IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シージェイ チェイルジェダン コーポレーションの特許一覧

<>
  • 特許-PHA組成物及びその製造方法 図1
  • 特許-PHA組成物及びその製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】PHA組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/04 20060101AFI20241212BHJP
   C08L 3/02 20060101ALI20241212BHJP
   C08L 5/00 20060101ALI20241212BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20241212BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20241212BHJP
   C09D 167/04 20060101ALI20241212BHJP
   C09D 7/43 20180101ALI20241212BHJP
   C09D 7/45 20180101ALI20241212BHJP
【FI】
C08L67/04
C08L3/02
C08L5/00
C08L29/04 D
C08L1/02
C09D167/04
C09D7/43
C09D7/45
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023519255
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 KR2021015430
(87)【国際公開番号】W WO2022092892
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0143256
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513178894
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】シム,ユ・ギョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ウン‐ヘ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ドン‐ウン
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0048493(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0149844(US,A1)
【文献】国際公開第2014/002417(WO,A1)
【文献】特開2018-100324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 -101/14
C09D 1/00 - 10/00
C09D101/00 -201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物総重量について、
ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)10~70重量%と、
界面活性剤または分散剤0.3重量%未満と、
レオロジー調節剤0.5重量%以下と、を含み、
前記PHAが、
ポリ-3-ヒドロキシ酪酸-co-4-ヒドロキシ酪酸(P3HB-4HB)を含み、
前記PHA共重合体内の4HBの含量が、0.1~20%であり、
前記レオロジー調節剤が、ガム類、アクリル系、ウレタン系、及びエポキシ系からなる群から選択される1つ以上を含み、
前記ガム類の粒子形態が球状ではなく、ゲランガム、キサンタンガム、カラギーナン、カードランガム、カラヤガム、トラガカンドガム、ガティガム、アルギン、アガーガム、及びファーセレランからなる群から選択される1つ以上である、PHA組成物。
【請求項2】
組成物総重量について前記レオロジー調節剤が、0.3重量%以下含まれる、請求項1に記載のPHA組成物。
【請求項3】
前記PHAの分子量が、Mw 10,000~1,000,000である、請求項1または2に記載のPHA組成物。
【請求項4】
前記PHAの粒径が、10μm以下である、請求項1または2に記載のPHA組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤が、陽イオン系、陰イオン系、非イオン系、両性界面活性剤からなる群から選択される1つ以上を含む、請求項1または2に記載のPHA組成物。
【請求項6】
粘剤及び消泡剤からなる群から選択される1つ以上をさらに含む、請求項1または2に記載のPHA組成物。
【請求項7】
前記分散剤が、アクリル系分散剤、ウレタン系分散剤、エポキシ系分散剤、ポリビニルアルコール、及びセルロースからなる群から選択される1つ以上を含む、請求項1または2に記載のPHA組成物。
