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特許7603188切削液管理装置、切削液管理システム、及びセンサユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】切削液管理装置、切削液管理システム、及びセンサユニット
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/10 20060101AFI20241212BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20241212BHJP
   B01D 19/02 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B23Q11/10 E
B23Q17/00 A
B01D19/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024092679
(22)【出願日】2024-06-07
【審査請求日】2024-07-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000152996
【氏名又は名称】株式会社日本ピスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高沢 清継
(72)【発明者】
【氏名】八手又 秀浩
(72)【発明者】
【氏名】柴田 源也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和彦
(72)【発明者】
【氏名】北沢 藍
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-042001(JP,A)
【文献】特開2020-179433(JP,A)
【文献】特開2017-087403(JP,A)
【文献】特開2023-121052(JP,A)
【文献】特開2013-103304(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第117428561(CN,A)
【文献】米国特許第11951578(US,B1)
【文献】国際公開第2019/189212(WO,A1)
【文献】中国実用新案第219725501(CN,U)
【文献】国際公開第2014/199649(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q11/00-11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械に用いられる切削液の状態監視及び成分調整のうち少なくとも一方を行う切削液管理装置であって、
前記切削液の温度を測定する温度センサと、
前記切削液の濃度を測定する濃度センサと、
前記切削液のpHを測定するpHセンサと、
前記切削液の液位を測定する液面センサとを有するセンサユニットを備え、
前記センサユニットは、前記切削液が貯留される貯留槽に対して、前記温度センサ、前記濃度センサ、及び前記pHセンサが前記切削液中に浸され、且つ前記液面センサが前記切削液の液面と同一高さ又はそれ以上の高さとなる配置で設けられていること
を特徴とする切削液管理装置。
【請求項2】
前記貯留槽から前記切削液を取込んで再び前記貯留槽へ還流させる一つの循環流路と、
前記切削液を冷却する温度調整部と、
前記切削液中に原液又は希釈液を供給し、及び前記切削液の液位調整をする濃度調整部と、
前記切削液中にpH調整剤を供給するpH調整部と、をさらに備え、
前記循環流路の経路途中に、前記温度調整部、前記濃度調整部、及び前記pH調整部が設けられていること
を特徴とする請求項1記載の切削液管理装置。
【請求項3】
各前記調整部の制御を実行する制御部と、各前記センサが測定した測定データを受信する第2通信部とを有するコントロールユニットをさらに備え、
前記センサユニットは、前記第2通信部に対して各前記測定データを送信する第1通信部をさらに有し、
前記制御部は、各前記測定データに基づいて、前記温度調整部、前記濃度調整部、及び前記pH調整部のうち少なくとも一つの制御を実行する構成であること
を特徴とする請求項2記載の切削液管理装置。
【請求項4】
前記液面センサは、前記切削液の発泡状態をさらに検出する構成であり、
前記発泡状態に応じて前記経路途中の前記切削液中に消泡剤を供給する発泡状態調整部をさらに備えること
を特徴とする請求項2記載の切削液管理装置。
【請求項5】
前記切削液中の雑菌の繁殖を抑制する減菌部をさらに備えること
を特徴とする請求項2記載の切削液管理装置。
【請求項6】
前記液面センサは、前記切削液の油膜状態をさらに検出する構成であること
