(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】末梢血循環腫瘍細胞の解析を用いたがんの治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 33/18 20060101AFI20241213BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241213BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20241213BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241213BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20241213BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
A61K33/18
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 111
G01N33/15 Z
G01N33/48 M
(21)【出願番号】P 2019053641
(22)【出願日】2019-03-20
【審査請求日】2020-09-14
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】522280906
【氏名又は名称】株式会社セルクラウド
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【氏名又は名称】森田 裕
(72)【発明者】
【氏名】薄井 貢
(72)【発明者】
【氏名】白川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】大野 章
(72)【発明者】
【氏名】ウォン アンドリュー チー ウェン
(72)【発明者】
【氏名】大田 弘治
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】吉田 佳代子
【審判官】田村 直寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-315470(JP,A)
【文献】Molecular Cancer、2009年、Vol.8、No.33、doi:10.1186/1476-4598-8-33
【文献】Cancer Board 乳癌、2010年、3巻、2号、p.123-129
【文献】Plos One、2016年、Vol.11、No.1、e0147400
【文献】医療と検査機器・試薬、2018年、41巻、4号、p.326-333
【文献】Journal of Extracellular Vesicles、2017年、Vol.6(Suppl)1310414、p.13
【文献】Cancer Cell International、2017年、Vol.17、No.6、doi:10.1186/s12935-016-0373-7
【文献】Biotechnology Advances、2018年、Vol.36、No.4、p.1367-1389
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K45/00-45/08
A61K33/00-33/44
G01N33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
医中誌Web
Caplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん患者における、ヨウ素含有化合物を含むPPAR-γ作動薬の治療効果を判定するモニタリング方法であって、
哺乳類対象者の末梢血循環腫瘍細胞の解析を行う工程と、
前記解析の結果を基に、前記ヨウ素含有化合物を含むPPAR-γ作動薬を投与された対象者の末梢血循環腫瘍細胞の解析を行う工程と、
を含み、
前記末梢血循環腫瘍細胞の解析が、前記末梢血循環腫瘍細胞の性質及び形態の解析を含み、
前記末梢血循環細胞の性質の解析及び形態の解析は、末梢血循環腫瘍細胞を
サイトケラチン(Cytokeratin)陽性ビメンチン(Vimentin)陰性(Type.1)、
Cytokeratin陽性Vimentin陽性(Type.2の亜型)、および
Cytokeratin陰性Vimentin陽性(Type.2)
からなる群から選択されるいずれか1以上のマーカー発現を示す末梢血循環腫瘍細胞に分類することと、
末梢血循環腫瘍細胞を、形態がアメーバ細胞であるか否か、がん細胞同士が凝集してクラスターになっているか否か、または血球もしくは血小板を含む凝集体を形成する循環腫瘍微小塞栓を形成しているか否かに基づいて分類することを含み、
前記PPAR-γ作動薬の投与前及び投与後における前記分類された末梢血循環腫瘍細胞の性質及び形態の変化をモニタリング
することを含み、
前記対象者の
前記分類された末梢血循環腫瘍細胞数
のいずれかまたは全てが経時的に減少する場合、がん患者がPPAR-γ作動薬の治療に対して肯定的な応答を有した
ことが示される、方法
{但し、ヒトに対する医療行為を除く。}。
【請求項2】
前記PPAR-γ作動薬が、PPAR-αの抑制作用を持つ、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記末梢血循環腫瘍細胞の解析が、末梢血循環腫瘍細胞の数を定量化することを含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記末梢血循環腫瘍細胞の解析が、末梢血循環腫瘍細胞を取り囲む微小環境(ニッチ)の数を定量化することを含む、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記微小環境(ニッチ)が、血小板、マクロファージ、リンパ球及び間質細胞からなる群から選択される1種以上である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
ヨウ素含有化合物を含むPPAR-γ作動薬の治療効果を判定するための試験方法であって、
前記ヨウ素含有化合物を含むPPAR-γ作動薬の投与前及び投与後に末梢血循環腫瘍細胞(CTC)の解析を行い、
前記前記末梢血循環腫瘍細胞(CTC)の解析が、末梢血循環腫瘍細胞の性質及び形態の解析を含
み、
前記末梢血循環細胞の性質の解析及び形態の解析は、末梢血循環腫瘍細胞を
サイトケラチン(Cytokeratin)陽性ビメンチン(Vimentin)陰性のType.1、
Cytokeratin陽性Vimentin陽性のType.2の亜型、および
Cytokeratin陰性Vimentin陽性のType.2
からなる群から選択されるいずれか1以上の末梢血循環腫瘍細胞に分類することと、
末梢血循環腫瘍細胞を、形態がアメーバ細胞であるか否か、がん細胞同士が凝集してクラスターになっているか否か、または血球もしくは血小板を含む凝集体を形成する循環腫瘍微小塞栓を形成しているか否かに基づいて分類することを含む、
方法。
【請求項7】
哺乳類対象者の末梢血循環腫瘍細胞(CTC)の解析を行う第一解析工程と、
前記解析の結果を基に、治療が必要とされた対象者に有効量のヨウ素含有化合物を含むPPAR-γ作動薬を投与する工程と、
前記PPAR-γ作動薬の投与後の対象者の末梢血循環腫瘍細胞(CTC)の解析を行う第二解析工程と、
を含み、
前記前記末梢血循環腫瘍細胞(CTC)の解析が、末梢血循環腫瘍細胞の性質及び形態の解析を含み、
前記末梢血循環細胞の性質の解析及び形態の解析は、末梢血循環腫瘍細胞を
サイトケラチン(Cytokeratin)陽性ビメンチン(Vimentin)陰性のType.1、
Cytokeratin陽性Vimentin陽性のType.2の亜型、および
Cytokeratin陰性Vimentin陽性のType.2
からなる群から選択されるいずれか1以上の末梢血循環腫瘍細胞に分類することと、
末梢血循環腫瘍細胞を、形態がアメーバ細胞であるか否か、がん細胞同士が凝集してクラスターになっているか否か、または血球もしくは血小板を含む凝集体を形成する循環腫瘍微小塞栓を形成しているか否かに基づいて分類することを含み、
前記哺乳類対象者が、猫又は犬である、がんの治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末梢血循環腫瘍細胞を有することが判定されたがん患者のPPAR-γ作動薬によるコンビネーション治療の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
進行がんや転移がんでは、がん細胞が血液中に入り、体内を循環していることが知られている。このような転移の過程で血管内に侵入したがん細胞をCTC:Circulating Tumor Cells(末梢血循環腫瘍細胞)と称するが、CTC検査は血液中を循環しているがん細胞を直接検出する方法である(特許文献1~5)。
【0003】
がんの転移や治療効果の指標としてのCTC検査は、画像検査では見えない微細がんも検出可能なことから、分子病理検査(リキッドバイオプシー)とも呼ばれている。CTC検査が陽性であれば、再発・転移を1年から4年前に予見できる可能性が高い検査であることが知られている。
【0004】
また、がんは本来、上皮細胞の特徴を有しているが、悪性度の高いがんでは、上皮細胞としての形態や周囲細胞との細胞接着機能を失い、移動し、他の組織内に入り込む能力を得る上皮間葉転換(Epithelial - Mesenchymal Transition:EMT)という現象を起こすことが知られており、がんの転移と再発という、がん治療の最も重要な課題に深く関与する現象であると考えられている。よって、CTCを1個でも検出したらがん発症の疑い、がん転移の可能性がある(非特許文献1~3)。
【0005】
