(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】皮内注射用補助具
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20241213BHJP
A61M 5/42 20060101ALI20241213BHJP
A61M 5/46 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
A61M5/32 530
A61M5/42 510
A61M5/46
(21)【出願番号】P 2018103795
(22)【出願日】2018-05-30
【審査請求日】2021-05-21
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000206185
【氏名又は名称】大成化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】梅▲崎▼ 雅也
(72)【発明者】
【氏名】谷口 健介
(72)【発明者】
【氏名】堀田 泰治
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】小河 了一
【審判官】栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第3324854(US,A)
【文献】特表2010-524646(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0129123(US,A1)
【文献】特開2014-69084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32, A61M 5/42, A61M 5/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射針を保持する保持部と、
皮膚の表面に押し付けて皮膚を伸展させる伸展部と、
前記注射針の中心線を含むように横幅方向に広がる仮想平面上に位置し、且つ前記横幅方向における前記注射針の両側に配置される一対の保護部と、を備え、
前記一対の保護部は、前記保持部から前記中心線に沿う方向において前方に延出し、
前記注射針と前記一対の保護部のうちの一方と前記一対の保護部のうちの他方が前記横幅方向において一列に並び、
前記伸展部は、それぞれが別々の前記保護部の先端部に設けられる一対の押圧部を有し、
前記一対の押圧部のそれぞれは、皮膚に当接していない状態で前記中心線に沿う方向において前記注射針の先端よりも所定距離だけ前方にずれた場所に位置する伸展面を有するように構成され、
前記一対の押圧部のそれぞれの伸展面は、前記仮想平面に対する傾斜角度
が5°か
ら15°までの範囲内の角度に設定される、
皮内注射用補助具。
【請求項2】
前記保護部は、前記横幅方向で前記注射針との間に間隔をあけて配置される、
請求項1に記載の皮内注射用補助具。
【請求項3】
前記保持部の先端部側の下面には、前記保持部の後端部側の下面よりも下方側に膨出する深刺抑制部が形成される、
請求項1又は2に記載の皮内注射用補助具。
【請求項4】
前記深刺抑制部の下面には、前記仮想平面に対する傾斜角度
が5°か
ら15°までの範囲内の角度に設定される角度制限面が含まれる、
請求項3に記載の皮内注射用補助具。
【請求項5】
前記保護部の下面は、上方側に向かって凸状に湾曲する逃面となっている、
請求項1又は請求項2に記載の皮内注射用補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮内注射を補助するための皮内注射用補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、上記の皮内注射用補助具には種々のものが提案されている。例えば、特許文献1に開示されている皮内注射用補助具(皮内注射用のアダプタ)は、筒状であり且つ後端側から注射器を抜差可能なアダプタ本体部と、該アダプタ本体部の先端側に設けられた遠位部であって、皮膚を伸展させるための遠位部と、を備えたものである。
