(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】先進的なNOX還元触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 29/76 20060101AFI20241213BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20241213BHJP
B01J 23/89 20060101ALI20241213BHJP
B01J 35/57 20240101ALI20241213BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20241213BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20241213BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
B01J29/76 A
B01D53/94 222
B01J23/89 A ZAB
B01J35/57 E
F01N3/08 B
F01N3/10 A
F01N3/28 301Q
(21)【出願番号】P 2021510119
(86)(22)【出願日】2019-07-30
(86)【国際出願番号】 US2019044014
(87)【国際公開番号】W WO2020040944
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-07-27
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】524318674
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ モバイル エミッションズ カタリスツ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】BASF Mobile Emissions Catalysts LLC
【住所又は居所原語表記】33 Wood Avenue South, Iselin, New Jersey 08830, USA
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】リー,ユエチン
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-073971(JP,A)
【文献】特開2017-214930(JP,A)
【文献】特表2017-516643(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0180942(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0367973(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/94
F01N 3/00 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元剤の存在下で、リーン燃焼エンジン排気ガスからのNO
xの還元を触媒するのに効果的な選択的触媒性還元(SCR)物品であって、前記SCR物品が、全長を画定する入口端および出口端を有する基材と、その上に配置されたSCR触媒組成物と、を含み、且つ
前記SCR触媒組成物は、
白金族金属(PGM)および卑金属酸化物をその上に堆積させた多孔質耐熱金属酸化物担体を含む第1の成分と、
金属で促進されたゼオライトを含む第2の成分と、を含み、
前記第1の成分の前記第2の成分に対する重量比が、約0.05~約0.5の範囲である、SCR触媒組成物であり、且つ
前記SCR触媒組成物が、
(a)前記第1の成分と、(b)前記第2の成分との混合物を含む第1のウォッシュコートであって、前記第1のウォッシュコートは、前記触媒基材の長さの少なくとも一部の上に配置されている、第1のウォッシュコートと、
前記第2の成分を含む第2のウォッシュコートであって、前記第2のウォッシュコートは、前記触媒基材の長さの少なくとも一部の上に配置されている、第2のウォッシュコートと、を含む、選択的触媒性還元(SCR)物品。
【請求項2】
前記第1のウォッシュコートが、前記触媒基材上に直接配置され、前記第2のウォッシュコートが、前記第1のウォッシュコートの少なくとも一部の上に配置される、請求項
1に記載のSCR物品。
【請求項3】
前記第2のウォッシュコートが、前記触媒基材上に直接配置され、前記第1のウォッシュコートが、前記第2のウォッシュコートの少なくとも一部の上に配置される、請求項
1に記載のSCR物品。
【請求項4】
前記第1のウォッシュコートが、前記入口端から、前記全長の約10%~約50%の長さまで、前記触媒基材上に直接配置され、前記第2のウォッシュコートが、前記第1のウォッシュコートの少なくとも一部の上に配置される、請求項
1に記載のSCR物品。
【請求項5】
前記第2のウォッシュコートが、前記入口端から、前記全長の約50%~約100%の長さまで、前記触媒基材上に直接配置され、前記第1のウォッシュコートが、前記第2のウォッシュコートの少なくとも一部の上に配置される、請求項
1に記載のSCR物品。
【請求項6】
前記第1のウォッシュコートが、前記入口端から、前記全長の約20%~約40%の長さまで、前記触媒基材上に直接配置され、前記第2のウォッシュコートが、前記入口端から前記出口端まで延在している、請求項
1に記載のSCR物品。
【請求項7】
前記第1のウォッシュコートが、前記出口端から、前記全長の約10%~約50%の長さまで、前記触媒基材上に直接配置され、前記第2のウォッシュコートが、前記第1のウォッシュコートの少なくとも一部の上に配置される、請求項
1に記載のSCR物品。
【請求項8】
前記第1のウォッシュコートが、前記出口端から、前記全長の約20~約40%の長さまで、前記触媒基材上に直接配置され、前記第2のウォッシュコートが、前記入口端から前記出口端まで延在している、請求項
1に記載のSCR物品。
【請求項9】
前記第2のウォッシュコートが、前記出口端から、前記全長の約50%~約100%の長さまで、前記触媒基材上に直接配置され、前記第1のウォッシュコートが、前記第2のウォッシュコートの少なくとも一部の上に配置される、請求項
1に記載のSCR物品。
【請求項10】
前記第1のウォッシュコートが、前記全長の100%をカバーして前記触媒基材上に直接配置され、前記第2のウォッシュコートが、前記全長の100%をカバーして前記第1のウォッシュコート上に配置される、請求項
1に記載のSCR物品。
【請求項11】
前記第2のウォッシュコートが、前記全長の100%をカバーして前記触媒基材上に直接配置され、前記第1のウォッシュコートが、前記全長の100%をカバーして前記第2のウォッシュコート上に配置される、請求項
1に記載のSCR物品。
【請求項12】
ゾーン化構成を有し、前記第1のウォッシュコートが、前記入口端から、前記全長の約10%~約50%の長さまで、前記触媒基材上に配置され、前記第2のウォッシュコートが、前記出口端から、前記全長の約50%~約90%の長さまで、前記触媒基材上に配置される、請求項
1に記載のSCR物品。
【請求項13】
ゾーン化構成を有し、前記第1のウォッシュコートが、前記出口端から、前記全長の約10%~約50%の長さまで、前記触媒基材上に配置され、前記第2のウォッシュコートが、前記入口端から、前記全長の約50%~約90%の長さまで、前記触媒基材上に配置される、請求項
1に記載のSCR物品。
【請求項14】
前記第1のウォッシュコートでは、多孔質耐熱金属酸化物のゼオライトに対する重量比が、約0.1~約10である、請求項
1に記載のSCR物品。
【請求項15】
前記第1のウォッシュコートでは、多孔質耐熱金属酸化物対ゼオライトの重量比が、約0.2~約5である、請求項
1に記載のSCR物品。
【請求項16】
前記PGMが、Ptであり、前記卑金属酸化物が、銅酸化物であり、前記ゼオライトが、チャバザイト構造を有し、銅で促進され、前記多孔質耐熱金属酸化物が、5%シリカを含有するアルミナであり、前記Ptが、前記多孔質耐熱金属酸化物の約2.9重量%の量で存在し、前記銅酸化物が、前記多孔質耐熱金属酸化物の約10重量%の量で存在する、請求項
6に記載のSCR物品。
【請求項17】
前記基材が、ハニカム基材である、請求項
1に記載のSCR物品。
【請求項18】
前記ハニカム基材が、金属、セラミック、炭化ケイ素、コーディエライト、またはチタン酸アルミニウムである、請求項
17に記載のSCR物品。
【請求項19】
前記ハニカム基材が、フロースルー基材またはウォールフローフィルターである、請求項
17に記載のSCR物品。
【請求項20】
NO
xの効果的な還元が、約150℃より高く、かつ約700℃より低い温度のときである、請求項
1記載のSCR物品。
【請求項21】
NO
xの効果的な還元が、約200℃~約600℃の温度のときである、請求項
16に記載のSCR物品。
【請求項22】
NO
xの変換が、前記基材上に配置された銅-チャバザイトウォッシュコートのみを有する基準触媒性物品と比較して、200℃で少なくとも10%だけ増加する、請求項
1に記載のSCR物品。
【請求項23】
排気ガス流を生成するリーン燃焼エンジンと、請求項
1に記載のSCR物品と、を含む、排気ガス処理システム。
【請求項24】
ディーゼル酸化触媒(DOC)、煤煙フィルター、尿素注入成分、アンモニア酸化触媒(AMOX)、低温NO
x吸収剤(LT-NA)、およびリーンNO
xトラップ(LNT)のうちの1つ以上をさらに含む、請求項
23に記載の排気ガス処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、排気ガス処理触媒の分野、特に、エンジン排気中のNOxを低減することができる触媒組成物、そのような組成物でコーティングされた触媒物品、そのような触媒物品を含む排出処理システム、およびそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排出に関する環境規制は、世界中でますます厳しくなっている。
【0003】
リーン燃焼ディーゼルエンジンにより駆動される車両からの排気ガスは、未燃焼炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、および窒素酸化物(NOx)を含有する排気ガス排出物を放出し、NOxとは、とりわけ一酸化窒素および二酸化窒素を含む窒素酸化物のさまざまな化学種を表している。「リーン」とは、そのようなエンジンに供給される燃焼混合物中の空気対燃料の比率を、化学量論比より高く維持して、結果として生じる排気ガスが「リーン」になるようにすること、すなわち、排気ガスの酸素含有量が比較的高いことを指す。空燃(A/F)比は、内燃機関などの燃焼プロセスに存在する空気対燃料の質量比である。リーン燃焼ディーゼルエンジンの運転は、燃料リーン条件下で高い空/燃比で運転するため、ユーザーに優れた燃費を提供する。化学量論的条件をもたらす空気対燃料の正確な割合は、燃料中の炭素と水素との相対的な割合によって変化する。化学量論的A/F比は、炭化水素燃料の二酸化炭素(CO2)および水への完全燃焼に対応している。
【0004】
アルミナなどの耐熱金属酸化物担体上に分散された白金族金属(PGM)などの貴金属を含む酸化触媒は、これらの汚染物質の二酸化炭素および水への酸化を触媒することによってHCおよびCOの両方のガス状汚染物質を変換するために、ディーゼルエンジンの排気を処理する際に使用することが知られている。そのような触媒は、一般に、ディーゼル酸化触媒(DOC)と称されるユニットに含有されており、ディーゼル発電システムからの排気流路に配置されて、排気が大気に放出される前に排気を処理する。典型的には、ディーゼル酸化触媒は、1つ以上の触媒コーティング組成物が堆積されるセラミックまたは金属性基材上に形成される。ガス状のHCおよびCOの排出の変換に加えて、PGMを含有する酸化触媒は、NOのNO2への酸化を促進する。
【0005】
次いで、DOCによって形成されたNO2を含むNOx成分を、典型的には、選択的触媒性還元(SCR)触媒の存在下で、好適な還元剤でNOx成分を還元することによって、排気流から除去しなければならない。SCRプロセスは、大気酸素の存在下で還元剤(例えば、アンモニア)を用いた窒素酸化物の触媒性還元を使用し、主に窒素および蒸気の形成をもたらす:
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O(標準SCR反応)
2NO2+4NH3→3N2+6H2O(遅いSCR反応)
NO+NO2+NH3→2N2+3H2O(高速SCR反応)
【0006】
SCRプロセスで用いられる現在の触媒としては、鉄または銅などの触媒性金属とイオン交換されたゼオライトなどのモレキュラーシーブが挙げられる。有用なSCR触媒組成物は、200℃を超える温度かつ600℃未満の温度でNOx排気成分の還元を効果的に触媒することができるため、典型的にはより低い排気温度と関連のある低負荷条件下でも、低減されたNOxレベルを達成することができる。
【0007】
電子燃料噴射システムおよび吸気システムを有する従来のガソリンエンジンは、絶えず変化する混合気を提供し、リーン排気とリッチ排気の間を迅速かつ継続的に循環する。最近、燃費を改善するために、ガソリン燃料エンジンが、リーン条件下で作動するように設計されている。リーン燃焼ガソリン直噴(GDI)エンジンが提供する燃料効率の利点は、過剰な空気中で燃料燃焼を実行することにより、温室効果ガス排出量の削減に貢献できる点にある。
