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特許7603220移動ロボットシステム、端末装置、およびマップ更新プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】移動ロボットシステム、端末装置、およびマップ更新プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20241213BHJP
【FI】
G05D1/43
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020216359
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022101947
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】浅井 幸治
(72)【発明者】
【氏名】本田 廉治
(72)【発明者】
【氏名】津坂 優子
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0371909(US,A1)
【文献】特開2017-211909(JP,A)
【文献】特開2019-106121(JP,A)
【文献】特表2018-533801(JP,A)
【文献】特開2019-046372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00-1/87
A47L 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の領域内を自律的に移動する移動ロボットと、使用者からの入力を受け付ける端末装置と、を備える移動ロボットシステムであって、
前記領域を示す領域マップを取得するマップ取得部と、
前記領域内の地点において仮想壁の一端を示す開始の入力を受け付け、前記領域内の別の地点において仮想壁の他端を示す終了の入力を受け付ける受付部と、
前記開始の入力を受け付けた地点である開始地点に対する終了の入力を受け付けた地点である終了地点の位置関係を取得する位置関係取得部と、
前記開始地点と前記終了地点とを両端部とする仮想壁であって、前記領域内の一部が撮影された画像データを前記端末装置から取得し、取得した画像データを解析することにより対象物を囲む仮想壁を前記領域マップ上に設定して領域マップを更新する仮想壁設定部と、
前記仮想壁設定部が設定した対象物を囲む仮想壁が、固定であるか可動であるかを設定する可動性設定部と、を備え
前記仮想壁設定部は、
前記領域マップ、および仮想壁を表示し、可動であると設定された対象物を囲む仮想壁に関連する画像を表示す
移動ロボットシステム。
【請求項2】
前記仮想壁設定部は、
前記領域マップ、および仮想壁を表示し、前記領域マップ上の対象物を囲む仮想壁の移動を受け付ける
請求項1に記載の移動ロボットシステム。
【請求項3】
所定の領域内を自律的に移動する移動ロボットに対し移動に用いられる領域マップを提
供する端末装置であって、
前記領域を示す領域マップを取得するマップ取得部と、
前記領域内の地点において仮想壁の一端を示す開始の入力を受け付け、前記領域内の別の地点において仮想壁の他端を示す終了の入力を受け付ける受付部と、
前記開始の入力を受け付けた地点である開始地点に対する終了の入力を受け付けた地点である終了地点の位置関係を取得する位置関係取得部と、
前記開始地点と前記終了地点とを両端部とする仮想壁であって、前記領域内の一部が撮影された画像データを取得し、取得した画像データを解析することにより対象物を囲む仮想壁を前記領域マップ上に設定して領域マップを更新する仮想壁設定部と、
前記仮想壁設定部が設定した対象物を囲む仮想壁が、固定であるか可動であるかを設定する可動性設定部と、
更新された領域マップを出力するマップ出力部と、を備え、
前記仮想壁設定部は、
前記領域マップ、および仮想壁を表示し、可動であると設定された対象物を囲む仮想壁に関連する画像を表示す
端末装置。
【請求項4】
所定の領域内を自律的に移動する移動ロボットに適用される領域マップを更新するマップ更新プログラムであって、
前記領域を示す領域マップをマップ取得部が取得し、
前記領域内の地点において仮想壁の一端を示す開始の入力を受け付け、前記領域内の別の地点において仮想壁の他端を示す終了の入力を受付部が受け付け、
前記開始の入力を受け付けた地点である開始地点に対する終了の入力を受け付けた地点である終了地点の位置関係を位置関係取得部が取得し、