【0003】
アダプタ本体部は、内部に差し込まれた注射器を軸線方向でスライドさせることができるように構成されている。
【0004】
遠位部は、皮膚に押し付けられる皮膚接触主面であって、鈍角に屈曲した形状の皮膚接触主面を有する。より具体的に説明すると、皮膚接触主面には、アダプタ本体部の先端側の開口を遮るように形成された第一の皮膚接触主面と、該第一の皮膚接触主面からアダプタ本体部の軸線方向に沿って前方に延出する平坦な第二の皮膚接触主面とが含まれており、該第一の皮膚接触主面には、アダプタ本体部内に差し込まれた注射器の注射針(穿刺針)を出退可能な針用開口部が形成されている。
【0005】
かかる皮内注射用のアダプタを用いて皮内注射を行う場合は、第一の皮膚接触主面で皮膚の一部を沈み込ませて伸展させ、さらに、第二の皮膚接触面を皮膚に当接させることでアダプタ本体部及び注射器の姿勢を皮膚表面(第二の皮膚接触面が当接している皮膚表面)に対して水平若しくは略水平にする。
【0006】
そして、アダプタ本体部内で注射器を前進させると、穿刺針が針用開口から外部に進出し、これにより、皮膚表面に対して水平若しくは略水平な姿勢の穿刺針が伸展した皮膚に刺さる。
【0007】
このように、前記皮内注射用のアダプタは、遠位部で皮膚を伸展させ且つ穿刺針の向きを定めた後に穿刺針を皮膚に刺すように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記従来の皮内注射用のアダプタでは、第一の皮膚接触主面を皮膚に押し付けて皮膚を伸展させ且つ第二の皮膚接触主面を皮膚に当接させて注射器(穿刺針)の向きを定めた後に、第一の皮膚接触主面を皮膚に押し付けた状態を維持しながら穿刺針を皮膚に刺す必要があるが、第一の皮膚接触主面を皮膚に押し付けてから穿刺針を皮膚に刺すまでの間にアダプタが動いてしまい、穿刺針の穿刺位置や穿刺角度がずれてしまうことがある。
【0010】
また、上記従来の皮内注射用のアダプタでは、第一の皮膚接触主面を皮膚に押し付ける操作、すなわち、皮膚を伸展させるための操作と、穿刺針を皮膚に刺すための操作とを別々に行う必要があるため、皮内注射を実施する手順が煩雑になる。
【0011】
このように、上記従来の皮内注射用のアダプタを用いた皮内注射では、穿刺針を皮膚に対して正確に刺すことが難しく、また、穿刺針を皮膚に刺すまでの手順が煩雑なものであった。
【0012】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、皮内注射を行う際に皮膚に対して注射針を容易且つ正確に穿刺できる皮内注射用補助具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の皮内注射用補助具は、
注射針を保持する保持部と、
皮膚の表面に押し付けて皮膚を伸展させる伸展部であって、前記注射針の中心線を含み且つ横幅方向に広がる仮想平面上において、該中心線に沿う方向で前記注射針の先端から所定距離だけ離間した位置に配置される伸展部と、を備え、
前記伸展部は、前記仮想平面に対する傾斜角度が前記注射針の穿刺角度の最小角度から最大角度までの範囲内の角度に設定される伸展面を有する。
【0014】
上記構成の皮内注射用補助具によれば、前記仮想平面に対する伸展面の傾斜角度が、注射針の穿刺角度の範囲内の角度に設定されるため、伸展面を皮膚に当接させると、注射針が穿刺角度の範囲内で皮膚に対して傾く。
【0015】
そして、伸展部を前方に移動させながら伸展面で皮膚を押し込むと、注射針の先端と伸展部との間の皮膚が伸展されるとともに、注射針が傾き(皮膚に対する傾き)を保ったまま皮膚に刺さる。
【0016】
このように、上記構成の皮内注射用補助具は、皮膚を伸展させる操作の流れの中で、注射針を穿刺角度の最小角度から最大角度までの範囲内の角度で傾けたまま皮膚に刺すことができる。
【0017】
本発明の皮内注射用補助具は、
前記仮想平面上であり且つ前記横幅方向における前記注射針の両側に配置される一対の保護部を備えていてもよい。
【0018】