がんは、EMTを起こすと、がん幹細胞様の形質を有し、通常のがんの娘細胞でもEMTを起こすとがん幹細胞様の性質に変わることが知られている。
そして、一般的な抗がん剤による治療は、固形腫瘍の縮小が治療の指針とされており、腫瘍の大部分を占めているがん幹細胞としての機能を持たない分化したがん細胞だけを標的としている。また、一部のがん幹細胞には、薬剤耐性を獲得しているものがあることも指摘されている。よって、抗がん剤の治療によって大部分のがん細胞を除いても、ごく少数のがん幹細胞が生き残っていれば再発が起こる。
【0006】
つまり、がん幹細胞を除去出来れば、がんの転移や再発を防止する事が可能になる(非特許文献4~5)。以上の事から、CTC検査でEMTを起こしてがん幹細胞様の形質を獲得した間葉系細胞(mesenchymal)を検出しても一般的な抗がん剤では治療が困難であることは容易に推察できる。
【0007】
一方、ヨウ素が様々な組織(乳腺、前立腺、甲状腺、メラノーマ、膵臓癌、神経芽細胞株など)に抗腫瘍作用を発揮し、そして最新の研究によって、これらの抗腫瘍効果には、直接的あるいは間接的なメカニズムが関与していることが示唆されている(非特許文献6~9)。
【0008】
ヨウ素の直接効果では、ヨウ素の有する酸化/抗酸化の特性によって、ミトコンドリア膜電位が乱され、ミトコンドリア介在性アポトーシスを引き起こす可能性が報告されている(非特許文献8,11)。
間接経路では、ヨード脂質中間体の生成が関与しており、6-ヨードラクトン(6IL)はその中間体の1つである。6ILの存在は、食餌中に継続的にヨウ素を投与したラットの正常乳腺および腫瘍乳腺で報告されている(非特許文献12)。
【0009】
そして、乳がん細胞株であるMCF-7細胞において、6ILがペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPARγ)を強く刺激し、PPARアルファ(PPARα)発現を阻害することが報告されている(非特許文献13)。
【0010】
PPARαが発癌促進に関連しているのに対し(非特許文献14.15)、PPARγ(非特許文献16.17)は、増殖を阻害し、アポトーシスを誘導し、分化を促進するすることから、抗腫瘍剤であることが報告されている(非特許文献18,19)。また、PPARαおよびPPARγの相反する効果は、正常および腫瘍乳房組織ならびに乳房細胞株において報告されており(非特許文献20.21)、PPARγが、がんの細胞分裂停止、EMT(上皮間葉転換)の阻害、アポトーシス誘導等に関与する事が報告されている(非特許文献22)。
【0011】
ヨウ素によるがんの治療について、ヨウ化ナトリウムの水溶液、ヨウ化カリウムの水溶液を用いたがんの治療に関する報告があるが、いずれもヨウ素の作用機序、及び治療効果を証明する証拠が不十分であり、また、ヨウ素を投与する条件、投与時期、投与期間、投与量が不明であった(特許文献6.7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2013-17429号公報
【文献】特表2010-530234号公報
【文献】特許第5141919号
【文献】特開2013-42689号公報
【文献】特開2011-163830号公報
【文献】特開2004-315470号公報
【文献】特開2008-143808号公報
【非特許文献】
【0013】
【文献】Priya Gogoi他:PLOS ONE, January 2016,Volume 11
【文献】Marius Ilie他:PLOS ONE, October 2014,Volume 9
【文献】Thomas Budd他:The New England Journal of Medicine, August 2004,351;781-791
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
近年、末梢血循環腫瘍細胞の解析に用いるCTCの検出方法に関しては、様々な方法が開発されている。その中でもFDAが認可しているセルサーチシステムは、がん細胞の表面マーカーとしてEpCAM抗体を利用しているCTCの検出方法であるが、EpCAMやサイトケラチン(CK)をほとんど、又は全く発現していない腫瘍細胞も報告されているため、抗原の発現量に依存するアフィニティーを用いたこの方法では、捕捉できるがん細胞に限界があった。
【0015】
一方、微小流路デバイス法(Microfluidic Chip)は、セルサーチの欠点を補うために開発された検査法であり、CellSearch法の61%のCTC捕捉率に対して、微小流路デバイス法では、94%の捕捉率を得ており、きわめて高感度であることが示されている(非特許文献23,24)。
【0016】
また、Abnova社のCytoQuest(商標)CRは、生存可能なCTCの捕捉と単離が可能なマイクロ流体チップを使用し、抗体で捕捉したCTCを温度変化でリリースすることが可能な技術であり、微小流路デバイス法と同様に高感度にCTCの捕捉することが可能である(非特許文献25)。
【0017】
他にも様々な原理に基づくCTC検査機器が開発されているが、本発明で求められるCTCの解析技術は、捕捉したがん細胞の数、性質、及び形態を詳細に解析できる事である。
例えば、捕捉したがん細胞をDAPI(細胞の核染色)、Cytokeratin(上皮細胞や上皮由来細胞、上皮由来悪性腫瘍細胞に発現)、CD45(すべてのヒト白血球に発現)、Vimentin(EMTを起こした間葉系細胞に発現)で同時に染色し、(1)上皮系形質のCTC、(2)上皮系形質と間葉系形質の性質を併せ持つCTC、(3)間葉系形質のCTCを検出する事である。または、CD44を検出する事により、がん幹細胞の性質を詳しく解析する事である(非特許文献26)。これらの癌細胞の性質を解析することにより、PPAR-γ作動薬であるヨウ素の治療効果を最大限に発揮することが可能となる。
【0018】
そして、ヨウ素の投与におけるその安全性については、ヨウ素の過剰投与に直面した場合でも、正常な甲状腺ホルモン分泌の維持にはいくつかのメカニズムが関与していることが報告されているが、中でもヨウ化ナトリウム共輸送体系は、このヨウ素の安定性の大部分を占めている(非特許文献27)。しかし、がんの治療に投与するためには、常にがん患者のがん細胞の性質と数を調べ、かつ安定した濃度を維持しながら安全に水様性のヨウ素を投与する必要があった。
【0019】
そこで、ヨウ素を投与する前にがん患者から血液を採取し、血中のCTCを詳細に解析し、EMTを起こした間葉系形質のCTCが検出された場合には、EMTを阻害するPPAR-γ作動薬であるヨウ素を安全に計画的に投与し、間葉系形質のCTCの消失を、治療効果を確認するためのマーカーとしてCTC検査を経時的に行い、がんの治療効果を検証しながらヨウ素で治療するコンビネーション治療を実施する必要があった。
【0020】
本発明は、安全性が高く、がんの治療効果を高め、がんの転移や再発を防止することができる、がんの治療方法、及びがん患者におけるPPAR-γ作動薬の治療効果を判定するモニタリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために、本発明のがんの治療方法は、哺乳類対象者の末梢血循環腫瘍細胞(CTC)の解析を行う第一解析工程と、前記解析の結果を基に、治療が必要とされた対象者に有効量のPPAR-γ作動薬を投与する工程と、前記PPAR-γ作動薬の投与後の対象者の末梢血循環腫瘍細胞(CTC)の解析を行う第二解析工程と、を含む、がんの治療方法である。
【0022】
前記哺乳類対象者としては、ヒト、猫又は犬等が好適である。
【0023】
前記PPAR-γ作動薬が、PPAR-αの抑制作用を持つことが好適である。
前記PPAR-γ作動薬が、ヨウ素含有化合物を含むことが好ましい。前記ヨウ素含有化合物が、ヨウ化ナトリウムであることが好適である。本発明において、ヨウ素含有化合物を含む水溶液を安定ヨウ素水と称する。
前記PPAR-γ作動薬が、ヨウ素分として100ppm~20,000ppmのヨウ化ナトリウムを含む水溶液であることが好適である。
【0024】
前記PPAR-γ作動薬の投与方法としては、服用、吸入、注射又は点滴により投与されることが好ましい。
前記PPAR-γ作動薬が服用により投与される場合、該PPAR-γ作動薬が、ヨウ化ナトリウムと、クエン酸二水素カリウム及び/又はメタけい酸ナトリウム・9水和物と、を含む水溶液であることが好適である。
前記PPAR-γ作動薬が吸入、注射又は点滴により投与される場合、該PPAR-γ作動薬が、ヨウ化ナトリウム及び生理食塩水を含むことが好適である。
【0025】
前記末梢血循環腫瘍細胞の解析が、末梢血循環腫瘍細胞の数を定量化することを含むことが好適である。また、前記末梢血循環腫瘍細胞の解析が、末梢血循環腫瘍細胞の形態の解析を含むことが好適である。
前記末梢血循環腫瘍細胞の解析が、末梢血循環腫瘍細胞を取り囲む微小環境(ニッチ)の数を定量化することを含むことが好適である。前記微小環境(ニッチ)としては、血小板、マクロファージ、リンパ球及び間質細胞からなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【0026】
前記第一解析工程において、下記a)~f)の少なくとも1つに該当した場合にPPAR-γ作動薬を投与することが好適である。
a)原発巣から漏れ出たType.1のCTCが検出された場合、
b)Type.2の亜型(Metastable Cell)である準安定細胞のCTCが検出された場合、
c)EMTを起こした可能性があるType.2のCTCが検出された場合、
d)細胞の形態がアメーバー細胞(amoeboid)のCTCが検出された場合、
e)単一のがん細胞ではなく、がん細胞同士が凝集してクラスターになったCTCが検出された場合、
f)単一のがん細胞ではなく、血球細胞や血小板などを含んだ形で凝集体を形成する循環腫瘍微小塞栓(circulating tumor microemboli:CTM)が検出された場合。