前記開始地点と前記終了地点とを両端部とする仮想壁であって、前記領域内の一部が撮影された画像データを端末装置から取得し、取得した画像データを解析することにより対象物を囲む仮想壁を前記領域マップ上に設定して領域マップを仮想壁設定部が更新し、
前記仮想壁設定部が設定した対象物を囲む仮想壁が、固定であるか可動であるかを可動性設定部が設定し、
前記仮想壁設定部は、前記領域マップ、および仮想壁を表示し、可動であると設定された対象物を囲む仮想壁に関連する画像を表示する
マップ更新プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、所定の領域内を自律的に移動するロボットを備えた移動ロボットシステム、携帯端末、およびマップ更新プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自律的に移動するロボットは、あらかじめ建築用のフロアマップや、SLAM (Simultaneous Localization and Mapping)により作成されたマップに基づき移動する。ただしマップ内において進入禁止のエリアがある場合、特許文献1に記載の技術のように、少なくとも二つのランドマークをフロアに作業者が配置し、ロボットに進入禁止エリアを設定する。また、特許文献2に記載の技術のように、ディスプレイ上にマップを表示し、ディスプレイ上で進入禁止エリアを設定する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-124980号公報
【文献】特表2019-532369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、ディスプレイ上で進入禁止エリアを設定するのは実際のフロアとの関係性を把握することが困難であり、進入禁止用のランドマークを用いる場合、島状の禁止エリアを示す場合は四隅にランドマークを配置しなければならないなど、ランドマークの搬送や配置などが煩雑になる。
【0005】
本開示は、進入禁止エリアを容易に設定することができる移動ロボットシステム、端末装置、およびマップ更新プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の1つである移動ロボットシステムは、所定の領域内を自律的に移動する移動ロボットと、使用者からの入力を受け付ける端末装置と、を備える移動ロボットシステムであって、前記領域を示す領域マップを取得するマップ取得部と、前記領域内の地点において仮想壁の一端を示す開始の入力を受け付け、前記領域内の別の地点において仮想壁の他端を示す終了の入力を受け付ける受付部と、前記開始の入力を受け付けた地点である開始地点に対する終了の入力を受け付けた地点である終了地点の位置関係を取得する位置関係取得部と、前記開始地点と前記終了地点とを両端部とする仮想壁を前記領域マップ上に設定して領域マップを更新する仮想壁設定部と、を備える。
【0007】
また、本開示の他の1つである端末装置は、所定の領域内を自律的に移動する移動ロボットに対し移動に用いられる領域マップを提供する端末装置であって、前記領域を示す領域マップを取得するマップ取得部と、前記領域内の地点において仮想壁の一端を示す開始の入力を受け付け、前記領域内の別の地点において仮想壁の他端を示す終了の入力を受け付ける受付部と、前記開始の入力を受け付けた地点である開始地点に対する終了の入力を受け付けた地点である終了地点の位置関係を取得する位置関係取得部と、前記開始地点と前記終了地点とを両端部とする仮想壁を前記領域マップ上に設定して領域マップを更新する仮想壁設定部と、更新された領域マップを出力するマップ出力部と、を備える。
【0008】
また、本開示の他の1つであるマップ更新プログラムは、所定の領域内を自律的に移動する移動ロボットに適用される領域マップを更新するマップ更新プログラムであって、前記領域を示す領域マップをマップ取得部が取得し、前記領域内の地点において仮想壁の一端を示す開始の入力を受け付け、前記領域内の別の地点において仮想壁の他端を示す終了の入力を受付部が受け付け、前記開始の入力を受け付けた地点である開始地点に対する終了の入力を受け付けた地点である終了地点の位置関係を位置関係取得部が取得し、前記開始地点と前記終了地点とを両端部とする仮想壁を前記領域マップ上に設定して領域マップを仮想壁設定部が更新する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の移動ロボットシステム、端末装置、およびマップ更新プログラムによれば、煩雑になることなく容易に更新された領域マップを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態における移動ロボットシステムを掃除対象の領域と共に示す平面図である。
