(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ポンプ及びモータ付きポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 39/14 20060101AFI20241212BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20241212BHJP
F04B 39/12 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
F04B39/14
F04B39/00 106C
F04B39/12 H
(21)【出願番号】P 2024543502
(86)(22)【出願日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 JP2024000581
【審査請求日】2024-08-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000121833
【氏名又は名称】マブチモーターオーケン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000113791
【氏名又は名称】マブチモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100186875
【氏名又は名称】海老澤 知則
(72)【発明者】
【氏名】板原 一毅
(72)【発明者】
【氏名】菊地 悟志
【審査官】森 秀太
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-97936(JP,A)
【文献】特開2000-232749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/14
F04B 39/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータのシャフトの回転運動を前記シャフトの軸方向の往復運動に変換して流体を吐出するポンプであって、
前記シャフトが挿通される前記モータのハウジングに対して前記軸方向に対向配置される台座部を有するポンプハウジングを備え、
前記ポンプハウジングには、前記台座部から前記軸方向に突出して前記ハウジングに形成された穴部に圧入固定される凸部と、前記凸部が前記穴部に圧入固定された状態で前記ハウジングに形成された凹部に係合する爪部と、が設けられ
、
前記ポンプハウジングは、前記台座部から前記ハウジングに向けて延設された壁部、及び、前記壁部と前記台座部とに跨って設けられた少なくとも二つの補助壁部を有し、
前記爪部は、前記壁部から前記シャフトの径方向内側に向けて突設され、
前記少なくとも二つの補助壁部は、前記軸方向から見た前記壁部の延在方向において前記爪部を挟む位置に設けられ、前記ハウジングの角部形状に沿って面接触する
ことを特徴とする、ポンプ
。
【請求項2】
前記壁部は、前記ハウジングを挟むように互いに離隔して複数設けられる
ことを特徴とする、請求項
1に記載のポンプ。
【請求項3】
モータのシャフトの回転運動を前記シャフトの軸方向の往復運動に変換して流体を吐出するポンプであって、
前記シャフトが挿通される前記モータのハウジングに対して前記軸方向に対向配置される台座部を有するポンプハウジングを備え、
前記ポンプハウジングには、前記台座部から前記軸方向に突出して前記ハウジングに形成された穴部に圧入固定される凸部と、前記凸部が前記穴部に圧入固定された状態で前記ハウジングに形成された凹部に係合する爪部と、が設けられ
、
前記ポンプハウジングは、前記台座部と前記爪部とを繋ぐ接続部と、前記台座部から突設された突起部と、を有し、
前記突起部は、前記接続部から離隔した位置に配置されており、前記凸部が前記穴部に圧入固定された状態で前記ハウジングに当接する
ことを特徴とする、ポンプ。
【請求項4】
前記突起部が、前記シャフトの近傍に設けられる
ことを特徴とする、請求項
3に記載のポンプ。
【請求項5】
前記ポンプハウジングには、前記シャフトを挟んで対向配置される二つの前記爪部が設けられ、
前記突起部が、前記二つの爪部同士を繋ぐ直線及び前記シャフトの軸線に直交する線上に設けられる
ことを特徴とする、請求項
4に記載のポンプ。
【請求項6】
前記ポンプハウジングが、弾性体製であり、
前記ハウジングが、剛体製である
ことを特徴とする、請求項1に記載のポンプ。
【請求項7】
前記ポンプハウジングが、弾性体製であり、
前記ハウジングが、剛体製である
ことを特徴とする、請求項
3に記載のポンプ。
【請求項8】
前記穴部及び前記凸部は、少なくとも二つずつ設けられ、
前記凹部及び前記爪部は、少なくとも二つずつ設けられる
ことを特徴とする、請求項
1に記載のポンプ。
【請求項9】
前記穴部及び前記凸部は、少なくとも二つずつ設けられ、
前記凹部及び前記爪部は、少なくとも二つずつ設けられる
ことを特徴とする、請求項
3に記載のポンプ。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載のポンプと、
前記ポンプを駆動するモータと、を備える
ことを特徴とする、モータ付きポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、ポンプ、及び当該ポンプを駆動するモータを備えるモータ付きポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプは、モータなどの駆動機器により駆動されて流体を吐出する機能を発揮する。ポンプをモータに固定する方法としては、モータから伸びた爪部をポンプに係合させる方法(例えば、特許文献1)や、モータに対してポンプを配置したあとにモータ側から伸びた連結片をかしめることで固定する方法(例えば、特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-180336号公報