かかる構成によれば、前記仮想平面上における注射針の前方には伸展部が配置され、注射針の両側には保護部が配置されるため、注射針の周囲が伸展部と保護部とで囲まれる。従って、上記構成の皮内注射用補助具は、注射針が不用意に人体等に接触してしまうことを抑制でき、また、注射針が誤った姿勢で皮膚に刺さってしまうことを防止できる。
【0019】
さらに、本発明の皮内注射用補助具において、
前記保護部は、前記横幅方向で前記注射針との間に間隔をあけて配置されていてもよい。
【0020】
皮内注射では、真皮への注射液の注入に伴って皮膚の表面が部分的に膨らんで膨隆部となるが、上記構成の皮内注射用補助具によれば、注射針と該注射針の周囲に配置されている伸展部や保護部との間にスペースが形成されるため、膨隆部の形成、すなわち、真皮への注射液の注入が妨げられにくくなる。
【0021】
本発明の皮内注射用補助具において、
前記保持部の先端部側の下面には、前記保持部の後端部側の下面よりも下方側に膨出する深刺抑制部が形成されていてもよい。
【0022】
かかる構成によれば、保持部の先端部側の下面には、後端部側の下面よりも下方側に膨出する深刺抑制部が形成されるため、伸展面を皮膚に押し込む際に、該深刺抑制部が皮膚に当接したことを目安にして伸展面を押し込む操作、すなわち、皮膚に注射針を刺し込む操作を止めることができる。従って、上記構成の皮内注射用補助具は、注射針が皮膚に対して過剰に刺し込まれてしまうことを抑制できる。
【0023】
この場合、前記深刺抑制部の下面には、前記仮想平面に対する傾斜角度が前記注射針の穿刺角度の最小角度から最大角度までの範囲内の角度に設定される角度制限面が含まれていてもよい。
【0024】
かかる構成によれば、誤って伸展部を皮膚に当接させずに注射針を皮膚に穿刺してしまった場合であっても、保持部の外底部に形成された角度制限面が皮膚に当接すれば、注射針が穿刺角度の最小角度から最大角度までの範囲内の角度で傾くため、使用手順を誤った場合であっても、注射針の穿刺角度が許容範囲を超えてしまうことを抑制できる。
【0025】
本発明の皮内注射用補助具において、
前記保護部の下面は、上方側に向かって凸状に湾曲する逃面となっていてもよい。
【0026】
かかる構成によれば、保護部によって皮膚が圧迫されにくくなるため、真皮に注射液を注入する際に、膨隆部の形成を阻害しないようにすることができる(すなわち、真皮への注射液の注入を阻害しないようにすることができる)。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明の皮内注射用補助具は、皮内注射を行う際に皮膚に対して注射針を容易且つ正確に穿刺できる、という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る皮内注射用補助具の斜視図である。
【
図2】
図2は、同実施形態に係る皮内注射用補助具の平面図である。
【
図3】
図3は、同実施形態に係る皮内注射用補助具の側面図である。
【
図4】
図4は、同実施形態に係る皮内注射用補助具の縦断面図である。
【
図5】
図5は、同実施形態に係る皮内注射用補助具の使用状態の説明図であって、(a)は伸展面を皮膚に当接させる際の説明図であり、(b)は伸展させた皮膚に注射針が刺さる直前の説明図である。
【
図6】
図6は、同実施形態に係る皮内注射用補助具の使用状態の説明図であって、(a)は伸展させた皮膚に注射針を刺した状態の説明図であり、(b)は真皮の内側に注射液を注入している状態の説明図である。
【
図7】
図7は、本発明の他実施形態に係る皮内注射用補助具の側面図である。
【
図8】
図8は、
図7に示す皮内注射用補助具の縦断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の別の実施形態に係る皮内注射用補助具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態に係る皮内注射用補助具について添付図面を参照しつつ説明を行う。本実施形態に係る皮内注射用補助具は、皮内注射を行う際に用いるものである。なお、本実施形態では、皮内注射用補助具の横幅に対応する方向を横幅方向、皮内注射用補助具の高さに対応する方向を高さ方向、横幅方向と高さ方向とに直交する方向を前後方向、と称する。