【0008】
リーン燃焼ガソリンエンジンによって駆動される車両からの排気ガスは、典型的には、三元触媒(TWC)で処理され、その触媒は、リーン条件下で運転されるエンジンの排気中のCOおよびHC汚染物質を軽減するのに効果的である。NOxの排出も、排出規制基準を満たすために削減する必要があるが、TWC触媒は、ガソリンエンジンがリーン実行時にNOx排出を低減するには効果的ではない。リーン燃焼ガソリンエンジンのための特定のSCR触媒を使用すると、そのような触媒は一時的なリーン/リッチ条件下、高温で熱安定性を示すことが予想されるため、課題がある。
【0009】
当技術分野では、排気ガス流からのNOx排出を効率的かつ効果的に軽減するのに効果的なSCR触媒に対する継続的なニーズが存在する。ますます厳しくなる排出規制により、特に、リーンで、低いエンジン排気温度条件下で、十分な高温熱安定性を示しながら、NOx排出を管理する能力が向上したSCR触媒を開発するニーズが高まっている。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、先進的な選択的触媒性還元(SCR)触媒組成物と、標準的なCu-チャバザイト基準(Cu-chabazite reference)SCR触媒組成物と比較してNOx変換を有意に増加させるSCR触媒組成物を含む物品と、を提供する。本発明のSCR触媒組成物は、任意の温度、特に低温でのNOx変換を改善する。さらに、開示されるSCR触媒組成物を調製する方法、ならびに、触媒性物品、排気処理システム、および排気流を処理する方法を提供し、各々は、開示されるSCR触媒組成物を含む。
【0011】
したがって、一態様では、還元剤の存在下でリーン燃焼エンジン排気ガスからの窒素酸化物(NOx)の還元を触媒するのに効果的な選択的触媒性還元(SCR)触媒組成物を提供し、その触媒組成物は、白金族金属(PGM)および卑金属酸化物をその上に堆積させた多孔質耐熱金属酸化物担体を含む第1の成分と、金属で促進されたゼオライトを含む第2の成分と、を含み、第1の成分の第2の成分に対する重量比は、約0.05~約0.5の範囲である。
【0012】
いくつかの実施形態では、多孔質耐熱金属酸化物は、シリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア、セリア-ジルコニア複合材料、チタニア、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、多孔質耐熱金属酸化物は、約1重量%~約20重量%の量でシリカと、約80重量%~約99重量%の量でアルミナを含む。いくつかの実施形態では、多孔質耐熱金属酸化物は、約5重量%の量でシリカと、約95重量%の量でアルミナを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、PGMは、白金、パラジウム、ロジウム、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0014】
いくつかの実施形態では、卑金属酸化物は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Mo、Ag、Snの酸化物、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、卑金属酸化物はCuOである。
【0015】
いくつかの実施形態では、ゼオライトは、AEI、AFT、AFV、AFX、AVL、CHA、DDR、EAB、EEI、ERI、IFY、IRN、KFI、LEV、LTA、LTN、MER、MWF、NPT、PAU、RHO、RTE、RTH、SAS、SAT、SAV、SFW、TSC、UFI、およびそれらの組み合わせから選択される構造型を有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、CHAおよびAEIからなる群から選択される構造型を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、金属は、Cu、Co、Ni、La、Mn、Fe、V、Ag、Ce、Nd、Mo、Hf、Y、またはWのうちの1つ以上である。いくつかの実施形態では、金属は、Cu、Fe、またはCeのうちの1つ以上である。
【0017】
いくつかの実施形態では、卑金属酸化物は、多孔質耐熱金属酸化物担体の約0.1~約20重量%の量で存在する。
【0018】
いくつかの実施形態では、PGMは、多孔質耐熱金属酸化物担体の約0.01~約20重量%の量で存在する。
【0019】
別の態様では、還元剤の存在下でリーン燃焼エンジン排気ガスからのNOxの還元を触媒するのに効果的なSCR物品を提供し、そのSCR物品は、全長を規定する入口端および出口端を有する基材を含み、本明細書に開示されるようなSCR触媒組成物を、その上に配置する。
【0020】
いくつかの実施形態では、SCR触媒組成物は、(a)第1の成分と、(b)第2の成分との混合物を含む第1のウォッシュコートであって、その第1のウォッシュコートは、触媒基材の長さの少なくとも一部に配置されている、第1のウォッシュコートと、第2の成分を含む第2のウォッシュコートであって、その第2のウォッシュコートは、触媒基材の長さの少なくとも一部に配置されている、第2のウォッシュコートと、を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、触媒基材上に直接配置し、第2のウォッシュコートは、第1のウォッシュコートの少なくとも一部に配置する。いくつかの実施形態では、第2のウォッシュコートは、触媒基材上に直接配置し、第1のウォッシュコートは、第2のウォッシュコートの少なくとも一部に配置する。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、入口端から、全長の約10%~約50%の長さまで、触媒基材上に直接配置し、第2のウォッシュコートは、第1のウォッシュコートの少なくとも一部上に配置する。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、入口端から、全長の約10%、約20%、約30%、約40%、または約50%の長さまで、触媒基材上に直接配置し、第2のウォッシュコートは、第1のウォッシュコートの少なくとも一部上に配置する。
【0022】
いくつかの実施形態では、第2のウォッシュコートは、入口端から、全長の約50%~約100%の長さまで、触媒基材上に直接配置し、第1のウォッシュコートは、第2のウォッシュコートの少なくとも一部上に配置する。いくつかの実施形態では、第2のウォッシュコートは、入口端から、全長の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%の長さまで、触媒基材上に直接配置し、第1のウォッシュコートは、第2のウォッシュコートの少なくとも一部上に配置する。
【0023】
いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、入口端から、全長の約20%~約40%の長さまで、触媒基材上に直接配置し、第2のウォッシュコートは、入口端から出口端まで延在している。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、入口端から、全長の約20%、約25%、約30%、約35%、または約40%の長さまで、触媒基材上に直接配置し、第2のウォッシュコートは、入口端から出口端まで延在している。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、入口端から、全長の約33%の長さまで、触媒基材上に直接配置し、第2のウォッシュコートは、入口端から出口端まで延在している。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、出口端から、全長の約10%~約50%の長さまで、触媒基材上に直接配置し、第2のウォッシュコートは、第1のウォッシュコートの少なくとも一部上に配置する。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、出口端から、全長の約10%、約20%、約30%、約40%、または約50%の長さまで、触媒基材上に直接配置し、第2のウォッシュコートは、第1のウォッシュコートの少なくとも一部上に配置する。
【0025】
いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、出口端から、全長の約20~約40%の長さまで、触媒基材上に直接配置し、第2のウォッシュコートは、入口端から出口端まで延在している。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、出口端から、全長の約20%、約25%、約30%、約35%、または約40%の長さまで、触媒基材上に直接配置し、第2のウォッシュコートは、入口端から出口端まで延在している。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、出口端から、全長の約33%の長さまで、触媒基材上に直接配置し、第2のウォッシュコートは、入口端から出口端まで延在している。
【0026】
いくつかの実施形態では、第2のウォッシュコートは、出口端から、全長の約50%~約100%の長さまで、触媒基材上に直接配置し、第1のウォッシュコートは、第2のウォッシュコートの少なくとも一部上に配置する。
【0027】
いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、全長の100%をカバーして触媒基材上に直接配置し、第2のウォッシュコートは、全長の100%をカバーして第1のウォッシュコート上に配置する。いくつかの実施形態では、第2のウォッシュコートは、全長の100%をカバーして触媒基材上に直接配置し、第1のウォッシュコートは、全長の100%をカバーして第2のウォッシュコート上に配置する。
【0028】
いくつかの実施形態では、SCR物品は、ゾーン化構成を有し、第1のウォッシュコートは、入口端から、全長の約10%~約50%の長さまで、触媒基材上に配置され、第2のウォッシュコートは、出口端から、全長の約50%~約90%の長さまで、触媒基材上に配置される。いくつかの実施形態では、SCR物品は、ゾーン化構成を有し、第1のウォッシュコートは、出口端から、全長の約10%~約50%の長さまで、触媒基材上に配置され、第2のウォッシュコートは、入口端から、全長の約50%~約90%の長さまで、触媒基材上に配置される。
【0029】
いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートでは、多孔質耐熱金属酸化物のゼオライトに対する重量比は約0.1~約10である。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートでは、多孔質耐熱金属酸化物のゼオライトに対する重量比は約0.2~約5である。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートでは、多孔質耐熱金属酸化物のゼオライトに対する重量比は、約0.2、約0.25、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1、約2、約3、約4、または約5である。
【0030】
いくつかの実施形態では、PGM成分はPtであり、卑金属酸化物は銅酸化物であり、ゼオライトは、チャバザイト構造を有し、銅で促進され、多孔質耐熱金属酸化物は5%シリカを含有するアルミナであり、Ptは、多孔質耐熱金属酸化物の約2.9重量%の量で存在し、銅酸化物は、多孔質耐熱金属酸化物の約10重量%の量で存在する。
【0031】
いくつかの実施形態では、基材はハニカム基材である。いくつかの実施形態では、ハニカム基材は、金属、セラミック、炭化ケイ素、コーディエライト、またはチタン酸アルミニウムである。いくつかの実施形態では、ハニカム基材は金属またはセラミックである。いくつかの実施形態では、ハニカム基材は、フロースルー基材またはウォールフローフィルター(フィルター上のSCR、SCRoFとも称される)である。
【0032】
いくつかの実施形態において、NOxの効果的な還元は、約150℃より高く、かつ約700℃より低い温度のときである。いくつかの実施形態では、NOxの効果的な還元は、約200℃~約600℃の温度のときである。いくつかの実施形態では、NOxの変換は、基材上に配置された銅-チャバザイトウォッシュコートのみを有する基準触媒性物品と比較して、200℃で少なくとも10%だけ増加する。いくつかの実施形態では、NOxの変換は、基材上に配置された銅-チャバザイトウォッシュコートのみを有する基準触媒性物品と比較して、200℃で少なくとも40%だけ増加する。
【0033】
さらなる態様では、排気ガス流を生成するリーン燃焼エンジンと、本明細書に開示されるようなSCR物品とを含む排気ガス処理システムを提供する。いくつかの実施形態では、排気ガス処理システムは、ディーゼル酸化触媒(DOC)、煤煙フィルター、尿素注入成分、アンモニア酸化触媒(AMOX)、低温NOx吸収剤(LT-NA)、およびリーンNOxトラップ(LNT)のうちの1つ以上をさらに含む。
【0034】