【文献】特許第6876323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のように、ポンプに対して爪部を係合させる方法では、モータに対するポンプのがたつき(特に、軸方向のがたつき)を十分に抑制することが難しい。特に、モータのシャフトの回転運動を軸方向の往復運動に変換して流体を吐出する方式のポンプでは、モータに対するポンプの軸方向のがたつきが、ポンプの軸方向の往復運動に影響を与え、ポンプ性能を低下させ得る。一方で、特許文献2のように、モータに対してポンプをかしめることで固定する方法では、モータに対するポンプのがたつきの抑制効果は期待できるものの、モータに対してポンプを配置した後にかしめる作業が必要となる。このため、モータに対するポンプの固定作業を容易にする点で改善の余地がある。
【0005】
本件のポンプ及びモータ付きポンプは、このような課題に鑑み案出されたもので、モータに対して容易にポンプを固定するとともにポンプの性能の向上を図ることを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示のポンプ及びモータ付きポンプは、以下に開示する態様(適用例)として実現でき、上記の課題の少なくとも一部を解決する。態様2,4~7は、いずれもが付加的に適宜選択されうる態様であって、いずれもが省略可能な態様である。態様2,4~7は、いずれもが本件にとって必要不可欠な態様や構成を開示するものではない。
【0007】
態様1.開示の第一のポンプは、モータのシャフトの回転運動を前記シャフトの軸方向の往復運動に変換して流体を吐出するポンプであって、前記シャフトが挿通される前記モータのハウジングに対して前記軸方向に対向配置される台座部を有するポンプハウジングを備える。前記ポンプハウジングには、前記台座部から前記軸方向に突出して前記ハウジングに形成された穴部に圧入固定される凸部と、前記凸部が前記穴部に圧入固定された状態で前記ハウジングに形成された凹部に係合する爪部と、が設けられる。前記ポンプハウジングは、前記台座部から前記ハウジングに向けて延設された壁部、及び、前記壁部と前記台座部とに跨って設けられた少なくとも二つの補助壁部を有する。前記爪部は、前記壁部から前記シャフトの径方向内側に向けて突設される。前記少なくとも二つの補助壁部は、前記軸方向から見た前記壁部の延在方向において前記爪部を挟む位置に設けられ、前記ハウジングの角部形状に沿って面接触する。
【0010】
態様2.上記の態様1を含む態様において、前記壁部は、前記ハウジングを挟むように互いに離隔して複数設けられることが好ましい。
【0011】
態様3.開示の第二のポンプは、モータのシャフトの回転運動を前記シャフトの軸方向の往復運動に変換して流体を吐出するポンプであって、前記シャフトが挿通される前記モータのハウジングに対して前記軸方向に対向配置される台座部を有するポンプハウジングを備える。前記ポンプハウジングには、前記台座部から前記軸方向に突出して前記ハウジングに形成された穴部に圧入固定される凸部と、前記凸部が前記穴部に圧入固定された状態で前記ハウジングに形成された凹部に係合する爪部と、が設けられる。前記ポンプハウジングは、前記台座部と前記爪部とを繋ぐ接続部と、前記台座部から突設された突起部と、を有する。前記突起部は、前記接続部から離隔した位置に配置されており、前記凸部が前記穴部に圧入固定された状態で前記ハウジングに当接する。
【0012】
態様4.上記の態様3を含む態様において、前記突起部が、前記シャフトの近傍に設けられることが好ましい。
態様5.上記の態様4を含む態様において、前記ポンプハウジングには、前記シャフトを挟んで対向配置される二つの前記爪部が設けられることが好ましい。この場合、前記突起部が、前記二つの爪部同士を繋ぐ直線及び前記シャフトの軸線に直交する線上に設けられることが好ましい。
【0013】
態様6.上記の態様1又は態様3を含む態様において、前記ポンプハウジングが、弾性体製であり、前記ハウジングが、剛体製であることが好ましい。
態様7.上記の態様1又は態様3を含む態様において、前記穴部及び前記凸部は、少なくとも二つずつ設けられ、前記凹部及び前記爪部は、少なくとも二つずつ設けられることが好ましい。
【0014】
態様8.開示のモータ付きポンプは、上記の態様1~7のいずれか一つに記載のポンプと、前記ポンプを駆動するモータと、を備える。
【発明の効果】
【0015】
開示のポンプ及びモータ付きポンプによれば、モータに対して容易にポンプを固定できるうえ、ポンプの性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例のポンプが適用されるモータ付きポンプの分解斜視図である。
【
図2】実施例のポンプが適用されるモータ付きポンプを
図1の第一直径線Dで切断し、
図1の矢印Aの方向から見た軸方向断面図である。
【
図3】
図2のポンプが備えるポンプハウジングの底体の軸方向断面図である。
【
図4】
図3のポンプハウジングの底体をモータ側から見た平面図である。
【
図5】
図3のポンプハウジングの底体の斜視図である。
【
図6】変形例のポンプが備えるポンプハウジングの要部の軸方向断面図(
図7の第一直径線Dで切断した軸方向断面図)である。
【
図7】
図6のポンプハウジングをモータ側から見た平面図である。
【
図8】
図6のB部の拡大図であって、
