IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-光学系 図1
  • 特許-光学系 図2
  • 特許-光学系 図3
  • 特許-光学系 図4
  • 特許-光学系 図5
  • 特許-光学系 図6
  • 特許-光学系 図7
  • 特許-光学系 図8
  • 特許-光学系 図9
  • 特許-光学系 図10
  • 特許-光学系 図11
  • 特許-光学系 図12
  • 特許-光学系 図13
  • 特許-光学系 図14
  • 特許-光学系 図15
  • 特許-光学系 図16
  • 特許-光学系 図17
  • 特許-光学系 図18
  • 特許-光学系 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】光学系
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/04 20060101AFI20241213BHJP
   G02B 17/08 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
G02B5/04
G02B17/08
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2022516843
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(86)【国際出願番号】 JP2020047506
(87)【国際公開番号】W WO2021215049
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2020077618
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】葛原 聡
(72)【発明者】
【氏名】内田 恒夫
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-072437(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188070(WO,A1)
【文献】特開2015-148664(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00814596(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00 ― 5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面、第2面、および第3面を備え、前記第1面からの光束が前記第2面で反射して前記第3面へ向かうプリズムを備える光学系であって、
前記第1面からの光束は互いに直交する第1方向と第2方向とに瞳径を有し、
前記プリズムは、
内部に入射した光束の前記第2方向の成分が結像せずに、前記光束の前記第1方向の成分が結像する第1中間結像位置と、
前記第1中間結像位置より前記第1面に近い光路上の位置に、前記光束の前記第1方向の成分が結像せずに、前記光束の前記第2方向の成分が結像する第2中間結像位置と、を有し、
記第2中間結像位置が、前記第1面と前記第2面との間で前記第2面から第1距離の範囲内にあり、前記第1中間結像位置が、前記第2面と前記第3面との間で前記第2面から第2距離の範囲内にあり、
前記第1距離は、前記第1面から前記第2面までの光路長の1/2未満の長さであり、
前記第2距離は、前記第2面から前記第3面までの光路長の1/2未満の長さである、
光学系。
【請求項2】
前記第1距離は、前記第1面から前記第2面までの光路長の1/4未満の長さであり、
前記第2距離は、前記第2面から前記第3面までの光路長の1/4未満の長さである、
請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記第1距離は、前記第1面から前記第2面までの光路長の1/8未満の長さであり、
前記第2距離は、前記第2面から前記第3面までの光路長の1/8未満の長さである、
請求項1に記載の光学系。
【請求項4】
前記第1中間結像位置における光束の瞳径は、前記第2方向に延びた直線形状を有し、
前記第2中間結像位置における光束の瞳径は、前記第1方向に延びた直線形状を有する、
請求項1から3のいずれか1つに記載の光学系。
【請求項5】
前記第1面は入射面である、
請求項1からのいずれか1つに記載の光学系。
【請求項6】
前記第1方向と前記第2方向とで集光作用が異なるレンズ素子を有し、
前記レンズ素子から出射した光束が前記入射面に入射する、
請求項に記載の光学系。
【請求項7】
前記第1面、前記第2面、および前記第3面の少なくとも1つは、自由曲面形状を有する、
請求項1からのいずれか1つに記載の光学系。
【請求項8】
第1面、第2面、第3面、および第4面を備え、前記第1面からの光束が前記第2面で反射して前記第3面へ向かい、前記第2面からの光束が前記第3面で反射して前記第4面へ向かうプリズムを備える光学系であって、
前記第1面からの光束は互いに直交する第1方向と第2方向とに瞳径を有し、
前記プリズムは、
内部に入射した光束の前記第2方向の成分が結像せずに、前記光束の前記第1方向の成分が結像する第1中間結像位置と、
前記第1中間結像位置より前記第1面に近い光路上の位置に、前記光束の前記第1方向の成分が結像せずに、前記光束の前記第2方向の成分が結像する第2中間結像位置と、を有し、
記第2中間結像位置が、前記第1面と前記第2面との間で前記第2面から第1距離の範囲内にあり、
前記第1中間結像位置が、前記第2面と前記第3面との間で前記第3面から第距離の範囲内にあり
前記第1距離は、前記第1面から前記第2面までの光路長の1/2未満の長さであり、
前記第2距離は、前記第2面から前記第3面までの光路長の1/2未満の長さであ
光学系。
【請求項9】
第1面、第2面、第3面、および第4面を備え、前記第1面からの光束が前記第2面で反射して前記第3面へ向かい、前記第2面からの光束が前記第3面で反射して前記第4面へ向かうプリズムを備える光学系であって、
前記第1面からの光束は互いに直交する第1方向と第2方向とに瞳径を有し、
前記プリズムは、
内部に入射した光束の前記第2方向の成分が結像せずに、前記光束の前記第1方向の成分が結像する第1中間結像位置と、
前記第1中間結像位置より前記第1面に近い光路上の位置に、前記光束の前記第1方向の成分が結像せずに、前記光束の前記第2方向の成分が結像する第2中間結像位置と、を有し、
記第2中間結像位置が、前記第2面と前記第3面との間で前記第2面から第距離の範囲内にあり、
前記第1中間結像位置が、前記第3面と前記第4面との間で前記第3面から第距離の範囲内にあ
前記第2距離は、前記第2面から前記第3面までの光路長の1/2未満の長さであり、
前記第3距離は、前記第3面から前記第4面までの光路長の1/2未満の長さである、
学系。
【請求項10】