本開示のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下に簡潔に説明される添付の図面とともに以下の詳細な説明を閲読することで明らかになろう。本発明は、上記の実施形態の2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の任意の組み合わせ、および本開示に記載の任意の2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の特徴または要素の組み合わせを、そのような特徴または要素が、本明細書の特定の実施形態の説明で明示的に組み合わされているか否かに関わらず含む。本開示では、文脈が明らかに他のことを示さない限り、開示される発明の分けることが可能な特徴または要素が、その様々な態様および実施形態のいずれかにおいて、組み合わせ可能であると考えられるべきであると、全体として読み取られることが意図される。本発明の他の態様および利点は、以下で明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明の実施形態に関する理解を提供するために、添付の図面を参照する。参照番号は、本発明の例示的な実施形態の成分を指す。図面は、単なる例であり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載の開示は、添付の図において、限定としてではなく、例として図示されている。図を簡潔かつ明確にするために、図示されている特徴は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。例えば、いくつかの特徴の寸法は、明確にするために他の特徴に比べて誇張されている場合がある。さらに、適切であると考えられる場合、対応するまたは類似の要素を示すために、参照ラベルは、図の間で繰り返される。
【
図1a】ウォールフローフィルター基材の斜視図である。
【
図1b】ウォールフローフィルター基材の部分の断面図である。
【
図2a】特定の実施形態による3つの可能なコーティング構成の図である。
【
図2b】特定の実施形態による3つの可能なコーティング構成の図である。
【
図2c】特定の実施形態による3つの可能なコーティング構成の図である。
【
図3】本発明のSCR触媒物品が利用されている排出処理システムの実施形態の概略図である。
【
図4】ゾーニング設計およびコーティング順序の一実施形態の概略図である。
【
図5】ゾーニング設計およびコーティング順序の一実施形態の概略図である。
【
図6】特定の実施形態による、新鮮で老化したSCR触媒物品に関する温度の関数としてのNO
x変換およびN
2O形成の結果のグラフ表示である。
【
図7a】特定の実施形態による、新鮮なSCR触媒物品に関する200℃におけるNO
x変換の結果のグラフ表示である。
【
図7b】特定の実施形態による、新鮮なSCR触媒物品に関する200℃におけるNO
x変換の結果のグラフ表示である。
【
図8a】特定の実施形態による、新鮮なSCR触媒物品に関する500℃におけるNO
x変換の結果のグラフ表示である。
【
図8b】特定の実施形態による、新鮮なSCR触媒物品に関する500℃におけるNO
x変換の結果のグラフ表示である。
【
図9a】特定の実施形態による、新鮮なSCR触媒物品に関する200~300℃におけるピークN
2O形成の結果のグラフ表示である。
【
図9b】特定の実施形態による、新鮮なSCR触媒物品に関する200~300℃におけるピークN
2O形成の結果のグラフ表示である。
【
図10a】特定の実施形態による、老化したSCR触媒物品に関する200℃におけるNO
x変換の結果のグラフ表示である。
【
図10b】特定の実施形態による、老化したSCR触媒物品に関する200℃におけるNO
x変換の結果のグラフ表示である。
【
図11a】特定の実施形態による、老化したSCR触媒物品に関する500℃におけるNO
x変換の結果のグラフ表示である。
【
図11b】特定の実施形態による、老化したSCR触媒物品に関する500℃におけるNO
x変換の結果のグラフ表示である。
【
図12a】特定の実施形態による、老化したSCR触媒物品に関する200~300℃におけるピークN
2O形成の結果のグラフ表示である。
【
図12b】特定の実施形態による、老化したSCR触媒物品に関する200~300℃におけるピークN
2O形成の結果のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本開示は、標準的なCu-チャバザイト基準SCR触媒組成物および物品と比較して、NOx変換を有意に増加させる先進的な選択的触媒性還元(SCR)触媒組成物および物品を提供する。本発明のSCR触媒組成物および物品は、任意の温度において、特に、低温において、NOx変換を改善する。さらに、開示されるSCR触媒組成物を調製する方法、ならびに、触媒性物品、排気処理システム、および排気流を処理する方法を提供し、各々は、開示されるSCR触媒組成物を含む。
【0037】
本発明のいくつかの例示的な実施形態を記載する前に、本発明は、以下の説明に記載される構成またはプロセスステップの詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施または実行することができる。
【0038】
定義
本明細書における冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、文法的目的語の1つまたは2つ以上(例えば、少なくとも1つ)を指す。本明細書に引用される範囲はすべて、包括的である。全体を通して使用される「約」という用語は、小さな変動を表現し、説明するために使用される。例えば、「約」は、数値が、±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、±0.5%、±0.4%、±0.3%、±0.2%、±0.1%、または±0.05%だけ変更され得ることを意味している場合がある。全ての数値は、明示的に示されているかどうかに関係なく、「約」という用語で修飾されている。「約」という用語によって変更された数値には、特定の識別された値が含まれる。例えば、「約5.0」は、5.0を含む。本明細書での値の範囲の列挙は、本明細書で別途指示がない限り、範囲内に含まれる各個別の値を個別に参照する簡略法として機能することのみを意図し、各個別の値は、本明細書で個別に列挙されているのと同様に本明細書に組み込まれる。
【0039】
「触媒」という用語は、化学反応を促進する材料を指す。触媒としては、「触媒的に活性な種」と、活性種を運ぶまたは支持する「担体」が挙げられる。例えば、ゼオライト粒子は、卑金属触媒性種のための担体であり得る。
【0040】
触媒活性種は、化学反応を促進するため、「プロモーター」とも称される。
【0041】
本明細書で使用される場合、「促進される」という用語は、モレキュラーシーブ中の固有の不純物とは対照的に、例えばモレキュラーシーブ材料に、意図的に添加される成分を指す。モレキュラーシーブは、例えば、銅(Cu)および/または鉄(Fe)で促進され得るが、マンガン、コバルト、ニッケル、セリウム、白金、パラジウム、ロジウムまたはそれらの組み合わせなどの他の触媒性金属を使用することができる。
【0042】
本明細書で使用されているように、「含浸させられた」または「含浸」とは、担体材料の多孔質構造に触媒性材料が浸透することを指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、「担体」または「担体材料」という用語は、触媒性貴金属が適用される任意の高表面積材料、通常は金属酸化物材料を指す。「担体上」という用語は、「の上に分散された」、「の中に組み込まれた」、「の中に含浸された」「の上に含浸された」「に含浸された」、「の上に堆積された」、または他の方法で結合されたことを意味している。
【0044】
「触媒性物品(catalytic article)」または「触媒物品(catalyst article)」という用語は、所望の反応を促進するために使用される成分を指している。本触媒性物品は、その上に配置された少なくとも1つの触媒性コーティングを有する「基材」を含む。
【0045】
一般に、「効果的」という用語は、定義された触媒性活性または貯蔵/放出活性に関して、重量またはモルに基づいて、例えば、約35%~100%有効、例えば、約40%、約45%、約50%または約55%から、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%までを意味している。
【0046】
「排気流」または「排気ガス流」という用語は、固体または液体の粒子状物質を含有し得る流動ガスの任意の組み合わせを指している。流れは、気体成分を含み、例えば、液滴、固体粒子などの特定の非気体成分を含有し得る、リーン燃焼エンジンの排気である。燃焼機関の排気ガス流は、一般的に、燃焼生成物(CO2およびH2O)、不完全燃焼生成物(一酸化炭素(CO)および炭化水素(HC))、窒素酸化物(NOx)、可燃性および/または炭素質微粒子状物質(すす)、ならびに未反応の酸素および窒素を含む。
【0047】
本明細書で使用されているように、「上流」および「下流」という用語は、エンジンからテールパイプに向かうエンジン排気ガス流の流れに応じた相対的な方向を指し、エンジンは上流位置にあり、テールパイプおよび任意の汚染物低減物品、例えばフィルターおよび触媒は、エンジンの下流にある。基材の入口端は、「上流」端または「前」端と同義である。出口端は、「下流」端または「後」端と同義である。上流ゾーンは、下流ゾーンの上流である。上流ゾーンはエンジンまたはマニホールドにより近く、下流ゾーンはエンジンまたはマニホールドからさらに離れている場合がある。
【0048】
「流体連通している」という用語は、同じ排気ライン上に配置された物品を指すために使用され、すなわち、共通の排気流は、互いに流体連通している物品を通過する。流体連通している物品は、排気ラインにおいて互いに隣接している場合がある。あるいは、流体連通している物品は、「ウォッシュコートされたモノリス」とも称される1つ以上の物品によって分離され得る。
【0049】
「白金族金属(PGM)」とは、任意のPGM(Ru、Rh、Os、Ir、Pd、Ptおよび/またはAu)を指している。PGMについての言及は、任意の価電子状態でのPGMの存在を考慮に入れている。例えば、PGMは、原子価がゼロの金属性形態であり得るか、またはPGMは、酸化物形態であり得る。「白金(Pt)成分」、「ロジウム(Rh)成分」、「パラジウム(Pd)成分」、「イリジウム(Ir)成分」、「ルテニウム(Ru)成分」などの用語は、触媒の焼成または使用時に、分解するか、さもなければ触媒的に活性な形態、通常は金属または金属酸化物に変換する、それぞれの白金族金属化合物、錯体などを指す。
【0050】
本明細書で使用される場合、「卑金属酸化物」は、NOxの還元のために触媒的に活性であるか、またはNOxの還元のためにより活性であるように別の触媒性成分を促進する、遷移金属またはランタニド(例えば、バナジウム(V)、タングステン(W)、チタン(Ti)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジミウム(Pr)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、銀(Ag)、金(Au)、またはそれらの組み合わせを含む酸化物化合物を指している。卑金属酸化物としては、特に、銅、銀、鉄、マンガン、スズ、コバルト、ニッケルの酸化物、およびそれらの組み合わせが挙げられる。本明細書での参照を容易にするために、卑金属材料または卑金属酸化物材料の濃度は、酸化物形態ではなく元素金属濃度に関して報告される。卑金属酸化物成分(例えば、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、およびそれらの組み合わせ)中の卑金属の総濃度は変動し得るが、典型的には、多孔質担体、例えば、耐熱酸化物担体材料の重量に対して約1重量%~50重量%(例えば、耐熱酸化物担体に対して約1重量%~約50重量%)であろう。
【0051】
触媒性材料または触媒ウォッシュコートにおける「担体」は、沈殿、会合、分散、含浸、または他の好適な方法によって金属(例えば、PGM)を受容する材料を指す。例示的な担体としては、本明細書で以下に記載されるような多孔質耐熱金属酸化物担体が挙げられる。
【0052】
「高表面積の耐熱金属酸化物担体」という用語は、具体的には、20Åを超える細孔および広い細孔分布を有する担体粒子を指す。高表面積の耐熱金属酸化物担体、例えば、「ガンマアルミナ」または「活性アルミナ」とも称されるアルミナ担体材料は、典型的には、1グラムあたり60平方メートル(「m2/g」)を超える、しばしば約200m2/g以上の新鮮な材料のBET表面積を示す。そのような活性化アルミナは通常、アルミナのガンマ相とデルタ相との混合物であるが、相当量のエータ、カッパ、およびシータアルミナ相も含有してもよい。
【0053】
本明細書で使用される場合、「BET表面積」という用語は、N2吸着によって表面積を決定するためのBrunauer,Emmett,Teller方法に関するその通常の意味を有する。細孔径および細孔容積は、BET型のN2吸着または脱着実験を使用して決定され得る。
【0054】
本明細書で使用される場合、ゼオライトおよび他のゼオライト骨格材料(例えば、同形置換材料)などの「モレキュラーシーブ」という用語は、粒子状形態で、触媒性金属成分を担持し得る材料を指す。モレキュラーシーブは、一般的に四面体型のサイトを含有し、かつ実質的に均一な細孔分布を有し、その細孔径が20オングストローム(Å)以下である、広範な三次元網目構造の酸素イオンに基づく材料である。
【0055】