【0030】
皮内注射用補助具は、
図1に示すように、注射針2を保持する保持部3と、皮膚の表面に押し付けることで皮膚を伸展させる伸展部4であって、前記注射針2の中心線を含み且つ前記横幅方向に広がる仮想平面上において、該中心線に沿って前記注射針2の先端から所定距離だけ離間するように配置される伸展部4と、該伸展部4と前記保持部3とを接続する接続アーム部5とを有する。
【0031】
保持部3は、
図4に示すように、注射器6が取り付けられる注射器用取付部30と、該注射器用取付部30に設けられ且つ注射針2が取り付けられる注射針用取付部31と、注射針用取付部31の周囲に広がるベース部32(
図2参照)と、を有する。
【0032】
注射器用取付部30には、注射器6のノズル60を挿入可能である。より具体的に説明すると、注射器用取付部30は、筒状のノズル挿入部300と、ノズル挿入部300の軸線方向における後端側の外面から径方向外方に向かって突出する突出部301と、を有する。
【0033】
ノズル挿入部300の内周面は、後端側から先端側になるにつれて内径が徐々に小さくなるようにテーパー状に形成されていてもよい。
【0034】
突出部301は、ノズル挿入部300の外周面に対して、周方向(ノズル挿入部300の外周面の周方向)で間隔をあけて複数設けられている。本実施形態では、2つの突出部301がノズル挿入部300の外周面に設けられているが、突出部301の数は、1つであっても3つ以上であってもよい。
【0035】
注射針用取付部31は、注射器用取付部30の先端側の開口を塞ぐように形成されている。また、注射針用取付部31は、注射器用取付部30の先端から延出するように形成されており、基端から先端に亘って連続する貫通孔310が形成されており、この貫通孔310に対して注射針2が挿通されている。
【0036】
貫通孔310は、ノズル挿入部300の軸線が延びる方向とほぼ同方向に沿って延びるように形成されている。そのため、保持部3では、注射器用取付部30に取り付けた注射器6の向き(注射器6の軸線が延びる方向)と、注射針2(注射針2の中心線が延びる方向)とが一致又は略一致するように構成されている。なお、
図4においては、注射針2の中心線を「CL」で示している。
【0037】
また、本実施形態では、前記高さ方向において、注射器用取付部30の中心から下方側にずれた位置に貫通孔310が形成されている。そのため、前記高さ方向においては、注射針2が、注射器用取付部30に取り付けた注射器6の中心(径方向における中心)よりも下方側に位置することになる。
【0038】
ベース部32は、
図2に示すように、薄板状に形成されており、前記横幅方向における注射針用取付部31の両側に広がっている。
【0039】
本実施形態に係る保持部3では、ベース部32の先端面と注射針用取付部31の先端面とが連続しており、これにより、前記前後方向における後方側に凸となるように湾曲する一つの湾曲面33が形成されている。
【0040】
伸展部4は、注射針2の中心線を含む仮想平面上において、該中心線に沿って注射針2の先端から所定距離だけ前方に離れた位置(ずれた位置)に配置されている。そのため、伸展部4と注射針2の先端との間には空間が形成されている。
【0041】
さらに、伸展部4は、
図4に示すように、人体の皮膚(表皮の表面)に当接させる伸展面40と、該伸展面40から膨出する膨出部41とを有する。なお、
図4においては、伸展面40が広がる平面を「P1」で示している。
【0042】
伸展面40は、仮想平面に対する傾斜角度が注射針2の穿刺角度の最小角度から最大角度までの範囲内の角度に設定されている。伸展面40は、伸展部4の下面(前記高さ方向における下側の面)により構成されている。
【0043】
なお、穿刺角度とは、注射針2の先端を真皮に到達させるうえで、好適な注射針2の傾きのことである。仮想平面に対する伸展面40の傾斜角度は、1°~45°の範囲内で設定できるが、5°~30°の範囲内で設定されていることが好ましく、5°~15°の範囲内で設定されていることがより好ましい。なお、マントー法による皮内注射では、注射針2の穿刺角度が5°~15°となるため、仮想平面に対する伸展面40の傾斜角度が5°~15°の範囲内で設定されている場合は、注射針2をマントー法による皮内注射に適した角度に傾け易くなる。