第1面、第2面、第3面、および第4面を備え、前記第1面からの光束が前記第2面で反射して前記第3面へ向かい、前記第2面からの光束が前記第3面で反射して前記第4面へ向かうプリズムを備える光学系であって、
前記第1面からの光束は互いに直交する第1方向と第2方向とに瞳径を有し、
前記プリズムは、
内部に入射した光束の前記第2方向の成分が結像せずに、前記光束の前記第1方向の成分が結像する第1中間結像位置と、
前記第1中間結像位置より前記第1面に近い光路上の位置に、前記光束の前記第1方向の成分が結像せずに、前記光束の前記第2方向の成分が結像する第2中間結像位置と、を有し、
記第2中間結像位置が、前記第1面と前記第2面との間で前記第2面から第距離の範囲内にあり、
前記第1中間結像位置が、前記第3面と前記第4面との間で前記第3面から第距離の範囲内にあ
前記第1距離は、前記第1面から前記第2面までの光路長の1/2未満の長さであり、
前記第3距離は、前記第3面から前記第4面までの光路長の1/2未満の長さである、
学系。
【請求項11】
前記第1距離は、前記第1面から前記第2面までの光路長の1/4未満の長さであり、
前記第2距離は、前記第2面から前記第3面までの光路長の1/4未満の長さである、
請求項に記載の光学系。
【請求項12】
前記第2距離は、前記第2面から前記第3面までの光路長の1/4未満の長さであり、
前記第3距離は、前記第3面から前記第4面までの光路長の1/4未満の長さである、
請求項9に記載の光学系。
【請求項13】
前記第1距離は、前記第1面から前記第2面までの光路長の1/4未満の長さであり、
前記第3距離は、前記第3面から前記第4面までの光路長の1/4未満の長さである、
請求項10に記載の光学系。
【請求項14】
前記第1距離は、前記第1面から前記第2面までの光路長の1/8未満の長さであり、
前記第2距離は、前記第2面から前記第3面までの光路長の1/8未満の長さである、
請求項に記載の光学系。
【請求項15】
前記第1中間結像位置における光束の瞳径は、前記第2方向に延びた直線形状を有し、
前記第2中間結像位置における光束の瞳径は、前記第1方向に延びた直線形状を有する、
請求項9から14のいずれか1つに記載の光学系。
【請求項16】
前記第1面は入射面である、
請求項9から15のいずれか1つに記載の光学系。
【請求項17】
前記第1方向と前記第2方向とで集光作用が異なるレンズ素子を有し、
前記レンズ素子から出射した光束が前記入射面に入射する、
請求項16に記載の光学系。
【請求項18】
前記第1面、前記第2面、前記第3面、および前記第4面の少なくとも1つは、自由曲面形状を有する、
請求項9から17のいずれか1つに記載の光学系。
【請求項19】
前記プリズムの屈折率nは、n<1.8の関係を満たす、
請求項1から18のいずれか1つに記載の光学系。
【請求項20】
前記プリズムのアッベ数vdは、vd>40の関係を満たす、
請求項1から19のいずれか1つに記載の光学系。
【請求項21】
前記第1方向の横倍率をMx、前記第2方向の横倍率をMyとすると、
My/Mx>1.1
の関係を満たす、
請求項1から20のいずれか1つに記載の光学系。
【請求項22】
前記第1面から前記第1中間結像位置の光路長と前記第1面から前記第2中間結像位置の光路長との光路長差をΔP、前記第1面から前記第2面の光路長をLとすると、
ΔP/L>0.05
の関係を満たす、
請求項1から21のいずれか1つに記載の光学系。
【請求項23】
前記プリズムの入射面にレーザ光を照射するレーザ素子をさらに備え、
前記レーザ素子から出射されるレーザ光の瞳径の長径方向が前記第1方向であり、前記レーザ素子から出射される前記レーザ光の瞳径の短径方向が前記第2方向であ
請求項1から22のいずれか1つに記載の光学系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリズムを用いた光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
光学系において、プリズムを用いて光を反射させる方がミラーで反射するよりも光学系を小型化することができる。プリズムを用いる場合、プリズム内で光の中間結像が形成されることがある。例えば、特許文献1のプリズムにおいても、プリズム内を進行する光の中間結像が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-231060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プリズムに入射した光の中間結像点にプリズム内の傷やゴミが存在する場合、光の一部が消失してしまうおそれがある。また、プリズムの反射面は、屈折面よりも製造誤差による光への影響が大きい。
【0005】
本開示は、プリズム内の傷の影響を低減し、かつ、製造誤差の影響を低減したプリズムを備える光学系を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の光学系は、第1面、第2面、および第3面を備え、第1面からの光束が第2面で反射して第3面へ向かうプリズムを備える光学系であって、前記プリズムは、内部に入射した光束の第1方向の成分が結像する第1中間結像位置と、前記第1中間結像位置と異なり、前記光束の前記第1方向と直交する第2方向の成分が結像する第2中間結像位置と、を有し、前記第1中間結像位置と前記第2中間結像位置の少なくとも1つは、前記第1面と前記第2面との間で前記第2面から第1範囲内にあるか、または、前記第2面と前記第3面との間で前記第2面から第2範囲内にあり、前記第1範囲は、前記第1面から前記第2面までの光路長の1/2未満の長さであり、前記第2範囲は、前記第2面から前記第3面までの光路長の1/2未満の長さである。
【0007】
また、本開示の光学系は、第1面、第2面、第3面、および第4面を備え、前記第1面からの光束が前記第2面で反射して前記第3面へ向かい、前記第2面からの光束が前記第3面で反射して前記第4面へ向かうプリズムを備える光学系であって、前記プリズムは、内部に入射した光束の第1方向の成分が結像する第1中間結像位置と、前記第1中間結像位置と異なり、前記光束の前記第1方向と直交する第2方向の成分が結像する第2中間結像位置と、を有し、前記第1中間結像位置と前記第2中間結像位置とのうち一方が、前記第1面と前記第2面との間で前記第2面から第1範囲内にあるか、または、前記第2面と前記第3面との間で前記第2面から第2範囲内にあり、前記第1中間結像位置と前記第2中間結像位置とのうち他方が、前記第2面と前記第3面との間で前記第3面から前記第2範囲内にあるか、または、前記第3面と前記第4面との間で前記第3面から第3範囲内にあり、前記第1範囲は、前記第1面から前記第2面までの光路長の1/2未満の長さであり、前記第2範囲は、前記第2面から前記第3面までの光路長の1/2未満の長さであり、前記第3範囲は、前記第3面から前記第4面までの光路長の1/2未満の長さである。
【発明の効果】
【0008】
本開示における光学系は、プリズム内の傷の影響を低減し、かつ、製造誤差の影響を低減したプリズムを備える光学系を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1における光学系の構成を示す断面図
