式(5)中、R13は、置換もしくは非置換C6~C30のアリール基、または置換もしくは非置換C3~C30のヘテロアリール基である。R14とR15は、それぞれ独立して、水素原子、重水素、三重水素、ハロゲン原子、置換もしくは非置換C1~C20のアルキル基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換C6~C30のアリール基、または置換もしくは非置換C3~C30のヘテロアリール基であり、mが複数である場合、各々のR14は同じであってもよく、相違してもよく、nが複数である場合、各々のR15は同じであってもよく、相違してもよい。任意選択で、mとnがそれぞれ複数である場合、隣接する2つのR14、および/または隣接する少なくとも2つのR15は、それぞれ互いに結合し、置換もしくは非置換C6~C20の芳香族環、または置換もしくは非置換C3~C20のヘテロ芳香族環を形成することができる。mは0~3の整数であり、nは0~4の整数であり、星印は結合部位を示す。
【0024】
前記第2化合物は、下記化学式(8A)~(8C)の構造を有する有機化合物を含むことができる。
【0025】
【0026】
化学式(8A)~(8C)中、R21、R25~R28、R31~R34は、それぞれ独立して、水素原子、重水素、三重水素、ハロゲン原子、置換もしくは非置換C1~C20のアルキル基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルシリル基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換C6~C30のアリール基、置換もしくは非置換C3~C30のヘテロアリール基である。
【0027】
例示的な側面において、前記少なくとも1つの発光物質層は、単層構造の発光物質層を含むことができる。
【0028】
前記単層構造の発光物質層は、第3化合物をさらに含むことができる。
【0029】
任意選択で、前記少なくとも1つの発光物質層は、前記第1電極と前記第2電極の間に位置する第1発光物質層と、前記第1電極と前記第1発光物質層の間、または前記第2電極と前記第1発光物質層の間に位置する第2発光物質層とを含み、前記第1発光物質層は第1化合物を含み、前記第2発光物質層は第2化合物を含むことができる。
【0030】
第1化合物と第2化合物が、それぞれ第1発光物質層と第2発光物質層に含まれる場合、前記第1発光物質層は第3化合物をさらに含み、前記第2発光物質層は第4化合物をさらに含むことができる。
【0031】
前記第3化合物の励起三重項エネルギー準位は、前記第1化合物の励起三重項エネルギー準位より高く、前記第1化合物の励起三重項エネルギー準位は、前記第2化合物の励起三重項エネルギー準位より高くてもよい。
【0032】
前記第3化合物の励起一重項エネルギー準位は、前記第1化合物の励起一重項エネルギー準位より高く、前記第1化合物の励起一重項エネルギー準位は、前記第2化合物の励起一重項エネルギー準位より高くてもよい。
【0033】
前記第4化合物の励起一重項エネルギー準位は、前記第2化合物の励起一重項エネルギー準位より高くてもよい。
【0034】
第1化合物と第2化合物が、それぞれ別の発光物質層に含まれる場合、前記少なくとも1つの発光物質層は、前記第1発光物質層を介在し、前記第2発光物質層の反対側に位置する第3発光物質層をさらに含むことができる。
【0035】
前記第3発光物質層は、第5化合物および第6化合物を含み、前記第5化合物は、前記化学式(7)の構造を有する有機化合物を含むことができる。
【0036】
前記発光層は、前記第1電極と前記第2電極の間に位置する第1発光部と、前記第1発光部と前記第2電極の間に位置する第2発光部と、前記第1発光部と前記第2発光部の間に位置する電荷発生層とを含み、前記第1発光部と前記第2発光部のうち、少なくとも1つは、前記少なくとも1つの発光物質層を含むことができる。
【0037】
例えば、前記第1発光部は、前記少なくとも1つの発光物質層を含み、前記第2発光部は、赤色と緑色のうち、少なくとも1色の光を出射することができる。
【0038】
さらに他の側面によると、本発明は、基板と、前述した有機発光ダイオードとを含む有機発光装置、例えば、有機発光照明装置、または有機発光表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0039】
本発明は、電子供与体部分(moiety)と電子受容体部分(moiety)が、強い結合エネルギーを有する結合で結合された第1化合物と、エネルギー準位が調節された第2化合物が、同一の発光物質層、または隣接する発光物質層に含まれた有機発光ダイオードおよび該有機発光ダイオードを含む有機発光装置を提案する。
【0040】
第1化合物は、電子供与体部分(moiety)と電子受容体部分(moiety)の間に強い結合エネルギーを有しているため、発光素子が駆動するときに発生する熱に対しても安定した分子構造を保つことができる。第1化合物および第2化合物のエネルギー準位を調節することで、正孔が第2化合物に捕獲されず、発光効率および熱安定性に優れた第1化合物へ電荷が迅速に注入され、移動することができる。その結果、第1化合物と第2化合物の間に励起複合体が形成されることなく、発光効率に優れた第1化合物で100%の内部量子効率が実現され、第1化合物で生成された励起子は、第2化合物に移動する。
【0041】
その結果、電荷注入効率および励起子生成効率が改善され、有機発光ダイオードの駆動電圧を低下させ、発光効率を大きく向上させることができる。また、発光は最終的に半値幅が狭く、発光寿命に優れた第2化合物で起こるため、有機発光ダイオードの色純度および発光寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明に係る有機発光表示装置の概略的な回路図である。
【
図2】本発明の例示的な側面に係る有機発光装置の一例であって、有機発光表示装置を概略的に示す断面図である。
【
図3】本発明の例示的な側面に係る有機発光ダイオードを概略的に示す断面図である。
【
図4】本発明の例示的な側面により、発光物質層を構成する第1化合物および第2化合物を中心に、発光物質のエネルギー準位が調節され、正孔が第2化合物へ効率的に移動する状態を概略的に示す模式図である。
【
図5】発光物質層を構成する第1化合物および第2化合物のHOMOエネルギー準位が調節されていないとき、正孔が第2化合物にトラップ(捕獲)される問題を概略的に示す模式図である。
【
図6】発光物質層を構成する第1化合物並びに第2化合物のHOMOエネルギー準位およびLUMOエネルギー準位が調節されていないとき、正孔が第2化合物にトラップされ、第1化合物と第2化合物の間に励起複合体(エキシプレックス)が形成される問題を概略的に示す模式図である。
【
図7】本発明の例示的な側面に係る有機発光ダイオードを構成する発光物質層における発光物質間の一重項エネルギー準位および三重項エネルギー準位による発光メカニズムを概略的に示す模式図である。
【
図8】本発明の他の例示的な側面に係る有機発光ダイオードを概略的に示す断面図である。
【
図9】本発明の他の例示的な側面により、発光物質層を構成する第1化合物および第2化合物のHOMOエネルギー準位が調節され、正孔が第2化合物へ効率的に移動する状態を概略的に示す模式図である。
【
図10】本発明の他の例示的な側面に係る有機発光ダイオードを構成する発光物質層における発光物質間の一重項エネルギー準位および三重項エネルギー準位による発光メカニズムを概略的に示す模式図である。
【
図11】本発明のさらに他の例示的な側面に係る有機発光ダイオードを概略的に示す断面図である。
【
図12】本発明のさらに他の例示的な側面により、発光物質層を構成する第1化合物および第2化合物のHOMOエネルギー準位が調節され、正孔が第2化合物へ効率的に移動する状態を概略的に示す模式図である。
【
図13】本発明のさらに他の例示的な側面に係る有機発光ダイオードを構成する発光物質層における発光物質間の一重項エネルギー準位および三重項エネルギー準位による発光メカニズムを概略的に示す模式図である。
【
図14】本発明のさらに他の例示的な側面に係る有機発光ダイオードを概略的に示す断面図である。
【
図15】本発明のさらに他の例示的な側面に係る有機発光装置の一例であって、有機発光表示装置を概略的に示す断面図である。
【
図16】本発明のさらに他の例示的な側面に係る有機発光ダイオードを概略的に示す断面図である。
【
図17】本発明のさらに他の例示的な側面に係る有機発光装置の一例であって、有機発光表示装置を概略的に示す断面図である。
【
図18】本発明のさらに他の側面に係る有機発光ダイオードを概略的に示す断面図である。
【
図19】本発明のさらに他の側面に係る有機発光ダイオードを概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、電子供与体部分(moiety)と電子受容体部分(moiety)が強い結合エネルギーを持って結合された第1化合物と、第1化合物に比べ、エネルギー準位が調節された第2化合物が、同一の発光物質層、または隣接する発光物質層に採用された有機発光ダイオードおよび該有機発光ダイオードを含む有機発光装置に関するものである。本発明に係る有機発光ダイオードは、有機発光表示装置または有機発光照明装置といった有機発光装置に採用することができる。一例として、本発明の有機発光ダイオードを採用した表示装置について説明する。
【0044】
図1は、本発明の例示的な側面に係る有機発光表示装置の概略的な回路図である。
図1に示すように、有機発光表示装置100には、互いに交差して画素領域Pを定義するゲート配線GL、データ配線DLおよびパワー配線PLが形成される。画素領域Pには、スイッチング薄膜トランジスタTs、駆動薄膜トランジスタTd、ストレージキャパシタCstおよび有機発光ダイオードDが形成される。画素領域Pは、第1画素領域P1(
図15を参照)、第2画素領域P2(
図15を参照)および第3画素領域P3(
図15を参照)を含むことができる。
【0045】
スイッチング薄膜トランジスタTsは、ゲート配線GLおよびデータ配線DLに接続され、駆動薄膜トランジスタTdおよびストレージキャパシタCstは、スイッチング薄膜トランジスタTsとパワー配線PLの間に接続される。有機発光ダイオードDは、駆動薄膜トランジスタTdに接続される。かかる有機発光表示装置では、ゲート配線GLに印加されたゲート信号により、スイッチング薄膜トランジスタTsがオンになると、データ配線DLに印加されたデータ信号がスイッチング薄膜トランジスタTsを通じ、駆動薄膜トランジスタTdのゲート電極130(
図2)およびストレージキャパシタCstの一電極に印加される。
【0046】
駆動薄膜トランジスタTdは、ゲート電極130に印加されたデータ信号によりオンする。その結果、データ信号に比例する電流が、パワー配線PLから駆動薄膜トランジスタTdを通じて有機発光ダイオードDへ流れるようになり、有機発光ダイオードDは、駆動薄膜トランジスタTdを通じて流れる電流に比例する輝度に発光する。このとき、ストレージキャパシタCstは、データ信号に比例する電圧に充電され、1フレームの間、駆動薄膜トランジスタTdのゲート電極の電圧が一定に保持されるようにする。したがって、有機発光表示装置100は、希望する映像を表示することができる。
【0047】
図2は、本発明の例示的な側面に係る有機発光表示装置を概略的に示す断面図である。
図2に概略的に示すように、有機発光表示装置100は、基板110と、基板110の上部に位置する薄膜トランジスタTrと、平坦化層150上に位置し、薄膜トランジスタTrに接続される有機発光ダイオードDとを含む。
【0048】
基板110は、ガラス基板であってもよく、薄いフレキシブルな基板であってもよく、高分子プラスチック基板であってもよい。例えば、フレキシブルな基板は、ポリイミド(PI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリカーボネート(PC)のうち、いずれか1つで形成することができる。その上部に薄膜トランジスタTrと有機発光ダイオードDの位置する基板110は、アレイ基板を成す。
【0049】
基板110上にバッファ層122が形成され、バッファ層122上に薄膜トランジスタTrが形成される。バッファ層122は省略してもよい。
【0050】
バッファ層122の上部に半導体層120が形成される。例えば、半導体層120は、酸化物半導体物質から形成することができる。半導体層120が酸化物半導体物質からなる場合、半導体層120の下部に遮光パターン(不図示)を形成することができる。遮光パターンは、半導体層120へ光が入射することを防止し、半導体層120が光によって劣化することを防止する。場合により、半導体層120は多結晶シリコンから形成することもできるが、この場合、半導体層120の両端部に不純物をドープすることもある。
【0051】
半導体層120の上部には、絶縁物質からなるゲート絶縁膜124が基板110の全面に形成される。ゲート絶縁膜124は、シリコン酸化物(SiOx)、またはシリコン窒化物(SiNx)(0<X≦2)のような無機絶縁物質から形成することができる。
【0052】
ゲート絶縁膜124の上部には、金属のような導電性物質からなるゲート電極130が半導体層120の中央に対応して形成される。
図2において、ゲート絶縁膜124は、基板110の全面に形成されているが、ゲート絶縁膜124は、ゲート電極130と同じ形にパターニングしてもよい。
【0053】
ゲート電極130の上部には、絶縁物質からなる層間絶縁膜132が基板110の全面に形成される。層間絶縁膜132は、シリコン酸化物(SiOx)やシリコン窒化物(SiNx)のような無機絶縁物質で形成してもよく、ベンゾシクロブテンやフォトアクリルのような有機絶縁物質で形成してもよい。
【0054】
層間絶縁膜132は、半導体層120の両側上面を露出する第1および第2半導体層コンタクトホール134、136を有する。第1および第2半導体層コンタクトホール134、136は、ゲート電極130の両側に、ゲート電極130と離間して位置する。ここで、第1および第2半導体層コンタクトホール134、136は、ゲート絶縁膜124内にも形成することができる。ゲート絶縁膜124がゲート電極130と同じ形にパターニングされる場合、第1および第2半導体層コンタクトホール134、136は、層間絶縁膜132内にのみ形成される。
【0055】
層間絶縁膜132の上部には、金属のような導電性物質からなるソース電極144とドレイン電極146が形成される。ソース電極144とドレイン電極146は、ゲート電極130を介在して離間して位置し、それぞれ第1および第2半導体層コンタクトホール134、136を介して、半導体層120の両側に接触する。
【0056】
半導体層120、ゲート電極130、ソース電極144、およびドレイン電極146は、薄膜トランジスタTrを構成し、薄膜トランジスタTrは、駆動素子として働く。
図2に示した薄膜トランジスタTrは、半導体層120の上部にゲート電極130、ソース電極144およびドレイン電極146が位置するコプラナ構造を有する。あるいは、薄膜トランジスタTrは、半導体層の下部にゲート電極が位置し、半導体層の上部にソース電極とドレイン電極が位置する逆スタッガード(Inverted staggered)構造を有することができる。この場合、半導体層は、非晶質シリコンからなることができる。
【0057】
図2に示していないが、ゲート配線GL(
図1を参照)とデータ配線DL(
図1を参照)が互いに交差して画素領域P(
図1を参照)を定義し、ゲート配線GLとデータ配線DLに接続されるスイッチング素子Ts(
図1を参照)がさらに形成される。スイッチング素子Tsは、駆動素子である薄膜トランジスタTrに接続される。また、パワー配線PL(
図1を参照)がデータ配線DLと平行に離間して形成され、1フレームの間に、駆動素子である薄膜トランジスタTrのゲート電極の電圧を一定に維持するためのストレージキャパシタCst(
図1を参照)がさらに形成されることができる。
【0058】
ソース電極144とドレイン電極146の上部には、平坦化層150が基板110の全面に形成される。平坦化層150は、その上面が平坦であり、薄膜トランジスタTrのドレイン電極146を露出するドレインコンタクトホール152を有する。ここで、ドレインコンタクトホール152は、第2半導体層コンタクトホール136の直上に形成されたものとして示しているが、第2半導体層コンタクトホール136と離間して形成されてもよい。
【0059】
有機発光ダイオードDは、平坦化層150上に位置し、薄膜トランジスタTrのドレイン電極146に接続される第1電極210と、第1電極210上に順次積層される発光層220および第2電極230とを含む。
【0060】
第1電極210は、画素領域毎に分離して形成される。第1電極210は、陽極(アノード)であり得る。また、第1電極210は、仕事関数が比較的に大きい導電性物質、例えば、透明導電性酸化物(transparent conductive oxide、TCO)から構成することができる。1つの例示的な側面において、本発明の有機発光表示装置100がボトムエミッションタイプである場合、第1電極210は透明導電性酸化物からなる単層構造を有することができる。
【0061】
他の例示的な側面において、本発明の有機発光表示装置100がトップエミッションタイプである場合は、第1電極210の下部に反射電極、または反射層をさらに形成することができる。例えば、反射電極、または反射層は、銀(Ag)、またはアルミニウム・パラジウム・銅(Aluminum Palladium Copper、APC)合金からなることができる。トップエミッションタイプである有機発光ダイオードDにおいて、第1電極210は、ITO/Ag/ITO、またはITO/APC/ITOの三層構造を有することができる。また、平坦化層150上には、第1電極210の端部を覆うバンク層160が形成される。バンク層160は、画素領域に対応し、第1電極210の中央を露出する。
【0062】
第1電極210上には、発光層220が形成される。1つの例示的な側面において、発光層220は、発光物質層(Emitting Material Layer、EML)の単層構造を有することができる。任意選択で、発光層220は、発光物質層と第1電極210の間に順次積層される正孔注入層(Hole Injection Layer、HIL)、正孔輸送層(Hole Transport Layer、HIL)、および/または電子遮断層(Electron Blocking Layer、EBL)と、発光物質層と第2電極230の間に順次積層される正孔遮断層(Hole Blocking Layer、HBL)、電子輸送層(Electron Transport Layer、ETL)、および/または電子注入層(Electron Injection Layer、EIL)とを含むことができる(
図3、
図8、
図11および
図14を参照)。また、発光層220を構成する発光部は1つであってもよく、2つ以上の発光部がタンデム構造を形成してもよい。
【0063】
発光層220が形成された基板110の上部に、第2電極230が形成される。第2電極230は、表示領域の全面に位置し、仕事関数が比較的に小さい導電性物質からなり、陰極(カソード)として用いることができる。有機発光表示装置100がトップエミッションタイプである場合、第2電極230はその厚さが薄く、光透過(半透過)特性を有する。
【0064】
第2電極230上には、外部の水分が有機発光ダイオードDへ浸透することを防ぐため、封止フィルム170(Encapsulation Film)が形成される。封止フィルム170は、第1無機絶縁層172と、有機絶縁層174と、第2無機絶縁層176の積層構造を有することができるが、これに限定されるものではない。