【0044】
膨出部41は、伸展面40から下方側に向かって膨出している。なお、膨出部41の数は、複数であってもよいし、一つだけであってもよい。
【0045】
図2に示すように、本実施形態の伸展部4は、前記横幅方向における中央部にスリット42が形成されており、前記横幅方向で二つに分断されている。そのため、伸展部4は、前記横幅方向で間隔をあけて並ぶ一対の押圧部43を有している。また、本実施形態では、伸展面40が、各押圧部43の下面(前記高さ方向における下面)により構成されている。
【0046】
接続アーム部5は、前記横幅方向で注射針2と並ぶ位置に形成されている。また、接続アーム部5と注射針2とは前記横幅方向で互いに間隔をあけて並んでいる。本実施形態では、かかる接続アーム部5が、前記横幅方向で注射針2の一方側と他方側とに個別に設けられている。なお、接続アーム部5は、注射針2と人体等との不用意な接触を防止するための保護部でもある。
【0047】
各接続アーム部5の前記横幅方向における内側の側面(以下、内縁面と称する)50は、前記横幅方向における外側に凸となるように湾曲している。すなわち、各接続アーム部5の内縁面は、前記横幅方向において互いに相反する方向に向かって凸となるように湾曲している。
【0048】
各接続アーム部5の下面は、前記高さ方向における上方側に向かって凸となるように湾曲する逃面51となっている(
図3参照)。
【0049】
ここで、押圧部43について説明する。押圧部43は、
図2に示すように、各接続アーム部5の先端に個々に設けられている。
【0050】
各押圧部43は、接続アーム部5の先端から前記横幅方向における内側に向かって延出しており、各押圧部43の先端部は、前記横幅方向で間隔をあけて互いに対向している。
【0051】
各押圧部43の先端面430(前記前後方向における先端面)は、前記横幅方向に沿って真っすぐに形成されている。
【0052】
一方、各押圧部43の後端面431(前記前後方向における後端面)は、前記横幅方向における内側に向かうにつれて徐々に前方に向かうように湾曲している。
【0053】
そして、本実施形態では、各押圧部43の後端面431、各接続アーム部5の内縁面、保持部3の湾曲面33が連続して一つの円弧状の曲面が形成されており、これにより、注射針2の先端部の周りには、該先端部を中心として円形状に広がる領域が形成されている。
【0054】
本実施形態に係る皮内注射用補助具1の構成は以上の通りである。続いて、皮内注射用補助具1の使い方について添付図面を参照しつつ説明を行う。なお、
図5(a)に示すように、皮膚S1は皮下組織S2の上に重なっており、さらに、皮膚S1には、皮膚S1の外表面を構成する表皮S10と、表皮S10と皮下組織S2との間の真皮S11とが含まれている。
【0055】
まず、皮内注射用補助具1を注射器6に取り付ける。
図4に示すように、注射器6がルアーロック部61を有するものである場合は、突出部301をルアーロック部61に螺合させつつ、ノズル60を注射器用取付部30の内部に圧入する。注射器用取付部30に取り付けられた注射器6の軸線方向と注射針2の中心線とは、同一又は略同一の方向に沿って延びている。
【0056】
続いて、
図5(a)に示すように、伸展面40を皮膚S1(表皮S10)の表面に対して平行にして当接させる。伸展面40は、注射針2に対して穿刺角度の最小角度から最大角度までの範囲内の角度で傾いているため、該伸展面40を皮膚S1の表面に当接させると、注射針2が皮膚S1の表面に対して穿刺角度の最小角度から最大角度までの範囲内の角度で傾き、注射器6もまた、皮膚S1の表面に対して注射針2と同一の角度又は略同一の角度で傾く。
【0057】
伸展部4は、注射針2の先端から所定距離だけ離間するように配置されているため、伸展面40は、注射針2を穿刺する予定位置よりも前方の領域で皮膚S1に当接する。以下の説明において、皮膚S1のうち、伸展面40が当接する領域を押圧領域、注射針2を穿刺する予定位置を含む押圧領域の後ろ側の領域を後方領域と称する。
