(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/134 20100101AFI20241213BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20241213BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20241213BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241213BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20241213BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20241213BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241213BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20241213BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/62 Z
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/587
H01M4/38 Z
H01M4/36 E
H01M10/0585
(21)【出願番号】P 2022516856
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2021005349
(87)【国際公開番号】W WO2021215086
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2020077678
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】峯谷 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】松村 忠朗
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-160407(JP,A)
【文献】特開2012-022794(JP,A)
【文献】特開2008-305746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/134
H01M 4/62
H01M 10/0562
H01M 10/052
H01M 4/587
H01M 4/38
H01M 4/36
H01M 10/0585
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、
負極と、
前記正極と前記負極との間に位置する固体電解質層と、
を備え、
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体と前記固体電解質層との間に位置する負極活物質層と、を有し、
前記負極活物質層は、第1活物質層と、前記第1活物質層と前記固体電解質層との間に位置する第2活物質層と、を含み、
前記第1活物質層は、Liと合金化する材料を第1活物質として含み、
前記第2活物質層は、第2活物質および固体電解質を含み、かつ、Liと合金化する材料を含ま
ず、
前記第1活物質層は、前記第2活物質層よりも薄い、
電池。
【請求項2】
前記第2活物質は、炭素材料を含む、
請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記炭素材料は、グラファイトを含む、
請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記第1活物質は、シリコン、スズ、およびチタンからなる群より選択される少なくとも1つを含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の電池。
【請求項5】
前記第1活物質層は、前記第2活物質を含まない、
請求項1から
4のいずれか一項に記載の電池。
【請求項6】
前記第1活物質層は、前記固体電解質を含まない、
請求項
5に記載の電池。
【請求項7】
前記固体電解質は、リチウムイオン伝導性を有する、
請求項1から
6のいずれか一項に記載の電池。
【請求項8】
前記第1活物質層の厚さがT1であり、前記第2活物質層の厚さがT2であるとき、比率T1/T2は、1/2から1/20の範囲にある、
請求項1から7のいずれか一項に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の負極には、負極活物質として主に炭素材料が使用されている。より高い電池容量を得るために、シリコンなどの合金系材料を負極活物質として使用することが検討されている。
【0003】
特許文献1には、Li、PおよびSを含む固体電解質と、負極活物質としての炭素材料と、負極活物質としての合金系材料との混合材料を負極活物質層に用いた全固体電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術においては、エネルギー密度と安全性とを両立することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
正極と、
負極と、
前記正極と前記負極との間に位置する固体電解質層と、
を備え、
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体と前記固体電解質層との間に位置する負極活物質層と、を有し、
前記負極活物質層は、第1活物質層と、前記第1活物質層と前記固体電解質層との間に位置する第2活物質層と、を含み、
前記第1活物質層は、Liと合金化する材料を第1活物質として含み、
前記第2活物質層は、第2活物質および固体電解質を含み、かつ、Liと合金化する材料を含まない、
