(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】液体中のワークピースをレーザ加工するための方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/122 20140101AFI20241212BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20241212BHJP
B23K 26/146 20140101ALI20241212BHJP
【FI】
B23K26/122
B23K26/00 P
B23K26/146
(21)【出願番号】P 2023565432
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2022061047
(87)【国際公開番号】W WO2022229182
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2024-06-06
(31)【優先権主張番号】102021111172.2
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523310859
【氏名又は名称】リドロテック ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】LIDROTEC GMBH
【住所又は居所原語表記】Lothringer Allee 2,44805 Bochum Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】カーニッツ,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ホピウス,ヤン シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ケーラー,ヤニス
(72)【発明者】
【氏名】イーゲルマン,アレクサンダー
【審査官】杉田 隼一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112589261(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113146078(CN,A)
【文献】特開2022-067857(JP,A)
【文献】特開平07-232291(JP,A)
【文献】特開2016-101594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/122
B23K 26/00
B23K 26/146
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中でワークピースをレーザ加工するための方法であって、
液体で満たされたプロセスチャンバ内にワークピースを提供することと、
集束ユニットを使用して、前記ワークピースの表面上にパルス状のレーザ放射を集束させることと、
位置決めユニットを使用して、前記集束されたレーザ放射と前記ワークピースの表面との間の相対移動を生成することと、
検出ユニットを使用して、所定の検出領域内の気泡を検出することと、
前記検出された気泡によって引き起こされるレーザ加工中の干渉効果を回避または低減するための第1の動作を行うことと、
を含み、
前記第1の動作は、
前記レーザ放射と前記気泡との間の相互作用が予想される領域に前記気泡が存在する
時間である通過時間を決定することと、
前記決定された通過時間の間、前記レーザ放射を非活性化すること、または、前記レーザ放射が前記気泡の外側に配置されるように、前記レーザ放射を位置決めすること、を含む、方法。
【請求項2】
前記気泡を検出することが、
カメラユニットを用いて前記所定の検出領域の写真画像を撮影し、対応する画像ファイルを生成することと、
特にパターン認識アルゴリズムの使用を含む評価によって前記画像ファイルを評価すること、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記気泡を検出することは、散乱光測定を含み、前記散乱光測定が、
LEDを用いて前記検出領域を照明することと、
フォトダイオードを使用して検出信号を取得することであって、前記フォトダイオードは、前記検出領域を伝播した前記LEDによって放出される放射を取得するように構成されることと、
