(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】柱梁接合部およびその製作方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/30 20060101AFI20241212BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20241212BHJP
E04C 3/293 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
E04B1/30 K
E04B1/58 508P
E04C3/293
(21)【出願番号】P 2024158692
(22)【出願日】2024-09-13
(62)【分割の表示】P 2024068912の分割
【原出願日】2024-04-22
【審査請求日】2024-09-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591205536
【氏名又は名称】JFEシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】川田 侑子
(72)【発明者】
【氏名】山岡 賢史
(72)【発明者】
【氏名】▲桜▼井 勇司
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-204207(JP,A)
【文献】特開2019-078068(JP,A)
【文献】特開2022-061695(JP,A)
【文献】特開2017-110346(JP,A)
【文献】特開2018-162645(JP,A)
【文献】特開昭62-137336(JP,A)
【文献】特開2011-007018(JP,A)
【文献】特開2016-176215(JP,A)
【文献】特開平06-033517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/16-1/61
E04C 3/00-3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート柱に複数の鉄骨梁が貫入するようにして接合される柱梁接合部の製作方法であって、
前記複数の鉄骨梁は、互いの高さ方向の位置が異なるように前記鉄筋コンクリート柱に接合され、
前記鉄骨梁のウェブのうち前記鉄筋コンクリート柱に貫入する部分に孔が設けられ、
前記孔は、前記鉄骨梁のウェブを正面から見たときに前記鉄筋コンクリート柱の主筋と重ならない位置に設けられ、孔径が60mm以上であり、
前記鉄筋コンクリート柱を横に寝かせた状態でコンクリートを打設し、前記孔にバイブレータを挿入して、前記鉄筋コンクリート柱に貫入する前記鉄骨梁のウェブにより上下に隔てられる空間のうち、前記ウェブよりも下方の空間に充填されるコンクリートの内部に残留する気泡を、前記鉄骨梁の前記ウェブのうち前記鉄筋コンクリート柱に貫入する部分に設けられた前記孔から排出し、前記下方の空間へのコンクリートの充填を促進させる
ことにより、前記柱梁接合部をプレキャスト工法で製作する、柱梁接合部の製作方法。
【請求項2】
前記複数の鉄骨梁のうち上段の鉄骨梁の下端が、下段の鉄骨梁の上端よりも高く、
前記上段の鉄骨梁の下フランジと前記下段の鉄骨梁の上フランジとが繋ぎ板により接合され、
前記繋ぎ板に孔が設けられている、請求項1に記載の柱梁接合部の製作方法。
【請求項3】
前記複数の鉄骨梁のうち最上段の鉄骨梁の上フランジと最下段の鉄骨梁の下フランジの間の高さの範囲で、前記鉄筋コンクリート柱の側面を、前記鉄骨梁のウェブの表面位置まで覆うように取り囲むふさぎ板が設けられ、該ふさぎ板に孔が設けられている、請求項1に記載の柱梁接合部の製作方法。
【請求項4】
前記複数の鉄骨梁のうち最上段の鉄骨梁の上フランジと最下段の鉄骨梁の下フランジの間の高さの範囲で、前記鉄筋コンクリート柱の側面を、前記鉄骨梁のウェブの表面位置まで覆うように取り囲むふさぎ板が設けられ、該ふさぎ板に孔が設けられている、請求項2に記載の柱梁接合部の製作方法。
【請求項5】
前記ふさぎ板に設けられる前記孔は、前記鉄骨梁のウェブを正面から見たときに前記鉄筋コンクリート柱の主筋と重ならない位置に設けられ、孔径が100~160mmであり、
前記ふさぎ板には、該ふさぎ板に設けられる前記孔の周囲に、溶接しろが30mm以上設けられている、請求項3に記載の柱梁接合部の製作方法。
【請求項6】
前記ふさぎ板に設けられる前記孔は、前記鉄骨梁のウェブを正面から見たときに前記鉄筋コンクリート柱の主筋と重ならない位置に設けられ、孔径が100~160mmであり、
前記ふさぎ板には、該ふさぎ板に設けられる前記孔の周囲に、溶接しろが30mm以上設けられている、請求項4に記載の柱梁接合部の製作方法。
【請求項7】
前記孔は、前記鉄骨梁のウェブのうち前記鉄筋コンクリート柱に貫入する部分の隅角部に設けられ、孔径が30mm以上である、請求項1~6のいずれかに記載の柱梁接合部の製作方法。
【請求項8】
鉄筋コンクリート柱に複数の鉄骨梁が貫入するようにして接合される柱梁接合部であって、
前記複数の鉄骨梁は、互いの高さ方向の位置が異なるように前記鉄筋コンクリート柱に接合され、
前記鉄骨梁のウェブのうち前記鉄筋コンクリート柱に貫入する部分に孔が設けられ、
前記鉄骨梁のウェブに設けられる前記孔は、前記鉄骨梁のウェブを正面から見たときに前記鉄筋コンクリート柱の主筋と重ならない位置に設けられ、孔径が60mm以上であり、
前記複数の鉄骨梁のうち上段の鉄骨梁の下端が、下段の鉄骨梁の上端よりも高く、
前記上段の鉄骨梁の下フランジと前記下段の鉄骨梁の上フランジとが繋ぎ板により接合され、
前記繋ぎ板に孔が設けられ、
前記複数の鉄骨梁のうち最上段の鉄骨梁の上フランジと最下段の鉄骨梁の下フランジの間の高さの範囲で、前記鉄筋コンクリート柱の側面を、前記鉄骨梁のウェブの表面位置まで覆うように取り囲むふさぎ板が設けられ、該ふさぎ板に孔が設けられ、
前記ふさぎ板に設けられる前記孔の位置は、前記繋ぎ板に設けられる前記孔の位置と合わせられ、
前記ふさぎ板に設けられる前記孔は、前記鉄骨梁のウェブを正面から見たときに前記鉄筋コンクリート柱の主筋と重ならない位置に設けられ、孔径が100~160mmであり、