電池を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、エネルギー密度と安全性とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態における電池の概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、負極の詳細な構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、変形例1における負極の構成を示す断面図である。
【
図4】
図4は、変形例2における負極の構成を示す断面図である。
【
図5】
図5は、変形例3における負極の構成を示す断面図である。
【
図6】
図6は、比較例1における負極の構成を示す断面図である。
【
図7】
図7は、比較例2における負極の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見)
合金系活物質が負極に含まれている場合、リチウムイオンの挿入反応および脱離反応により合金系活物質が膨張および収縮して負極の体積が大きく変化する。合金系活物質の粒子が大きい場合、膨張に伴って合金系活物質の粒子が絶縁層である固体電解質層を貫通する可能性もある。この場合、電池の機能が消失する。
【0010】
特に、固体電池においては、固体電解質層および負極活物質層が緻密な構造を有するので、固体電池には負極活物質の膨張を吸収するスペースが殆どない。固体電池には、負極活物質の膨張に関して、液体電解質を用いた電池よりも厳しい制約が課される。
【0011】
上記の問題を解決する1つの方法として、絶縁層である固体電解質層の厚さを増やすことが考えられる。しかし、固体電解質層は、電池のエネルギー密度に寄与しないので、固体電解質層の厚さを増やすと電池のエネルギー密度が低下する。
【0012】
このように、合金系活物質を用いた電池において、エネルギー密度と安全性との間には、トレードオフの関係がある。そのため、エネルギー密度と安全性とを両立させることが望まれている。
【0013】
(本開示に係る一態様の概要)
本開示の第1態様に係る電池は、
正極と、
負極と、
前記正極と前記負極との間に位置する固体電解質層と、
を備え、
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体と前記固体電解質層との間に位置する負極活物質層と、を有し、
前記負極活物質層は、第1活物質層と、前記第1活物質層と前記固体電解質層との間に位置する第2活物質層と、を含み、
前記第1活物質層は、Liと合金化する材料を第1活物質として含み、
前記第2活物質層は、第2活物質および固体電解質を含み、かつ、Liと合金化する材料を含まない。
【0014】
第1態様によれば、第2活物質層が第1活物質層と電解質層との間の緩衝層として機能する。その結果、第1活物質が膨張して電解質層を貫通することを防止できる。また、第1活物質層には、Liと合金化する材料が含まれているので、電池のエネルギー密度が高まる。よって、本実施の形態によれば、エネルギー密度と安全性とを両立させることができる。
【0015】
本開示の第2態様において、例えば、第1態様に係る電池では、前記第2活物質は、炭素材料を含んでいてもよい。充電時における炭素材料の膨張率は比較的小さいので、炭素材料を第2活物質として使用すれば、電池の安全性を高めることができる。
【0016】
本開示の第3態様において、例えば、第2態様に係る電池では、前記炭素材料は、グラファイトを含んでいてもよい。グラファイトは、合金系活物質と比較して、リチウムイオンの挿入反応時の膨張率が小さいため、第2活物質として適している。
【0017】
本開示の第4態様において、例えば、第1から第3態様のいずれか1つに係る電池では、前記第1活物質は、シリコン、スズ、およびチタンからなる群より選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。これらの材料を第1活物質として使用すれば、電池のエネルギー密度を高めることができる。
【0018】
本開示の第5態様において、例えば、第1から第4態様のいずれか1つに係る電池では、前記第1活物質層は、前記第2活物質層よりも薄くてもよい。このような構成によれば、電池の安全性をさらに高めることができる。
【0019】
本開示の第6態様において、例えば、第1から第5態様のいずれか1つに係る電池では、前記第1活物質層は、前記第2活物質を含まなくてもよい。このような構成によれば、第1活物質層の放電容量を十分に確保することができる。
【0020】
本開示の第7態様において、例えば、第6態様に係る電池では、前記第1活物質層は、前記固体電解質を含まなくてもよい。このような構成によれば、第1活物質層の放電容量を十分に確保することができる。
【0021】
本開示の第8態様において、例えば、第1から第7態様のいずれか1つに係る電池では、前記固体電解質は、リチウムイオン伝導性を有していてもよい。このような構成によれば、負極活物質層のリチウムイオン伝導性を高めることができる。
【0022】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されない。
【0023】
(実施の形態)
図1は、実施の形態における電池100の概略構成を示す断面図である。電池100は、正極220と、負極210と、電解質層13と、を備える。
【0024】
正極220は、正極活物質層17および正極集電体18を有する。正極活物質層17は、電解質層13と正極集電体18との間に配置されている。正極活物質層17は、正極集電体18に電気的に接触している。
【0025】
正極集電体18は、正極活物質層17から電力を集める機能を有する部材である。正極集電体18の材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、銅、ニッケルなどが挙げられる。正極集電体18は、アルミニウムまたはアルミニウム合金で作られていてもよい。正極集電体18の寸法、形状などは、電池100の用途に応じて適宜選択されうる。