【0027】
前記末梢血循環腫瘍細胞の解析において1mLの血液当たり1個以上の末梢血循環腫瘍細胞を検出することが、がん患者が腫瘍を有する指標として用いることができる。
【0028】
がん患者が、上皮腫瘍、間葉腫瘍、上皮と間葉の療法の性質を有する腫瘍、及び転移性腫瘍からなる群から選択される1種以上を有する場合に、本発明は好適に用いられる。
【0029】
がんが、乳癌、肺癌、頭頚部癌、前立腺癌、食道癌、気管癌、皮膚癌、脳癌、肝臓癌、膀胱癌、胃癌、膵臓癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸癌、精巣癌、結腸癌、直腸癌及び皮膚癌からなる群から選択される1種以上の場合に、本発明は好適に用いられる。
【0030】
本発明のモニタリング方法は、がん患者におけるPPAR-γ作動薬の治療効果を判定するモニタリング方法であって、哺乳類対象者の末梢血循環腫瘍細胞の解析を行う工程と、前記解析の結果を基にPPAR-γ作動薬を投与された対象者の末梢血循環腫瘍細胞の解析を行う工程と、を含み、前記対象者の末梢血循環腫瘍細胞数が経時的に減少する場合、がん患者がPPAR-γ作動薬の治療に対して肯定的な応答を有したと判定する、方法である。
【0031】
本発明の試験方法は、PPAR-γ作動薬の治療効果を判定するための試験方法であって、PPAR-γ作動薬の投与前及び投与後に末梢血循環腫瘍細胞(CTC)の解析を行う、方法である。
【0032】
本発明のPPAR-γ作動薬の使用は、がんの治療効果を高めるため又はがんを治療するための医薬の製造における、PPAR-γ作動薬の使用であって、前記PPAR-γ作動薬の投与前に、末梢血循環腫瘍細胞(CTC)の解析を行う、使用である。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、安全性が高く、がんの治療効果を高め、がんの転移や再発を防止することができる、がんの治療方法、及びがん患者におけるPPAR-γ作動薬の治療効果を判定するモニタリング方法を提供することができるという著大な効果を奏する。
【0034】
一般的な抗がん剤による治療では、EMTを起こしてがん幹細胞様の性質を獲得したType.2の亜型(Metastable Cell)のCTCである準安定細胞とType.2のCTCである間葉系細胞(mesenchymal cell)には効果が期待できないため、治療不可能となってしまう場合があるが(非特許文献4~5)、本発明で用いられるPPAR-γ作動薬であるヨウ素は、EMTの変換を阻害し、且つ、アポトーシスによりがん細胞を死滅させる事が期待できるため、末梢血循環腫瘍細胞の解析によりType.2の亜型(Metastable Cell)のCTCである準安定細胞とType.2のCTCである間葉系細胞(mesenchymal cell)、及びアメーバー様細胞(amoeboid cell)や凝集した細胞(クラスター、CTM)が検出され、ヨウ素治療によりそれらのがん幹細胞様のCTCを除去出来れば、がんの治療効果を高め、がんの転移や再発を防止する事が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】腫瘍随伴マクロファージの画像1~画像5の画像例の写真である。
【
図2】死滅した細胞の画像1~画像5の画像例の写真である。
【
図3】Type.1の無傷細胞の画像1~画像5の画像例の写真である。
【
図4】Type.1の凝集した細胞(クラスターCTC)の画像1~画像5の画像例の写真である。
【
図5】Type.1の凝集した細胞(CTM)の画像1~画像5の画像例の写真である。
【
図6】Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intactCTC)の画像1~画像5の画像例の写真である。
【
図7】Type.2の亜型(Metastable Cell)のアメーバー細胞(amoeboid)の画像1~画像5の画像例の写真である。
【
図8】Type.2の亜型(Metastable Cell)の凝集した細胞(クラスターCTC)の画像1~画像5の画像例の写真である。
【
図9】Type.2の亜型(Metastable Cell)の凝集した細胞(CTM)の画像1~画像5の画像例の写真である。
【
図10】Type.2の間葉系細胞(mesenchymal)の画像1~画像5の画像例の写真である。
【
図11】Type.2のCTCのアメーバー細胞(amoeboid)の画像1~画像5の画像例の写真である。
【
図12】Type.2の凝集した細胞(クラスターCTC)の画像1~画像5の画像例の写真である。
【
図13】Type.2の凝集した細胞(CTM)の画像1~画像5の画像例の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明するが、図示例は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0037】
本発明のがんの治療方法は、哺乳類対象者の末梢血循環腫瘍細胞(CTC)の解析を行う第一解析工程と、前記解析の結果を基に、治療が必要とされた対象者に有効量のPPAR-γ作動薬を投与する工程と、前記PPAR-γ作動薬の投与後の対象者の末梢血循環腫瘍細胞(CTC)の解析を行う第二解析工程と、を含む、がんの治療方法である。
【0038】
本発明で用いられる末梢血循環腫瘍細胞の解析方法としては、公知のCTCの解析方法を広く使用でき、特に限定されるものではないが、末梢血循環腫瘍細胞の解析で用いる微小流路デバイス法(非特許文献23)やマイクロ流体チップ(非特許文献25)は、末梢血を循環しているがん細胞を捕捉し、そのがん細胞の染色により、原発巣から漏れ出たCTCをType.1のCTCとして、EMTを起こした可能性があるCTCをType.2のCTCとして測定することが可能である。
【0039】
EMTにより、上皮細胞がその細胞極性や周囲細胞との接着機能を失い、遊走、浸潤能を得ることで間葉系様の細胞へと変化するプロセスが分かっているため(非特許文献1~3)、がん細胞は悪性度が高まるにつれて、Type.2の亜型(Metastable Cell)である準安定細胞を経て、Type.2のCTCである間葉系細胞(mesenchymal cell)へと変化する。
【0040】
最近の研究によれば、同じCTCでも悪性度が高まるにつれて細胞の形態がアメーバー細胞(amoeboid)に変化し、さらに単一のがん細胞とは異なり、がん細胞同士が凝集してクラスターになったクラスター(cluster)CTCが転移や予後に関係しているとする報告がある(非特許文献28)。そして、クラスターCTCの中でも血球細胞や血小板などを含んだ形で凝集体を形成する循環腫瘍微小塞栓(circulating tumor microemboli:CTM)は、単一のCTCと比較して異なる表現型と分子特性を示すことが示唆されており、より高い転移能を有し、アポトーシスに対する抵抗性を示すことが報告されており(非特許文献29,31)、tumor-associated macrophages(瘍随伴マクロファージ:TAM)に至っては、がん細胞ではないが、がん細胞をサポートしているマクロファージとして、線維芽細胞や血管内皮細胞などとともにがんの微小環境(ニッチ)を形成し、がん細胞の増殖を促進する作用があることが報告されている(非特許文献30)。
【0041】
本発明では、CTCの解析結果を基に、治療が必要とされた対象者に有効量のPPAR-γ作動薬を所定期間投与し、その後、再度、対象者のCTCの解析を行い、がん患者におけるPPAR-γ作動薬の治療効果を判定するものである。
【0042】
前記PPAR-γ作動薬としては、PPAR-αの抑制作用を持つものが好適であり、特に、ヨウ素含有化合物が好ましく、安全性及び有効性の点から、ヨウ化ナトリウムがさらに好ましい。
【0043】
ヨウ素治療におけるヨウ素の安全性については、(1)健康で甲状腺機能が正常な成人男性30名に無作為にヨウ素(ヨウ化物として)を500、1,500、4,500μg/日の用量で、14日間経口投与された結果、ヨウ素の総摂取量が800μg/日(0.011mg/kg体重/日)では、血清甲状腺ホルモン値と血清TSH値への影響は認められなかったが、1,800μg/日(0.026mg/kg体重/日)と4,800μg/日(0.069mg/kg体重/日)では、投与前に比較して、血清総T4値と遊離T4値に、小さいが有意な一過性の低下(10%)が認められ、血清TSH値に上昇(48%)が認められた報告、(2)健康で甲状腺機能が正常な成人11名に、海藻としてヨウ素を25mg/日の用量で14日間投与した試験で、血清TSH値の平均値が有意に上昇したが、正常範囲内であった報告、(3)長期の試験として、健康な成人4名に、ヨウ素を約1,000mg/日の用量で11週間連日経口投与した結果、小さいが統計的に有意な血清T4値の平均値の低下と、血清TSH値の上昇が認めたが、この2つの変化は、投与中止後1週間以内に元に戻った報告、を参考にしている(非特許文献32)。
【0044】
本願発明者らは、本発明の治療方法において、上記のヨウ素の安全性を考慮した有効量を処方することによって、ヨウ素がType.2の亜型(Metastable Cell)のCTCである準安定細胞やType.2のCTCである間葉系細胞(mesenchymal cell)だけではなく、クラスターCTC、クラスターCTM、及びTAMも阻害することを見出した。
【0045】
加えて、アポトーシス(apoptosis)CTCはダメージを受けて機能を持たない死んだがん細胞であり、抗がん剤の治療履歴がある場合、又は治療を継続している時に多く検出されるCTCであるが、ヨウ素にもがん細胞をアポトーシスする作用が報告されているため、ヨウ素による治療効果を判定する手段のひとつとして解析するものである。
【0046】
