(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】軟水化装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/42 20230101AFI20241213BHJP
B01J 39/07 20170101ALI20241213BHJP
B01J 39/18 20170101ALI20241213BHJP
B01J 41/07 20170101ALI20241213BHJP
B01J 41/12 20170101ALI20241213BHJP
B01J 47/022 20170101ALI20241213BHJP
B01J 49/07 20170101ALI20241213BHJP
B01J 49/06 20170101ALI20241213BHJP
B01J 49/08 20170101ALI20241213BHJP
B01J 49/75 20170101ALI20241213BHJP
B01J 49/85 20170101ALI20241213BHJP
B01J 49/53 20170101ALI20241213BHJP
B01J 49/57 20170101ALI20241213BHJP
【FI】
C02F1/42 A
B01J39/07
B01J39/18
B01J41/07
B01J41/12
B01J47/022
B01J49/07
B01J49/06
B01J49/08
B01J49/75
B01J49/85
B01J49/53
B01J49/57
(21)【出願番号】P 2020208080
(22)【出願日】2020-12-16
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151378
【氏名又は名称】宮村 憲浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157484
【氏名又は名称】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】石川 大樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 唯
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 港
(72)【発明者】
【氏名】永田 彩加
(72)【発明者】
【氏名】小池 理紗子
(72)【発明者】
【氏名】浜田 洋祐
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-170628(JP,A)
【文献】特開平06-134457(JP,A)
【文献】特開2013-121920(JP,A)
【文献】特開平05-253568(JP,A)
【文献】特開2005-161145(JP,A)
【文献】特開2001-276631(JP,A)
【文献】特開2012-228669(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0306565(US,A1)
【文献】中国実用新案第204939148(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 23/00 - 35/04
B01D 35/08 - 37/08
B01J 39/00 - 49/90
C02F 1/42
C02F 1/46 - 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬度成分を含む原水を弱酸性陽イオン交換樹脂により軟水化する軟水化槽と、
前記軟水化槽を通過した軟水を弱塩基性陰イオン交換樹脂により中和する中和槽と、
を備えた軟水化装置であって、
前記軟水化槽の前記弱酸性陽イオン交換樹脂を再生するための酸性電解水と、前記中和槽の前記弱塩基性陰イオン交換樹脂を再生するためのアルカリ性電解水と、を生成する電解槽と、
前記軟水化槽を流通した前記酸性電解水と前記中和槽を流通した前記アルカリ性電解水とを混合して前記電解槽に供給する処理槽と、を備え、
前記軟水化槽は、第一軟水化槽と第二軟水化槽とを有し、
前記中和槽は、第一中和槽と第二中和槽とを有し、
前記原水が、前記第一軟水化槽、前記第一中和槽、前記第二軟水化槽、及び前記第二中和槽の順に流通するように構成されていることを特徴とする軟水化装置。
【請求項2】
前記弱酸性陽イオン交換樹脂を再生する再生処理の際に、前記電解槽から送出された前記酸性電解水は、前記第二軟水化槽を流通した後、前記第一軟水化槽を流通するように構成されていることを特徴とする請求項
1に記載の軟水化装置。
【請求項3】
前記再生処理の際に、前記酸性電解水は、前記第一軟水化槽及び前記第二軟水化槽の下流側から前記第一軟水化槽及び前記第二軟水化槽に導入されるように構成されていることを特徴とする請求項
2に記載の軟水化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生活水を得る軟水化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の弱酸性陽イオン交換樹脂を用いた軟水化装置では、食塩を使用しない陽イオン交換樹脂の再生方法として、電気分解で生成した酸性電解水により陽イオン交換樹脂を再生する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。弱酸性陽イオン交換樹脂は、官能基の末端にプロトンを有しており、原水中の硬度成分(例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン)を水素イオンに交換して原水を軟水化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の軟水化装置では、硬度成分が多い硬水及び硬度成分に占める永久硬度の割合が大きい水の軟水化処理時には、全ての硬度成分を除去する前に水が強く酸性化するため、大量の弱酸性陽イオン交換樹脂を用いて軟水化処理を行っても、弱酸性陽イオン交換樹脂を流通する途中で軟水化性能が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、軟水化槽を流通する水のpHに起因して生じる軟水化性能の低下を抑制することが可能な軟水化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そして、この目的を達成するために、本発明に係る軟水化装置は、軟水化槽と、中和槽と、
電解槽と、処理槽と、を備える。軟水化槽は、硬度成分を含む原水を弱酸性陽イオン交換樹脂により軟水化する。中和槽は、軟水化槽を通過した軟水のpHを弱塩基性陰イオン交換樹脂により中和する。軟水化槽は、第一軟水化槽と第二軟水化槽とを有する。また、中和槽は、第一中和槽と第二中和槽とを有する。電解槽は、軟水化槽の弱酸性陽イオン交換樹脂を再生するための酸性電解水と、中和槽の弱塩基性陰イオン交換樹脂を再生するためのアルカリ性電解水と、を生成する。処理槽は、軟水化槽を流通した酸性電解水と中和槽を流通したアルカリ性電解水とを混合して電解槽に供給する。そして、軟水化装置は、原水が、第一軟水化槽、第一中和槽、第二軟水化槽、及び第二中和槽の順に流通するように構成されている。これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、軟水化槽を流通する水のpHに起因して生じる軟水化性能の低下を抑制することが可能な軟水化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1に係る軟水化装置の構成を示す概念図である。
【
図2】
図2は、軟水化装置の循環流路を示す構成図である。
【
図3】
図3は、軟水化装置の動作時の状態を示す図である。
【
図4】
図4は、実施例及び比較例に係る軟水化装置の軟水化性能を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る軟水化装置は、軟水化槽と、中和槽とを備える。軟水化槽は、硬度成分を含む原水を弱酸性陽イオン交換樹脂により軟水化する。中和槽は、軟水化槽を通過した軟水のpHを弱塩基性陰イオン交換樹脂により中和する。軟水化槽は、第一軟水化槽と第二軟水化槽とを有する。また、中和槽は、第一中和槽と第二中和槽とを有する。そして、軟水化装置は、原水が、第一軟水化槽、第一中和槽、第二軟水化槽、及び第二中和槽の順に流通するように構成されている。
【0010】