モレキュラーシーブは、ゼオライト系(ゼオライト)である場合もあれば、非ゼオライトである場合もある。ゼオライト系と非ゼオライト系の両方のモレキュラーシーブは、チャバザイト結晶構造を有することができ、それは、国際ゼオライト学会によってCHA構造とも称される。ゼオライト系チャバザイトは、近似式Ca6[Al12Si24O72].40H2O(すなわち、水和カルシウムアルミニウムシリケート)を有するゼオライト群の天然に存在するテクト珪酸塩鉱物を含む。ゼオライトチャバザイトの3つの合成形態は、参照によって本明細書に組み込まれる、John Wiley&Sonsにより1973年に出版されたD.W.Breckによる“Zeolite Molecular Sieves,”に記載されている。Breckによって報告された3つの合成形態は、J.Chem.Soc.,p.2822(1956),Barrer et.Al.に記載されているゼオライトK-G、英国特許第868,846号(1961)に記載されているゼオライトD、および米国特許第3,030,181号に記載されているゼオライトRである。ゼオライト系チャバザイトの別の合成形態であるSSZ-13の合成は、米国特許第4,544,538号に記載されている。チャバザイト結晶構造を有する非ゼオライトモレキュラーシーブの合成形態であるシリコアルミノホスフェート34(SAPO-34)の合成は、米国特許第4,440,871号および米国特許第7,264,789号に記載されている。チャバザイト構造を有するさらに別の合成非ゼオライト系モレキュラーシーブ、SAPO-44を作製する方法は、例えば、米国特許第6,162,415に記載されている。
【0056】
モレキュラーシーブは、小細孔、中細孔、および大細孔のモレキュラーシーブまたはそれらの組み合わせを含む。細孔径は環径により定義される。小細孔モレキュラーシーブは、最大8つの四面体原子によって画定されるチャネルを含有する。中細孔モレキュラーシーブは、10員環によって画定されるチャネルを含有する。大細孔モレキュラーシーブには、12員環で画定されるチャネルを含有する。本明細書で使用される場合、「小細孔」という用語は、約5Å(オングストローム)よりも小さい細孔開口部、例えば約3.8Åのオーダーの細孔開口部を指している。
【0057】
例示的な小細孔モレキュラーシーブとしては、骨格型ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、ZON、およびそれらの混合物または連晶が挙げられる。
【0058】
「八環」ゼオライトという語句は、八環細孔開口部および二重六環二次構造単位を有し、かつ4個の環による二重六環構築単位の接続から生じるケージ様構造を有するモレキュラーシーブを指している。合成8環小細孔モレキュラーシーブ(例えば、CHA構造を有する)は、アルカリ性水性条件下で、シリカ源、アルミナ源、および構造指向剤を混合することによって調製することができる。典型的なシリカ源としては、さまざまな種類のヒュームドシリカ、沈降シリカ、およびコロイドシリカ、ならびにシリコンアルコキシドが挙げられる。典型的なアルミナ源としては、ベーマイト、疑似ベーマイト、アルミニウム塩、例えば、亜硫酸アルミニウムまたはアルミン酸ナトリウムおよびアルミニウムアルコキシドが挙げられる。水酸化ナトリウムは、典型的には、反応混合物に添加する。この合成のための典型的な構造指向剤は、水酸化アダマンチルトリメチルアンモニウムであるが、他のアミンおよび/または第四級アンモニウム塩が置換または添加され得る。反応混合物を、撹拌しながら圧力容器内で加熱して、結晶生成物を得る。典型的な反応温度は、約100℃~約200℃、例えば、約135℃~約170℃の範囲である。典型的な反応時間は、1時間から30日の間であり、いくつかの実施形態では、10時間から3日である。反応の終わりに、pHを、任意選択で、6~10、例えば7~7.5に調整し、生成物を濾過し水で洗浄する。硝酸など、任意の酸を使用してpHを調整することができる。任意に、生成物は遠心分離され得る。有機添加剤は、固形生成物の取り扱いおよび単離を助けるために使用され得る。噴霧乾燥は、生成物の処理における任意のステップである。固体生成物は、空気中または窒素中で熱処理される。あるいは、各ガス処理は、さまざまな順序で適用することも、ガスの混合物を適用することもできる。典型的な焼成温度は約400℃~約850℃である。CHA構造を有するモレキュラーシーブは、例えば、米国特許第4,544,538号および同第6,709,644号に開示されている方法に従って調製され得る。
【0059】
例示的な中細孔モレキュラーシーブとしては、骨格型AEL、AFO、AHT、BOF、BOZ、CGF、CGS、CHI、DAC、EUO、FER、HEU、IMF、ITH、ITR、JRY、JSR、JST、LAU、LOV、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MVY、MWW、NAB、NAT、NES、OBW、PAR、PCR、PON、PUN、RRO、RSN、SFF、SFG、STF、STI、STT、STW、SVR、SZR、TER、TON、TUN、UOS、VSV、WEI、WEN、およびそれらの混合物または連晶が挙げられる。
【0060】
例示的な大細孔モレキュラーシーブとしては、骨格型AFI、AFR、AFS、AFY、ASV、ATO、ATS、BEA、BEC、BOG、BPH、BSV、CAN、CON、CZP、DFO、EMT、EON、EZT、FAU、GME、GON、IFR、ISV、ITG、IWR、IWS、IWV、IWW、JSR、LTF、LTL、MAZ、MEI、MOR、MOZ、MSE、MTW、NPO、OFF、OKO、OSI、RON、RWY、SAF、SAO、SBE、SBS、SBT、SEW、SFE、SFO、SFS、SFV、SOF、SOS、STO、SSF、SSY、USI、UWY、VET、およびそれらの混合物または連晶が挙げられる。
【0061】
本明細書で使用される場合、「ゼオライト」という用語は、ケイ素およびアルミニウム原子をさらに含むモレキュラーシーブの具体的な例を指している。一般に、ゼオライトは、角を共有するTO4四面体で構成される開口三次元骨格構造を有するアルミノシリケートとして定義され、式中、Tは、AlもしくはSiであるか、または任意選択的にPである。アニオン性骨格の電荷のバランスをとるカチオンは、骨格酸素と緩く会合しており、残りの細孔容積は、水分子で満たされている。非骨格カチオンは一般的に交換可能であり、水分子は除去可能である。
【0062】
アルミノシリケートゼオライト構造は、骨格において同形に置換されたリンまたは他の金属を含まない。すなわち、「アルミノシリケートゼオライト」は、SAPO、AlPO、およびMeA1PO材料などのアルミノホスフェート材料を除外し、一方、より広い用語「ゼオライト」は、アルミノシリケートおよびアルミノホスフェートを含む。この開示のために、SAPO、A1PO、およびMeA1PO材料は、非ゼオライトモレキュラーシーブと見なす。
【0063】
ゼオライトは、主に、(SiO4)/AlO4四面体の頑強な網目構造によって形成される空隙の形状に従って区別することができる。空隙への入口は、入口開口部を形成する原子について、6個、8個、10個、または12個の環原子から形成される。ゼオライトは、ゼオライトの型、ならびにゼオライト格子に含まれるカチオンのタイプおよび量に応じて、直径が約3~10オングストロームの範囲である、かなり均一な細孔径を有する結晶材料である。
【0064】
ゼオライトは、共通の酸素原子により結合されて三次元網目構造を形成するSiO4/AlO4四面体を含み得る。本ゼオライトのシリカ対アルミナ(「SAR」)のモル比は、広範囲にわたって変えることができるが、一般に2以上である。例えば、本ゼオライトは、約5~約1000のSARを有し得る。
【0065】
本明細書で使用される場合、「基材」という用語は、触媒組成物、すなわち触媒性コーティングが、典型的にはウォッシュコートの形態で配置されるモノリシック材料を指している。1つ以上の実施形態では、基材は、フロースルーモノリスおよびモノリシックウォールフローフィルターである。ウォッシュコートは、液体中に特定の固形物含有量(例えば30重量%~90重量%)の触媒を含有するスラリーを調製し、それから、これを基材にコーティングし、乾燥させてウォッシュコート層を提供することによって形成される。
【0066】
「モノリシック基材」への言及は、入口から出口まで均質で連続的な単一構造を意味している。
【0067】
「ウォッシュコート」は、「基材」、例えば、ハニカムフロースルーモノリス基材または処理されるガス流の通過を可能にするのに十分に多孔性であるフィルター基材に適用される材料(例えば、触媒)の薄くて付着性のあるコーティング技術においてその通常の意味を有する。本明細書で使用され、Heck,Ronald and Farrauto,Robert,Catalytic Air Pollution Control,New York:Wiley-Interscience,2002,pp.18-19に記載されているように、ウォッシュコート層は、モノリシック基材または下にあるウォッシュコート層の表面上に配置された材料の組成的に異なる層を含む。基材は、1つ以上のウォッシュコート層を含むことができ、各ウォッシュコート層は、ある点で異なっている場合があり(例えば、粒径または結晶相などのその物理的特性が異なる場合がある)、および/または化学的触媒性機能が異なっていてもよい。
【0068】
コーティング層に関する「の上に(on)」および「の上を覆う(over)」という用語は、同義語として使用してよい。「の上に直接」という用語は、直接接触している状態を意味している。開示される物品は、特定の実施形態では、第2のコーティング層「の上に」1つのコーティング層を含むものと言及され、そのような言語は、介在層を有する実施形態を包含することが意図され、コーティング層間の直接接触は、必要とされない(すなわち、「の上に」は、「直接上」と同等ではない)。
【0069】
「NOx」という用語は、NOまたはNO2などの窒素酸化物化合物を指す。
【0070】
「選択的触媒性還元」(SCR)は、適切な量の酸素の存在下で還元剤を使用して窒素酸化物を触媒性還元し、主に窒素および水蒸気(蒸気)を形成する。還元剤は、例えば、炭化水素、水素、および/またはアンモニアであり得る。アンモニアの存在下でのSCR反応は、次の3つの反応(式1~3)に従って起こる:
4NO+4NH3+O2 → 4N2+6H2O (式1)
NO+NO2+2NH3 → 2N2+3H2O(式2)
6NO2+8NH3 → 7N2+12H2O(式3)
【0071】
「TWC」は、炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物が実質的に同時に変換される三元変換の機能を指している。ガソリンエンジンは、典型的には、燃料リッチと燃料リーンの空燃比(A/F比)(・=1±~0.01)の間で振動するかまたはわずかに摂動する化学量論に近い反応条件下で作動する。本明細書における「化学量論」の使用は、ガソリンエンジンの状態を指しており、化学量論に近いA/F比の振動または摂動を含んでいる。TWC触媒は、さまざまな空燃比の下で酸素を保持および排出できる多価状態を有するセリアまたはセリア-ジルコニア(以下で参照)などの酸素貯蔵成分(OSC)を含む。NOxが還元される際のリッチ条件下では、OSCは、未反応のCOおよびHCを消費するために少量の酸素を供給する。同様に、COおよびHCが酸化される際のリーン条件下では、OSCは、過剰の酸素および/またはNOxと反応する。結果として、燃料リッチと燃料リーンの空燃比の間で振動する雰囲気が存在する場合でも、HC、CO、およびNOx変換が、すべて同時に(または本質的にすべて同時に)存在する。典型的には、TWC触媒は、1つ以上の白金族金属、例えば、パラジウムおよび/またはロジウム、任意選択で白金;酸素貯蔵成分;および任意選択で促進剤および/または安定剤を含む。リッチ条件下では、TWC触媒はアンモニアを生成することができる。
【0072】
「OSC」とは、多価酸化状態を有し、かつ、酸化条件下で、酸素(O2)もしくはNOxなどの酸化剤と活発に反応することができるかまたはCO、HC、もしくは水素(H2)などの還元剤と反応する実体である、酸素貯蔵成分を指している。好適な酸素貯蔵成分の例としては、セリアおよびプラセオジミアが挙げられる。ウォッシュコート層へのOSCの送達は、例えば、混合酸化物を使用することによって達成することができる。例えば、セリアは、セリウムとジルコニウムの混合酸化物、および/またはセリウム、ジルコニウム、およびネオジムの混合酸化物として送達することができる。例えば、プラセオジミアは、プラセオジミウムとジルコニウムの混合酸化物、および/またはプラセオジム、セリウム、ランタン、イットリウム、ジルコニウム、およびネオジムの混合酸化物として送達することができる。
【0073】
「DOC」とは、ディーゼルエンジンの排気ガス中の炭化水素と一酸化炭素を変換するディーゼル酸化触媒を指す。典型的には、DOCは、1つ以上の白金族金属、例えば、パラジウムおよび/または白金;担体材料、例えば、アルミナ;HC貯蔵のためのゼオライト;および任意選択で促進剤および/または安定剤を含む。
【0074】
「LNT」は、白金族金属と、セリアと、およびリーン状態中にNOxを吸着するのに好適なアルカリ土類トラップ材料と、を含有する触媒である。(例えば、BaOまたはMgO)を含む触媒である、リーンNOxトラップを指している。リッチな条件下で、NOxが放出され、窒素に還元される。
【0075】