を特徴とする請求項2記載の切削液管理装置。
【請求項7】
前記コントロールユニットは記憶部をさらに有し、
前記記憶部には、前記工作機械と前記切削液の状態変化とについての相関データテーブル、及び前記工作機械の加工プログラムが記憶されており、
前記制御部は、前記相関データテーブルと、前記加工プログラムとに基づいて各前記調整部のうち少なくとも一つの予測制御を実行する構成であること
を特徴とする請求項3記載の切削液管理装置。
【請求項8】
請求項3の切削液管理装置と、記憶部を有する外部サーバとを備え、
前記外部サーバの前記記憶部には、前記工作機械と前記切削液の状態変化とについての相関データテーブル、及び前記工作機械の加工プログラムが記憶されており、
前記制御部は、前記第2通信部を介して前記外部サーバの前記記憶部に各前記測定データ及び装置動作履歴を記憶させ、
前記外部サーバは、前記相関データテーブルと、前記加工プログラムとに基づいて各前記調整部のうち少なくとも一つの予測制御を実行する構成であること
を特徴とする切削液管理システム。
【請求項9】
工作機械に用いられる切削液の状態監視を行うセンサユニットであって、
前記切削液の温度を測定する温度センサと、
前記切削液の濃度を測定する濃度センサと、
前記切削液のpH調整部を測定するpHセンサと、
前記切削液の液位を測定する液面センサとを備え、
前記切削液が貯留される貯留槽に対して、前記温度センサ、前記濃度センサ、及び前記pHセンサが前記切削液中浸され、且つ前記液面センサが前記切削液の液面と同一高さ又はそれ以上の高さとなる配置で設けられていること
を特徴とするセンサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に用いられる切削液を管理する切削液管理装置、切削液管理システム、及びセンサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械での加工に際し安定的な加工精度及び加工性を得るために、切削液温度の監視及び/又は調整を可能とする温度調整装置が従来から用いられている。
【0003】
他方、切削液の濃度が規定値より薄い場合、当該切削液の潤滑性が低下し加工精度や加工面精度に悪影響を及ぼす場合がある。また、切削液の濃度が規定値より濃い場合、加工物表面の変色や作業者の肌荒れを引き起こし、同時に必要以上の切削液の消費となるためランニングコスト増大に繋がる場合がある。したがって、当該水溶性切削液の濃度監視が重要となる。
【0004】
一例として、特許文献1(特許第7079904号公報)には、冷却液(切削液)の温度、濃度、及びpHを計測する各計測手段を備える冷却液良否検出システムが開示されている。当該システムは切削液状態良否の情報提供、及び警告を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許7079904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示の冷却液良否検出システムにおいて、温度計測手段及びpH計測手段は供給流路中の切削液の温度及びpH計測を行い、濃度計測手段は供給流路から分取した切削液の濃度計測を行う。
【0007】
このように、上記冷却液良否検出システムでは各計測手段(すなわち、各センサ)が集約されていないため以下のような問題が生じていた。すなわち、各計測手段のメンテナンスがし難く、切削液の状態を取得する位置やタイミングが異なることに基づく誤差が発生する場合があった。また、計測手段ごとに配線が引回されているため、作業者が引掛り、ショート、断線のリスクも生じていた。さらに、切削液の液面状態(一例として、液位)を計測することができず、切削液の過不足が生じる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、メンテナンス性や安全性に優れ、測定誤差の低減が可能であり、且つ切削液の液面状態の計測も可能な切削液管理装置、切削液管理システム、及びセンサユニットを実現することを目的とする。
【0009】
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0010】
すなわち、開示の切削液管理装置は、工作機械に用いられる切削液の状態監視及び成分調整のうち少なくとも一方を行う切削液管理装置であって、前記切削液の温度を測定する温度センサと、前記切削液の濃度を測定する濃度センサと、前記切削液のpHを測定するpHセンサと、前記切削液の液位を測定する液面センサとを有するセンサユニットを備え、前記センサユニットは、前記切削液が貯留される貯留槽に対して、前記温度センサ、前記濃度センサ、及び前記pHセンサが前記切削液中に浸され、且つ前記液面センサが前記切削液の液面と同一高さ又はそれ以上の高さとなる配置で設けられていることを要件とする。これにより、以下の有利な効果を生ずる。すなわち、各センサがセンサユニットに集約されているため、各センサのクリーニングがし易くなり、メンテナンス性が向上する。また、各センサが切削液の状態を取得する位置を貯留槽に統一しているため、各センサによる切削液の状態取得の位置やタイミングが異なる場合に生じる誤差要因を排除することができる。さらに、各センサがセンサユニットに集約されているため、配線数を抑えることができ、作業者への引掛りや配線のショート、断線のリスクを低減することができる。
