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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】はさみ
(51)【国際特許分類】
   B26B 13/28 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B26B13/28 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024188362
(22)【出願日】2024-10-25
【審査請求日】2024-10-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500119444
【氏名又は名称】株式会社近正
(74)【代理人】
【識別番号】100194456
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 勇
(72)【発明者】
【氏名】和田祥一
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開平1-308583(JP,A)
【文献】特許第6425365(JP,B1)
【文献】国際公開第2015/183163(WO,A1)
【文献】特開2020-44314(JP,A)
【文献】特開2011-125591(JP,A)
【文献】登録実用新案第3013742(JP,U)
【文献】特開平10-33849(JP,A)
【文献】実開平5-63467(JP,U)
【文献】特開平10-249071(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103097089(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 13/00-17/02
B25B 7/06
A01G 3/02,501
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃部及び当該刃部の基端側に軸穴をそれぞれ有する2枚の薄板材を、前記軸穴を通る軸で枢支して構成されたはさみにおいて、
前記2枚の薄板材の内の1枚の薄板材に正多角形の軸穴が開口されており、
前記軸は、一端は、前記正多角形の軸穴が設けられていない側の薄板材の軸穴に留められており、他端には頭部が設けられており、軸本体は、前記正多角形の軸穴の各辺に回転可能な状態で内接又は間隙を持って内接する円柱形状を有しており、
前記頭部は、中心から前記正多角形の軸穴の各角に向かって放射状に突出している、角の数の棒状部を有しており、前記棒状部の幅は、軸本体の外周を前記正多角形の角の数で等分した点の内、周上で隣り合う点同士の距離より小さく、かつ、前記棒状部の1以上は、他の棒状部と長さおよび幅の内の一方又は両方が異なる値とされており、
前記正多角形の軸穴には、2枚の薄板材の刃部が予め定めた開状態にあるときに、前記頭部を通過可能とする前記頭部と相似形の放射状の切り欠きが設けられており、
更に前記切り欠きは、前記正多角形の軸穴の各辺の中点で円柱形状の軸本体が位置決め支持されるように、各辺の中点を除く部分を始端として、放射状に切欠いた形状を有している、ことを特徴とするはさみ。
【請求項2】
請求項1に記載のはさみにおいて、
前記2枚の薄板材の内の1枚の薄板材には、正4角形の軸穴が開口されており、
前記軸の頭部には、軸本体の半径長さに2の平方根を掛け合わせた長さよりも短い幅の4つの棒状部を備えた形状を有しており、かつ、前記棒状部の1以上は、他の棒状部と長さおよび幅の内の一方又は両方が異なる値とされており、