図2図2は、実施の形態における移動ロボットの外観を示す側面図である。
図3図3は、実施の形態における移動ロボットの外観を示す底面図である。
図4図4は、実施の形態における移動ロボットシステムの各機能部を示すブロック図である。
図5図5は、実施の形態におけるマップ取得部が取得した領域マップを示す図である。
図6図6は、実施の形態における端末装置の第一表示状態を示す図である。
図7図7は、実施の形態における端末装置の第二表示状態を示す図である。
図8図8は、実施の形態における操作状態、および移動経路を示す図である。
図9図9は、実施の形態における仮想壁を含む更新前の領域マップを示す図である。
図10図10は、実施の形態における施設に対象物が配置されている状態を示す図である。
図11図11は、実施の形態における領域全体を掃除領域で分割した状態を示す平面図である。
図12図12は、対象物に対応した仮想壁を含む領域マップを示す図である。
図13図13は、実施の形態における移動ロボットシステムの動作の流れの一部を示すフローチャートである。
図14図14は、仮想壁を設定する際の端末装置の操作態様の別例1を示す図である。
図15図15は、仮想壁を設定する際の端末装置の操作態様の別例2を示す図である。
図16図16は、可動の仮想壁に対応する画像の表示状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る移動ロボットシステム、端末装置、およびマップ更新プログラムの実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本開示を説明するために一例を挙示するものであり、本開示を限定する主旨ではない。例えば、以下の実施の形態において示される形状、構造、材料、構成要素、相対的位置関係、接続状態、数値、数式、方法における各段階の内容、各段階の順序などは、一例であり、以下に記載されていない内容を含む場合がある。また、平行、直交などの幾何学的な表現を用いる場合があるが、これらの表現は、数学的な厳密さを示すものではなく、実質的に許容される誤差、ずれなどが含まれる。また、同時、同一などの表現も、実質的に許容される範囲を含んでいる。
【0012】
また、図面は、本開示を説明するために適宜強調、省略、または比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状、位置関係、および比率とは異なる。
【0013】
また、以下では複数の発明を一つの実施の形態として包括的に説明する場合がある。また、以下に記載する内容の一部は、本開示に関する任意の構成要素として説明している。
【0014】
図1は、実施の形態における移動ロボットシステムを移動対象となる領域と共に示す図である。同図に示すように、移動ロボットシステム100は、ホテルやテナントビルなどの施設200の壁などに囲まれた領域201の掃除計画を作成するための領域マップ203を更新し、更新された領域マップ203に基づいて掃除機能を備えた移動ロボット130が自律的に移動し掃除するシステムである。本実施の形態の場合、移動ロボットシステム100は、移動ロボット130と、端末装置160と、を備えている。
【0015】
図2は、実施の形態における移動ロボットの外観を示す側面図である。図3は、実施の形態における移動ロボットの外観を示す底面図である。これらの図に示されるように、実施の形態にかかる移動ロボット130は、取得した領域マップ203に基づき自律的に移動し、ごみを吸引する掃除機である。
【0016】
本実施の形態によれば、移動ロボット130は、各種の構成要素が搭載されるボディ131、ボディ131を移動させる移動手段132、領域201に存在するごみを掃除する掃除手段133、移動手段132と、掃除手段133とを制御する制御ユニット135、および位置センサ136を備えている。
【0017】
ボディ131は、移動手段132、制御ユニット135などを収容する筐体である。下部に対し上部が取り外し可能な構成となっている。ボディ131の外周部にはボディ131に対して変位可能なバンパ139が取り付けられている。また、図3に示されるとおり、ボディ131は、ごみをボディ131の内部に吸引するための吸込口138が設けられている。
【0018】
