(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】積層体、電子部品及びコンデンサ
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20241213BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20241213BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20241213BHJP
B32B 9/04 20060101ALI20241213BHJP
C01B 33/40 20060101ALI20241213BHJP
H01G 2/10 20060101ALI20241213BHJP
H01G 4/224 20060101ALI20241213BHJP
H01G 4/32 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B7/12
B32B9/00 A
B32B9/04
C01B33/40
H01G2/10 J
H01G4/224 200
H01G4/32 511L
(21)【出願番号】P 2022572076
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(86)【国際出願番号】 JP2021044688
(87)【国際公開番号】W WO2022138105
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2020211658
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 崇幸
(72)【発明者】
【氏名】大野 航太朗
(72)【発明者】
【氏名】島崎 幸博
(72)【発明者】
【氏名】竹岡 宏樹
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-156972(JP,A)
【文献】特開2005-035167(JP,A)
【文献】国際公開第2010/024378(WO,A1)
【文献】特開2019-014609(JP,A)
【文献】特開2013-133236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 -43/00
C01B33/00 -33/193
H01G 2/10
H01G 4/224
H01G 4/32 - 4/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性樹脂を含む基材層と、
前記結晶性樹脂とは異なる樹脂を含み、前記基材層の一方の面に設けられている接着層と、
前記接着層を介して前記基材層の前記一方の面に設けられている粘土層と、を有し、
前記基材層は、結晶性ポリプロピレンを含み、
前記接着層は、前記結晶性ポリプロピレンよりも結晶性の小さい非晶質ポリオレフィンを含み、
前記接着層の粘着性発現温度が130℃以下である、
積層体。
【請求項2】
前記接着層が、極性基を有する樹脂を含む、
請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記基材層が、二軸延伸ポリプロピレンフィルムである、
請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記基材層の他方の面にアルミニウム層又はポリビニルアルコール層を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
電子部品素子と、
前記電子部品素子の周囲の少なくとも一部を被覆するバリアフィルムと、を備え、
前記バリアフィルムが、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体を含む、
電子部品。
【請求項6】
請求項5に記載の電子部品の前記電子部品素子が、コンデンサ素子を含む、
コンデンサ。
【請求項7】
前記コンデンサ素子が、誘電体フィルム上に導電層を形成した一対の金属化フィルムを有し、
前記一対の金属化フィルムは、前記導電層が前記誘電体フィルムを介して対向するように巻回されており、
前記誘電体フィルムが前記基材層を構成する樹脂と同種の樹脂で構成されている、
請求項6に記載のコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体、電子部品及びコンデンサに関し、より詳細には、粘土層を有する積層体、この積層体を備えた電子部品及びコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、粘土フィルムの製造方法が記載されている。この方法は、主としてアルミニウムイオン及び/又はマグネシウムイオンと酸素イオン及び/又は水酸化物イオンとを有する八面体結晶構造からなる八面体シートを含む層と、複数の前記層の間に存在する陽イオンと、を含有する第1の粘土材料を準備する第1工程と、前記陽イオンの少なくとも一部をリチウムイオンに置換して第2の粘土材料を得る第2工程と、前記第2の粘土材料をフィルム状に成形してフィルム材料を得る第3工程と、前記フィルム材料に熱処理を施して前記リチウムイオンの少なくとも一部を前記層の間から前記八面体シート内に移動させる第4工程と、を備える。
【0003】
特許文献2には、粘土膜複合体が記載されている。この粘土膜複合体は、粘土のみ、又は粘土と添加物から構成される粘土膜の少なくとも片面に水蒸気透過度が1.0g/m2・day以下の水蒸気バリア層を設け、該水蒸気バリア層と該粘土膜とを溶融接着させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4973856号公報
【文献】特許第5563289号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示は、水蒸気バリア性が良好で、基材層と粘土層との密着性が優れる積層体を提供することを目的とする。
【0006】
また本開示は、上記積層体を使用した電子部品及びコンデンサを提供することを目的とする。
【0007】
本開示の一態様に係る積層体は、基材層と接着層と粘土層とを有する。前記基材層は、結晶性樹脂を含む。前記接着層は、前記結晶性樹脂とは異なる樹脂を含み、前記基材層の一方の面に設けられている。前記粘土層は、前記接着層を介して前記基材層の前記一方の面に設けられている。前記接着層の粘着性発現温度が130℃以下である。
【0008】
本開示の一態様に係る電子部品は、電子部品素子と、前記電子部品素子の周囲の少なくとも一部を被覆するバリアフィルムと、を備える。前記バリアフィルムが、前記積層体を含む。
【0009】
本開示の一態様に係るコンデンサは、前記電子部品の前記電子部品素子が、コンデンサ素子を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1Aは、本実施形態に係る積層体の一実施形態を示す断面図である。