【請求項8】
前記ポリビニルアルコールの分子量が、Mw 10,000~200,000であり、ケン化度が、80~99mol%である、請求項に記載のPHA組成物。
【請求項9】
前記組成物の塗布量が、10g/m以上30g/mである、請求項1または2に記載のPHA組成物。
【請求項10】
前記組成物のコッブ値が、3g/m以上20g/mである、請求項1または2に記載のPHA組成物。
【請求項11】
前記組成物が、紙素材、高分子フィルム素材のコーティング用組成物である、請求項1または2に記載のPHA組成物。
【請求項12】
請求項1または2に記載のPHA組成物の製造方法であって、
PHA水系分散液を製造する段階と、
前記分散液を撹拌しながら
前記界面活性剤または分散剤と、前記レオロジー調節剤とを投入する段階と、
を含む、PHA組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定性及び耐水性が改善されたポリヒドロキシアルカン酸(PHA)組成物及びその製造方法に関する。
【0002】
本願は、2020年10月30日付の大韓民国特許出願第10-2020-0143256号に基づいた優先権の利益を主張し、当該大韓民国特許出願の文献に開示されたあらゆる内容は、本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は、フィルム(例えば、包装フィルム、農業用フィルム、根覆い用フィルム)、ゴルフティー、キャップ及びクローザー、農業用支持台及び杭、紙及びボードコーティング剤(例えば、カップ、プレート、箱など)、熱成形製品(例えば、トレー、コンテナ、ヨーグルトポット、植木鉢、麺器、鋳型製品など)、ハウジング(例えば、電子製品用)、袋類(例えば、ゴミ袋、雑貨袋、食品袋、肥料袋など)、衛生用品(例えば、オムツ、女性用衛生用品、尿失禁用製品、使い捨て布巾など)、顆粒型製品(例えば、顆粒型肥料、除草剤、殺虫剤、種子など)用コーティング剤の製造に制限なしに使われる生分解性プラスチックである。
【0004】
PHAは、また、縫合糸、修繕装置、修繕パッチ、スリング、心血管パッチ、整形外科用ピン、付着障壁、ステント、誘導型組織修繕/再生装置、人工軟骨修繕装置、神経誘導装置、腱修繕装置、骨髄スキャフォールド、及び傷ドレッシングを含む生物医学装置の開発にも使われている。
【0005】
ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は、発酵工程によって生産され、水系に物理的に分散されたPHAの場合、自己凝集力によって粒子どうしで凝集及び沈殿が進行し、沈殿された粒子は、強い引力で1つの塊を形成する。
【0006】
韓国登録特許第10-0602193号公報には、ポリエステル(PHA含む)樹脂の分散のために、230℃以上の温度で総10時間以上反応させた後、界面活性剤を添加する乳化重合方法を開示している。
【0007】
従来、水系内の分散安定性を保持するために、一般的に界面活性剤を使用してエマルジョン形態で重合工程を進行する。この際、モノマー上でそれぞれの粒子を1つ1つコーティングするか、ミセル化する作業を含む工程が進行する。この場合、多量の添加剤及び窒素パージング(purging)内の10時間以上の重合過程が必須である。ミセル化工程に使われる界面活性剤の場合、80℃以上の高温反応が必須なので、製造工程が複雑であるという短所がある。
【0008】
したがって、工程を単純化しながらも、PHAの使用目的に適するように物性を向上させてPHAを効率的及び経済的に使用するための研究が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国登録特許第10-0602193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、分散安定性及び耐水性が改善されたポリヒドロキシアルカン酸(PHA)組成物を提供することである。
【0011】
また、前記PHA組成物を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題を解決するために、本発明は、組成物総重量について、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)10~70重量%;及び添加剤1~10重量%;を含み、前記PHAが、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸-co-4-ヒドロキシ酪酸(P3HB-4HB)を含み、前記PHA共重合体内の4HBの含量が、0.1~20%であり、前記添加剤が、界面活性剤または分散剤と共にレオロジー調節剤を含み、前記界面活性剤または分散剤が、組成物総重量について0.3重量%未満含まれるPHA組成物を提供する。
【0013】
一具現例によれば、前記PHAの分子量は、Mw 10,000~1,000,000である。また、前記PHAの粒径は、10μm以下である。
【0014】
一具現例によれば、前記界面活性剤は、陽イオン系、陰イオン系、非イオン系、及び両性界面活性剤からなる群から選択される1つ以上を含みうる。
