(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂フィルム、樹脂付き金属箔、プリプレグ、金属張積層板及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20241213BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20241213BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20241213BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241213BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20241213BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20241213BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20241213BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/26
C08K3/22
C08K3/013
C08K9/04
C08L63/00 C
B32B15/08 Q
H05K1/03 610C
(21)【出願番号】P 2021553486
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(86)【国際出願番号】 JP2020039516
(87)【国際公開番号】W WO2021079900
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2019194706
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 章裕
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】柴田 伸郎
(72)【発明者】
【氏名】青木 幸一
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/016480(WO,A1)
【文献】特開2012-211225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂(A)と、無機フィラー(B)とを含有する樹脂組成物であり、
前記無機フィラー(B)は、第一のフィラー(B1)と、前記第一のフィラー(B1)よりも粒径が小さいナノサイズの第二のフィラー(B2)とを含有し、
前記第一のフィラー(B1)の粒径はレーザー回折・散乱法によるメジアン径であり、前記第二のフィラー(B2)の粒径は前記第二のフィラー(B2)のBET比表面積から算出される値であり、
前記第一のフィラー(B1)は、無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)及びアルミナフィラー(b2)を含有し、
前記樹脂組成物中の固形分全量に対する、前記第一のフィラー(B1)の割合は50体積%以上90体積%以下、かつ前記第二のフィラー(B2)の割合は0.1体積%以上2.0体積%以下であ
り、
前記アルミナフィラー(b2)の割合は、前記無機フィラー(B)に対して、25体積%以上75体積%以下である、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記無機フィラー(B)を除く固形分に対する前記第二のフィラー(B2)の割合は1.0体積%以上8.0体積%以下である、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)の割合は、前記無機フィラー(B)に対して、25体積%以上75体積%以下である、
請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)の、レーザー回折・散乱法によるメジアン径は、8μm以上30μm以下であり、
前記アルミナフィラー(b2)の、レーザー回折・散乱法によるメジアン径は、0.1μm以上5μm以下である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記第二のフィラー(B2)の、BET法による比表面積は、100m
2/g以上400m
2/g以下である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記第二のフィラー(B2)は、アルキルシラン、シリコーンオイル、エポキシシラン、アミノシラン、イソシアネートシラン及び酸無水物シランよりなる群から選択される少なくとも一種の表面処理剤で処理されている、
請求項1から5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂(A)はエポキシ樹脂(a)を含有し、
前記エポキシ樹脂(a)は、軟化点が75℃以下であるエポキシ樹脂(a1)を、前記エポキシ樹脂(a)に対して30質量%以上の割合で含有する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の前記樹脂組成物、前記樹脂組成物の乾燥物、又は前記樹脂組成物の半硬化物を含有する、
樹脂フィルム。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の前記樹脂組成物、前記樹脂組成物の乾燥物、又は前記樹脂組成物の半硬化物を含有する樹脂層と、
前記樹脂層に重なる金属箔とを備える、
樹脂付き金属箔。
【請求項10】
基材と、
前記基材に含浸している、請求項1から7のいずれか一項に記載の前記樹脂組成物、前記樹脂組成物の乾燥物、又は前記樹脂組成物の半硬化物とを備える、
プリプレグ。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか一項に記載の前記樹脂組成物の硬化物を含有する絶縁層と、
前記絶縁層に重なる金属箔とを備える、
金属張積層板。
【請求項12】
請求項1から7のいずれか一項に記載の前記樹脂組成物の硬化物を含有する絶縁層と、
前記絶縁層に重なる導体層とを備える、
プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂組成物、樹脂フィルム、樹脂付き金属箔、プリプレグ、金属張積層板及びプリント配線板に関し、詳しくは熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物、前記樹脂組成物から作製される樹脂フィルム、前記樹脂組成物から作製される樹脂付き金属箔、前記樹脂組成物から作製されるプリプレグ、前記樹脂組成物から作製される金属張積層板及び前記樹脂組成物から作製されるプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、熱伝導性樹脂組成物を開示する。この熱伝導性樹脂組成物は、2種以上の無機フィラーを合計で60~95質量%含んでいる。また、第1の無機フィラーのモース硬度が4以上であり、かつ第2の無機フィラーのモース硬度が3以下である。さらに、第1の無機フィラーと第2の無機フィラーの割合が1:1~0.01である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の課題は、成形性に優れた樹脂組成物、前記樹脂組成物から作製される樹脂フィルム、前記樹脂組成物から作製される樹脂付き金属箔、前記樹脂組成物から作製されるプリプレグ、前記樹脂組成物から作製される金属張積層板及び前記樹脂組成物から作製されるプリント配線板を、提供することである。
【0005】
本開示の一態様に係る樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A)と、無機フィラー(B)とを含有する。前記無機フィラー(B)は、第一のフィラー(B1)と、前記第一のフィラー(B1)よりも粒径が小さいナノサイズの第二のフィラー(B2)とを含有する。前記第一のフィラー(B1)は、無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)及びアルミナフィラー(b2)を含有する。前記樹脂組成物中の固形分全量に対する、前記第一のフィラー(B1)の割合は50体積%以上90体積%以下、かつ前記第二のフィラー(B2)の割合は0.1体積%以上2.0体積%以下である。
【0006】
本開示の一態様に係る樹脂フィルムは、前記樹脂組成物、前記樹脂組成物の乾燥物、又は前記樹脂組成物の半硬化物を含有する。
【0007】
本開示の一態様に係る樹脂付き金属箔は、前記樹脂組成物、前記樹脂組成物の乾燥物、又は前記樹脂組成物の半硬化物を含有する樹脂層と、前記樹脂層に重なる金属箔とを備える。
【0008】
本開示の一態様に係るプリプレグは、基材と、前記基材に含浸している、前記樹脂組成物、前記樹脂組成物の乾燥物、又は前記樹脂組成物の半硬化物とを備える。
【0009】
本開示の一態様に係る金属張積層板は、前記樹脂組成物の硬化物を含有する絶縁層と、前記絶縁層に重なる金属箔とを備える。
【0010】
本開示の一態様に係るプリント配線板は、前記樹脂組成物の硬化物を含有する絶縁層と、前記絶縁層に重なる導体層とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る樹脂フィルムの概略断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係る樹脂付き金属箔の概略断面図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に係るプリプレグの概略断面図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態に係る金属張積層板の概略断面図である。
【
図5】
図5Aは、本開示の一実施形態に係るプリント配線板の概略断面図である。
図5Bは、本開示の一実施形態に係る多層のプリント配線板の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
樹脂フィルム、樹脂付き金属箔、プリプレグ、金属張積層板及びプリント配線板等を作製するための樹脂組成物において、無機フィラーは、熱伝導性、耐熱性などの性能向上のために使用されるが、無機フィラーは成型性の低下を招きやすい。特に無機フィラーを含有する樹脂組成物を成型して絶縁層を作製し、かつ絶縁層に導体配線を埋め込む場合には、導体配線の隙間に絶縁層が十分に充填されるようにするために、樹脂組成物は成型時に良好な流動性を有することが好ましい。一方、成型時に樹脂組成物が過度に流れ出さないようにするためには、樹脂組成物は過度な流動性を有さないことが好ましい。このような樹脂組成物の適度な流動性を付与するために、例えば無機フィラーの配合量が調整されるが、それだけで樹脂組成物に適度な流動性を付与することは難しい。
【0013】
そこで、発明者は、無機フィラーを含有し、かつ成形性に優れた樹脂組成物を開発すべく、研究を進めた結果、本開示の完成に至った。
【0014】
以下、本開示の一実施形態について説明する。
【0015】
本実施形態に係る樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A)と、無機フィラー(B)とを含有する。無機フィラー(B)は、第一のフィラー(B1)と、第一のフィラー(B1)よりも粒径が小さいナノサイズの第二のフィラー(B2)とを含有する。第一のフィラー(B1)は、無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)及びアルミナフィラー(b2)を含有する。樹脂組成物中の固形分全量に対する、第一のフィラー(B1)の割合は50体積%以上90体積%以下、かつ第二のフィラー(B2)の割合は0.1体積%以上2.0体積%以下である。固形分とは、樹脂組成物中の成分のうち、溶剤などの揮発性成分(硬化物に残らない成分)を除く成分のことである。
【0016】
樹脂組成物から樹脂フィルムを作製できる。樹脂組成物から樹脂付き金属箔を作製することもできる。樹脂組成物からプリプレグを作製することもできる。樹脂フィルム、樹脂付き金属箔及びプリプレグの各々から、金属張積層板及びプリント配線板を作製することもできる。
【0017】
本実施形態によると、アルミナフィラー(b2)は特に高い耐熱性を有することで、樹脂組成物の硬化物が高い耐熱性を有することができる。また、無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)は、結晶水を有さないことから良好な耐熱性を有するため、硬化物の耐熱性を阻害しにくい。更に、無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)の硬度はアルミナフィラー(b2)よりも低い。そのため、無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)は、樹脂組成物の硬化物をドリルで加工する場合にドリルを摩耗させにくくできる。このため、樹脂組成物の硬化物が、高い耐熱性とドリル加工性とを有しやすい。
【0018】
さらに、樹脂組成物は第二のフィラー(B2)によって成型時に適度な流動性を有することができる。これにより、特に樹脂組成物を成型して絶縁層を作製し、かつ絶縁層に導体配線を埋め込む場合には、導体配線における配線間の隙間に絶縁層が十分に充填されやすくなる。さらに、成型時の樹脂組成物の過度な流動が抑制され、例えば絶縁層から樹脂組成物が流出しにくくなって絶縁層の成型不良が生じにくくなる。
【0019】
これにより、本実施形態では、無機フィラーを含有し、かつ成型性に優れた樹脂組成物が得られる。
【0020】
本実施形態について、更に具体的に説明する。
【0021】
樹脂組成物の成分について説明する。
【0022】
