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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】軟水化装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/42 20230101AFI20241213BHJP
   B01J 39/07 20170101ALI20241213BHJP
   B01J 41/07 20170101ALI20241213BHJP
   B01J 47/14 20170101ALI20241213BHJP
   B01J 49/53 20170101ALI20241213BHJP
   B01J 49/57 20170101ALI20241213BHJP
   B01J 49/85 20170101ALI20241213BHJP
   C02F 1/461 20230101ALI20241213BHJP
【FI】
C02F1/42 A
B01J39/07
B01J41/07
B01J47/14
B01J49/53
B01J49/57
B01J49/85
C02F1/461 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020197827
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086033
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151378
【弁理士】
【氏名又は名称】宮村 憲浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157484
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】永田 彩加
(72)【発明者】
【氏名】松本 唯
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】石川 大樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 港
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-170628(JP,A)
【文献】特開平06-134457(JP,A)
【文献】特開2013-121920(JP,A)
【文献】特開平05-253568(JP,A)
【文献】特開2005-161145(JP,A)
【文献】特開2001-276631(JP,A)
【文献】特開2012-228669(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0306565(US,A1)
【文献】中国実用新案第204939148(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 23/00 - 35/04
B01D 35/08 - 37/08
B01J 39/00 - 49/90
C02F 1/42
C02F 1/46 - 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬度成分を含む原水を弱酸性陽イオン交換樹脂により軟水化する軟水化槽と、
前記軟水化槽を通過した軟水のpHを弱塩基性陰イオン交換樹脂により中和する中和槽と、
前記軟水化槽の前記弱酸性陽イオン交換樹脂を再生するための酸性電解水と、前記中和槽の前記弱塩基性陰イオン交換樹脂を再生するためのアルカリ性電解水とを生成する電解槽と、
前記軟水化槽を流通した前記酸性電解水と前記中和槽を流通した前記アルカリ性電解水とを混合して前記電解槽に供給する貯水槽と、
前記電解槽と前記中和槽とを連通する流路に設けられ、前記電解槽に導入された水に含まれる前記硬度成分に起因する析出物を分離する分離部と、
を備えることを特徴とする軟水化装置。
【請求項2】
前記軟水化槽の前記弱酸性陽イオン交換樹脂及び前記中和槽の前記弱塩基性陰イオン交換樹脂の再生処理を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記再生処理の終了後、前記電解槽の転極を行い、転極後の酸性電解水を前記分離部に流通させ、装置外に排出するように制御することを特徴とする請求項1に記載の軟水化装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記分離部を流通した後の前記転極後の酸性電解水のイオン濃度に関する情報に基づいて特定されたイオン濃度が基準値未満となった場合に、前記電解槽の転極を終了するように制御することを特徴とする請求項2に記載の軟水化装置。
【請求項4】
前記貯水槽は、槽内に導入された水に含まれる前記硬度成分に起因する析出物を分離する貯水槽分離部をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の軟水化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生活水を得る軟水化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の弱酸性陽イオン交換樹脂を用いた軟水化装置では、食塩を使用しない陽イオン交換樹脂の再生方法として、電気分解で生成した酸性電解水により陽イオン交換樹脂を再生する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。弱酸性陽イオン交換樹脂は、官能基の末端にプロトンを有しており、原水中の硬度成分(例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン)を水素イオンに交換して原水を軟水化している。そして、弱酸性陽イオン交換樹脂で軟水化された水中の水素イオンは、弱酸性陽イオン交換樹脂の後段に備えられた弱塩基性陰イオン交換樹脂に吸着されることにより中和される。従来の軟水化装置では、弱塩基性陰イオン交換樹脂の再生方法として、電気分解で生成したアルカリ性電解水により弱塩基性陰イオン交換樹脂を再生する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-30973号公報
【文献】特開2010-142674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の軟水化装置では、再生処理時には、軟水化槽から放出される硬度成分(例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン)が、電解槽でアルカリ性電解水と反応することで析出物が生じることがある。こうした析出物が中和槽に流入し、中和槽内に堆積した状態で軟水化処理を再開すると、軟水化性能が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、軟水化槽の再生処理の際に軟水化槽から放出される硬度成分に起因して生じる軟水化性能の低下を抑制することが可能な軟水化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そして、この目的を達成するために、本発明に係る軟水化装置は、軟水化槽と、中和槽と、電解槽と、貯水槽と、分離部とを備える。軟水化槽は、硬度成分を含む原水を弱酸性陽イオン交換樹脂により軟水化する。中和槽は、軟水化槽を通過した軟水のpHを弱塩基性陰イオン交換樹脂により中和する。電解槽は、軟水化槽の弱酸性陽イオン交換樹脂を再生するための酸性電解水と、中和槽の弱塩基性陰イオン交換樹脂を再生するためのアルカリ性電解水とを生成する。貯水槽は、軟水化槽を流通した酸性電解水と中和槽を流通したアルカリ性電解水とを混合して電解槽に供給する。分離部は、電解槽と中和槽とを連通する流路に設けられ、電解槽に導入された水に含まれる硬度成分に起因する析出物を分離する。これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、軟水化槽の再生処理の際に軟水化槽から放出される硬度成分に起因して生じる軟水化性能の低下を抑制することが可能な軟水化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る軟水化装置の構成を示す概念図である。
図2図2は、軟水化装置の循環流路を示す構成図である。
図3図3は、軟水化装置の洗浄流路を示す構成図である。
図4図4は、軟水化装置の動作時の状態を示す図である。
