(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】光学積層体及びこれを用いた表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20241212BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G02B5/30
G09F9/00 313
(21)【出願番号】P 2024036315
(22)【出願日】2024-03-08
【審査請求日】2024-03-19
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314017635
【氏名又は名称】株式会社トッパンTOMOEGAWAオプティカルフィルム
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 和嗣
(72)【発明者】
【氏名】相澤 弘康
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-144283(JP,A)
【文献】国際公開第2011/162198(WO,A1)
【文献】特開2020-134678(JP,A)
【文献】国際公開第2020/241589(WO,A1)
【文献】特開2015-132691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示装置に用いられる光学積層体であって、
二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなり、面内に複屈折性を有する光透過性基材と、
前記光透過性基材の一方面に設けられる光学機能層とを備え、
前記光学機能層の表面の算術平均粗さRaが
0.070μm以上0.536μm以下であり、前記光学機能層の表面に存在する凹凸の平均傾斜角θaが
0.59°以上4.58°以下であり、
前記光学機能層の表面に存在する凹凸の最大高さRzが0.410μm以上2.982μm以下であり、
前記光学積層体の内部ヘイズが3.1%以上31.5%以下であり、
下記式(1)で定義される前記光透過性基材の面内リタデーションReが2,000nm以上7,500nm以下である、光学積層体。
Re=(nx-ny)×d (1)
ここで、
nx:遅相軸方向における屈折率
ny:進相軸方向における屈折率
d:光透過性基材の厚み
である。
【請求項2】
下記条件(2)を満足する、請求項1に記載の光学積層体。
(nx-ny)<0.06 (2)
【請求項3】
下記式(3)で表される前記光透過性基材の厚み方向リタデーションRth’が9,500nm以上18,000nm以下である、請求項1に記載の光学積層体。
Rth’=(nx-nz)×d (3)
ここで、
nz:厚み方向の屈折率
である。
【請求項4】
下記式(4)で表される比Nz’が1.5以上5.5以下である、請求項1に記載の光学積層体。
Nz’=Rth’/Re (4)
【請求項5】
前記光学機能層を外側とし、対向する面間の距離が2mmとなるように180°折り畳む折り畳み試験を20万回繰り返し行った場合に破断が生じない、請求項1に記載の光学
積層体。
【請求項6】
画像表示パネルと、
前記画像表示パネルの前面に設けられる請求項1~5のいずれかに記載の光学積層体とを備える、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示パネルの前面側に設けられる光学積層体及びこれを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像表示装置の表面に配置される光学フィルムの基材としては、面内の位相差がなく視認性に優れたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムが使用されている。ただし、TACフィルムには、空気中の水分を吸収することにより画像表示装置の反りを発生させるという問題がある。そのため、水分の吸収が少ないポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが注目されており、近年では、超高リタデーション(超高Re)PETフィルムが使用されることがある(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
偏光サングラス等の偏光板を通して画像表示装置を視認した場合、画像表示装置から発せられた光の振動面と偏光サングラス等の偏光板の透過軸が直交することにより、画像表示装置が暗く視認される、いわゆるブラックアウトという現象が生じる。このブラックアウトを解決する技術として、例えば、特許文献3には、光学積層体の遅相軸と液晶表示装置に用いる偏光子の吸収軸とのなす角度を45°±15°とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5304939号公報
【文献】特許第6256385号公報
【文献】特許第6044118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超高RePETフィルムを基材として使用した場合、遅相軸の角度によって偏光サングラス使用時におけるブラックアウトの発生を抑制できるものの、一軸延伸フィルムであるため、折り曲げ耐性が劣るという問題があった。一方、二軸延伸PETフィルムであれば折り曲げ耐性は大きく改善され、遅相軸の角度によらずブラックアウトの発生を抑制できるが、面内位相差に由来するニジムラが目立つという問題があった。
【0006】
