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特許7603292カゼインキナーゼ1ε阻害剤の結晶形、製造方法及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】カゼインキナーゼ1ε阻害剤の結晶形、製造方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20241213BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241213BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20241213BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
C07D487/04 143
A61P35/00
A61P37/06
A61K31/519
C07D487/04 CSP
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023533402
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 CN2021140154
(87)【国際公開番号】W WO2022135412
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】202011531258.6
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519172878
【氏名又は名称】杭州和正医薬有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】周 星露
(72)【発明者】
【氏名】劉 興国
(72)【発明者】
【氏名】胡 苗
(72)【発明者】
【氏名】朱 建栄
(72)【発明者】
【氏名】呉 一哲
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/259463(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/079558(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106146518(CN,A)
【文献】平山令明編,有機化合物結晶作製ハンドブック -原理とノウハウ-,丸善株式会社,2008年07月25日,p.57-84
【文献】塩路雄作,固形製剤の製造技術,普及版,東京:シーエムシー出版,2003年01月27日,pp. 9, 12-13,ISBN 4-88231-783-4
【文献】浅原 照三,溶剤ハンドブック,1985年,p.p.46-51
【文献】芦澤一英,医薬品の多形現象と晶析の科学,丸善プラネット株式会社,2002年,pp.56-102, 304-317
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-31/327
A61P1/00-43/00
C07D477/00-491/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表されるカゼインキナーゼ1ε阻害剤の結晶形Aであって、
前記結晶形Aの粉末X線回折パターンにおいて、2θ値7.848±0.2°、11.618±0.2°、15.562±0.2°、15.853±0.2°、20.185±0.2°、25.655±0.2°に特徴的なピークを有することを特徴とする、結晶形A。
【請求項2】
同時に、2θ値11.926±0.2°、15.271±0.2°、21.851±0.2°、24.799±0.2°に特徴的なピークを有することを特徴とする、請求項1に記載のカゼインキナーゼ1ε阻害剤の結晶形A。
【請求項3】
式(I)で表される化合物を加熱して溶媒Iに溶解させ、選択的に熱時濾過行い、得られた澄んだ溶液を冷却して晶析させて結晶形Aを得る工程を含み、前記溶媒Iはアセトン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン/イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン/アセトン、テトラヒドロフラン/酢酸エチル、1,4-ジオキサン/イソプロピルアルコールから選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の結晶形Aの製造方法。
【請求項4】
式(I)で表される化合物の結晶形Bであって、
前記結晶形Bの粉末X線回折パターンにおいて、2θ値10.739±0.2°、11.961±0.2°、13.726±0.2°、14.374±0.2°、23.714±0.2°、24.057±0.2°、25.033±0.2°に特徴的なピークを有することを特徴とする、結晶形B。
【請求項5】
同時に、2θ値14.809±0.2°、18.574±0.2°、22.313±0.2°、26.125±0.2°、26.659±0.2°に特徴的なピークを有することを特徴とする、請求項4に記載の結晶形B。
【請求項6】
式(I)で表される化合物を室温で溶媒IIに溶解させ、静置した後揮発させて晶析させ結晶形Bを得る工程を含み、前記溶媒IIは、テトラヒドロフラン、ブタノン、アセトニトリル/メチルtert-ブチルエーテル、ブタノン/アセトンから選択されることを特徴とする、請求項4または5に記載の結晶形Bの製造方法。
【請求項7】
式(I)で表される化合物の結晶形Cであって、
前記結晶形Cの粉末X線回折パターンにおいて、2θ値7.319±0.2°、8.092±0.2°、11.763±0.2°、14.728±0.2°、15.855±0.2°、16.265±0.2°に特徴的なピークを有することを特徴とする、結晶形C。
【請求項8】
式(I)で表される化合物を加熱して溶媒IIIに溶解させ、選択的に熱時濾過を行い、得られた澄んだ溶液を冷却して晶析させて結晶形Cを得る工程を含み、前記溶媒IIIはメチルイソブチルケトンから選択されることを特徴とする、請求項7に記載の結晶形Cの製造方法。
【請求項9】
式(I)で表される化合物の結晶形Dであって、
前記結晶形Dの粉末X線回折パターンにおいて、2θ値11.308±0.2°、17.237±0.2°、18.568±0.2°、20.213±0.2°、21.148±0.2°、21.293±0.2°に特徴的なピークを有することを特徴とする、結晶形D。
【請求項10】
同時に、2θ値10.341±0.2°、13.819±0.2°、17.982±0.2°、20.804±0.2°、22.729±0.2°、25.035±0.2°、25.289±0.2°、28.008±0.2°に特徴的なピークを有することを特徴とする、請求項9に記載の結晶形D。