評価ユニットを用いて前記検出信号を評価すること、を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の動作が、前記プロセスチャンバ内の前記液体の流量を変化させることを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の動作が、超音波発生器を使用して、前記検出された気泡の近傍に超音波を発生させることを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の動作は前記液体の流れのタイプを変化させることを含み、前記流れのタイプは特に、層流、乱流、および脈動流の間で変化させることができることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中のワークピースをレーザ加工するための方法および対応するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ放射を使用してワークピースを加工することの利点は、一般に知られている。レーザ放射の使用は特に、材料加工における高精度および高い処理速度を可能にする。レーザを用いた材料加工において、集束されたレーザ放射の使用により加工されたワークピースが局所的に強く加熱されることは、課題と考えることができる。処理ゾーン外で得られる熱効果は、一般に望ましくない。
【0003】
レーザ加工処理を改善するために、いくつかの用途では、レーザ加工処理は液体中で行われる。このような場合、処理対象のワークピースは液体が充填されたプロセスチャンバ内に配置され、その結果、ワークピースは処理全体にわたって液体によって冷却される。
【0004】
さらに、このようなプロセスチャンバでは、場合によっては処理プロセス中にチャンバ内の液体が恒久的に交換される。一般に、ポンプは、プロセスチャンバ内に流れを生成し、プロセスチャンバ内で液体を絶えず交換する目的のために使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液体中でワークピースをレーザ加工することの欠点は、プロセスチャンバ内に気泡が形成されることであると考えられる。気泡の形成の理由は多岐にわたる。特に、気泡は、レーザ放射とワークピースとの相互作用によって、または液体の循環によって形成され得る。
【0006】
例えば、付着気泡(持続気泡とも呼ばれる)は、レーザプロセスによって引き起こされ、加工された表面の領域においてワークピース表面上に形成され得る。これらは、経時的にワークピース表面から剥離し、自由気泡としてプロセスチャンバを通って移動し得る。さらに、システム内の液体の交換により、それらは、システム内を数回移動し、それによって、レーザ加工処理を繰り返し妨害することがある。
【0007】
他方では、レーザ放射とワークピースとの間の相互作用とは無関係に生成される気泡がシステム内に形成され得る。例えば、プロセスチャンバまたはホースが初期状態において空気で満たされている場合、システム起動時に自由気泡が生成され得る。リザーバからチャンバ内に搬送される液体でプロセスチャンバを充填する場合、プロセスチャンバ内に気泡が形成されることが多い。ここで、空気は、気泡の形態でホースから液体リザーバ内に数回流され、そこからホースチャンバシステム内にポンプで戻される。気泡はしばしば、数分後にのみリザーバ内の液体表面に到達し、そのときになってようやく、もはやレーザ加工処理を妨害しない。
【0008】
最初に説明したように、通常、2つの異なるタイプの気泡、すなわち、一方ではワークピース表面に一般に付着する付着性または持続性の気泡、および他方ではプロセスチャンバを通って、またはシステム全体(プロセスチャンバ、ホース、リザーバ)を通ってさえ移動することができる自由気泡がプロセスチャンバ内に形成される。基本的に、それは、付着気泡が経時的に自由気泡になり得、逆もまた同様であることが当てはまる。
【0009】
特定のタイプの気泡にかかわらず、レーザ放射の有効範囲内にある気泡は、レーザ放射との望ましくない相互作用を引き起こすことが常に当てはまる。この理由は空気と液体の屈折率の差であり、液体と気泡との間の界面で使用されるレーザ放射の望ましくない反射および回折を引き起こす。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、本発明は液体中のワークピースをレーザ加工する方法を提案する。この方法は、
液体で満たされたプロセスチャンバ内にワークピースを提供することと、
集束ユニットを使用してワークピースの表面上にパルスレーザ放射を集束させることと、
位置決めユニットを使用することによって、集束されたレーザ放射とワークピース表面との間の相対運動を生成することと、