熱硬化性樹脂(A)は、例えばモノマー及びプレポリマーのうちの少なくとも一方を含む。プレポリマーにはオリゴマーが含まれうる。熱硬化性樹脂(A)の重合反応のタイプは特に限定されない。重合反応の具体例として、連鎖重合及び逐次重合が挙げられる。連鎖重合の代表例として、ラジカル重合が挙げられる。逐次重合の代表例として、重付加が挙げられる。
【0023】
熱硬化性樹脂(A)は、例えばエポキシ樹脂(a)、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、トリアジン樹脂、マレイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、及び、1分子中にC-C不飽和結合を含む官能基を有するポリフェニレンエーテル樹脂、並びにこれらの樹脂の誘導体からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0024】
好ましくは、熱硬化性樹脂(A)は、エポキシ樹脂(a)及びフェノキシ樹脂のうちの少なくとも一方を含む。エポキシ樹脂(a)は、1分子中に2個以上のエポキシ環(オキシラン環)を有する樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂(a)は、液状でも固形でもよい。
【0025】
エポキシ樹脂(a)は、例えばビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性エポキシ樹脂、3官能エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、前記いずれかのエポキシ樹脂をハロゲン化した難燃化エポキシ樹脂、リン化合物で変性したエポキシ樹脂、エポキシ樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂との予備反応生成物、及び、エポキシ樹脂と酸無水物との予備反応生成物、並びにこれらの樹脂の誘導体からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0026】
ビスフェノール型エポキシ樹脂は、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びビスフェノールS型エポキシ樹脂、並びにこれらの樹脂の誘導体からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0027】
ノボラック型エポキシ樹脂は、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、並びにこれらの樹脂の誘導体からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0028】
アリールアルキレン型エポキシ樹脂は、例えばビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタンノボラック型エポキシ樹脂及びテトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、並びにこれらの樹脂の誘導体からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0029】
ナフタレン骨格変性エポキシ樹脂は、例えばナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンジオールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、メトキシナフタレン変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂及びメトキシナフタレンジメチレン型エポキシ樹脂、並びにこれらの樹脂の誘導体からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0030】
フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を直鎖状に高分子化した樹脂である。
【0031】
熱硬化性樹脂(A)は、液状樹脂(例えば室温で液状のエポキシ樹脂)を含有することが好ましい。
【0032】
熱硬化性樹脂(A)がエポキシ樹脂(a)を含有する場合、エポキシ樹脂(a)は、軟化点が75℃以下であるエポキシ樹脂(a1)を含有することが好ましい。エポキシ樹脂(a1)の割合は、エポキシ樹脂(a)に対して30質量%以上であることが好ましい。この場合、樹脂組成物から樹脂フィルム、プリプレグなどシート状の部材(シート材)を作製した場合に、シート材が良好な柔軟性を有しやすく、シート材を屈曲させても破損しにくくできる。エポキシ樹脂(a1)の割合は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であれば更に好ましい。エポキシ樹脂(a1)の割合が100質量%であってもよい。また、エポキシ樹脂(a1)の軟化点は、70℃以下であればより好ましく、65℃以下であれば更に好ましい。なお、軟化点は、JISK 7231(エポキシ樹脂及び硬化剤の試験方法通則)に準拠し、軟化点測定器を用いて環球法によって測定することができる。
【0033】
熱硬化性樹脂(A)がエポキシ樹脂(a)及びフェノキシ樹脂のうちの少なくとも一方を含有する場合、樹脂組成物は硬化剤を更に含有することが好ましい。硬化剤は、例えば、ジシアンジアミド、フェノール樹脂、酸無水物及びシアン酸エステルからなる群から選択される少なくとも一種を含有する。硬化剤は、特にジシアンジアミドを含有することが好ましい。その場合、樹脂フィルム1が良好な屈曲性を有しやすい。フェノール樹脂は、リン含有フェノール樹脂を含有してもよい。この場合、樹脂組成物の難燃性を向上させることができる。
【0034】
樹脂組成物は、触媒を更に含有してもよい。触媒は、熱硬化性樹脂(A)と硬化剤との反応を促進し得る。触媒は、例えば、有機酸の金属塩(金属石鹸など)、第三級アミン及びイミダゾール類からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。有機酸の金属塩は、例えばオクタン酸、ステアリン酸、アセチルアセトネート、ナフテン酸、サリチル酸及びオクチル酸等の有機酸の、Zn,Cu,Fe等の金属塩からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。有機酸の金属塩の一例として、オクチル酸亜鉛(ビス(2-エチルヘキサン酸)亜鉛)が挙げられる。第三級アミンは、例えばトリエチルアミン及びトリエタノールアミンなどからなる群から選択される少なくとも一種を含有する。イミダゾール類は、例えば2-エチル-4-メチルイミダゾール及び4-メチルイミダゾールなどからなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0035】