【請求項11】
式(I)で表される化合物を加熱して溶媒IVに溶解させ、選択的に熱時濾過を行い、得られた澄んだ溶液を冷却して晶析させて結晶形Dを得る工程を含み、前記溶媒IVは、メタノ-ル/イソプロピルアルコールから選択されることを特徴とする、請求項9または10に記載の結晶形Dの製造方法。
【請求項12】
式(I)で表される化合物の結晶形Eであって、
前記結晶形Eの粉末X線回折パターンにおいて、2θ値7.114±0.2°、7.936±0.2°、9.973±0.2°、11.040±0.2°、14.484±0.2°、15.504±0.2°、16.507±0.2°、20.071±0.2°、21.555±0.2に特徴的なピークを有することを特徴とする、結晶形E。
【請求項13】
同時に、2θ値5.492±0.2°、22.519±0.2°、24.464±0.2°、27.980±0.2°に特徴的なピークを有することを特徴とする、請求項12に記載の結晶形E。
【請求項14】
式(I)で表される化合物を加熱して溶媒Vに溶解させ、選択的に熱時濾過を行い、得られた澄んだ溶液を冷却して晶析させて結晶形Eを得る工程を含み、前記溶媒Vは、1,4-ジオキサン/酢酸エチルから選択されることを特徴とする、請求項12または13に記載の結晶形Eの製造方法。
【請求項15】
式(I)で表される化合物の結晶形Fであって、
前記結晶形Fの粉末X線回折パターンにおいて、2θ値9.959±0.2°、13.604±0.2°、14.830±0.2°、20.645±0.2°、23.717±0.2°、26.262±0.2°に特徴的なピークを有することを特徴とする、結晶形F。
【請求項16】
式(I)で表される化合物を加熱して適量の溶媒VIに溶解させ、選択的に熱時濾過を行い、得られた澄んだ溶液を冷却して晶析させて結晶形Fを得る工程を含み、前記溶媒VIは、ジクロロメタン/メチルtert-ブチルエーテルから選択される、ことを特徴とする請求項15に記載の結晶形Fの製造方法。
【請求項17】
請求項1、2、4、5、7、9、10、12、13、15いずれか一項に記載の結晶形の、カゼインキナーゼ1ε活性を阻害することにより効果がある悪性腫瘍及び自己免疫性疾患を治療する薬物の製造における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学薬物結晶形の工程及び薬物製造技術分野に関し、具体的には、化合物(S)-2-(1-(4-アミノ-3-(2,3-ジフルオロ-4-メトキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オン-メタンスルホナートの結晶形、結晶形の製造方法及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質キナーゼは、シグナル伝達において重要な役割を発揮しており、リン酸化基質タンパク質を介して細胞内シグナル伝達を媒介し、重要な薬物標的である。カゼインキナーゼ1(CK1)は、セリン-トレオニンキナーゼファミリーに属し、哺乳動物では7種のサブタイプα、β、γ1、γ2、γ3、δ及びεが存在する。これらサブタイプは、Wntシグナル伝達、日周期、細胞シグナル伝達、膜輸送、DNA複製、DNA損傷及びRNA代謝に関与し、生体機能を調節できる。
【0003】
カゼインキナーゼ1ε(CK1ε)は、CK1ファミリーにおける重要なサブタイプであって、各種細胞の増殖と生存過程の鍵となる調節因子であり、日周期の調節において重要な役割を果たしているだけでなく、癌の発生と進行においても同様に重要である。例えば、薬物によりCK1εを抑制し、またはshRNAの媒介によりCK1εを沈黙させると、膵臓癌、肉腫、乳癌、直腸癌、卵巣癌、白血病等を含む様々な癌の増殖と生存が阻害される。研究により、CK1遺伝子には基質特異性がないため、腫瘍増殖と生存に対するCK1εの調節の作用機構は未だにはっきりしておらず、Akt、MYC、β-カテニン等と関連する可能性が示されている(Varghese等,Scientific Reports,2018,8:13621)。また、CK1εはWntシグナル伝達経路を調節する重要な組成部分として、慢性リンパ性白血病(CLL)の発病と進行を促し得る。CK1εはCLL患者において顕著にアップレギュレーションされ、CK1εを抑制することでCLLの進行を阻害できるが、BCR関連経路には影響を与えない。さらに、CK1εはBCR経路のBTK阻害剤ibrutinibの生体内及び生体外での抗腫瘍活性を増強させ得る。
【0004】
そのため、CK1εも重要な抗腫瘍標的である(Janovska等,Blood,2019,11:1206~1218)。従って、CK1εを阻害する機能を有する薬物を開発することで、様々な疾患例えば癌及び自己免疫性疾患において重要な治療作用を発揮できる。
【0005】
同一の薬物分子が複数の結晶形を形成する現象を薬物の結晶多形現象と呼び、薬物開発の過程で広範に存在しており、このような現象は有機小分子化合物に固有の特性である。異なる結晶形は、その融点、溶解度、溶出性能、化学安定性等に差異がある可能性があり、その物理的、化学的性能は薬物の安全性と有効性に直接影響を及ぼす。従って、結晶形の研究と制御は薬物の研究と開発の過程における重要な研究内容である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、式(I)で表されるカゼインキナーゼ1ε阻害剤、即ち、(S)-2-(1-(4-アミノ-3-(2,3-ジフルオロ-4-メトキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オン-メタンスルホナートの結晶形、結晶形の製造方法及びその使用を提供する。
【0007】
本発明に係る式(I)で表される化合物、即ち、(S)-2-(1-(4-アミノ-3-(2,3-ジフルオロ-4-メトキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オン-メタンスルホナートは、新規のカゼインキナーゼ1ε(CK1ε)阻害剤であり、強い生体外CK1εキナ-ゼ阻害効果、生体外抗腫瘍細胞活性及び生体内抗腫瘍活性を有するので、該化合物に対して関連する結晶形の研究を行うことで、該化合物の臨床におけるより良い応用が期待される。
【0008】
式(I)の化合物の、異なる結晶条件下で得られた一連の結晶生成物に対して、粉末X線回折測定を行った結果、A、B、C、D、E、F、Iの異なる結晶形が発見され、それら結晶形の水溶解度、安定性、及びラットとビーグル犬への経口投与による薬物動態学の関連研究を行った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の技術手段は以下の通りである。