【0065】
有機発光表示装置100は、外部光の反射を減らすための偏光板をさらに含むことができる。例えば、偏光板は円形状であり得る。有機発光表示装置100がボトムエミッションタイプである場合、偏光板は基板110の下部に位置することができる。一方、有機発光表示装置100がトップエミッションタイプである場合、偏光板は封止フィルム170の上部に位置することができる。また、トップエミッションタイプの有機発光表示装置100では、封止フィルム170、または偏光板上にカバーウィンドウを取り付けることができる。このとき、基板110とカバーウィンドウがフレキシブルな素材からなる場合は、フレキシブル表示装置を構成することができる。
【0066】
本発明の第1側面に係る有機発光表示装置に適用できる有機発光ダイオードについて具体的に説明する。
図3は、本発明の第1実施形態に係る有機発光ダイオードを概略的に示す断面図である。
図3に示すように、本発明の第1実施形態に係る有機発光ダイオードD1は、互いに対向する第1電極210および第2電極230と、第1電極210と第2電極230の間に位置する発光層220とを含む。有機発光表示装置100(
図2を参照)は赤色の画素領域、緑色の画素領域、青色の画素領域を含み、有機発光ダイオードD1は青色の画素領域に位置することができる。
【0067】
例示的な側面において、発光層220は、第1電極210と第2電極230の間に位置する発光物質層240(EML)を含む。また、発光層220は、第1電極210と発光物質層240の間に位置する正孔輸送層260(HTL)と、発光物質層240と第2電極230の間に位置する電子輸送層270(ETL)のうち、少なくともいずれか1つを含むことができる。さらに、発光層220は、第1電極210と正孔輸送層260の間に位置する正孔注入層250(HIL)と、電子輸送層270と第2電極230の間に位置する電子注入層280(EIL)のうち、少なくともいずれか1つをさらに含むことができる。任意選択で、有機発光ダイオードD1は、発光物質層240と正孔輸送層260の間に位置する電子遮断層265(EBL)、および/または発光物質層240と電子輸送層270の間に位置する正孔遮断層275(HBL)を含むことができる。
【0068】
第1電極210は、発光物質層240に正孔を供給する陽極であり得る。第1電極210は、仕事関数が比較的に大きい導電性物質、例えば、透明導電性酸化物(TCO)から形成することができる。一例として、第1電極210は、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide、ITO)、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide、IZO)、インジウムスズ亜鉛酸化物(Indium Tin Zinc Oxide、ITZO)、スズ酸化物(SnO)、亜鉛酸化物(ZnO)、インジウム銅酸化物(Indium Copper Oxide、ICO)、およびアルミニウム:酸化亜鉛(Al:ZnO、AZO)から構成することができるが、これに限定されるものではない。
【0069】
第2電極230は、発光物質層240に電子を供給する陰極であり得る。第2電極230は、仕事関数が比較的に小さい導電性物質、例えばアルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、銀(Ag)、またはこれらの合金や組み合わせのように、反射特性のよい素材から構成することができるが、これに限定されるものではない。
【0070】
発光物質層240は、第1化合物DF(
図4を参照)と第2化合物FD(
図4を参照)を含み、任意選択で第3化合物H(
図4を参照)を含むことができる。例えば、第1化合物DFは遅延蛍光物質であり、第2化合物FDは蛍光物質であり、第3化合物Hはホストであり得る。
【0071】
発光物質層240で正孔と電子が結合し、励起子を形成する際、スピンの配列により、対スピンの一重項励起子(Singlet exciton)と不対スピンの三重項励起子(Triplet exciton)が1:3の割合で生成される。従来の蛍光物質は一重項励起子だけが発光に寄与するため、発光効率が低い。一方、燐光物質は一重項励起子の他に、三重項励起子も発光に寄与するが、発光寿命が短いため、使用できるレベルには達していない。
【0072】
第1化合物DFは、熱活性遅延蛍光(Thermally Activated Delayed Fluorescence、TADF)特性を有する遅延蛍光物質であり得る。遅延蛍光物質は、励起一重項エネルギー準位(S
1
DF)と励起三重項エネルギー準位(T
1
DF)との間のエネルギーバンドギャップ(ΔE
ST)が非常に狭い(
図7を参照)。そのため、遅延蛍光物質であり得る第1化合物DFにおいて、励起一重項エネルギー準位(S
1
DF)を持つ励起子と励起三重項エネルギー準位(T
1
DF)を持つ励起子は、分子内電荷移動(Intramolecular Charge Transfer、ICT)が可能な状態へ移動し(S
1→ICT←T
1)、そこから基底状態(S
0)へ遷移する(ICT→S
0)。
【0073】
三重項状態と一重項状態で共にエネルギー遷移が起こるためには、遅延蛍光物質における励起一重項エネルギー準位(S
1
DF)と励起三重項エネルギー準位(T
1
DF)との間のエネルギーバンドギャップ(ΔE
ST、
図7を参照)が0.3eV以下、例えば0.05eV~0.3eVでなければならない。一重項状態と三重項状態とのエネルギー差の小さい材料は、本来の一重項状態の励起子エネルギーが基底状態へ遷移する際に蛍光を示すだけでなく、常温レベルの熱エネルギーにより、三重項状態から、エネルギーのさらに高い一重項状態に遷移(up-conversion)される逆項間交差(Reverse Inter System Crossing、RISC)が起こり、一重項状態が基底状態へ遷移しながら遅延蛍光を示す。
【0074】
本発明により、発光物質層240に含まれる第1化合物DFは、電子供与体部分(moiety)と電子受容体部分(moiety)が、高い結合エネルギーを持つ炭素‐炭素結合を形成する。電子受容体部分(moiety)は、ホウ素原子と酸素原子を含む縮合環を形成し、電子供与体部分(moiety)は、少なくとも1つの窒素原子を有する多環式ヘテロ芳香族環を形成する。遅延蛍光特性を有する第1化合物DFは、下記化学式(1)の構造を有することができる。
【0075】
【0076】
化学式(1)中、R1とR2は、それぞれ独立して、水素原子、重水素、三重水素、ハロゲン原子、置換もしくは非置換C1~C20のアルキル基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルシリル基、置換もしくは非置換C6~C30の芳香族基、または置換もしくは非置換C3~C30のヘテロ芳香族基であり、aが複数である場合、各々のR1は同じであってもよく、相違してもよく、bが複数である場合、各々のR2は同じであってもよく、相違してもよい。任意選択で、aとbがそれぞれ複数である場合、隣接する2つのR1、および/または隣接する2つのR2は、それぞれ互いに結合し、置換もしくは非置換C6~C20の芳香族環、または置換もしくは非置換C3~C20のヘテロ芳香族環を形成することができる。Dは、下記化学式(2)または下記化学式(3)の構造を有する部分(moiety)である。R1とR2がそれぞれ水素原子である場合、aとbはそれぞれ4であり、R1とR2がそれぞれ水素原子でない場合、aとbは、それぞれ独立して、0~4の整数である。
【0077】
【0078】
化学式(2)中、R3は、置換もしくは非置換C6~C30の芳香族基、または置換もしくは非置換C3~C30のヘテロ芳香族基である。R4とR5は、それぞれ独立して、水素原子、重水素、三重水素、ハロゲン原子、置換もしくは非置換C1~C20のアルキル基、置換もしくは非置換C1~C20のヘテロアルキル基、置換もしくは非置換C2~C20のアルケニル基、置換もしくは非置換C2~C20のヘテロアルケニル基、置換もしくは非置換C2~C20のアルキニル基、置換もしくは非置換C2~C20のヘテロアルキニル基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルシリル基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換C1~C20のアルコキシ基、カルボキシル基、シアノ基、スルファニル基、ホスフィン基、置換もしくは非置換C3~C20の脂環族基、置換もしくは非置換C3~C20のヘテロ脂環族基、置換もしくは非置換C6~C30の芳香族基、または置換もしくは非置換C3~C30のヘテロ芳香族基であり、mが複数である場合、各々のR4は同じであってもよく、相違してもよく、nが複数である場合、各々のR5は同じであってもよく、相違してもよい。任意選択で、mとnがそれぞれ複数である場合、隣接する2つのR4、および/または隣接する少なくとも2つのR5は、それぞれ互いに結合し、置換もしくは非置換C6~C20の芳香族環、または置換もしくは非置換C3~C20のヘテロ芳香族環を形成することができる。X1~X4のうち、1つは化学式(1)のホウ素原子および酸素原子を含むヘテロ環に結合する炭素原子であり、残りはそれぞれ独立して、CR4もしくは窒素原子である。Y1は単結合をするCR6もしくはNであり、R6は、水素原子、重水素、三重水素、置換もしくは非置換C1~C20のアルキル基である。mは0~3の整数であり、nは0~4の整数であり、星印は結合部位を示す。
【0079】
【0080】
【0081】
化学式(2)中、R3は、置換もしくは非置換C6~C30の芳香族基、または置換もしくは非置換C3~C30のヘテロ芳香族基である。R4とR5は、それぞれ独立して、水素原子、重水素、三重水素、ハロゲン原子、置換もしくは非置換C1~C20のアルキル基、置換もしくは非置換C1~C20のヘテロアルキル基、置換もしくは非置換C2~C20のアルケニル基、置換もしくは非置換C2~C20のヘテロアルケニル基、置換もしくは非置換C2~C20のアルキニル基、置換もしくは非置換C2~C20のヘテロアルキニル基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルシリル基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換C1~C20のアルコキシ基、カルボキシル基、シアノ基、スルファニル基、ホスフィン基、置換もしくは非置換C3~C20の脂環族基、置換もしくは非置換C3~C20のヘテロ脂環族基、置換もしくは非置換C6~C30の芳香族基、または置換もしくは非置換C3~C30のヘテロ芳香族基であり、mが複数である場合、各々のR4は同じであってもよく、相違してもよく、nが複数である場合、各々のR5は同じであってもよく、相違してもよい。任意選択で、mとnがそれぞれ複数である場合、隣接する2つのR4、および/または隣接する少なくとも2つのR5は、それぞれ互いに結合し、置換もしくは非置換C6~C20の芳香族環、または置換もしくは非置換C3~C20のヘテロ芳香族環を形成することができる。X1~X4のうち、1つは化学式(1)のホウ素原子および酸素原子を含むヘテロ環に結合する炭素原子であり、残りはそれぞれ独立して、CR4もしくは窒素原子である。Y1は単結合をする。mは0~3の整数であり、nは0~4の整数であり、星印は結合部位を示す。
【0082】
化学式(4)中、R7は、重水素、三重水素、置換もしくは非置換C1~C20のアルキル基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換C6~C30の芳香族基、または置換もしくは非置換C3~C30のヘテロ芳香族基であり、pが複数である場合、各々のR7は同じであってもよく、相違してもよい。任意選択で、pが複数である場合、隣接する2つのR7は、それぞれ互いに結合し、置換もしくは非置換C6~C20の芳香族環、または置換もしくは非置換C3~C20のヘテロ芳香族環を形成することができる。R8とR9は、それぞれ独立して、水素原子、重水素、三重水素、置換もしくは非置換C1~C20のアルキル基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換C6~C30の芳香族基、または置換もしくは非置換C3~C30のヘテロ芳香族基であり、あるいは、任意選択で、R8とR9は、それぞれ互いに結合し、置換もしくは非置換C6~C20の芳香族環、または置換もしくは非置換C3~C20のヘテロ芳香族環を形成することができる。pは、0~3の整数である。
【0083】
本明細書における「非置換」は、水素原子が結合していることを意味する。
【0084】
本明細書における「置換」が指す置換基は、重水素、三重水素、非置換もしくはヒドロキシ基、カルボニル基、およびハロゲン原子のうち、少なくとも1つで置換されたC1~C20のアルキル基、非置換もしくはハロゲン原子で置換されたC1~C20のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、C1~C20のアルキルアミノ基、C6~C30のアリールアミノ基、C3~C30のヘテロアリールアミノ基、C6~C30のアリール基、C3~C30のヘテロアリール基、ニトロ基、ヒドラジル基、スルホン基を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0085】
本明細書において、C1~C20の鎖式脂肪族炭化水素は、C1~C20のアルカン、C2~C20のアルケン、C2~C30のアルキンなどから水素原子を1つ抜いたアルキニル基、アルケニル基、アルキニル基である、またはC1~C20のアルコキシ基を含むことができる。これらの鎖式脂肪族炭化水素は、非置換であってもよく、置換されてもよい。
【0086】
本明細書における「アルキル基」は、炭素原子数1~20の直鎖状、または分岐状の飽和炭化水素を指し、メチル基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基などを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0087】
本明細書における「アルケニル基」は、少なくとも1つの炭素‐炭素二重結合を有する炭素原子数2~20の炭化水素基である。また、本明細書における「アルキニル基」は、少なくとも1つの炭素‐炭素三重結合を有する炭素原子数2~20の炭化水素基である。
【0088】
本明細書における「アルコキシ基」は、-O(-アルキル)で表されるエーテル結合を持つ直鎖状、または分岐状のアルキル基を指す。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert-ブトキシ基を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0089】
本明細書における「脂環族」または「シクロアルキル」は、少なくとも3つの炭素原子を有する非芳香族炭素系環を意味する。例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、およびノルボニル基を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0090】
本明細書における「ヘテロ芳香族」や「ヘテロ脂環族」などの「ヘテロ」は、芳香族環、または脂環族環を構成する少なくとも1つの炭素原子、例えば、1つ~5つの炭素原子が、窒素(N)、酸素(O)、硫黄(S)、リン(P)およびこれらの組み合わせで構成される群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子で置換されたものを意味する。
【0091】
本明細書における「芳香族」または「ヘテロ芳香族」は、共有結合を持つ単環芳香族/ヘテロ芳香族、または縮合多環芳香族/ヘテロ芳香族を含むことができる。例えば、C6~C30の芳香族は、C6~C30のアリール基、C7~C30のアラルキル基、C6~C30のアリールオキシ基、C6~C30のアリールアミノ基、C7~C30のアリールエステル基、およびC8~C30のビニルアリール基を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0092】
例えば、C6~C30の芳香族基、またはC6~C30のアリール基は、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ペンタレニル基、インデニル基、インデノインデニル基、ヘプタレニル基、ビフェニルレニル基、インダセニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、ベンゾフェナントレニル基、ジベンゾフェナントレニル基、アズレニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニルレニル基、クリセニル基、テトラフェニル基、テトラセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、フルオレニル基、インデノフルオレニル基、またはスピロフルオレニル基のような、縮合または非縮合のアリール基であり得るが、これに限定されるものではない。
【0093】
C3~C30のヘテロ芳香族基は、C3~C30のヘテロアリール基、C4~C30のヘテロアラルキル基、C3~C30のヘテロアリールオキシ基、C3~C30のヘテロアリールアミノ基、C4~C30のヘテロアリールエステル基、およびC5~C30のヘテロビニルアリール基を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0094】
例えば、C3~C30のヘテロ芳香族基、またはC3~C30のヘテロアリール基は、ピロリル基、ピリジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、テトラジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、インドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、インドリジニル基、ピロリジニル基、カルバゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、ジベンゾカルバゾリル基、インドロカルバゾリル基、インデノカルバゾリル基、ベンゾフロカルバゾリル基、ベンゾチエノカルバゾリル基、キノリニル基、イソキノリニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、シノリニル基、キナゾリニル基、キノゾリニル基、キノリジニル基、プリニル基、ベンゾキノリニル基、ベンゾイソキノリニル基、ベンゾキナゾリニル基、ベンゾキノキサリニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、ペリミジニル基、フェナントレジニル基、プテリジニル基、ナフタリジニル基、フラニル基、ピラニル基、オキサジニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアゾリル基、ジオキシニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、チオピラニル基、ザンテニル基、クロメニル基、イソクロメニル基、チオアジニル基、チオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基、ジフロピラジニル基、ベンゾフロジベンゾフラニル基、ベンゾチエノベンゾチオフェニル基、ベンゾチエノジベンゾチオフェニル基、ベンゾチエノベンゾフラニル基、ベンゾチエノジベンゾフラニル基、またはN-置換されたスピロフルオレニル基、スピロフルオレノアクリジニル基、スピロフルオレノザンテニル基のような、縮合または非縮合のヘテロアリール基であり得るが、これに限定されるものではない。