図5図5は、本発明の実施の形態2に係る軟水化装置の構成を示す概念図である。
図6図6は、本発明の実施の形態3に係る軟水化装置の構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る軟水化装置は、軟水化槽と、中和槽と、電解槽と、貯水槽と、分離部とを備える。軟水化槽は、硬度成分及び塩化物イオンを含む原水を弱酸性陽イオン交換樹脂により軟水化する。中和槽は、軟水化槽を通過した軟水のpHを弱塩基性陰イオン交換樹脂により中和する。電解槽は、軟水化槽の弱酸性陽イオン交換樹脂を再生するための酸性電解水と、中和槽の弱塩基性陰イオン交換樹脂を再生するためのアルカリ性電解水とを生成する。貯水槽は、軟水化槽を流通した酸性電解水と中和槽を流通したアルカリ性電解水とを混合して電解槽に供給する。分離部は、電解槽と中和槽とを連通する流路に設けられ、電解槽に導入された水に含まれる硬度成分に起因する析出物を分離する。
【0010】
こうした構成によれば、軟水化槽及び中和槽の再生処理を行う際に、電解槽を通過したアルカリ性電解水に含まれる析出物(電解槽に導入された水に含まれる硬度成分に起因した析出物)を分離部で分離することができ、析出物の中和槽への流入を低減できる。そのため、再生処理の終了後に軟水化処理を再開する場合には、従来の軟水化装置でみられた中和槽に流入した析出物が軟水化槽から放出された水素イオンと反応して硬度成分化するという現象の発生を抑制することができ、析出物の溶解に伴う軟水化性能の低下を低減できる。
【0011】
また、本発明に係る軟水化装置では、軟水化槽の弱酸性陽イオン交換樹脂及び中和槽の弱塩基性陰イオン交換樹脂の再生処理を制御する制御部をさらに備えており、制御部は、再生処理の終了後、電解槽の転極を行い、転極後の酸性電解水を分離部に流通させ、装置外に排出するように制御する構成としてもよい。こうした構成によれば、分離部の洗浄(分離部にて分離された析出物の溶解除去)がなされるので、分離部のメンテナンス頻度を低減することができ、長期にわたって使用可能な軟水化装置とすることができる。
【0012】
また、本発明に係る軟水化装置では、制御部は、分離部を流通した後の転極後の酸性電解水のイオン濃度に関する情報に基づいて特定されたイオン濃度が基準値未満となった場合に、電解槽の転極を終了するように制御する構成としてもよい。こうした構成によれば、転極後の酸性電解水に含まれるイオン濃度に基づき、転極の終了を制御できる。そのため、分離部を流通した後の酸性電解水に含まれる硬度成分が基準値未満となるまで、分離部に酸性電解水を流通させることが可能となり、分離部の洗浄(分離された析出物の溶解)をより確実に行うことができる。したがって、分離部のメンテナンス頻度をさらに低減することができ、長期にわたって使用可能な軟水化装置とすることができる。
【0013】
また、本発明に係る軟水化装置では、貯水槽は、槽内に導入された水に含まれる硬度成分に起因する析出物を分離する貯水槽分離部をさらに備える構成としてもよい。こうした構成によれば、電解槽と中和槽との間に設けられた分離部だけでなく、貯水槽分離部でも析出物を分離できるため、より確実に析出物を分離できる。そのため、再生処理の終了後に軟水化処理を再開する場合には、従来の軟水化装置でみられた中和槽に流入した析出物が軟水化槽からの水素イオンと反応して硬度成分化するという現象の発生を抑制することができ、析出物の溶解に伴う軟水化性能の低下をさらに低減できる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0015】
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明の実施の形態1に係る軟水化装置1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る軟水化装置1の構成を示す概念図である。なお、図1では、軟水化装置1の各要素を概念的に示している。
【0016】
(全体構成)
軟水化装置1は、外部から供給される市水(硬度成分を含む原水)を、生活水として使用可能な中性の軟水として生成する装置である。
【0017】
具体的には、図1に示すように、軟水化装置1は、外部からの原水の流入口2と、軟水化槽3と、中和槽4と、処理後の軟水の取水口5と、再生装置6を備えている。また、再生装置6は、電解槽12と、分離部14と、貯水槽15と、送水ポンプ20とを含んで構成される。また、軟水化装置1は、第一排水口16と、第二排水口18と、複数の選択弁(選択弁17、選択弁19)と、複数の開閉弁(開閉弁27~開閉弁34)と、制御部35とを含んで構成される。
【0018】
流入口2は市水に接続されている。軟水化装置1は、市水の圧力で取水口5から軟水化処理後の水を取り出すことができるものである。
【0019】
流入口2から取水口5までは、流路7、流路8、流路9によって接続されている。流路7は、流入口2から軟水化槽3までを接続した流路である。流路8は、軟水化槽3から中和槽4までを接続した流路である。流路9は、中和槽4から取水口5までを接続した流路である。
【0020】
言い換えると、流路7は、硬度成分を含む原水を流入口2から軟水化槽3へ導く流路である。また、流路8は、軟水化槽3で軟水化された原水を中和槽4に導く流路である。流路9は、中和槽4により中和された軟水を取水口5へ導く流路である。
【0021】
つまり、軟水化装置1では、軟水化処理において、外部から供給される市水が、流入口2、流路7、軟水化槽3、流路8、中和槽4、流路9、取水口5の順に流通して、中性の軟水として排出される。
【0022】
(軟水化槽及び中和槽)
軟水化槽3には弱酸性陽イオン交換樹脂10が充填され、中和槽4には弱塩基性陰イオン交換樹脂11が充填されている。
【0023】
ここで、弱酸性陽イオン交換樹脂10としては、特に制限はなく、汎用的なものを使用することができ、例えば、カルボキシル基(-COOH)を交換基とするものが挙げられる。また、カルボキシル基の対イオンである水素イオン( )が、金属イオン、アンモニウムイオン(NH )等の陽イオンとなっているものでもよい。
【0024】
また、弱塩基性陰イオン交換樹脂11としては、特に制限はなく、汎用的なものを使用することができ、例えば、遊離塩基型となっているものが挙げられる。
【0025】
軟水化槽3は、弱酸性陽イオン交換樹脂10の作用により、硬度成分を含む原水を軟水化する。より詳細には、軟水化槽3は、官能基の末端に水素イオンを有する弱酸性陽イオン交換樹脂10を備えている。軟水化槽3は、流通する水(原水)に含まれる硬度成分である陽イオン(カルシウムイオン、マグネシウムイオン)を水素イオンと交換するため、原水の硬度が下がり、原水を軟水化することができる。また、弱酸性陽イオン交換樹脂10の官能基の末端が水素イオンであるため、後述する再生処理において、酸性電解水を用いて弱酸性陽イオン交換樹脂10の再生を行うことができる。この際、弱酸性陽イオン交換樹脂10からは、軟水化処理の際に取り込んだ硬度成分である陽イオンが放出される。
【0026】
軟水化槽3には、流路7から硬度成分を含む原水が通水され、内部に充填された弱酸性陽イオン交換樹脂10を通過することで、硬度成分を含む原水を軟水として流路8を介して中和槽4へ通水させる。ただし、弱酸性陽イオン交換樹脂10で処理された軟水は、硬度成分と交換されて出てきた水素イオンを多く含む。
【0027】
中和槽4は、弱塩基性陰イオン交換樹脂11の作用により、軟水化槽3から出てきた水素イオンを含む軟水(酸性化した軟水)のpHを中和し、中性水(中性の軟水)に変換するものである。より詳細には、中和槽4は、弱塩基性陰イオン交換樹脂11を備えており、軟水化槽3からの軟水に含まれる水素イオンをアニオン(陰イオン)とともに吸着するため、軟水のpHが上がり、中性の軟水とすることができる。また、弱塩基性陰イオン交換樹脂11は、後述する再生処理において、アルカリ性電解水を用いて再生を行うことができる。
【0028】
中和槽4には、流路8から水素イオンを含む軟水が通水され、内部に充填された弱塩基性陰イオン交換樹脂11を通過することで、軟水化槽3から出てきた酸性化した軟水を中和して中性の軟水として流路9を通して外部へ通水させる。
【0029】
(再生装置)
再生装置6は、軟水化槽3の弱酸性陽イオン交換樹脂10を再生させ、且つ、中和槽4の弱塩基性陰イオン交換樹脂11を再生させる機器である。具体的には、再生装置6は、上述した通り、電解槽12と、分離部14と、貯水槽15と、送水ポンプ20とを含んで構成される。そして、再生装置6は、流入口2から取水口5までの流路7、流路8、及び流路9に対して、第一供給流路22、第一回収流路23、第二供給流路24、及び第二回収流路25がそれぞれ接続されている。そして、各流路は、後述する循環流路21(第一循環流路21a、第二循環流路21b)を構成している。