図1Bは、鉱物粒子の一例を示す概略の斜視図である。
図1Cは、粘土層の一例を示す概略の断面図である。
【
図2】
図2A~
図2Dは、本実施形態に係る電子部品の一実施形態を示す断面図である。
【
図3】
図3A及び
図3Bは、本実施形態に係る電子部品の他の一実施形態を示す断面図である。
【
図4】
図4Aは、巻回型コンデンサ素子の製造方法の一工程図(斜視図)である。
図4Bは、上記巻回型コンデンサ素子の斜視図である。
【
図5】
図5Aは、積層型コンデンサ素子の製造方法の一工程図(斜視図)である。
図5Bは、積層型コンデンサ素子の製造方法の一工程図(断面図)である。
図5Cは、
図5Bに示す積層型コンデンサ素子の一部破断した斜視図である。
図5Dは、上記積層型コンデンサ素子の斜視図である。
【
図6】
図6は、粘着性発現温度の測定方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)概要
まず、本実施形態に係る積層体に至った経緯について説明する。
【0012】
スメクタイトに代表される粘土は、静置乾燥させることで、鉱物粒子が層状配列した粘土膜となり高いガスバリア性を発揮する。そこで、特許文献1及び2に記載のような、粘土層を有する粘土フィルム及び粘土膜複合体が提案されている。
【0013】
しかし、特許文献1では、熱処理として350~500℃程を数時間かける必要があり、フィルムを基材とする場合は大きな制限がある。例えば、160℃付近に融点をもつポリプロピレン等は基材として使用できないことがあった。また、水系のバインダを添加物として使用した場合、高温高湿下ではバインダの膨潤により特性が低下することがあった。
【0014】
また特許文献2では、基材フィルムである水蒸気バリア層と粘土膜とを熱圧着し溶融接着しているが、基材フィルムの融点を超えるような熱圧着が必要となり、工程の簡便さに欠けている。また特性向上として水蒸気透過度1g/mm2・day以下の基材フィルムを使用しているため、安価で汎用性のあるフィルムを用いることができないことがあった。
【0015】
そこで、本実施形態に積層体は、水蒸気バリア性のよい結晶性樹脂を含む基材層を使用することにより、粘土層に達する水蒸気を少なくしている。これにより、水蒸気バリア性が良好な積層体が得られる。また本実施形態に係る積層体は、基材層と粘土層との間に接着層を有しているので、基材層と粘土層とを溶融接着しなくても低温プロセスで接着することができる。これにより、基材層と粘土層との密着性が向上し、粘土層にクラック等の異常が発生するのを低減することができる。
【0016】
(2)詳細
(2-1)積層体
本実施形態に係る積層体30は、
図1Aに示すように、基材層33と接着層32と粘土層31とを有している。基材層33は、結晶性樹脂を含んでいる。接着層32は、基材層33に含まれている結晶性樹脂とは異なる樹脂を含んでいる。また接着層32は、基材層33の一方の面(表面)に設けられている。粘土層31は接着層32を介して基材層33の一方の面に設けられている。積層体30は、例えば、フィルム、シート及び板などの形態を有している。
【0017】
<基材層>
基材層33は、結晶性樹脂を含んでいる。基材層33として使用される樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルペンテン、シクロオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィッド、シンジオタクティックポリスチレン系、エポキシ樹脂などが例示される。基材層33は、上記例示された一種又は複数種の結晶性樹脂を含んでいる。基材層33は、上記例示された複数種の結晶性樹脂の中でも、水蒸気バリア性の良好なポリプロピレンを含んでいることが好ましい。水蒸気バリア性とは、水蒸気が通過しにくい性質を言う。例えば、ポリプロピレン製のフィルムは、水蒸気通過度が4~5g/(m2・d)程度であり、良好な水蒸気バリア性を有している。
【0018】
基材層33は、例えば、フィルム、シート及び板などの形態を有している。基材層33の厚みは、電気絶縁性及び可撓性などを考慮して適宜設定されるが、例えば、数十μmであることが好ましく、10μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0019】
基材層33は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムであることが好ましい。これにより、二軸延伸されていない通常のポリプロピレンフィルムで形成された基材層33よりも、水蒸気バリア性を向上させることができる。
【0020】
<接着層>
接着層32は基材層33と粘土層31とを接着するための層である。基材層33と粘土層31は、接着層32により接着され、密着性が優れる。ここで、「密着性が優れる」とは、JIS K 5600-5-6に準拠した評価法(クロスカット法)で、粘土層31が接着層32及び基材層33から剥がれないことを言う。
【0021】
接着層32は、基材層33に含まれている結晶性樹脂とは異なる樹脂を含んでいる。例えば、基材層33に含まれている結晶性樹脂が結晶性ポリプロピレンの場合、接着層32は結晶性ポリプロピレン以外の樹脂を含んでいる。
【0022】
接着層32は、粘着性発現温度が130℃以下である。粘着性発現温度とは、接着層32が粘着性を発現する温度を言う。すなわち、接着層32は熱溶融により粘着性を発現するが、熱溶融前に比べて、粘着性が向上した場合は、熱溶融した温度が粘着性発現温度となる。具体的には、
図6に示すように、一対の熱板Hの間に基材層33と接着層32とを備えた一対の試験体を挟んで所定温度で加熱し、接着層32同士を熱圧着する。このとき、圧着力を0.3MPa、圧着時間を10分間とすることができる。この後、接着された一対の試験体を引き剥がした場合に、有限の引き剥がし強度が測定されると、上記熱板Hでの加熱温度が粘着性発現温度と言える。なお、一対の試験体を引き剥がす方法は、JIS Z 0237 :2009に準拠した180°引き剥がし試験を採用することができる。接着層32の粘着層発現温度は、基材層33の熱溶融温度よりも低いことが好ましい。これにより、接着層32に粘着性を発現させるための加熱で、基材層33が溶融しにくくすることができる。なお、接着層32の粘着性発現温度の下限は、特に設定されないが、例えば、80℃以上とすることができる。例えばロールtoロール工程で粘土層31を塗工実装する場合、工程内温度で接着層32が粘着性を発現してしまうとハンドリング性が損なわれるという問題があるためである。
【0023】
粘着性発現温度が130℃以下の接着層32を形成するために、接着層32は、基材層33に含まれている結晶性樹脂とは異なる樹脂を含んでいる。基材層33に含まれている結晶性樹脂とは異なる樹脂としては、ホットメルト樹脂が使用可能である。ホットメルト樹脂は熱により溶融し、熱がなくなると可逆的に固化する樹脂である。ホットメルト樹脂としては低融点のホットメルト樹脂が好ましい。ホットメルト樹脂としては、例えば、EVA(エチレン酢酸ビニル)系樹脂、オレフィン系樹脂、ゴム系樹脂、ポリアミド系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。