前記軸穴の切り欠きは、前記軸穴の正4角形の各辺の中点で円柱形状の軸本体が位置決め支持されるように、各辺の中点を除く部分を始端として、放射状に切欠いた形状を有している、ことを特徴とするはさみ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のはさみにおいて、2枚の薄板材の軸近傍の向かい合う部分に凹部と、当該凹部に通じ、刃部へと伸びている溝と、を備えていることを特徴とするはさみ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上刃と下刃とを分解可能なはさみに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上刃と下刃とを分離できるはさみが知られている(特許文献1を参照)。はさみは、当該はさみを開閉動作させるため、下刃に設けられている軸の頭部を上方視"-"マイナス状、即ち、小判型に加工し、更に、上刃に設けられている軸穴に、前記小判型の頭部が通過する切り欠きを設け、上刃と下刃とが定めた開度になった時に、取り外せるようになっている。
【0003】
ところで、本願出願人は、特許文献2に示すように、上刃に設けられている軸穴を多角形にして、軸本体の円柱部分との間に通路を確保し、樹液ヤニ等が付着しても洗浄し易い構造の発明を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平01-308583号
【文献】特許第6425365号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記上刃に設ける軸穴が多角形の場合、円柱形状の軸本体は、多角形の各辺の中点の部分で、位置決め支持される。なお、本発明は、はさみに関するもので、「位置決め支持」の語は、軸本体を上刃と下刃とを開閉可能な状態で支持する、即ち軽い力で当接、又は、僅かに間隙のある状態で支持することを意味する。
【0006】
当該構造のはさみに、前記従来の技術を適用し、軸の頭部を上方視"-"マイナス状、即ち、小判型に加工すると共に、上刃の多角形の軸穴に、この小判型の頭部が通過する相似形の切り欠きを加えると、軸本体の円柱部分を支えている多角形の各辺の中点の部分が多く除去される。この結果、はさみを使用中に、軸穴の中で軸本体がずれ動くおそれがある、という課題が生じる(図7、8の本発明との比較図を参照)。
【0007】
本発明は、この課題を解決するもので、多角形の軸穴と円柱状の軸本体との間に通路を確保しつつ、軸本体のずれ動きのおそれを抑えた、上刃と下刃とを分解可能なはさみを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、刃部及び当該刃部の基端側に軸穴をそれぞれ有する2枚の薄板材を、前記軸穴を通る軸で枢支して構成されたはさみにおいて、前記2枚の薄板材の内の1枚の薄板材に正多角形の軸穴が開口されており、前記軸は、一端は、前記正多角形の軸穴が設けられていない側の薄板材の軸穴に留められており、他端には頭部が設けられており、軸本体は、前記正多角形の軸穴の各辺に回転可能な状態で内接又は間隙を持って内接する円柱形状を有しており、前記頭部は、中心から前記正多角形の軸穴の各角に向かって放射状に突出している、角の数の棒状部を有しており、前記棒状部の幅は、軸本体の外周を前記正多角形の角の数で等分した点の内、周上で隣り合う点同士の距離より小さく、かつ、前記棒状部の1以上は、他の棒状部と長さおよび幅の内の一方又は両方が異なる値とされており、前記正多角形の軸穴には、2枚の薄板材の刃部が予め定めた開状態にあるときに、前記頭部を通過可能とする前記頭部と相似形の放射状の切り欠きが設けられており、更に前記切り欠きは、前記正多角形の軸穴の各辺の中点で円柱形状の軸本体が位置決め支持されるように、各辺の中点を除く部分を始端として、放射状に切欠いた形状を有している、ことを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記2枚の薄板材の内の1枚の薄板材には、正4角形の軸穴が開口されており、前記軸の頭部には、軸本体の半径長さに2の平方根を掛け合わせた長さよりも短い幅の4つの棒状部を備えた形状を有しており、かつ、前記棒状部の1以上は、他の棒状部と長さおよび幅の内の一方又は両方が異なる値とされており、前記軸穴の切り欠きは、前記軸穴の正4角形の各辺の中点で円柱形状の軸本体が位置決め支持されるように、各辺の中点を除く部分を始端として、放射状に切欠いた形状を有している、ことを特徴とする。