【0026】
正極活物質層17は、正極活物質と固体電解質とを含む。正極活物質としては、リチウムイオンなどの金属イオンを吸蔵および放出する特性を有する材料が用いられうる。正極活物質としては、リチウム含有遷移金属酸化物、遷移金属フッ化物、ポリアニオン材料、フッ素化ポリアニオン材料、遷移金属硫化物、遷移金属オキシ硫化物、遷移金属オキシ窒化物などが用いられうる。特に、正極活物質として、リチウム含有遷移金属酸化物を用いた場合には、製造コストを安くでき、平均放電電圧を高めることができる。
【0027】
正極活物質は、Liと、Mn、Co、NiおよびAlからなる群より選択される少なくとも1種の元素とを含んでいてもよい。そのような材料としては、Li(NiCoAl)O2、Li(NiCoMn)O2、LiCoO2などが挙げられる。
【0028】
正極活物質は、例えば、粒子の形状を有する。正極活物質の粒子の形状は特に限定されない。正極活物質の粒子の形状は、針状、球状、楕円球状または鱗片状でありうる。
【0029】
正極活物質の粒子のメジアン径は、0.1μm以上かつ100μm以下であってもよい。正極活物質の粒子のメジアン径が0.1μm以上の場合、正極220において、正極活物質と固体電解質とが、良好な分散状態を形成しうる。この結果、電池100の充放電特性が向上する。正極活物質の粒子のメジアン径が100μm以下の場合、正極活物質の粒子内のリチウム拡散が速くなる。このため、電池100が高出力で動作しうる。
【0030】
正極220の固体電解質としては、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、ハロゲン化物固体電解質、高分子固体電解質および錯体水素化物固体電解質からなる群より選ばれる少なくとも1つを用いてもよい。酸化物固体電解質は、優れた高電位安定性を有する。酸化物固体電解質を用いることで、電池100の充放電効率をより向上させることができる。
【0031】
正極220において、正極活物質と固体電解質との体積比率「v1:100-v1」について、30≦v1≦95が満たされてもよい。30≦v1が満たされる場合、電池100のエネルギー密度が十分に確保される。また、v1≦95が満たされる場合、高出力での動作が可能となる。
【0032】
正極220の厚みは、10μm以上かつ500μm以下であってもよい。正極220の厚みが10μm以上である場合、電池100のエネルギー密度が十分に確保される。正極220の厚みが500μm以下である場合、高出力での動作が可能となる。
【0033】
正極220に含まれた固体電解質の形状が粒子状(例えば、球状)の場合、固体電解質の粒子群のメジアン径は、100μm以下であってもよい。メジアン径が100μm以下の場合、正極活物質と固体電解質とが、正極220において良好な分散状態を形成しうる。このため、電池100の充放電特性が向上する。
【0034】
本明細書において、「メジアン径」は、体積基準の粒度分布における累積体積が50%に等しい場合の粒径を意味する。体積基準の粒度分布は、例えば、レーザー回折式測定装置または画像解析装置により測定される。
【0035】
電解質層13は、正極220と負極210との間に位置している。電解質層13は、電解質を含む層である。電解質は、例えば、固体電解質である。電解質層13は、固体電解質層でありうる。
【0036】
電解質層13は、固体電解質として、ハロゲン化物固体電解質、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、高分子固体電解質および錯体水素化物固体電解質からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0037】
電解質層13は、多層構造を有していてもよい。この場合、負極220に接する層の材料の組成は、正極220に接する層の材料の組成と異なっていてもよい。負極220に接する層は、還元耐性に優れた硫化物固体電解質で作られていてもよい。正極220に接する層は、酸化耐性に優れるハロゲン化物固体電解質で作られていてもよい。
【0038】
電解質層13に含まれた固体電解質は、例えば、粒子の形状を有する。粒子の形状は特に限定されず、例えば、針状、球状または楕円球状である。
【0039】
電解質層13の厚みは、1μm以上かつ300μm以下であってもよい。電解質層13の厚みが1μm以上の場合には、正極220と負極210との間の短絡を確実に防止できる。電解質層13の厚みが300μm以下の場合には、高出力での動作を実現しうる。
【0040】
負極210は、負極活物質層11および負極集電体12を備える。負極活物質層11は、電解質層13と負極集電体12との間に配置されている。負極活物質層11は、負極集電体12に電気的に接触している。
【0041】
負極集電体12は、負極活物質層11から電力を集める機能を有する部材である。負極集電体12の材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、銅、ニッケルなどが挙げられる。負極集電体12は、ニッケルで作られていてもよい。負極集電体12の寸法、形状などは、電池100の用途に応じて適宜選択されうる。
【0042】
図2は、負極210の詳細な構成を示す断面図である。負極活物質層11は、第1活物質層150および第2活物質層160を含む。第2活物質層160は、第1活物質層150と電解質層13との間に位置している。第1活物質層150は、Liと合金化する材料を第1活物質31として含む。第2活物質層160は、第2活物質32および固体電解質33を含み、かつ、Liと合金化する材料を含まない。第1活物質31は、負極集電体12の近傍に偏在している。
【0043】