本発明により提供されるホスファチジルイノシトール-3-キナ-ゼ阻害剤は、式(I)で表される化合物であって、
A、B、C、D、E、F、Iの異なる結晶形を有する。
更に、
【0010】
式(I)で表される化合物の結晶形Aであって、結晶形AにCu-Kαを放射することで、2θ角で表される粉末X線回折パターンを得て、7.848±0.2°、11.618±0.2°、15.562±0.2°、15.853±0.2°、20.185±0.2°、25.655±0.2°に特徴的なピークを有する。
【0011】
結晶形Aの好ましい態様として、同時に、11.926±0.2°、15.271±0.2°、20.185±0.2°、21.851±0.2°、24.799±0.2°に特徴的なピークを有する。結晶形Aのより好ましい態様として、同時に8.531±0.2°、10.730±0.2°、15.176±0.2°、22.826±0.2°、25.369±0.2°に特徴的なピークを有する。結晶形Aのさらに好ましい態様として、同時に23.506±0.2°、25.369±0.2°に特徴的なピークを有する。
【0012】
結晶形Aのさらに好ましい態様として、同時に5.005±0.2°、10.000±0.2°、18.185±0.2°、19.499±0.2°、23.226±0.2°、27.070±0.2°に特徴的なピークを有する。
結晶形Aの更に具体的な好ましい態様として、前記結晶形Aは、実施例の表1に示す特徴的なピークデータを有する。
結晶形Aの更に具体的な好ましい態様として、前記結晶形Aは、図1に示す粉末X線回折パターンを有する。
【0013】
式(I)で表される化合物の結晶形Bであって、結晶形BにCu-Kαを放射することで、2θ角で表される粉末X線回折パターンを得て、10.739±0.2°、11.961±0.2°、13.726±0.2°、14.374±0.2°、23.714±0.2°、24.057±0.2°、25.033±0.2°に特徴的なピークを有する。
【0014】
結晶形Bの好ましい態様として、同時に14.809±0.2°、18.574±0.2°、22.313±0.2°、26.125±0.2°、26.659±0.2°に特徴的なピークを有する。
【0015】
結晶形Bのより好ましい態様として、同時に9.837±0.2°、18.078±0.2°、19.759±0.2°、24.724±0.2°、27.330±0.2°、29.863±0.2°に特徴的なピークを有する。
【0016】
結晶形Bのさらに好ましい態様として、同時に26.125±0.2°、26.659±0.2°、27.330±0.2°、29.863±0.2°に特徴的なピークを有する。
結晶形Bの更に具体的な好ましい態様として、前記結晶形Bは、実施例の表2に示す特徴的なピークデータを有する。
結晶形Bの更に具体的な好ましい態様として、前記結晶形Bは、図2に示す粉末X線回折パターンを有する。
【0017】
式(I)で表される化合物の結晶形Cであって、結晶形CにCu-Kαを放射することで、2θ角で表される粉末X線回折パターンを得て、7.319±0.2°、8.092±0.2°、11.763±0.2°、14.728±0.2°、15.855±0.2°、16.265±0.2°に特徴的なピークを有する。
結晶形Cの好ましい態様として、同時に7.965±0.2°、9.103±0.2°、13.338±0.2°に特徴的なピークを有する。
結晶形Cのより好ましい態様として、同時に3.880±0.2°、6.478±0.2°、19.613±0.2°に特徴的なピークを有する。
結晶形Cのさらに好ましい態様として、前記結晶形Cは、実施例の表3に示す特徴的なピークデータを有する。
結晶形Cの更に具体的な好ましい態様として、前記結晶形Cは、図3に示す粉末X線回折パターンを有する。
【0018】
式(I)で表される化合物の結晶形Dであって、結晶形DにCu-Kαを放射することで、2θ角で表される粉末X線回折パターンを得て、11.308±0.2°、17.237±0.2°、18.568±0.2°、20.213±0.2°、21.148±0.2°、21.293±0.2°に特徴的なピークを有する。
【0019】
結晶形Dの好ましい形態として、同時に10.341±0.2°、13.819±0.2°、17.982±0.2°、20.804±0.2°、22.729±0.2°、25.035±0.2°、25.289±0.2°、28.008±0.2°に特徴的なピークを有する。
結晶形Dのより好ましい態様として、前記結晶形Dは、実施例の表4に示す特徴的なピークデータを有する。
結晶形Dのさらに好ましい態様として、前記結晶形Dは、図4に示す粉末X線回折パターンを有する。
【0020】
式(I)で表される化合物の結晶形Eであって、結晶形EにCu-Kαを放射することで、2θ角で表される粉末X線回折パターンを得て、7.114±0.2°、7.936±0.2°、9.973±0.2°、11.040±0.2°、14.484±0.2°、15.504±0.2°、16.507±0.2°、20.071±0.2°、21.555±0.2°に特徴的なピークを有する。
【0021】
結晶形Eの好ましい態様として、同時に5.492±0.2°、22.519±0.2°、24.464±0.2°、27.980±0.2°に特徴的なピークを有する。
【0022】
結晶形Eのより好ましい態様として、同時に11.531±0.2°、18.158±0.2°、26.576±0.2°、26.723±0.2°、26.979±0.2°、28.903±0.2°、33.404±0.2°に特徴的なピークを有する。
【0023】
結晶形Eの好ましい態様として、同時に12.887±0.2°、18.526±0.2°、21.929±0.2°、24.152±0.2°に特徴的なピークを有する。
結晶形Eのさらに好ましい態様として、前記結晶形Eは、実施例の表5に示す特徴的なピークデータを有する。
結晶形Eのさらに好ましい態様として、前記結晶形Eは、図5に示す粉末X線回折パターンを有する。
【0024】
式(I)で表される化合物の結晶形Fであって、結晶形FにCu-Kαを放射することで、2θ角で表される粉末X線回折パターンを得て、9.959±0.2°、13.604±0.2°、14.830±0.2°、20.645±0.2°、23.717±0.2°、26.262±0.2°に特徴的なピークを有する。
【0025】
結晶形Fの好ましい態様として、同時に10.410±0.2°、12.704±0.2°、15.773±0.2°、22.390±0.2°に特徴的なピークを有する。
結晶形Fのより好ましい態様として、前記結晶形Fは、実施例の表6に示す特徴的なピークデータを有する。
結晶形Fのより好ましい態様として、前記結晶形Fは、図6に示す粉末X線回折パターンを有する。