検出部を用いて、所定の検出領域内の気泡を検出することと、
レーザ放射と検出された気泡との間の相互作用効果を回避または低減するための第1の動作を行うこと、を含む。
【0011】
本発明の方法は、プロセスチャンバ内の気泡によって引き起こされ得る干渉効果を排除するか、または少なくとも有意に低減することを可能にする。これにより、処理速度を向上させると同時に、処理されたワークピースの品質を向上させることができる。本発明の方法は特に、レーザ切断プロセス中の切断エッジの改善を可能にし、改善は、干渉効果の低減によって達成される。
【0012】
使用される液体は例えば、水であってよい。使用される集束ユニットは特に、集束レンズ、集束ミラー、またはレンズシステムとして構成されてもよい。相対運動は、放射線の偏向またはワークピースの位置決めのいずれかによって生成され得る。この点に関して、位置決めユニットは旋回可能なミラー(スキャナミラーとも呼ばれる)、回転可能なミラー(例えば、ポリゴンスキャナ)、または位置決めテーブルの形態で実施されてもよい。気泡の形成は例えば、プロセスチャンバ全体を包含する検出領域において監視することができる。ここで、検出領域は連続した領域を含んでもよいが、互いに分離した領域を含んでもよい。例えば、検出領域が一方ではプロセスチャンバの内部を含み、他方では、液体だけでなく気泡がチャンバ内に導入され得るホースを監視することが提供され得る。この場合、検出領域は静的であっても動的であってもよい。静的検出領域は例えば、プロセスチャンバの内部全体が監視される場合に有利であり得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、プロセスチャンバ全体が監視されるのではなく、レーザ放射が現在有効であるプロセスチャンバの一部のみが監視されることが明示的に望まれ得る。これは、比較的大きなプロセスチャンバにとって望ましい場合がある。例えば、気泡の発生がレーザ放射から遠く離れていて、それらがレーザプロセスを妨げない場合には、そのような気泡の除去が最終的に必要ではないからである。この場合、検出領域は、現在のレーザビーム位置の関数として動的に設定されてもよい。
【0013】
第1の動作では、検出された気泡によって引き起こされるワークピースのレーザ加工中の干渉効果を回避または少なくとも低減するために、1つまたは複数のステップが実行される。ステップは特に、検出された気泡をプロセス領域から除去するのに役立つことができる。この文脈において、「第1の」の追加は、制限またはさらなるアクションへの言及として理解されるべきではない。むしろ、この追加は、本出願の文脈におけるより容易な参照のために役立つ。第1の動作は、所定の検出領域において気泡が検出されるたびに実行される。本発明の一実施形態によれば、第1の動作は、検出領域内にもはや気泡が存在しなくなるまで行われてもよい。第1の動作は気泡の検出に応答して行われ、特に、検出された気泡(例えば、気泡の位置およびサイズ)に応じて行うことができる。
【0014】
本発明の方法は理解を容易にするために方法ステップの具体的な順序で上述されているが、本発明において、個々のステップを特定の順序で最終的に実行することは、技術的効果を達成する上で必要ないことは当業者に明らかである。
【0015】
本発明の方法の一実施形態によれば、気泡を検出することは、
カメラユニットを用いて所定の検出領域の写真画像を撮影し、対応する画像ファイルを生成することと、
特にパターン認識アルゴリズムの使用を含む評価によって画像ファイルを評価すること、を含む。
【0016】
この実施形態によれば、気泡の発生の自動検出を行うことができ、気泡が検出された場合に、気泡を除去するための動作を自動的に行うことができる。さらに、検出された気泡(例えば、自由気泡または付着気泡)の位置およびサイズまたはタイプに応じて、実施されるべき動作が自動的に選択されてもよい。パターン認識アルゴリズムの使用は、本発明による方法の自動化の程度をさらに高めることを可能にする。
【0017】
さらに、本発明によれば、気泡を検出することが、散乱光測定を含み、散乱光測定が特に、
LEDを用いて検出領域を照明することと、
フォトダイオードを使用して検出信号を取得することであって、フォトダイオードは、検出領域を通って伝播したLEDによって放出される放射を取得するように構成されることと、
評価ユニットを用いて検出信号を評価すること、を含む。
【0018】
ここで、LEDおよびフォトダイオードは例えば、プロセスチャンバの2つの対向する側に配置されてもよく、LEDによって放射された光は第1のプロセスウィンドウを通ってチャンバに入ることができ、一方、散乱光は、第2のプロセスウィンドウを通ってチャンバから導かれ、その後、フォトダイオードによって取り込まれることができる。
