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特許7603226連結構造物、装飾方法、及び、連結構造体セット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】連結構造物、装飾方法、及び、連結構造体セット
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/08 20190101AFI20241213BHJP
   E04F 13/18 20060101ALI20241213BHJP
   E04F 15/10 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
B32B7/08
E04F13/18 B
E04F15/10 104B
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023502166
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 JP2022001923
(87)【国際公開番号】W WO2022181127
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2021027970
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】小谷 友規
(72)【発明者】
【氏名】大塩 祥三
(72)【発明者】
【氏名】中村 将啓
(72)【発明者】
【氏名】紺田 哲史
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-219853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
E04F 13/18
E04F 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の構造体と、
前記第1の構造体に着脱可能に連結された第2の構造体と、を備え、
前記第1の構造体は、第1の嵌め込み部を有し、
前記第2の構造体は、前記第1の嵌め込み部に着脱可能に嵌り合う第2の嵌め込み部を有し、
前記第1の嵌め込み部及び前記第2の嵌め込み部のうちの少なくとも一方は、周期構造を有し、且つ、方向によって異なる弾性を持つ異方弾性構造体であり、
前記第1の嵌め込み部と前記第2の嵌め込み部とを互いに嵌め込むときの嵌め込み方向を第1方向とし、前記第1方向に平行な平面に直交する方向を第2方向とすると、前記異方弾性構造体の前記第2方向における弾性は、前記異方弾性構造体の前記第1方向における弾性よりも大きく、
前記周期構造は、前記第2方向に複数の樹脂層が積層されることで前記複数の樹脂層が周期的に繰り返された構造である、
連結構造物。
【請求項2】
前記第1の嵌め込み部及び前記第2の嵌め込み部は、いずれも前記異方弾性構造体である、
請求項1に記載の連結構造物。
【請求項3】
前記異方弾性構造体は、前記周期構造として一次元周期構造を持つ多層体及び前記周期構造として二次元周期構造を持つ二次元周期構造体のいずれかであり、前記二次元周期構造体は、高弾性率材料からなる第1の部材と、前記第1の部材よりも弾性率が低い低弾性率材料からなる第2の部材とが井桁状に嵌め合わされた構造を有する、
請求項1又は2に記載の連結構造物。
【請求項4】
前記異方弾性構造体は、弾性率が異なる複数種類の材料によって構成される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の連結構造物。
【請求項5】
第1の構造体と、
前記第1の構造体に着脱可能に連結された第2の構造体と、を備え、
前記第1の構造体は、第1の嵌め込み部を有し、
前記第2の構造体は、前記第1の嵌め込み部に着脱可能に嵌り合う第2の嵌め込み部を有し、
前記第1の嵌め込み部及び前記第2の嵌め込み部のうちの少なくとも一方は、周期構造を有し、且つ、方向によって異なる弾性を持つ異方弾性構造体であり、
前記第1の嵌め込み部と前記第2の嵌め込み部とを互いに嵌め込むときの嵌め込み方向を第1方向とし、前記第1方向に平行な平面に直交する方向を第2方向とすると、前記異方弾性構造体の前記第2方向における弾性は、前記異方弾性構造体の前記第1方向における弾性よりも大きく、
前記異方弾性構造体は、前記周期構造として一次元周期構造を持つ多層体であり、1種類の材料によって構成される、
結構造物。
【請求項6】
前記第1の嵌め込み部と前記第2の嵌め込み部とが嵌め込まれている状態において、前記第1の構造体と前記第2の構造体とは、互いに面接触する部分を有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の連結構造物。
【請求項7】
前記第1の構造体は、前記第1の嵌め込み部を複数有する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の連結構造物。
【請求項8】
前記第1の構造体及び前記第2の構造体の少なくとも一方は、しなることができる素材及び形状で形成されている、
請求項1~7のいずれか1項に記載の連結構造物。
【請求項9】
さらに、第3の構造体を備え、
前記第1の構造体は、第3の嵌め込み部を有し、
前記第3の構造体は、前記第3の嵌め込み部に着脱可能に嵌り合う第4の嵌め込み部を有する、
請求項1~8のいずれか1項に記載の連結構造物。
【請求項10】
前記第3の構造体は、前記第1の構造体を支持する支持体である、
請求項9に記載の連結構造物。
【請求項11】
前記第1の構造体は、機能性を有する機能層と、前記機能層に積層され、前記第1の嵌め込み部を有する第1の連結層とを有する、
請求項1~10のいずれか1項に記載の連結構造物。
【請求項12】
前記第2の構造体は、意匠性を有する意匠層と、前記意匠層に積層され、前記第2の嵌め込み部を有する第2の連結層とを有する、
請求項1~11のいずれか1項に記載の連結構造物。
【請求項13】
前記第1方向における前記第1の構造体の厚さは、0.1mm以上3.0cm未満である、
請求項1~12のいずれか1項に記載の連結構造物。
【請求項14】
前記連結構造物は、建材である、
請求項1~13のいずれか1項に記載の連結構造物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の連結構造物を利用又は再利用することで装飾を行う、
装飾方法。
【請求項16】
前記連結構造物を利用することでリフォームを行う、
請求項15に記載の装飾方法。
【請求項17】
第1の嵌め込み部を有する第1の構造体と、
前記第1の嵌め込み部に着脱可能に嵌り合う第2の嵌め込み部を有する第2の構造体と、を備え、
前記第1の構造体と前記第2の構造体とは、前記第1の嵌め込み部と前記第2の嵌め込み部とを嵌め込むことで連結することができ、
前記第1の嵌め込み部及び前記第2の嵌め込み部のうちの少なくとも一方は、周期構造を有し、且つ、方向によって異なる弾性を持つ異方弾性構造体であり、
前記第1の嵌め込み部と前記第2の嵌め込み部とを互いに嵌め込むときの嵌め込み方向を第1方向とし、前記第1方向に平行な平面に直交する方向を第2方向とすると、前記異方弾性構造体の前記第2方向における弾性は、前記異方弾性構造体の前記第1方向における弾性よりも大きく
前記周期構造は、前記第2方向に複数の樹脂層が積層されることで前記複数の樹脂層が周期的に繰り返された構造である、
連結構造体セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結構造物、その連結構造物を用いた装飾方法、及び、連結構造体セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁材、内装材、床材又は天井材等の建材として、機能性を有する建築用の構造物を用いることが知られている。この種の構造物は、例えば、支持体となる基材と、基材に積層された機能層とを有する(例えば特許文献1)。機能層には、用途や目的に応じて種々の機能が付与されている。
【0003】
このような構造物においては、機能層と基材とは接着剤を用いて固着される。また、建築用の構造物に限らず、2つの構造体を固着する場合には、一般的には接着剤が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-062775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、接着剤によって2つの構造体が固着された構造物を製造する場合、精度良く2つの構造体を固着することが難しい。このため、2つの構造体を接着剤で固着する工程を自動化することが難しい。また、この工程を自動化できたとしても、高コストになってしまう。
【0006】
しかも、2つの構造体を接着剤で一旦固着してしまうと、後になって修正することが難しく、また、2つの構造体を分離することも難しい。例えば、基材と機能層とが接着剤で固着された構造物においては、基材から機能層を取り外すことが困難である。
【0007】
さらに、接着剤の多くは石油由来の樹脂材料によって構成されているので、接着剤を用いて固着する作業そのものが環境に対して負荷を高める作業になっている。また、基材と機能層とが接着された構造物において、仮に基材から機能層を取り外すことができたとしても、機能層には不要な接着剤が付着していることが多く、取り外した機能層を再利用したりリサイクルしたりすることも容易ではない。この場合、取り外して接着剤が付着した接着層を焼却処分すると、温室効果につながる二酸化炭素ガスの排出にもつながる。このように、接着剤によって2つの構造体を固着するという方法は、環境負荷が高いという課題がある。
【0008】