【0026】
式(I)で表される化合物の結晶形Iであって、結晶形IにCu-Kαを放射することで、2θ角で表される粉末X線回折パターンを得て、7.321±0.2°、7.538±0.2°、12.317±0.2°、14.643±0.2°、15.839±0.2、19.458±0.2°に特徴的なピークを有する。
結晶形Iの好ましい態様として、同時に3.978±0.2°、15.081±0.2°に特徴的なピークを有する。
結晶形Iのより好ましい態様として、前記結晶形Iは、実施例の表7に示す特徴的なピークデータを有する。
結晶形Iのより好ましい態様として、前記結晶形Iは、図7に示す粉末X線回折パターンを有する。
【0027】
本発明は、さらに、(S)-2-(1-(4-アミノ-3-(2,3-ジフルオロ-4-メトキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オン-メタンスルホナートの異なる結晶形の結晶化方法を提供する。具体的な方法は以下の通りである。
【0028】
結晶形Aの製造方法であって、式(I)で表される化合物を加熱して適量の溶媒Iに溶解させ、選択的に熱時濾過を行い、得られた澄んだ溶液を冷却して晶析させ、前記溶媒Iはアセトン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン/イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン/アセトン、テトラヒドロフラン/酢酸エチル、1,4-ジオキサン/イソプロピルアルコールから選択される工程1と、濾過、洗浄後乾燥させて結晶形Aを得る工程2と、を含む。
【0029】
好ましい態様として、前記式(I)で表される化合物と前記溶媒Iとの質量体積比は1/(25~35)(g/mL)であり、より好ましくは1/30(g/mL)である。テトラヒドロフラン/イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン/アセトン、テトラヒドロフラン/酢酸エチル、1,4-ジオキサン/イソプロピルアルコール等の混合溶媒を選択する場合、前後2つの溶媒の体積比は1:(0.8~1.2)であり、より好ましくは1:1である。
【0030】
結晶形Bの製造方法であって、式(I)で表される化合物を室温で適量の溶媒IIに溶解させ、静置した後揮発させて晶析させ、前記溶媒IIはテトラヒドロフラン、ブタノン、アセトニトリル/メチルtert-ブチルエーテル、ブタノン/アセトンから選択される工程1と、濾過、洗浄後乾燥させて結晶形Bを得る工程2と、を含む。
【0031】
好ましい態様として、前記式(I)で表される化合物と前記溶媒IIとの質量体積比は1/(25~35)(g/mL)であり、より好ましくは1/30(g/mL)である。アセトニトリル/メチルtert-ブチルエーテル、ブタノン/アセトン等の混合溶媒を選択する場合、前後2つの溶媒の体積比は1:(0.8~1.2)であり、より好ましくは1:1である。
【0032】
結晶形Cの製造方法であって、式(I)で表される化合物を加熱して適量の溶媒IIIに溶解させ、選択的に熱時濾過を行い、得られた澄んだ溶液を冷却して晶析させ、前記溶媒IIIはメチルイソブチルケトンから選択される工程1と、濾過、洗浄後乾燥させて結晶形Cを得る工程2と、を含む。
【0033】
好ましい態様として、前記式(I)で表される化合物とメチルイソブチルケトンとの質量体積比は1/(25~35)(g/mL)であり、より好ましくは1/30(g/mL)である。
【0034】
結晶形Dの製造方法であって、式(I)で表される化合物を加熱して適量の溶媒IVに溶解させ、熱時濾過を行った後、濾液を冷却して晶析させ、前記溶媒IVはメタノ-ル/イソプロピルアルコールから選択される工程1と、濾過、洗浄後乾燥させて結晶形Dを得る工程2と、を含む。
【0035】
好ましい態様として、前記式(I)で表される化合物とメタノ-ル/イソプロピルアルコールとの質量体積比は1/(25~35)(g/mL)であり、より好ましくは1/30(g/mL)である。
より好ましい態様として、前記メタノ-ル/イソプロピルアルコールの両方溶媒の体積比は1:(0.8~1.2)であり、より好ましくは1:1である。
【0036】
結晶形Eの製造方法であって、式(I)で表される化合物を加熱して適量の溶媒Vに溶解させ、選択的に熱時濾過を行い、得られた澄んだ溶液を冷却して晶析させ、前記溶媒Vは1,4-ジオキサン/酢酸エチルから選択される工程1と、結晶を濾過、洗浄後乾燥させて結晶形Eを得る工程2と、を含む。
【0037】
好ましい態様として、前記式(I)で表される化合物と1,4-ジオキサン/酢酸エチルとの質量体積比は1/(35~45)(g/mL)であり、より好ましくは1/40(g/mL)である。
より好ましい態様として、前記1,4-ジオキサン/酢酸エチルの2つの溶媒の体積比は1:(0.5~0.8)であり、より好ましくは1:0.6である。
【0038】
結晶形Fの製造方法であって、式(I)で表される化合物を加熱して適量の溶媒VIに溶解させ、選択的に熱時濾過を行い、得られた澄んだ溶液を冷却して晶析させ、前記溶媒VIはジクロロメタン/メチルtert-ブチルエーテルから選択される工程1と、濾過、洗浄後乾燥させて結晶形Fを得る工程2と、を含む。
【0039】
好ましい態様として、前記式(I)で表される化合物とジクロロメタン/メチルtert-ブチルエーテルとの質量体積比は1/(35~45)(g/mL)であり、より好ましくは1/40(g/mL)である。
【0040】
より好ましい態様として、前記ジクロロメタン/メチルtert-ブチルエーテルの2つの溶媒の体積比は1:(0.8~1.2)であり、より好ましくは1:1である。
【0041】
好ましい態様として、結晶形A~結晶形Fを製造する過程において、冷却/揮発して晶析させた後、濾過、洗浄し、乾燥させて、結晶形A~結晶形Fを得る。より好ましい態様として、乾燥条件は、常温減圧(-0.05~0.5MPa、より好ましくは-0.1MPa)下で、2~5日間(より好ましくは3日間)乾燥させる。
【0042】
結晶形Iの製造方法であって、式(I)で表される化合物を加熱して適量の溶媒VIIに溶解させ、選択的に熱時濾過を行い、得られた澄んだ溶液を冷却して晶析させ、前記溶媒VIIは酢酸エチル、エタノールから選択される工程1と、濾過、洗浄後乾燥させて結晶形Iを得る工程2と、を含む。
【0043】
好ましい態様として、前記式(I)で表される化合物と酢酸エチルとの質量体積比は1/(40~50)(g/mL)であり、より好ましくは1/45(g/mL)である。好ましい態様として、前記式(I)で表される化合物とエタノールとの質量体積比は1/(10~20)(g/mL)でり、より好ましくは1/20(g/mL)である。