移動手段132は、制御ユニット135からの指示に基づき移動ロボット130を移動させる装置である。本実施の形態の場合、移動ロボット130は、位置センサ136を備えており、移動手段132は、位置センサ136を移動させる装置としても機能している。移動手段132は、領域201上を移動するホイール140、ホイール140にトルクを与える移動用モータ(不図示)を有する。ボディ131の底面にはキャスター142が補助輪として備えられている。移動ロボット130は、2つのホイール140の回転を独立して制御することで、直進、後退、左回転、右回転など自在に移動することができる。
【0019】
掃除手段133は、吸込口138から塵埃を吸い込みボディ131の内部に吸い込んだ塵埃を保持するユニットであり、電動ファン(不図示)、および塵埃保持部143を有する。電動ファンは、塵埃保持部143の内部の空気を吸引し、ボディ131の外方に空気を吐出させることにより、吸込口138からごみを吸い込み、塵埃保持部143内にごみを収容する。掃除手段133は、塵埃を掃き集めて吸込口138からごみを吸い込ませるための回転ブラシ134を備えている。
【0020】
位置センサ136は、領域201内において移動ロボット130と移動ロボット130の周縁に存在する壁等を含む物体との距離と方向とを含む位置関係を検出する。また、位置センサ136が検出した方向と距離との情報から移動ロボット130の自己位置を把握することも可能となっている。位置センサ136の種類は、特に限定されるものではないが、例えば光を放射し障害物により反射して帰ってきた光に基づいて位置と距離とを検出するLiDAR(Light Detection and Ranging)、ToF(Time of Flight)カメラ等を例示できる。また、位置センサ136としては、障害物が反射した照明光や自然光を像として取得し視差に基づき位置と距離とを取得する複眼カメラなどを例示することができる。
【0021】
なお、移動ロボット130は、位置センサ136以外にセンサを備えていても構わない。例えば、ボディ131の底面の複数箇所に配置され、領域201としての床面が存在するか否かを検出する床面センサを備えてもよい。また、移動手段132に備えられ、移動用モータによって回転する一対のホイール140のそれぞれの回転角を検出するオドメトリに用いられるエンコーダを備えてもよい。また、移動ロボット130が移動する際の加速度を検出する加速度センサ、移動ロボット130が旋回する際の角速度を検出する角速度センサなどの慣性センサを備えてもよい。また、床面に堆積している塵埃の量を測定する塵埃量センサを備えてもよい。バンパ139の変位を検出して障害物が衝突したことを検出する接触センサを備えてもよい。また、ボディ131の前方に存在する障害物を検出する位置センサ136以外の超音波センサなどの障害物センサを備えてもよい。
【0022】
図4は、実施の形態における移動ロボットシステムの各機能部を示すブロック図である。同図に示すように、移動ロボットシステム100が備える移動ロボット130は、制御ユニット135のプロセッサにプログラムを実行させることにより実現される機能部として、マップ処理部171と、自己位置推定部172と、を備えている。本実施の形態の場合、制御ユニット135は、移動制御部176と、掃除制御部177と、を備えている。
【0023】
マップ処理部171は、位置センサ136が物体の位置と距離とを測定した情報に基づき自己位置認識用の自己位置マップを生成する。マップ処理部171は、端末装置160、サーバ110などから領域マップ、フロアマップなどのマップを取得してもよい。本実施の形態の場合、マップ処理部171は、位置センサ136から取得した情報に基づき、例えばSLAM技術により移動ロボット130の周辺環境(壁、家具など)に関する自己位置マップを作成する。
【0024】
なお、移動ロボット130は、位置センサ136であるLiDARのセンシング情報の他、他のセンサである車輪オドメトリ、慣性センサ等からの情報を加えて自己位置マップを作成しても構わない。
【0025】
自己位置推定部172は、位置センサ136から取得した物体と位置センサ136との相対的な位置関係により逐次作成する自己位置マップと、取得した領域マップ203などを用いて自己位置の推定を行う。本実施の形態の場合、自己位置推定部172は、SLAM技術を利用して自己位置を推定している。
【0026】
移動制御部176は、自己位置推定部172において推定された自己位置に基づき掃除経路を用いてロボットを移動させる。なお、移動制御部176は、領域マップ203上に物体などが存在することをセンサにより取得した場合、物体を回避しながら移動ロボット130を移動させるように移動手段132を制御しても構わない。