【0030】
ここで、第一供給流路22は、電解槽12から軟水化槽3へ酸性電解水を供給する流路である。第一供給流路22は、電解槽12と選択弁17とを連通接続する流路である第一供給流路22aと、選択弁17と軟水化槽3とを連通接続する流路である第一供給流路22bとで構成される。第一回収流路23は、軟水化槽3を通過した硬度成分を含む水を貯水槽15へ回収する流路である。また、第二供給流路24は、電解槽12から中和槽4へアルカリ性電解水を供給する流路である。第二供給流路24は、電解槽12と選択弁19とを連通接続する流路である第二供給流路24aと、選択弁19と軟水化槽3とを連通接続する流路である第二供給流路24bとで構成される。第二回収流路25は、中和槽4を通過した水を貯水槽15へ回収する流路である。
【0031】
(電解槽)
電解槽12は、内部に設けた一対の電極13(電極13a及び電極13b)を用いて、入水した水(貯水槽15から供給される水)を電気分解することによって、酸性電解水とアルカリ性電解水とを生成して排出する。より詳細には、電気分解の際に陽極となる電極13aでは、電気分解により水素イオンが生じ、酸性電解水が生成する。また、電気分解の際に陰極となる電極13bでは、電気分解により水酸化物イオンが生じ、アルカリ性電解水が生成する。そして、電解槽12は、酸性電解水を、第一供給流路22を介して軟水化槽3に供給し、アルカリ性電解水を、第二供給流路24を介して中和槽4に供給する。詳細は後述するが、電解槽12によって生成された酸性電解水は、軟水化槽3の弱酸性陽イオン交換樹脂10の再生に使用され、電解槽12によって生成されたアルカリ性電解水は、中和槽4の弱塩基性陰イオン交換樹脂11の再生に使用される。なお、電解槽12は、後述する制御部35によって、一対の電極13への通電状態を制御できるように構成されている。
【0032】
また、電解槽12は、後述する分離部14の洗浄時(分離部洗浄時)には、転極を行う。ここで、転極は、一対の電極13の陽極と陰極とを入れ替えて印加することである。つまり、転極時に陰極となる電極13aでは、電気分解により水酸化物イオンが生じ、アルカリ性電解水となる。また、転極時に陽極となる電極13bでは、電気分解により水素イオンが生じ、酸性電解水となる。よって、転極時には、電解槽12は、酸性電解水を第二供給流路24aに供給し、アルカリ性電解水を第一供給流路22aに供給する。詳細は後述するが、転極時には、電解槽12から送出されたアルカリ性電解水は、第一供給流路22aを流通し、選択弁17及び第一排水流路37を介して第一排水口16から装置外に排出される。一方、電解槽12から送出された酸性電解水は、第二供給流路24aを流通し、第二供給流路24a上に設けられた分離部14に流入し、分離部14の洗浄を行った後、選択弁19及び第二排水流路38を介して第二排水口18から装置外に排出される。
【0033】
なお、電解槽12では、転極開始から一定時間(例えば5分)経過後に、転極を終了する。
【0034】
(貯水槽)
貯水槽15は、弱酸性陽イオン交換樹脂10及び弱塩基性陰イオン交換樹脂11を再生する際に循環流路21(図2参照)内を流通させる水を確保し、貯留するものである。また、貯水槽15は、軟水化槽3を流通した硬度成分を含む酸性電解水と、中和槽4を流通した陰イオンを含むアルカリ性電解水とを混合し、電解槽12に供給するものである。
【0035】
そして、貯水槽15を流通した水は、電解槽12に通水され、電解槽12において電気分解され、酸性電解水及びアルカリ性電解水となって軟水化槽3及び中和槽4にそれぞれ供給される。そして、酸性電解水及びアルカリ性電解水は、それぞれ、軟水化槽3及び中和槽4において再利用された後、再び貯水槽15へ通水(回収)される。従って、弱酸性陽イオン交換樹脂10の再生及び弱塩基性陰イオン交換樹脂11の再生に使用した酸性電解水及びアルカリ性電解水を再利用することができる。
【0036】
(送水ポンプ)
送水ポンプ20は、再生装置6による再生処理の際に、循環流路21(図2参照)に水を流通させる機器である。送水ポンプ20は、貯水槽15と電解槽12との間を連通接続する送水流路36に設けられている。なお、送水ポンプ20は、電解槽12の上流側、且つ、貯水槽15の下流側に配置することが好ましい。このような配置とするのは、一つの送水ポンプ20で、後述する第一循環流路21a及び第二循環流路21bに水を循環させやすくなるからである。また、送水ポンプ20は、後述する制御部35と無線又は有線により通信可能に接続されている。
【0037】
(分離部)
分離部14は、電解槽12と選択弁19とを連通接続する第二供給流路24aに設けられている。そして、分離部14は、電解槽12から送出されたアルカリ性電解水に含まれる析出物を分離する。ここで、析出物は、電解槽12内において、軟水化槽の再生処理の際に軟水化槽から放出された陽イオンである硬度成分がアルカリ性電解水と反応することにより生じる反応生成物である。より詳細には、電解槽12では水の電気分解が行われており、陽極側(電極13a)では酸性電解水が得られ、第一供給流路22aへ通水される。また、陰極側(電極13b)では陰イオン(例えば水酸化物イオン)を含有するアルカリ性電解水が得られ、第二供給流路24aへ通水される。また、電解槽12で電気分解が行われている間、再生処理時の軟水化槽3から放出される硬度成分(例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン)は、陰極側に移動する。陰極側ではアルカリ性電解水が生成しているため、硬度成分とアルカリ性電解水が反応し、析出物となる。例えば、硬度成分がカルシウムイオンの場合、アルカリ性電解水と混合されることにより、炭酸カルシウムが生じる反応が起こったり、水酸化カルシウムが生じる反応が起こったりする。そして、硬度成分に由来する析出物は、第二供給流路24a上に設けられた分離部14で析出物として分離される。そして、硬度成分に由来する析出物を分離部14で分離することにより、析出物が中和槽4に流入し、堆積することを抑制できる。したがって、再生処理の終了後に軟水化処理を再開する場合には、中和槽4に堆積した析出物が軟水化槽3から放出された水素イオンと反応して硬度成分化し、中和槽4から送出される軟水の硬度を増加させることを抑制できる。また、再生処理の際に、硬度成分に由来する析出物が分離部14で分離されたアルカリ性電解水は、中和槽4を流通し、酸性電解水と混合された後に電解槽12で再度電気分解され、酸性電解水及びアルカリ性電解水として、それぞれ弱酸性陽イオン交換樹脂10の再生と弱塩基性陰イオン交換樹脂11の再生に供される。この時、酸性電解水は、市水もしくは分離部14を備えない場合と比較し、含有する硬度成分が減少している。つまり、分離部14で析出物を分離することにより、酸性電解水の硬度が低下するため、軟水化槽3に流入する硬度成分を減少させることができ、弱酸性陽イオン交換樹脂10の再生効率の低下を抑制できる。
【0038】
なお、「硬度成分が反応する」とは、硬度成分すべてが反応することのみならず、反応しない成分もしくは溶解度積を超えない成分が含まれている状態も含むものとする。
【0039】
分離部14は、硬度成分とアルカリ性電解水との反応により生じる析出物を分離可能であればその形態は問わない。例えば、カートリッジタイプのフィルター、粒状ろ材を用いたろ過層、サイクロン型の固液分離機、中空糸膜等を用いる形態が挙げられる。
【0040】
分離部14の形態として一般的に使用される手段としては、カートリッジタイプのフィルターが挙げられる。カートリッジタイプのフィルターとして、糸巻きフィルターのような深層ろ過型、プリーツフィルター及びメンブレンフィルターのような表面ろ過型、またはこれらを組み合わせて使用することができる。
【0041】
糸巻フィルターは、1~150マイクロメートルの粒子径に対応し、主にプレフィルターとして使用される。プリーツフィルター及びメンブレンフィルターは、0.03~100マイクロメートル程度と幅広い粒子径に対応したものが存在するが、特に本発明の実施にあたっては0.5~1.5マイクロメートル程度の精度のものを使用すれば、後述する再生処理において析出する硬度成分を捕捉するのに好ましい。分離部14には後述する再生処理ではアルカリ性電解水が流れ、洗浄処理では酸性電解水が流れるため、カートリッジタイプのフィルターの材質は、酸及びアルカリに対して耐食性が高い素材(例えばポリプロピレン)が好ましい。