【0010】
好ましくは、2枚の薄板材の軸近傍の向かい合う部分に凹部と、当該凹部に通じ、刃部へと伸びている溝と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上刃と下刃とを分解可能なはさみは、上刃の多角形の孔と円柱状の軸本体の間に通路を確保しつつ、使用時の軸のずれ動きのおそれを抑え、安定して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態に係る鋏の正面図。
図2】はさみを分解する開度にまで開いた状態を示す図。
図3】(a)はさみの下刃の部分の斜視図で(b)はその裏側から見た斜視図。
図4】(a)はさみの上刃の部分の斜視図で(b)はその裏側から見た斜視図。
図5】(a)は下刃に取り付けられている軸の頭部を示し(b)は上刃の軸穴を示す。
図6】切り欠きから軸本体が露出されており、樹液ヤニ等の除去が容易であることを示す図。
図7】軸穴3bが3角形~5角形の場合、(a)(c)(e)は本発明にかかる軸の頭部を用いいた場合と、(b)(d)(f)は軸の頭部に従来技術を用いた場合との比較図である。
図8】軸穴3bが6角形、7角形の場合、(a)(c)は本発明にかかる軸の頭部を用いいた場合と、(b)(d)は軸の頭部に従来技術を用いた場合との比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のはさみは、多角形の軸穴を有し、円柱状の本体を有する軸との間に通路を確保した構成を有するはさみにおいて、その通路及び軸の安定性を損なうことなく、上刃部と下刃部とを分離可能にした構成を有する。
軸の頭部は、中心から前記軸穴の正多角形の各角に向かって放射状に突出、即ち、360度を角の数で割った角度毎に突出している、角の数の棒状部を有しており、前記棒状部の幅は、軸棒の外周を前記正多角形の角の数で等分した点の内、外周上で隣り合う点同士の距離より小さく、かつ、前記棒状部の1以上は、他の棒状部と長さおよび幅の内の一方又は両方が異なる値とされている。そして、正多角形の軸穴には、2枚の薄板材の刃部が予め定めた開状態にあるときに、前記頭部を通過可能とする前記頭部と相似形の放射状の切り欠きが設けられている。更に前記切り欠きは、前記正多角形の軸穴の各辺の中点で円柱形状の軸本体が位置決め支持されるように、各辺の中点を除く部分を始端として、放射状に切欠いた形状を有している、ことを特徴とする。
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明のはさみの実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係るはさみ1を示す。はさみ1は、約20cmの2枚の薄板材2、3で構成されている。薄板材2は、約7cmの下刃部2aと、下刃部2aの基端側にある軸穴に留められた軸2bと、開閉のための約11cmのグリップ2cとを有する。薄板材3は、約7cmの上刃部3aと、上刃部3aの基端側に軸穴3bと、開閉のための約11cmのグリップ3cとを有する。薄板材2は軸穴3bを通る軸2bで薄板材3に枢支されており、はさみ1の使用者は、グリップ2c、3cを使って下刃部2a、上刃部3aを開閉させる。
【0015】
図2は、はさみ1の上刃部3aを、定めた開度にした状態を示す。この開度で、薄板材2の軸2bの頭部は、薄板材3の軸穴3bを通過可能になり、下刃部2aを有する薄板材2と、上刃部3aを有する薄板材3とが分離可能になる。
【0016】
図3(a)は、薄板材2の構成を示す斜視図で、(b)は裏面側を示す斜視図である。
薄板材2は、下刃部2a、軸2b、グリップ2cとで構成されている。軸2bは、クロス十字状の頭部2d、直径約5mmの円柱形状の軸本体2eで構成されている。軸本体2eの基端部2fは薄板材2に設けられている軸穴2gに回動しないように留められている。
【0017】
図4(a)は、薄板材3の構成を示す斜視図で、(b)は裏面側を示す斜視図である。