上述のとおり、樹脂組成物は、無機フィラー(B)を含有し、無機フィラー(B)は第一のフィラー(B1)と、第一のフィラー(B1)よりも粒径の小さいナノサイズの第二のフィラー(B2)とを含有する。なお、第一のフィラー(B1)の粒径はレーザー回折・散乱法によるメジアン径であり、第二のフィラー(B2)の粒径は第二のフィラー(B2)のBET比表面積から算出される値である。
【0036】
上述のとおり、固形分全量に対する、第一のフィラー(B1)の割合が50体積%以上90体積%以下、かつ第二のフィラー(B2)の割合が0.1体積%以上2.0体積%以下である。そのため、樹脂組成物は良好な成型性を有しやすい。すなわち、第一のフィラー(B1)の割合が50体積%以上であることで、樹脂組成物の熱伝導性及び耐熱性を向上することができ、90体積%以下であることで絶縁層の成型不良を生じにくくすることができる。また第二のフィラー(B2)の割合が0.1体積%以上であることで樹脂組成物に適度な流動性を付与することができ、2.0体積%以下であることで絶縁層の成型不良を生じにくくすることができる。
【0037】
第一のフィラー(B1)の割合は60体積%以上であればより好ましく、65体積%以上であれば更に好ましい。また、第一のフィラー(B1)の割合は87体積%以下であればより好ましく、85体積%以下であれば更に好ましい。第二のフィラー(B2)の割合は、0.2体積%以上であればより好ましく、0.3体積%以上であれば更に好ましい。また、第二のフィラー(B2)の割合は1.7体積%以下であればより好ましく、1.5体積%以下であれば更に好ましい。
【0038】
無機フィラー(B)を除く固形分に対する第二のフィラー(B2)の割合が、1.0体積%以上8.0体積%以下であることも好ましい。この場合、導体配線における隙間に絶縁層が更に充填されやすくなり、かつ絶縁層から樹脂組成物が更に流出しにくくなる。すなわち、第二のフィラー(B2)の割合が1.0体積%以上であることで樹脂組成物に適度な流動性を付与することができ、8.0体積%以下であることで絶縁層の成型不良を生じにくくすることができる。第二のフィラー(B2)の割合が1.1体積%以上であればより好ましく、1.2体積%以上であれば更に好ましい。また、第二のフィラー(B2)の割合が7.0体積%以下であればより好ましく、5.0体積%以下であれば更に好ましい。
【0039】
第一のフィラー(B1)は、例えば無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)及びアルミナフィラー(b2)を含有する。この場合、無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)は、結晶水を持たないので耐熱性が高い。アルミナフィラー(b2)は、無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)に比べて耐熱性が更に高い。そのため、第一のフィラー(B1)が無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)及びアルミナフィラー(b2)を含むことで、樹脂組成物に耐熱性を付与することができる。
【0040】
無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)の粒子の形状は、例えば、多面体状であるが、好ましくは丸みを帯びた形状である。無水炭酸マグネシウムは、結晶水を持たないことから、無水炭酸マグネシウムの二水和物、三水和物及び五水和物に比べて、熱安定性に優れている。そのため、第一のフィラー(B1)が無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)を含むことで、樹脂組成物の耐熱性が向上しやすい。樹脂組成物の耐熱性を更に向上するためには、第一のフィラー(B1)は、炭酸マグネシウムの水和物を含有せず、又は第一のフィラー(B1)中の炭酸マグネシウムの水和物は不可避的に混入した微量の不純物のみであることが、好ましい。
【0041】
無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)は、無機物としては比較的高い熱伝導率を有する。したがって、無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)は、樹脂組成物の熱伝導性を向上させることができる。
【0042】
また、無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)は、比較的モース硬度の低い結晶であるため、樹脂組成物から作製された絶縁層をドリルで加工する場合に、ドリルを摩耗されにくくできる。すなわち、無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)は、絶縁層のドリル加工性を高めやすい。
【0043】
好ましくは、無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)の、レーザー回折・散乱法によるメジアン径は、8μm以上30μm以下である。メジアン径が8μm以上であることで、無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)と熱硬化性樹脂(A)との接触面積が減少し、樹脂組成物の硬化物の熱伝導性を低下させにくくできる。メジアン径が30μm以下であることで、樹脂組成物の硬化物の電気絶縁性を低下させにくくできる。無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)のメジアン径は、8μm以上25μm以下であればより好ましく、8μm以上20μm以下であれば更に好ましい。
【0044】
アルミナフィラー(b2)は、無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)に比べて高い熱伝導率及び耐熱性を有するので、樹脂組成物の硬化物の熱伝導性及び耐熱性を更に向上させることができる。
【0045】
好ましくは、アルミナフィラー(b2)の粒子の形状は、丸みを帯びた形状である。丸みを帯びた形状とは、とがって突出した部分を有しない形状を意味する。例えば、丸みを帯びた形状には、球状及び回転楕円体状が含まれるが、板状、多面体状、直方体状、棒状、針状及び鱗片状は含まれない。アルミナフィラー(b2)を構成する粒子が丸みを帯びていると、成形時の樹脂組成物の流動性が向上しやすいので、樹脂組成物の成形性が向上しやすい。
【0046】
アルミナフィラー(b2)のモース硬度は比較的大きいので、アルミナフィラー(b2)のメジアン径は小さいほど好ましい。具体的には、アルミナフィラー(b2)のメジアン径は、0.1μm以上5μm以下であることが好ましい。この場合、樹脂組成物の硬化物をドリルで加工する場合にドリルが摩耗しにくくなる。アルミナフィラー(b2)のメジアン径は0.1μm以上4.0μm以下であればより好ましく、0.1μm以上3.0μm以下であれば更に好ましい。
