(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】マニピュレータシステム、マニピュレータシステムの制御方法およびマニピュレータシステムの制御装置
(51)【国際特許分類】
A61B 1/005 20060101AFI20241212BHJP
A61B 34/00 20160101ALI20241212BHJP
【FI】
A61B1/005 523
A61B34/00
(21)【出願番号】P 2023542115
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 JP2021030310
(87)【国際公開番号】W WO2023021641
(87)【国際公開日】2023-02-23
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】小室 考広
(72)【発明者】
【氏名】岸 宏亮
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-316803(JP,A)
【文献】特開平4-241829(JP,A)
【文献】特開平6-304126(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0256071(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
A61B 34/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マニピュレータと、
該マニピュレータが取り外し可能に接続され該マニピュレータを電動駆動する駆動装置と、
前記マニピュレータおよび前記駆動装置を制御する制御装置と、
前記駆動装置に設けられた第1センサと、
前記マニピュレータおよび前記駆動装置のいずれかに設けられた第2センサとを備え、
前記制御装置は、
前記駆動装置が電力に応じて正常に動作することを前記第1センサの出力に基づいて確認する第1ステップと、
前記マニピュレータが前記駆動装置に接続されていることを前記第2センサの出力に基づいて確認する第2ステップとを実行し、
前記第1ステップが、前記第1センサが正常であるか否かを確認することを含み、
前記第2ステップが、前記第1ステップにおいて正常であると確認された前記第1センサの出力と前記第2センサの出力とに基づいて、該第2センサが正常であるか否かを確認することを含む、マニピュレータシステム。
【請求項2】
前記駆動装置が、前記電力によって駆動力を発生する動力発生部を備え、
前記第2ステップにおいて、前記マニピュレータが前記駆動装置に接続されていることを前記第2センサの出力が示し、かつ、前記第1センサの出力が前記駆動力に応じて変化する場合、前記第2センサが正常であると判断する、請求項1に記載のマニピュレータシステム。
【請求項3】
前記マニピュレータが、可動部と、該可動部に前記駆動力を伝達する駆動ワイヤとを備え、
前記動力発生部が、前記駆動力として回転力を発生するモータを備え、
前記第1センサが、前記モータのトルクを検出するトルクセンサであり、
前記第2センサが、前記駆動ワイヤと前記モータとの連結を検出するカップリングセンサである、請求項2に記載のマニピュレータシステム。
【請求項4】
前記マニピュレータは、前記駆動ワイヤの端部が巻き付けられ回転可能に支持されたプーリと、該プーリの基端に固定されたカップリング部とを有し、
前記駆動装置が、前記モータによって回転させられるシャフトと、該シャフトの先端に固定され前記カップリング部と嵌合可能な被カップリング部とを有し、
前記シャフトが該シャフトの回転軸に沿って進退可能に支持され、前記カップリング部が前記被カップリング部に嵌合することによって前記シャフトが前記回転軸に沿って変位し、
前記カップリングセンサが、前記シャフトの変位に基づいて前記カップリング部と前記被カップリング部との嵌合を検出する、請求項3に記載にマニピュレータシステム。
【請求項5】
前記第2ステップにおいて、
前記第1センサおよび前記第2センサの一方の出力から前記第1センサおよび前記第2センサの他方の出力の推定値を算出し、
前記第1センサおよび前記第2センサの前記他方の出力と、該他方の出力の前記推定値との差が所定の範囲内である場合、前記第2センサが正常であると判断する、請求項1に記載のマニピュレータシステム。
【請求項6】
前記マニピュレータが、可動部と、該可動部に駆動力を伝達する駆動ワイヤとを備え、
前記第1センサが、前記駆動装置に設けられたモータのトルクを検出するトルクセンサであり、
前記第2センサが、前記駆動ワイヤの張力を検出する張力センサである、請求項5に記載のマニピュレータシステム。
【請求項7】
前記制御装置は、さらに、
前記マニピュレータの可動部が前記駆動装置から伝達される駆動力に従って正常に動作することを第3センサの出力に基づいて確認する第3ステップを実行し、
該第3ステップが、前記第1ステップにおいて正常であると確認された前記第1センサの出力と前記第3センサの出力とに基づいて該第3センサが正常であるか否かを確認することを含む、請求項1から請求項6のいずれかに記載のマニピュレータシステム。
【請求項8】
前記第3ステップにおいて、
前記第1センサおよび前記第3センサの一方の出力から前記第1センサおよび前記第3センサの他方の出力の推定値を算出し、
前記第1センサおよび前記第3センサの前記他方の出力と、該他方の出力の推定値との差が所定の範囲内である場合、前記第3センサが正常であると判断する、請求項7に記載のマニピュレータシステム。
【請求項9】
前記マニピュレータが、可動部と、該可動部に前記駆動力を伝達する駆動ワイヤとを備え、
前記第1センサが、前記駆動装置に設けられたモータのトルクを検出するトルクセンサであり、
前記第3センサが、前記駆動ワイヤの張力を検出する張力センサである、請求項8に記載のマニピュレータシステム。
【請求項10】
マニピュレータシステムの制御方法であって、前記マニピュレータシステムが、マニピュレータと、該マニピュレータが取り外し可能に接続され該マニピュレータを電動駆動する駆動装置とを備え、
前記駆動装置が電力に応じて正常に動作することを第1センサの出力に基づいて確認する第1ステップと、
前記マニピュレータが前記駆動装置に接続されていることを第2センサの出力に基づいて確認する第2ステップとを含み、
前記第1ステップが、前記第1センサが正常であるか否かを確認することを含み、
前記第2ステップが、前記第1ステップにおいて正常であると確認された前記第1センサの出力と前記第2センサの出力とに基づいて、該第2センサが正常であるか否かを確認することを含む、制御方法。
【請求項11】
前記駆動装置が、前記電力によって駆動力を発生する動力発生部を備え、
前記第2ステップにおいて、前記マニピュレータが前記駆動装置に接続されていることを前記第2センサの出力が示し、かつ、前記第1センサの出力が前記駆動力に応じて変化する場合、前記第2センサが正常であると判断する、請求項10に記載の制御方法。
【請求項12】
前記第2ステップにおいて、
前記第1センサおよび前記第2センサの一方の出力から前記第1センサおよび前記第2センサの他方の出力の推定値を算出し、
前記第1センサおよび前記第2センサの前記他方の出力と、該他方の出力の前記推定値との差が所定の範囲内である場合、前記第2センサが正常であると判断する、請求項10に記載の制御方法。
【請求項13】
前記マニピュレータの可動部が前記駆動装置から伝達される駆動力に従って正常に動作することを第3センサの出力に基づいて確認する第3ステップをさらに含み、
該第3ステップが、前記第1ステップにおいて正常であると確認された前記第1センサの出力と前記第3センサの出力とに基づいて該第3センサが正常であるか否かを確認することを含む、請求項10から請求項12のいずれかに記載の制御方法。
【請求項14】
前記第3ステップにおいて、
前記第1センサおよび前記第3センサの一方の出力から前記第1センサおよび前記第3センサの他方の出力の推定値を算出し、
前記第1センサおよび前記第3センサの前記他方の出力と、該他方の出力の推定値との差が所定の範囲内である場合、前記第3センサが正常であると判断する、請求項13に記載の制御方法。