そこで、2つの構造体を着脱可能に連結する技術が検討されている。例えば、基材と機能層とを備える構造物において、基材と機能層とを着脱可能に嵌め合わせて連結することが検討されている。この場合、嵌め込み部として基材及び機能層の一方に凸部を設けるとともに基材及び機能層の他方に凹部を設けて、凸部と凹部とを嵌め込むことで基材と機能層とを連結したり、嵌め込まれた凸部と凹部とを取り外すことで基材と機能層とを分離したりすることが考えられる。
【0009】
しかしながら、嵌め込み部となる凸部と凹部とを互いに嵌め込むことで2つの構造体が着脱可能に連結された従来の連結構造物では、着脱性能(嵌め込みやすさと取り外しやすさ)と連結状態の保持性能とが相反するものであってトレードオフの関係にあるため、着脱性能と連結状態の保持性能とを両立させることは難しい。
【0010】
例えば、凸部と凹部とを容易に嵌め込んだり容易に取り外したりできるようにして着脱性能を高くすると、連結状態の保持性能が低下してしまい、連結した2つの構造体が外れやすくなってしまう。つまり、2つの構造体を連結した後に、本来外れてほしくないにもかかわらず、2つの構造体が外れてしまうことがある。一方、連結状態の保持性能を高くすると、凸部と凹部とを嵌め込めにくくなったり取り外しにくくなったりして着脱性能が低下する。
【0011】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、各々が嵌め込み部を有する着脱可能な2つの構造体を有し、着脱性能及び連結状態の保持性能との両立を図ることができる連結構造物又はこれを用いた装飾方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る連結構造物の一態様は、第1の構造体と、前記第1の構造体に着脱可能に連結された第2の構造体と、を備え、前記第1の構造体は、第1の嵌め込み部を有し、前記第2の構造体は、前記第1の嵌め込み部に着脱可能に嵌り合う第2の嵌め込み部を有し、前記第1の嵌め込み部及び前記第2の嵌め込み部のうちの少なくとも一方は、周期構造を有し、且つ、方向によって異なる弾性を持つ異方弾性構造体であり、前記第1の嵌め込み部と前記第2の嵌め込み部とを互いに嵌め込むときの嵌め込み方向を第1方向とし、前記第1方向に直交する方向を第2方向とすると、前記異方弾性構造体の前記第2方向における弾性は、前記異方弾性構造体の前記第1方向における弾性よりも大きい。
【0013】
また、本発明に係る装飾方法の一態様は、上記連結構造物を利用又は再利用することで装飾を行う方法である。
【0014】
また、本発明に係る連結構造体セットの一態様は、第1の嵌め込み部を有する第1の構造体と、前記第1の嵌め込み部に着脱可能に嵌り合う第2の嵌め込み部を有する第2の構造体と、を備え、前記第1の構造体と前記第2の構造体とは、前記第1の嵌め込み部と前記第2の嵌め込み部とを嵌め込むことで連結することができ、前記第1の嵌め込み部及び前記第2の嵌め込み部のうちの少なくとも一方は、周期構造を有し、且つ、方向によって異なる弾性を持つ異方弾性構造体であり、前記第1の嵌め込み部と前記第2の嵌め込み部とを互いに嵌め込むときの嵌め込み方向を第1方向とし、前記第1方向に直交する方向を第2方向とすると、前記異方弾性構造体の前記第2方向における弾性は、前記異方弾性構造体の前記第1方向における弾性よりも大きい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、各々が嵌め込み部を有する着脱可能な2つの構造体において、着脱性能及び連結状態の保持性能との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、3Dプリンタで造形された第1試験片と第2試験片の構成を示す図である。
図2図2は、耐衝撃性を評価する際に第1試験片と第2試験片と第3試験片とに与える衝撃の方向を示す図である。
図3図3は、熱物性を評価する際に第1試験片と第2試験片と第3試験片とに与える引っ張り応力の方向を示す図である。
図4図4は、3Dプリンタで作製した樹脂構造体における弾性率の方向異方性と温度依存性とを示す図である。
図5図5は、実施の形態1に係る連結構造物を模式的に示す断面図である。
図6図6は、実施の形態1に係る連結構造物を構成する第1の構造体と第2の構造体とを連結するときの様子を示す断面図である。
図7図7は、実施の形態1の変形例に係る連結構造物を模式的に示す断面図である。
図8図8は、実施の形態1に係る連結構造物と比較例1~4の連結構造物との構成を示すとともに、各連結構造物における着脱性能及び保持性能の評価結果を示す図である。
図9図9は、実施の形態2に係る連結構造物において、第1の構造体と第2の構造体とを連結するときの様子を示す断面図である。
図10図10は、実施の形態2の変形例に係る連結構造物において、第1の構造体と第2の構造体とを連結するときの様子を示す断面図である。
図11図11は、実施の形態3に係る連結構造物において、第1の構造体と第2の構造体と第3の構造体とを連結するときの様子を示す断面図である。
図12図12は、変形例1に係る異方弾性構造体の構成を示す図である。
図13図13は、変形例2に係る異方弾性構造体の構成を示す図である。
図14図14は、変形例3に係る異方弾性構造体の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(本発明の一態様を得るに至った経緯)
本発明の実施の形態を説明することに先立ち、本発明の一態様を得るに至った経緯について説明する。
【0018】
近年、3Dプリンタを用いて立体構造物を作製することが行われている。3Dプリンタは、3次元造形機の一種であり、コンピュータ上で作成した3Dデータを設計図として、その設計図どおりの立体構造物を造形する立体造形装置である。
【0019】
3Dプリンタにより立体構造物を造形する技術には、用いる材料の特性等に応じて様々な造形方式がある。例えば、3Dプリンタを用いた造形方式として、液槽光重合法、材料噴射法又は材料押出法等が知られている。この場合、液槽光重合法及び材料噴射法では、光硬化性樹脂が用いられ、材料押出法では、熱可塑性樹脂が用いられる。
【0020】
樹脂を造形材料とする3Dプリンタ(3D樹脂プリンタ)は、樹脂を1層ずつ積層させながら造形していく。例えば、液槽光重合法及び材料噴射法を用いた3Dプリンタでは、インクである造形材料として紫外線硬化性樹脂を用いて、1層ずつインクを吐出しながら紫外線を照射して硬化し、これを繰り返して樹脂層を積層していくことで所定形状の立体構造物を造形する。つまり、3D樹脂プリンタで造形された立体構造物は、複数の樹脂層が周期的に繰り返された周期構造を有するものであって、樹脂層の層間の界面が接着剤で接着されることなく一体となった一体物である。
【0021】
ここで、本願発明者らは、3D樹脂プリンタで造形された立体構造物の物性に着目し、樹脂を造形原料とする3Dプリンタで造形した立体構造物を実際に作製して実験し、種々の検討を行った。
【0022】
その結果、本願発明者らは、樹脂を造形原料とする3Dプリンタで造形した立体構造物については、樹脂の積層方向(造形方向)とこれとは異なる方向とで、機械的強度及び熱物性が異なることを見出した。つまり、3Dプリンタで造形した樹脂製の立体構造物については、機械的強度及び熱物性に造形方向依存性を有することを見出した。以下に、本願発明者らが行った実験とその評価結果について説明する。
【0023】
まず、樹脂材料からなる試験片として、材料噴射法を用いた3Dプリンタによって直方体の立体構造物を造形した。造形材料としては、アクリル系の紫外線硬化性樹脂を用いた。
【0024】
この場合、同じ形状の試験片を、樹脂の積層方向(造形方向)を異ならせて2種類作製した。具体的には、図1に示すように、直方体の長手方向に直交する方向を樹脂の積層方向として作製した第1試験片TSと、直方体の長手方向を樹脂の積層方向として作製した第2試験片HSとを作製した。つまり、第1試験片TSは、樹脂層が横積みされたものであり、第2試験片HSは、樹脂層が縦積みされたものである。なお、第1試験片TSと第2試験片HSとは、同じ形状である。
【0025】
また、図示しないが、樹脂材料からなる第3試験片RDとして、第1試験片TS及び第2試験片HSと同じ形状の直方体を3Dプリンタではなく注型成形機によって作製した。第3試験片RDも、アクリル系の紫外線硬化性樹脂を用いて作製した。なお、第3試験片RDは、注型成形法によって作製されているので、第1試験片TS及び第2試験片HSとは異なり、樹脂の積層方向が存在しない。
【0026】
さらに、第1試験片TSと第2試験片HSと第3試験片RDとについては、それぞれ、水銀ランプ(エネルギー大)により紫外線を照射して作製したものと、UV-LED(エネルギー小)により紫外線を照射して作製したものとを準備した。
【0027】
なお、図1において、各直方体に示される線は、樹脂層の積層方向が分かるように樹脂層の境界線を便宜上示したものであり、実際に見える線ではなく、また、境界線の数も正確に示されたものではない。
【0028】
そして、これらの試験片に対して、耐衝撃性と熱物性(耐熱性)とを評価するために、以下のように測定を行った。
【0029】
まず、耐衝撃性を評価するために、図2に示すように、第1試験片TS(横積み)、第2試験片HS(縦積み)及び第3試験片RD(注型)に対して、直方体の長手方向に直交する方向から衝撃を与えて、耐衝撃性としてアイゾット衝撃強度(kJ/m)を測定した。なお、図2の矢印は、衝撃方向を示している。つまり、第1試験片TSにおける衝撃方向は、樹脂の積層方向と平行な方向である。また、第2試験片HSにおける衝撃方向は、樹脂の積層方向に直交する方向と平行な方向である。
【0030】
この測定の結果、第3試験片RDについては、水銀ランプを用いた場合もUV-LEDを用いた場合も、アイゾット衝撃強度(以下、「衝撃強度」)は同等であったが、3Dプリンタで作製した第1試験片TS及び第2試験片HSについては、水銀ランプを用いた場合とUV-LEDを用いた場合とで衝撃強度が異なるともに、第1試験片TSと第2試験片HSとの間でも衝撃強度が異なることが分かった。
【0031】
