特許 7603156 セルスタックおよびその製造

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2024-12-11

(45)【発行日】2024-12-19

(54)【発明の名称】セルスタックおよびその製造

(51)【国際特許分類】

   H01M 8/0228 20160101AFI20241212BHJP

   H01M 8/0206 20160101ALI20241212BHJP

   H01M 8/0247 20160101ALI20241212BHJP

   H01M 8/2404 20160101ALI20241212BHJP

   H01M 8/18 20060101ALI20241212BHJP

   C25B 9/70 20210101ALI20241212BHJP

【ＦＩ】

H01M8/0228

H01M8/0206

H01M8/0247

H01M8/2404

H01M8/18

C25B9/70

【請求項の数】 11

(21)【出願番号】P 2023521369

(86)(22)【出願日】2021-09-30

(65)【公表番号】

(43)【公表日】2023-10-30

(86)【国際出願番号】 EP2021076895

(87)【国際公開番号】W WO2022073833

(87)【国際公開日】2022-04-14

【審査請求日】2023-05-29

(31)【優先権主張番号】102020212744.1

(32)【優先日】2020-10-08

(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE

(73)【特許権者】

【識別番号】591245473

【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング

【氏名又は名称原語表記】ＲＯＢＥＲＴ ＢＯＳＣＨ ＧＭＢＨ

(74)【代理人】

【識別番号】100177839

【弁理士】

【氏名又は名称】大場 玲児

(74)【代理人】

【識別番号】100172340

【弁理士】

【氏名又は名称】高橋 始

(74)【代理人】

【識別番号】100182626

【弁理士】

【氏名又は名称】八島 剛

(72)【発明者】

【氏名】シュマイサー，ハラルド

(72)【発明者】

【氏名】イルディリム，アリ リザ

【審査官】守安 太郎

(56)【参考文献】

【文献】特開２００５－０５６８２０（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００８－０１６３６１（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００７－１０３１５２（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１８－１２９１６４（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００７－２５０４９２（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００８－２６９９５２（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００６－１４７２５５（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００７－２００７００（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００５－１１６２２７（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００７－２４２３７３（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１８－１５６８２０（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｈ０１Ｍ ８／０２

Ｈ０１Ｍ ８／２４

Ｈ０１Ｍ ８／１８

Ｃ２５Ｂ １／００

Ｃ２５Ｂ ９／００

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

システム（１０１）において媒体を分配するためのセルスタック（１００）であって、前記セルスタック（１００）は、
－複数の媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）と、
－複数の中間レイヤ（１０５ａ、１０５ｂ、１０５ｃ、１０５ｄ）と、を備え、
それぞれの中間レイヤ（１０５ａ、１０５ｂ、１０５ｃ、１０５ｄ）が２つの媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）の間に配置され、前記媒体分配プレートを電気的に互いに絶縁し、
少なくとも前記媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）が、前記セルスタック（１００）において互いに一直線に並ぶように配置され、それにより前記セルスタック（１００）の外側エッジ（１０９）が少なくとも前記媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）のそれぞれの縁によって形成されていて、
それぞれの媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）が第１のプレート（３０１ａ、３０３ａ）と前記第１のプレートの向かい側に配置された第２のプレート（３０１ｂ、３０３ｂ）を備え、
前記第１のプレート（３０１ａ、３０３ａ）および／または前記第２のプレート（３０１ｂ、３０３ｂ）のそれぞれの端に形成されたバリが、前記それぞれ向かい側に位置するプレートの方を指する、セルスタック。

【請求項2】

それぞれの媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）は、少なくとも１つの外側縁において電気絶縁層（１０７）で囲まれることを特徴とする、請求項１に記載のセルスタック（１００）。

【請求項3】

それぞれの媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）は、アノード側の縁および／またはカソード側の少なくとも前記外側縁において前記電気絶縁層（１０７）で囲まれることを特徴とする、請求項２に記載のセルスタック（１００）。