薄板材3は、上刃部3a、1辺が約5.1mmの正4角形(正方形、以下、正多角形の語に合わせて正4角形という)に開けられている軸穴3b、グリップ3cとで構成されている。軸穴3bの正4角形の穴13(図5(b)に点線で示す)には、更に、薄板材2に設けられている軸2bの頭部2dを通過可能とする、頭部2dと相似形の放射状の切り欠き14(図5(b)を参照)が正4角形の各角方向に向けて設けられている。
【0018】
はさみ1は、例えば本願出願人の発明(特許第6425365号)に係るはさみよりも、軸穴3bに設けられている切り欠き14(図5(b)を参照)が軸本体2eと外部との間に大きな連通路を開口するため、軸本体2eに樹液ヤニが付いても、薄板材2、3の間に溜まりにくく、結果、使用時に樹液ヤニの影響を受けにくい、また、掃除し易い、という顕著な効果を有する。
【0019】
なお、図3(a)に示すように、軸2bの基端部には凹部2hが設けられており、下刃部2aにはこの凹部2hに通じている溝2iが設けられている。
また、図4(b)に示すように、軸穴3bの周りは、凹部3dが設けられており、上刃部3aにはこの凹部3dに通じている溝3eが設けられている。
当該構成を採用したことによって、図3(a)に示した凹部2h、溝2iと、図4(b)に示した凹部3d、溝3eと、放射状の切り欠き14(図5(b)を参照)が設けられている正4角形の軸穴3bと軸本体2eとの間の通路とによって、軸本体2eに付着した樹液ヤニ等による影響を一層軽減し、更に、分解せずとも掃除し易い、という顕著な効果を有する。
【0020】
図5は、はさみ1が図2の状態にあるときの部分拡大図で、(a)は薄板材2の軸2bの頭部2dを上方から見た図で、(b)は薄板材3の軸穴3bを上方から見た図を示す。
【0021】
図5(a)に示すように、頭部2dは、中心から軸穴3bの正4角形(図5(b)で点線で描く正4角形13を参照)の各角に向かって放射状に突出している、即ち360度/4=90度間隔で突出している、角の数(4つ)の棒状部b1、b2、b3、b4を有する形状、本実施形態の場合はクロス十字状の形状を有している。棒状部b1、b2、b3、b4の幅W1、W2、W3、W4は、軸棒の外周を前記正4角形の角の数で等分した点2j、2k、2l、2mの内、周上で隣り合う点同士の距離L1より小さく設定されている。なお、本実施形態では、前記距離L1は、円柱形状の軸本体2eの半径長さに2の平方根を掛け合わせた長さとなる。
【0022】
更には、全ての棒状部b1、b2、b3、b4の長さ及び幅が同一だと、360度を多角形の角の数で割った値、正4角形の場合90度回転させる毎に、上刃部と下刃部とが分離可能な状態となってしまい、使用時に影響を及ぼすという新たな課題が生じる。そこで、本発明のはさみは、複数の棒状部b1、b2、b3、b4の1以上は、他の棒状部と長さ及び幅の内の一方又は両方が異なる値に設定する。
【0023】
本実施形態では、2つの棒状部b1、b3の長さ及び幅を他の2つの棒状部b2,b4より短くするこれにより、はさみ1の上刃部3aを図1に示す状態の時には、分解され無いようにし、90度回動させて図2に示す状態とした時に、下刃部2aの薄板材2と上刃部3aの薄板材3とを分解可能にする。なお、1つの棒状部b1のみの長さ及び幅を他の棒状部b2~b4よりも短く設定すれば、予め定めた開度にならない限り、ハサミを分解できないように設定できる。幾つの棒状部の長さ及び幅を変更するかは、はさみに求められる想定開度を考慮して任意に設定すればよい。
【0024】
図5(b)に示すように、軸穴3bは、点線で示す正多角形の穴13が設けられ、更には、2枚の薄板材2、3の刃部2a、3aが予め定めた開状態にあるときに、頭部2dを通過可能とする、頭部2dと相似形の放射状の切り欠き14が設けられている。軸本体2eは、正4角形の穴13の各辺に回転可能な状態で内接又は間隙を持って内接する。詳しくは、軸本体2eの直径が5mmの場合、軸穴3bの正4角形の穴13の1辺を5.1mmに設定する。間隙の値は、はさみ1の大きさ、用途によって変化するが、使用時に軸のずれを感じない程度に小さく、且つ、軽く開閉できるような、例えば1mm以下の値に設定する。