それ故に、本発明は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として用い、折り曲げ耐性を有し、かつ、ニジムラが抑制された光学積層体及びこれを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光学積層体は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなり、面内に複屈折性を有する光透過性基材と、光透過性基材の一方面に設けられる光学機能層とを備え、光学機能層の表面の算術平均粗さRaが0.070μm以上0.536μmであり、光学機能層の表面に存在する凹凸の平均傾斜角θaが0.59°以上4.58°以下であり、光学機能層の表面に存在する凹凸の最大高さRzが0.410μm以上2.982μm以下であり、光学積層体の内部ヘイズが3.1%以上31.5%以下であり、下記式(1)で定義される光透過性基材の面内リタデーションReが2,000nm以上7,500nm以下であるものである。
Re=(nx-ny)×d (1)
ここで、
nx:遅相軸方向における屈折率
ny:進相軸方向における屈折率
d:光透過性基材の厚み
である。
【0008】
本発明に係る画像表示装置は、画像表示パネルと、上記の光学積層体とを備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として用い、折り曲げ耐性を有し、かつ、ニジムラが抑制された光学積層体及びこれを用いた画像表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る光学積層体の一例を示す模式断面図
【
図2】実施形態に係る光学積層体の他の一例を示す模式断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施形態に係る光学積層体の一例を示す模式断面図である。
【0012】
光学積層体10は、光透過性基材1と、光透過性基材1の一方面に積層された防眩層(AG層)2とを備える。光学積層体10は、防眩層2表面の微細な凹凸形状や内部の粒子によって入射光を散乱させて外光の映り込みを抑制する光学フィルムである(「AGフィルム」とも称される)。
図1に記載の光学積層体10において、防眩層2が光学機能層に相当する。
【0013】
図2は、実施形態に係る光学フィルムの他の一例を示す模式断面図である。
【0014】
光学積層体20は、光透過性基材1と、光透過性基材1の一方面に積層された防眩層2と、防眩層2の表面に積層され、防眩層2より屈折率が低い低屈折率層(LR層)3を備える。光学積層体20は、最表面の微細な凹凸や内部の粒子による入射光の散乱と光学干渉とを利用して、外光の映り込み及び反射を抑制する光学フィルムである(「AGLRフィルム」とも称される)。
図2に記載の光学積層体20において、防眩層2及び低屈折率層3の2層が光学機能層に相当する。
【0015】
以下、各層の詳細を説明する。
【0016】
光透過性基材は、光学積層体の基体となる透明なフィルムである。光透過性基材としては、複屈折性を有する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであって、下記式(1)で定義される面内リタデーションReが2,000nm以上7,500nm以下であるフィルムを使用する。
Re=(nx-ny)×d (1)
ここで、
nx:光透過性基材の遅相軸方向(屈折率が大きい方向)における屈折率
ny:光透過性基材の進相軸方向における屈折率
d:光透過性基材の厚み
である。
【0017】
光透過性基材の面内リタデーションReが2,000nm未満である場合、光透過性基材の厚みが薄くなるため、ハンドリング性が低下したり、光学積層体を構成した際の表面硬度が不十分となったりする場合があるため好ましくない。光透過性基材の面内リタデーションReが7,500nmを超える場合、光透過性基材の厚みが厚くなるため、原料コストが増加したり、光学積層体を構成した際の総厚みが増大したりするため好ましくない。
【0018】
光透過性基材として、下記条件(2)を満足するものを使用することが好ましい。
(nx-ny)<0.06 (2)
【0019】
nx-nyの値が0.06以上である場合、過度な延伸により、機械特性、すなわち、裂けや破れに対する耐性が低下するため好ましくない。
【0020】
また、光透過性基材として、下記式(3)で表される光透過性基材の厚み方向リタデーションRth’が9,500nm以上18,000nm以下であるものを使用することが好ましい。
Rth’=(nx-nz)×d (3)
ここで、
nz:厚み方向の屈折率
である。
【0021】
光透過性基材の厚み方向リタデーションRth’が9,500nm未満である場合、光透過性基材の厚みが薄くなり、光学積層体を構成したときの機械的強度が不足する可能性があるため好ましくない。また、光透過性基材の厚み方向リタデーションRth’が18,000nmを超える場合、光透過性基材の厚みが大きくなり、光学積層体の薄型化に不利となるため好ましくない。
【0022】
また、光透過性基材として、下記式(4)で表される比Nz’が1.5以上5.5以下であるものを使用することが好ましい。
Nz’=Rth’/Re (4)
【0023】
比Nz’が上記範囲内である場合、光透過性基材の複屈折性及び厚みが適切な範囲となり、光学積層体を構成したときの機械的強度とニジムラ抑制とを両立することができる。
【0024】
光透過性基材1の厚みは、特に限定されないが、35~200μmであることが好ましく、35~125μmであることがより好ましい。光透過性基材1の表面には、積層する他の層との密着性を向上させるために、表面改質処理を施しても良い。表面改質処理としては、アルカリ処理、コロナ処理、プラズマ処理、スパッタ処理、界面活性剤やシランカップリング剤等の塗布、Si蒸着等を例示できる。
【0025】
防眩層2は、光学積層体10の最表面の微細な凹凸形状を形成する機能層である。
【0026】