【請求項4】

それぞれの媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）が第１のプレート（３０１ａ、３０３ａ）と前記第１のプレート（３０１ａ、３０３ａ）の向かい側に配置された第２のプレート（３０１ｂ、３０３ｂ）を備え、
前記第２のプレート（３０１ｂ）が、前記第１のプレート（３０１ａ）のバリ（３１３）を収容するための収容部（３０７）を備え、
前記第１のプレート（３０１ａ）は、前記第２のプレート（３０１ｂ）に相対してずらして配置され、前記第１のプレート（３０３ａ）の前記バリ（３１３）は、前記第２のプレート（３０１ｂ）の前記収容部（３０７）に導入されることを特徴とする、請求項１から３までのいずれか１項に記載のセルスタック（１００）。

【請求項5】

システム（１０１）において媒体を分配するためのセルスタック（１００）であって、前記セルスタック（１００）は、
－複数の媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）と、
－複数の中間レイヤ（１０５ａ、１０５ｂ、１０５ｃ、１０５ｄ）と、を備え、
それぞれの中間レイヤ（１０５ａ、１０５ｂ、１０５ｃ、１０５ｄ）が２つの媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）の間に配置され、前記媒体分配プレートを電気的に互いに絶縁し、
少なくとも前記媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）が、前記セルスタック（１００）において互いに一直線に並ぶように配置され、それにより前記セルスタック（１００）の外側エッジ（１０９）が少なくとも前記媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）のそれぞれの縁によって形成されていて、
それぞれの媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）が第１のプレート（３０１ａ、３０３ａ）と前記第１のプレート（３０１ａ、３０３ａ）の向かい側に配置された第２のプレート（３０１ｂ、３０３ｂ）を備え、
前記第２のプレート（３０１ｂ）が、前記第１のプレート（３０１ａ）のバリ（３１３）を収容するための収容部（３０７）を備え、
前記第１のプレート（３０１ａ）は、前記第２のプレート（３０１ｂ）に相対してずらして配置され、前記第１のプレート（３０３ａ）の前記バリ（３１３）は、前記第２のプレート（３０１ｂ）の前記収容部（３０７）に導入される、セルスタック。

【請求項6】

少なくとも１つの媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）が第１のプレート（３０１ａ、３０３ａ）と前記第１のプレート（３０１ａ、３０３ａ）の向かい側に配置された第２のプレート（３０１ｂ、３０３ｂ）を備え、
前記第１のプレート（３０１ａ、３０３ａ）および／または前記第２のプレート（３０１ｂ、３０３ｂ）は、少なくとも１つの溝（３０９、３１５）を備え、前記溝は、それぞれ隣に配置された媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）の方向に延び、前記少なくとも１つの媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）が変形した場合に、前記隣に配置された媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）に先ず接触し、前記少なくとも１つの媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）の他の部分が前記隣に配置された媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）と接触するのを防ぐことを特徴とする、請求項１から５までのいずれか１項に記載のセルスタック（１００）。

【請求項7】

システム（１０１）において媒体を分配するためのセルスタック（１００）であって、前記セルスタック（１００）は、
－複数の媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）と、
－複数の中間レイヤ（１０５ａ、１０５ｂ、１０５ｃ、１０５ｄ）と、を備え、
それぞれの中間レイヤ（１０５ａ、１０５ｂ、１０５ｃ、１０５ｄ）が２つの媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）の間に配置され、前記媒体分配プレートを電気的に互いに絶縁し、
少なくとも前記媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）が、前記セルスタック（１００）において互いに一直線に並ぶように配置され、それにより前記セルスタック（１００）の外側エッジ（１０９）が少なくとも前記媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）のそれぞれの縁によって形成されていて、
少なくとも１つの媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）が第１のプレート（３０１ａ、３０３ａ）と前記第１のプレート（３０１ａ、３０３ａ）の向かい側に配置された第２のプレート（３０１ｂ、３０３ｂ）を備え、
前記第１のプレート（３０１ａ、３０３ａ）および／または前記第２のプレート（３０１ｂ、３０３ｂ）は、少なくとも１つの溝（３０９、３１５）を備え、前記溝は、それぞれ隣に配置された媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）の方向に延び、前記少なくとも１つの媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）が変形した場合に、前記隣に配置された媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）に先ず接触し、前記少なくとも１つの媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）の他の部分が前記隣に配置された媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）と接触するのを防ぐ、セルスタック。