【発明の効果】
【0011】
上記の実施形態によれば、メンテナンス性や安全性が向上し、測定誤差が低減可能であり、且つ切削液の液面状態の計測も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態における切削液管理装置の全体図(概略図)である。
図2】本発明の実施形態における切削液管理装置の機能ブロック図である。
図3】本発明の実施形態における切削液管理システムの全体図(概略図)である。
図4】本発明の実施形態における切削液管理システムの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の各実施形態について詳しく説明する。図1は本発明の実施形態における切削液管理装置100の全体図(概略図)である。図2は本発明の実施形態における切削液管理装置100の機能ブロック図である。なお、各実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0014】
<工作機械>
各実施形態における切削液管理装置100は、工作機械MTに用いられる切削液CFの状態監視又は成分調整のうち少なくとも一方を行うためのものである。対象とする工作機械MTとして、例えば、マシニングセンタ、NC旋盤、複合加工機、研削盤等が挙げられるが、これに限定されず、切削液(特に、水溶性切削液)を使用する工作機械であればよい。
【0015】
また、工作機械MTは、一例として、吸入路F1及び排出路F2を介して、切削液CFが貯留された貯留槽Tに接続されている。より具体的には、工作機械MTは、ポンプPによって貯留槽Tから切削液CFを吸上げ、工具ホルダ等に設けられたクーラント孔やノズル(いずれも不図示)から加工部位(すなわち、工具及び/又はワーク)に対して切削液CFが吐出されて、加工部位の冷却、加工部位への潤滑性の付与、及び切り屑の洗浄が行われる。また、切削液CFは、フィルタFで濾過され排出路F2から貯留槽Tに還流される。
【0016】
<切削液>
切削液CFは上記した工作機械MTに用いられる。切削液の例としては、水溶性の切削液(原液)が希釈液(例えば、水)により希釈されたエマルション、ソリュブル、又はソリューションの水溶性切削液を想定しており、研削液も含むものとする。
【0017】
<切削液管理装置>
本実施形態における切削液管理装置100について詳しく説明する。本実施形態における切削液管理装置100は、切削液CFの温度を測定する温度センサ16と、切削液CFの濃度を測定する濃度センサ18と、切削液CFのpHを測定するpHセンサ20と、切削液CFの液位を測定する液面センサ14とを有するセンサユニット10を備えている。
【0018】
<<センサユニット>>
センサユニット10は、切削液CFが貯留される貯留槽Tに対して、温度センサ16、濃度センサ18、及びpHセンサ20が切削液CF中に浸され、且つ液面センサ14が切削液CFの液面と同一高さ又はそれ以上の高さとなる配置で設けられている。
【0019】
温度センサ16としては、一例として、サーミスタや白金抵抗測温体が挙げられるが、これに限定されない。
【0020】
濃度センサ18としては、一例として、水溶性切削液の電気伝導率や光学的屈折率を測定するセンサが挙げられるが、これに限定されない。
【0021】
pHセンサ20としては、一例として、ガラス電極を用いたセンサが挙げられるが、これに限定されない。
【0022】
液面センサ14としては、切削液CFの液面付近に対して照射した光の反射率又は屈折率を検出することにより切削液CFの液位を測定する公知の光学センサが挙げられるが、これに限定されない。
【0023】
なお、液面センサ14は、切削液CFの発泡状態及び/又は油膜状態をさらに検出する構成としてもよい。より具体的には、センサユニット10は、液面センサ14を高さ方向に複数個有していてもよい。切削液CFの液面に発泡層又は油膜層が生じると純粋な空気層よりも光が透過しづらくなるため、いずれかの液面センサ14が発泡又は油膜による光の透過性の変化(減少又は増加)を検出することにより、切削液CFの発泡状態及び/又は油膜状態を取得することが可能となる。
【0024】