【0015】
一具現例によれば、前記添加剤は、増粘剤及び消泡剤からなる群から選択される1つ以上をさらに含みうる。
【0016】
一具現例によれば、前記レオロジー調節剤は、ガム類、アクリル系、ウレタン系、及びエポキシ系からなる群から選択される1つ以上を含みうる。
【0017】
また、前記ガム類は、球状ではないものであり、酸性多糖類であり、例えば、ゲランガム、キサンタンガム、カラギーナン、カードランガム、カラヤガム、トラガカンドガム、ガティガム、アルギン、アガーガム、ファーセレランなどを含みうる。
【0018】
一具現例によれば、前記分散剤は、アクリル系分散剤、ウレタン系分散剤、エポキシ系分散剤、ポリビニルアルコール、及びセルロースからなる群から選択される1つ以上を含みうる。
【0019】
一具現例によれば、組成物総重量について前記レオロジー調節剤は、0.5重量%以下含まれる。
【0020】
また、ポリビニルアルコールの分子量は、Mw 10,000~200,000であり、ケン化度が、80~99mol%である。
【0021】
一具現例によれば、前記組成物の塗布量は、10g/m以上30g/mである。
【0022】
また、前記組成物のコッブ値(cobb value)は、3g/m以上20g/mである。
【0023】
本発明の他の具現例によれば、PHA水系分散液を製造する段階;及び前記分散液を撹拌しながら添加剤を投入する段階;を含むPHA組成物の製造方法を提供する。
【0024】
その他の本発明の具現例の具体的な事項は、以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、水系分散されたポリヒドロキシアルカン酸(PHA)の粒子間の凝集を防止し、再分散を誘導して沈殿を防止することができる。したがって、PHAの分散安定性及び耐水性を改善しうる。
【0026】
また、本発明の組成物は、添加剤を最小化して生分解性PHAをリサイクルすることができ、既存の常用製品と互換性に優れ、常温安定性に優れている。
【0027】
また、PHAの製造工程において、界面活性剤の過度な使用及びエマルジョン形成のための追加の工程段階を要しないので、経済性を向上させうる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施例の分散安定性を確認した写真である。
図2】比較例の分散安定性を確認した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、多様な変換を加え、さまざまな実施例を有することができるので、特定実施例を図面に例示し、詳細な説明で詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる、あらゆる変換、均等物または代替物を含むものと理解しなければならない。本発明を説明するに当って、関連した公知技術についての具体的な説明が、本発明の要旨を不明にする恐れがあると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0030】
明細書内で特別な言及がない限り、「ないし」という表現は、当該数値を含む表現として使われる。具体例を挙げれば、「1ないし2」という表現は、1及び2を含むだけではなく、1と2との間の数値をいずれも含むことを意味する。
【0031】
本明細書内において、単数の表現は、取り立てて明示しない限り、複数の表現を含む。
【0032】
本明細書内の用語「PHA共重合体」は、少なくとも2個の異なるヒドロキシアルカン酸モノマーからなるポリマーを意味する。
【0033】
以下、本発明の具現例によるポリヒドロキシアルカン酸(PHA)組成物及びその製造方法についてより詳細に説明する。
【0034】
具体的に、本発明は、組成物総重量について、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)10~70重量%;及び添加剤1~10重量%;を含み、前記PHAが、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸-co-4-ヒドロキシ酪酸(P3HB-4HB)を含み、前記PHA共重合体内の4HBの含量が、0.1~20%であり、前記添加剤が、界面活性剤または分散剤と共にレオロジー調節剤を含み、前記界面活性剤または分散剤が、組成物総重量について0.3重量%未満含まれるPHA組成物を提供する。
【0035】
一具現例によれば、本発明の組成物は、PHA高分子を10~70重量%、例えば、20重量%以上、また、30重量%以上、例えば、60重量%以下、また、50重量%以下含みうる。組成物内のPHA高分子の含量は、組成物の物性に影響を与え、PHAの含量が過度に低い場合、コーティングされる塗膜の形成が均一でなくて、耐水性などの物性低下が起こり、過度に高い場合、低い厚さの薄膜コーティング時に、表面のコーティング性を阻害することができる。
【0036】