【0024】
基材層33が結晶性ポリプロピレンで形成される場合は、接着層32は、結晶性ポリプロピレンと親和性の高いオレフィン系樹脂で形成されることが好ましい。結晶性ポリプロピレンと親和性の高いオレフィン系樹脂として、接着層32には非晶質の樹脂が含まれているのが好ましい。基材層33が結晶性ポリプロピレンで形成される場合は、結晶性ポリプロピレンよりも結晶性が小さい非晶質ポリプロピレンで接着層32を形成することが好ましい。非晶質ポリプロピレンは、極性基を有さず、分岐の多いポリプロピレン又はエチレン及びブテンなどを共重合させたポリプロピレンなどである。非晶質ポリプロピレンは、一般的には、密度0.855g/cm3以下である。
【0025】
結晶性の低い低融点のポリプロピレンの場合、安定性が低いため、コロナ処理時に接着層32の表面に極性基(水酸基やカルボニル基)が生成されやすい。従って、粘土層31を形成するにあたって、粘土を含む処理液を塗工する時の濡れ性が向上し、粘土層31と接着層32との密着性が向上する。
【0026】
また接着層32は、極性基を有する樹脂を含んでいることが好ましい。極性基を有する樹脂としては、変性ポリオレフィンが使用可能であり、例えば、変性ポリオレフィンは変性ポリプロピレンを最大含有成分とする変性ポリオレフィンであってよい。変性ポリオレフィンとしては、酸変性ポリオレフィンが使用可能である。酸変性ポリオレフィンは、酸及びその無水物で変性されたポリオレフィンであり、酸としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、クロトン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸などが挙げられる。酸変性ポリオレフィンとしては、カルボン酸無水物変性ポリオレフィンが使用可能であり、例えば、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、アクリル酸変性ポリオレフィン、イミン変性ポリオレフィンなどが例示される。変性されたポリオレフィンの場合、仮に、結晶性が高い場合でも変性により極性基が存在することになる。従って、粘土層31を形成するにあたって、粘土を含む処理液を塗工する時の濡れ性が向上し、粘土層31と接着層32との密着性が向上する。
【0027】
このように本実施形態に係る積層体30は、上記のような接着層32を有しているため、粘土層31と基材層33とを熱溶着しなくても、粘土層31と接着層32及び基材層33との密着性が高い。特に、粘土層31を形成する際に、接着層32を粘着性発現温度以上で加熱した場合は、粘土層31と接着層32との密着性がさらに向上し、粘土層31の脱落及び破損が生じにくい。
【0028】
接着層32の厚みは、特に限定されないが、接着強度、密着性及び形成容易性などの性能を考慮すると、5μm以下、さらに好ましくは1μm以下であることが好ましい。
【0029】
<粘土層>
粘土層31は粘土を含んで層状に形成されている。本開示において、粘土とは、複数の鉱物粒子311の集合体である。また粘土は、複数の鉱物粒子311の集合体に少量の水を含んでいてもよい。鉱物粒子311は、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ノントロナイトの群れから選択される1種以上を含む。この中でも、鉱物粒子311は、高耐湿粘土材料であるモンモリロナイトを含むことが好ましい。
【0030】
モンモリロナイトの結晶構造は、Al(アルミニウム原子)を中心とした八面体構造がSi(シリコン原子)を中心とした四面体構造に挟まれたものを単層構造としている。具体的には、3価のAlの一部が2価のMgやFeに置換されており、単層において負の電荷を帯びている。このため、電荷補償のためNa+やCa2+のような陽イオンの水和物が結晶構造に存在している。そして、モンモリロナイトは、水に分散させると、陽イオンの部分の水和が進み、単層単位で分離しやすい。したがって、モンモリロナイトは、水に分散させることにより、単層への分離が容易である。よって、モンモリロナイトは単層に分離した状態で粘土層31に含有させやすくなり、鉱物粒子311で構成される迷路構造を粘土層31に形成しやすい。
【0031】
モンモリロナイトは、層間の交換性陽イオンが他の無機、有機陽イオンと簡単にイオン交換が可能である。したがって、有機溶媒との親和性付与及び様々な化合物を層間にインターカレート可能である。また結晶端面には水酸基が存在しているため、各種シリル化剤による装飾が可能である。そして、粘土層31の高耐湿性を得ようとすると、粘土層31の疎水化を図るのが好ましい。例えば、交換性陽イオン(Na+など)は水との親和性が高く層間に存在すると、粘土層31の疎水化に不利になりやすい。そこで、交換性陽イオンをLi及びプロトンに置換することが考えられる。例えば、モンモリロナイトを熱処理すると、結晶内部や表面にイオンが移動し、粘土層31の疎水化が図りやすい。
【0032】
図1Bは、一個の鉱物粒子311の概略の斜視図を示している。本実施形態において、鉱物粒子311は、板状又は薄片状の粒子である。すなわち、鉱物粒子311は、厚みaが横幅bよりも小さい形状の粒子である。ここで、横幅bは、鉱物粒子311を正面視(厚み方向の真正面から見る)した場合に、鉱物粒子311の一番長い部分の寸法である。鉱物粒子311が、例えば、円板であれば、直径が横幅bである。厚みaは、横幅bと直交する方向の寸法であり、鉱物粒子311の対向する二面間の寸法である。
【0033】
本実施形態において、鉱物粒子311は、高アスペクト比を有している。つまり、横幅b/厚みaで定義されるアスペクト比が高い。アスペクト比は、鉱物粒子311の厚みaと横幅bとを測定して得られる。厚みaは、例えば、透過電子顕微鏡(TEM)で測定されるが、鉱物粒子311の単層の厚みは、種類ごとにほぼ均一であるため、多量の鉱物粒子311に対して測定する必要はない。例えば、モンモリロナイトであれば、厚みaは1nm程度である。横幅bは、例えば、原子間力顕微鏡(AFM)で測定される。鉱物粒子311の平坦部分を観察して一番長い寸法が横幅bとして見積もられる。
【0034】
図1Cは、粘土層31の概略の断面図を示している。粘土層31は、鉱物粒子311と、バインダ312と、を含有する。すなわち、粘土層31は、鉱物粒子311とバインダ312とから構成されていてもよいし、鉱物粒子311とバインダ312とその他の添加材とを含有していてもよい。バインダ312は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアセタール、ポリビニルアルコールの群れから選択される1種以上を含む。また、バインダ312は塗料、スラリーのワニスとして使用できるバインダ樹脂であっても良い。この中でも、粘土層31の形成しやすさ及び鉱物粒子311との密着性などを考慮して、バインダ312はポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂であることが好ましい。また、上記樹脂には適した硬化剤(架橋剤)を使用しても良い。この場合、バインダ312が架橋された樹脂で形成され、粘土層31の耐湿性が向上する可能性がある。