【請求項15】
マニピュレータシステムの制御方法であって、前記マニピュレータシステムが、マニピュレータと、該マニピュレータが取り外し可能に接続され該マニピュレータを電動駆動する駆動装置とを備え、
前記駆動装置が電力に応じて正常に動作することを第1センサの出力に基づいて確認する第1ステップと、
前記マニピュレータが前記駆動装置に接続されていることを前記第1センサの出力に基づいて確認する第2ステップとを含み、
前記第2ステップが、前記第1センサの出力と第4センサの出力とに基づいて、前記第1センサが正常であるか否かを確認することを含む、制御方法。
【請求項16】
前記第1センサが、前記駆動装置に設けられたモータのトルクを検出するトルクセンサであり、
前記第4センサが、前記モータの電流を検出する電流センサである、請求項15に記載の制御方法。
【請求項17】
前記駆動装置が、モータを有するワイヤ駆動部を備え、
前記マニピュレータが、可動部と、前記ワイヤ駆動部と着脱されるワイヤ着脱部と、該ワイヤ着脱部から前記可動部まで延びる複数の駆動ワイヤとを有し、
前記第2ステップが、前記ワイヤ着脱部が前記ワイヤ駆動部に接続されていることを第5センサの出力と第6センサの出力とに基づいて確認することを含む、請求項10から請求項16のいずれかに記載の制御方法。
【請求項18】
前記第5センサが、前記ワイヤ着脱部と前記ワイヤ駆動部との接続を検出する着脱センサであり、
前記第6センサが、前記複数の駆動ワイヤの拮抗状態を検出する拮抗センサである、請求項17に記載の制御方法。
【請求項19】
マニピュレータシステムの制御装置であって、前記マニピュレータシステムが、マニピュレータと、該マニピュレータが取り外し可能に接続され該マニピュレータを電動駆動する駆動装置とを備え、
前記制御装置は、
前記駆動装置が電力に応じて正常に動作することを第1センサの出力に基づいて確認する第1ステップと、
前記マニピュレータが前記駆動装置に接続されていることを第2センサの出力に基づいて確認する第2ステップとを実行し、
前記第1ステップが、前記第1センサが正常であるか否かを確認することを含み、
前記第2ステップが、前記第1ステップにおいて正常であると確認された前記第1センサの出力と前記第2センサの出力とに基づいて、該第2センサが正常であるか否かを確認することを含む、制御装置。
【請求項20】
前記駆動装置が、前記電力によって駆動力を発生する動力発生部を備え、
前記第2ステップにおいて、前記マニピュレータが前記駆動装置に接続されていることを前記第2センサの出力が示し、かつ、前記第1センサの出力が前記駆動力に応じて変化する場合、前記第2センサが正常であると判断する、請求項19に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニピュレータシステム、マニピュレータシステムの制御方法およびマニピュレータシステムの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電動式の医療用装置には、医療用装置が正常に動作することを確認するためのセンサが搭載されている(例えば、特許文献1参照。)。医療用装置の正常な動作を担保するために、センサの二重化が一般に行われている。例えば、特許文献1に記載の電動外科用器具には、1つのモータに対して2組のモータ位置センサおよびプロセッサが搭載され、2つのモータ位置センサの少なくとも一方の値が正常でない場合、少なくとも一方のプロセッサがモータを停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなセンサの二重化は、センサの故障を検知する手段として一般に用いられる。一方、特許文献1において、エンドエフェクタを含むシャフトアセンブリが、モータを含むハウジングに着脱可能である。このような着脱式かつ電動式の医療用装置の場合、医療用装置の正常な動作を担保するために、着脱を検出するためのセンサ等、多くのセンサが搭載されている。したがって、センサの二重化は、装置のサイズおよびコストの顕著な増加を招く。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、センサを二重化することなく装置の異常を検知することができるマニピュレータシステム、マニピュレータシステムの制御方法およびマニピュレータシステム制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、マニピュレータと、該マニピュレータが取り外し可能に接続され該マニピュレータを電動駆動する駆動装置と、前記マニピュレータおよび前記駆動装置を制御する制御装置と、前記駆動装置に設けられた第1センサと、前記マニピュレータおよび前記駆動装置のいずれかに設けられた第2センサとを備え、前記制御装置は、前記駆動装置が電力に応じて正常に動作することを第1センサの出力に基づいて確認する第1ステップと、前記マニピュレータが前記駆動装置に接続されていることを第2センサの出力に基づいて確認する第2ステップとを実行し、前記第1ステップが、前記第1センサが正常であるか否かを確認することを含み、前記第2ステップが、前記第1ステップにおいて正常であると確認された前記第1センサの出力と前記第2センサの出力とに基づいて、該第2センサが正常であるか否かを確認することを含む、マニピュレータシステムである。
【0007】
本発明の他の態様は、マニピュレータシステムの制御方法であって、前記マニピュレータシステムが、マニピュレータと、該マニピュレータが取り外し可能に接続され該マニピュレータを電動駆動する駆動装置とを備え、前記駆動装置が電力に応じて正常に動作することを第1センサの出力に基づいて確認する第1ステップと、前記マニピュレータが前記駆動装置に接続されていることを第2センサの出力に基づいて確認する第2ステップとを含み、前記第1ステップが、前記第1センサが正常であるか否かを確認することを含み、前記第2ステップが、前記第1ステップにおいて正常であると確認された前記第1センサの出力と前記第2センサの出力とに基づいて、該第2センサが正常であるか否かを確認することを含む、制御方法である。
【0008】
本発明の他の態様は、マニピュレータシステムの制御装置であって、前記マニピュレータシステムが、マニピュレータと、該マニピュレータが取り外し可能に接続され該マニピュレータを電動駆動する駆動装置とを備え、前記制御装置は、前記駆動装置が電力に応じて正常に動作することを第1センサの出力に基づいて確認する第1ステップと、前記マニピュレータが前記駆動装置に接続されていることを第2センサの出力に基づいて確認する第2ステップとを実行し、前記第1ステップが、前記第1センサが正常であるか否かを確認することを含み、前記第2ステップが、前記第1ステップにおいて正常であると確認された前記第1センサの出力と前記第2センサの出力とに基づいて、該第2センサが正常であるか否かを確認することを含む、制御装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、センサを二重化することなく装置の異常を検知することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係るマニピュレータシステムの全体構成図である。
【
図2】マニピュレータと駆動装置との接続を説明する部分構成図である。
【
図3A】ワイヤ着脱部およびワイヤ駆動部の構成図であり、ワイヤ着脱部がワイヤ駆動部から取り外されている状態を示す図である。
【
図3B】ワイヤ着脱部およびワイヤ駆動部の構成図であり、ワイヤ着脱部がワイヤ駆動部に接続されている状態を示す図である。
【
図4】ワイヤ着脱部がワイヤ駆動部に接続されている他の状態を示す図である。
【
図5】マニピュレータシステムの制御装置のブロック図である。
【
図6】マニピュレータシステムの起動時に制御装置が実行する制御方法のフローチャートである。
【
図7】第1実施形態に係るマニピュレータの制御方法を示す表であり、各シーケンスにおいて実行されるステップと、各ステップにおいて使用されるセンサと、を説明する表である。
【
図8A】湾曲ワイヤとモータとの連結を確認するステップのフローチャートである。
【
図8B】カップリングセンサを検査するステップのフローチャートである。