【請求項8】

前記セルスタック（１００）は、以下のシステムのリスト、すなわち燃料電池システム、電解装置、およびレドックスフローシステムといったシステム（１０１）において媒体を分配するように構成されることを特徴とする、請求項１から７までのいずれか１項に記載のセルスタック（１００）。

【請求項9】

請求項１から８までのいずれか１項に記載のセルスタック（１００）を製造するための製造方法（２００）であって、
前記製造方法（２００）は、
－複数の媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）のそれぞれの媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）を、複数の中間レイヤ（１０５ａ、１０５ｂ、１０５ｃ、１０５ｄ）のそれぞれの中間レイヤとそれぞれ交互に配置する（２０１）ことと、
－前記媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）を位置合わせ（２０３）し、それにより前記それぞれの媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）が、前記セルスタックにおいて互いに一直線に並ぶように配置され、前記セルスタック（１００）の外側エッジが、少なくとも前記媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）のそれぞれの縁によって形成されることと、を包含する製造方法。

【請求項10】

前記製造方法（２００）は、
－それぞれの媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）を、少なくとも１つの外側縁において電気絶縁層（１０７）で囲むことをさらに包含することを特徴とする、請求項９に記載の製造方法。

【請求項11】

前記製造方法（２００）は、
－それぞれの媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）の縁が精密打ち抜き加工でバリ無しに打ち抜かれるか、または前記打ち抜き加工で発生するそれぞれのバリ（３０５）が前記打ち抜き加工後に除去されるか、または前記打ち抜き加工で発生するそれぞれのバリ（３０５）が前記打ち抜き加工後に成形され、それにより媒体分配プレート（３０１）のそれぞれのプレート（３０１ａ）の前記バリ（３０５）が前記媒体分配プレート（３０１）のそれぞれ向かい側に位置するプレート（３０１ｂ）の方を指す、打ち抜き加工によって、あるいは、切断加工では、媒体分配プレート（３０１）のそれぞれのプレート（３０１ａ）のバリ（３０５）が前記媒体分配プレート（３０１）のそれぞれ向かい側に位置するプレート（３０１ｂ）の方を指すように切断バリ方向が選択される、前記媒体分配プレート（１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ、３０１、３０３）を提供することをさらに包含することを特徴とする、請求項９または１０に記載の製造方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

例えば燃料電池または電解装置に見出されるようなセルスタックでは、使用可能な電圧を高くするため、または媒体処理量を高くするためにセルが重ね合わせられる。このようなセルは、能動部品（燃料電池スタックでは、多くの場合「ＭＥＡ」膜電極ユニット」と呼ばれる）と、他方、さらに別の部品からなり得る媒体分配プレート（燃料電池ではバイポーラプレートとも呼ばれる）とを交互にしたものからなる。

【背景技術】

【0002】

コスト上の理由、およびスペース節約上の理由から、それぞれの媒体分配プレートの材料厚さを最小限にすることが有利であるが、それは製造プロセス中や輸送時または最終システムへの組み込み時に媒体分配プレートのエッジが変形されるということにつながる可能性がある。そのような変形は、極端な場合には、隣接する媒体分配プレートどうしが接触し、媒体分配プレートスタックに短絡が生じるということにつながる可能性がある。