【0047】
無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)の割合は、無機フィラー(B)に対して、25体積%以上75体積%以下であることが好ましい。無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)の割合が35体積%未満であると、相対的にアルミナフィラー(b2)の割合が多くなる。アルミナフィラー(b2)は硬度が大きいので、アルミナフィラー(b2)の割合が多くなると、ドリル加工性が低下しやすくなる。無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)の割合が65体積%を超えると、相対的にアルミナフィラー(b2)の割合が少なくなる。無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)の形状(粒子の形状)が丸みを帯びていない形状(例えば多面体状)であれば、無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)の含有量が多くなると、たとえアルミナフィラー(b2)の形状(粒子の形状)が丸みを帯びた形状であったとしても、樹脂組成物の成型性が低下しやすくなる。無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)の割合は、30体積%以上70体積%以下であればより好ましく、35体積%以上65体積%以下であれば更に好ましい。
【0048】
また、アルミナフィラー(b2)の割合は、無機フィラー(B)に対して、25体積%以上75体積%以下であることが好ましく、30体積%以上70体積%以下であればより好ましく、35体積%以上65体積%以下であれば更に好ましい。
【0049】
好ましくは、無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)のメジアン径は、アルミナフィラー(b2)のメジアン径よりも大きい。この場合、樹脂組成物中及びその硬化物中で、第一のフィラー(B1)が密に充填されやすい。そうすると、無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)及びアルミナフィラー(b2)の粒子同士が近接して熱伝導パスが形成されやすくなるので、樹脂組成物及びその硬化物の熱伝導性が高まりやすい。特に好ましくは、上述のとおり、無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)のメジアン径が8μm以上30μm以下であり、かつ、アルミナフィラー(b2)のメジアン径が5μm以下である。この場合、熱伝導性が更に高まりやすい。
【0050】
第一のフィラー(B1)は、無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)及びアルミナフィラー(b2)以外の成分を更に含有してもよい。例えば第一のフィラー(B1)は、モリブデン化合物が担持された無機フィラー(b3)を更に含有してもよい。無機フィラー(b3)の粒子は、例えば無機物のコアとコアに担持されたモリブデン化合物とを有する。例えば、無機フィラー(b3)の粒子においては、コアの表面の一部または全部が、モリブデン化合物で覆われている。
【0051】
無機フィラー(b3)における無機物は、特に限定されない。無機物は、例えば炭酸塩、金属酸化物、ケイ酸塩及び金属水酸化物などからなる群から選択される少なくとも一種を含有する。炭酸塩は、例えば炭酸カルシウムを含有する。金属酸化物は、例えば酸化亜鉛を含有する。ケイ酸塩は、例えばタルクを含有する。金属水酸化物は、例えば水酸化マグネシウムを含有する。
【0052】
モリブデン化合物は、特に限定されない。モリブデン化合物は、例えばモリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸マグネシウム、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸バリウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、リンモリブデン酸、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸ナトリウム、ケイモリブデン酸、ホウ化モリブデン、ニケイ化モリブデン、窒化モリブデン及び炭化モリブデンなどからなる群から選択される少なくとも一種を含有する。化学的安定性、耐湿性及び絶縁性の観点から、モリブデン化合物が、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム及びモリブデン酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。
【0053】
第一のフィラー(B1)が無機フィラー(b3)を含有する場合、無機フィラー(b3)において無機物のコアにモリブデン化合物が担持されているので、樹脂組成物の硬化物のドリル加工性が更に向上しやすい。特に、無機フィラー(b3)におけるコアがタルクであれば、ドリル加工性を更に向上させやすい。
【0054】
第一のフィラー(B1)が無機フィラー(b3)を更に含む場合、好ましくは無機フィラー(b3)の割合は、無機フィラー(B)に対して、10体積%以下である。無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)及びアルミナフィラー(b2)に比べて無機フィラー(b3)の耐熱性が低い場合があり得る。そのため、無機フィラー(b3)の割合が10体積%以下であることで、樹脂組成物の耐熱性の低下を抑制することができる。
【0055】
第一のフィラー(B1)は、カップリング剤で表面処理されていることが好ましい。この場合、熱硬化性樹脂(A)と第一のフィラー(B1)との密着性を向上させることができる。表面処理の方法は、湿式処理法でも乾式処理法でもよい。無水炭酸マグネシウムフィラー(b1)とアルミナフィラー(b2)とのうち少なくとも一方がカップリング剤で表面処理されていることも好ましい。
【0056】
カップリング剤は、1分子内に、無機材料と化学結合する反応基と、有機材料と化学結合する反応基と、を有するものであれば、特に限定されない。無機材料と化学結合する反応基の具体例として、エトキシ基及びメトキシ基が挙げられる。有機材料と化学結合する反応基の具体例として、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、フェノール性ヒドロキシ基及び酸無水物基が挙げられる。
【0057】