「CSF」は、ウォールフローモノリスである触媒化煤煙フィルターを指している。ウォールフローフィルターは、交互の入口チャネルおよび出口チャネルからなり、入口チャネルは出口端で閉塞され、出口チャネルは入口端で閉塞される。入口チャネルに入る煤煙を運ぶ排気ガス流は、出口チャネルから出る前に、強制的にフィルター壁を通過する。煤煙過および再生に加えて、CSFは、COおよびHCをCO2およびH2Oに酸化し、またはNOをNO2に酸化して、下流のSCR触媒作用を促進する、またはより低い温度で煤煙粒子の酸化を促進する。CSFは、LNT触媒の後ろに位置するとき、H2S酸化機能を有してLNT脱硫プロセスの間にH2S排出を抑制することができる。
【0076】
「SCRoF」は、ウォールフローフィルター上に直接コーティングされたSCR触媒組成物を指す。
【0077】
「GDI」とは、リーン燃焼条件下で作動する、ガソリン直噴ガソリンエンジンを指す。
【0078】
「AMOx」は、1つ以上の金属(典型的にはPtであるが、それに限定されない)およびアンモニアを窒素に変換するのに好適なSCR触媒を含有する触媒である、選択的アンモニア酸化触媒を指す。
【0079】
特に明記しない限り、全ての部およびパーセンテージは、重量に基づく。特に明記しない限り、重量パーセント(重量%)は、揮発性物質を含まない組成物全体、すなわち乾燥固形分に基づく。
【0080】
本明細書に記載されているすべての方法は、本明細書で別途指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供される任意および全ての例または例示的言語(例えば「等」)の使用は、材料および方法をよりよく説明することのみを意図したものであり、別途請求されない限り、範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言葉も、請求されていない要素を、開示された材料および方法の実施に必須であることを示すものと解釈されるべきではない。
【0081】
本明細書で参照される全ての米国特許出願、公開された特許出願、および特許は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0082】
I.触媒組成物
本発明の開示は、還元剤の存在下でリーン燃焼エンジン排気ガスからのNOxの還元を触媒するのに効果的な選択的触媒性還元(SCR)触媒組成物を提供し、その触媒組成物は、白金族金属(PGM)および卑金属酸化物をその上に堆積させた多孔質耐熱金属酸化物担体を含む第1の成分と、金属で促進されたゼオライトを含む第2の成分であって、第1の成分と第2の成分とを含み、第1の成分の第2の成分に対する重量比は、約0.05~約0.5の範囲である。いくつかの実施形態では、重量比は、約0.05、約0.06、約0.07、約0.08、約0.09、または約0.1から、約0.2、約0.3、約0.4、または約0.5までである。
【0083】
触媒的に活性なPGMおよび卑金属酸化物が堆積される多孔質耐熱金属酸化物担体材料は、ガソリンまたはディーゼルエンジンの排気と関連のある温度などの高温で化学的および物理的安定性を示す。例示的な多孔質耐熱金属酸化物としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、プラセオジミア、酸化錫など、ならびに、それらの物理的混合物または化学的組み合わせ、例えば、原子的にドープされた組み合わせ、例えば、高表面積のまたは活性化された化合物、例えば、活性アルミナが挙げられる。
【0084】
PGM成分および卑金属酸化物を担持するために使用するのに好適であり得る多孔質耐熱金属酸化物としては、アルミナ、チタニア、ジルコニア;アルミナと、チタニア、ジルコニア、およびセリアのうちの1つ以上との混合物;アルミナにコーティングされたセリア;またはアルミナにコーティングされたチタニアが挙げられる。多孔質耐熱金属酸化物は、酸化物または混合酸化物、例えば、シリカ-アルミナ、アモルファスまたは結晶性であり得るアルミノシリケート、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-クロミア、アルミナ-セリアなどを含み得る。多孔質耐熱金属酸化物は、特に、ガンマアルミナ、シリカアルミナ、アルミナにコーティングされたセリア、アルミナにコーティングされたチタニア、またはアルミナにコーティングされたジルコニアである。シリカ-アルミナ、セリア-ジルコニア、プラセオジミア-セリア、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-セリア-ジルコニア、ランタナ-アルミナ、ランタナ-ジルコニア-アルミナ、バリア-アルミナ、バリア-ランタナ-アルミナ、バリア-ランタナ-ネオジミアアルミナ、およびアルミナ-セリアなどの金属酸化物の組み合わせが含まれる。例示的なアルミナは、大きい細孔のベーマイト、ガンマ-アルミナ、およびデルタ/シータアルミナを含む。例示的なプロセスで出発材料として使用される有用な市販のアルミナとしては、活性アルミナ、例えば、高嵩密度のガンマ-アルミナ、低嵩密度または中嵩密度の大細孔ガンマ-アルミナ、および低嵩密度の大細孔ベーマイトおよびガンマ-アルミナが挙げられる。いくつかの実施形態では、多孔質耐熱金属酸化物は、シリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア、セリア-ジルコニア複合材料、チタニア、またはそれらの組み合わせを含む。
【0085】
SCR触媒組成物は、上記の多孔質耐熱金属酸化物のいずれかを任意の量で含むことができる。例えば、SCR触媒組成物中の多孔質耐熱金属酸化物は、触媒組成物の総乾燥重量に基づいて、約1重量%、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、または約35重量%から、約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%、または約70重量%までであり得る。多孔質耐熱金属酸化物は、例えば、約10~約99重量%のアルミナ、約15~約95重量%のアルミナ、または約20~約85重量%のアルミナを含み得る。いくつかの実施形態では、多孔質耐熱金属酸化物は、約1重量%~約20重量%の量でシリカ、および約80重量%~約99重量%の量でアルミナを含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、PGMは、白金、パラジウム、ロジウム、およびそれらの組み合わせから選択される。PGMは、例えば、可溶性前駆体(例えば、硝酸パラジウム)をその上に分散させることによって、多孔質耐熱金属酸化物担体上に分散させることができる。あるいは、PGMは、担体上に分散されるのとは対照的に、直径1~15ナノメートル以下程度の微粒子などの粒子状形態で組成物中に提供する。多孔質耐熱金属酸化物担体上に堆積されるPGMの量は変えることができる。いくつかの実施形態では、PGMは、多孔質耐熱金属酸化物担体の約0.01~約20重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、PGMは、孔質耐熱金属酸化物担体の約0.01、約0.02、約0.03、約0.04、約0.05、約0.06、約0.07、約0.08、約0.09、または約0.1から、約0.5、約1.0、または約2.0、約5.0、約10.0、または約20重量%で存在する。
【0087】
いくつかの実施形態では、卑金属酸化物は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Mo、Ag、Snの酸化物、またはそれらの組み合わせである。特定の実施形態では、卑金属酸化物はCuOである。多孔質耐熱金属酸化物担体上に堆積される卑金属酸化物の量は変えることができる。いくつかの実施形態では、卑金属酸化物は、多孔質耐熱金属酸化物担体の約0.1~約20重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、卑金属酸化物は、多孔質耐熱金属酸化物担体の約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、または約1から、約2、約5、約10、または約20重量%で存在する。
【0088】
金属で促進されるゼオライトの構造型は変えることができる。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、AEI、AFT、AFV、AFX、AVL、CHA、DDR、EAB、EEI、ERI、IFY、IRN、KFI、LEV、LTA、LTN、MER、MWF、NPT、PAU、RHO、RTE、RTH、SAS、SAT、SAV、SFW、TSC、UFI、およびそれらの組み合わせから選択される構造型を有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、CHAおよびAEIからなる群から選択される構造型を有する。
【0089】
ゼオライトを促進する金属は、一般に卑金属(例えば、遷移金属またはランタニド)である。いくつかの実施形態では、ゼオライトを促進する金属は、Cu、Co、Ni、La、Mn、Fe、V、Ag、Ce、Nd、Mo、Hf、Y、またはWのうちの1つ以上である。特定の実施形態では、ゼオライトを促進する金属は、Cu、Fe、またはCeのうちの1つ以上である。特定の実施形態では、ゼオライトを促進する金属は、Cuである。この文脈での「金属」についての言及は、任意の原子価状態の金属の存在を考慮している。例えば、ゼオライトを促進する金属は、原子価がゼロの金属性形態であり得るか、またはその金属は、酸化物形態であり得る。一般に、ゼオライトを促進する金属は酸化物形態で存在するであろう。
【0090】
触媒組成物は、バインダー、例えば、好適な前駆体、例えば、酢酸ジルコニルまたは任意の他の好適ジルコニウム前駆体、例えば、硝酸ジルコニルから誘導されたZrO2バインダー、を使用して調製し得る。酢酸ジルコニルバインダーは、例えば、触媒が少なくとも約600℃の高温、例えば、約800℃以上および約5%以上の高水蒸気環境に曝露されるとき、熱エージング後も均一で無傷のままのコーティングを提供する。他の潜在的に好適なバインダーとしては、アルミナおよびシリカが挙げられるが、それらに限定されない。アルミナバインダーとしては、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、およびオキシ水酸化アルミニウムが挙げられる。アルミニウム塩およびアルミナのコロイド状形態も使用され得る。シリカバインダーは、シリケートおよびコロイダルシリカなどのSiO2のさまざまな形態を含む。バインダー組成物は、ジルコニア、アルミナ、およびシリカの任意の組み合わせを含み得る。
【0091】
他の例示的な結合剤としては、ボヘマイト、ガンマ-アルミナ、またはデルタ/シータアルミナ、ならびにシリカゾルが挙げられる。バインダーは、存在する場合、一般的に、約1~5重量%の量のウォッシュコート総充填量で使用される。あるいは、バインダーは、ジルコニア系またはシリカ系、例えば、酢酸ジルコニウム、ジルコニアゾル、またはシリカゾルであることができる。存在する場合、アルミナバインダーは、典型的には、約0.05g/in3~約1g/in3の量で使用される。
【0092】
SCR組成物を作製する方法
本開示によれば、SCR触媒組成物は、一般に、白金族金属(PGM)および卑金属酸化物をその上に堆積させた多孔質耐熱金属酸化物担体を含む第1の成分を提供することによって、また金属で促進されたゼオライトを含む第2の成分を提供することによって、調製され、第1の成分の第2の成分に対する重量比は、約0.05~約0.5の範囲内である。
【0093】
本発明のさまざまな実施形態による金属促進ゼオライトを調製するために、金属(例えば、銅、鉄、セリウムなど)をゼオライト中にイオン交換される。そのような金属は、概して、アルカリ金属またはNH4ゼオライト中にイオン交換される(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Bleken,F.et al.Topics in Catalysis 2009,52,218-228に開示されているように、当技術分野で既知の方法によるNH4イオン交換によって調製され得る)。
【0094】
金属促進ゼオライトの調製は、典型的には、粒子状形態のゼオライトと金属前駆体溶液とのイオン交換プロセスを含む。例えば、銅を供給するために銅塩を使用してもよい。銅を提供するために酢酸銅が使用されるとき、銅イオン交換で使用される液体銅溶液の銅濃度は、特定の実施形態では、約0.01~約0.4モルの範囲、より具体的には約0.05~約0.3の範囲、さらにより具体的には約0.1~約0.25モルの範囲、さらにより具体的には約0.125~約0.25モルの範囲、さらにより具体的には約0.15~約0.225モルの範囲、さらにより具体的には0.2からの範囲である。特定の実施形態では、銅などの金属は、アルカリ金属またはNH4-チャバザイト中にイオン交換されて、Cu-チャバザイトを形成する。さらに、金属イオンは、金属前駆体として固体金属酸化物を使用することによって、またガス流またはスラリー環境においてゼオライト前駆体としてゼオライトのプロトンまたはNH4形態を使用することによって、ゼオライト中に交換され得る。この場合、交換プロセスを容易にするために高温が必要になる場合がある。固相交換の場合、ガス流中の特定の水分レベルも利益をもたらす場合がある。
【0095】