こうした構成によれば、硬度成分を含む原水は、第一軟水化槽での軟水化処理によって原水のpHの低下が進行する前に第一軟水化槽を流出し、第一中和槽において中和され、第二軟水化槽で軟水化されるようになる。そのため、従来の軟水化装置のように軟水化槽及び中和槽をそれぞれ単体で構成する場合と比較して、軟水化槽内を流通する水のpHの低下すなわち酸性化を抑制できるので、硬度成分と軟水化槽(特に第二軟水化槽)の弱酸性陽イオン交換樹脂が保持する水素イオンとの交換が起こりやすくなる。したがって、従来の軟水化装置と比較し、軟水化性能を向上させることが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る軟水化装置では、軟水化槽の弱酸性陽イオン交換樹脂を再生するための酸性電解水と、中和槽の弱塩基性陰イオン交換樹脂を再生するためのアルカリ性電解水とを生成する電解槽と、軟水化槽を流通した酸性電解水と中和槽を流通したアルカリ性電解水とを混合して電解槽に供給する処理槽とをさらに備える構成としてもよい。こうした構成によれば、電解槽で生成される酸性電解水によって弱酸性陽イオン交換樹脂を再生することが可能となり、アルカリ性電解水によって弱塩基性陰イオン交換樹脂を再生することが可能となる。そのため、軟水化装置のメンテナンス頻度を低減でき、長期にわたって使用可能な軟水化装置とすることができる。
【0012】
また、本発明に係る軟水化装置では、弱酸性陽イオン交換樹脂を再生する再生処理の際に、電解槽から送出された酸性電解水が、第二軟水化槽を流通した後、第一軟水化槽を流通するように構成されていることが好ましい。これにより、再生処理の際には、第一軟水化槽と比べて硬度成分の吸着量が少ない第二軟水化槽に、電解槽から送出された酸性電解水が流入し、硬度成分を含んだ酸性電解水が第二軟水化槽から第一軟水化槽へと送出される。第二軟水化槽の弱酸性陽イオン交換樹脂の再生では、酸性電解水中の水素イオンの消費が少ないため、つまり、第一軟水化槽の再生と比べ、水素イオン濃度の低減を抑制できるため、水素イオンを多く含有する酸性電解水が第一軟水化槽に流入し、硬度成分が第一軟水化槽において再吸着するのを抑制することができる。したがって、再生処理効率の低下を抑制でき、再生時間が短縮できる。
【0013】
また、本発明に係る軟水化装置では、再生処理の際に、酸性電解水が、第一軟水化槽及び第二軟水化槽の下流側から第一軟水化槽及び第二軟水化槽に導入されるように構成されていることが好ましい。これにより、再生処理の際には、各軟水化槽内においてより硬度成分の吸着量が少ない下流側から、電解槽より送出された酸性電解水が流入し、各軟水化槽の再生を行う。下流側の弱酸性陽イオン交換樹脂の再生では、酸性電解水中の水素イオンの消費が少ないため、つまり、酸性電解水の水素イオン濃度の低減を抑制できるため、下流側からの酸性電解水に含まれる硬度成分が上流側において再吸着するのを抑制することができる。したがって、各軟水化槽の再生処理効率の低下を抑制でき、再生時間が短縮できる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0015】
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明の実施の形態1に係る軟水化装置1について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る軟水化装置1の構成を示す概念図である。なお、
図1では、軟水化装置1の各要素を概念的に示している。
【0016】
(全体構成)
軟水化装置1は、外部から供給される市水(硬度成分を含む原水)を、生活水として使用可能な中性の軟水として生成する装置である。
【0017】
具体的には、
図1に示すように、軟水化装置1は、外部からの原水の流入口2と、軟水化槽3と、中和槽4と、処理後の軟水の取水口5と、再生装置6を備えている。軟水化槽3は、第一軟水化槽3aと、第二軟水化槽3bとを含んで構成される。中和槽4は、第一中和槽4aと、第二中和槽4bとを含んで構成される。また、再生装置6は、電解槽9と、処理槽11と、送水ポンプ12とを含んで構成される。また、軟水化装置1は、複数の開閉弁(開閉弁41~開閉弁45、開閉弁51~開閉弁56、開閉弁61、及び開閉弁62)と、制御部15とを含んで構成される。
【0018】
流入口2は市水に接続されている。軟水化装置1は、市水の圧力で取水口5から軟水化処理後の水を取り出すことができるものである。
【0019】
流入口2から取水口5までは、流路20、流路21、流路22、流路23、及び流路24によって接続されている。流路20は、流入口2から第一軟水化槽3aまでを接続する流路である。流路21は、第一軟水化槽3aから第一中和槽4aまでを接続する流路である。流路22は、第一中和槽4aから第二軟水化槽3bまでを接続する流路である。流路23は、第二軟水化槽3bから第二中和槽4bまでを接続する流路である。流路24は、第二中和槽4bから取水口5までを接続する流路である。
【0020】
言い換えると、流路20は、硬度成分を含む原水を流入口2から第一軟水化槽3aへ導く流路である。また、流路21は、第一軟水化槽3aで軟水化処理を行った水を第一中和槽4aに導く流路である。流路22は、第一中和槽4aで中和を行った水を第二軟水化槽3bに導く流路である。流路23は、第二軟水化槽3bにより軟水化された原水を第二中和槽4bに導く流路である。流路24は、第二中和槽4bにより中和された軟水を取水口5へ導く流路である。
【0021】
つまり、軟水化装置1では、軟水化処理において、外部から供給される市水が、流入口2、流路20、第一軟水化槽3a、流路21、第一中和槽4a、流路22、第二軟水化槽3b、流路23、第二中和槽4b、流路24、取水口5の順に流通して、中性の軟水として排出される。
【0022】
(軟水化槽及び中和槽)
軟水化槽3は、例えば円筒状の容器に弱酸性陽イオン交換樹脂7が充填されて構成されている。また、中和槽4は、例えば円筒状の容器に弱塩基性陰イオン交換樹脂8が充填されて構成されている。
【0023】
軟水化槽3は、第一軟水化槽3aと第二軟水化槽3bとを含んで構成される。第一軟水化槽3aは、第一弱酸性陽イオン交換樹脂7aが充填されて構成されている。第二軟水化槽3bは、第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bが充填されて構成されている。また、第一軟水化槽3aと第二軟水化槽3bとは、同一の流路長、流路断面積、及び同体積の弱酸性陽イオン交換樹脂7を有している。なお、以下では、第一弱酸性陽イオン交換樹脂7a及び第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bに関しては、特に両者を区別する必要がない場合には、弱酸性陽イオン交換樹脂7として説明する。
【0024】
また、中和槽4は、第一中和槽4aと第二中和槽4bとを含んで構成される。第一中和槽4aは、例えば円筒状の容器に第一弱塩基性陰イオン交換樹脂8aが充填されて構成されている。また、第二中和槽4bは、第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bが充填されて構成されている。また、第一中和槽4aと第二中和槽4bとは、同一の流路長、流路断面積、及び同体積の弱塩基性陰イオン交換樹脂8を有している。なお、以下では、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂8a及び第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bに関しては、特に両者を区別する必要がない場合には、弱塩基性陰イオン交換樹脂8として説明する。
【0025】
ここで、弱酸性陽イオン交換樹脂7としては、特に制限はなく、汎用的なものを使用することができ、例えば、カルボキシル基(-COOH)を交換基とするものが挙げられる。
また、カルボキシル基の対イオンである水素イオン(H
+
)が、金属イオン、アンモニウムイオン(NH
4
+
)等の陽イオンとなっているものでもよい。
【0026】
また、弱塩基性陰イオン交換樹脂8としては、特に制限はなく、汎用的なものを使用することができ、例えば、遊離塩基型となっているものが挙げられる。
【0027】
軟水化槽3は、弱酸性陽イオン交換樹脂7の作用により、硬度成分を含む原水を軟水化する。より詳細には、軟水化槽3は、官能基の末端に水素イオンを有する弱酸性陽イオン交換樹脂7を備えている。軟水化槽3は、流通する水(原水)に含まれる硬度成分である陽イオン(カルシウムイオン、マグネシウムイオン)を水素イオンと交換するため、原水の硬度が下がり、原水を軟水化することができる。また、弱酸性陽イオン交換樹脂7の官能基の末端が水素イオンであるため、後述する再生処理において、酸性電解水を用いて弱酸性陽イオン交換樹脂7の再生を行うことができる。この際、弱酸性陽イオン交換樹脂7からは、軟水化処理の際に取り込んだ硬度成分である陽イオンが放出される。
【0028】
より詳細には、第一軟水化槽3aでは、流路20から硬度成分を含む原水が通水され、内部に充填された第一弱酸性陽イオン交換樹脂7aを通過することで、硬度成分を含む原水の軟水化を行い、軟水化された水を、流路21を介して第一中和槽4aへ通水させる。但し、第一弱酸性陽イオン交換樹脂7aにより軟水化された水は、硬度成分と交換されて流出した水素イオンを多く含み、pHが低い酸性水となっている。ここで、硬度成分として永久硬度成分(例えば、硫酸カルシウム等の硫酸塩もしくは塩化マグネシウム等の塩化物)を多く含有する水は、軟水化を行う際、一時硬度成分(例えば、炭酸カルシウム等の炭酸塩)を多く含有する水よりpHが低下しやすい。詳細は後述するが、pHが低下した状態では軟水化が進行しにくくなるため、第一軟水化槽3aを流通した水を、第一中和槽4aへ通水させ、中和を行う。