【0035】
粘土層31は、複数の鉱物粒子311がバインダ312中に分散して形成されている。鉱物粒子311は、その厚み方向が粘土層31の厚み方向とほぼ一致した状態で分散されている。厚み方向で隣り合う複数の鉱物粒子311の間には間隙があり、この間隙にはバインダ312が充填されている。また厚み方向と直交する方向で隣り合う複数の鉱物粒子311の間にも間隙があり、この間隙にはバインダ312が充填されている。このように粘土層31は、複数の鉱物粒子311の間が通路として形成された迷路のような構造(迷路構造)を有している。すなわち、粘土層31中において、複数の鉱物粒子311は、厚み方向が粘土層31の厚み方向と一致しながら、幅方向でほぼランダムに位置した状態で分散されているため、隣り合う鉱物粒子311の間がジグザグの通路のように形成されている。したがって、水分Wが粘土層31を厚み方向で通過する際には、直線的には移動することができず、隣り合う鉱物粒子311の間を通ってジグザグに移動しなければならない(
図1Cの点線参照)。よって、粘土層31は、鉱物粒子を含まない樹脂層(バインダだけの層)に比べて、水分Wが通過しにくく、積層体30の厚みを薄くしてもコンデンサ10の耐湿性能を担保することができる。例えば、粘土層31が数μm~数十μmの厚みを有するクレイ層であっても、2mm厚のエポキシ樹脂だけの樹脂層と同等の耐湿性能を有するコンデンサ10が得られる。よって、本実施形態のコンデンサ10は、樹脂単体の積層体に比べて、1000倍以上の耐湿性能が得られる場合もある。
【0036】
粘土層31の迷路構造の理論式は、次の式(1)で示される。
【0037】
P/P0=(1-Φ)/(1+0.5AΦ) …(1)
上記式(1)において、「P/P0」は比透過度を示す。「Φ」は粘土層31における鉱物粒子311の体積分率を示す。Aは鉱物粒子311のアスペクト比を示す。
【0038】
粘土層31は「P/P0」の値が小さいほど水分が通過しにくく、大きいほど水分が通過しやすい。したがって、式(1)において、Φの値が大きいほど、水分が粘土層31を通過しにくくなり、Φの値が小さいほど、水分が粘土層31を通過しやすくなる。また式(1)において、Aの値が大きいほど、水分が粘土層31を通過しにくくなり、Aの値が小さいほど、水分が粘土層31を通過しやすくなる。よって、コンデンサ10の耐湿性能を向上させるために、水分が通過しにくい積層体30を得るには、粘土層31における鉱物粒子311の体積分率を増加させることが好ましく、また高アスペクト比の鉱物粒子311の含有量を増加したりすることが好ましい。
【0039】
鉱物粒子311のアスペクト比は、20以上であることが好ましい。水分が通過しにくい粘土層31を得るためには、より高アスペクト比の鉱物粒子311を使用するのが好ましいが、粘土層31の他の性能、例えば、粘土層31の強度、密着性及び形成容易性なども併せて考慮すると、上記範囲が好ましい。鉱物粒子311のアスペクト比は、100以上であることがより好ましく、150以上であることがさらに好ましい。なお、鉱物粒子311のアスペクト比の上限は、特に設定されず、粘土層31中における鉱物粒子311の分散性などを考慮して適宜設定される。
【0040】
また、鉱物粒子311は、高アスペクト比の材料と低アスペクト比の材料を組み合わせて使用しても良い。この場合、高アスペクト比の材料の間に低アスペクト比の材料(小径の鉱物粒)が入り込みやすくなって、粘土層31中の鉱物粒子311の充填率を向上させることができる。高アスペクト比の材料と低アスペクト比の材料を併用する場合は、粘土層31に含まれる鉱物粒子311の全量に対して、少なくとも半分以上は高アスペクト比の材料が占めることが好ましい。
【0041】
粘土層31における鉱物粒子311の含有率が全量に対して50質量%以上であることが好ましい。例えば、粘土層31が鉱物粒子311とバインダ312とから構成されている場合は、鉱物粒子311の含有率は、粘土層31の全量に対して50質量%以上95質量%以下、バインダ312の含有率は、粘土層31の全量に対して5質量%以上50質量%以下であることが好ましい。これにより、粘土層31の強度、密着性及び形成容易性などの性能を担保しながら、水分が通過しにくい粘土層31を得やすくなる。
【0042】
粘土層31の厚みは、0.5μm以上5μm以下であることが好ましい。粘土層31の水分の透過量を少なくするためには、粘土層31は厚いほど好ましいが、粘土層31の強度、密着性及び形成容易性などの性能を考慮すると、上記範囲が好ましい。粘土層31の厚みは、1.0μm以上3μm以下であることがより好ましい。
【0043】
なお、粘土層31は、透湿性が低いだけでなく、ガス透過性も低く、これにより、積層体30はガスバリア性も担保しやすい。
【0044】
<積層体の製造>
積層体30は、基材層33の表面上に接着層32を形成し、接着層32の表面上に粘土層31を形成することにより作成される。
【0045】
接着層32は、接着層32を構成する樹脂を含む処理液を基材層33の表面上に供給し、基材層33の表面上で処理液を乾燥させることにより得られる。処理液は、接着層32を構成する樹脂が溶媒に分散又は溶解している。溶媒としては、水、有機溶媒及びこれらの混合溶媒を使用することができるが、廃液処理などの取扱の容易性から、溶媒は水であることが好ましい。
【0046】
処理液を基材層33の表面上に供給するにあたっては、グラビア塗布、ロールコーター、ダイコーター、刷毛塗り、スプレー、ディップなどの塗工法及び浸漬法を採用することができる。この場合、基材層33の表面に凹凸があっても、それに応じて、処理液を供給しやすく、接着層32が形成しやすい。処理液を乾燥させるにあたっては、自然乾燥又は加熱乾燥などを採用することができる。
【0047】
粘土層31は、鉱物粒子311とバインダ312とを含む処理液を接着層32の表面上に供給し、接着層32の表面上で処理液を乾燥させることにより得られる。処理液は、鉱物粒子311とバインダ312とが溶媒に分散している。溶媒としては、水、有機溶媒及びこれらの混合溶媒を使用することができるが、廃液処理などの取扱の容易性から、溶媒は水であることが好ましい。
【0048】
処理液を接着層32の表面上に供給するにあたっては、刷毛塗り、スプレー塗装などの塗工法及びディップなどの浸漬法を採用することができる。この場合、接着層32の表面に凹凸があっても、それに応じて、処理液を供給しやすく、粘土層31が形成しやすい。処理液を乾燥させるにあたっては、自然乾燥又は加熱乾燥などを採用することができる。
【0049】
上記のような製造方法によれば、薄膜(数~数十μm)であっても、高い耐湿性を発揮できる粘土層(クレイ層)31を実装することができ、積層体30の耐湿性能を担保することができる。
【0050】