窒素酸化物のSCRをさらに促進するために、いくつかの実施形態では、ゼオライトは、2つ以上の金属(例えば、1つ以上の他の金属と組み合わせた銅)で促進することができる。2つ以上の金属が金属促進ゼオライト系材料中に含められる場合、複数の金属前駆体(例えば、銅および鉄前駆体)が、同時にまたは別個にイオン交換され得る。特定の実施形態では、第2の金属は、第1の金属で最初に促進されたゼオライト材料中に交換され得る(例えば、第2の金属は、銅で促進されたゼオライト材料中に交換され得る)。
【0096】
II.触媒性物品
別の態様では、還元剤の存在下でリーン燃焼エンジン排気ガスからのNOxの還元を触媒するのに効果的なSCR物品を提供し、そのSCR物品は、全長を規定する入口端および出口端を有する基材を含み、本明細書に開示されるようなSCR触媒組成物を、その上に配置する。
【0097】
基材
1つ以上の実施形態では、本触媒組成物は、触媒性物品を形成するために基材上に配置される。基材を含む触媒性物品は、一般に、排気ガス処理システムの一部として用いられる(触媒物品としては、本明細書に開示されるSCR組成物を含む物品が挙げられるが、それらに限定されない)。有用な基材は、3次元であり、円柱と同様の長さ、直径、および体積を有する。形状は必ずしも円柱と同形である必要はない。長さは、入口端および出口端によって定義される軸方向の長さである。
【0098】
1つ以上の実施形態によれば、開示される組成物(複数可)のための基材は、自動車用触媒を調製するために典型的には使用される任意の材料で構成することができ、典型的には、金属またはセラミックのハニカム構造を含むであろう。基材は、典型的には、ウォッシュコート組成物が適用および接着される複数の壁面を提供し、それによって触媒組成物のための担体として作用する。
【0099】
セラミック基材は、任意の好適な耐熱材料、例えば、コーディエライト、コーディエライト-α-アルミナ、チタン酸アルミニウム、チタン酸シリコン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカ-マグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、α-アルミナ、アルミノシリケートなどから作製され得る。
【0100】
基材はまた、金属性であってもよく、1つ以上の金属または金属合金を含む。金属性基材は、チャネル壁に開口部または「パンチアウト」を有するものなど、任意の金属性基材を含み得る。金属性基材は、ペレット、圧縮金属性繊維、波形シート、またはモノリス形態などの様々な形状で用いられ得る。金属性基材の特定の例としては、耐熱性の卑金属合金、特に、鉄が実質的または主要な成分である合金が挙げられる。そのような合金は、ニッケル、クロム、およびアルミニウムのうちの1つ以上を含有し得、これらの金属の合計は、有利には、いずれの場合も、基材の重量に基づいて、少なくとも約15重量%(重量パーセント)の合金、例えば、約10~25重量%のクロム、約1~8重量%のアルミニウム、および0~約20重量%のニッケルを含み得る。金属性基材の例としては、直線チャネルを有するもの、ガスの流れを妨害し、チャネル間のガスの流れの連絡を開くために、軸方向チャネルに沿って突出したブレードを有するもの、およびチャネル間のガス輸送を強化してモノリス全体にわたる放射状のガス輸送を可能にするためのブレードならびに孔も有するものが挙げられる。
【0101】
通路が開放されて流体がそこを流れて通過する(フロースルー基材)ように、基材の入口または出口面から、そこを通って延在している微細で平行なガス流路を有するタイプのモノリシック基材などの、本明細書に開示される触媒性物品のための任意の好適な基材が用いられ得る。別の好適な基材は、基材の長手方向軸に沿って延在している複数の微細で実質的に平行なガス流路を有するタイプであり、典型的には、各流路は、基材本体の一端で遮断され、交互流路は反対側の端面で遮断されている(「ウォールフローフィルター」)。フロースルーおよびウォールフロー基材はまた、例えば、国際出願公開第WO2016/070090号にも教示されており、それは参照により完全に本明細書に組み込まれる。
【0102】
いくつかの実施形態では、触媒基材は、ウォールフローフィルターまたはフロースルー基材の形態のハニカム基材を含む。いくつかの実施形態では、基材はウォールフローフィルターである。いくつかの実施形態では、基材はフロースルー基材である。フロースルー基材およびウォールフローフィルターについては、以下でさらに考察されよう。
【0103】
フロースルー基材
いくつかの実施形態では、基材は、フロースルー基材(例えば、フロースルーハニカムモノリシック基材を含むモノリシック基材)である。フロースルー基材は、流路が流体流に対して開いているように、基材の入口端から出口端まで延在している微細で平行なガス流路を有する。流体の入口から流体の出口までの本質的に直線の経路である流路は、壁によって画定されており、壁の上または壁の中において、触媒性コーティングは、流路を通って流れるガスが触媒性材料と接触するように、配置されている。フロースルー基材の流路は、薄壁のチャネルであり、台形、長方形、正方形、正弦波、六角形、楕円形、円形などの任意の好適な断面形状およびサイズにすることができる。フロースルー基材は、上記のようにセラミックまたは金属性であることができる。
【0104】
フロースルー基材は、例えば、約50in3~約1200in3の体積、約60セル/平方インチ(cpsi)~約500cpsiまたは最大約900cpsi、例えば、約200~約400cpsiのセル密度(入口開口部)、および約50~約200ミクロンまたは約400ミクロンの壁厚を有する。
【0105】
ウォールフローフィルター基材
いくつかの実施形態では、基材は、ウォールフローフィルターであり、それは、一般に、基材の長手方向軸に沿って延在している複数の微細で実質的に平行なガス流路を有する。典型的には、各通路は、基材本体の一端でブロックされ、代替の通路は、反対の端面でブロックされる。そのようなモノリシックウォールフローフィルター基材は、断面の1平方インチあたり最大約900以上の流路(または「セル」)を含有することができるが、使用されるのは極わずかであり得る。例えば、基材は、1平方インチあたり約7~600、より一般的には約100~400のセル(「cpsi」)を有し得る。セルは、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、または他の多角形の断面を有することができる。ウォールフローフィルター基材は、上記のようにセラミックまたは金属性であることができる。
【0106】
図1aを参照すると、例示的なウォールフローフィルター基材は、円筒形であり、直径Dおよび軸方向長さLを有する円筒形の外面を有する。
図1bは、例示的なウォールフローフィルターの斜視図である。モノリシックウォールフローフィルター基材セクションの断面図を
図1bに例示してあり、交互になっている閉塞流路と開放流路(セル)が示されている。ブロックまたは閉塞端100は、開放流路101と交互になっていて、各対向端はそれぞれ開放およびブロックされている。フィルターは、入口端102および出口端103を有する。多孔質セル壁104を横切る矢印は、開放セル端に入り、多孔質セル壁104を通って拡散し、開放出口セル端を出る排気ガス流を表している。閉塞端100は、ガス流を防ぎ、セル壁を通る拡散を促進する。各セル壁は、入口側104aおよび出口側104bを有するであろう。流路は細胞壁で囲まれている。
【0107】
ウォールフローフィルター物品基材は、例えば、約50cm3、約100in3、約200in3、約300in3、約400in3、約500in3、約600in3、約700in3、約800in3、約900in3、または約1000in3から、約1500in3、約2000in3、約2500in3、約3000in3、約3500in3、約4000in3、約4500in3、または約5000in3までの体積を有し得る。ウォールフローフィルター基材は、典型的には、約50ミクロン~約2000ミクロン、例えば、約50ミクロン~約450ミクロン、または約150ミクロン~約400ミクロンの壁厚を有する。
【0108】
ウォールフローフィルターの壁は、多孔質であり、一般に、機能性コーティングを配置する前に、少なくとも約40%または少なくとも約50%の壁多孔度を有し、平均細孔径は少なくとも約10ミクロンである。例えば、いくつかの実施形態におけるウォールフローフィルター物品基材は、≧40%、≧50%、≧60%、≧65%、または≧70%の多孔度を有するであろう。例えば、ウォールフローフィルター物品基材は、触媒性コーティングを配置する前に、約50%、約60%、約65%、または約70%から、約75%までの壁多孔度および約10または約20から、約30ミクロンまたは約40ミクロンまでの。平均細孔径を有するであろう。「壁の多孔度」および「基材の多孔度」という用語は、同じ意味であり、交換可能である。多孔度は、空隙容量(または細孔容積)を基材材料の総体積で割った割合である。細孔径および細孔径分布は、典型的には、Hgポロシメトリー測定によって決定される。
【0109】
基材のコーティングプロセス
本開示のSCR触媒性物品を製造するために、本明細書に記載の基材は、本明細書に開示されるSCR触媒組成物でコーティングされる。コーティングは、「触媒性コーティング組成物」または「触媒性コーティング」である。「触媒組成物」および「触媒性コーティング組成物」は同義語である。
【0110】
一般に、触媒組成物は、調製され、基材上にコーティングされる。この方法は、本明細書に一般に開示される触媒組成物(または触媒組成物の1つ以上の成分)を溶媒(例えば、水)と混合して、触媒基材をコーティングするためのスラリーを形成することを含むことができる。触媒組成物(すなわち、多孔質耐熱金属酸化物、PGM、卑金属酸化物、ゼオライト、および金属)に加えて、スラリーは、任意選択で、さまざまな追加の成分を含有し得る。典型的な追加の成分としては、本明細書で上記したような結合剤、例えば、スラリーのpHおよび粘度を制御するための添加剤が挙げられるが、それらに限定されない。追加の成分としては、炭化水素(HC)貯蔵成分(例えば、ゼオライト)、会合性増粘剤、および/または界面活性剤(アニオン性、カチオン性、非イオン性または両性界面活性剤を含む)を挙げることができる。スラリーの典型的なpH範囲は、約3~約6である。酸性または塩基性の種をスラリーに添加して、それによりpHを調整してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、スラリーのpHは、酢酸水溶液の添加によって調整される。
【0111】
スラリーを粉砕して、粒径を小さくし、粒子の混合および均質な材料の形成を向上させることができる。粉砕は、ボールミル、連続ミル、または他の同様の機器で達成され得、スラリーの固形分は、例えば、約20~60重量%、より具体的には、約20~40重量%であり得る。一実施形態では、粉砕後のスラリーは、約1~約40ミクロン、好ましくは2~約20ミクロン、より好ましくは約4~約15ミクロンのD90粒径によって特徴付けられる。
【0112】
本触媒組成物は、典型的には、本明細書に開示されるようなSCR触媒組成物成分を含有する1つ以上のウォッシュコートの形態で適用することができる。ウォッシュコートは、液体ビヒクル中の触媒組成物(または触媒組成物の1つ以上の成分)の特定の固形分(例えば、約10~約60重量%)を含有するスラリーを調製することによって形成され、次いで、それを、当技術分野で知られている任意のウォッシュコート技術を使用して基材に適用し、乾燥および焼成してコーティング層を提供する。複数のコーティングが適用される場合、各ウォッシュコートが適用された後、および/または所望の数の複数のウォッシュコートが適用された後、基材は、乾燥および/または焼成される。1つ以上の実施形態では、触媒性材料(複数可)は、ウォッシュコートとして基材に適用される。
【0113】
焼成の後に、上記のウォッシュコート技術により得られる触媒充填量は、基材のコーティングされた重量とコーティングされていない重量の差を計算することにより求めることが可能である。当業者に明らかであるように、触媒充填量は、スラリーのレオロジーを変えることにより修正することが可能である。さらに、ウォッシュコート層(コーティング層)を生成させるためのコーティング/乾燥/焼成プロセスを必要に応じて繰り返して、コーティングを、所望の充填水準または厚さに構築する、すなわち2つ以上のウォッシュコートを適用し得ることを意味している。
【0114】
本触媒性コーティングは、1つ以上のコーティング層を含むことができ、その少なくとも1つの層は、本触媒組成物または触媒組成物の1つ以上の成分を含む。触媒性コーティングは、基材の少なくとも一部の上に配置され、かつ粘着した状態の、1つ以上の薄い粘着コーティング層を含み得る。コーティング全体は、個々の「コーティング層」を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、本触媒性物品は、1つ以上の触媒層の使用、および1つ以上の触媒層の組み合わせを含み得る。触媒性材料は、基材壁の入口側のみ、出口側のみ、入口側および出口側の両方に存在し得るか、または壁自体がすべてもしくは部分的に触媒性材料で構成され得る。触媒性コーティングは、基材壁表面上および/または基材壁の細孔内、すなわち、基材壁の「中」および/または「上」にあってもよい。したがって、「基材上に配置されたウォッシュコート」という句は、任意の表面上、例えば、壁面上および/または細孔表面上を意味している。
【0116】