【0019】
LEDの代替として、ハロゲンランプまたはレーザ光源などの他の光源を使用することもできる。しかしながら、LEDの使用は、LEDの制御が容易であり、低コストで入手可能であるという点で有利である。監視される検出領域は例えば、プロセスチャンバの内部全体、または代替的に、プロセスチャンバの一部のみを含んでもよい。また、その中で気泡の形成が予期され得る供給ホースまたは排出ホースの個々のセクションが監視されてもよい。評価ユニットは特に、計算ユニットを含むことができる。例えば、評価ユニットは、PC、ラップトップ、またはマイクロコントローラを含むことができる。評価において、フォトダイオードによって生成された検出信号は特に、校正プロセス中に以前に取得された基準信号と比較することができる。例えば、校正中に、検出領域内に気泡が存在しなかったアプリケーションシナリオにおいて、基準信号が取得されていてもよい。検出信号が基準信号から著しく逸脱する場合、そこから、LEDとフォトダイオードとの間に気泡が存在すると結論付けることができる。
【0020】
検出ユニットは、超音波検出器、レーダセンサ、容量センサ、および/または電磁センサを備えていてもよい。検出ユニットは酸素センサユニットも備えていてもよい。プロセスチャンバ内の酸素濃度を測定することは、脱離した気泡またはマイクロバブルの酸素濃度が液体の酸素濃度と著しく異なるので、気泡が液体中に存在する確率に関する情報を与える。
【0021】
本発明の別の実施形態によれば、第1の動作は、プロセスチャンバ内の液体の流量の変化を含むことができる。特に、気泡の検出時にチャンバ内の流量を急激に増加させて、検出領域で検出された気泡を除去することができるようにすることができる。また、検出された気泡のより効率的な除去を達成するために、流れ方向が逆にされてもよい。ここで、流れ方向の反転は連続して数回行うことができ、好ましくは、表面に付着している検出された気泡がこの表面から分離されるまで繰り返すことができる。チャンバ内の流れは、特に、液体をチャンバ内に、またはチャンバから排出するポンプを使用することによって生成することができる。代替として、流れがチャンバの移動によって生成されてもよい。
【0022】
本発明によれば、第1の動作は、レーザ放射が検出された気泡に向けられるようにレーザ放射を位置決めすることを含むこともできる。特に、付着気泡では、気泡が付着する表面から気泡が分離されることが達成され得る。例えば、気泡がワークピース表面に付着し、レーザ放射が気泡に向けられる場合、レーザ放射とワークピース表面との相互作用は、ワークピース表面からの気泡の剥離に寄与する衝撃波を引き起こす。したがって、同じレーザビームが、材料の加工および付着気泡を分離するために有効に使用される。本発明のこの実施形態では、レーザビームがワークピースを加工し、気泡を分離するための複合ツールとして使用され、したがって、気泡を分離するための追加の構成要素は必要とされない。
【0023】
本発明の別の実施形態によれば、レーザ放射は、ワークピース表面の付着気泡が検出された領域上に焦点がずれた形態で向けられてもよい。これにより、衝撃波の発生をワークピース表面のより広い領域で行うことができ、ワークピース表面からの気泡のより均一かつ効率的な分離が可能になる。ワークピース表面のビーム直径は、気泡直径の50%、80%、または100%であるように設定することができる。レーザ放射のデフォーカスは特に、フォーカスユニットの位置の変化によって、またはワークピースの位置の変化によって、行うことができる。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、第1の動作は、超音波発生器を使用することによって、検出された気泡の近傍での超音波の生成であってもよい。この目的のために、特に、超音波発生器がワークピースのすぐ近くに、またはプロセスチャンバ内で流れを発生させるために使用されるホースまたはラインのすぐ近くに配置されてもよい。超音波発生器は特に、電気的に制御される圧電素子を備えることができる。
【0025】
さらに、本発明によれば、第1の動作は流れのタイプの変化を含むことができ、流れのタイプは、特に層流、乱流、および脈動流の間で変化させることができる。第1の調査は、付着気泡の特に効率的な分離が流れのタイプを変えることによって達成され得ることを示した。
【0026】
また、本発明によれば、
レーザ放射と気泡との間の相互作用が予想される領域内に気泡が存在する場合に、検出された気泡の通過時間を決定することと、