【0029】
一方、第二軟水化槽3bでは、流路22から中和された中性水が通水され、内部に充填された第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bを通過する。これにより、第一軟水化槽3aで除去できなかった硬度成分が、第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bの有する水素イオンと交換される。そのため、第二軟水化槽3bに流入した水の軟水化が行われる。但し、第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bで軟水化された水は、硬度成分と交換されて流出した水素イオンを含むため、酸性水となっている。
【0030】
中和槽4は、弱塩基性陰イオン交換樹脂8の作用により、軟水化槽3から出てきた水素イオンを含む軟水(酸性化した軟水)のpHを中和し、中性の軟水に変換するものである。より詳細には、中和槽4は、弱塩基性陰イオン交換樹脂8を備えており、軟水化槽3からの軟水に含まれる水素イオンをアニオン(陰イオン)とともに吸着するため、軟水のpHが上がり、中性の軟水とすることができる。また、弱塩基性陰イオン交換樹脂8は、後述する再生処理において、アルカリ性電解水を用いて再生を行うことができる。
【0031】
より詳細には、第一中和槽4aでは、流路21から水素イオンを含む軟水化された水が通水され、内部に充填された第一弱塩基性陰イオン交換樹脂8aを流通することで、第一軟水化槽3aから流出した酸性化した水を中和し、中性水として流路22を介し、第二軟水化槽3bへ流入させる。つまり、第一中和槽4aは、第一軟水化槽3aから流出した酸性水であり、第一弱酸性陽イオン交換樹脂7aから放出された水素イオンを含む酸性水の中和を行うことにより、第一中和槽4aを流通した水を、軟水化しやすい水として第二軟水化槽3bに送出する。
【0032】
一方、第二中和槽4bでは、流路23から水素イオンを含む軟水が通水され、内部に充填された第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bを流通することで、第二軟水化槽3bから出てきた酸性化した軟水を中和し、中性の軟水として流路24を通して外部へ通水させる。つまり、第二中和槽4bは、第二軟水化槽3bから流出した酸性水であり、第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bから放出された水素イオンを含む酸性水の中和を行うことにより、生活用水として利用可能な軟水を流出する。
【0033】
(再生装置)
再生装置6は、軟水化槽3の弱酸性陽イオン交換樹脂7を再生させ、且つ、中和槽4の弱塩基性陰イオン交換樹脂8を再生させる機器である。具体的には、再生装置6は、上述した通り、電解槽9と、処理槽11と、送水ポンプ12とを含んで構成される。そして、再生装置6は、流入口2から取水口5までの流路23、流路20、流路21、及び流路24に対して、第一供給流路31、第一回収流路35、第二供給流路32、及び第二回収流路36がそれぞれ接続されている。また、第一バイパス流路33によって、流路21及び流路22が接続されている。また、第二バイパス流路34によって、流路22及び流路23が接続されている。そして、各流路は、後述する循環流路30(第一循環流路30a、第二循環流路30b)を構成している。
【0034】
ここで、第一供給流路31は、電解槽9から第二軟水化槽3bへ酸性電解水を供給する流路である。第一バイパス流路33は、第二軟水化槽3bを流通した酸性電解水を、第一中和槽4aをバイパスして第一軟水化槽3aに供給する流路である。第一回収流路35は、第一軟水化槽3aを通過した硬度成分を含む水を処理槽11へ回収する流路である。第二供給流路32は、電解槽9から第一中和槽4aへアルカリ性電解水を供給する流路である。第二バイパス流路34は、第一中和槽4aを流通したアルカリ性電解水を、第二軟水化槽3bをバイパスして第二中和槽4bに供給する流路である。第二回収流路36は、第二中和槽4bを通過した水を処理槽11へ回収する流路である。
【0035】
(電解槽)
電解槽9は、内部に設けた電極10を用いて、流入した水(処理槽11から供給される水)を電気分解することによって、酸性電解水とアルカリ性電解水とを生成して排出する。より詳細には、電気分解の際に陽極となる電極では、電気分解により水素イオンが生じ、酸性電解水が生成する。また、電気分解の際に陰極となる電極では、電気分解により水酸化物イオンが生じ、アルカリ性電解水が生成する。そして、電解槽9は、酸性電解水を、第一供給流路31を介して第二軟水化槽3bに供給する。また、電解槽9は、アルカリ性電解水を、第二供給流路32を介して第一中和槽4aに供給する。詳細は後述するが、電解槽9によって生成された酸性電解水は、第一軟水化槽3aの第一弱酸性陽イオン交換樹脂7a及び第二軟水化槽3bの第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bの再生に使用される。また、電解槽9によって生成されたアルカリ性電解水は、第一中和槽4aの第一弱塩基性陰イオン交換樹脂8a及び第二中和槽4bの第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bの再生に使用される。なお、電解槽9は、後述する制御部15によって、電極10への通電状態を制御できるように構成されている。
【0036】
(処理槽)
処理槽11は、空気抜き弁14を備えたタンクまたは容器である。処理槽11は、弱酸性陽イオン交換樹脂7及び弱塩基性陰イオン交換樹脂8を再生する際に循環流路30(
図2参照)内を流通させる水を確保し、貯留するものである。また、処理槽11は、軟水化槽3を流通した硬度成分を含む酸性電解水と、中和槽4を流通した陰イオンを含むアルカリ性電解水とを混合し、電解槽9に供給するものである。
【0037】
処理槽11では、混合された硬度成分とアルカリ性電解水とが反応することにより反応生成物(原水に含まれる硬度成分に起因した反応生成物)が生成される。より詳細には、処理槽11には、軟水化槽3内の弱酸性陽イオン交換樹脂7を再生した後における、硬度成分が含まれる酸性電解水が第一回収流路35を介して通水される。また、処理槽11には、中和槽4内の弱塩基性陰イオン交換樹脂8を再生した後における、陰イオン(例えば塩化物イオン及び水酸化物イオン)を含有するアルカリ性電解水が第二回収流路36を介して通水される。そして、処理槽11において、硬度成分を含む酸性電解水と、陰イオンを含むアルカリ性電解水とを混合し、硬度成分がアルカリ性電解水と反応する。例えば、酸性電解水中の硬度成分がカルシウムイオンの場合、アルカリ性電解水と混合されることにより、炭酸カルシウムが生じたり、水酸化カルシウムが生じる反応が起こったりする。そして、反応した硬度成分は、後述するろ過部13により反応生成物として分離することが可能となり、処理水を得ることができる。
【0038】
なお、「硬度成分が反応する」とは、硬度成分すべてが反応することのみならず、処理槽11に反応しない成分もしくは溶解度積を超えない成分が含まれている状態も含むものとする。
【0039】
そして、処理槽11により硬度成分が反応して得られた処理水は、電解槽9に通水され、電解槽9において電気分解され、酸性電解水及びアルカリ性電解水となって軟水化槽3及び中和槽4にそれぞれ供給される。そして、酸性電解水及びアルカリ性電解水は、それぞれ、軟水化槽3及び中和槽4において再利用された後、再び処理槽11へ通水される。従って、弱酸性陽イオン交換樹脂7の再生及び弱塩基性陰イオン交換樹脂8の再生に使用した酸性電解水及びアルカリ性電解水を再利用することができる。しかも、硬度成分が反応した水を再利用するため、弱酸性陽イオン交換樹脂7を再生する際の再生効率の低減を抑えることができる。
【0040】
(送水ポンプ)
送水ポンプ12は、再生装置6による再生処理の際に、循環流路30(
図2参照)に水を流通させる機器である。送水ポンプ12は、処理槽11と電解槽9との間を連通接続する送水流路40に設けられている。なお、送水ポンプ12は、電解槽9の上流側、且つ、処理槽11の下流側に配置することが好ましい。このような配置とするのは、一つの送水ポンプ12で、後述する第一循環流路30a及び第二循環流路30bに水を循環させやすくなるからである。また、送水ポンプ12は、後述する制御部15と無線又は有線により通信可能に接続されている。
【0041】
(ろ過部)