【0027】
掃除制御部177は、掃除計画に基づき自己位置に対応した掃除を掃除手段133に実行させる。例えば、吸引力や、ブラシの回転の有無などを自己位置に基づき変化させる。
【0028】
端末装置160は、使用者からの入力を受け付ける装置であって、移動ロボット130との間で通信可能な通信装置、ネットワークを介してサーバ110などと通信可能な通信装置を備えている。端末装置160は、取得した情報を処理し、処理した内容を使用者に対して表示できる表示手段161と、端末制御手段129と、を備えている。端末装置160としては、例えばいわゆるスマートフォン、いわゆるタブレットなど人が携帯して移動させることができる装置を例示することができる。端末装置160は、端末制御手段129が備えるプロセッサによってプログラムを実行することにより実現される機能部として、受付部123と、位置関係取得部124と、マップ取得部126と、仮想壁設定部122と、を備えている。本実施の形態の場合、端末制御手段129は、可動性設定部127を備えている。
【0029】
図5は、マップ取得部が取得した領域マップを示す図である。マップ取得部126は、移動ロボット130が移動する領域201を示す領域マップ203を取得する。マップ取得部126が領域マップを取得する先は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、移動ロボット130の自己位置推定部172が事前に作成していた自己位置マップをマップ取得部126は領域マップとして取得している。同図に示すように、マップ取得部126が取得した領域マップ203の一部は、不明瞭データ部202が存在している。なお、マップ取得部126は、サーバ110などからフロアマップなどを領域マップ203として取得してもかまわない。
【0030】
受付部123は、領域201内の地点において仮想壁204の一端を示す開始の入力を受け付け、端末装置160を移動させた後の領域201内の別の地点において仮想壁の他端を示す終了の入力を受け付ける処理部である。本実施の形態の場合、表示手段161、表示制御部125、および受付部123は、操作手段としてのGUI(Graphical User Interface)を構成している。つまり、図6に示すように、表示制御部125は、表示手段161に開始アイコン162を表示させる。表示手段161はタッチパネルを備えており、受付部123は、表示制御部125を介して使用者が開始アイコン162に触れたことを示す情報を取得し、開始の入力を受け付ける。また、図7に示すように、表示制御部125は、開始の入力を受け付けた後、表示手段161に終了アイコン163を表示させる。受付部123は、表示制御部125を介して使用者が終了アイコン163に触れたことを示す情報を取得し、終了の入力を受け付ける。なお、具体的な動作については後述する。
【0031】
位置関係取得部124は、受付部123が開始の入力を受け付けた地点である開始地点に対する終了の入力を受け付けた地点である終了地点の位置関係を取得する。位置関係取得部124が二つの地点の位置関係を取得する方法は、特に限定されるものではない。例えば、位置関係取得部124は、開始地点から終了地点までの端末装置160の移動経路を取得することにより二つの地点の相対的な位置関係を取得してもかまわない。具体的には、図8に示すように、開始地点211において使用者は、端末装置160の「開始」をタップする。次に、使用者は、端末装置160を保持した状態で壁伝いに移動する。位置関係取得部124は、開始地点からの使用者の移動経路を加速度センサ、ジャイロセンサー、計時タイマーなどにより生成する。終了地点212に到達すると、使用者は開始から終了に変更されている端末装置160の「終了」をタップし、移動経路の取得を終了する。なお、位置関係取得部124が加速度センサ、ジャイロセンサーなどの慣性センサを用いて二つの地点の位置関係を取得している場合、領域マップ203に対する開始地点、終了地点、および移動経路の絶対的な位置関係は不明な状態である。また、位置関係取得部124が、端末装置160の施設200(フロア)に対する絶対的な位置関係を取得できる場合、領域マップ203に対する開始地点、終了地点、および移動経路の位置関係は特定される。
【0032】