【0095】
本明細書における「アルキルアミノ」、「脂環族アミノ」、「ヘテロ脂環族アミノ」、「芳香族アミノ」「ヘテロ芳香族アミノ」は、それぞれ、-NH(-アルキル)もしくは-N(アルキル)2、‐NH(-脂環族)もしくは-N(脂環族)2、-NH(-ヘテロ脂環族)もしくは-N(ヘテロ脂環族)2、-NH(-芳香族)もしくは-N(芳香族)2、-NH(-ヘテロ芳香族)もしくは-N(ヘテロ芳香族)2で表される群を指す。
【0096】
例えば、-NH(‐アルキル)で表されるアルキルアミノ基は、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、(sec-ブチル)アミノ基、(tert-ブチル)アミノ基、ペンチルアミノ基、イソペンチルアミノ基、(tert-ペンチル)アミノ基、ヘキシルアミノ基などを含むことができるが、これに限定されるものではない。また、-N(アルキル)2で表されるアルキルアミノ基は、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ(sec-ブチル)アミノ基、ジ(tert-ブチル)アミノ基、ジペンチルアミノ基、ジイソペンチルアミノ基、ジ(tert-ペンチル)アミノ基、ジヘキシルアミノ基、N-エチル-N-メチルアミノ基、N-メチル-N-プロピルアミノ基、N-エチル-N-プロピルアミノ基などを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0097】
一方、化学式(2)中、隣接する2つのR4および隣接する2つのR5、化学式(4)中、隣接する2つのR7、およびR8とR9が、それぞれ互いに結合し、形成することができるC6~C20の芳香族環、およびC3~C20のヘテロ芳香族環は、特に限定されるものではない。例えば、隣接する2つのR4および隣接する2つのR5、化学式(4)中、隣接する2つのR7、およびR8とR9が、それぞれ互いに結合し、形成することができるC6~C20の芳香族環、およびC3~C20のヘテロ芳香族環は、それぞれ非置換、もしくは置換することができるベンゼン環、ナフチル環、アントラセン環、フェナントレン環、インデン環、フルオレン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、およびこれらの組み合わせを含むことができる。
【0098】
例示的な側面において、化学式(2)中、隣接する2つのR4および隣接する2つのR5、化学式(4)中、隣接する2つのR7、およびR8とR9が、それぞれ互いに結合し、形成することができるC6~C20の芳香族環、およびC3~C20のヘテロ芳香族環は、非置換、もしくは置換することができるヘテロ芳香族環、例えば、2つ以上の環が縮合したヘテロ芳香族環であり得る。例えは、隣接する2つのR4および隣接する2つのR5、化学式(4)中、隣接する2つのR7、およびR8とR9が、それぞれ結合し、形成することができるC3~C20のヘテロ芳香族環は、それぞれ非置換、もしくは置換することができるインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、およびこれらの組み合わせを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0099】
例えば、電子供与体として働く化学式(2)、または化学式(3)の構造を有するヘテロ芳香族部分(moiety)は、それぞれ非置換、もしくは置換されたインデノカルバゾリル部分(moiety)、インドロカルバゾリル部分(moiety)、ベンゾフロカルバゾリル部分(moiety)および/またはベンゾチエノカルバゾリル部分(moiety)を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0100】
例えば、化学式(1)~化学式(4)中、R1~R9をそれぞれ構成する、またはこれらが結合して形成することができるC3~C20の脂環族基、C3~C20のヘテロ脂環族基、C6~C30の芳香族基、C3~C30のヘテロ芳香族基、C6~C30の芳香族環、およびC3~C30の縮合ヘテロ芳香族環は、それぞれ独立して、非置換、もしくはC1~C20のアルキル基、一例としてC1~C10のアルキル基(例えば、t‐ブチルのようなC1~C5のアルキル基)、C6~C30のアリール基(例えば、フェニル基のようなC6~C15のアリール基)、C3~C30のヘテロアリール基(例えば、ピリジルのようなC3~C15のヘテロアリール基)およびC6~C30のアリールアミノ基、一例としてC6~C20のアリールアミノ基(例えば、ジフェニルアミノ基)で構成される群から選択される少なくとも1つの官能基で置換することができる。
【0101】
化学式(1)中、ホウ素原子と酸素原子を含む縮合環が電子受容体部分(moiety)として働き、化学式(2)または化学式(3)の構造を有する少なくとも1つの窒素原子を持つ縮合ヘテロ芳香族環が電子供与体部分(moiety)として働く。したがって、化学式(1)の構造を有する有機化合物は、遅延蛍光特性を有する。
【0102】
電子供与体部分(moiety)と電子受容体部分(moiety)は、強い結合エネルギーを有する炭素-炭素結合を形成し、熱安定性に優れる。したがって、第1化合物DFが発光する間にも、高い解離エネルギーを有する炭素-炭素結合を形成した電子供与体部分(moiety)と電子受容体部分(moiety)は、安定した分子構造を保つことができる。さらに、安定した炭素-炭素結合により、電子供与体部分(moiety)と電子受容体部分(moiety)の回転が制限され、両者の間に大きな立体障害が生じる。
【0103】
そのため、化学式(1)の構造を有する第1化合物DFは、逆項間交差(RISC)を通じ、三重項励起子が一重項励起子に素早く遷移(up-conversion)できる。遅延蛍光特性を有する第1化合物DFは、発光効率に優れており、特に、第2化合物FDと併用する場合、第1化合物DFから第2化合物FDへと励起子エネルギーが素早く移動し、発光特性が大きく向上した超蛍光を実現することができる。
【0104】
例示的な側面において、化学式(1)のR1とR2は、それぞれ水素原子であり、化学式(2)のX1~X4のうち、1つは化学式(1)のホウ素原子および酸素原子を含むヘテロ環に結合する炭素原子であり、残りはそれぞれ独立して、CR4であり得る。
【0105】
例えば、化学式(1)のR1とR2は、それぞれ水素原子であり、化学式(1)のDは、下記化学式(5)の構造を有する部分(moiety)であり得る。
【0106】
【0107】
化学式(5)中、R13は、置換もしくは非置換C6~C30のアリール基、または置換もしくは非置換C3~C30のヘテロアリール基である。R14とR15は、それぞれ独立して、重水素、三重水素、ハロゲン原子、置換もしくは非置換C1~C20のアルキル基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換C6~C30のアリール基、または置換もしくは非置換C3~C30のヘテロアリール基であり、mが複数である場合、各々のR14は同じであってもよく、相違してもよく、nが複数である場合、各々のR15は同じであってもよく、相違してもよい。任意選択で、mとnがそれぞれ複数である場合、隣接する2つのR14、および/または隣接する少なくとも2つのR15は、それぞれ互いに結合し、置換もしくは非置換C6~C20の芳香族環、または置換もしくは非置換C3~C20のヘテロ芳香族環を形成することができる。mは0~3の整数であり、nは0~4の整数であり、星印は結合部位を示す。
【0108】
例えば、化学式(5)中、R13~R15をそれぞれ構成し、または互いに結合し、形成することができるC6~C30のアリール基、C3~C30のヘテロアリール基、C6~C20の芳香族環、およびC3~C20のヘテロ芳香族環は、それぞれ独立して、非置換であってもよく、C1~C20のアルキル基、C6~C30のアリール基、C3~C30のヘテロアリール基、C6~C30のアリールアミノ基、およびC3~C30のヘテロアリールアミノ基で構成される群から選択される少なくとも1つの官能基で置換されてもよい。
【0109】
第1化合物DFの電子供与体部分(moiety)が化学式(5)の構造を有する場合、5員環を含み、第1化合物DFの熱安定性がさらに向上することができる。例えば、化学式(1)~化学式(5)の構造を有する第1化合物DFは、下記化学式(6)の構造を有する有機化合物(1-1)~(1-18)から選択されるいずれか1つを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0110】
【0111】
遅延蛍光物質であり得る第1化合物DFは、励起一重項エネルギー準位(S
1
DF)と励起三重項エネルギー準位(T
1
DF)の差(ΔE
ST)が非常に小さく(0.3eV以下、
図7を参照)、逆項間交差(RISC)により、第1化合物DFの三重項励起子エネルギーが一重項励起子エネルギーに変換されるため、量子効率が良好である。
【0112】
ところが、化学式(1)~化学式(6)の構造を有する第1化合物DFは、電子供与体‐電子受容体の結合構造により、ねじれた構造を有する。また、第1化合物DFは、三重項励起子を利用するため、さらなる電荷移動遷移(Charge Transfer Transition、CT Transition)が引き起こされる。CT発光メカニズムに起因する発光特性により、化学式(1)~化学式(6)の構造を有する第1化合物DFは、その半値幅(Full Width at Half Maximum、FWHM)が広く、色純度の面において限界がある。
【0113】
また、第1化合物DFの励起一重項エネルギー準位(S1
DF)にある励起子の一部は、項間交差(Inter System Crossing、ISC)により、励起三重項エネルギー準位(T1
DF1)に遷移する。そして、第1化合物DFにおいて、逆項間交差(RISC)によって励起三重項エネルギー準位(T1
DF)から励起一重項エネルギー準位(S1
DF)へ遷移できず、励起三重項エネルギー準位(T1
DF)に残留する三重項励起子が生成される。かかる三重項励起子は、周辺の三重項励起子、またはポーラロンと相互作用し、三重項-三重項消滅(Triplet-Triplet annhilation、TTA)または三重項-ポーラロン消滅(Triplet-Polaron annhilation 、TPA)によって消光(クエンチ)する。すなわち、発光物質層240が第1化合物DFのみを含む場合、第1化合物DFの三重項励起子エネルギーは発光に寄与することができない。さらに、TTAとTPAのような消光過程により、有機発光ダイオードの発光寿命が低下することがある。
【0114】
遅延蛍光物質である第1化合物DFの発光特性を最大化できるよう、発光物質層240は、蛍光物質であり得る第2化合物FDを含み、超蛍光(Hyperfluorescence)を実現する。前述したとおり、遅延蛍光物質である第1化合物DFは、一重項励起子エネルギーと三重項励起子エネルギーを利用することができる。したがって、発光物質層240が、遅延蛍光物質である第1化合物DFに比べ、適切なエネルギー準位を有する蛍光物質を第2化合物FDに含むと、第1化合物DFから放出された励起子エネルギーを第2化合物FDが吸収し、第2化合物FDが吸収したエネルギーは、100%の確率で一重項励起子のみを生成し、発光効率を最大化することができる。
【0115】
発光物質層240に含まれた遅延蛍光物質である第1化合物DFの三重項励起子エネルギーから遷移(up-conversion)された一重項励起子エネルギーと、本来の一重項励起子エネルギーを含む第1化合物DFの一重項励起子エネルギーは、フェルスター共鳴エネルギー移動(Forster Resonance Energy Transfer、FRET)のメカニズムにより、同一の発光物質層内の蛍光物質である第2化合物FDへ移動し、第2化合物FDで最終的な発光が起こる。第1化合物DFで生成された励起子エネルギーが第2化合物FDへ効率的に移動するよう、第1化合物DFの発光波長帯に対する吸収波長帯の重なる部分が大きい化合物を第2化合物FDとして用いることができる。最終的に発光する第2化合物FDは、半値幅が狭いため、色純度を向上させることができ、発光寿命に優れているため、発光素子の寿命を向上させることができる。
【0116】
発光物質層240に含まれる第2化合物FDは、青色を発する蛍光物質であり得る。例えば、発光物質層240に含まれる第2化合物FDは、半値幅(FWHM)が35nm以下のホウ素系蛍光物質であり得る。一例として、ホウ素系蛍光物質である第2化合物FDは、下記化学式(7)の構造を有することができる。
【0117】
【0118】
化学式(7)中、R21~R24は、それぞれ独立して、水素、重水素、三重水素、ハロゲン原子、置換もしくは非置換C1~C20のアルキル基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルシリル基、置換もしくは非置換C6~C30の芳香族基、または置換もしくは非置換C3~C30のヘテロ芳香族基であり、任意選択で、R21~R24のうち、隣接する2つが互いに結合し、ホウ素および窒素を有する置換もしくは非置換の縮合環を形成することができる。R25~R28は、それぞれ独立して、水素原子、重水素、三重水素、ハロゲン原子、置換もしくは非置換C1~C20のアルキル基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルシリル基、置換もしくは非置換C6~C30の芳香族基、または置換もしくは非置換C3~C30のヘテロ芳香族基であり、qが複数である場合、各々のR25は同じであってもよく、相違してもよく、rが複数である場合、各々のR26は同じであってもよく、相違してもよい。また、sが複数である場合、R27は同じであってもよく、相違してもよく、tが複数である場合、R28は同じであってもよく、相違してもよい。qとsは、それぞれ独立して、0~5の整数であり、rは0~3の整数であり、tは0~4の整数である。
【0119】
例えば、化学式(7)中、R21~R28をそれぞれ構成するC6~C30の芳香族基およびC3~C30のヘテロ芳香族基は、それぞれ独立して、非置換であってもよく、重水素、三重水素、C1~C20のアルキル基、C6~C30のアリール基、C3~C30のヘテロアリール基、C6~C30のアリールアミノ基、およびC3~C30のヘテロアリールアミノ基から構成される群から選択される少なくとも1つの官能基で置換されてもよい。
【0120】
化学式(1)~化学式(4)と同様に、化学式(7)中、R21~R28をそれぞれ構成することができるC6~C30の芳香族基は、C6~C30のアリール基、C7~C30のアラルキル基、C6~C30のアリールオキシ基、およびC6~C30のアリールアミノ基を含むことができる。また、化学式(7)中、R21~R28をそれぞれ構成することができるC3~C30のヘテロ芳香族は、C3~C30のヘテロアリール基、C4~C30のヘテロアラルキル基、C3~C30のヘテロアリールオキシ基、およびC3~C30のヘテロアリールアミノ基を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0121】
化学式(7)の構造を有するホウ素系化合物は、発光特性に優れている。化学式(7)の構造を有するホウ素系化合物は、広い板状構造をしているため、第1化合物DFからの励起子エネルギー移動を効率的に受けることができ、発光効率を最大化することができる。
【0122】
例示的な側面において、化学式(7)のR21~R24は、互いに結合しなくてもよい。任意選択で、化学式(7)のR22とR23が互いに結合し、ホウ素原子および窒素原子を有する縮合環を形成することができる。例えば、第2化合物FDは、下記化学式(8A)~(8C)の構造を有するホウ素系有機化合物を含むことができる。
【0123】
【0124】
化学式(8A)~(8C)中、R21、R25~R28、R31~R34は、それぞれ独立して、水素、重水素、三重水素、ハロゲン原子、置換もしくは非置換C1~C20のアルキル基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルシリル基、置換もしくは非置換C1~C20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換C6~C30のアリール基、または置換もしくは非置換C3~C30のヘテロアリール基である。
【0125】
化学式(8A)~(8C)中、R21、R25~R28およびR31~R34を構成するC6~C30のアリール基およびC3~C30のヘテロアリール基は、それぞれ独立して、非置換であってもよく、重水素、三重水素、C1~C20のアルキル基、C6~C30のアリール基、C3~C30のヘテロアリール基、C6~C30のアリールアミノ基、およびC3~C30のヘテロアリールアミノ基で構成される群から選択される少なくとも1の官能基で置換されてもよい。
【0126】
他の例示的な側面において、ホウ素系有機化合物である第2化合物FDは、下記化学式(9)の構造を有する有機化合物(2-1)~(2-33)から選択されるいずれか1つを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0127】
【0128】
一方、発光物質層240に含まれ得る第3化合物Hは、第1化合物DF、および/または第2化合物FDと比べ、HOMOエネルギー準位とLUMOエネルギー準位との間のエネルギーバンドギャップ(Eg)の広い任意の有機化合物を含むことができる。発光物質層240が、ホストであり得る第3化合物Hを含む場合、第1化合物DFは第1ドーパントであり、第2化合物FDは第2ドーパントであり得る。
【0129】
例示的な側面において、発光物質層240に含まれ得る第3化合物Hは、4,4’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル;CBP、3,3’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル;mCBP、1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン;mCP、9-(3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル)-9H-カルバゾール-3-カルボニトリル;mCP-CN、オキシビス(2,1-フェニレン)ビス(ジフェニルホスフィンオキシド);DPEPO、2,8-ビス(ジフェニルホスホリル)ジベンゾチオフェン;PPT、1,3,5-トリ[(3-ピリジル)-フェン-3-イル]ベンゼン;TmPyPB、2,6-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)ピリジン;PYD-2Cz、2,8-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)ジベンゾチオフェン;DCzDBT、3’,5’-ジ(カルバゾール-9-イル)-[1,1’-ビフェニル]-3,5-ジカルボニトリル;DCzTPA、4’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3,5-ジカルボニトリル;pCzB-2CN、3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3,5-ジカルボニトリル;mCzB-2CN、ジフェニル-4-トリフェニルシリルフェニル-ホスフィンオキシド;TPS01、9-(9-フェニル-9H-カルバゾール-6-イル)-9H-カルバゾール;CCP、4-(3-(トリフェニレン-2-イル)フェニル)ジベンゾ[b,d]チオフェン、9-(4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル)-9H-3,9’-ビカルバゾール、9-(3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル)-9H-3,9’-ビカルバゾール、9-(6-(9H-カルバゾール-9-イル)ピリジン-3-イル)-9H-3,9’-ビカルバゾール、およびこれらの組み合わせを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0130】