前記ふさぎ板には、該ふさぎ板に設けられる前記孔の周囲に、溶接しろが30mm以上設けられている、柱梁接合部。
【請求項9】
前記鉄骨梁のウェブに設けられる前記孔は、前記鉄骨梁のウェブのうち前記鉄筋コンクリート柱に貫入する部分の隅角部に設けられ、孔径が30mm以上である、請求項8に記載の柱梁接合部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁との柱梁接合部、およびその製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の構造形式として、柱を鉄筋コンクリート造とし、梁を鉄骨造とした、RCS構造が用いられている。RCS構造は、圧縮力に強い鉄筋コンクリート部材を柱に、軽量で曲げやせん断に強い鉄骨部材を梁に用いるため、合理的な構造となる。すなわち、鉄骨梁によりロングスパン化を可能にしつつ、鉄筋コンクリート柱により経済的に建物剛性を高め、建物重量を確実に支えることができる。RCS構造は、その特長から、大スパンかつ積載荷重の大きな建築物、具体的には物流施設や店舗などに特に適している。
【0003】
RCS構造では、その柱梁接合部の構造をどのような形式にするのかが、建築物全体の構造性能を確保する上でのポイントになる。RCS構造の柱梁接合部の構造としては、鉄骨梁の端部が鉄筋コンクリート柱の一方の側面から反対側の側面に向かって貫入するようにして柱梁接合部が構成される形式(以下、梁貫通形式という)が多く用いられている。
【0004】
ここで、2階以上にトラックバースを有する物流倉庫のように床面に段差を形成する場合や、鉄筋コンクリート柱に接合される鉄骨梁の梁せいが異なる場合には、鉄筋コンクリート柱に接合される2以上の鉄骨梁の間に、高さ方向に段差が生じる。
【0005】
特許文献1には、RCS構造において、鉄筋コンクリート柱に接合される鉄骨梁同士に段差を簡単に形成することができる、柱梁接合部の構造が開示されている。具体的には、上段鉄骨梁と下段鉄骨梁とが鉄筋コンクリート柱に埋設される埋設部分において、上段鉄骨梁と下段鉄骨梁とを接合する繋ぎ部材が備えられている。繋ぎ部材は、上段鉄骨梁のウェブと下段鉄骨梁のウェブとの間に、繋ぎ部材の少なくとも一部が位置するように、上段鉄骨梁と下段鉄骨梁のフランジに接合されている。
【0006】
また、非特許文献1~非特許文献3には、RCS構造において、鉄筋コンクリート柱に接合される2以上の鉄骨梁の天端の高さが異なる場合や、2以上の鉄骨梁の天端の高さが等しいが梁せいが異なる場合の、柱梁接合部の構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】佐川隆之、外3名、「段差梁を有する鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁で構成される架構の構造性能に関する実験的および解析的研究 コンクリート工学年次論文集」、コンクリート工学年次論文集、Vol.37、No.2、2015年2月、pp.1045-1050
【文献】荒金直樹、外3名、「柱RC梁S混合構造架構の構造性能:その4~6」、日本建築学会大会学術講演梗概集、一般社団法人日本建築学会、2013年7月、pp.1467-1472
【文献】原田雅俊、外1名、「梁偏心・梁段差を有する柱RC梁S混合構造の十字形柱梁接合部の構造性能 その1~2」、日本建築学会大会学術講演梗概集、一般社団法人日本建築学会、2018年7月、pp.1457-1460
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、RCS構造の鉄筋コンクリート柱のコンクリート打設を建設現場で行う場合には、
図9に示すように、鉄筋コンクリート柱2が直立した状態でこれを行う。すなわち、コンクリート打設を、鉄筋コンクリート柱2の上部からのコンクリート23の落とし込み、または鉄筋コンクリート柱2の下部から上方へのコンクリート23の圧入により行う。鉄筋コンクリート柱2のうち、鉄骨梁3、4が貫入する柱梁接合部1と、それ以外の部分とで、コンクリート23を一体に打設する場合もあれば、コンクリート23を打ち分ける場合もある。
【0010】
このように、RCS構造の鉄筋コンクリート柱2と鉄骨梁3、4との柱梁接合部1のコンクリート打設を、鉄筋コンクリート柱が直立した状態で行う場合には、
図10に矢印で示すように、コンクリート23は、鉄骨梁3、4のフランジの周囲を通過して打設される。よって、コンクリートの打設に支障を生じにくい。
【0011】
これに対し、RCS構造の鉄筋コンクリートと鉄骨梁との柱梁接合部をプレキャスト工法で製作する場合には、
図11(a)および
図11(b)に示すように、鉄筋コンクリート柱2を横に寝かせた状態でコンクリート23を打設する。このとき、
図12に示すように、鉄筋コンクリート柱2のうち鉄骨梁3、4が貫入する部分は、鉄骨梁3、4のウェブ31、41(および、鉄骨梁3、4を互いに接合する繋ぎ板6)により、上下に隔てられる。このため、鉄骨梁3、4のウェブ31、41(および繋ぎ板6)よりも下方の空間に充填されるコンクリート23の内部に気泡23aが残留し、コンクリート23の内部に空隙が発生しやすい。特に、
図12に示すように、複数の鉄骨梁3、4が、互いの高さ方向の位置が異なるように鉄筋コンクリート柱2に接合される場合には、柱梁接合部において、鉄骨梁3、4のウェブ31、41および繋ぎ板6により上下に隔てられる範囲が大きくなる。このため、コンクリート23の内部に気泡23aが残留し、コンクリート23の内部に空隙が発生しやすいという問題が顕著になる。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、複数の鉄骨梁が、互いの高さ方向の位置が異なるように、鉄筋コンクリート柱に貫入するようにして接合される柱梁接合部において、これをプレキャスト工法により製作するときに、コンクリートの内部に空隙が発生することを抑制できる、柱梁接合部およびその製作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 鉄筋コンクリート柱に複数の鉄骨梁が貫入するようにして接合される柱梁接合部であって、前記複数の鉄骨梁は、互いの高さ方向の位置が異なるように前記鉄筋コンクリート柱に接合され、前記鉄骨梁のウェブのうち前記鉄筋コンクリート柱に貫入する部分に孔が設けられている、柱梁接合部。