センサユニット10を上記構成とすることにより、次のような有利な効果を生じる。すなわち、各センサ14、16、18、20がセンサユニット10に集約されているため、各センサ14、16、18、20のクリーニングがし易くなり、メンテナンス性が向上する。より具体的には、切削液CF中に混入し、油汚れとして流路に付着残留する異物(切り屑や工作機械MTの加工テーブルに用いられる潤滑剤等)のクリーニングが必要となるところ、上記構成により当該クリーニングが容易となり、メンテナンス性が向上する。また、各センサ14、16、18、20が切削液CFの状態を取得する位置を貯留槽Tに統一しているため、各センサ14、16、18、20による切削液CFの状態取得の位置やタイミングが異なる場合に生じる誤差要因を排除することができる。さらに、各センサ14、16、18、20がセンサユニット10に集約されているため、配線数を抑えることができ、作業者が引掛ることで配線がショート、断線してしまうリスクを低減することができる。
【0025】
また、センサユニット10は、第1通信部12を有している。第1通信部12は、温度センサ16、濃度センサ18、pHセンサ20、及び液面センサ14に無線又は有線によって通信接続されており、各センサが取得した各測定データを後述する第2通信部24に対して送信する構成である。
【0026】
第1通信部12の例としては、アンテナ(不図示)を有し、Bluetooth(登録商標)やネットワークNWを介したWi-Fi(登録商標)を通信方式とする無線通信部が挙げられる。なお、第1通信部12は、有線通信部であってもよい。
【0027】
<<循環流路>>
また、本実施形態における切削液管理装置100は、貯留槽Tから切削液CFを取込んで再び貯留槽Tへ還流させる一つの循環流路30を備えている。より具体的には、循環流路30は、切削液CFを吸入する第1流路32と、第1流路32に設けられた循環ポンプ40と、切削液CFの成分調整がされる混合槽36と、切削液CFを貯留槽Tへ排出させる第2流路34とを有している。なお、循環ポンプ40の例としては、ピストンポンプ、ダイヤフラムポンプ、又は渦巻ポンプ等の公知の流体循環ポンプ等が挙げられるが、これに限定されない。後述する制御部26又はユーザが循環ポンプ40を作動させることにより、循環流路30において切削液CFを循環させることができる。
【0028】
<<コントロールユニット>>
また、本実施形態における切削液管理装置100は、コントロールユニット22を備えている。コントロールユニット22は、CPU、ROM・RAM等のメモリ、及び通信部を有しており、予め設定された制御プログラム及び各センサが測定した測定データに基づいて作動する。より具体的には、コントロールユニット22は、図2に示すように、上述した第1通信部12から各センサ14、16、18、20が測定した各測定データを受信する第2通信部24と、各測定データに基づいて各調整部のうち少なくとも一つの制御を実行する制御部26と、記憶部28とを有している。
【0029】
第2通信部24の例としては、アンテナ(不図示)を有し、Bluetooth(登録商標)やネットワークNWを介したWi-Fi(登録商標)を通信方式とする無線通信部が挙げられる。なお、第2通信部24は、有線通信部であってもよい。
【0030】
なお、コントロールユニット22は、有線又は無線によって循環ポンプ40に対して通信接続されていてもよく、この場合、制御部26は、第2通信部24が受信した各測定データに基づいて、循環ポンプ40のオン・オフを行う構成であってもよい。
【0031】
また、コントロールユニット22は、操作パネル(不図示)を有していてもよい。操作パネルは、各センサ14、16、18、20が測定した各測定データを表示する構成である。また、操作パネルは、ユーザがタッチ操作をすることにより、後述する各調整部38、42、54、62やオイルスキマー80に対してフィードバック指令を送信することができる構成である。これにより、ユーザは、切削液CFの各状態が適正な数値に収まっているかどうか判断し、切削液CFの状態を安定させることができる。
【0032】
<<温度調整部>>
本実施形態における切削液管理装置100は、温度調整部38を備えている。温度調整部38は、一例として、公知の熱交換器が挙げられるがこれに限定されない。また、温度調整部(熱交換器)38は、有線又は無線によりコントロールユニット22に対して通信接続されている。切削液CFの温度調整のために、制御部26は、第2通信部24が受信した温度データと、予め設定され記憶部28に記憶された設定温度(一例として、24℃以上25℃以下)との差分を算出し、当該差分が所定の値以上の場合には、熱交換器としての温度調整部38を作動させて混合槽36へ取込まれる切削液CFの温度を調整する。なお、本実施形態における温度調整部(熱交換器)38による調整は切削液CFの冷却であるが、これに限定されず、切削液CFの冷却及び/又は加熱であってもよい。切削液管理装置100が温度調整部38を備えることにより、切削液CFの温度を一定に維持することができる。