例示的な側面において、発光物質層240(EML)が第1化合物DF、第2化合物FD、および第3化合物Hを含む場合、発光物質層240内の第3化合物Hの含有量は、第1化合物DFの含有量より大きく、第1化合物DFの含有量は、第2化合物FDの含有量より大きくてもよい。第1化合物DFの含有量が第2化合物FDの含有量より大きい場合、第1化合物DFから第2化合物FDへとFRETメカニズムにより励起子エネルギーが十分に移動することができる。一例として、発光物質層240(EML)中、第3化合物Hは約55重量%~約85重量%、第1化合物DFは約10重量%~約40重量%、例えば約10重量%~約30重量%、第2化合物FDは約0.1重量%~約5重量%、例えば約0.1重量%~約2重量%で含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0131】
例示的な側面において、ホストである第3化合物Hと、遅延蛍光物質である第1化合物DFと、蛍光物質である第2化合物FDのHOMOエネルギー準位、および/またはLUMOエネルギー準位を適切に調節しなければならない。例えば、超蛍光を実現するため、ホストは、遅延蛍光物質における三重項状態の励起子が消光(非発光消滅、クエンチ)せずに発光に寄与できるよう誘導しなければならない。そのため、ホストである第3化合物H、遅延蛍光物質である第1化合物DF、蛍光物質である第2化合物FDのエネルギー準位を調節する必要がある。
【0132】
図4は、本発明の第1実施形態に係る有機発光ダイオードD1において、発光物質層を構成する第1化合物および第2化合物を中心に、発光物質のエネルギー準位を調節し、電荷が効率的に移動する状態を概略的に示す模式図である。
【0133】
図4に示すように、ホストであり得る第3化合物HのHOMOエネルギー準位(HOMO
H)は、遅延蛍光物質であり得る第1化合物DFのHOMOエネルギー準位(HOMO
DF)より深く、第3化合物HのLUMOエネルギー準位(LUMO
H)は、第1化合物DFのLUMOエネルギー準位(LUMO
DF)より浅くあり得る。言い換えると、第3化合物HのHOMOエネルギー準位(HOMO
H)とLUMOエネルギー準位(LUMO
H)との間のエネルギーバンドギャップは、第1化合物DFのHOMOエネルギー準位(HOMO
DF)とLUMOエネルギー準位(LUMO
DF)との間のエネルギーバンドギャップより広くてもよい。
【0134】
一例として、発光物質層(EML)において、ホストであり得る第3化合物HのHOMOエネルギー準位(HOMOH)と、遅延蛍光物質であり得る第1化合物DFのHOMOエネルギー準位(HOMODF)の差(│HOMOH-HOMODF│)、または第3化合物HのLUMOエネルギー準位(LUMOH)と、第1化合物DFのLUMOエネルギー準位(LUMODF)の差(│LUMOH-LUMODF│)は、約0.5eV以下、例えば、約0.1eV~約0.5eVであり得る。この場合、第3化合物Hから第1化合物DFへの電荷移動、および/または電荷注入効率が向上し、有機発光ダイオードD1の発光効率が向上することができる。
【0135】
例示的な側面において、第1化合物DFのHOMOエネルギー準位(HOMODF)と、第2化合物FDのHOMOエネルギー準位(HOMOFD)との間のエネルギーバンドギャップ(ΔHOMO-1)は、下記式(I)を満たす。
│HOMOFD-HOMODF│<0.3eV…(I)
【0136】
第1化合物DFのHOMOエネルギー準位(HOMODF)と、第2化合物FDのHOMOエネルギー準位(HOMOFD)との間のエネルギーバンドギャップ(ΔHOMO-1)が式(I)を満たす場合、発光物質層240へ注入された正孔は、第1化合物DFへ素早く移動することができる。それにより、第1化合物DFは、本来の一重項励起子エネルギーと、逆項間交差(RISC)メカニズムにより三重項励起子エネルギーから遷移した一重項励起子エネルギーを全て利用し、100%の内部量子効率を実現することができ、第2化合物FDへ励起子エネルギーが効率的に移動することができる。例えば、第1化合物DFのHOMOエネルギー準位(HOMODF)と、第2化合物FDのHOMOエネルギー準位(HOMOFD)は、下記式(II)を満たすことができるが、これに限定されるものではない。
│HOMOFD-HOMODF│≦0.2eV…(II)
【0137】
他の例示的な側面において、第1化合物DFのLUMOエネルギー準位(LUMODF)は、第2化合物FDのLUMOエネルギー準位(LUMOFD)に比べ、浅くてもよく、同一であってもよい。例えば、第1化合物DFのLUMOエネルギー準位(LUMODF)と、第2化合物FDのLUMOエネルギー準位(LUMOFD)は、下記式(III)を満たすことができる。
0≦LUMODF-LUMOFD≦0.3eV…(III)
【0138】
第1化合物DFのLUMOエネルギー準位(LUMODF)と、第2化合物FDのLUMOエネルギー準位(LUMOFD)が式(III)を満たす場合、発光物質層240へ注入された電子は、第1化合物DFへ素早く移動することができる。例えば、第1化合物DFのLUMOエネルギー準位(LUMODF)と、第2化合物FDのLUMOエネルギー準位(LUMOFD)は、下記式(IV)を満たすことができる。
0≦LUMODF-LUMOFD≦0.2eV…(IV)
【0139】
遅延蛍光物質である第1化合物DFで励起子の再結合が起こり得る。したがって、逆項間交差(RISC)メカニズムを介し、100%の内部量子効率を実現することができる。第1化合物DFで逆項間交差(RISC)を介して生成された一重項励起子エネルギーは、FRETを介して蛍光物質である第2化合物FDへ移動し、第2化合物FDで効率的な発光が起こり得る。
【0140】
例えば、第1化合物DFのHOMOエネルギー準位(HOMODF)は、約-5.4eV~約-5.7eVであり、第1化合物DFのLUMOエネルギー準位(LUMODF)は、約-2.7eV~約-3.0eVであり得るが、これに限定されるものではない。第2化合物FDのHOMOエネルギー準位(HOMOFD)は、約-5.3eV~約-5.7eVであり、第2化合物FDのLUMOエネルギー準位(LUMOFD)は、約-2.7eV~約-3.0eVであり得るが、これに限定されるものではない。
【0141】
第1化合物DFのHOMOエネルギー準位(HOMODF)とLUMOエネルギー準位(LUMODF)との間のエネルギーバンドギャップは、第2化合物FDのHOMOエネルギー準位(HOMOFD)とLUMOエネルギー準位(LUMOFD)との間のエネルギーバンドギャップより広くてもよい。例示的な側面において、第1化合物DFのHOMOエネルギー準位(HOMODF)とLUMOエネルギー準位(LUMODF)との間のエネルギーバンドギャップは、約2.6eV以上、約3.1eV以下、例えば、約2.7eV以上、約3.0eV以下であり得る。第2化合物FDのHOMOエネルギー準位(HOMOFD)とLUMOエネルギー準位(LUMOFD)のバンドギャップは、約2.4eV以上、約2.9eV以下、例えば、約2.5eV以上、約2.8eV以下であり得る。この場合、第1化合物DFで生成された励起子エネルギーが第2化合物FDへ効率的に遷移し、最終的に第2化合物FDで十分な発光が起こり得る。
【0142】
図5は、発光物質層を構成する第1化合物および第2化合物のHOMOエネルギー準位を調節していないとき、正孔が第2化合物にトラップされる問題を概略的に示す模式図である。
図5に示すように、第1化合物DFのHOMOエネルギー準位(HOMO
DF)と第2化合物FDのHOMOエネルギー準位(HOMO
FD)との間のエネルギーバンドギャップ(ΔHOMO-2)が、0.3eV以上である場合、発光物質層240へ注入された正孔は、蛍光物質である第2化合物FDにトラップされる。すなわち、発光物質層240へ注入された正孔は、ホストである第3化合物Hから遅延蛍光物質である第1化合物DFへ移動しない。発光効率に優れている第1化合物DFで励起子が形成されず、第2化合物FDにトラップされた正孔が直接再結合して励起子を形成し、発光する。第1化合物DFの三重項励起子エネルギーは発光に寄与することができず、非発光消滅するため、発光効率が減少する。
【0143】
図6は、発光物質層を構成する第1化合物並びに第2化合物のHOMOエネルギー準位およびLUMOエネルギー準位を調節していないとき、正孔が第2化合物にトラップされ、第1化合物と第2化合物の間に励起複合体が形成される問題を概略的に示す模式図である。
図6に示すように、第1化合物DFのHOMOエネルギー準位(HOMO
DF)と第2化合物FDのHOMOエネルギー準位(HOMO
FD)との間のエネルギーバンドギャップ(ΔHOMO-3)が、0.5eV以上である場合、発光物質層240へ注入された正孔は、蛍光物質である第2化合物FDにトラップされる。
【0144】
また、第1化合物DFのLUMOエネルギー準位(LUMODF)が第2化合物FDのLUMOエネルギー準位(LUMOFD)より深い場合(すなわち、LUMOFD-LUMODF>0である場合)、第2化合物FDにトラップされた正孔と、第1化合物DFへ移動した電子が励起複合体を形成する。第1化合物DFの三重項励起子エネルギーが非発光消滅し、発光効率が減少する上に、励起複合体を形成するLUMOエネルギー準位とHOMOエネルギー準位のバンドギャップが非常に狭くなり、長波長帯域の光が発光する。第1化合物DFと第2化合物FDが同時に発光するため、半値幅が広くなり、色純度が低下する。
【0145】
続いて、本発明の第1実施形態に係る発光物質層240における発光メカニズムについて説明する。
図7は、本発明の第1実施形態に係る有機発光ダイオードを構成する発光物質層における発光物質間の一重項エネルギー準位および三重項エネルギー準位による発光メカニズムを概略的に示す模式図である。
図7に概略的に示すように、発光物質層240(EML)に含まれるホストであり得る第3化合物Hの励起三重項エネルギー準位(T
1
H)と励起一重項エネルギー準位(S
1
H)は、それぞれ遅延蛍光特性を有する第1化合物DFの励起三重項エネルギー準位(T
1
DF)と励起一重項エネルギー準位(S
1
DF)より高い。例えば、第3化合物Hの励起三重項エネルギー準位(T
1
H)は、第1化合物DFの励起三重項エネルギー準位(T
1
DF)より約0.2eV以上、例えば、約0.3eV以上、または約0.5eV以上高くてもよい。
【0146】
第3化合物Hの励起三重項エネルギー準位(T1
H)および励起一重項エネルギー準位(S1
H)が、第1化合物DFの励起三重項エネルギー準位(T1
DF)および励起一重項エネルギー準位(S1
DF)より十分に高くない場合、第1化合物DFの励起三重項エネルギー準位(T1
DF)の励起子が第3化合物Hの励起三重項エネルギー準位(T1
H)へと逆電荷移動が起こる。それにより、三重項励起子が発光できない第3化合物Hで三重項励起子は非発光消滅するため、遅延蛍光特性を有する第1化合物DFの三重項励起子は発光に寄与できなくなる。遅延蛍光特性を有する第1化合物DFの励起一重項エネルギー準位(S1
DF)と励起三重項エネルギー準位(T1
DF)の差(ΔEST)は、約0.3eV以下、例えば約0.05eV~0.3eVであり得る。
【0147】
また、発光物質層240(EML)において、逆項間交差(RISC)により、ICT錯体状態に変わった遅延蛍光物質である第1化合物DFから蛍光物質である第2化合物FDへ励起子エネルギーが効率的に遷移し、高効率、かつ高色純度を有する有機発光ダイオードD1を実現する必要がある。かかる有機発光ダイオードD1を実現するため、遅延蛍光物質であり得る第1化合物DFの励起一重項エネルギー準位(S1
DF)は、蛍光物質であり得る第2化合物FDの励起一重項エネルギー準位(S1
FD)より高い。場合により、第1化合物DFの励起三重項エネルギー準位(T1
DF)は、第2化合物FDの励起三重項エネルギー準位(T1
FD)より高くてもよい。
【0148】
第2化合物FDは、第1化合物DFの一重項励起子エネルギーと三重項励起子エネルギーを全て発光に利用することができるので、有機発光ダイオードD1の発光効率が最大化できる。さらに、TTAまたはTPAといった消光が最小限になり、有機発光ダイオードD1の発光寿命が大きく向上することができる。
【0149】
再び
図3に戻ると、正孔注入層250は、第1電極210と正孔輸送層260の間に位置し、無機物である第1電極210と有機物である正孔輸送層260の間の界面特性を向上させる。1つの例示的な側面において、正孔注入層250は、4,4’,4”-トリス(3-メチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン;MTDATA、4,4’,4”-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン;NATA、4,4’,4”-トリス(N-(ナフタレン-1-イル)-N-フェニルアミノ)トリフェニルアミン;1T-NATA、4,4’,4”-トリス(N-(ナフタレン-2-イル)-N-フェニルアミノ)トリフェニルアミン;2T-NATA、フタロシアニン銅;CuPC、トリス(4-カルバゾイル-9-イル-フェニル)アミン;TCTA、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(1-ナフチル)-1,1’-ビフェニル-4,4”-ジアミン;NPB;NPD、1,4,5,8,9,11-ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル;HAT-CN、1,3,5-トリス[4-(ジフェニルアミノ)フェニル]ベンゼン;TDAPB、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸;PEDOT/PSS、N-(ビフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-N-(4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル)-9H-フルオレン-2-アミン、およびこれらの組み合わせで構成される群から選択される化合物を含むことができるが、これに限定されるものではない。有機発光ダイオードD1の特性により、正孔注入層250は省略してもよい。
【0150】
正孔輸送層260は、正孔注入層250と発光物質層240の間に位置する。1つの例示的な側面において、正孔輸送層260は、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン;TPD、NPB(NPD)、CBP、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン];Poly-TPD、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,4’-(N-(4-sec-ブチルフェニル)ジフェニルアミン))];TFB、ジ-[4-(N,N-ジ-p-トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン;TAPC、3,5-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)-N,N-ジフェニルアニリン;DCDPA、N-(ビフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-N-(4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル)-9H-フルオレン-2-アミン、N-(ビフェニル-4-イル)-N-(4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル)ビフェニル)-4-アミン、およびこれらの組み合わせで構成される群から選択される化合物を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0151】
発光物質層240と第2電極230の間には、電子輸送層270と電子注入層280を順次積層することができる。電子輸送層270を成す素材には、高い電子移動度が求められるが、スムーズな電子輸送により、発光物質層240に電子を安定して供給する。1つの例示的な実施形態において、電子輸送層270は、オキサジアゾール系化合物、トリアゾール系化合物、フェナントロリン系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物のうち、いずれか1つを含むことができる。
【0152】
より具体的に、電子輸送層270は、トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム;Alq3、2-ビフェニル-4-イル-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール;PBD、スピロ-PBD、リチウムキノラート;Liq、1,3,5-トリス(N-フェニルベンゾイミダゾール-2-イル)ベンゼン;TPBi、ビス(2-メチル-8-キノリノラト-N1,08)-(1,1’-ビフェニル-4-オラト)アルミニウム;BAlq、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン;Bphen、2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン;NBphen、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン;BCP、3-(4-ビフェニル)-4-フェニル-5-tert-ブチルフェニル-1,2,4-トリアゾール;TAZ、4-(ナフタレン-1-イル)-3,5-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾール;NTAZ、1,3,5-トリス(p-ピリド-3-イル-フェニル)ベンゼン;TpPyPB、2,4,6-トリス(3’-(ピリジン-3-イル)ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン;TmPPPyTz、ポリ[(9,9-ビス(3’-((N,N-ジメチル)-N-エチルアンモニウム)-プロピル)-2,7-フルオレン)-アルト-2,7-(9,9-ジオクチルフルオレン)];PFNBr、トリス(フェニルキノキサリン);TPQ、TSPO1、およびこれらの組み合わせで構成される群から選択される化合物を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0153】
電子注入層280は、第2電極230と電子輸送層270の間に位置するが、第2電極270の特性を改善し、素子の寿命を向上させることができる。1つの例示的な側面において、電子注入層280の素材には、LiF、CsF、NaF、BaF2などのアルカリ金属ハライド系物質、および/またはアルカリ土金属ハライド系物質、および/またはLiq、安息香酸リチウム、ステアリン酸ナトリウムなどの有機金属系の物質を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0154】