【0014】
ここで、複数の鉄骨梁の「互いに高さ方向の位置が異なる」とは、複数の鉄骨梁の上端または下端の高さ、あるいは複数の鉄骨梁の梁せいが互いに異なることを意味するものとする。
[2] 前記複数の鉄骨梁のうち上段の鉄骨梁の下端が、下段の鉄骨梁の上端よりも高く、前記上段の鉄骨梁の下フランジと前記下段の鉄骨梁の上フランジとが繋ぎ板により接合され、前記繋ぎ板に孔が設けられている、[1]に記載の柱梁接合部。
[3] 前記孔は、前記鉄骨梁のウェブのうち前記鉄筋コンクリート柱に貫入する部分の隅角部に設けられ、孔径が30mm以上である、[1]または[2]に記載の柱梁接合部。
【0015】
ここで、隅角部とは、鉄骨梁のウェブのうち鉄筋コンクリート柱に貫入する部分の隅角から高さ方向および幅方向に150mm以内の領域を意味する。
[4] 前記孔は、前記鉄骨梁のウェブを正面から見たときに前記鉄筋コンクリート柱の主筋と重ならない位置に設けられ、孔径が60mm以上である、[1]または[2]に記載の柱梁接合部。
[5] 前記複数の鉄骨梁のうち最上段の鉄骨梁の上フランジと最下段の鉄骨梁の下フランジの間の高さの範囲で、前記鉄筋コンクリート柱の側面を、前記鉄骨梁のウェブの表面位置まで覆うように取り囲むふさぎ板が設けられ、該ふさぎ板に孔が設けられている、[1]または[2]に記載の柱梁接合部。
[6] 前記鉄骨梁の上フランジと下フランジの間の高さの範囲で、前記鉄筋コンクリート柱の側面を、前記鉄骨梁のウェブの表面位置まで覆うように取り囲むふさぎ板が設けられ、該ふさぎ板に孔が設けられている、[3]に記載の柱梁接合部。
[7] 前記鉄骨梁の上フランジと下フランジの間の高さの範囲で、前記鉄筋コンクリート柱の側面を、前記鉄骨梁のウェブの表面位置まで覆うように取り囲むふさぎ板が設けられ、該ふさぎ板に孔が設けられている、[4]に記載の柱梁接合部。
[8] 前記ふさぎ板に設けられる前記孔は、前記鉄骨梁のウェブを正面から見たときに前記鉄筋コンクリート柱の主筋と重ならない位置に設けられ、孔径が100~160mmであり、前記ふさぎ板には、該ふさぎ板に設けられる前記孔の周囲に、溶接しろが30mm以上設けられている、[5]に記載の柱梁接合部。
[9] 前記ふさぎ板に設けられる前記孔は、前記鉄骨梁のウェブを正面から見たときに前記鉄筋コンクリート柱の主筋と重ならない位置に設けられ、孔径が100~160mmであり、前記ふさぎ板には、該ふさぎ板に設けられる前記孔の周囲に、溶接しろが30mm以上設けられている、[6]に記載の柱梁接合部。
[10] 前記ふさぎ板に設けられる前記孔は、前記鉄骨梁のウェブを正面から見たときに前記鉄筋コンクリート柱の主筋と重ならない位置に設けられ、孔径が100~160mmであり、前記ふさぎ板には、該ふさぎ板に設けられる前記孔の周囲に、溶接しろが30mm以上設けられている、[7]に記載の柱梁接合部。
[11] [5]に記載の柱梁接合部の製作方法であって、前記鉄筋コンクリート柱の型枠に、コンクリート投入口とコンクリート流出口とを、前記鉄筋コンクリート柱のうち前記ふさぎ板が設けられる部分を挟むようにして設け、前記鉄筋コンクリート柱を横に寝かせ、前記コンクリート投入口の高さが前記コンクリート流出口の高さよりも高くなるように傾斜をつけた状態で、前記鉄筋コンクリート柱のコンクリートを打設する、柱梁接合部の製作方法。
[12] 前記傾斜の勾配を1/50~1/100とする、[11]に記載の柱梁接合部の製作方法。
[13] 前記鉄筋コンクリート柱のコンクリートの打設時に、前記鉄筋コンクリート柱に貫入する前記鉄骨梁のウェブにより上下に隔てられる空間のうち、前記ウェブよりも下方の空間にコンクリートが充填されていることを、前記ふさぎ板に設けられた前記孔から確認し、次いで、前記ふさぎ板に設けられた前記孔を塞ぎ、さらに、前記ウェブよりも上方の空間にコンクリートを打設する、[11]に記載の柱梁接合部の製作方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の柱梁接合部およびその製作方法によれば、複数の鉄骨梁が、互いの高さ方向の位置が異なるように、鉄筋コンクリート柱に貫入するようにして接合される柱梁接合部において、これをプレキャスト工法により製作するときに、コンクリートの内部に空隙が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1(a)および
図1(b)はそれぞれ、本発明の第一の実施形態に係る柱梁接合部を示す縦断面図、斜視図である。また、
図1(c)は、
図1(a)および
図1(b)に示す柱梁接合部の要部を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第一の実施形態に係る柱梁接合部の側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第一の実施形態に係る柱梁接合部の製作方法を示す側面図である。
【
図4】
図4(a)および
図4(b)はそれぞれ、本発明の第二の実施形態に係る柱梁接合部を示す縦断面図、斜視図である。
【
図5】
図5(a)および
図5(b)はそれぞれ、本発明の第三の実施形態に係る柱梁接合部を示す縦断面図、斜視図である。
【
図6】
図6(a)および
図6(b)はそれぞれ、本発明の第四の実施形態に係る柱梁接合部を示す縦断面図、斜視図である。
【
図7】
図7(a)および
図7(b)はそれぞれ、本発明の第五の実施形態に係る柱梁接合部を示す縦断面図、斜視図である。
【
図8】
図8(a)および
図8(b)はそれぞれ、本発明の第六の実施形態に係る柱梁接合部を示す縦断面図である。また、
図8(c)は、
図8(a)および
図8(b)に示す柱梁接合部の斜視図である。
【
図9】
図9は、RCS構造の鉄筋コンクリート柱のコンクリート打設を建設現場で行う状況を模式的に示す縦断面図である。
【
図10】
図10は、RCS構造の鉄筋コンクリート柱のコンクリート打設を建設現場で行う状況を模式的に示す斜視図である。
【
図11】
図11(a)、
図11(b)はそれぞれ、鉄筋コンクリート柱と複数の鉄骨梁との柱梁接合部をプレキャスト工法により構築する状況を模式的に示す端面図、側面図である。