基材層33に接着層32を形成した後、粘土層31を形成する前に、接着層32にコロナ処理を行うのが好ましい。これにより、接着層32の表面に極性基(親水性官能基)が形成され、接着層32と粘土層31の密着性が向上する。コロナ処理は、空気中でコロナ放電を生じさせて行う。コロナ放電により酸素分子が酸素イオンと酸素ラジカルに乖離する。この酸素イオンと酸素ラジカルが接着層32の表面で化学反応し、その結果、接着層32の表面に親水性官能基が生成される。親水性官能基としては、例えば、カルボニル基及び水酸基が挙げられる。
【0051】
積層体30は、他方の面にアルミニウム層又はポリビニルアルコール層を有することが好ましい。上記他方の面とは、基材層33の厚み方向に並ぶ二面のうち、接着層32及び粘土層31が設けられていない方の表面である。言い換えると、積層体30は、基材層33の接着層32及び粘土層31が設けられた面と反対側の表面上に、アルミニウム層又はポリビニルアルコール層を有することが好ましい。これにより、積層体30の透湿性が更に低減する。
【0052】
(2-2)電子部品
図2A~
図2Dに示すように、本実施形態に係る電子部品1は、電子部品素子2と、バリアフィルムとを備える。前記バリアフィルムは、上記積層体30を含んでいる。すなわち、上記基材層33と接着層32と粘土層31とを有する積層体30がバリアフィルムとして使用される。
【0053】
電子部品素子2は、電子部品1が目的とする機能を発揮するための部品又は部分である。電子部品素子2は、両端に外部電極24を有する。
【0054】
積層体30は、電子部品素子2を保護する機能を有する。積層体30は、電子部品素子2を水分から保護する機能を有する。また積層体30は、熱、光、電磁波、衝撃及び薬品などから電子部品素子2を保護する機能を有していてもよい。積層体30は、電子部品素子2の周囲の少なくとも一部を被覆する。積層体30は、例えば、外部電極24の部分を除いて、電子部品素子2の全体を覆うように形成されている。積層体30は電子部品素子2の表面に接触して設けることができる。
【0055】
積層体30は、粘土層31が電子部品素子2の方に向いて配置されていることが好ましい。すなわち、積層体30は、基材層33の位置から見て内側(電子部品素子2の方)に粘土層31が位置するように、電子部品素子2の周囲を被覆していることが好ましい。積層体30は、基材層33よりも粘土層31のほうが電子部品素子2への密着性が高い。したがって、粘土層31を電子部品素子2の方に向けて積層体30が配置されることで、粘土層31と電子部品素子2とが密着しやすくなり、電子部品素子2への水分の浸入を低減しやすくなる。
【0056】
本実施形態に係る電子部品1は、電子部品素子2と積層体30とを被覆する外装樹脂層4をさらに備えてもよい。外装樹脂層4は、電子部品素子2及び積層体30を水分から保護する機能を有する。また外装樹脂層4は、熱、光、電磁波、衝撃及び薬品などから電子部品素子2及び積層体30を保護する機能を有していてもよい。外装樹脂層4はケース(容器)とモールド樹脂の一方又は両方で形成される。
【0057】
本実施形態に係る電子部品1はバスバー6をさらに備えていてもよい。バスバー6は、電子部品1を回路基板等に電気的に接続する端子である。バスバー6の一端部(基端部)は、電子部品素子2の外部電極24に電気的及び機械的に接続されている。バスバー6の他の一端部(先端部)は、外装樹脂層4の外側に位置している。バスバー6は、例えば、銅又は銅合金製で板状に形成されている。本実施形態の電子部品1は一対のバスバー6を備え、各バスバー6の先端部が外装樹脂層4の同じ面(例えば、上面)から外方(例えば、上方)に突出しているが、このような形状及び構造には限定されない。
【0058】
本実施形態に係る電子部品1は、電子部品素子2を被覆する積層体30に、粘土を含有する粘土層31を有するため、樹脂単独で形成された同じ厚みの樹脂層に比べて、積層体30を通過する水分量が低減しやすい。したがって、電子部品1の外部から電子部品素子2にまで達する水分が少なくなり、電子部品素子2に水分が作用しにくくなって、耐湿性能に優れる電子部品1が得やすくなる。また粘土層31は塗布などの簡便な手段で基材層33の表面上に形成することができ、電子部品1の製造工程が複雑になりにくく、コスト低減が図りやすい。
【0059】
(2-3)コンデンサ
以下、電子部品1がコンデンサ10の場合について説明する。コンデンサ10である電子部品1は、電子部品素子2としてコンデンサ素子20を含む。すなわち、コンデンサ10における電子部品素子2はコンデンサ素子20である。
【0060】
コンデンサ素子20は、コンデンサ10の種類に応じて、各種のコンデンサ素子が用いられる。本実施形態では、コンデンサ10としては、フィルムコンデンサ、セラミックコンデンサ、電解コンデンサなどが例示される。これらの中でも、コンデンサ10はフィルムコンデンサであることが好ましく、さらに、フィルムコンデンサの中でも、巻回型のコンデンサ素子20を使用したものであることが好ましい。この場合、巻回型のコンデンサ素子20を作製するのと、同様の装置及び手順で、コンデンサ素子20に積層体30を巻きつけることができ、積層体30を巻き付けたコンデンサ素子20を容易に作製することができる。なお、コンデンサ素子20は、積層型のフィルムコンデンサであってもよい。
【0061】
コンデンサ素子20は、軸方向の両端のそれぞれに外部電極24を有している。外部電極24は金属材料の溶射により形成されることが好ましい。また、外部電極24は錫を50重量%以上含むことが好ましい。この種の外部電極24は、通常、亜鉛の溶射により形成する場合が多いが、亜鉛で形成された外部電極24はポーラスになりやすく、そこから水分が浸入するおそれがある。したがって、本実施形態では、外部電極24を錫の含有率を高めており、これにより、外部電極24を構成する金属組織が緻密になり、水分が外部電極24を通過しにくくしてコンデンサ素子20への水分の浸入を低減している。また、外部電極24を錫の含有率を高めると、外部電極24を構成する金属組織が緻密になるので、積層体30と外部電極24との密着性を高めることができ、コンデンサ素子20への水分の浸入をさらに低減することができる。外部電極24の錫の含有率は50重量%以上100重量%の範囲であればよい。
【0062】
積層体30はバリアフィルムである。すなわち、積層体30は、コンデンサ素子20を水分から保護する機能を有する。また積層体30は、熱、光、電磁波、衝撃及び薬品などからコンデンサ素子20を保護する機能を有していてもよい。
【0063】
図2A~