図6のポンプハウジングがモータのハウジングに取り付けられた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して、実施形態としてのポンプ及びモータ付きポンプについて説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0018】
実施形態のポンプは、モータのシャフトの回転運動をシャフトの軸方向の往復運動に変換して流体を吐出する往復容積式のものである。実施形態のモータ付きポンプは、当該ポンプと、このポンプを駆動するモータとを備えたものであり、ポンプとモータとが取り付けられた(固定された)ものである。実施形態のポンプは、ポンプハウジングを備える。このポンプハウジングは、シャフトが挿通されるモータのハウジングに対して軸方向に対向配置される台座部を有する。また、当該ポンプハウジングには、台座部から軸方向に突設された凸部と、爪部とが設けられる。凸部は、ハウジングに形成された穴部に圧入固定される部分である。爪部は、当該凸部が穴部に圧入固定された状態で、ハウジングに形成された凹部に係合する部分である。実施形態のポンプは、このような凸部と爪部とを備えることで、モータへのポンプの固定作業を容易に行うことができるとともに、モータに取り付けられた際の軸方向のがたつきを抑制することで往復容積式のポンプの性能向上を図ることを特徴としたものである。
【0019】
[1.構成]
図1は、本実施例のポンプ3が適用されるモータ付きポンプ1の分解斜視図であり、
図2は、モータ付きポンプ1の軸方向断面図(モータ付きポンプ1を
図1の後述する第一直径線Dで切断して
図1の矢印Aの方向から見た図)である。
図1及び
図2に示すように、モータ付きポンプ1は、ポンプ3とモータ2とを備える。ポンプ3は、モータ2に対して、モータ2のシャフト4の軸方向の第一方向に取り付けられる。以下、モータ2に対しポンプ3が取り付けられる軸方向を「第一方向」といい、軸方向において、第一方向とは反対の方向を第二方向という。ポンプ3は、モータ2により駆動され、シャフト4の回転運動をシャフト4の軸方向の往復運動に変換して流体を吐出する往復容積式のポンプである。
【0020】
モータ2は、例えば、
図2に示すように、インナーロータ型のモータであり、シャフト4と一体回転するロータ5と、ロータ5の径方向外側に位置するステータ6とが、有底筒状のハウジング20に内蔵されて構成される。ハウジング20の開口側(図中下側)には、蓋部材としてのエンドベル7が組み合わされてよい。シャフト4は、ハウジング20に保持された軸受8により、ハウジング20に対して回転自在に支持される。なお、図示は省略しているが、エンドベル7にも、シャフト4を回転自在に支持する軸受が保持されてよい。
【0021】
ハウジング20は、モータ2の外郭をなす剛体(例えば金属)製の部材であり、側面部21及び底面部22を有する。側面部21は、有底筒状のハウジング20の筒部をなす部位であり、ロータ5及びステータ6を収容する空間を形成する。側面部21は、例えば、
図1に示すように、軸方向に略一様な径を持つ円筒状をなす。
【0022】
底面部22は、側面部21よりも第一方向において、有底筒状のハウジング20の底部をなす部位である。底面部22は、例えば、
図2に示すように、軸方向に一様な厚みを持つとともに軸方向に直交する方向に展開された平板状をなす。本実施例の底面部22は、
図1に示すように、軸方向から視て円板状であって、その中央にシャフト4の軸線Cと同心の円形状の中心孔が形成される。底面部22の中心孔には、シャフト4が挿通される。底面部22には、当該中心孔を形成するとともに軸受8の収容空間を形成する軸受収容部24が、第一方向側に向かって凸となるように設けられてよい。側面部21と底面部22とを繋ぐ角部23の外周面23aには、
図2に示すように、側面部21の外周面21aと底面部22の第一方向を向く外端面22aとを滑らかに繋ぐように丸み(R)が付けられてよい。
【0023】
ハウジング20には、上述の穴部25と凹部26とが設けられる。本実施例では、穴部25が底面部22に設けられ、凹部26が側面部21に設けられる。穴部25は、底面部22の外端面22aから軸方向の第二方向に凹設された部位であり、ポンプ3の後述する凸部39が圧入される空間(穴,凹み)を形成する。本実施例の穴部25は、
図2に示すように、底面部22を軸方向に貫通するように設けられ、
図1に示すように、軸方向から見て円形の貫通孔を形成する。
【0024】
底面部22に設けられる穴部25の数は、少なくとも一つ以上であればよいが、好ましくは二つ以上とされる。ここでは、二つの穴部25がシャフト4を挟んで設けられる。より具体的には、二つの穴部25は、シャフト4の軸線Cに直交する第一直径線D上にシャフト4を挟んで(周方向に180度ずれて)設けられる。なお、穴部25は、ポンプ3の凸部39を圧入固定する機能だけでなく、モータ2の製造時の位置決め孔としての機能も有してよい。つまりこの場合、圧入固定用(専用)の穴部25を形成するのではなく、モータ2の製造時の位置決めの役割を果たす孔を、当該ポンプ3を固定するための部位として活用してよい。
【0025】
凹部26は、側面部21の外周面21aから径方向内側に凹設された部位であり、ポンプ3の後述する爪部40が嵌る空間(穴,凹み)を形成する。本実施例では、凹部26が、ポンプ3の爪部40と係合する機能だけでなく、ステータ6に設けられた図示しないマグネットの軸方向の位置を決めるための凸部としての機能も有する。つまり、ポンプ3は、マグネットの位置決め用の凸部を、当該ポンプ3を固定するための凹部26として活用する。
【0026】
凹部26は、例えば、
図2に示すように、ステータ6よりも第一方向側で側面部21を径方向に貫通することなく側面部21の一部を窪ませるように設けられ、