【
図12】
図12は、鉄筋コンクリート柱と2以上の鉄骨梁との柱梁接合部をプレキャスト工法により構築する状況を模式的に示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の柱梁接合部およびその製作方法の実施形態について、具体的に説明する。
(第一の実施形態)
図1(a)および
図1(b)に、本発明の第一の実施形態に係る柱梁接合部1Aの縦断面図、斜視図を示す。また、
図1(c)に、本発明の第一の実施形態に係る柱梁接合部1Aの要部の斜視図を示す。さらに、
図2に、第一の実施形態に係る柱梁接合部1Aの側面図を示す。
【0019】
図1(a)~
図1(c)に示すように、第一の実施形態の柱梁接合部1Aは、鉄筋コンクリート柱2に、H形鋼からなる四本の鉄骨梁3A、3C、3D、4が貫入するようにして接合される柱梁接合部である。四本の鉄骨梁3A、3C、3D、4は、互いの高さ方向の位置が異なるように鉄筋コンクリート柱2に接合されている。具体的には、鉄骨梁3A、3C、3Dの上端の高さと、鉄骨梁4の上端の高さとが異なっており、上段の三本の鉄骨梁3A、3C、3Dの下端は、下段の鉄骨梁4の上端よりも高い。すなわち、上段の鉄骨梁3A、3C、3Dのうち主方向の鉄骨梁3Aの梁せい:
BD
1(mm)、下段の鉄骨梁4の梁せい:
BD
2(mm)、上段の鉄骨梁3Aと下段の鉄骨梁4の中心間距離:
BH(mm)とすると、鉄骨梁3A、4の段差率2
BH/(
BD
1+
BD
2)>1である。
【0020】
そして、上段の三本の鉄骨梁3A、3C、3Dのうちの一本の鉄骨梁3Aの下フランジ33と、下段の鉄骨梁4の上フランジ42とが、繋ぎ板6により接合されている。繋ぎ板6は、この繋ぎ板6により接合される上段の鉄骨梁3Aおよび下段の鉄骨梁4のウェブ31、41と同一面内に配置されている。
【0021】
図1(b)および
図1(c)に示すように、直交方向において鉄筋コンクリート柱2の両側に接合される二本の鉄骨梁3C、3Dは、実際には、鉄筋コンクリート柱2を貫通するように配置された一本のH形鋼から構成されている。そして、主方向に配置される鉄骨梁3A、4のうち上段の鉄骨梁3Aが、直交方向の二本の鉄骨梁3C、3Dを構成するH形鋼を貫通するように配置され、このH形鋼の両側に溶接されている。
【0022】
また、
図1(a)および
図1(c)に示すように、主方向に配置される鉄骨梁3A、4のうち下段の鉄骨梁4が鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分の両側には、後述するふさぎ板24を保持するための定着部44が、下段の鉄骨梁4を構成するH形鋼を貫通するように配置され、このH形鋼の両側、および鉄骨梁3C、3Dのウェブと同一面内に配置される繋ぎ板6(後述する)に溶接されている。定着部44は、鉄骨梁4と同じ梁せいを有するH形鋼から構成されている。
【0023】
そして、上段の三本の鉄骨梁3A、3C、3Dのうち直交方向に配置される二本の鉄骨梁3C、3Dの下フランジ33と、定着部44を構成するH形鋼の上フランジとが、繋ぎ板6により接合されている。繋ぎ板6は、この繋ぎ板6により接合される鉄骨梁3C、3Dのウェブ33および定着部44を構成する鉄骨梁のウェブと同一面内に配置されている。
【0024】
図1(b)に示すように、第一の実施形態の柱梁接合部1Aでは、柱梁接合部1Aの上下の鉄筋コンクリート柱2から連続的に柱梁接合部1A内に打設されたコンクリート(図示せず)を取り囲むように、鋼板からなるふさぎ板24が設けられている。具体的には、ふさぎ板24は、四本の鉄骨梁3A、3C、3D、4のうち上段の鉄骨梁3A、3C、3Dの上フランジ32と下段の鉄骨梁4の下フランジ43の間の高さの範囲で、鉄筋コンクリート柱2の側面を、鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41の表面位置まで完全に覆うように設けられている。ふさぎ板24の側縁は、鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41、上フランジ32、42、および下フランジ33、43に溶接により固定されている。
【0025】
また、
図1(a)に示すように、第一の実施形態の柱梁接合部1Aでは、鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分に、孔31a、41aが設けられている。また、上段の三本の鉄骨梁3A、3C、3Dのうちの一つの鉄骨梁3Aと下段の鉄骨梁4とを接合する繋ぎ板6に、孔6bが設けられている。
【0026】
鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41に設けられる孔31a、41aは、鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分の隅角部に設けられ、その孔径は30mm以上である。ここで、隅角部とは、鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分の隅角から高さ方向および幅方向に150mm以内の領域を意味する。
【0027】
第一の実施形態の柱梁接合部1Aをプレキャスト工法で製作する場合には、
図11(a)および
図11(b)に示すように、鉄筋コンクリート柱2を横に寝かせた状態でコンクリート23を打設する。このとき、
図12に示すように、鉄筋コンクリート柱2のうち鉄骨梁3A、3C、3D、4が貫入する部分は、鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41および繋ぎ板6により、上下に隔てられる。このため、鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41および繋ぎ板6よりも下方の空間に充填されるコンクリート23の内部に気泡23aが残留しやすい。第一の実施形態の柱梁接合部1Aでは、特に気泡23aが残留しやすい部位である、鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分の隅角部に、空気孔として機能する孔を31a、41aが設けられている。
【0028】