ろ過部13は、処理槽11から電解槽9へ繋がる送水流路40の前段に設けられている。そして、ろ過部13は、処理槽11を流通した水に含まれる析出物を分離する。析出物とは、軟水化槽3を流通した硬度成分を含む酸性電解水と中和槽4を流通した陰イオンを含むアルカリ性電解水とが反応することにより生成する反応生成物である。
【0042】
ろ過部13で析出物の分離を行うことにより、送水流路40を流通する処理水は、市水もしくはろ過部13を備えない場合と比較し、含有する硬度成分が減少している。つまり、ろ過部13で析出物を分離することにより、処理水の硬度が低下するため、電解槽9で生成する酸性電解水の硬度も低下する。したがって、軟水化槽3に流入する硬度成分を減少させることができ、弱酸性陽イオン交換樹脂7の再生効率の低下を抑制できる。
【0043】
ろ過部13は、処理槽11における硬度成分との反応生成物を分離可能であればその形態は問わない。例えば、カートリッジタイプのフィルター、粒状ろ材を用いたろ過層、サイクロン型の固液分離機、中空糸膜等を用いる形態が挙げられる。
【0044】
(開閉弁)
複数の開閉弁(開閉弁41~開閉弁45、開閉弁51~開閉弁56、開閉弁61、及び開閉弁62)は、各流路にそれぞれ設けられ、各流路において「開放」された状態と、「閉止」された状態とに切り替えられる。また、複数の開閉弁(開閉弁41~開閉弁45、開閉弁51~開閉弁56、開閉弁61、及び開閉弁62)はそれぞれ、後述する制御部15と無線又は有線により通信可能に接続されている。
【0045】
(制御部)
制御部15は、硬度成分を含む原水を軟水化する軟水化処理を制御する。また、制御部15は、軟水化槽3の弱酸性陽イオン交換樹脂7及び中和槽4の弱塩基性陰イオン交換樹脂8の再生処理を制御する。さらに、制御部15は、軟水化装置1の軟水化処理、再生処理、及び排水処理の切り替えを制御する。この際、制御部15は、電極10、送水ポンプ12、開閉弁41~開閉弁45、開閉弁51~開閉弁56、開閉弁61、及び開閉弁62の動作を制御し、軟水化処理、再生処理、及び排水処理の切り替えを行い、それぞれの処理を実行させる。
【0046】
(流路)
次に、
図2を参照して、軟水化装置1の再生処理の際に形成される循環流路30について説明する。
図2は、軟水化装置1の循環流路30を示す構成図である。
【0047】
説明が重複するが、
図2に示すように、軟水化装置1において、再生装置6を構成する電解槽9及び処理槽11は、送水流路40によって連通接続される。また、電解槽9及び処理槽11は、流入口2から取水口5までの流路23、流路20、流路21、及び流路24に対して、第一供給流路31、第一回収流路35、第二供給流路32、及び第二回収流路36がそれぞれ接続されている。また、第一バイパス流路33によって、流路21及び流路22がバイパス接続されている。また、第二バイパス流路34によって、流路22及び流路23がバイパス接続されている。そして、各流路は、後述する循環流路30(第一循環流路30a、第二循環流路30b)を構成している。
【0048】
第一供給流路31は、電解槽9から第二軟水化槽3bへ酸性電解水を供給する流路であり、その流路には、開閉弁53が設置されている。すなわち、軟水化装置1は、電解槽9から酸性電解水を引き出して第二軟水化槽3bの下流側へ送水可能とする第一供給流路31を備える。
【0049】
また、第一バイパス流路33は、第二軟水化槽3bから第一軟水化槽3aへ酸性電解水を供給する流路であり、その流路には、開閉弁55が設置されている。すなわち、軟水化装置1は、第二軟水化槽3bを流通した酸性電解水を第一軟水化槽3aの下流側へ送水可能とする第一バイパス流路33を備える。なお、第一バイパス流路33を設けることにより、第一軟水化槽3aと第二軟水化槽3bとの間に存在する第一中和槽4aに酸性電解水を流通させることなく再生処理を進行させることができる。
【0050】
そして、第一回収流路35は、第一軟水化槽3aを通過した硬度成分を含む酸性電解水を処理槽11へ回収する流路であり、その流路には、開閉弁51が設置されている。すなわち、軟水化装置1は、処理槽11の上流側を第一軟水化槽3aの上流側に接続可能とする第一回収流路35を備える。
【0051】
第二供給流路32は、電解槽9から第一中和槽4aへアルカリ性電解水を供給する流路であり、その流路には、開閉弁52が設置されている。すなわち、軟水化装置1は、電解槽9からアルカリ性電解水を引き出して第一中和槽4aの上流側へ送水可能とする第二供給流路32を備える。
【0052】
また、第二バイパス流路34は、第一中和槽4aから第二中和槽4bへアルカリ性電解水を供給する流路であり、その流路には、開閉弁56が設置されている。すなわち、軟水化装置1は、第一中和槽4aを流通したアルカリ性電解水を第二中和槽4bの上流側へ送水可能とする第二バイパス流路34を備える。
【0053】
そして、第二回収流路36は、第二中和槽4bを通過したアルカリ性電解水を処理槽11へ回収する流路であり、その流路には、開閉弁54が設置されている。すなわち、軟水化装置1は、処理槽11の上流側を第二中和槽4bの下流側に接続可能とする第二回収流路36を備える。
【0054】
循環流路30は、送水ポンプ12によって処理槽11から送出された水が、第二軟水化槽3b及び第一軟水化槽3aを流通する第一循環流路30aと、送水ポンプ12によって処理槽11から送出された水が、第一中和槽4a及び第二中和槽4bを流通する第二循環流路30bとを含む。
【0055】
第一循環流路30aは、
図2(白矢印)に示すように、送水ポンプ12によって処理槽11から送出された水が、電解槽9、第二軟水化槽3b、及び第一軟水化槽3aを流通し、処理槽11に戻って循環する流路である。より詳細には、第一循環流路30aは、送水ポンプ12によって処理槽11から送出された水が、送水流路40、電解槽9、第一供給流路31、開閉弁53、第二軟水化槽3b、第一バイパス流路33、開閉弁55、第一軟水化槽3a、第一回収流路35、開閉弁51、処理槽11の順に流通して循環する流路である。
【0056】
第二循環流路30bは、
図2(黒矢印)に示すように、送水ポンプ12によって処理槽11から送出された水が、電解槽9、第一中和槽4a、及び第二中和槽4bを流通し、処理槽11に戻って循環する流路である。より詳細には、第二循環流路30bは、送水ポンプ12によって処理槽11から送出された水が、送水流路40、電解槽9、第二供給流路32、開閉弁52、第一中和槽4a、第二バイパス流路34、開閉弁56、第二中和槽4b、第二回収流路36、開閉弁54、処理槽11の順に流通して循環する流路である。
【0057】
ここで、循環流路30において水を循環させるための各流路の状態を説明する。
【0058】
流路23には、第一供給流路31の下流側、且つ、第二バイパス流路34の上流側に開閉弁44が設置されている。そして、開閉弁44を閉止して、開閉弁53を開放することで、第二軟水化槽3bの下流側に第一供給流路31が連通接続された状態となる。これにより、電解槽9からの酸性電解水を第二軟水化槽3bに供給できるようになる。
【0059】
流路21には、第一バイパス流路33の下流側、且つ、第二供給流路32の上流側に開閉弁42が設置されている。また、流路22には、第二バイパス流路34の下流側、且つ、第一バイパス流路33の上流側に開閉弁43が設置されている。そして、開閉弁42及び開閉弁43を閉止して、開閉弁55を開放することで、第二軟水化槽3bの上流側、且つ、第一軟水化槽3aの下流側に、第一バイパス流路33が連通接続された状態となる。これにより、第二軟水化槽3bを流通した酸性電解水を第一軟水化槽3aに供給できるようになる。
【0060】
また、流路20には、流入口2の下流側、且つ、第一回収流路35の上流側に開閉弁41が設置されている。そして、開閉弁41及び開閉弁42を閉止して、開閉弁51を開放することで、第一軟水化槽3aの上流側に第一回収流路35が連通接続された状態となる。これにより、軟水化装置1では、第一軟水化槽3a及び第二軟水化槽3bを流通した水(硬度成分を含む酸性電解水)を処理槽11へ回収することができるようになる。
【0061】
また、開閉弁42を閉止して、開閉弁52を開放することで、第一中和槽4aの上流側に第二供給流路32が連通接続された状態となる。これにより、電解槽9からのアルカリ性電解水を第一中和槽4aに供給できるようになる。
【0062】
また、開閉弁42、開閉弁43及び開閉弁44を閉止して、開閉弁56を開放することで、第一中和槽4aの下流側、且つ、第二中和槽4bの上流側に、第二バイパス流路34が連通接続された状態となる。これにより、第一中和槽4aを流通したアルカリ性電解水を第二中和槽4bに供給できるようになる。
【0063】
また、開閉弁44及び開閉弁45を閉止して、開閉弁54を開放することで、第二中和槽4bの下流側に第二回収流路36が連通接続された状態となる。これにより、軟水化装置1では、第一中和槽4a及び第二中和槽4bを流通した水(陰イオンを含むアルカリ性電解水)を処理槽11へ回収することができるようになる。
【0064】