図2Dに示すように、積層体30は、コンデンサ素子20の周囲の少なくとも一部を被覆する。コンデンサ素子20の周囲とは、一対の外部電極24の対向方向を軸とした場合に、コンデンサ素子20の軸回りのことをいう。コンデンサ素子20が略円柱状である場合は、コンデンサ素子20の周面と対向するように積層体30が配置されている。したがって、積層体30は、外部電極24の部分を除いて、コンデンサ素子20の全体を覆うように形成されている。すなわち、コンデンサ素子20は、外部電極24の部分を除いて、積層体30でほぼ全体が覆われて保護されている。これにより、コンデンサ素子20に全周囲から水分が浸入しにくくなり、コンデンサ10の耐湿性能が向上する。特に、コンデンサ素子20の周面(軸回りの面)は端面(軸方向の面)よりも面積が大きくなる場合が多いため、コンデンサ素子20の少なくとも周面を囲うように積層体30を設けるのが好ましい。上記のように、積層体30はコンデンサ素子20の周囲の少なくとも一部を被覆するように設けられるが、ここで「少なくとも一部」とは、例えば、外部電極24を除くコンデンサ素子20の外面の表面積の80%以上であることが好ましい。
【0064】
積層体30は、コンデンサ素子20の周囲に複数の層を形成するように配置されるのが好ましい。すなわち、複数の積層体30が厚み方向で重なった状態でコンデンサ素子20の周囲に設けられるのが好ましい。この場合、複数の粘土層31が積層された状態になり、一層の粘土層31よりも、コンデンサ10の耐湿性能が向上する。また、粘土層31にピンホール等の欠陥が存在していても、他の粘土層31が重なることにより、欠陥をカバーすることができ、コンデンサ10の耐湿性能が損なわれにくい。
【0065】
外装樹脂層4はコンデンサ素子20及び積層体30の少なくとも一部を被覆している。外装樹脂層4はコンデンサ素子20及び積層体30の全体を被覆していることが好ましく、この場合、コンデンサ素子20及び積層体30の全体が外装樹脂層4で封止されている。粘土層31と外装樹脂層4とは積層している。すなわち、粘土層31と外装樹脂層4とは積層体30の厚み方向で対向して配置されている。外装樹脂層4の厚みは、粘土層31の厚みよりも大きいことが好ましい。これにより、厚みが薄くて割れやすい粘土層31が外装樹脂層4で保護しやすくなる。外装樹脂層4の厚みは、1mm以上6mm以下であることが好ましい。これにより、粘土層31に加えて外装樹脂層4でも粘土層31の透湿性が低下しやすくなり、コンデンサ10の耐湿性能が向上する。外装樹脂層4の厚みは1mm以上4.5mm以下であることがより好ましく、1mm以上3mm以下であることがさらに好ましい。
【0066】
外装樹脂層4に含まれている樹脂は、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂などを例示することができるが、コンデンサ素子20を被覆する際の成形性などを考慮すると、エポキシ樹脂が好ましい。また外装樹脂層4は樹脂のみで形成されてもよいが、樹脂とフィラーとを含む複合材料で外装樹脂層4を形成してもよい。この場合、フィラーとしては、例えば、シリカなどを使用することができ、外装樹脂層4の全量に対するフィラーの含有量は1質量%以上99質量%以下とすることができる。
【0067】
図3Aは、積層体30の位置が
図2Aのものとは異なるコンデンサ10を示している。このコンデンサ10は、積層体30と外装樹脂層4とを備えているが、積層体30はコンデンサ素子20の表面には接触せず、外装樹脂層4の周囲を被覆するように設けられている。この場合、コンデンサ素子20と積層体30との間に外装樹脂層4が位置している。したがって、外装樹脂層4は、積層体30よりも電子部品素子2(コンデンサ素子20)に近い位置にある。積層体30は外装樹脂層4の表面に接触している。
【0068】
このコンデンサ10も、コンデンサ素子20は外装樹脂層4を介して積層体30で被覆されており、積層体30によりコンデンサ素子20に水分が達しにくくなり、コンデンサ素子20の吸湿を低減してコンデンサ10の耐湿性が向上する。
【0069】
図3Bは、積層体30の位置が
図2A及び
図3Aのものとは異なるコンデンサ10を示している。このコンデンサ10は、コンデンサ素子20の表面上と、外装樹脂層4の表面上との両方に積層体30を備えている。すなわち、積層体30は、コンデンサ素子20の表面に接触して配置される第1積層体30aと、外装樹脂層4の表面に接触して配置される第2積層体30bと、を備えている。したがって、第1積層体30aと第2積層体30bとの間に外装樹脂層4が設けられている。
【0070】
このコンデンサ10は、コンデンサ素子20は第1積層体30aと第2積層体30bと外装樹脂層4とで被覆されており、2つの積層体30によりコンデンサ素子20に水分が達しにくくなり、コンデンサ素子20の吸湿をさらに低減してコンデンサ10の耐湿性が向上する。
【0071】
(2-4)電子部品(コンデンサ)の製造方法
電子部品1の製造方法は、電子部品素子2を形成する工程と、電子部品素子2の周囲の少なくとも一部に積層体30を巻回する工程と、を備える。電子部品1がコンデンサ10である場合は、コンデンサ素子20を形成する工程と、コンデンサ素子20の周囲の少なくとも一部に積層体30を巻回する工程と、を備えるコンデンサ10の製造方法である。本実施形態に係る電子部品1又はコンデンサ10の製造方法は、さらに、コンデンサ素子20を外装樹脂層4で被覆する工程を備えていてもよい。
【0072】
コンデンサ素子20である巻回型コンデンサ素子7の製造は、金属化フィルム71,72を巻回して巻回体73を形成する工程と、巻回体73の周囲の少なくとも一部に積層体30を巻回する工程と、積層体30を巻回した巻回体73の両端に金属材料を溶射して外部電極24を形成する工程と、を備える。具体的には、次のようにして巻回型コンデンサ素子7を製造することができる。
【0073】
まず、第1金属化フィルム71及び第2金属化フィルム72を用意する(
図4A参照)。第1金属化フィルム71は、第1誘電体フィルム701と、第1導電層711とを有する。第1誘電体フィルム701は、長尺物である。第1誘電体フィルム701の片面に、第1マージン部721を除いて、第1導電層711が形成されている。第1マージン部721は、第1誘電体フィルム701が露出している部分であり、第1誘電体フィルム701の一方の長辺に沿って、第1導電層711よりも細い帯状に形成されている。
【0074】
第2金属化フィルム72は、第1金属化フィルム71と同様に形成されている。すなわち、第2金属化フィルム72は、第2誘電体フィルム702と、第2導電層712とを有する。第2誘電体フィルム702は、第1誘電体フィルム701と同じ幅を有する長尺物である。第2誘電体フィルム702の片面に、第2マージン部722を除いて、第2導電層712が形成されている。第2マージン部722は、第2誘電体フィルム702が露出している部分であり、第2誘電体フィルム702の一方の長辺に沿って、第2導電層712よりも細い帯状に形成されている。
【0075】
第1誘電体フィルム701及び第2誘電体フィルム702は、積層体30の基材層33と同種の樹脂で構成されている。例えば、第1誘電体フィルム701及び第2誘電体フィルム702は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニルサルファイド又はポリスチレンなどで形成されている。第1導電層711及び第2導電層712は、蒸着法又はスパッタリング法などの方法で形成される。第1導電層711及び第2導電層712は、例えばアルミニウム、亜鉛及びマグネシウムなどで形成されている。