【0025】
軸穴3bの切り欠き14は、軸穴2dの正多角形13の各辺の中点3f、3g、3h、3iで円柱形状の軸本体2eが位置決め支持、即ち、中点3f、3g、3h、3iが軸本体2eに軽い力で当接する、または、僅かな間隙を介して配置されるように、各辺の中点3f、3g、3h、3iを除く部分を始端として、放射状に切欠いた形状を有している。正多角形の穴13に切り欠き14を加えた形状は、頭部2dの形状と相似形で、本実施形態では、W5、W7は軸頭2dの棒状部b1,b3が通過可能な値に設定されており、W6、W8は軸頭2dの棒状部b2、b4が通過可能な値に設定されている。棒状部b1、b2、b3、b4の通る切り欠き部分の幅W5、W6、W7、W8は、正多角形の角辺の中点3f、3g、3h、3iの内、隣り合うものの距離L2よりも小さい。
【0026】
本発明のはさみは、棒状部の1以上について、他の棒状部と長さおよび幅の内の一方又は両方が異なる値とする。当該構成を採用することによって、軸の頭部は非対称な形状になり、予め定めた開度とならない限り、分離可能とならないように設定することができる。
【0027】
図6は、図1に示したような閉じている状態のはさみ1の部分斜視図であるが、図示するように、薄板材3の軸穴3bに切り欠き14を設けたことによって、薄板材2の軸2bの軸本体2eが外部に露出される様子を示している。例えば果樹園ではさみ1を使用している際に軸2bに樹液ヤニが付着しても、はさみ1の開閉動作の都度、軸穴2dの正多角形13の各辺の中点3f、3g、3h、3i近傍の部分は、軸本体2eから樹脂ヤニを削ぎ取るように作用する。前記軸本体2eが露出されていることによって、軸本体2eから削ぎ取られた樹脂ヤニは、はさみ1の開閉動作の都度、外部へと押し出される。これによって、はさみ1は、使用時に樹液ヤニが詰まる、という事態をほぼ解消でき、軽い開閉動作を長時間にわたり維持できる、即ち長時間にわたりメンテナンスフリーで使用できる、という顕著な効果が得られる。
【0028】
はさみ1は、軸穴3bに切り欠き14を設けているが、軸本体2eを支持する点は前記切り欠きを設けたことによって減少しておらず、この結果、使用時の軸のずれ動きのおそれを抑え、安定して使用することができる。この効果について幾つかの例を示して実証する。
【0029】
図7、8は、軸穴3bが正3角形~正7角形の場合、本発明にかかる軸の頭部を用いた場合と、軸の頭部に従来技術を用いた場合との比較図である。なお、軸の頭部の放射状に伸びる棒状部の内、他の棒状部よりも長さ及び幅を短く設定した棒状部を、点線の内側に実線で示すことによって、分かり易く示す。本発明の頭部を用いる場合は、全て軸穴3bの多角形の各辺の中点と軸本体2eとの接点が保たれているのに対し、従来の頭部を用いた場合は、軸穴3bの前記各辺の中点が相当数削除されてしまう。
なお、はさみ1の使用時、軸2bには、抉る力が掛けられるが、軸の頭部の厚みが均一の場合で比べると、軸の頭部を"-"マイナス状に加工した場合に比べ、正多角形の角の数だけの棒状部を設けたことによって軸頭の強度が増してより長期に渡る安定使用が可能となる。
【0030】
図7(a)は軸穴が三角形の場合に軸の頭部を各角に向かって放射状に突出している3つの棒状部を有する形状に加工した場合を示し、(b)は軸穴が三角形の場合に軸の頭部を"-"マイナス状に加工した場合を示す。図7(a)に示す本発明に係る実施例の場合は、軸本体2eを位置決めする各辺の中点4a~4cは3つ全て残っているのに対し、図7(b)に示す従来例の場合は、中点4cの1つしか残っていないない。
【0031】
図7(c)は図1図6に示した本実施形態で、軸穴が四角形の場合に軸の頭部を各角に向かって放射状に突出している4つの棒状部を有する形状に加工した場合を示し、(d)は軸穴が四角形の場合に軸の頭部を"-"マイナス状に加工した場合を示す。図7(c)に示す本実施形態の場合は、軸本体2eを位置決めする各辺の中点5a~5dは4つ全て残っているのに対し、図7(d)に示す従来例の場合は、中点5a、5cの2つしか残っていないない。