カップリング剤には、シランカップリング剤が含まれる。シランカップリング剤は、例えば、エポキシシラン、アミノシラン、イソシアネートシラン及び酸無水物シランを含む。エポキシシランの具体例として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。アミノシランの具体例として、3-アミノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。イソシアネートシランの具体例として、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0058】
一方、第二のフィラー(B2)の粒径は上記のとおりナノサイズであり、かつ第一のフィラー(B1)の粒径より小さい。このため、第二のフィラー(B2)は第一のフィラー(B1)と比較して比表面積が大きいので、樹脂組成物に適度な流動性を付与できる。第二のフィラー(B2)の粒径は100nm未満であることが好ましく、50nm以下であれば更に好ましい。この場合、より少量で樹脂組成物に適度な流動性を付与できる。また、第二のフィラー(B2)の、BET法による比表面積は、100m2/g以上400m2/g以下であることが好ましい。比表面積が100m2/g以上であることで樹脂組成物に適度な流動性を付与でき、400m2/g以下であることで絶縁層の成型不良を生じにくくすることができる。この比表面積は130m2/g以上350m2/g以下であればより好ましく、150m2/g以上300m2/g以下であれば更に好ましい。
【0059】
第二のフィラー(B2)の材質には特に制限はない。第二のフィラー(B2)は、シリカとアルミナとのうち少なくとも一方を含有することが好ましい。シリカは、例えばフュームドシリカなどの乾式シリカと、ゾルゲル法などの湿式法で製造された湿式シリカとのうち、少なくとも一方を含有する、アルミナは例えばフュームドアルミナなどの乾式アルミナを含有する。
【0060】
第二のフィラー(B2)は、疎水化処理が施されていることが好ましい。特に第二のフィラー(B2)は、アルキルシラン、シリコーンオイル、エポキシシラン、アミノシラン、イソシアネートシラン及び酸無水物シランよりなる群から選択される少なくとも一種の表面処理剤で処理されていることが好ましい。この場合、第二のフィラー(B2)は、粒径が小さくても樹脂組成物中で良好に分散しやすく、そのため樹脂組成物の流動性を阻害しにくい。
【0061】
樹脂組成物は、上記以外の添加剤を更に含有してもよい。添加剤は、例えば難燃剤、カップリング剤及び分散剤等からなる群から選択される少なくとも一種を含む。難燃剤は有機系難燃剤でも無機系難燃剤でもよい。有機系難燃剤は、例えばハロゲン化合物及びリン化合物等からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。リン化合物は、例えばリン酸エステル系難燃剤、ホスファゼン系難燃剤、ビスジフェニルホスフィンオキサイド系難燃剤及びホスフィン酸塩系難燃剤等から選択される少なくとも一種を含有する。リン酸エステル系難燃剤は、例えばジキシレニルホスフェートの縮合リン酸エステル等を含有する。ホスファゼン系難燃剤は、例えばフェノキシホスファゼン等を含有する。ビスジフェニルホスフィンオキサイド系難燃剤は、例えばキシリレンビスジフェニルホスフィンオキサイド等を含有する。ホスフィン酸塩系難燃剤は、例えばジアルキルホスフィン酸アルミニウム塩のホスフィン酸金属塩等を含有する。無機系難燃剤は、例えば金属水酸化物を含有する。
【0062】
カップリング剤は、1分子内に、無機材料と化学結合する反応基と、有機材料と化学結合する反応基と、を有するものであれば、特に限定されない。無機材料と化学結合する反応基の具体例として、エトキシ基及びメトキシ基が挙げられる。有機材料と化学結合する反応基の具体例として、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、フェノール性ヒドロキシ基及び酸無水物基が挙げられる。カップリング剤には、シランカップリング剤が含まれる。シランカップリング剤は、例えば、エポキシシラン、アミノシラン、イソシアネートシラン及び酸無水物シランを含む。エポキシシランの具体例として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。アミノシランの具体例として、3-アミノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。イソシアネートシランの具体例として、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。樹脂組成物がカップリング剤を更に含有することで、有機材料と無機材料との密着性を向上させることができる。
【0063】
分散剤は、界面活性剤の一種であり、特に限定されない。樹脂組成物が分散剤を更に含有すると、第一のフィラー(B1)及び第二のフィラー(B2)の分散性が高まりやすい。
【0064】
上記の成分を混合するなどして、樹脂組成物を調製できる。熱硬化性樹脂(A)が常温で固形である場合には樹脂組成物が溶媒を更に配合することが好ましい。溶媒は、少なくとも熱硬化性樹脂(A)を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、メチルエチルケトンが挙げられる。熱硬化性樹脂(A)が常温で液状である場合には溶媒を更に配合しなくてもよい。
【0065】
本実施形態に係る樹脂フィルム1は、樹脂組成物、樹脂組成物の乾燥物又は樹脂組成物の半硬化物を含む。樹脂フィルム1は、例えば、支持フィルムに樹脂組成物を塗布した後、樹脂組成物を加熱することで作製される。樹脂フィルム1は、支持フィルムから剥離して使用される。支持フィルムは、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。
【0066】
樹脂フィルム1を硬化させることで、例えば金属張積層板4の絶縁層40、及び、プリント配線板5の絶縁層50を作製できる。
【0067】
樹脂フィルム1の厚さは、例えば50μm以上200μm以下であるが、これに制限されない。
【0068】
本実施形態に係る樹脂付き金属箔2は、樹脂層20と、樹脂層20に重なる金属箔21とを備える。樹脂層20は、樹脂組成物、樹脂組成物の乾燥物又は樹脂組成物の半硬化物を含む。
【0069】
樹脂付き金属箔2は、例えば、金属箔21に樹脂組成物を塗布した後、樹脂組成物を加熱することで樹脂層20を作製することで、製造される。
【0070】
樹脂付き金属箔2の樹脂層20を硬化させることで、例えば、金属張積層板4の絶縁層40及びプリント配線板5の絶縁層50を作製できる。
【0071】
本実施形態に係るプリプレグ3は、基材と、基材に含浸している樹脂組成物、樹脂組成物の乾燥物、又は前記樹脂組成物の半硬化物とを備える。
【0072】
プリプレグ3は、例えば、基材31に樹脂組成物を含浸させた後、加熱することで作製される。基材31は、例えばガラスクロスである。
【0073】
プリプレグ3を硬化させることで、例えば金属張積層板4の絶縁層40及びプリント配線板5の絶縁層50を作製できる。
【0074】
本実施形態に係る金属張積層板4は、
図4に示すように、絶縁層40と、金属箔41と、を備える。絶縁層40は、樹脂組成物の硬化物を含む。金属箔41は、絶縁層40に接着されている。