【
図8C】張力センサを検査するステップのフローチャートである。
【
図9】張力センサによって検出される湾曲ワイヤの張力と、トルクセンサによって検出されるモータのトルクとの関係を説明する図である。
【
図10】第2実施形態に係るマニピュレータの制御方法を示す表であり、各シーケンスにおいて実行されるステップと、各ステップにおいて使用されるセンサと、を説明する表である。
【
図11】湾曲ワイヤとモータとの連結を確認するステップのフローチャートである。
【
図12】第3実施形態に係るマニピュレータの制御方法を示す表であり、各シーケンスにおいて実行されるステップと、各ステップにおいて使用されるセンサと、を説明する表である。
【
図13】トルクセンサによって検出されるモータのトルクと、電流センサによって検出されるモータの電流との関係を説明する図である。
【
図14】湾曲ワイヤとモータとの連結を確認するステップのフローチャートである。
【
図15】第4実施形態に係るマニピュレータの制御方法を示す表であり、各シーケンスにおいて実行されるステップと、各ステップにおいて使用されるセンサと、を説明する表である。
【
図16】ワイヤ着脱部とワイヤ駆動部との接続を確認するステップのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るマニピュレータシステムの制御方法、マニピュレータシステムの制御装置およびマニピュレータシステムについて図面を参照して説明する。
図1に示されるように、本実施形態に係るマニピュレータシステム100は、電動式のマニピュレータ1と、マニピュレータ1が取り外し可能に接続されマニピュレータ1を電動駆動する駆動装置2と、マニピュレータ1を駆動するための操作が術者によって入力される操作装置3と、マニピュレータ1および駆動装置2を制御する制御装置4と、映像プロセッサ5と、表示装置6とを備える。
【0012】
マニピュレータ1は、患者の体腔内に挿入される電動の軟性内視鏡、腹腔鏡(硬性内視鏡)、あるいは、先端にエンドエフェクタやアームを備えた医療用マニピュレータである。以降、マニピュレータ1として、電動の軟性内視鏡を例に説明する。マニピュレータ1が電動内視鏡の場合、処置具7が、延長チューブ8を経由してマニピュレータ1内に挿入される。マニピュレータ1によって取得された内視鏡映像は、映像プロセッサ5を経由して表示装置6に入力され、表示装置6に表示される。
操作装置3は、操作ケーブル3aを経由して駆動装置2のアダプタ2aと接続され、操作装置3に入力された操作入力は、操作装置3から駆動装置2に入力される。駆動装置2に内蔵された制御装置4は、操作入力に基づいて駆動装置2を制御することによって、操作入力に応じてマニピュレータ1を動作させる。
【0013】
図1および
図2に示されるように、マニピュレータ1は、湾曲部(可動部)12を有する挿入部11と、挿入部11の基端部に設けられ駆動装置2のアダプタ2bに接続される第1着脱部13と、挿入部11の基端部に設けられ映像プロセッサ5のアダプタ5aに接続される第2着脱部14と、第1着脱部13から湾曲部12まで延び駆動装置2の駆動力を湾曲部12に伝達する複数の湾曲ワイヤ(駆動ワイヤ)15とを備える。
【0014】
挿入部11は、可撓性を有する長尺の部材であり、湾曲部12は、挿入部11の先端部に設けられている。複数の湾曲ワイヤ15は、挿入部11内に形成され挿入部11の長手方向に延びる内部経路(図示略)に配置されている。
【0015】
湾曲部12は、第1湾曲部(可動部)121と、第1湾曲部121の基端側に設けられた第2湾曲部(可動部)122とを有する。第1湾曲部121および第2湾曲部122の各々は、上、下、左および右に湾曲可能である。第1湾曲部121には、第1湾曲部121を上、下、左および右にそれぞれ湾曲させるための4本の湾曲ワイヤ15が接続されている。第2湾曲部122には、第2湾曲部122を上、下、左および右にそれぞれ湾曲させるための4本の湾曲ワイヤ15が接続されている。
【0016】
図2に示されるように、第1着脱部13は、湾曲ワイヤ15を駆動装置2に着脱する機構である4つのワイヤ着脱部16を有する。各ワイヤ着脱部16は、一対の湾曲ワイヤ15の基端部に設けられ、一対の湾曲ワイヤ15を駆動装置2に着脱する。例えば、4つのワイヤ着脱部16は、第1湾曲部121の上下湾曲用の一対の湾曲ワイヤ15、第1湾曲部121の左右湾曲用の一対の湾曲ワイヤ15、第2湾曲部122の上下湾曲用の一対の湾曲ワイヤ15、第2湾曲部122の左右湾曲用の一対の湾曲ワイヤ15を、それぞれ駆動装置2に着脱する。
【0017】
駆動装置2は、電源(図示略)と接続され、電源から供給される電力によって作動する。駆動装置2は、湾曲ワイヤ15を駆動する機構である4つのワイヤ駆動部21を有する。第1着脱部13のアダプタ2bへの接続によって、4つのワイヤ駆動部21は、4つのワイヤ着脱部16とそれぞれカップリングし、一対の湾曲ワイヤ15をそれぞれ駆動することができる。例えば、4つのワイヤ駆動部21は、第1湾曲部121の上下湾曲用の一対の湾曲ワイヤ15、第1湾曲部121の左右湾曲用の一対の湾曲ワイヤ15、第2湾曲部122の上下湾曲用の一対の湾曲ワイヤ15、第2湾曲部122の左右湾曲用の一対の湾曲ワイヤ15を、それぞれ駆動する。
【0018】
図3Aおよび
図3Bは、ワイヤ着脱部16およびワイヤ駆動部21の構成を示している。
図3Aは、相互に分離している状態のワイヤ着脱部16およびワイヤ駆動部21を示し、
図3Bは、相互に接続されている状態のワイヤ着脱部16およびワイヤ駆動部21を示している。
図3Aおよび
図3Bは、例えば、第1湾曲部121の上下湾曲用の一対の湾曲ワイヤ15を含むワイヤ着脱部16およびワイヤ駆動部21を示している。他のワイヤ着脱部16および他のワイヤ駆動部21も、
図3Aおよび
図3Bの構成を有する。
各ワイヤ着脱部16は、一対の回転ドラム17と、一対の回転ドラム17を支持する支持部材18と、一対の回転ドラム17を相互に連結する連結機構19とを有する。
支持部材18は、ワイヤ着脱部16がワイヤ駆動部21とカップリングした状態において、ワイヤ駆動部21に対して固定される部分である。
【0019】
各回転ドラム17は、挿入部11の長手方向Aに延びる回転軸B回りに回転可能に支持部材18に持されている。各回転ドラム17は、回転軸Bと同軸に配置された巻取プーリ17aと、巻取プーリ17aに固定され回転軸Bと同軸に配置されたギア17bとを有する。
各湾曲ワイヤ15の基端部は、プーリ20を経由して巻取プーリ17aへ導かれ、巻取プーリ17aに巻き付けられている。回転ドラム17が回転軸B回りに回転することによって、湾曲ワイヤ15は、牽引されまたは送り出される。ギア17bは、巻取プーリ17aと一体的に回転する平歯車である。
【0020】
連結機構19は、ワイヤ着脱部16がワイヤ駆動部21から分離した状態において、一対の回転ドラム17の回転を制限し一対の湾曲ワイヤ15が弛むことを防止するためのものである。連結機構19は、円柱部材19aと、リンクギア19bと、弾性部材19cとを有する。
【0021】
円柱部材19aは、長手方向Aに延びる回転軸C回りに回転可能かつ長手方向に進退可能に、支持部材18に支持されている。回転軸Cは、回転ドラム17の回転軸Bと平行である。円柱部材19aの基端部は、支持部材18を貫通してワイヤ着脱部16の外側に突出し、ワイヤ着脱部16の基端側に露出している。
リンクギア19bは、円柱部材19aに固定され回転軸Cと同軸に配置された平歯車である。
弾性部材19cは、例えばバネであり、リンクギア19bおよび円柱部材19aを基端側A2へ付勢する。
【0022】
図3Aに示されるように、ワイヤ着脱部16がワイヤ駆動部21から分離した状態において、弾性部材19cによって付勢されたリンクギア19bおよび円柱部材19aは、第1位置に配置される。第1位置のリンクギア19bは、一対のギア17bの間に配置され、一対のギア17bの両方と噛み合う。その結果、一対の回転ドラム17は、相互に連動して相互に逆方向に回転し、一対の湾曲ワイヤ15は、一本のワイヤがループしているように連動して牽引または送出される(ループ状態)。ループ状態において、湾曲部12が外力によって上または下に湾曲した場合、一対の湾曲ワイヤ15は弛まず、回転ドラム17の回転角度と湾曲部12の湾曲角度との関係が維持される。