また、送水流路40には、処理槽11の下流側(処理槽11と送水ポンプ12との間の位置)に開閉弁61が設置されている。開閉弁61を閉止することにより、処理槽11に水を貯留することができる。一方、開閉弁61を開放することにより、送水流路40へ水を供給することができる。
【0065】
また、開閉弁41及び開閉弁45を閉止することによって、循環流路30への水の循環を開始することができる一方、開閉弁41及び開閉弁45を開放することによって、循環流路30への水の循環を停止することができる。
【0066】
(軟水化処理、再生処理、及び排水処理)
次に、
図3を参照して、再生処理を起点とした軟水化装置1の軟水化処理、再生処理、及び排水処理について説明する。
図3は、軟水化装置1の動作時の状態を示す図である。
【0067】
軟水化処理、再生処理、及び排水処理では、制御部15は、
図3に示すように、開閉弁41~開閉弁45、開閉弁51~開閉弁56、開閉弁61、開閉弁62、電解槽9の電極10、及び送水ポンプ12を切り替えてそれぞれの流通状態となるように制御する。なお、制御部15は、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを有している。そして、プロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが制御部として機能する。プロセッサが実行するプログラムは、ここではコンピュータシステムのメモリに予め記録されているとしたが、メモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて提供されてもよい。
【0068】
ここで、
図3中の「ON」は、該当の開閉弁が「開放」した状態、電極10が通電している状態、及び送水ポンプ12が動作している状態をそれぞれ示す。空欄は、該当の開閉弁が「閉止」した状態、電極10が通電していない状態、送水ポンプ12が停止している状態をそれぞれ示す。
【0069】
(再生処理)
まず、軟水化装置1の再生装置6による再生処理時の動作について、
図3の「水注入時」及び「再生時」の欄を参照して順に説明する。
【0070】
軟水化装置1において、弱酸性陽イオン交換樹脂7を充填した軟水化槽3は、使用を続けると陽イオン交換能力が低下または消失する。すなわち、陽イオン交換樹脂の官能基である水素イオンすべてが、硬度成分であるカルシウムイオンあるいはマグネシウムイオンと交換された後は、イオン交換ができなくなる。このような状態になると、硬度成分が処理水中に含まれるようになる。このため、軟水化装置1では、再生装置6による軟水化槽3及び中和槽4の再生処理を行う必要が生じる。
【0071】
そこで、軟水化装置1では、所定の期間(例えば1日(24時間))に1回、制御部15によって再生処理が可能な時間帯を特定して、再生処理を実行する。
【0072】
まず、
図3に示すように、水注入時において、開閉弁41及び開閉弁51を開放する。これにより、軟水化装置1は、市水の圧力によって、流入口2から第一回収流路35を介して原水を処理槽11へ導入する。この時、開閉弁42~開閉弁45、開閉弁52~開閉弁56、開閉弁61、及び開閉弁62は閉止している。処理槽11に、軟水化装置1の容量に応じた所定の量の水を貯留することで、再生装置6は、再生時の水量を確保することができる。
【0073】
次に、再生時において、開閉弁41~開閉弁45、及び開閉弁62を閉止して、開閉弁51~開閉弁56、及び開閉弁61を開放すると、
図2に示すように、第一循環流路30a及び第二循環流路30bがそれぞれ形成される。
【0074】
そして、電解槽9の電極10及び送水ポンプ12を動作させると、処理槽11に貯留した水が第一循環流路30a及び第二循環流路30bのそれぞれを循環することとなる。
【0075】
この際、電解槽9で生成した酸性電解水は、第一供給流路31を流通し第二軟水化槽3b内に送水され、内部の第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bを流通する。そして、第二軟水化槽3bを流通した酸性電解水は、第一バイパス流路33を流通し、第一軟水化槽3a内に送水され、内部の第一弱酸性陽イオン交換樹脂7aを流通する。すなわち、酸性電解水を第一弱酸性陽イオン交換樹脂7a及び第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bに通水することで、第一弱酸性陽イオン交換樹脂7a及び第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bに吸着されている陽イオン(硬度成分)が、酸性電解水に含まれる水素イオンとイオン交換反応を起こす。これにより、第一弱酸性陽イオン交換樹脂7a及び第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bが再生される。その後、第一弱酸性陽イオン交換樹脂7aを流通した酸性電解水は、陽イオンを含み、第一回収流路35へ流入する。すなわち、第一弱酸性陽イオン交換樹脂7a及び第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bを流通した陽イオンを含む酸性電解水は、第一バイパス流路33及び第一回収流路35を介して処理槽11内に回収される。
【0076】
このように、第一循環流路30aは、酸性電解水を、原水の流入口から最も下流に位置し、硬度成分の吸着量が少ない第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bを有する第二軟水化槽3bの下流側から流通させ、上流に位置しており第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bに比べて硬度成分がより多く吸着している第一弱酸性陽イオン交換樹脂7aを有する第一軟水化槽3aの下流側へと流入させるように構成した。つまり、第一循環流路30aは、電解槽9から送出された酸性電解水を、第二軟水化槽3bに流通させた後、第一バイパス流路33によって第一軟水化槽3aへと送出し、第一軟水化槽3aを流通させ、処理槽11に回収した後、電解槽9へ流入させる流路である。また、第一循環流路30aは、電解槽9から送出された酸性電解水を、第一軟水化槽3a及び第二軟水化槽3bの下流側から第一軟水化槽3a及び第二軟水化槽3bに導入し、各軟水化槽の下流側に比べて硬度成分の吸着量が多い上流側から流出させる経路を備える。
【0077】
一方、電解槽9で生成したアルカリ性電解水は、第二供給流路32を通って第一中和槽4a内に送水され、内部の第一弱塩基性陰イオン交換樹脂8aを流通する。そして、第一中和槽4aを流通したアルカリ性電解水は、第二バイパス流路34を流通し、第二中和槽4b内に送水され、内部の第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bを流通する。すなわち、アルカリ性電解水を第一弱塩基性陰イオン交換樹脂8a及び第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bに通水させることで、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂8a及び第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bに吸着されている陰イオンが、アルカリ性電解水に含まれる水酸化物イオンとイオン交換反応を起こす。これにより、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂8a及び第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bが再生される。その後、第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bを流通したアルカリ性電解水は、陰イオンを含み、第二回収流路36へ流入する。すなわち、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂8a及び第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bを流通した陰イオンを含むアルカリ性電解水は、第二バイパス流路34及び第二回収流路36を介して処理槽11内に回収される。なお、軟水化装置1は、電解槽9で生成したアルカリ性電解水が第二中和槽4bを流通してから第一中和槽4aを流通し、処理槽11に流入する構成としてもよい。その場合、例えば第二供給流路32が第二中和槽4bの下流側、且つ、開閉弁45の上流側に接続され、第二回収流路36が、開閉弁42の下流側、且つ、第一中和槽4aの上流側に接続されるように構成すればよい。
【0078】
そして、処理槽11内では、第一軟水化槽3a及び第二軟水化槽3bから回収された陽イオンを含む酸性電解水と、第一中和槽4a及び第二中和槽4bから回収された陰イオンを含むアルカリ性電解水とが混合されて中和される。
【0079】