図1に示すように、周方向に延在する細長い窪み(凹み)を形成する。凹部26の径方向内側の部分は、
図2に示すように、側面部21の内周面21b(内面)よりも径方向内側に突出する。当該部分が、マグネットの位置決め用の凸部としての役割を果たす。
【0027】
側面部21に設けられる凹部26の数は、少なくとも一つ以上であればよいが、好ましくは二つ以上とされる。ここでは、四つの凹部26が設けられる。四つの凹部26のうち二つの凹部26は、穴部25が設けられる第一直径線D上にシャフト4を挟んで設けられる。残る二つの凹部26は、
図1に示すように、前者の二つの凹部26のそれぞれに対して、第一方向から見て反時計回りの方向に離隔した位置に設けられる。後者の二つの凹部26は、例えば、軸線Cに直交する直径線であって第一直径線Dとは位相の異なる第二直径線E上に、シャフト4を挟んで設けられる。
【0028】
ポンプ3は、上述の通り、往復容積式のポンプである。ここでは、
図2に示すように、ポンプ3として、ダイヤフラムポンプを例示する。ポンプ3は、シャフト4の回転運動を軸方向の往復運動に変換する駆動機構11と、駆動機構11の往復運動に応じて容積が増減するダイヤフラム部12aを有するダイヤフラム12とがポンプハウジング30に内蔵されて構成される。
【0029】
ポンプハウジング30内には、ポンプハウジング30及びダイヤフラム部12aにより区画されたポンプ室3Aとポンプ室3Aに連通する吸入室3B及び吐出室3Cとが形成される。ポンプ3では、ポンプ室3Aの容積が増加する際に、吸入室3Bに設けられた弁体が開くことでポンプ室3A内に空気が取り込まれる。また、ポンプ室3Aの容積が減少する際に、吐出室3Cに設けられた弁体が開くことで、ポンプ室3A内の空気が吐出室3Cに送られて、吐出口3Dから吐出される。
【0030】
ダイヤフラム12は、可撓性を有する部材(例えばゴム)により形成される部品であり、ポンプ室3Aを形成するカップ状のダイヤフラム部12aと、ダイヤフラム部12aの底部からモータ2側に突設された連結片12bとを有する。なお、
図2では、一つのダイヤフラム部12aを図示しているが、ダイヤフラム12は、複数のダイヤフラム部12aと、これと同数の連結片12bとを有してよい。
【0031】
駆動機構11は、例えば、シャフト4に対して相対回転不能に固定された支持部13と、支持部13により支持される駆動子14とを有する。支持部13には、シャフト4とは偏心した位置でシャフト4に対して傾斜して延在する軸穴が形成される。駆動子14は、当該軸穴に嵌る軸部14aと、軸部14aから径方向の外側に突出する腕部14bとを有する。
【0032】
腕部14bには、ダイヤフラム12の連結片12bが貫通状態で係合される。このため、駆動子14は、ダイヤフラム12によって回転が規制されることになる。これにより、シャフト4とともに回転する支持部13の回転が、軸方向への腕部14bの往復運動に変換され、連結片12bを介してダイヤフラム部12aに伝達される。これにより、ダイヤフラム部12a内の容積が増減する。なお、
図2では、一つの腕部14bを図示しているが、ダイヤフラム12に複数のダイヤフラム部12aが設けられる場合には、駆動子14は、これと同数の腕部14bを有してよい。
【0033】
ポンプハウジング30は、ポンプ3の外郭をなす部材であり、弾性体(例えば樹脂)製とされる。本実施例において、ポンプハウジング30は、複数の部材31~34を軸方向に組み合わせて形成される。具体的には、ポンプハウジング30は、底体31,第一中間体32,第二中間体33,蓋体34を有し、これらの部材31~34が第二方向からこの順で配置されるように組み合わされて形成される。
【0034】
底体31は、駆動機構11を収容する有底筒状の部材であり、モータ2にポンプ3が取り付けられた状態(以下、「取付状態」という)で、ハウジング20に対して軸方向に対向配置される台座部35を有する。第一中間体32は、ダイヤフラム12の載置面を形成する部材であり、第二中間体33とダイヤフラム12とともに吸入室3Bを形成する。第二中間体33は、第一中間体32とともにダイヤフラム12を挟持する部材である。蓋体34は、部材31~33を第一方向から覆う部材であり、第二中間体33とともに吐出室3Cを形成する。吐出口3Dは蓋体34の径方向内側に形成される。
【0035】
上述の凸部39及び爪部40は、台座部35を有する底体31に設けられる。凸部39は、台座部35に設けられる。また、本実施例の爪部40は、台座部35からハウジング20に向けて(第二方向に)延設された壁部37に設けられる。より具体的には、爪部40は、壁部37における第一直径線Dと第二直径線Eとのそれぞれと交差する位置に設けられる。
【0036】
以下、
図2~
図5を参照して、底体31について詳述する。
図3は、底体31の軸方向断面図であり、
図4は、底体31を第二方向から見た平面図である。また、
図5は、底体31を第二方向且つ径方向外側から見た斜視図である。
図3に示すように、底体31は、台座部35と筒部36とを有する。底体31には、さらに、壁部37と補助壁部38とが設けられてよい。本実施例において、底体31は、樹脂製とされ、これらの部位35~38と上述の凸部39及び爪部40とが一体成形される。
【0037】
台座部35は、有底筒状の底体31の底部をなす部位であり、例えば、軸方向に一様な厚みを持つとともに軸方向に直交する方向に展開された平板状をなす。台座部35の第二方向を向く台座面35aは、例えば、
図2に示すように、取付状態で、モータ2の外端面22aに当接する。
【0038】
本実施例の台座部35は、