具体的には、水銀ランプを用いた場合については、第1試験片TS及び第2試験片HSは、第3試験片RDよりも衝撃強度が低くなることが分かった。つまり、3Dプリンタで作製すると、耐衝撃性が低下することが分かった。特に、第1試験片TSは、第3試験片RDに対して衝撃強度はあまり低下しなかったものの、第2試験片HSは、第3試験片RDに対して衝撃強度が著しく低下し、耐衝撃性が大幅に低下することが分かった。
【0032】
また、UV-LEDを用いた場合については、3Dプリンタで作製した第1試験片TS及び第2試験片HSは、第3試験片RDに対して、衝撃強度が低下せず、同等又はそれ以上の耐衝撃性を有することが分かった。なお、第1試験片TSは、第2試験片HSよりも高い衝撃強度を有し、第2試験片HSと比べて耐衝撃性に優れていることも分かった。
【0033】
次に、熱物性(耐熱性)を評価するために、図3に示すように、第1試験片TS(横積み)、第2試験片HS(縦積み)及び第3試験片RD(注型)に対して、直方体の長手方向に引っ張り応力を与えて、温度(℃)と弾性率E(Pa)とを測定した。なお、図3の矢印は、引っ張り応力の方向を示している。つまり、第1試験片TSに与える引っ張り応力の方向は、樹脂の積層方向と直交する方向と平行な方向であり、第2試験片HSに与える引っ張り応力の方向は、樹脂の積層方向と平行な方向である。
【0034】
この測定の結果、第3試験片RDについては、水銀ランプを用いた場合もUV-LEDを用いた場合も、同程度の耐熱性を有していたが、3Dプリンタで作製した第1試験片TS及び第2試験片HSについては、水銀ランプを用いた場合とUV-LEDを用いた場合とで熱物性が異なるとともに、第1試験片TSと第2試験片HSとの間でも熱物性が異なることが分かった。
【0035】
具体的には、水銀ランプを用いた場合については、3Dプリンタで作製した第1試験片TS及び第2試験片HSは、第3試験片RDに対して、弾性率が低く、耐熱性が低下することが分かった。特に、第1試験片TSについては、温度の上昇とともに弾性率が低下する遷移領域である50℃~100℃の範囲では、第3試験片RDに対して弾性率が低下するものの、温度が上昇しても弾性率が変化しない一定領域である0℃~50℃の範囲及び100℃以上の範囲では、第3試験片RDに対して弾性率はあまり低下しないことも分かった。一方、第2試験片HSについては、どの温度範囲(例えば0℃~150℃)でも、第3試験片RDに対して弾性率が低く、さらに、第1試験片TSに対しても弾性率が低くなることが分かった。
【0036】
このように、3Dプリンタで作製すると弾性率が低くなり、さらに、第1試験片TSと第2試験片HSとの間では弾性率が異なることが分かった。つまり、3Dプリンタで作製した第1試験片TSと第2試験片HSとについては、樹脂の積層方向(造形方向)に対して、弾性の異方性を有することが分かった。具体的には、図4に示すように、第2試験片HS(縦積み)の弾性率E’が第1試験片TS(横積み)の弾性率よりも低くなることが分かった。つまり、第2試験片HSの弾性が第1試験片TSの弾性よりも大きくなることが分かった。このように、3Dプリンタで造形した構造物については、樹脂の積層方向(造形方向)の弾性が大きくなる(つまり変形しやすくなる)ことが分かった。
【0037】
また、UV-LEDを用いた場合については、3Dプリンタで作製した第1試験片TS及び第2試験片HSは、遷移領域である50℃~100℃の範囲では、第3試験片RDに対して弾性率が低下するものの、一定領域である0℃~50℃の範囲及び100℃以上の範囲では、第3試験片RDと同等の弾性率を有することが分かった。なお、第1試験片TSと第2試験片HSとは弾性率カーブがほぼ一致し、0℃~100℃のどの範囲においても、第1試験片TSの弾性率と第2試験片HSの弾性率とは同等であった。
【0038】
つまり、UV-LEDを用いた場合、0℃~50℃と100℃以上の範囲については、第1試験片TSと第2試験片HSと第3試験片RDとは、同等の弾性率を有していて、あまり弾性に異方性がないことも分かった。
【0039】
このように、3Dプリンタで造形した第1試験片TS及び第2試験片HSが、水銀ランプを用いた場合とUV-LEDを用いた場合とで、注型成形で造形した第3試験片RDに対して弾性の低下の度合いが異なるのは、水銀ランプで紫外線を照射した場合にはUV-LEDで紫外線を照射した場合と比べてエネルギーが大きいために樹脂層の層ごとに樹脂硬化が十分に進むことになり、積層界面の結合が少なくなったからであると考えられる。逆に、UV-LEDで紫外線を照射した場合には、エネルギーが小さいために、酸素阻害により各樹脂層が未硬化成分を含んだままの状態で順次積層されていくことになり、樹脂層の界面が連続相となって異方性が縮小し、この結果、注型成形で造形したものと同じ物性になったからであると考えられる。
【0040】
以上の実験結果から、本願発明者らは、3Dプリンタにより複数の樹脂層が周期的に繰り返された周期構造を有する立体構造物を造形した場合には、造形された立体構造物は、脂層の層間の界面が接着剤で接着されることなく一体となった一体物でありながら、樹脂の積層方向(造形方向)とこの積層方向に直交する方向とで弾性率が異なる(つまり弾性特性が異なる)と特質を有する構造物になる、という知見を得た。すなわち、樹脂を用いて3Dプリンタにより造形された立体構造物は、樹脂の積層方向とこの積層方向に直交する方向とで異方弾性が存在するという知見を得た。
【0041】
そして、本願発明者らは、この知見をもとにして、2つの構造体が連結された連結構造物において、接着剤にとって代わる連結構造として、これまでは両立することが困難であった着脱性能と保持性能のいずれにも優れているという新規な連結構造を見出した。具体的には、嵌め込み部として互いに嵌り合う凸部及び/又は凹部にこの知見を適用することで、着脱性能にも保持性能にも優れた一対の構造体を備える連結構造物を見出した。
【0042】
以下、この知見をもとに着想された本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、並びに、工程(ステップ)及び工程の順序等は、一例であって本発明を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0043】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0044】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1に係る連結構造物1の構成について、図5及び図6を用いて説明する。図5は、実施の形態1に係る連結構造物1を模式的に示す断面図である。図6は、同連結構造物1を構成する第1の構造体10と第2の構造体20とを連結するときの様子を示す断面図である。
【0045】
図5に示すように、本実施の形態に係る連結構造物1は、第1の構造体10と、第1の構造体10に着脱可能に連結された第2の構造体20とを備える。第1の構造体10と第2の構造体20とは、着脱可能に相互に連結される一対の連結体を構成している。つまり、第1の構造体10と第2の構造体20とは、連結構造となる一対の嵌め込み部(嵌め込み構造)を介して着脱自在であり、ユーザは、第1の構造体10と第2の構造体20とを合体させたり分離させたりすることができる。
【0046】
本実施の形態における連結構造物1は、建築用部材として用いることができる。例えば、連結構造物1は、壁材(内壁材、外壁材)、内装材、床材、天井材又は間仕切り等の建材として用いることができる。
【0047】
第1の構造体10(第1の連結体)は、第1の嵌め込み部として少なくとも1つの凸部11を有する。本実施の形態において、第1の構造体10は、複数の凸部11を有する。複数の凸部11は、同じ形状である。
【0048】
第1の構造体10は、主面12を有する平板状のシート部材である。主面12は、第2の構造体20に対向する面である。本実施の形態において、第1の構造体10の主面12は、平面である。なお、第1の構造体10は、凸部11を除いた部分の厚さが一定であり、主面12に背向する他の主面も平面である。
【0049】
複数の凸部11の各々は、主面12から突出するように形成された突起である。本実施の形態において、複数の凸部11の各々は、球状であり、主面12側の根元部分がくびれるように形成されている。したがって、各凸部11の表面は、凸状に湾曲する湾曲面であり、具体的には凸球面である。具体的には、球状の各凸部11の断面形状は、例えば、真円又は楕円であるが、円形に近い形状であれば、真円又は楕円に限らない。
【0050】
第1の構造体10は、しなることができる素材及び形状で形成されているとよい。これにより、第1の構造体10と第2の構造体20との着脱性能が向上するとともに、連結構造物1を内装等の用途に利用しやすくなる。例えば、第1の構造体10は、可撓性を有するシートとすることができる。一例として、第1の構造体10の厚さは、0.1mm以上3.0cm未満である。
【0051】
また、第1の構造体10は、剛性を持つ剛体であるとよい。これにより、外力等の応力が連結構造物1に加わっても連結構造物1が変形することを抑制できる。したがって、応力に対して変形しにくい連結構造物1を実現できる。
【0052】
第2の構造体20(第2の連結体)は、第1の構造体10の凸部11に着脱可能に嵌り合う第2の嵌め込み部として少なくとも1つの凹部21を有する。本実施の形態において、第2の構造体20は、複数の凹部21を有する。複数の凹部21は、同じ形状である。
【0053】
第2の構造体20は、主面22を有する平板状のシート部材である。本実施の形態において、第2の構造体20の主面22は、平面である。主面22は、第1の構造体10に対向する面である。なお、第2の構造体20は、凹部21を除いた部分の厚さが一定であり、主面22に背向する他の主面も平面である。
【0054】