また、繋ぎ板6に設けられる孔6bは、鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41を正面から見たときに鉄筋コンクリート柱2の主筋21と重ならない位置に設けられ、その孔径は60mm以上である。繋ぎ板6に作用するせん断力は、鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41に作用するせん断力よりも小さいため、繋ぎ板6に設ける孔6bの孔径を、鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41に設けられる孔31a、41aの孔径よりも大きくすることができる。
【0029】
第一の実施形態の柱梁接合部1Aをプレキャスト工法で製作する場合には、上述のとおり、繋ぎ板6よりも下方の空間に充填されるコンクリート23の内部に気泡23aが残留しやすい。そこで、第一の実施形態の柱梁接合部1Aでは、鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分の隅角部に孔31a、41aが設けられるともに、繋ぎ板6にも孔6bが設けられている。
【0030】
さらに、
図1(b)および
図2に示すように、第一の実施形態の柱梁接合部1Aでは、ふさぎ板24に孔24aが設けられている(
図1(b)では、ふさぎ板24に設けられる孔24aのうち一部のみを図示している)。ふさぎ板24に設けられる孔24aは、鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41を正面から見たときに鉄筋コンクリート柱2の主筋21と重ならない位置に設けられ、その孔径は100~160mmである。ふさぎ板24には、ふさぎ板24に設けられる孔24aの周囲に、溶接しろが30mm以上設けられている。
【0031】
第一の実施形態の柱梁接合部1Aをプレキャスト工法で製作する場合には、鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41および繋ぎ板6よりも下方の空間に充填されるコンクリート23の内部に気泡23aが残留していないことを、ふさぎ板24に設けられる孔24aから確認できる。
【0032】
また、第一の実施形態の柱梁接合部1Aでは、
図2に示すように、ふさぎ板24に設けられる孔24aの位置は、繋ぎ板6に設けられる孔6bの位置と合わせることが好ましい。このようにすると、ふさぎ板24に設けられる孔24a、および繋ぎ板6に設けられる孔6bに、コンクリート充填用のバイブレータを挿入でき、コンクリート23の内部に気泡23aが残留して空隙が発生することを、より確実に抑制できる。
【0033】
第一の実施形態の柱梁接合部1Aは、鉄骨梁3A、3B、4の段差率2BH/(BD1+BD2)≦1.25である場合に適用することが好ましい。
【0034】
また、第一の実施形態の柱梁接合部1Aは、主方向の鉄骨梁3A、4の梁せい比BD2/BD1(BD1≧BD2)が0.5~1.0の範囲内である場合に適用することが好ましい。また、上段の鉄骨梁3A、3C、3Dのうち直交方向の鉄骨梁3C、3Dの梁せい:BD3(mm)とすると、主方向の鉄骨梁3Aと直交方向の鉄骨梁3C、3Dの梁せい比BD3/BD1が0.5~1.0の範囲内である場合に適用することが好ましい。
【0035】
図3に、本発明の一実施形態に係る柱梁接合部の製作方法の側面図を示す。
【0036】
第一の実施形態の柱梁接合部の製作方法は、上述の柱梁接合部1Aをプレキャスト工法により製作する方法である。具体的には、
図3に示すように、鉄筋コンクリート柱2の型枠8に、コンクリート投入口8aとコンクリート流出口8bとを、鉄筋コンクリート柱2のうちふさぎ板24が設けられる部分を挟むようにして設ける。そして、
図11(a)および
図11(b)に示すように、鉄筋コンクリート柱2を、架台9上に横に寝かせる。架台9は、コンクリート投入口8aの高さがコンクリート流出口8bの高さよりも高くなるように、鉄筋コンクリート柱2に傾斜をつけるように構成されている。架台9による鉄筋コンクリート柱2の傾斜は、1/50~1/100とすることが好ましい。
図3に示す例では、架台9による鉄筋コンクリート柱2の傾斜を、1/70としている。この状態で、鉄筋コンクリート柱2のコンクリート23を打設する。このように、コンクリート投入口8aの高さがコンクリート流出口8bの高さよりも高くなるように傾斜をつけて、コンクリート23の打設を行うと、コンクリート23の重量により、柱梁接合部1Aの内部へのコンクリート23の充填が促進され、コンクリート23の内部に空隙が発生することを抑制できる。
【0037】
鉄筋コンクリート柱2のコンクリート23の打設時には、まず、鉄筋コンクリート柱2に貫入する鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41および繋ぎ板6により上下に隔てられる空間のうち、ウェブ31、41および繋ぎ板6よりも下方の空間にコンクリート23を充填する。そして、ウェブ31、41および繋ぎ板6よりも下方の空間にコンクリート23が十分に充填されていることを、ふさぎ板24に設けられた孔24aから確認する。
【0038】
ウェブ31、41および繋ぎ板6よりも下方の空間へのコンクリート23の充填が不十分であった場合には、必要に応じて、ふさぎ板24に設けられた孔24aおよび繋ぎ板6に設けられた孔6bにバイブレータ(図示せず)を挿入して、コンクリート23の充填を促進させ、コンクリート23の上面を均して、完全に硬化させる。
【0039】
次いで、
図3に示すように、ふさぎ板24に設けられた孔24aに、仮閉塞板(図示せず)を重ねて一時的に閉塞し、ウェブ31、41および繋ぎ板6よりも下方の空間にコンクリート23を完全に充填させる。さらに、ウェブ31、41および繋ぎ板6よりも上方の空間にコンクリート23を打設する。そして、ウェブ31、41および繋ぎ板6よりも下方および上方の空間に充填されたコンクリート23が十分に硬化した後、ふさぎ板24に設けられた孔24aから仮閉塞板を取り外し、これに代えて、ふさぎ板24に設けられた孔24aに、閉塞板(図示せず)を重ねて溶接して閉塞する。閉塞板の幅および高さはそれぞれ、ふさぎ板24に設けられた孔24aの幅および高さよりも20mm程度大きくすることが好ましい。例えば、ふさぎ板24に設けられた孔24aの幅および高さが150mmである場合には、閉塞板の幅および高さは170mm程度に設定することが好ましい。上述のとおり、ふさぎ板24には、ふさぎ板24に設けられる孔24aの周囲に、溶接しろが30mm以上設けられており、この溶接しろを用いて、閉塞板の外周をふさぎ板24に隅肉溶接する。