また、組成物内のPHA高分子の分子量は、組成物の物性に影響を与える要因によって、PHAの重量平均分子量は、Mw 10,000~1,000,000、例えば、Mw 100,000以上、また、Mw 200,000以上、また、Mw 300,000以上、例えば、Mw 700,000以下、また、600,000以下である。PHAの分子量は、過度に低い場合、フィルム形成時に、柔軟性が低下し、過度に高い場合、高温乾燥及びフィルム形成速度が減少して加工性が低下する。
【0037】
一具現例によれば、前記PHA共重合体内の4HB(4-hydroxybutyrate)の含量は、PHAの物性に影響を与える要因である。本発明のPHA共重合体内の4HBの含量は、0.1~20%、例えば、0.1%以上、また、1%以上、また、2%以上、また、3%以上、例えば、20%以下、また、15%以下、また、10%以下である。PHA内の4HBの含量は、過度に低い場合、結晶性の増加によって、硬い物性が増加して、フィルム形成後、亀裂が発生するか、コーティング後、収縮による基材との付着が難しく、過度に高い場合、非結晶性高分子に物性が変わりながら、耐水性を喪失してしまう恐れがある。
【0038】
一具現例によれば、PHAの粒子サイズ、すなわち、粒径は、10μm以下、例えば、5μm以下、例えば、2μm以下である。本発明のPHAは、粒子サイズが小さくて、均一な塗布が可能なので、コーティング剤への使用に適している。
【0039】
一具現例によれば、本発明の組成物は、添加剤を1~10重量%、例えば、1重量%以上、また、2重量%以上、また、3重量%以上、例えば、10重量%以下、また、8重量%以下、また、7重量%以下含みうる。
【0040】
前記添加剤は、例えば、レオロジー(rheology)調節剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、及び界面活性剤からなる群から選択される1つ以上を含み、例えば、レオロジー調節剤、分散剤及び増粘剤を含みうる。また、具体例を挙げれば、界面活性剤または分散剤を含み、これと共にレオロジー調節剤を含みうる。
【0041】
レオロジー調節剤としては、ガム類、アクリル系、ウレタン系、及びエポキシ系からなる群から選択される1つ以上を含みうる。一具現例によれば、本発明に使われるガム類レオロジー調節剤は、粒子状が球状ではないものである。球状ではないガム類レオロジー調節剤は、酸性多糖類を含み、具体例を挙げれば、ゲランガム(gellan gum)、キサンタンガム(xanthan gum)、カラギーナン(carrageenan)、カードランガム(curdlan gum)、カラヤガム(karaya gum)、トラガカントガム(tragacanth gum)、ガティガム(ghatti gum)、アルギン(algin)、アガーガム(agar gum)、ファーセレラン(furcellaran)などを含みうる。レオロジー調節剤の含量は、全体組成物について0.5重量%以下、例えば、0.3重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下、また、0.001重量%以上、0.01重量%以上である。
【0042】
分散剤としては、水系分散剤を使用することができ、例えば、アクリル系分散剤、ウレタン系分散剤、エポキシ系分散剤、顔料分散剤、ポリビニルアルコール、及びセルロースからなる群から選択される1つ以上を含みうる。具体例を挙げれば、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)を含みうる。本発明の組成物がPVAを含む場合、重量平均分子量が、Mw 10,000~200,000、例えば、Mw 10,000~100,000、例えば、Mw 10,000~50,000であり、あらゆる等級(grade)の使用が可能である。
【0043】
また、PVAのケン化度(degree of hydrolysis、DH)は、80~99mol%、例えば、80mol%以上、また、85mol%以上、例えば、99mol%以下、また、98mol%以下、また、94mol%以下、また、90mol%以下である。
【0044】
消泡剤としては、アルコール、シリコン油、水溶性界面活性剤を含み、オクタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル類などを含みうる。
【0045】
界面活性剤としては、陽イオン系、陰イオン系、非イオン系及び両性界面活性剤のうち1つ以上を含みうる。
【0046】
陽イオン系界面活性剤は、例えば、4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリニウム塩、脂肪族アミン塩などを含みうる。具体的に、例えば、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルメチルアンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム(benzalkonium chloride)などを含みうる。
【0047】