防眩層2は、活性エネルギー線硬化型化合物と、有機微粒子及び/または無機微粒子(フィラー)とを含有する塗工液を光透過性基材1に塗布し、塗膜を硬化させることによって形成される。
【0027】
活性エネルギー線硬化型化合物としては、例えば、単官能、2官能または3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを使用できる。尚、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方の総称であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルとメタクリロイルの両方の総称である。
【0028】
単官能の(メタ)アクリレート化合物の例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-アダマンタン、アダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレート等のアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
2官能の(メタ)アクリレートの例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
3官能以上の(メタ)アクリレートの例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0031】
また、多官能モノマーとして、ウレタン(メタ)アクリレートも使用できる。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを反応させることによって得られるものを挙げることができる。
【0032】
ウレタン(メタ)アクリレートの例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0033】
上述した多官能モノマーは1種を用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、上述した多官能モノマーは、塗工液中でモノマーであっても良いし、一部が重合したオリゴマーであっても良い。
【0034】
有機微粒子は、主として防眩層2の表面に微細な凹凸を形成し、外光を拡散させる機能を付与する材料である。有機微粒子としては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン系樹脂等の透光性樹脂材料からなる樹脂粒子を使用できる。屈折率や樹脂粒子の分散を調整するために、材質(屈折率)の異なる2種類以上の樹脂粒子を混合して使用しても良い。有機微粒子の平均粒径は、0.5~10μmであることが好ましい。
【0035】
防眩層形成用組成物に添加する無機微粒子は、平均粒径が10~200nmのナノ粒子であることが好ましい。
【0036】
無機微粒子は、主として防眩層2中の有機微粒子の沈降や凝集を調整するための材料である。無機微粒子としては、シリカ微粒子や、金属酸化物微粒子、各種の鉱物微粒子等を使用することができる。シリカ微粒子としては、例えば、コロイダルシリカや(メタ)アクリロイル基等の反応性官能基で表面修飾されたシリカ微粒子等を使用することができる。金属酸化物微粒子としては、例えば、アルミナや酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタニア、ジルコニア等を使用することができる。鉱物微粒子としては、例えば、雲母、合成雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ノントロナイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、層状チタン酸、スメクタイト、合成スメクタイト等を使用することができる。鉱物微粒子は、天然物及び合成物(置換体、誘導体を含む)のいずれであっても良く、両者の混合物を使用しても良い。鉱物微粒子の中でも、層状有機粘土がより好ましい。層状有機粘土とは、膨潤性粘土の層間に有機オニウムイオンを導入したものをいう。有機オニウムイオンは、膨潤性粘土の陽イオン交換性を利用して有機化することができるものであれば制限されない。鉱物微粒子として、層状有機粘土鉱物を用いる場合、上述した合成スメクタイトを好適に使用できる。合成スメクタイトは、防眩層形成用組成物の粘性を増加させ、樹脂粒子及び無機微粒子の沈降を抑制して、光学機能層の表面の凹凸形状を調整する機能を有する。
【0037】
防眩層形成用組成物を紫外線照射により硬化させるため、重合開始剤を添加しても良い。重合開始剤としては、紫外線照射によりラジカルを発生する重合開始剤を使用することができる。重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、アシルフォスフィンオキシド等のラジカル重合開始剤に使用することができる。重合開始剤として、例えば、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2,2-ジエトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-フェニルアセトフェノン、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、p-クロロベンゾフェノン、p-メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、2-クロロチオキサントン等を使用できる。これらのうち1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
【0038】