図2】実施形態1におけるレーザ素子から照射直後のレーザ光の瞳径を示す図
図3】レーザ光のX成分およびY成分のそれぞれの中間結像位置を示す図
図4】第1中間結像位置(Px)におけるレーザ光の瞳径を示す図
図5】第2中間結像位置(Py)におけるレーザ光の瞳径を示す図
図6】プリズムを出射したレーザ光の瞳径を示す図
図7】実施形態1の変形例における光学系の構成を示す断面図
図8】実施形態1の変形例における光学系の構成を示す断面図
図9】実施形態1の変形例における光学系の構成を示す断面図
図10】実施形態1の変形例における光学系の構成を示す断面図
図11】実施形態2における光学系の構成を示す断面図
図12】レーザ光のX成分およびY成分のそれぞれの中間結像位置を示す図
図13】実施形態2の変形例における光学系の構成を示す断面図
図14】レーザ光のX成分およびY成分のそれぞれの中間結像位置を示す図
図15】実施形態2の変形例における光学系の構成を示す断面図
図16】レーザ光のX成分およびY成分のそれぞれの中間結像位置を示す図
図17】実施形態3における光学系の構成を示す断面図
図18】レーザ光のX成分およびY成分のそれぞれの中間結像位置を示す図
図19】実施形態2の変形例における光学系の構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、発明者(ら)は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0011】
(実施形態1)
以下、図1図6を参照して、実施形態1を説明する。なお、本実施形態において、図2に示すように、例えば、X方向は、レーザ素子3から出射されるレーザ光Rの瞳径3aの長径方向であり、Y方向は、レーザ素子3から出射されるレーザ光Rの瞳径3aの短径方向である。X方向およびY方向は互いに直交する。また、光学系の座標として、XYZ座標系を示す。X方向、Y方向、Z方向はそれぞれ互いに直交する。
[1-1.構成]
図1は、本開示に係る光学系1の構成示す断面図である。光学系1は、光源としてのレーザ素子3と、プリズム5と、を備える。
【0012】
レーザ素子3は、例えば、半導体レーザである。レーザ素子3から照射されるレーザ光Rは、第1方向としてのX方向と第2方向としてのY方向とで瞳径が異なる平行光である。例えば、図2に示すように、レーザ素子3から照射直後のレーザ光Rの瞳径3aは、X方向に延びた楕円形を有する。レーザ素子3から照射されるレーザ光Rは、プリズム5の入射面11に入射する。レーザ光Rは、例えば、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の色を有するように、複数の波長(波長域)を有する。レーザ素子3は、R、G、Bの光を一つの光束に混合したレーザ光Rとして出射してもよいし、それぞれの色の光束のレーザ光Rを順次出射してもよい。
【0013】
プリズム5は、第1面としての入射面11と、第2面としての第1反射面13と、第3面としての出射面15とを有する。第1反射面13は、入射面11から出射面15までの光路間に配置されている。
【0014】
レーザ素子3から出射されたレーザ光Rは、入射面11を通ってプリズム5内へ入射される。入射面11と第1反射面13とは対向しており、入射面11から入射したレーザ光Rは、Y方向の瞳径3aを縮小して入射面11と第1反射面13との間の光路上に位置する第2中間結像位置Pyで結像した後、再びY方向に瞳径3aを拡大して、第1反射面13でプリズム5内に反射される。
【0015】
入射面11は、例えば、外方に突出した凸面形状を有する。入射面11は、回転非対称面であってもよい。例えば、X方向とY方向とで異なる曲率を有する自由曲面形状であってもよい。また、入射面11の形状を凸面形状にすることで、入射面11から入射したレーザ光Rを内側へ屈折させることができる。このように、レーザ光Rは、その拡がりを抑制した状態で、プリズム内を進行することができるので、プリズム5を小型化することができる。また、入射面11は、X方向よりもY方向への屈折力が小さくてもよい。これによって、入射面11で発生するY方向の色収差を抑制することができる。
【0016】
プリズム5は、例えば、樹脂製またはガラス製である。プリズム5の屈折率nは、n<1.8の関係を満たす。これにより、プリズム5の屈折面の製造誤差の影響を低減することができる。プリズム5の屈折面は、例えば、入射面11である。また、プリズム5のアッベ数vdは、vd>40の関係を満たす。これにより、プリズム5に入射した光の色収差を低減することができる。
【0017】
入射面11から入射したレーザ光RはX方向の瞳径3aを縮小して進行し、第1反射面13で反射されたレーザ光Rは、第1反射面13と出射面15との間の光路上に位置する第1中間結像位置Pxで中間結像した後、再びX方向に瞳径3aを拡大して出射面15からプリズム5外へ出射する。
【0018】
第1反射面13は、X方向とY方向とで異なる曲率を有する。したがって、第1反射面13は、自由曲面形状を有している。また、第1反射面13は、入射光に対して偏心してもよい。これにより、ビームスプリッタ等の光学素子を用いずに、入射光の光路を分離することが可能となる。
【0019】
プリズム5の出射面15も、入射面11と同様の構成を有してもよい。出射面15は、外方に向けて突出した凸面形状を有してもよい。これにより、レーザ光Rの拡がりを抑制した状態でプリズム5内を進行する光束をプリズム5の外部にて集光することができる。なお、入射面11と出射面15のX方向の曲率は、対称性を有してもよい。また、出射面15は、Y方向よりもX方向への屈折力が小さくてもよい。また、出射面15は、X方向とY方向とで異なる曲率を有する自由曲面形状を有してもよい。
【0020】
本実施形態における光学系1は、レーザ素子3からの光路の順に、プリズム5の入射面11と、プリズム5の第1反射面13と、プリズム5の出射面15と、が配置されている。
【0021】
図3に示すように、光学系1は、プリズム5内の第1反射面13と、プリズム5内の出射面15との間で、レーザ光Rの光束のX方向において第1中間結像位置Pxを有する。すなわち、レーザ光Rは、入射面11または第1反射面13により中間結像される。
【0022】
また、レーザ光RのX方向の成分であるRxと、Y方向の成分であるRyとのそれぞれの焦点距離が異なっているので、レーザ光RのX成分Rxの第1中間結像位置PxとY成分Ryの第2中間結像位置Pyとを異なる位置に配置することができる。また、X成分RxとY成分Ryのそれぞれの焦点距離が異なっているので、プリズム5の出射面15から出射される際のそれぞれの拡大率も異なる。すなわち、光学系1は、X方向とY方向とで異なる光学倍率を有する。例えば、本実施形態において、X方向よりもY方向の方が焦点距離が大きいので、X方向よりもY方向の光学倍率が大きい。
【0023】
例えば、X方向の横倍率をMx、Y方向の横倍率をMyとすると、
My/Mx>1.1