【0042】
ろ過層に用いられる粒状ろ材は、硬度成分を捕捉して除去することを目的としているが、粒状ろ材に吸着するような表面電位を持つ粒子、原水中のイオン等の存在状態によっては粒子径約が1~10マイクロメートルの粒子あるいは色度も除去可能となる。粒状ろ材には、ろ過砂をはじめ、ペレット状の繊維ろ材等、除去対象物に適したろ材を用いることができる。粒状ろ材の材質は、例えば、砂、アンスラサイト、ガーネット、セラミックス、粒状活性炭、オキシ水酸化鉄、マンガン砂など、水中で沈降し、圧力で変形しにくい硬度をもつものであればよい。粒子径は、例えば0.3~5.0ミリメートル、均等係数が1.2~2.0などのものを用いるとよい。
【0043】
また、比重が異なる複数の種類のろ材を混合して使用する複層ろ過法は、ろ過を行う層としてサイズの異なる粒子を小さい粒子から順に下から積層する方法である。複層ろ過法では、比重が大きくサイズが小さい粒子と、比重が小さくサイズが大きい粒子を混合して多層構造にするのが一般的である。複層ろ過法は、単一の種類のろ材を用いるのに比べて、単位体積あたりのろ過効率が高く、一方で損失水頭が低く抑えられるなどのメリットがあるため好ましい。粒状ろ材としては、例えば、ガーネットの0.3ミリメートルと、砂の0.6リメートル、アンスラサイトの1.0ミリメートルのものを、2:1:1で混合して使用するが、濁質の粒子特性に応じて混合比率や粒子径を調整することが好ましい。
【0044】
(開閉弁及び選択弁)
複数の開閉弁(開閉弁27~開閉弁34)は、各流路にそれぞれ設けられ、各流路において「開放」した状態と、「閉止」した状態とを切り替える。また、選択弁17は、第一供給流路22に設けられ、電解槽12の電極13aでの電気分解により生じる電解水の流通方向を決定する。具体的には、選択弁17は、電極13aでの電気分解により生じる電解水が第一供給流路22(第一供給流路22a及び第一供給流路22b)を流通して軟水化槽3に至る流通状態と、電極13aでの電気分解により生じる電解水が第一供給流路22aから第一排水流路37を介して第一排水口16に至る流路状態とを切り替える。また、選択弁19は、第二供給流路24に設けられ、電解槽12の電極13bでの電気分解により生じる電解水の流通方向を決定する。具体的には、選択弁19は、電極13bでの電気分解により生じる電解水が分離部14及び第二供給流路24(第二供給流路24a及び第二供給流路24b)を流通して中和槽4に至る流通状態と、電極13bでの電気分解により生じる電解水が第二供給流路24aから分離部14及び第二排水流路38を介して第二排水口18に至る流路状態とを切り替える。また、複数の開閉弁(開閉弁27~開閉弁34)、選択弁17、及び選択弁19はそれぞれ、後述する制御部35と無線又は有線により通信可能に接続されている。
【0045】
(排水口)
第一排水口16及び第二排水口18は、後述する分離部14の洗浄時(分離部洗浄時)及び分離部洗浄時に続いて行う排水時に、電解槽12から流出した電解水(酸性電解水及びアルカリ性電解水)を装置外に排出する。
【0046】
第一排水口16は、分離部洗浄時には、電解槽12から流出し、第一供給流路22a及び第一排水流路37を流通したアルカリ性電解水を装置外に排出する。第一排水口16は、排水時には、電解槽12から送出され、第一供給流路22a及び第一排水流路37を流通する水(流路内に残るアルカリ性電解水などの水)を装置外に排出する。
【0047】
第二排水口18は、分離部洗浄時には、電解槽12から流出し、第二供給流路24a、分離部14、及び第二排水流路38を流通した酸性電解水を装置外に排出する。第二排水口18は、排水時には、電解槽12から送出され、第二供給流路24a、分離部14、及び第二排水流路38を流通する水(流路内に残る酸性電解水などの水)を装置外に排出する。
【0048】
(制御部)
制御部35は、硬度成分を含む原水を軟水化する軟水化処理を制御する。また、制御部35は、軟水化槽3の弱酸性陽イオン交換樹脂10及び中和槽4の弱塩基性陰イオン交換樹脂11の再生処理を制御する。また、制御部35は、電解槽12の転極を制御する。さらに、制御部35は、軟水化装置1の軟水化処理、再生処理、洗浄処理、及び排水処理の切り替えを制御する。この際、制御部35は、電極13、送水ポンプ20、開閉弁27、開閉弁28、開閉弁29、開閉弁30、開閉弁31、開閉弁32、開閉弁33、開閉弁34、選択弁17、及び選択弁19の動作を制御し、軟水化処理、再生処理、洗浄処理、及び排水処理の切り替え、それぞれの処理、及び転極を実行させる。
【0049】
(流路)
次に、図2を参照して、軟水化装置1の再生処理の際に形成される循環流路21について説明する。図2は、軟水化装置1の循環流路21を示す構成図である。
【0050】
説明が重複するが、図2に示すように、軟水化装置1において、再生装置6を構成する電解槽12及び貯水槽15は、送水流路36によって連通接続される。また、電解槽12及び貯水槽15は、流入口2から取水口5までの流路7、流路8、及び流路9に対して、第一供給流路22、第一回収流路23、第二供給流路24、及び第二回収流路25によってそれぞれ連通接続されている。そして、再生装置6では、各流路の組み合わせによって循環流路21が構成されている。
【0051】
第一供給流路22は、電解槽12から軟水化槽3へ酸性電解水を供給する流路であり、その流路には、選択弁17及び開閉弁27が設置されている。そして、第一供給流路22は、電解槽12と選択弁17とを連通接続する第一供給流路22aと、選択弁17と軟水化槽3とを連通接続する第一供給流路22bにより構成される。すなわち、軟水化装置1は、電解槽12から酸性電解水を引き出して軟水化槽3の上流側へ送水可能とする第一供給流路22を備える。
【0052】
そして、第一回収流路23は、軟水化槽3を通過した硬度成分を含む水を貯水槽15へ回収する流路であり、その流路には、開閉弁28が設置されている。すなわち、軟水化装置1は、貯水槽15の上流側を軟水化槽3の下流側に接続可能とする第一回収流路23を備える。
【0053】
第二供給流路24は、電解槽12から分離部14を介して中和槽4へアルカリ性電解水を供給する流路であり、その流路には、選択弁19及び開閉弁29が設置されている。そして、第二供給流路24は、電解槽12と選択弁19とを連通接続する第二供給流路24aと、選択弁19と中和槽4とを連通接続する第二供給流路24bにより構成される。すなわち、軟水化装置1は、電解槽12から引き出したアルカリ性電解水に含まれる硬度成分に由来する析出物を分離部14で分離し、析出物が分離されたアルカリ性電解水を中和槽4の上流側へ送水可能とする第二供給流路24を備える。
【0054】
そして、第二回収流路25は、中和槽4を通過した水を貯水槽15へ回収する流路であり、その流路には、開閉弁30が設置されている。すなわち、軟水化装置1は、貯水槽15の上流側を中和槽4の下流側に接続可能とする第二回収流路25を備える。
【0055】
循環流路21は、送水ポンプ20によって貯水槽15から送出された水が、軟水化槽3を流通する第一循環流路21aと、送水ポンプ20によって貯水槽15から送出された水が、中和槽4を流通する第二循環流路21bとを含む。
【0056】
第一循環流路21aは、図2(白矢印)に示すように、送水ポンプ20によって貯水槽15から送出された水が、電解槽12と軟水化槽3とを流通して貯水槽15に戻って循環する流路である。より詳細には、第一循環流路21aは、送水ポンプ20によって貯水槽15から送出された水が、送水流路36、電解槽12、第一供給流路22a、選択弁17、第一供給流路22b、開閉弁27、軟水化槽3、第一回収流路23、開閉弁28、貯水槽15の順に流通して循環する流路である。
【0057】
第二循環流路21bは、図2(黒矢印)に示すように、送水ポンプ20によって貯水槽15から送出された水が、電解槽12と中和槽4とを流通して貯水槽15に戻って循環する流路である。より詳細には、第二循環流路21bは、送水ポンプ20によって貯水槽15から送出された水が、送水流路36、電解槽12、第二供給流路24a、選択弁19、第二供給流路24b、開閉弁29、中和槽4、第二回収流路25、開閉弁30、貯水槽15の順に流通して循環する流路である。
【0058】
ここで、循環流路21において水を循環させるために、流路7には、流入口2の下流側に開閉弁31が設置されている。そして、開閉弁31を閉止して、開閉弁27を開放することで、軟水化槽3の上流側に第一供給流路22が連通接続された状態となる。これにより、電解槽12からの酸性電解水を軟水化槽3に供給できるようになる。
【0059】