図4に示すように、その外形が小判型である。すなわち、台座部35は、その周縁として、互いに離隔するとともに周方向に延在する二つの円弧端縁35jと、二つの円弧端縁35jのそれぞれの端部同士を繋ぐ直線状の直線端縁35kとを有する。二つの円弧端縁35jは、軸線Cに対して点対称となるように設けられるとともに、各々が第一直径線D及び第二直径線Eを跨ぐように設けられる。
【0039】
台座部35の径方向内側部分には、取付状態で、シャフト4が貫通するとともに軸受収容部24が内嵌する中心孔が設けられる。また、台座部35の円弧端縁35jには、軸方向から見て、爪部40と重なる位置に貫通孔35hが設けられる。貫通孔35hが設けられることで、底体31はアンダーカット部を備えない構成となるため、樹脂での一体成形が容易となる。
【0040】
筒部36は、有底筒状の底体31の筒部をなす部位であり、
図3に示すように底体31の周縁から第一方向に延設されて駆動機構11を収容する空間を形成する。本実施例の台座部35は小判型であることから、筒部36も軸方向から見て小判型である。筒部36の外周面には、
図5に示すように、蓋体34と係合するための突起が設けられてもよい。ポンプハウジング30は、筒部36に設けられた突起に蓋体34が係合することで、底体31と蓋体34との間に第一中間体32及び第二中間体33が挟持されて、一体化される。
【0041】
壁部37は、上述の通り、台座部35から第二方向に延設された部位である。本実施例のポンプ3では、壁部37が、ハウジング20を挟むように互いに離隔して複数(ここでは二つ)設けられる。より具体的には、二つの壁部37は、
図4に示すように、二つの円弧端縁35jのそれぞれから第二方向に延出して、
図2に示すように、取付状態でハウジング20の側面部21を挟む。各円弧端縁35jの周方向長さと、その円弧端縁35jから延出する壁部37の周方向長さとは、例えば、互いに等しく設定される。
【0042】
壁部37は、
図4に示すように、第一直径線D及び第二直径線Eを跨ぐように台座部35の円弧端縁35jの全域に亘って設けられて周方向に延在する。また、壁部37は、
図2に示すように、取付状態で、壁部37がハウジング20の側面部21の形状に沿って、側面部21の外周面21aと面接触するように形成される。壁部37は、その内壁面37aが、軸方向から見て、モータ2の側面部21の外径と略同等の径を有する仮想円の円周上に延びるように形成される。なお、円弧端縁35jの周方向長さと壁部37の周方向長さとは相違していてもよい。また、壁部37は、その第一方向側の周方向長さとその第二方向側の周方向長さとが相違してもよい。壁部37は、例えば、第二方向に向かって周方向長さが短くなる形状であってもよい。
【0043】
補助壁部38は、壁部37を補強するとともにポンプ3のがたつきを抑制する部位であり、台座部35と壁部37とに跨って設けられる。より具体的には、補助壁部38は、
図3~
図5に示すように、台座部35の台座面35aと壁部37の内壁面37aとに跨って設けられる。本実施例の補助壁部38は、ポンプハウジング30内に収容される部品(例えば、駆動機構11やダイヤフラム12)の作動音の音漏れを防止する機能も備える。
【0044】
補助壁部38には、
図5に示すように、台座部35の台座面35aと壁部37の内壁面37aとを繋ぐとともに径方向内側且つ第二方向を向く補助面38aが設けられる。補助面38aには、取付状態でモータ2の角部23の形状に沿って、角部23の外周面23aと面接触するように、外周面23aと略同等の丸み(R)が付けられている。
【0045】
補助壁部38は、各壁部37に少なくとも二つ設けられる。また、各壁部37に設けられる二つの補助壁部38は、
図4に示すように、軸方向から見た壁部37の延在方向において爪部40を挟む位置、すなわち、第一直径線D及び第二直径線Eを当該延在方向に挟む位置に設けられる。本実施例において、各壁部37に設けられる二つの補助壁部38は、各壁部37の周方向の両端部に配置されている。
【0046】
ここで、上述の通り、台座部35には、軸方向から見て爪部40と重なる位置に貫通孔35hが形成される。このため、ポンプ3の作動音が、当該貫通孔35hからポンプハウジング30の外側に漏れる可能性がある。また、モータ2の角部23の外周面23aには丸み(R)が付けられている。このため、貫通孔35hを介してポンプハウジング30の外側に漏れたポンプ3の作動音が、角部23の外周面23aと台座部35の台座面35aと壁部37の内壁面37aとの隙間から漏れる可能性もある。
【0047】
これに対して、本実施例では、各壁部37の延在方向の両端部のそれぞれに補助壁部38が設けられる。これにより、上記の隙間が角部23と壁部37と二つの補助壁部38とによって閉塞されて、ポンプ3の作動音の防音が図られる。また、各補助壁部38の補助面38aが、取付状態で、角部23の外周面23aと面接触することで、モータ2に対してポンプ3が角部23の外周面23aに沿って軸方向に傾斜する方向のがたつきが抑制される。つまり、補助壁部38は、壁部37の補強と、ポンプ3の作動音の防音と、ポンプ3のがたつきの抑制との三つの役割を担う。
【0048】
凸部39は、台座部35の台座面35aから第二方向側に突設される部位であり、取付状態で、ハウジング20の穴部25と重なる位置に設けられる。凸部39は、ハウジング20の穴部25に圧入可能な外形を有する柱状とされ、取付状態で、ハウジング20の穴部25に圧入固定される。これにより、ポンプ3の軸方向の位置決めがされる。本実施例において、凸部39は、軸方向から見て十字状をなす。
【0049】
底体31に設けられる凸部39の数は、少なくとも一つ以上であればよいが、好ましくは二つ以上とされる。ここでは、凸部39は、ハウジング20の穴部25と同数、すなわち二つ設けられる。つまり、穴部25及び凸部39は、二つずつ設けられる。二つの凸部39は、第一直径線D上に軸線Cを挟んで設けられる。