正孔が発光物質層240を介して第2電極230側に移動し、または電子が発光物質層240を介して第1電極210側に移動した場合、有機発光ダイオードD1の発光寿命および発光効率が減少することがある。これを防止するため、本発明の例示的な第1実施形態に係る有機発光ダイオードD1は、発光物質層240に隣接する励起子遮断層を有することができる。
【0155】
本発明の第1実施形態に係る有機発光ダイオードD1は、正孔輸送層260と発光物質層240の間に、電子移動を制御・防止することができる電子遮断層265を有することができる。1つの例示的な側面において、電子遮断層265は、TCTA、トリス[4-(ジエチルアミノ)フェニル]アミン、N-(ビフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-N-(4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル)-9H-フルオレン-2-アミン、TAPC、MTDATA、mCP、mCBP、CuPC、N,N’-ビス[4-[ビス(3-メチルフェニル)アミノ]フェニル]-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン;DNTPD、TDAPB、3,6-ビス(N-カルバゾリル)-N-フェニル-カルバゾール、およびこれらの組み合わせで構成される群から選択される化合物を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0156】
発光物質層240と電子輸送層270の間には、第2励起子遮断層として正孔遮断層275が位置し、発光物質層240と電子輸送層270の間の正孔移動を防止する。1つの例示的な側面において、正孔遮断層275の素材として、電子輸送層270に使用できるオキサジアゾール系化合物、トリアゾール系化合物、フェナントロリン系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物のうち、いずれか1つを用いることができる。
【0157】
例えば、正孔遮断層275は、発光物質層240に用いられた素材に比べ、HOMOエネルギー準位の低いBCP、BAlq、Alq3、PBD、スピロ-PBD、Liq、ビス-4,6-(3,5-ジ-3-ピリジルフェニル)-2-メチルピリミジン;B3PYMPM、DPEPO、9-(6-(9H-カルバゾール-9-イル)ピリジン-3-イル)-9H-3,9’-ビカルバゾール、およびこれらの組み合わせで構成される群から選択される化合物を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0158】
前述した第1実施形態において、遅延蛍光特性を有する第1化合物および第2化合物が同一の発光物質層に含まれる場合を例に挙げたが、第1化合物と第2化合物は、隣接する発光物質層にそれぞれ含まれてもよい。これについて説明する。
図8は、本発明の例示的な第2実施形態に係る有機発光ダイオードを概略的に示す断面図であり、
図9は、本発明の第2実施形態に係る発光物質層を構成する第1化合物および第2化合物のHOMOエネルギー準位が調節され、正孔が第2化合物へ効率的に移動する状態を概略的に示す模式図であり、
図10は、本発明の第2実施形態に係る有機発光ダイオードを構成する発光物質層における発光物質間の一重項エネルギー準位および三重項エネルギー準位による発光メカニズムを概略的に示す模式図である。
【0159】
図8に示すように、本発明の第2実施形態に係る有機発光ダイオードD2は、互いに対向する第1電極210および第2電極230と、第1電極210と第2電極230の間に位置する発光層220Aとを含む。有機発光表示装置100(
図2を参照)は赤色の画素領域、緑色の画素領域、青色の画素領域を含み、有機発光ダイオードD2は青色の画素領域に位置することができる。
【0160】
例示的な側面において、発光層220Aは発光物質層240Aを含む。発光層220Aは、第1電極210と発光物質層240Aの間に位置する正孔輸送層260と、発光物質層240Aと第2電極230の間に位置する電子輸送層270のうち、少なくともいずれか1つを含むことができる。
【0161】
また、発光層220Aは、第1電極210と正孔輸送層260の間に位置する正孔注入層と、電子輸送層270と第2電極230の間に位置する電子注入層のうち、少なくともいずれか1つをさらに含むことができる。任意選択で、発光層220Aは、発光物質層240Aと正孔輸送層260の間に位置する電子遮断層265、および/または発光物質層240Aと電子輸送層270の間に位置する正孔遮断層275をさらに含むことができる。第1電極210、第2電極230、および発光物質層240Aを除いた発光層220Aの構成は、前述した第1実施形態と同様であってもよい。
【0162】
発光物質層240Aは、電子遮断層265と正孔遮断層275の間に位置する第1発光物質層242(EML1、下部発光物質層、第1層)と、第1発光物質層242と正孔遮断層275の間に位置する第2発光物質層244(EML2、上部発光物質層、第2層)を含む。場合により、第2発光物質層244は、電子遮断層265と第1発光物質層242の間に位置してもよい。
【0163】
第1発光物質層242(EML1)と第2発光物質層244(EML2)のうち、どちらか一方は、遅延蛍光物質である第1化合物DF(第1ドーパント)を含み、他方は、蛍光物質である第2化合物FD(第2ドーパント)を含む。また、第1発光物質層242(EML1)と第2発光物質層244(EML2)は、それぞれ第1ホストであり得る第3化合物H1と、第2ホストであり得る第4化合物H2を含むことができる。一例として、第1発光物質層242は第1化合物DFおよび第3化合物H1を含み、第2発光物質層244は第2化合物FDおよび第4化合物H2を含むことができる。
【0164】
第1発光物質層242(EML1)を構成する第1化合物DFは、化学式(1)~(6)の構造を有する遅延蛍光物質であり得る。遅延蛍光特性を有する第1化合物DFは、逆項間交差(RISC)により、第1化合物DFの三重項励起子エネルギーが一重項励起子エネルギーに変換される。第1化合物DFは高い量子効率を持つが、半値幅が広いため、色純度がよくない。
【0165】
一方、第2発光物質層244(EML2)は、蛍光物質である第2化合物FDを含む。第2化合物FDは、化学式(7)~(9)の構造を有する任意の有機化合物を含む。化学式(7)~(9)の構造を有する蛍光物質である第2化合物FDは、第1化合物DFに比べ、半値幅が狭い(例えば、半値幅は35nm以下)。そのため、第2化合物FDは、色純度の面で長所がある。
【0166】
本実施形態によると、第1発光物質層242(EML1)に含まれる遅延蛍光特性を有する第1化合物DFの一重項励起子エネルギーおよび三重項励起子エネルギーは、FRETメカニズムを介し、隣接する第2発光物質層244(EML2)に含まれる第2化合物FDへ移動し、最終的に第2化合物FDで発光が起こる。
【0167】
逆項間交差(RISC)により、第1発光物質層242(EML1)に含まれる第1化合物DFの三重項励起子エネルギーが、一重項励起子エネルギーに変換される。第1化合物DFの一重項励起子エネルギーは、第2化合物FDの一重項エネルギー準位に移動する。第2発光物質層244(EML2)に含まれる第2化合物FDは、一重項励起子エネルギーと三重項励起子エネルギーを全て発光に利用する。
【0168】
第1発光物質層242(EML1)に含まれる遅延蛍光物質であり得る第1化合物DFで生成された励起子エネルギーは、第2発光物質層244(EML2)に含まれる蛍光物質であり得る第2化合物FDへ効率的に移動し、超蛍光を実現することができる。このとき、実質的な発光は、蛍光物質である第2化合物FDを含む第2発光物質層244(EML2)で起こる。その結果、有機発光ダイオードD2の量子効率が向上し、半値幅が狭くなり、色純度が向上する。
【0169】
第1発光物質層242(EML1)と第2発光物質層244(EML2)は、それぞれ第3化合物H1と第4化合物H2を含む。第3化合物H1と第4化合物H2は、互いに同じであってもよく、相違してもよい。例えば、第3化合物H1と第4化合物H2は、それぞれ独立して、第1実施形態で説明した第3化合物Hを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0170】
図9に示すように、第1化合物DFのHOMOエネルギー準位(HOMO
DF)と第2化合物FDのHOMOエネルギー準位(HOMO
FD)の間のエネルギーバンドギャップ(ΔHOMO-1)は、前述した式(I)または式(II)を満たすことができる。そのため、発光物質層240に注入された正孔は第1化合物DFへ移動し、第1化合物DFは、一重項励起子エネルギーと三重項励起子エネルギーを全て利用し、第2化合物FDへ励起子エネルギーを移動させることができる。また、第1化合物DFのLUMOエネルギー準位(LUMO
DF)は、第2化合物FDのLUMOエネルギー準位(LUMO
FD)より浅く、または同一であり、式(III)または式(IV)を満たすことができる。
【0171】
さらに、第3化合物H1および第4化合物H2のHOMOエネルギー準位(HOMOH1、HOMOH2)と、第1化合物DFのHOMOエネルギー準位(HOMODF)の差(|HOMOH-HOMODF|)、または第3化合物H1および第4化合物H2のLUMOエネルギー準位(LUMOH1、LUMOH2)と、第1化合物DFのLUMOエネルギー準位(LUMODF)の差(|LUMOH-LUMOFD|)は、約0.5eV以下であり得る。かかる条件を満たさない場合、第1化合物DFで非発光消滅が起こり、または第3化合物H1および第4化合物H2から第1化合物DFおよび/または第2化合物FDへと励起子エネルギーが移動せず、有機発光ダイオードD2の量子効率が低下することがある。
【0172】
一方、第1発光物質層242(EML1)と第2発光物質層244(EML2)にそれぞれ含まれ得る第3化合物H1および第4化合物H2でそれぞれ生成された励起子エネルギーは、まず、遅延蛍光物質であり得る第1化合物DFへ移動し、発光しなければならない。
図10に示すように、第3化合物H1の励起一重項エネルギー準位(S
1
H1)と第4化合物H2の励起一重項エネルギー準位(S
1
H2)は、それぞれ遅延蛍光物質であり得る第1化合物DFの励起一重項エネルギー準位(S
1
DF)より高い。また、第3化合物H1の励起三重項エネルギー準位(T
1
H1)と第4化合物H2の励起一重項エネルギー準位(T
1
H2)は、それぞれ第1化合物DFの励起三重項エネルギー準位(T
1
DF)より高い。例えば、第3化合物H1および第4化合物H2の励起三重項エネルギー準位(T
1
H1、T
1
H2)は、第1化合物DFの励起三重項エネルギー準位(T
1
DF)より少なくとも約0.2eV以上、例えば約0.3eV以上、または約0.5eV以上高くてもよい。
【0173】
一方、第2ホストである第4化合物H2の励起一重項エネルギー準位(S1
H2)は、蛍光物質である第2化合物FDの励起一重項エネルギー準位(S1
FD)より高い。場合により、第4化合物H2の励起三重項エネルギー準位(T1
H2)は、第2化合物FDの励起三重項エネルギー準位(T1
FD)より高くてもよい。それにより、第4化合物H2で生成された一重項励起子エネルギーが第2化合物FDの一重項エネルギー準位へ移動することができる。
【0174】
さらに、第1発光物質層242(EML1)で逆項間交差(RISC)により、ICT錯体状態へ変わった第1化合物DFから第2発光物質層244(EML2)の第2化合物FDへ励起子エネルギーが効率的に移動しなければならない。かかる有機発光ダイオードD2を実現するため、第1発光物質層242(EML1)に含まれる遅延蛍光物質である第1化合物DFの励起一重項エネルギー準位(S1
DF)は、第2発光物質層244(EML2)に含まれる蛍光物質である第2化合物FDの励起一重項エネルギー準位(S1
FD)より高い。場合により、第1化合物DFの励起三重項エネルギー準位(T1
DF)は、第2化合物FDの励起三重項エネルギー準位(T1
FD)より高くてもよい。
【0175】
第1発光物質層242および第2発光物質層244のそれぞれにおいて、第3化合物H1と第4化合物H2は、それぞれ同一の発光物質層を構成する第1化合物DFと第2化合物FDより大きい、または同一の含有量で含むことができる。また、第1発光物質層242(EML1)に含まれる第1化合物DFの含有量は、第2発光物質層244(EML2)に含まれる第2化合物FDの含有量より大きくてもよい。それにより、第1発光物質層242(EML1)に含まれる第1化合物DFから第2発光物質層244(EML2)に含まれる第2化合物FDへと、FRETによりエネルギーが十分に移動することができる。
【0176】
例えば、第1発光物質層242(EML1)中、第1化合物DFは、約1重量%~約50重量%、例えば約10重量%~約40重量%、または約20重量%~約40重量%の割合で含むことができる。第2発光物質層244(EML2)中、第2化合物FDは、約1重量%~約10重量%、例えば約1重量%~約5重量%であり得る。
【0177】
任意選択で、第2発光物質層244(EML2)が正孔遮断層275に隣接して位置する場合、第2発光物質層244(EML2)を構成する第4化合物H2は、正孔遮断層275と同一の物質であってもよい。このとき、第2発光物質層244(EML2)は、発光機能と共に正孔遮断機能を備えることができる。言い換えると、第2発光物質層244(EML2)は、正孔を遮断するためのバッファ層として機能する。一方、正孔遮断層275は省略してもよく、この場合、第2発光物質層244(EML2)は、発光物質層および正孔遮断層として用いられる。
【0178】
他の例示的な側面において、第2発光物質層244(EML2)が電子遮断層265に隣接して位置する場合、第2発光物質層244(EML2)を構成する第4化合物H2は、電子遮断層265と同一の物質であってもよい。このとき、第2発光物質層244(EML2)は、発光機能と共に電子遮断機能を備えることができる。言い換えると、第2発光物質層244(EML2)は、電子を遮断するためのバッファ層として機能する。一方、電子遮断層265は省略してもよく、この場合、第2発光物質層244(EML2)は、発光物質層および電子遮断層として用いられる。
【0179】
続いて、発光物質層が3層構造である有機発光ダイオードについて説明する。
図11は、本発明の例示的な第3実施形態に係る有機発光ダイオードを概略的に示す断面図である。
図12は、本発明の第3実施形態に係る発光物質層を構成する第1化合物および第2化合物のHOMOエネルギー準位が調節され、正孔が第2化合物へ効率的に移動する状態を概略的に示す模式図である。
図13は、本発明の第3実施形態に係る有機発光ダイオードを構成する発光物質層における発光物質間の一重項エネルギー準位および三重項エネルギー準位による発光メカニズムを概略的に示す模式図である。
【0180】
図11に示すように、本発明の第3実施形態に係る有機発光ダイオードD3は、互いに対向する第1電極210および第2電極230と、第1電極210と第2電極230の間に位置する発光層220Bとを含む。有機発光表示装置100(
図2を参照)は赤色の画素領域、緑色の画素領域、青色の画素領域を含み、有機発光ダイオードD3は青色の画素領域に位置することができる。
【0181】
例示的な側面において、発光層220Bは3層構造の発光物質層240Bを含む。発光層220Bは、第1電極210と発光物質層240Bの間に位置する正孔輸送層260と、発光物質層240Bと第2電極230の間に位置する電子輸送層270のうち、少なくともいずれか1つを含むことができる。また、発光層220Bは、第1電極210と正孔輸送層260の間に位置する正孔注入層250と、電子輸送層270と第2電極230の間に位置する電子注入層280のうち、少なくともいずれか1つを含むことができる。任意選択で、発光層220Bは、発光物質層240Bと正孔輸送層260の間に位置する電子遮断層265、および/または発光物質層240Bと電子輸送層270の間に位置する正孔遮断層275をさらに含むことができる。第1電極210、第2電極230、および発光物質層240Bを除いた発光層220Bの残り構成要素は、前述した第1実施形態および第2実施形態と実質的に同様であってもよい。
【0182】
発光物質層240B(EML)は、電子遮断層265と正孔遮断層275の間に位置する第1発光物質層242(EML1、中間発光物質層、第1層)と、電子遮断層265と第1発光物質層242(EML1)の間に位置する第2発光物質層244(EML2、下部発光物質層、第2層)と、第1発光物質層242(EML1)と正孔遮断層275の間に位置する第3発光物質層246(EML3、上部発光物質層、第3層)を含む。
【0183】
第1発光物質層242(EML1)は、遅延蛍光物質である第1化合物DF(第1ドーパント)を含み、第2発光物質層244と第3発光物質層246は、それぞれ蛍光物質であり得る第2化合物FD1(第2ドーパント)、および第5化合物FD2(第3ドーパント)を含む。第1~第3発光物質層242、244、246は、それぞれ第1~第3ホストであり得る第3化合物H1、第4化合物H2および第6化合物H3をさらに含むことができる。
【0184】
本実施形態によると、第1発光物質層242(EML1)に含まれる遅延蛍光物質である第1化合物DFの一重項励起子エネルギーおよび三重項励起子エネルギーは、フェルスター共鳴エネルギー移動であるFRETのメカニズムにより、隣接する第2発光物質層244(EML2)および第3発光物質層246(EML3)にそれぞれ含まれる蛍光物質である第2化合物FD1、そして第5化合物FD2へ移動し、第2化合物FD1および第5化合物FD2で最終的な発光が起こる。
【0185】
逆項間交差により、第1発光物質層242(EML1)に含まれる第1化合物DFの三重項励起子エネルギーが一重項励起子エネルギーに変換される。遅延蛍光物質である第1化合物DFの励起一重項エネルギー準位は、隣接する第2発光物質層244(EML2)および第3発光物質層246(EML3)にそれぞれ含まれる蛍光物質である第2化合物FD1および第5化合物FD2の励起一重項エネルギー準位より高い。第1発光物質層242(EML1)に含まれる第1化合物DFの一重項励起子エネルギーは、FRETを介し、隣接する第2発光物質層244(EML2)および第3発光物質層246(EML3)に含まれる第2化合物FD1および第5化合物FD2の励起一重項エネルギー準位に移動する。
【0186】
したがって、第2発光物質層244(EML2)および第3発光物質層246(EML3)にそれぞれ含まれる第2化合物FD1および第5化合物FD2は、一重項励起子エネルギーと三重項励起子エネルギーを全て発光に利用する。第2化合物FD1および第5化合物FD2は、第1化合物DFに比べて半値幅が狭い(例えば、半値幅は35nm以下)。そのため、有機発光ダイオードD4の量子効率が向上し、半値幅が狭くなり、色純度が向上する。このとき、実質的な発光は、第2化合物FD1と第5化合物FD2をそれぞれ含む第2発光物質層242(EML2)と第3発光物質層246(EML3)で起こる。
【0187】
遅延蛍光物質である第1化合物DFは、化学式(1)~(6)の構造を有する有機化合物を含み、蛍光物質である第2化合物FD1と第5化合物FD2は、それぞれ独立して、化学式(7)~(9)の構造を有するホウ素系有機化合物を含む。第3化合物H1、第4化合物H2、および第6化合物H3は、互いに同一であってもよく、相違してもよい。例えば、第3化合物H1、第4化合物H2、および第6化合物H3は、それぞれ独立して、第1実施形態で説明した第3化合物Hを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0188】