陰イオン系界面活性剤は、例えば、脂肪酸ナトリウム、モノアルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate、SDS)などを含みうる。
【0048】
非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(polyoxyethylene alkyl ether)、脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸ジエタノールアミン、アルキルモノグリセリルエーテル(alkyl mono glyceryl ether)などを含み、具体例を挙げれば、Tween 20、Triton X、Pluronicなどを含みうる。
【0049】
両性界面活性剤は、イミダゾリン系、ベタイン系などを含み、具体例を挙げれば、コカミドプロピルベタイン(cocamidopropyl betaine)、ラウリルヒドロキシスルホベタイン(lauryl hydroxy sulfobetaine)、アルキルスルホベタイン(alkyl sulfobetaine)、アルキルカルボキシベタイン(alkyl carboxybetaine)などを含みうる。
【0050】
本発明では、エマルジョン形成工程が必須として要求されず、界面活性剤が必須成分として要求されない。これにより、本発明の組成物に界面活性剤が含まれる場合、組成物総重量、具体的に、組成物全体の固形分重量について、0.3重量%未満、例えば、0.25重量%以下、また、0.2重量%以下、また、例えば、0.0001重量%以上、0.001重量%以上、0.01重量%以上に使われる。また、前記界面活性剤の代わりに分散剤に代替して使われる。
【0051】
界面活性剤を0.3重量%以上使用する場合、界面活性剤の疎水性領域が増加して水分散内の均一な分散が難しく、コーティング時に、界面を形成するという問題点がある。また、分散後、粒子の沈殿時に、再分散が難しくて、PHA粒子が互いに凝集して、塊になる現象が発生する恐れがある。
【0052】
本発明によれば、界面活性剤などの添加剤の使用を大きく減少させることにより、経済的及び効率的にPHA製造工程を進行することができる。
【0053】
本発明の添加剤は、前記種類に限定されず、当業者に通常使われるものであれば、特に制限されるものではない。
【0054】
本発明の他の具現例によれば、PHA水系分散液を製造する段階;及び前記分散液を撹拌しながら添加剤を投入する段階;を含み、前記PHA共重合体内の4HBが、0.1~20重量%であり、前記添加剤が、界面活性剤または分散剤と共にレオロジー調節剤を含み、前記界面活性剤または分散剤が、組成物総重量について0.3重量%未満であり、最終組成物内のPHAが、10~70重量%であるPHA組成物の製造方法を提供する。
【0055】
一具現例によれば、PHA水系分散液を製造する段階は、例えば、1~10%、例えば、3~8%の固形分を有するPHA水系分散液を蒸留する段階を含みうる。または、固形分のPHAパウダー分散液を分散機を通じて分散する段階を含みうる。
【0056】
一具現例によれば、前記分散液を撹拌しながら添加剤を投入する段階が常温で実施される。本発明は、分散性の改善のために別途の低温や高温操作が必須的に要求されないので、経済的である。常温で撹拌が実施される場合、20~30℃、例えば、23~26℃の温度で実施される。
【0057】
前記添加剤を投入する段階は、界面活性剤または分散剤を0.1~5重量%、例えば、0.1重量%以上、また、0.5重量%以上、また、1重量%以上、また、2重量%以上、例えば、5重量%以下、また、4重量%以下、また、3重量%以下添加する段階を含みうる。
【0058】
また、本発明による組成物内の界面活性剤または分散剤が0.3重量%以下、例えば、0.25重量%以下、例えば、0.2重量%以下含まれるように界面活性剤または分散剤を投入する段階を含みうる。
【0059】
また、本発明による組成物内のレオロジー調節剤が、0.1~5重量%、例えば、0.1重量%以上、また、0.5重量%以上、また、1重量%以上、また、2重量%以上、例えば、5重量%以下、また、4重量%以下、また、3重量%以下含まれるようにレオロジー調節剤を添加する段階を含みうる。
【0060】
一具現例によれば、本発明による組成物の塗布量は、10g/m以上30g/m、例えば、11g/m以上、12g/m以上、13g/m以上、また、25g/m以下、20g/m以下である。
【0061】
また、本発明による組成物のコッブ値は、3~20g/m、例えば、4g/m以上、5g/m以上、また、15g/m以下、10g/m以下である。前記のような範囲でコーティングに適した耐水性特徴を有しうる。
【0062】
一具現例によれば、本発明による組成物は、コーティング剤として製造可能であり、具体例を挙げれば、紙コップ、書籍、印刷物、ショッピングバッグのような紙素材にコーティング剤として使用するか、PETなどのエステル系、EVOHなどの高分子フィルム素材にコーティング剤として使用可能なラテックス組成物として製造可能である。また、例えば、油脂紙、ピザボックス、パン袋などの食品包装材として製造可能である。
【0063】