【0058】
そして、皮膚S1に対して伸展面40がずれないようにしながら、注射針2の中心線が延びる方向に沿って注射器6ごと皮内注射用補助具1を前進させて伸展面40を皮膚S1に押し込む。
【0059】
このようにすると、
図5(b)に示すように、押圧領域が凹むとともに、後方領域が前方に引き伸ばされる(伸展する)。また、後方領域は、押圧領域との境目となる位置が最も深く沈み込むが、押圧領域との境目よりも後ろ側の部分は、皮膚S1の弾力によって膨らむため、注射針2の穿刺進路上に該後方領域の一部がさしかかる。
【0060】
そして、皮内注射用補助具1を移動させ続けると、注射針2が角度を保ったまま後方領域に刺さり、
図6(a)に示すように、注射針2の先端部が表皮S10を貫いて真皮S11に到達する。この状態で注射器6内の注射液を注入すると、
図6(b)に示すように、真皮S11が膨らんで膨隆部S12が形成される。
【0061】
そして、皮内注射用補助具1を後退させて皮膚S1から注射針2を引き抜き、皮内注射が完了する。
【0062】
以上のように、本実施形態に係る皮内注射用補助具1によれば、仮想平面(注射針2)に対する傾斜角度が前記穿刺角度の最小角度から最大角度までの範囲内の角度に設定されている伸展面40が、注射針2の中心線に沿う方向で、注射針2の先端から所定距離だけ離間した位置に配置されているため、伸展面40を皮膚S1に押し込みながら伸展部4を前方に移動させるだけで、注射針2の先端と伸展部4の間の皮膚S1が伸展されるとともに、注射針2が傾き(皮膚S1に対する傾き)を保ったまま皮膚S1に刺さる。
【0063】
このように、上記構成の皮内注射用補助具1は、皮膚S1を伸展させる操作の流れの中で、注射針2を穿刺角度の最小角度から最大角度までの範囲内の角度で傾けたまま皮膚S1に刺すことができる。従って、皮内注射用補助具1は、皮内注射を行う際に皮膚S1に対して注射針2を容易且つ正確に穿刺できる、という優れた効果を奏し得る。
【0064】
また、伸展面40を皮膚S1の表面に当接させた時点で、注射針2の向きと、注射針2と伸展部4が並ぶ方向とが、皮膚S1に注射針2を刺す方向に揃うため、所定の一方向に皮内注射器補助具1を移動させるだけで(すなわち、皮内注射器補助具1を移動させる方向を変えずに)皮膚S1を伸展させ、該皮膚S1に対して注射針2を皮内注射に適した角度のまま刺すことができる。
【0065】
なお、本実施形態では、伸展面40を皮膚S1の表面に当接させた時点で、注射器6の向きも皮膚S1に注射針2を刺す方向に揃うため、注射器6を手に持った状態で皮内注射用補助具1を動かして伸展部4を皮膚S1に押し込む際に、注射針2の姿勢を保ち易くすることができる。
【0066】
また、注射針2の前方には伸展部4が、注射針2の両隣り、より具体的には、仮想平面上で且つ前記横幅方向における前記注射針2の両側には一対の接続アーム部5(保護部)が設けられているため、注射針2の周囲が伸展部4と一対の接続アーム部5とによって囲まれ、注射針2が不用意に人体等に接触してしまうことを抑制でき、また、注射針2が誤った姿勢で皮膚S1に刺さってしまうことを防止できる。
【0067】
さらに、注射針2と接続アーム部5との間には、スペースが形成されているため、真皮S11に注射液を注入した際に、膨隆部S12の形成、すなわち、真皮S11への注射液の注入が妨げられにくくなる。
【0068】
また、接続アーム部5の下面は、上方側に向かって凸状に湾曲する逃面51となっているため、該接続アーム部5の下面によって皮膚が圧迫されにくくなり、真皮S11に注射液を注入する際に膨隆部S12の形成を阻害しないようにすることができる(すなわち、真皮S11への注射液の注入を阻害しないようにすることができる)。
【0069】
なお、本発明の皮内注射用補助具は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0070】
上記実施形態では特に言及していなかったが、保持部3の先端側の下面(本実施形態では、注射針用取付部31の下面とベース部32の下面とで構成される一面)は、仮想平面に対する傾斜角度が前記穿刺角度の最小角度となるように形成されていてもよい。