前述した第1実施形態および第2実施形態と同様に、第1化合物DFのHOMOエネルギー準位(HOMODF)と、第2化合物FD1および第5化合物FD2のHOMOエネルギー準位(HOMOFD、HOMODF3)との間のエネルギーバンドギャップ(ΔHOMO-1)は、前述した式(I)または式(II)を満たすことができる。そのため、発光物質層240に注入された正孔は第1化合物DFへ移動し、第1化合物DFは、一重項励起子エネルギーと三重項励起子エネルギーを全て利用し、第2化合物FD1および第5化合物FD2へ励起子エネルギーを移動させることができる。また、第1化合物DFのLUMOエネルギー準位(LUMODF)は、第2化合物FDおよび第5化合物DF3のLUMOエネルギー準位(LUMOFD、LUMODF3)より浅く、または同一であって、式(III)または式(IV)を満たすことができる。
【0189】
さらに、第3化合物H1、第4化合物H2、および第6化合物H3のHOMOエネルギー準位(HOMOH1、HOMOH2、HOMOH3)と、第1化合物DFのHOMOエネルギー準位(HOMODF)の差(|HOMOH-HOMODF|)、または第3化合物H1、第4化合物H2、および第6化合物H3のLUMOエネルギー準位(LUMOH1、LUMOH2、LUMOH3)と、第1化合物DFのLUMOエネルギー準位(LUMODF)の差(|LUMOH-LUMODF|)は、0.5eV以下であり得る。
【0190】
効率的は発光を実現するため、第1~第3発光物質層242、244、246(EML1、EML2、EML3)に含まれる発光物質のエネルギー準位を適切に調節する必要がある。
図13を参照すると、第1ホストであり得る第3化合物H1の励起一重項エネルギー準位(S
1
H1)、第2ホストであり得る第4化合物H2の励起一重項エネルギー準位(S
1
H2)、および第3ホストであり得る第6化合物H3の励起一重項エネルギー準位(S
1
H3)は、遅延蛍光物質であり得る第1化合物DFの励起一重項エネルギー準位(S
1
DF)より高い。また、第3化合物H1の励起三重項エネルギー準位(T
1
H1)、第4化合物H2の励起三重項エネルギー準位(T
1
H2)、および第6化合物H3の励起三重項エネルギー準位(T
1
H3)は、それぞれ第1化合物DFの励起三重項エネルギー準位(T
1
DF)より高い。
【0191】
第1発光物質層242(EML1)で逆項間交差(RISC)により、ICT錯体状態へ変わった第1化合物DFから、第2発光物質層244(EML2)および第3発光物質層246(EML3)にそれぞれ含まれる蛍光物質である第2化合物FD1および第5化合物FD2へ励起子エネルギーが効率的に移動しなければならない。かかる有機発光ダイオードD3を実現するため、第1発光物質層242(EML1)に含まれる遅延蛍光物質である第1化合物DFの励起一重項エネルギー準位(S1
DF)は、第2発光物質層244(EML2)と第3発光物質層246(EML3)にそれぞれ含まれる蛍光物質であり得る第2化合物FD1および第5化合物FD2の励起一重項エネルギー準位(S1
FD1、S1
FD2)より高い。場合により、第1化合物DFの励起三重項エネルギー準位(T1
DF)は、それぞれ第2化合物FD1および第5化合物FD2の励起三重項エネルギー準位(T1
FD1、T1
FD2)より高くてもよい。
【0192】
また、遅延蛍光物質である第1化合物DFから蛍光物質である第2化合物FD1および第5化合物FD2へ遷移したエネルギーが、第4化合物H2および第6化合物H3へ遷移することを防止し、効率的な発光を実現する必要がある。そのため、第2ホストであり得る第4化合物H2および第3ホストであり得る第6化合物H3の励起一重項エネルギー準位(S1
H2、S1
H3)は、それぞれ蛍光物質であり得る第2化合物FD1および第5化合物FD2の励起一重項エネルギー準位(S1
FD1、S1
FD2)より高い。場合により、第4化合物H2および第6化合物H3の励起三重項エネルギー準位(T1
H2、T1
H3)は、それぞれ第2化合物FD1および第5化合物FD2の励起三重項エネルギー準位(T1
FD1、T1
FD2)より高くてもよい。
【0193】
第1発光物質層242(EML1)に含まれる第1化合物DFは、第2発光物質層244(EML2)と第3発光物質層246(EML3)にそれぞれ含まれる第2化合物FD1と第5化合物FD2より大きい含有量で含むことができる。この場合、第1発光物質層242(EML1)に含まれる第1化合物DFから、第2発光物質層244(EML2)と第3発光物質層246(EML3)にそれぞれ含まれる第2化合物FD1と第5化合物FD2へと、FRETによりエネルギーが十分に移動することができる。
【0194】
例えば、第1発光物質層242(EML1)中、第1化合物DFの含有量は、約1重量%~約50重量%、例えば、約10重量%~約40重量%、または約20重量%~約40重量%であり得る。第2発光物質層244(EML2)と第3発光物質層246(EML3)のそれぞれにおいて、第2化合物FD1と第5化合物FD2の含有量は、それぞれ約1重量%~約10重量%、例えば、約1重量%~約5重量%であり得る。
【0195】
任意選択で、第2発光物質層244(EML2)が電子遮断層265に隣接して位置する場合、第2発光物質層244(EML2)を構成する第4化合物H2は、電子遮断層265と同一の物質であってもよい。このとき、第2発光物質層244(EML2)は、発光機能と共に電子遮断機能を備えることができる。言い換えると、第2発光物質層244(EML2)は、電子を遮断するためのバッファ層として機能する。一方、電子遮断層265は省略してもよく、この場合、第2発光物質層244(EML2)は、発光物質層および電子遮断層として用いられる。
【0196】
また、第3発光物質層246(EML3)が正孔遮断層275に隣接して位置する場合、第3発光物質層246(EML3)を構成する第6化合物H3は、正孔遮断層275と同一の物質であり得る。このとき、第3発光物質層246(EML3)は、発光機能と共に正孔遮断機能を備えることができる。言い換えると、第3発光物質層246(EML3)は、正孔を遮断するためのバッファ層として機能する。一方、正孔遮断層275は省略してもよく、この場合、第3発光物質層246(EML3)は、発光物質層および正孔遮断層として用いられる。
【0197】
他の例示的な側面において、第2発光物質層244(EML2)を構成する第4化合物H2は、電子遮断層265と同一の物質であり、第3発光物質層246(EML3)を構成する第6化合物H3は、正孔遮断層275と同一の物質であり得る。このとき、第2発光物質層244(EML2)は発光機能と共に電子遮断機能を備え、第3発光物質層246(EML3)は発光機能と共に正孔遮断機能を備えることができる。すなわち、第2発光物質層244(EML2)と第3発光物質層246(EML3)は、それぞれ電子と正孔を遮断するバッファ層として機能することができる。一方、電子遮断層265および正孔遮断層275は省略してもよく、この場合、第2発光物質層244(EML2)は発光物質層および電子遮断層として用いられ、第3発光物質層246(EML3)は発光物質層および正孔遮断層として用いられる。
【0198】
選択的な実施形態において、有機発光ダイオードは、2つ以上の発光部を含むことができる。
図14は、本発明の例示的な第4実施形態に係る有機発光ダイオードを概略的に示す断面図である。
【0199】
図14に示すように、有機発光ダイオードD4は、互いに対向する第1電極210および第2電極230と、第1電極210と第2電極230の間に位置する発光層220Cとを含む。有機発光表示装置100(
図2を参照)は赤色の画素領域、緑色の画素領域、青色の画素領域を含み、有機発光ダイオードD4は青色の画素領域に位置することができる。また、第1電極210は陽極であり、第2電極230は陰極であり得る。
【0200】
発光層220Cは、第1発光物質層340を含む第1発光部320と、第2発光物質層440を含む第2発光部420を含む。また、発光層220Cは、第1発光部320と第2発光部420の間に位置する電荷発生層380(Charge Generation Layer、CGL)をさらに含むことができる。
【0201】
電荷発生層380は、第1発光部320と第2発光部420の間に位置し、第1電極210上に第1発光部320、電荷発生層380、第2発光部420が順次積層される。すなわち、第1発光部320は第1電極310と電荷発生層380の間に位置し、第2発光部420は第2電極230と電荷発生層380の間に位置する。
【0202】
第1発光部320は第1発光物質層340(EML1、下部発光物質層)を含む。また、第1発光部320は、第1電極210と第1発光物質層340の間に位置する正孔注入層350(HIL)、第1発光物質層340と正孔注入層350の間に位置する第1正孔輸送層360(HTL1)、第1発光物質層340と電荷発生層380の間に位置する第1電子輸送層370(ETL1)のうち、少なくとも1つをさらに含むことができる。任意選択で、第1発光部320は、第1正孔輸送層360と第1発光物質層340の間に位置する第1電子遮断層365(EBL1)と、第1発光物質層340と第1電子輸送層370の間に位置する第1正孔遮断層375(HBL1)のうち、少なくとも1つをさらに含むことができる。
【0203】
第2発光部420は第2発光物質層440(EML2、上部発光物質層)を含む。また、第2発光部420は、電荷発生層380と第2発光物質層440の間に位置する第2正孔輸送層460(HTL2)、第2発光物質層440と第2電極230の間に位置する第2電子輸送層470(ETL2)と、第2電子輸送層470と第2電極230の間に位置する電子注入層480(EIL)のうち、少なくとも1つをさらに含むことができる。任意選択で、第2発光部420は、第2正孔輸送層460と第2発光物質層440の間に位置する第2電子遮断層465(EBL2)と、第2発光物質層440と第2電子輸送層470の間に位置する第2正孔遮断層475(HBL2)のうち、少なくとも1つをさらに含むことができる。
【0204】
電荷発生層380は、第1発光部320と第2発光部420の間に位置する。言い換えると、第1発光部320と第2発光部420は、電荷発生層380を介して接続される。電荷発生層380は、N型電荷発生層382とP型電荷発生層384が接合されたPN型であり得る。
【0205】
N型電荷発生層382は、第1電子輸送層370と第2正孔輸送層460の間に位置し、P型電荷発生層384は、N型電荷発生層382と第2正孔輸送層460の間に位置する。N型電荷発生層382は、電子を第1発光部320の第1発光物質層340へ伝達し、P型電荷発生層384は、正孔を第2発光部420の第2発光物質層440へ伝達する。
【0206】
本実施形態において、第1発光物質層340と第2発光物質層440は、それぞれ青色発光物質層であり得る。例えば、第1発光物質層340と第2発光物質層440のうち、少なくとも一方は、遅延蛍光物質である第1化合物DFと、蛍光物質である第2化合物FDを含み、任意選択で、ホストである第3化合物Hを含むことができる。
【0207】
第1発光物質層340および/または第2発光物質層440が、第1化合物DF、第2化合物FD、および第3化合物Hを含む場合、第1発光物質層340および/または第2発光物質層440における第3化合物Hの含有量は、第1化合物DFの含有量より大きく、第1化合物DFの含有量は、第2化合物FDの含有量より大きくあり得る。第1化合物DFの含有量が第2化合物FDの含有量より大きい場合、第1化合物DFから第2化合物FDへとエネルギーが十分に移動することができる。
【0208】
1つの例示的な側面において、第2発光物質層440は、第1発光物質層340と同様に第1化合物DFおよび第2化合物FDを含み、任意選択で第3化合物Hを含むことができる。あるいは、第2発光物質層440は、第1発光物質層340に含まれる第1化合物DFと第2化合物FDのうち、少なくとも一方とは異なる別の化合物を含み、第1発光物質層340とは異なる波長の光を発する、または異なる発光効率を有することができる。
【0209】
図14において、第1発光物質層340および第2発光物質層440は、それぞれ単層構造であるが、少なくとも第1化合物DFと、第2化合物FD、任意選択で第3化合物Hをそれぞれ含むことができる第1発光物質層340および第2発光物質層440は、それぞれ二層(
図8を参照)であってもよく、三層(
図11を参照)であってもよい。
【0210】
本実施形態に係る有機発光ダイオードD4では、遅延蛍光物質である第1化合物DFの一重項励起子エネルギーが、蛍光物質である第2化合物FDへ移動し、第2化合物FDで最終的な発光が起こる。その結果、有機発光ダイオードD4の発光効率および色純度が向上する。また、化学式(1)~(6)の構造を有する第1化合物DFと、化学式(7)~(9)の構造を有する第2化合物FDが、少なくとも第1発光物質層340に用いられることで、有機発光ダイオードD4の発光効率および色純度がさらに向上する。さらに、有機発光ダイオードD4が青色発光物質層の二重積層構造を有するので、有機発光ダイオードD4の色純度が向上し、または発光効率が最適化できる。
【0211】
図15は、本発明の第2実施形態に係る有機発光表示装置を概略的に示す断面図である。
図15に示すように、有機発光表示装置500は、第1~第3画素領域P1、P2、P3が定義された基板510と、基板510の上部に位置する薄膜トランジスタTrと、薄膜トランジスタTr上に位置し、薄膜トランジスタTrに接続される有機発光ダイオードDとを含む。例えば、第1画素領域P1は青色の画素領域であり、第2画素領域P2は緑色の画素領域であり、第3画素領域P3は赤色の画素領域であり得る。
【0212】
基板510は、ガラス基板であってもよく、フレキシブルな基板であってもよい。例えば、フレキシブルな基板は、PI基板、PES基板、PEN基板、PET基板、およびPC基板のうち、いずれか1つであり得る。基板510上にバッファ層512が形成され、バッファ層512上に薄膜トランジスタTrが形成される。バッファ層512は省略してもよい。
図2を用いて説明した通り、薄膜トランジスタTrは、半導体層、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極を含み、駆動素子として働く。
【0213】
薄膜トランジスタTr上には平坦化層550が位置する。平坦化層550はその上面が平坦であり、薄膜トランジスタTrのドレイン電極を露出するドレインコンタクトホール552を有する。
【0214】
有機発光ダイオードDは平坦化層550上に位置し、薄膜トランジスタTrのドレイン電極に接続される第1電極610、第1電極610上に順次積層される発光層620および第2電極630を含む。有機発光ダイオードDは、第1~第3画素領域P1、P2、P3にそれぞれ位置し、互いに異なる色の光を発する。例えば、第1画素領域P1の有機発光ダイオードDは青色光を発し、第2画素領域P2の有機発光ダイオードDは緑色光を発し、第3画素領域P3の有機発光ダイオードDは赤色光を発することができる。
【0215】
第1電極610は、第1~第3画素領域P1、P2、P3毎に分離して形成され、第2電極630は、第1~第3画素領域P1、P2、P3に対応して一体に形成される。第1電極610は陽極と陰極のうち、一方であり、第2電極630は他方であり得る。また、第1電極610と第2電極630のうち、一方は透過電極(または半透過電極)であり、他方は反射電極であり得る。
【0216】
例えば、第1電極610は陽極であり、仕事関数が比較的に大きい導電性物質、例えば透明導電性酸化物(TCO)からなる透明導電性酸化物層を含むことができる。第2電極630は陰極であり、仕事関数が比較的に小さい導電性物質、例えば低抵抗金属からなる金属物質層を含むことができる。一例として、第1電極610は、ITO、IZO、ITZO、SnO、ZnO、ICOおよびAZOのうち、いずれか1つを含み、第2電極630は、Al、Mg、Ca、Ag、またはこれらの合金(例えば、Mg-Ag合金)やこれらの組み合わせから構成することができる。
【0217】
有機発光表示装置500がボトムエミッションタイプである場合、第1電極610は、透明導電性酸化物層の単層構造を有することができる。一方、有機発光表示装置500がトップエミッションタイプである場合、第1電極610の下部には反射電極、または反射層をさらに形成することができる。例えば、反射電極または反射層は、銀、またはアルミニウム・パラジウム・銅(APC)合金で構成することができる。トップエミッションタイプである有機発光ダイオードDにおいて、第1電極610は、ITO/Ag/ITO、またはITO/APC/ITOの三層構造を有することができる。また、第2電極630はその厚さが薄く、光透過(半透過)特性を有することができる。
【0218】
平坦化層550上には、第1電極610の端部を覆うバンク層560が形成される。バンク層560は、第1~第3画素領域P1、P2、P3のそれぞれに対応し、第1電極610の中央を露出する。
【0219】
第1電極610上には、発光層620が形成される。発光層620は、発光物質層(EML)の単層構造を有することができる。あるいは、発光層620は、第1電極610と発光物質層との間に順次積層される正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、および/または電子遮断層(EBL)と、発光物質層と第2電極630との間に順次積層される正孔遮断層(HBL)、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)、および/または電荷発生層(CGL)のうち、少なくとも1つを含むことができる。
【0220】
青色の画素領域である第1画素領域P1において、発光層620を構成する発光物質層は、化学式(1)~(6)の構造を有する遅延蛍光物質である第1化合物DFと、化学式(7)~(9)の構造を有する蛍光物質である第2化合物FDを含み、任意選択で、ホストである第3化合物Hを含むことができる。
【0221】
第2電極630上には、外部の水分が有機発光ダイオードDへ浸透することを防止するため、防止フィルム570が形成される。防止フィルム570は、第1無機絶縁層、有機絶縁層、第2無機絶縁層の三層構造を有することができるが、これに限定されるものではない。
【0222】
有機発光表示装置500は、外部光の反射を低減するための偏光板をさらに含むことができる。例えば、偏光板は円形状であり得る。有機発光表示装置500がボトムエミッションタイプである場合、偏光板は基板510の下部に位置することができる。一方、有機発光表示装置500がトップエミッションタイプである場合、偏光板は封止フィルム570の上部に位置することができる。
【0223】
図16は、本発明の例示的な第5実施形態に係る有機発光ダイオードを概略的に示す断面図である。有機発光ダイオードD5は、第1電極610および第2電極630、第1電極610と第2電極630の間に位置する発光層620を含む。
【0224】
第1電極610は陽極であり、第2電極630は陰極であり得る。例えば、第1電極610は反射電極であり、第2電極630は透過電極(半透過電極)であり得る。
【0225】