【0040】
このように、ウェブ31、41および繋ぎ板6よりも下方の空間にコンクリート23が十分に充填されていることを確認してから、ウェブ31、41および繋ぎ板6よりも上方の空間にコンクリート23を充填することで、コンクリート23の内部に空隙が発生することを抑制できる。
(第二の実施形態)
図4(a)および
図4(b)に、本発明の第二の実施形態に係る柱梁接合部1Bの縦断面図、斜視図を示す。
【0041】
図4(a)および
図4(b)に示すように、第二の実施形態の柱梁接合部1Bは、鉄筋コンクリート柱2に、H形鋼からなる四本の鉄骨梁3A、3C、3D、4が貫入するようにして接合される柱梁接合部である。四本の鉄骨梁3A、3C、3D、4は、互いの高さ方向の位置が異なるように鉄筋コンクリート柱2に接合されている。具体的には、鉄骨梁3A、3C、3Dの上端の高さと、鉄骨梁4の上端の高さとが異なっており、上段の三本の鉄骨梁3A、3C、3Dの下端は、下段の鉄骨梁4の上端よりも低い。すなわち、上段の鉄骨梁3A、3C、3Dのうち主方向の鉄骨梁3Aの梁せい:
BD
1(mm)、下段の鉄骨梁4の梁せい:
BD
2(mm)、上段の鉄骨梁3Aと下段の鉄骨梁4の中心間距離:
BH(mm)とすると、鉄骨梁3A、4の段差率2
BH/(
BD
1+
BD
2)<1である。
【0042】
図4(b)に示すように、直交方向において鉄筋コンクリート柱2の両側に接合される二本の鉄骨梁3C、3Dは、実際には、鉄筋コンクリート柱2を貫通するように配置された一本のH形鋼から構成されている。そして、主方向に配置される鉄骨梁3A、4のうち上段の鉄骨梁3Aが、直交方向の二本の鉄骨梁3C、3Dを構成するH形鋼を貫通するように配置され、このH形鋼の両側に溶接されている。
【0043】
また、
図4(a)に示すように、主方向に配置される鉄骨梁3A、4のうち下段の鉄骨梁4が鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分の両側には、ふさぎ板24を保持するための定着部44が、下段の鉄骨梁4を構成するH形鋼を貫通するように配置され、このH形鋼の両側に溶接されている。定着部44は、上段の鉄骨梁3Aの下端と下段の鉄骨梁4の下端との高さの差に等しい梁せいを有するH形鋼から構成されている。
【0044】
図4(a)に示すように、第二の実施形態の柱梁接合部1Bでは、鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分に、孔31a、41aが設けられている。
【0045】
鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41に設けられる孔31a、31b、41aのうち、孔31a、41aは、鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分の隅角部に設けられ、その孔径は30mm以上である。
【0046】
その他の点については、第二の実施形態の柱梁接合部1Bは、第一の実施形態の柱梁接合部1Aと同様に構成されている。
【0047】
第二の実施形態の柱梁接合部1Bによれば、第一の実施形態の柱梁接合部1Aと同様の効果が得られる。
(第三の実施形態)
図5(a)および
図5(b)に、本発明の第三の実施形態に係る柱梁接合部1Cの縦断面図、斜視図を示す。
【0048】
図5(a)および
図5(b)に示すように、第三の実施形態の柱梁接合部1Cは、鉄筋コンクリート柱2に、H形鋼からなる四本の鉄骨梁3A、3C、3D、4が貫入するようにして接合される柱梁接合部である。四本の鉄骨梁3A、3C、3D、4は、互いの高さ方向の位置が異なるように鉄筋コンクリート柱2に接合されている。具体的には、鉄骨梁3A、3C、3Dの上端の高さと、鉄骨梁4の上端の高さとが異なっており、上段の三本の鉄骨梁3A、3C、3Dの下フランジ33が、下段の鉄骨梁4の上フランジ42と同じ高さである。すなわち、上段の鉄骨梁3A、3C、3Dのうち主方向の鉄骨梁3Aの梁せい:
BD
1(mm)、下段の鉄骨梁4の梁せい:
BD
2(mm)、上段の鉄骨梁3Aと下段の鉄骨梁4の中心間距離:
BH(mm)とすると、鉄骨梁3A、4の段差率2
BH/(
BD
1+
BD
2)=1である。
【0049】
図5(b)に示すように、直交方向において鉄筋コンクリート柱2の両側に接合される二本の鉄骨梁3C、3Dは、実際には、鉄筋コンクリート柱2を貫通するように配置された一本のH形鋼から構成されている。そして、主方向に配置される鉄骨梁3A、4のうち上段の鉄骨梁3Aが、直交方向の二本の鉄骨梁3C、3Dを構成するH形鋼を貫通するように配置され、このH形鋼の両側に溶接されている。
【0050】
また、
図5(a)に示すように、主方向に配置される鉄骨梁3A、4のうち下段の鉄骨梁4が鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分の両側には、ふさぎ板24を保持するための定着部44が、下段の鉄骨梁4を構成するH形鋼を貫通するように配置され、このH形鋼の両側に溶接されている。定着部44は、鉄骨梁4と同じ梁せいを有するH形鋼から構成されている。
【0051】
図5(a)に示すように、第三の実施形態の柱梁接合部1Cでは、鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分に、孔31a、41aが設けられている。
【0052】
鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41に設けられる孔31a、41aは、鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分の隅角部に設けられ、その孔径は30mm以上である。
【0053】