【0003】

媒体分配プレートの縁が歪んだ場合でも短絡が発生し得ないよう、それぞれの絶縁中間レイヤ（Ｚｗｉｓｃｈｅｎｌａｇｅｎ）、例えばいわゆる「サブガスケット」または縁補強材がセルスタックのそれぞれの媒体分配プレートを越えて突出することが知られている。

【発明の概要】

【0004】

提示される発明の範囲内で、それぞれの独立請求項の特徴を有するセルスタックおよび製造方法が提示される。本発明の他の特徴および詳細は、それぞれの従属請求項、以下の記載および図面から明らかになる。その場合、本発明によるセルスタックとの関連で記載される特徴および詳細は、当然のことながら本発明による製造方法との関連でも当てはまり、かつその逆もそれぞれ当てはまり、それにより個々の発明の態様の開示に関して、常に相互に参照される、もしくは参照可能である。

【0005】

提示される発明は、特に、コンパクトかつロバストなセルスタックを提供するために用いられる。特に、提示される発明は、コンパクトかつロバストな燃料電池スタックを提供するために用いられる。

【0006】

したがって、提示される発明の第１の態様では、システムにおいて媒体を分配するためのセルスタックが提示される。セルスタックは、複数の媒体分配プレートと複数の中間レイヤとを備え、それぞれの中間レイヤが２つの媒体分配プレートの間に配置され、媒体分配プレートを電気的に互いに絶縁し、少なくともそれぞれの媒体分配プレートがセルスタックにおいて互いに一直線に並ぶように配置され、それにより媒体分配スタック（Ｍｅｄｉｅｎｖｅｒｔｅｉｌｅｒｓｔａｐｅｌ）の外側エッジが少なくとも媒体分配プレートのそれぞれの縁によって形成されている。

【0007】

提示される発明の文脈において、媒体分配プレートとは、例えば燃料電池などのシステム内で、例えば水素などの少なくとも１つの媒体を導くための平らな構造と解されるべきである。

【0008】

提示される発明の文脈において、中間レイヤとは、２つの媒体分配プレートの間に配置された、例えば燃料電池システムのいわゆる「アクティブレイヤ（Ａｋｔｉｖｌａｇｅ）」などの電気絶縁層と解されるべきである。

【0009】

提示されるセルスタックは、交互に積層された媒体分配プレートと中間レイヤをベースとする。その場合、少なくとも媒体分配プレートは互いに一直線に並ぶように配置されている。したがって媒体分配プレートの特に硬いそれぞれの端が、提示されるセルスタックのエッジを形成する。

【0010】

提示されるセルスタックのエッジが少なくとも部分的に媒体分配プレートによって形成されることによって、セルスタックのエッジが特に硬く、したがって負荷可能である。これは、セルスタックが変形に対して非常にロバストであり、したがって、例えば燃料電池システムなどの対象システムに容易に導入でき、エッジで位置合わせできることを意味する。

【0011】

特に、提示されるセルスタックの構造は、短絡の危険が高まることを見込むことなく、個々のレイヤを位置合わせレール（Ａｕｓｒｉｃｈｔｕｎｇｓｓｃｈｉｅｎｅｎ）、またはそれに類するものに沿って積み重ねることを可能にする。それに加えて、提示されるセルスタックの構造によって、それぞれの収容部にセルスタックを押し込む際の損傷が回避される。

【0012】

媒体分配プレートが互いに、かつ提示されるセルスタックの中間レイヤに対して一直線に並ぶように配置されることを企図することができ、それにより媒体分配プレートと中間レイヤが一緒にセルスタックのエッジを形成する。

【0013】

それぞれの媒体分配プレートに設けられた、例えばプラスチック層などの絶縁層が、例えば１つまたは複数の媒体分配プレートが曲がることによって生じる可能性のある２つの媒体分配プレートの接触時に、それぞれ接触する媒体分配プレート間の電気的短絡を防ぐ。