この時、陽イオン(硬度成分)を含む酸性電解水と、陰イオンを含むアルカリ性電解水とを混合することにより、硬度成分がアルカリ性電解水に含まれる水酸化物イオンと反応し、析出物が生じる。例えば、酸性電解水中の硬度成分がカルシウムイオンである場合、アルカリ性電解水により水酸化カルシウムが生じたり、水中に常在する炭酸イオンと結合して炭酸カルシウムが生じたりする。
【0080】
その後、処理槽11中で処理された処理水は、ろ過部13を流通する際に反応生成物が除去され、送水流路40を介して電解槽9に再び通水される。そして、通水された水は、電解槽9において再び電解される。
【0081】
ここで、電解槽9にて再び電解された電解水(酸性電解水、アルカリ性電解水)は、それぞれ弱酸性陽イオン交換樹脂7の再生と弱塩基性陰イオン交換樹脂8の再生に供される。つまり、弱酸性陽イオン交換樹脂7の再生に使用した酸性電解水が、処理槽11において、硬度成分が反応生成物に変化してろ過された状態から再び電解水として再利用されることとなる。しかも、再利用する電解酸性水は、外部から供給される市水(硬度成分を含む原水)の場合あるいは処理槽11を備えない場合と比較して、水に含まれる硬度成分が減少している。また、電解槽9の中で電解される時に、陽イオンである硬度成分は、アルカリ性電解水側へ移動するため、酸性電解水の硬度は下がり、弱酸性陽イオン交換樹脂7の再生効率の低下を抑えることができる。さらには、電解槽9及び軟水化槽3の内部において、硬度成分に起因する固着物の付着を抑制することができる。
【0082】
そして、軟水化装置1では、再生処理が終了すると電極10及び送水ポンプ12の動作を停止させる。また、開閉弁62を開放することで排水処理へ移行する。なお、再生処理の終了は、再生処理開始(電極10の動作開始時)から一定時間(例えば7時間)とすればよい。
【0083】
(排水処理)
軟水化装置1では、再生処理が終了すると排水処理へ移行する。ここで、排水処理とは、循環流路30内に残存している酸性電解水及びアルカリ性電解水の排水を行う処理である。
【0084】
次に、軟水化装置1による排水処理時の動作について、
図3の「排水時」の欄を参照して説明する。
【0085】
軟水化装置1では、
図3に示すように、排水処理(排水時)において、開閉弁41~開閉弁45を閉止して、開閉弁51~開閉弁56、開閉弁61、及び開閉弁62を開放する。
【0086】
これにより、第一循環流路30aに残存している酸性電解水及び第二循環流路30bに残存しているアルカリ性電解水を処理槽11に流入させることができる。
【0087】
次に、開閉弁62を開放すると空気抜き弁14の作用により、処理槽11内の電解水を装置外に排出することができる。
【0088】
排水処理を行うことにより、軟水化処理を再開した際に、循環流路30内に残存する酸性電解水及びアルカリ性電解水が、流入口2から流入する原水と混在し、取水口5から排出されることを防ぐことができる。
【0089】
そして、軟水化装置1では、排水処理が終了すると、開閉弁51~開閉弁56、開閉弁61、及び開閉弁62を閉止させ、開閉弁41~開閉弁45を開放することで軟水化処理へ移行する。なお、排水処理の終了は、排水処理開始から一定時間(例えば1分)経過時とすればよい。
【0090】
(軟水化処理)
軟水化装置1は、排水処理が終了すると軟水化処理に移行する。
【0091】
次に、軟水化装置1による軟水化処理時の動作について、
図3の「軟水化時」の欄を参照して説明する。
【0092】
軟水化装置1では、
図3に示すように、軟水化処理(軟水化時)において、開閉弁41~開閉弁44を開放した状態で、取水口5に設けた開閉弁45を開放する。これにより、外部から市水(硬度成分を含む原水)が軟水化槽3と中和槽4とを流通するので、軟水化装置1は、取水口5から軟水化した水(中性の軟水)を取り出すことができる。このとき、開閉弁51~開閉弁56、開閉弁61、及び開閉弁62は、いずれも閉止した状態になっている。また、電解槽9の電極10及び送水ポンプ12の動作も停止した状態である。
【0093】
具体的には、
図1に示すように、軟水化処理では、市水の圧力によって、供給される原水は、流入口2から流路20を通って、第一軟水化槽3aに供給される。そして、第一軟水化槽3aに供給された原水は、第一軟水化槽3a内に備えられた第一弱酸性陽イオン交換樹脂7aを流通する。このとき、原水中の硬度成分である陽イオンは第一弱酸性陽イオン交換樹脂7aの作用により吸着され、水素イオンが放出される(イオン交換が行われる)。そして、原水から陽イオンが除去されることで原水が軟水化される。軟水化された水は、硬度成分と交換されて流出した水素イオンを多く含むため、酸性化してpHが低い酸性水となっている。軟水化された水は、さらに流路21を流通し、第一中和槽4aへ流入する。第一中和槽4aでは、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂8aの作用によって、軟水化された水に含まれる水素イオンが吸着される。つまり、第一軟水化槽3aにより軟水化された水から水素イオンが除去されるので、低下したpHが上昇して中和される。そのため、第一軟水化槽3aにおいて軟水化した水をそのまま第二軟水化槽3bで軟水化する場合と比較して、第二軟水化槽3bでの軟水化処理が進行しやすくなる。第一中和槽4aにより中和された水は、さらに流路22を流通し、第二軟水化槽3bに流入する。第二軟水化槽3bでは、第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bの作用により、硬度成分である陽イオンが吸着され、水素イオンが放出される。つまり、第二軟水化槽3bに流入した水が軟水化され、軟水となる。水素イオンを含む軟水は、流路23を流通し、第二中和槽4bに流入する。第二中和槽4bでは、第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bの作用により、流入した軟水に含まれる水素イオンが吸着される。つまり、軟水から水素イオンが除去されるので、低下したpHが上昇し、生活用水として使用可能な軟水化した中性水となる。軟水化した中性水は、流路24を流通して取水口5から取り出すことができる。
【0094】
そして、軟水化装置1では、制御部15で特定された時間帯になった場合もしくは軟水化処理が一定時間を超えた場合に再生処理を実行する。
【0095】
以上のようにして、軟水化装置1では、軟水化処理、再生処理、及び排水処理が繰り返し実行される。
【0096】
次に、軟水化槽3を第一軟水化槽3a及び第二軟水化槽3b、中和槽4を第一中和槽4a及び第二中和槽4bとした意図及びその構成について、
図4を参照して説明する。
【0097】
図4は、実施例及び比較例に係る軟水化装置の軟水化性能を説明するための図である。より詳細には、
図4の(a)は、実施例及び比較例に係る軟水化装置を構成する軟水化槽及び中和槽を示す概念図である。
図4の(b)は、実施例及び比較例に係る軟水化装置の軟水化性能を示す図であり、硬度成分を含む原水の通水量に対する軟水化処理後の水の硬度をプロットした図である。ここで、実施例は、本実施の形態1に係る軟水化装置1に相当し、比較例は、従来の軟水化装置1cに相当する。
【0098】
図4の(a)に示すように、比較例に係る軟水化装置1cは、単一の軟水化槽3c及び単一の中和槽4cにより構成される。軟水化槽3cは、弱酸性陽イオン交換樹脂7cが充填されて構成される。中和槽4cは、弱塩基性陰イオン交換樹脂8cが充填されて構成される。軟水化装置1cは、軟水化処理時に、軟水化槽3cの上流から硬度成分を含む原水を流通させ、弱酸性陽イオン交換樹脂7cにより硬度成分を吸着させる。そして、得られる酸性化した軟水を中和槽4cに流通させ、弱塩基性陰イオン交換樹脂8cにより水素イオンを吸着して中和し、軟水化した中性水を得ることができる。
【0099】
一方、実施例に係る軟水化装置1は、軟水化槽3及び中和槽4により構成される。軟水化槽3は、第一軟水化槽3a及び第二軟水化槽3bにより構成される。第一軟水化槽3aは、第一弱酸性陽イオン交換樹脂7aが充填されて構成される。第二軟水化槽3bは、第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bが充填されて構成される。なお、第一軟水化槽3a及び第二軟水化槽3bの流路断面積をは、軟水化槽3cの断面積と等しくなるように構成される。なお、流路断面積とは、軟水化槽3及び中和槽4を流通方向に対して垂直に切断した場合の断面積を示す。また、第一軟水化槽3a及び第二軟水化槽3bの流路長の合計は、軟水化槽3cの流路長と等しくなるように構成される。さらに、第一弱酸性陽イオン交換樹脂7a及び第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bの体積の合計は、弱酸性陽イオン交換樹脂7cの体積と等しくなるように構成される。
【0100】