また、防眩層形成用組成物には、防汚性を向上する成分として、防汚剤、レベリング剤、撥油剤、撥水剤、指紋付着防止剤を添加しても良い。これらの添加剤として、含フッ素化合物やシリコーン化合物を好適に使用することができる。その他、帯電防止剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、色材、光安定剤、重合禁止剤、光増感剤等の各種添加剤等を必要に応じて添加しても良い。
【0039】
更に、防眩層形成用組成物には、必要に応じて、溶剤を添加しても良い。溶剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジアセトンアルコール等のケトンアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルセロソルブ、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類、N-メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド等のうち、1種類または2種類以上を混合して使用できる。
【0040】
低屈折率層3は、下層の防眩層2の屈折率よりも低い屈折率を有し、光学干渉により反射を抑制する機能層である。
【0041】
低屈折率層3は、活性エネルギー線硬化型化合物を含有する組成物を防眩層2の表面に塗布し、塗膜を硬化させることにより形成することができる。低屈折率層3は、屈折率調整のために、低屈折率微粒子を含有しても良い。
【0042】
低屈折率微粒子としては、例えば、LiF、MgF、3NaF・AlFまたはAlF(いずれも、屈折率1.4)、もしくはNa3AlF6(氷晶石、屈折率1.33)等の微粒子や、内部に空隙を有するシリカ微粒子を好適に使用することができる。内部に空隙を有するシリカ微粒子は、空隙の部分を空気の屈折率(約1)とすることができるので、低屈折率層3の低屈折率化に有利である。具体的には、多孔質シリカ粒子、シェル(殻)構造のシリカ粒子を用いることができる。尚、低屈折率微粒子は必ずしも必要ではなく、活性エネルギー線硬化型化合物の硬化後の屈折率が防眩層2の屈折率よりも低い場合は、低屈折率微粒子を省略しても良い。
【0043】
活性エネルギー線硬化型化合物としては、防眩層で説明した重合性化合物を使用することができる。また、低屈折率層形成用組成物には、上述した重合開始剤や溶剤を適宜添加しても良い。
【0044】
低屈折率層形成用組成物には、防汚性を向上する成分として、防汚剤、レベリング剤、撥油剤、撥水剤、指紋付着防止剤を添加しても良い。これらの添加剤として、含フッ素化合物やシリコーン化合物を好適に使用することができる。その他、帯電防止剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、色材、光安定剤、重合禁止剤、光増感剤等の各種添加剤等を必要に応じて添加しても良い。
【0045】
光透過性基材1と防眩層2との間に、ハードコート層、高屈折率層、中屈折率層、帯電防止層、電磁波遮断層、赤外線吸収層、紫外線吸収層、色補正層等の他の機能層が1層以上積層されても良い。
【0046】
上記の防眩層形成用組成物及び低屈折率層形成用組成物の塗工方法は特に限定されず、例えば、スピンコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーター、スプレーコーター、アプリケーター等を用いて塗工することができる。
【0047】
ここで、本実施形態に係る光学積層体の表面凹凸形状の詳細を説明する。
【0048】
本発明に係る光学積層体の全ヘイズは5%以上であることが好ましい。全ヘイズが5%以上である場合、外光を十分に拡散し、光透過性基材に由来するニジムラを抑制することができる。全ヘイズが22.0~71.6%であることがより好ましい。全ヘイズがより好ましい範囲内である場合、ニジムラの抑制に有利である。
【0049】
本発明に係る光学積層体の表面ヘイズは3%以上であることが好ましい。表面ヘイズが3%以上である場合、外光を十分に拡散し、光透過性基材に由来するニジムラを抑制することができる。表面ヘイズが12.0~68.6%であることがより好ましい。表面ヘイズがより好ましい範囲内である場合、ニジムラの抑制に有利である。
【0050】
本発明に係る光学積層体の内部ヘイズは2%以上であることが好ましい。内部ヘイズが2%以上である場合、外光を十分に拡散し、光透過性基材に由来するニジムラを抑制することができる。内部ヘイズが3.1~55.6%であることがより好ましい。内部ヘイズがより好ましい範囲内である場合、ニジムラの抑制に有利である。
【0051】
尚、上記の全ヘイズ、表面ヘイズ及び内部ヘイズは、JIS K7136に準拠して測定した値である。
【0052】
本発明に係る光学積層体において、Δn×全ヘイズの値が0.2以上であることが好ましい(ただし、Δn=nx-nyである)。Δn×全ヘイズの値が0.2以上であれば、光学積層体のニジムラ抑制の面で有利である。光学積層体のニジムラ抑制の観点から、上記範囲内において、Δn×全ヘイズの値が0.39~2.55であることがより好ましく、Δn×全ヘイズの値が0.78~2.55であることが更に好ましい。
【0053】
本発明に係る光学積層体において、Re×全ヘイズの値が10,000以上であることが好ましい。Re×全ヘイズの値が10,000以上である場合、光学積層体のニジムラ抑制の面で有利である。光学積層体のニジムラ抑制の観点から、上記範囲内において、Re×全ヘイズの値が19,725~301,028であることがより好ましく、Re×全ヘイズの値が58,679~301,028であることが更に好ましい。
【0054】
また、本発明に係る光学積層体において、Δn×表面ヘイズの値が0.12以上であることが好ましい。Δn×表面ヘイズの値が0.12以上である場合、光学積層体のニジムラ抑制の面で有利である。光学積層体のニジムラ抑制の観点から、上記範囲内において、Δn×表面ヘイズの値が0.15~2.44であることがより好ましく、Δn×表面ヘイズの値が0.37~2.44であることが更に好ましい。