以上の事より、本発明のヨウ素含有化合物等のPPAR-γ作動薬とCTC解析のコンビネーション治療においては、Type.1のCTC、Type.2の亜型(Metastable Cell)である準安定細胞とType.2のCTCである間葉系細胞(mesenchymal cell)、及びアメーバー様細胞(amoeboid cell)、CTM、TAM、アポトーシスCTCの解析によりPPAR-γ作動薬の治療効果を判定し、治療効果が認められた場合は、さらにPPAR-γ作動薬の投与量、投与回数、投与期間等の治療指針を決定していくものとする。
【0047】
以下に微小流路デバイス法による検査結果をもとに、本発明で使用するPPAR-γ作動薬とのコンビネーション治療で使用する末梢血循環腫瘍細胞の解析表(表1)とその判定基準を示す。
【0048】
【0049】
<捕捉したがん細胞の画像の説明>
微小流路デバイス法で捕捉されたがん細胞は、DAPI(細胞の核染色:青色)、CD45(すべてのヒト白血球に発現)の蛍光抗体(赤色)、Cytokeratin(上皮細胞や上皮由来細胞、上皮由来悪性腫瘍細胞に発現)の蛍光抗体(緑色)、Vimentin(EMTを起こした間葉系細胞に発現)の蛍光抗体(黄色)で異なった色で同時に染色されることから、各画像の染色が意味するものは以下の通りである。
画像1:DAPIによる細胞核の染色(青色)。
画像2:CD45によるヒト白血球の染色(赤色)。
画像3:Cytokeratinによる上皮細胞や上皮由来細胞の染色(緑色)。
画像4:Vimentinによる間葉系細胞の染色(黄色)。
画像5:位相差顕微鏡による観察。
【0050】
(1)腫瘍随伴マクロファージ(Tumor-associated macrophages)の判定基準。
1)形状が大きく、核が在る(DAPI:青色)。
2)CD45とVimentinを弱く発現するか、しない場合もある。
3)がん細胞を貪食した結果、上皮細胞の特徴であるCytokeratin(緑色)が在る。
【0051】
図1に腫瘍随伴マクロファージ(Tumor-associated macrophages)の画像例の写真を示す。
図1の(a)~(e)はそれぞれ画像1~画像5の結果を示す写真である。
図1に示した如く、形状が大きく(画像5の円内)、核が細胞質内に在り(画像1の円内)、CD45(画像2の円内)とVimentin(画像4の円内)を弱く発現している。また、がん細胞を貪食した結果、上皮細胞の特徴であるCytokeratin(画像3の円内)が在る。
【0052】
(2)死滅した細胞(アポトーシスCTC)の判定基準。
1)核が無い。
2)Cytokeratin(緑色)が在る。
3)形状が不定形(細胞の凝縮など)。
【0053】
図2に死滅した細胞(アポトーシスCTC)の画像例の写真を示す。
図2の(a)~(e)はそれぞれ画像1~画像5の結果を示す写真である。
図2に示した如く、核が細胞質内に無い(画像1の円内)。
【0054】
(3)Type.1の無傷細胞(intactCTC)の判定基準。
1)形状が球か楕円で核が在る(DAPI:青色)。
2)CD45(赤色)の発現が無い。
3)Cytokeratin(緑色)の発現が在る。
4)形状が無傷で張りがある。
【0055】
図3にType.1の無傷細胞(intactCTC)の画像例の写真を示す。
図3の(a)~(e)はそれぞれ画像1~画像5の結果を示す写真である。
図3に示した如く、核が細胞質内に在り(画像1の円内)、上皮細胞の特徴であるCytokeratin(画像3の円内)が在る。また、CD45(画像2)とVimentin(画像4)の発現は無く、がん細胞が萎んでいない(画像5の赤丸内)。
【0056】
(4)Type.1の凝集した細胞(クラスターCTC)の判定基準。
1)多数の核が在る(DAPI:青色)。
2)CD45(赤色)の発現が無い。
3)Cytokeratin(緑色)の発現が在る。
4)クラスターを形成。
【0057】
図4にType.1の凝集した細胞(クラスターCTC)の画像例の写真を示す。
図4の(a)~(e)はそれぞれ画像1~画像5の結果を示す写真である。
図4に示した如く、多数の核が在り(画像1の円内)、上皮細胞の特徴であるCytokeratinの発現が在る(画像3の円内)。また、CD45(画像2)とVimentin(画像4)の発現は無く、がん細胞がクラスターを形成しいる(画像1,3,5の円内)。
【0058】
(5)Type.1の凝集した細胞(CTM)の判定基準。
1)多数の核が在る(DAPI:青色)。
2)CD45(赤色)を弱く発現。
3)Cytokeratin(緑色)の発現が在る。
4)Vimentin(黄色)の発現が無い。
5)血球細胞や血小板などを含んだクラスターを形成。
【0059】
図5にType.1の凝集した細胞(CTM)の画像例の写真を示す。
図5の(a)~(e)はそれぞれ画像1~画像5の結果を示す写真である。
図5に示した如く、多数の核が在り(画像1の円内)、上皮細胞の特徴であるCytokeratin(画像3の円内)が在る。また、血球細胞や血小板などを含んだ形で凝集体(CTM)を形成するためCD45(画像2の円内)が弱く発現し、Vimentin(画像4)の発現は無く、がん細胞がクラスターを形成している(画像1,2,3,5の円内)。
【0060】
(6)Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intactCTC)の判定基準。
1)形状が球か楕円で核が在る(DAPI:青色)。
2)CD45(赤色)の発現が無い。
3)Cytokeratin(緑色)とVimentin(黄色)の発現が在る。
4)形状が無傷で張りがある。
【0061】
図6にType.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intactCTC)の画像例の写真を示す。
図6の(a)~(e)はそれぞれ画像1~画像5の結果を示す写真である。
図6に示した如く、核が細胞質内に在り(画像1の円内)、CD45(画像2)の発現は無く、上皮細胞の特徴であるCytokeratin(画像3の円内)と間葉系細胞の特徴であるVimentin(画像4の円内)の発現が在り、がん細胞が萎んでいない(画像5の円内)。
【0062】
Type.2の亜型(Metastable Cell)のアメーバー細胞(amoeboid)の判定基準。
1)形状が球か楕円で核が在る(DAPI:青色)。
2)CD45(赤色)の発現が無い。
3)Cytokeratin(緑色)とVimentin(黄色)の発現が在る。
4)形状がアメーバー様の細胞。
【0063】
図7にType.2の亜型(Metastable Cell)のアメーバー細胞(amoeboid)の画像例の写真を示す。
図7の(a)~(e)はそれぞれ画像1~画像5の結果を示す写真である。
図7に示した如く、核が細胞質内に在り(画像1の円内)、CD45(画像2)の発現は無く、上皮細胞の特徴であるCytokeratin(画像3の円内)と間葉系細胞の特徴であるVimentin(画像4の円内)の発現が在り、形態がアメーバー様の細胞(画像3,4の円内)である。
【0064】
(8)Type.2の亜型(Metastable Cell)の凝集した細胞(クラスターCTC)の判定基準。
1)多数の核が在る(DAPI:青色)。
2)CD45(赤色)の発現が無い。
3)Cytokeratin(緑色)とVimentin(黄色)の発現が在る。
4)クラスターを形成。
【0065】
図8にType.2の亜型(Metastable Cell)の凝集した細胞(クラスターCTC)の画像例の写真を示す。
図8の(a)~(e)はそれぞれ画像1~画像5の結果を示す写真である。
図8に示した如く、多数の核が在り(画像1の円内)、CD45(画像2)の発現は無く、上皮細胞の特徴であるCytokeratin(画像3の円内)と間葉系細胞の特徴であるVimentin(画像4の円内)の発現が在り、がん細胞がクラスターを形成している(画像1,3,4,5の円内)。
【0066】
(9)Type.2の亜型(Metastable Cell)の凝集した細胞(CTM)の判定基準。
1)多数の核が在る(DAPI:青色)。
2)CD45(赤色)を弱く発現。
3)Cytokeratin(緑色)とVimentin(黄色)の発現が在る。
4)血球細胞や血小板などを含んだクラスターを形成。
【0067】
図9にType.2の亜型(Metastable Cell)の凝集した細胞(CTM)の画像例のの写真を示す。
図9の(a)~(e)はそれぞれ画像1~画像5の結果を示す写真である。
図9に示した如く、多数の核が在り(画像1の円内)、上皮細胞の特徴であるCytokeratin(画像3の円内)と間葉系細胞の特徴であるVimentin(画像4の円内)の発現が在る。また、血球細胞や血小板などを含んだ形で凝集体(CTM)を形成するためCD45(画像2のの円内)が弱く発現し、がん細胞がクラスターを形成している(画像1,3,4,5の円内)。
【0068】
(10)Type.2の間葉系細胞(mesenchymal)の判定基準。
1)形状が球か楕円で核が在る(DAPI:青色)。
2)CD45(赤色)の発現が無い。
3)Cytokeratin(緑色)の発現が無い。
4)Vimentin(黄色)の発現が在る。
【0069】
図10にType.2のCTCの間葉系細胞(mesenchymal)の画像例の写真を示す。
図10の(a)~(e)はそれぞれ画像1~画像5の結果を示す写真である。
図10に示した如く、核が細胞質内に在り(画像1の円内)、CD45(画像2)とCytokeratin(画像3)の発現は無く、間葉系細胞の特徴であるVimentin(画像4の円内)の発現が在り、がん細胞が萎んでいない(画像5の円内)。
【0070】
(11)Type.2のCTCのアメーバー細胞(amoeboid)の判定基準。
1)核が在る(DAPI:青色)。
2)CD45(赤色)とCytokeratin(緑色)の発現が無い。
3)Vimentin(黄色)の発現が在る。
4)形状がアメーバー様の細胞。
【0071】