【0076】
次に
図4Aに示すように、第1金属化フィルム71及び第2金属化フィルム72の各々の2つの長辺を揃えて重ねる。このとき第1導電層711と第2導電層712との間に、第1誘電体フィルム701又は第2誘電体フィルム702を介在させる。さらに第1マージン部721が形成されている長辺と、第2マージン部722が形成されている長辺とを逆にする。このように第1金属化フィルム71及び第2金属化フィルム72を重ねた状態で巻き取ることによって、円柱状の巻回体73を得ることができる。次に、巻回体73の外周に積層体30を巻き取ることによって、巻回体73を積層体30で被覆する。このとき、積層体30は1回(1巻き)だけ巻き取ってもよいし、複数回巻き取ってもよい。次にこの巻回体73の側面を両側から押圧して、断面長円状の巻回体73に加工する(
図4B参照)。このように扁平化することで、省スペース化を図ることができる。このようにして巻回体73からなる素子本体2aを積層体30で被覆することができる。
【0077】
次に、メタリコン(金属溶射法)により巻回体73の両端に、外部電極24として第1外部電極21及び第2外部電極22を形成することによって、巻回型コンデンサ素子7を得ることができる。第1外部電極21は、第1導電層711(第1内部電極)に電気的に接続されている。第2外部電極22は、第2導電層712(第2内部電極)に電気的に接続されている。第1導電層711及び第2導電層712が一対の内部電極を構成している。第1外部電極21及び第2外部電極22は、例えば、錫や亜鉛、それらを主成分とする金属材料で形成される。
【0078】
その後、
図4Bに示すように、第1外部電極21に第1バスバー61を電気的に接続し、第2外部電極22に第2バスバー62を電気的に接続する。この接続方法として、例えば半田溶接、抵抗溶接及び超音波溶接などが挙げられる。第1バスバー61及び第2バスバー62は、例えば銅又は銅合金などで板状に形成されている。
【0079】
巻回型コンデンサ素子7の場合では、金属化フィルム71,72を巻回する工程に続き、巻回体73の周囲に積層体30を巻回するので、工程が合理的であり簡略化できる。また金属材料を溶射する工程の後に、外部電極24の形成箇所以外の部分(例えば、コンデンサ素子20の周囲)に付着した金属屑を除去する必要がある場合、コンデンサ素子20の周囲には積層体30の基材層33が最外に位置するように巻回されており、基材層33に付着した金属屑を容易に除去することができる。なお、このような金属屑の除去作業はスクラブ研磨などで行う。
【0080】
一方、コンデンサ素子20である積層型コンデンサ素子8は、例えば、次のようにして製造することができる。まず第1金属化フィルム81及び第2金属化フィルム82を用意する(
図5A参照)。
【0081】
第1金属化フィルム81は、第1誘電体フィルム801と、第1導電層811とを有する。第1誘電体フィルム801は、矩形状である。第1誘電体フィルム801の片面に、第1マージン部821を除いて、第1導電層811が形成されている。第1マージン部821は、第1誘電体フィルム801の1つの辺に沿って、第1導電層811よりも細い帯状に形成されている。
【0082】
第2金属化フィルム82は、第1金属化フィルム81と同様に形成されている。すなわち、第2金属化フィルム82は、第2誘電体フィルム802と、第2導電層812とを有する。第2誘電体フィルム802は、第1誘電体フィルム801と同じ大きさの矩形状である。第2誘電体フィルム802の片面に、第2マージン部822を除いて、第2導電層812が形成されている。第2マージン部822は、第2誘電体フィルム802の1つの辺に沿って、第2導電層812よりも細い帯状に形成されている。
【0083】
第1誘電体フィルム801及び第2誘電体フィルム802は、積層体30の基材層33と同種の樹脂で構成されている。例えば、第1誘電体フィルム801及び第2誘電体フィルム802は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニルサルファイド又はポリスチレンなどで形成されている。第1導電層811及び第2導電層812は、蒸着法又はスパッタリング法などの方法で形成される。第1導電層811及び第2導電層812は、例えばアルミニウム、亜鉛及びマグネシウムなどで形成されている。
【0084】
次に
図5A及び
図5Bに示すように、第1金属化フィルム81及び第2金属化フィルム82の四辺を揃えて交互に重ねる。このとき第1導電層811と第2導電層812との間に、第1誘電体フィルム801又は第2誘電体フィルム802を介在させる。さらに第1マージン部821が形成されている一辺と、第2マージン部822が形成されている一辺と
が逆側にある。
図5Aでは、第1マージン部821を後方に、第2マージン部822を前方に配置している。このように、複数の第1金属化フィルム81及び第2金属化フィルム82を積層して一体化することによって、
図5B及び
図5Cに示すような積層体83を得ることができる。この積層体83は、前面及び後面を除いて、保護フィルム84で被覆されている。保護フィルム84は、電気的絶縁性を有するフィルムである。保護フィルム84は、積層体30で形成してもよい。
【0085】
次に、メタリコン(金属溶射法)により積層体83の前面及び後面にそれぞれ第1外部電極21及び第2外部電極22を形成することによって、積層型コンデンサ素子8を得ることができる(
図5D参照)。第1外部電極21は、第1導電層811(第1内部電極)に電気的に接続されている。第2外部電極22は、第2導電層812(第2内部電極)に電気的に接続されている。第1導電層811及び第2導電層812が一対の内部電極となる。第1外部電極21及び第2外部電極22は、例えば亜鉛などで形成されている。
【0086】
その後、
図5Dに示すように、第1外部電極21に第1バスバー61を電気的に接続し、第2外部電極22に第2バスバー62を電気的に接続する。この接続方法として、例えば半田溶接、抵抗溶接及び超音波溶接などが挙げられる。第1バスバー61及び第2バスバー62は、例えば銅又は銅合金などで板状に形成されている。
【0087】
上記のようにしてコンデンサ素子20を形成した後、外装樹脂層4を形成する工程が行われる。外装樹脂層4を形成する工程は、バスバー6が接続されたコンデンサ素子20を樹脂により封止して外装樹脂層4を形成する。樹脂としては、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などを例示することができる。コンデンサ素子20を被覆する際の成形方法としては、トランスファ成形、圧縮成形、ラミネート成形などが例示される。また外装樹脂層4を有するケース内にコンデンサ素子20を収容して封止してもよい。外装樹脂層4は、コンデンサ素子20のバスバー6との接続部分を除いて、コンデンサ素子20の全体を覆うように形成される。バスバー6の先端部は外装樹脂層4の外側(コンデンサ素子20と反対側)に位置している。外装樹脂層4を形成した後、必要に応じて、外装樹脂層4の表面に積層体30を設ける。
【0088】