また、流路8には、第一回収流路23の下流側、且つ、第二供給流路24bの上流側に開閉弁32が設置されている。そして、開閉弁32を閉止して、開閉弁28を開放することで、軟水化槽3の下流側に第一回収流路23が連通接続された状態となる。これにより、軟水化装置1では、軟水化槽3を流通した水(硬度成分を含む酸性電解水)を貯水槽15へ回収することができるようになる。
【0060】
また、開閉弁32を閉止して、開閉弁29を開放することで、中和槽4の上流側に第二供給流路24が連通接続された状態となる。これにより、軟水化装置1では、電解槽12からのアルカリ性電解水を中和槽4に供給できるようになる。
【0061】
また、流路9には、中和槽4の下流側に開閉弁33が設置されている。そして、開閉弁33を閉止して、開閉弁30を開放することで、中和槽4の下流側に第二回収流路25が連通接続された状態となる。これにより、第二回収流路25を通過した水(陰イオンを含むアルカリ性電解水)を貯水槽15へ回収することができるようになる。
【0062】
また、送水流路36には、貯水槽15の下流側(貯水槽15と送水ポンプ20との間の位置)に開閉弁34が設置されている。開閉弁34を閉止することにより、貯水槽15に水を貯留することができる。一方、開閉弁34を開放することにより、送水流路36へ水を供給することができる。
【0063】
また、第一供給流路22(第一供給流路22a及び第一供給流路22b)には、選択弁17が設置されている。選択弁17を切り替えることにより、電極13aでの電気分解により生じる電解水が第一供給流路22a及び第一供給流路22bを流通して軟水化槽3に至る流通状態と、電極13aでの電気分解により生じる電解水が第一供給流路22aから後述する第一排水流路37を介して第一排水口16により装置外へ排出される流路状態とにすることができる。
【0064】
また、第二供給流路24(第二供給流路24a及び第二供給流路24b)には、選択弁19が設置されている。選択弁19を切り替えることにより、電極13bでの電気分解により生じる電解水が第二供給流路24a及び第二供給流路24bを流通して軟水化槽3に至る流通状態と、電極13bでの電気分解により生じる電解水が第二供給流路24aから後述する第一排水流路37を介して第二排水口18により装置外へ排出される流路状態とにすることができる。
【0065】
また、開閉弁33を閉止することによって、循環流路21への水の循環を開始することができる一方、開閉弁33を開放することによって、循環流路21への水の循環を停止することができる。
【0066】
次に、図3を参照して、軟水化装置1の洗浄処理の際に形成される洗浄流路26について説明する。図3は、軟水化装置1の洗浄流路26を示す構成図である。
【0067】
説明が重複するが、図3に示すように、再生装置6は、電解槽12、分離部14、及び貯水槽15によって構成されている。貯水槽15は、流路9に対して、第二回収流路25によって連通接続されている。また、電解槽12と貯水槽15は、送水流路36によって連通接続される。電解槽12は、第一供給流路22a及び第一排水流路37によって第一排水口16と連通接続されている。また、電解槽12は、第二供給流路24a及び第二排水流路38によって第二排水口18と連通接続されている。そして、再生装置6では、各流路の組み合わせによって洗浄流路26が構成されている。
【0068】
第一排水流路37は、選択弁17から第一排水口16へ水を排出する流路である。すなわち、軟水化装置1は、選択弁17から第一排水口16へ水を引き出して装置外に排出可能とする第一排水流路37を備える。
【0069】
第二排水流路38は、選択弁19から第二排水口18へ水を排出する流路である。すなわち、軟水化装置1は、選択弁19から第二排水口18へ水を引き出して装置外に排出可能とする第二排水流路38を備える。
【0070】
洗浄流路26は、第一洗浄流路26aと第二洗浄流路26bとを含む。
【0071】
第一洗浄流路26aは、図3(斜線矢印及び横線矢印)に示すように、流入口2から導入された水が、流路7、軟水化槽3、流路8、中和槽4、第二回収流路25、貯水槽15、送水流路36、及び電解槽12の順に流通し、電解槽12で電気分解された後、アルカリ性電解水として第一供給流路22a、選択弁17、及び第一排水流路37を流通し、第一排水口16から装置外に排出される流路である。
【0072】
第二洗浄流路26bは、図3(斜線矢印及び網掛矢印)に示すように、流入口2から導入された水が、流路7、軟水化槽3、流路8、中和槽4、第二回収流路25、貯水槽15、送水流路36、及び電解槽12の順に流通し、電解槽12で電気分解された後、酸性電解水として第二供給流路24a(分離部14を含む)、選択弁19、及び第二排水流路38を流通し、第二排水口18から装置外に排出される流路である。
【0073】
(軟水化処理、再生処理、洗浄処理、及び排水処理)
次に、図4を参照して、再生処理を起点とした軟水化装置1の軟水化処理、再生処理、洗浄処理、及び排水処理について説明する。図4は、軟水化装置1の動作時の状態を示す図である。
【0074】
軟水化処理、再生処理、洗浄処理、及び排水処理では、制御部35は、図4に示すように、開閉弁27、開閉弁28、開閉弁29、開閉弁30、開閉弁31、開閉弁32、開閉弁33、開閉弁34、選択弁17、選択弁19、電解槽12の電極13、及び送水ポンプ20を切り替えてそれぞれの流通状態となるように制御する。なお、制御部35は、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを有している。そして、プロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが制御部として機能する。プロセッサが実行するプログラムは、ここではコンピュータシステムのメモリに予め記録されているとしたが、メモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて提供されてもよい。
【0075】
ここで、図4中の「ON」は、該当の開閉弁が「開放」した状態、電極13が通電している状態、及び送水ポンプ20が動作している状態をそれぞれ示す。空欄は、該当の開閉弁が「閉止」した状態、電極13が通電していない状態、送水ポンプ20が停止している状態をそれぞれ示す。また、図4中の選択弁17及び選択弁19の表記は、数字(符号)と対応する構成要素(軟水化槽3、中和槽4、第一排水口16もしくは第二排水口18)へと流路を開放した状態を示す。通常時の選択弁17は、軟水化槽3へと流路を開放した状態となっているが、他の処理と関係のない場合には空欄としている。通常時の選択弁19は、中和槽4へと流路を開放した状態となっているが、他の処理と関係のない場合には空欄としている。また、図4中に示した分離部洗浄時における電極13の「ON(転極)」は、電極13が転極を行っている状態を示す。
【0076】
(再生処理)
まず、軟水化装置1の再生装置6による再生処理時の動作について、図4の「水注入時」及び「再生時」の欄を参照して順に説明する。
【0077】
軟水化装置1において、弱酸性陽イオン交換樹脂10を充填した軟水化槽3は、使用を続けると陽イオン交換能力が低下または消失する。すなわち、陽イオン交換樹脂の官能基である水素イオンすべてが、硬度成分であるカルシウムイオンあるいはマグネシウムイオンと交換された後は、イオン交換ができなくなる。このような状態になると、硬度成分が処理水中に含まれるようになる。このため、軟水化装置1では、再生装置6による軟水化槽3及び中和槽4の再生処理を行う必要が生じる。
【0078】
そこで、軟水化装置1では、所定の期間(例えば1日(24時間))に1回、制御部35によって再生処理が可能な時間帯を特定して、再生処理を実行する。
【0079】
まず、図4に示すように、水注入時において、開閉弁31及び開閉弁28を開放する。これにより、軟水化装置1は、市水の圧力によって、流入口2から軟水化槽3を通して原水を貯水槽15へ導入する。この時、開閉弁27、開閉弁32、開閉弁29、開閉弁33、開閉弁30、及び開閉弁34は閉止している。貯水槽15に、軟水化装置1の容量に応じた所定の量の水を貯留することで、再生装置6は、再生時の水量を確保することができる。
【0080】
次に、再生時において、開閉弁31、開閉弁32、及び開閉弁33を閉止して、開閉弁27、開閉弁28、開閉弁29、開閉弁30、及び開閉弁34を開放し、選択弁17の通水方向を軟水化槽3方向へと設定し、選択弁19の通水方向を中和槽4方向へと設定すると、図2に示すように、第一循環流路21a及び第二循環流路21bがそれぞれ形成される。
【0081】