【0023】
一方、
図3Bに示されるように、ワイヤ着脱部16がワイヤ駆動部21に接続された状態において、円柱部材19aは、弾性部材19cの付勢力に抗して係合部材26a(後述)によって先端側A1へ押圧され、リンクギア19bおよび円柱部材19aは第2位置に配置される。第2位置に配置されたリンクギア19bは、一対のギア
17bに噛み合わない。その結果、一対の回転ドラム17は連動して回転せず、一対の湾曲ワイヤ15は相互に独立に牽引または送出される(拮抗状態)。
【0024】
また、各ワイヤ着脱部16は、支持部材18に設けられワイヤ着脱部16とワイヤ駆動部21との着脱を検知するためのドグ22と、一対の回転ドラム17の各々に設けられ湾曲ワイヤ15をワイヤ駆動部21のモータ25(後述)に連結する機構であるカップリング部23と、を有する。
【0025】
ドグ22は、支持部材18からワイヤ着脱部16の外方に向かって突出しワイヤ着脱部16の基端側に露出する部材であり、例えば、回転軸B,Cと平行に延びるピン状の部材である。
図3Bに示されるように、ワイヤ着脱部16がワイヤ駆動部21に接続された状態において、ドグ22は、支持部材26を貫通してワイヤ駆動部21の内部へ挿入される。
カップリング部23は、巻取プーリ17aの基端に固定され回転軸Bと同軸に配置された円板部材であり、ワイヤ着脱部16の基端側に露出している。カップリング部23の基端側の面には、回転軸Bの両側に2個の嵌合凸部23aが形成されている。
【0026】
ワイヤ駆動部21は、一対のシャフト24と、一対のシャフト24とそれぞれ接続された一対のモータ(動力発生部)25と、一対のシャフト24を回転可能に支持する支持部材26と、を有する。
各シャフト24は、回転軸D回りに回転可能かつ長手方向Aに進退可能に支持部材26に支持されている。回転軸Dは、シャフト24の中心軸であり、着脱部13が駆動装置2に接続された状態において回転ドラム17の回転軸Bと一致する。
【0027】
各モータ25は、例えば直流モータである。各モータ25は、電源から供給される電力によって駆動力として回転力を発生し、対応するシャフト24を回転軸D回りに回転させる。ワイヤ駆動部21には、各モータ25に対して、モータ25の回転速度および回転角度を検出する2つのエンコーダ29a,29bが設けられている。第1エンコーダ29aは、モータ25の基端に接続されている。第2エンコーダ29bは、相互に噛み合う一対のギア30a,30bを経由してシャフト24に接続されている。
支持部材26には、連結機構19による一対の回転ドラム17の連結を解除するための係合部材26aが設けられている。係合部材26aは、ワイヤ駆動部21の先端側に露出する円柱状の部材であり、円柱部材19aと対応する位置に設けられている。
図3Bおよび
図4に示されるように、ワイヤ着脱部16がワイヤ駆動部21に接続された状態において、係合部材26aは円柱部材19aを第2位置まで押圧する。
【0028】
また、ワイヤ駆動部21は、一対のシャフト24の各々に設けられモータ25を回転ドラム17に連結する機構である被カップリング部27を有する。
被カップリング部27は、シャフト24の先端に固定され回転軸Dと同軸に配置された円板部材であり、シャフト24と一体的に回転する。被カップリング部27は、ワイヤ駆動部21の先端側に露出している。被カップリング部27の先端側の面には、回転軸Dの両側に2つの嵌合凹部27aが形成されている。
図3Bおよび
図4に示されるように、嵌合凸部23aと嵌合凹部27aとが相互に嵌合することによってカップリング部23と被カップリング部27とが相互にカップリングし、それにより、モータ25は、回転ドラム17を経由して湾曲ワイヤ15と連結される。この状態において、回転ドラム17、カップリング部23、被カップリング部27およびシャフト24は、回転軸C,D回りに一体的に回転可能である。したがって、モータ25が発生する回転力(駆動力)が回転ドラム17を経由して長手方向Aの力として湾曲ワイヤ15に伝達される。
【0029】
マニピュレータシステム100は、張力センサ31、トルクセンサ32、着脱センサ33、カップリングセンサ34、電流センサ35および拮抗センサ36をさらに備える。
張力センサ31および拮抗センサ36は、4つのワイヤ着脱部16の各々に設けられ、トルクセンサ32、着脱センサ33、カップリングセンサ34および電流センサ35は、4つのワイヤ駆動部21の各々に設けられる。各センサ31,32,33,34,35,36は制御装置4と接続され、各センサ31,32,33,34,35,36の出力は制御装置4に逐次送信される。
【0030】
張力センサ31は、各湾曲ワイヤ15に対して設けられ、湾曲ワイヤ15の張力を検出する。
トルクセンサ32は、各モータ25に対して設けられ、モータ25のトルクを検出する。例えば、トルクセンサ32は、シャフト24に取り付けられ、回転軸D回りのトルクをモータ25のトルクとして検出する。
【0031】
着脱センサ33は、ワイヤ着脱部16のワイヤ駆動部21への着脱を検出する。ワイヤ着脱部16がワイヤ駆動部21に接続されているとき、着脱センサ33は、支持部材26を貫通してワイヤ駆動部21の内部へ挿入されたドグ22と係合する。着脱センサ33は、例えばドグ22との接触または近接を検出する光学式センサを有し、光学式センサによってドグ22との係合を検出する。ドグ22が着脱センサ33に係合しているとき、着脱センサ33の出力はONであり、ドグ22が着脱センサ33に係合していないとき、着脱センサ33の出力はOFFである。
着脱センサ33は二重化されている。すなわち、各ワイヤ着脱部16には2つのドグ22が設けられ、各ワイヤ駆動部21には2つの着脱センサ33が設けられている。
図3Aから
図4には、ドグ22および着脱センサ33が1組のみ図示されている。
【0032】
カップリングセンサ34は、各モータ25に対して設けられている。カップリングセンサ34は、シャフト24の変位に基づいてカップリング部23と被カップリング部27との嵌合を検出することによって、モータ25が湾曲ワイヤ15と連結されていることを検出する。カップリング部23と被カップリング部27とが嵌合しているとき、カップリングセンサ34の出力はONであり、カップリング部23と被カップリング部27とが嵌合していないとき、カップリングセンサ34の出力はOFFである。
【0033】
図3Bに示されるように、被カップリング部27は、カップリング部23によって押圧されることによって、シャフト24と一緒に基端側A2に移動する。カップリングセンサ34は、例えばシャフト24に設けられたドグ24aの近接を検出する光学式センサを有し、ドグ24aの近接に基づいてカップリング部23と被カップリング部27との嵌合を検出する。
【0034】
被カップリング部27は、被カップリング部27と支持部材26との間に配置された圧縮バネのような弾性部材28によって、先端側A1に付勢されている。
図3Aに示されるように、ワイヤ着脱部16とワイヤ駆動部21が分離した状態において、被カップリング部27は、弾性部材28の付勢力によって、シャフト24と一緒に先端側A1に移動し、ドグ24aは、カップリングセンサ34から離れた位置に配置される。この状態において、カップリングセンサ34は、カップリング部23と被カップリング部27との嵌合を検出しない。
【0035】
図4は、ワイヤ着脱部16のワイヤ駆動部21への接続が着脱センサ33によって検出されているが、嵌合凸部23aと嵌合凹部27aとの間の位置ずれによってカップリング部23と被カップリング部27とが嵌合していない状態を示している。この状態において、カップリングセンサ34は、カップリング部23と被カップリング部27との嵌合を検出しない。
この場合、制御装置4は、モータ25を回転させることによって被カップリング部27を回転させる。嵌合凹部27aの位置が嵌合凸部23aの位置と一致したとき、嵌合凹部27aが嵌合凸部23aと嵌合し被カップリング部27が弾性部材28の付勢力によって先端側A1に移動し、カップリング部23と被カップリング部27との嵌合がカップリングセンサ34によって検出される。
【0036】
電流センサ35は、各モータ25に対して設けられ、モータ25に流れる電流を検出する。