決定された通過時間の間、レーザ放射を非活性化することと、
レーザ放射が気泡の外側に配置されるようにレーザ放射を位置決めすること、を提供することができる。
【0027】
通過時間を決定する際、特に、検出領域内で自由気泡が移動する速度が決定されるカメラベースの方法を使用することが可能である。続いて、検出された気泡がレーザ放射と気泡との間の相互作用が予想される領域にある時間および持続時間(=通過時間)を計算することができる。最終的に、レーザ放射は、決定された通過時間の間、非活性化されるか、またはレーザ放射と気泡との間に相互作用が生じない別の位置に移動される。レーザ放射の非活性化のために、例えば、レーザビーム源のスイッチを切ること、または、代替として、ビーム吸収体を使用することが可能である。代替として、ビーム変調器、特に音響光学変調器(ACMとも呼ばれる)または電気光学変調器(EOMとも呼ばれる)を、放射線の特に速い偏向のために使用することができる。検出された気泡が衝突領域を離れるとすぐに、レーザ放射を再び作動させることができる。代替として、レーザビームの軌道がレーザ加工処理のために事前に定義され、気泡の検出時にレーザビームと自由気泡との間の相互作用が差し迫っていると計算されてもよい。この場合、レーザ放射は事前設定された軌道を離れ、それによって衝突領域を「スキップ」することができ、その結果、ワークピースのこの領域は気泡が衝突領域を離れた後、すぐに処理される。このようにして、レーザ放射と気泡との間の相互作用が大幅に低減され、プロセス品質および速度が大幅に向上する。
【0028】
上述の目的を達成するために、本発明の別の実施形態によれば、液体中のワークピースをレーザ加工するためのシステムが提案され、このシステムは、
パルスレーザ放射を生成するためのレーザビーム源と、
レーザ放射をワークピースの表面上に集束させる集束ユニットと、
ワークピースを受け入れるためのプロセスチャンバと、
ワークピースの表面上のレーザ放射の位置を調整するための位置決めユニットと、
所定の検出領域内の気泡を検出するための検出ユニットと、
レーザ放射と検出された気泡との間の干渉効果を回避または低減する第1の動作を実行するように構成される、制御ユニットと、を含む。
【0029】
本発明によるシステムは、集束されたレーザ放射と気泡との間の望ましくない相互作用効果を大幅に回避するかまたは大幅に低減することによって、処理速度および処理品質を大幅に向上させることを可能にする。レーザビーム源は特に、約100fs~100psのパルス持続時間の超短パルスを生成するように設計されたレーザビーム源であってもよい。制御ユニットは特に、レーザ放射と検出された気泡との間の相互作用によって引き起こされる、レーザ加工中の干渉効果を回避または低減するための第1の動作を達成するように設計されてもよい。
【0030】
本発明のシステムの一実施形態によれば、検出ユニットは、検出領域を監視するためのカメラユニットを備えることができる。
【0031】
さらに、本発明のシステムでは検出ユニットがLEDとフォトダイオードとを備え、フォトダイオードは、検出領域を伝播したLEDによって放出される放射を取得するように構成されていてもよい。ここで、LEDおよびフォトダイオードは、プロセスチャンバの2つの対向する側に配置することができる。LEDの光は第1のプロセスウィンドウを介してプロセスチャンバに導入することができ、一方、この光はフォトダイオードによって検出され得るように、第2のプロセスウィンドウを介してチャンバから導出される。
【0032】
本発明のシステムの別の実施形態によれば、システムは、検出領域内で気泡が以前に検出されたかどうかに応じて、プロセスチャンバ内の流量、流れの方向、および/または流れのタイプを調整するように構成された流れ発生器をさらに備えることが好ましい。これにより、気泡が検出された場合には、プロセスチャンバ内の流れを調整することにより、処理領域から気泡を除去することができる。このようにして、上述のバブル除去方法を実施することができる。流れ発生器は特に、1つまたは複数の加圧ポンプおよび吸引ポンプを備えることができる。
【0033】
さらに、本発明のシステムの一実施形態によれば、システムは検出領域内で気泡が以前に検出された場合に、検出領域内で超音波を生成するように構成された超音波発生器を備えてもよい。それによって、特に、付着気泡の効率的な分離を達成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
以下において、本発明は、図面を参照してより詳細に例示される。
【0035】
【