このようにして積層体30をバリアフィルムとして使用したコンデンサ10が得られる。
【0089】
(2-5)変形例
上記では、電子部品がコンデンサである場合について説明されているが、これに限られない。本開示は、電子部品がコンデンサ以外の受動部品又は能動部品であっても適用可能である。コンデンサ以外の受動部品又は能動部品は、それぞれ、電子部品の種類に応じた受動素子又は能動素子をコンデンサ素子の代わりに備えている。
【0090】
上記では、積層体30は金属溶射(メタリコン)により第1外部電極21及び第2外部電極22を形成する前に、巻回体73を被覆する場合について説明したが、これに限られず、第1外部電極21及び第2外部電極22を形成した後に、巻回体73を積層体30で被覆してもよい。第1外部電極21及び第2外部電極22の周囲を積層体30で被覆する場合は、巻回体73に第1外部電極21及び第2外部電極22を形成した後に、巻回体73と第1外部電極21及び第2外部電極22を積層体30で被覆してもよい。
【0091】
また第1外部電極21及び第2外部電極22の周囲を積層体30で被覆する場合であっても、積層体30は第1外部電極21及び第2外部電極22を形成する前に巻回体73を被覆してもよい。この場合、巻回体73を形成する金属化フィルム71,72の幅よりも積層体30の幅を1~2mm大きくし、積層体30の端部が巻回体73の軸方向の端面よりも突出させる。そして、金属溶射による第1外部電極21及び第2外部電極22の形成は、積層体30の端部で囲まれる空間内で巻回体73の軸方向の端面に対して行われる。
【0092】
(3)まとめ
第1の態様に係る積層体(30)は、基材層(33)と接着層(32)と粘土層(31)とを有する。基材層(33)は、結晶性樹脂を含む。接着層(32)は、結晶性樹脂とは異なる樹脂を含み、基材層(33)の前記一方の面に設けられている。粘土層(31)は、接着層(32)を介して基材層(33)の前記一方の面に設けられている。接着層(32)の粘着性発現温度が130℃以下である。
【0093】
この態様によれば、積層体(30)は、結晶性樹脂を含む基材層(33)により水蒸気バリア性が良好で、接着層(32)により基材層(33)と粘土層(31)との密着性が優れる、という利点がある。
【0094】
第2の態様は、第1の態様に係る積層体(30)であって、接着層(32)が、非晶質の樹脂を含む。
【0095】
この態様によれば、基材層(33)と粘土層(31)とを熱融着しなくても密着性が向上しやすい、という利点がある。
【0096】
第3の態様は、第1の態様に係る積層体(30)であって、接着層(32)が、極性基を有する樹脂を含む。
【0097】
この態様によれば、基材層(33)と粘土層(31)とを熱融着しなくても密着性が向上しやすい、という利点がある。
【0098】
第4の態様は、第1~第3のいずれか1つの態様に係る積層体(30)であって、前記結晶性樹脂が、ポリプロピレンである。
【0099】
この態様によれば、積層体(30)の水蒸気バリア性を向上させることができる、という利点がある。
【0100】
第5の態様は、第1~第4のいずれか1つの態様に係る積層体(30)であって、基材層(33)が、二軸延伸ポリプロピレンフィルムである。
【0101】
この態様によれば、積層体(30)の水蒸気バリア性を向上させることができる、という利点がある。
【0102】
第6の態様は、第1~第5のいずれか1つの態様に係る積層体(30)であって、基材層(33)の他方の面にアルミニウム層又はポリビニルアルコール層を有する。
【0103】
この態様によれば、積層体(30)の水蒸気バリア性を向上させることができる、という利点がある。
【0104】
第7の態様に係る電子部品(1)は、電子部品素子(2)と、電子部品素子(2)の周囲の少なくとも一部を被覆するバリアフィルムと、を備える。前記バリアフィルムが、積層体(30)を含む。
【0105】
この態様によれば、積層体(30)により電子部品素子(2)に達する水分を低減することができ、耐湿信頼性の高い電子部品(1)が得やすい、という利点がある。
【0106】
第8の態様に係るコンデンサ(10)は、第7の態様に係る電子部品(1)の電子部品素子(2)が、コンデンサ素子(20)を含む。
【0107】
この態様によれば、積層体(30)によりコンデンサ素子(20)に達する水分を低減することができ、耐湿信頼性の高いコンデンサ(10)が得やすい、という利点がある。
【0108】
第9の態様は、第8の態様に係るコンデンサ(10)であって、コンデンサ素子(20)が、誘電体フィルム(701、702、801、802)上に導電層(711、712、811、812)を形成した一対の金属化フィルム(71、72、81、82)を有し、一対の金属化フィルム(71、72、81、82)は、導電層(711、712、811、812)が誘電体フィルム(701、702、801、802)を介して対向するように巻回されており、誘電体フィルム(701、702、801、802)が基材層(33)を構成する樹脂と同種の樹脂で構成されている。
【0109】
この態様によれば、電気絶縁性と水蒸気バリア性に優れるコンデンサ(10)が得られる、という利点がある。
【実施例】
【0110】
(実施例1,2)
粘土材料としては、クニピアF(クニミネ工業製)を使用した。バインダとしては、水溶性ナイロンA-90(東レ製)を使用した。粘土材料とバインダと溶媒とを混合することにより処理液(粘土塗工液)を調製した。処理液の内容は、粘土材料とバインダが合計で6wt%、水が81wt%、エタノールが13wt%とした。粘土材料とバインダとの混合比率(重量比)は表1に示す。
【0111】
次に、基材層と接着層とを有するポリプロピレンフィルム(厚み24μm)にコロナ処理を施し、この後、アプリケータで処理液を接着層の表面に塗工し、その後、乾燥させた。乾燥後の粘土層の膜厚は1μmであった。なお、接着層は低融点ポリプロピレンであり、融点が130℃、粘着性発現温度が90℃である。また乾燥条件は表1のように各実施例で変化させた。
【0112】
そして、粘土層の膜密着性評価(JIS K 5600-5-6準拠)を行った。すなわち、粘土層に2mm間隔で切込みを入れ、テープで引き剥がし、粘土層の膜剥がれなし(分類0)のみ〇とし、それ以外は×とした。
【0113】
(比較例1,2)
接着層を有さないポリプロピレンフィルム(基材層のみ)を使用した以外は、実施例1,2と同様にして膜密着性評価を行った。
【0114】
【0115】
表1から明らかなように、接着層を有する実施例1,2では、接着層を有さない比較例1,2よりも粘土層の密着性が向上した。また実施例1,2では、加熱しなくても自然乾燥で粘土層の密着性が確保された。さらに実施例1,2では粘着性発現温度以下で乾燥させても粘土層の密着性が確保された。
【符号の説明】
【0116】
1 電子部品
10 コンデンサ
2 電子部品素子
20 コンデンサ素子
30 積層体
31 粘土層
32 接着層
33 基材層
71、72、81、82 金属化フィルム
701、702、801、802 誘電体フィルム
711、712、811、812 導電層