の関係を満たす。これにより、第1中間結像位置Pxと第2中間結像位置Pyとの光路長差が増加し、プリズム5内の傷やゴミの影響を軽減することができる。
また、My/Mx>1.3の関係を満たすことで、第1中間結像位置Pxと第2中間結像位置Pyのいずれか一方を入射面11と第1反射面13の光路上に配置し、第1中間結像位置Pxと第2中間結像位置Pyのいずれか一方を第1反射面13と出射面15の光路上に配置することができ、プリズム5内の傷やゴミの影響をさらに軽減することができる。
また、My/Mx>1.5の関係を満たすことで、第1中間結像位置Pxと第2中間結像位置Pyとの光路長差がさらに増加し、第1中間結像位置Pxと第2中間結像位置Pyの配置自由度をさらに向上することができる。
【0024】
X方向のレーザ光Rの光束の第1中間結像位置Pxは、X方向と直交するY方向のレーザ光Rの光束と同じ位置で交わらない。すなわち、レーザ光RのX成分Rxの第1中間結像位置Pxは、レーザ光RのY成分Ryの第2中間結像位置Pyと同じ位置にならない。これにより、図4に示すように、第1中間結像位置Pxにおけるレーザ光Rの瞳径3bは、Y方向に延びた直線形状を有している。この結果、第1中間結像位置Pxにゴミや傷があった場合でも、レーザ光RのY成分Ryは結像していないので、レーザ光Rの瞳径3bが消失することを防ぐことが出来る。
【0025】
また、図3に示すように、プリズム5内において、レーザ光RのY成分Ryの第2中間結像位置Pyは、光路上において、レーザ光RのX成分Rxが結像する第1中間結像位置Pxよりも入射面11側に位置する。図5に示すように、第2中間結像位置Pyにおけるレーザ光Rの瞳径3cも、X方向に延びた直線形状を有している。この結果、第2中間結像位置Pyにゴミや傷があった場合でも、レーザ光RのX成分Rxは結像していないので、レーザ光Rの瞳径3bが消失することを防ぐことができる。なお、光学系1の光学倍率がX方向よりもY方向の方が大きいので、出射面15から出射したレーザ光Rの瞳径11dは、図6に示すように、円形状に形成されている。なお、第1中間結像位置Pxは、光路上において、第2中間結像位置Pyよりも入射面11側に位置していてもよい。
【0026】
レーザ素子3から出射する光束におけるX方向の第1出射瞳径φx1およびY方向の第2出射瞳径φy1と、プリズム5の出射面15を通る光束におけるX方向の第1投射瞳径φx2およびY方向の第2投射瞳径φy2との関係が、
0.1<(φx1×φy1)/(φx2×φy2)<0.8
である。この関係を満たすことで、中間結像位置Px、Pyにおけるスポットサイズが大きくなり、プリズム5の内部におけるゴミや傷の影響を効果的に軽減することができる。
【0027】
図1および図3に示すように、第2中間結像位置Pyは、入射面11と第1反射面13との間に第1範囲Rg1内で第1反射面13側にある。第1範囲Rg1は、入射面11から第1反射面13までの光路長L1の1/2未満の長さである。また、第1範囲Rg1は、入射面11から第1反射面13までの光路長L1の、1/4未満の長さでもよいし、1/8未満の長さでもよい。第2中間結像位置Pyと第1反射面13との距離が近いほど、第1反射面13での光束のサイズ(フットプリントサイズ)を小さくすることができる。第1反射面13での光束のサイズが小さくなるほど、第1反射面13の製造誤差が光束に影響するのを低減することができる。したがって、第1範囲Rg1は、入射面11から第1反射面13までの光路長L1の1/2未満よりも1/4未満の長さであれば、より製造誤差の影響を低減することができ、1/4未満よりも1/8未満の長さであれば、さらに製造誤差の影響を低減することができる。製造誤差の影響とは、例えば、第1反射面13の曲率の誤差である。
【0028】
また、第1中間結像位置Pxは、第1反射面13と出射面15との間で第1反射面13から第2範囲Rg2内にある。第2範囲Rg2は、第1反射面13から出射面15までの光路長L2の1/2未満の長さである。また、第2範囲Rg2は、第1反射面13から出射面15までの光路長L2の、1/4未満の長さでもよいし、1/8未満の長さでもよい。第1中間結像位置Pxと第1反射面13との距離が近いほど、第1反射面13での光束のサイズ(フットプリントサイズ)を小さくすることができる。第1反射面13での光束のサイズが小さくなるほど、第1反射面13の製造誤差が光束に影響するのを低減できる。したがって、第2範囲Rg2は、第1反射面13から出射面15までの光路長L2の1/2未満よりも1/4未満の長さであれば、より製造誤差の影響を低減することができ、1/4未満よりも1/8未満の長さであれば、さらに製造誤差の影響を低減することができる。
【0029】
図1及び図3に示すように、光路上において、第1中間結像位置Pxと第2中間結像位置Pyの間に第1反射面13が位置する場合、第1中間結像位置Pxと第2中間結像位置Pyをそれぞれ第1反射面13により接近して配置することができる。反射面は誤差感度が高い部材であるが、第1反射面13の近傍に第1中間結像位置Pxと第2中間結像位置Pyとをより近接して配置することで、第1反射面13の製造誤差による影響をより低減することができる。また、第1中間結像位置Pxと第2中間結像位置Pyをそれぞれ第1反射面13から異なる範囲に配置することで、プリズム5のゴミやキズの影響をさらに低減することができる。
【0030】
また、入射面11から第1中間結像位置Pxの光路長と入射面11から第2中間結像位置Pyの光路長との光路長差をΔPとすると、
ΔP/L1>0.05
の関係を満たす。これにより、第1中間結像位置Pxと第2中間結像位置Pyの光路差を適切に設定することができ、プリズム5内の傷やゴミの影響を軽減することができる。
【0031】
なお、本実施形態において、第1中間結像位置Pxと第2中間結像位置Pyとの両方ともが第1反射面13の近傍に位置していたが、第1中間結像位置Pxと第2中間結像位置Pyとの少なくとも1つが第1反射面13の近傍に位置してもよい。これにより、第1反射面13で反射する光束のサイズを小さくすることができるので、第1反射面13で反射する光束に第1反射面13の製造誤差が影響するのを低減することができる。
【0032】
なお、本実施形態において、第1中間結像位置Pxが第1反射面13と出射面15との間に位置し、第2中間結像位置Pyが入射面11と第1反射面13との間に位置していたが、逆の配置でもよい。すなわち、第1中間結像位置Pxが入射面11と第1反射面13との間に位置し、第2中間結像位置Pyが第1反射面13と出射面15との間に位置してもよい。
【0033】
また、本実施形態において、第1中間結像位置Pxが第1反射面13と出射面15との間に位置し、第2中間結像位置Pyが入射面11と第1反射面13との間に位置していたが、これに限らない。図7に示す光学系1Aのように、第1中間結像位置Pxと第2中間結像位置Pyの両方が、プリズム5Aの入射面11と第1反射面13との間で第1反射面13から第1範囲Rg1内に位置してもよい。また、図8に示す光学系1Bのように、第1中間結像位置Pxと第2中間結像位置Pyの両方が、プリズム5Bの第1反射面13と出射面15との間で第1反射面13から第2範囲Rg2内に位置してもよい。