【0033】
<<濃度調整部>>
また、本実施形態における切削液管理装置100は、濃度調整部42を備えている。濃度調整部42は、切削液CF中に原液又は希釈液を供給し、及び切削液CFの液位調整をする構成である。より具体的には、濃度調整部42は、混合槽36に接続された希釈液流路44と、希釈液流路44の開閉を行う電磁開閉弁46とを有している。なお、希釈液流路44は希釈液源(例えば、水道水の供給源)に接続されている。また、濃度調整部42は、混合槽36に接続された原液流路50と、原液タンク48と、原液タンク48から原液流路50(すなわち、混合槽36)に対して原液を吸入する原液供給ポンプ52とを有している。なお、原液供給ポンプ52の例としては、ピストンポンプ、又はダイヤフラムポンプ等の公知の移送ポンプ等が挙げられるが、これに限定されない。また、電磁開閉弁46及び原液供給ポンプ52は、有線又は無線によりコントロールユニット22に対して通信接続されている。切削液CFの濃度調整のために、制御部26は、第2通信部24が受信した濃度データと、予め設定され記憶部28に記憶された設定濃度(一例として、8.0%以上10.0%以下)との差分を算出し、当該差分が所定の値以上の場合には、電磁開閉弁46又は原液供給ポンプ52を作動させて混合槽36内の切削液CFの濃度を調整する。切削液管理装置100が濃度調整部42を備えることにより、切削液CFの濃度を一定に維持することができる。
【0034】
なお、濃度調整部42は、貯留槽T内の切削液CFの液位を調整する役割も兼ねている。すなわち、切削液CFの液位の調整のために、制御部26は、第2通信部24が受信した液位データと、予め設定され記憶部28に記憶された設定液位との差分を算出し、当該差分が所定の値以上の場合には、電磁開閉弁46及び/又は原液供給ポンプ52を作動させて混合槽36内の切削液CFの液量を調整する。これにより、貯留槽T内の切削液CFの液量を一定に維持することができる。
【0035】
<<pH調整部>>
本実施形態における切削液管理装置100は、pH調整部54を備えている。pH調整部54は、一例として、混合槽36に接続されたpH調整剤流路58と、pH調整剤タンク56と、pH調整剤タンク56からpH調整剤流路58(すなわち、混合槽36)に対してpH調整剤を吸入するpH調整剤ポンプ60とを有している。なお、pH調整剤ポンプ60の例としては、ピストンポンプ、ダイヤフラムポンプ、又はホースポンプ等の公知の移送ポンプ等が挙げられるが、これに限定されない。また、pH調整剤ポンプ60は、有線又は無線によりコントロールユニット22に対して通信接続されている。切削液CFのpH調整のために、制御部26は、第2通信部24が受信したpHデータと、予め設定され記憶部28に記憶された設定pH(一例として、8.8%以上)との差分を算出し、当該差異が所定の値以上の場合には、pH調整剤ポンプ60を作動させて混合槽36内の切削液CFのpHを調整する。これにより、切削液CFのpHを一定に維持することができる。
【0036】
<<発泡状態調整部>>
本実施形態における切削液管理装置100は、発泡状態調整部62を備えていてもよい。発泡状態調整部62は、一例として、混合槽36に接続された消泡剤流路64と、消泡剤タンク66と、消泡剤タンク66から消泡剤流路64(すなわち、混合槽36)に対して消泡剤を吸入する消泡剤ポンプ68とを有している。なお、消泡剤ポンプ68の例としては、ピストンポンプ、ダイヤフラムポンプ、又はホースポンプ等の公知の移送ポンプ等が挙げられるが、これに限定されない。また、消泡剤ポンプ68は、有線又は無線によりコントロールユニット22に対して通信接続されている。切削液CFの発泡状態を抑制するために、制御部26は、第2通信部24が受信した発泡状態データを確認し、発泡がある場合(一例として、切削液CF液面直上の光の透過度が空気中の透過度以下の場合)には消泡剤ポンプ68を作動させて混合槽36内の切削液CFに対して発泡剤を供給する。これにより、切削液CF液面に生じた発泡状態を解消、軽減することができる。
【0037】
各調整部(特に、温度調整部、濃度調整部)が別々に設けられていた従来例では、それぞれに対して循環用配管が必要なため配管が煩雑になり、また、各配管でポンプが必要となるため装置が大掛かり且つ高額になるという課題が生じていた。さらに、切削液の温度、濃度、pH値の適正な状態管理のみならず、液面の泡立ちや油膜発生状況といった切削液CFの状態を監視・調整する総合的かつ安定的な切削液管理が困難であったため、加工精度、加工品質のバラツキが生じ、工作機械の運転無人化の障壁となっていた。そこで、切削液管理装置100を上記構成とすることにより、以下の有利な効果を生じる。温度調整部38、濃度調整部42、pH調整部54、及び発泡状態調整部62を循環流路30の経路途中に設け、一つの装置に集約することで省スペース化、及び切削液成分の各種調整の一元化を図ることができる。また、各調整部38、42、54、62を同一の循環流路30に設けることにより、配管数を抑えることができ、製品コストを削減することができる。さらに、精度の高い切削液CFの自動調整が可能となるとともに総合的な切削液CFの管理が可能な切削液管理装置の提供が可能となる。すなわち、上記構成を採用することで、精度の高い切削液CFの自動調整を実現し、切削液CFの管理を大幅に軽減することで、加工の無人化・省人化に大きく寄与する。