そして、電解槽12の電極13及び送水ポンプ20を動作させると、貯水槽15に貯留した水が第一循環流路21a及び第二循環流路21bのそれぞれを循環することとなる。
【0082】
この際、電解槽12で生成した酸性電解水は、第一供給流路22を通って軟水化槽3内に送水され、内部の弱酸性陽イオン交換樹脂10を流通する。すなわち、酸性電解水を弱酸性陽イオン交換樹脂10に流通させることで、弱酸性陽イオン交換樹脂10に吸着されている陽イオン(硬度成分)が、酸性電解水に含まれる水素イオンとイオン交換反応を起こす。これにより、弱酸性陽イオン交換樹脂10が再生される。その後、弱酸性陽イオン交換樹脂10を流通した酸性電解水は、陽イオンを含み、第一回収流路23へ流れ込む。すなわち、弱酸性陽イオン交換樹脂10を流通した陽イオンを含む酸性電解水は、第一回収流路23を介して貯水槽15内に回収される。
【0083】
一方、電解槽12で生成したアルカリ性電解水は、第二供給流路24及び第二供給流路24に設けられた分離部14を通って中和槽4内に送水され、内部の弱塩基性陰イオン交換樹脂11を流通する。すなわち、アルカリ性電解水を弱塩基性陰イオン交換樹脂11に流通させることで、弱塩基性陰イオン交換樹脂11に吸着されている陰イオンが、アルカリ性電解水に含まれる水酸化物イオンとイオン交換反応を起こす。これにより、弱塩基性陰イオン交換樹脂11が再生される。その後、弱塩基性陰イオン交換樹脂11を流通したアルカリ性電解水は、陰イオンを含み、第二回収流路25へ流れ込む。すなわち、弱塩基性陰イオン交換樹脂11を流通した陰イオンを含むアルカリ性電解水は、第二回収流路25を介して貯水槽15内に回収される。
【0084】
そして、貯水槽15内では、軟水化槽3から回収された陽イオンを含む酸性電解水と、中和槽4から回収された陰イオンを含むアルカリ性電解水とが混合されて中和される。
【0085】
この時、陽イオン(硬度成分)を含む酸性電解水と、陰イオンを含むアルカリ性電解水とを混合することにより、硬度成分がアルカリ性電解水に含まれる水酸化物イオンと反応し、析出物が生じるが、少なくとも再生処理の初期段階においては、軟水化槽3から放出される硬度成分量に比べて、中和槽4から流れ込むアルカリ性電解水に含まれる水酸化物イオン量が少ないため、析出物が生じにくい状態である。このため、中和された電解水に含まれる硬度成分は、そのまま電解槽12に送出されることになる。
【0086】
その後、貯水槽15で混合された電解水は、送水流路36を介して電解槽12に再び通水される。そして、通水された水は、電解槽12において再び電解される。
【0087】
前述したように、電解槽12内では水の電気分解が行われており、陰極付近では、電気分解により水酸化物イオンが多量に生成されているため、析出物が生じやすい状態となっている。つまり、貯水槽15から供給された水に含まれる硬度成分(例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン)は、陰極側に移動し、水酸化物イオンと反応することで析出物となる。そして、こうした析出物を含むアルカリ性電解水は、第二供給流路24aに送出され、分離部14に流入する。
【0088】
分離部14内では、アルカリ性電解水に含まれる析出物が分離され、硬度成分が除去されたアルカリ性電解水(処理水)を得ることができる。
【0089】
ここで、電解槽12にて再び電気分解された酸性電解水及び電解槽12にて再び電気分解され、分離部14により析出物が分離されたアルカリ性電解水は、それぞれ弱酸性陽イオン交換樹脂10の再生と弱塩基性陰イオン交換樹脂11の再生に供される。
【0090】
ここで、従来の軟水化装置の中和槽で生じる問題点として、再生処理時に、軟水化槽から放出される硬度成分とアルカリ性電解水とが電解槽で反応して生成する析出物が、中和槽に流入し、中和槽内で堆積するということがあった。つまり、析出物が中和槽内に堆積した状態で軟水化処理を再開すると、軟水化槽から放出された水素イオンと反応し、硬度成分化することにより、軟水化性能が低下するということになる。しかしながら、本実施の形態では、分離部14によって、電解槽12で生成する析出物を分離することで、中和槽4の内部での、硬度成分に起因する析出物の堆積を抑制することができる。
【0091】
そして、軟水化装置1では、再生処理が終了すると電極13の転極を行う。また、開閉弁27、開閉弁28、及び開閉弁29を閉止させ、開閉弁31及び開閉弁32を開放し、選択弁17の通水方向を軟水化槽3方向から第一排水口16方向に切り替え、選択弁19の通水方向を中和槽4方向から第二排水口18方向に切り替えることで洗浄処理へ移行する。
【0092】
(洗浄処理)
軟水化装置1では、再生処理が終了すると洗浄処理へ移行する。ここで、洗浄処理とは、分離部14を洗浄するための処理であり、電解槽12の一対の電極13を転極させ、転極時に電解槽12で生成される酸性電解水を分離部14に流通させ、分離部14で分離した硬度成分に起因する析出物を溶解させる処理である。
【0093】
次に、軟水化装置1による洗浄処理時の動作について、図4の「洗浄時」の欄を参照して説明する。
【0094】
軟水化装置1では、図4に示すように、洗浄処理(洗浄時)において、開閉弁30、開閉弁31、開閉弁32、及び開閉弁34を開放する。これにより、軟水化装置1は、市水の圧力によって、流入口2から軟水化槽3、中和槽4、第二回収流路25、及び貯水槽15を通して原水を電解槽12へ導入する。この時、開閉弁27、開閉弁28、開閉弁29、及び開閉弁33は閉止している。原水を軟水化槽3、中和槽4、及び第二回収流路25に流通させることにより、再生処理時に軟水化槽3、中和槽4、及び第二回収流路25に流通していた電解水を原水に置換することができる。
【0095】
次に、電極13の転極を行い、選択弁17の通水方向を第一排水口16方向へと設定し、選択弁19の通水方向を第二排水口18方向へと設定すると、図3に示すように、洗浄流路26が形成される。転極により、電解槽12は、酸性電解水を第二供給流路24aに供給し、アルカリ性電解水を第一供給流路22aに供給可能な状態となる。
【0096】
そして、電解槽12の電極13及び送水ポンプ20を動作させると、洗浄流路26に原水及び電解水(酸性電解水、アルカリ性電解水)が流通することとなる。
【0097】
この際、電解槽12で生成したアルカリ性電解水は、第一供給流路22a及び第一排水流路37を流通し、第一排水口16から装置外に排出される。
【0098】
一方、電解槽12で生成した酸性電解水は、第二供給流路24aに設けられた分離部14を通って第二排水流路38に送水され、第二排水口18により装置外に排出される。すなわち、酸性電解水を分離部14に流通させることで、分離部14に捕捉されている硬度成分に起因する析出物が酸性電解水と反応する。これにより、硬度成分に起因する析出物は、溶解し、硬度成分となり、酸性電解水中に含まれる。その後、分離部14を流通した酸性電解水は、硬度成分を含み、第二排水口18により装置外に排出される。つまり、分離部14に酸性電解水を流通させ、流通した酸性電解水を排出させることにより、分離部14の洗浄を行うとともに、硬度成分を装置外に排出することができる。これにより、分離部14の洗浄を行うことができるため、分離部14の目詰まりによる通水量の減少を低減できる。また、分離部14のメンテナンスの回数を削減することができる。
【0099】
そして、軟水化装置1では、洗浄処理が終了すると、電極13の転極を終了させ、動作を停止させる。また、開閉弁31及び開閉弁32を閉止させ、市水の流入を停止させることで排水処理へ移行する。
【0100】
なお、洗浄処理の終了は、転極開始から一定時間(例えば5分)経過時とする。
【0101】
(排水処理)
軟水化装置1では、洗浄処理が終了すると排水処理へ移行する。ここで、排水処理とは、洗浄流路26内に残存している原水、酸性電解水、及びアルカリ性電解水の排水を行う処理である。
【0102】
次に、軟水化装置1による排水処理時の動作について、図4の「排水時」の欄を参照して説明する。
【0103】
軟水化装置1では、図4に示すように、排水処理(排水時)において、開閉弁27、開閉弁28、開閉弁29、開閉弁31、開閉弁32、及び開閉弁33を閉止し、開閉弁30を開放する。これにより、流入口2からの市水の流入を停止するとともに、軟水化槽3の内部から第一回収流路23を介して貯水槽15へ至る経路内に残存している原水及び中和槽4の内部から第二回収流路25を介し貯水槽15へ至る経路内に残存している原水を貯水槽15に流入させることができる。
【0104】