図1】従来技術による液体中でのレーザ材料加工のためのシステムである。
【
図2】理想的な場合および加工領域に気泡が存在する場合のレーザ加工処理である。
【
図3】本発明による方法の一実施形態の概略図を示す。
【
図4】本発明による気泡の検出のための実施形態の概略図である。
【
図5】本発明による、レーザ放射と検出された気泡との間の相互作用効果を回避するための動作の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、従来技術から既に知られている、液体中でのレーザ加工システム10を示す。そのようなシステム10は、パルスレーザ放射14を生成するレーザビーム源12を備える。レーザ放射14の向きは、位置決めユニット16を介して調整することができる。レーザ放射14は、集束ユニット18を介してプロセスチャンバ20の内部に集束される。プロセスチャンバ20内には、処理対象となるワークピース22が配置されている。集束されたレーザ放射14はワークピース22の表面22a上に向けられ、その結果、ワークピース22は所望の位置で正確に加熱され、蒸発することができる。ここで、レーザ放射は透明なプロセスウィンドウ24を介してプロセスチャンバ20に入り、プロセスチャンバ20は、その他の部分は光に対して透過性ではない。プロセスチャンバ20は、液体26で満たされている。液体26としては、例えば、水を用いることができる。液体は例えば、処理プロセス中にワークピースを冷却するように機能する。
【0037】
図2は、従来技術によるレーザ加工処理において生じる問題を示している。
図2に示すように、液体中でのレーザ加工は、レーザ加工処理に悪影響を及ぼす気泡の形成を引き起こす。
【0038】
まず、
図2(a)は、プロセスチャンバ20内に気泡が存在しない理想的な場合を示している。この場合、集束されたレーザ放射14はワークピース22の表面に妨げられずに衝突し、ワークピース22を加熱することができる。
【0039】
これに対して、
図2(b)は、ワークピース22の表面に付着気泡28が形成されている場合を示している。液体26と気泡28との間の屈折率の差により、入射したレーザ放射14の一部が反射される。反射されたレーザ放射14aは、ワークピース22の表面に衝突せず、加工処理のために使用することができない。さらに、入射したレーザ放射14の一部が偏向される。したがって、偏向されたレーザ放射14bは、所望の位置でワークピース22の表面に衝突しない。これは、レーザ加工処理の精度に悪影響を及ぼす。
【0040】
図2(c)は自由気泡28が処理領域に存在し、集束されたレーザ放射14と相互作用する別のシナリオを示す。気泡28は、入射したレーザ放射14がデフォーカスされ、デフォーカスされたレーザ放射14cがワークピース22の表面に衝突するという結果をもたらす。この結果、放射強度(面積当たりの出力として定義される)は、ワークピース22の表面で材料を蒸発させるには不十分となる。
【0041】
上記の例は、プロセスチャンバ20内に形成された気泡がレーザ加工処理との著しい干渉に寄与することを示している。特に、気泡は、処理速度の低下、効率の低下、不安定性、および所望の処理結果からの逸脱を引き起こす。
【0042】
図3は、本発明による方法100の実施形態を示す。実施形態を説明するために、以下では、「第1のステップ」、「第2のステップ」などを参照する。しかしながら、この用語は、本発明の枠組みにおいて最終的に必要な順序を明示的に決定せず、むしろ個々の方法ステップを区別するのに役立つ。第1のステップ110では、液体で満たされたプロセスチャンバ内にワークピースが提供される。パルスレーザ放射は、第2のステップ120において、ワークピースの表面上に集束される。ここでは、集束ユニットが使用される。ワークピースの加工のために、集束されたレーザ放射とワークピース表面との間の相対移動が、第3のステップ130において生成され、これに対して位置決めユニットが使用される。位置決めユニットは例えば、ワークピースの表面上の集束されたレーザ放射の位置を設定するように設計されたスキャナミラーとして構成されてもよく、またはワークピースの位置を変化させるように設計された位置決めテーブルとして構成されてもよい。第4のステップ140において、所定の検出領域で、気泡の存在についてチェックされる。この目的のために、特にカメラを含むことができる検出ユニットが使用される。気泡が検出されると、レーザ放射と検出された気泡との間の相互作用効果を回避または低減するために、第5のステップ150において第1の動作が行われる。言い換えると、第1の動作は、検出された気泡を検出領域または処理領域からそれぞれ除去する働きをする。