図11にType.2のCTCのアメーバー細胞(amoeboid)の画像例の写真を示す。
図11の(a)~(e)はそれぞれ画像1~画像5の結果を示す写真である。
図11に示した如く、核が細胞質内に在り(画像1の円内)、CD45(画像2)とCytokeratin(画像3)の発現は無く、間葉系細胞の特徴であるVimentin(画像4の円内)の発現が在り、形態がアメーバー様の細胞(画像4,5の赤丸内)である。
【0072】
(12)Type.2の凝集した細胞(クラスターCTC)の判定基準。
1)多数の核が在る(DAPI:青色)。
2)CD45(赤色)とCytokeratin(緑色)の発現が無い。
3)Vimentin(黄色)の発現が在る。
4)クラスターを形成。
【0073】
図12にType.2の凝集した細胞(クラスターCTC)の画像例の写真を示す。
図12の(a)~(e)はそれぞれ画像1~画像5の結果を示す写真である。
図12に示した如く、多数の核が在り(画像1の円内)、CD45(画像2)とCytokeratin(画像3)の発現は無く、上皮細胞の特徴であると間葉系細胞の特徴であるVimentin(画像4の円内)の発現が在り、がん細胞がクラスターを形成している(画像1,4,5の赤丸内)。
【0074】
(13)Type.2の凝集した細胞(CTM)の判定基準。
1)多数の核が在る(DAPI:青色)。
2)CD45(赤色)を弱く発現。
3)Cytokeratin(緑色)の発現が無い。
4)Vimentin(黄色)の発現が在る。
5)血球細胞や血小板などを含んだクラスターを形成。
【0075】
図13にType.2の凝集した細胞(CTM)の画像例の写真を示す。
図13の(a)~(e)はそれぞれ画像1~画像5の結果を示す写真である。
図13に示した如く、多数の核が在り(画像1の円内)、Cytokeratin(画像3の円内)が無く、間葉系細胞の特徴であるVimentin(画像4の円内)の発現が在る。また、血球細胞や血小板などを含んだ形で凝集体(CTM)を形成するためCD45(画像2の円内)が弱く発現し、がん細胞がクラスターを形成している(画像1,4,5の赤丸内)。
【0076】
本発明の治療方法において、PPAR-γ作動薬を投与するがんの基準は、健康診断目的のCTC検査で陽性となった患者の希望により医師がPPAR-γ作動薬を処方する場合を除いては、三大がん治療と呼ばれている外科治療、放射線治療、抗がん剤などの化学療法による標準治療では治療が困難になったステージ3とステージ4のがんであり、且つ、末梢血循環腫瘍細胞の解析において、EMTを起こしている可能性があるType.2の亜型(Metastable Cell)のCTCである準安定細胞、EMTを起こしたType.2のCTCが検出された場合であり、かつ、患者の同意が得られた場合によるものとする。
【0077】
末梢血循環腫瘍細胞の解析は、検査の目的と方法、及び、その検査成績から治療方針を検討する旨の同意書をがんの患者から取得した後、例えば、専用の採血管で10mLの血液を採血し、微小流路デバイス法等により末梢血循環腫瘍細胞の解析を実施する。
【0078】
本発明において、PPAR-γ作動薬としてヨウ素含有化合物を用いたヨウ素治療を行う場合は、原則としてその処方においては、必ず、病院の医師が患者の甲状腺機能が正常であることを確認した後に、その同じ病院内で医師自らが製造した安定ヨウ素水を使用するものとする。
【0079】
本発明において使用されるヨウ素治療の有効量は、本願明細書記載の方法で使用された場合に、過度の有害な副作用を伴わず、がんの治療応答をもたらすのに十分である安全なヨウ素の量を意味する。また、ヨウ素治療の安全な量の上限としては、約1,000mg/日の服用における11週間の連日経口投与による安全性の報告(非特許文献32)を参考に処方するが、がんの進行状態等の悪性度に応じて、医師は随時その用法用量を調製できるものとする。
【0080】
また、安定ヨウ素水で使用するヨウ化ナトリウムの基本的な用法用量は、以下の非特許文献を参考にして設定した。先ず、ヨウ素の吸収率であるが、服用したヨウ化ナトリウムのヨウ素は、多くの場合、消化管から100%吸収され、腸でヨウ化物に還元され、ほぼ完全に小腸で吸収される。甲状腺機能が正常な成人7名を対象にした曝露試験では、単回経口摂取されたトレーサー量の131Iのうち、1%未満が便から検出された。このことから、摂取された放射性ヨウ素の吸収率は100%に近いことが報告されている。また、甲状腺機能が正常な別の成人20名を対象にした曝露試験では、ヨウ化カリウムが13週間連日摂取され、ヨウ素の1日の尿中排泄量が、1日の推定摂取量の約80~90%であった。よって、このことからも、ヨウ素の吸収率は100%に近いことが示唆されている(非特許文献33)。
【0081】
そして、服用されたヨウ素の体内分布であるが、放射標識されたヨウ素をヨウ化ナトリウムとして、トレーサー濃度でヒトに経口摂取させた曝露試験では、約20~30%のヨウ素が甲状腺に分布し、約30~60%が約10時間で尿中に排泄された。Na131Iをトレーサー濃度で経口摂取させた場合も、本質的に同じ結果が得られていた(非特許文献34)。
【0082】
ヨウ素の呼気からの吸入についてであるか、ヨウ素は、肺や消化管から吸収されやすいことが報告されているが、ボランティアに放射性ヨウ素を吸入させた試験では、吸入されたヨウ素は、ほぼ全量が気道から消失し、半減期は約10分であり(非特許文献35)、吸入されたヨウ素の多くが、粘液線毛クリアランスによって、消化管に移行した。吸入されたヨウ素が比較的速く吸収されることは、マウス、ラット、イヌ、ヒツジを用いた試験でも裏づけられている(非特許文献36)。
【0083】
ヨウ素の抗腫瘍効果については、In vitro実験(非特許文献37)、In vivo実験(非特許文献6及び38~41)、臨床試験(非特許文献42~45)、および疫学報告(非特許文献46~48)から得られた多数のデータによって、ヨウ素が腫瘍の進行を阻害し、炎症性/増殖性病変を改善する効果があるという見解が裏付けられている。そして、これらの有益な効果が比較的高いヨウ素濃度(ミリグラム/日)であることが報告されている。
【0084】
以上の報告を考察し、例えば、本発明で好適に使用される8,400ppmの安定ヨウ素水は、ヨウ化ナトリウムが1w/v%、クエン酸二水素カリウムが0.08w/v%、メタけい酸ナトリウム・9水和物が0.1w/v%の水溶液で構成され、この時のpHは8.3~8.7の弱アルカリ性となる。10,000ppmの安定ヨウ素水は、ヨウ化ナトリウムが1.2w/v%、クエン酸二水素カリウムが0.08w/v%、メタけい酸ナトリウム・9水和物が0.1w/v%の水溶液で構成され、この時のpHは8.3~8.7の弱アルカリ性となる。ここで処方しているクエン酸二水素カリウムとメタけい酸ナトリウム・9水和物は、pHの緩衝剤として処方している安全な添加剤である。
また、この安定ヨウ素水は、限外濾過した後、ヨウ素の安定性を考慮して窒素置換を行い、85℃で加熱処理を施してから使用するまで常温で保管するものとする。
【0085】
本発明で使用する安定ヨウ素水の服用は、末梢血循環腫瘍細胞の解析結果から医師が判断するが、その用法用量は、1,000mg/日の服用を上限として、例えば、8,400ppmの安定ヨウ素水の場合は、30mL/回を一日三回(ヨウ素分として756mg/日)、10,000ppmの安定ヨウ素水の場合は、30mL/回を一日三回(ヨウ素分として900mg/日)が好適であるが、治療経過における末梢血循環腫瘍細胞の解析結果から医師は随時用法用量を変更、又は服用を中止することができるものとする。
【0086】
本発明で使用する注射用の安定ヨウ素水は、末梢血循環腫瘍細胞の解析結果から医師が判断し、例えば、0.02μmのメンブランフィルターで濾過滅菌した10mLの10w/v%のヨウ化ナトリウムを100mLの点滴用注射用生理食塩水に溶解し、この110mLを一日一回、30分間で点滴することが好適であるが、治療経過における末梢血循環腫瘍細胞の解析結果から医師は随時点滴回数を変更、又は点滴を停止することができるものとする。
【0087】
本発明で使用する吸入用の安定ヨウ素水は、末梢血循環腫瘍細胞の解析結果から医師が判断し、例えば、生理食塩水で1w/v%の濃度に調製したヨウ化ナトリウム水溶液を0.02μmのメンブランフィルターで濾過滅菌し、その30mLを専用のネプライザーに移し替えて、一日数回吸入することが好適であるが、治療経過における末梢血循環腫瘍細胞の解析結果から医師は随時用法用量を変更、又は吸入を停止することができるものとする。
【0088】
本願明細書において、がんとは、特に限定されるわけではないが、白血病、リンパ腫、黒色腫、がん腫、および肉腫を含む、哺乳動物において認められるあらゆるタイプのがん、または新生物もしくは悪性腫瘍を意味する。がんの例は、脳、乳房、膵臓、子宮頸部(cervix)、結腸、頭頸部、腎臓、肺、非小細胞肺、黒色腫、中皮腫、卵巣、肉腫、胃、子宮、および髄芽腫のがんである。その他のがんには、例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、乳がん、卵巣がん、肺がん、横紋筋肉腫、原発性血小板血症、原発性マクログロブリン血症、小細胞肺腫瘍、原発性脳腫瘍、胃がん、結腸がん、悪性膵臓インスリノーマ(insulanoma)、悪性カルチノイド、膀胱がん、前がん性皮膚病変、精巣がん、リンパ腫、甲状腺がん、神経芽細胞腫、食道がん、尿生殖路がん、悪性高カルシウム血症、子宮頸がん、子宮内膜がん、副腎皮質がん、および前立腺がんが含まれる。
【実施例】
【0089】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0090】
以下に示す治療症例は、すべて患者の同意のもとに医師の主導で実施された自由診療における成績であり、本開示についても患者本人の同意のもとに開示されているものである。