負極活物質層11が上記構造を有している場合、以下の効果が得られる。すなわち、リチウムイオンの挿入反応の際に第1活物質層150に含まれた第1活物質31が膨張したとしても、Liと合金化する材料を含まない第2活物質層160が第1活物質層150と電解質層13との間の緩衝層として機能する。その結果、第1活物質31が膨張して電解質層13を貫通することを防止できる。また、第1活物質層150には、Liと合金化する材料が含まれているので、電池100のエネルギー密度が高まる。よって、本実施の形態によれば、エネルギー密度と安全性とを両立させることができる。
【0044】
「Liと合金化する材料を含まない」とは、Liと合金化する材料が意図的に添加されていないことを意味する。例えば、第2活物質層160に含まれた活物質の全質量に対してLiと合金化する材料の質量が1%以下であるとき、Liと合金化する材料が第2活物質層160に意図的に添加されていないとみなされる。
【0045】
本実施の形態において、第1活物質層150は、負極集電体12に接している。ただし、第1活物質層150は、負極集電体12から離れていてもよい。第1活物質層150と負極集電体12との間に別の層が設けられていてもよい。第1活物質層150は、第2活物質層160にも接している。ただし、第1活物質層150は、第2活物質層160から離れていてもよい。第1活物質層150と第2活物質層160との間に別の層が設けられていてもよい。第2活物質層160は、電解質層13に接している。
【0046】
第1活物質31および第2活物質32は、ともに、リチウムイオンを吸蔵および放出する特性を有する。第1活物質31の理論容量(単位:mAh/g)は、第2活物質32の理論容量よりも大きい。充電時における第1活物質31の膨張率(体積膨張率)は、充電時における第2活物質32の膨張率よりも大きい。
【0047】
第1活物質31は、例えば、シリコン、スズ、およびチタンからなる群より選択される少なくとも1つを含む。これらは、Liと合金化する材料であり、いずれも炭素材料よりも高い理論容量を有する。これらの材料を第1活物質31として使用すれば、電池100のエネルギー密度を高めることができる。Liと合金化する材料は、典型的には、金属または半金属である。金属または半金属は、単体であってもよい。Liと合金化する材料が単体の金属または半金属であることは必須ではない。Liと合金化する材料は、Liと合金化する元素を含む化合物であってもよい。そのような化合物としては、SiOx(0<x<2)で表される酸化シリコン、SnOまたはSnO2で表される酸化スズなどが挙げられる。
【0048】
第2活物質32は、Liと合金化する材料を除く、炭素材料、金属材料、酸化物、窒化物、錫化合物、珪素化合物およびチタン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つでありうる。LTO(Li4Ti5O12)のような化合物は、第2活物質32として使用可能である。金属材料は、単体の金属であってもよく、合金であってもよい。金属材料としては、リチウム金属が挙げられる。炭素材料としては、グラファイト、コークス、黒鉛化途上炭素、炭素繊維、球状炭素、非晶質炭素などが挙げられる。充電時における炭素材料の膨張率は比較的小さいので、炭素材料を第2活物質32として使用すれば、電池100の安全性を高めることができる。第2活物質32は、典型的には、グラファイトを含む。グラファイトは、合金系活物質と比較して、リチウムイオンの挿入反応時の膨張率が小さいため、第2活物質32として適している。
【0049】
「合金系活物質」は、リチウムと合金化する活物質を意味する。「合金系材料」は、リチウムと合金化する材料を意味する。
【0050】
第1活物質31および第2活物質32は、ともに、粒子の形状を有していてもよい。第1活物質31の粒子および第2活物質32の粒子は、球状、楕円球状、繊維状または鱗片状の形状を有していてもよい。
【0051】
本実施の形態において、第1活物質層150は、第1活物質31および第2活物質32の両方を含んでいる。これにより、充放電に伴う第1活物質層150と第2活物質層160との間の膨張率の差を小さくすることができる。第1活物質層150において、第1活物質31の質量M1に対する第2活物質32の質量M2の比率(M2/M1)は、例えば、0より大きく20以下の範囲にある。第1活物質31の質量M1は、Liと合金化する元素以外の元素(酸素など)を無視した場合の質量である。
【0052】
固体電解質33は、第1活物質層150にも含まれている。このような構成によれば、第1活物質層150のイオン伝導性を向上させることができる。第1活物質層150に含まれた固体電解質の組成は、第2活物質層160に含まれた固体電解質の組成と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0053】
第2活物質層160は、負極活物質として、Liと合金化する材料以外の材料のみを含んでいてもよい。このような構成によれば、電池100の安全性がより高まる。
【0054】
第1活物質層150および第2活物質層160のそれぞれの厚さは特に限定されない。
図2の例によれば、第1活物質層150および第2活物質層160は、例えば、等しい厚さを有する。ただし、第1活物質層150は、第2活物質層160よりも厚くてもよい。第1活物質層150は、第2活物質層160よりも薄くてもよい。
【0055】
第1活物質層150および第2活物質層160のそれぞれの放電容量は特に限定されない。第1活物質層150および第2活物質層160は、例えば、等しい放電容量を有する。
【0056】
固体電解質33は、リチウムイオン伝導性を有する。固体電解質33が負極活物質層11に固体電解質33が含まれていると、負極活物質層11のリチウムイオン伝導性を高めることができる。
【0057】
固体電解質33としては、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、ハロゲン化物固体電解質、高分子固体電解質および錯体水素化物固体電解質からなる群より選ばれる少なくとも1つが使用されうる。
【0058】
