(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】二酸化炭素からポリマー-カーボンナノ物質混合物を作るためのシステム及び方法並びにその製品
(51)【国際特許分類】
C01B 32/15 20170101AFI20241212BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20241212BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C01B32/15
C08K3/04
C08L101/00
(21)【出願番号】P 2023571172
(86)(22)【出願日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 US2022030682
(87)【国際公開番号】W WO2022251182
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-12-25
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523192048
【氏名又は名称】ダイレクト エア キャプチャー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リヒト,スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】リヒト,ガド
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/092449(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/15
C08K 3/04
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー-カーボンナノ物質(CNM)混合物を調製する方法であって、
(a)カルバノゲル生成物を受け取るステップであって、前記カルバノゲル生成物は、電解質中に分散されたCNM
のネットワークを含む、ステップと、
(b)前記カルバノゲル生成物をポリマー混合物と組み合わせるステップと、
(c)前記ポリマー-CNM混合物を収集するステップと
を含む方法。
【請求項2】
二酸化炭素(CO
2)を分割するための熔融電気分解プロセスによって前記カルバノゲル生成物を発生させるステップをさらに含み、前記カルバノゲル生成物は、CNMと電解質とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマー混合物を調製するための調製ステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマー混合物は、1つ又は複数のポリマー前駆体を含み、及び前記調製ステップは、前記カルバノゲル生成物を前記ポリマー混合物と組み合わせる前記ステップ後に行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記調製するステップは、前記カルバノゲル生成物を前記ポリマー混合物と組み合わせる前記ステップ前に行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記組み合わされたカルバノゲル生成物及びポリマー混合物を押し出すステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記カルバノゲル生成物を前記ポリマー混合物と組み合わせる前記ステップ前に前記カルバノゲル生成物を処理するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記カルバノゲル生成物を処理する前記ステップは、研削、細分化、押圧、微粉砕、フライス処理、破砕又はこれらの組合せを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記カルバノゲル生成物の電解質含有量を低減させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
低減させるステップは、押圧、反応、洗浄、濾過又はこれらの任意の組合せを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記カルバノゲル生成物を受け取る前記ステップ後に熱を加えるステップをさらに含み、前記熱は、約0℃~約1000℃の温度である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマー混合物は、縮合機構、開環機構、イオン機構、連鎖移動光子機構、熱機構、化学機構、プラズマ重合機構又はこれらの任意の組合せによって調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリマー-CNM混合物は、10重量%のCNM~10重量%未満のCNMを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記カルバノゲル生成物は、CNMの絡まった生成物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記受け取られたカルバノゲル生成物は、球状ナノカーボン、中実ナノオニオン、中空ナノオニオン、円筒形同素体のナノカーボン、平面同素体のナノカーボン、らせん状同素体のナノカーボン、カーボンナノチューブ(CNT)、ナノファイバー、グラフェン、ナノプレートレット、ナノスキャフォールド、ナノツリー、ナノベルト、ナノフラワー、ナノドラゴン、ナノロッド、表面修飾又は金属被覆CNM、図形的特徴のない非晶質ナノカーボン又はこれらの任意の組合せを含むCNMを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマー混合物は、天然ポリマー、合成ポリマー、半合成ポリマー、再生ポリマー又はこれらの任意の組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマー混合物は、非晶質ポリマー、半結晶ポリマー又はこれらの任意の組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリマー混合物は、熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマー又はこれらの任意の組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマー混合物は、PLA、PVA、PP、PE、アクリル、ABS、ナイロン、テフロン(登録商標)、PC、エポキシ、アクリル、フェノール、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリイミド、加硫ゴム、ベークライト、ポリジシクロペンタジエン、ポリイソシアヌレート、ポリエステル、ポリウレア、尿素ホルムアルデヒド、ビニルエステル、シアン酸塩、メラミン、ポリエステル樹脂又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
整列力を前記カルバノゲル生成物に印加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記整列力は、機械力、電流、磁場又はこれらの任意の組合せの1つ又は複数によって印加される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記整列力は、前記ポリマー-CNM混合物の1つ又は複数の異方性の特徴的な特性を発生させるために、線形、放射状、円筒形、球状又は他の方向性のある形状を生じさせるための線形形状、放射状形状、円筒形状、球形状又は他の形状のものである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリマー-CNM混合物中、前記混合物の前記CNMの表面上、前記混合物の前記CNMの内部空間内又はこれらの任意の組合せにおける空隙を部分的に又は実質的に完全に充填するための空隙充填剤を適用するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記空隙充填剤は、強化剤、触媒、ドーパント、磁気材料、薬剤、電磁力遮蔽増強剤又はこれらの任意の組合せである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記強化剤は、エポキシ、樹脂、別のポリマー、コポリマー、セメント質材料、金属、合金又はこれらの任意の組合せを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記触媒は、エポキシ、樹脂、別のポリマー、コポリマー、セメント質材料、金属、合金又はこれらの任意の組合せを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記ドーパントは、ホウ素、窒素、硫黄、リン、コバルト、アルミニウム、シリコン、セリウム、白金、金、ルテニウム、オスミウム、テルル、タングステン、それぞれの酸化物、それぞれの塩又はこれらの任意の組合せを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記磁気材料は、鉄、ニッケル、コバルト、ガドリニウム、サマリウム、ネオジム、鋼、それぞれの炭化物、強磁性、常磁性、反磁性を備えた1つ又は複数の磁気材料を含む他の合金又はこれらの任意の組合せである、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年5月24日に出願された米国仮特許出願第63/192,304号に対する優先権及びその利益を主張する。