下記実施例において、末梢血循環腫瘍細胞の解析は、専用の採血管で10mLの血液を採血し、微小流路デバイス法により末梢血循環腫瘍細胞の解析を実施した。また、PPAR-γ作動薬として、前述した安定ヨウ素水[8,400ppmの安定ヨウ素水:1w/v%ヨウ化ナトリウム、0.08w/v%クエン酸二水素カリウム、0.1w/v%メタけい酸ナトリウム・9水和物の水溶液(pH8.3~8.7)、又は10,000ppmの安定ヨウ素水:1.2w/v%ヨウ化ナトリウム、0.08w/v%クエン酸二水素カリウム、0.1w/v%メタけい酸ナトリウム・9水和物の水溶液(pH8.3~8.7)]を用いたヨウ素治療を行った。
【0091】
(実施例1)
患者Aの情報とヨウ素治療の経過を表2に、末梢血循環腫瘍細胞の解析結果を表3にそれぞれ示す。
【0092】
【0093】
【0094】
表3に示した如く、2018年6月19日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.1の無傷細胞(intact CTC)が1個、Type.1の凝集した細胞(クラスターCTC)、Type.1の凝集した細胞(CTM)、準安定細胞(Metastable Cell)のアメーバー細胞(amoeboid)が1個検出されたため、8,400ppmの安定ヨウ素水を20mL×3回/日の回数で服用を開始した。
【0095】
2018年12月3日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、ダメージを受けて死滅した細胞(アポトーシスCTC)が3個検出され、CTCが検出されなかったため、2019年1月7日からは8,400ppmの安定ヨウ素水を10mL×1回(朝食前)に減量して服用し、2019年1月21日からはその服用を中止した。
【0096】
実施例1の症例では、ヨウ素が持つPPAR-γの作動とPPAR-αの抑制により、準安定細胞(Metastable Cell)のアメーバー細胞(amoeboid)、Type.1の凝集した細胞(クラスターCTC)、Type.1の凝集した細胞(CTM)が消失したものと考察される。
【0097】
(実施例2)
患者Bの情報とヨウ素治療の経過を表4に、末梢血循環腫瘍細胞の解析結果を表5にそれぞれ示す。
【0098】
【0099】
【0100】
表5に示した如く、2018年12月17日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞が9個検出され、Type.2の間葉系細胞(mesenchymal)が1個検出されたため、8,400ppmの安定ヨウ素水を20mL×3回/日の回数で服用を開始した。
【0101】
2019年1月21日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.2の間葉系細胞(mesenchymal)は検出されなかったが、Type.1のViabilityが低い無傷細胞が2個検出され、Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞が5個検出されたため、8,400ppmの安定ヨウ素水を20mL×3回/日の回数で継続して服用した。また、EMT変換の途中段階にあると思われる準安定細胞(Metastable Cell)の無傷細胞が消失しなかったことについては、本願明細書の他の実施例の症例で見られるように抗がん剤治療による影響が推察されるが、その詳細な作用機序については不明である。
【0102】
2019年3月6日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.1の無傷細胞(intact CTC)が3個検出されたが、Type.2の亜型(Metastable Cell)、Type.2の間葉系細胞(mesenchymal)は検出されなかった。
【0103】
実施例2の症例では、ヨウ素が持つPPAR-γの作動により、EMT変換が阻害されてType.2の亜型(Metastable Cell)とType.2の間葉系細胞(mesenchymal)が消失したものと推察される。
【0104】
(実施例3)
患者Cの情報とヨウ素治療の経過を表6に、末梢血循環腫瘍細胞の解析結果を表7にそれぞれ示す。
【0105】
【0106】
【0107】
表7に示した如く、2018年4月9日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intact CTC)が39個、Type.2の亜型(Metastable Cell)のアメーバー細胞(amoeboid)が35個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の凝集した細胞(クラスターCTC)が3個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の凝集した細胞(CTM)が4個、Type.2の間葉系細胞(mesenchymal)が12個、Type.2のアメーバー細胞(amoeboid)が7個検出されたため、2018年4月9日より、8,400ppmの安定ヨウ素水を15mL×2回/日(朝・夕食後)で服用を開始した。
【0108】
2018年5月15日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.1の無傷細胞(intact CTC)が1個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intact CTC)が1個、Type.2の亜型(Metastable Cell)のアメーバー細胞(amoeboid)が3個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の凝集した細胞(クラスターCTC)が2個検出されたが、Type.2の間葉系細胞(mesenchymal)とType.2のアメーバー細胞(amoeboid)が検出されなかったため、8,400ppmの安定ヨウ素水を20mL×3回/日に減量して服用した。
【0109】
2018年11月19日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、ダメージを受けて死滅した細胞(アポトーシスCTC)が1個検出され、CTCが検出されなかったため、8,400ppmの安定ヨウ素水を10mL×3回/日に減量して服用した。
【0110】
実施例3の症例では、ヨウ素が持つPPAR-γの作動によりEMT変換が阻害されてType.2の間葉系細胞(mesenchymal)とType.2の亜型(Metastable Cell)が消失したものと推察されるが、すべての末梢血循環腫瘍細胞が消失した理由には、ヨウ素の直接効果である酸化/抗酸化の特性によってミトコンドリア膜電位が乱され、ミトコンドリア介在性アポトーシスが引き起こされた可能性もあると推察される(非特許文献8,11)。
【0111】
(実施例4)
患者Dの情報とヨウ素治療の経過を表8に、末梢血循環腫瘍細胞の解析結果を表9にそれぞれ示す。
【0112】
【0113】
【0114】
2018年6月18日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、腫瘍関連マクロファージ(TAM)が3個、Type.1の無傷細胞(intact CTC)が2個、Type.1の凝集した細胞(CTM)が1個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞が1個、Type.2の亜型(Metastable Cell)のアメーバー細胞(amoeboid)が2個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の凝集した細胞(クラスターCTC)が1個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の凝集した細胞(CTM)が3個検出されたため、8,400ppmの安定ヨウ素水を30mL×3回/日で服用を開始した。
【0115】
2018年9月26日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.1の無傷細胞(intact CTC)が1個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intact CTC)が1個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の凝集した細胞(CTM)が3個検出されたが、腫瘍関連マクロファーType.1の凝集した細胞(CTM)が消失したため、8,400ppmの安定ヨウ素水を10mL×3回/日に減量して服用した。
【0116】
実施例4の症例では、ヨウ素が持つPPAR-γの作動により、EMT変換が阻害されてType.2の亜型(Metastable Cell)のアメーバー細胞(amoeboid)は消失したが、依然としてType.2の亜型(Metastable Cell)の細胞の塊(クラスター,CTM)が検出されていたため、安定ヨウ素水を減量して服用している。
一方、腫瘍関連マクロファージ(TAM)と血球細胞や血小板などを含んだ微小環境(ニッチ)が消失した理由は、ヨウ素の直接効果である酸化/抗酸化の特性によってミトコンドリア膜電位が乱され、ミトコンドリア介在性アポトーシスが引き起こされた可能性(非特許文献8,11)やヨウ素が持つ様々な抗腫瘍作用が関与していることが示唆される(非特許文献6~9)。
また、本実施例においても、EMT変換の途中段階にあると思われる準安定細胞(Metastable Cell)の無傷細胞が消失しなかったことについては、本願明細書の他の実施例の症例で見られるように抗がん剤治療による影響が推察されるが、その詳細な作用機序については不明である。
【0117】
(実施例5)
患者Eの情報とヨウ素治療の経過を表10に、末梢血循環腫瘍細胞の解析結果を表11にそれぞれ示す。
【0118】
【0119】
【0120】