【0032】
図7(e)は軸穴が五角形の場合に軸の頭部を各角に向かって放射状に突出している5つ棒状部を有する形状に加工した場合を示し、(f)は軸穴が五角形の場合に軸の頭部を"-"マイナス状に加工した場合を示す。図7(e)に示す本発明の実施例の場合は、軸本体2eを位置決めする各辺の中点6a~6eは5つ全て残っているのに対し、図7(f)に示す従来例の場合は、中点6a、6b、6dの3つしか残っていないない。
【0033】
図8の(a)は軸穴が六角形の場合に軸の頭部を各角に向かって放射状に突出している6つの棒状部を有する形状に加工した場合を示し、(b)は軸穴が六角形の場合に軸の頭部を"-"マイナス状に加工した場合を示す。図7(a)に示す本発明の実施例の場合は、軸本体2eを位置決めする各辺の中点7a~7fは6つ全て残っているのに対し、図8(b)に示す従来例の場合は、中点7b、7eの2つしか残っていないない。
【0034】
図8(c)は軸穴が七角形の場合に軸の頭部を各角に向かって放射状に突出している7つの棒状部を有する形状に加工した場合を示し、(d)は軸穴が七角形の場合に軸の頭部を"-"マイナス状に加工した場合を示す。図8(c)に示す本発明の実施例の場合は、軸本体2eを位置決めする各辺の中点8a~8gは7つ全て残っているのに対し、図8(d)に示す従来例の場合は、8a、8b、8eの3つしか残っていないない。
【0035】
なお、図8に示すように、軸穴3bの多角形の数を増やし、軸の頭部2dの棒状部の数を増やせば増やすほど、はさみ1を開くように僅かに回動させることで、上刃部が外れてしまう、という新たな課題が生じる。
【0036】
この課題を解決するため、図5(及び図7で点線の内側の実践で描いて)に示したように、棒状部の1以上は、他の棒状部と長さおよび幅の内の一方又は両方が異なる値とする。当該構成を採用することによって、上刃部と下刃部とを分離可能にする開度について定めることが可能になり、前記課題を解決することができる。
【0037】
本発明は、上記各種実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、軸の頭部2dに放射状に設ける棒状部の先端の形状は、装飾性を考慮して芒星状となるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のはさみは、樹液ヤニが付きやすい果樹園での使用の他、料理用に使用できる。また、果樹園での使用時に樹液ヤニの影響を受けにくいという構造は、樹液ヤニの他、細かな砂又は粘土の付着しやすい環境下での当該砂や粘土による影響、または、海辺での使用による塩噛みの影響、を抑え軽く開閉できる期間を長くすることができる、という利点がある。
【符号の説明】
【0039】
1 はさみ
2、3 薄板材
2a 下刃部
2b 軸
2c、3c グリップ
2d 軸頭
2e 軸本体
2f 軸の基端部
3a 上刃部
3b 軸穴
b1~b4 棒状部
13 正多角形の穴
14 切り欠き
2g、3d 凹部
2h、3e 溝
【要約】
【課題】多角形の軸穴を有するはさみにおいて、安定して使用できる分解可能なはさみを提供する。
【解決手段】本発明のはさみの軸の頭部は、中心から軸穴の正多角形の各角に向かって放射状に突出している、角の数の棒状部を有する形状を有し、棒状部の幅は軸棒の外周を正多角形の角の数で等分した点の内、周上で隣り合う点同士の距離より小さく、かつ、棒状部の1以上は他の棒状部と長さおよび幅の内の一方又は両方が異なる値とされており、更に、軸穴には2枚の薄板材の刃部が予め定めた開状態にあるときに、頭部を通過可能とする頭部と相似形の放射状の切り欠きが設けられており、切り欠きは軸穴の正多角形の各辺の中点で円柱形状の軸本体が位置決め支持されるように、各辺の中点を除く部分を始端として、放射状に切欠いた形状を有している、ことを特徴とする。当該構成のはさみは、軸がぶれることなく、樹液ヤニ等の付着の影響を受けにくい。
【選択図】図2

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8