また、コーティング用途に適するようにPHAの物性を最適化して分散性及び耐水性を向上させうる。
【0064】
本発明によれば、添加剤の使用を最小化し、エマルジョン形成のための追加的な工程が要求されない。特に、界面活性剤の含量を最小化して経済的及び効率的にPHA組成物を製造することができる。
【0065】
以下、当業者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳しく説明する。しかし、本発明は、さまざまな異なる形態として具現可能であり、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0066】
実施例1
5%固形分を有するPHA(CJ第一製糖製造、Mw 600,000、PDI 1.9、<2μm Particle size、4HB 10%)水系分散液を減圧蒸留を通じて41%の固形分を有する水系分散液として製造した。
【0067】
パドル(paddle)あるいはタービン(turbine)タイプのインペラ(impeller)を有する撹拌機に前記製造された41% PHA水系分散液98partを1500rpmで常温撹拌しながら、10%溶解されたポリビニルアルコール(PVA、kuraray社、Mw 14,200、degree of hydrolysis(DH)88mol%)1partを投入した後、1時間撹拌した。
【0068】
以後、5%キサンタンガム(ダイン素材社)分散液を1part添加し、10分間追加撹拌して40% PHA水系コーティング液を製造した。
【0069】
すなわち、PHA固形分について10% PVA 0.24重量%及び5%キサンタンガム0.12重量%を含む組成物を製造した。
【0070】
実施例2
2μm以下の粒子サイズを有する完全乾燥されたPHA powder(CJ第一製糖製造、Mw 600,000、PDI 1.9、4HB 10重量%)39partと脱イオン水56partとを入れ、常温で2時間高圧分散機に分散して、41%の固形分を有するPHA水系分散液を製造した。
【0071】
パドルあるいはタービンタイプのインペラを有する撹拌機に前記製造された41% PHA水系分散液98partを1500rpmで常温撹拌しながら、10%溶解されたポリビニルアルコール(PVA、kuraray社、Mw 14,200、DH 88%)1partを投入した後、1時間撹拌した。
【0072】
以後、5%キサンタンガム(ダイン素材社)分散液を1part添加し、10分間追加撹拌して40% PHA水系コーティング液を製造した。
【0073】
すなわち、PHA固形分について10% PVA 0.24重量%及び5%キサンタンガム0.12重量%を含む組成物を製造した。
【0074】
実施例3
5%固形分を有するPHA(CJ第一製糖製造、Mw 600,000、PDI 1.9、<2μm Particle size、4HB 10重量%)水系分散液を減圧蒸留を通じて41%の固形分を有する水系分散液として製造した。
【0075】
パドルあるいはタービンタイプのインペラを有する撹拌機に前記製造された41% PHA水系分散液99partを1500rpmで常温撹拌しながら、SDS(Sodium Lauryl Sulfate、sigma aldrich)0.1Partを投入後、1時間撹拌した。
【0076】
以後、5%キサンタンガム(ダイン素材社)分散液を1part添加し、10分間追加撹拌して40% PHA水系コーティング液を製造した。
【0077】
すなわち、PHA固形分についてSDS 0.24重量%及び5%キサンタンガム0.12重量%を含む組成物を製造した。
【0078】
実施例4
5%固形分を有するPHA(CJ第一製糖製造、Mw 600,000、PDI 1.9、<2μm Particle size、4HB 10重量%)水系分散液を減圧蒸留を通じて41%の固形分を有する水系分散液として製造した。
【0079】
パドルあるいはタービンタイプのインペラを有する撹拌機に前記製造された41% PHA水系分散液98partを1500rpmで常温撹拌しながら、10%溶解されたポリビニルアルコール(PVA、kuraray社、Mw 14,200、DH 88%)1partを投入した後、1時間撹拌した。
【0080】
以後、5%ゲランガム(ダイン素材社)分散液を1part添加し、10分間追加撹拌して40% PHA水系コーティング液を製造した。
【0081】
すなわち、PHA固形分について10% PVA 0.24重量%及び5%ゲランガム0.12重量%を含む組成物を製造した。
【0082】
実施例5
5%固形分を有するPHA(CJ第一製糖製造、Mw 600,000、PDI 1.9、<2μm Particle size、4HB 10重量%)水系分散液を減圧蒸留を通じて41%の固形分を有する水系分散液として製造した。
【0083】
パドルあるいはタービンタイプのインペラを有する撹拌機に前記製造された41% PHA水系分散液98partを1500rpmで常温撹拌しながら、10%溶解されたポリビニルアルコール(PVA、kuraray社、Mw 14,200、DH 88%)1partを投入した後、1時間撹拌した。