複数の凹部21は、この主面22から窪むように形成された有底の穴である。第1の構造体10の凸部11と第2の構造体20の凹部21とは、互いに嵌り合う凹凸構造(オスメス構造)である。つまり、凸部11(オス構造)と凹部21(メス構造)とは、噛み合う形状であるとよい。具体的には、凸部11と凹部21とは、凹凸関係にある同じ形状であるとよい。この場合、本実施の形態では、凸部11が球状であるので、凹部21は、凸部11が嵌るように球状に窪んだ形状である。したがって、凹部21の表面は、凹状に湾曲する湾曲面であり、具体的には凹球面である。
【0055】
なお、凸部11及び凹部21の形状は、球状に限らない。例えば、図7の連結構造物1Aに示すように、第1の構造体10Aの凸部11A及び第2の構造体20Aの凹部21Aの形状は、角柱であってもよい。また、凸部11A及び凹部21Aは、円柱であってもよいし、順テーパ面又は逆テーパ面を有する錐台であってもよい。凸部11A及び凹部21Aが錐台である場合、凸部11A及び凹部21Aは、円錐台、又は、三角錐台や四角錐台等の多角錐台である。
【0056】
第2の構造体20は、剛性を持つ剛体であるとよい。特に、第2の構造体20の剛性は、第1の構造体10の剛性よりも大きくなっているとよい。これにより、第2の構造体20を第1の構造体10を支持する支持体として用いることができる。この場合、第2の構造体20の厚さは、第1の構造体10の厚さよりも厚くなっているとよい。なお、第2の構造体20の厚さは、特に限定されるものではないが、第1の構造体10と同様に、0.1mm以上3.0cm未満であるとよい。
【0057】
また、第2の構造体20は、第1の構造体10と同様に、しなることができる素材及び形状で形成されていてもよい。例えば、第2の構造体20は、第1の構造体10のように、可撓性を有するシートであってもよい。
【0058】
図5に示すように、凸部11と凹部21とが嵌め合わされた状態では、凸部11の表面全面と凹部21の表面全面とが密着している。なお、凸部11と凹部21とは、互いに嵌り合うことができる形状であれば、必ずしも凸部11の表面全面と凹部21の表面全面とが接触していなくてもよい。つまり、凸部11と凹部21とが嵌り合った状態で、凸部11の表面と凹部21の表面との間に部分的に隙間が存在していてもよい。
【0059】
また、複数の凸部11と複数の凹部21との数は必ずしも一致する必要はないが、本実施の形態において、複数の凸部11と複数の凹部21とは、同数であり、一対一に対応している。したがって、複数の凸部11と複数の凹部21とは、全て嵌り合う位置に形成されている。例えば、図6に示すように、第1の構造体10の主面12と第2の構造体20の主面22とを対面させたときに、複数の凸部11と複数の凹部21とは、全て対向する位置に形成されている。
【0060】
図6に示すように、第1の構造体10と第2の構造体20とは、凸部11と凹部21とを嵌め合わせることで連結される。例えば、図6に示すように、第1の構造体10の凸部11を第2の構造体20の凹部21に嵌め込んで凸部11と凹部21とを嵌め合わせることで、第1の構造体10と第2の構造体20とを連結させることができる。具体的には、凸部11を凹部21に差し込んで凸部11を凹部21に押し込むことで、凸部11を凹部21に嵌め込むことができる。なお、図6において、矢印は、凸部11を凹部21に嵌め込むときの嵌め込み方向(差し込み方向)を示している。
【0061】
凸部11と凹部21とが嵌め込まれている状態において、第1の構造体10と第2の構造体20とは、凸部11及び凹部21以外にも接触する部分を有する。本実施の形態において、第1の構造体10と第2の構造体20とは、凸部11と凹部21とが嵌め込まれている状態で互いに面接触する部分を有する。具体的には、図5及び図6に示すように、凸部11と凹部21とが嵌め込まれて第1の構造体10と第2の構造体20とが連結した状態で、第1の構造体10の主面12と第2の構造体20の主面22とが面接触している。この構成により、第1の構造体10と第2の構造体20とを連結させたときに第1の構造体10と第2の構造体20とが密着し、第1の構造体10と第2の構造体20との間隙が均一かこれに近いものになる。これにより、連結された第1の構造体10と第2の構造体20との見た目がシンプルで意匠性に優れた連結構造物1を実現できる。
【0062】
連結構造物1において、凸部11(第1の嵌め込み部)及び凹部21(第2の嵌め込み部)のうちの少なくとも一方は、周期構造を有し、且つ、方向によって異なる弾性を持つ異方弾性構造体である。本実施の形態において、凸部11及び凹部21は、いずれも異方弾性構造体である。つまり、凸部11及び凹部21は、いずれも、周期構造を有するとともに、方向によって異なる弾性を持っている。なお、凹部21が異方弾性構造体であるという意味は、凹部21の周辺構造が異方弾性構造体であることを意味する。
【0063】
異方弾性構造体である凸部11及び凹部21は、周期構造として一次元周期構造を持つ多層体からなる一次元周期構造体であり、1種類の材料によって構成される。したがって、凸部11及び凹部21は、一方向のみに周期的に繰り返された繰り返し構造を有する。本実施の形態において、凸部11及び凹部21は、3D樹脂プリンタによって形成されており、複数の樹脂層が積層されることで複数の樹脂層が周期的に繰り返された周期構造を有する。3D樹脂プリンタによって形成された一次元周期構造体は、樹脂層の層間の界面が接着剤で接着されることなく一体となった一体物である。
【0064】
そして、凸部11及び凹部21を3D樹脂プリンタによって形成することで、上述したように、樹脂の積層方向とこの積層方向に直交する方向とで異なる弾性を持つ凸部11及び凹部21を形成することができる。つまり、凸部11及び凹部21の各々は、樹脂の積層方向とこの積層方向に直交する方向とで異なる弾性を持つような3D樹脂プリンタの条件で作製されている。
【0065】
具体的には、図6に示すように、凸部11と凹部21とを互いに嵌め込むときの嵌め込み方向を第1方向とし、第1方向に直交する方向を第2方向とすると、異方弾性構造体である凸部11及び凹部21の第2方向における弾性は、異方弾性構造体である凸部11及び凹部21の第1方向における弾性よりも大きくなっている。つまり、異方弾性構造体である凸部11及び凹部21は、嵌め込み方向に直交する方向の弾性が嵌め込み方向の弾性よりも大きい。具体的には、凸部11及び凹部21は、嵌め込み方向に直交する方向の弾性率が嵌め込み方向の弾性率よりも小さくなっている。これにより、凸部11及び凹部21は、嵌め込み方向に直交する方向には変形しやすく、嵌め込み方向には変形しにくい構造になっている。
【0066】
また、本実施の形態では、凸部11及び凹部21だけが異方弾性構造体になっているのではなく、第1の構造体10及び第2の構造体20の各々の全体が異方弾性構造体になっている。したがって、第1の構造体10の全体と第2の構造体20の全体とが、3D樹脂プリンタによって造形されており、複数の樹脂層が周期的に繰り返された周期構造を有する。したがって、第1の構造体10の全体及び第2の構造体20の全体は、例えば、アクリル樹脂等からなる紫外線硬化性樹脂によって構成されている。
【0067】
なお、図5及び図6において、第1の構造体10及び第2の構造体20のハッチングの線は、樹脂層の積層方向が分かるように樹脂層の境界線を便宜上示したものであり、実際に見える線ではなく、また、境界線の数も正確に示されたものではない。
【0068】
このように、本実施の形態に係る連結構造物1では、凸部11及び凹部21が、嵌め込み方向(第1方向)に直交する方向(第2方向)には変形しやすく、嵌め込み方向(第1方向)には変形しにくいので、凸部11を凹部21に嵌め込んで第1の構造体10と第2の構造体20とを連結させる際、凸部11が凹部21に差し込まれたときに、嵌め込み方向に直交する方向(第2方向)に凸部11及び凹部21が容易に弾性変形する。これにより、嵌め込み先となる凹部21に凸部11を容易に嵌め込むことができる。つまり、第1の構造体10と第2の構造体20とを容易に連結することができる。
【0069】
また、凸部11と凹部21とが嵌め込まれて第1の構造体10と第2の構造体20とが連結している状態において、凹部21から凸部11を取り外す際、嵌め込み方向に直交する方向に凸部11及び凹部21が容易に弾性変形するので、凹部21から凸部11を容易に取り外すことができる。つまり、第1の構造体10と第2の構造体20とを容易に分離することができる。
【0070】
しかも、凸部11を凹部21に嵌め込んだ後は、変形した凸部11が元に戻ろうとする弾性(弾性復元力)によって凹部21を加圧しながら凹部21に密着するように作用するので、凸部11と凹部21との間の摩擦抵抗が大きくなる。これにより、凸部11と凹部21とが嵌め込まれて第1の構造体10と第2の構造体20とが連結している状態においては、凹部21から凸部11を意図的に取り外すことをしない限り、凸部11は凹部21に保持されており、凸部11は凹部21から抜けにくくなっている。
【0071】
このように、本実施の形態に係る連結構造物1によれば、優れた着脱性能と優れた保持性能とを有している。つまり、着脱性能及び保持性能との両立を図ることができる連結構造物1を得ることができる。
【0072】
ここで、本実施の形態に係る連結構造物1の効果を確かめる実験を行ったので、以下、この実験結果について説明する。
【0073】
本実験では、実施の形態1に係る連結構造物と比較例1~4の連結構造物とについて、それぞれ凸部が設けられた第1の構造体と凹部が設けられた第2の構造体とを作製し、各連結構造物について着脱性能と保持性能とを評価した。
【0074】
図8は、実施の形態1に係る連結構造物と比較例1~4の連結構造物との構成を示すとともに、各連結構造物における着脱性能及び保持性能の評価結果を示す図である。本実験では、比較例1~4と本実施の形態との各々については、いずれも凸部の径を凹部の径以上として、凸部を凹部に差し込んだときの着脱性能及び保持性能を評価した。なお、図8の矢印は、差し込み方向を示している。
【0075】
比較例1、2の連結構造物は、凸部を有する第1の構造体及び凹部を有する第2の構造体がいずれも同じ材料によって構成されており、また、等方性の弾性を有する。なお、比較例1の連結構造物では、凸部及び凹部を角柱とし、比較例2の連結構造物では、凸部及び凹部を四角錐台とした。