【0044】
好ましい態様として、乾燥条件は、50~70℃で1~3日間真空乾燥させ、70~90℃で1~3日間真空乾燥させ、より好ましい態様として、60℃で2日間真空乾燥させ、80℃で2日間真空乾燥させる。
特別に説明がない場合、上記内容において言及されたM/N溶媒は、M溶媒とN溶媒との混合溶媒を示す。
【0045】
上記製造方法において、前記式(I)で表される化合物を溶解させた後、濾過が必要な不純物がない場合、即ち、澄んだ溶液がそのまま得られる場合、前記「熱時濾過」の工程を省略してもよく、そのまま冷却して晶析させればよい。なお、前記式(I)で表される化合物の溶解を完了した後、フロック、固体物が残留している場合、もしくはその他の不溶性物質がある場合、前記「熱時濾過」の工程を導入する。
【0046】
上記製造方法において言及された「式(I)で表される化合物」は、特別に説明がない限り、様々な形態の生成物を含んでよく、例えば、無定型または任意の結晶形の形態の生成物であってよく、混合結晶形又はその他の任意の通常に存在する状態のものであってもよい。
【発明の効果】
【0047】
本発明により得られた式(I)で表される化合物の結晶形(A、B、C、D、E、F、I)は、良好な水溶解度を有しかつ経口投与による吸収性に優れているので、カゼインキナーゼ1ε活性を阻害することにより効果がある悪性腫瘍及び自己免疫性疾患の治療により良く応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】式(I)で表される化合物の結晶形Aの粉末X線回折パターン。
図2】式(I)で表される化合物の結晶形Bの粉末X線回折パターン。
図3】式(I)で表される化合物の結晶形Cの粉末X線回折パターン。
図4】式(I)で表される化合物の結晶形Dの粉末X線回折パターン。
図5】式(I)で表される化合物の結晶形Eの粉末X線回折パターン。
図6】式(I)で表される化合物の結晶形Fの粉末X線回折パターン。
図7】式(I)で表される化合物の結晶形Iの粉末X線回折パターン。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明の目的、技術手段をより明らかにするために、以下、本発明の図面と実施例を組み合わせて、本発明をさらに詳細に説明する。本発明の実施例は本発明の技術的解決手段を説明するためのものにすぎず、本発明の実質と範囲を限定するものではない。
【0050】
実験に用いられた試験装置
1、粉末X線回折スペクトル
装置:D8ADVANCE型粉末X線回折計
放射線:単色Cu-Kα放射線(λ=1.5406)
スキャンモード:θ/2θ、スキャン範囲:3~40
2、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
装置:Agilent1260
クロマトグラフ用カラム:ShimpackVPODS150*4.6mm5μm
移動相:移動相A:0.1%リン酸溶液、移動相B:メタノ-ル、イソクラティック溶出により溶出、移動相A:移動相B=20:80
検出波長:230nm
【実施例1】
【0051】
(S)-2-(1-(4-アミノ-3-(2,3-ジフルオロ-4-メトキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オン-メタンスルホナートの合成
【0052】
工程1:D-乳酸メチル(20g)を200mLのジクロロメタンに溶解して、0℃まで冷却した後、ベンゾイルクロリド(27g)、DMAP(1.2g)を加え、次いで滴下漏斗でトリエチルアミン(23.3g)を滴下して加え、滴下完了後、室温まで徐々に昇温させて、撹拌しながら20時間反応させる。TLC(薄層クロマトグラフィー)による検出で反応が完了したことを確認し、100mLの水を加えて、撹拌して抽出し、ジクロロメタン相を分離する。ジクロロメタン相に0.2Mの塩酸水溶液200mLを加えて、撹拌した後静置して分液させ、ジクロロメタン層を分離して減圧濃縮し、粗生成物の(R)-2-ベンゾイルオキシプロピオン酸メチルを得て、そのまま次の反応に用いる。
【0053】
工程2:工程1で得られた(R)-2-ベンゾイルオキシプロピオン酸メチル粗生成物を250mLのテトラヒドロフランに溶解して、0℃まで冷却した後、調製済の3%水酸化ナトリウム水溶液(250mL)を滴下して加え、滴下過程中に反応系の温度が10℃を超えないように制御し、滴下完了後継続して2時間反応させる。TLCによる検出により加水分解反応が完全であることを確認した後、1.0Mの塩酸水溶液を加えて溶液のpH値が約2~4になるように中和し、次いで酢酸エチル(毎回約300mL)で2回抽出して、酢酸エチル層を合わせ、減圧濃縮して固体を得る。得られた固体にメチルtert-ブチルエーテル(50mL)及び石油エ-テル(300mL)を加えて、1時間加熱還流させ叩解した後、室温まで徐々に冷却し且つ12時間保持し、濾過、洗浄した後、濾過ケークを送風乾燥して化合物の(R)-2-(ベンゾイルオキシ)プロピオン酸(30.5g)を得る。HNMR(400MHz,CDCl3)δ9.89(s,1H),8.19-8.08(m,2H),7.67-7.58(m,1H),7.49(t,J=7.7Hz,2H),5.40(q,J=7.1Hz,1H),1.72(d,J=7.1Hz,3H).
【0054】
工程3:2-アミノ-6-クロロ安息香酸(10.0g)、(R)-2-(ベンゾイルオキシ)プロピオン酸(13.6g)を100mLのDMFに溶解して、ピリジン(50.7g)を加え、撹拌しながら50℃まで昇温させ、次いでトリフェニルホスファイト(21.7g)を徐々に加えて12時間反応させた後、アニリン(8.2g)及びトリフェニルホスファイト(10.8g)を加えて、継続して50℃下で撹拌しながら約12時間反応させる。TLCによる検出で反応が完了したことを確認した後、室温まで冷却し、酢酸エチル及び1Mの塩酸水溶液で抽出して分液し、酢酸エチル相は再び1Mの塩酸水溶液で洗浄して分離して、酢酸エチル層を回収し、減圧濃縮して油状物を得て、次いでメチルtert-ブチルエーテルとシクロヘキサン(1:5)の混合溶液を加え、撹拌して叩解し、濾過して固体生成物の(R)-1-(5-クロロ-4-オキソ-3-フェニル-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)安息香酸エチル(16.1g)を得る。HNMR(500MHz,DMSO)δ8.01-7.88(m,2H),7.77(t,J=8.0Hz,1H),7.71-7.63(m,2H),7.60(dd,J=10.3,2.6Hz,3H),7.51(dd,J=13.7,5.8Hz,3H),7.38(dt,J=15.1,7.7Hz,2H),5.36(q,J=6.4Hz,1H),1.55(d,J=6.5Hz,3H).