【0071】
上記実施形態では、注射器用取付部30を、ルアーロック部61を有する注射器6に取り付けることを前提にして説明したが、ルアーロック部61を持たない注射器6に取り付けることも可能である。
【0072】
上記実施形態において、注射器用取付部30は、ルアーロック部61に螺合させる突出部301を有するように構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、注射器用取付部30には突出部301が設けられていなくてもよい。なお、突出部301を持たない注射器用取付部30であっても、ルアーロック部61を有する注射器6のノズルに対して該注射器用取付部30の注射器用取付部30を圧入することは可能である。
【0073】
上記実施形態において、注射針用取付部31の貫通孔310は、注射器用取付部30の径方向における中心よりも下方側にずれた位置に形成されていたが、この構成に限定されない。例えば、注射針用取付部31の貫通孔310は、注射器用取付部30の径方向における中心を通って軸線方向(注射器用取付部30の軸線方向)に延びる直線上に形成されていてもよい。但し、注射器用取付部30の径方向における中心よりも下方側にずれた位置に貫通孔310が形成されている方が、伸展面40を皮膚に当接させた際に注射針2を皮膚の近くに配置できるため、皮内注射を行い易くなる。
【0074】
上記実施形態において特に言及しなかったが、伸展部4のスリット42の幅は、皮膚の後方領域を伸展させることができる範囲内で設定されていればよい。
【0075】
上記実施形態において、伸展部4は、前記横幅方向で二つに分断されていたが、分断されることが必ずしも必要となるものではない。
【0076】
上記実施形態において特に言及しなかったが、
図7、及び
図8に示すように、保持部3の先端部側の下面(具体的には、注射針用取付部31の下面とベース部32の下面とで構成される一面)には、前記保持部3の後端部側の下面よりも下方側に膨出する深刺抑制部34が形成されていてもよい。
【0077】
かかる構成によれば、保持部3の先端部側の下面には、後端部側の下面よりも下方側に膨出する深刺抑制部34が形成されるため、伸展面40を皮膚S1に押し込む際に、該深刺抑制部34が皮膚S1に当接したことを目安にして伸展面40を押し込む操作、すなわち、皮膚S1に注射針2を刺し込む操作を止めることができる。従って、上記構成の皮内注射用補助具1は、注射針2が皮膚S1に対して過剰に刺し込まれてしまうことを抑制できる。
【0078】
また、前記深刺抑制部34の下面には、仮想平面に対する傾斜角度が前記注射針の穿刺角度の最小角度から最大角度までの範囲内の角度に設定される角度制限面340が含まれていてもよい。なお、
図8においては、注射針2の中心線を「CL」、伸展面40が広がる平面を「P1」、角度制限面340が広がる平面を「P2」で示している。
【0079】
かかる構成によれば、誤って伸展部4を皮膚S1に当接させずに注射針2を皮膚S1に穿刺してしまった場合であっても、保持部3の外底部に形成された角度制限面340が皮膚S1に当接すれば、注射針2が穿刺角度の最小角度から最大角度までの範囲内の角度で傾くため、使用手順を誤った場合であっても、注射針2の穿刺角度が許容範囲を超えてしまうことを抑制できる。
【0080】
なお、
図9、
図10に示すように、前記深刺抑制部34の下面を注射針2の中心線が延びる方向に一致又は略一致させることも可能であり、この場合は、注射針2が皮膚S1に対して過剰に刺し込まれてしまうことを抑制できる効果が高まる。
【符号の説明】
【0081】
1…皮内注射用補助具、2…注射針、3…保持部、4…伸展部、5…接続アーム部、6…注射器、30…注射器用取付部、31…注射針用取付部、32…ベース部、33…湾曲面、34…深刺抑制部、40…伸展面、41…膨出部、42…スリット、43…押圧部、50…内縁面、51…逃面、60…ノズル、61…ルアーロック部、300…ノズル挿入部、301…突出部、310…貫通孔、340…角度制限面、S1…皮膚、S10…表皮、S11…真皮、S12…膨隆部、S2…皮下組織