拮抗センサ36は、各ワイヤ着脱部16に設けられ、一対の湾曲ワイヤ15の拮抗状態を検出する。拮抗センサ36の詳細については第4実施形態において説明する。
【0037】
制御装置4は、駆動装置2に内蔵されプログラムを実行可能なコンピュータである。制御装置4は、駆動装置2の外部に配置され駆動装置2と接続されたコンピュータであってもよい。
図5に示されるように、制御装置4は、少なくとも1つのプロセッサ4aと、メモリ4bと、プログラムおよびデータを記憶可能な記憶部4cと、入出力制御部4dとを備える。
【0038】
記憶部4cは、プログラムおよび必要なデータを記憶する不揮発性の記録媒体であり、例えばROMまたはハードディスク等である。制御装置4の後述の機能は、記憶部4cに記憶されたプログラムがメモリ4bに読み込まれプロセッサ4aによって実行されることにより、実現される。制御装置4の少なくとも一部の機能は、専用の論理回路によって実現されていてもよい。
【0039】
次に、制御装置4が実行するマニピュレータシステム100の制御方法について説明する。
本実施形態に係る制御方法は、マニピュレータシステム100の起動時、マニピュレータ1、駆動装置2および制御装置4が正常に動作するか否かを確認するために実行される。
図6に示されるように、制御方法は、駆動装置起動シーケンス(第1ステップ)S1と、マニピュレータ接続シーケンス(第2ステップ)S2と、湾曲部初期化シーケンス(第3ステップ)S3と、湾曲部キャリブレーションシーケンスS4とを含む。
湾曲部キャリブレーションシーケンスS4の後、制御装置4は、操作装置3からの操作入力を受け付け、操作入力に基づいて駆動装置2を制御する。
【0040】
図7は、各シーケンスS1,S2,S3,S4において実行されるステップと、各ステップにおいて使用されるセンサ31,32,33,34と、を示している。
駆動装置起動シーケンスS1は、駆動装置2を立ち上げ駆動装置2が正常に動作することをエンコーダ29a,29bおよびトルクセンサ(第1センサ)32の出力に基づいて確認するシーケンスである。駆動装置起動シーケンスS1は、制御装置4を含む駆動装置2を立ち上げるステップS11と、駆動装置2の自己診断を行うステップS12とを含む。
【0041】
ステップS11の後、ステップS12において、制御装置4は、電力が供給されているプロセッサ4a、モータ25およびエンコーダ29a,29bが正常に作動するか否かを確認する検査を行う。
モータ25の検査において、制御装置4は、モータ25を駆動し、2つのエンコーダ29a,29bの出力であるモータ25の回転角度を確認する。モータ25および2つのエンコーダ29a,29bの全てが正常である場合、2のエンコーダ29a,29bの出力は相互に同一である。モータ25が故障している場合、2つのエンコーダ29a,29bの両方から出力が無い。エンコーダ29a,29bの一方が故障している場合、故障している一方のエンコーダのみの出力が無い、もしくは2つのエンコーダ29a,29bの出力が一致しない。制御装置4は、2つのエンコーダ29a,29bの出力に基づき、モータ25および2つのエンコーダ29a,29bが正常であるか否かを確認する。
【0042】
また、ステップS12において、制御装置4は、トルクセンサ32の出力とエンコーダ29a,29bの出力とに基づいて、トルクセンサ32が正常であるか否かを確認する検査を行う。
トルクセンサ32が正常である場合、モータ25の回転に伴ってトルクセンサ32の出力であるトルクは増大する。制御装置4は、モータ25を回転させ、エンコーダ29a,29bによってモータ25の回転が検出されたことを確認し、続いて、トルクセンサ32の出力を確認する。そして、トルクセンサ32の出力が所定値以上である場合、トルクセンサ32が正常であると判断する。一方、エンコーダ29a,29bによってモータ25の回転が検出されているにも関わらずトルクセンサ32の出力が所定値未満である場合、制御装置4は、トルクセンサ32が異常であると判断する。
【0043】
モータ25の回転トルクは、モータ25を流れる電流からも検出することができる。したがって、ステップS12において、制御装置4は、トルクセンサ32の出力と電流センサ35の出力とに基づいて、トルクセンサ32が正常であるか否かを確認してもよい。
【0044】
プロセッサ4a、モータ25、エンコーダ29a,29bおよびトルクセンサ32の全てが正常であることが確認された場合、制御装置4は、続いてマニピュレータ接続シーケンスS2を実行する。プロセッサ4a、モータ25、エンコーダ29a,29bおよびトルクセンサ32の少なくとも1つの異常が検出された場合、制御装置4は、エラー状態に移行し、制御方法を終了する。
【0045】
マニピュレータ接続シーケンスS2は、マニピュレータ1が駆動装置2に接続されていることを、着脱センサ33およびカップリングセンサ(第2センサ)34の出力に基づいて確認するシーケンスである。マニピュレータ接続シーケンスS2は、マニピュレータ1のワイヤ着脱部16が駆動装置2のワイヤ駆動部21に接続されていることを確認するステップS21と、モータ25が湾曲ワイヤ15と連結していることを確認するステップS22と、カップリングセンサ34を検査するステップS23と、モータ25から湾曲ワイヤ15へ駆動力が伝達されることを確認するステップS24と、を含む。
【0046】
ステップS21において、制御装置4は、二重化された着脱センサ33の出力に基づき、ワイヤ着脱部16とワイヤ駆動部21との接続を確認する。具体的には、2つの着脱センサ33の両方の出力がONである場合、制御装置4は、ワイヤ着脱部16とワイヤ駆動部21とが接続されていると判断し、次のステップS22に進む。一方、2つの着脱センサ33の少なくとも一方の出力がOFFである場合、制御装置4は、着脱部13とワイヤ駆動部21とが接続されていないと判断する。
【0047】
ステップS22において、制御装置4は、カップリングセンサ34およびトルクセンサ32の出力に基づき、モータ25が、相互にカップリングするカップリング部23および被カップリング部27を経由して湾曲ワイヤ15と連結していることを確認する。
具体的には、
図8Aに示されるように、制御装置4は、モータ25を回転させる(ステップS221)。モータ25の回転によって被カップリング部27が回転し、嵌合凹部27aが嵌合凸部23aと一致したときに被カップリング部27がカップリング部23とカップリングし、カップリングセンサ34の出力がONになる(ステップS222のYES)。
【0048】
カップリングセンサ34の出力がONであることを確認した後(ステップS222のYES)、制御装置4は、続いてトルクセンサ32の出力を確認する(ステップS223)。相互にカップリングするカップリング部23および被カップリング部27を経由してモータ25が湾曲ワイヤ15と連結した状態において、モータ25のトルクは、モータ25の負荷の増大に起因して増大する。トルクセンサ32の出力が所定値以上である場合(ステップS223のYES)、制御装置4は、モータ25が湾曲ワイヤ15と正常に連結していると判断し、モータ25を停止させる(ステップS224)。一方、トルクセンサ32の出力が所定値未満である場合(ステップS223のNO)、制御装置4は、モータ25が湾曲ワイヤ15と正常に連結していないと判断し、モータ25を停止させ(ステップS225)、エラー状態に移行する(ステップS226)。
【0049】
ステップS223において、制御装置4は、トルクセンサ32の出力であるトルクの検出値に代えて、モータ25の回転の前後におけるトルクセンサ32の出力の差を確認してもよい。この場合、差が所定値以上である場合に、モータ25が湾曲ワイヤ15と正常に連結していると判断され、差が所定値未満である場合に、モータ25が湾曲ワイヤ15と正常に連結していないと判断される。
【0050】
ステップS22と並行して、制御装置4はステップS23を実行する。ステップS23において、制御装置4は、カップリングセンサ34の出力と、シーケンスS1において正常が確認されたトルクセンサの出力とに基づき、カップリングセンサ34が正常であるか否かを確認する。
【0051】
具体的には、