【0076】
比較例3、4の連結構造物は、凸部を有する第1の構造体及び凹部を有する第2の構造体がいずれも等方性の弾性を有するが、凸部を柔軟な材料としている。なお、比較例3の連結構造物では、凸部及び凹部を角柱とし、比較例4の連結構造物では、凸部及び凹部を四角錐台とした。
【0077】
本実施の形態の連結構造物は、凸部を有する第1の構造体及び凹部を有する第2の構造体は、いずれも同じ材料によって構成されており、また、上記のように異方性の弾性を有するものとした。
【0078】
なお、各連結構造物において、保持性能は、「保持力(N/m)=弾性率(N/m)×変形量」の式で評価した。この式において、弾性率は、凸部の弾性率とし、変形量は、差し込み方向に直交する方向の凸部の変位量とした。また、凸部の弾性率は、比較例1、2と本実施の形態とについては、10とし、凸部が柔軟な材料によって構成された比較例3、4については、10とした。
【0079】
本実験では、このように準備した各連結構造物について、凸部を凹部に差し込むときの入れやすさと、凸部を凹部から取り外すときの外しやすさと、凸部と凹部とが連結している状態での保持力とを評価した。
【0080】
その結果、比較例1の連結構造物では、凸部と凹部が変形しづらく、さらに凸部が等方に変形するため、凸部を凹部に入れにくく、凸部と凹部の底にまで押し込めることができなかった。また、比較例1の連結構造物では、保持力が強すぎとなり、一旦凹部に凸部を差し込んでしまうと、凸部を凹部から外しにくかった。
【0081】
比較例2の連結構造物では、凸部及び凹部が順テーパ面を有するので、凹凸の位置決めがしやすく力が集中するので、比較例1よりも凸部を凹部に入り込みやすくなったものの、入れやすいとまではいえなかった。一方、凸部の変形量が比較例1よりもやや小さくなるので、適度な保持力が得られた。また、凸部及び凹部が順テーパ面を有するので、凸部を凹部から外す際に保持力のベクトルが取り外す方向から外れる方向になるので、比較例1よりも取り外しやすかった。
【0082】
比較例3の連結構造物では、凸部が柔軟になっているが、凸部の変形が等方的であるため、差し込み方向にも凸部が変形してしまう。この結果、凸部を凹部に嵌め合わせにくくなるので、やや凸部を凹部に入れにくかった。また、凸部が柔軟になっていて凸部の弾性率が低くなるので、保持力は弱かった。また、保持力が弱くなった分、凸部は凹部から外しやすくなっていた。
【0083】
比較例4の連結構造物では、凸部が柔軟になってさらに凸部及び凹部が順テーパ面を有しているので、比較例3よりも凹凸の位置決めがしやすく力が集中し、凸部を凹部に入れやすかった。また、凸部が柔軟になっていて凸部の弾性率が低くなっているので、さらに凸部の変形量が比較例3よりも小さくなる。このため、保持力はかなり弱かった。したがって、比較例4の連結構造物を床面以外に使用する場合には重力に逆らうことになるため、第1の構造体又は第2の構造体が落下するおそれがある。また、保持力が弱くなった分、凸部は凹部から外しやすくなった。
【0084】
また、本実施の形態の連結構造物において、凸部11及び凹部21は、嵌め込み方向に直交する方向の弾性が嵌め込み方向の弾性よりも大きい。つまり、凸部11及び凹部21は、嵌め込み方向に直交する方向の弾性率が嵌め込み方向の弾性率よりも小さくなっている。このため、嵌め込み方向においては、凸部11及び凹部21は硬いので、凸部11と凹部21とを合わせやすくなり、しかも、凸部11及び凹部21は、嵌め込み方向に直交する方向に支配的に弾性変形する。これにより、凸部11を凹部21に差し込みやすかった。
【0085】
また、本実施の形態の連結構造物では、異方的に変形した状態で凸部11が凹部21に差し込まれているので、従来よりも弾性率の高いものを用いることができ、保持力が高くなる。つまり、本実施の形態の連結構造物については、高い保持力で構造設計することができる。
【0086】
また、本実施の形態の連結構造物では、凸部11及び凹部21には弾性の異方性があるので、凹部21から凸部11を取り外す際に凸部11及び凹部21が取り外し方向(嵌め込み方向と同じ方向)に直交する方向に支配的に弾性変形する。このため、凸部を凹部から取り外しやすかった。
【0087】
以上、説明したように、本実施の形態に係る連結構造物1は、第1の構造体10と、第1の構造体10に着脱可能に連結された第2の構造体20とを備えており、第1の構造体10の凸部11(第1の嵌め込み部)及び第2の構造体20の凹部21(第2の嵌め込み部)のうちの少なくとも一方が、周期構造を有し、且つ、方向によって異なる弾性を持つ異方弾性構造体であり、異方弾性構造体は、嵌め込み方向に直交する方向(第2方向)における弾性が、凸部11及び凹部21の嵌め込み方向(第1方向)における弾性よりも大きくなっている。
【0088】
これにより、凸部11及び凹部21の少なくとも一方が、嵌め込み方向に直交する方向(第2方向)には変形しやすく、嵌め込み方向(第1方向)には変形しにくい。これにより、第1の構造体10と第2の構造体20とを容易に着脱させることができるとともに、連結された第1の構造体10と第2の構造体20とを高い保持力で保持することができる。したがって、着脱性能及び連結状態の保持性能との両立を図ることができる連結構造物1を実現できる。
【0089】
また、本実施の形態に係る連結構造物1において、凸部11及び凹部21は、いずれも異方弾性構造体になっている。つまり、凸部11及び凹部21は、いずれも、嵌め込み方向に直交する方向(第2方向)における弾性が、凸部11及び凹部21の嵌め込み方向(第1方向)における弾性よりも大きくなっている。
【0090】
これにより、凸部11及び凹部21は、いずれも、嵌め込み方向に直交する方向(第2方向)には変形しやすく、嵌め込み方向(第1方向)には変形しにくくなっている。これにより、第1の構造体10と第2の構造体20とをさらに容易に着脱させることができるとともに、連結された第1の構造体10と第2の構造体20とをさらに高い保持力で保持することができる。したがって、着脱性能及び連結状態の保持性能との両立を一層図ることができる。
【0091】
なお、凸部11及び凹部21のいずれか一方のみを異方弾性構造体とする場合、差し込まれる方の凹部21を異方弾性構造体とするのではなく、差し込む方の凸部11を異方弾性構造体にするとよい。
【0092】
この構成により、差し込まれる方の凹部21を異方弾性構造体とした場合と比べて、異方弾性構造体である凸部11は、嵌め込み方向に直交する方向(第2方向)に変形しやすくなり、嵌め込み方向(第1方向)には変形しにくくなる。したがって、差し込まれる方の凹部21を異方弾性構造体とした場合と比べて、第1の構造体10と第2の構造体20とを容易に着脱させることができるとともに、連結された第1の構造体10と第2の構造体20とを高い保持力で保持することができる。
【0093】
また、本実施の形態に係る連結構造物1において、凸部11及び凹部21の少なくとも一方を構成する異方弾性構造体は、周期構造として一次元周期構造を持つ多層体であり、1種類の材料によって構成されている。
【0094】
このような一次元周期構造である異方弾性構造体は、3D樹脂プリンタで簡単に作製することができる。つまり、樹脂の積層方向とこれに直交する方向とで異方弾性を有する異方弾性構造体である凸部11及び/又は凹部21を、3D樹脂プリンタによって容易に作製することができる。
【0095】
また、本実施の形態に係る連結構造物1において、第1の構造体10は、凸部11を複数有する。同様に、第2の構造体20も凹部21を複数有する。
【0096】
この構成により、凸部11と凹部21との嵌め込み箇所が多くなるので、第1の構造体10が第2の構造体20から意図せずに外れてしまうことを軽減できる。つまり、連結構造物1の保持性能を向上させることができる。
【0097】
一方、第1の構造体10の凸部11は、1つのみであってもよい。同様に、第2の構造体20の凹部21も1つのみであってもよい。
【0098】
この構成により、凸部11と凹部21との嵌め込み箇所が最小限の1個のみとなるので、凸部11と凹部21との嵌め込み作業が容易になる。
【0099】
また、第1の構造体10の凸部11と第2の構造体20の凹部21が1つずつである場合(つまり、第1の構造体10と第2の構造体20との連結箇所が1箇所のみの場合)において、凸部11を凹部21に嵌め込んで第1の構造体10と第2の構造体20とを連結した後に、連結構造物1は、第1の構造体10が凸部11と凹部21との嵌め込み箇所の中心(嵌め込み中心)を軸として回転するように構成されていてもよい。
【0100】
この構成により、第1の構造体10と第2の構造体20とを連結した後でも、第1の構造体10及び第2の構造体20が水平回転するので、第1の構造体10の回転方向に対する位置合わせを容易に行うことができる。なお、凸部11を凹部21に嵌め込んだ状態で第1の構造体10を回転させるには、凸部11及び凹部21の形状は、球状又は円柱であるとよい。
【0101】
また、第1の構造体10が回転する場合、第1の構造体10の水平回転を止める回転防止機構(ストッパ)が第1の構造体10及び第2の構造体20の少なくとも一方に設けられているとよい。回転防止機構としては、一対のマグネットによる磁気的ストッパ、又は、レールや突起等を用いた機械的ストッパが考えられる。
【0102】
この構成により、第1の構造体10が回転し続けることを止めることができるので、第1の構造体10を第2の構造体20に連結させた後に、第1の構造体10がぐらつくことを抑制できる。また、回転防止機構を設けることで、第1の構造体10と第2の構造体20との位置合わせを容易に行うことができる。
【0103】
一方、第1の構造体10の凸部11及び第2の構造体20の凹部21が1つのみの場合であっても、凸部11を凹部21に嵌め込んで第1の構造体10と第2の構造体20とを連結させた後に、第1の構造体10が凸部11と凹部21との嵌め込み箇所の中心(嵌め込み中心)を軸として回転できないようになっていてもよい。