【0075】
金属箔41は、例えば銅箔である。金属箔41の厚さは特に限定されないが、好ましくは12μm以上420μm以下であり、より好ましくは18μm以上210μm以下である。金属箔41の十点平均粗さRzjisも特に限定されないが、好ましくは3μm以上であり、より好ましくは5μm以上である。金属箔41の十点平均粗さRzjisが3μm以上であれば、絶縁層40と金属箔41との密着性を更に向上させることができる。
【0076】
金属張積層板4は、例えば、1枚のプリプレグ3又は2枚以上のプリプレグ3を積層したものの、片面又は両面に金属箔41を重ねて得られる積層物を、熱ブレスすることによって製造することができる。好ましくは、プリプレグ3に金属箔41を重ねる前に、金属箔41の表面(少なくともプリプレグ3に重なる面)をカップリング剤で処理する。金属箔41がカップリング剤で表面処理されていると、カップリング剤が、プリプレグ3中の有機材料と金属箔41とを結合することで、絶縁層40と金属箔41との密着性を更に向上させることができる。カップリング剤は、上述のものが使用可能である。熱プレスの条件は特に限定されない。
図4は、絶縁層40中に2枚の基材31を有する金属張積層板4を示している。本実施形態では、樹脂組成物は適度な流動性を有するため、樹脂組成物から作製されたプリプレグからは、積層物を熱プレスする際に、樹脂組成物、樹脂組成物の乾燥物又は樹脂組成物の半硬化物が、流出しにくい。このため、成型不良が生じ難い。
【0077】
本実施形態に係るプリント配線板5は、
図5A及び
図5Bに示すように、絶縁層50と、導体層51と、を備える。絶縁層50は、樹脂組成物の硬化物を含む。導体層51は、絶縁層50に接着されている。導体層51とは、信号層、電源層及びグラウンド層などの導電性がある層をいう。導体層51は、導体配線であってもよく、パターンを有さない金属箔であってもよい。なお、プリント配線板5は、3層以上の導体層51を備える多層プリント配線板を含む概念である。特に
図5Bは、3層の導体層51を備える多層のプリント配線板5を示している。
【0078】
プリント配線板5は、例えば、上述の金属張積層板4を材料としてサブトラクティブ法を使用することにより製造することができる。ビルドアップ法を使用してプリント配線板5を多層化してもよい。
【0079】
具体的には、例えば金属張積層板4の金属箔41から、サブトラクティブ法などにより、導体層51として導体配線を作製することで、
図5Aに示すプリント配線板5を製造できる。金属張積層板4をドリルで加工して孔を作製し、導体配線の作製時に孔の内面をめっきすることでビアを作製してもよい。すなわちビアを有するプリント配線板5を作製してもよい。この場合、本実施形態では、ドリルが摩耗しにくい。
【0080】
プリント配線板5を次のように製造することもできる。金属張積層板4の金属箔41から、サブトラクティブ法などにより、導体層51として導体配線を作製することで、コア材6を作製する。すなわち、
図5Aに示すプリント配線板5をコア材6とする。このコア材6と樹脂付き金属箔2とを、コア材6の一つの導体配線に樹脂付き金属箔2の樹脂層20が重なるように積層する。この状態で、コア材6と樹脂付き金属箔2とを熱プレスする。このとき、本実施形態では、樹脂組成物は適度な流動性を有するため、樹脂組成物から作製された樹脂層20からは、樹脂組成物、樹脂組成物の乾燥物又は樹脂組成物の半硬化物が、流出しにくい。また、樹脂層20は導体配線の隙間に流入しやすい。この樹脂層20が硬化することで絶縁層22が作製され、このとき、導体配線の隙間に絶縁層22が十分に充填されやすい。続いて、樹脂付き金属箔2に由来する金属箔21から、サブトラクティブ法などにより、導体層51である導体配線を作製することができる。これにより、
図5Bに示すように、多層のプリント配線板5を作製できる。この多層のプリント配線板5は、絶縁層50として、コア材6に由来する絶縁層40と、樹脂付き金属箔2の樹脂層20から作製された絶縁層22とを、備える。またこの多層のプリント配線板5をコア材として用い、前記と同様に樹脂付き金属箔2を用いることで、更に多層のプリント配線板5を製造することもできる。このプリント配線板5をドリルで加工して孔を形成し、この孔の内面をめっきすることでビアを作製することもできる。この場合、本実施形態ではドリルが摩耗しにくい。
【0081】
プリント配線板5を次のように製造することもできる。コア材6と樹脂フィルム1と金属箔とを、コア材6の導体配線に樹脂フィルム1が重なり、その上に金属箔が重なるように積層する。この状態で、コア材6と樹脂フィルム1と金属箔とを熱プレスする。このとき、本実施形態では、樹脂組成物は適度な流動性を有するため、樹脂組成物から作製された樹脂フィルム1からは、樹脂組成物、樹脂組成物の乾燥物又は樹脂組成物の半硬化物が、流出しにくい。また、樹脂フィルム1は導体配線の隙間に流入しやすい。この樹脂フィルム1が硬化することで絶縁層が作製され、このとき、導体配線の隙間に絶縁層が十分に充填されやすい。続いて、金属箔から、サブトラクティブ法などにより、導体配線を作製することができる。これにより、多層のプリント配線板5を作製できる。またこの多層のプリント配線板5をコア材として用い、前記と同様に樹脂付き金属箔を用いることで、更に多層のプリント配線板5を製造することもできる。このプリント配線板5をドリルで加工して孔を形成し、この孔の内面をめっきすることでビアを作製することもできる。この場合、本実施形態ではドリルが摩耗しにくい。
【0082】
なお、上記の説明では、本実施形態に係る樹脂組成物から作製された絶縁層40を備える金属張積層板4からコア材6を作製し、このコア材6からプリント配線板5を製造しているが、コア材6は前記のみには限られず、すなわちコア材6における絶縁層40は本実施形態に係る樹脂組成物から作製されていなくてもよい。
【実施例】
【0083】
以下、本実施形態の具体的な実施例を提示する。なお、本実施形態は下記の実施例のみには制限されない。
【0084】
1.原料
下記の原料を用意した。
-エポキシ樹脂1:DIC株式会社製。ナフタレン型液状エポキシ樹脂。品名HP-4032D。比重1.20。室温で液状。
-エポキシ樹脂2:DIC株式会社製。ナフタレン型エポキシ樹脂。品名HP-4710。比重1.20。軟化点95℃。
-エポキシ樹脂3:ビスフェノールA型エポキシ樹脂。DIC株式会社製。品名エピクロン850-S。比重1.15。室温で液状。
-エポキシ樹脂4:3官能エポキシ 樹脂。プリンテック社製。品名VG-3101。比重1.18。軟化点61℃。
-フェノキシ樹脂:日鉄ケミカル&マテリアル社製。品名YP-50。
-ポリフェニレンエーテル樹脂:SABICジャパン社製。品名SA-90。
-フェノール樹脂1:リン含有フェノール樹脂。ダウケミカルカンパニー製。品名XZ92741。
-フェノール樹脂2:明和化成社製。品名MEH-7600-4H。
-硬化剤:ジシアンジアミド。
-触媒:2-エチル-4-メチルイミダゾール。