【0002】
[0002] 本開示は、電気分解プロセスを使用して製品を製造することに関する。特に、本開示は、電気分解プロセスを使用して分割される二酸化炭素からカルバノゲル混合生成物を作る方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 2015年現在、年間プラスチック生産量は、以下のように要約することができる。ポリプロピレン(PP)は、68メガトン(MT)の非繊維PPが生産され、52MTの繊維PPが生産され、ポリエチレン(PE)は、64MTの低密度PEが生産され、52MTの高密度PEが生産され、ポリエチレンテレフタレート(PET)とも呼ばれるポリエステルは、年間33MT生産され、ポリ塩化ビニル(PVC)は、年間38MT生産されている。他のプラスチックの生産量は、PVCの生産量に比べて劇的に下がる。
【0004】
[0004] プラスチックの生産中、ポリマーを形成するためのモノマーの重合は、縮合反応、開環反応、イオン反応、連鎖移動反応又はプラズマ重合反応などの反応によって起きる。ポリマーは、天然ポリマー、合成ポリマー、半合成ポリマー、再生ポリマー、非晶質ポリマー、半結晶ポリマー、熱可塑性又は熱硬化性プラスチックなどに分けられることが多い。
【0005】
[0005] PP及びPE生産の主な利点は、費用が安く、望ましい機械的柔軟性を備えたプラスチックを提供することである。PP及びPEは、特別な触媒を備えた高温及び高圧のガスから作成される。PP及びPEは、再生利用が課題であり、それらは、耐化学性プラスチックであり、PP及びPEが環境に残り、プラスチック汚染を悪化させる。
【0006】
[0006] PVCは、通常、冷却剤、開始剤、水中に小さいPVC粒子が浮遊することを促進するための1つ又は複数の添加剤から作成される。水性懸濁液は、次いで、乾燥され、一緒に溶解される。ときに、PVC粒子は、最初に生産され、次いで懸濁液内で可塑剤又は他の添加剤と混合される。この重合反応は、PVCを超えるいかなるものも作らない。典型的には、可塑剤及び炭酸塩は、PVCの強度、柔軟性並びにPVC生産の速度及び容易さを増すために追加される。
【0007】
[0007] 熱可塑性樹脂は、剛性を必要とする材料に関連することが多い。熱可塑性樹脂は、熱によって溶解し、再凝固するために冷却され、成形、圧縮成形、機械加工を介して又は3D印刷用途によって様々な形態を取るように形成され得る。ポリ乳酸(PLA)は、熱可塑性樹脂の一例であり、熱可塑性樹脂は、再生可能であり、生物から供給することができ、場合により生物分解することができる。PLAは、単純な加熱によって比較的簡単に作成され、副産物として水を生成する。PLAの主な限界は、その強度特性が低いことである。可塑剤は、ポリカルボキシレート(若しくはポリカルボン酸塩)又は多くのカルボキシレート基を有するクエン酸を含む、PLA内の望ましい特性を増加させるために添加剤として使用されることが多い。
【0008】
[0008] PLAの年間生産量(2019年)は、わずか0.2MTであったが、供給を超える需要をもたらす最高年間生産成長率(26%)の1つを有し、価格が上昇している。熱可塑性樹脂として、PLAは、熱によって溶解し、冷却し、形成することができるポリマーであり、これは、限定されないが、PE、PP、PVC、アクリル、アクリロニトリルブタジエンスチレン、すなわちABS、ナイロン、テフロン(登録商標)及びポリカーボネート、すなわちPCを含む全ての熱可塑性樹脂と共有する特性である。ABSは、3D印刷用途に一般的に使用されるプラスチックであり、ABSは、車体、電化製品及び電話ケースにも使用される。
【0009】
[0009] 反対に、熱硬化性樹脂は、架橋剤を介して恒久的に固体状態に不可逆的に硬化され、化学反応によって形成される。例えば、熱硬化性樹脂は、限定されないが、光重合又は熱的化学反応などの化学反応のみを介して3D印刷用途の印刷に使用することもできる。硬化する前に、熱硬化性樹脂の1つ又は複数の予備硬化構成要素は、液体として利用可能であり、これは、粘性又は高密度であることが多い。熱硬化性樹脂は、より高温に耐性であることが多く、高温では溶解よりむしろ分解する傾向がある。熱硬化性樹脂の共通の例は、エポキシ(及びエポキシ樹脂)、アクリル、フェノール、シリコン(ポリシロキサン)、ポリウレタン(PU)、ポリイミド、加硫ゴム、ベークライト(ポリオキシベンジルメチレングリコールアンハイドライド)、ポリジシクロペンタジエン(pDCPD)、ポリイソシアヌレート、ポリエステル、ポリウレア、尿素ホルムアルデヒド及びビニルエステル、シアン酸塩、メラミン又はポリエステル樹脂を含む。
【0010】
[0010] カーボンナノチューブ(CNT)を含むカーボンナノ物質(CNM)は、本明細書で混合物(admix)とも呼ばれる混合物(admixture)を形成するためにプラスチックに追加され、複合材料及び製品は、そのような混合物から作ることができる。歴史的に、PVC-CNT及びPLA-CNT混合物は、溶媒内にプラスチックを分解し、超音波処理によってその中にCNTを拡散し、次いで混合物を乾燥させるか、又はCNTと混合したプラスチックビーズを溶解するかのいずれかによって作られた。
【0011】
[0011] ポリマー-CNT混合物は、印刷されたPLA/CNT構成要素を含むPLA、PVC及びポリウレタン、ポリスチレン、ポリアニリン、ポリフッ化ビニリデン及び幅広い範囲のエポキシを含む他のポリマーを使用して研究されてきた。グラフェン及びグラフェン酸化物ポリマーの混合物も知られている。
【0012】
[0012] ケブラー(登録商標)は、ポリマーの溶液を繊維中に回転させて入れることによって形成されるため、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもない。ケブラー-CNT複合物は、CNT上にケブラーを被覆し、CNTを、CNTの表面に共有結合したポリマーp-フェニレンテレフタルアミド(PPPA)及びテレフタロイルクロリド(TPC)の繰り返し単位で接合することによって形成されている。ケブラー-CNT混合物は、その衝撃抵抗を大幅に増加させることができる。CNTを加えない場合に比べて、CNTを0.1重量%(wt%)添加すると、規格化された吸収エネルギーは、6.5倍に増加した。
【0013】
[0013] 得られる材料又は製品の多数の新たな向上した特性を与えるためにCNM及びポリマーを組み合わせることが知られているが、そのように得られた材料及び製品の使用及び展開は、広がっていない。いずれの特定の理論によっても制限されることなく、この阻まれた使用及び展開は、CNM構成要素を作る共通の方法に起因する場合があり、これは、費用がかかり、関連するカーボンフットプリントが高い。例えば、化学蒸着(CVD)は、CNMの商業的製造で従来使用されているプロセスである。CVDは、高額であり、現在、CNM、例えばCNT、グラフェン及びカーボンナノオニオンの価格は、1トンあたり$100,000~$10,000,000である。比較して、鋼は、1トンあたり$400~$700の価格である。
【0014】
[0014] したがって、高い費用及び関連する高いカーボンフットプリントに対処する、ポリマー-CNM混合物並びにそれから作られた材料及び製品の商業的製造の新たな方式が望ましい。
【発明の概要】
【0015】
[0015] 本開示の実施形態は、ポリマーのみから作られた材料又は製品に比べて新たな又は向上した特性を有する材料又は製品を作るために使用され得るポリマー-カーボンナノ物質(CNM)混合物に関する。
【0016】
[0016] 本開示のいくつかの実施形態は、ポリマー-CNM混合物を作る方法に関する。方法は、カルバノゲルを受け取るステップと、カルバノゲルをポリマー混合物と組み合わせるステップと、ポリマー-CNM混合物を収集するステップ(回収するステップとも呼ばれる)とを含む。
【0017】
[0017] 本開示のいくつかの実施形態は、カルバノゲルを含むポリマー-CNM混合物及びポリマー混合物に関する。
【0018】
[0018] 本開示のいくつかの実施形態は、ポリマー-CNM混合物を作るためのシステムに関する。システムは、カルバノゲルを生成するために熔融電界質中で二酸化炭素(CO2)を分割する電気分解プロセスを行うための装置であって、カルバノゲルは、カーボンナノ物質(CNM)と電解質とを含む、装置と、カルバノゲルを受け取るための容器と、ポリマー混合物の供給源とを含む。
【0019】