硫化物固体電解質としては、Li2S-P2S5、Li2S-SiS2、Li2S-B2S3、Li2S-GeS2、Li3.25Ge0.25P0.75S4、Li10GeP2S12などが用いられうる。これらに、LiX、Li2O、MOq、LipMOqなどが添加されてもよい。ここで、「LiX」における元素Xは、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも1種の元素である。「MOq」および「LipMOq」における元素Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、In、Fe、およびZnからなる群より選択される少なくとも1種の元素である。「MOq」および「LipMOq」におけるpおよびqは、それぞれ独立な自然数である。
【0059】
酸化物固体電解質としては、例えば、LiTi2(PO4)3およびその元素置換体を代表とするNASICON型固体電解質、(LaLi)TiO3系のペロブスカイト型固体電解質、Li14ZnGe4O16、Li4SiO4、LiGeO4およびその元素置換体を代表とするLISICON型固体電解質、Li7La3Zr2O12およびその元素置換体を代表とするガーネット型固体電解質、Li3NおよびそのH置換体、Li3PO4およびそのN置換体、LiBO2、Li3BO3などのLi-B-O化合物を含むベース材料にLi2SO4、Li2CO3などの材料が添加されたガラスまたはガラスセラミックスなどが用いられうる。
【0060】
高分子固体電解質としては、例えば、高分子化合物と、リチウム塩との化合物が用いられうる。高分子化合物はエチレンオキシド構造を有していてもよい。エチレンオキシド構造を有することで、高分子化合物はリチウム塩を多く含有することができるので、イオン導電率をより高めることができる。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiSO3CF3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)(SO2C4F9)、LiC(SO2CF3)3などが使用されうる。リチウム塩として、これらから選択される1種のリチウム塩が単独で使用されてもよいし、これらから選択される2種以上のリチウム塩の混合物が使用されてもよい。
【0061】
錯体水素化物固体電解質としては、例えば、LiBH4-LiI、LiBH4-P2S5などが用いられうる。
【0062】
ハロゲン化物固体電解質は、ハロゲンを含む固体電解質である。ハロゲン化物固体電解質は、例えば、下記の組成式(1)により表される。組成式(4)において、α、β、およびγは、それぞれ独立して、0より大きい値である。Mは、Li以外の金属元素および半金属元素からなる群より選択される少なくとも1つの元素を含む。Xは、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0063】
LiαMβXγ・・・(1)
【0064】
半金属元素は、B、Si、Ge、As、Sb、およびTeを含む。金属元素は、水素を除く周期表1族から12族に含まれる全ての元素、ならびに、B、Si、Ge、As、Sb、Te、C、N、P、O、S、およびSeを除く13族から16族に含まれる全ての元素を含む。金属元素は、ハロゲンまたはハロゲン化合物と無機化合物を形成した際にカチオンとなりうる元素群である。
【0065】
ハロゲン化物固体電解質として、Li3YX6、Li2MgX4、Li2FeX4、Li(Al,Ga,In)X4、Li3(Al,Ga,In)X6などが用いられうる。
【0066】
本開示において、式中の元素を「(Al,Ga,In)」のように表すとき、この表記は、括弧内の元素群より選択される少なくとも1種の元素を示す。すなわち、「(Al,Ga,In)」は、「Al、Ga、およびInからなる群より選択される少なくとも1種」と同義である。他の元素の場合でも同様である。ハロゲン化物固体電解質は、優れたイオン伝導性を示す。
【0067】
固体電解質33は、無機固体電解質であってもよい。無機固体電解質は電気化学的な安定性に優れているので、固体電解質33に適している。無機固体電解質としては、上記したように、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、ハロゲン化物固体電解質および錯体水素化物固体電解質が挙げられる。固体電解質33は、硫化物固体電解質を含んでいてもよく、硫化物固体電解質からなっていてもよい。硫化物固体電解質は還元耐性に優れているので、負極活物質層11に用いられる固体電解質として適している。硫化物固体電解質は柔軟性に富むので、硫化物固体電解質が負極活物質層11に含まれていると、合金系活物質の膨張および収縮を硫化物固体電解質によって吸収できる可能性がある。
【0068】
第1活物質31および第2活物質32は、それぞれ、粒子の形状を有していてもよい。以下において、「負極活物質の粒子」は、第1活物質31の粒子および第2活物質32の粒子の一方または両方を意味する。
【0069】
負極活物質の粒子のメジアン径は、0.1μm以上かつ100μm以下であってもよい。負極活物質の粒子のメジアン径が0.1μm以上である場合、負極210において、負極活物質の粒子と固体電解質とが、良好な分散状態を形成できる。これにより、電池100の充放電特性が向上する。また、負極活物質の粒子のメジアン径が100μm以下である場合、負極活物質の粒子内のリチウム拡散が速くなる。このため、電池100が高出力で動作しうる。
【0070】
負極活物質の粒子のメジアン径は、負極210に含まれた固体電解質33の粒子のメジアン径よりも、大きくてもよい。これにより、負極活物質と固体電解質33との良好な分散状態を形成できる。
【0071】
負極210における負極活物質と固体電解質33との体積比率が「v2:100-v2」で表されるとき、負極活物質の体積比率v2は、30≦v2≦95を満たしてもよい。30≦v2が満たされる場合、電池100のエネルギー密度が十分に確保される。また、v2≦95が満たされる場合、高出力での動作が可能となる。
【0072】