【0038】
<<オイルスキマー>>
また、本実施形態における切削液管理装置100は、貯留槽T内にオイルスキマー80を備えていてもよい。オイルスキマー80は、グリース等の油膜を含む切削液CFを無端ベルトに吸収させ、引上げたベルトから油膜と切削液とを分離させ、切削液のみ貯留槽Tに還流可能な公知のオイルスキマーを採用することができる。また、オイルスキマー80は、有線又は無線によってコントロールユニット22と通信接続されていてもよい。切削液CFから油膜成分を除去するために、制御部26は、第2通信部24が受信した油膜状態データを確認し、油膜がある場合(一例として、記憶部28に予め記憶されている切削液CF及び油膜層の透過度のデータと、油膜状態データとを制御部26が照合し、当該油膜状態データの値が油膜層に相当する透過度の範囲にあると判断した場合)にはオイルスキマー80を作動させて貯留槽T内の切削液CFから油膜を除去する。これにより、切削液CF液面に生じた油膜状態を解消、軽減することができる。
【0039】
なお、切削液CFから油膜成分を除去するために、制御部26は第2通信部24を介して、クラウドサーバや管理者の端末(PC端末や携帯端末)に対して油膜除去作業を促す警告を送信する構成としてもよい。これにより、上記警告をトリガーとして、オイルスキマー80による油膜除去作業を開始することが可能となる。
【0040】
なお、制御部26が各調整部38、42、54、62、及びオイルスキマー80を作動させる順番については特に限定されないが、一例として、循環ポンプ40の作動後、第2通信部24が各測定データを受信した順番に従って、又は予め設定された制御プログラムに従って制御部26が制御を実行する。
【0041】
以上に示したように、制御部26は、各測定データに基づいて、温度調整部38、濃度調整部42、pH調整部54、及び発泡状態調整部62のうち少なくとも一つの制御を実行することで、切削液CFの成分調整を可能とする。換言すると、各調整部38、42、54、62は相互に独立しており、制御部26は、各調整部38、42、54、62を別々に、且つ同時に実行させることが可能である。
【0042】
さらに、本実施形態における切削液管理装置100は、減菌部90を備えていてもよい。減菌部90は、貯留槽T又は混合槽36内に設けられ、切削液CF中の雑菌の繁殖を抑制する構成である。より具体的には、減菌部90は、公知の銅イオン発生装置や公知の銀イオン発生装置であるが、これに限定されない。
【0043】
<変形例>
続いて、本実施形態における切削液管理装置100の変形例について詳しく説明する。
【0044】
変形例における切削液管理装置100において、記憶部28には工作機械MTと切削液CFの状態変化とについての相関データテーブルDT、及び工作機械MTの加工プログラムWPが記憶されており、制御部26は、相関データテーブルDTと、加工プログラムWPとに基づいて各調整部のうち少なくとも一つの予測制御を実行する構成である。相関データテーブルDTには、工作機械MTの加工条件(一例として、マシニングセンタ、NC旋盤、複合加工機、又は研削盤における重切削、軽切削といった加工負荷の段階、及び/又は加工時間)と、切削液CFの温度変化データ、濃度変化データ、pH値変化データ、液位変化データ、又は発泡発生データとの相関データが格納されている。また、加工プログラムWPには、工作機械MTの加工条件(一例として、マシニングセンタ、NC旋盤、複合加工機、又は研削盤における重切削、軽切削といった加工負荷の段階、及び/又は加工時間)のデータが格納されている。なお、加工プログラムWPは、ユーザによる記憶部28への直接入力、又は工作機械MTから記憶部28への入力によって、記憶部28に予め記憶させることができる。
【0045】
そして、制御部26は、記憶部28から相関データテーブルDTと、加工プログラムWPとを呼出して、加工プログラムWPにおける加工条件と、相関データテーブルDTとを照合する。次いで、制御部26は、切削液CFの温度変化データ、濃度変化データ、pH値変化データ、液位変化データ、又は発泡発生データを取得する。次いで、制御部26は、いずれかの各データに基づいて、各データに対応する調整部の予測制御を実行する。なお、本実施形態における予測制御は、一例として、フィードフォワード制御である。