[0019] ポリマー-CNM混合物、得られる複合材料の展開は、CNM構成要素を製造するのに費用がかかること及び関連する高いカーボンフットプリントによって阻まれてきた。さらに、特により少量のCNMが存在するとき、混合物を通してCNMの均一な分散を確立するための技術的な課題が存在する。
【0020】
[0020] CNMの高い製造費は、主として高い反応剤及びエネルギー費用を原因とすることが既知である。いずれの特定の理論によっても制限されることなく、本開示の実施形態によるポリマー-CNM混合物中の構成要素として使用することができる、熔融電気分解プロセス及び製造されたCNMを使用してCO2から製造されると、これらの製造費は、2桁低減され得る。さらに、いずれの特定の理論によっても制限されることなく、電気分解プロセスによって製造されたカルバノゲルは、CNMの固定されて分散された位置を提供し得る、格子状構造を提供するカルバノゲルによって混合物を通してCNMの均一な分散を確立する課題を克服することも支援し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
[0021] 本開示のこれらの及び他の特徴は、添付図面を参照する以下の詳細な説明でより明らかになる。
【0022】
【
図1】[0022]本開示の実施形態における使用のための、カルバノゲル生成物を作るための装置の概略図である。
【
図2】[0023]ポリマー-CNM混合物を作るための、本開示の実施形態によるシステムの概略図である。
【
図3】[0024]本開示の実施形態による方法のステップを表す概略図である。
【
図4】[0025]本開示の実施形態の特性を示す2つのパネルを有し、上部パネルは、カルバノゲルあり及びなしで作られたエポキシ樹脂品目の写真を示し、下部パネルは、カルバノゲルの重量%付加に対して増加した引張強度を示す棒グラフである。
【
図5A】[0026]本開示の実施形態によって作られたカルバノゲルの走査型電子顕微鏡画像の写真を示し、730倍の倍率の画像を示す。
【
図5B】[0026]本開示の実施形態によって作られたカルバノゲルの走査型電子顕微鏡画像の写真を示し、8600倍の倍率の画像を示す。
【
図6】[0027]本開示の実施形態によるポリマー-CNM混合物を作るためのさらなるプロトコルの概略図を示す2つのパネルを有し、上部パネルは、組み合わせるステップがポリマーを調製する前に起きるプロトコルを示し、下部パネルは、組み合わせるステップがポリマーの調製に続いて起きるプロトコルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[0028] 本開示の実施形態は、ポリマー及びカーボンナノ物質(CNM)の混合物を作るための装置、システム及び方法に関する。そのような実施形態の混合物は、約10重量%(wt%)以下のCNMを含む。そのような混合物のCNM含有量は、新たな又は向上した特性を混合物及び材料並びにそれから作られた製品に与え得る。そのような新たな又は向上した特性は、限定されないが、強度特性、電子応用特性、医療応用特性、熱伝導特性、熱絶縁特性、触媒特性又はこれらの任意の組合せを含む。
【0024】
[0029] 2009年以降、CO2の炭素へのエネルギー効率的な変換及び溶融炭酸塩電気分解による酸化が知られている。続いて、CO2の様々な黒鉛状カーボンナノ物質(CNM)への化学的変換が実証された。これらの黒鉛状CNMは、長期間の安定性と、これらの材料が有用な特性、例えば超高強度、高導電性、高熱伝導性、新たな電子機器、高電池、燃料電池及びキャパシタ蓄電容量、電磁放射線遮蔽、有効な薬物送達及び様々な医療特性並びに有用な触媒特性を有することとに起因として価値がある。
CO2→Cナノ物質+O2 (式1)
【0025】
[0030] 式1は、溶融電気分解プロセスを示し、カーボンナノ物質は、成長し、電解質と混合された絡まったCNMの混合物としてカソードの上に残る。この混合物は、カルバノゲルと呼ばれており、電解質の少なくとも95%は、このカルバノゲルから高温プレス濾過によって押し出され得る。
【0026】
[0031] CNM構成要素内で生じ得る、グラフェンのsp2結合炭素構成要素及び単層又は多層グラフェンの包含は、カルバノゲル中のCNMに対して、向上した特性、例えば、限定されないが、これらのCNMの増強された強度及び伝導性を提供し得る。追加的に、CNMの特定の形態の相対的な量は、追加的な特性をカルバノゲル及びそれから作られた製品に与え得る。そのような形態の例は、限定されないが、球状ナノカーボン、中実及び中空ナノオニオン、円筒形同素体のナノカーボン、平面同素体、らせん状同素体、カーボンナノチューブ(CNT)、ナノファイバー、グラフェン、ナノプレートレット、ナノスキャフォールド、ナノツリー、ナノベルト、ナノフラワー、ナノドラゴン、ナノツリー、ナノロッド、表面修飾若しくは金属被覆CNM、図形的特徴若しくは特性のない非晶質ナノカーボン又はこれらの任意の組合せを含む。そのような追加的な特性の例は、限定されないが、カルバノゲル中のCNMの低減した摩擦、弾力性、熱伝導、難燃性、対掌性、向上した表面積又はこれらの任意の組合せを含む。これらの特性は、限定されないが、潤滑、可撓性材料、対掌性光吸収、対掌性光放射、対掌性触媒、向上した電気化学的電荷蓄積、向上した触媒活性、耐火性又は強化されたEMF遮蔽能力を含む特定の用途に有用である。カルバノゲル中のCNMは、ドーピング、磁性、まれな形状及び小型化又は拡大されたサイズを含む追加的な特徴も含み得る。いかなる理論にも制約されることなく、CNTは、単壁CNT、多壁CNT、ドープCNT、例えばホウ素、硫黄、リン若しくは窒素ドープCNT、磁気CNT、竹型CNT、パール状CNT、同位体特異的CNT、例えば12C及び13CCNT、表面修飾若しくは金属被覆CNT、単一若しくは二重編組CNTを含むらせん状CNT、渦巻き状らせん状CNT、薄い、厚い若しくは中実壁のCNT、細径及び太径CNT、短い若しくはウール(長い)CNT又はこれらの任意の組合せを含み得る。
【0027】
[0032] 本開示の実施形態によると、炭素含有ガスは、そのガス中の炭素から、カーボンナノ物質(CNM)生成物を含むカルバノゲルを発生させるための、本明細書で電気合成プロセスとも呼ばれる電気分解プロセスを受け得る。「カルバノゲル」という用語は、本明細書では、電気分解プロセスの生成物であり、電気分解プロセス中又は後にカソードに局在するCNM及び電解質の混合物を指すために使用される。「カーボンナノ物質生成物」及び「CNM生成物」という用語は、本明細書では、1つ又は複数の形態の、ナノスケールカーボンとも呼ばれ得るナノカーボンの集合を指すために使用される。「ナノカーボン」という用語は、本明細書では、ナノスケールで特定の構造、例えば黒鉛ナノカーボン構造に配置された炭素を指すために称される。特に、炭素含有ガスからの炭素は、溶融電解質媒体及び様々な電気分解プロセス構成を使用して炭素及び酸素に分割され得る。電気分解プロセスは、気相から溶融電解質媒体、固体CNM生成物又は両方への炭素の物質移動を引き起こし得る。CNM生成物は、カーボンナノチューブ(CNT)を含む実質的に純粋な、純粋な又は不純なカーボンナノ物質(CNM)であり得る。CNM生成物は、本明細書において上記で説明された通りのCNM構造の1つ若しくは複数の形態又はこれらの任意の組合せを含み得る。任意選択的に、電気分解プロセスの1つ又は複数のパラメータは、CNM生成物中の所与の形態の相対的な量を変えるために調整され得る。
【0028】
[0033]
図1に示される通り、電気分解プロセスは、カソード18を収容するための、電気分解チャンバ又は電気分解セルとも呼ばれ得るケース12を含む装置10内で行われ得、アノード16は、ケース12の壁の内面の少なくとも一部を形成し得る。合わせて、2つの電極は、それらの間に電気分解空間を画定する。当業者によって認められる通り、任意選択的に、アノード16は、ケース12の壁とは別個であり得る。ケース12は、電解質媒体21を収容するように構成される。電解質の上面21Aを含む電気分解空間Bは、炭素含有ガス源(
図1でDとして示される)と流体連通し得る。本開示のいくつかの実施形態では、ケース12は、断熱材料で作られた絶縁されたハウジング20内に含まれ得る。絶縁されたハウジング20は、断熱材料で作られた又は作られていない頂部22又は側部若しくは底部(図示せず)も含み得、断熱材は、CO
2透過性断熱材、例えば高温織セラミックス又はほぼCO
2不浸透性の断熱材に由来し得る。透過性断熱材の例は、限定されないが、アルミナ及びシリカの酸化物から作られ、ジルコニアを含み得るMorgan Cerablanket(登録商標)、アルカリ土類ケイ酸塩から作られたMorgan Superwool(登録商標)を含み、両方とも1,200℃を上回る温度に対応する。ほぼCO
2不浸透性の断熱材の例は、幅広い範囲の利用可能な商業的耐火煉瓦又は現場打ち耐火セメント及びモルタルを含み、その例は、限定されないが、1,090℃を上回る温度に対応するBNZ Materials耐火煉瓦及び耐火セメント及びモルタル、例えばPA20及び23並びにBNZ2000、2300、23A、2600、26~60、2800、3000及び3200を含む。
【0029】