【0050】
爪部40は、凸部39がハウジング20の穴部25に圧入固定された状態、すなわち、取付状態で、ハウジング20の凹部26に係合する部位である。本実施例において、爪部40は、壁部37の先端(第二方向側の端部)から径方向内側に向けて突設される。このため、壁部37は、台座部35と爪部40とを接続する部位(接続部)とも換言される。爪部40は、
図5に示すように、上述の凹部26の凹みの形状に対応して、周方向に細長い突条をなす。
【0051】
底体31に設けられる爪部40の数は、少なくとも一つ以上であればよいが、好ましくは二つ以上とされる。本実施例において、爪部40は、
図4に示すように、ハウジング20の凹部26と同数、すなわち四つ設けられる。つまり、凹部26及び爪部40は、四つずつ設けられる。四つの爪部40のうち二つの爪部40は、第一直径線D上に軸線Cを挟んで設けられる。残る二つの爪部40は、第二直径線E上に軸線Cを挟んで設けられる。二つの壁部37のそれぞれには、第一直径線D上に位置する爪部40と第二直径線E上に位置する爪部40とが一つずつ突設される。
【0052】
[2.作用,効果]
(1)上述したポンプ3及びモータ付きポンプ1では、穴部25に圧入固定される凸部39と、凹部26に係合する爪部40とが、ポンプハウジング30に設けられる。凸部39は、ポンプハウジング30の台座部35から軸方向に突出して設けられ、爪部40は、穴部25に凸部39が圧入固定された状態で凹部26に係合する。また、ポンプ3は、モータ2のシャフト4の回転運動をシャフト4の軸方向の往復運動に変換して流体を吐出する往復容積式のものである。
【0053】
このようなポンプ3によれば、台座部35から軸方向に突出して設けられた凸部39を第一方向から第二方向に向かって穴部25に差し込むだけで、モータ2に対するポンプ3の固定が完了する。つまり、第一方向から凸部39を穴部25に差し込むだけで、穴部25に対する凸部39の圧入固定と凹部26に対する爪部40の係合との双方が完了する。よって、モータ2に対して容易にポンプ3を固定することができる。
【0054】
また、上述した構成によれば、モータ2及びポンプ3のそれぞれを組み立てた後に、モータ2に対してポンプ3を固定(結合)できるため、ポンプ3及びモータ2の双方の製品性及び汎用性を高めることができる。なお、モータ2に対するポンプ3(底体31)の固定は、モータ2及びポンプ3の各々を組み立てた後でなくてもよい。つまり、ポンプ3とは製品として完成されたもののみならず、その前駆体を含む意図である。上述したモータ付きポンプ1では、底体31だけをモータ2に固定したあとで、底体31に対してポンプ3を構成する他の部品11,12や部材32~34を組み付ける手順で組み立てることも可能である。
【0055】
また、上述したポンプ3では、爪部40が凹部26に係合されるだけでなく、凸部39が穴部25に圧入固定されることで、ポンプ3がモータ2に対して固定される。このため、モータ2に対してポンプ3をより安定して固定できる。
【0056】
往復容積式のポンプ3では、モータ2に対するポンプ3の軸方向のがたつきが、ポンプ3の軸方向の往復運動に影響を与え得る。これに対して、上述したポンプ3では、凸部39が穴部25に圧入固定されることで、爪部40によるスナップフィット固定だけでは生じうるがたつき(軸方向のがたつき)を解消でき、且つ、軸方向の位置決めも実現できる。よって、ポンプ性能の向上を図ることができる。
【0057】
加えて、上述したポンプ3及びモータ付きポンプ1では、ポンプ3の固定に係る部位39,40がポンプハウジング30から突出して設けられる。言い換えれば、モータ2には、そのハウジング20に当該ポンプ3の固定のための突起や凸部を設けることが要求されない。このように、ポンプ3は、モータ2に対して、当該モータ2にとって不要な機能(突起)を設けることを要求しないので、モータ2単体の製品性を高めることができる。また、モータ2の製造時の位置決めの役割を果たす既存の孔を穴部25として活用し、マグネットの位置決め用の既存の凸部を凹部26として活用することで、汎用性を高めることができる。
【0058】
(2)ポンプハウジング30には、台座部35からハウジング20に向けて延設された壁部37が設けられる。爪部40は、壁部37から径方向内側に向けて突設される。このように、爪部40が壁部37に設けられることで、爪部40を強化することができる。これにより、凹部26に対する爪部40のスナップフィット時の爪部40や壁部37の折れを防止することができる。
【0059】
(3)また、ポンプハウジング30には、壁部37が複数設けられ、各壁部37には、爪部40が複数設けられる。上記のポンプハウジング30では、二つの壁部37のそれぞれに爪部40が二つずつ設けられており、合計で四つの爪部40が設けられている。ハウジング20には、これに対応して、四つの凹部26が設けられている。
【0060】
このように、複数の壁部37が設けられるとともに、各壁部37に設けられた複数の爪部40のそれぞれが複数の凹部26のそれぞれに係合することで、モータ2に対するポンプ3の固定をより安定させることができる。また、直径線D,E上にシャフト4を挟むように、複数の爪部40及び複数の凹部26のそれぞれが対称に設けられれば、係合箇所の偏りを少なくすることができる。よって、モータ2に対するポンプ3の固定をより安定させることができる。
【0061】