発光層620は発光物質層640を含む。また、発光層620は、第1電極610と発光物質層640の間に位置する正孔輸送層660(HTL)と、発光物質層640と第2電極630の間に位置する電子輸送層670(ETL)のうち、少なくともいずれか1つを含むことができる。また、発光層620は、第1電極610と正孔輸送層660の間に位置する正孔注入層650(HIL)と、電子輸送層670と第2電極630の間に位置する電子注入層680(EIL)のうち、少なくともいずれか1つをさらに含むことができる。任意選択で、発光層620は、正孔輸送層660と発光物質層640の間に位置する電子遮断層665(EBL)と、発光物質層640と電子輸送層670の間に位置する正孔遮断層675(HBL)のうち、少なくともいずれか1つをさらに含むことができる。
【0226】
また、発光層620は、正孔輸送層660と電子遮断層665の間に位置する補助正孔輸送層662をさらに含むことができる。補助正孔輸送層662は、第1画素領域P1に位置する第1補助正孔輸送層662a、第2画素領域P2に位置する第2補助正孔輸送層662b、および第3画素領域P3に位置する第3補助正孔輸送層662cを含むことができる。
【0227】
第1補助正孔輸送層662aは第1厚さを有し、第2補助正孔輸送層662bは第2厚さを有し、第3補助正孔輸送層662cは第3厚さを有する。このとき、第1厚さは第2厚さより小さく、第2厚さは第3厚さより小さい。したがって、有機発光ダイオードD5はマイクロキャビティ構造を持つ。
【0228】
すなわち、第1~第3補助正孔輸送層662a、662b、662cの厚さが互いに異なることにより、第1波長範囲の光(青色)を発する第1画素領域P1における第1電極610と第2電極630の間の距離は、第1波長範囲より長い第2波長範囲の光(緑色)を発する第2画素領域P2における第1電極610と第2電極630の間の距離より小さい。また、第2画素領域P2における第1電極610と第2電極630の間の距離は、第2波長範囲より長い第3波長範囲の光(赤色)を発する第3画素領域P3における第1電極610と第2電極630の間の距離より小さい。そのため、有機発光ダイオードD5の発光効率が向上する。
【0229】
図16において、第1画素領域P1に第1補助正孔輸送層662aが形成されているが、第1補助正孔輸送層662aがなくてもマイクロキャビティ構造を実現することができる。また、第2電極630上には、光取り出し向上のためのキャッピング層(不図示)をさらに形成することができる。
【0230】
発光物質層640は、第1画素領域P1に位置する第1発光物質層642と、第2画素領域P2に位置する第2発光物質層644と、第3画素領域P3に位置する第3発光物質層646を含む。第1発光物質層642、第2発光物質層644、および第3発光物質層646は、それぞれ青色発光物質層、緑色発光物質層、赤色発光物質層であり得る。
【0231】
第1画素領域P1の第1発光物質層642は、化学式(1)~(6)の構造を有する遅延蛍光物質である第1化合物DFと、化学式(7)~(9)の構造を有する蛍光物質である第2化合物FDと、任意選択で、ホストであり得る第3化合物Hを含むことができる。第1発光物質層642は、単層であってもよく、二層(
図8を参照)であってもよく、三層(
図11を参照)であってもよい。
【0232】
このとき、第1発光物質層642において、第3化合物Hの含有量は第1化合物DFの含有量より大きく、第1化合物DFの含有量は第2化合物FDの含有量より大きくてもよい。第1化合物DFの含有量が第2化合物FDの含有量より大きい場合、第1化合物DFから第2化合物FDへとエネルギーが十分に移動することができる。
【0233】
第2画素領域P2の第2発光物質層644は、ホストと緑色のドーパントを含み、第3画素領域P3の第3発光物質層646は、ホストと赤色のドーパントを含むことができる。例えば、第2発光物質層644および第3発光物質層646のホストは第3化合物Hを含み、緑色のドーパントと赤色のドーパントは、それぞれ緑色または赤色の燐光物質、緑色または赤色の蛍光物質、緑色または赤色の遅延蛍光物質のうち、少なくとも1つを含むことができる。
【0234】
図16の有機発光ダイオードD5は、第1~第3画素領域P1、P2、P3のそれぞれにおいて青色光、緑色光、赤色光を発する。それにより、有機発光表示装置500(
図15を参照)は、カラー映像を実現することができる。
【0235】
一方、有機発光表示装置500は、色純度を向上させるため、第1~第3画素領域P1、P2、P3に対応してカラーフィルタ層をさらに含むことができる。例えば、カラーフィルタ層は、第1画素領域P1に対応する第1カラーフィルタ層(青色のカラーフィルタ層)、第2画素領域P2に対応する第2カラーフィルタ層(緑色のカラーフィルタ層)、第3画素領域P3に対応する第3カラーフィルタ層(赤色のカラーフィルタ層)を含むことができる。
【0236】
有機発光表示装置500がボトムエミッションタイプである場合、カラーフィルタ層は、有機発光ダイオードDと基板510の間に位置することができる。また、有機発光表示装置500がトップエミッションタイプである場合、カラーフィルタ層は、有機発光ダイオードDの上部に位置することができる。
【0237】
図17は、本発明の第3実施形態に係る有機発光表示装置を概略的に示す断面図である。
図17に示すように、有機発光表示装置1000は、第1~第3画素領域P1、P2、P3が正義された基板1010と、基板1010の上部に位置する薄膜トランジスタTrと、薄膜トランジスタTrの上部に位置し、薄膜トランジスタTrに接続される有機発光ダイオードDと、第1~第3画素領域P1、P2、P3に対応するカラーフィルタ層1020を含む。例えば、第1画素領域P1は青色の画素領域であり、第2画素領域P2は緑色の画素領域であり、第3画素領域P3は赤色の画素領域であり得る。
【0238】
基板1010は、ガラス基板であってもよく、フレキシブル基板であってもよい。例えば、フレキシブル基板は、PI基板、PES基板、PEN基板、PET基板、およびPC基板のうち、いずれか1つであり得る。薄膜トランジスタTrは基板1010上に位置するが、基板1010上にバッファ層(不図示)を形成し、その上に薄膜トランジスタTrを形成してもよい。
図2を用いて説明したように、薄膜トランジスタTrは、半導体層、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極を含み、駆動素子として働く。
【0239】
基板1010上にはカラーフィルタ層1020が位置する。一例として、カラーフィルタ層1020は、第1画素領域P1に対応する第1カラーフィルタ層1022、第2画素領域P2に対応する第2カラーフィルタ層1024、および第3画素領域P3に対応する第3カラーフィルタ層1026を含むことができる。第1カラーフィルタ層1022は青色のカラーフィルタ層であり、第2カラーフィルタ層1024は緑色のカラーフィルタ層であり、第3カラーフィルタ層1026は、赤色のカラーフィルタ層であり得る。例えば、第1カラーフィルタ層1022は青色染料と青色顔料のうち、少なくとも1つを含み、第2カラーフィルタ層1024は緑色染料と緑色顔料のうち、少なくとも1つを含み、第3カラーフィルタ層1026は赤色染料と赤色顔料のうち、少なくとも1つを含むことができる。
【0240】
薄膜トランジスタTrおよびカラーフィルタ層1020上には平坦化層1050が位置する。平坦化層1050はその上面が平坦であり、薄膜トランジスタTrのドレイン電極(不図示)を露出するドレインコンタクトホール1052を有する。
【0241】
有機発光ダイオードDは平坦化層1050上に位置し、カラーフィルタ層1020に対応する。また、有機発光ダイオードDは、薄膜トランジスタTrのドレイン電極に接続される第1電極1110、第1電極1110上に順次積層される発光層1120および第2電極1130を含む。有機発光ダイオードDは、第1~第3画素領域P1、P2、P3で白色光を発する。
【0242】
第1電極1110は、第1~第3画素領域P1、P2、P3毎に分離して形成され、第2電極1130は、第1~第3画素領域P1、P2、P3に対応して一体に形成される。第1電極1110は、陽極と陰極のうち、一方であり、第2電極1130は他方であり得る。また、第1電極1110は透過電極であり、第2電極1130は反射電極であり得る。
【0243】
例えば、第1電極1110は陽極であり、仕事関数が比較的に大きい導電性物質、例えば、透明導電性酸化物(TCO)からなる透明導電性酸化物層を含むことができる。第2電極1130は陰極であり、仕事関数が比較的に小さい導電性物質、例えば低抵抗金属からなる金属物質層を含むことができる。一例として、第1電極1110の透明導電性酸化物層は、ITO、IZO、ITZO、SnO、ZnO、ICOおよびAZOのうち、いずれか1つを含み、第2電極1130は、Al、Mg、Ca、Ag、またはこれらの合金(例えば、Mg-Ag合金)やこれらの組み合わせで構成することができる。
【0244】
発光層1120は第1電極1110上に形成され、互いに異なる色を発する少なくとも2つの発光部を含む。発光部は、それぞれ発光物質層(EML)の単層構造を有することができる。あるいは、発光部は、それぞれ正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、電子遮断層(EBL)、正孔遮断層(HBL)、電子輸送層(ETL)、および電子注入層(EIL)のうち、少なくとも1つをさらに含むことができる。また、発光層1120は、発光部間に位置する電荷発生層(CGL)をさらに含むことができる。
【0245】
このとき、少なくとも2つの発光部のうち、少なくとも1つの発光物質層(EML)は、化学式(1)~(6)の構造を有する遅延蛍光物質である第1化合物DFと、化学式(7)~(9)の構造を有する蛍光物質である第2化合物FDを含み、場合により、ホストであり得る第3化合物Hを含むことができる。
【0246】
平坦化層1050上には、第1電極1110の端部を覆うバンク層1060が形成される。バンク層1060は、第1~第3画素領域P1、P2、P3にそれぞれ対応し、第1電極1110の中央を露出する。前述したように、有機発光ダイオードDは、第1~第3画素領域P1、P2、P3で白色光を発するため、発光層1120は、第1~第3画素領域P1、P2、P3毎に分離して形成する必要がなく、共通層として形成することができる。バンク層1060は、第1電極1110の端部における電流漏れを防ぐために形成されるが、省略してもよい。
【0247】
図に示していないが、有機発光表示装置1000は、外部の水分が有機発光ダイオードDへ浸透することを防止するため、第2電極1130上に防止フィルムをさらに含むことができる。また、有機発光表示装置1000は、外部光の反射を低減するため、基板1010の下部に偏光板をさらに含むことができる。
【0248】
図17の有機発光表示装置1000において、第1電極1110は透過電極であり、第2電極1130は反射電極であり、カラーフィルタ層1020は基板1010と有機発光ダイオードDの間に位置する。すなわち、有機発光表示装置1000は、ボトムエミッションタイプである。あるいは、有機発光表示装置1000において、第1電極1110は反射電極であり、第2電極1130は透過電極(半透過電極)であり、カラーフィルタ層1020は有機発光ダイオードDの上部に位置してもよい。
【0249】
有機発光表示装置1000において、第1~第3画素領域P1、P2、P3の有機発光ダイオードDは白色光を発し、該白色光は第1~第3カラーフィルタ層1022、1024、1026を透過するため、第1~第3画素領域P1、P2、P3ではそれぞれ青色、緑色、赤色が表示される。
【0250】
図に示していないが、有機発光ダイオードDとカラーフィルタ層1020の間には色変換層を備えることもできる。色変換層は、第1~第3画素領域P1、P2、P3のそれぞれに対応して青色の色変換層、緑色の色変換層、赤色の色変換層を含み、有機発光ダイオードDから放出された白色光をそれぞれ青色、緑色、赤色に変換することができる。例えば、色変換層は量子ドットを含むことができる。それにより、有機発光表示装置1000の色純度はさらに向上することができる。あるいは、カラーフィルタ層1020の代わりに色変換層を含むこともできる。
【0251】
図18は、本発明の例示的な第6実施形態に係る有機発光ダイオードを概略的に示す断面図である。
図18に示すように、有機発光ダイオードD6は、互いに対向する第1電極1110および第2電極1130と、第1電極1110と第2電極1130の間に位置する発光層1120とを含む。第1電極1110は陽極であり、第2電極1130は陰極であり得る。例えば、第1電極1110は透過電極であり、第2電極1130は反射電極であり得る。
【0252】
発光層1120は、第1発光物質層1240(下部発光物質層)を含む第1発光部1220と、第2発光物質層1340(中間発光物質層)を含む第2発光部1320と、第3発光物質層1440(上部発光物質層)を含む第3発光部1420を含む。また、発光層1120は、第1発光部1220と第2発光部1320の間に位置する第1電荷発生層1280と、第2発光部1320と第3発光部1420の間に位置する第2電荷発生層1380をさらに含むことができる。したがって、第1発光部1220、第1電荷発生層1280、第2発光部1320、第2電荷発生層1380および第3発光部1420が、第1電極1110上に順次積層される。
【0253】
第1発光部1220は、第1電極1110と第1発光物質層1240の間に位置する正孔注入層1250(HIL)と、第1発光物質層1240と正孔注入層1250の間に位置する第1正孔輸送層1260(HTL1)と、第1発光物質層1240と第1電荷発生層1280の間に位置する第1電子輸送層1270(ETL1)のうち、少なくともいずれか1つを含むことができる。場合により、第1発光部1220は、第1正孔輸送層1260と第1発光物質層1240の間に位置する第1電子遮断層1265(EBL1)と、第1発光物質層1240と第1電子輸送層1270の間に位置する第1正孔遮断層1275(HBL1)のうち、少なくともいずれか1つをさらに含むことができる。
【0254】
第2発光部1320は、第1電荷発生層1280と第2発光物質層1340の間に位置する第2正孔輸送層1360(HTL2)と、第2発光物質層1340と第2電荷発生層1380の間に位置する第2電子輸送層1370(ETL2)のうち、少なくともいずれか1つを含むことができる。場合により、第2発光部1320は、第2正孔輸送層1360と第2発光物質層1340の間に位置する第2電子遮断層1365(EBL2)と、第2発光物質層1340と第2電子輸送層1370の間に位置する第2正孔遮断層1375(HBL2)のうち、少なくともいずれか1つをさらに含むことができる。
【0255】
第3発光部1420は、第2電荷発生層1380と第3発光物質層1440の間に位置する第3正孔輸送層1460(HTL3)と、第3発光物質層1440と第2電極1130の間に位置する第3電子輸送層1470(ETL3)と、第3電子輸送層1470と第2電極1130の間に位置する電子注入層1480(EIL)のうち、少なくともいずれか1つを含むことができる。場合により、第3発光部1420は、第3正孔輸送層1460と第3発光物質層1440の間に位置する第3電子遮断層1465(EBL3)と、第3発光物質層1440と第3電子輸送層1470の間に位置する第3正孔遮断層1475(HBL3)のうち、少なくともいずれか1つをさらに含むことができる。
【0256】
第1電荷発生層1280は、第1発光部1220と第2発光部1320の間に位置する。言い換えると、第1発光部1220と第2発光部1320は、第1電荷発生層1280を介して接続される。第1電荷発生層1280は、第1N型電荷発生層1282と第1P型電荷発生層1284が接合されたPN型であり得る。
【0257】
第1N型電荷発生層1282は、第1電子輸送層1270と第2正孔輸送層1360の間に位置し、第1P型電荷発生層1284は、第1N型電荷発生層1282と第2正孔輸送層1360の間に位置する。第1N型電荷発生層1282は、電子を第1発光部1220の第1発光物質層1240へ移動させ、第1P型電荷発生層1284は、正孔を第2発光部1320の第2発光物質層1340へ移動させる。
【0258】
第2電荷発生層1380は、第2発光部1320と第3発光部1420の間に位置する。言い換えると、第2発光部1320と第3発光部1420は、第2電荷発生層1380を介して接続される。第2電荷発生層1380は、第2N型電荷発生層1382と第2P型電荷発生層1384が接合されたPN型であり得る。
【0259】
第2N型電荷発生層1382は、第2電子輸送層1370と第3正孔輸送層1460の間に位置し、第2P型電荷発生層1384は、第2N型電荷発生層1382と第3正孔輸送層1460の間に位置する。第2N型電荷発生層1382は、電子を第2発光部1320の第2発光物質層1340へ移動させ、第2P型電荷発生層1384は、正孔を第3発光部1420の第3発光物質層1440へ移動させる。
【0260】
本実施形態において、第1~第3発光物質層1240、1340、1440のうち、1つは青色発光物質層であり、第1~第3発光物質層1240、1340、1440のうち、もう1つは緑色発光物質層であり、第1~第3発光物質層1240、1340、1440のうち、残る1つは赤色発光物質層であり得る。
【0261】
例えば、第1発光物質層1240は青色発光物質層であり、第2発光物質層1340は緑色発光物質層であり、第3発光物質層1440は赤色発光物質層であり得る。あるいは、第1発光物質層1240は赤色発光物質層であり、第2発光物質層1340は緑色発光物質層であり、第3発光物質層1440は青色発光物質層であり得る。以下では、第1発光物質層1240が青色発光物質層であり、第2発光物質層1340が緑色発光物質層であり、第3発光物質層1340が赤色発光物質層である場合について説明する。
【0262】
第1発光物質層1240は、化学式(1)~(6)の構造を有する遅延蛍光物質である第1化合物DFと、化学式(7)~(9)の構造を有する蛍光物質である第2化合物FDを含み、任意選択で、ホストであり得る第3化合物Hを含むことができる。第1化合物~第3化合物を含む第1発光物質層1240は、単層であってもよく、二層であってもよく(
図8を参照)、三層であってもよい(
図11を参照)。
【0263】
第1発光物質層1240における第3化合物Hの含有量は、第1化合物DFの含有量より大きく、第1化合物DFの含有量は、第2化合物FDの含有量より大きくてもよい。第1化合物DFの含有量が第2化合物FDの含有量より大きい場合、第1化合物DFから第2化合物FDへと、エネルギーが十分に移動することができる。
【0264】
第2発光物質層1340はホストおよび緑色のドーパントを含み、第3発光物質層1440はホストおよび赤色のドーパントを含むことができる。例えば、第2発光物質層1340および第3発光物質層1440のそれぞれにおいて、ホストは第3化合物Hを含み、緑色および赤色のドーパントは、それぞれ緑色および赤色の燐光物質、緑色および赤色の蛍光物質、緑色および赤色の遅延蛍光物質のうち、少なくとも1つを含むことができる。
【0265】
有機発光ダイオードD6は、第1~第3画素領域P1、P2、P3(
図16を参照)で白色光を発し、該白色光は、第1~第3画素領域P1、P2、P3に対応して形成されるカラーフィルタ層1020(
図17を参照)を透過する。それにより、有機発光表示装置1000(
図17を参照)は、フルカラーの映像を実現することができる。
【0266】
図19は、本発明の例示的な第7実施形態に係る有機発光ダイオードを概略的に示す断面図である。
図19に示すように、有機発光ダイオードD7は、互いに対向する第1電極1110および第2電極1130と、第1電極1110と第2電極1130の間に位置する発光層1120Aとを含む。
【0267】
第1電極1110は陽極であり、第2電極1130は陰極であり得る。例えば、第1電極1110は透過電極であり、第2電極1130は反射電極であり得る。