[0034] 炭素含有ガス源は、限定されないが、セメント製造プラント、鉄精製プラント、鋼製造プラント、アンモニア、エタノール、マグネシウム、水素、ポリマー、プラスチック、ガラスの1つ又は複数を作るか又は使用するプラント、廃水処理プラント、食品加工プラントを含む様々な工業用プラントであり得る。炭素含有ガス源は、内燃機関及び加熱又は調理のための炭素質材料の燃焼を含む化学反応器でもあり得る。発電プラントからの排出ガス、蒸気発生設備又は熱分解反応器も炭素含有ガス源であり得る。これらの供給源から又は任意の高カーボンフットプリント物質の製造で排出される炭素含有ガスも、CNM生成物を作るための炭素源に寄与し得るか又はそれを構成し得る。さらに、加熱、輸送のための化石燃料の燃焼又は変換のガス生成物及び炭素生成物、例えばポリマー及びプラスチックも、CNM生成物を作るための炭素源に寄与し得るか又はそれを構成し得る。
【0030】
[0035] 本開示のいくつかの実施形態では、アノード16は、平面構造、ワイヤ構造、スクリーン、多孔質構造、導電性プレート、平坦な又は折り畳まれたシム、コイル状構造として形成されるか、又はアノードは、ケース12の内側壁の少なくとも一部を形成し得る。アノード16は、アノード16が酸素発生であっても又はなくてもよいように、様々な導電性材料で形成され得る。このようなアノード形成材料は、限定されないが、安定した層を有するか又は確立する、本開示の実施形態によって実施される電気分解反応中に酸素製造を促す高度に安定的な酸化物外層を確立する任意の導電性材料、Ni、Ni合金、亜鉛めっきされた(亜鉛コーティング)鋼、チタン、黒鉛、鉄及び酸素製造を促す高度に安定的な酸化物外層を確立する幅広い種類の金属を含む。アノード16を形成するための好適な材料のさらなる例は、合金構成要素の共核生成が高品質CNTを製造することが知られているため、ニッケル合金36(クロムなしであるが、鉄を有するニッケル)、ステンレス鋼、例えばSS304又はSS316を含むニクロム(ニッケルクロム基合金)並びにインコネル合金、例えばインコネル600、625及び718、合金C-264又はニクロム、例えばクロメルA、B又はを含む。限定されないが、Ni、Cr、Sn、In、Fe及びMoを含む2成分系及び3成分系遷移金属核生成剤も有用であり得、同様にCNM生成物の成長に影響を及ぼし得る。
【0031】
[0036] 本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属がアノード16に追加され得、これは、電解質媒体21を通してカソード18に移動するようにアノード16から溶解され得る。追加された遷移金属は、成核剤として機能し得、これは、ニッケル、鉄、コバルト、銅、チタン、クロム、マンガン、ジルコニウム、モリブデン、銀、カドミウム、錫、ルテニウム、亜鉛、アンチモン、バナジウムタングステン、インジウム、ガリウム又は非遷移金属、例えばゲルマニウム若しくはシリコン又は限定されないが、真鍮、モネル及びニッケル合金を含むその混合物から選択され得る。遷移金属は、カソード18上に移動するように電解質媒体21内に溶解された遷移金属塩としても直接導入され得る。遷移金属成核剤をカソード18上に直接追加することも可能である。
【0032】
[0037] 本開示のいくつかの実施形態では、カソード18は、平面構造、ワイヤ構造、スクリーン、多孔質構造、導電性プレート、平坦な又は折り畳まれたシム、シート、コイル状構造として形成されるか、又はカソードは、ケース12の内側壁の少なくとも一部を形成し得る。カソード18は、核生成ポイント及びカソード18に形成するCNM生成物のバリエーションの必要性を反映する様々な導電性材料で形成され得る。そのようなカソード形成材料は、限定されないが、任意の導電性材料、亜鉛めっきされた(亜鉛コーティング)鋼、チタン、黒鉛、鉄、銅及び亜鉛を含む合金、モネル(Ni400、Ni/Cu合金)、インコネル、ステンレス鋼、鉄、ニクロム、純粋Cuを含み、真鍮合金もカソード18を作るための材料として好適であり得る。
【0033】
[0038] アノード16及びカソード18は、ケース12、例えばステンレス鋼ケース又は実質的に純粋な若しくは純粋なアルミナで作られたケース内で互いに実質的に平行に整列され得る。ケース12は、溶融電解質媒体21を含み、及び装置10Aによって達成される温度を維持するのに好適な任意の材料で作られ得る。電極は、限定されないが、実質的に水平又は実質的に垂直を含む任意の向きに方向付けられ得るが、それらの間に電気分解空間Bを画定するように互いから間隔を空けて配される。本開示のいくつかの実施形態では、電気分解空間Bは、約0.1cm~約10cmである。本開示のいくつかの実施形態では、電気分解空間Bは、約1cmである。当業者によって認められる通り、電気分解空間Bの寸法は、装置10の規模、例えば各電極のサイズ、ケース内に画定されたプレナム、印加された電流の量及びこれらの組合せによって決まる。
【0034】
[0039] アノード16及びカソード18は、約0.001A/cm2~10A/cm2の電流密度を提供する、一定であるか又はないかのいずれかの交流又は直流の任意の電源であり得る電流源(図示せず)に動作可能に接続される。本開示のいくつかの実施形態では、電極間に提供される電流密度は、少なくとも0.02A/cm2、0.05A/cm2、0.1A/cm2、0.2A/cm2、0.3A/cm2、0.4A/cm2、0.5A/cm2、0.6A/cm2、0.7A/cm2、0.8A/cm2、0.9A/cm2、1.0A/cm2又はそれを上回る。電流源のための電力は、電源、ソーラー電源などを含む任意の電源又は電源の組合せであり得る。
【0035】
[0040] 熱源(図示せず)は、ケース12内の温度を、電解質媒体21を溶融相に移行させる温度まで上昇させる任意の熱源であり得る。例えば、熱源は、約500℃~約850℃又はそれを上回るケース12内の温度を達成し得る。本開示のいくつかの実施形態では、加熱は、約700℃~約800℃、約720℃~約790℃又は約750℃~約780℃の温度を達成する。本開示のいくつかの実施形態では、加熱は、749~750℃、751~752℃、753~754℃、755~756℃、757~758℃、759~760℃、761~762℃、763~764℃、765~766℃、767~768℃、769~770℃、771~772℃、773~774℃、775~776℃、777~778℃又は779~780℃の温度を達成する。本開示のいくつかの実施形態では、ケース12内の温度は、約800℃以上に上昇され得る。本開示のいくつかの実施形態では、熱源は、CO2吸収及び炭酸塩への変換(気相から固相CNM生成物への物質移動)の発熱反応又は印加された電気分解電流の過電圧によって提供又は補完される。
【0036】
[0041] 本開示のいくつかの実施形態では、電解質媒体は、溶融相に移行するまで熱源によって加熱され得る炭酸塩を含み得る。例えば、炭酸塩は、リチウム炭酸塩又はリチウム化炭酸塩であり得る。723℃の融点を有するリチウム炭酸塩(Li2CO3)などの溶融炭酸塩又は620℃の融点を有するLiBaCaCO3などの融点がより低い炭酸塩は、酸化物を含む場合、溶融時に生じるか又は電気分解の結果である自然発生的な酸化物の形成を含むか、又は高溶解性酸化物、例えばLi2O、Na2O及びBaOと混合されたとき、溶融電解質媒体より上の空間からのCO2の迅速な吸収を維持する。好適な炭酸塩は、アルカリ炭酸塩及びアルカリ土類炭酸塩を含み得る。アルカリ炭酸塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム若しくはフランシウム炭酸塩又はその混合物を含み得る。アルカリ土類炭酸塩は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム若しくはラジウム炭酸塩又はその混合物を含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、電解質は、混合された組成物、例えばアルカリ炭酸塩及びアルカリ土類炭酸塩並びに酸化物、ホウ酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化化合物、塩素酸塩又はリン酸塩の1つ又は複数の混合物であり得る。
【0037】
[0042] 本開示の実施形態によると、カルバノゲルは、CO2の溶融炭酸塩電気分解分割によって形成される。カルバノゲルは、電気分解プロセスが止まった後に残るCNMネットワーク及び電解質の混合物を含む。興味深いことに、破砕などの処理後、カルバノゲルは、CNMネットワークを維持し得る。さらに、(処理された又は処理されていない)カルバノゲルの電解質含有量は、電解質を押圧するか、反応させるか又は洗い流すことによって低減され得る。電解質の一部又は全ての除去後、カルバノゲルは、高純度炭素から構成されるCNMからなる。電解質の一部又は全ての除去後、CNMは、内部空隙を画定する。例えば、CNMは、CNM中の空隙スペース、CNM表面上及びCNM内又はこれらの組合せを画定し得る。本開示の目的上、「空隙」という用語は、電解質も他の物質も実質的にない、CNM中の2次元又は3次元空間を意味する。
【0038】