【0055】
工程4:(R)-1-(5-クロロ-4-オキソ-3-フェニル-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)安息香酸エチル(10.2g)を100mLのメタノ-ルに溶解し、水酸化リチウム(0.9g)を加えて、室温下で撹拌しながら約4時間反応させ、TLCによる検出により反応が完了したことを確認し、ジクロロメタンと水を加えて抽出して、ジクロロメタン層を分離し、減圧濃縮して粗生成物を得て、該粗生成物をメチルtert-ブチルエーテルで還流して叩解し、濾過、乾燥を経て化合物の(R)-5-クロロ-2-(1-ヒドロキシエチル)-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オン(7.0g)を得る。キラル純度ee%:98.7%である。chiral-HPLCは逆相CHIRALPAKIG-3カラム上で測定し、保留時間は52.7minである。HNMR(500MHz,CDCl3)δ7.70-7.62(m,2H),7.60-7.52(m,3H),7.52-7.49(m,1H),7.32(dd,J=7.5,2.2Hz,1H),7.27-7.23(m,1H),4.45(q,J=6.4Hz,1H),1.24(d,J=6.4Hz,3H).
【0056】
工程5:(R)-5-クロロ-2-(1-ヒドロキシエチル)-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オン(6.0g)を75mLのNMPに溶解し、3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン(5.8g)、トリフェニルホスフィン(7.8g)及びDIAD(6.0g)を加えて、室温下で撹拌しながら約12時間反応させ、TLCによる検出で反応が完了したことを確認した後、反応液をそのまま水に加えて固体を析出させ、吸引濾過して濾過ケークを収集し、濾過ケークはアセトニトリルで還流して叩解し、濾過し、濾過ケークを送風乾燥して固体生成物の(S)-2-(1-(4-アミノ-3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オン(5.9g)を得る。HNMR(500MHz,DMSO)δ7.88(s,1H),7.83(t,J=8.0Hz,1H),7.74(dd,J=8.2,1.1Hz,1H),7.64(dd,J=7.9,1.1Hz,1H),7.58(d,J=8.1Hz,1H),7.43(td,J=7.7,1.3Hz,1H),7.14(t,J=7.5Hz,1H),6.88(td,J=7.8,1.3Hz,1H),6.33(d,J=7.9Hz,1H),5.86-5.72(m,1H),1.68(d,J=6.7Hz,3H).
【0057】
工程6:(S)-2-(1-(4-アミノ-3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オン(5.0g)と(2,3-ジフルオロ-4-メトキシフェニル)ボロン酸(2.6g)を、20mLの2-メチルテトラヒドロフランと5mLの水との混合溶媒に溶解し、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(330mg)及び炭酸ナトリウム(2.4g)を加えて、80℃まで加熱して約6時間反応させ、TLCによる検出により反応が完了したことを確認した後、減圧濃縮し、得られた残留物をシリカカラムクロマトグラフィーにより純化し、白色の固体生成物(S)-2-(1-(4-アミノ-3-(2,3-ジフルオロ-4-メトキシフェニル)-1H-ピラゾール[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オン(4.1g)を得る。キラル純度ee%:98.6%である。chiral-HPLCは順相CHIRALCELOD-Hカラム上で測定し、保留時間は12.09minである。HNMR(500MHz,CDCl3)δ8.05(s,1H),7.73(d,J=8.1Hz,1H),7.64(t,J=8.0Hz,1H),7.51(d,J=7.8Hz,1H),7.47(t,J=7.6Hz,1H),7.29(d,J=7.9Hz,1H),7.22(dd,J=11.8,4.4Hz,1H),7.16(t,J=7.4Hz,1H),6.93-6.84(m,2H),6.53(d,J=8.0Hz,1H),6.00(q,J=6.7Hz,1H),5.33(brs,2H),3.96(s,3H),1.90(d,J=6.7Hz,3H).LC-MS(ESI-MS):560[M+H]
【実施例2】
【0058】
(S)-2-(1-(4-アミノ-3-(2,3-ジフルオロ-4-メトキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オンーメタンスルホナートの製造
【0059】
実施例1で合成して得られた(S)-2-(1-(4-アミノ-3-(2,3-ジフルオロ-4-メトキシフェニル)-1H-ピラゾール[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オン(3.4g)を反応フラスコに加え、次いで50mLのイソプロピルアルコールとメタンスルホン酸(590mg)を加えて、固体が完全に溶解して澄んだ溶液になるように加熱して約1時間還流させた後、室温までゆっくり冷却し、脱溶媒し、濾過して固体を収集し、得られた固体を常温で真空乾燥して白色の固体生成物(S)-2-(1-(4-アミノ-3-(2,3-ジフルオロ-4-メトキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オンーメタンスルホナート(3.65g)を得る。HNMR(500MHz,DMSO)δ8.14(s,1H),7.84(t,J=8.0Hz,1H),7.75(d,J=8.1Hz,1H),7.65(t,J=7.7Hz,2H),7.47(t,J=7.6Hz,1H),7.31(t,J=8.1Hz,1H),7.15(dt,J=16.3,7.8Hz,2H),6.92(t,J=7.5Hz,1H),6.41(d,J=7.8Hz,1H),5.97(t,J=6.6Hz,1H),3.93(s,3H),2.36(s,3H),1.77(d,J=6.6Hz,3H)。LC-MS(ESI-MS):560[M+H]