図8Bに示されるように、制御装置4は、モータ25を回転させ(ステップS231)、トルクセンサ32の出力が所定値以上まで増加した後(ステップS232のYES)、カップリングセンサ34の出力を確認する(ステップS233)。カップリングセンサ34の出力がONである場合(ステップS233のYES)、制御装置4は、カップリングセンサ34が正常であると判断する(ステップS234)。一方、カップリングセンサ34がOFFである場合、制御装置4は、カップリングセンサ34が異常であると判断する(ステップS235)。
【0052】
次に、ステップS24において、制御装置4は、トルクセンサ32の出力に基づいて、駆動装置2内の動力伝達機構を検査する。動力伝達機構は、モータ25から被カップリング部27へ駆動力を伝達する機構であり、駆動力の伝達経路上の回転シャフト24等の部材を有する。制御装置4は、モータ25を回転させ、トルクセンサ32の出力を確認する。動力伝達機構が正常である場合、トルクセンサ32の出力は、モータ25の回転に応じて変化する。モータ25の回転に応答してトルクセンサ32の出力が変化する場合、制御装置4は、動力伝達機構が正常であると判断する。一方、モータ25の回転に応答してトルクセンサ32の出力が変化しない場合、制御装置4は、動力伝達機構が異常であると判断する。
【0053】
ステップS21,S22,S23,S24において何も異常が確認されなかった場合、制御装置4は、続いて湾曲部初期化シーケンスS3を実行する。ステップS21,S22,S23,S24のいずれかにおいて異常が確認された場合、制御装置4は、エラー状態に移行し、制御方法を終了する。
【0054】
湾曲部初期化シーケンスS3は、モータ25の駆動力に従ってマニピュレータ1の湾曲部12が正常に動作することを張力センサ(第3センサ)31の出力に基づいて確認し、湾曲部12をキャリブレーション前の初期状態にするシーケンスである。湾曲部初期化シーケンスS3は、湾曲部12の湾曲角度を初期化するステップS31と、湾曲ワイヤ15に初期張力を付加するステップS32と、張力センサ31を検査するステップS32と、マニピュレータ1内の動力伝達機構を検査するステップS34と、を含む。
【0055】
ステップS31において、制御装置4は、張力センサ31の出力に基づき、湾曲部12を真っ直ぐにする。例えば、制御装置4は、張力センサ31の出力を監視しながら、第1湾曲部121用の4つのモータ25を回転させ、第1湾曲部121用の4本の湾曲ワイヤ15の張力を相互に等しくする。また、制御装置4は、張力センサ31の出力を監視しながら第2湾曲部122用の4つのモータ25を回転させ、第2湾曲部122用の4本の湾曲ワイヤ15の張力を相互に等しくする。
【0056】
次に、ステップS32において、制御装置4は、張力センサ31の出力に基づき、8本の湾曲ワイヤ15の各々に所定の初期張力を付加する。例えば、制御装置4は、張力センサ31の出力を監視しながらモータ25を回転させ、張力センサ31によって検出される張力が所定の初期張力になる回転角度でモータ25を停止させることによって、湾曲ワイヤ15に初期張力を付加する。
【0057】
次に、ステップS33において、制御装置4は、張力センサ31の出力と、シーケンスS1において正常が確認されたトルクセンサ32の出力とに基づき、張力センサ31が正常であるか否かを確認する。
図9は、張力センサ31の出力とトルクセンサ32の出力との関係を説明している。
図9に示されるように、張力センサ31が正常である場合、トルクセンサ32の出力であるトルクと張力センサ31の出力である張力との間には所定の相関関係が存在し、トルクが増大するにつれて張力も増大する。したがって、トルクセンサ32の出力から張力センサ31の出力を推定することができる。
【0058】
図8Cに示されるように、制御装置4は、モータ25を回転させ(ステップS331)、その後、トルクセンサ32の出力であるモータ25のトルクから、湾曲ワイヤ15の張力の推定値を算出する(ステップS332)。次に、制御装置4は、張力センサ31の出力である張力の検出値と、張力の推定値との差を算出する。差の大きさが所定値以下である場合(ステップS333のYES)、制御装置4は、張力センサ31が正常であると判断し、次のステップS34に進む。モータ25を回転させている間、制御装置4は、ステップS331~S333を繰り返すことによって、張力センサ31の検査を常に実行する。
一方、差が所定値よりも大きい場合(ステップS333のNO)、制御装置4は、張力センサ31が異常であると判断し、モータ25を停止させ(ステップS334)、エラー状態に移行する(ステップS335)。
【0059】
ステップS331,S332において、制御装置4は、張力センサ31の出力である湾曲ワイヤ15の張力の検出値からモータ25のトルクの推定値を算出し、トルクセンサ32の出力であるトルクの検出値と、トルクの推定値との差を算出してもよい。
【0060】
ステップS34において、制御装置4は、張力センサ31の出力に基づいて、マニピュレータ1内の動力伝達機構を検査する。動力伝達機構は、カップリング部23から湾曲部12へ駆動力を伝達する機構であり、駆動力の伝達経路上のカップリング部23、回転ドラム17および湾曲ワイヤ15等の部材を有する。制御装置4は、モータ25を回転させ、張力センサ31の出力を確認する。動力伝達機構が正常である場合、張力センサ31の出力は、モータ25の回転に応じて変化する。モータ25の回転に応答して張力センサ31の出力が変化する場合、制御装置4は、動力伝達機構が正常であると判断する。一方、モータ25の回転に応答して張力センサ31の出力が変化しない場合、制御装置4は、動力伝達機構が異常であると判断する。
【0061】
ステップS31,S32,S33,S34において何も異常が確認されなかった場合、制御装置4は、続いて湾曲部キャリブレーションシーケンスS4を実行する。ステップS31,S32,S33,S34のいずれかにおいて異常が確認された場合、制御装置4は、エラー状態に移行し、制御方法を終了する。
【0062】
湾曲部キャリブレーションシーケンスS4は、モータ25の回転量と湾曲部12の湾曲角度との関係を較正するシーケンスである。モータ25の回転によって湾曲部12の湾曲角度を正確に制御するためには、モータ25の回転量と湾曲部12の湾曲角度は所定の関係にある必要が有るが、何らかの理由によりモータ25の回転量と湾曲部12の湾曲角度との関係が変化することがある。シーケンスS4において、制御装置4は、モータ25を回転させ、エンコーダ29a,29bによって検出されるモータ25の回転角度と内視鏡映像から取得される湾曲部12の湾曲角度とに基づき、モータ25の回転量と湾曲部12の湾曲角度との関係を調整する。
シーケンスS4の終了後、マニピュレータシステム100は、操作装置3による操作が可能な状態になる。
【0063】
マニピュレータ1を駆動装置2に接続する際、看護師等の作業者が挿入部11および着脱部13,14を手に持って移動し接続作業を行う。したがって、マニピュレータ1の準備を作業者が一人で容易に行うことができるようにするためには、挿入部11および着脱部13,14の軽量化および小型化が重要である。駆動装置2も、ユーザが場所を選ばずに設置することができるように、小型であることが望まれる。
【0064】
また、電動式かつ着脱式のマニピュレータ1を有するマニピュレータシステム100には、多数のセンサが搭載される。例えば、2段の湾曲部121,122を有するマニピュレータ1の場合、8本の湾曲ワイヤ15の各々に対応して張力センサ31、トルクセンサ32およびカップリングセンサ34が搭載される。これらのセンサ31,32,34は高価であるので、マニピュレータシステム100の製品コストを下げるためにはセンサの数を減らすことが重要である。
【0065】
本実施形態によれば、ステップS23のカップリングセンサ34の検査において、カップリングセンサ34の出力とトルクセンサ32の出力とに基づいてカップリングセンサ34が正常であるか否かが確認される。トルクセンサ32およびカップリングセンサ34の両方が正常である場合、トルクセンサ32の出力とカップリングセンサ34の出力とは相互に相関する。したがって、カップリングセンサ34と、正常であることが確認済みのトルクセンサ32とを組み合わせることによって、カップリングセンサ34を二重化することなくカップリングセンサ34の異常を検知することができ、駆動装置2に搭載されるカップリングセンサ34の数を減らすことができる。