[0043] 本開示のいくつかの実施形態では、CNM中に画定された空隙は、空隙充填剤、例えば用途に基づく材料で部分的に、実質的に完全に又は完全に充填され得る。好適な空隙充填剤の例は、限定されないが、強化剤、触媒、ドーパント、薬剤又は電磁場(EMF)遮蔽剤を含む。強化剤は、限定されないが、エポキシ樹脂、樹脂及び他のポリマー、セメント質材料及び金属を含み得る。触媒は、限定されないが、化学又は電気化学反応を早めるための材料を含み得る。ドーパントは、限定されないが、空隙内において少量でポリマー-CNM混合物並びにそれから作られた材料及び製品の物理的化学的特性に実質的に影響を及ぼす材料を含み得る。カルバノゲルにおけるCNM構成要素は、ポリマー-CNM混合物並びにそれから作られた材料及び製品の1つ又は複数の特性をさらに高めるか、又は新たな特性を与えるために機械的、電気的又は磁気的に整列され得る。そのような特性は、限定されないが、強度、電気及び熱特性を含む。電気的及び/又は磁気的整列は、カルバノゲル調製ステージ中に配向電場及び/又は磁場を印加することで達成され得る。磁気的CNMは、CNMを発生させるとき、電気分解プロセス中に磁気材料、例えば金属又は金属炭化物を組み込むことによって調製される。ポリマー-CNM混合物は、例えば、裏張り、難燃性物質若しくはシールドにおいて単独で又は向上した特性をそれらの他の材料に与えるために、例えば、限定されないが、ポリマー-CNM混合物で作られない、積層体などの他の材料との組合せで使用され得るシート材料を形成するために使用され得る。
【0039】
[0044] CNMの高い製造費は、主として高い反応剤及びエネルギー費用を原因とすることが既知である。いずれの特定の理論によっても制限されることなく、本開示の実施形態による溶融電気分解プロセスを使用してCO2から製造されると、これらの製造費は、2桁低減され得る。
【0040】
[0045] 本開示のいくつかの実施形態は、ポリマー-CNM混合物222を作るためのシステム200に関する。
図2の非限定的な例に示される通り、システム200は、カルバノゲル生成物を製造するために溶融電解質中で二酸化炭素(CO
2)を分割する電気分解プロセスを行うための装置210と、容器212と、モノマー/ポリマー混合物の供給源214とを含む。システム200は、本明細書において以下で説明される通りの本開示の方法を実施するために使用され得る。
【0041】
[0046] 本開示のいくつかの実施形態では、装置210は、本明細書において上記で説明された装置10と同じ又は同様であり得る。装置210は、溶融電解質中で炭素含有ガスを分割する電気分解プロセスを行うように構成される。その分割の生成物は、バルク又は残余電解質がその中にあるCNM生成物、すなわちカルバノゲル生成物とも呼ばれ得るカルバノゲルである。
【0042】
[0047] 低温の生成物又は高温の生成物としてのいずれかを問わず、カルバノゲル(
図2で線Xによって示される)を受け取る容器212である。容器212は、容器212がその中に受け取られるカルバノゲルの温度に耐えるのに十分に堅牢である限り、様々な材料で作られ得、任意の形状及び寸法であり得る。
【0043】
[0048] システム200は、ポリマー-CNM混合物222を、酸化力のある環境から保護するための絶縁ユニット224をさらに含み得る。絶縁ユニット224は、ポリマー-CNM混合物222を受け取り、酸素含有ガスなどのいずれの酸化剤も容器内から例えば真空ポンプによって取り除き、及び容器内の流体を不活性ガスなどの非酸素含有ガスと置き換えるための好適な寸法の流体密封器を含み得る。
【0044】
[0049] モノマー/ポリマー混合物の供給源214は、モノマー/ポリマー混合物を収容する容器であり得、及び/又は供給源214は、モノマー/ポリマー混合物を調製するための調製ユニットを含み得る。本開示の目的を達成するために、用語「ポリマー混合物」は、ポリマー、ホモポリマー、ヘテロポリマー、少なくとも2つのポリマー、モノマー、少なくとも2つのモノマー又はポリマー混合物が、ポリマー-CNM混合物を作るために本開示の実施形態に利用され得る、これらの任意の組合せの混合物を指すために、用語「ポリマー混合物」、「モノマー/ポリマー混合物」及び「モノマー/ポリマー混合物」と交換可能に使用される。例えば、調製ユニットは、1つ又は複数の化学反応を行うことができる反応器を含み得る。反応器内で行うことができるような化学反応の非限定的な例は、限定されないが、開始反応、伝搬反応、停止反応、縮合反応、開環反応、イオン反応、連鎖移動反応、光子ベース反応、熱反応、プラズマ重合反応又はこれらの任意の組合せを含む。
【0045】
[0050] 追加的又は代替的に、調製ユニットは、モノマー/ポリマー混合物を製造するための押出機入力部に所定の熱及び圧力を加えるための押出機を含み得る。
【0046】
[0051] モノマー/ポリマー混合物の供給源214は、ポリマー-CNM混合物を製造するためにポリマーに調製する前に、カルバノゲルと組み合わせる必要があり得るモノマー前駆体を含み得る。追加的又は代替的に、モノマー/ポリマー混合物214は、ポリマー-CNM混合物を製造するためのカルバノゲルと組み合わせることができる、すでに調製されたポリマーを含み得る。
【0047】
[0052] 本開示のいくつかの実施形態では、供給源214は、天然ポリマー、合成ポリマー、半合成ポリマー、再生ポリマー、非晶質ポリマー、半結晶ポリマー、熱硬化性ポリマー、熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマー、そのようなポリマーのモノマー前駆体又はこれらの任意の組合せの供給源である。
【0048】
[0053] 本開示のいくつかの実施形態では、供給源214は、PLA、PVA、PP、PE、アクリル、ABS、ナイロン、テフロン、PC、エポキシ、エポキシ、アクリル、フェノール、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリイミド、加硫ゴム、ベークライト、pDCPD、ポリイソシアヌレート、ポリエステル、ポリウレア、尿素ホルムアルデヒド、ビニルエステル、シアン酸塩、メラミン、ポリエステル樹脂、そのようなポリマーのモノマー前駆体又はこれらの任意の組合せの供給源である。
【0049】
[0054] 本開示のいくつかの実施形態では、システム200は、冷却された又は高温のカルバノゲル生成物を、容器212によって受け取られる前(又は受け取られた後)に破砕するための処理ユニット216をさらに含み得る。処理ユニット216は、カルバノゲルの温度に耐え得る様々な好適な構成要素、機構又は機械、例えば、限定されないが、グラインダ、細分化ユニット、物理的プレス、微粉砕ユニット、ミル又はこれらの任意の組合せであり得る。カルバノゲルの結果としての粒子サイズは、処理ユニット216によって行われる処理動作の程度によって決められる。
【0050】
[0055] 本開示のいくつかの実施形態では、システム200は、電解質低減ユニット218をさらに含み得る。電解質低減ユニット218は、冷却された又は高温のカルバノゲル生成物を装置210から直接受け取ることができ、及び/又はこれは、処理されたカルバノゲル生成物を処理ユニット216から受け取ることができる。電解質低減ユニット218は、(処理された又は処理されていない)カルバノゲル生成物の電解質含有量を低減させ、その結果、電解質含有量が減少したカルバノゲルが処理ユニット216で処理され得(又はさらに処理され得)、次いで容器212に受け入れられる。代替的又は追加的に、電解質含有量が減少したカルバノゲルは、電解質低減ユニット218から容器に受け入れられ得る。
【0051】
[0056] 電解質低減ユニット218は、(処理された又は処理されていない)カルバノゲルの電解質含有量を機械的方式、化学的方式、電気化学的方式又はこれらの任意の組合せによって低減させ得る。例えば、機械的方式は、カルバノゲルの電解質含有量を低減させ得る様々な好適な構成要素、機構又は機械、例えばカルバノゲルを、メッシュ若しくは篩を通すように押す機械プレス、カルバノゲル中の電解質を溶かすための加熱器、フィルタ(室温若しくは高温)又はこれらの任意の組合せを含み得る。カルバノゲルの電解質含有量を低減させるための化学的方式は、電解質を溶解させ得る1つ又は複数の化学物質にカルバノゲルを暴露するための1つ又は複数の洗浄ステーションを含む。電解質含有量を低減させることに加えて、1つ又は複数の化学物質は、カルバノゲル中のCNMから非晶質炭素又は金属などの不純物を溶解させるためにも加えられ得る。電気化学的方式は、カルバノゲルの電解質含有量及び/又は不純物含有量を低減させるための選択的電気分解を行うための装置を含む。
【0052】
[0057] 本開示のいくつかの実施形態では、システム200は、カルバノゲル(処理された及び/又は電解質が低減された若しくはされていない)及び/又はポリマー-CNM混合物におけるCNM構成要素の少なくとも一部を整列させる整列ユニット220をさらに含み得る(