負極210の厚みは、10μm以上かつ500μm以下であってもよい。負極210の厚みが10μm以上である場合、電池100のエネルギー密度が十分に確保される。負極210の厚みが500μm以下である場合、高出力での動作が可能となる。
【0073】
正極活物質層17と電解質層13と負極活物質層11とのうちの少なくとも1つには、リチウムイオンの授受を容易にし、電池の出力特性を向上する目的で、非水電解液、ゲル電解質またはイオン液体が含まれていてもよい。
【0074】
非水電解液は、非水溶媒と非水溶媒に溶けたリチウム塩とを含む。非水溶媒としては、環状炭酸エステル溶媒、鎖状炭酸エステル溶媒、環状エーテル溶媒、鎖状エーテル溶媒、環状エステル溶媒、鎖状エステル溶媒、フッ素溶媒などが挙げられる。環状炭酸エステル溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどが挙げられる。鎖状炭酸エステル溶媒としては、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどが挙げられる。環状エーテル溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソランなどが挙げられる。鎖状エーテル溶媒としては、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタンなどが挙げられる。環状エステル溶媒としては、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。鎖状エステル溶媒としては、酢酸メチルなどが挙げられる。フッ素溶媒としては、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピオン酸メチル、フルオロベンゼン、フルオロエチルメチルカーボネート、フルオロジメチレンカーボネートなどが挙げられる。非水溶媒として、これらから選択される1種の非水溶媒が単独で使用されてもよいし、これらから選択される2種以上の非水溶媒の混合物が使用されてもよい。非水電解液には、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピオン酸メチル、フルオロベンゼン、フルオロエチルメチルカーボネート、およびフルオロジメチレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種のフッ素溶媒が含まれていてもよい。
【0075】
リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiSO3CF3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)(SO2C4F9)、LiC(SO2CF3)3などが挙げられる。リチウム塩として、これらから選択される1種のリチウム塩が単独で使用されてもよく、これらから選択される2種以上のリチウム塩の混合物が使用されてもよい。リチウム塩の濃度は、例えば、0.5から2mol/リットルの範囲にある。
【0076】
ゲル電解質は、ポリマー材料に非水電解液を含ませたものを用いることができる。ポリマー材料として、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、およびエチレンオキシド結合を有するポリマーからなる群より選択される少なくとも1種が使用されてもよい。
【0077】
イオン液体を構成するカチオンは、テトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルホスホニウムなどの脂肪族鎖状4級塩類、ピロリジニウム類、モルホリニウム類、イミダゾリニウム類、テトラヒドロピリミジニウム類、ピペラジニウム類、ピペリジニウム類などの脂肪族環状アンモニウム、ピリジニウム類、イミダゾリウム類などの含窒ヘテロ環芳香族カチオンなどであってもよい。イオン液体を構成するアニオンは、PF6
-、BF4
-、SbF6
-、AsF6
-、SO3CF3
-、N(SO2CF3)2
-、N(SO2C2F5)2
-、N(SO2CF3)(SO2C4F9)-、C(SO2CF3)3
-などであってもよい。イオン液体はリチウム塩を含有してもよい。
【0078】
正極活物質層17と電解質層13と負極活物質層11とのうちの少なくとも1つには、粒子同士の密着性を向上させる目的で、結着剤が含まれてもよい。結着剤は、電極を構成する材料の結着性を向上させるために、用いられる。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。また、結着剤としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体が用いられうる。また、これらのうちから選択された2種以上が混合されて、結着剤として用いられてもよい。
【0079】
正極活物質層17と負極活物質層11との少なくとも1つは、電子導電性を高める目的で、導電助剤を含んでもよい。導電助剤としては、例えば、天然黒鉛または人造黒鉛のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック類、炭素繊維または金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウムなどの金属粉末類、酸化亜鉛またはチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子化合物などが用いられうる。炭素導電助剤を用いた場合、低コスト化を図ることができる。
【0080】
本実施の形態の電池100が全固体電池である場合、電池100は、電解液、ゲル電解質、およびイオン液体を含まない。
【0081】
本実施の形態における電池100は、コイン型、円筒型、角型、シート型、ボタン型、扁平型、積層型などの種々の形状の電池として構成されうる。
【0082】
負極活物質層11は、湿式法によって形成されてもよく、乾式法によって形成されてもよく、湿式法と乾式法との組み合わせによって形成されてもよい。湿式法においては、原料を含むスラリーが負極集電体12の上に塗布される。乾式法においては、原料の粉末が負極集電体12とともに圧縮成形される。正極活物質層17もこれらの方法によって形成されうる。