表11に示した如く、2018年6月8日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.1の無傷細胞(intact CTC)が2個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intact CTC)が12個、Type.2の亜型(Metastable Cell)のアメーバー細胞(amoeboid)が11個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の凝集した細胞(クラスターCTC)が51個検出されたため、8,400ppmの安定ヨウ素水を30mL×3回/日で服用を開始した。
【0121】
2018年6月18日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intact CTC)が3個、Type.2の亜型(Metastable Cell)のアメーバー細胞(amoeboid)が2個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の凝集した細胞(クラスターCTC)が1個検出されたため、8,400ppmの安定ヨウ素水を20mL×3回/日に減量して服用した。
【0122】
実施例5の症例では、明らかにヨウ素が持つPPAR-γの作動により、EMT変換が阻害されてType.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞とアメーバー細胞(amoeboid)と細胞の塊(クラスター、CTM)の数が減少したものと推察される。
【0123】
(実施例6)
患者Fの情報とヨウ素治療の経過を表12に、末梢血循環腫瘍細胞の解析結果を表13にそれぞれ示す。
【0124】
【0125】
【0126】
表13に示した如く、2018年11月19日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.1の無傷細胞(intact CTC)が4個、Type.1の凝集した細胞(CTM)が1個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intact CTC)が8個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の凝集した細胞(クラスターCTC)が1個、凝集した細胞(CTM)が1個検出されたため、8,400ppmの安定ヨウ素水を30mL×3回/日で服用を開始した。
【0127】
2019年1月7日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.1の無傷細胞(intact CTC)とType.1の凝集した細胞(CTM)は検出されなかったが、Type.2の間葉系細胞(mesenchymal)が2個検出されたため、継続して8,400ppmの安定ヨウ素水を30mL×3回/日で服用した。
【0128】
2019年2月14日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果では、Type.1の無傷細胞(intact CTC)が高い無傷細胞が3個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intact CTC)が4個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の凝集した細胞(CTM)が1個、Type.2の間葉系細胞(mesenchymal)が1個検出されたため、継続して8,400ppmの安定ヨウ素水を30mL×3回/日で服用した。
【0129】
2019年3月8日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果では、Type.1の無傷細胞(intact CTC)が1個、Type.2の間葉系細胞(mesenchymal)が3個検出されたため、継続して8,400ppmの安定ヨウ素水を30mL×3回/日で服用した。
【0130】
本実施例において、EMT変換の途中段階にあると思われる準安定細胞(Metastable Cell)の無傷細胞とEMT変換したType.2の間葉系細胞(mesenchymal)が消失しなかったことについては、本願明細書の他の実施例の症例で見られるように抗がん剤治療による影響が推察されるが、その詳細な作用機序については不明である。
【0131】
(実施例7)
患者Gの情報とヨウ素治療の経過を表14に、末梢血循環腫瘍細胞の解析結果を表15にそれぞれ示す。
【0132】
【0133】
【0134】
表15に示した如く、2018年12月4日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.1の無傷細胞(intact CTC)が5個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intact CTC)が13個、Type.2の亜型(Metastable Cell)のアメーバー細胞(amoeboid)が26個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の凝集した細胞(クラスターCTC)が15個検出されたため、8,400ppmの安定ヨウ素水を30mL×3回/日で服用を開始した。
【0135】
また、この時のType.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞、Type.2の亜型(Metastable Cell)のアメーバー細胞(amoeboid)、Type.2の亜型(Metastable Cell)の細胞の塊(クラスター、CTM)の数が多かったため、点滴(100mL/生食+10mLの注射用ヨウ素)を13回実施し、安定ヨウ素水の濃度を8400ppmから10,000ppmへ上げて、30mL×3回/日で服用した。
【0136】
2019年1月7日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intact CTC)、Type.2の亜型(Metastable Cell)のアメーバー細胞(amoeboid)、Type.2の亜型(Metastable Cell)の凝集した細胞(クラスターCTC)は検出されなかったが、Type.1の凝集した細胞(クラスターCTC)が1個、Type.1の凝集した細胞(CTM)が4個検出されたため、安定ヨウ素水の濃度を10,000ppmのままで、回数を30mL×5回/日に増量して服用した。
【0137】
実施例7の症例では、明らかにヨウ素が持つPPAR-γの作動により、EMT変換が阻害されてType.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞、Type.2の亜型(Metastable Cell)のアメーバー細胞(amoeboid)、Type.2の亜型(Metastable Cell)の細胞の塊(クラスター、CTM)が消失したものと推察される。
【0138】
(実施例8)
患者Hの情報とヨウ素治療の経過を表16に、末梢血循環腫瘍細胞の解析結果を表17にそれぞれ示す。
【0139】
【0140】
【0141】
表17に示した如く、2018年9月27日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.1の無傷細胞(intact CTC)が3個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intact CTC)が9個、Type.2の間葉系細胞(mesenchymal)が2個検出されたため、8,400ppmの安定ヨウ素水を30mL×3回/日で服用を開始した。
【0142】
2018年11月19日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.2の間葉系細胞(mesenchymal)が検出されなかったが、Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intact CTC)が3個検出されていたため、8,400ppmの安定ヨウ素水を30mL×3回/日で継続して服用した。
【0143】
2018年12月17日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intact CTC)が1個まで減少していたため、8,400ppmの安定ヨウ素水を20mL×3回/日に減量して服用した。
【0144】
2019年1月21日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、それまで消失していたtype2の間葉系細胞(mesenchymal)が検出され、減少していたType.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intact CTC)が9個検出されていたため、安定ヨウ素水の濃度を10,000ppmに上げて、30mL×3回/日で服用した。
【0145】
実施例8の症例では、ヨウ素治療中も並行して抗がん剤による治療が継続していたため、ヨウ素治療の正確な評価は難しいが、本開示の他の実施例から鑑みて、EMT変換によりがん幹細胞様の間葉系細胞(mesenchymal)の復活には、抗がん剤による影響が推察されるものである。
【0146】
(実施例9)
患者Iの情報とヨウ素治療の経過を表18に、末梢血循環腫瘍細胞の解析結果を表19にそれぞれ示す。
【0147】
【0148】
【0149】
表19に示した如く、2018年11月6日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Yype.1の無傷細胞(intact CTC)が1個、Yype.1の凝集した細胞(クラスターCTC)が1個、Type.2の亜型(Metastable Cell)のアメーバー細胞(amoeboid)が4個、Type.2の間葉系細胞(mesenchymal)が2個検出されたため、8,400ppmの安定ヨウ素水を20mL×3回/日で服用を開始した。