図2の非限定的な例に示された通り)。整列ユニット220によって実施される整列手順が容器212型内で行われるように、整列ユニット220は、容器212に一体化され得る。代替的又は追加的に、整列ユニット220は、圧縮されていないカルバノゲル(処理された及び/又は電解質が低減された若しくはされていない)を受け取ることができ、整列手順を実施することができ、次いで整列したカルバノゲルを容器212に移すことができる、容器212とは別個の物理的構成要素であり得る。整列ユニット220は、ポリマー-CNM混合物中の整列したCMN構成要素が必要な異方性特性を有するように、機械的方式、電気的方式、磁気的方式又はこれらの任意の組合せの1つ又は複数を用いることができる。整列ユニット220は、配向物理的応力場をカルバノゲル中及び/又はポリマー-CNM混合物中のCNM(処理された及び/又は電解質が低減された若しくはされていない)に印加することができる様々な好適な構成要素、機構又は機械による機械的方式を用い得る。例えば、機械的方式は、せん断力をカルバノゲル中のCNM生成物に印加することができる。せん断力は、本体、例えばピストンを、カルバノゲル中及び/又はポリマー-CNM混合物中のCNM(処理された及び/又は電解質が低減された若しくはされていない)を通して引くか、回転させるか又は引くことによって印加され得る。代替的に、CNM整列ではなく、CNMの絡み合いを増加させるためにせん断力が直接印加される。
【0053】
[0058] 整列ユニット220は、配向電場をカルバノゲル中及び/又はポリマー-CNM混合物中のCNM(処理された及び/又は電解質が低減された若しくはされていない)に印加し得る様々な好適な構成要素、機構又は機械によって電気的方式を用い得る。
【0054】
[0059] 整列ユニット220は、配向磁場をカルバノゲル中及び/又はポリマー-CNM混合物中のCNM(処理された及び/又は電解質が低減された若しくはされていない)に印加し得る様々な好適な構成要素、機構又は機械によって磁気的方式を用い得る。
【0055】
[0060] 本開示のいくつかの実施形態では、整列ユニット220は、CNMの方向性のある整列を増加させるよりむしろ低減させ、したがってポリマー-CNM混合物の任意の異方性特性の減少のために使用され得る。
【0056】
[0061]
図3は、カルバノゲルを受け取るステップ102と、カルバノゲル及びモノマー/ポリマー混合物を容器内で組み合わせるステップ108と、ポリマー-CNM混合物を回収するステップ110とを含むものとして、ポリマー-CNM混合物を作る方法100のステップを示す。任意選択的に、方法100は、本明細書において上記で説明された電気分解プロセスによってカルバノゲルを発生させるステップ101をさらに含み得る。方法100は、カルバノゲルの電解質含有量を処理するステップ103及び/又は低減させるステップ105をさらに含み得る。
【0057】
[0062] 受け取るステップ102について、カルバノゲルは、本明細書において上記で説明された電気分解プロセスを使用して発生され得、これは、発生のステップ101と呼ばれ得る。発生したカルバノゲルは、CO2の溶融電気分解分割中にカソードで成長したCNMの絡まった生成物を含む。発生させるステップ101、上述の電気分解プロセスの動作パラメータを選択的に制御することにより、発生したカルバノゲルは、カルバノゲル中のCNMの望ましい形態のより大きい相対的な量を有し得る。例えば、電気分解プロセスは、カルバノゲルのCNM内のナノカーボン構造の他の形態と比べて、球状ナノカーボン、中実及び中空ナノオニオン、円筒形同素体のナノカーボン、平面同素体、らせん状同素体、カーボンナノチューブ(CNT)、ナノファイバー、グラフェン、ナノプレートレット、ナノスキャフォールド、ナノツリー、ナノベルト、ナノフラワー、ナノドラゴン、ナノツリー、ナノロッド、表面修飾若しくは金属被覆CNM、図形的特徴若しくは特性のない非晶質ナノカーボン又はこれらの任意の組合せの相対的な量を増加させるように制御され得る。
【0058】
[0063] CNM生成物を含む発生したカルバノゲルは、カルバノゲルを冷却、剥離することを可能にすること若しくは冷却されたカソード18からカルバノゲル片を折り取ること、カルバノゲルを破砕すること又はこれらの任意の組合せを含むカルバノゲル処理のステップ103に受け入れられ得る。代替的に、処理するステップ103において、CNM生成物を含むカルバノゲルは、カソード18から依然として高温であり、高温の溶融電解質を含む間に抽出され得、次いで高温のカルバノゲルを破砕すること又は本明細書で説明された方法の他のステップに供される。したがって、受け取るステップ102は、冷却された及び固体の又は高温の及び粘度のある流体カルバノゲルのものであり得、これは、さらなる処理を受けても又は受けなくてもよい。
【0059】
[0064] 本開示の実施形態によると、処理するステップ103は、限定されないが、研削、細分化、押圧、微粉砕、フライス処理又はこれらの組合せを含む破砕技術などの様々な方式によって実施され得る。カルバノゲル中のカルバノゲル材料の結果としての粒子サイズは、破砕の程度によって決められる。さらなる及び/又はより厳密な破砕は、処理するステップ103がより短い時間及び/又はより低い厳密さで実施されるシナリオと比較して、ポリマー混合物及びカルバノゲルの組合せに影響を及ぼし得るより小さいカルバノゲル粒子サイズをもたらす。
【0060】
[0065] 本開示のいくつかの実施形態では、カルバノゲルの電解質及び/又は不純物含有量は、低減させるステップ105によって低減され得る。限定されることなく、低減した不純物は、非黒鉛炭素、例えば非晶質炭素及び金属又はこれらの組合せを含み得る。電解質及び又は不純物の一部、ほとんど、実質的に全て又は全ては、化学的、機械的又は電気化学的方式でカルバノゲルを押圧するか、反応させるか又は洗浄することによってカルバノゲルから除去され得る。例えば、低減させるステップ105のための機械的方式は、特定の孔サイズのメッシュなどの選別デバイスを通して電解質をカルバノゲルから物理的に強制的に出すために、物理的圧力をカルバノゲルに印加することを含み得る。機械的方式は、電解質フロー及び分離を円滑にするために、温度を電解質の融点より高くに調整することも含み得る。アルカリ及びアルカリ土類炭酸塩電解質の融点は、溶融三元共晶Li、Na、K炭酸塩のための400℃未満からカリウム炭酸塩のための891℃にわたる。印加される圧力は、0~1000ポンド毎平方インチ(psi)、1000~2000psiに及び得るか又は2000psi以上であり得る。代替的又は追加的に、低減すること105は、化学的方式を含み得、カルバノゲルは、1つ又は複数の化学物質に暴露されて反応を引き起こし、それによりカルバノゲルの電解質含有量が低減する。例えば、洗浄液がカルバノゲルを洗浄するために使用され得、洗浄液は、カルバノゲル粒子からの残余の又はバルク電解質の一部を溶解させ得る。洗浄液は、中性pH液体、例えば水若しくは食塩水溶液又は溶融電解質の溶解を促進し得る酸性若しくはアルカリ性溶液、例えばギ酸若しくは塩酸又はアンモニア硫酸塩、酸化性溶液、例えばパーマグネイト若しくは過酸化物又は有機溶媒或いはこれらの任意の組合せを含み得る。電解質を低減させることに加えて、洗浄液は、CNMから不純物、例えば非晶質炭素又は金属を溶解させるために適用され得る。本開示のいくつかの実施形態では、カルバノゲルの電解質含有量は、室温濾過及び/又は高温濾過によって低減され得る。カルバノゲルの電解質含有量を低減させる105ためのさらなる方式は、限定されないが、篩過及び濾過などの機械的方式、電気化学的手段、例えば選択的電気分解、熱的手段、例えばあまり安定的でない非晶質炭素の燃焼による酸化的除去がCNM不純物を取り除くために施されるか、又はこれらの任意の組合せを含む。カルバノゲルの電解質含有量を低減させることは、カルバノゲルにおけるCNMの相対的な割合を増加させ得る。本開示のいくつかの実施形態では、カルバノゲルの電解質及び/又は不純物含有量を低減させるステップ105は、処理された又は処理されていないカルバノゲルに1回又は2回以上実施され得る。
【0061】
[0066] 本開示の一実施形態では、カルバノゲル(処理された及び/又は電解質含有量が低減された若しくはされていない)は、ポリマー-CNM混合物を形成するために、単一ステップでポリマー混合物と組み合わされる。別の実施形態では、カルバノゲル(処理された及び/又は電解質含有量が低減された若しくはされていない)は、ポリマーの調製ステップ中、例えばポリマーを調製する開始ステップ、及び/又は伝搬ステップ、及び/又は停止ステップ中に追加される。別の実施形態では、カルバノゲル(処理された及び/又は電解質含有量が低減された若しくはされていない)は、縮合反応/機構が生じ、開環反応/機構が生じ、イオン反応/機構が生じ、連鎖移動反応/機構が生じ、光子ベース反応/機構が生じ、熱反応/機構が生じ、化学反応/機構が生じ、プラズマ重合反応/機構が生じるか又はこれらの組合せである、ポリマーを調製するステップ中に追加される。
【0062】