また、ステップS22のカップリングの確認において、カップリングセンサ34の出力およびトルクセンサ32の出力に基づき、湾曲ワイヤ15とモータ25との連結を二重に確認することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、ステップS33の張力センサ31の検査において、張力センサ31の出力とトルクセンサ32の出力とに基づいて張力センサ31が正常であるか否かが確認される。トルクセンサ32および張力センサ31の両方が正常である場合、トルクセンサ32の出力と張力センサ31の出力とは相互に相関する。したがって、張力センサ31と、正常であることが確認済みのトルクセンサ32とを組み合わせることによって、張力センサ31を二重化することなく張力センサ31の異常を検知することができ、マニピュレータ1に搭載される張力センサ31の数を減らすことができる。これにより、着脱部13の小型化および軽量化を図ることができる。
【0067】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るマニピュレータシステムの制御方法、マニピュレータシステムの制御装置およびマニピュレータシステムについて図面を参照して説明する。
本実施形態において、第1実施形態と異なる構成について説明し、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略する。
第1実施形態と同様に、本実施形態に係るマニピュレータシステム100は、マニピュレータ1、駆動装置2、制御装置4、操作装置3、映像プロセッサ5、および表示装置6を備える。
【0068】
図10は、本実施形態の制御方法の各シーケンスS1,S2,S3,S4において実行されるステップと、各ステップにおいて使用されるセンサ31,32,33,34と、を示している。
図10に示されるように、本実施形態の制御方法は、マニピュレータ接続シーケンスS2において、第1実施形態と相違する。
本実施形態のマニピュレータ接続シーケンスS2は、ステップS21と、張力センサ31を検査するステップS25と、モータ25が湾曲ワイヤ15と連結していることを確認するステップS22’と、ステップS24と、を含む。
【0069】
ステップS25において、制御装置4は、張力センサ31の出力と、シーケンスS1において正常が確認されたトルクセンサ32の出力とに基づき、張力センサ31が正常であるか否かを確認する。具体的には、第1実施形態のステップS33と同様に、制御装置4は、モータ25を回転させ、モータ25のトルクから湾曲ワイヤ15の張力の推定値を算出し、張力の検出値と張力の推定値との差を算出する。そして、差が所定値以下である場合、制御装置4は、張力センサ31が正常であると判断し、次のステップS22’に進む。一方、差の大きさが所定値よりも大きい場合、制御装置4は、張力センサ31が異常であると判断し、モータ25を停止させ、エラー状態に移行する。
【0070】
ステップS25において、制御装置4は、張力センサ31の出力である湾曲ワイヤ15の張力の検出値からモータ25のトルクの推定値を算出し、トルクセンサ32の出力であるトルクの検出値と、トルクの推定値との差を算出してもよい。
【0071】
ステップS22’において、制御装置4は、張力センサ31およびトルクセンサ32の出力に基づき、モータ25が、相互にカップリングするカップリング部23および被カップリング部27を経由して湾曲ワイヤ15と連結していることを確認する。
具体的には、
図11に示されるように、制御装置4は、モータ25を回転させる(ステップS221)。モータ25の回転によって被カップリング部27が回転し、嵌合凹部27aが嵌合凸部23aと一致したときに被カップリング部27がカップリング部23とカップリングし、湾曲ワイヤ15の張力が増大する。
【0072】
湾曲ワイヤ15の張力が所定値以上まで増大したことを確認した後(ステップS227のYES)、制御装置4は、続いてトルクセンサ32の出力を確認する。モータ25が湾曲ワイヤ15と連結した状態において、モータ25のトルクは湾曲ワイヤ15の張力に起因して増大する。トルクセンサ32の出力が所定値以上である場合(ステップS223のYES)、制御装置4は、モータ25が湾曲ワイヤ15と正常に連結していると判断し、モータ25を停止させる(ステップS224)。一方、トルクセンサ32の出力が所定値未満である場合(ステップS223のNO)、制御装置4は、モータ25が湾曲ワイヤ15と正常に連結していないと判断し、モータ25を停止させ(ステップS225)、エラー状態に移行する(ステップS226)。
【0073】
このように、本実施形態によれば、ステップS25の張力センサ31の検査において、張力センサ31の出力とトルクセンサ32の出力とに基づいて、張力センサ31が正常であるか否かが確認される。このように、張力センサ31と、正常であることが確認済みのトルクセンサ32とを組み合わせることによって、張力センサ31を二重化することなく張力センサ31の異常を検知することができ、マニピュレータ1に搭載される張力センサ31の数を減らすことができる。
また、本実施形態によれば、ステップS22’において、張力センサ31の出力およびトルクセンサ32の出力に基づき、湾曲ワイヤ15とモータ25との連結が二重に確認される。これにより、カップリングセンサ34を省略することができ、第1実施形態と比較して、駆動装置2に搭載されるセンサの数をさらに減らすことができる。
【0074】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るマニピュレータシステムの制御方法、マニピュレータシステムの制御装置およびマニピュレータシステムについて図面を参照して説明する。
本実施形態において、第1実施形態と異なる構成について説明し、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略する。
第1実施形態と同様に、本実施形態に係るマニピュレータシステム100は、マニピュレータ1、駆動装置2、制御装置4、操作装置3、映像プロセッサ5、および表示装置6を備える。
【0075】
図12は、本実施形態の制御方法の各シーケンスS1,S2,S3,S4において実行されるステップと、各ステップにおいて使用されるセンサ31,32,33,34,35と、を示している。
図12に示されるように、本実施形態の制御方法は、マニピュレータ接続シーケンスS2および湾曲部初期化シーケンスS3において、第1実施形態と相違する。
本実施形態のマニピュレータ接続シーケンスS2は、ステップS21と、トルクセンサ32を検査するステップS26と、モータ25が湾曲ワイヤ15と連結していることを確認するステップS22”と、ステップS24と、を含む。
【0076】
ステップS26において、制御装置4は、トルクセンサ32の出力と電流センサ(第4センサ)35の出力とに基づき、トルクセンサ32が正常であるか否かを確認する。
図13は、トルクセンサ32の出力と電流センサの出力との関係を説明している。
図13に示されるように、トルクセンサ32が正常である場合、トルクセンサ32の出力であるトルクの大きさと電流センサ35の出力であるモータ25の電流の大きさとの間には所定の相関関係が存在し、電流が増大するにつれてトルクも増大する。したがって、電流センサ35の出力からトルクセンサ32の出力を推定することができる。
【0077】
例えば、制御装置4は、モータ25を回転させ、電流センサ35によって検出されたモータ25の電流からモータ25のトルクの推定値を算出する。次に、制御装置4は、トルクセンサ32の出力であるトルクの検出値と、トルクの推定値との差を算出する。差の大きさが所定値以下である場合、制御装置4は、トルクセンサ32が正常であると判断し、差の大きさが所定値よりも大きい場合、制御装置4は、トルクセンサ32が異常であると判断する。
【0078】
次に、ステップS22”において、制御装置4は、トルクセンサ32の出力および電流センサ35の出力に基づき、モータ25が、相互にカップリングするカップリング部23および被カップリング部27を経由して湾曲ワイヤ15と連結していることを確認する。