【0150】
2018年12月18日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.1の無傷細胞(intact CTC)が12個検出されたが、Type.1の凝集した細胞(クラスターCTC)、Type.2の亜型(Metastable Cell)のアメーバー細胞(amoeboid)、Type.2の間葉系細胞(mesenchymal)が検出されなかったため、20mL×3回/日に減量して服用した。
【0151】
実施例8の症例では、ヨウ素が持つPPAR-γの作動によりEMT変換が阻害されてType.2の亜型(Metastable Cell)のアメーバー細胞(amoeboid)、Type.2の間葉系細胞(mesenchymal)が消失したものと推察される。
【0152】
(実施例10)
患者Jの情報とヨウ素治療の経過を表20に、末梢血循環腫瘍細胞の解析結果を表21にそれぞれ示す。
【0153】
【0154】
【0155】
表21に示した如く、2018年9月4日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.1の無傷細胞(intact CTC)が1個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intact CTC)が4個検出されたため、8,400ppmの安定ヨウ素水を30mL×3回/日で服用を開始した。
【0156】
2018年10月16日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.1の無傷細胞(intact CTC)が1個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intact CTC)が34個、Type.2の間葉系細胞(mesenchymal)が2個検出されたため、8,400ppmの安定ヨウ素水を40mL×3回/日に増量して服用した。
【0157】
2018年12月4日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.2の間葉系細胞(mesenchymal)が消失し、Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intact CTC)が減少したため、8,400ppmの安定ヨウ素水を30mL×3回/日に減量して服用した。
【0158】
実施例10の症例では、ヨウ素治療中も並行して抗がん剤による治療が継続していたため、ヨウ素治療の正確な評価は難しいが、本願明細書の他の実施例から鑑みて、2018年10月16日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果は、抗がん剤の影響を受けてEMT変換によりがん幹細胞様の間葉系細胞(mesenchymal)が復活したものと容易に推察されるものである。
【0159】
(実施例11)
患者Kの情報とヨウ素治療の経過を表22に、末梢血循環腫瘍細胞の解析結果を表23にそれぞれ示す。
【0160】
【0161】
【0162】
表23に示した如く、2018年11月19日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.1の無傷細胞(intact CTC)が5個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intact CTC)が37個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の凝集した細胞(cluster CTC)が68個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の凝集した細胞(CTM)が2個、Type.2の間葉系細胞(mesenchymal)が4個、Type.2の凝集した細胞(クラスターCTC)が1個検出されたため、2018年11月27日より、8,400ppmの安定ヨウ素水を30mL×5回/日で服用と、点滴(100mL/生食+10mLの注射用ヨウ素水)を計7回実施した。
【0163】
2018年12月28日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.1の無傷細胞(intact CTC)が10個検出されたが、Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intact CTC)、Type.2の亜型(Metastable Cell)の凝集した細胞(クラスターCTC)、Type.2の亜型(Metastable Cell)の凝集した細胞(CTM)、Type.2の間葉系細胞(mesenchymal)、Type.2の細胞の塊(クラスター,CTM)が消失したため、8,400ppmの安定ヨウ素水を30mL×3回/日に減量して服用した。
【0164】
2019年1月8日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.1の無傷細胞(intact CTC)が8個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intact CTC)が4個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の凝集した細胞(クラスターCTC)が2個検出された。
【0165】
実施例11の症例では、安定ヨウ素水の点滴(100mL/生食+10mLの注射用ヨウ素)により消失していたType.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intact CTC)とType.2の亜型(Metastable Cell)の凝集した細胞(クラスターCTC)が復活して検出された症例である。原因としては安定ヨウ素水の減量が考えられるが、継続して8,400ppmの安定ヨウ素水を30mL×3回/日で経過を観察中である。
【0166】
(実施例12)
患者Lの情報とヨウ素治療の経過を表24に、末梢血循環腫瘍細胞の解析結果を表25にそれぞれ示す。
【0167】
【0168】
【0169】
表25に示した如く、2018年11月20日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.1の無傷細胞(intact CTC)が1個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intact CTC)が12個、Type.2の間葉系細胞(mesenchymal)が7個個検出されたため、8,400ppmの安定ヨウ素水を30mL×3回/日で服用と、点滴(100mL/生食+10mLの注射用ヨウ素水)を計7回実施した。
【0170】
2018年12月18日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.1の無傷細胞(intact CTC)は8個検出されたが、Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intact CTC)、Type.2の間葉系細胞(mesenchymal)が検出されなかったため、8,400ppmの安定ヨウ素水を20mL×3回/日に減量して服用した。
【0171】
実施例12の症例では、ヨウ素が持つPPAR-γの作動によりEMT変換が阻害されてType.2の間葉系細胞(mesenchymal)とType.2の亜型(Metastable Cell)が消失したものと推察される。
【0172】
(実施例13)
患者Mの情報とヨウ素治療の経過を表26に、末梢血循環腫瘍細胞の解析結果を表27にそれぞれ示す。
【0173】
【0174】
【0175】
表27に示した如く、2018年4月17日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.1の無傷細胞(intact CTC)が2個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intact CTC)が9個、Type.2の亜型(Metastable Cell)のアメーバー細胞(amoeboid)が1個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の凝集した細胞(CTM)が4個、Type.2の間葉系細胞(mesenchymal)が1個検出されたため、8,400ppmの安定ヨウ素水を30mL×3回/日で服用開始した。
【0176】
2018年6月6日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.1の無傷細胞(intact CTC)は2個検出されたが、Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intact CTC)、Type.2の亜型(Metastable Cell)のアメーバー細胞(amoeboid)、Type.2の亜型(Metastable Cell)の細胞の塊(クラスター,CTM)、Type.2の間葉系細胞(mesenchymal)が検出されず、胸部レントゲンも正常化した為、2018年6月18日より、8,400ppmの安定ヨウ素水を20mL×3回/日に減量して服用した。
【0177】
2018年7月31日の末梢血循環腫瘍細胞の解析結果により、Type.1の無傷細胞(intact CTC)が1個、Type.2の亜型(Metastable Cell)の無傷細胞(intact CTC)が1個検出されたため、20nL×3回/日で服用した。