【0104】
この構成により、第1の構造体10と第2の構造体20とを連結させた後は第1の構造体10が水平回転しないので、嵌め込み箇所が1箇所であるにもかかわらず、第1の構造体10が連結後にぐらつくことを抑制できる。
【0105】
また、本実施の形態に係る連結構造物1において、嵌め込み方向における第1の構造体10の厚さは、0.1mm以上3.0cm未満である。
【0106】
この構成により、第1の構造体10を薄くすることができるので、広い空間を確保することができる連結構造物1を実現することができる。
【0107】
この場合、さらに、第1の構造体10と第2の構造体20とが連結された状態において、嵌め込み方向における連結構造物1の厚さは、0.5cm以上10cm未満であるとよい。
【0108】
この構成により、第1の構造体10と第2の構造体20とが連結された状態でも、連結構造物1の総厚みを薄くすることができるので、広い空間を確保することができる連結構造物1を実現することができる。
【0109】
また、本実施の形態に係る連結構造物1は、着脱性能にも保持性能にも優れているので、リフォームに適した建材として用いることができる。この場合、連結構造物1は、床材に限らず、壁材(内壁材、外壁材)又は天井のような重力の影響を受ける建材にも利用することができる。
【0110】
しかも、本実施の形態に係る連結構造物1では、第1の構造体10及び第2の構造体20の一方を他方に容易に取り付けたり他方から容易に取り外したりできるので、連結構造物1を容易にリペアしたりリファービッシュしたりすることもできる。
【0111】
また、連結構造物1における第1の構造体10及び第2の構造体20の一方を他方に容易に取り付けたり他方から容易に取り外したりできるので、本発明は、連結構造物1を利用又は再利用することで装飾を行う装飾方法として実現することもできる。例えば、店舗のショーウインドウ又はショーケース等の建材として連結構造物1を用いることで、第1の構造体10及び第2の構造体20のうちの表側に位置する表側部材を裏側に位置する裏側部材から取り外すだけで、第1の構造体10及び第2の構造体20のうちの表側部材だけを簡単に交換してすることができる。これにより、模様替え等の装飾を簡単に行うことができる。
【0112】
さらに、本実施の形態における連結構造物1においては、第1の構造体10及び第2の構造体20の一方を他方に容易に取り付けたり他方から容易に取り外したりできるので、ロボット等を利用して自動化を図ったり工数を削減したりできるので、人手不足を解消できる装飾方法を実現することもできる。
【0113】
しかも、第1の構造体10と第2の構造体20との取り付け又は取り外しには接着剤が不要になるので、第1の構造体10及び/又は第2の構造体20を容易にリサイクルしたりリユースしたりすることができる。これにより、環境負荷が少なく環境にやさしい装飾方法を実現することができる。
【0114】
この場合、この装飾方法において、連結構造物1を利用することでリフォームを行ってもよい。つまり、本発明に係る装飾方法は、連結構造物1を用いた住宅等のリフォーム方法として実現することもできる。
【0115】
これにより、自動化又は工数削減に有利で、また、人手不足を解消するだけでなく環境にもやさしいリフォーム方法を実現することができる。したがって、住宅等に関する、少子超高齢社会への対応、働き方改革又は環境配慮等の昨今の社会問題をまとめて緩和できる方法を実現できる。
【0116】
なお、上記装飾方法については、以下の実施の形態にも適用することができる。
【0117】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る連結構造物1Bについて、図9を用いて説明する。図9は、実施の形態2に係る連結構造物1Bにおいて、第1の構造体10Bと第2の構造体20Bとを連結するときの様子を示す断面図である。
【0118】
上記実施の形態1に係る連結構造物1では、第1の構造体10及び第2の構造体20の各々は、一つの部材のみで構成されていたが、図9に示すように、本実施の形態に係る連結構造物1Bでは、第1の構造体10B及び第2の構造体20Bの各々は、複数の部材で構成されている。具体的には、第1の構造体10Bは、第1の本体層10aと、第1の本体層10aに積層された第1の連結層10bとを有しており、第2の構造体20Bは、第2の本体層20aと、第2の本体層20aに積層された第2の連結層20bとを有している。
【0119】
第1の本体層10aは、例えば、第1の連結層10bを支持する基板である。同様に、第2の本体層20aは、例えば、第2の連結層20bを支持する基板である。第1の本体層10a及び第2の本体層20aは、剛性を有するとよい。また、第1の本体層10a及び第2の本体層20aは、しなることができる素材及び形状で形成されているとよい。
【0120】
第1の本体層10a及び第2の本体層20aの一方又は両方は、機能性を有する機能層であってもよい。機能層としては、防音性を有する防音シート、防水性を有する防水シート、防汚性を有する防汚シート、耐火性を有する耐火シート、又は、各種センサを有するセンサシート等が用いられる。
【0121】
なお、第1の本体層10a及び第2の本体層20aの一方のみが機能層である場合、第1の構造体10B及び第2の構造体20Bは、どちらが外側(表側)になってもよい。例えば、第1の構造体10Bの第1の本体層10aのみが機能層である場合、第1の構造体10Bが内側(裏側)で第2の構造体20Bが外側(表側)となるように連結構造物1Bを用いてもよいし、第1の構造体10Bが外側で第2の構造体20Bが内側となるように連結構造物1Bを用いてもよい。
【0122】
また、第1の本体層10a及び第2の本体層20aの一方又は両方は、意匠性を有する意匠層であってもよい。意匠層としては、木目調や絵柄等の色彩や模様が付されたデザインシート等が用いられる。
【0123】
なお、第1の本体層10a及び第2の本体層20aの一方のみが意匠層である場合、第1の構造体10B及び第2の構造体20Bは、意匠層を有する方が外側(表側)になっているとよい。例えば、第1の構造体10Bの第1の本体層10aのみが意匠層である場合、第1の構造体10Bが外側(表側)で第2の構造体20Bが内側(裏側)となるように連結構造物1Bを用いるとよい。
【0124】
また、第1の本体層10a及び第2の本体層20aの一方が機能層で、第1の本体層10a及び第2の本体層20aの他方が意匠層であってもよい。この場合、連結構造物1Bを建材として用いる場合、第1の構造体10B及び第2の構造体20Bのうち機能層を有する方を内側(裏側)とし、第1の構造体10B及び第2の構造体20Bのうち意匠層を有する方を外側(表側)となるように連結構造物1Bを用いるとよい。
【0125】
なお、第1の本体層10a及び第2の本体層20aは、機能層及び意匠層を兼用してもよい。
【0126】
また、第1の本体層10aは、機能層及び意匠層ではなく、第1の連結層10bを支持する支持層であってもよい。同様に、第2の本体層20aは、機能層及び意匠層ではなく、第2の連結層20bを支持する支持層であってもよい。支持層としては、剛性を有する基板を用いることができる。なお、第1の本体層10a及び第2の本体層20aが支持層である場合であっても、第1の本体層10a及び第2の本体層20aは、機能層又は意匠層を兼用してもよい。
【0127】
このように構成される第1の本体層10a及び第2の本体層20aの基材は、異方弾性を有する異方弾性構造体ではなく、例えば、等方弾性を有する等方弾性構造体である。例えば、第1の本体層10a及び第2の本体層20aを構成する基材は、樹脂製、金属製又は木製等であるが、これに限らない。なお、第1の本体層10a及び第2の本体層20aを構成する基材の一方又は両方は、3Dプリンタ等で形成された異方弾性構造体であってもよい。
【0128】
第1の構造体10Bの第1の連結層10bは、第1の構造体10Bにおいて、第2の構造体20Bの第2の連結層20bと連結する部分である。第1の連結層10bには、第1の嵌め込み部として1つ又は複数の凸部11が設けられている。
【0129】
第2の構造体20Bの第2の連結層20bは、第2の構造体20Bにおいて、第1の構造体10Bの第1の連結層10bに連結する部分である。第2の連結層20bには、第2の嵌め込み部として1つ又は複数の凹部21が設けられている。
【0130】
第1の連結層10b及び第2の連結層20bは、異方弾性を有する異方弾性構造体である。例えば、第1の連結層10b及び第2の連結層20bは、一方向のみに周期的に繰り返された繰り返し構造を有する一次元周期構造であり、3D樹脂プリンタによって形成されている。この場合、第1の連結層10b及び第2の連結層20bは、複数の樹脂層が積層されることで複数の樹脂層が周期的に繰り返された周期構造を有する。このように、第1の連結層10b及び第2の連結層20bを3D樹脂プリンタによって形成することで、上述したように、樹脂の積層方向とこの積層方向に直交する方向とで異なる弾性を持つ第1の連結層10b及び第2の連結層20bを形成することができる。そして、異方弾性構造体である第1の連結層10b及び第2の連結層20bは、嵌め込み方向に直交する方向(第2方向)における弾性が、凸部11及び凹部21の嵌め込み方向(第1方向)における弾性よりも大きくなっている。
【0131】
このように、本実施の形態に係る連結構造物1Bは、凸部11(第1の嵌め込み部)が設けられた第1の連結層10bを有する第1の構造体10Bと、凹部21(第2の嵌め込み部)が設けられた第2の連結層20bを有する第2の構造体20Bを備えており、第1の連結層10b及び第2の連結層20bが、周期構造を有し、且つ、方向によって異なる弾性を持つ異方弾性構造体である。そして、異方弾性構造体である第1の連結層10b及び第2の連結層20bは、嵌め込み方向に直交する方向(第2方向)における弾性が、凸部11及び凹部21の嵌め込み方向(第1方向)における弾性よりも大きくなっている。
【0132】