【0055】
また、本発明に係る光学積層体において、Re×表面ヘイズの値が6,000以上であることが好ましい。Re×表面ヘイズの値が6,000以上である場合、光学積層体のニジムラ抑制の面で有利である。光学積層体のニジムラ抑制の観点から、上記範囲内において、Re×表面ヘイズの値が9,544~182,972であることがより好ましく、Re×表面ヘイズの値が32,007~182,972であることが更に好ましい。
【0056】
また、本発明に係る光学積層体において、Δn×内部ヘイズの値は0.08以上であることが好ましい。Δn×内部ヘイズの値が0.08以上である場合、光学積層体のニジムラ抑制の面で有利である。光学積層体のニジムラ抑制の観点から、上記範囲内において、Δn×内部ヘイズの値が0.11~1.98であることがより好ましい。
【0057】
また、本発明に係る光学積層体において、Re×内部ヘイズの値が4,000以上であることが好ましい。Re×内部ヘイズの値が4,000以上である場合、光学積層体のニジムラ抑制の面で有利である。光学積層体のニジムラ抑制の観点から、上記範囲内において、Re×内部ヘイズの値が8,268~207,991であることがより好ましい。
【0058】
本発明に係る光学積層体において、光学機能層表面の算術平均粗さRaが0.04μm以上であり、かつ、光学機能層の表面に存在する凹凸の平均傾斜角θaが0.30°以上であることが好ましい。算術平均粗さRa及び平均傾斜角θaが上記範囲内である場合、外光を十分に拡散し、光透過性基材に由来するニジムラを抑制することができる。光学積層体のニジムラ抑制の観点から、上記範囲内において、算術平均粗さRaは0.070~0.536μmであることが好ましく、平均傾斜角θaは0.39~4.58°であることが好ましい。
【0059】
また、本発明に係る光学積層体において、光学機能層表面に存在する凹凸の最大高さRzが0.2μm以上であることが好ましい。最大高さRzが0.2μm以上である場合、外光を十分に拡散し、光透過性基材に由来するニジムラを抑制することができる。光学積層体のニジムラ抑制の観点から、上記範囲内において、最大高さRzは0.280~2.982μmであることがより好ましい。
【0060】
また、本発明に係る光学積層体において、Ra×Rsmの値が1.6以上であることが好ましい。ここで、Rsmは、輪郭曲線要素の平均長さである。Ra×Rsmの値が1.6以上である場合、光学積層体のニジムラ抑制の面で有利である。光学積層体のニジムラ抑制の観点から、上記範囲内において、Ra×Rsmの値は1.77~23.09であることがより好ましい。
【0061】
また、本発明に係る光学積層体において、Ra×θaの値が0.018以上であることが好ましい。Ra×θaの値が0.018以上である場合、光学積層体のニジムラ抑制の面で有利である。光学積層体のニジムラ抑制の観点から、上記範囲内において、Ra×θaの値は0.027~2.457であることがより好ましい。
【0062】
また、本発明に係る光学積層体において、Ra×Rsm×θaの値が1.6以上であることが好ましい。Ra×Rsm×θaの値が1.6以上である場合、光学積層体のニジムラ抑制の面で有利である。光学積層体のニジムラ抑制の観点から、上記範囲内において、Ra×Rsm×θaの値は1.79~105.78であることがより好ましい。
【0063】
また、本発明に係る光学積層体において、Δn×Raの値が0.002~0.02であることが好ましい。Δn×Raの値が0.002~0.02である場合、光学積層体のニジムラ抑制の面で有利である。光学積層体のニジムラ抑制の観点から、上記範囲内において、Δn×Raの値は0.0025~0.0191であることがより好ましい。
【0064】
また、本発明に係る光学積層体において、Re×Raの値が140~1,500であることが好ましい。Re×Raの値が140~1,500である場合、光学積層体のニジムラ抑制の面で有利である。光学積層体のニジムラ抑制の観点から、上記範囲内において、Re×Raの値は159~1,431であることがより好ましい。
【0065】
また、本発明に係る光学積層体において、Δn×θaの値が0.01~0.17であることが好ましい。Δn×θaの値が0.01~0.17である場合、光学積層体のニジムラ抑制の面で有利である。光学積層体のニジムラ抑制の観点から、上記範囲内において、Δn×θaの値は0.014~0.163であることがより好ましい。
【0066】
また、本発明に係る光学積層体において、Re×θaの値が800~12,500であることが好ましい。Re×θaの値が800~12,500である場合、光学積層体のニジムラ抑制の面で有利である。光学積層体のニジムラ抑制の観点から、上記範囲内において、Re×θaの値は886~12,218であることがより好ましい。
【0067】
本実施形態に係る光学積層体は、液晶パネルや有機ELパネル等の画像表示パネルの最表面に貼合して画像表示装置を構成するのに利用することができる。光学積層体と画像表示パネルとの間にタッチパネルが設けられても良い。本実施形態に係る光学積層体は、光透過性基材として二軸延伸PETフィルムが使用されているため、耐透湿性及び折り曲げ耐性に優れるが、防眩層による光拡散性により二軸延伸PETフィルムに由来するニジムラが抑制されているため、画像表示装置の最表面に設ける光学フィルムとして好適である。光学積層体は、折り曲げ耐性を有することから、折り畳み可能な画像表示装置に用いる光学フィルムとしても利用できる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態に係る光学積層体は、面内リタデーションReが2,000~7,500nmである二軸延伸PETフィルムを光透過性基材として備えるものである。