端末装置160の施設200に対する絶対的な位置関係を取得する方法は、特に限定されるものではない。例えば、端末装置160が対象物との二次元、または三次元的な測距機能(例えばLiDAR)を備え、SLAM技術などにより端末装置160と施設200との相対的な位置関係を取得する方法を例示することができる。また、移動ロボット130など端末装置160以外の装置が備えている対象物との二次元、または三次元的な測距装置の測定結果から端末装置160と施設200との相対的な位置関係を端末装置160が取得する方法を例示することができる。これによれば、位置関係取得部124が取得した開始地点における終了地点の位置関係、および移動経路と領域マップ203との位置関係を特定することができる。
【0033】
また、端末装置160は、グローバルポジショニングシステム(GPS)、ローカルポジショニングシステム(LPS)に用いられるセンサを備え、端末装置160と施設200との相対的な位置関係を当該センサからの情報に基づいて取得することにより領域マップ203と端末装置160との絶対的な位置関係を取得してもかまわない。
【0034】
仮想壁設定部122は、位置関係取得部124が取得した開始地点と終了地点とを両端部とする仮想壁を領域マップ203上に設定して領域マップ203を更新する。領域マップ203に対する開始地点、終了地点、および移動経路の位置関係が不明な場合、図9に示すように、仮想壁設定部122は、領域マップ203、および仮想壁204を表示手段161に表示し、領域マップ203上の仮想壁204の使用者による移動をGUI等により受け付け、図10に示すように開始地点、終了地点、および移動経路を含む仮想壁204の位置、および姿勢を領域マップ203上に設定し、領域マップ203を更新する。また、領域マップ203に対する開始地点、終了地点、および移動経路の位置関係を取得している場合、仮想壁設定部122は、領域マップ203に仮想壁204を自動的に設定して領域マップ203を更新する。
【0035】
また、仮想壁設定部122は、図11に示すような領域201内の一部であってフロア上に設置されていた対象物300が撮影された画像データを端末装置160が備える撮像装置(不図示)から取得し、取得した画像データを解析することにより、図12に示すような対象物300を囲む仮想壁204を領域マップ203上に設定して領域マップ203を更新してもかまわない。
【0036】
可動性設定部127は、仮想壁設定部122が設定した仮想壁204が、施設200の壁などのような固定される物であるか、図11に示す対象物300のような可動である物かを設定する。例えば、可動性設定部127は、更新前の領域マップ203に固定壁と一連になるように設定される仮想壁204は、固定であると設定する(図12では実線で示している)。また可動性設定部127は、更新前の領域マップ203に固定壁と一連にならない島状の仮想壁204は、可動であると設定する(図12では破線で示している)。可動性設定部127は、端末装置160が備えるGUIなどを用いて使用者が入力した固定を指示する情報、可動を指示する情報に基づき固定の仮想壁204か、可動の仮想壁204かを設定してもかまわない。
【0037】
次に、移動ロボットシステム100の動作を説明する。図13は、移動ロボットシステムの動作の流れを示すフローチャートである。
【0038】
端末装置160のマップ取得部126は、領域マップ203を取得する(S101)。不明瞭データ部202が存在している場合、使用者は端末装置160を保持して不明瞭データ部202に対応する箇所に移動し仮想壁204を生成するための作業を行う。具体的には、使用者が仮想壁204の一端に対応する施設200の位置に端末装置160を配置し、表示手段161上の「開始」ボタンをタッチすることで、受付部123は、開始の入力を受け付ける(S102)。次に使用者が仮想壁204の他端に対応する施設200の位置にまで移動して端末装置160を配置する。位置関係取得部124は、開始位置から終了位置までの端末装置160の移動経路を取得する(S103)。使用者が表示手段161上の「終了」ボタンをタッチすることで、受付部123は、終了の入力を受け付ける(S104)。仮想壁設定部122は、位置関係取得部124が取得した開始地点と終了地点とに関するデータを取得する(S105)。
【0039】
施設200に領域マップ203にはない対象物300が設置されている場合、使用者は端末装置160を保持して対象物300が設置されている箇所の近傍に移動し対象物300を撮像する(S106)。仮想壁設定部122は、撮像された画像データを取得する(S107)。
【0040】
仮想壁設定部122は、位置関係取得部124から取得した開始地点と終了地点とを両端部とし移動経路に沿って屈曲(直線でもかまわない)する仮想壁204を領域マップ203上に表示する。また、仮想壁設定部122は、取得した画像データを解析して対象物300を囲む仮想壁204を領域マップ203上に表示する(S108)。