【0083】
図3は、変形例1における負極211の構成を示す断面図である。負極活物質層11は、第1活物質層151および第2活物質層161を有する。第1活物質層151は、第2活物質層161よりも薄い。このような構成によれば、電池100の安全性をさらに高めることができる。第1活物質層151の厚さがT1であり、第2活物質層161の厚さがT2であるとき、比率T1/T2は、一例において、1/2から1/20の範囲にある。
【0084】
各層の厚さは、電池100を平面視したときの重心を含む断面における任意の複数点の平均値であってもよい。
【0085】
第1活物質層151に含まれた材料および第2活物質層161に含まれた材料は、
図2を参照して説明した通りである。
【0086】
図4は、変形例2における負極212の構成を示す断面図である。負極活物質層11は、第1活物質層152および第2活物質層161を有する。第1活物質層152は、第2活物質32を含まない。第1活物質層152は、負極活物質として、第1活物質31のみを含んでいてもよい。このような構成によれば、第1活物質層152の放電容量を十分に確保することができる。このことは、電池100のエネルギー密度の向上に貢献する。
【0087】
「第2活物質32を含まない」とは、第2活物質32が意図的に添加されていないことを意味する。
【0088】
本変形例においても、第1活物質層152は、第2活物質層161よりも薄い。そのため、負極212は、エネルギー密度と安全性とのバランスに優れている。
【0089】
図5は、変形例3における負極213の構成を示す断面図である。負極活物質層11は、第1活物質層153および第2活物質層161を有する。第1活物質層153は、第1活物質31を含み、固体電解質33を含まない。第1活物質層152は、負極活物質として、第1活物質31のみを含んでいてもよい。このような構成によれば、第1活物質層153の放電容量を十分に確保することができる。このことは、電池100のエネルギー密度の向上に貢献する。
【0090】
本変形例において、第1活物質層153は、負極集電体12の表面上に合金系活物質を乾式法によって成膜することによって形成されてもよい。乾式法としては、蒸着、スパッタリングなどが挙げられる。
【0091】
「固体電解質33を含まない」とは、固体電解質33が意図的に添加されていないことを意味する。
【0092】
本変形例においても、第1活物質層153は、第2活物質層161よりも薄い。そのため、負極213は、エネルギー密度と安全性とのバランスに優れている。
【実施例】
【0093】
以下、実施例および比較例を用いて、本開示の詳細が説明される。
【0094】
[硫化物固体電解質の作製]
露点-60℃以下のAr雰囲気のグローブボックス内で、Li2SとP2S5とを、モル比でLi2S:P2S5=75:25となるように秤量した。これらを乳鉢で粉砕して混合して混合物を得た。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用い、10時間、510rpmで混合物をミリング処理することで、ガラス状の固体電解質を得た。ガラス状の固体電解質を、不活性雰囲気中、270度、2時間の条件で熱処理した。これにより、ガラスセラミックス状の硫化物固体電解質であるLi2S-P2S5の粉末を得た。
【0095】
<<実施例1>>
[第1活物質層の材料A1の作製]
露点-60℃以下のAr雰囲気のグローブボックス内で、グラファイトとSiとを4:1の質量比にて乳鉢で混合して混合物を得た。その後、グラファイトとSiの混合物と硫化物固体電解質とを7:3の質量比で混合した。これにより、材料A1を得た。グラファイトおよびSiには、粉末状のものを使用した。
【0096】
[第2活物質層の材料B1の作製]
露点-60℃以下のAr雰囲気のグローブボックス内で、グラファイトと硫化物固体電解質とを7:3の質量比で混合した。これにより、材料B1を得た。
【0097】
[二次電池の作製]
材料A1、材料B1、硫化物固体電解質、銅箔(厚さ12μm)を用いて下記工程を実施した。
【0098】
まず、絶縁性外筒の中で、3mgの硫化物固体電解質と、5mgの材料B1と、5mgの材料A1とをこの順に積層させた。これらを360MPaの圧力で加圧成形することで、負極活物質層と電解質層との積層体を得た。
【0099】
次に、材料A1の層の上に銅箔を積層させた。これらを360MPaで加圧成形することで、負極集電体、負極活物質層および電解質層の積層体を得た。
【0100】
次に、電解質層の上に金属In(厚さ200μm)、金属Li(厚さ300μm)、金属In(厚さ200μm)をこの順に電解質層の上に積層させた。これらを80MPaの圧力で加圧成形することで、正極、電解質層および負極からなる積層体を作製した。
【0101】
次に、積層体の上下にステンレス鋼集電体を配置し、集電体に集電リードを取り付けた。
【0102】
最後に、絶縁性フェルールを用いて絶縁性外筒を密閉し、絶縁性外筒の内部を外気雰囲気から遮断することで、実施例1の電池を作製した。実施例1の電池の負極は、
図2を参照して説明した構造を有していた。
【0103】
<<実施例2>>
[第1活物質層の材料A2の作製]
露点-60℃以下のAr雰囲気のグローブボックス内で、グラファイトとSiとを1:1の質量比にて乳鉢で混合して混合物を得た。その後、グラファイトとSiの混合物と硫化物固体電解質とを7:3の質量比で混合した。これにより、材料A2を得た。
【0104】
[第2活物質層の材料B2の作製]
露点-60℃以下のAr雰囲気のグローブボックス内で、グラファイトと硫化物固体電解質とを7:3の質量比で混合した。これにより、材料B2を得た。
【0105】
[二次電池の作製]
5mgの材料B1に代えて8mgの材料B2を使用し、5mgの材料A1に代えて2mgの材料A2を使用したことを除き、実施例1と同じ方法で実施例2の電池を作製した。実施例2の電池の負極は、