【0014】

さらに、それぞれの媒体分配プレートが、アノード側の縁、および／またはカソード側の少なくとも外側の縁において電気絶縁層で囲まれることを企図することができる。

【0015】

絶縁層を、それぞれの媒体分配プレートにおいて周回して、または部分的に配置することができるが、常に縁領域を、すなわち提示されるセルスタックのエッジを形成するそれぞれの媒体分配プレートの外側エッジを囲む。

【0016】

さらに、それぞれの媒体分配プレートが第１のプレートと第１のプレートの向かい側に配置された第２のプレートを備え、第１のプレートおよび／または第２のプレートのそれぞれの端に形成されたバリが、それぞれ向かい側に位置するプレートの方を指すことを企図することができる。

【0017】

媒体分配プレートの製造時には、例えばプラスチック絶縁層などの構造と接触すると即座に甚大な損傷につながり得る切断エッジもしくはバリが発生する可能性がある。互いの方、すなわち向かい側に位置するそれぞれのプレートの方を指す媒体分配プレートのいくつかのプレートのバリによって、媒体分配プレートに隣接する、もしくは媒体分配プレートを囲む、例えば絶縁層などの構造がバリによって損傷することを回避できる。

【0018】

さらに、少なくとも１つの媒体分配プレートが第１のプレートと第１のプレートの向かい側に配置された第２のプレートとを備えることを企図することができ、第１のプレートおよび／または第２のプレートは、少なくとも１つの溝（Ｓｉｃｋｅ）を備え、溝は、それぞれ隣に配置された媒体分配プレートの方向に延び、少なくとも１つの媒体分配プレートが変形した場合に、隣に配置された媒体分配プレートに先ず接触し、少なくとも１つの媒体分配プレートの他の部分が隣に配置された媒体分配プレートと接触するのを防ぐ。

【0019】

例えば材料突出部もしくは基材の隆起、特に媒体分配プレートのプレートを形成する材料における隆起などの溝は、媒体分配プレートが変形した場合に、媒体分配プレートに隣接するそれぞれの構造に先ず接触し、媒体分配プレートが動いた場合の運動エネルギーを吸収するバッファゾーンとして機能する。溝で運動エネルギーを吸収することにより、媒体プレート自体の動きが制限され、特に媒体分配プレートの電圧が存在する領域と隣接する構造との接触が回避される。

【0020】

溝は、それぞれの媒体分配プレートに配置され、例えばフレキシブルな材料からなってもよいし、媒体分配プレートを形成する材料自体で作られてもよい。

【0021】

さらに、セルスタックが、システムの以下のリスト、すなわち燃料電池システム、電解装置およびレドックスフローシステムといったシステムにおいて媒体を分配するように構成されることをさらに企図することができる。

【0022】

提示されるセルスタックは、例えばＰＥＭ燃料電池システムのような、それ自体で電気伝導する部品を絶縁中間レイヤと積み重ねることが問題になるあらゆる電気化学的ユニットにおいて使用するのに適している。

【0023】

第２の態様では、提示される発明は、提示されるセルスタックの可能な実施形態を製造するための製造方法に関する。提示される製造方法は、複数の媒体分配セルのそれぞれの媒体分配プレートをそれぞれ複数の中間レイヤのそれぞれの中間レイヤと交互に配置する配置ステップを包含する。さらに、提示される製造方法は、少なくとも媒体分配プレートを位置合わせし、それによりそれぞれの媒体分配プレートがセルスタックにおいて互いに一直線に並ぶように配置され、セルスタックの外側エッジが媒体分配プレートの少なくともそれぞれの縁によって形成される、位置合わせステップを包含する。

【0024】

本発明により企図される位置合わせステップによって、例えば従来技術による製造方法において縁補強部が押し込まれたり、倒れたりすることによって知られるスタック欠陥（Ｓｔａｐｅｌｆｅｈｌｅｒ）が配置ステップではるかに生じにくい。さらに、提示される製造方法を実施する場合、媒体分配プレートの個々のレイヤを位置合わせ要素に機械的に当てることができるため、従来技術による製造方法の場合よりも媒体分配プレートと中間レイヤを正確かつ安価に積み重ねることができる。