【0034】
また、図9に示す光学系1Cのように、光束のX方向とY方向とで集光作用の異なるレンズ素子7をレーザ素子3とプリズム5Cの入射面11との間に配置してもよい。レンズ素子7は、光束のX方向とY方向とに対して曲率が異なり、例えば、シリンドリカルレンズである。レンズ素子7から出射した光束は入射面11に入射する。光学系1がレンズ素子7を備えることで、第1中間結像位置Pxと第2中間結像位置Pyを適切な位置に配置することが出来るため、プリズム設計の自由度を増すことができる。また、入射面11の形状を加工するよりもレンズ素子7を加工する方が精度を向上することができ、プリズム5内の中間結像位置を設計しやすくなる。なお、プリズム5A、5B、5Cはそれぞれ上述した点を除いてプリズム5と共通の構成である。
【0035】
[1-2.効果等]
実施形態1に係る光学系1は、第1面としての入射面11、第2面としての第1反射面13、および第3面としての出射面15を備え、入射面11からの光束が第1反射面13で反射して出射面15へ向かうプリズム5を備える光学系である。プリズム5は、内部に入射した光束の第1方向としてのX方向の成分が結像する第1中間結像位置Pxと、第1中間結像位置と異なり、光束の第1方向と直交する第2方向としてのY方向の成分が結像する第2中間結像位置Pyと、を有する。第1中間結像位置Pxと第2中間結像位置Pyの少なくとも1つは、入射面11と第1反射面13との間で第1反射面13から第1範囲Rg1内にあるか、または、第1反射面13と出射面15との間で第1反射面13から第2範囲Rg2内にある。第1範囲Rg1は、入射面11から第1反射面13までの光路長L1の1/2未満の長さである。第2範囲Rg2は、第1反射面13から出射面15までの光路長L2の1/2未満の長さである。
【0036】
このような構成により、プリズム5内に2つの中間結像位置が形成されているので、プリズム5内の傷やゴミにより光束の一部が消失するのを低減することができる。また、第1中間結像位置Pxと第2中間結像位置Pyの少なくとも1つは、第1反射面13の近傍に位置しているので、第1反射面13での光束のサイズ(フットプリントサイズ)を小さくすることができ、第1反射面13の製造誤差が光束に影響するのを低減することができる。
【0037】
第1中間結像位置Pxと第2中間結像位置Pyの両方が、第1反射面13の近傍に位置している場合、第1反射面13での光束のサイズ(フットプリントサイズ)をさらに小さくすることができ、第1反射面13の製造誤差が光束に影響するのをさらに低減することができる。
【0038】
なお、本実施形態において、プリズム5は、反射面として第1反射面13だけを有しているが、第1反射面13と出射面15との間の光路上に、1つ以上の別の反射面を有してもよい。このように、プリズム5は少なくとも2面以上の反射面を有していてもよい。
【0039】
図10に示す光学系1Dのように、プリズム5Dが、第1反射面13と出射面15との間の光路上に第2反射面17を有する場合、第1反射面13が第1面として、第2反射面17が第2面として、出射面が15が第3面として機能してもよい。なお、プリズム5Dはこの点を除いてプリズム5と共通の構成である。また、プリズム5が3つ以上の反射面を備える場合、第1反射面13が第1面として、別の反射面が第2面として、さらに別の反射面が第3面として機能してもよい。
【0040】
(実施形態2)
次に、図11および図12を参照して、実施形態2を説明する。図11は、実施形態2における光学系1Eの構成を示す図である。図12は、レーザ光RのX成分およびY成分のそれぞれの中間結像位置を示す図である。
[2-1.構成]
実施形態1の光学系1のプリズム5は1つの反射面の近傍に第1中間結像位置Pxおよび第2中間結像位置Pyが位置していたのに対して、本実施形態の光学系1Eは2つの反射面のそれぞれの近傍に第1中間結像位置Pxまたは第2中間結像位置Pyが位置する。これらの相違点以外の構成について、実施形態1に係る光学系1と本実施形態の光学系1Eとは共通である。
【0041】
本実施形態のプリズム5Eは、第1面としての入射面11と、第2面としての第1反射面13と、第3面としての第2反射面17と、第4面としての出射面15とを備える。
【0042】
第2反射面17は、第1反射面13および出射面15とそれぞれ対向している。第2反射面17は、第1反射面13から進行する光束を出射面15に向けて反射する。第2反射面17は、X方向とY方向とで異なる曲率を有する自由曲面形状を有してもよい。
【0043】
第2中間結像位置Pyは、第1反射面13と第2反射面17との間で第1反射面13から第2範囲Rg2内にある。第2中間結像位置Pyと第1反射面13との距離が近いほど、第1反射面13での光束のサイズ(フットプリントサイズ)を小さくすることができる。第1反射面13での光束のサイズが小さくなるほど、第1反射面13の製造誤差が光束に影響するのを低減することができる。
【0044】
第1中間結像位置Pxは、第1反射面13と第2反射面17との間で第2反射面17から第2範囲Rg2内にある。第1中間結像位置Pxと第2反射面17との距離が近いほど、第2反射面17での光束のサイズ(フットプリントサイズ)を小さくすることができる。第2反射面17での光束のサイズが小さくなるほど、第2反射面17の製造誤差が光束に影響するのを低減できる。
【0045】
このように、光路上において、第1中間結像位置Pxと第2中間結像位置Pyとをそれぞれ異なる反射面の近傍に配置することで、第1中間結像位置Pxは第2反射面17に、第2中間結像位置Pyは第1反射面13に、より接近させて配置することができる。これにより、第1反射面13および第2反射面17の製造誤差による影響をより低減することができる。また、プリズム5Eのゴミやキズの影響をさらに低減することができる。
【0046】
次に、図13および図14を参照する。図13は、実施形態2の変形例における光学系1Fの構成を示す図である。図14は、レーザ光のX成分およびY成分のそれぞれの中間結像位置を示す図である。
【0047】
第2中間結像位置Pyは、プリズム5Fの第1反射面13と第2反射面17との間で第1反射面13から第2範囲Rg2内にある。第2中間結像位置Pyと第1反射面13との距離が近いほど、第1反射面13での光束のサイズ(フットプリントサイズ)を小さくすることができる。第1反射面13での光束のサイズが小さくなるほど、第1反射面13の製造誤差が光束に影響するのを低減することができる。
【0048】
また、第1中間結像位置Pxは、第2反射面17と出射面15との間で第2反射面17から第3範囲Rg3内にある。第3範囲Rg3は、第2反射面17から出射面15までの光路長L3の、1/2未満の長さでもよいし、1/4未満の長さでもよいし、1/8未満の長さでもよい。第1中間結像位置Pxと第2反射面17との距離が近いほど、第2反射面17での光束のサイズ(フットプリントサイズ)を小さくすることができる。第2反射面17での光束のサイズが小さくなるほど、第2反射面17の製造誤差が光束に影響するのを低減できる。したがって、第3範囲Rg3は、第2反射面17から出射面15までの光路長L3の1/2未満よりも1/4未満の長さであれば、より製造誤差の影響を低減することができ、1/4未満よりも1/8未満の長さであれば、さらに製造誤差の影響を低減することができる。