図3を参照して説明した構造を有していた。
【0106】
<<実施例3>>
[第1活物質層の材料A3の作製]
露点-60℃以下のAr雰囲気のグローブボックス内で、Siと硫化物固体電解質とを7:3の質量比で混合した。これにより、材料A3を得た。
【0107】
[第2活物質層の材料B3の作製]
露点-60℃以下のAr雰囲気のグローブボックス内で、グラファイトと硫化物固体電解質とを7:3の質量比で混合した。これにより、材料B3を得た。
【0108】
[二次電池の作製]
5mgの材料B1に代えて9mgの材料B3を使用し、5mgの材料A1に代えて1mgの材料A3を使用したことを除き、実施例1と同じ方法で実施例3の電池を作製した。実施例3の電池の負極は、
図4を参照して説明した構造を有していた。
【0109】
<<実施例4>>
[第1活物質層の材料A4の作製]
露点-60℃以下のAr雰囲気のグローブボックス内で、Siのみを材料A4として準備した。
【0110】
[第2活物質層の材料B4の作製]
露点-60℃以下のAr雰囲気のグローブボックス内で、グラファイトと硫化物固体電解質とを7:3の質量比で混合した。これにより、材料B4を得た。
【0111】
[二次電池の作製]
5mgの材料B1に代えて9mgの材料B4を使用し、5mgの材料A1に代えて1mgの材料A4を使用したことを除き、実施例1と同じ方法で実施例4の電池を作製した。実施例4の電池の負極は、
図5を参照して説明した構造を有していた。
【0112】
<<比較例1>>
[第1活物質層の材料a1の作製]
露点-60℃以下のAr雰囲気のグローブボックス内で、グラファイトと硫化物固体電解質とを7:3の質量比で混合した。これにより、材料a1を得た。
【0113】
[第2活物質層の材料b1の作製]
露点-60℃以下のAr雰囲気のグローブボックス内で、グラファイトとSiとを4:1の質量比にて乳鉢で混合して混合物を得た。その後、グラファイトとSiの混合物と硫化物固体電解質とを7:3の質量比で混合した。これにより、材料b1を得た。
【0114】
[二次電池の作製]
5mgの材料B1に代えて5mgの材料b1を使用し、5mgの材料A1に代えて5mgの材料a1を使用したことを除き、実施例1と同じ方法で比較例1の電池を作製した。
【0115】
図6は、比較例1における電池の負極300の構成を示す断面図である。負極300は、負極集電体312および負極活物質層311を有する。負極活物質層311は、第1活物質層350および第2活物質層360を有する。負極集電体312、第1活物質層350および第2活物質層360は、この順番で積層されている。第1活物質層350は、負極活物質としてグラファイトのみを含む。第2活物質層360は、負極活物質として、グラファイトおよびSiを含む。
【0116】
<<比較例2>>
[負極活物質層の材料c1の作製]
露点-60℃以下のAr雰囲気のグローブボックス内で、グラファイトとSiとを9:1の質量比にて乳鉢で混合して混合物を得た。その後、グラファイトとSiの混合物と硫化物固体電解質とを7:3の質量比で混合した。これにより、材料c1を得た。
【0117】
[二次電池の作製]
5mgの材料B1および5mgの材料A1に代えて、10mgの材料c1を使用したことを除き、実施例1と同じ方法で比較例2の電池を作製した。
【0118】
図7は、比較例2における電池の負極301の構成を示す断面図である。負極301は、負極集電体312および負極活物質層311を有する。負極活物質層311は、負極集電体312の上に設けられている。負極活物質層311は、負極活物質として、グラファイトおよびSiを含む。グラファイトおよびSiは、負極活物質層311に均一に分布している。
【0119】
[充放電試験]
実施例1から4、比較例1および比較例2の電池をそれぞれ10個ずつ用いて、以下の条件で、充放電試験が実施された。なお、実施例および比較例の電池の理論容量は、互いに同一であった。
【0120】
電池を25℃の恒温槽に配置した。
【0121】
電池の理論容量に対して0.05Cレート(20時間率)となる電流値380μAで定電流充電し、-0.62Vの電圧で充電を終了した。
【0122】
次に、0.05Cレート(20時間率)となる電流値380μAで定電流放電し、電圧1.9Vの電圧で放電を終了した。
【0123】
以上により、実施例1から4、比較例1および比較例2のそれぞれの10セルの初期放電容量を測定した。初期放電容量の平均値を初期平均放電容量として算出し、理論容量に対する初期平均放電容量の割合を算出した。結果を表1に示す。なお、比較例1および比較例2の電池の一部は、充電中に電池の機能が失われた。機能を喪失した電池の数も表1に示す。
【0124】
【0125】
<<考察>>
表1に示すように、実施例および比較例の全ての電池で期待した理論容量が得られた。このことは、合金系活物質であるSiの配置が放電容量に影響を及ぼさないことを示している。
【0126】
実施例1から4の電池は、いずれも、充電時に機能を喪失しなかった。この理由としては、大きい膨張率を持つSiが負極集電体の近傍に偏在しており、電解質層の近傍に合金系活物質が存在しなかったためであると考えられる。電解質層と合金系活物質を含む第1活物質層との間に合金系活物質を含まない第2活物質層が存在し、第2活物質層が緩衝材として機能したため、膨張した合金系活物質が電解質層を貫通することなく、充放電が正常に進行したと考えられる。
【0127】
これに対し、比較例1および2の電池の一部は、充電時に電池の機能を喪失した。比較例の電池では、電解質層の近傍に合金系活物質であるSiが存在していた。そのため、充電時にリチウムイオンがSiに挿入されることによって合金系活物質が膨張し、膨張した合金系活物質が電解質層を貫通し、合金系活物質が正極活物質であるリチウムインジウム合金と内部短絡を起こしたものと推測される。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本開示の電池は、例えば、全固体リチウム二次電池として利用されうる。