-難燃剤:大八化学工業株式会社製。リン酸エステル。品名PX-200。比重1.26。
-カップリング剤:信越化学工業株式会社製。シランカップリング剤。品名KBE-403。比重1.00。
-分散剤:ビックケミー・ジャパン株式会社製。湿潤分散剤。品名BYK-W903。比重1.00。
-レベリング剤:DIC株式会社製。品名F-556。比重1.00。
-無水炭酸マグネシウムフィラー:神島化学工業株式会社製。合成マグネサイト。品名MS-PS。メジアン径12μm。比重3.04。
-アルミナフィラー:株式会社アドマテックス製。球状アルミナ。品名AO-502。メジアン径0.25μm。比重3.96。
-タルク:Huber社製。モリブデン酸カルシウムが担持された炭酸カルシウム。品名KG-501。メジアン径4.5μm。比重3.00。
-乾式シリカ1:エボニック社製。フュームドシリカ。品名Aerosil R972。BET比表面積110m2/g。比重2.20。
-乾式シリカ2:エボニック社製。フュームドシリカ。品名Aerosil R974。BET比表面積170m2/g。比重2.20。
-乾式シリカ3:エボニック社製。フュームドシリカ。品名Aerosil R976S。BET比表面積240m2/g。比重2.20。
-乾式シリカ4:エボニック社製。フュームドシリカ。品名Aerosil RX200R。BET比表面積140m2/g。比重2.20。
-乾式シリカ5:エボニック社製。フュームドシリカ。品名Aerosil RX300。BET比表面積210m2/g。比重2.20。
-乾式シリカ6:エボニック社製。フュームドシリカ。品名Aerosil R805。BET比表面積150m2/g。比重2.20。
-乾式アルミナ:エボニック社製。フュームドアルミナ。品名Aeroxide AluC805。BET比表面積90m2/g。比重3.96。
-湿式シリカ1:日産化学社製。メチルエチルケトン分散シリカゾル。品名MEK-EC-2130Y。BET比表面積230m2/g。比重2.20。
-湿式シリカ2:日産化学社製。メチルエチルケトン分散シリカゾル。品名MEK-EC-2430Z。BET比表面積230m2/g。比重2.20。
【0085】
なお、乾式シリカ、乾式アルミナ、及び湿式シリカの各々は、アルキルシラン、シリコーンオイル及びエポキシシランから選択される少なくとも一種の表面処理剤で表面処理されている。表面処理の手法としては、乾式フィラー(乾式シリカ及び乾式アルミナ)の場合はオルガノハロゲンシランを用いて流動床中で疎水化する手法又はオルガノポリシロキサンをアルカリ触媒を用いて疎水化する手法を行っている。湿式シリカの場合は、親水性のコロイダルシリカに対してシリル化剤、疎水性有機溶媒、アルコール及び水を含有する混合物を加え、アルカリが除去され又は当量以上の酸で中和された状態で、0℃以上100℃以下で熟成することにより、疎水化する手法を行っている。
【0086】
2.組成物の調製
上記の原料を、表1から表3に示す組成で混合してから、メチルエチルケトン及びジメチルホルムアミドを固形分濃度が80~95質量%となるように加え、プラネタリーミキサーで攪拌することによって、組成物を調製した。
【0087】
3.樹脂フィルムの作製
組成物をポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布してから、約150℃で3~5分加熱することで樹脂組成物を半硬化させることで、厚み100μmの樹脂フィルムを製造した。
【0088】
4.評価試験
(1)フィルム性
樹脂フィルムを、直径10mmのSUS製の棒に巻き付けた場合と、直径100mmのSUS製の棒に巻き付けた場合との、樹脂フィルムの外観を確認した。
【0089】
その結果、いずれの棒に巻き付けた場合も樹脂フィルムにクラックが認められない場合を「A」、直径10mmのSUS製の棒に巻き付けた場合にのみ樹脂フィルムにクラックが認められた場合を「B」、いずれの棒に巻き付けた場合も樹脂フィルムにクラックが認められた場合を「C」と、評価した。
【0090】
(2)樹脂流れ性
樹脂フィルムを平面視100mm×100mmの寸法にカットして試験用のサンプルを作製した。このサンプルを2枚重ねて重量を測定した。
【0091】
離型処理をしたポリエチレンテレフタレートフィルムの、離型処理がされた面同士を対向させ、その間に2枚重ねたサンプルを配置した。この状態でサンプルをポリエチレンテレフタレートフィルムごと130℃、5分、0.5MPaの条件(条件1)で熱プレスすることで、サンプルから硬化物を作製した。硬化物を金型で打ち抜いて平面視80mmΦの処理後サンプルを作製し、その重量を測定した。サンプルの重量M0及び処理後サンプルの重量Mから、下記の式により、樹脂流れを算出した。
樹脂流れ(%)=(M0-2M)/M0×100
熱プレスを、130℃、5分、2.0MPaの条件(条件2)で行った場合についても、同様に樹脂流れを算出した。
【0092】
条件1での樹脂流れが30%以下かつ条件2での樹脂流れが45%超である場合を「A」、条件1での樹脂流れが30%超かつ条件2での樹脂流れが45%超である場合を「B」、条件1での樹脂流れが30%以下かつ条件2での樹脂流れが45%以下である場合を「C」と、評価した。
【0093】
(3)充填性
両面銅張積層板(パナソニック株式会社製、品番R-1566、銅箔35μm)を用意した。この両面銅張積層板の銅箔にエッチング処理を施して格子状の導体配線を作製し、試験用のプリント配線板を得た。プリント配線板における二つの導体配線の各々に樹脂フィルムを1枚重ねて、200℃、2.94MPa(30kgf/cm2)、60分間の条件で熱プレスすることで、積層体を作製した。導体配線の残銅率が20%、50%及び80%の場合の各々について同じ試験を行った。
【0094】
積層体における樹脂フィルムから作製された絶縁層の内部におけるボイドの有無を目視で確認し、ボイドが認められない場合を「A」、ボイドが認められた場合を「B」と、評価した。
【0095】
(4)熱伝導率
8枚の厚み100μmの樹脂フィルムを積層し、これらを2枚の銅箔(厚さ35μm)の粗化面の間に挟んで195℃、2.94MPa(30kgf/cm2)で60分間熱プレスすることで、絶縁層全体の厚さが800μmの銅張積層板(CCL)を製造した。
【0096】
銅張積層板の銅箔をエッチングにより除去して得られた樹脂板の熱拡散率αをレーザーフラッシュ法で、比熱CpをDSC法で、比重ρを水中置換法で、それぞれ評価した。これらの結果から、熱伝導率λを下記の計算式により算出した。
【0097】
λ(W/m・K)=α(m2/s)×Cp(J/kg・K)×ρ(kg/m3)
以上の試験結果を表1から表4に示す。
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【符号の説明】
【0102】
1 樹脂フィルム
2 樹脂付き金属箔
20 樹脂層
21 金属箔
3 プリプレグ
31 基材
4 金属張積層板
40 絶縁層
41 金属箔
5 プリント配線板
50 絶縁層
51 導体層