【0049】
なお、第2反射面17と出射面15との間の光路上にさらに反射面を設けてもよい。この場合、追加して設けた反射面が第4面として機能する。また、プリズム5Fは、上述した点を除いてプリズム5Eと共通の構成である。
【0050】
次に、図15および図16を参照する。図15は、実施形態2の変形例における光学系1Gの構成を示す図である。図16は、レーザ光のX成分およびY成分のそれぞれの中間結像位置を示す図である。
【0051】
第2中間結像位置Pyは、プリズム5Gの入射面11と第1反射面13との間で第1反射面13から第1範囲Rg1内にある。第2中間結像位置Pyと第1反射面13との距離が近いほど、第1反射面13での光束のサイズ(フットプリントサイズ)を小さくすることができる。第1反射面13での光束のサイズが小さくなるほど、第1反射面13の製造誤差が光束に影響するのを低減することができる。
【0052】
また、第1中間結像位置Pxは、第2反射面17と出射面15との間で第2反射面17から第3範囲Rg3内にある。第1中間結像位置Pxと第2反射面17との距離が近いほど、第2反射面17での光束のサイズ(フットプリントサイズ)を小さくすることができる。第2反射面17での光束のサイズが小さくなるほど、第2反射面17の製造誤差が光束に影響するのを低減できる。
【0053】
なお、第2反射面17と出射面15との間の光路上にさらに反射面を設けてもよい。この場合、追加して設けた反射面が第4面として機能する。また、プリズム5Gは、上述した点を除いてプリズム5Eと共通の構成である。また、光学系1Eにおいても、光束のX方向とY方向とで集光作用の異なるレンズ素子7をレーザ素子3とプリズム5Eの入射面11との間に配置してもよい。
【0054】
[2-2.効果等]
実施形態2に係る光学系1Eは、第1面としての入射面11と、第2面としての第1反射面13と、第3面としての第2反射面17と、第4面としての出射面15とを備える。プリズム5Eにおいて、入射面11からの光束が第1反射面13で反射して第2反射面17へ向かい、第1反射面13からの光束が第2反射面17で反射して出射面15へ向かう。プリズム5Eは、内部に入射した光束のX方向の成分が結像する第1中間結像位置Pxと、光束のX方向と直交するY方向の成分が結像する第2中間結像位置Pyと、を有する。第1中間結像位置Pxと第2中間結像位置Pyとのうち一方が、入射面11と第1反射面13との間で第1反射面13から第1範囲Rg1内にあるか、または、第1反射面13と第2反射面17との間で第2反射面17から第2範囲Rg2内にある。第1中間結像位置Pxと第2中間結像位置Pyとのうち他方が、第1反射面13と第2反射面17との間で第2反射面17からに第2範囲Rg2内にあるか、第2反射面17と出射面15との間で第2反射面から第3範囲Rg3内にある。第2範囲Rg2は、第1反射面13から第2反射面17までの光路長の1/2未満の長さである。第3範囲Rg3は、第2反射面17から出射面15までの光路長の1/2未満の長さである。
【0055】
このような構成により、プリズム5E内に2つの中間結像位置が形成されているので、プリズム5E内の傷やゴミにより光束の一部が消失するのを低減することができる。また、第1中間結像位置Pxと第2中間結像位置Pyの少なくとも1つは、第2反射面17の近傍に配置されているので、第2反射面17での光束のサイズ(フットプリントサイズ)を小さくすることができ、第2反射面17の製造誤差が光束に影響するのを低減することができる。
【0056】
また、第1中間結像位置Pxと第2中間結像位置Pyとの2つの中間結像位置がそれぞれ、第1反射面13及び第2反射面17の2つの反射面のそれぞれの近傍に位置していてもよい。これにより、それぞれの反射面で反射する光束のサイズを小さくすることができるので、それぞれの反射面の製造誤差による光束への影響を低減することができる。
【0057】
(実施形態3)
次に、図17および図18を参照して実施形態3を説明する。図17は、実施形態3における光学系1Hの構成を示す図である。図18は、レーザ光RのX成分およびY成分のそれぞれの中間結像位置を示す図である。
[3-1.構成]
図17に示すように、本実施形態の光学系1Hは、実施形態2の光学系1Eに、さらに第3反射面19を備える。以下に説明する点以外の構成について、実施形態2における光学系1Eと本実施形態の光学系1Hとは共通である。
【0058】
本実施形態のプリズム5Hは、第1面としての入射面11と、第2面としての第1反射面13と、第3面としての第2反射面17と、第4面としての第3反射面19と、第5面としての出射面15とを備える。
【0059】
第3反射面19は、第2反射面17および出射面15とそれぞれ対向している。第3反射面19は、第2反射面17から進行する光束を出射面15に向けて反射する。第3反射面19はX方向とY方向とで異なる曲率を有する自由曲面形状を有してもよい。
【0060】
第1中間結像位置Pxは、第2反射面17と第3反射面19との間で第2反射面17から第3範囲Rg3内にある。第1中間結像位置Pxと第2反射面17との距離が近いほど、第2反射面17での光束のサイズ(フットプリントサイズ)を小さくすることができる。第2反射面17での光束のサイズが小さくなるほど、第2反射面17の製造誤差が光束に影響するのを低減できる。
【0061】
第2中間結像位置Pyは、第1反射面13と第2反射面17との間で第1反射面13から第2範囲Rg2内にある。第2中間結像位置Pyと第1反射面13との距離が近いほど、第1反射面13での光束のサイズ(フットプリントサイズ)を小さくすることができる。第1反射面13での光束のサイズが小さくなるほど、第1反射面13の製造誤差が光束に影響するのを低減することができる。
【0062】
第1中間結像位置Pxと第2中間結像位置Pyとの2つの中間結像位置が、それぞれ第1反射面13および第2反射面17のそれぞれの近傍に位置しているので、第1反射面13および第2反射面17の製造誤差が反射する光束に影響するのを低減できる。したがって、製造において第3反射面19だけを重点管理すればよいので、重点管理する反射面の数を減らすことができ、製造における労力を低減することができる。また、第2中間結像位置Pyおよび第1中間結像位置Pxをそれぞれ第1反射面13および第2反射面17の反射後に配置している。そうすることで、第2中間結像位置Pyおよび第1中間結像位置Pxを第3反射面19に少しでも近づけているので、第3反射面19での光束のサイズ(フットプリントサイズ)を小さくしている。また、光学系1Hにおいても、光束のX方向とY方向とで集光作用の異なるレンズ素子7をレーザ素子3とプリズム5Hの入射面11との間に配置してもよい。
【0063】
[3-2.効果等]