【0046】
制御部26は、切削液CFの消耗(温度変化、濃度変化、pH値変化、液位低下、又は発泡発生)の変化量を事前認識し制御を実行するため、各種切削液特性の適正値からの誤差を極小化することが可能となる。また、切削液管理装置100は、センサユニット10から得られた切削液情報に基づいて、切削液CFを各種特性の適正値に調整するフィードバック制御が主体ではあるが、相関データテーブルDT、及び加工プログラムWPに基づく予測制御(すなわち、フィードフォワード制御)を併用することで、応答性の高い切削液調整が可能となる。
【0047】
<切削液管理システム>
続いて、本実施形態における切削液管理システムSについて詳しく説明する。図3は、本実施形態における切削液管理システムSの全体図(概略図)である。図4は、本実施形態における切削液管理システムSの機能ブロック図である。切削液管理システムSは、切削液管理装置100と、外部サーバ70とを備え、切削液管理装置100と外部サーバ70とが通信接続されている構成である。
【0048】
<<外部サーバ>>
外部サーバ70は、CPU、ROM・RAM等のメモリ、及び通信部を有しており、予め設定された制御プログラム、各センサが測定した測定データ、及び装置動作履歴に基づいて作動する。より具体的には、外部サーバ70は、図4に示すように、制御部72と、記憶部74と、第3通信部76とを有している。
【0049】
なお、外部サーバ70はクラウドサーバであってもよい。
【0050】
第3通信部76としては、一例として、アンテナ(不図示)を有し、Bluetooth(登録商標)やネットワークNWを介したWi-Fi(登録商標)を通信方式とする無線通信部が挙げられる。なお、第3通信部76は、有線通信部であってもよい。
【0051】
コントロールユニット22に設けられた制御部26は、第2通信部24を介して外部サーバ70の第3通信部76に対して各測定データと、装置動作履歴とを送信し、外部サーバ70の制御部72は、記憶部74に上記各測定データと、上記装置動作履歴とを記憶させる。換言すると、記憶部74には、コントロールユニット22から受信した上記各測定データと、上記装置動作履歴とが記憶される。これにより、切削液CFの状態の履歴管理や遠隔地での監視が可能となる。
【0052】
また、記憶部74には工作機械MTと切削液CFの状態変化とについての相関データテーブルDT、及び工作機械MTの加工プログラムWPが記憶されており、制御部72は、相関データテーブルDTと、加工プログラムWPとに基づいて各調整部のうち少なくとも一つの予測制御を実行する構成である。加工プログラムWPは、ユーザによる記憶部28への直接入力、又は工作機械MTから記憶部28への入力によって、記憶部28に予め記憶させることができる。
【0053】
制御部72は、相関データテーブルDTと、加工プログラムWPとに基づいて、上記した予測制御を実行する構成である。
【0054】
切削液管理装置100及び切削液管理システムSを上記構成とすることにより、切削液状態の事前予測がなされ、この予測に基づいた一層厳密な切削液状態の監視及び成分調整が可能となる。
【0055】
なお、本発明は以上説明した各実施形態に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 センサユニット
12 第1通信部
14 液面センサ
16 温度センサ
18 濃度センサ
20 pHセンサ
22 コントロールユニット
24 第2通信部
26 制御部
28 記憶部
30 循環流路
38 温度調整部
42 濃度調整部
54 pH調整部
62 発泡状態調整部
80 オイルスキマー
90 減菌部
100 切削液管理装置
S 切削液管理システム
MT 工作機械
CF 切削液(水溶性切削液)
DT 相関データテーブル
WP 加工プログラム
【要約】
【課題】メンテナンス性や安全性が向上し、測定誤差が低減され、且つ切削液の液面状態の計測も可能な切削液管理装置、切削液管理システム、及びセンサユニットを提供する。
【解決手段】工作機械MTに用いられる切削液CFの状態監視及び成分調整のうち少なくとも一方を行う切削液管理装置100であって、切削液CFの温度を測定する温度センサ16と、切削液CFの濃度を測定する濃度センサ18と、CF切削液のpHを測定するpHセンサ20と、切削液CFの液位を測定する液面センサ14とを有するセンサユニット10を備え、センサユニット10は、切削液CFが貯留される貯留槽Tに対して、温度センサ16、濃度センサ18、及びpHセンサ20が切削液CF中に浸され、且つ液面センサ14が切削液CFの液面と同一高さ又はそれ以上の高さとなる配置で設けられていることを要件とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4