ウォッシュコート(複数可)は、異なるコーティング層が基材と直接接触し得るように適用することができる。あるいは、1つ以上の「アンダーコート」が存在することができ、その結果、触媒性コーティング層またはコーティング層の少なくとも一部は、基材と直接接触しない(むしろ、アンダーコートと接触する)。コーティング層(単数または複数)の少なくとも一部がガス流または大気に直接曝露されないように(むしろオーバーコートと接触するように)、1つ以上の「オーバーコート」も存在し得る。
【0117】
あるいは、本触媒組成物は、底部コーティング層の上を覆うトップコーティング層中に存在し得る。触媒組成物は、トップ層および底部層中に存在し得る。任意の1つの層は、基材の軸方向の長さ全体に延ばすことができ、例えば、底部層は、基材の軸方向の長さ全体に延ばすことができ、トップ層はまた、底部層の上を覆って基材の軸方向の長さ全体に延在し得る。トップ層および底部層の各々は、入口端または出口端のいずれかから延在し得る。
【0118】
例えば、底部コーティング層およびトップコーティング層の両方は、同じ基材端から延在することができ、トップ層は、部分的または完全に底部層をオーバーレイし、また底部層は、基材の部分長または全長に延在し、トップ層は、基材の部分長または完全長に延在している。あるいは、トップ層が、底部層の一部をオーバーレイすることができる。例えば、底部層は、基材の全長まで延在することができ、トップ層は、入口端または出口端のいずれかから、基材の長さの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%まで延在し得る。
【0119】
あるいは、底部層は、入口端または出口端のいずれかから、基材の長さの約10%、約15%、約25%、約30%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、または約95%まで延在することができ、およびトップ層は、入口端または出口端のいずれかから、基材長さの約10%、約15%、約25%、約30%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、または約95%まで延在することができ、ここでトップ層の少なくとも一部は底部層をオーバーレイしている。この「オーバーレイ」ゾーンは、例えば、基材の長さの約5%~約80%、例えば、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60、または約70%まで延在し得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される基材上に配置される、本明細書に開示されるSCR触媒組成物は、(a)PGM成分および卑金属酸化物をその上に堆積させた多孔質耐熱金属酸化物担体と、(b)金属成分で促進されたゼオライトと、の混合物を含む第1のウォッシュコートであって、その第1のウォッシュコートは触媒基材の長さの少なくとも一部の上に配置されている、第1のウォッシュコートと、金属成分で促進されたゼオライトを含む第2のウォッシュコートであって、その第2のウォッシュコートは触媒基材の長さの少なくとも一部の上に配置されている、第2のウォッシュコートと、を含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、触媒基材上に直接配置され、第2のウォッシュコートは、第1のウォッシュコートの少なくとも一部の上に配置される。いくつかの実施形態では、第2のウォッシュコートは、触媒基材上に直接配置され、第1のウォッシュコートは、第2のウォッシュコートの少なくとも一部の上に配置される。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、入口端から、全長の約10%~約50%の長さまで、触媒基材上に直接配置され、第2のウォッシュコートは、第1のウォッシュコートの少なくとも一部の上に配置される。いくつかの実施形態では、第2のウォッシュコートは、入口端から、全長の約50%~約100%の長さまで、触媒基材上に直接配置され、第1のウォッシュコートは、第2のウォッシュコートの少なくとも一部の上に配置される。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、入口端から、全長の約20%~約40%の長さまで、触媒基材上に直接配置され、第2のウォッシュコートは、入口端から出口端まで延在している。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、出口端から、全長の約10%~約50%の長さまで、触媒基材上に直接配置され、第2のウォッシュコートは、第1のウォッシュコートの少なくとも一部の上に配置される。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、出口端から、全長の約20~約40%の長さまで、触媒基材上に直接配置され、第2のウォッシュコートは、入口端から出口端まで延在している。いくつかの実施形態では、第2のウォッシュコートは、出口端から、全長の約50%~約100%の長さまで、触媒基材上に直接配置され、第1のウォッシュコートは、第2のウォッシュコートの少なくとも一部の上に配置される。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、全長の100%をカバーして触媒基材上に直接配置され、第2のウォッシュコートは、全長の100%をカバーして第1のウォッシュコート上に配置される。いくつかの実施形態では、第2のウォッシュコートは、全長の100%をカバーして触媒基材上に直接配置され、第1のウォッシュコートは、全長の100%をカバーして第2のウォッシュコート上に配置される。
【0122】
触媒性コーティングは、有利には、「ゾーン化」させることができ、ゾーン化された触媒性層を含む、すなわち、触媒性コーティングは、基材の軸方向の長さにわたってさまざまな組成物を含有する。これは、「横方向にゾーン化させた」と記載することもできる。例えば、層は、入口端から出口端に向かって延在することができ、基材の長さの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%まで延在することができる。別の層は、出口端から入口端に向かって延在することができ、基材の長さの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%まで延在することができる。異なるコーティング層が互いに隣接していて、互いにオーバーレイしていない場合がある。あるいは、異なるレイヤーが互いの一部にオーバーレイして、第3の「中間」ゾーンを提供する場合がある。中間ゾーンは、例えば、基材の長さの約5%~約80%、例えば、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60、または約70%まで延在し得る。
【0123】
本開示のゾーンは、コーティング層の関係によって画定される。異なるコーティング層に関しては、いくつかの可能なゾーニング構成が存在する。例えば、上流ゾーンおよび下流ゾーンが存在することができ、上流ゾーン、中間ゾーン、および下流ゾーンが存在することができ、4つの異なるゾーンなどが存在することができる。2つの層が隣接していてオーバーラップしていないとき、上流ゾーンおよび下流ゾーンが存在する。2つの層がある程度オーバーラップしているとき、上流、下流、および中間のゾーンが存在する。例えば、コーティング層が基材の全長にわたって延在し、異なるコーティング層が出口端から特定の長さで延在し、第1のコーティング層の一部をオーバーレイする場合、上流および下流のゾーンが存在する。
【0124】
例えば、物品は、(a)PGM成分と卑金属酸化物とがその上に堆積された多孔質耐熱金属酸化物担体と、(b)金属成分で促進されたゼオライトとの混合物を含む第1のウォッシュコート層を含む上流ゾーンと、金属成分で促進されたゼオライトを含む第2のウォッシュコート層を含む下流ゾーンと、を含むことができる。
【0125】
あるいは、上流ゾーンは第2のウォッシュコート層を含むことができ、下流ゾーンは第1のウォッシュコート層を含むことができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、入口端から、全長の約10%~約50%の長さまで、触媒基材上に配置され、第2のウォッシュコートは、出口端から、全長の約50%~約90%の長さまで、触媒基材上に配置される。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、出口端から、全長の約10%~約50%の長さまで、触媒基材上に配置され、第2のウォッシュコートは、入口端から、全長の約50%~約90%の長さまで、触媒基材上に配置される。
【0127】
いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートでは、多孔質耐熱金属酸化物のゼオライトに対する重量比は約0.1~約10である。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートでは、多孔質耐熱金属酸化物のゼオライトに対する重量比は約0.2~約5である。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートでは、多孔質耐熱金属酸化物のゼオライトに対する重量比は約0.25である。
【0128】
図2a、2b、および2cは、2つのコーティング層を有するいくつかの可能なコーティング層構成を示している。コーティング層201(トップコート)および202(底部コート)が配置されている基材壁200が示されている。これは簡略化された図であり、多孔質ウォールフロー基材の場合、細孔および細孔壁に粘着したコーティングは示されておらず、また閉塞端も示されていない。
図2aでは、底部コーティング層202は、出口から基材長の約50%延在し、トップコーティング層201は、入口から基材長の50%を超えて延在し、層202の一部をオーバーレイし、上流ゾーン203、中間オーバーレイゾーン205、および下流ゾーン204を提供する。
図2bでは、コーティング層201および202は、各々、基材の全長に延在し、トップ層201は底部層202にオーバーレイしている。
図2bの基材は、ゾーン化コーティング構成を含有しない。
図2cは、出口から基材長の約50%延在して、下流ゾーン204を形成するコーティング層202と、入口から基材長の約50%延在して、上流ゾーン203を提供するコーティング層201と、を有するゾーン化構成を例示している。
図2a、2b、および2cは、ウォールスルー基材またはフロースルー担体上のコーティング組成物を例示するのに有用であり得る。
【0129】
本明細書に開示されるSCR物品は、還元剤の存在下で、リーン燃焼エンジン排気ガスからのNOxの還元を触媒するのに効果的である。現在の物品は、さまざまな温度にわたってNOxの還元を触媒するのに有効であり、特により低温で効果的である。いくつかの実施形態において、NOxの効果的な還元は、約150℃より高く、かつ約700℃より低い温度のときである。いくつかの実施形態では、NOxの効果的な還元は、約200℃~約600℃の温度のときである。いくつかの実施形態では、NOxの変換は、基材上に配置された銅-チャバザイトウォッシュコートのみを有する基準触媒性物品と比較して、200℃で少なくとも10%だけ増加する。いくつかの実施形態では、NOxの変換は、基材上に配置された銅-チャバザイトウォッシュコートのみを有する基準触媒性物品と比較して、200℃で40%以上だけ増加する。いくつかの実施形態では、NOxの変換は、基材上に配置された銅-チャバザイトウォッシュコートのみを有する基準触媒性物品と比較して、200℃で10%だけ増加する。いくつかの実施形態では、NOxの窒素(N2)と水への変換は、基材上に配置された銅-チャバザイトウォッシュコートのみを有する基準触媒性物品と比較して、200℃で、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、またはそれを超えて増加する。
【0130】
III.排気ガス処理システム
さらなる態様では、排気ガス流を生成するリーン燃焼エンジンと、本明細書に開示されるようなSCR物品とを含む排気ガス処理システムを提供する。エンジンは、例えば、化学量論的燃焼に必要とされる空気を超える空気を伴う燃焼条件、すなわちリーン条件で作動するディーゼルエンジンであることができる。他の実施形態では、エンジンは、リーン燃焼ガソリンエンジン、または固定電源(例えば、発電機またはポンプ場)と関連のあるエンジンであることができる。排気ガス処理システムは、一般に、排気ガス流と流体連通するようにエンジンの下流に配置された2つ以上の触媒性物品を含有する。システムは、例えば、本明細書に開示される選択的触媒性還元触媒(SCR)と、ディーゼル酸化触媒(DOC)と、還元剤注入器、煤煙フィルター、アンモニア酸化触媒(AMOx)、またはリーンNOxトラップ(LNT)を含有する1つ以上の物品と、を含有し得る。還元剤インジェクターを含有する物品は還元物品である。還元システムは、還元剤インジェクターおよび/またはポンプおよび/またはリザーバなどを含む。本処理システムは、煤煙フィルターおよび/またはアンモニア酸化触媒をさらに含み得る。煤煙フィルターは、無触媒化または触媒化(CSF)され得る。例えば、本処理システムは、上流から下流まで、DOCを含有する物品、CSF、尿素インジェクター、SCR物品、およびAMOxを含有する物品を含み得る。リーンNOxトラップ(LNT)も含まれる場合がある。
【0131】