【0025】

製造方法は、さらに、それぞれの媒体分配プレートを少なくとも１つの外側の縁において電気絶縁層で囲む絶縁ステップを包含することを企図することができる。

【0026】

電気絶縁層は、例えばプラスチックまたはワックスであり得る。例えば、提示される製造方法の配置ステップの前に、それぞれの媒体分配プレートを液体の電気絶縁材料の浴に少なくとも部分的に入れ、続いて硬化させることができる。これに代えて、配置ステップの後に、電気絶縁体を、例えば被せることによってそれぞれの媒体分配プレートに配置することができる。

【0027】

さらに、製造方法は、それぞれの媒体分配プレートの縁が精密打ち抜き加工でバリ無しに打ち抜かれるか、または打ち抜き加工で発生するそれぞれのバリが除去されるか、または打ち抜き加工で発生するそれぞれのバリが変形成形され、それにより媒体分配プレートのそれぞれのプレートのバリが媒体分配プレートのそれぞれ向かい側に位置するプレートの方を指す打ち抜き加工によって、あるいは切断加工では、媒体分配プレートのそれぞれのプレートのバリが媒体分配プレートのそれぞれ向かい側に位置するプレートの方を指すように切断バリ方向が選択される、媒体分配プレートを提供するための提供ステップを包含することを企図することができる。

【0028】

特にそれぞれ媒体分配プレートに載置された電気絶縁層の損傷を防ぐために、それぞれの媒体分配プレートの切断エッジの無い、もしくはバリの無いジオメトリが有用である。それぞれの媒体分配プレートのバリ取りは、金属板から媒体分配プレートを打ち抜くための打ち抜き加工中に、またはその後に別個の工程で行うことができる。特に媒体分配プレートのプレートのそれぞれの縁もしくはバリを、打ち抜き加工（Ｓｔａｎｄｐｒｏｚｅｓｓ）の後、これらが向かい側に位置するように配置された媒体分配プレートのプレートに向けて、したがって媒体分配プレートに載置される絶縁層から離れる方向を指すように変形させることができる。

【0029】

本発明の他の利点、特徴、および詳細は、図面を参照しながら本発明の実施例が詳しく説明される以下の説明から明らかになる。その場合、請求項および明細書中で言及される特徴は、それぞれ個々に単独で、または任意の組み合わせで提示される発明の実施形態に寄与することができる。

【図面の簡単な説明】

【0030】

【図1】提示されるセルスタックの可能な実施形態の図である。

【図2】提示される製造方法の可能な実施形態の図である。

【図3】提示されるセルスタックの可能な実施形態による媒体分配プレートの様々な実施形態の詳細図である。

【発明を実施するための形態】

【0031】

図１にセルスタック１００が示される。セルスタック１００は、例えば燃料電池システムなどのシステム１０１の一部である。

【0032】

セルスタック１００は、複数の媒体分配プレート１０３ａ、１０３ｂおよび１０３ｃと複数の中間レイヤ１０５ａ、１０５ｂ、１０５ｃおよび１０５ｄとを備える。

【0033】

媒体分配プレート１０３ａ、１０３ｂおよび１０３ｃは、それらのそれぞれの端において電気絶縁体１０７で囲まれる。

【0034】

媒体分配プレート１０３ａ、１０３ｂおよび１０３ｃは、本発明によれば互いに一直線に並ぶように配置され、それにより媒体分配プレート１０３ａ、１０３ｂおよび１０３ｃのそれぞれの端によってセルスタック１００のエッジ１０９が形成される。