【0084】
以後、5%カラギーナン(ES食品原料社)分散液を1part適用後、10分間追加撹拌して40% PHA水系コーティング液を製造した。
【0085】
すなわち、PHA固形分について10% PVA 0.24重量%及び5%カラギナン0.12重量%を含む組成物を製造した。
【0086】
比較例1
5%固形分を有するPHA(CJ第一製糖製造、Mw 600,000、PDI 1.9、<2μm Particle size、4HB 10重量%)水系分散液を減圧蒸留を通じて40%の固形分を有する水系分散液として製造した。
【0087】
比較例2
5%固形分を有するPHA(CJ第一製糖製造、Mw 600,000、PDI 1.9、<2μm Particle size、4HB 10重量%)水系分散液を減圧蒸留を通じて41%の固形分を有する水系分散液として製造した。
【0088】
パドルあるいはタービンタイプのインペラを有する撹拌機に前記製造された41% PHA水系分散液99partを1500rpmで常温撹拌しながら、10%溶解されたポリビニルアルコール(PVA、kuraray社、Mw 14,200、DH 88%)1partを添加し、1時間撹拌してコーティング液を製造した。
【0089】
すなわち、PHA固形分について10% PVA 0.24重量%を含む組成物を製造した。
【0090】
比較例3
固形分を有するPHA(CJ第一製糖製造、Mw 600,000、PDI 1.9、<2μm Particle size、4HB 10重量%)水系分散液を減圧蒸留を通じて41%の固形分を有する水系分散液として製造した。
【0091】
パドルあるいはタービンタイプのインペラを有する撹拌機に前記製造された41% PHA水系分散液95partを1500rpmで常温撹拌しながら、10%溶解されたポリビニルアルコール(PVA、kuraray社、Mw 14,200、DH 88%)5partを添加し、1時間撹拌してコーティング液を製造した。
【0092】
すなわち、PHA固形分について10% PVA 1.2重量%を含む組成物を製造した。
【0093】
比較例4
5%固形分を有するPHA(CJ第一製糖製造、Mw 600,000、PDI 1.9、<2μm Particle size、4HB 10重量%)水系分散液を減圧蒸留を通じて41%の固形分を有する水系分散液として製造した。
【0094】
パドルあるいはタービンタイプのインペラを有する撹拌機に前記製造された41% PHA水系分散液98partを1500rpmで常温撹拌しながら、10%溶解されたポリビニルアルコール(PVA、kuraray社、Mw 14,200、DH 88%)1partを投入した後、1時間撹拌した。
【0095】
以後、5%アラビアガム(ES食品原料)分散液を1part添加し、10分間追加撹拌して40% PHA水系コーティング液を製造した。
【0096】
すなわち、PHA固形分について10% PVA 0.24重量%及び5%アラビアガム0.12重量%を含む組成物を製造した。
【0097】
実験例1
実施例及び比較例による組成物を苛酷評価条件下に(50℃、2週)、分散安定性を確認後、非塗工処理された坪量180g/mクラフト紙上に15g/m塗布し、170℃で10分乾燥して、コーティング作業が完了した試片を製造した。
【0098】
コーティングは、RDS社のmayer bar coaterを使用し、耐水性の評価は、TAPPI T 441規格のコッブ値を測定した値であり、試験条件は、10x10cm、100mL、2min基準である。
【0099】
分散安定性の評価結果について、実施例は、図1に、比較例は、図2に示した。また、耐水性の評価結果は、表1に示した。
【表1】
【0100】
表1のように、実施例による組成物は、紙コーティング液として優れた物性を示すことが分かる。
【0101】
一方、添加剤を含まない比較例1、レオロジー調節剤を含まない比較例2、添加剤を過量使用している比較例3及び球状の粒子状を有するアラビアガムレオロジー調節剤を使用している比較例4の場合には、その物性が紙コーティング用として適しないことを確認した。
【0102】
前記のように、本発明による組成物及び方法によれば、PHA組成物の製造工程を単純化し、添加剤の含量を最小化しながらも、組成物の使用目的に適するように物性を向上させうる。
【0103】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎないものであって、当業者ならば、本発明の本質的な特性から外れない範囲で多様な修正及び変形が可能である。
【0104】
また、本発明に開示された実施例は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためのものであり、このような実施例によって、本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって解釈されねばならず、それと同等な範囲内にあるあらゆる技術思想は、本発明の権利範囲に含まれていると解釈されねばならない。
図1
図2