二軸延伸PETフィルムを用いた場合、ニジムラが目立つという問題があるが、光学機能層によって光学積層体全体の光学特性(防眩性や反射防止性)を制御することによって、ニジムラの発生を抑制することが可能である。面内リタデーションReが2000未満の二軸延伸PETフィルムを使用した場合には、光透過性基材の厚みが薄くなることで表面硬度が低下しやすいが、本実施形態では、面内リタデーションReが2,000~7,500nmである二軸延伸PETフィルムを用いることにより、光学積層体に求められる表面硬度を確保することが可能である。また、超高RePETフィルムと呼ばれるPETフィルムを光透過性基材に使用した場合、光透過性基材の遅相軸の角度を調節することで偏光サングラス使用時のブラックアウトを解消できるが、超高RePETフィルムは、一軸延伸フィルムであるため、折り曲げ耐性に弱いという問題があった。本実施形態では光透過性基材が二軸延伸PETフィルムであるため、折り曲げ耐性が良好であり、偏光サングラス等の偏光板を通して視認する用途を想定した場合でも、光透過性基材の遅相軸の角度を考慮することなくブラックアウトを解消できるという利点がある。つまり、本実施形態に係る光学積層体は、面内リタデーションReが低い(2,000nm未満の)PETフィルムを用いた場合の問題と、面内リタデーションReが高い(7,500nm超の)PETフィルムを用いた場合の問題点とを同時に解消し、偏光サングラス等の偏光板を通して視認される画像表示装置の用途に好適である。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を具体的に実施した実施例を説明する。
【0070】
まず、光透過性基材の製造方法を説明する。
【0071】
<未延伸フィルム>
ポリエチレンテレフタレート原材料を285℃で溶解させたものを、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度:10μm粒子95%カット)で濾過し、2種3層合流ブロックにて積層し、口金からシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化させ、未延伸フィルムを得た。この際、3層の厚さの比が10:80:10となるように各押出機の吐出量を調整した。次に、リバースロール法により、未延伸PETフィルムの両面に乾燥後の塗布量が0.08g/m2となるように、接着性改質塗布液を塗布した後、80℃で20秒間乾燥させた。
【0072】
<一軸延伸フィルム>
塗布層を形成した上記未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度125℃の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.0倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度225℃、30秒間で処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚みが80μmの一軸延伸PETフィルムを得た。
【0073】
<二軸延伸フィルム>
塗布層を形成した上記未延伸フィルムを、加熱されたロール群と赤外線ヒーターを用いて105℃に加熱した後、周速差のあるロール群で走行方向に2.6倍、幅方向に4.0倍に延伸して、フィルム厚みが、38、50、75、125、188μmの二軸延伸PETフィルムを得た。また、走行方向に1.4倍、幅方向に4.0倍に延伸して、フィルム厚みが23μmの二軸延伸PETフィルムを得た。
【0074】
以下の表1~4に、実施例及び比較例で用いた防眩層形成用塗工液及び低屈折率層形成用塗工液の組成を示す。なお、各塗工液は、表1~4に記載の溶剤を用いて塗工に適した濃度に希釈した。また、表1~4に示す各成分の添加割合は、塗工液の全固形分質量に占める割合(質量%)である。ここで、光学機能層形成用塗工液の全固形分とは、溶剤を除く成分を指す。したがって、光学機能層形成用塗工液の全固形分中の樹脂粒子、無機微粒子の配合割合(質量%)と、光学機能層形成用塗工液の硬化膜である光学機能層中の樹脂粒子、無機微粒子の含有割合(質量%)とは等しい。表1における「-」は、該当する材料を配合していないことを表す。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
表1~4で使用している材料は次のとおりである。
【0080】
<防眩層(ハードコート層)形成用塗工液>
・UV/EB硬化性樹脂
ライトアクリレートPE-3A(ペンタエリスリトールトリアクリレート)、共栄社化学株式会社製
・光重合開始剤
Omnirad(登録商標)184(1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン)、IGM Resins B.V.
・樹脂粒子(有機球状フィラー)
(1)アクリル・スチレン共重合体、平均粒子径3.5μm、n=1.515
(2)アクリル・スチレン共重合体、平均粒子径3.5μm、n=1.565
(3)アクリル・スチレン共重合体、平均粒子径3.5μm、n=1.555
(4)ポリスチレン、平均粒子径3,5μm、n=1.595
(5)アクリル・スチレン共重合体、平均粒子径2.0μm、n=1.595
・不定形シリカ粒子
平均粒子径2.7μm、n=1.45、富士シリシア株式会社
・レベリング剤
F565、DIC株式会社
・ナノ微粒子(オルガノシリカゾル)
MEK-ST-40、日産化学株式会社
【0081】
<低屈折率層形成用塗工液>
・バインダー樹脂
ライトアクリレートPE-3A(ペンタエリスリトールトリアクリレート)、共栄社化学株式会社
・光重合開始剤
Omnirad(登録商標)184(1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン)、IGM Resins B.V.