これにより、第1の構造体10Bの凸部11と第2の構造体20Bの凹部21とが、嵌め込み方向に直交する方向(第2方向)には変形しやすく、嵌め込み方向(第1方向)には変形しにくい。これにより、第1の構造体10Bと第2の構造体20Bとを容易に着脱させることができるとともに、連結された第1の構造体10Bと第2の構造体20Bとを高い保持力で保持することができる。したがって、着脱性能及び連結状態の保持性能との両立を図ることができる連結構造物1Bを実現できる。
【0133】
なお、第1の連結層10b及び第2の連結層20bの一方のみが異方弾性構造体であってもよい。この場合、差し込む方の凸部11を有する第1の連結層10bを異方弾性構造体にするとよい。
【0134】
また、図10に示される連結構造体1B’のように、第1の構造体10B’の凸部11が、異方弾性構造体である第1の連結層10b’そのものであってもよい。つまり、第1の構造体10B’の主面12が第1の本体層10aの主面であって、第1の本体層10aの主面に、異方弾性構造体である凸部11が設けられた構成であってもよい。このように、第1の構造体10B’において、凸部11のみが異方弾性構造体であってもよい。このような構成の連結構造体1B’は、特に空間インフラコネクタとして有用であり、第1の連結構造体10B’を着脱可能なコネクタとして用いて建材に付与することで、非住宅の簡易エンジニアリングを実現することができる。
【0135】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3に係る連結構造物1Cについて、図11を用いて説明する。図11は、実施の形態3に係る連結構造物1Cにおいて、第1の構造体10Cと第2の構造体20Cと第3の構造体30Cとを連結するときの様子を示す断面図である。
【0136】
上記実施の形態1に係る連結構造物1は、第1の構造体10と第2の構造体20との2つの構造体によって構成されていたが、本実施の形態に係る連結構造物1Cは、第1の構造体10Cと第2の構造体20Cと第3の構造体30Cとの3つの構造体によって構成されている。つまり、本実施の形態に係る連結構造物1Cは、第1の構造体10Cと第2の構造体20Cと第3の構造体30Cとが着脱可能に連結された構成になっている。
【0137】
具体的には、本実施の形態に係る連結構造物1Cは、第1の構造体10Cが第2の構造体20Cと第3の構造体30Cとの間に挟まれた構成になっている。そして、第1の構造体10Cと第2の構造体20Cとが着脱可能に連結されるように構成され、第1の構造体10Cと第3の構造体30Cとが着脱可能に連結されるように構成されている。つまり、第2の構造体20Cと第3の構造体30Cとの間に位置する第1の構造体10Cは、第2の構造体20Cと第3の構造体30Cとの両方に対して着脱可能になっている。
【0138】
したがって、第1の構造体10Cは、第1の嵌め込み部だけではなく、第3の嵌め込み部として少なくとも1つの凹部13を有する。本実施の形態において、第1の構造体10Cは、複数の凹部13を有する。複数の凹部13は、同じ形状である。
【0139】
複数の凹部13の各々は、第1の構造体10Cの主面12に背向する主面14から窪むように形成された有底の穴である。本実施の形態において、凹部13は、第2の構造体20Cの凹部21と同じ形状及び同じ大きさである。
【0140】
また、連結構造物1Cは、上記のように、第1の構造体10Cと第2の構造体20Cとに加えて、第3の構造体30Cを備えている。
【0141】
第3の構造体30Cは、第1の構造体10Cの凹部13(第3の嵌め込み部)に着脱可能に嵌り合う第4の嵌め込み部として少なくとも1つの凸部31を有する。本実施の形態において、第3の構造体30Cは、複数の凸部31を有する。複数の凸部31は、同じ形状である。
【0142】
複数の凸部31の各々は、第3の構造体30Cの主面32から突出するように形成された突起である。本実施の形態において、凸部31は、第1の構造体10Cの凸部11と同じ形状及び同じ大きさである。
【0143】
第3の構造体30Cは、しなることができる素材及び形状で形成されているとよい。これにより、第3の構造体30Cと第1の構造体10Cとの着脱性能が向上する。例えば、第3の構造体30Cは、可撓性を有するシートとすることができる。一例として、第3の構造体30Cの厚さは、0.1mm以上3.0cm未満である。
【0144】
また、第3の構造体30Cは、剛性を持つ剛体であるとよい。さらに、第3の構造体30Cは、第1の構造体10Cを支持する支持体であるとよい。これにより、外力等の応力が連結構造物1Cに加わっても連結構造物1Cが変形することを抑制できる。したがって、応力に対して変形しにくい連結構造物1Cを実現できる。
【0145】
さらに、本実施の形態における連結構造物1Cでは、第1の構造体10C、第2の構造体20C及び第3の構造体30Cの各々は、複数の部材で構成されている。
【0146】
具体的には、第1の構造体10Cは、第1の本体層10aと、第1の本体層10aの一方側の面に積層された第1の連結層10bと、第1の本体層10aの他方側の面に積層された第3の連結層10cとを有する。
【0147】
第2の構造体20Cは、上記実施の形態2の第2の構造体20Bと同様に、第2の本体層20aと、第2の本体層20aに積層された第2の連結層20bとを有する。具体的には、第2の連結層20bは、第2の本体層20aの第1の構造体10C側の面に積層されている。
【0148】
第3の構造体30Cは、第3の本体層30aと、第3の本体層30aに積層された第4の連結層30bとを有する。具体的には、第4の連結層30bは、第3の本体層30aの第1の構造体10C側の面に積層されている。
【0149】
第3の本体層30aは、第4の連結層30bを支持する基板である。この場合、第3の本体層30aは、剛性を有するシートである。第3の本体層30aは、しなることができる素材及び形状で形成されているとよい。
【0150】
第3の本体層30aを構成する基材は、第1の本体層10a及び第2の本体層20aと同様に、異方弾性を有する異方弾性構造体ではなく、例えば、等方弾性を有する等方弾性構造体である。一例として、第3の本体層30aを構成する基材は、樹脂製、金属製又は木製等であるが、これに限らない。なお、第3の本体層30aを構成する基材は、3Dプリンタ等で形成された異方弾性構造体であってもよい。
【0151】
また、第3の本体層30aは、第1の本体層10a及び第2の本体層20aと同様に、機能性を有する機能層であってもよいし、意匠性を有する意匠層であってもよいし、機能層と意匠層とを兼用する層であってもよい。
【0152】
本実施の形態において、連結構造物1Cは、第2の構造体20Cが外側(表側)となるように配置される建材である。この場合、例えば、最も外側に位置する第2の構造体20Cを木目調シート等の意匠層とし、最も内側に位置する第3の構造体30Cを支持体とし、真ん中の第1の構造体10Cを機能層にするとよい。なお、第1の構造体10Cと第2の構造体20Cと第3の構造体30Cとにおいて、機能層及び意匠層の組み合わせは、これに限るものではない。
【0153】
第1の構造体10Cの第1の連結層10bは、上記実施の形態2と同様に、第1の構造体10Cにおいて、第2の構造体20Cの第2の連結層20bに連結する部分である。第1の連結層10bには、第1の嵌め込み部として1つ又は複数の凸部11が設けられている。
【0154】
また、第1の構造体10Cの第3の連結層10cは、第1の構造体10Cにおいて、第3の構造体30Cの第4の連結層30bに連結する部分である。第3の連結層10cには、第3の嵌め込み部として1つ又は複数の凹部13が設けられている。
【0155】
第2の構造体20Cの第2の連結層20bは、上記実施の形態2と同様に、第2の構造体20Cにおいて、第1の構造体10Cにおける第1の連結層10bに連結する部分である。第2の連結層20bには、第2の嵌め込み部として1つ又は複数の凹部21が設けられている。
【0156】
第3の構造体30Cの第4の連結層30bは、第3の構造体30Cにおいて、第1の構造体10Cにおける第3の連結層10cに連結する部分である。第2の連結層20bには、第4の嵌め込み部として1つ又は複数の凸部31が設けられている。
【0157】
第1の連結層10b、第2の連結層20b、第3の連結層10c及び第4の連結層30bは、異方弾性を有する異方弾性構造体である。例えば、第1の連結層10b及び第2の連結層20bは、一方向のみに周期的に繰り返された繰り返し構造を有する一次元周期構造であり、3D樹脂プリンタによって形成されている。この場合、第1の連結層10b、第2の連結層20b、第3の連結層10c及び第4の連結層30bは、複数の樹脂層が積層されることで複数の樹脂層が周期的に繰り返された周期構造を有する。このように、第1の連結層10b、第2の連結層20b、第3の連結層10c及び第4の連結層30bを3D樹脂プリンタによって形成することで、上述したように、樹脂の積層方向とこの積層方向に直交する方向とで異なる弾性を持つ、第1の連結層10b、第2の連結層20b、第3の連結層10c及び第4の連結層30bを形成することができる。そして、異方弾性構造体である第1の連結層10bと第2の連結層20bと第3の連結層10cと第4の連結層30bとは、嵌め込み方向に直交する方向(第2方向)における弾性が、凸部11及び凹部21の嵌め込み方向(第1方向)における弾性よりも大きくなっている。
【0158】
このように、本実施の形態に係る連結構造物1Cは、凸部11(第1の嵌め込み部)が設けられた第1の連結層10b及び凹部13(第3の嵌め込み部)が設けられた第3の連結層10cを有する第1の構造体10Cと、凹部21(第2の嵌め込み部)が設けられた第2の連結層20bを有する第2の構造体20Cと、凸部31(第4嵌め込み部)が設けられた第4の連結層30bを有する第3の構造体30Cと備えており、第1の連結層10b、第2の連結層20b、第3の連結層10c及び第4の連結層30bが、周期構造を有し、且つ、方向によって異なる弾性を持つ異方弾性構造体である。そして、異方弾性構造体である第1の連結層10bと第2の連結層20bと第3の連結層10cと第4の連結層30bとは、嵌め込み方向に直交する方向(第2方向)における弾性が、凸部11及び凹部21の嵌め込み方向(第1方向)における弾性よりも大きくなっている。