[0067] 本開示のいくつかの実施形態では、カルバノゲル(処理された及び/又は電解質含有量が低減された若しくはされていない)は、天然、合成、半合成又は再生ポリマーの調製中に追加される。本開示の別の実施形態では、カルバノゲル(処理された及び/又は電解質含有量が低減された若しくはされていない)は、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーの調製中に追加される。本開示の別の実施形態では、カルバノゲル(処理された及び/又は電解質含有量が低減された若しくはされていない)は、非晶質ポリマー又は半結晶ポリマーの形成中に追加される。
【0063】
[0068] いずれの特定の理論によっても制限されることなく、処理されたカルバノゲル粒子内の融合した残余電解質は、CNMの均一的な分布のために駆動力を提供し、組み合わせた後、超音波処理又は他のより厳密な混合プロセスを必要とすることなく、処理されたカルバノゲル粒子をポリマー-CNM混合物に結合させることを本発明者らは理論付けた。CO2を分割するために電気分解プロセス中に調製されたカルバノゲルは、CNM及び電解質の両方を含み、この組み合わされた存在は、効果的な「予め分散された」CNMの格子マトリクスである、固定された構造を提供し得る。
【実施例】
【0064】
[0069] 実施例1:重合によるカルバノゲルPLAポリマー-CNT形成条件
【0065】
[0070] 本開示のいくつかの実施形態は、ポリマー混合物がPLAを含む、ポリマー-CNT混合物を調製する方法に関する。この方法中、カルバノゲルは、重合ステップ前に追加されるカルバノゲル粒子を形成するために破砕によって処理され、次いでPLAポリマーと、破砕されたカルバノゲルのCNMとの混合物の形成を進める。PLAの従来の重合調製は、縮合(直接とも呼ばれる)重合又は開環縮合重合(開ループとも呼ばれる)の2つの経路のいずれか1つによって進む。例えば、乳酸水溶液は、加熱され、水を除去するために単独で又は触媒の存在下で真空ポンプ供給され得る。反応が完了するか又はほぼ完了すると、液体PLA(これは、約130~180℃で溶解する)を流出させるか、又は固体として後に使用するために保存することができる。いずれのPLA調製経路も、例えば、PLA-CNM混合物を形成するために(破砕されたカルバノゲルの)CNMを追加して、PLA形成の破砕されたカルバノゲルの開始、及び/又は伝搬、及び/又は停止段階を提供することができる。
【0066】
[0071]CNTは、既知の最も強い材料であり、PLA単独に比べてPLA-CNT混合物の強度を非常に向上させる。一般に、CNTは、重合前に熱可塑性樹脂に追加されておらず、CNTの均一な分布を可能にするために超音波処理及び/又は溶解した熱可塑性溶媒混合物で追加されるか、又は押し出す前に熔融中に広範に混合して追加される。代わりに、この実施形態の一例として、CNTは、PLAと互換性がある、破砕されたポリカルボキシレート及びポリカルボン酸塩として追加される。限定されないが、様々な超可塑剤(例えば、Adva、Plastol及びBASFから市販の超可塑剤並びに他の可塑剤)を含む水性ポリカルボキシレート超可塑剤は、優れたカルバノゲルCNM分散剤であり、超音波処理よりむしろ従来の混合を行うことにより、破砕されたカルバノゲル/ポリカルボキシレートを実質的に均一にPLAポリマー混合物中に分散させる。したがって、破砕されたカルバノゲル及びポリカルボキシレートのいずれも、PLA重合前にエネルギーを超音波処理に浪費することなく追加することにより、早期にPLA形成プロセスを通してCNMの分散を提供する。本開示のいくつかの実施形態では、破砕されたカルバノゲル及び/又はポリカルボキシレートは、続いて、重合プロセスに追加され、次いで、PLAポリマー、破砕されたカルバノゲル及び/又はポリカルボキシレートは、PLAポリマーを通してCNMの実質的に均一な分散を提供するために押出プロセスを受ける。これらの代替の破砕された切れ目のないポリマー-CNM混合物の形成プロトコルは、
図6に示されている。
【0067】
[0072] 実施例2:押出によるカルバノゲルPLAポリマー-CNT形成条件
【0068】
[0073] 本開示のさらなる実施形態では、ポリマー-CNM混合物は、ポリマー押出ステップ中、従来の分散されたCNMの代わりに破砕されたカルバノゲル粒子を使用して調製される。押出は、処理されたカルバノゲルを固体ポリマー又は熔融ポリマーのいずれかと混ぜて利用し得る。この実施形態は、PLA-CNT混合調製の従来のプロセスと比較される。従来のプロセスでは、0、2、4、6又は8重量%のCNTがPLAペレットと8時間混ぜることによって混合される。超音波エネルギーを液体なしで運ぶ超音波処理は、この媒体内では不可能である。混ぜることによる混合時間の延長は、超音波処理がないにも関わらず、均一な分散を達成するための試みである。既知の押出プロセスは、二重ネジ押出機に続いて単一ネジ押出機を使用し、試験のために既知のPLA/CNT混合物を形成するために165℃~220℃に温度が上がる。6重量%のCNT追加が最大の強度増加を示した。0%のCNTのPLAに比べて、6重量%のPLA/CNT混合物は、引張強度が64%増加し、湾曲強度が29%増加した。従来のCNTの代わりに、本開示のこの実施形態では、処理されたカルバノゲルは、押出のために混ぜる間、PLAと共に追加された。したがって、相当するPLA-CNTの強度の増加は、1時間未満などのはるかに低い混合時間を使用して、実質的に同量のCNTの充填で達成され得る。本開示の実施形態により、溶融ポリマーをカルバノゲルと混合することにより、関連する貯蔵弾性率の大幅な増加を引き起こす。
【0069】
[0074] 実施例3:熱硬化性樹脂-カルバノゲル混合物
【0070】
[0075] この実施例は、処理されたカルバノゲルを、概してエポキシなどの溶解及び再形成できない熱硬化性樹脂と組み合わせることを通してポリマー-CNM混合物を形成することに関する。処理されたカルバノゲルは、破砕されたカルバノゲルであり得、分散及びポリマーとの相互作用を向上し得る。例えば、従来のエポキシ-CNT混合物のある型では、CNTは(カルバノゲルと対照的に)均一に分散され、次いで構成要素を含有するエポキシド(環状又は2つのCに結合したO)にアミン結合を介して共有結合され、その後、エポキシド基と反応してエポキシ-CNT混合物を形成する。本開示のいくつかの実施形態では、破砕されたカルバノゲルは、互換性のある媒体である溶媒に混合することによって分散され、欠陥を生じ、官能基部位を介してCNMをエポキシド(2つのCに結合したO)にグラフトし、及び/又は共有結合させる。この混合に続いて、化学反応(ポリアミン、ポリアミドアルカリ若しくは無水媒介反応を含む)、熱ベース硬化剤又は光子ベース硬化剤などを介してエポキシドを反応させ、酸素環を開き、従来のCNTよりむしろ破砕されたカルバノゲルから形成されたエポキシ-CNM混合物を形成する。
【0071】
[0076]本開示のさらなる実施形態は、CNMとポリマーの混合を利用する。これは、ポリマー混合物中にCNMを分散することによって達成されるが、ここでは、ポリマー混合物中に破砕されたカルバノゲルを直接混合することによって達成される。混合物におけるCNMの従来の分散は、機械的又は磁気的のいずれかのカレンダー処理、押出、ボールミリング若しくは超音波処理又はこれらの組合せの剪断混合によって達成され、繊維を向上するために直接浸漬又は間接統合で使用される。
【0072】
[0077] 実施例4:エポキシ-CNM混合物の増加した引張強度
【0073】
[0078]
図4は、本開示の実施形態により、CO
2から作られたカルバノゲルの追加のあり及びなしのエポキシ樹脂の例からの写真及び引張強度の日付を示す。
図4の上部パネルは、カルバノゲルなしで作られた3つの品目(左側の3つの犬の骨形の品目)及び本開示の実施形態による、カルバノゲルを備えて作られた3つの品目、カルバノゲルの品目(右側の3つの犬の骨形の品目)を示す。カルバノゲルの品目は、全体として黒であり、写真は、コントラストを強調するために明るくされた。カルバノゲルの品目を作るために使用したカルバノゲルは、CO
2をカルバノゲルに変えるために、本明細書に記載されたように電気分解プロセスを使用して作られた。カルバノゲルは、CNTカルバノゲル生成物を製造するムンツ真鍮カソード及びステンレス鋼304アノードを備えた750℃のLi
2CO
3溶解電解質で鋼ステンレスケース304を使用して装置10で作られた。カルバノゲルは、カソードがモネル又はNi合金、例えばインコネル、ニクロム及びNi-鉄及びNi-銅合金に変えられ、アノードがインコネル、ニクロム並びにNi-鉄及びNi-銅合金に変えられた場合にはCNTカルバノゲル生成物を作るためにCO
2からも作られた。このカルバノゲル生成物は、塩酸(HCl)で清浄された。Metlab M135樹脂の約4部及びMetlab M135硬化剤の約1部は、60℃で別個に真空チャンバの内側で脱気された。その後、精製CNTを含有する電解質を低減した所望の0重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.25重量%又は0.5重量%のカルバノゲルが樹脂に追加され、次いで65rpmで4分間混合され、次いで15分間超音波処理された。超音波処理後、硬化剤が追加され、65rpmで4分間混合され、次いで脱気された。サンプルは、60℃で従来の「犬の骨」型内で硬化され、引張強度試験のために除去された。