【0035】

ここでは、媒体分配プレート１０３ｂが機械的衝撃によって変形され、それによって媒体分配プレート１０３ｂの一端が媒体分配プレート１０３ａの一端を押す。媒体分配プレート１０３ｂおよび１０３ａに電気絶縁体１０７があることで、媒体分配プレート１０３ｂと１０３ａが接触しても、媒体分配プレート１０３ｂと１０３ａの間に電流が流れることはなく、それにより短絡が回避される。

【0036】

図２に、提示されるセルスタック、例えばセルスタック１００の可能な実施形態を製造するための製造方法２００が示される。

【0037】

製造方法２００は、複数の媒体分配セルのそれぞれの媒体分配プレートを複数の中間レイヤのそれぞれの中間レイヤとそれぞれ交互に配置するための配置ステップ２０１を包含する。

【0038】

さらに、提示した製造方法は、少なくとも媒体分配プレートを位置合わせするための位置合わせステップ２０３を包含し、それによりそれぞれの媒体分配プレートがセルスタックにおいて互いに一直線に並ぶように配置され、少なくとも媒体分配プレートのそれぞれの縁によってセルスタックの外側エッジが形成される。

【0039】

媒体分配プレートを位置合わせするために、セルスタックが繰り返し、例えばセルスタックに追加の媒体分配プレートを載置する場合、またはそれぞれ最後の媒体分配プレートを載置する場合にストッパ要素に当たる可能性がある。

【0040】

図３に、媒体分配プレート３０１と媒体分配プレート３０３が示されている。

【0041】

媒体分配プレート３０１は、第１のプレート３０１ａと第２のプレート３０１ｂを備える。第１のプレート３０１ａは、その端が第２のプレート３０１ｂの方向に曲げられ、それにより第１のプレート３０１ａのバリ３０５が第２のプレート３０１ｂの収容部３０７に入り込み、それに応じて周辺がバリ３０５に対して保護される。

【0042】

特に、バリ３０５が収容部３０７に配置されることで、第１のプレート３０１ａおよび第２のプレート３０１ｂに被さる電気絶縁体がバリ３０５による損傷を受けるのを回避することができる。

【0043】

媒体分配プレート３０３は、第１のプレート３０３ａと第２のプレート３０３ｂを備える。第１のプレート３０３ａは、第１のプレート３０３ａのベース領域３１１上に持ち上がる溝３０９を備える。したがって溝３０９は外に向きに、第２のプレート３０３ｂから離れる方向に曲げられる。

【0044】

媒体分配プレート３０３が動いた場合に、溝３０９は先ず媒体分配プレート３０３の周辺に配置されたそれぞれの構造とぶつかり、媒体分配プレートに蓄積された運動エネルギーを減少させるということが、溝３０９の湾曲によって達成される。それに応じてベース領域３１１とそれぞれの構造との接触が回避される。したがって、第１のプレート３０３ａのバリ３１３が溝３０９によって他の構造との接触に対して保護されるので、このバリを第２のプレート３０３ｂから離れる方向に曲げることができる。

【0045】

溝３０９と同様に、第２のプレート３０３ｂは溝３１５を備え、この溝は、媒体分配プレート３０３の周辺における構造との接触に対して第２のプレート３０３ｂのベース領域３１７を保護する。

【符号の説明】

【0046】

１００ セルスタック
１０１ システム
１０３ａ、１０３ｂ、１０３ｃ 媒体分配プレート
１０５ａ、１０５ｂ、１０５ｃ、１０５ｄ 中間レイヤ
１０７ 電気絶縁層
１０９ エッジ
２００ 製造方法
２０１ 配置ステップ
２０３ 位置合わせステップ
３０１ 媒体分配プレート
３０１ａ 第１のプレート
３０１ｂ 第２のプレート
３０３ 媒体分配プレート
３０３ａ 第１のプレート
３０３ｂ 第２のプレート
３０５ バリ
３０７ 収容部
３０９ 溝
３１１ ベース領域
３１３ バリ
３１５ 溝
３１７ ベース領域

【図1】

【図2】

【図3】