・中空シリカ(多孔質シリカ微粒子分散液)
(1)平均粒子径60nm
(2)平均粒子径75nm
・レベリング剤
RS-75、DIC株式会社
【0082】
(実施例1、2、7、8、11、比較例3)
表1~4に記載の組成を有する防眩層形成用塗工液を調製し、表5に示す二軸延伸PETフィルム上に塗布し、塗膜を乾燥させた後、紫外線を照射することにより塗膜を重合硬化させて防眩層を形成した。次に、表1~4に記載の組成を有する低屈折率層形成用塗工液を調製し、防眩層上に塗布し、塗膜を乾燥させた後、紫外線を照射することにより塗膜を重合硬化させて低屈折率層を形成した。以上の工程により、光学積層体(AGLRフィルム)を得た。
【0083】
(実施例3~6、9、10、12~16、比較例4、5)
防眩層上に低屈折率層を形成しなかったことを除き、実施例1等と同様にして光学積層体(AGフィルム)を得た。
【0084】
(比較例1)
表4に示す組成を有するハードコート層形成用塗工液を調整し、表5に記載の一軸延伸PETフィルム上に硬化後の膜厚が5μmとなるように塗布し、塗膜を乾燥させた後、紫外線を照射することにより塗膜を重合硬化させてハードコート層を形成した。以上の工程により、光学積層体(HCフィルム)を得た。
【0085】
(比較例2)
光透過性基材として、表5に記載の二軸延伸PETフィルムを使用したことを除き、比較例1と同様にして光学積層体(HCフィルム)を得た。
【0086】
(ヘイズ)
ヘイズ値は、JIS K7136に従い、ヘイズメーター(NDH4000、日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。ここで、光学積層体のヘイズ値を全ヘイズとした。また、光学積層体の光学機能層の表面に粘着剤付き透明シートを貼り合わせて測定したヘイズ値から、粘着剤付き透明シートのヘイズ値を引いた値を、光学積層体の内部ヘイズとした。尚、粘着剤付き透明シートとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)に、アクリル系粘着剤(厚さ10μm)を塗布したものを用いた。また、表面ヘイズは下記式により算出した。
表面ヘイズ(%)=全ヘイズ(%)-内部ヘイズ(%)
【0087】
(リタデーション)
作製した一軸または二軸延伸PETフィルムの面内位相差及び厚み方向の位相差を、位相差フィルム・光学材料検査装置(RETS-100、大塚電子株式会社製)を用いて測定した。測定条件は次の通りである。
[測定条件]
・リタデーション測定方法:回転検光子法
・測定スポット径:φ5mm
・傾斜角度範囲:0°、40°
・測定波長範囲:400nm以上800nm以下
・光透過性基材の平均屈折率N:nx、ny及びnzを元に、N=(nx+ny+nz)/3の式で算出した値。PETフィルムの場合は、N=1.660
尚、面内リタデーションRe及び厚み方向リタデーションRth’は、波長589nmにおける値である。
【0088】
[表面形状解析]
各実施例及び各比較例に係る光学積層体の光学機能層表面の凹凸形状を、非接触表面・層断面形状計測システム(測定装置:バートスキャンR3300FL-Lite-AC、解析ソフトウェア:VS-Viewer6、株式会社菱化システム製)を用いて光干渉方式により測定した。装置の粒子解析ソフトウェアを用いて測定データを解析し、低屈折率層表面の算術平均粗さRa、最大高さRz及び曲線要素の平均長さRsm、平均傾斜角θaを計測した。
【0089】
尚、VS-Viewerの断面プロファイル(マルチライン)における解析条件で平均的な凹凸が生成される。設定した測定カーソル6点の断面プロファイルを平均化した断面から求められる算術平均粗さRa、最大高さRz、曲線要素の平均長さRsm及び平均傾斜角θaを本発明の凹凸の算術平均粗さRa、最大高さRz、曲線要素の平均長さRsm及び平均傾斜角θaと定義する。
【0090】
装置の測定ソフトウェアを用いて以下の条件により測定を行い、表面凹凸の測定結果である画像ファイルを取得した。
・光学条件
カメラ:ソニー社製 HR-50 1/3インチ
対物レンズ: 10XDI(10倍)
結像レンズ(鏡筒):0.5倍
ズームレンズ:1倍
光源/波長フィルタ:520nm
NDフィルタ:不使用
A-Stop(開口絞り):不使用(全開)
F-Stop(視野絞り):不使用(全開)
・測定条件
測定デバイス:ピエゾ
測定モード:Phase
スキャン速度:4μm/sec
スキャンレンジ:-10~10μm
有効ピクセル数:50%
測定領域:704.192μm×938.923μm
【0091】
取得した画像ファイルを、装置の解析ソフトウェアを用いて以下の条件で解析を行った。
・解析条件(VS-Viewer6)
面補正:4次
Sフィルタ:自動
Lフィルタ:不使用
・粒子解析条件(VS-Viewer6)
解析種類:突解析
画像補正:なし
高さ閾値:0.1μm
粒子整形:なし
【0092】
(Ra、Rz、Rsm及びθaの算出方法)
面補正(4次)及びSフィルタを適用した取得画像において、測定カーソルを縦方向(X方向)の200μm、500μm及び800μmの位置と、横方向(Y方向)の200μm、400μm及び600μmの位置に設定した。VS-Viewerの断面プロファイルにて自動的に算出される、各カーソル位置(X方向に平行な断面3カ所及びY方向に平行な断面3カ所の合計6カ所)のRa、Rz、Rsm及びθaの値を取得し、取得した値の平均値(算術平均)を測定結果とした。