実施形態3に係る光学系1Hは、第1面としての入射面11と、第2面としての第1反射面13と、第3面としての第2反射面17と、第4面としての第3反射面19と、第5面としての出射面15とを備える。プリズム5Hにおいて、入射面11からの光束が第1反射面13で反射して第2反射面17へ向かい、第1反射面13からの光束が第2反射面17で反射して第3反射面19へ向かい、第2反射面17からの光束が第3反射面19で反射して出射面15へ向かう。プリズム5Hは、内部に入射した光束のX方向の成分が結像する第1中間結像位置Pxと、光束のX方向と直交するY方向の成分が結像する第2中間結像位置Pyと、を有する。第1中間結像位置Pxは、第2反射面17と第3反射面19との間で第2反射面17から第3範囲Rg3内にある。第3範囲Rg3は、第2反射面17から第3反射面19までの光路長の1/2未満の長さである。第2中間結像位置Pyは、第1反射面13と第2反射面17との間で第1反射面13から第2範囲Rg2内にある。
【0064】
このような構成により、プリズム5H内に、第1中間結像位置Pxと第2中間結像位置Pyとの2つの中間結像位置が形成されているので、プリズム5H内の傷やゴミにより光束の一部が消失するのを低減することができる。また、第1中間結像位置Pxは第2反射面17の近傍に配置されており、第2中間結像位置Pyは第1反射面13の近傍に配置されているので、第1反射面13および第2反射面17でのそれぞれの光束のサイズ(フットプリントサイズ)を小さくすることができ、第1反射面13および第2反射面17の製造誤差が光束に影響するのを低減することができる。
【0065】
(他の実施形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態1~3を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用できる。また、上記実施形態1~3で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。
【0066】
実施形態1から3において、プリズム5~5Hの出射面15は凸面形状であったが、これに限定されるものではない。プリズム5~5Hの出射面15は、非凸面形状でもよく、例えば、平板形状でもよい。
【0067】
図15に示す実施形態2の変形例では、第1中間結像位置Pxは、第2反射面17と出射面15との間で第2反射面17から第3範囲Rg3内にあったがこれに限らない。図19に示すように、光学系1Kにおいて、第1中間結像位置Pxは、プリズム5Kの第1反射面13と第2反射面17との間で第2反射面17から第2範囲Rg2内にあってもよい。第1中間結像位置Pxと第2反射面17との距離が近いほど、第2反射面17での光束のサイズ(フットプリントサイズ)を小さくすることができる。第2反射面17での光束のサイズが小さくなるほど、第2反射面17の製造誤差が光束に影響するのを低減できる。
【0068】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0069】
また、上述の実施形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【0070】
(実施形態の概要)
(1)本開示の光学系は、第1面、第2面、および第3面を備え、第1面からの光束が第2面で反射して第3面へ向かうプリズムを備える光学系である。プリズムは、内部に入射した光束の第1方向の成分が結像する第1中間結像位置と、前記第1中間結像位置と異なり、光束の第1方向と直交する第2方向の成分が結像する第2中間結像位置と、を有する。第1中間結像位置と第2中間結像位置の少なくとも1つは、第1面と第2面との間で第2面から第1範囲内にあるか、または、第2面と第3面との間で第2面から第2範囲内にある。第1範囲は、第1面から第2面までの光路長の1/2未満の長さであり、第2範囲は、第2面から第3面までの光路長の1/2未満の長さである。
【0071】
このように、プリズム内で光束が中間結像する位置が2つあるので、プリズム内の傷の影響を分散することができる。また、第2面の近傍に第1中間結像位置と第2中間結像位置のどちらかがあるので、第2面で反射される光束のサイズを小さくすることができ、第2面の製造誤差が光束に影響するのを低減することができる。
【0072】
(2)(1)の光学系において、第1中間結像位置と第2中間結像位置とのうち一方が、第1面と第2面との間で第2面から第1範囲内にあり、第1中間結像位置と第2中間結像位置とのうち他方が、第2面と第3面との間で第2面から第2範囲内にある。
【0073】
これにより、第1中間結像位置と第2中間結像位置とのうち一方が光路上において第2面から第1面側にあり、第1中間結像位置と第2中間結像位置とのうちの他方が光路上において第2面から第3面側にあるので、第1中間結像位置と第2中間結像位置との両方を第2面の近傍により近接して位置することができる。これにより、第2面で反射される光束のサイズをさらに小さくすることができ、第2面の製造誤差が光束に影響するのをさらに低減することができる。また、第1中間結像位置と第2中間結像位置をそれぞれ第2面から異なる範囲に配置することで、プリズムのゴミやキズの影響をさらに低減することができる。
【0074】
(3)(1)の光学系において、第1中間結像位置と第2中間結像位置との両方が、第1面と第2面との間で第2面から第1範囲内にあるか、または、第2面と第3面との間で第2面から第2範囲内にある。
【0075】
これにより、第2面の近傍に第1中間結像位置と第2中間結像位置との両方が位置しているので、第2面で反射される光束のサイズをさらに小さくすることができ、第2面の製造誤差が光束に影響するのをさらに低減することができる。
【0076】
(4)(1)ないし(3)のいずれか1つの光学系において、第1範囲は、第1面から第2面までの光路長の1/4未満の長さであり、第2範囲は、第2面から第3面までの光路長の1/4未満の長さである。
【0077】
第2面のさらに近傍に中間結像位置があるので、第2面で反射される光束のサイズをより小さくすることができ、第2面の製造誤差が光束に影響するのをさらに低減することができる。
【0078】
(5)(1)ないし(3)のいずれか1つの光学系において、第1範囲は、第1面から第2面までの光路長の1/8未満の長さであり、第2範囲は、第2面から第3面までの光路長の1/8未満の長さである。
【0079】
第2面のさらに近傍に中間結像位置があるので、第2面で反射される光束のサイズをより小さくすることができ、第2面の製造誤差が光束に影響するのをさらに低減することができる。
【0080】
(6)(1)ないし(5)のいずれか1つの光学系において、前記第1面は入射面である。
【0081】
(7)(6)の光学系において、第1方向と第2方向とで集光作用が異なるレンズ素子を有し、レンズ素子から出射した光束が入射面に入射する。これにより、プリズム内の中間結像位置を設計しやすくなる。
【0082】
(8)(1)ないし(7)のいずれか1つの光学系において、第1面、第2面、および第3面の少なくとも1つは、自由曲面形状を有する。
【0083】