【0159】
これにより、第1の構造体10Cの凸部11及び凹部13と第2の構造体20Cの凹部21と第3の構造体30Cの凸部31とが、嵌め込み方向に直交する方向(第2方向)には変形しやすく、嵌め込み方向(第1方向)には変形しにくい。これにより、第1の構造体10Cと第2の構造体20Cとを容易に着脱させることができるとともに、第1の構造体10Cと第3の構造体30Cとを容易に着脱させることができる。また、連結された第1の構造体10Cと第2の構造体20Cとを高い保持力で保持することができるとともに、連結された第1の構造体10Cと第3の構造体30Cとを高い保持力で保持することができる。したがって、着脱性能及び連結状態の保持性能との両立を図ることができる連結構造物1Cを実現できる。
【0160】
(変形例)
以上、本発明について実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記実施の形態1~3に限定されるものではない。
【0161】
例えば、上記実施の形態1~3において、凸部11と凹部21の周辺構造とを構成する異方弾性構造体は、樹脂材料によって構成されていたが、これに限らない。また、上記実施の形態1~3において、凸部11と凹部21の周辺構造とを構成する異方弾性構造体は、3Dプリンタによって作製されていたが、これに限らない。具体的には、凸部11と凹部21の周辺構造とは、樹脂材料以外の材料によって構成されていてもよいし、3Dプリンタ以外の装置で作製されてもよい。なお、凹部13及び凸部31についても同様である。
【0162】
また、上記実施の形態1~3において、凸部11と凹部21の周辺構造とを構成する異方弾性構造体は、周期構造として一次元周期構造を持つ多層体であり、且つ、1種類の材料によって構成されていたが、これに限らない。
【0163】
例えば、図12に示すように、凸部11Dを構成する異方弾性構造体は、周期構造として一次元周期構造を持つ多層体であり、且つ、複数種類の材料によって構成されていてもよい。
【0164】
図12における凸部11Dは、弾性率が異なる複数種類の材料によって構成された異方弾性構造体である。具体的には、凸部11Dは、弾性率が高い第1の材料である高弾性率材料によって構成された第1の層11aと、弾性率が低い第2の材料である低弾性率材料によって構成された第2の層11bとが交互に繰り返して積層された周期構造である。一例として、第1の層11aを構成する高弾性率材料は、ポリカーボネート樹脂であり、第2の層11bを構成する低弾性率材料は、熱可塑性ポリウレタン樹脂である。
【0165】
このように、弾性率が異なる(つまり弾性が異なる)材料を組み合わせることで、異方弾性構造体における弾性の異方性の設計が容易になり、用途に応じて弾性の異方性を容易に制御することができる。
【0166】
また、凸部11を複数の材料によって構成する場合、凸部11の全体において、高弾性率材料と低弾性率材料とが混在した一次元周期構造体からなる異方弾性構造体であってもよい。
【0167】
例えば、図13に示される凸部11Eのように、高弾性率材料の割合が高い第1の層11xと低弾性率材料の割合が高い第2の層11yとが交互に繰り返して積層された異方弾性構造体であってもよい。第1の層11x及び第2の層11yは、いずれも高弾性率材料と低弾性率材料とを含有するが、第1の層11xは、高弾性率材料の含有率が高い高弾性率材料リッチ層であり、第2の層11yは、低弾性率材料の含有率が高い低弾性率材料リッチ層である。また、第1の層11xと第2の層11yとの境界は、高弾性率材料と低弾性率材料との含有率がグラデーション状に徐々に変化する連続相になっている。つまり、凸部11Eは、層境界に連続相を有する異方弾性構造体である。
【0168】
また、このような連続相を有する凸部は、1種類の材料によって構成されていてもよい。この場合、1種類の材料によって構成された連続相を有する凸部は、積層方向に弾性率が変化しないメイン層が複数繰り返して積層された構造であって、メイン層とメイン層との間にメイン層の弾性率とは異なる平均弾性率を有する連続相が介在する異方弾性構造体であってもよい。つまり、凸部は、メイン層と連続相とが交互に複数積層された異方弾性構造体であってもよい。
【0169】
なお、図12及び図13に示される一次元周期構造体は、凸部11に適用する場合に限らず、凹部21の周辺構造に適用してもよい。また、図12及び図13に示す一次元周期構造体は、凸部11及び凹部21の周辺構造に適用するだけではなく、凹部13の周辺構造及び凸部31に適用してもよい。
【0170】
また、上記実施の形態1~3において、凸部11と凹部21の周辺構造とを構成する異方弾性構造体は、周期構造として一次元周期構造を持つ一次元周期構造体であったが、これに限らない。
【0171】
具体的には、凸部11と凹部21の周辺構造とを構成する異方弾性構造体は、周期構造として二次元周期構造を持つ二次元周期構造体であってもよい。このような二次元周期構造体としては、例えば、図14に示される凸部11Fのように、凸部11Fを構成する異方弾性構造体は、高弾性率材料からなる第1の部材11mと低弾性率材料からなる第2の部材11nとが井桁状に嵌め合わされた二次元周期構造体であってもよい。一例として、第1の部材11mを構成する高弾性率材料は、ポリカーボネート樹脂であり、第2の部材11nを構成する低弾性率材料は、熱可塑性ポリウレタン樹脂である。このような構造の二次元周期構造体は、3Dプリンタで作製することができるが、材料押し出し成型法等でも作製することができる。なお、図14に示される二次元周期構造体は、凸部だけではなく、凹部の周辺構造にも適用することができる。
【0172】
また、図示しないが、凸部及び凹部の周辺構造を構成する異方弾性構造体は、周期構造として三次元周期構造を持つ三次元周期構造体、又は、周期構造として格子が周期的に並んだラティス構造を持つラティス構造体であってもよい。このような三次元周期構造体及びラティス構造体も3Dプリンタで作製することができる。なお、凸部及び凹部の周辺構造を構成する異方弾性構造体がラティス構造体である場合、ラティス構造を構成する格子の密度を変化させることで、方向によって弾性率を異ならせることができる。つまり、方向によって弾性を異ならせることができる。
【0173】
また、上記実施の形態1~3において、図示しないが、複数の凸部11は、全て同じ形状であったが、これに限らない。具体的には、複数の凸部11には、2種類以上の異なる形状が含まれていてもよい。例えば、複数の凸部11には、球状の凸部と、四角柱の凸部とが含まれていてもよい。このことは、複数の凹部13、複数の凹部21及び複数の凸部31についても同様である。
【0174】
また、上記実施の形態1において、第1の構造体10の同一面上には、第1の嵌め込み部として凸部11(オス構造)のみが設けられ、第2の構造体20の同一面上には、第2の嵌め込み部として凹部21(メス構造)のみが設けられていたが、これに限らない。例えば、第1の構造体10の同一面上に、第1の嵌め込み部として凸部及び凹部の両方が設けられているとともに、第2の構造体20の同一面上に、第2の嵌め込み部として凹部及び凸部の両方が設けられていてもよい。この場合、第1の構造体10に設けられた凸部と第2の構造体20に設けられた凹部とが着脱可能に嵌り合うとともに、第1の構造体10に設けられた凹部と第2の構造体20に設けられた凸部とが着脱可能に嵌り合うように構成されていればよい。このように、1つの構造体の同一面上には、凸部と凹部とが混在していてもよい。なお、1つの構造体の同一面上に凸部と凹部とが混在する構成は、上記実施の形態1だけではなく、上記実施の形態2、3に適用してもよい。
【0175】
また、上記実施の形態1、2において、本発明は、第1の構造体と第2の構造体とを備える連結構造物であったが、これに限らない。例えば、本発明は、第1の構造体と第2の構造体とを備える連結構造体セットであってもよい。つまり、本発明は、第1の構造体と第2の構造体とが連結された状態の連結構造物に適用されるだけではなく、第1の構造体と第2の構造体とが分離された状態も含む連結構造体セットに適用されてもよい。なお、このことは、上記実施の形態3にも適用することができる。つまり、本発明は、第1の構造体と第2の構造体と第3の構造体とを備える連結構造体セットであってもよい。
【0176】
また、本発明は、上記実施の形態1、2のような2つの構造体又は上記実施の形態3のような3つの構造体で構成される場合に限るものではなく、互いに着脱可能に連結できれば4つ以上の構造体が積層された連結構造物又は連結構造体セットであってもよい。
【0177】
また、上記実施の形態1~3において、連結構造物は、建築分野の建材に適用する場合について説明したが、これに限らない。本発明の連結構造物は、建材以外の用途に適用してもよい。
【0178】
なお、その他、各実施の形態及び変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態及び変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0179】
1、1A、1B、1C 連結構造物
10、10A、10B、10C 第1の構造体
10b 第1の連結層
11、11A、11D、11E、11F 凸部(第1の嵌め込み部)
11a、11x 第1の層
11b、11y 第2の層
11m 第1の部材
11n 第2の部材
12、14、22、32 主面
13 凹部(第3の嵌め込み部)
20、20A、20B、20C 第2の構造体
20b 第2の連結層
21、21A 凹部(第2の嵌め込み部)
30C 第3の構造体
31 凸部(第4の嵌め込み部)
図1
図2
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