【実施例3】
【0060】
1gの式(I)で表される化合物(実施例2により製造)をガラス瓶に入れ、次いで30mLのアセトンを加えて、加熱して澄んだ溶液になった後、冷却して晶析させ、濾過、洗浄してから乾燥(常温で3日間減圧乾燥)させ、その収率は60%であり、粉末X線回折により測定した結果結晶形Aであった。その主な特徴的なピークとして、2θ値7.848、11.618、15.562、15.835、20.185、24.799、25.655及びその偏差±0.2°に特徴的な粉末X線回折ピークを有する。測定結果は表1と図1に示す。
【0061】
表1 結晶形Aの粉末X線回折データ
【実施例4】
【0062】
1gの式(I)で表される化合物(実施例2により製造)をガラス瓶に入れ、次いで30mLの1,4-ジオキサンを加えて、加熱して澄んだ溶液になった後、冷却して晶析させ、濾過、洗浄してから乾燥(常温で3日間減圧乾燥、-0.1MPa、以下同様)させ、その収率は68%であり、粉末X線回折により測定した結果結晶形Aであった。
【実施例5】
【0063】
1gの式(I)で表される化合物(実施例2により製造)をガラス瓶に入れ、次いで30mLのテトラヒドロフラン/イソプロピルアルコール混合溶媒(体積比率は1:1)を加えて、加熱して澄んだ溶液になった後、冷却して晶析させ、濾過、洗浄してから乾燥(常温で3日間減圧乾燥)させ、その収率は54%であり、粉末X線回折により測定した結果結晶形Aであった。
【実施例6】
【0064】
1gの式(I)で表される化合物(実施例2により製造)をガラス瓶に入れ、次いで30mLのテトラヒドロフラン/アセトン混合溶媒(体積比率は1:1)を加えて、加熱して澄んだ溶液になった後、冷却して晶析させ、濾過、洗浄してから乾燥(常温で3日間減圧乾燥)させ,その収率は50%であり、粉末X線回折により測定した結果結晶形Aであった。
【実施例7】
【0065】
1gの式(I)で表される化合物(実施例2により製造)をガラス瓶に入れ、次いで30mLのテトラヒドロフラン/酢酸エチル混合溶媒(体積比率は1:1)を加えて、加熱して澄んだ溶液になった後、冷却して晶析させ、濾過、洗浄してから乾燥(常温で3日間減圧乾燥)させ、その収率は62%であり、粉末X線回折により測定した結果結晶形Aであった。
【実施例8】
【0066】
1gの式(I)で表される化合物(実施例2により製造)をガラス瓶に入れ、次いで30mLの1,4-ジオキサン/イソプロピルアルコール混合溶媒(体積比率は1:1)を加えて、加熱して澄んだ溶液になった後、冷却して晶析させ、濾過、洗浄してから乾燥(常温で3日間減圧乾燥)させ、その収率は54%であり、粉末X線回折により測定した結果結晶形Aであった。
【実施例9】
【0067】
1gの式(I)で表される化合物(実施例2により製造)をガラス瓶に入れ、次いで30mLのテトラヒドロフランを加えて、室温で撹拌して澄んだ溶液になった後、室温で静置して、2日間揮発させて晶析させ、結晶を濾過、洗浄した後乾燥(常温で3日間減圧乾燥)させ、粉末X線回折により測定した結果結晶形Bであった。その主な特徴的なピークとして、2θ値10.739、11.961、13.726、14.374、23.714、24.057、25.033及びその偏差±0.2°に特徴的な粉末X線回折ピークを有し、測定結果は表2と図2に示す。
【0068】
表2 結晶形Bの粉末X線回折データ
【実施例10】
【0069】
1gの式(I)で表される化合物(実施例2により製造)をガラス瓶に入れ、次いで30mLのブタノンを加えて、室温で撹拌して澄んだ溶液になった後、室温で静置し、2日間揮発させて晶析させ、結晶を濾過、洗浄した後乾燥(常温で3日間減圧乾燥)させ、その収率は82%であり、粉末X線回折により測定した結果結晶形Bであった。
【実施例11】
【0070】
1gの式(I)で表される化合物(実施例2により製造)をガラス瓶に入れ、次いで30mLのアセトニトリル/メチルtert-ブチルエーテルの混合溶媒(体積比率は1:1)を加えて、室温で撹拌して澄んだ溶液になった後、室温で静置し、2日間揮発させて晶析させ、結晶を濾過、洗浄した後乾燥(常温で3日間減圧乾燥)させ、その収率は54%であり、粉末X線回折により測定した結果結晶形Bであった。
【実施例12】
【0071】
1gの式(I)で表される化合物(実施例2により製造)をガラス瓶に入れ、次いで30mLのブタノン/アセトンの混合溶媒(体積比率は1:1)を加えて、室温で撹拌して澄んだ溶液になった後、室温で静置し、2日間揮発させて晶析させ、結晶を濾過、洗浄した後乾燥(常温で3日間減圧乾燥)させ、その収率は48%であり、粉末X線回折により測定した結果結晶形Bであった。
【実施例13】
【0072】
1gの式(I)で表される化合物(実施例2により製造)をガラス瓶に入れ、次いで30mLのメチルイソブチルケトンを加え、加熱して澄んだ溶液になった後、冷却して晶析させ、濾過、洗浄してから乾燥(常温で3日間減圧乾燥)させ、その収率は80%であり、粉末X線回折により測定した結果結晶形Cであった。その主な特徴的なピークとして、2θ値7.319、8.092、11.763、14.728、15.855、16.265及びその偏差±0.2°に特徴的な粉末X線回折ピークを有し、測定結果は表3と図3に示す。
【0073】
表3 結晶形Cの粉末X線回折データ
【実施例14】
【0074】
1gの式(I)で表される化合物(実施例2により製造)をガラス瓶に入れ、次いで30mLのメタノ-ル/イソプロピルアルコール(1:1)を加え、加熱して澄んだ溶液になった後、冷却して晶析させ、濾過、洗浄してから乾燥(常温で3日間減圧乾燥)させ、その収率は58%であり、粉末X線回折により測定した結果結晶形Dであった。その主な特徴的なピークとして、2θ値11.308、17.237、18.568、20.213、21.148、21.293及びその偏差±0.2°に特徴的な粉末X線回折ピークを有し、測定結果は表4と図4に示す。