また、ポンプハウジング30には、複数の凸部39が設けられ、ハウジング20には、これに対応して複数の穴部25が設けられる。このように、複数の凸部39のそれぞれが複数の穴部25のそれぞれに圧入固定されることで、モータ2に対するポンプ3の固定をより安定させることができる。加えて、ポンプ3の軸方向の位置決め精度を向上させることができるので、ポンプ性能の向上を図ることができる。また、第一直径線D上にシャフト4を挟むように、複数の凸部39及び複数の穴部25のそれぞれが対称に設けられれば、圧入箇所の偏りを少なくすることができる。したがって、モータ2に対するポンプ3の固定の安定性の向上とポンプ性能の向上とをより図ることができる。
【0062】
さらに、上述したポンプ3では、複数の壁部37が、ハウジング20を挟むように互いに離隔して設けられる。このように、複数の壁部37が互いに離隔して設けられることで、爪部40のスナップフィットの際に、壁部37が変形しやすくなるので、爪部40の欠けや折れを防止できる。
【0063】
また、複数の壁部37がハウジング20を挟んで設けられることで、取付状態のポンプ3をモータ2から取り外す際に、モータ2やポンプ3を分解せずとも、凹部26に対する爪部40の係合を解消できる。つまり、モータ2やポンプ3を分解する工程を要さずに、モータ2からポンプ3を取り外すことができる。したがって、ポンプ3及びモータ2の双方の製品性及び汎用性を高めることができる。
【0064】
(4)なお、複数の壁部37がハウジング20を挟んで設けられる場合に、各壁部37が、取付状態で、ハウジング20の側面部21の形状に沿って面接触すれば、モータ2に対するポンプ3の径方向の移動を壁部37により規制することができる。したがって、モータ2に対するポンプ3の径方向のがたつきも抑制できる。
【0065】
(5)ポンプハウジング30では、各壁部37に設けられる二つの補助壁部38が爪部40を挟む位置に設けられ、ハウジング20の角部23の形状に沿って面接触する。これにより、壁部37の補強と、ポンプ3のがたつきの抑制と、ポンプ3の作動音の防音とを図ることができる。
【0066】
(6)上述したポンプ3及びモータ付きポンプ1では、ポンプハウジング30が弾性体製であり、ハウジング20が、剛体製である。このように、ポンプハウジング30が、ハウジング20よりも高い弾性を持つ弾性体で形成されることで、爪部40のスナップフィットの際に、ポンプハウジング30の弾性変形が許容されるため、爪部40の欠けや折れを防止できる。また、ハウジング20が、ポンプハウジング30よりも高い剛性を持つ剛体で形成されることで、穴部25に対する凸部39の圧入固定をより強固に実現できる。
【0067】
[3.変形例]
上述したポンプ3及びモータ付きポンプ1の構成は一例であり、上述した構成に限られない。ポンプハウジング30には、上述した部位35~40の他に、取付状態で凹部26に爪部40をより密着させるための部位が設けられてよい。
【0068】
以下、
図6~
図8を参照して、変形例のポンプ3′について説明する。以下の説明では、実施例で説明した構成と同一の構成については、同一の符号を付してその構成及び効果の説明を省略する。また、実施例で説明した構成に対応する構成については、実施例の符号にダッシュ(′)を付し、詳細な説明は省略する。
【0069】
変形例のポンプ3′は、主に以下の点で上記の実施例のポンプ3と異なる。
・ポンプハウジング30′が、突起部42を備える点
・ポンプハウジング30′には、四つではなく二つの爪部40が設けられる点
・ポンプハウジング30′には、壁部37に代えて、接続片41(接続部)が二つ設けられている点
・台座部35′の外形が、円形状である点
【0070】
変形例のポンプ3′は、ポンプハウジング30′を備え、例えば、実施例のモータ2に取り付けられることで、モータ付きポンプを構成する。ポンプハウジング30′には、
図6及び
図7に示すように、台座部35′と、二つの凸部39と、二つの爪部40と、二つの接続片41と、一つの突起部42とが設けられる。
【0071】
本変形例において、台座部35′は、
図7に示すように、第一方向からモータ2を覆う円形状をなす。二つの凸部39は、
図6に示すように、台座部35′の台座面35a′から軸方向に突出するとともに、
図7に示すように、ハウジング20の穴部25が設けられる第一直径線D上に軸線Cを挟んで設けられる。二つの爪部40も、第一直径線D上に軸線Cを挟んで設けれ、取付状態で、第一直径線D上に設けられた二つの凹部26のそれぞれと係合する。なお、
図6~
図8では図示を省略しているが、台座部35′には、軸方向から見て爪部40と重なる位置に、実施例の貫通孔35hに対応する孔が設けられてよい。
【0072】
接続片41は、
図6に示すように、台座部35′と爪部40とを繋ぐ部位であり、台座部35′から第二方向に延設される。本変形例において、接続片41は、爪部40の数に対応して、二つ設けられる。二つの接続片41は、
図7に示すように、第一直径線D上に軸線Cを挟んで設けられる。爪部40は、接続片41の先端から径方向内側に向けて突設される。また、本変形例において、接続片41は、台座部35′の周縁35eから延設される。接続片41及び台座部35′は、径方向内側から外側に向かって延びる部分(台座部35′の一部)と、この延びたあとに屈曲して第二方向に延びる部分(接続片41)とで、断面L字状の部位(
図6中で四角形Bで囲んだ部位)を形成する。
【0073】
突起部42は、台座部35′から突設されるとともに取付状態でハウジング20の外端面22aに当接する部位であり、接続片41から離隔した位置に配置される。本変形例において、突起部42は、台座部35′の台座面35a′から第二方向にわずかに突設される。また、突起部42は、接続片41から離隔した位置として、台座部35′におけるシャフト4が挿通される中心孔の近傍、言い換えれば、シャフト4の近傍に設けられる。
【0074】
突起部42は、例えば、