【0268】
発光層1120Aは、第1発光物質層1540(下部発光物質層)を含む第1発光部1520と、第2発光物質層1640(中間発光物質層)を含む第2発光部1620と、第3発光物質層1740(上部発光物質層)を含む第3発光部1720を含む。また、発光層1120Aは、第1発光部1520と第2発光部1620の間に位置する第1電荷発生層1580と、第2発光部1620と第3発光部1720の間に位置する第2電荷発生層1680をさらに含むことができる。したがって、第1発光部1520、第1電荷発生層1580、第2発光部1620、第2電荷発生層1680および第3発光部1720が、第1電極1110上に順次積層される。
【0269】
第1発光部1520は、第1電極1110と第1発光物質層1540の間に位置する正孔注入層1550(HIL)と、第1発光物質層1540と正孔注入層1550の間に位置する第1正孔輸送層1560(HTL1)と、第1発光物質層1540と第1電荷発生層1580の間に位置する第1電子輸送層1570(ETL1)のうち、少なくともいずれか1つを含むことができる。任意選択で、第1発光部1520は、第1正孔輸送層1560と第1発光物質層1540の間に位置する第1電子遮断層1565(EBL1)と、第1発光物質層1540と第1電子輸送層1570の間に位置する第1正孔遮断層1575(HBL1)のうち、少なくともいずれか1つをさらに含むことができる。
【0270】
第2発光部1620を構成する第2発光物質層1640は、中間の下部発光物質層1642(第1層)および中間の上部発光物質層1644(第2層)を含む。すなわち、中間の下部発光物質層1642は第1電極1110に近接して位置し、中間の上部発光物質層1644は第2電極1130に近接して位置する。また、第2発光部1620は、第1電荷発生層1580と第2発光物質層1640の間に位置する第2正孔輸送層1660(HTL2)と、第2発光物質層1640と第2電荷発生層1680の間に位置する第2電子輸送層1670(ETL2)のうち、少なくともいずれか1つを含むことができる。任意選択で、第2発光部1620は、第2正孔輸送層1660と第2発光物質層1640の間に位置する第2電子遮断層1665(EBL2)と、第2発光物質層1640と第2電子輸送層1670の間に位置する第2正孔遮断層1675(HBL2)のうち、少なくともいずれか1つをさらに含むことができる。
【0271】
第3発光部1720は、第2電荷発生層1680と第3発光物質層1740の間に位置する第3正孔輸送層1760(HTL3)と、第3発光物質層1740と第2電極1130の間に位置する第3電子輸送層1770(ETL3)と、第3電子輸送層1770と第2電極1130の間に位置する電子注入層1780(EIL)のうち、少なくともいずれか1つを含むことができる。任意選択で、第3発光部1720は、第3正孔輸送層1760と第3発光物質層1740の間に位置する第3電子遮断層1765(EBL3)と、第3発光物質層1740と第3電子輸送層1770の間に位置する第3正孔遮断層1775(HBL3)のうち、少なくともいずれか1つをさらに含むことができる。
【0272】
第1電荷発生層1580は、第1発光部1520と第2発光部1620の間に位置する。言い換えると、第1発光部1520と第2発光部1620は、第1電荷発生層1580を介して接続される。第1電荷発生層1580は、第1N型電荷発生層1582と第1P型電荷発生層1584が接合されたPN型であり得る。第1N型電荷発生層1582は、第1電子輸送層1570と第2正孔輸送層1660の間に位置し、第1P型電荷発生層1584は、第1N型電荷発生層1582と第2正孔輸送層1660の間に位置する。
【0273】
第2電荷発生層1680は、第2発光部1620と第3発光部1720の間に位置する。言い換えると、第2発光部1620と第3発光部1720は、第2電荷発生層1680を介して接続される。第2電荷発生層1680は、第2N型電荷発生層1682と第2P型電荷発生層1684が接合されたPN型であり得る。第2N型電荷発生層1682は、第2電子輸送層1670と第3正孔輸送層1760の間に位置し、第2P型電荷発生層1684は、第2N型電荷発生層1682と第3正孔輸送層1760の間に位置する。
【0274】
本実施形態において、第1発光物質層1540と第3発光物質層1740はそれぞれ、青色発光物質層であり得る。例えば、第1発光物質層1540と第3発光物質層1740は、化学式(1)~(6)の構造を有する遅延蛍光物質である第1化合物DFと、化学式(7)~(9)の構造を有する蛍光物質である第2化合物FDを含み、任意選択で、ホストであり得る第3化合物Hを含むことができる。第1発光物質層1540および第3発光物質層1740を構成する第1化合物DF、第2化合物FD、および第3化合物Hは、それぞれ同一であってもよく、相違してもよい。場合により、第3発光物質層1740は、第1発光物質層1540に含まれる第1化合物DFと第2化合物FDのうち、少なくとも一方とは異なる別の化合物を含み、第1発光物質層1540とは異なる波長の光を発したり、または異なる発光効率を有することができる。
【0275】
例えば、第1発光物質層1540および第3発光物質層1740が第1化合物DF、第2化合物FD、および第3化合物Hを含む場合、第1発光物質層1540と第3発光物質層1740のそれぞれにおける第3化合物Hの含有量は、第1化合物DFの含有量より大きく、第1化合物DFの含有量は第2化合物FDの含有量より大きくてもよい。第1化合物DFの含有量が第2化合物FDの含有量より大きい場合、第1化合物DFから第2化合物FDへとエネルギーが十分に移動することができる。
【0276】
第2発光物質層1640を構成する中間の下部発光物質層1642(第1層)と中間の上部発光物質層1644(第2層)のうち、いずれか一方は緑色発光物質層であり、他方は赤色発光物質層であり得る。すなわち、緑色発光物質層と赤色発光物質層が連続して積層され、第2発光物質層1640を成す。
【0277】
例えば、赤色発光物質層である中間の下部発光物質層1642は、ホストおよび赤色のドーパントを含むことができ、緑色発光物質層である中間の上部発光物質層1644は、ホストおよび緑色のドーパントを含むことができる。一例として、ホストは第3化合物Hを含み、赤色および緑色のドーパントは、それぞれ赤色および緑色の燐光物質、赤色および緑色の蛍光物質、赤色および緑色の遅延蛍光物質のうち、少なくとも1つを含むことができる。
【0278】
有機発光ダイオードD7は、第1~第3画素領域P1、P2、P3(
図15を参照)で白色光を発し、該白色光は、第1~第3画素領域P1、P2、P3のそれぞれにおけるカラーフィルタ層1020(
図17を参照)を透過する。それにより、有機発光表示装置1000(
図17を参照)は、フルカラーの映像を実現することができる。
【0279】
図19において、有機発光ダイオードD7は、青色発光物質層である第1発光物質層1540および第3発光物質層1740を個々に含み、第1~第3発光部1520、1620、1720を含む三重積層構造を有するが、第1発光物質層1540を含む第1発光部1520と、第3発光物質層1740を含む第3発光部1720のうち、いずれか一方が省略され、二重積層構造を有することもできる。
【0280】
以下、例示的な実施形態を用いて本発明を説明するが、本発明が下記の実施例に記載の技術思想に限定されるものではない。
【0281】
実施例1(Ex.1):有機発光ダイオードの製造
発光物質層の第1化合物DFとして化学式(6)の化合物1-1(HOMO:-5.6eV、LUMO:-2.9eV)、第2化合物FDとして化学式(9)の化合物2-1(HOMO:-5.6eV、LUMO:-2.9eV)、第3化合物HとしてmCBP(HOMO:-6.0eV、LUMO:-2.5eV)を含む有機発光ダイオードを製造した。
【0282】
ITO基板を使用する前にUVオゾンで洗浄し、蒸発システムに載置した。続いて、蒸着のため、蒸着チャンバー内に移送し、約10-7Torrの真空下、加熱ボートから蒸発させ、次のような順で基板の上部に有機物層を蒸着した。有機物の蒸着速度は、1Å/sに設定した。
【0283】
陽極(ITO、50nm)、正孔注入層(HAT-CN、7nm)、正孔輸送層(NPB、45nm)、電子遮断層(TAPC、10nm)、発光物質層(mCBP:化合物1-1:化合物2-1=69:30:1の重量比、30nm)、正孔遮断層(B3PYMPM、10nm)、電子遮断層(TPBi、30nm)、電子注入層(LiF)、陰極(Al)。
【0284】
CPL(キャッピング層)を成膜した後、ガラスで封止した。発光層および陰極を蒸着した後、皮膜を形成するため、蒸着チャンバーから乾燥ボックスに移し、続いてUV硬化エポキシおよび水分ゲッターを使用して封止した。以下、発光層に用いられた有機化合物の構造を示す。
【0285】
【0286】
実施例2(Ex.2):有機発光ダイオードの製造
発光物質層の第1化合物として、化合物1-1に代わり、化学式(6)の化合物1-13(HOMO:-5.5eV、LUMO:-2.8eV)を用いたことを除き、実施例1と同じ物質を用いて、有機発光ダイオードを製造した。
【0287】
実施例3(Ex.3):有機発光ダイオードの製造
発光物質層の第2化合物として、化合物2-1に代わり、化学式(9)の化合物2-20(HOMO:-5.4eV、LUMO:-2.8eV)を用いたことを除き、実施例1と同じ物質を用いて、有機発光ダイオードを製造した。
【0288】
実施例4(Ex.4):有機発光ダイオードの製造
発光物質層の第1化合物として、化合物1-1に代わり、化学式(6)の化合物1-13(HOMO:-5.5eV、LUMO:-2.8eV)を用いて、発光物質層の第2化合物として、化合物2-1に代わり、化合物2-20を用いたことを除き、実施例1と同じ物質を用いて、有機発光ダイオードを製造した。
【0289】
実施例5(Ex.5):有機発光ダイオードの製造
発光物質層の第1化合物として、化合物1-1に代わり、化学式(6)の化合物1-8(HOMO:-5.5eV、LUMO:-2.9eV)を用いたことを除き、実施例1と同じ物質を用いて、有機発光ダイオードを製造した。
【0290】
実施例6(Ex.6):有機発光ダイオードの製造
発光物質層の第1化合物として、化合物1-1に代わり、化学式(6)の化合物1-9(HOMO:-5.6eV、LUMO:-2.8eV)を用いたことを除き、実施例1と同じ物質を用いて、有機発光ダイオードを製造した。
【0291】
実施例7(Ex.7):有機発光ダイオードの製造
発光物質層の第1化合物として、化合物1-1に代わり、化学式(6)の化合物1-8を用いて、発光物質層の第2化合物として、化合物2-1に代わり、化学式(9)の化合物2-20を用いたことを除き、実施例1と同じ物質を用いて、有機発光ダイオードを製造した。
【0292】
実施例8(Ex.8):有機発光ダイオードの製造
発光物質層の第1化合物として、化合物1-1に代わり、化学式(6)の化合物1-9を用いて、発光物質層の第2化合物として、化合物2-1に代わり、化合物2-20を用いたことを除き、実施例6と同じ物質を用いて、有機発光ダイオードを製造した。
【0293】
実施例9(Ex.9):有機発光ダイオードの製造
発光物質層が第2化合物を含まず、mCBPと化合物1-1を70:30の重量比で混合したことを除き、実施例1と同じ物質を用いて、有機発光ダイオードを製造した。
【0294】
実施例10~12(Ex.10~12):有機発光ダイオードの製造
発光物質層が第2化合物を含まず、化合物1-1に代わり、それぞれ化合物1-13(実施例10)、化合物1-8(実施例11)、化合物1-9(実施例12)を用いたことを除き、実施例9と同じ物質を用いて、有機発光ダイオードを製造した。
【0295】
比較例1~5(Ref.1~5):有機発光ダイオードの製造
発光物質層が第2化合物を含まず、mCBPと下記の比較化合物1-1(HOMO:-5.2eV、LUMO:-1.9eV)を80:20の重量比で混合(比較例1)し、mCBPと下記の比較化合物1-2(HOMO:-5.2eV、LUMO:-1.9eV)を80:20の重量比で混合(比較例2)し、mCBPと下記の比較化合物1-3(HOMO:-5.1eV、LUMO:-1.9eV)を80:20の重量比で混合(比較例3)し、mCBPと下記の比較化合物1-4(HOMO:-5.2eV、LUMO:-1.9eV)を80:20の重量比で混合(比較例4)し、mCBPと下記の比較化合物1-5(HOMO:-5.5eV、LUMO:-2.7eV)を80:20の重量比で混合(比較例5)したことを除き、実施例1と同じ物質を用いて、有機発光ダイオードを製造した。
【0296】
比較例6(Ref.6):有機発光ダイオードの製造
発光物質層の第1化合物として、化合物1-1に代わり、下記の比較化合物1-5を用いたことを除き、実施例1と同じ物質を用いて、有機発光ダイオードを製造した。
【0297】
比較例7(Ref.7):有機発光ダイオードの製造
発光物質層の第2化合物として、化合物2-1に代わり、下記の比較化合物2-1(HOMO:-5.2eV、LUMO:-2.7eV)を用いたことを除き、実施例1と同じ物質を用いて、有機発光ダイオードを製造した。
【0298】
比較例8(Ref.8):有機発光ダイオードの製造
発光物質層の第2化合物として、化合物2-1に代わり、下記の比較化合物2-2(HOMO:-5.2eV、LUMO:-2.6eV)を用いたことを除き、実施例1と同じ物質を用いて、有機発光ダイオードを製造した。
【0299】
比較例9(Ref.9):有機発光ダイオードの製造
発光物質層の第1化合物として、化合物1-1に代わり、化学式(6)の化合物1-13を用いて、発光物質層の第2化合物として、化合物2-1に代わり、下記の比較化合物2-1を用いたことを除き、実施例1と同じ物質を用いて、有機発光ダイオードを製造した。
【0300】
比較例10(Ref.10):有機発光ダイオードの製造
発光物質層の第1化合物として、化合物1-1に代わり、化学式(6)の化合物1-13を用いて、発光物質層の第2化合物として、化合物2-1に代わり、下記の比較化合物2-2を用いたことを除き、実施例1と同じ物質を用いて、有機発光ダイオードを製造した。
【0301】
比較例11(Ref.11):有機発光ダイオードの製造
発光物質層の第1化合物として、化合物1-1に代わり、下記の比較化合物1-6(HOMO:-5.9eV、LUMO:-2.8eV)を用いたことを除き、実施例1と同じ物質を用いて、有機発光ダイオードを製造した。
【0302】
比較例12(Ref.12):有機発光ダイオードの製造
発光物質層の第1化合物として、化合物1-1に代わり、下記の比較化合物1-6を用いて、発光物質層の第2化合物として、化合物2-1に代わり、化学式(9)の2-20を用いたことを除き、実施例1と同じ物質を用いて、有機発光ダイオードを製造した。
【0303】
比較例13(Ref.13):有機発光ダイオードの製造
発光物質層の第1化合物として、化合物1-1に代わり、下記の比較化合物1-6を用いて、発光物質層の第2化合物として、化合物2-1に代わり、下記の比較化合物2-1を用いたことを除き、実施例1と同じ物質を用いて、有機発光ダイオードを製造した。
【0304】
比較例14(Ref.14):有機発光ダイオードの製造
発光物質層の第1化合物として、化合物1-1に代わり、下記の比較化合物1-6を用いて、発光物質層の第2化合物として、化合物2-1に代わり、下記の比較化合物2-2を用いたことを除き、実施例1と同じ物質を用いて、有機発光ダイオードを製造した。
【0305】
【0306】
実施例1で第1化合物として用いた化合物1-1(電子受容体のホウ素環部分(moiety)と電子供与体の縮合カルバゾール部分(moiety)がC-C結合)と、比較例5で第1化合物として用いた比較化合物1-5(電子受容体のホウ素環部分と電子供与体の縮合カルバゾール部分がC-N結合)において、電子受容体部分と電子供与体部分の間の結合解離エネルギー(Bonding Dissociation Energy、BOE)を、中性状態、陰イオン状態、陽イオン状態、陰電荷状態、および陽電荷状態でそれぞれ評価した結果を下記の表1に示す。化合物1-1の結合解離エネルギーが高くなったことが分かる。
【0307】
【0308】
下記の表2と、表3に、それぞれ実施例1~実施例12、比較例1~比較例14に用いた第1化合物と、第2化合物のHOMOエネルギー準位、第1化合物と第2化合物のHOMOエネルギーバンドギャップ(ΔHOMO)を示す。
【0309】
【0310】
【0311】
実験例1:有機発光ダイオードの発光特性測定
実施例1~実施例12、および比較例1~比較例14でそれぞれ製造された有機発光ダイオードの光学特性を測定した。9mm2の放出領域を有するそれぞれの有機発光ダイオードを外部の電力供給源に接続し、電流供給源(KEITHLEY)および光度計(PR650)を用いて、室温で素子の特性を評価した。8.6mA/cm2の電流密度で、それぞれの有機発光ダイオードの駆動電圧(V)、電流効率(cd/A)、色座標(CIEy)、外部量子効率(EQE、%)、LT95(初期輝度から95%までの減少に要する時間、相対値)、正孔トラップと励起複合体の形成有無(正孔トラップおよび/または励起複合体が形成されたらY、正孔トラップおよび/または励起複合体が形成されなかったらN)をそれぞれ測定した。実施例1~実施例12と、比較例1~比較例14でそれぞれ製造された有機発光ダイオードの発光特性を、それぞれ表4と表5に示す。
【0312】
【0313】
【0314】
表4および表5に示したように、第1化合物の電子供与体部分(moiety)と電子受容体部分(moiety)が炭素-炭素結合を形成し、第1化合物と第2化合物のHOMOエネルギーバンドギャップを0.3eV未満、LUMOエネルギーバンドギャップを0.3eV未満に設定した有機発光ダイオードの発光特性が大きく向上した。特に、第1化合物の電子供与体部分(moiety)と電子受容体部分(moiety)が炭素-窒素結合を形成した化合物を単独で用いた場合(比較例1~比較例5)に比べ、第1化合物を第2化合物と併用した場合(比較例6~比較例14)、電流効率、EQEおよび発光寿命は大幅に増加しないか、むしろ大幅に減少した。
【0315】
一方、第1化合物の電子供与体部分(moiety)と電子受容体部分(moiety)が炭素-炭素結合を形成した化合物を単独で用いた場合(実施例9~実施例12)に比べ、第1化合物を第2化合物と併用する(実施例1~実施例8)と、電流効率、EQEおよび発光寿命が大きく増加した。
【0316】
比較例9~比較例14のように、第1化合物と第2化合物の間のHOMOエネルギーバンドギャップが0.3eV以上である場合、正孔トラップが発生した。また、比較例8、比較例13~比較例14のように、第1化合物と第2化合物の間のHOMOエネルギーバンドギャップ、およびLUMOエネルギーバンドギャップが両方共に0.3eV以上、またはHOMOエネルギーバンドギャップが0.5eV以上である場合、第1化合物と第2化合物の間に励起複合体が形成された。
【0317】
比較例6~比較例14で製造された有機発光ダイオードに比較し、実施例1~実施例8で製造された有機発光ダイオードの駆動電圧は、最大18.3%低下し、電流効率、EQEおよび発光寿命は、それぞれ最大138.2%、96.2%、58.8倍向上した。
【0318】
以上、本発明の例示的な実施形態および実施例に基づき、本発明を説明したが、本発明は、前述した実施形態および実施例に記載された技術思想に限定されるものではない。むしろ、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、前述した実施形態および実施例に基づき、様々な変形や変更を容易に推考することができる。また、かかる変形や変更が全て本発明の権利範囲に属するということは、請求の範囲から明らかである。