次に、開閉弁34が開放されており、送水ポンプ20が動作しており、電極13は動作を停止している。このことから、貯水槽15の内部から送水流路36を介して電解槽12に至る経路内に残存している原水、電解槽12の内部から第一供給流路22a及び第一排水流路37を介して第一排水口16へ至る経路内に残存しているアルカリ性電解水、及び電解槽12の内部から第二供給流路24a及び第二排水流路38を介して第二排水口18へ至る経路内に残存している電解水を装置外へ排出することができる。
【0105】
排水処理を行うことにより、洗浄流路26内に残存するアルカリ性電解水の軟水化槽3への流入及び洗浄流路26内に残存する酸性電解水の中和槽4への流入を防ぐことができる。
【0106】
そして、軟水化装置1では、排水処理が終了すると、送水ポンプ20の動作を停止させる。また、開閉弁30及び開閉弁34を閉止させ、開閉弁31、開閉弁32、及び開閉弁33を開放する。さらに、選択弁17の通水方向を軟水化槽3方向へと設定し、選択弁19の通水方向を中和槽4方向へと設定するとことで軟水化処理へ移行する。
【0107】
なお、排水処理の終了は、排水処理開始から一定時間(例えば1分)経過時とする。
【0108】
(軟水化処理)
軟水化装置1は、排水処理が終了すると軟水化処理に移行する。
【0109】
次に、軟水化装置1による軟水化処理時の動作について、図4の「軟水化時」の欄を参照して説明する。
【0110】
軟水化装置1では、図4に示すように、軟水化処理(軟水化時)において、開閉弁31と開閉弁32とを開放した状態で、取水口5に設けた開閉弁33を開放する。これにより、軟水化装置1は、外部から市水(硬度成分を含む原水)が軟水化槽3と中和槽4とを流通するので、取水口5から軟水化した水(中性の軟水)を取り出すことができる。このとき、開閉弁27、開閉弁28、開閉弁29、開閉弁30、及び開閉弁34は、いずれも閉止した状態になっている。また、電解槽12の電極13及び送水ポンプ20の動作も停止した状態である。
【0111】
具体的には、図1に示すように、軟水化処理では、市水の圧力によって、供給される原水は、流入口2から流路7を通って、軟水化槽3に供給される。そして、軟水化槽3に供給された原水は、軟水化槽3内に備えられた弱酸性陽イオン交換樹脂10を流通する。このとき、原水中の硬度成分である陽イオンは、弱酸性陽イオン交換樹脂10の作用により吸着され、水素イオンが放出される(イオン交換が行われる)。そして、原水から陽イオンが除去されることで原水が軟水化される。軟水化された水は、さらに流路8を通って、中和槽4へ進む。中和槽4では、弱塩基性陰イオン交換樹脂11の作用によって、軟水化された水に含まれる水素イオンが吸着される。つまり、処理後の軟水から水素イオンが除去されるので、低下したpHが上昇し、生活用水として軟水化した中性水となり、流路9を通過して取水口5から取り出すことができる。
【0112】
そして、軟水化装置1では、制御部35で特定された時間帯になった場合もしくは軟水化処理が一定時間を超えた場合に再生処理を実行する。
【0113】
以上のようにして、軟水化装置1では、軟水化処理、再生処理、洗浄処理、及び排水処理が繰り返し実行される。
【0114】
以上、本実施の形態1に係る軟水化装置1によれば、以下の効果を享受することができる。
【0115】
(1)軟水化装置1は、軟水化槽3と、中和槽4と、電解槽12と、貯水槽15と、分離部14とを備える。軟水化槽3は、硬度成分を含む原水を弱酸性陽イオン交換樹脂10により軟水化する。中和槽4は、軟水化槽を通過した軟水のpHを弱塩基性陰イオン交換樹脂11により中和する。電解槽12は、軟水化槽3の弱酸性陽イオン交換樹脂10を再生するための酸性電解水と、中和槽4の弱塩基性陰イオン交換樹脂11を再生するためのアルカリ性電解水とを生成する。貯水槽15は、軟水化槽3を流通した酸性電解水と中和槽4を流通したアルカリ性電解水とを混合して電解槽12に供給する。分離部14は、電解槽12と中和槽4とを連通する流路に設けられ、電解槽12に導入された水に含まれる硬度成分に起因する析出物を分離するようにした。
【0116】
これにより、軟水化槽3及び中和槽4の再生処理を行う際に、電解槽12を通過したアルカリ性電解水に含まれる析出物(電解槽12に導入された水に含まれる硬度成分に起因した析出物)を分離部14で分離することができ、析出物の中和槽4への流入を低減できる。そのため、再生処理の終了後に軟水化処理を再開する場合には、中和槽4に流入した析出物が軟水化槽3からの水素イオンと反応して硬度成分化するのを抑制することができ、析出物の溶解に伴う軟水化性能の低下を低減できる。
【0117】
(2)軟水化装置1は、軟水化槽3の弱酸性陽イオン交換樹脂10及び中和槽4の弱塩基性陰イオン交換樹脂11の再生処理を制御する制御部35を備える。そして、制御部35は、再生処理の終了後、電解槽12の転極を行い、転極後の酸性電解水を分離部14に流通させ、装置外に排出するように制御した。これにより、分離部14の洗浄(分離部14にて分離された析出物の溶解除去)がなされるので、分離部14のメンテナンス頻度を低減することができ、長期にわたって使用可能な軟水化装置1とすることができる。
【0118】
(実施の形態2)
次に、図5を参照して、本発明の実施の形態2に係る軟水化装置1aについて説明する。図5は、本発明の実施の形態2に係る軟水化装置1aの構成を示す概念図である。
【0119】
実施の形態2に係る軟水化装置1aは、分離部14の下流側にイオン濃度検出部39を設けるという点で実施の形態1と異なる。つまり、実施の形態2に係る軟水化装置1aでは、分離部14を流通した後の転極後の酸性電解水のイオン濃度に関する情報に基づいて、イオン濃度が基準値未満となった場合に、電解槽12の転極を終了するように制御している。これ以外の軟水化装置1aの構成は、実施の形態1に係る軟水化装置1と同様である。以下、実施の形態1で説明済みの内容は再度の説明を適宜省略し、実施の形態1と異なる点を主に説明する。
【0120】
図5に示すように、軟水化装置1aは、第二供給流路24a上において、分離部14の後段、且つ、選択弁19の前段にイオン濃度検出部39を備えている。
【0121】
イオン濃度検出部39は、洗浄処理時に、分離部14を流通した酸性電解水のイオン濃度を検出する。イオン濃度検出部39は、制御部35と無線又は有線により通信可能に接続され、検出したイオン濃度に関する情報は、制御部35の入力信号として用いられる。
【0122】
ここで、イオン濃度検出部39としては、汎用的なものを使用することができ、例えば、液体の電気伝導率を測定する検出器あるいは水中に含まれるTDS(Total Dissolved Solid:総溶解固形物)の量を測定する検出器が挙げられる。
【0123】
水(純水)は、それ自体ほぼ電気を通さない絶縁体であるが、種々の物質が溶解(イオン化)することで通電する。つまり、液体の電気伝導率は、液体中に含まれるイオン化した物質量の指標となる。一般的な市水においては、市水の水源となる河川水あるいは地下水に多く含まれるカルシウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、塩化物イオンなどの含有量に比例する。本実施の形態では、TDSは、洗浄処理中にイオン濃度検出部39を流通する水に含まれるイオン(カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩化物イオン、水素イオンなど)の濃度の総計を表す。同一水系の水において、電気伝導度とTDSは近似的に比例関係にある。
【0124】
制御部35は、イオン濃度検出部39から出力されたイオン濃度に関する情報に基づいて特定されたイオン濃度が基準値未満となった場合に、電解槽12の転極を終了するように制御する。一方、制御部35は、イオン濃度が基準値以上である場合に、電解槽12の転極を継続するように制御する。これにより、制御部35は、転極後の酸性電解水に含まれるイオン濃度に基づいて転極の終了を制御できる。そのため、分離部14を流通した後の酸性電解水に含まれるイオン濃度が基準値未満となるまで、分離部14に酸性電解水を流通させることが可能となる。
【0125】
ここで、イオン濃度検出部39から出力されたイオン濃度に関する情報に基づいて特定されたイオン濃度とは、分離部14に析出物がない状態で、分離部14を流通した後の酸性電解水に含まれるイオン濃度と、洗浄処理時における分離部14を流通した後の酸性電解水に含まれるイオン濃度との差分のイオン濃度である。そして、基準値は、その差分のイオン濃度が所定の範囲となるように規定する値である。
【0126】
以上、本実施の形態2に係る軟水化装置1aによれば、実施の形態1によって得られる効果(1)及び効果(2)に加え、以下の効果を享受することができる。