その他の点については、第三の実施形態の柱梁接合部1Cは、第一の実施形態の柱梁接合部1Aと同様に構成されている。
【0054】
第三の実施形態の柱梁接合部1Cでは、鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41に設けられる孔31a、41aの孔径は30mm以上であり、コンクリート充填用のバイブレータを挿入するために用いることができない。この点を除けば、第三の実施形態の柱梁接合部1Cでは、第一の実施形態の柱梁接合部1Aと同様の効果が得られる。
(第四の実施形態)
図6(a)および
図6(b)に、本発明の第四の実施形態に係る柱梁接合部1Dの縦断面図、斜視図を示す。
【0055】
図6(a)および
図6(b)に示すように、第四の実施形態の柱梁接合部1Dは、鉄筋コンクリート柱2に、H形鋼からなる四本の鉄骨梁3B~3D、5Aが貫入するようにして接合される柱梁接合部である。四本の鉄骨梁3B~3D、5Aは、互いの高さ方向の位置が異なるように鉄筋コンクリート柱2に接合されている。具体的には、鉄骨梁5Aの梁せいは、鉄骨梁3B~3Dの梁せいよりも小さく、主方向では鉄骨梁3B、5Aが鉄筋コンクリート柱2に接合され、直交方向では二本の鉄骨梁3C、3Dが鉄筋コンクリート柱2に接合されている。鉄骨梁3B~3D、5Aの上端の高さは互いに等しく、鉄骨梁3B~3Dの下端は、鉄骨梁5Aの下端よりも低い。すなわち、主方向の鉄骨梁3Bの梁せい:
BD
1(mm)、鉄骨梁5Aの梁せい:
BD
2(mm)とすると、
BD
1>
BD
2である。
【0056】
図6(b)に示すように、直交方向において鉄筋コンクリート柱2の両側に接合される二本の鉄骨梁3C、3Dは、実際には、鉄筋コンクリート柱2を貫通するように配置された一本のH形鋼から構成されている。そして、主方向に配置される鉄骨梁3B、5Aが、直交方向の二本の鉄骨梁3C、3Dを構成するH形鋼の両側に溶接されている。
【0057】
図6(a)に示すように、第四の実施形態の柱梁接合部1Dでは、鉄骨梁3B~3D、5Aのウェブ31、51のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分に、孔31aが設けられている。
【0058】
鉄骨梁3B~3D、5Aのウェブ31、51に設けられる孔31a、31bのうち、孔31aは、鉄骨梁3B~3D、5Aのウェブ31、51のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分の隅角部に設けられ、その孔径は30mm以上である。
【0059】
その他の点については、第四の実施形態の柱梁接合部1Dは、第一の実施形態の柱梁接合部1Aと同様に構成されている。
【0060】
第四の実施形態の柱梁接合部1Dによれば、第一の実施形態の柱梁接合部1A、第二の実施形態の柱梁接合部1Bと同様の効果が得られる。
(第五の実施形態)
図7(a)および
図7(b)に、本発明の第五の実施形態に係る柱梁接合部1Eの縦断面図、斜視図を示す。
【0061】
図7(a)および
図7(b)に示すように、第五の実施形態の柱梁接合部1Eは、鉄筋コンクリート柱2に、H形鋼からなる四本の鉄骨梁3A、3B、5C、5Dが貫入するようにして接合される柱梁接合部である。四本の鉄骨梁3A、3B、5C、5Dは、互いの高さ方向の位置が異なるように鉄筋コンクリート柱2に接合されている。具体的には、鉄骨梁5C、5Dの梁せいは、鉄骨梁3A、3Bの梁せいよりも小さく、主方向では二本の鉄骨梁3A、3Bが鉄筋コンクリート柱2に接合され、直交方向では二本の鉄骨梁5が鉄筋コンクリート柱2に接合されている。鉄骨梁3A、3B、5C、5Dの上端の高さは互いに等しく、鉄骨梁3A、3Bの下端は、鉄骨梁5C、5Dの下端よりも低い。すなわち、主方向の鉄骨梁3A、3Bの梁せい:
BD
1(mm)、直交方向の鉄骨梁5C、5Dの梁せい:
BD
3(mm)とすると、
BD
1>
BD
3である。
【0062】
図7(b)に示すように、直交方向において鉄筋コンクリート柱2の両側に接合される二本の鉄骨梁5C、5Dは、実際には、鉄筋コンクリート柱2を貫通するように配置された一本のH形鋼から構成されている。そして、主方向に配置される鉄骨梁3A、3Bが、二本の鉄骨梁5C、5Dを構成するH形鋼の両側に溶接されている。
【0063】
また、
図7(a)に示すように、主方向に配置される鉄骨梁3A、3Bのうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分の両側には、ふさぎ板24を保持するための定着部34が、主方向の鉄骨梁3A、3Bを構成するH形鋼を貫通するように配置され、このH形鋼の両側および直交方向の鉄骨梁5C、5Dの下フランジ53に溶接されている。定着部34は、主方向の鉄骨梁3A、3Bの梁せいと直交方向の鉄骨梁5C、5Dの梁せいとの差の高さを有する鋼板から構成されている。
【0064】
図7(a)に示すように、第五の実施形態の柱梁接合部1Eでは、鉄骨梁3A、3B、5C、5Dのウェブ31、51のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分に、孔31aが設けられている。
【0065】
鉄骨梁3A、3Bのウェブ31に設けられる孔31a、および鉄骨梁5C、5Dのウェブ51に設けられる孔(図示せず)は、鉄骨梁3A、3B、5C、5Dのウェブ31、51のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分の隅角部に設けられ、その孔径は30mm以上である。
【0066】
その他の点については、第五の実施形態の柱梁接合部1Eは、第一の実施形態の柱梁接合部1Aと同様に構成されている。
【0067】
第五の実施形態の柱梁接合部1Eによれば、第三の実施形態の柱梁接合部1Cと同様の効果が得られる。
(第六の実施形態)
図8(a)および
図8(b)に、本発明の第六の実施形態に係る柱梁接合部1Fの縦断面図を示す。また、
図8(c)に、本発明の第六の実施形態に係る柱梁接合部1Fの斜視図を示す。
【0068】
図8(a)~