また、中和槽4は、第一中和槽4a及び第二中和槽4bにより構成される。第一中和槽4aは、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂8aが充填されて構成される。第二中和槽4bは、第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bが充填されて構成される。なお、第一中和槽4a及び第二中和槽4bの流路断面積は、中和槽4cの断面積と等しくなるように構成される。また、第一中和槽4a及び第二中和槽4bの流路長の合計は、中和槽4cの流路長と等しくなるように構成される。さらに、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂8a及び第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bの体積の合計は、弱塩基性陰イオン交換樹脂8cの体積と等しくなるように構成される。
【0101】
さらに、軟水化装置1は、軟水化処理時には、流入口2から流入した硬度成分を含む原水が、第一軟水化槽3a、第一中和槽4a、第二軟水化槽3b、及び第二中和槽4bの順で流通するように構成される。
【0102】
図4の(b)に示すように、比較例では、原水を200~300Lを通水したところで軟水化処理後の水の硬度が50ppmを超えており、通水量が増加するにしたがって硬度が上昇していく。比較例では、軟水化処理を行う際に、軟水化槽3cにおいて、原水に含まれる硬度成分と弱酸性陽イオン交換樹脂7cに吸着している水素イオンの交換が起こり、水素イオンが放出される。すると、軟水化槽3c内を流通するにしたがって、通水している水のpHが低下(水が酸性化)していき、硬度成分の吸着が行われにくくなる。その後、軟水化槽3cを流通した水は、中和槽4cに流入し、弱塩基性陰イオン交換樹脂8cの作用により、水素イオンが除去される。そのため、低下したpHが上昇し、中性水となるが、軟水を得るためには、原水の通水量が200~300Lとなった時点で再生処理を行う必要がある。
【0103】
一方、実施例では、1500Lの原水を通水した時点でも軟水化後の水の硬度は数ppm程度であり、通水量が増加しても継続して軟水を得ることができる。実施例と比較例を比較すると、実施例の方がより長期間軟水化性能を維持できることがわかる。実施例では、軟水化処理を行う際に、第一軟水化槽3aにおいて、原水に含まれる硬度成分と第一弱酸性陽イオン交換樹脂7aに吸着している水素イオンとの交換が起こり、水素イオンが放出される。第一軟水化槽3aの流路長は、軟水化槽3cの流路長に比べ短いため、水の酸性化が進行する前に第一軟水化槽3aを流出し、第一中和槽4aに流入する。流入した酸性水は、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂8aによって水素イオンが除去され、中性水となる。その後、第二軟水化槽3bを流通することにより再び軟水化処理が行われ、酸性化した軟水を得ることができる。酸性化した軟水を第二中和槽4bに流通させることにより、生活用水として使用可能な中性の軟水が得られる。
【0104】
つまり、実施例では、比較例に比べて軟水化槽3内に流通する水のpHの低下を抑制でき、硬度成分と弱酸性陽イオン交換樹脂7が保持する水素イオンとの交換が起こりやすくなる。したがって、実施例では、比較例と比べ、軟水化槽3及び中和槽4を交互に設けることにより、比較例と同じ体積の弱酸性陽イオン交換樹脂7及び弱塩基性陰イオン交換樹脂8を用いた場合に、軟水化性能を向上させることが可能となる。また、比較例と同等の軟水化性能を得たい場合は、必要な弱酸性陽イオン交換樹脂7及び弱塩基性陰イオン交換樹脂8の体積を減少させることができるため、軟水化装置1の小型化及び低コスト化が可能となる。さらに、永久硬度成分(例えば、硫酸カルシウム等の硫酸塩もしくは塩化マグネシウム等の塩化物)を多く含有する水は、軟水化を行う際、一時硬度成分(例えば、炭酸カルシウム等の炭酸塩)を多く含有する水よりpHが低下しやすい。そのため、永久硬度成分を多く含有する水は、軟水化と中和をそれぞれ一度ずつ行う比較例では、軟水化装置1の軟水化性能の低下を引き起こす。一方、実施例では、第一軟水化槽3aでの軟水化によって低下した水のpHを第一中和槽4aで中性にした後、第二軟水化槽3bによって再度軟水化を行うことができる。そのため、軟水化装置1は、比較例と比べ、原水の水質(硬度成分に占める永久硬度の割合)の影響を受けづらく、原水の水質によらず高い軟水化性能を得ることができる。
【0105】
以上、本実施の形態1に係る軟水化装置1によれば、以下の効果を享受することができる。
【0106】
(1)軟水化装置1は、軟水化槽3と、中和槽4とを備える。軟水化槽3は、硬度成分を含む原水を弱酸性陽イオン交換樹脂7により軟水化する。中和槽4は、軟水化槽3を通過した軟水のpHを弱塩基性陰イオン交換樹脂8により中和する。また、軟水化槽3は、第一軟水化槽3aと第二軟水化槽3bとを有する。中和槽4は、第一中和槽4aと第二中和槽4bとを有する。軟水化装置1は、原水が、第一軟水化槽3a、第一中和槽4a、第二軟水化槽3b、及び第二中和槽4bの順に流通するように構成されるようにした。
【0107】
こうした構成によれば、硬度成分を含む原水は、第一軟水化槽3aでの軟水化処理によって原水のpHの低下が進行する前に第一軟水化槽3aを流出し、第一中和槽4aにおいて中和され、第二軟水化槽3bで軟水化されるようになる。そのため、従来の軟水化装置1cのように軟水化槽3c及び中和槽4cをそれぞれ単体で構成する場合と比較して、軟水化槽3内に流通する水のpHの低下及び酸性化を抑制できるので、硬度成分と第二軟水化槽3bの第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bが保持する水素イオンとの交換が起こりやすくなる。したがって、軟水化装置1は、従来の軟水化装置1cと比較し、軟水化性能を向上させることが可能となる。なお、従来の軟水化装置1cと同じ体積の弱酸性陽イオン交換樹脂7及び弱塩基性陰イオン交換樹脂8を用いた場合に、軟水化性能を向上させることが可能となる。
【0108】
(2)軟水化装置1では、軟水化槽3の弱酸性陽イオン交換樹脂7を再生するための酸性電解水と、中和槽4の弱塩基性陰イオン交換樹脂8を再生するためのアルカリ性電解水とを生成する電解槽9と、軟水化槽3を流通した酸性電解水と中和槽4を流通したアルカリ性電解水とを混合して電解槽9に供給する処理槽11とをさらに備えるようにした。こうした構成によれば、電解槽9で生成される酸性電解水によって弱酸性陽イオン交換樹脂7を再生することが可能となり、アルカリ性電解水によって弱塩基性陰イオン交換樹脂8を再生することが可能となる。そのため、軟水化装置1のメンテナンス頻度を低減でき、長期にわたって使用可能な軟水化装置1とすることができる。
【0109】
(3)軟水化装置1では、弱酸性陽イオン交換樹脂7を再生する再生処理の際に、電解槽9から送出された酸性電解水が、第二軟水化槽3bを流通した後、第一軟水化槽3aを流通するように構成されるようにした。これにより、再生処理の際には、第一軟水化槽3aと比べて硬度成分の吸着量が少ない第二軟水化槽3bに、電解槽9から送出された酸性電解水が流入し、硬度成分を含んだ酸性電解水が第一軟水化槽3aへと送出される。第二軟水化槽3bの第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bの再生では、酸性電解水中の水素イオンの消費が少ないため、つまり、第一軟水化槽3aの再生と比べ、水素イオン濃度の低減を抑制できるため、水素イオンを多く含有する酸性電解水が第一軟水化槽3aに流入し、硬度成分が第一軟水化槽3aにおいて再吸着するのを抑制することができる。したがって、再生処理効率の低下を抑制でき、再生時間が短縮できる。
【0110】
なお、第一軟水化槽3aと比べて硬度成分の吸着量が少ない第二軟水化槽3bに、電解槽9から送出された酸性電解水が流入し、硬度成分を含んだ酸性電解水が第一軟水化槽3aへと送出されることから、第二軟水化槽3bの再生により流出する硬度成分は、第一軟水化槽3aに比べ少ないともいえる。したがって、酸性電解水を第一軟水化槽3aから導入した場合と比較し、第二軟水化槽3bから導入した場合には、酸性電解水に含まれる硬度成分が少ないので、硬度成分が第一軟水化槽3aにおいて再吸着するのを抑制することができ、再生処理効率の低下が抑制可能となり、再生時間が短縮できるともいえる。
【0111】
(4)軟水化装置1は、再生処理の際に、酸性電解水が、第一軟水化槽3a及び第二軟水化槽3bの下流側から第一軟水化槽3a及び第二軟水化槽3bに導入されるように構成した。これにより、再生処理の際には、軟水化槽3内において、より硬度成分の吸着量が少ない下流側から、電解槽9より送出された酸性電解水が流入し、軟水化槽3の再生を行う。下流側の弱酸性陽イオン交換樹脂7の再生では、酸性電解水中の水素イオンの消費が少ないため、つまり、酸性電解水の水素イオン濃度の低減を抑制できるため、下流側からの酸性電解水に含まれる硬度成分が上流側において再吸着するのを抑制することができる。したがって、軟水化槽3の再生処理効率の低下を抑制でき、再生時間が短縮できる。