【0041】
使用者から仮想壁204の移動の入力があった場合(S109:Yes)、仮想壁設定部122は、仮想壁204の移動を受け付ける(S110)。使用者から仮想壁204が固定か可動かの入力があった場合(S111:Yes)、仮想壁設定部122は、入力を受け付ける(S112)。以上の処理の終了後、仮想壁設定部122は、領域マップ203を更新する(S113)。
【0042】
本実施の形態の移動ロボットシステム100によれば、実際の領域201の状況を使用者が確認しながら、領域マップ203の不明瞭データ部202を補完する仮想壁204を指示し、領域マップ203を簡便に更新することができる。また、領域マップ203内に配置された対象物300を囲む仮想壁204を領域マップ203に追加して簡便に更新することができる。従って、領域マップ203の更新時間を短縮することが可能となり、更新された領域マップ203に基づき移動する移動ロボット130は、施設200内を壁や対象物300に衝突することなく適正に移動することが可能となる。
【0043】
また、固定される仮想壁204と移動可能な仮想壁204とを区別して認識することで、施設200内で対象物300が移動された場合などにおいて使用者は可動の仮想壁204をGUI上で移動させるだけで領域マップ203を更新することができる。
【0044】
なお、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本開示の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本開示の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本開示に含まれる。
【0045】
例えば、位置関係取得部124は、開始位置に対する終了位置の位置関係、および端末装置160の移動経路を取得する場合を説明したが、位置関係取得部124は、施設200における開始位置、と終了位置とを取得してもかまわない。具体的には図14に示すように、開始ボタンがタップされた端末装置160の施設200に対する絶対的な位置と終了ボタンがタップされた端末装置160の絶対的な位置を位置関係取得部124が取得し、仮想壁設定部122は、開始位置と終了位置とを結ぶ線分を仮想壁204として設定してもかまわない。
【0046】
また、仮想壁設定部122は、図15に示すように、開始位置と終了位置とが対角となるような矩形を仮想壁204として領域マップ203上に設定してもかまわない。
【0047】
また、仮想壁設定部122は、図16に示すように、領域マップ203において可動であると設定された仮想壁204に関連する画像を対応する仮想壁204を特定できる状態で表示してもかまわない。仮想壁204に関連する画像とは、対象物300形状を線図で表したもの、対象物300が含まれる画像、対象物300を図案化したアイコンなどである。
【0048】
また、移動ロボットシステム100が備える移動ロボット130、およびサーバ110の少なくとも一方が、上記実施の形態の端末装置160の機能の少なくとも1つを備えていても構わない。また、移動ロボットシステム100は、サーバ110を備えなくてもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本開示にかかる移動ロボットシステムは、自律移動式のロボットを用いた領域の適切な移動に利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
100 移動ロボットシステム
110 サーバ
122 仮想壁設定部
123 受付部
124 位置関係取得部
125 表示制御部
126 マップ取得部
127 可動性設定部
129 端末制御手段
130 移動ロボット
131 ボディ
132 移動手段
133 掃除手段
134 回転ブラシ
135 制御ユニット
136 位置センサ
138 吸込口
139 バンパ
140 ホイール
142 キャスター
143 塵埃保持部
160 端末装置
161 表示手段
162 開始アイコン
163 終了アイコン
171 マップ処理部
172 自己位置推定部
176 移動制御部
177 掃除制御部
200 施設
201 領域
202 不明瞭データ部
203 領域マップ
204 仮想壁
211 開始地点
212 終了地点
300 対象物
図1
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