【0075】
表4 結晶形Dの粉末X線回折データ
【実施例15】
【0076】
1gの式(I)で表される化合物(実施例2により製造)をガラス瓶に入れ、次いで40mLの1,4-ジオキサン/酢酸エチル混合溶媒(体積比率は5:3である)を加え、加熱して澄んだ溶液になった後、冷却して晶析させ、濾過、洗浄してから乾燥(常温で3日間減圧乾燥)させ、その収率は64%であり、粉末X線回折により測定した結果結晶形Eであった。その主な特徴的なピークとして、2θ値7.114、7.936、9.973、11.040、15.504、16.507、20.071、21.555及びその偏差±0.2°に特徴的な粉末X線回折ピークを有し、測定結果は表5と図5に示す。
【0077】
表5 結晶形Eの粉末X線回折データ
【実施例16】
【0078】
1gの式(I)で表される化合物(実施例2により製造)をガラス瓶に入れ、次いで40mLのジクロロメタン/メチルtert-ブチルエーテル混合溶媒(体積比率は=1:1)を加え、加熱して澄んだ溶液になった後、冷却して晶析させ、結晶を濾過、洗浄した後乾燥(常温で3日間減圧乾燥)させ、その収率は82%であり、粉末X線回折により測定した結果結晶形Fであった。その主な特徴的なピークとして、2θ値9.959、13.604、14.830、20.645、23.717、26.262及びその偏差±0.2°に特徴的な粉末X線回折ピークを有し、測定結果は表6と図6に示す。
【0079】
表6 結晶形F的粉末X線回折データ
【実施例17】
【0080】
1gの式(I)で表される化合物(実施例2により製造)をガラス瓶に入れ、次いで40mLのエタノールを加え、加熱して澄んだ溶液になった後、冷却して晶析させ、濾過、洗浄してから乾燥(60℃で2日間真空乾燥、80℃で2日間真空乾燥)させ、その収率は50%であり、粉末X線回折により測定した結果結晶形Iである。
【実施例18】
【0081】
1gの式(I)で表される化合物(実施例2により製造)をガラス瓶に入れ、次いで45mLの酢酸エチルを加え、加熱して澄んだ溶液になった後、冷却して晶析させ、濾過、洗浄してから乾燥(60℃で2日間真空乾燥、80℃で2日間真空乾燥)させ、その収率は66%であり、粉末X線回折により測定した結果結晶形Iであった。その主な特徴的なピークとして、2θ値7.321、7.538、12.317、14.643、15.839、19.458及びその偏差±0.2°に特徴的な粉末X線回折ピークを有し、測定結果は表7と図7に示す。
【0082】
表7 結晶形Iの粉末X線回折データ
【実施例19】
【0083】
結晶形A、B、C、D、E、Fの溶解度測定
【0084】
標準曲線の作製:適量の一連の化合物を精密に量って、メスフラスコに入れ、次いで適量のアセトニトリルを加えて溶解させ且つ目盛りまで希釈してストック液とする。適量のストック液を精密に量り取って、メスフラスコに入れ、次いで移動相を加えて目盛りまで希釈した後、揺らして均一な溶液にして、一連の高濃度標準溶液と低濃度標準溶液を調製する。低濃度から高濃度の順でそれぞれロードし、ピーク面積を記録する。化合物の濃度を横座標とし、ピーク面積を縦座標として線形回帰を行って、化合物の線形回帰方程式を得て、即ち、式(I)で表される化合物の溶解度の標準曲線を得る。
平衡溶解度の測定:過量の化合物を10mLの蓋付きEPチューブに入れ、次いで2mLの精製水を加えて、室温条件で、超音波で15分間処理した後20分間静置し、この操作を4回繰り返した後、遠心分離(3000r/min、10min)を行い、上清液を取る。該上清液は、溶媒を加えて適当に希釈した後、精密濾過膜で濾過し、濾過液を取ってHPLCにより測定を行い、ピーク面積を記録し、標準曲線に代入して各化合物の水における飽和溶解度を計算する。測定結果は表8に示す。
【0085】
表8 結晶形A、B、C、D、E、Fの水における溶解度の結果
結果により、式(I)で表される化合物の結晶形A、B、C、D、E、Fは、何れも水に溶解することが明らかになった。
【実施例20】
【0086】
ラット生体内での薬物動態学試験
【0087】
実験方法:SDラットを実験動物とし、10mg/kg(カルボキシメチルセルロースナトリウム溶液で乳白色の懸濁液に調製)で胃内投与する。胃内投与後の採血時点はそれぞれ0.17、0.33、0.5、1、1.5、2、4、6、8、12、24時間である。全血0.3mLを取り、遠心分離後に血漿0.1mLを取ってLC-MSにて分析を行う。
【0088】
表9 SDラットの経口投与後の血中濃度測定結果
【0089】
式(I)で表される化合物の遊離塩基を参照として、式(I)で表される化合物の結晶形C、結晶形D、結晶形Fのラット生体内における薬物動態学的性質を考察した。測定結果により、式(I)で表される化合物の薬物動態学的性質は、遊離塩基と比べて顕著に改善されたことが明らかになった。したがって、本発明に係る化合物は経口投与により関連疾患の治療に用いることができる。
【実施例21】
【0090】
犬生体内での薬物動態学試験
【0091】
実験方法:ビーグル犬を実験動物とし、10mg/kg(カルボキシメチルセルロースナトリウム溶液で乳白色の懸濁液に調製)で胃内投与する。胃内投与後の採血時点はそれぞれ0、0.5、1、2、3、4、6、8、24時間である。全血0.3mLを取り、遠心分離後に血漿0.1mLを取ってLC-MSにて分析を行う。
【0092】
表10 犬の経口投与後の血中濃度測定結果
表10中、NAは検出下限値より低いことを示す。AUC:血中濃度-時間曲線下面積。
【0093】
式(I)で表される化合物の遊離塩基を参照として、式(I)で表される化合物の結晶形Fのビーグル犬生体内における薬物動態学的性質を考察した。測定結果により、式(I)で表される化合物の薬物動態学的性質は、遊離塩基と比べて顕著に改善されたことが明らかになった。したがって、本発明に係る化合物は経口投与により関連疾患の治療に用いることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7