【0112】
なお、軟水化槽3内においてより硬度成分の吸着量が少ない下流側から、電解槽9より送出された酸性電解水が流入し、軟水化槽3の再生を行うことから、下流側の弱酸性陽イオン交換樹脂7の再生により流出する硬度成分は、上流側に比べ少ないともいえる。したがって、酸性電解水を上流側から導入した場合と比較し、下流側から導入した場合には、硬度成分が上流側の弱酸性陽イオン交換樹脂7に再吸着するのを抑制することができ、再生処理効率の低下を抑制可能となり、再生時間が短縮できるともいえる。
【0113】
(5)軟水化装置1では、軟水化処理時に、第一中和槽4aは、第一軟水化槽3aを流出した酸性水が流入するように構成した。これにより、第一中和槽4aは、第一軟水化槽3aから生じる水素イオンを中和可能である。そのため、第一中和槽4aから流出した水が流入する第二軟水化槽3b内への酸性水の流入を抑制することができる。したがって、第二軟水化槽3bの軟水化性能を低下させることなく、第二軟水化槽3bによる軟水化を行うことが可能となり、軟水化性能が向上する。
【0114】
(6)軟水化装置1では、第一軟水化槽3a及び第二軟水化槽3bとの、流路長、流路断面積、軟水化槽3に充填する樹脂の体積、及び軟水化槽3に充填する樹脂の種類がそれぞれ同じである構成とした。これにより、第一軟水化槽3a及び第二軟水化槽3bを同じ部材で構成できるため、軟水化装置1の低コスト化を行うことができる。
【0115】
(7)軟水化装置1では、第一中和槽4a及び第二中和槽4bとの、流路長、流路断面積、中和槽4に充填する樹脂の体積、及び中和槽4に充填する樹脂の種類がそれぞれ同じである構成とした。こうした構成によれば、第一中和槽4a及び第二中和槽4bを同じ部材で構成できるため、軟水化装置1の低コスト化を行うことができる。
【0116】
以上、本発明に関して実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されているところである。
【0117】
本実施の形態1に係る軟水化装置1では、軟水化槽3及び中和槽4は、それぞれ2個ずつであるとしたが、これに限られない。例えば、それぞれ3個ずつであってもよいし、それ以上であってもよい。これにより、軟水化処理時に、軟水化と中和を交互に行う回数が増加するため、軟水化性能をさらに向上させることができる。
【0118】
また、本実施の形態1に係る軟水化装置1では、第一軟水化槽3a及び第二軟水化槽3bの流路長及び流路断面積はそれぞれ等しいものとしたが、この限りではない。例えば、流路長もしくは流路断面積が異なっていてもよいし、流路長及び流路断面積の双方が異なっていてもよい。このようにしても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0119】
また、本実施の形態1に係る軟水化装置1では、第一軟水化槽3aに充填されている第一弱酸性陽イオン交換樹脂7a及び第二軟水化槽3bに充填されている第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bの体積を等しいものとしたが、この限りではない。例えば、第一弱酸性陽イオン交換樹脂7a及び第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bの体積がそれぞれ異なっていてもよいし、異なる種類の弱酸性陽イオン交換樹脂7を用いてもよい。これにより、軟水化性能を調整することができ、目的に応じた軟水化性能をもつ軟水化装置1が得られる。
【0120】
また、本実施の形態1に係る軟水化装置1では、第一中和槽4a及び第二中和槽4bの流路長及び流路断面積はそれぞれ等しいものとしたが、この限りではない。例えば、流路長もしくは流路断面積が異なっていてもよいし、流路長及び流路断面積の双方が異なっていてもよいこのようにしても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0121】
また、本実施の形態1に係る軟水化装置1では、第一中和槽4aに充填されている第一弱塩基性陰イオン交換樹脂8a及び第二中和槽4bに充填されている第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bの体積を等しいものとしたが、この限りではない。例えば、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂8a及び第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bの体積がそれぞれ異なっていてもよいし、異なる種類の弱塩基性陰イオン交換樹脂8を用いてもよい。但し、第二中和槽4bに充填されている第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bの体積は、第二軟水化槽3bから放出された水素イオンを吸着し、第二軟水化槽3bから流入した酸性の軟水を中性の軟水とするのに十分な体積であればよい。これにより、軟水化性能を調整することができ、目的に応じた軟水化性能をもつ軟水化装置1が得られる。
【0122】
また、本実施の形態1に係る軟水化装置1では、酸性電解水を第二軟水化槽3b、第一軟水化槽3aの順に流通させたが、この限りではない。例えば、酸性電解水を第一軟水化槽3a及び第二軟水化槽3bの順に流通させるようにしてもよい。さらには、本実施の形態1に係る軟水化装置1では、酸性電解水を軟水化槽3の下流側から流通させたが、上流側から流通させてもよい。このようにしても、軟水化槽3の再生処理を行うことができる。
【0123】
また、本実施の形態1に係る軟水化装置1では、酸性電解水を第二軟水化槽3b及び第一軟水化槽3aの順に流通させたが、この限りではない。例えば、再生装置6と同等の機能を備える第一再生装置及び第二再生装置を用いてそれぞれ独立した流通経路で再生処理を行うようにしてもよい。これにより、第一軟水化槽3a及び第二軟水化槽3bの再生処理をそれぞれ独立して行うことができ、再生処理に要する時間が短縮できる。
【0124】
また、本実施の形態1に係る軟水化装置1では、制御部15で特定された時間帯になった場合もしくは軟水化処理が一定時間を超えた場合に再生処理を実行するようにしたが、これに限られない。例えば、第二中和槽4bの下流側、且つ、開閉弁45の上流側に、イオン濃度検出部を設け、そのイオン濃度検出部によって、流路24を流通する軟水のイオン濃度(例えば、硬度成分濃度)を常に検出し、制御部15で特定された時間帯になった場合もしくは軟水化処理が一定時間を超えた場合だけでなく、イオン濃度が予め設定された基準値を超えた場合に再生処理を実行するようにしてもよい。これにより、第二中和槽4bを流通した後の水のイオン濃度に基づいて、再生処理の実行を判断することができる。そのため、軟水化槽3の弱酸性陽イオン交換樹脂7の状態をより正確に判断することができ、適切なタイミングでの弱酸性陽イオン交換樹脂7及び弱塩基性陰イオン交換樹脂8の再生を行うことができる。
【0125】
また、本実施の形態1に係る軟水化装置1では、洗浄処理(洗浄時)において、原水を流入口2から軟水化槽3、中和槽4、第二回収流路36、及び処理槽11を通して電解槽9へ導入させたが、この限りではない。例えば、原水を第二回収流路36の代わりに第一回収流路35に流通させるようにしてもよい。これにより、第一回収流路35内に残存する、硬度成分を含む酸性電解水を回収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明に係る軟水化装置は、使用場所設置型浄水装置(POU:Point of Use)あるいは建物入口設置型浄水装置(POE: Point of Entry)に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0127】
1 軟水化装置
1c 軟水化装置
2 流入口
3 軟水化槽
3a 第一軟水化槽
3b 第二軟水化槽
3c 軟水化槽
4 中和槽
4a 第一中和槽
4b 第二中和槽
4c 中和槽
5 取水口
6 再生装置
7 弱酸性陽イオン交換樹脂
7a 第一弱酸性陽イオン交換樹脂
7b 第二弱酸性陽イオン交換樹脂
7c 弱酸性陽イオン交換樹脂
8 弱塩基性陰イオン交換樹脂
8a 第一弱塩基性陰イオン交換樹脂
8b 第二弱塩基性陰イオン交換樹脂
8c 弱塩基性陰イオン交換樹脂
9 電解槽
10 電極
11 処理槽
12 送水ポンプ
13 ろ過部
14 空気抜き弁
15 制御部
20 流路
21 流路
22 流路
23 流路
24 流路
30 循環流路
30a 第一循環流路
30b 第二循環流路
31 第一供給流路
32 第二供給流路
33 第一バイパス流路
34 第二バイパス流路
35 第一回収流路
36 第二回収流路
40 送水流路
41 開閉弁
42 開閉弁
43 開閉弁
44 開閉弁
45 開閉弁
51 開閉弁
52 開閉弁
53 開閉弁
54 開閉弁
55 開閉弁
56 開閉弁
61 開閉弁
62 開閉弁