【0093】
(ニジムラの評価)
偏光サングラスの使用を想定したニジムラの観察は以下のように実施した。バックライト(明るさ5,000cd/m2程度)を備えたディスプレイ上に、第1偏光子、実施例または比較例の光学積層体、第2偏光子(偏光サングラス想定)の順に配置した観察用サンプルを準備した。このとき、ディスプレイの上下方向に対して第1偏光子の吸収軸が直交し、第2偏光子の吸収軸が第1偏光子の吸収軸と直交するように配置した。加えて、ディスプレイの上下方向と光学積層体の光透過性基材の遅相軸が平行となる向きを基準の回転位置(0°)として、光学積層体を時計周りに45°、そこからさらに45°(基準の回転位置から90°の回転位置)回転させ、それぞれの方位のときのニジムラを目視にて観察した。尚、観察者は、ディスプレイから50~60cm離れた正面の位置と、ディスプレイから50~60cm離れ、かつ、正面から見たときの法線方向に対して左右方向に45°傾斜した斜めの位置とから観察を行った。ニジムラは、観察結果に基づき、以下の基準で評価を行った。
-:ブラックアウトしてしまい、ニジムラの判定ができない(実用不可)
×:ニジムラが発生し、実用不可
△:ニジムラが発生するが、実用上問題ない程度
〇:ニジムラがわずかに発生するが、実用上問題ない
◎:ニジムラの発生なし(際立って良い)
【0094】
(折り曲げ耐性)
卓上型耐久試験機(ユアサシステム機器株式会社製)に、面状体無負荷U字伸縮試験治具(DMX-FS)を取り付け、各サンプルを平坦になるように貼り付けた。光学機能層を外側にして対向する面間距離が2mmとなるように連続で折り曲げ操作を行った。折り曲げ操作を連続で5万回及び20万回行った後、屈曲部における破断の有無を目視で確認し、以下の基準で評価した。
〇:いずれの連続折り畳み試験においても、屈曲部に破断が生じていなかった。
×:いずれかの連続折り畳み試験において、屈曲部に破断が生じていた。
【0095】
(鉛筆硬度)
鉛筆硬度は、JIS K5400-1900に準拠して評価した。鉛筆(uni、三菱鉛筆株式会社)及びクレメンス型引っ掻き試験機(HA-301、テスター産業株式会社)を用いて、保護層表面の鉛筆硬度を測定した。鉛筆の硬度を変えながら繰り返し試験を行い、傷による外観の変化を目視で観察し、傷が観察されない最大の硬度を評価値とした。鉛筆硬度がH以上を合格とした。
【0096】
表5に、各実施例及び各比較例に係る光透過性基材の種類、厚み及びリタデーション等の光学特性値と、光学積層体の層構成とを併せて示す。
【0097】
【0098】
表6に、各実施例及び各比較例に係る光学積層体の表面粗さに関する測定値等を示す。
【0099】
【0100】
表7に、各実施例及び各比較例に係る光学積層体のヘイズに関する測定値等を示す。
【0101】
【0102】
表8に、各実施例及び各比較例に係る光学積層体のニジムラ、折り曲げ耐性及び鉛筆硬度の評価結果を示す。
【0103】
【表8】
実施例1~16に係る光学積層体はいずれも、光透過性基材として、面内リタデーションReが2,000~7,500nmの二軸延伸PETフィルムを使用したものである。そのため、偏光サングラスの使用を想定した場合であっても、光透過性基材の遅相軸方向にかかわらず、ブラックアウトは生じず、光学機能層によってニジムラも抑制されていた。また、実施例1~16に係る光学積層体はいずれも二軸延伸PETフィルムを使用しているため、表面硬度及び折り曲げ耐性が良好であった。
【0104】
これに対して、比較例1に係る光学積層体は、面内リタデーションReが高い一軸延伸PETフィルムを光透過性基材として使用しているため、光透過性基材の遅相軸方向によってはブラックアウトが発生し、偏光サングラスの使用を想定した用途には適していなかった。
【0105】
また、比較例2及び3に係る光学積層体はいずれも、ニジムラを抑制することができず、偏光サングラスの使用を想定した用途には適していなかった。
【0106】
比較例4に係る光学積層体は、面内リタデーションReが2,000nm未満の二軸延伸PETフィルムを使用したものであるため、ニジムラは抑制されていたが鉛筆硬度が不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、画像表示パネルの前面側に設けられる光学積層体として利用できる。
【符号の説明】
【0108】
1 光透過性基材
2 防眩層
3 低屈折率層
10、20 光学積層体
【要約】
【課題】二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として用い、折り曲げ耐性を有し、かつ、ニジムラが抑制された光学積層体及びこれを用いた画像表示装置を提供する。
【解決手段】画像表示装置に用いられる光学積層体であって、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなり、面内に複屈折性を有する光透過性基材と、光透過性基材の一方面に設けられる光学機能層とを備え、光学機能層の表面の算術平均粗さRaが0.04μm以上であり、光学機能層の表面に存在する凹凸の平均傾斜角θaが0.30°以上であり、式(1):Re=(nx-ny)×dで定義される光透過性基材の面内リタデーションReが2,000nm以上7,500nm以下である、光学機能層。ここで、nx:遅相軸方向における屈折率、ny:進相軸方向における屈折率、d:光透過性基材の厚みである。
【選択図】
図1