図7に示すように、当該中心孔の近傍において、軸方向から見て、当該中心孔の周りを一周する円環状をなす。台座面35a′に対する突起部42の突出量は、穴部25に対する凸部39の圧入固定を阻害しないように、台座面35a′に対する凸部39の突出量よりもはるかに小さく設定される。
【0075】
図8に示すように、変形例のポンプ3′では、突起部42が設けられることで、取付状態で、台座部35′における突起部42の周辺の部分が、ハウジング20の外端面22aに当接することなくわずかに浮き上がる。これにより、
図8に破線で示すように、L字状をなす台座部35′の一部と接続片41とが、突起部42を基点として変形する。より具体的には、台座部35′は、
図8に白抜き矢印で示すように、接続片41の周辺の部分が、突起部42の周辺の部分よりも第二方向に位置するように弾性変形する。また、接続片41は、
図8に黒塗りの矢印で示すように、台座部35′の変形に伴い、その先端が径方向内側に移動するように変形する。これにより、接続片41の先端に設けられた爪部40を凹部26に、より密着させることができる。したがって、凹部26から爪部40をより外れにくくすることができ、ポンプ3′とモータ2とをより安定して固定できる。
【0076】
また、変形例のポンプ3′では、台座部35′及び接続片41の上記の変形が元に戻ろうとする力により、接続片41を第一方向に付勢するテンションがかけられる。これにより、爪部40と凹部26との係合が緩む方向(すなわち、第二方向)に接続片41が移動することが抑制される。この点でも、凹部26から爪部40をより外れにくくすることができる。
【0077】
変形例のポンプ3′では、突起部42がシャフト4の近傍に設けられる。このように、接続片41からより離れた位置に突起部42を設けることで、台座部35′及び接続片41の上記の変形をより促すことができる。したがって、凹部26から爪部40をより外れにくくすることができる。
その他、変形例のポンプ3′においても、上述したポンプ3と同様の効果が得られる。
【0078】
なお、変形例のポンプ3′は一例であり、
図6~
図8に示すものに限らない。突起部42が設けられる位置は、少なくとも接続片41から離隔した位置であればよく、上述した位置に限らない。但し、突起部42は、台座部35′及び接続片41の上記の変形を促進する観点から、接続片41からより離れた位置に設けられることが好ましい。
【0079】
ポンプハウジング30′に二つの爪部40が設けられる場合には、突起部42は、
図7に示すように、二つの爪部40同士を繋ぐ第一直径線D(直線)及びシャフト4の軸線Cに直交する第三線直径線F(線)上に設けられることが好ましい。これにより、台座部35′及び接続片41の上記の変形を促進することができるとともに、凹部26に対する二つの爪部40のそれぞれの係合度合いを同程度とすることができるので、モータ2に対するポンプ3′の固定をより安定させることができる。
【0080】
[4.その他]
上述したポンプ3,3′及びモータ付きポンプ1の構成は一例であり、上述した構成に限られない。ポンプ3,3′は、少なくともシャフト4の回転運動をシャフト4の軸方向の往復運動に変換するものであればよく、ダイヤフラムポンプに限らない。ポンプ3,3′は、例えば、プランジャーポンプであってもよく、ベローズポンプであってもよい。
【0081】
モータ2のハウジング20の形状は、円筒状でなくてもよく、ポンプ3,3′のポンプハウジング30,30′の形状は、小判型や円形でなくてもよい。ハウジング20は、剛体製でなくてもよく、ポンプハウジング30,30′は、弾性体製でなくてもよい。
【0082】
実施例のポンプ3において、補助壁部38は、各壁部37に二つ以上設けられてもよい。また、補助壁部38は省略されてもよい。実施例のポンプ3には、壁部37に代えて、変形例の接続片41に対応する部位が爪部40と同数設けられてもよい。同様に、変形例のポンプ3′には、接続片41に代えて、実施例の壁部37に対応する部位が設けられてもよい。実施例のポンプ3に、変形例の突起部42に対応する部位が設けられてもよい。ハウジング20及びポンプハウジング30,30′の配置関係によっては、壁部37や接続片41を省略することも可能である。
【0083】
ハウジング20の穴部25は、少なくとも凸部39を圧入固定可能な穴(凹み)を形成する部位であればよく、底面部22を軸方向に貫通していなくてもよい。また、ハウジング20の凹部26も、少なくとも取付状態で爪部40が係合可能な部位であればよい。凹部26は例えば、側面部21を径方向に貫通する貫通孔を形成する部位であってもよい。また、凹部26が設けられる部位は、側面部21でなくてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 モータ付きポンプ
2 モータ
3,3′ ポンプ
4 シャフト
20 ハウジング
23 角部
25 穴部
26 凹部
30,30′ ポンプハウジング
35,35′ 台座部
37 壁部(接続部)
38 補助壁部
39 凸部
40 爪部
41 接続片(接続部)
42 突起部
C 軸線
D 第一直径線(直線)
F 第三直径線(線)
【要約】
モータ(2)のシャフト(4)の回転運動をシャフト(4)の軸方向の往復運動に変換して流体を吐出するポンプ(3)は、シャフト(4)が挿通されるモータ(2)のハウジング(20)に対して軸方向に対向配置される台座部(35)を有するポンプハウジング(30)を備える。ポンプハウジング(30)には、台座部(35)から軸方向に突出してハウジング(20)に形成された穴部(25)に圧入固定される凸部(39)と、凸部(39)が穴部(25)に圧入固定された状態でハウジング(20)に形成された凹部(26)に係合する爪部(40)と、が設けられる。