図8(c)に示すように、第六の実施形態の柱梁接合部1Fは、鉄筋コンクリート柱2に、H形鋼からなる五本の鉄骨梁3A、4、5A、5C、5Dが貫入するようにして接合される柱梁接合部である。五本の鉄骨梁3A、4、5A、5C、5Dは、互いの高さ方向の位置が異なるように鉄筋コンクリート柱2に接合されている。主方向では、鉄筋コンクリート柱2の一方の側面に鉄骨梁3A、5Aが上下に並ぶようにして接合され、鉄筋コンクリート柱2の他方の側面に鉄骨梁4が接合されている。直交方向では、二本の鉄骨梁5C、5Dが鉄筋コンクリート柱2に接合されている。鉄骨梁3A、4の梁せいは互いに等しく、鉄骨梁5Aの梁せいは鉄骨梁3A、4の梁せいよりも小さい。鉄骨梁5C、5Dの梁せいは、鉄骨梁3A、4の梁せいよりも小さく、鉄骨梁5Aの梁せいよりも大きい。
【0069】
また、鉄骨梁3Aの上端の高さと、鉄骨梁4、5A、5C、5Dの上端の高さとが異なっており、上段の鉄骨梁3Aの下端は、下段の鉄骨梁4、5A、5C、5Dの上端よりも高い。すなわち、主方向に配置される鉄骨梁3A、4、5Aのうち上段の鉄骨梁3Aの梁せい:BD1(mm)、下段の鉄骨梁4の梁せい:BD2(mm)、上段の鉄骨梁3Aと下段の鉄骨梁4の中心間距離:BH(mm)とすると、鉄骨梁3A、4の段差率2BH/(BD1+BD2)>1である。
【0070】
そして、主方向に配置される鉄骨梁3A、4、5Aのうち上段の鉄骨梁3Aの下フランジ33と、下段の鉄骨梁4の上フランジ42とが、繋ぎ板6により接合されている。繋ぎ板6は、この繋ぎ板6により接合される上段の鉄骨梁3Aおよび下段の鉄骨梁4のウェブ31、41と同一面内に配置されている。
【0071】
図8(a)~
図8(c)に示すように、直交方向において鉄筋コンクリート柱2の両側に接合される二本の鉄骨梁5C、5Dは、主方向に配置される鉄骨梁3A、4、5Aのうち下段の鉄骨梁4が鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分の両側に接合されている。具体的には、直交方向に配置される二本の鉄骨梁5C、5Dが、主方向に配置される鉄骨梁4を貫通するように配置され、鉄骨梁4の両側に溶接されている。
【0072】
また、
図8(a)~
図8(c)に示すように、主方向に配置される鉄骨梁3A、4のうち上段の鉄骨梁3Aが鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分の両側には、ふさぎ板24を保持するための定着部34が、鉄骨梁3Aを貫通するように配置され、鉄骨梁3Aの両側に溶接されている。定着部34は、鉄骨梁3Aと同じ梁せいを有するH形鋼から構成されている。
【0073】
そして、定着部34を構成するH形鋼の下フランジと、直交方向に配置される鉄骨梁5C、5Dの上フランジ52とが、繋ぎ板6により接合されている。繋ぎ板6は、この繋ぎ板6により接合される定着部34を構成するH形鋼のウェブ、および鉄骨梁5C、5Dのウェブ51と同一面内に配置されている。
【0074】
さらに、
図8(a)に示すように、主方向に配置される鉄骨梁3A、4、5Aのうち下段の鉄骨梁4が鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分の両側のうち、直交方向の鉄骨梁5C、5Dよりも下側の位置には、ふさぎ板24を保持するための定着部45が、鉄骨梁4を貫通するように配置され、鉄骨梁4の両側および直交方向の鉄骨梁5C、5Dの下フランジ53に溶接されている。定着部45は、主方向の鉄骨梁4の梁せいと直交方向の鉄骨梁5C、5Dの梁せいとの差の高さを有する鋼板から構成されている。
【0075】
図8(a)および
図8(b)に示すように、第六の実施形態の柱梁接合部1Fでは、鉄骨梁3A、4のウェブ31、41のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分、定着部34を構成するH形鋼のウェブ、および定着部45を構成する鋼板に、孔31a、41aが設けられている。また、主方向に配置される上段の鉄骨梁3Aと下段の鉄骨梁4とを接合する繋ぎ板6と、定着部34を構成するH形鋼と直交方向に配置される下段の鉄骨梁5C、5Dとを接合する繋ぎ板6とに、孔6bが設けられている。
【0076】
鉄骨梁3A、4のウェブ31、41に設けられる孔31a、41aは、鉄骨梁3A、4のウェブ31、41のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分の隅角部に設けられ、その孔径は30mm以上である。また、繋ぎ板6に設けられる孔6bは、鉄骨梁3A、4、5C、5Dのウェブ31、41、51をそれぞれ正面から見たときに鉄筋コンクリート柱2の主筋21と重ならない位置に設けられ、その孔径は60mm以上である。
【0077】
その他の点については、第六の実施形態の柱梁接合部1Fは、第一の実施形態の柱梁接合部1Aと同様に構成されている。
【0078】
第六の実施形態の柱梁接合部1Fでは、第一の実施形態の柱梁接合部1Aと同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0079】
1A~1F 柱梁接合部
2 鉄筋コンクリート柱
21 主筋
22 帯筋
23 コンクリート
23a 気泡
24 ふさぎ板
24a 孔
3A~3D、4、5A、5C、5D 鉄骨梁
31、41、51 ウェブ
31a 孔
32、42、52 上フランジ
33、43、53 下フランジ
34、44、45 定着部
6 繋ぎ板
6b 孔
8 型枠
8a コンクリート投入口
8b コンクリート流出口
9 架台
【要約】 (修正有)
【課題】複数の鉄骨梁が、互いの高さ方向の位置が異なるように鉄筋コンクリート柱に接合される柱梁接合部において、コンクリートの内部に空隙が発生することを抑制する柱梁接合部および製作方法を提供する。
【解決手段】鉄筋コンクリート柱に複数の鉄骨梁が貫入するようにして接合される柱梁接合部の製作方法であって、複数の鉄骨梁は、互いの高さ方向の位置が異なるように鉄筋コンクリート柱に接合され、鉄骨梁のウェブのうち鉄筋コンクリート柱に貫入する部分に孔が設けられ、孔にバイブレータを挿入して、鉄筋コンクリート柱に貫入する鉄骨梁のウェブにより上下に隔てられる空間のうち、ウェブよりも下方の空間に充填されるコンクリートの内部に残留する気泡を、鉄骨梁の前記ウェブのうち鉄筋コンクリート柱に貫入する部分に設けられた孔から排出し充填を促進させる柱梁接合部の製作方法。
【選択図】
図1