排出処理システム内に存在するさまざまな触媒性成分の相対的な配置は変えることができる。本排気ガス処理システムおよび方法では、排気ガス流は、上流端に入り、下流端を出ることによって、物品(複数可)または処理システムに受け入れられる。基材または物品の入口端は、「上流」端または「前」端と同義である。出口端は、「下流」端または「後」端と同義である。処理システムは、一般に、内燃機関の下流にあり、内燃機関と流体連通している。
【0132】
1つの例示的な排出処理システムは、排出処理システム20の概略図を示している
図3で例示される。示されるように、排出処理システムは、リーン燃焼ガソリンエンジンなどのエンジン22の下流に直列にある複数の触媒構成要素を含み得る。触媒構成成分のうちの少なくとも1つは、本明細書に記載されるような本発明のSCR触媒であろう。本発明の触媒組成物は、多数の追加の触媒材料と組み合わせることができ、追加の触媒材料と比較して様々な位置に置くことができる。
図3は、直列の5つの触媒構成要素24、26、28、30、32を例示するが、触媒構成要素の総数は変動する可能性があり、5つの構成要素は単なる一例である。
【0133】
限定することなく、表1は、1つ以上の実施形態のさまざまな排気ガス処理システム構成を提示する。各触媒は、エンジンが触媒Aの上流にあり、それが触媒Bの上流にあり、それが触媒Cの上流にあり、それが触媒Dの上流にあり、それが触媒Eの上流にある(存在する場合)ように排気導管を介して次の触媒に接続されることに留意されたい。表内の成分A~Eに対する参照は、
図3の同じ記号で相互参照され得る。
【0134】
表1に記載されるLNT触媒は、NOxトラップとして従来から使用されている任意の触媒であることができ、典型的には、卑金属酸化物(BaO、MgO、CeO2など)および触媒によるNOの酸化および還元のための白金族金属(例えば、PtおよびRh)を含むNOx吸着剤組成物を含む。
【0135】
表1に記載されているLT-NA触媒は、低温(<250℃)でNOx(例えば、NOまたはNO2)を吸着し、高温(>250℃)でそれをガス流に放出することができる任意の触媒であることができる。放出されたNOXは、一般に、下流SCRまたはSCRoF触媒上でN2およびH2Oに変換される。典型的には、LT-NA触媒は、Pd促進ゼオライトまたはPd促進耐熱金属酸化物を含む。
【0136】
表中のSCRへの言及は、本発明のSCR触媒組成物を含み得るSCR触媒を指している。SCRoF(すなわち、フィルター上のSCR)への言及は、本発明のSCR触媒組成物を含むことができる微粒子または煤煙フィルター(例えば、ウォールフローフィルター)を指している。SCRおよびSCRoFの両方が存在する場合、1つもしくは両方が本発明のSCR触媒を含むことができるか、または触媒の1つが従来のSCR触媒(例えば、従来の金属充填レベルのSCR触媒)を含むことができよう。
【0137】
表中のAMOxへの言及は、本発明の1つ以上の実施形態の触媒の下流に提供されて、漏れたあらゆるアンモニアを排気ガス処理システムから除去することができるアンモニア酸化触媒を指している。特定の実施形態では、AMOx触媒は、PGM構成成分を含み得る。1つ以上の実施形態では、AMOx触媒は、PGMを有するボトムコートおよびSCR機能を有するトップコートを含み得る。
【0138】
当業者によって認識されるように、表1に列挙された構成では、成分A、B、C、D、またはEのうちの任意の1つ以上は、ウォールフローフィルターなどの微粒子フィルター上に、またはフロースルーハニカム基材上に配置することができる。1つ以上の実施形態では、エンジン排気システムは、エンジンの近くの位置(直結位置、CC)に取り付けられた1つ以上の触媒組成物を含み、追加の触媒組成物は車体の下の位置(床下位置、UF)にある。1つ以上の実施形態では、排気ガス処理システムは、尿素噴射成分をさらに含み得る。
【表1】
【0139】
エンジン排気の処理方法
本発明の別の態様は、リーン燃焼エンジン、特に、リーン燃焼ガソリンエンジン、またはディーゼルエンジンの排気ガス流を処理する方法に関する。本方法は、本発明の1つ以上の実施形態によるSCR触媒物品をエンジンの下流に置くこと、およびエンジン排気ガス流を触媒の上に流すことを含むことができる。1つ以上の実施形態では、本方法は、上記のように、エンジンの下流に追加の触媒構成要素を置くことをさらに含む。本触媒組成物、本物品、本システム、および本方法は、内燃機関、例えば、ガソリン、小型ディーゼルおよび大型ディーゼルエンジンの排気ガス流の処理に好適である。触媒組成物はまた、静止した工業プロセスからの排出の処理、室内空気からの有害または有毒物質の除去、または化学反応プロセスにおける触媒作用にも好適である。
【0140】
本明細書に記載される組成物、方法、および用途に対する好適な修正および適合が、任意の実施形態またはそれらの態様の範囲から逸脱することなく行われ得ることは、関連技術の当業者には容易に明らかであろう。提供される組成物および方法は例示的なものであり、特許請求される実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に開示される様々な実施形態、態様、および選択肢のすべては、すべての変更で組み合わされ得る。本明細書に記載される組成物、配合物、方法、およびプロセスの範囲には、本明細書の実施形態、態様、選択肢、例、および選好のすべての実際のまたは潜在的な組み合わせが含まれる。本明細書で引用された全ての特許および刊行物は、組み込まれた他の特定の記述が具体的に提供されない限り、記載されるように、それらの特定の教示について参照によって本明細書に組み込まれる。
【0141】
本発明を以下の実施例を参照して説明する。本発明のいくつかの例示的な実施形態を記載する前に、本発明は、以下の説明に記載される構成またはプロセスステップの詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施または実行することができる。
【0142】
実験
本発明の態様は、以下の実施例によってさらに完全に例示され、これらは、本発明の特定の態様を記載するために例示されるのであって、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0143】
SCR組成物および物品(SCRoF)の調製
フィルター基材上に配置された、本明細書に開示される特定の実施形態による選択的触媒性還元(SCR)触媒組成物(SCRoF物品)の例は、高多孔度SiCフィルター基材上にSCR触媒性成分をウォッシュコーティングすることによって作製した。SiC基材は、63%の多孔度、23・mの平均細孔径、300セル/in2のセル密度、および0.3mmの壁厚を有する正方形のセグメント(34mm×34mm×152mm)であった。基材は非対称セル設計を有し、入口チャネルのための大きな開口部および出口チャネルのための小さな開口部を有していた。したがって、このタイプのセル設計では、フィルターの背圧を過度に増加させることなく、対称な設計と比較して、フィルターがより多くの灰を保持することができた。
【0144】
2つのタイプのスラリーを基材上に順次コーティングし、1つはPtを含有し、もう1つはCu-CHAを含有していた。Pt含有スラリーの主な配合成分は、Ptアミン前駆体および硝酸銅溶液をアルミナ系担体(5%SiO
2でドープしたアルミナ)に順次含浸させることによって作製されたPt-CuO粉末であった。各含浸の後に、焼成処理(500℃/2時間)を適用した。いくつかのPt-CuO粉末は、800℃で4時間さらに焼成した。担持されたPt-CuO粉末の詳細な説明を表2に示す。
【表2】
【0145】
表3は、Pt含有スラリーが第1のコーティングとしてコーティングされた、本開示の特定の実施形態によるSCRoF物品のコーティング設計を提供する。物品のこの群に関する参照試料は、Pt成分を含まないCu-CHAのみの配合(S0)であった。物品S1~S10は、第1のコートスラリーの一部として、Pt含有粉末のさまざまな配合物を含有していた。物品S9およびS10は、第1のコート中にAl
2O
3材料を含有していたのに対し、物品S1~S8は、それらの第1の中にいくらかのCu-CHAも含有していた。Pt含有スラリーは、出口面からフィルター長の33%をカバーしていた。S1~S10の第2のコートは同じであった(例えば、入口端からコーティングされフィルターの100%をカバーしているCu-CHA)。各コーティングの後に、焼成(450℃で1時間)ステップを実施した。物品S1~S10のウォッシュコートゾーニング設計およびコーティング順序は
図4に例示してある。
【表3】
【0146】
表4は、Pt含有スラリーが第2のコートとしてコーティングされた、特定の実施形態によるSCRoF物品のコーティング設計を示している(S11~S20)。Cu-CHAは、最初に、入口端から、100%被覆率でフィルター基材上にコーティングした。第2のコートは、Pt含有コートであり、Pt-CuO粉末(表2に示した)と、Cu-CHAまたはAl
2O
3との組み合わせであった。第2のコートは、出口端からコーティングし、33%の長さをカバーした。物品S11~S20は、物品1~10のミラー設計である。物品S11~S20のウォッシュコートゾーニング設計およびコーティング順序を
図5に模式的に示す。
【表4】
【0147】
実施例2.触媒物品の評価
上で特定された触媒物品は、200L/分のガスを流すことができる定常状態の実験室反応器で試験した。反応供給原料は、GHSV=60000h
-1で、500ppmのNO、550ppmのNH
3、(NH
3/NO
x=1.1)、500ppmのCO、10%O
2、5%CO
2、5%H
2O、残りはN
2を含有していた。触媒化フィルター物品試料は、最初に、200℃で30分間、NOおよびNH
3を含まない主供給ガスで平衡化させた。次いで、NOおよびNH
3を、それぞれ15分および25分の平衡化時間で200℃においてシステムに順次添加した。完全な反応性供給によって、反応器入口温度は、2.5℃/分で200℃から500℃に上昇した。全ての触媒物品を、新鮮な状態のとき(調製されたままの状態)およびエージング後(空気中10%H
2Oで800℃で16時間)に試験した。結果を
図6~12に示し、以下で考察する。
【0148】
図6は、触媒物品S1について得られた例示的な試験結果を図示しており、反応温度の関数としてのNO
x変換およびN
2O形成をグラフで示している。明確にするために、200および500℃でのNO
x変換、ならびにピークN
2O形成のみを、
図7~12において物品S0~S20について比較する。
【0149】
図7aおよび7bは、200℃での新鮮な触媒物品(それぞれS1~S10およびS11~S20)のNO
x変換を、ゼオライトのみの比較基準(S0)と比較している。第1のコート(S1~S10)中にPtを有する試料の場合、S9およびS10を除いて、全ての試料は、基準よりも(8~19%だけ)高いNO
x変換を示した。第2のコート(S11~20)中にPtを有する物品の場合、2つの試料(S14およびS16)は、高いNO
x変換を示したが、他の試料は、基準(S0)と同等またはそれよりも低くかった(S19およびS20)。
【0150】
図8aおよび8bに示されているように、これらの新鮮な触媒物品(それぞれS1~S10およびS11~S20)についての500℃におけるNO
x変換は、互いに同等であり、基準S0と同等であった(87~90%)。
【0151】
図9aおよび
図9bは、低温領域(200~300℃)における新鮮な触媒物品(それぞれS1~S10およびS11~S20)によるピークN
2O形成を示している。はるかに高いピークN
2O形成は、S0(8ppm)に対して、S20、S2、S19、S6、およびS10(95~52ppm)について観察された。他の物品は、わずかに高いN
2O形成を実証した。
【0152】
図10aおよび10bは、16時間800℃で水熱エージングした後に、それぞれS1~S10およびS11~S20に関する、200℃におけるNO
x変換を示している。2つの物品(S7およびS9)は、基準S0(25%)よりもはるかに高いNO
x変換(それぞれ70%および62%)を実証した。他の全ての物品は、わずかに高いNO
x変換(29~36%)を示した。
【0153】
図11aおよび11bは、エージングした触媒物品S1~S10およびS11~S20それぞれについての500℃でのNO
x変換を示している。物品S7およびS9は、基準S0よりも高い変換を実証した(基準の83%に対して、それぞれ90および89%)が、S10、S15、S19、およびS20は、あまり活性ではなかった(それぞれ68、76、42、および44%の変換)。他の物品は、基準S0と同等NO
x変換を示した。
【0154】
図12aおよび12bは、エージングした触媒物品S1~S10およびS11~S20それぞれに関するピークN
2O形成を示している。非常に高いN
2O形成が、S10、S19、およびS20(69~116ppm)で観察され、S7およびS9(21および36ppm)でわずかに高いN
2Oが観察され、全ての他の物品でN
2O形成はS0と同等(5~7ppm)であった。
【0155】
全体として、全ての性能データを考慮すると、物品S7が最も好ましいプロファイルを示した。理論によって束縛されることを望まないが、通常は、Ptは強すぎる酸化成分であり、SCR条件下で、NH3をN2OおよびNOxに酸化し、その結果、NOx変換が減少し、N2O形成が高くなると考えられる。理論によって束縛されることを望まないが、同じ担体上にCuおよびPtを含浸および固定することによって、その場でのNO酸化にとって十分な酸化活性を提供しながら、Ptの酸化機能を緩和し得ると考えられる。