具体的には、
図14に示されるように、制御装置4は、モータ25を回転させる(ステップS221)。モータ25の回転によって被カップリング部27が回転し、嵌合凹部27aが嵌合凸部23aと一致したときに被カップリング部27がカップリング部23とカップリングし、モータ25のトルクが増大する。
【0079】
モータ25のトルクが所定値以上まで増大したことを確認した後(ステップS228のYES)、制御装置4は、続いて電流センサ35の出力を確認する。モータ25が湾曲ワイヤ15と連結した状態において、モータ25の電流はモータ25の負荷の増大に起因して増大する。電流センサ35の出力が所定値以上である場合(ステップS229のYES)、制御装置4は、モータ25が湾曲ワイヤ15と正常に連結していると判断し、モータ25を停止させる(ステップS224)。一方、電流センサ35の出力が所定値未満である場合(ステップS229のNO)、制御装置4は、モータ25が湾曲ワイヤ15と正常に連結していないと判断し、モータ25を停止させ(ステップS225)、エラー状態に移行する(ステップS226)。
【0080】
本実施形態の湾曲部初期化シーケンスS3は、ステップS31と、ステップS32と、トルクセンサ32を検査するステップS35と、マニピュレータ1内の動力伝達機構を検査するステップS34と、を含む。
ステップS35において、制御装置4は、ステップS26と同様に、トルクセンサ32の出力と電流センサ35の出力とに基づき、トルクセンサ32が正常であるか否かを確認する。
【0081】
このように、本実施形態によれば、ステップS26のトルクセンサ32の検査において、トルクセンサ32の出力と電流センサ35の出力とに基づいてトルクセンサ32が正常であるか否かが確認される。トルクセンサ32の出力と電流センサ35の出力とは相互に相関する。したがって、トルクセンサ32と電流センサ35とを組み合わせることによって、トルクセンサ32を二重化することなくトルクセンサ32の異常を検知することができる。
また、ステップS22”において、トルクセンサ32の出力および電流センサ35の出力に基づき、湾曲ワイヤ15とモータ25との連結が二重に確認される。これにより、カップリングセンサ34を省略することができ、第1実施形態と比較して、駆動装置2に搭載されるセンサの数をさらに減らすことができる。
【0082】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係るマニピュレータシステムの制御方法、マニピュレータシステムの制御装置およびマニピュレータシステムについて図面を参照して説明する。
本実施形態において、第1実施形態と異なる構成について説明し、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略する。
第1実施形態と同様に、本実施形態に係るマニピュレータシステム100は、マニピュレータ1、駆動装置2、制御装置4、操作装置3、映像プロセッサ5、および表示装置6を備える。
【0083】
図15は、本実施形態の制御方法の各シーケンスS1,S2,S3,S4において実行されるステップと、各ステップにおいて使用されるセンサ31,32,33,34,36と、を示している。
図15に示されるように、本実施形態の制御方法は、マニピュレータ接続シーケンスS2において、第1実施形態と相違する。
本実施形態のマニピュレータ接続シーケンスS2は、マニピュレータ1のワイヤ着脱部16が駆動装置2のワイヤ駆動部21に接続されていることを確認するステップS21’と、ステップS22と、ステップS23と、ステップS24と、を含む。
【0084】
ステップS21’において、制御装置4は、着脱センサ(第5センサ)33の出力と拮抗センサ(第6センサ)36の出力とに基づき、ワイヤ着脱部16とワイヤ駆動部21との接続を確認する。
拮抗センサ36は、一対の湾曲ワイヤ15の拮抗状態を検出する。一対の湾曲ワイヤ15が拮抗状態であるとき、連結機構19の円柱部材19aおよびギア19bは第2位置に配置される。例えば、拮抗センサ36は、円柱部材19aとの接触または近接を検出する光学式センサを有し、円柱部材19aが第2位置に配置されていることを光学式センサによって検出することで拮抗状態を検出する。
【0085】
図16に示されるように、ステップS21’において、制御装置4は、着脱センサ33がONであることを確認し(ステップS211のYES)、続いて、拮抗センサ36の出力を確認する(ステップS212)。4つのワイヤ着脱部16の全ての拮抗センサ36の出力がONである場合、制御装置4は、ワイヤ着脱部16とワイヤ駆動部21とが接続されていると判断する。一方、少なくとも1つの拮抗センサ36の出力がOFFである場合、制御装置4は、
ワイヤ着脱部16とワイヤ駆動部21とが接続されていないと判断し、エラー状態に移行する(ステップS213)。
【0086】
このように、本実施形態によれば、ステップS21’において、ワイヤ着脱部16とワイヤ駆動部21との接続が、着脱センサ33の出力と拮抗センサ36の出力とに基づいて二重に確認される。これにより、着脱センサ33の二重化せずともワイヤ着脱部16とワイヤ駆動部21とが接続されているか否かを確実かつ正確に検出することができ、第1実施形態と比較して、駆動装置2に搭載される着脱センサ33の数を減らすことができる。
本実施形態のステップS21’は、第2および第3実施形態に適用されてもよい。すなわち、第2および第3実施形態において、ステップS21に代えてステップS21’が実行されてもよい。
【0087】
上記各実施形態において、シーケンスS1,S2,S3において異常が検出されたセンサを操作者に通知してもよい。この構成によれば、異常が検出されたセンサが通知されることによって、操作者は、マニピュレータおよび駆動装置のいずれを交換すべきかを適切に判断することができる。
【0088】
例えば、第1実施形態において、ステップS12の検査においてトルクセンサ32の異常が検出された場合、トルクセンサ32の異常が通知される。ステップS23の検査においてカップリングセンサ34の異常が検出された場合、カップリングセンサ34の異常が通知される。ステップS33の検査において、張力センサ31の異常が検出された場合、張力センサ31の異常が通知される。
操作者は、トルクセンサ32またはカップリングセンサ34の異常が検出された場合、駆動装置を別の駆動装置に交換し、張力センサ31の異常が検出された場合、マニピュレータを別のマニピュレータに交換する。
【0089】
上記各実施形態において、マニピュレータ1が、電動の軟性内視鏡であることとしたが、マニピュレータ1はこれに限定されるものではなく、電動駆動の可動部を有する他のデバイスであってもよい。例えば、マニピュレータは、湾曲部12を有する硬性内視鏡であってもよく、モータから駆動ワイヤを経由して伝達される駆動力に従って開閉または進退等の任意の動作をする可動部を有する外科用処置具であってもよい。
【0090】
上記各実施形態において、各ステップS1,S2,S3,S4において実行される検査は、起動時のみでなく、操作装置3による操作が可能な状態になった後の任意のタイミングで実行されてもよい。
上記各実施形態において、動力発生部がモータ25を備えることとしたが、動力発生部は、可動部を動作させるための駆動力を発生することができる限りにおいて、他の形態であってもよい。例えば、動力発生部は、駆動力として直線力を発生するアクチュエータを備えていてもよい。動力発生部の形態に応じて、動力発生部と湾曲ワイヤ15との間の動力伝達機構の設計が変更されてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 マニピュレータ、内視鏡
2 駆動装置
4 制御装置
12,121,122 湾曲部(可動部)
16 ワイヤ着脱部
21 ワイヤ駆動部
25 モータ(動力発生部)
31 張力センサ(第2センサ、第3センサ)
32 トルクセンサ(第1センサ)
33 着脱センサ(第5センサ)
34 カップリングセンサ(第2センサ)
35 電流センサ(第4センサ)
36 拮抗センサ(第6センサ)
S1 駆動装置起動シーケンス(第1ステップ)
S2 マニピュレータ接続シーケンス(第2ステップ)
S3 湾曲部初期化シーケンス(第3ステップ)