【0043】
図4は、気泡の検出に関する本発明の実施形態を示す。
【0044】
図4(a)は、カメラユニットとして構成された検出ユニット30が設けられた実施形態を示す。カメラユニットは、気泡が干渉していると考えられる検出領域を撮像する。特に、カメラユニットは、プロセスチャンバ20の内部を監視することができる。カメラユニットは、後に評価される画像ファイルを生成する。生成された画像ファイル内で気泡が検出されると、気泡を除去し、相互作用を低減するために、対応する動作が行われ得る。
図4(a)に示すように、カメラは、レーザ放射14に対して放射状に配置することができる。代替として、カメラユニットはまた、レーザ放射に対して軸方向に位置決めされてもよい。この目的のために、例えばビームスプリッタを使用することができる。さらに、検出ユニットは、レーザ放射に対して放射状に配置され、互いに90°オフセットされた2つのカメラユニットを備えてもよい。2つのカメラユニットを使用することによって、気泡28の3次元位置を正確に決定することができる。
【0045】
図4(b)は、検出ユニット30がLED30aおよびフォトダイオード30bを備えるさらなる実施形態を示す。LED30aおよびフォトダイオード30bは、プロセスチャンバ20の2つの対向する側に配置される。LED30aによって放射された光は、透明なプロセスウィンドウ24を介してプロセスチャンバ20の内部に入る。検出領域内に気泡が存在しない場合、LED30aによって放射された光は、反対側のプロセスウィンドウ24を通って直接出て、フォトダイオード30bによって取り込まれ得る。しかしながら、検出領域に気泡28が存在する場合、LED30aによって放射された光は気泡28において散乱され、その結果、フォトダイオード30bは対応して変更された信号を生成する。フォトダイオード30bの出力信号を以前に取り込まれた基準信号と比較することによって、監視された検出領域内に気泡が存在するかどうかを結論付けることができる。
【0046】
図5は、レーザ放射14と気泡28との間の相互作用効果を回避するための異なる作用を提供する、本発明の異なる実施形態を示す。
図5(a)では、図示の実施形態はプロセスチャンバ20の下側に配置された追加の超音波発生器32を備える。検出ユニット30が検出領域内の気泡28の存在を検出する場合、超音波発生器32は、制御ユニット(この図には図示せず)によって作動させることができる。これにより、気泡28をワークピース22の表面から剥離させることができる。例えば、超音波発生器32は、付着気泡28が活性化されたときにのみ活性化されるようにしてもよい。
図2(b)および(c)にすでに示したように、付着気泡および自由気泡は形状が著しく異なり、したがって、互いに光学的に区別することができる。
【0047】
さらに、
図5(b)は、流れ発生器34が設けられた本発明の別の実施形態を示している。この実施形態では、流れ発生器34は液体入口34aおよび液体出口34b、ならびに液体入口34aおよび液体出口34bに接続された圧力ポンプおよび吸引ポンプを備え、これらのポンプは
図5(b)には示されていない。流れ発生器34は、気泡28が検出された場合に流れを発生させるように構成され、それによって、気泡は処理領域から離れるように移動させられる。また、超音波発生器32と流れ発生器34とが組み合わされていてもよい。このように、例えば、付着気泡28が検出された場合には超音波発生器32を作動させることができ、一方、自由気泡が検出された場合には流れ発生器34を作動させることができる。さらに、付着気泡の検出の場合、まず、超音波発生器32がワークピース22の表面から気泡28を分離するために使用され、一方、流れ発生器34がその後、検出領域または処理領域からそれぞれ離れるように自由気泡を移動させるように作動されることが有利に提供され得る。
【符号の説明】
【0048】
10:レーザ加工システム
12:レーザビーム源
14:レーザ放射
14a:反射されたレーザ放射
14b:偏向されたレーザ放射
14c:デフォーカスされたレーザ放射
16:位置決めユニット
18:集束ユニット
20:プロセスチャンバ
22:ワークピース
22a:ワークピースの表面
24:プロセスウィンドウ
26:液体
28:気泡
30:検出ユニット
30a:LED
30b:フォトダイオード
32:超音波発生器
34:流れ発生器
34a:液体入口
34b:液体出口
100:レーザ加工方法
110:第1の方法ステップ
120:第2の方法ステップ
130:第3の方法ステップ
140:第4の方法ステップ
150:第5の方法ステップ