(9)本開示の光学系は、第1面、第2面、第3面、および第4面を備え、第1面からの光束が第2面で反射して第3面へ向かい、第2面からの光束が第3面で反射して第4面へ向かうプリズムを備える光学系である。プリズムは、内部に入射した光束の第1方向の成分が結像する第1中間結像位置と、前記第1中間結像位置と異なり、光束の第1方向と直交する第2方向の成分が結像する第2中間結像位置と、を有する。第1中間結像位置と第2中間結像位置とのうち一方が、第1面と第2面との間で第2面から第1範囲内にあるか、または、第2面と第3面との間で第2面から第2範囲内にある。第1中間結像位置と第2中間結像位置とのうち他方が、第2面と第3面との間で第3面から第2範囲内にあるか、または、第3面と第4面との間で第3面から第3範囲内にある。第1範囲は、第1面から第2面までの光路長の1/2未満の長さである。第2範囲は、第2面から第3面までの光路長の1/2未満の長さである。第3範囲は、第3面から第4面までの光路長の1/2未満の長さである。
【0084】
(10)(9)の光学系において、第1中間結像位置と第2中間結像位置とのうち一方が、第2面と第3面との間で第2面から第2範囲内にあり、第1中間結像位置と第2中間結像位置とのうち他方が、第3面と第4面との間で第3面から第3範囲内にある。これにより、第1中間結像位置と第2中間結像位置とのうち一方を第2面の近傍に、第1中間結像位置と第2中間結像位置とのうち他方を第3面の近傍に配置することができる。2つの中間結像位置をそれぞれ異なる面の近傍に配置することで、それぞれの面の製造誤差の影響をより低減することができる。また、プリズムのゴミやキズの影響をさらに低減することができる。
【0085】
(11)(9)の光学系において、第1中間結像位置と第2中間結像位置とのうち一方が、第1面と第2面との間で第2面から第1範囲内にあり、第1中間結像位置と第2中間結像位置とのうち他方が、第3面と第4面との間で第3面から第3範囲内にある。これにより、第1中間結像位置と第2中間結像位置とのうち一方を第2面の近傍に、第1中間結像位置と第2中間結像位置とのうち他方を第3面の近傍に配置することができる。2つの中間結像位置をそれぞれ異なる面の近傍に配置することで、それぞれの面の製造誤差の影響をより低減することができる。また、プリズムのゴミやキズの影響をさらに低減することができる。
【0086】
(12)(9)の光学系において、第1中間結像位置と第2中間結像位置とのうち一方が、第1面と第2面との間で第2面から第1範囲内にあり、第1中間結像位置と第2中間結像位置とのうち他方が、第2面と第3面との間で第3面から第2範囲内にある。これにより、第1中間結像位置と第2中間結像位置とのうち一方を第2面の近傍に、第1中間結像位置と第2中間結像位置とのうち他方を第3面の近傍に配置することができる。2つの中間結像位置をそれぞれ異なる面の近傍に配置することで、それぞれの面の製造誤差の影響をより低減することができる。また、プリズムのゴミやキズの影響をさらに低減することができる。
【0087】
(13)(9)の光学系において、第1中間結像位置と第2中間結像位置とのうち一方が、第2面と第3面との間で第2面から第2範囲内にあり、第1中間結像位置と第2中間結像位置とのうち他方が、第2面と第3面との間で第3面から第2範囲内にある。これにより、第1中間結像位置と第2中間結像位置とのうち一方を第2面の近傍に、第1中間結像位置と第2中間結像位置とのうち他方を第3面の近傍に配置することができる。2つの中間結像位置をそれぞれ異なる面の近傍に配置することで、それぞれの面の製造誤差の影響をより低減することができる。また、プリズムのゴミやキズの影響をさらに低減することができる。
【0088】
(14)(9)の光学系において、第1範囲は、第1面から第2面までの光路長の1/4未満の長さであり、第2範囲は、第2面から第3面までの光路長の1/4未満の長さであり、第3範囲は、第3面から第4面までの光路長の1/4未満の長さである。
【0089】
(15)(9)の光学系において、第1範囲は、第1面から第2面までの光路長の1/8未満の長さであり、第2範囲は、第2面から第3面までの光路長の1/8未満の長さであり、第3範囲は、第3面から第4面までの光路長の1/8未満の長さである。
【0090】
(16)(9)ないし(15)のいずれか1つの光学系において、第1面は入射面である。
【0091】
(17)(16)の光学系において、第1方向と第2方向とで集光作用が異なるレンズ素子を有し、レンズ素子から出射した光束が入射面に入射する。これにより、プリズム5内の中間結像位置を設計しやすくなる。
【0092】
(18)(9)ないし(17)のいずれか1つの光学系において、第1面、第2面、第3面、および第4面の少なくとも1つは、自由曲面形状を有する。
【0093】
(19)(1)ないし(18)のいずれか1つの光学系において、プリズムの屈折率nは、n<1.8の関係を満たす。これにより、プリズムの屈折面の製造誤差の影響を低減することができる。
【0094】
(20)(1)ないし(19)のいずれか1つの光学系において、プリズムのアッベ数vdは、vd>40の関係を満たす。これにより、プリズムの色収差を低減することができる。
【0095】
(21)(1)ないし(20)のいずれか1つの光学系において、第1方向の横倍率をMx、第2方向の横倍率をMyとすると、My/Mx>1.1の関係を満たす。これにより、第1中間結像位置と第2中間結像位置の光路長差が増加し、プリズム内の傷やゴミの影響を軽減することができる。
【0096】
(22)(1)ないし(21)のいずれか1つの光学系において、第1中間結像位置と第2中間結像位置との光路長差をΔP、第1面から第2面の光路長をLとすると、ΔP/L>0.05の関係を満たす。これにより、第1中間結像位置と第2中間結像位置の光路差を適切に設定することができ、プリズム内の傷やゴミの影響を軽減することができる。
【0097】
(23)(1)ないし(22)のいずれか1つの光学系において、プリズムの入射面にレーザ光を照射するレーザ素子をさらに備え、レーザ素子から出射されるレーザ光の瞳径の長径方向が第1方向であり、レーザ素子から出射されるレーザ光の瞳径の短径方向が第2方向であり、第1方向および第2方向は互いに直交し、第2中間結像位置は、第1中間結像位置より入射面側に位置している。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本開示は、プリズムなどの屈折光学系を用いた光学系に適用可能である。
【符号の説明】
【0099】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H、1K 光学系
3 レーザ素子
3a、3b 瞳径
5、5A、5B、5C、5D、5E、5F、5G、5H、5K プリズム
11 入射面
13 第1反射面
15 出射面
17 第2反射面
19 第3反射面
L1、L2、L3 光路長
Px 第1中間結像位置
Py 第2中間結像位置
R レーザ光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19