図4の上部パネルは、上部左にカルバノゲルを追加していない3つの硬化された制御サンプル及び上部右に0.5重量%のカルバノゲルを備えた3つの硬化されたサンプルを示す。制御サンプルに対する引張強度は、ETM-10kNコンピュータ制御電子万能試験製造機で測定された。
図4の下部パネルは、追加されたカルバノゲルのない品目の引張強度に比べて、引張強度の観察された増加を示す。
図4の下部パネルは、0.05重量%、0.1重量%、0.25重量%及び0.5重量%のカルバノゲルの例が、それぞれ4%、15%、21%及び33%の相対増加が測定された引張強度を示す。
【0074】
[0079] 実施例5:ポリマー-CNM混合物単独及び代替層との併合
【0075】
[0080] ポリマー-CNM混合物は、平面裏打ち、難燃性物質若しくは熱シールドなどの材料又は製品において単独で使用され得る。ポリマー-CNM混合物は、限定されないが、積層体など、ポリマー-CNM混合物から作られていない別の材料との組合せでも使用され得、ポリマー-CNM混合物は、新たな又は向上した特性を他の材料に与える。例えば、ポリマー-CNM混合物及びその複合材料は、熱的活性、機械的活性、電気的活性、磁気的活性、光活性又は化学的活性などの様々な活性条件下で形状記憶特性を呈する。この形状記憶特性は、ポリマー-CNM混合物、材料又はそれから作られた製品並びにポリマー-CNM混合物(又はその材料若しくは製品)及び別の材料の組合せから作られた材料又は製品に組み込み得る。形状記憶特性に加えて、エポキシがポリマー-NCM混合物中でポリマーとして使用されるとき、引張強度は、最大184%まで増加することがあり、CNMが多壁CNTを含むとき、0.1~1重量%の添加で衝撃強度は、最大444%まで増加し、これは、電気分解プロセスの作動条件を選択することによって生じる。さらに、電気分解プロセスの作動条件は、向上したバネ効果があり得るCNM内でコイル状CNTの相対的な量を増加させるために選択される。これらの形状記憶特性は、上述の通り、整列させることによってポリマー-CNM混合物において異方性特性を組み込むことによっても促進され得る。グラフェンなどのCNMの電気及び熱伝導性は、ポリマー加熱要素又はラジエータとしてそれらの用途に優れた特性を提供し得る。形状記憶特性及び加熱要素挙動を組み込むことは、それぞれ単独で又は別の材料の層と組み合わせて有益であり得る。
【0076】
[0081]
図5は、洗浄によって電解質が低減したカルバノゲルの例であり、走査型電子顕微鏡、SEMによって測定される通り、720倍及び8600倍の2つの異なる倍率で示される。この例は、先行する例でCO
2電気分解によって調製されたCNTカルバノゲルのものである。カルバノゲルを含む混じり合ったCNMの大きい粒子サイズは、
図5の上部パネルで明らかである。これは、従来の濾過媒体多孔性に比べて大きく、ポリマーに混合するために巨視的に扱われるナノ寸法化されたCNMにまれな機会を提供する。高いカーボンフットプリント反応剤よりむしろCO
2から形成される利点に追加して、これは、
図5の下部パネルに示されたように、カルバノゲル材料のナノ物質寸法にも関わらず、カルバノゲルが微細な抑制フィルタから容易に形成されることを可能にする。電気分解に続いて、カルバノゲルは、冷却されたカソードから剥離され、砕かれた。濃縮されたHClでの洗浄に続いて、処理されたカルバノゲルが
図5のSEM画像に示されている。CNTの高純度及び様々な方向におけるそれらの向きも
図5で明らかである。希釈HCl酸での代替的な洗浄も、同様に、電子分散型分光法(EDS)及び熱重量解析(TGA)によって測定された通り、電解質及び金属不純物を洗い流した。水又はギ酸のいずれかでの代替的な洗浄は、主に余剰の電解質を除去したのみであり、金属不純物を除去しなかった。組み合された塩酸及び水素過酸化物での別の代替的な洗浄、この場合には濃縮されたHCl及び35%H
2O
2の溶液におけるカルバノゲルの混合よりもむしろ超音波による分解が余剰の電解質、金属不純物及びさらに非晶質炭素不純物を除去する。同様に、他の化学的酸化剤、例えば塩酸及びカリウムパーマグネイトが十分な希釈化で有効であることが観察され、電気化学的に発生された酸化剤が発生した。カーボンナノチューブと比較して、非晶質炭素のTGAでのより低い燃焼温度によって測定される通り、非晶質炭素は、より堅牢なグラフェンナノカーボン構造、例えば積層型グラフェンCNT構造よりも酸化し易い。したがって、非晶質炭素は、化学的酸化、電気化学的酸化、熱酸化又はこれらの任意の組合せによって不純物として除去され得る。カルバノゲルの不純物含有量を低減させるさらなる例として、カルバノゲルは、HCl洗浄に続いて300℃に加熱される。低減された不純物含有量は、不純物を低減させるステップ後、TGA及びSEMによってカルバノゲルの観察された低減した物質によって測定された。TGAデータは、HCl及び加熱ステップが非晶質炭素不純物を大部分除去したことを示し、SEM分析は、不純物含有量を低減したカルバノゲルがCNTを保持していることを示した。
【0077】
[0082] いずれの特定の理論によっても制限されることなく、本開示のポリマー-CNM混合物は、ポリマー材料及びポリマー製品用途で使用され得る一方、(i)カルバノゲル含有量は、向上した強度及び/又は伝導性を与えるため、ポリマー材料又はポリマー製品を作るために必要な投入材料を低減させ、(ii)向上した化学的、機械的、光学的及び熱的耐性を通してポリマー材料及びポリマー製品が長持ちできる一方、依然として本開示のカルバノゲルなしで作られる、現在入手可能なポリマー材料及び製品と同じようにリサイクルしやすくなり、(iii)ポリエチレンなどの環境にあまり優しくないポリマーをPLA-CNM混合物などの本開示のポリマー-CNM混合物と置き換え、(iv)炭素隔離リザーバとして機能するようなポリマー材料及びポリマー製品用途又はこれらの任意の組合せにより、そのようなポリマー材料及びそれから作られたポリマー製品の環境の持続可能性を増加させる。
【0078】
[0083] 本開示の実施形態によって作られるCNM-ポリマー混合物は、様々な材料及び製品用途、例えば、限定されないが、裏張り、難燃性物質又はシールドで使用され得る。しかしながら、本開示の実施形態によるポリマー-CNM混合物、材料及びそれから作られた製品は、限定されないが、他の非CNM材料を備えたポリマー-CNM混合物から作られた少なくとも1つの層などを含み、それらの他の非ポリマー材料に向上した特性を与える積層体などの複合材料の構成要素としても使用され得る。さらに、ポリマー-CNM混合物から作られたポリマー及びそのようなポリマー(CNMを含む)で作られた複合材料は、熱、機械、電気、磁気、光又は化学的活性条件下で形状記憶特性を呈し、これらの特性は、ポリマーを含むようなCNM(含浸、又は補強、又は代わりに統合されることによって)を含む材料又は製品に与えられ得る。この形状記憶効果は、上述の通り、ポリマー-CNM混合物から作られたポリマーにおいて異方性特性を含むことによって促進される。さらに、CNM-ポリマー製品の電気及び熱伝導性は、加熱要素又はラジエータ用途で使用される場合、優れた特性を提供し得る。
【0079】
[0084] カルバノゲルによって与えられた優れたCNM特性を特に活用できる、本開示のポリマー-CNM混合物から作られた材料及び製品の他の用途は、限定されないが、(i)高速、安全及び迅速な変更のための軽量ツーリング用途、(ii)より良好な穿孔、衝撃及び/又は鋸引きのためのより硬い工具、(iii)熱管理がより良好な工具、(iv)超強力で折り曲げ可能な材料、(v)CO2の一般的な隔離、(vi)超軽量、超吸収スポンジ、(vii)複合材料内に含めるための予め作られた積層体シートとしてのもの、(viii)バリスティック又は電磁場(EMF)遮蔽、(ix)パラシュート及びドラッグエンハンサー、(x)布地/織物のための編むことができる/縫うことができるポリマー、又は(xi)3D製造若しくは印刷のための繊維/細糸を含む。
【0080】
[0085] 本開示の実施形態により、ポリマー-CNM混合物を使用して作られる材料及び製品の他の使用は、重量、材料コスト/使用される材料を追加的に低減させ、及び/又は容量を増加させる二重使用を提供する構造材料など、2つ以上の優れたCNMに基づいた特性の利点を組み合わせた製品を含む。そのような二重使用のいくつかの非限定的な例は、(i)構造目的のための強度特性の使用及び電気エネルギー貯蔵特性の使用、(ii)構造的目的構造のための強度特性の使用及び熱エネルギー貯蔵特性の使用、(iii)構造目的のための強度特性の使用、電気導管又はワイヤとしての使用、(iv)構造目的のための強度特性の使用及び材料性能を評価するためにリアルタイムのひずみ又は安全性データを収集するためのセンサとしての使用、(v)構造目的のための強度特性の使用及び触媒としての使用、(vi)構造目的のための強度特性の使用及び熱導管としての使用又はこれらの任意の組合せを含む。例えば、火災が懸念される用途において、高熱を拡散させるための放熱部材で使用されることによって安全性を高めるための、本開示の実施形態によるポリマー-CNM混合物を使用して作られた材料及び製品の用途及び使用もある。