【0127】
(3)軟水化装置1aでは、制御部35は、分離部14を流通した後の転極後の酸性電解水のイオン濃度(硬度成分濃度)に関する情報に基づいて特定されたイオン濃度が基準値未満となった場合に、電解槽12の転極を終了するように制御した。これにより、転極後の酸性電解水に含まれるイオン濃度に関する情報に基づき、転極の終了を制御できる。そのため、転極後の酸性電解水に含まれるイオン濃度に関する情報に基づいて特定されるイオン濃度が基準値未満となるまで、分離部14に酸性電解水を流通させることが可能となり、分離部14の洗浄(分離された析出物の溶解)をより確実に行うことができる。したがって、分離部14のメンテナンス頻度をさらに低減することができ、長期にわたって使用可能な軟水化装置1aとすることができる。
【0128】
(実施の形態3)
次に、図6を参照して、本発明の実施の形態3に係る軟水化装置1bについて説明する。図6は、本発明の実施の形態3に係る軟水化装置1bの構成を示す概念図である。
【0129】
実施の形態3に係る軟水化装置1bは、貯水槽15に貯水槽分離部40をさらに備えるという点で実施の形態1と異なる。これ以外の軟水化装置1bの構成は、実施の形態1に係る軟水化装置1と同様である。以下、実施の形態1で説明済みの内容は再度の説明を適宜省略し、実施の形態1と異なる点を主に説明する。
【0130】
図6に示すように、軟水化装置1bは、貯水槽15の出口付近(貯水槽15と送水流路36との接続部分)に貯水槽分離部40を備えている。つまり、軟水化装置1bでは、分離部14と貯水槽分離部40とによって、硬度成分に起因する析出物の分離を行うことになる。
【0131】
前述したとおり、貯水槽15では、再生処理の初期段階においては、アルカリ性電解水に含まれる水酸化物イオンは少ないものの、中和槽4の再生が軟水化槽3の再生よりも早く終了するため、再生処理の後半段階においては、アルカリ性電解水に含まれる水酸化物イオン量が増加する。つまり、再生処理の後半段階では、軟水化槽3から放出された硬度成分を含む酸性電解水と中和槽4から放出されたアルカリ性電解水とが混合され、析出物が生じやすい状態となる。この結果、軟水化槽3から放出された硬度成分(例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン)は、中和槽4からの水酸化物イオンと反応することで析出物となる。そこで、貯水槽分離部40は、貯水槽15内で生じた析出物を分離する。なお、貯水槽分離部40は、分離部14と同じく、硬度成分とアルカリ性電解水との反応により生じる析出物を分離可能であればその形態は問わない。前述したように、例えば、カートリッジタイプのフィルター、粒状ろ材を用いたろ過層、サイクロン型の固液分離機、中空糸膜等を用いる形態が挙げられる。
【0132】
そして、貯水槽15は、貯水槽分離部40によって析出物を分離した電解水を、送水流路36を介して電解槽12に供給する。この際、電解槽12に供給される電解水に含まれる硬度成分が減少しているので、電解槽12の電極13bにおいて生じる析出物もまた減少することになる。
【0133】
以上、本実施の形態3に係る軟水化装置1bによれば、実施の形態1によって得られる効果(1)及び効果(2)に加え、以下の効果を享受することができる。
【0134】
(4)軟水化装置1bでは、貯水槽15は、槽内に導入された水に含まれる硬度成分に起因する析出物を分離する貯水槽分離部40をさらに備える構成とした。これにより、電解槽12と中和槽4との間に設けられた分離部14だけでなく、貯水槽分離部40でも析出物を分離できるため、より確実に析出物を分離できる。そのため、再生処理の終了後に軟水化処理を再開する場合には、従来の軟水化装置のように中和槽4に流入した析出物が軟水化槽3からの水素イオンと反応して硬度成分化するのを抑制することができ、析出物の溶解に伴う軟水化性能の低下をさらに低減できる。
【0135】
(5)軟水化装置1bは、洗浄流路26に対して、電解槽12の下流側に設けた分離部14と、電解槽12の上流側に設けた貯水槽分離部40とを有して構成した。これにより、電解槽12に供給する電解水に含まれる硬度成分を減少させることができるので、電解槽12において生じる析出物を減少させることになる。したがって、分離部14のメンテナンス頻度をさらに低減することができ、長期にわたって使用可能な軟水化装置1bとすることができる。
【0136】
以上、本発明に関して実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されているところである。
【0137】
また、本実施の形態1に係る軟水化装置1では、制御部35で特定された時間帯になった場合もしくは軟水化処理が一定時間を超えた場合に再生処理を実行するようにしたが、これに限られない。例えば、第二回収流路25の下流側、且つ、開閉弁27の上流側に、イオン濃度検出部39とは別のイオン濃度検出部を設け、そのイオン濃度検出部によって、流路9を流通する軟水のイオン濃度(例えば、硬度成分濃度)を常に検出し、制御部35で特定された時間帯になった場合もしくは軟水化処理が一定時間を超えた場合だけでなく、イオン濃度が予め設定された基準値を超えた場合に再生処理を実行するようにしてもよい。これにより、中和槽4を流通した後の水のイオン濃度に基づいて、再生処理の実行を判断することができる。そのため、軟水化槽3の弱酸性陽イオン交換樹脂10の状態をより正確に判断することができ、適切なタイミングでの弱酸性陽イオン交換樹脂10及び弱塩基性陰イオン交換樹脂11の再生を行うことができる。
【0138】
また、本実施の形態1に係る軟水化装置1では、洗浄処理(洗浄時)において、原水を流入口2から軟水化槽3、中和槽4、第二回収流路25、及び貯水槽15を通して電解槽12へ導入させたが、この限りではない。例えば、第二回収流路25の代わりに第一回収流路23を流通させるようにしてもよい。これにより、第一回収流路23内に残存する、硬度成分を含む酸性電解水を回収することができる。
【0139】
また、本実施の形態1に係る軟水化装置1において、貯水槽15に開閉弁及び空気抜き弁をさらに備える構造としてもよい。排水処理時に、貯水槽15に設けた開閉弁を開放すると、空気抜き弁の作用により、貯水槽15内の水が外部に排水される。これにより、排水処理に要する時間を短縮することができる。
【0140】
また、本実施の形態1に係る軟水化装置1では、洗浄処理時及び排水処理時に、電解槽12から送出した電解水を装置外に排出されるための構成として第一排水口16及び第二排水口18を設けたが、これに限られない。例えば、第一排水口16から排水されるアルカリ性電解水と、第二排水口18から排水される酸性電解水とを混合して排水することが好ましい。これにより、酸性電解水とアルカリ性電解水とを中和して排水することができる。
【0141】
本実施の形態1に係る軟水化装置1では、分離部14に対して洗浄処理を行うように構成したが、これに限られない。例えば、分離部14に対する洗浄処理を行わないように構成してもよい。これにより、上述した効果(2)は得られないものの、装置構成の簡略化、装置の小型化、又は装置の低コスト化といった効果を享受することができる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明に係る軟水化装置は、使用場所設置型浄水装置(POU:Point of Use)あるいは建物入口設置型浄水装置(POE: Point of Entry)に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0143】
1 軟水化装置
1a 軟水化装置
1b 軟水化装置
2 流入口
3 軟水化槽
4 中和槽
5 取水口
6 再生装置
7 流路
8 流路
9 流路
10 弱酸性陽イオン交換樹脂
11 弱塩基性陰イオン交換樹脂
12 電解槽
13 電極
13a 電極
13b 電極
14 分離部
15 貯水槽
16 第一排水口
17 選択弁
18 第二排水口
19 選択弁
20 送水ポンプ
21 循環流路
21a 第一循環流路
21b 第二循環流路
22 第一供給流路
22a 第一供給流路
22b 第一供給流路
23 第一回収流路
24 第二供給流路
24a 第二供給流路
24b 第二供給流路
25 第二回収流路
26 洗浄流路
26a 第一洗浄流路
26b 第二洗浄流路
27 開閉弁
28 開閉弁
29 開閉弁
30 開閉弁
31 開閉弁
32 開閉弁
33 開閉弁
34 開閉弁
35 制御部
36 送水流路
37 第一排水流路
38 第二排水流路
39 イオン濃度検出部
40 貯水槽分離部
図1
図2
図3
図4
図5
図6